説明

インキ

【課題】本発明は、種々の食品、食品に接する材料、食品包装材料等に印刷した場合に透明性の材料における不透明部の形成に適するインキを提供することを目的とする。特に遮光性を有する食品包装材に対する用途に適性を有するものであり、直接食品に接することがあって、また、飲食品が接する、あるいは、印刷部分が、直接口に接触するような場合においても、衛生性においての懸念を払拭するインキおよび包装材料を提供することを目的とする。
【解決手段】平均粒子径が0.01〜5μmである炭末色素1種以上を1〜50重量%、および食品添加の可能な樹脂1種以上を1〜50重量%含むことを特徴とする食品ないし食品包装用のインキ。炭末色素の平均粒子径が、0.05〜3μmである上記インキ。さらに、炭末色素以外の食用色素をインキ全体の0.3〜20重量%含む上記インキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品類、未加工食品ないしは加工食品、これらの表面に直接ないし、包装材等を介して、あるいは、食品に接触する機会のある材料、食品包装材料等に印刷するのに適したインキに関する。
【背景技術】
【0002】
食品および食品包装材料類には、生産地、生産者表示、生産履歴等の表示や、また、賞味期限等の表示が必要とされている。生産履歴や収穫年月日、賞味期限等を明確にすることは、品質の向上、安全性の確認、商品への信頼性、安心感が得られる方法として期待されている。
このような表示は、各種のコード体系や検索方法等を鑑みて構築されるものであるが、好ましくは、それぞれの商品個々に印字されていることが、今後さらに望まれてくる。
従って、未加工食品、加工食品をはじめとする対象物に対して直接、あるいは、包装材等を介して、あるいは、食品に接触する材料、あるいは、食品類を取り扱う環境を通過する材料において、重要な課題である。
【0003】
また、食品類ないし関連の包装材料に、文字、図形、デザイン等の加工を施し、購買意欲をそそる商品とすることも重要である。
このような印刷においては、可食性の材料からなるインキであることが求められる。
更に、食品類を包装する材料においては、保管期間中に容器外部からの可視光および紫外光により内容物の退色をはじめとする品質の劣化も問題となる。このような問題をなくすために、容器には、光を透さない材料を用い、品質の劣化を防止している。
【0004】
このような材料としては、アルミ蒸着等によるものがあるが、近年の容器の廃棄、再生における材料の分別においては、取り扱いが面倒なものとなる。
また、カーボンブラック等の顔料を用いる塗料により塗工層を設ける方法も考えられる。しかしながら、容器の形成過程において、あるいは、容器として、当該塗料で塗工された部分が端面として食品に一部が接触するような部分が構造上避けにくい。また、このようなことを避けるための加工法は決して容易ではない。
そこで、仮に端面が食品に接したとしても、危害のない材料での端面が好ましい。
【0005】
このような観点において、食品添加物からなる材料を用いるインキが望まれる。
光を遮光するような用途ではない場合においては、以下のような可食材料によるインキが知られている。
すなわち、食品添加物着色料である水溶性染料を水に溶解したものがインクジェットインキの分野で公知であるが、水に溶解する色素のため、濃色基材での発色性は十分でなく、また、耐水性が劣り、水に接触する対象物には使用できなかった。
【0006】
また、インクジェットインキの分野では、耐水性に優れ、食品の表面に印字するのに適したインクジェットインキとして、特許文献1(特開昭53−127010号公報)に、バインダがセラックであり、水およびエタノールから成る溶剤と鉄クロロフィリンナトリウムまたは(および)銅クロロフィリンナトリウムを着色剤として含む緑色インク組成物が開示されている。しかし、使用されている銅クロロフィリン等の着色材は、アルコールに対して溶解性を十分有するものでなく水溶性の色素であり、インキの濃度を上げるためには、水の使用が不可欠である。したがって、このインキは本質的に水を主体とするもので、これに少量のエタノールを混合して用いるものである。また、シェラック樹脂も、水に対して溶解性のタイプのものを使用しており、溶解安定化を図るため、モルフォリンのような食品添加物でないものをインキ原料として用いるものであった。また、また、樹脂の溶解性を維持させるために、メチルセルソルブのような溶剤の併用も行なったものである。これらは、食品添加物で許可されていない材料よりなるものでもあった。
また、溶解性の色素のため、濃色の基材への適性はなかった。
【0007】
特許文献2(特開平9−302294号公報)は、ヤマモモ抽出物、フラボノイド系物質、有機酸を可食性安定剤として含有するインキが示されている。この特許文献2では、可食性の安定剤が示されており、これは、色素の耐光性を安定化させることを目的としている。インキが、水を70重量部以上も用いるインキであり、色素および安定剤は、専ら水に対する溶解性を有するもので、約20重量部程度しか使用されていないエタノールへの溶解性を考慮したインキではない。したがって、印字物が水と接触すると、水によって容易に色素、樹脂等が溶解しやすいいわゆる水性のインキの範疇と認められる。
【0008】
これらのインキの光に対する安定性は、良好なことが示されているが、このようにエタノールよりも、水の多いインキであるため、アルコールを溶媒成分の70重量部以上も用いるような乾燥性の良好なアルコールタイプのインキの処方は開示されていない。また、使用している樹脂は、水溶性のタイプの樹脂であり、アルコールを主体とする耐水性のあるインキにはなっていない。
【0009】
また、食品関連への印刷において、被印刷体が透明なものであったり、あるいは逆に、黒や濃度の高い褐色系等である場合、可食性を謳われる色素にて印字をおこなうと、インキが透明性を持ちすぎ、必要とする隠蔽性を得られない場合や、下地の色により印字の効果が確認できないなどの問題を生じやすくしていた。
食品用の材料ではない遮光性の材料としては、カーボンブラックや、粒子径の大きな無機粒子の利用が考えられる。しかしながら、食品用の材料となった場合は、制約があって本来の安全性に対する配慮が果たせなくなる。
【0010】
カーボンブラックに代わる材料としては、タケスミや植物のスミから構成される材料があり、特許文献3(特開2002−212474号公報)には、バインダーとしてアカロイドと、可食性色材として炭末を用いる可食性インキおよびプラスチックへの印刷物がしめされている。
しかしながら、アカロイドは食品添加物であるかが十分確認できない。したがって、かならずしも、食品添加物から構成される可食インキとは言いがたい。また、黒色の印字物を形成することは容易に推測されるが、遮光性を備えた包装材料を構成する技術については触れられていない。
【0011】
また、特許文献4(特開平10−251562号公報)には、300メッシュふるいを通過する竹炭を用いる電磁波シールド塗料が記載されているが、食品用としての遮光性を記載したものではない。
また、特許文献5(特開2003−268290号公報)には、植物由来の炭粉末をもちいる塗料がしめされているものの食品ないし食品用のインキとしての使用までの技術開示はない。
【0012】
その他、特許文献6(特開2000−14495号公報)には、遠赤外線用として、特許文献7(特開2002−94284号公報)には、電磁波シールド用として、特許文献8(特開2003−89770号公報)には、建築用材料として、特許文献9(特開2003−119428号公報)には、エアゾール用の消臭剤成分として、さらに、特許文献10(特開2004−331682号公報)、特許文献11(特開2005−105010号公報)等には、ホルムアルデヒドの吸着、VOCの吸着機能材料としての用途が記載されているものの、食品用としてのインキについては記載がない。
以上のように、印刷インキへの不透明性を付与する用途において、また、食品ないし食品添加物による構成を意図して、印刷用のインキとすることは、材料の制約があり、また、材料が限られており、この調整が困難であった。
【0013】
【特許文献1】特開昭53−127010号公報
【特許文献2】特開平09−302294号公報
【特許文献3】特開2002−212474号公報
【特許文献4】特開平10−251562号公報
【特許文献5】特開2003−268290号公報
【特許文献6】特開2000−14495号公報
【特許文献7】特開2002−94284号公報
【特許文献8】特開2003−89770号公報
【特許文献9】特開2003−119428号公報
【特許文献10】特開2004−331682号公報
【特許文献11】特開2005−105010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、種々の食品、食品に接する材料、食品包装材料等に印刷した場合に透明性の材料における不透明部の形成に適するインキを提供することを目的とする。
特に遮光性を有する食品包装材に対する用途に適性を有するものであり、直接食品に接することがあって、また、飲食に際して、食品が接する、あるいは、印刷部分が、直接口に接触するような場合においても、衛生性においての懸念を払拭するインキおよび包装材料を提供することを目的とする。
【0015】
また、種々の食品、食品に接する材料、食品包装材料等に印刷した場合に水に濡れても、着色料の溶出がなく、見た目の嫌悪感を生じさせないようなインキおよび印刷された食品ないし包装材料等の提供を目的とする。
また、食品への添加が許容される材料のみにより構成させるインキ、このインキにより印刷された包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち本発明は、平均粒子径が0.01〜5μmである炭末色素1種以上を1〜50重量%、および食品添加の可能な樹脂1種以上を1〜50重量%含むことを特徴とする食品ないし食品包装用のインキに関する。
【0017】
また、本発明は、炭末色素の平均粒子径が、0.05〜3μmである上記インキに関する。
【0018】
また、本発明は、さらに、炭末色素以外の食用色素をインキ全体の0.3〜20重量%含む上記インキに関する。
【0019】
また、本発明は、食用色素が、天然物からの抽出色素である上記インキに関する。
【0020】
また、本発明は、さらに、食品添加の可能な乳化剤を含有する上記インキに関する。
【0021】
また、本発明は、食品添加の可能な樹脂が、シェラック樹脂である上記インキに関する。
【0022】
また、本発明は、炭末色素が、植物を水蒸気賦活法で高温に加熱し、炭化したものである上記インキに関する。
【0023】
また、本発明は、炭末色素が、カカオ果実の殻を焙焼したもの、植物油脂を燃焼したもの、あるいは、竹炭を含む上記インキ。
【0024】
また、本発明は、インキが、グラビア用である上記インキに関する。
【0025】
また、本発明は、インキが、フレキソ用である上記インキに関する。
【0026】
また、本発明は、インキが、パッド印刷用である上記インキに関する。
【0027】
また、本発明は、インキが、スクリーン印刷用である上記インキに関する。
【0028】
また、本発明は、上記インキを、食品および/もしくは、食品の包装用材料に不透明性のある印刷を行なう印刷方法に関する。
【0029】
また、本発明は、印刷後のインキ層の、320nm、356nm、500nm、600nm、900nmの波長の光の透過率が、いずれも30%以下となるようインキ層厚を設定する上記印刷方法に関する。
【0030】
また、本発明は、上記インキを、食品および/もしくは、食品の包装用材料に不透明性のある印刷をしてなる食品ないし包装材料に関する。
【0031】
また、本発明は、印刷後のインキ層の、320nm、356nm、500nm、600nm、900nmの波長の光の透過率が、いずれも30%以下である上記包装材料に関する。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、食品への添加が許容される材料のみにより構成させるインキ、このインキにより印刷された包装材料を提供できたので、安心して、隠蔽効果の高い包装材料を使用できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(炭末色素)
本発明のインキは、炭末色素を、可食性の色素および不透明性の材料として用いる。
本発明で用いられる炭末色素は、植物を炭化したものであり、例えば、植物を水蒸気賦活法で高温に加熱し、炭化したものをいう。具体的には、カカオ果実の殻を焙焼したもの、植物油脂を燃焼したもの等、食品添加物色素として認められているものや、竹の炭化物である竹炭等が挙げられる。本発明では、植物を由来とするものを炭末色素とする。
【0034】
炭末色素は、隠蔽性の材料としての使用ができるため、本発明においては、平均粒子径が、0.01〜5μmの粒子径のものを用いる。しかしながら、インキ化の工程においては、0.05〜3μmの粒子径が好ましい。さらには、インキにおける分散の工程において、1μm以下として分散させることが好ましい。
【0035】
平均粒子径は、光散乱法などで求めることができる。
一般的に、植物の炭化物は、塊状であるので、これらを粉砕機にて微細化する。
このような微細化の方法としては、機械的な衝撃による各種の粉砕、分散機がもちいられる。
【0036】
粒子径をさらに細かくする方法としては、炭末色素と可食樹脂とを二本ロールにて板状にして分散させる方法、炭末色素と可食樹脂との高粘度混合物を3本ロールにて分散させる方法、中粘度状態で高速アジテーターミルで分散する方法、溶剤分を少なくした状態で炭末色素と可食樹脂とをボールミルによる衝撃を加える方法等が適宜もちいられる。
炭末色素は、インキ全体中に1〜50重量%、好ましくは、8〜50重量%、さらに好ましくは、15〜25重量%用いる。
【0037】
本発明においては、炭末色素は、水ないしアルコールに対しての溶解性が乏しい。したがって、0.01〜5μmの粒子径をもって分散する形態でもちいる。
この粒子径および上記の使用量において、良好な不透明性および黒色の色再現が可能となる。また、無機系の白色粉に較べて沈降性において優位なインキ形態となりえる。
【0038】

(食用色素)
本発明において炭末色素以外の食用色素を炭末色素とともに用いることができる。本発明で用いることのできる食用色素としては、アルコールあるいは、水に不溶解ないし溶解性のよくない天然色素、合成色素がもちいられる。
また、場合によっては、アルコールあるいは、水に溶解する天然色素、合成色素、また、一部水あるいは、プロピレングリコールを含有した状態のアルコールにて溶解する天然色素、合成色素がもちいられる。
耐水性の要求のない用途においては、水溶性の色素が用いられる。
【0039】
色素として具体的には、ウコン色素、クチナシ色素、ベニコウジ色素、コウリャン色素、シタン色素、アナトー色素、アカネ色素、アントシアニン色素、クロロフィリン色素、食用赤色、食用黄色、食用青色等を例示できる。
なお、天然色素系においては、アルコール可溶性コウリャン色素またはシタン色素、ウコン色素等が好ましい。これらの色素は、アルコールおよび水の混合溶剤にて抽出される色素である。
【0040】
炭末ないし竹炭等の食用色素は、インキ中に1〜50重量%の範囲で含まれることが好ましい。含有量が1重量%より少ないと、印字濃度が不十分であり、含有量が50重量%を越えると分散の不良および印刷適性の低下を生じる。特に連続した印刷において安定性が悪くなる傾向にある。
【0041】

(食品添加の可能な樹脂)
本発明のインキにおいて、食品添加の可能な樹脂を1種以上用いることによって、水に浸漬したり、こすったりしても印刷したインキが溶出することの少ない耐水性、耐摩擦性を備えていることができる。
【0042】
食品添加の可能な樹脂としては、可食性の樹脂であり、シェラック樹脂、ダンマル樹脂、コーパル樹脂がアルコール系溶剤への溶解性から用いやすい。その他、水系の樹脂も用いることもあり、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、結晶セルロース、ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白、アラビアゴムシクロデキストリン等を溶剤に応じて全部ないし一部用いることができる。
これらの樹脂のなかでも、種々の適性から好ましい樹脂としては、シェラック樹脂である。
【0043】
本発明で使用するシェラック樹脂は、アルコール可溶性タイプの樹脂が特に好ましく用いられる。このシェラック樹脂は、本発明にて使用する食用色素と相溶性を有する。また、アルコールに溶解してインキの粘度を上昇させる働きを有し、かつ、被印刷体に対して良好なバインダーとして機能する。
また、シェラック樹脂には、水/アルコール混合系の溶剤に溶解するタイプの樹脂もあり、アルカリサイドでの安定性を重視するには、このタイプのシェラック樹脂が好ましい。
【0044】
本発明において食品添加の可能な樹脂は、インキ全体中に、1〜50重量%好ましくは4〜40重量%の範囲で含まれることが好ましい。含有量が1重量%好ましくは4重量%より少ないと、適度な粘度が得られない。また、十分な密着も得られにくい。又、50重量%以上好ましくは40重量%以上ではインキの粘度が高くなりすぎ、低温での流動性が不足し、印刷の安定性も低下する。
【0045】

(インキの溶剤)
本発明において、インキは、1種以上の溶剤を含むことができる。溶剤は、インキ全体中に、30〜85重量%用いることができる。
本発明のインキにおいての溶剤としては、エタノールを用いることが乾燥性において優位である。
【0046】
本発明のインキは、本質的にエタノールを溶剤とするものが好ましく、インキ中においては、エタノールが少なくとも50重量%以上含有されるアルコールインキとすることが、耐水性のインキに適した処方になる。本発明において使用できるエタノールは食品用の発酵エタノールまたは変性エタノールである。
【0047】
また、プロピレングリコールは、色素の溶解性の向上、インキの乾燥の調整、インキ 粘度の調整等の役割を行うために用いることができる。また、下地によっては、浸透の調整の効果も有する。
プロピレングリコールは、インキ中に0〜30重量%の範囲にてもちいる。被印刷材への適度な浸透、乾燥の調整が可能となる。
【0048】

(乳化剤)
本発明において、インキは、1種以上の食品添加可能な乳化剤を含むことができる。
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等が用いられる。これらは、0〜5重量%用いる。インキの炭末色素の分散安定性に寄与する。
これらの乳化剤において、非イオン活性剤は、インキの種類に応じてHLBの適性があり、グラビアインキおよびパットインキにおいては、HLB8〜16が、水性タイプのスクリーンインキにおいては、HLB4〜7が、また、チョコレートのような材料に対しては、HLB1〜2のようなインキ調整とすることが、印刷への適性を有する。
【0049】

(包装材料)
本発明のインキは、耐水性の良い印刷物が形成でき、印刷システムによっては高速の可変情報の印字も可能である。
本発明のインキは、食品、食品に直接接触する材料、食品用包装材料に使用することができる。このような包装材料は、必要に応じて表面処理を施したポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレートのようなプラスチック材料、不織布、紙等が例示できる。全面印刷をすることで、遮光性の包装を形成できる。
【0050】
食品の包装材料としては、容器を形成する材料であり、特に食品類の光による劣化を防止する必要がある用途において用いられる材料が本発明の対象となる。このような材料としては、食品の種類にもよるが、遮光性を要する。
また、容器の形成において、包装材料の端面が食品と接触する可能性を有する形態があり、このような容器への包装材料としての適性を本材料は有する。
すなわち、炭末色素および食品添加の可能な樹脂とからなるインキにて、インキ層を透過率において70%以上の低下をする印刷面を形成する。
【0051】

また、本発明のインキは、食品の包装容器用の積層フィルムを作成することで、食品への遮光性および遮光性を有しながらも、フィルムの端面における食品との接触を有する場合でも、食品添加物より構成されるインキであるため、衛生上の懸念を払拭できる。
【0052】
本発明のインキは、平均粒子径が0.01〜5μmである炭末色素1種以上を1〜50重量%用いるインキであり、好ましくは、この含有量を15〜25重量%のインキとして、インキ層膜厚を1〜5μmとして用いることで、紫外光、可視光、近赤外光の透過率を70%以上のカットができる。さらに、インキ層膜厚2〜8μmとすることで95%以上のカットができるようになる。
また、1μm以下の膜厚によるインキ層を作製し、このインキ層を2層以上積層する方法も、遮光性を向上させる好ましい方法である。
この場合も、容器形成時に食品との接触あるいは、開封後の飲食時に直接口に接する場合があっても、衛生性に対する懸念を払拭できる。
【0053】
更に、本発明のインキは、食品添加物として認められたもので構成されるものであり、食品のデザイン、装飾、高品位のデータの表示、品質のトレーサビリティー等にも有効である。
其の他、グラビア用、フレキソ用、パッド印刷用、スクリーン印刷用などの種々の印刷に対応が可能であり、印刷するデザインおよびデータには、生産地、収穫日時、生産者、日付、特殊記号等も印刷できる。
【0054】
これらの表記は、経路の確実な表示方法として商品の流通形態への信頼性を付与する。
【0055】
印刷される食品としては、ガム、キャンディー、ビスケット、クッキー、饅頭、チョコレート等が例示できる。また、みかん、りんご、スイカ等の果物、野菜、肉類がある。
また、これら食品の包装材料も印刷の対象となる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。例中、部および%は、重量部および重量%をそれぞれ示す。
実施例1−1
平均粒径1.74μm D99 2.21μmの炭末色素(植物の水蒸気賦活法によるもの)15%、シェラック樹脂 28%、 グリセリン脂肪酸エステル 2%、 醗酵エタノール 55%をジルコニアビーズを用いたサンドミルにて分散し、ザーンカップNo.3で20秒のインキを作製した。
ポリエステルフィルムに、グラビア印刷にて、膜厚2μmとなるようにベタのインキ層を設けた。
【0057】
このフィルムの印刷による320nm、356nm、500nm、600nm、900nmの分光透過率は、7.6%、7.5%、7.6%、7.6%、8.4%でいずれも、90%以上の透過率の低下をしめした。
また、インキ層膜厚を5μmとしたときは、0.5%、0.5%、0.5%、0.56%、0.5%でいずれも、99%以上の透過率の低下をしめした。
【0058】
実施例1−2
実施例1−1の炭末色素を8%にし、醗酵エタノールを62%にしてインキを調整し、インキ層膜厚を、2μmの膜厚に変えて同様に透過率を測定したところ、透過率 10%、10%、10%、10%、11%となり、炭末色素が、8%以上のインキにおいて、70%以上の透過率の低下が可能であった。
【0059】
実施例1−3
上記実施例1−1の炭末色素の濃度を3%としたものは、膜厚を2μmとしたとき、透過率が、66%、66%、66%、66%、71%で、30%以上の低下が可能であった。
【0060】
実施例1−4
また、上記実施例1−1の炭末色素の濃度を7%としたものも、膜厚を2μmとしたとき、透過率が、35%、35%、35%、35%、39%で、30%以上の低下が可能であった。
【0061】
(実施例および比較例)
下記表1の原料を混合、乳化機にて分散した後、20μmのフィルターで濾過しインキを調製した。この実施例で使用したエタノールは95%以上の発酵エタノールである。
実施例および比較例で得られたインキについて、25℃における粘度( mPa・s)、を測定した。なお、粘度の測定は粘度計(YAMAICHI社製「デジタルビスコメイト」)を用いておこなった。
【0062】
また、実施例および比較例で得られたインキをグラビアテスト印刷機にて被印刷体に印刷し、得られた印刷物について下記の評価を行った。結果を表2に示す。また、同様のインキをシリコンゴムの版を有するパッド印刷機にてホワイトチョコレート糖衣面にパッド印刷して、印字物の確認性を評価した。
【0063】
粒径 :粒度分布計(日機装株式会社製 UPA)にて測定。
沈降性 :インキを直径10mmの円中ガラス管に45mmの高さまでいれ、半日後の分離状態を測定。
密着性 :各種被印刷体に対してインキを塗布し、綿棒のこすりによる剥離の有無。
耐水性 :印字面を水で湿らせた綿棒にてこすり溶出の有無を確認。
経時変化:インキをスクリュー管(ガラス製の容器)に保管し、経時による底への沈降物、壁面への凝集物の有無を目視で評価。
透過率 :分光光度計による600nmでの透過率。インキの膜厚を1.5μm、2μm、4μmとしたもの。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
実施例8
チョコレート用のスクリーンインキにつき、表3の組成にて60℃の温浴上にて分散して作製した。
【0067】
【表3】

【0068】
実施例8は、ホワイトチョコレート上への印字において、スクリーンからのインキの転移、スクリーンでの目詰まりのトラブルも良好であった。印刷時の流動性も、良好であった。
【0069】
実施例9と比較例
表4の組成にて乳化機にて分散し、水性のスクリーンインキを作製した。
【0070】
【表4】

【0071】
実施例9のインキは、クッキー上へのスクリーン印刷により印刷した。比較例1インキは、透明性が高いため下地により画像が判別できなかったが、実施例9インキでは、透明性がなくなり、良好な画像が形成できた。
実施例10と比較例2
表5の組成にて乳化機にて分散し、グラビアおよびフレキソのインキを作製した。
【0072】
【表5】

【0073】
実施例10のインキは、PETフィルム上へのフレキソ印刷により印刷した。比較例2インキは、透明性が高いため下地により画像が判別できなかったが、実施例10インキでは、透明性がなくなり、良好な画像が形成できた。比較例2インキは、樹脂分が多いが、炭酸カルシウムがインキ中から沈降分離しやすいが、実施例10インキでは、比較例2インキに較べ沈降が少なく安定した印刷が継続できた。比較例2インキは、透明性がでて、下地の影響が無視できない印刷物となった。紫外光、可視光、近赤外光の隠蔽性を制御できなかった。
実施例インキは、印刷面の下部に濃色材料をおいても、印刷の文字、デザインが十分確認できた。遮光性が十分であった。
【0074】
実施例11と比較例3
表6の組成にて乳化機にて分散し、グラビアインキを作製し、食品用のPETフィルムに印刷した。比較例3インキは、沈降が生じやすく、安定性が不足した。また、実施例11のインキが隠蔽性を有するのに対し、比較例3インキは、透明性がでて、下地の影響が無視できない印刷物となった。紫外光、可視光、近赤外光の隠蔽性を制御できなかった。
実施例11インキは、印刷面の下部に濃色材料をおいても、印刷の文字、デザインが十分確認できた。遮光性が十分であった。
【0075】
【表6】

【0076】
実施例12と比較例4
表7の組成にて乳化機にて分散し、グラビアインキを作製し、食品用のPETフィルムに印刷した。比較例4インキは、沈降が生じやすく、安定性が不足した。また、実施例12のインキが隠蔽性を有するのに対し、比較例4インキは、透明性がでて、下地の影響が無視できない印刷物となった。実施例12インキは、印刷面の下部に濃色材料をおいても、印刷の文字、デザインが十分確認できた。紫外光、可視光、近赤外光の隠蔽性を制御できなかった。
【0077】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.01〜5μmである炭末色素1種以上を1〜50重量%、および食品添加の可能な樹脂1種以上を1〜50重量%含むことを特徴とする食品ないし食品包装用のインキ。
【請求項2】
炭末色素の平均粒子径が、0.05〜3μmである請求項1記載のインキ。
【請求項3】
さらに、炭末色素以外の食用色素をインキ全体の0.3〜20重量%含む請求項1または2記載のインキ。
【請求項4】
食用色素が、天然物からの抽出色素である請求項3いずれか記載のインキ。
【請求項5】
さらに、食品添加の可能な乳化剤を含有する請求項1〜4いずれか記載のインキ。
【請求項6】
食品添加の可能な樹脂が、シェラック樹脂である請求項1〜5いずれか記載のインキ。
【請求項7】
炭末色素が、植物を水蒸気賦活法で高温に加熱し、炭化したものである請求項1〜6いずれか記載のインキ。
【請求項8】
炭末色素が、カカオ果実の殻を焙焼したもの、植物油脂を燃焼したもの、あるいは、竹炭を含む請求項1〜7いずれか記載のインキ。
【請求項9】
インキが、グラビア用である請求項1〜8いずれか記載のインキ。
【請求項10】
インキが、フレキソ用である請求項1〜8いずれか記載のインキ。
【請求項11】
インキが、パッド印刷用である請求項1〜8いずれか記載のインキ。
【請求項12】
インキが、スクリーン印刷用である請求項1〜8いずれか記載のインキ。
【請求項13】
請求項1〜12いずれか記載のインキを、食品および/もしくは、食品の包装用材料に不透明性のある印刷を行なう印刷方法。
【請求項14】
印刷後のインキ層の、320nm、356nm、500nm、600nm、900nmの波長の光の透過率が、いずれも30%以下となるようインキ層厚を設定する請求項13記載の印刷方法。
【請求項15】
請求項1〜12いずれか記載のインキを、食品および/もしくは、食品の包装用材料に不透明性のある印刷をしてなる食品ないし包装材料。
【請求項16】
印刷後のインキ層の、320nm、356nm、500nm、600nm、900nmの波長の光の透過率が、いずれも30%以下である請求項15記載の包装材料。


【公開番号】特開2006−335922(P2006−335922A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163589(P2005−163589)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】