説明

インク、インクカートリッジ及びインクジェット記録方法

【課題】自己分散型のモノアゾ顔料に由来する析出物による吐出安定性の低下が抑制されるとともに、記録ヘッドのヒーター部分の接液面の劣化が抑制されるインクを提供する。
【解決手段】モノアゾ顔料、樹脂、及び下記式(1)で表される界面活性剤を含有する、熱エネルギーを利用したインクジェット記録方式に用いるインクである。界面活性剤に占める、エチレンオキサイド基部分の分子量の割合が10%以上85%以下であり、モノアゾ顔料が、−COOM、−SO3M、−PO3HM、及び−PO32からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基が、顔料粒子の表面に直接又は他の原子団を介して結合している自己分散顔料であり、樹脂の酸価が、240mgKOH/g以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用のインク、前記インクを用いたインクカートリッジ及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法では様々な記録媒体への記録が可能である。そして、より良好な画像記録を企図して、例えば、光沢紙などに写真画質の画像を記録するのに適したインクや、普通紙などに文書を記録するのに適したインクなど、その目的に応じて種々のインクについての提案がなされている。近年、記録媒体として普通紙などを用い、文字や図表などを含むビジネス文章などの記録にもインクジェット記録方法が利用されており、このような用途への使用頻度が格段に増えてきている。このため、普通紙などの記録媒体に文字や図表を記録するのに適したインクとして、ブラックインクだけでなく、カラーインクの色材としても顔料を用いることが増えてきている。
【0003】
このような状況下、インクジェット用のインクに使用する顔料の中でも、モノアゾ顔料は着色力に優れ、コスト面でも有利であるため、様々な検討が進められている。しかし、一般に、モノアゾ顔料は熱に弱いため、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット方式に適用する場合には、以下に述べるような課題が生じる。例えば、代表的なモノアゾ顔料であるC.I.ピグメントイエロー74を使用すると、記録ヘッドのインク流路の内部に顔料の析出物が付着、堆積し、吐出特性が低下することが知られている。特に、近年では、インクジェット記録方法における、記録可能枚数のさらなる向上やランニングコスト低下に対する要求が高まっている。このため、吐出特性の低下を今まで以上に高いレベルで抑制することが強く求められている。
【0004】
このような課題に対して、以下のような提案がある。樹脂分散剤により分散されたモノアゾ顔料の凝集を抑制する物質をインクに含有させることで、インクの吐出安定性と保存安定性の低下を抑制し、得られる画像の発色性を向上させることが提案されている(特許文献1参照)。また、顔料粒子の表面に親水性基を結合させた、自己分散型のモノアゾ顔料、水溶性有機化合物、及びモノアゾ顔料の凝集を抑制するための物質を含有するインクが提案されている(特許文献2参照)。このインクは、熱エネルギーを利用したインクジェット方式においても吐出安定性と保存安定性の低下が抑制され、得られる画像の発色性を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−225638号公報
【特許文献2】特開2006−199744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2に記載されたインクを、熱エネルギーの作用により記録ヘッドから吐出されるインクジェット記録方式に適用して長期間吐出すると、モノアゾ顔料に由来する析出物が原因となって、画像にかすれが生じる場合がある。この画像のかすれは、従来のインクジェット記録装置で要求されるレベルの耐久性試験を行った場合には生じない。しかし、近年要求されているインクジェット記録装置の高耐久性を満足させようとする場合に、吐出安定性の低下により画像のかすれが生ずることが判明した。上述の通り、近年では、インクジェット記録方法における、記録可能枚数のさらなる向上やランニングコスト低下に対する要求が高まっている。そのために記録ヘッドの高寿命化も図られてきており、インクに対しても今まで以上に高い吐出特性を満足することが要求されている。
【0007】
したがって、本発明の目的は、熱エネルギーの作用によりインクジェット方式の記録ヘッドからインクを吐出させた場合に、自己分散型のモノアゾ顔料を含有するインクにおいて生じる、以下の課題を解決することができるインクを提供することにある。すなわち、本発明の目的は、自己分散型のモノアゾ顔料に由来する析出物による吐出安定性の低下が抑制されるとともに、記録ヘッドのヒーター部分の接液面の劣化が抑制されるインクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、発色性の高い画像を安定して記録することが可能なインクカートリッジ及びインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、モノアゾ顔料、樹脂、下記式(1)で表される界面活性剤を含有する、熱エネルギーの作用により記録ヘッドから吐出されるインクジェット記録方式に用いられるインクであって、前記界面活性剤に占める、エチレンオキサイド基部分の分子量の割合が10%以上85%以下であり、前記モノアゾ顔料が、−COOM、−SO3M、−PO3HM、及び−PO32(式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである)からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基が、顔料粒子の表面に直接又は他の原子団を介して結合している自己分散顔料であり、前記樹脂の酸価が、240mgKOH/g以下であることを特徴とするインクである。
【0009】

(式(1)中、1.0≦n、1.0≦mである)
【発明の効果】
【0010】
本発明のインクによれば、自己分散型のモノアゾ顔料に由来する析出物による吐出安定性の低下を抑制することができるとともに、記録ヘッドのヒーター部分の接液面の劣化を抑制することができる。また、本発明のインクカートリッジ及びインクジェット記録方法によれば、発色性の高い画像を安定して記録することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。なお、本発明における表面張力などの各種の物性は、いずれも25℃における値である。
【0012】
普通紙などの記録媒体に高い発色性を有する画像を記録するためには、インクの色材として、特許文献1に記載されているような樹脂分散型ではなく、特許文献2に記載されているような自己分散型のモノアゾ顔料を用いることが有利である。そこで、本発明者らは、自己分散型のモノアゾ顔料を含有する従来のインクが、近年要求されるレベルの吐出特性を満たさない原因について考察した。熱エネルギーを利用するインクジェット記録方式において、インクを吐出するために記録ヘッドのヒーターに与えられるエネルギー量は、常に一定であるという訳ではなく、ある程度の幅がある。詳細には、インクの吐出に必要なエネルギー量よりも多くのエネルギーがインクに付与される場合や、それよりも少ない場合もある。モノアゾ顔料は熱的な安定性が低いので、多くの熱エネルギーがインクに付与されるような場合には、以下のような現象が生ずる。すなわち、過剰な熱エネルギーによって分解した顔料が再結晶することで、分散性の低い析出物が生成する。この析出物が記録ヘッドのインク流路の内部や吐出口付近に付着することで、インク滴が正常に吐出されなくなる。その結果、所望の位置へインクを付与することができず、画像にかすれが生ずると考えられる。
【0013】
特許文献1に記載されているような樹脂分散型のモノアゾ顔料を含有する従来のインクでは、特定の水溶性有機溶剤やノニオン性界面活性剤などの、分解した顔料の再結晶を阻害しうる物質を予め添加しておくことで析出物の発生に対応していた。しかし、このような物質をインクに添加するだけでは、析出物の発生を実質的に抑制できていなかった。また、吐出期間が比較的短く、多くの熱エネルギーが与えられる回数が少なかったため、析出物の発生頻度が少なく、吐出安定性の低下が生じないレベルであったと考えられる。
【0014】
これに対して、現在要求されるような長期間の吐出を想定した場合には、吐出回数の増加に伴い、ヒーターに過剰な熱エネルギーが付与される回数も飛躍的に増加する。その結果、特許文献1及び2に記載の方法では析出物の発生を抑制しきれず、吐出安定性の低下が生じることがわかった。
【0015】
さらに、特許文献2に記載のインクは、長期間の吐出によりヒーター部分の接液面が劣化し、これによる不吐出が生ずることがあった。特許文献2に記載のインクを長期間吐出した後のヒーター部分を観察したところ、ヒーター部分の接液面には析出物(コゲ)がほとんど確認されず、長期間の吐出を行ったことに起因するヒーター部分の接液面の劣化が確認された。特許文献2に記載のインクを使用した場合には、析出物がヒーター部分の接液面に堆積せず、長期間の吐出を繰り返すことでヒーター部分の接液面が劣化し、その結果、ヒーターに電圧を印加する配線が断線したと推察される。その結果、不吐出が生じ、画像へ影響が生ずると考えられる。
【0016】
上述したように、従来の技術では、近年求められるような長期間の吐出を行った際に、モノアゾ顔料の熱分解及び再結晶化により生成した析出物による吐出安定性の低下という問題を解消することはできない。同じく、従来の技術では、長期間の吐出によるヒーター部分の接液面の劣化を抑制することはできない。
【0017】
本発明者らの検討の結果、上記の2つの課題を共に解決するためには、自己分散型のモノアゾ顔料と共にインクに含有させる成分として、特定の酸価を有する樹脂と、特定の構造を有する界面活性剤とを選択することが重要であるという知見を得た。具体的には、本発明においては、酸価が240mgKOH/g以下である樹脂と、後述する式(1)で表される界面活性剤を用いる。以下、上記の2つの課題について、インクの構成成分とする、自己分散型のモノアゾ顔料、樹脂、及び界面活性剤とに関連付けて、それぞれにおいて生じている現象を説明する。なお、これらの成分のことを、「モノアゾ顔料」、「樹脂」、及び「界面活性剤」と省略して記載することがある。
【0018】
<析出物による吐出安定性の低下について>
本発明のインクが顔料の熱分解及び再結晶化による析出物の生成を抑制するメカニズムについて、本発明者らは以下のように推測している。
【0019】
(A)モノアゾ顔料と樹脂を含有するインクの場合
前述のように、長期間の吐出を行うとインクに過剰な熱エネルギーが付与される回数が増加する。例えば、モノアゾ顔料と樹脂を含有する(式(1)で表される界面活性剤を含有しない)インク(以下、「インクA」とも記す)に過剰の熱エネルギーが付与された場合、本発明者らは以下のような現象が生ずるものと推測している。
【0020】
顔料と樹脂は、顔料粒子の表面における疎水部と樹脂の疎水性ユニットとの疎水的な相互作用により吸着し、樹脂の親水性ユニットが水と親和性を保つことで、分散状態が安定に保たれている。しかし、インクに過剰な熱エネルギーが長期間に渡って付与されると、顔料から樹脂が脱離しやすくなる。顔料粒子の表面における樹脂が脱離した部分は、疎水部が露出していることになるため、顔料の分散安定性が低下する。また、顔料の樹脂が脱離した部分には、直接熱エネルギーが作用するようになる。このため、顔料の樹脂が脱離した部分は、樹脂が相互作用している部分に比して分解されやすくなる、といった現象を生じている。このような現象は、短期間の吐出でも発生していたと考えられるが、吐出安定性に影響を与えるレベルには至らなかった。しかし、近年求められるような長期間の吐出を行った場合には、生成した析出物の付着量が多くなり、記録される画像に影響を及ぼすレベルに到達する。
【0021】
(B)モノアゾ顔料と式(1)で表される界面活性剤を含有するインクの場合
モノアゾ顔料と式(1)で表される界面活性剤を含有する(樹脂を含有しない)インク(以下、「インクB」とも記す)に過剰の熱エネルギーが付与された場合、本発明者らは以下のような現象が生ずるものと推測している。
【0022】
顔料と式(1)で表される界面活性剤(以下、単に「界面活性剤」とも記す)が存在するインクにおいては、界面活性剤の疎水性基として作用するプロピレンオキサイド基が、顔料粒子の表面における疎水部と疎水的な相互作用をしている。そして、界面活性剤の親水性基として作用するエチレンオキサイド基が水と親和性を保つことで、顔料の分散状態が安定に保たれている。しかし、インクに過剰な熱エネルギーが付与された場合、界面活性剤の状態が変化し、水溶性が低下する。界面活性剤の水溶性が低下する原因としては、熱エネルギーが付与されたことで分子運動が活発になり、周囲に存在する水との水素結合が切れやすくなることが考えられる。界面活性剤の水溶性(親水性)が低下した結果、界面活性剤の分子同士が集合しやすい状態になる。このため、顔料の周辺における界面活性剤の存在量が減少してしまい、顔料の再結晶を阻害する能力が低下する。その結果、インクに付与された熱エネルギーによって顔料が分解しやすくなるとともに、その後の再結晶も阻害できなくなるために、析出物の発生を抑制できなくなる、といった現象が生じている。このような現象は、短期間の吐出でも発生していたと考えられるが、吐出安定性に影響を与えるレベルには至らなかった。しかし、近年求められるような長期間の吐出を行った場合には、生成した析出物の付着量が多くなり、記録される画像に影響を及ぼすレベルに到達する。
【0023】
(C)モノアゾ顔料、樹脂、及び界面活性剤を含有するインクの場合
インクA及びインクBを用いて長期間の吐出を行った場合には、生成した析出物がインクの吐出安定性に影響を与えるレベルに至っていた。しかし、モノアゾ顔料、樹脂、及び界面活性剤を含有するインク(以下、「インクC」とも記す)を用いて長期間の吐出を行った場合であっても、析出物が生成せず、インクの吐出安定性が低下しない。その理由を本発明者らは以下のように推測している。
【0024】
顔料、樹脂、及び界面活性剤が共存している場合、顔料と樹脂との相互作用、及び顔料と界面活性剤との相互作用だけではなく、樹脂と界面活性剤との相互作用も生じている。具体的には、長期間の吐出によって過剰な熱エネルギーがインクに付与されるが、以下に示すようなメカニズムにより析出物の発生が抑制されると考えられる。インクに付与された熱エネルギーにより、樹脂は顔料から脱離しようとする。しかし、樹脂は界面活性剤とも相互作用しているため、顔料から脱離しにくくなっている。また、界面活性剤は、付与された熱エネルギーにより疎水性が高まり、界面活性剤の分子同士が集合しやすくなる。しかし、界面活性剤の分子間に存在している樹脂が、界面活性剤の分子同士の集合を阻害している。さらに、界面活性剤は、その疎水性が高まった状態となっているため、顔料粒子の表面における疎水部への吸着がより強固に行われる。なお、分子の集合により界面活性剤の親水性は低くなっているが、樹脂が界面活性剤の周囲に存在しているので、界面活性剤と樹脂との相互作用により水溶性は維持される。以上の結果、顔料の分散安定性はほとんど低下せず、かつ、熱エネルギーが顔料粒子の表面に直接付与されて、顔料が分解に至る確率は飛躍的に減少する。また、たとえ顔料の一部が分解及び再結晶して疎水性の析出物を生成した場合であっても、生成した析出物の近傍には樹脂や界面活性剤が存在している。このため、生成した析出物と、樹脂や界面活性剤とは、すぐに相互作用を示すこととなる。その結果、樹脂や界面活性剤の作用によって析出物に親水性が付与されるので、析出物の付着が抑制されるものと推測される。
【0025】
上述のように、本発明の構成(インクC)とすることで、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット方式において、モノアゾ顔料由来の析出物に起因して生ずる吐出安定性の低下といった問題を本質的に解決することができる。すなわち、本発明によれば、モノアゾ顔料を含むインク中において、樹脂と界面活性剤との相互作用を積極的に利用し、長期間の吐出によりインクに過剰な熱エネルギーが付与された場合であっても、析出物の発生を抑制することができる。
【0026】
<記録ヘッドのヒーター部分の接液面の劣化について>
(A)モノアゾ顔料と樹脂を含有するインクの場合
モノアゾ顔料と樹脂を含有するインク(式(1)で表される界面活性剤を含有しない)インクAを用いて長期間の吐出を行った場合であっても、ヒーターが劣化したり、ヒーターに電圧を印加する配線が断線したりすることはない。しかし、吐出速度が低下する場合がある。そのメカニズムについて、本発明者らは以下のように推測している。
【0027】
インクに熱エネルギーが付与されて吐出される場合、インクに含まれる顔料の一部が分解し、親水性を失う。親水性を失った顔料は、疎水的な相互作用によって記録ヘッドのヒーター部分の接液面に付着し、堆積しやすくなる。顔料と同じく、インクに含まれる樹脂の一部も分解して親水性を失う。そして、親水性を失った樹脂は、ヒーター部分の接液面などに付着して堆積しやすくなる。つまり、親水性を失った顔料(又は一部の分解物)と樹脂は、いずれもヒーター部分の接液面に堆積しようとする。ただし、本発明者らの検討によると、まず顔料などがヒーター部分の接液面に堆積することが確認できた。そして、先に堆積した顔料などの上に、樹脂がさらに堆積する。
【0028】
ヒーター部分の接液面に堆積した顔料などは、その疎水性の強さから、次の吐出が行われた場合であってもヒーター部分の接液面に強固に付着している。ヒーター部分の接液面に顔料などが層状のコゲとして存在することで、吐出を繰り返したことによるヒーターの劣化を抑制している。つまり、ヒーター部分の接液面上に形成された、顔料(及び樹脂)に由来する層状のコゲが、ヒーターを保護している。しかし、ヒーター部分の接液面に堆積した層状のコゲは、親水性を失った顔料である。このため、次の吐出が行われた場合であっても、このコゲが剥がれることはない。したがって、長期間の吐出を行った場合には、層状のコゲが増加する場合もある。層状のコゲが増加すると、ヒーターから発生した熱エネルギーが増加した層状のコゲによって遮断されてしまい、インクに付与されなくなる。その結果、インクAを長期間吐出した場合には、吐出速度が低下する場合がある。
【0029】
(B)モノアゾ顔料と界面活性剤を含有するインクの場合
モノアゾ顔料と式(1)で表される界面活性剤を含有する(樹脂を含有しない)インクBを用いて長期間の吐出を行うと、ヒーター部分の接液面が劣化し、ヒーターに電圧を印加する配線の断線が生じる場合があることがわかった。そのメカニズムについて、本発明者らは以下のように推測している。
【0030】
インクに熱エネルギーが付与されて吐出される場合、インクに含まれる顔料の一部が分解し、親水性を失う。親水性を失った顔料は、疎水的な相互作用によってヒーター部分の接液面に近づこうとする。ただし、インクBの場合、熱エネルギーが付与された界面活性剤もその親水性が低下し、ヒーター部分の接液面に近づこうとする。インクに熱エネルギーが付与された際、親水性を失った界面活性剤の方がインク中で移動しやすく、親水性を失った顔料よりも先に、ヒーター部分の接液面に付着する。そして、先に付着した界面活性剤の上に、顔料がさらに付着する。
【0031】
しかし、付着した界面活性剤と、ヒーター部分の接液面との相互作用はそれほど強固ではない。このため、付着した界面活性剤は、次回の吐出により容易に剥がれることがわかった。すなわち、界面活性剤と顔料は、ヒーター部分の接液面に付着するが、次回の吐出によりインク流路から排出される。このため、見かけ上は、ヒーター部分の接液面には堆積物がほとんど存在しない。さらに、本発明者らの検討によると、このような状況下で長期間の吐出を行った場合には、ヒーター部分の接液面の劣化を抑制しうる層が存在しないので、ヒーター部分の接液面が劣化することが判明した。そして、ヒーター部分の接液面が劣化した結果、ヒーターに電圧を印加する配線の断線が生じる場合があることがわかった。
【0032】
(C)モノアゾ顔料、樹脂、及び界面活性剤を含有するインクの場合
モノアゾ顔料、樹脂、及び界面活性剤を含有するインクCを用いて長期間の吐出を行った場合であっても、ヒーターに電圧を印加する配線は断線せず、吐出速度の低下も生じない。そのメカニズムについて、本発明者らは以下のように推測している。
【0033】
インクCに熱エネルギーが付与されると、顔料、樹脂、及び界面活性剤の親水性がそれぞれ失われる。その結果、インクA及びインクBの場合と同様に、親水性を失った成分はいずれもヒーター部分の接液面に付着しやすくなる。先ず、界面活性剤がヒーター部分の接液面に近づこうとする。ただし、界面活性剤と樹脂との相互作用、及び界面活性剤と顔料との相互作用も存在しているため、界面活性剤、顔料、及び樹脂が混在したような層が、ヒーター部分の接液面に形成される。その後、次回の吐出が行われる際には、この各成分が混在した層中に界面活性剤が存在しているので、容易に接液面から剥がれ、インク流路より排出される。また、親水性を失った顔料が堆積している部分では、次回の吐出が行われてもヒーター部分の接液面に堆積物が留まるので、ヒーターを保護する作用も同時に生ずる。すなわち、顔料、樹脂、及び界面活性剤を含有する本発明のインク(インクC)によると、長期間の吐出を行った場合であっても顔料の層が堆積し過ぎることはない。さらには、ヒーター部分の接液面の劣化も抑制されるといった、従来では予想できなかった効果を得ることができる。
【0034】
<インク>
以下、本発明のインクを構成する成分について説明する。
【0035】
(モノアゾ顔料)
本発明のインクを構成する色材は、モノアゾ顔料であり、自己分散型であることを要する。モノアゾ顔料の種類は特に限定されず、公知のものをいずれも用いることができる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー:1、2、3、5、6、49、61、62:1、65、73、74、75、97、98、111、116、130、133、168、169、C.I.ピグメントオレンジ1、C.I.ピグメントレッド269などが挙げられる。本発明においては、より高い画像の発色性が得られるため、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー74、及びC.I.ピグメントレッド269からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。また、これらの顔料の中でも、C.I.ピグメントイエロー74を用いることが特に好ましい。インク中のモノアゾ顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、2.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上6.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
自己分散型のモノアゾ顔料は、モノアゾ顔料の粒子表面に直接又は他の原子団を介して親水性基が結合しているものである。この親水性基は、−COOM、−SO3M、−PO3HM、及び−PO32からなる群より選ばれる少なくとも1種である。式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。他の原子団(−R−)としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基、フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基、アミド基、スルホニル基、アミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基などを挙げることができる。前記式中、Mで表されるアルカリ金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどを挙げることができる。また、前記式中、Mで表される有機アンモニウムの具体例としては、メチルアミン、エチルアミンなどの炭素数1以上3以下のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの炭素数1以上4以下のアルカノールアミン類などのイオンが挙げられる。親水性基が塩を形成している場合、インク中の塩は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。本発明においては、親水性基が−SO3Mであるモノアゾ顔料や、他の原子団がアリーレン基であるモノアゾ顔料が好ましい。また、インクの保存安定性に優れるため、粒子表面に−C64−SO3Mが結合したモノアゾ顔料を用いることが特に好ましい。
【0037】
本発明において用いるモノアゾ顔料は、アルキレン基、アリーレン基、アミド基、スルホニル基、アミノ基、カルボニル基、エステル基、及びエーテル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子団を介して、−COOM、−SO3M、−PO3HM、及び−PO32からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基が、顔料粒子の表面に結合している自己分散顔料であることが好ましい。又は、モノアゾ顔料は、表面酸化処理が施されたもの、すなわち、顔料粒子の表面に親水性基が直接結合している自己分散顔料であってもよい。このようなモノアゾ顔料としては、次亜塩素酸ソーダによる酸化処理、水中オゾン処理、オゾン処理を施した後に酸化剤により湿式酸化し、粒子表面を改質するなどの方法によって得られるものなどを挙げることができる。なお、本発明の効果が得られる範囲で、他の分散方式の顔料(例えば、樹脂分散顔料、マイクロカプセル顔料、樹脂結合型顔料など)をさらに併用してもよい。
【0038】
本発明のインクには、その酸価が特定の数値範囲内にある樹脂を含有させる。ただし、この樹脂は、自己分散型のモノアゾ顔料の分散を補助する作用が付与されることを期待して含有させた成分である。このため、この樹脂は、その作用のみによって顔料を分散させることを期待して含有させる成分ではない。すなわち、本発明にいう「自己分散」とは、樹脂などの高分子化合物や、界面活性能を有する化合物などが顔料粒子の表面に吸着し、基本的に、これらのもつ分散作用のみによって顔料を分散させるものではないことを意味する。本発明における「自己分散顔料」は、顔料粒子の表面に所定の親水性基が直接又は他の原子団を介して化学的に結合しており、結合した親水性基の作用によって顔料粒子の分散が可能となっているものである。つまり、本発明における「自己分散顔料」は、顔料粒子の表面に樹脂(分散剤)を吸着又は結合させることで、はじめて顔料の分散を達成している、いわゆる樹脂分散顔料とは異なる。すなわち、本発明で用いる自己分散型のモノアゾ顔料は、上記特定の樹脂を用いなくとも分散させることができるものである。
【0039】
(樹脂)
本発明のインクには、酸価が240mgKOH/g以下である樹脂を含有させることを要する。前述の通り、この樹脂は、自己分散型のモノアゾ顔料の分散を補助する作用が付与されることを期待して含有させた成分であり、水溶性であることが好ましい。なお、本発明において「樹脂が水溶性である」とは、樹脂を酸価と当量のアルカリで中和した場合に、粒子径を測定しうる粒子を形成しないことを意味する。このような樹脂を、本発明においては「水溶性樹脂」と記載する。この樹脂のインク中の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上3.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0040】
樹脂の酸価は、樹脂の親水性/疎水性に関連する。樹脂は、酸価が低くなると疎水性が高くなり、顔料粒子の表面に吸着しやすくなる傾向にある。樹脂の酸価をある程度以下に低くすれば、インクに熱エネルギーが付与されても、顔料の分散状態を安定に保つことができるため、インクの吐出安定性が向上する。このため、本発明においては、樹脂の酸価を240mgKOH/g以下にする必要がある。樹脂の酸価が240mgKOH/g超であると、樹脂の親水性が高すぎるために、顔料粒子の表面に樹脂がほとんど吸着せず、インクに熱エネルギーが付与された際に顔料の分散状態を安定に保つことができず、インクの吐出安定性が向上しない。本発明においては、樹脂の疎水性をより高め、顔料粒子の表面により吸着させやすくし、インクの吐出安定性を高いレベルとするために、樹脂の酸価が170mgKOH/g以下であることがより好ましい。なお、樹脂の酸価があまりに低すぎると、樹脂同士が相互作用により凝集しやすくなり、インクを構成する水性媒体中に安定に存在させるのが難しくなる場合がある。このため、樹脂の酸価の下限は100mgKOH/g以上とすることが好ましく、150mgKOH/g以上とすることがさらに好ましい。
【0041】
本発明においては、インク中の、樹脂の含有量(質量%)が、モノアゾ顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.25倍以上1.0倍以下であることが好ましい。すなわち、「樹脂の含有量(質量%)」/「モノアゾ顔料の含有量(質量%)」=0.25倍以上1.0倍以下であることが好ましい。なお、この場合の樹脂及びモノアゾ顔料の含有量は、インク全質量を基準とした値である。一定量の顔料を含有するインクに添加する樹脂量を増やしていくと、顔料に吸着する樹脂が多くなることになるため、インクに熱エネルギーが付与されても、顔料の分散状態をより安定に保つことができる。このため、高いレベルのインクの吐出安定性が得られる傾向がある。前記質量比率が0.25倍未満であると、樹脂が顔料に対して少なすぎるため、インクに熱エネルギーが付与された際に顔料の分散状態を安定に保つことがやや難しい場合があり、高いレベルのインクの吐出安定性が十分に得られない場合がある。一方、前記質量比率が1.0倍超であると、樹脂が顔料に対して多すぎるため、顔料に吸着しきれない樹脂が、式(1)で表される界面活性剤との相互作用を生じるようになる。すると、インクに熱エネルギーが付与された際に顔料の分散状態を安定に保つために使われるはずの式(1)で表される界面活性剤が不足する場合があり、高いレベルのインクの吐出安定性が十分に得られない場合がある。
【0042】
本発明において用いられる樹脂としては、以下に挙げるような親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして少なくとも有する水溶性樹脂が好ましい。なお、以下の記載における(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルを意味する。
【0043】
親水性ユニットは、例えば、親水性基を有する単量体を重合して形成することができる。親水性基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシ基を有する酸性単量体、これらの酸性単量体の無水物や塩などのアニオン性単量体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシ基を有する単量体;メトキシ(モノ、ジ、トリ、ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートなどのエチレンオキサイド基を有する単量体などを挙げることができる。
【0044】
酸性単量体の塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンが挙げられる。本発明で用いる樹脂は酸価を有するため、親水性ユニットには、先に挙げたようなアニオン性単量体に由来するユニットが含まれる。なお、樹脂は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)の水酸化物やアンモニア水などの中和剤により中和されることで水溶性となるものが好ましい。
【0045】
また、疎水性ユニットは、例えば、疎水性基を有する単量体を重合して形成することができる。疎水性基を有する単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する単量体;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、iso−、t−)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの脂肪族基を有する単量体などを挙げることができる。
【0046】
本発明においては、親水性ユニットとして、(メタ)アクリル酸に由来するユニットを少なくとも有し、疎水性ユニットとして、芳香環を有する単量体に由来するユニットを少なくとも有する水溶性樹脂を用いることが好ましい。さらには、親水性ユニットとして、アクリル酸に由来するユニットを少なくとも有し、疎水性ユニットとして、スチレン及びα−メチルスチレンの少なくとも一方の単量体に由来するユニットを少なくとも有する水溶性樹脂を用いることが好ましい。このような水溶性樹脂は、界面活性剤や顔料との相互作用が特に生じやすいため、好適である。
【0047】
樹脂の形態は限定されず、ランダム、ブロック、グラフトなどの形態の共重合体を用いることができる。また、樹脂の重量平均分子量は、1,000以上30,000以下であることが好ましく、3,000以上15,000以下であることがさらに好ましい。
【0048】
(界面活性剤)
本発明のインクには、下記式(1)で表される界面活性剤を含有させる。この界面活性剤は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(プルロニック型界面活性剤)であり、エチレンオキサイド基とプロピレンオキサイド基の付加形態にはランダム型とブロック型がある。すなわち、形式上、下記式(1)の構造式として示しているが、エチレンオキサイド基(−CH2−CH2−O−)とプロピレンオキサイド基(−CH2−CH(CH3)−O−)の配列はどのような順序であってもよい。
【0049】

(式(1)中、1.0≦n、1.0≦mである)
【0050】
式(1)におけるnはエチレンオキサイド基の付加モル数を表し、mはプロピレンオキサイド基の付加モル数を表す。通常、式(1)で表される界面活性剤は、分子量分布にある程度の幅を持つ混合物であるため、その分子量や各基の付加モル数は平均値として示される。ただし、本明細書においては、混合物である場合を含めて、「式(1)で表される界面活性剤」を含むと表現する。インク中の式(1)で表される界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0051】
式(1)で表される界面活性剤における、エチレンオキサイド基とプロピレンオキサイド基の付加形態は、ブロック型及びランダム型のいずれであってもよいが、ブロック型がより好ましい。なかでも、プロピレンオキサイド基のブロックの両端にエチレンオキサイド基のブロックが結合した形態が特に好ましい。また、式(1)で表される界面活性剤は水溶性であることが好ましい。式(1)で表される界面活性剤の重量平均分子量は、800以上22,000以下であることが好ましく、800以上10,000以下であることがさらに好ましい。なお、本発明において、式(1)で表される界面活性剤の重量平均分子量は、例えば、テトラヒドロフランを移動相としたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0052】
界面活性剤に占める、エチレンオキサイド基部分の分子量の割合が10%以上85%以下であることを要する。なお、前記割合は、式(1)におけるn及びmの値から算出することができる。そして、前記割合が10%未満であると、界面活性剤の疎水性が高すぎる。このため、顔料と界面活性剤が疎水性相互作用を起こしやすくなるものの、親水性基であるエチレンオキサイド基が少ないので、モノアゾ顔料の析出物を安定化する作用が発現しない。一方、前記割合が85%超であると、界面活性剤の親水性がかなり高くなるため、顔料と界面活性剤が相互作用を起こすことができない。したがって、前記割合が10%未満、又は85%超であると、モノアゾ顔料の析出物による吐出安定性の低下を抑制するという本発明の効果を得ることができない。さらに、モノアゾ顔料の析出物をより安定化させ、インクの吐出安定性を高いレベルで得るためには、式(1)で表される界面活性剤に占める、エチレンオキサイド基部分の分子量の割合をある程度高くすることが有効である。このため、本発明においては、前記割合が41%以上85%以下であることが好ましく、57%以上85%以下であることがさらに好ましい。本発明においては、nが7.9以上450.0以下、すなわち、7.9≦n≦450.0であることが好ましく、nが7.9以上200.0以下、すなわち、7.9≦n≦200.0であることがさらに好ましい。
【0053】
式(1)で表される界面活性剤を含有するインクから、前記界面活性剤に占める、エチレンオキサイド基部分の分子量の割合は以下のようにして求めることができる。先ず、インクを有機溶剤(溶離液)に溶解させ、測定サンプルを調製する。この測定サンプルについて、示差屈折率検出器を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、インクの構成成分を分離する。この際、溶離液として使用する有機溶剤の種類や、分離に使用するカラムの種類、本数を適宜変更することで、重量平均分子量や組成がそれぞれ異なる界面活性剤を分離することができる。そして、示差屈折率検出器を通った溶離液を分取し、成分を乾固させることによって、界面活性剤を単離する。得られた界面活性剤についてNMRにより、エチレンオキサイド基の付加モル数(nの値)及びプロピレンオキサイド基の付加モル数(mの値)を知ることができる。このようにして求めたn及びmの値から、界面活性剤に占める、エチレンオキサイド基部分の分子量の割合を算出することができる。
【0054】
本発明においては、インク中の式(1)で表される界面活性剤の含有量(質量%)が、モノアゾ顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.05倍以上0.5倍以下であることが好ましい。すなわち、「式(1)で表される界面活性剤の含有量(質量%)」/「モノアゾ顔料の含有量(質量%)」=0.05倍以上0.5倍以下であることが好ましい。なお、この場合の式(1)で表される界面活性剤及びモノアゾ顔料の含有量は、インク全質量を基準とした値である。一定量の顔料を含有するインクに添加する前記界面活性剤の量を増やしていくと、モノアゾ顔料と前記界面活性剤の相互作用がより起こりやすくなる。このため、モノアゾ顔料の析出物を安定化する作用が高まる。前記質量比率が0.05倍未満であると、前記界面活性剤がモノアゾ顔料に対して少なすぎるために、高いレベルのインクの吐出安定性が十分に得られない場合がある。ただし、前記質量比率が高すぎると、前記界面活性剤がモノアゾ顔料に対して多すぎるために、前記界面活性剤同士が相互作用しやすくなり、モノアゾ顔料と前記界面活性剤の相互作用によってモノアゾ顔料の析出物を安定化する作用が十分に発現しない場合がある。すると、高いレベルのインクの吐出安定性が十分に得られない場合がある。したがって、前記質量比率は0.5倍以下であることが好ましい。
【0055】
上述の通り、式(1)で表される界面活性剤におけるmは、プロピレンオキサイド基の付加モル数を表す。本発明においては、mが10.0以上60.0以下、すなわち、10.0≦m≦60.0であることが好ましい。mの値が大きいほど、前記界面活性剤における疎水性基であるプロピレンオキサイド基の数が多くなる。このため、モノアゾ顔料と前記界面活性剤の相互作用がより起こりやすくなり、モノアゾ顔料の析出物を安定化する作用が高まる。mの値が10.0未満であると、モノアゾ顔料と前記界面活性剤の相互作用が起こりにくいために、高いレベルのインクの吐出安定性が十分に得られない場合がある。ただし、mの値が大き過ぎると、前記界面活性剤における疎水性基であるプロピレンオキサイド基の数が多くなるため、前記界面活性剤はモノアゾ顔料と相互作用するよりも、前記界面活性剤同士が相互作用しやすくなる。このため、モノアゾ顔料と前記界面活性剤の相互作用によってモノアゾ顔料の析出物を安定化する作用が十分に発現しない場合がある。すると、高いレベルのインクの吐出安定性が十分に得られない場合がある。したがって、mの値は60.0以下であることが好ましい。
【0056】
(水性媒体)
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒を水性媒体として含有させることが好ましい。本発明においては、水性媒体として少なくとも水を含有する、水性のインクとすることが好ましい。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤としては、従来、例えば、インクジェット用のインクに一般的に使用される公知のものをいずれも用いることができ、1種又は2種以上の水溶性有機溶剤を用いることができる。具体的には、1価又は多価のアルコール類、アルキレン基の炭素数が1〜4程度のアルキレングリコール類、数平均分子量200〜2,000程度のポリエチレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類などが挙げられる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
【0057】
(その他の成分)
本発明のインクには、上記成分以外にも必要に応じて、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンや、尿素、エチレン尿素などの含窒素化合物など、常温(25℃)で固体の有機化合物を含有させてもよい。また、上記の成分の他に、さらに必要に応じて、その他の界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤などの種々の添加剤をインクに含有させてもよい。特に、本発明のインクには、インクジェット吐出に適用可能な表面張力を有するインクとするために、1,2−アルカンジオールやグリコールエーテル類などの水溶性有機溶剤やノニオン性界面活性剤によってインクの表面張力をコントロールすることが好ましい。インク中の1,2−アルカンジオールやグリコールエーテルなどの水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.0質量%以上1.0質量%以下とすることが好ましい。ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、アセチレンアルコール類、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。インク中のノニオン性界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.01質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。
【0058】
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、インク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。インクカートリッジの構造としては、インク収容部が、液体のインクを収容するインク収容室、及び負圧によりその内部にインクを保持する負圧発生部材を収容する負圧発生部材収容室で構成されるものが挙げられる。または、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容量の全量を負圧発生部材により保持する構成のインク収容部であるインクカートリッジであってもよい。さらには、インク収容部と後述するような記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
【0059】
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドにより上記で説明した本発明のインクを吐出して、記録媒体に画像を記録する方法である。本発明においては、インクを吐出する方式として、インクに熱エネルギーを付与する方式を利用するインクジェット記録方法を採用する。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
【0060】
本発明において利用する記録ヘッドは、熱エネルギーの作用によりインクを吐出する方式のものであり、その構成は公知のものとすることができる。具体的な記録ヘッドの構成としては、インクを吐出させるための熱をインクに付与するヒーター部が、発熱抵抗体、発熱抵抗体に電圧を印加する配線などで構成されたものが挙げられる。さらに、必要に応じて、ヒーター部分の接液面に、Ta、Zr、Ti、Ni、Al、又はWなどの金属やその酸化物を含む保護層が設けられたものであってもよい。
【実施例】
【0061】
次に、実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、文中、成分量に関して「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。また、各種の物性は、25℃において測定した値である。
【0062】
<水溶性樹脂の準備>
表1の上段に示す各単量体(単位:部)を常法により共重合させ、水溶性の樹脂A〜Fを合成した。得られたそれぞれの樹脂を用い、以下に示すようにして樹脂水溶液を調製した。具体的には、10.0%の水酸化ナトリウム水溶液を用い、樹脂中の全ての酸性基を中和した後、イオン交換水を加えて、樹脂(固形分)の含有量が10.0%である樹脂水溶液A〜Fを得た。表1の下段に樹脂の特性を示す。
【0063】

【0064】
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液A)
水5.5gに濃塩酸5gを溶かして得た塩酸を5℃に冷却し、4−アミノベンゼンスルホン酸2.0gを加えて溶液を得た。得られた溶液の入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌し、液温を常に10℃以下に保った状態とした。これに、5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム2.4gを溶かした亜硝酸ナトリウム水溶液を加えた。さらに15分間撹拌後、比表面積が65.5m2/gのC.I.ピグメントイエロー74(モノアゾ顔料)6gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥した。これにより、顔料粒子の表面に−C64−SO3Na基が結合している自己分散型のモノアゾ顔料Aを調製した。調製したモノアゾ顔料Aに水を加えて、顔料の含有量が20.0%となるように分散させて顔料分散液Aを調製した。
【0065】
(顔料分散液B)
4−アミノベンゼンスルホン酸をp−アミノ安息香酸に変更した以外は、前述の顔料分散液Aの場合と同様の手順により、顔料粒子の表面に−C64−COONa基が結合している自己分散型のモノアゾ顔料Bを調製した。調製したモノアゾ顔料Bに水を加えて、顔料の含有量が20.0%となるように分散させて顔料分散液Bを調製した。
【0066】
(顔料分散液C)
4−アミノベンゼンスルホン酸を4−アミノフェニルホスホン酸に変更した以外は、前述の顔料分散液Aの場合と同様の手順により、顔料粒子の表面に−C64−PO3Na2基が結合している自己分散型のモノアゾ顔料Cを調製した。調製したモノアゾ顔料Cに水を加えて、顔料の含有量が20.0%となるように分散させて顔料分散液Cを調製した。
【0067】
(顔料分散液D)
C.I.ピグメントイエロー74(モノアゾ顔料)500g、アミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン(APSES)45g、及び蒸留水900gを反応器に仕込んだ。そして、内容物を55℃、回転数300rpmで20分間撹拌して混合物を得た。得られた混合物に、25%の亜硝酸ナトリウム水溶液40gを15分間かけて添加し、さらに蒸留水50gを添加した後、60℃で2時間反応させ、反応物を得た。得られた反応物を蒸留水で希釈しながら取り出し、固形分の含有量が15.0%となるように調整した。その後、遠心分離により不純物を除去して分散液1を得た。得られた分散液1中には、粒子表面にAPSESが結合した顔料が含まれていた。
【0068】
次いで、得られた分散液1中の顔料に結合した基(APSES)のモル数を求めるために、以下の操作を行った。ナトリウムイオン電極(商品名「1512A−10C」、堀場製作所製)を使用し、分散液1中のナトリウムイオン濃度を測定し、顔料の固形分あたりのモル数に換算した。次に、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)溶液に、固形分の含有量が15.0%である分散液1を強力に撹拌しながら1時間かけて滴下して混合物を得た。なお、PEHA溶液中のPEHA濃度は、上記で測定したナトリウムイオンのモル数の2〜3倍量とし、PEHA溶液の量は分散液1と同量とした。得られた混合物を48時間撹拌した後、不純物を除去して分散液2を得た。得られた分散液2中には、粒子表面にAPSESを介してPEHAが結合した顔料が含まれており、固形分の含有量は10.0%であった。
【0069】
水溶性樹脂であるスチレン−アクリル酸共重合体(重量平均分子量15,000、酸価140mgKOH/g、多分散度1.5)を溶解させた水溶液に、上記で得られた固形分の含有量が10.0%である500gの分散液2を撹拌しながら滴下して混合物を得た。なお、この際に用いた水溶液は、スチレン−アクリル酸共重合体190gに蒸留水1,800gを加え、樹脂を中和するのに必要な水酸化ナトリウムをさらに加え、撹拌して溶解させたものである。なお、多分散度(Mw/Mn)とは、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比である。得られた混合物をパイレックス(登録商標)製の蒸発皿に移して150℃で15時間加熱して揮発分を蒸発させ蒸発乾燥物を得た後、得られた蒸発乾燥物を室温に冷却した。水酸化ナトリウムでpHを9.0に調整した蒸留水中に、得られた蒸発乾燥物を添加し、分散機を用いて分散させた。さらに撹拌下で1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、液体のpHを10〜11に調整した。その後、脱塩、不純物と粗大粒子の除去、顔料に結合していない樹脂の除去を行って顔料分散液Dを得た。得られた顔料分散液D中には、粒子表面に樹脂が結合した顔料が含まれており、固形分の含有量が20.0%、pHが10.1、顔料の平均粒子径が130nmであった。得られた顔料分散液D中の顔料は、粒子表面に樹脂が結合しているため、本発明で用いる「自己分散型のモノアゾ顔料」とは異なる。
【0070】
<界面活性剤の合成>
常法にしたがって、式(1)で表される界面活性剤である、表2に示す化合物1〜25を合成した。具体的には、ポリプロピレングリコールに、エチレンオキサイド基となる成分を付加させ、プロピレンオキサイド基のブロックの両端にエチレンオキサイド基のブロックが結合している形態の化合物を合成した。したがって、nの値(エチレンオキサイド基の付加モル数)は、2つのエチレンオキサイド基のブロックの合計の値を示す。合成した化合物についてNMR分析を行って得られたn及びmの値から、界面活性剤に占める、エチレンオキサイド基の割合(EO基の割合[%])を算出した。
【0071】

【0072】
<インクの調製(実施例1〜49、比較例1〜6、参考例1)>
表3−1〜3−5の上段に示す各成分(単位:%)を混合して十分に撹拌した後、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、実施例、比較例、及び参考例の各インクを調製した。なお、表3−1〜3−5中における「アセチレノールE100」は川研ファインケミカル製の界面活性剤である。また、表3−1〜3−5の下段に、顔料の含有量A[%]、樹脂の含有量B[%]、式(1)で表される界面活性剤の含有量C[%]、樹脂の含有量B/顔料の含有量Aの値[倍]、式(1)で表される界面活性剤の含有量C/顔料の含有量Aの値[倍]を示した。
【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】

【0078】
<評価>
上記で得られた各インクを、それぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用によりインクを吐出させる記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置(商品名「PIXUS Pro9500」キヤノン製)に搭載した。この記録ヘッドの解像度は600dpi×600dpiであり、ヒーター部分には、発熱抵抗体の保護層として、タンタル及び酸化タンタルで構成される層が形成されており、この保護層の表面がインクと接触する接液面となっている。そして、このインクジェット記録装置を用いて、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴あたり3.5pLのインク滴を6滴付与する条件で、各評価に用いるベタ画像を記録した。この際のプリンタドライバの設定は、用紙の種類:普通紙、印刷品質:標準、色調整:自動とした。また、記録媒体として普通紙(商品名「PB PAPER GF−500」、キヤノン製)を用いた。
【0079】
(吐出安定性の評価)
上記の条件で、A4サイズの記録媒体1,000枚に19cm×26cmのベタ画像を記録した。その後、インクジェット記録装置から記録ヘッドを取り外し、インク流路の内部を光学顕微鏡で観察した。この時点で堆積物が生じていない場合は、上記と同様の条件でベタ画像をさらに500枚分記録し、インク流路の内部を光学顕微鏡で観察した。この流れを、最大で記録媒体4,000枚分のベタ画像の記録を行うまで繰り返した。なお、堆積物がインク流路の内部の全体にわたって生じていることが確認された場合、その時点で評価を中止した。吐出安定性の評価結果を表4−1及び4−2に示す。また、吐出安定性の評価基準を以下に示す。なお、本発明においては、以下に示す評価基準で「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。
A:所定枚数の記録を行った時点で、堆積物がほとんど生じていなかった。
B:所定枚数の記録を行った時点で、堆積物がわずかに生じていた。
C:所定枚数の記録を行った時点で、堆積物がインク流路の内部の全体にわたって生じていた。
【0080】
(ヒーター耐久性の評価)
上記の吐出安定性の評価と同様の条件で、A4サイズの記録媒体4,000枚にベタ画像を記録した。そして、4,000枚目の記録媒体に記録したベタ画像を目視観察してヒーター耐久性を評価した。ヒーター耐久性の評価結果を表4−1及び4−2に示す。また、ヒーター耐久性の評価基準を以下に示す。なお、本発明においては、以下に示す評価基準で「A」を許容できるレベル、「B」を許容できないレベルとした。
A:ベタ画像にかすれが生じていなかった。
B:ベタ画像にかすれや断線による不吐出が生じていた。
【0081】

【0082】

【0083】
参考例1のインクは、粒子表面に樹脂が結合しているモノアゾ顔料を含有するインクである。このモノアゾ顔料は、顔料粒子の表面近傍に樹脂が存在するものであるため、モノアゾ顔料と界面活性剤との相互作用が発現しにくく、モノアゾ顔料の析出物を安定化する作用が生じない。このため、1,000枚の記録媒体にベタ画像を記録した時点で析出物がインク流路の内部の全体にわたって生じていた。
【0084】
また、実施例2、48、及び49は、モノアゾ顔料の親水性基の種類のみが異なるインクである。これらの実施例は、吐出安定性及びヒーター耐久性は同ランクの性能を有していたが、インクの長期保存安定性を確認したところ、実施例48及び49よりも、実施例2のインクのほうが相対的に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノアゾ顔料、樹脂、及び下記式(1)で表される界面活性剤を含有する、熱エネルギーの作用により記録ヘッドから吐出されるインクジェット記録方式に用いられるインクであって、
前記界面活性剤に占める、エチレンオキサイド基部分の分子量の割合が10%以上85%以下であり、
前記モノアゾ顔料が、−COOM、−SO3M、−PO3HM、及び−PO32(式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである)からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基が、顔料粒子の表面に直接又は他の原子団を介して結合している自己分散顔料であり、
前記樹脂の酸価が、240mgKOH/g以下であることを特徴とするインク。

(式(1)中、1.0≦n、1.0≦mである)
【請求項2】
前記モノアゾ顔料が、アルキレン基、アリーレン基、アミド基、スルホニル基、アミノ基、カルボニル基、エステル基、及びエーテル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子団を介して、−COOM、−SO3M、−PO3HM、及び−PO32(式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである)からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基が、顔料粒子の表面に結合している自己分散顔料である請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記インク中の、前記樹脂の含有量(質量%)が、前記モノアゾ顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.25倍以上1.0倍以下である請求項1又は2に記載のインク。
【請求項4】
前記樹脂の酸価が、170mgKOH/g以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク。
【請求項5】
前記式(1)中のmが、10.0≦m≦60.0である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインク。
【請求項6】
前記インク中の、前記界面活性剤の含有量(質量%)が、前記モノアゾ顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.05倍以上0.5倍以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインク。
【請求項7】
前記界面活性剤に占める、エチレンオキサイド基部分の分子量の割合が41%以上85%以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインク。
【請求項8】
前記界面活性剤に占める、エチレンオキサイド基部分の分子量の割合が57%以上85%以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインク。
【請求項9】
前記モノアゾ顔料が、C.I.ピグメントイエロー74である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインク。
【請求項10】
インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
前記インクが、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項11】
熱エネルギーの作用によりインクジェット方式の記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2013−47322(P2013−47322A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133190(P2012−133190)
【出願日】平成24年6月12日(2012.6.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】