インクカートリッジ及びインクジェット記録装置
【課題】装置のスペース効率向上に寄与するインクカートリッジを提供し、装置内におけるインクカートリッジの配置の自由度を高める。また、インクを無駄なく使用できるインクカートリッジ及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】本発明のインクカートリッジは、扁平な箱体形状を有するカートリッジ容器12の内部に、インク液を収納する可塑性材料もしくは弾性体からなるインク袋14が収納された構造を有する。カートリッジ容器12は、容器内部が大気と連通し得る開口30,32,34,36が形成される。インク袋14には、当該インク袋の容積を拡大させる方向に付勢してインク袋14内に負圧を発生させる負圧発生手段が設けられる。この負圧発生手段による負圧方向への付勢力は、インク袋のインク供給口16から遠くなるにつれて連続的にまたは段階的に小さくなっている。
【解決手段】本発明のインクカートリッジは、扁平な箱体形状を有するカートリッジ容器12の内部に、インク液を収納する可塑性材料もしくは弾性体からなるインク袋14が収納された構造を有する。カートリッジ容器12は、容器内部が大気と連通し得る開口30,32,34,36が形成される。インク袋14には、当該インク袋の容積を拡大させる方向に付勢してインク袋14内に負圧を発生させる負圧発生手段が設けられる。この負圧発生手段による負圧方向への付勢力は、インク袋のインク供給口16から遠くなるにつれて連続的にまたは段階的に小さくなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に用いられるインクカートリッジの構造及びそのインクカートリッジを使用するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等により撮影された画像などを印刷記録する装置としてインクジェット記録装置(インクジェットプリンター)が広く普及している。家庭用のインクジェット記録装置の多くは、キャリッジに搭載した印字ヘッドを紙送り方向と直交する主走査方向に往復走行させながらインク吐出を行うシリアル走査方式が採用されており、印字ヘッドの上部に縦型のインクカートリッジ(インクタンク)が配置されている。
【0003】
かかる従来のインクカートリッジの内部には、ポリマー発泡体などのインク吸収体が配設されており、当該インク吸収体の毛細管力で負圧を発生させている。特許文献1では、使用済みカートリッジ内のポリマー発泡体を廃棄する際の環境問題に配慮して、カートリッジ内部にバネを利用した負圧発生用の圧力調整器を配設する構造が提案されている。しかし、特許文献1にはインク残量の検出方法について記載されていない。この点、特許文献2は、インク量により外径寸法が可変するインク袋に当接するレバーの位置をセンサで検出することでインク残量を検出する構成を開示している。
【特許文献1】特開平6−155759号公報
【特許文献2】特開2002−248795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、家庭用のインクジェット記録装置の多くに採用されている構造、すなわち、キャリッジのヘッド上にインクカートリッジを搭載する方式では、ヘッド上部に容積の大きいカートリッジを持ち、ヘッドとともに往復走行(主走査)するため、ヘッドの走行空間として装置内に大きいスペースが必要であり、空間の有効活用がなされない欠点がある。
【0005】
また、上記従来のインクカートリッジは、カートリッジ内にインク以外のポリマー発泡体等の部材が収納されるため、インクの収納効率が悪いという問題もある。
【0006】
その一方で、業務用などのワイドフォーマット機では、インク収納効率のよいインク袋方式が知られているが、揚水高さで負圧を付与するので、ヘッド内圧を規定の圧力にしようとすると、インク袋の設置場所に制約がある。
【0007】
また、インク袋方式は、容積変化量を緻密に把握することが困難なため、特許文献2に開示された従来のインク残量検出の方法ではインク残量を正確に把握することが難しい。特に、家庭用のインクジェット記録装置のような比較的小容量のインクカートリッジにインク袋方式を適用すると、その容積変化量を正確に検出することはさらに困難となる。その結果、インク袋内のインクを最後まできれいに使いきることができず、無駄なインク量が多くなってしまうという欠点がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、装置のスペース効率向上に寄与するインクカートリッジを提供すること、収納されているインクを無駄なく使用できるインクカートリッジを提供すること、インク残量を正確に検出することができるインクカートリッジを提供すること、装置内におけるインクカートリッジの配置の自由度を高めることができるインクカートリッジを提供することを目的とし、併せて、このようなインクカートリッジを用いるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために請求項1に係る発明は、扁平な箱体形状を有するカートリッジ容器の内部に、インク液を収納する可塑性材料もしくは弾性体からなるインク袋が収納された構造を有するインクカートリッジであって、前記カートリッジ容器は、前記インク袋が収納される容器内部が大気と連通し得る大気連通口を有し、前記インク袋は、前記カートリッジ容器の形状に適合した扁平形状を有し、前記インク袋には、当該インク袋の容積を拡大させる方向に付勢してインク袋内に負圧を発生させる負圧発生手段が設けられ、前記負圧発生手段による負圧方向への付勢力は、前記インク袋内からインクを取り出すために前記インク袋に設けられているインク供給口から遠くなるにつれて連続的にまたは段階的に小さくなっていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、負圧発生手段を有する扁平形状のインクカートリッジ形態としたことで、インクジェット記録装置内におけるインクカートリッジの配置の自由度が高まり、また、装置高さの低減にも寄与し得る。
【0011】
さらに、本発明のインクカートリッジは、インクの消費に伴い、インク供給口(インクの取り出し口)から遠い部分から変形(収縮)するため、インク供給口を封止することなく、インクを無駄なく使用することができ、無駄インクの低減効果がある。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のインクカートリッジの一態様であり、前記負圧発生手段は、前記インク袋の周囲に形成された折り畳みの折り目であり、前記インク供給口から相対的に近い部位の折り目よりも、前記インク供給口から相対的に遠い部位の折り目が大きいことを特徴とする。
【0013】
かかる態様によれば、折り目の弾性を利用して負圧を発生させることができるとともに、内部のインク消費に伴い、インク供給口から遠い折り目の大きい部位が先に変形しやすく、インク供給口を封止することなく、インクを無駄なく使用することができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1記載のインクカートリッジの一態様であり、前記負圧発生手段は、前記インク袋の外周面のうち前記インク供給口に近い部分に設けられたバネ部材を含んで構成されていることを特徴とする。
【0015】
折り畳みの折り目による弾性の利用に代えて、又はこれと組み合わせてバネ部材を用いることで、負圧を発生させることができるとともに、インク供給口に近い部位の付勢力を大きくすることができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1記載のインクカートリッジの一態様であり、前記負圧発生手段は、前記インク袋の外周面において前記インク供給口からの距離が異なる複数の部位に設けられた複数のバネ部材を含んで構成されており、前記インク供給口から相対的に近い部位に配設されるバネ部材の付勢力は、前記インク供給口から相対的に遠い部位に配設されるバネ部材の付勢力よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
付勢力(バネ定数)の異なる複数のバネ部材を用いることで、インク供給口に近い部位の付勢力を大きく、インク供給口から遠い部位の付勢力を小さくする構成を実現できる。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1記載のインクカートリッジの一態様であり、前記インク袋は弾性体によって構成されており、当該弾性体は、前記インク供給口から相対的に近い部位の弾性力が前記インク供給口から相対的に遠い部位の弾性力よりも大きいことを特徴とする。
【0019】
インク袋自体を弾性体で構成し、その弾性力を部位によって変えることで、インク供給口から遠い部位から先に収縮させる構成(インク供給口付近を最後まで封止させない構成)を実現できる。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項5記載のインクカートリッジの一態様であり、前記弾性体によって構成されたインク袋は、前記インク供給口から相対的に近い部位の肉厚が前記インク供給口から相対的に遠い部位の肉厚よりも厚いことを特徴とする。
【0021】
弾性体の厚み(肉厚)を変えることによって、弾性力を変えることができ、インク供給口から遠い部位から先に収縮させる構成(インク供給口付近を最後まで封止させない構成)を実現できる。
【0022】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6の何れか1項に記載のインクカートリッジの一態様であり、前記インク袋は、前記インク供給口からの距離が異なる複数の部位について、当該インク袋の厚み方向に光が貫通し得る光透過性領域を有し、前記カートリッジ容器には、前記複数の部位での光の貫通を可能とする複数の光通過部が形成されていることを特徴とする。
【0023】
インクカートリッジ内のインク残量を検出する手段として、非接触の光学式センサを用いる態様が好ましく、かかる光学式センサの利用を可能にすべく、インク袋及びカートリッジ容器について、光通過が可能な構成とすることが望ましい。特に、本発明のインクカートリッジは、インク供給口に近い部位と、遠い部位とでインク袋の変形の仕方が異なるため、インク供給口から距離が異なる複数の部位で光学式センサによる検出を行うことが望ましい。
【0024】
請求項8に係る発明は、請求項7記載のインクカートリッジの一態様であり、前記光通過部は、前記大気連通口の開口であることを特徴とする。
【0025】
大気連通口を光通過部として兼用することが可能である。
【0026】
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8の何れか1項に記載のインクカートリッジの一態様であり、前記インク袋に対するインク充填終了時の内部負圧、インク充填容量、充填回数、充填日時のうち少なくとも1つの情報を記憶したIC記憶チップが搭載されていることを特徴とする。
【0027】
本発明のインクカートリッジは、インクを再充填することで、繰り返し利用することができるため、充填毎に必要な属性情報をIC記憶チップに書き込むことが好ましい。
【0028】
請求項10に係る発明は、前記目的を達成するインクジェット記録装置を提供する。すなわち、請求項10に係るインクジェット記録装置は、請求項1乃至9の何れか1項に記載のインクカートリッジと、前記インクカートリッジから供給されるインクをノズルから吐出する印字ヘッドと、前記印字ヘッドの上部に配置され、前記インクカートリッジから供給されるインクを貯留するとともに、前記印字ヘッドに連通し、該印字ヘッドへインクを供給するサブタンクと、前記印字ヘッドを記録媒体の搬送方向と直交する方向に走査させる走査手段と、を備えたインクジェット記録装置であって、前記インクカートリッジと前記サブタンクとが連結された状態のときに、前記印字ヘッドのノズル液面圧力が−20mmH2O〜−70mmH2Oとなるように設定されていることを特徴とする。
【0029】
一般にインクジェットヘッド(印字ヘッド)では、ノズル面のメニスカスを維持するために、ヘッド内部を適正な負圧に維持する必要がある。本発明によるインクカートリッジは、インクカートリッジ自体が内部を負圧に維持できる構造のため、印字ヘッドのノズル面の高さ、サブタンクの位置及び構造、インクカートリッジの配置位置(高さ)など、装置の構成を考慮して、インクカートリッジの負圧発生手段の負圧付勢力を適正値に設計することで、インクカートリッジの配置位置による揚水高さなどの圧力に限定されない、多様な配置レイアウトが可能である。すなわち、インクカートリッジをヘッドノズル面の上部に配置する態様も可能であるし、ヘッドノズル面の下部に配置する態様も可能である。
【0030】
なお、記録媒体は、印字ヘッドによって吐出されるインクを受ける媒体であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、その他材質や形状を問わず、様々な媒体があり得る。
【0031】
請求項11に係るインクジェット記録装置は、請求項1乃至9の何れか1項に記載のインクカートリッジと、前記インクカートリッジから供給されるインクをノズルから吐出する印字ヘッドと、前記印字ヘッドの上部に配置され、前記インクカートリッジから供給されるインクを貯留するとともに、前記印字ヘッドに連通し、該印字ヘッドへインクを供給するサブタンクと、前記印字ヘッドを記録媒体の搬送方向と直交する方向に走査させる走査手段と、前記インクカートリッジの前記インク袋内のインク残量を検出するカートリッジ内インク残量検出手段と、前記インクカートリッジから前記印字ヘッドへインクを供給するためのインク供給路と、前記インク袋の前記インク供給口下流近傍に設けられた大気開放バルブと、前記インク供給路内のインク残量を検出する供給路内インク残量検出手段と、前記カートリッジ内インク残量検出手段で検出されたインク残量が所定の規定値を下回った場合に前記大気開放バルブを開放して、プリントを続行する制御を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0032】
かかる態様によれば、インクカートリッジのインク残量がカートリッジ交換必要な規定値に達した場合でも、大気開放バルブより下流のインク供給路内及びサブタンク内のインクを用いて印字ヘッドからのインク吐出を継続することができる。
【0033】
請求項12に係る発明は、請求項10又は11記載のインクジェット記録装置の一態様であり、前記サブタンクの一部の面は、可塑性膜と板バネとを組み合わせて成る弾性変形部材によって構成されており、前記弾性変形部材が変位することにより、当該サブタンク内が負圧に維持されることを特徴とする。
【0034】
かかる態様によれば、サブタンクの負圧維持機能により、ヘッドの内部圧力を負圧に維持することができるので、ポンプなどを用いて負圧を維持する必要がなく、装置構成をコンパクトにすることができる。
【0035】
請求項13に係る発明は、請求項10乃至12の何れか1項に記載のインクジェット記録装置の一態様であり、前記走査手段による前記印字ヘッドの走査領域の少なくとも一方の端部に、前記インクカートリッジの前記インク供給口と繋がるインク供給路のインク供給連結部が設けられ、前記印字ヘッド上のサブタンク側に、前記インク供給連結部に対して連結及び離間可能な連結部が設けられ、前記サブタンク内にインクを供給する場合には前記連結部を前記インク供給連結部に連結させ、前記印字ヘッドによる印字実行時には前記連結部を前記インク供給連結部から離間させることを特徴とする。
【0036】
請求項13に係る発明は、印字実行時に印字ヘッドがインク供給系のインク供給連結部から離間し、サブタンク内のインクによってインク吐出を行い、インク供給時に印字ヘッドのサブタンクをインク供給連結部と連結させてサブタンクへのインク補給を行う、いわゆるピットイン・インク供給方式のインクジェット記録装置の態様を提供する。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、インクジェット記録装置内におけるインクカートリッジの配置の自由度が高まり、装置高さの低減にも効果がある。
【0038】
また、本発明のインクカートリッジは、インク供給口(インクの取り出し口)を封止することなく、インク袋内に収納されたインクを最後まで無駄なく使用することができる。
【0039】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット記録装置によれば、インクカートリッジ内のインクが無くなった場合でも、インク供給路内及びサブタンク内に残るインクを活用して、プリントを続行することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0041】
〔インクカートリッジの構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクカートリッジの斜視図、図2はその断面図である。これらの図面に示したように、本例のインクカートリッジ10は、全体的に扁平な略直方体形状を有するカートリッジ容器12の内側に、インク液を収容する扁平なインク袋14が収納された構造からなる。カートリッジ容器12は、プラスチックなど比較的硬質の材料で形成されたハードケース体であり、所定の外観形状(本例の場合、図示の略直方体形状)を維持できる程度の剛性をもつ。
【0042】
インク袋14は、内部のインク液量に応じて外形が変形し得る可塑性の材料で構成されており、インク液量に追従してインク袋14の形状、内部容積が変化する。インク袋14の一端面には、インク液の取り出し及びインク液の充填用の流路となるインク供給口16が設けられている。この管状のインク供給口16を保持すべく、カートリッジ容器12の対応する位置には、当該インク供給口16が挿入固定される管状の連結部18が突設されている。
【0043】
上記の如く構成されたインクカートリッジ10は、例えば、図2に示すように、厚み方向を重力方向(上下方向)に向け、扁平面を略水平に保った状態(重力方向に対して扁平面が略垂直となる姿勢)でインクジェット記録装置に装着される。かかる装着姿勢を想定したとき、インクジェット記録装置内にはインク残量を検出する手段(「カートリッジ内インク残量検出手段」に相当)としての発光素子20,22及び受光素子24,26がインクカートリッジ10を挟んで上下に対向して配設される。
【0044】
カートリッジ容器12の上面及び下面には、発光素子20,22及び受光素子24,26の位置に対応して、発光素子20,22及び受光素子24,26間の光通過を可能とする開口30,32,34,36(「光通過部」及び「大気連通口」に相当)が形成されている。
【0045】
インク袋14の全周面、若しくは、インク袋14の周面のうち少なくともカートリッジ容器12の開口30,32,34,36に対応する位置の部分は、発光素子20,22から発せられた光がインク袋14を通過して受光素子24,26に到達するようになっている。
【0046】
カートリッジ容器12に形成された開口30,32,34,36は、光の通過経路を形成するのみならず、カートリッジ容器12内を大気と連通させてインク袋14の外側に大気圧を付与する大気連通口としての機能も兼ねる。なお、カートリッジ容器12の開口30,32,34,36に代えて、カートリッジ容器12に光透過性を有する材料(例えば、透明樹脂)から成る透明窓部を設ける態様も可能であり、この場合は大気連通口としての開口が別途形成される。
【0047】
さらに、本例のカートリッジ容器12にはIC記憶チップ40が搭載され、インク充填終了時の内部負圧の値、インク充填容量、充填回数、充填日時などの属性情報がこのIC記憶チップ40に記憶される。IC記憶チップ40は、非接触で読み書き可能な無線ICタグ(Radio Frequency Identification:RFID)を用いる態様が好ましい。
【0048】
図3はインク袋14の斜視図である。図示のように、本例のインク袋14は、その周囲に折り畳み用の折り目44を有し、インク袋14内部のインク液量に応じて折り畳みが可能な蛇腹構造となっている。また、この折り目44の弾性によって、インク袋14の内部が負圧状態に維持される。
【0049】
図3に例示のインク袋14では、インク供給口16に近い側の折り目44が相対的に小さく、インク供給口16から遠い距離の折り目44が相対的に大きくなっている。すなわち、インク袋14の側面のインク供給口16に近い方の折り目44の折り込み量をa1,a2とし、インク供給口16から遠い方の折り目44の折り込み量をb1,b2とするとき、a1<b1,a2<b2の関係を満たし、インク供給口16から距離が大きくなるに伴い、負圧発生力(折り目44の弾性力)が徐々に小さくなるように構成されている。
【0050】
図中の符号50,52は、インク袋14に設けられた光透過性領域であり、これら光透過領域50,52は、図2で説明したカートリッジ容器12の開口30,32の各位置に対応する部位に設けられている。図3では明示しないが、インク袋14の裏側にも同様に、カートリッジ容器12の裏面側の開口34,36(図2参照)の各位置に対応する部位に光通過領域が設けられている。もちろん、インク袋14の全体を光透過性材料で形成する態様も可能である。
【0051】
上記の如く構成されたインクカートリッジ10において、インク充填時には、まず、インク袋14の内部気体及びインクを負圧状態にして排出し、その後、インク供給口16からインクを充填する工程に入る。インク充填工程では、インク袋14の内部圧力を規定の圧力になるように制御しながら、規定負圧(例えば、インクジェット記録装置に装填された使用状態において記録ヘッドのノズルのメニスカスを破壊しない程度の圧力)が発生する範囲内にインクを充填する。
【0052】
充填後、内部負圧の値やインク充填容量などを含む属性情報をIC記憶チップ40に書き込む。
【0053】
本例のインクカートリッジ10は、カートリッジ自体に負圧を発生する手段(ここでは、インク袋14の折り目44)を備えているため、インクカートリッジ10の配置位置による揚水高さなどの圧力に限定されないという利点がある。すなわち、インク袋14によって発生する負圧力を適正値に設定することで、吐出ヘッドのノズル面の上部、下部を問わず、インクカートリッジ10の多様な配置形態が可能である。
【0054】
特に、インクカートリッジ10が装着されるインクジェット記録装置内におけるインクカートリッジ10の配置形態として、カートリッジの扁平方向が水平となるように配置すると、装置高さを低減する効果が大きい。
【0055】
インクジェット記録装置内に本例のインクカートリッジ10が装着され、カートリッジの連結部18が装置側の流路接続口(連結部18の係合受け部)と連結されることにより、インク袋14内のインクがインク供給口16を通って外部に取り出される。インク袋14からインクジェット記録装置の印字ヘッドにインクが供給され、インク袋14内のインクが消費されるに伴い、インク袋14のインク供給口16から遠い部分(弾性力の弱い部分)の折り目44から先に折り畳まれていく。
【0056】
インクの消費量の増加(残量の減少)に伴い、次第にインク袋14が潰れていくが、インク供給口16に近い部分は比較的折り目44の弾性力が強いために、最後まで潰れにくく、インク供給口16付近が封止されにくい。したがって、インクを最後まで無駄なく消費することが可能となり、無駄インクを低減できる。
【0057】
仮に、一様な負圧発生力の可塑性部材からなる単なる扁平のインク袋であるとすると、インク供給口からインクが外部に取り出される際に、インク供給口の近くからインクが外部に取り出されるため、インク供給口付近が先に潰れやすい。そのため、インク供給口から遠い部分に十分なインクが残存しているにもかかわらず、可塑性のインク袋がインク供給口付近で押しつぶされて封止状態となりやすく、インク供給口から離れた部位のインクを取り出すことが困難になるという欠点がある。この点、本発明の実施形態によるインクカートリッジ10によれば、インク供給口16付近が封止状態にならず、最後まで無駄なくインクを取り出すことができる。
【0058】
さらに、本例のインクカートリッジ10は、インク液を再充填することで容器(インク袋14及びカートリッジ容器12)を繰り返し再利用が可能である。インクカートリッジ10を再利用(リサイクル)するときのインク再充填の際は、IC記憶チップ40に上記と同様の情報の書き込みを行う。ただし、繰り返し再利用することによって、インク袋14の折り目44の弾性が劣化することにも配慮し、規定値負圧にすべく充填されたインク量が初期充填のインク量に対し、規定を超える誤差が生じた場合は、リサイクル不能と判断し、インク袋14の交換等を行う。
【0059】
〔インク残量を検出するための構成〕
図2で説明したとおり、本実施形態では、インク袋14の少なくとも一部を光透過性の材料で構成し、扁平なインク袋14の厚み方向に貫通して光を通過可能に構成される。そして、このインク袋14の光通過経路を挟んで片側に発光素子20,22が配置され、反対側に発光素子20,22と対面して受光素子24,26が配置される。受光素子24,26により受光される光量(インク袋14及びインク液を透過する透過光量)は、インク袋内の厚み(インク袋自体の肉厚と、インク袋内に残るインク液の厚みとを含むインク袋の外形の厚み)に依存するため、受光素子24,26から出力される検出信号の値(例えば、電圧信号の値)と、インク残量との相関を示すデータを予め用意しておき、受光素子24,26から得られる検出信号と相関データに基づいて、インク残量を特定(検出)することができる。
【0060】
なお、発光素子20,22の光が貫通する厚み方向に扁平なインクカートリッジ10において、色材含有量3%インクに対し、厚みは5mm以下とすることで良好な検出が可能である。
【0061】
また、インク残量を検出するための手段(発光素子と受光素子の対)は、図2に例示したように、インク供給口16から異なる距離に複数個配置する態様が好ましい。既述のとおり、インクの使用(消費)に伴って、インク供給口16から遠い方のインク袋14の厚み収縮が先行し、インク残量がある程度少なくなった状態でインク供給口16に近い部分のインク袋の厚み収縮が大きくなる。
【0062】
インク袋14を透過する光の光透過量はインク袋14の厚みに対して反比例の関係にあるので、インク供給口16から距離の異なる複数の部位についてインク袋厚を検出する手段(発光素子と受光素子の対)を設け、これら複数の検出手段から得られる情報(複数の受光素子からの検出信号)を用いることで、インクカートリッジ10の使い始め(初期充填量)から使い終わり(カートリッジの交換が必要なインク切れのレベル)まで連続的にインク残量を正確に検出することができる。
【0063】
本例に開示のインク検出手段によれば、インク袋の負圧発生機構による収縮効果により、インク残量が少なくなった状態の検出精度に優れる。
【0064】
また、従来提案されているアクチュエータ方式の検出の場合、接触方式のため、カートリッジの着脱/装填を行った場合には容積変形状態により検出誤差が大きくなるのに対し、本例に開示のインク検出手段は、検出器が非接触型(光学式)であり、かつインク袋の負圧発生機構により、インク袋が一定の容積変形を保つので、着脱、装填を繰り返しても検出誤差を小さくできる。
【0065】
さらに、本例に開示の構成は、光学式の非接触型検出方式のため、検出素子(発光素子、受光素子)は、インクジェット記録装置本体側に配置可能であり、インクカートリッジ装填時の操作性を損なわない。また、インクカートリッジ側に検出素子や、検出用の電極などを持たないため、消耗品であるインクカートリッジのコストを低減できる。
【0066】
上述の例では、インク袋14自体の折り目の弾性によって負圧を発生させているが、負圧発生手段の態様はこの例に限定されず、折り目44に代えて、或いは折り目44と組合せて、負圧発生部材としてのバネ部材を取り付ける態様も可能である。
【0067】
なお、上述の例では、インク袋14の折り目によって構成される負圧発生手段の負圧方向への付勢力は、インク供給口16から遠くなるにつれて連続的に小さくなっているが、本発明の実施に際しては、負圧方向への付勢力が必ずしも連続的に小さくなっていることは要求されず、インク供給口16から遠くなるにつれて、2段階或いは更に多段階の階段状に付勢力が小さくなるような構成でもよい。例えば、負圧発生手段として、板バネを用いる場合、板バネの幅の範囲内では付勢力は概ね一定となり得るが、板バネのない部分、或いは、よりバネ力の小さい板バネを設けた部分との組合せにより、インク袋の全体として、インク供給口16近くから次第に遠くなるしたがって、負圧方向の付勢力を段階的に小さくするように構成することが可能である。
【0068】
図4は、インク袋の他の形態例を示す斜視図である。図4中図3に示した構成と同一または類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0069】
図4に示したインク袋60は、インク供給口16の近い方に板バネ62を備えており、この板バネ62によって、インク袋60を容積拡大方向(負圧発生方向)に付勢している。インク供給口16から遠い部分には板バネが設けられておらず、端面の折り目64によって折り畳み可能となっている。
【0070】
図示のインク袋60によれば、図5(a),(b)に示すように、インク量の減少に伴ってインク袋60のインク供給口16から遠い部位から順に折り畳まれて変形し、インク供給口16の近傍付近は最後まで押し潰されずに、インク供給口16と連通したインク収容空間66の形状が確保される。このため、インク供給口16が封止されずに、インクを最後まで無駄なく取り出すことができる。
【0071】
図4の構成に代えて、図6に示すように、インク供給口16から遠い位置にも板バネ68を設ける態様が可能である。この場合、板バネ68の付勢力は、インク供給口16に近い板バネ62の付勢力よりも小さいものとする。なお、図6中図4に示した構成と同一または類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0072】
図7は、インク袋のさらに他の形態例を示す断面図である。
【0073】
図示のインク袋70は、インク収容部72の全体が弾性体で構成されており、インク供給口16に近い部分の弾性力(バネ定数)が相対的に大きく、インク供給口16から遠い距離の部分の弾性力(バネ定数)が相対的に小さくなっている。具体的には、単一の弾性材料で成形されて成るインク袋70の厚みがインク供給口16からの距離が遠くなるにつれて次第に薄くなるように構成されている。
【0074】
図7に示すように、インク供給口16に近い部位(A部)の厚みをt1、遠い部位(B部)の厚みをt2とすると、A部の厚みt1はB部の厚みt2よりも厚く、t1>t2である。弾性体は、肉厚の3乗に比例して変位量が変わるため、例えば、0.5×t13≒t23を満たすようにインク袋70の厚みt1、t2を設計すると、同一圧力でB部はA部より約2倍変形しやすくなる。
【0075】
図7では、インク袋の厚さを変える実施態様を記載したが、インク袋の材料組成をインク供給口に近い部分と、インク供給口に遠い部分とで変化させることで、弾性力(バネ定数)を変化させてもよい。
【0076】
このような構成によっても、インク袋の負圧を維持しつつ、インクの消費によってインク供給口から遠い部位から順にインク袋を変形させることができるため、インクを無駄なく消費することができる。
【0077】
〔インクカートリッジの配置形態並びに負圧制御について〕
図8は本発明の実施形態に係るインクカートリッジが用いられるシリアル走査型インクジェット記録装置のヘッド部周辺の構成例を示す要部斜視図である。
【0078】
図中符号80はキャリッジ、82はヘッド部、84はサブタンクユニット、86はガイドシャフト、88はガイドレールである。ヘッド部82を搭載したキャリッジ80はガイドシャフト86に支持されており、当該ガイドシャフト86及びこれに平行なガイドレール88に沿って、図示せぬ記録媒体とノズル面との間の距離を一定に保ちつつ、主走査方向(矢印M方向)に滑らかに往復走行可能である。
【0079】
サブタンクユニット84は、キャリッジ80上でヘッド部82の上に配置されている。サブタンクユニット84は、CMYKの各色のインクを貯留する色別のサブタンク84C,84M,84Y,84Kを備えている。各色のサブタンク84C,84M,84Y,84Kは図示せぬ流路形成部材を介して印字ヘッド82と接続されるとともに、それぞれ対応する色のインクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kと接続される。
【0080】
各色のインクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kから供給されたインクは、それぞれ対応する色のサブタンク84C,84M,84Y,84Kに貯留され、ここから下方のヘッド部82へと供給される。
【0081】
図8には明示しないが、ヘッド部82はシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),黒(K)の各色インクを吐出するためノズル列を備えている。各色のノズル列は、それぞれ同一色のインクを吐出する複数のノズルが記録媒体(不図示)の搬送方向(図中矢印Sで示す副走査方向)に並ぶように配列されている。すなわち、ヘッド部82は、Cインクを吐出するCノズルが副走査方向に並んだCノズル列、Mインクを吐出するMノズルが副走査方向に並んだMノズル列、Yインクを吐出するYノズルが副走査方向に並んだYノズル列、Kインクを吐出するKノズルが副走査方向に並んだKノズル列を有し、これらCMYKの各ノズル列が列単位で副走査方向と直交する主走査方向(図中矢印Mで示す方向)に並ぶように配列されている。
【0082】
図9は、ヘッド部82のノズル配列の例を示す図である。各色インクに対応する印字ヘッドは同一構造を有しているので、これらを符号100で表すことにする。
【0083】
印字ヘッド100は、n個のノズル101(101-1〜101-n)を有し、このn個のノズルが2列に千鳥状に並べられている。このようにノズル101を千鳥配置することで、副走査方向に沿って並ぶように投影される実質的なノズル列のノズル間ピッチ(図9中でノズル101-1とノズル101-2の副走査方向の距離h)を小さくすることができる。
【0084】
図10は、1ノズル分(1チャンネル)の液滴吐出素子の構成を示す断面図である。ノズル101はインクが収容される加圧液室102と連通し、更に、ヘッド内の各加圧液室102は、複数の加圧液室102に対してインクを供給する共通流路105と連通する。なお、共通流路105は、各色に対応するサブタンクユニット84(図8参照)に連通しており、吐出用のインクは、サブタンクユニット84から図10に示す共通流路105を介してヘッド内の各加圧液室102に供給される。
【0085】
また、図10に示すように、加圧液室102の内部には、加圧液室102内のインクを加圧する手段としての加圧素子(ここでは、ヒータ)108が設けられている。加圧素子108を駆動して加圧液室102内のインクを沸騰状態にして気泡(バブル)を発生させ、その発生した気泡の圧力によってノズル101からインクが吐出される。すなわち、本例に示す印字ヘッド100には、ヒータの加熱エネルギーにより加圧液室に発生させた気泡の圧力をインクの吐出力に用いるサーマル方式が適用される。
【0086】
なお、本例では、インクの色別にそれぞれ独立の印字ヘッド(Cヘッド,Mヘッド,Yヘッド,Kヘッド)を構成し、これら複数の各色印字ヘッドを組み合わせてヘッド部82(CMYKヘッド)を構成しているが、かかる構成に代えて、1つの(単一の)印字ヘッドの内部流路を色別に個別化する構造(色単位で独立した流路構造)とし、1つの印字ヘッドから複数色のインクを吐出可能な構成としてもよい。
【0087】
図8に例示した構成においては、各色のインクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kは、インクジェット記録装置内において、ヘッド部82上のサブタンクユニット84よりもさらに上方に配置され、それぞれ扁平面を略水平に保ちつつ、各色の(4つの)インクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kが同一平面上で主走査方向に沿って1列に並ぶように配置される。
【0088】
ヘッド部82の吐出面(ノズル面82A)からインクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kまでの高さをLとし、水頭圧差(符号+)P1、インクカートリッジ内の負圧値(符号−)P2、ヘッド部のノズル面の内圧P3とするとき、P3は−20mmH2O〜−70mmH2Oに設定することが望ましい。なお、1mmH2O(ミリ水柱メートル)は約9.8Pa(パスカル)であるから、Pa(パスカル)の単位系で表すと、P3は−196Pa〜−686Paに設定することが望ましい。
【0089】
すなわち、次の関係式、
ヘッドノズル液面圧力P3=(ヘッドノズル面からインクカートリッジ揚水高さ圧:P1)+(インクカートリッジ内圧:P2)
を満たすように、カートリッジ位置(ヘッドノズル面を基準とする鉛直上方の高さ位置、図8におけるL)とカートリッジ内の負圧値を設定する。
【0090】
図8に例示したように、インクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kがヘッド部82のノズル面82Aより鉛直方向の上側に配置される場合は、水頭圧差(P1)はプラス(+)方向であるのでインクカートリッジ内圧力は、この+方向の水頭圧差を吸収すべく、インクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kの内部負圧発生手段の付勢力を設定し、ヘッドノズル液面圧力が規定値の範囲(例えば、−20mmH2O〜−70mmH2O)となるように設定される。
【0091】
図11は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジが用いられるインクジェット記録装置の他の構成を示す要部斜視図である。
【0092】
図示の形態は、図8で説明した例と比較して、インクカートリッジがヘッドノズル面よりも鉛直方向下側に配置される形態となっている点で相違する。図11中、図8の例と同一または類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0093】
図11に示した構成のように、インクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kがヘッド部82のノズル面82Aより鉛直方向の下側に配置される場合は、水頭圧差(P1)はマイナス(−)方向であるが、インクカートリッジ内圧力は、内部負圧発生手段の付勢圧力を設定し、ヘッドノズル液面圧力が規定値範囲になるように設定される。
【0094】
すなわち、次の関係式、
ヘッドノズル液面圧力P3=(ヘッドノズル面からインクカートリッジ揚水高さ圧:P1)+(インクカートリッジ内圧:P2)
を満たすように、インクカートリッジの位置(ヘッドノズル面を基準とする鉛直下方の高さ位置、図11におけるL)及びカートリッジ内の負圧値を設定する。
【0095】
また、各インクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kとサブタンク84C,84M,84Y,84Kとを繋ぐ流路の途中(好ましくは、各インクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kのインク供給口16の近く)には、大気開放が可能なバルブ(大気開放バルブ)92C,92M,92Y,92Kが設けられている。何れかのインクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kについてインク残量エンド(これ以上インク袋からインクを取り出すことができないという残量の限界)が検出された場合に、該当するインクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kの大気開放バルブ92C,92M,92Y,92Kを開放する(大気に連通させる)ことでインク供給路内のインクをヘッド部82に送り出すことができる。これにより、インク流路内のインクを無駄なく利用することが可能である。
【0096】
図8及び図11で説明したように、本発明の実施形態に係るインクカートリッジによれば、扁平インクカートリッジの配置高さと、内部の負圧値を設定することで、インクカートリッジの配置自由度を上げる効果があり、装置高さを低減することができる。
【0097】
〔ピットイン・インク供給方式のインクジェット記録装置への適用例〕
図12は本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置110は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kを有するヘッド部112と、各印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kに供給するインクを貯蔵しておくインクカートリッジ114(114C,114M,114Y,114K)と、記録紙116を供給する給紙部118と、ガイドシャフト120に支持されながらガイドレール122に沿ってヘッド部112を記録紙搬送方向と略直交する主走査方向に走査させるキャリッジ124と、ヘッド部112が有する各色の印字ヘッド112K,112C,112M,112Yのそれぞれに連結され、各印字ヘッド112K,112C,112M,112Yの内部に負圧を発生させるとともに各色インクのサブタンクとしても機能する、印字ヘッドと同数の負圧維持部126(126C,126M,126Y,126K)と、を備えている。
【0098】
各色の印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kの構造は、図9及び図10で説明した例と同様であるため、説明を省略する。
【0099】
図12における給紙部118には、所定のサイズに切断されたカット紙が装填される給紙カセットを用いる方式が適用される。複数のサイズの記録紙116に印字を行う場合には、給紙部118に装着されている給紙カセットを取り出し、所望のサイズの記録紙116が装填された給紙カセットに交換する。なお、同一サイズの異なる紙種の記録紙116を装填したカセットを用意してもよい。
【0100】
このように、インクジェット記録装置110は複数種類の記録紙を利用可能に構成されており、給紙カセットには装填される記録紙116の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体が取り付けられ、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、インクジェット記録装置110は使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて装置内の各部が制御される。例えば、記録紙116の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行ってもよい。
【0101】
給紙部118に装填された記録紙116は、給紙ローラ130の回動によって搬送路132に送り出され、搬送路132に設けられた搬送ローラ134に沿って垂直方向上側に搬送されるとともに、搬送路132において表裏が反転されて(搬送路132内で1回ターンして)ヘッド部112の直下へ送られる。記録紙116は、ヘッド部112の直下において搬送ローラ136によって所定の平面性を維持されながら一定の搬送ピッチで水平面内の所定の搬送方向(副走査方向、矢印線で図示)に送られる。
【0102】
記録紙116がヘッド部112の直下の印字領域に到達すると、キャリッジ124を主走査方向に走査させながら、各印字ヘッド112K,112C,112M,112Yの記録紙116と対向する面に設けられたノズルから各色インクを吐出させて主走査方向の印字を実行する。1回の主走査方向に印字が終わると、記録紙116は副走査方向に所定の距離だけ送られ、キャリッジを主走査方向に移動させながら主走査方向の印字が行われる。このようにして、副走査方向に記録紙116を一定ピッチずつ搬送方向へ送りながら主走査方向の印字を繰り返すことで、記録紙116の全面にわたって所望の画像が記録される。所望の画像が形成された記録紙116は、所定の搬送方向に送られて排紙部138から装置外部に排出される。
【0103】
各印字ヘッド112K,112C,112M,112Yのそれぞれに供給されるインクを貯蔵しておくインクカートリッジ114(Cインクに対応するCインクカートリッジ114C、Mインクに対応するMインクカートリッジ114M、Yインクに対応するYインクカートリッジ114Y、Kインクに対応するKインクカートリッジ114K、これらを総称してインクカートリッジ114と記載する。)は、装置本体と分離可能なサブカートリッジ140に設けられるインクカートリッジ挿入口(図12中不図示、図13の符号142C,142M,142Y,142K)に装着される。
【0104】
本例に示すインクジェット記録装置110では、インクカートリッジ114が装着されるサブカートリッジ140を装置前面側から装置本体に着脱可能な構造を有している。また、サブカートリッジ140の正面(サブカートリッジ140を装置本体に装着したときの装置前面に対応する面)には、インクカートリッジ114を挿入するためのインクカートリッジ挿入口142C,142M,142Y,142Kが設けられており、装置の前面(フロント面)側からインクカートリッジ114の着脱(交換)作業が可能な構造となっている。
【0105】
〔サブカートリッジの説明〕
次に、サブカートリッジの構成について説明する。図13は、サブカートリッジ140の斜視図であり、図14はサブカートリッジ140をインクジェット記録装置10本体に装着した状態の装置上側から見た平面図である。なお、図14では、サブカートリッジ140の図示を明示するためヘッド部112と走査機構の詳細な図示は省略されている。
【0106】
図13に示すように、サブカートリッジ140は、その前面(正面)にインクカートリッジ挿入口142C,142M,142Y,142Yを有する。
【0107】
インクカートリッジ挿入口142C,142M,142Y,142Kを介してインクカートリッジ装着部144C,144M,144Y,144Kにインクカートリッジ114C,114M,114Y,114Kが装着されると、インクカートリッジ114C,114M,114Y,114Kはサブカートリッジ140の内部に設けられたインク供給路146を介して、インク供給連結部148(148C,148M,148Y,148K)と連通する。図示の便宜上、図13ではインク供給路146を1本の線で模式的に図示したが、サブカートリッジ140の内部には各色のインクに対応するインク流路が個別に設けられている。
【0108】
インク供給連結部148は、サブカートリッジ140をインクジェット記録装置本体に装着した状態におけるヘッド部112の走査領域の一方の端部に設けられている。ヘッド部112の端部には、サブカートリッジ140のインク供給連結部148に対して連結/離脱可能な連結部149が設けられている(図14参照)。
【0109】
本例に示すインクジェット記録装置110は、ヘッド部112にインク充填が必要になると、キャリッジ124をインク供給連結部148が設けられる走査領域の一方の端部に移動させ、連結部149をインク供給連結部148に接続することで、サブカートリッジ140からヘッド部112にインクが供給されるピットイン・インク供給方式が採用される。
【0110】
ヘッド部112の連結部149とサブカートリッジ140のインク供給連結部148が嵌合連結されるときのヘッド部112の位置をホームポジションとし、記録待機中や印字処理開始時及び印字処理終了時、或いはメンテナンス実行時にはヘッド部112をホームポジションに移動させるようにキャリッジ124の駆動が制御される。
【0111】
サブカートリッジ140には、印字領域における記録紙(図12中の符号116)の搬送ガイドとなる搬送ガイド部150と、縁なし印字時の記録紙116の幅からはみ出したインクを受けるインク受容部152と、の機能を備えたガイド部材154を備えている。このガイド部材154は、その外縁部分に形成された凸部が印字領域における記録紙の搬送ガイド部150となり、周囲を搬送ガイド部150(凸部)で囲まれた領域(凹部)がインク受容部152となっている。
【0112】
ガイド部材154にインクなどの汚れが付着した場合には、ユーザがサブカートリッジ140から取り外して清掃または交換することができる。ガイド部材154には樹脂材料が好適に用いられる。インク受容部152に多孔質部材や不織布など液体を吸収する吸収部材を備え、インク受容部152が廃インクで一杯になるとガイド部材154から吸収部材のみを取り出すように構成すると、インク受容部152のメンテナンスが容易になる。
【0113】
サブカートリッジ140には、ヘッド部112のノズル面に対して密着し得るキャップ部材(図14中不図示、図21中の符号260)と、該キャップ部材に連通する吸引ポンプ(図14中不図示、図21中の符号288)と、を有する回復ユニット160が配設される。回復ユニット160は、ヘッド部112がサブカートリッジ140に連結された状態(ホームポジションに位置する状態)で、ヘッド部112のノズル面直下に位置している。回復ユニット160の構成について詳細は後述するが、印字処理開始前や印字待機中などの非印字時には、ヘッド部112のノズル面にキャップ部材を密着させて、ノズル内のインクの乾燥を防止し、インクの粘度上昇による吐出異常を回避する。
【0114】
また、ノズル内(ヘッド内)に気泡が発生した場合やノズル内の増粘インクをノズルから除去する場合には、前記キャップ部材をノズル面に密着させて吸引ポンプを作動させることでノズルからインクを吸引する。この吸引動作により、ヘッド部112には連結部149側から新しいインクが供給される。
【0115】
サブカートリッジ140には、回復ユニット160により吸引された廃インクを回収する廃インクタンク(廃インク回収部)162を備えている。この廃インクタンク162は、サブカートリッジ140に設けられた廃インク流路164を介して回復ユニット160と連通される。
【0116】
廃インクタンク162は、サブカートリッジ140を装置本体から取り出した状態でサブカートリッジ140の下面側から取り外すことができる。したがって、廃インクタンク162が廃インクで一杯になった場合には、サブカートリッジ140から取り外して新しい廃インクカートリッジに交換可能であり、廃インクタンク162のみを廃棄することができる。なお、インク受容部152と廃インクタンク162とをチューブなどの流路部材を介して連通させ、インク受容部152に収容されるインクを廃インクタンク162に集めるように構成してもよい。
【0117】
上述したように、印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kへインクを供給するインク供給系と、インク受容部152や回復ユニット160、廃インクタンク162から構成されるインク回収系と、をサブカートリッジ140内に集約して収納することでインクチューブの引き回しや廃インクのメンテナンスをユーザが容易に行うことができる。
【0118】
図15はヘッド部112を上面から見た平面模式図(一部に透視断面を含む図)である。図15に示したように、ヘッド部112は、Cインクを吐出する複数のノズルが副走査方向に配列されたCノズル列172Cと、Mインクを吐出する複数のノズルが副走査方向に配列されたMノズル列172Mと、Yインクを吐出する複数のノズルが副走査方向に配列されたYノズル列172Yと、Kインクを吐出する複数のノズルが副走査方向に配列されたKノズル列172Kと、を備え、ヘッド部112の上部には、各色のノズル列172C,172M,172Y,172Kに対応して各色インク用の負圧維持部126C,126M,126Y,126Kが設けられている。
【0119】
それぞれの負圧維持部126C,126M,126Y,126Kは、チューブその他の適宜の流路形成部材(図中の符号174として図示)を介して、対応する連結部149C,149M,149Y,149Kと連通している。以後、説明の便宜上、特に色を特定せずに、負圧維持部126C,126M,126Y,126Kを指す場合に符号126で表す。同様に、連結部149C,149M,149Y,149Kについても、色を特定しない場合に符号149で表すものとする。
【0120】
ヘッド部112の主走査方向の一端部(連結部149が形成されている側と反対側の端部)には、気泡排出チャンバ180が設けられており、各負圧維持部126の上部に形成された排出口184は、それぞれチューブその他の適宜の流路形成部材より成る気泡排出流路186と逆止弁188とを介して気泡排出チャンバ180に連通されている。なお、逆止弁188に代えて開閉制御可能なバルブ(開閉バルブ)を用いてもよい。
【0121】
また、気泡排出チャンバ180の底面には、複数の開口(気泡排出孔208)が形成されており、この底面に、後述する回復ユニット160のキャップ(図21中の符号260)を密着させて吸引ポンプ(図21中の符号288)で減圧することにより、気泡吸引が行われる。
【0122】
〔負圧維持部の説明〕
次に、負圧維持部126の構造について詳説する。図16は、負圧維持部126の構成を模式的に示した側面図(図15における矢印A方向から見た図)である。
【0123】
図16に示すように、負圧維持部126は、ヘッド部112へ供給されるインクが一旦貯留されるインク収容容積を有するサブタンク190を備え、該サブタンク190の一部の面(側面部)が可塑性膜192と板バネ194とから成る弾性変形部材196によって構成されている。
【0124】
すなわち、サブタンク190は、その内部圧力が大気圧力よりも小さい場合に少なくともその一部が弾性変形する構造を有し、サブタンク190の容積が収縮することで負圧を発生させる構造となっている。また、サブタンク190の内部圧力が大気圧力になった場合は弾性変形の復元力でその容積は復元される。
【0125】
本例の負圧維持部126は、外観形状を維持し得る程度に硬質の材料から成るサブタンク190の容器の一壁面に、円形の可塑性膜192が取り付けられており、この可塑性膜192に十字形状の板バネ194が固着された構造を有し、内部圧力の変化によって可塑性膜192が変位する。
【0126】
サブタンク190は、その内部の圧力が大気圧の場合には板バネ194に変形力が作用しないが、内部圧力が負圧になると、可塑性膜192と板バネ194はサブタンク190の容積を縮小させる方向に変形し、サブタンク190の内部に負圧が発生するように構成されている。
【0127】
可塑性膜192と板バネ194から成る弾性変形部材196がサブタンク190の容積を縮小させる方向に変位すると、板バネ194の弾性力(復元力)により、サブタンク190の内部容積(すなわち、負圧維持部126の内部容積)を拡大させる方向に力が働く。この弾性変形部材196の作用によって、サブタンク190の内部圧力は負圧に維持される。板バネ194の形状(弾性係数)は、弾性変形部材196の変形量と変形時の発生圧力によって適宜設計される。
【0128】
図16に示す態様では、サブタンク190の少なくとも1つの壁面に可塑性膜192と板バネ194とを面同士で接着(溶着)させた弾性変形部材196を備える構成を例示したが、弾性変形部材196は上記構成以外にも、板バネと可塑性膜とをサンドイッチ状にはさみ込んでこれらを溶着する構成でもよい。
【0129】
負圧維持部126には、図15で説明した連結部149へと繋がるインク供給口202と、ヘッド部112との連通口であるヘッド連通口204が設けられている。図13及び図14で説明したように、連結部149がサブカートリッジ140のインク供給連結部148に連結されることにより、インクカートリッジ114と図16のサブタンク190が連通し、インク供給口202を介してサブタンク190内にインクが供給される。
【0130】
また、負圧維持部126の下面(サブタンク190の底面部)には、ヘッド部112との連通口であるヘッド連通口204が設けられており、このヘッド連通口204を介して該サブタンク190からヘッド内にインクが供給される。
【0131】
サブタンク190の上部には、気泡溜まり部206が形成されている。気泡溜まり部206は、上方に向かって流路断面が徐々に小さくなる滑らかな曲面形状(例えば、先細りのテーパー状)を有しており、ヘッド部112からサブタンク190内に流入した気泡がその浮力で上方に移動し、途中で引っかかることなく、気泡溜まり部206に導かれ、気泡溜まり部206の上部に滞留するようになっている。なお、気泡溜まり部206の内面形状は、上記に限らず、例えば、テーパー状(錐面形状)に代えて、半球形状などでもよい。
【0132】
気泡溜まり部206の最上部に設けられた排出口184は、気泡排出流路186と連通している。図15で説明したとおり、気泡排出流路186には逆止弁188(または開閉バルブ)が設けられ、さらに気泡排出流路186の排出口184(気泡排出口)と反対側の端部は気泡排出チャンバ180と連通している(図15参照)。
【0133】
上記構成から成る負圧維持部126によれば、図17に示すように、サブタンク190内のインク量に応じて可塑性膜192が変位し、負圧維持部126の内部圧力も変化する。
【0134】
図17中破線で示す可塑性膜192’はインクが十分に充填された状態(ホームポジションでのピットインによるインク供給が完了した直後の初期状態)を示し、実線で示す可塑性膜192は、印字ヘッドによるインクの消費に伴って、サブタンク190内のインクが減少し、負圧維持部126内部圧力(負圧の絶対値)が大きくなり、インクの補充が必要になった状態を示している。
【0135】
可塑性膜192の変化量と負圧維持部126の内部圧力の変化量(すなわち、サブタンク190の容積変化量)は相関があるため、可塑性膜192の変化量を観測(検出)することで、間接的に負圧維持部126の内部圧力を検出することができる。
【0136】
図18を用いて、負圧維持部126の内部圧力を検出する手段の一例を説明する。図18(a),(b)には、可塑性膜192の変形量を検出する検出機構220(負圧維持部126の内部圧力検出部)の構成例を示す。図18(a),(b)に示す検出機構220は、可塑性膜192の変形量に応じて回動するアクチュエータ222と、2つの光学式センサ224,226を含んで構成される。
【0137】
第1のセンサ224は、可塑性膜192の初期状態に対応する位置に設けられ、負圧維持部126がサブカートリッジ140に連結された状態でヘッド部112のノズル面高さとインクカートリッジ114の位置(高さ)との水頭圧差(サブタンクの初期充填圧力)分の内圧を検出する。
【0138】
第2のセンサ226は、プリント実行時における負圧維持部126の内部圧力(負圧)の上限圧力(ピットインによるインク供給が必要なインク残量のレベルに対応する内部圧力)を検出する。
【0139】
図18(a)は、負圧維持部126がサブカートリッジ140が連結されて負圧維持部126内にインクが充填された状態であり、この状態で検出される負圧維持部126の内部圧力(充填完了時の初期充填圧力)は、例えば、−10mmH2Oである。
【0140】
また、図18(b)は、プリント実行時における負圧維持部126の内部圧力の上限状態(インク補充が必要な状態)であり、この状態で検出される負圧維持部126の内部圧力は、例えば、−70mmH2Oである。
【0141】
なお、図18(a),(b)に示すアクチュエータ222に代わりストレンゲージ(ひずみ検出部材)を用いることも可能である。また、図18(a),(b)には、光学式センサを2つ備える態様を例示したが、2つのセンサのうち第1のセンサ224は省略可能であり、少なくとも、可塑性膜192の変形量(サブタンク190の容積変化量)が所定量以上となったことを検出するセンサ(図18(a),(b)ではセンサ226)を備えていればよい。
【0142】
〔インク供給連結部の構造例〕
図19(a),(b)は、サブカートリッジ140側に設けられるインク供給連結部148と、ヘッド部112の負圧維持部126側に設けられるインク供給用の連結部149の構造例を示す断面図である。
【0143】
図19(a)は、負圧維持部126側の連結部149とサブカートリッジ140のインク供給連結部148が離間した状態を示し、図19(b)は、両者が連結した状態を示す。
【0144】
図19(a)に示すように、負圧維持部126側の連結部149の内部は、弾性部材(例えば、バネ)230の力によってボール(弁体)232をインク流入方向と逆方向(図の右方向)に付勢して、ボール232を小径の流路の端面(弁座)234に押し当ててインク流路を塞ぐ逆止弁の構造を有している。
【0145】
その一方、この連結部149に嵌合されるサブカートリッジ140側のインク供給連結部148は、連結部149の挿入口236に挿入可能なインク供給針244を有し、インク供給針244の先端近くの周面には、インク供給針244の内部流路246と連通する開口穴248が形成されている。
【0146】
図19(a)に示す離間状態では、弾性部材(例えば、バネ)230により付勢されたボール232により、挿入口236の流路が塞がれ、弁が閉じた状態となる。
【0147】
図19(b)に示す連結状態では、挿入口236にインク供給針244が挿入されることにより、インク供給針244の先端によってボール232が弾性部材230の付勢方向と反対方向へ押されて移動し、インク供給針244の開口穴248を通ってインクが連結部149の内部へと流れる。すなわち、図19(b)に示す連結状態ではボール232による弁が開いた状態となり、図12で説明したヘッド部112とインクカートリッジ114とが連通状態となる。
【0148】
〔気泡排出路に用いられる弁構造の例〕
図20(a),(b)には、図16で説明した逆止弁188の構造例を示す。なお、図20(b)は図20(a)の20b−20b’線に沿う断面図である。図20(a)に示すように、逆止弁188は、略球体のボール(弁体)250が流路252内に遊挿された構造を有し、ボール250が収容されている流路252の負圧維持部126と連通する側(図20(a)における下側)には、ボール250により封止可能な大きさの流路断面積を有する開口254が形成され、気泡排出チャンバ180と連通する側(図20(a)における上側)には、ボール250の直径よりも大きな略円形状の内側に凸形状部256を有する開口258(ボール250が当接しても流路が封止されない流路断面の形状を有する開口)を備えている。
【0149】
したがって、気泡排出チャンバ180側の吸引ポンプ(図21に符号288で図示)により吸引される状態ではボール250が開口258の端面(凸形状部256)に当接することで、負圧維持部126側の開口254が開放され、ボール250と開口254の隙間から気泡が排出される(順方向の圧力により逆止弁188が開いた状態)。
【0150】
その一方、気泡排出チャンバ180側の吸引ポンプ(図21に符号288で図示)が停止している状態(気泡排出チャンバ180が吸引されない状態)ではボール250が負圧維持部126側の開口254と接触して開口254を封止する(逆方向の圧力により弁が閉じた状態)。なお、図20(a),(b)に示す弁構造はあくまでも一例であり、他の弁構造を適用してもよい。
【0151】
〔回復ユニットの構成例〕
図21はヘッド部112及び回復ユニット160の概略構成を示す模式図である。同図は、ヘッド部112を正面(図15の矢印B方向)から見た図であり、説明の便宜上、一部に透視断面を含んでいる。図21では、図示の便宜上、Kインク用の負圧発生部126Kについてのみ検出機構220を記載したが、他の色についても同様に、それぞれの負圧維持部126C,126M,126Y,126Kについて検出機構220が設けられている。
【0152】
図21に示すとおり、回復ユニット160は、ヘッド部112のノズル面(インク吐出面)112A及び気泡排出チャンバ180の下面(気泡排出孔208の形成面)に圧接されるキャップ260を備えている。
【0153】
キャップ260は、ノズル面112Aのノズル形成領域を覆う第1のキャップ部(ノズル吸引用キャップ部)262と、気泡排出チャンバ180の気泡排出孔208形成領域を覆う第2のキャップ部(チャンバ吸引用キャップ部)264とが仕切壁266を挟んで一体的に組み合わされた構造を有しており、第1のキャップ部262及び第2のキャップ部264の各排出口272、274は、それぞれ別々のバルブ282,284を介して共通の吸引ポンプ288に接続される。吸引ポンプ288は、図13で説明した廃インクタンク162に接続されている。
【0154】
なお、図21に示した第1のキャップ部262に繋がるバルブ282を「第1バルブ282」と呼び、第2のキャップ部264に繋がるバルブ284を「第2バルブ284」と呼ぶことにする。
【0155】
キャップ260は、不図示の上下駆動機構に支持されており、ノズル面112Aから離れた退避位置と、ノズル面112Aに圧接するキャッピング位置とに移動可能である。なお、ノズル面112Aと気泡排出チャンバ180の下面は同一平面上にあり、ノズル面112A及び気泡排出チャンバ180の下面に接触するキャップ260の接触部には、圧接による密着性(密閉性)を高めるための弾性部材(シール部材)278が設けられている。
【0156】
上記構成によれば、不図示の上下駆動機構を動作させて、ヘッド部112のノズル面112Aに第1のキャップ部262を密着させるとともに、気泡排出チャンバ180の気泡排出孔208の形成面に第2のキャップ部264を密着させて、第1バルブ282、第2284を開き、吸引ポンプ282を動作させることで、ヘッド部112及び負圧維持部126内のインクを吸引して、ヘッド内及び負圧維持部126内の気泡を外部に排出することができる。また、ヘッド部112にインクを初期充填する際にも、キャップ260をノズル面112A及び気泡排出チャンバ180に圧接して、バルブ282,284を制御しつつ吸引ポンプ288を作動させる。
【0157】
本例では、第1のキャップ部262と第2のキャップ部264とを有する1つのキャッブ部材(キャップ260)を用いたが、第1のキャップ部262に相当するノズル吸引用のキャップと、第2のキャップ部264に相当するチャンバ吸引用のキャップとをそれぞれ個別のキャップ部材によって構成し、各キャップ部材について個別に上下駆動機構を設ける態様も可能である。
【0158】
〔制御系の説明〕
図22は、インクジェット記録装置110のシステム制御系の構成を示すブロック図である。本例のインクジェット記録装置110は、インクカートリッジ114(図12参照)のインク残量を検出するためのインク残量検出部320と、負圧維持部126の可塑性膜192の変位を検出するための可塑性膜変位検出部330と、回復ユニット160(図13,図21参照)の吸引ポンプ288を駆動するポンプドライバ340と、第1バルブ282、第2バルブ284並びに大気開放バルブ92を制御するバルブドライバ350を備えている。
【0159】
また、図22に示すとおり、インクジェット記録装置110は、通信インターフェース370、システムコントローラ372、画像メモリ374、ROM375、モータドライバ376、ヒータドライバ378、プリント制御部380、画像バッファメモリ382、ヘッドドライバ384等を備えている。
【0160】
インク残量検出部320には、図2で説明した発光素子20,22及び受光素子24,26、並びに後述するインク供給路(図24の符号401)のインク残量を検出する光学式センサ(図24の符号404)などが含まれる。
【0161】
インク残量検出部320から得られるインクカートリッジ114のインク残量情報は、ホストコンピュータ386のディスプレイなど、所定の表示手段により表示されるとともに、インクカートリッジ114内のインク残量が少なくなると報知手段によりその旨が報知され、インクカートリッジ114の交換が促される。
【0162】
可塑性膜変位検出部330は、図18で説明した検出機構220に相当する。すなわち、各色の負圧維持部126についてそれぞれ可塑性膜192の変位を検出するために配設された光学式のセンサ224,226が図22の可塑性膜変位検出部330に含まれる。
【0163】
可塑性膜変位検出部330から得られる変位情報は、各負圧維持部126の内部のインク残量並びに内部圧力(負圧値)を反映した情報であり、かかる情報に基づき負圧維持部126内のインク残量が所定量を下回ることが検出されると(すなわち、負圧維持部126の内部圧力が所定の値よりも大きな負圧値になると)、ピットインによる負圧維持部126へのインクの補給が行われる。
【0164】
ポンプドライバ340は、システムコントローラ372からの指令に従い、吸引ポンプ288のオン/オフ制御や駆動方向の制御を行う制御ブロックである。
【0165】
バルブドライバ350は、システムコントローラ372からの指令に従い、図21で説明した回復ユニット160のバルブ282,284や、図11で説明した大気開放用のバルブ92(92C,92M,92Y,92K)の開閉を行う制御ブロックである。
【0166】
通信インターフェース370は、ホストコンピュータ386から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース370にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0167】
ホストコンピュータ386から送出された画像データは通信インターフェース370を介してインクジェット記録装置110に取り込まれ、一旦画像メモリ374に記憶される。画像メモリ374は、通信インターフェース370を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ372を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ374は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0168】
システムコントローラ372は、通信インターフェース370、画像メモリ374、ポンプドライバ340、バルブドライバ350、モータドライバ376、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御手段である。システムコントローラ372は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ386との間の通信制御、画像メモリ374の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ388やヒータ389を制御する制御信号を生成する。
【0169】
ROM375には、システムコントローラ372のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM375は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。画像メモリ374は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0170】
モータドライバ376は、システムコントローラ372からの指示にしたがってモータ388を駆動するドライバ(駆動回路)である。なお、図22には、1つのモータドライバ376とモータ388を図示したが、インクジェット記録装置110は、複数のモータ及びこれらを駆動するモータドライバを備えている。一例を挙げると、図12に示す給紙ローラ130を駆動するモータやキャリッジ124を動作させるモータ、記録紙116の搬送路に備えられる搬送ローラ134,136を駆動するモータなどがある。図22に示したシステムコントローラ372は、これら複数のモータに対応した複数のモータドライバを制御している。
【0171】
また、ヒータドライバ378とヒータ389についても同様であり、インクジェット記録装置110は、複数のヒータ及びこれらを駆動するヒータドライバを備えており、システムコントローラ372は、装置内の複数のヒータ及びヒータドライバを制御している。
【0172】
プリント制御部380は、システムコントローラ372の制御に従い、画像メモリ374内の画像データ(多値の入力画像のデータ)からインク吐出制御用の信号(印字データ)を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ384に供給する制御部である。
【0173】
プリント制御部380において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ384を介して各色の印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0174】
プリント制御部380には画像バッファメモリ382が備えられており、プリント制御部380における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ382に一時的に格納される。なお、図22において画像バッファメモリ382はプリント制御部380に付随する態様で示されているが、画像メモリ374と兼用することも可能である。また、プリント制御部380とシステムコントローラ372とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0175】
ヘッドドライバ384はプリント制御部380から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kに設けられた加圧素子108(図10参照)を駆動する。ヘッドドライバ384にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0176】
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース370を介して外部から入力され、画像メモリ374に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の入力画像データが画像メモリ374に記憶される。
【0177】
インクジェット記録装置110では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ374に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ372を介してプリント制御部380に送られ、ディザ法や誤差拡散法などを用いたハーフトーン化処理によって、インク色ごとのドットデータ(打滴配置データ)に変換される。
【0178】
すなわち、プリント制御部380は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部380で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ382に蓄えられる。この色別ドットデータは、各色の印字ヘッド12C,12M,12Y,12Kのノズル101からインクを吐出するためのCMYK打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
【0179】
ヘッドドライバ384は、プリント制御部380から与えられるインク吐出データに基づき、各印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kのノズル101に対応する加圧素子108を駆動するための駆動信号を出力する。
【0180】
記録媒体としての記録紙116の搬送速度とヘッド部112の走査速度に同期して印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kからのインク吐出を制御することにより、記録紙116上に画像が形成される。
【0181】
また、本例のインクジェット記録装置110は、ヘッド部112による印字結果を検出する手段として、印字検出部394を備えている。印字検出部394は、イメージセンサ(例えば、CCD撮像素子やCMOS撮像素子)を含むブロックであり、該イメージセンサによって読み取った読取結果からノズル101の目詰まりその他の吐出異常をチェックする手段として機能する。
【0182】
すなわち、印字検出部394は、記録紙116に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、着弾位置誤差、ドット形状、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部380及びシステムコントローラ372に提供する。
【0183】
次に、上記の如く構成されたインクジェット記録装置110の動作について説明する。
【0184】
〔インクの初期充填動作について〕
インクが未充填の印字ヘッドにインクを初期充填する際、或いはインクカートリッジを交換したときの初期充填の際には、以下に述べる初期充填処理が実行される。
【0185】
先ず、インクカートリッジ114を装置本体(サブカートリッジ140)に装填し、キャリッジ124を走査させてヘッド部112をホームポジションに移動させ、サブカートリッジ140のインク供給連結部148にヘッド部112側の連結部149を連結させる。
【0186】
次に、回復ユニット160のキャップ260を上昇させて、キャップ260をノズル面112A及び気泡排出チャンバ180に圧接する(図21参照)。すなわち、第1のキャップ部262でヘッド部112のノズル形成領域を覆うとともに、第2のキャップ部264で気泡排出チャンバ180の気泡排出孔208の形成領域を覆う。
【0187】
次に、第1のキャップ部262に繋がる第1バルブ282を閉じるとともに、第2キャップ部264に繋がる第2バルブ284を開き、吸引ポンプ288により負圧をかけて、気泡排出流路186の逆止弁188を開き、負圧維持部126(すなわち、サブタンク190)にインクを充填する。
【0188】
このように、インクの初期充填時に第2バルブ284を開き、第1バルブ282を閉じた状態で、負圧維持部126(サブタンク190)の排出口184を介して気泡排出流路186からサブタンク190内の気体を確実に排出することで、サブタンク190内をインクに置換することができる。
【0189】
負圧維持部126(すなわち、サブタンク190)へのインク充填が完了したら、第2バルブ284を閉じるとともに第1バルブ282を開き、吸引ポンプ288により負圧をかけてヘッド内にインクを充填する。
【0190】
インク充填後に吸引ポンプ288を停止すると、インクカートリッジ114の位置(高さ)と、ノズル面高さの水頭差圧分だけ、負圧維持部126の板バネ194が変位し、内圧が維持される。
【0191】
その後、サブカートリッジ140のインク供給連結部148からヘッド部112の連結部149を離間させると、負圧維持部126側のインク供給弁(図19で説明したボール232による逆止弁)が閉じ、負圧維持部126内は板バネ194により負圧に維持される。
【0192】
〔印字中のインク供給制御(ピットイン)について〕
印字中はインク吐出によって負圧維持部126内のインクが消費されるため、負圧維持部126内のインク減少とともに、板バネ194の変位が増加し、負圧が増加する。図18(b)で説明したように、負圧上限が検出されると、ヘッド部112をホームポジションに移動させ、ピットインによるインク補給を行う。ピットインにより、負圧維持部126と、インク供給連結部148が連結された際、負圧維持部126の内部圧力がインク供給連結部148内の圧力より、負圧が大きいため、自然に(供給側からの加圧や被供給側からの吸引などの圧力付与を必要とせずに)インクカートリッジ114から負圧維持部126内へインクが供給される。
【0193】
すなわち、負圧維持部126とインク供給連結部148が連結されると、ノズル面のヘッド内圧力は、インクカートリッジ114とノズル面112Aの揚水高さ分の負圧に回復する。このとき、負圧維持部126の板バネ194が復元する変位分、インクカートリッジ114から負圧維持部126にインクが供給される。
【0194】
図23には、印字実行中のインク供給制御のフローチャートを示す。図23に示すように、プリントが実行されると(ステップS10)、ステップS12において負圧維持部126の可塑性膜192の変位量を検知する第2のセンサ226のオンを監視する。第2のセンサ226がオフと判断されると(ステップS12でNO判定時)、プリントを続行し(ステップS14)、タイマーを用いて第2のセンサ226のスキャンからの時間が計測され(ステップS16)、所定の時間おきに第2のセンサ226のオンが監視される。
【0195】
一方、ステップS12において第2のセンサ226がオンと判断されると(YES判定時)、プリントが中止され、ヘッド部112はホームポジションに移動される(ステップS20)。
【0196】
ヘッド部112がホームポジションに移動されると、負圧維持部126に繋がる連結部149がサブカートリッジ140のインク供給連結部148に連結され(ステップS22)、インクカートリッジ114から負圧維持部126のサブタンク190へインクが供給される(ステップS24)。
【0197】
ステップS24のインク供給中は第1のセンサ224のオンが監視される(ステップS26)。第1のセンサ224がオフの場合には、タイマーを用いて前回の第1のセンサ224のスキャンからの時間が計測され(ステップS28)、所定の時間おきに第1のセンサ224のオンが監視される。
【0198】
一方、ステップS26において第1のセンサ224がオンと判断されると(YES判定時)、負圧維持部126に繋がる連結部149とサブカートリッジ140のインク供給連結部148を離間させ(ステップS30)、当該インク供給制御はステップS12に戻る。
【0199】
上述したように、本実施形態によれば、ピットイン動作によって、サブカートリッジ140のインク供給連結部148に負圧維持部126を連結させた状態ではヘッド部112のノズル面112Aとインクカートリッジ114の水頭圧差によりヘッド内部に適正な負圧を発生させて、インク供給系から負圧維持部126へ自動的にインクを供給することができる。また、インク補給後に、インク供給連結部148との連結を解除し、インク供給連結部148から負圧維持部126を離間させた状態では、ヘッド内部に発生させた負圧は負圧維持部126内の密閉されたサブタンク190により適正に維持される。
【0200】
また、プリントジョブ実行中におけるインク供給を繰り返すことにより連結部149から気泡が混入すると、負圧維持部126(図16参照)の上部にある気泡溜まり部206(図16参照)に該気泡が滞留する。負圧維持部126内の気泡が増加するとサブタンク190内の気泡も増加し、その結果、サブタンク190内に収容されるインク量が減少してしまう。このようにしてサブタンク190内のインク量が減少すると1回のインク供給で印字できるプリント数が減ってしまうので、かかる事態を回避すべく、インク供給のタイミングでキャップ260(図21参照)をノズル面112A及び気泡排出チャンバ180に圧接し、第2バルブ284(図21参照)を開き、第1バルブ282を閉じた状態で、吸引ポンプ288を動作させ、気泡排出口184から負圧維持部126内の気泡を排出するように、制御する態様が好ましい。
【0201】
上述したように、負圧維持部126の気泡排出口184からの気泡吸引手段と、ノズルからのインク吸引手段とを、共通の吸引ポンプ288で兼用し、2種類の吸引モード(吸引ルート)を切り換える切換手段(第1バルブ282及び第2バルブ284)を備える態様によれば、ヘッド部112とサブカートリッジ140とを連結した状態で吸引モードを切り換えて動作させることで、気泡排除、ヘッドメニスカス部の増粘物排除、サブタンク190内へのインク供給、ヘッドノズル面とインクカートリッジ114との水頭圧差による負圧発生、負圧維持を実施可能とする。
【0202】
また、サブタンク190内の気液分離機能でその上側に滞留する気泡を排除するための機能を有しているため、ヘッドへの気泡混入による吐出異常の可能性を低減し、且つ、気液分離された気泡のみを排除可能であり、インクの有効使用率の向上が見込まれる。
【0203】
また、本例のインクジェット記録装置110は、メニスカスの乾燥によりノズル内部のインクが増粘し予備吐出(パージ)、が不可能になった場合に、キャップ260をノズル面112Aに密着させ、更に第1バルブ282を開き(第2バルブ284は閉じる)、吸引ポンプ288を動作させてノズルから増粘インクを吸引することができる。このようにノズル内の劣化インクを吸引除去することで、印字ヘッドは吐出可能な状態になる。
【0204】
なお、図示は省略するが、印字ヘッドのノズルを複数のブロックに分け、キャップ260を該ノズルブロックごとに吸引可能な構造にすることで、吸引による無駄なインク消費を抑制することができる。
【0205】
〔インク残量エンド時のプリントシーケンスについて〕
図24は、インク供給系の構成を模式的に描いた構成図である。同図では、図13で説明したサブカートリッジ140のインク供給連結部148の部分を「ピットイン連結部400」として図示してある。図24に示すように、ピットイン連結部400は、インク供給路401を構成するインク供給チューブ402と大気開放バルブ92を介してインクカートリッジ114と接続されている。インクカートリッジ114は、ヘッド部112のノズル面112Aよりも低い位置に配置されており、インク供給チューブ402によって構成されるインク供給路401には、当該インク供給路401内のインク残量を検出するためのインク残量検出手段(「供給路内インク残量検出手段」に相当、例えば、発光素子と受光素子よりなる光学式センサ)404が設けられている。
【0206】
インクカートリッジ114からピットイン連結部400までのインク供給路401と、該インク供給路401に設けられたインク残量検出手段404は、水平面内(同じ高さの水平面内)に配置される。このような配置形態によれば、大気開放バルブ92を開いてインク供給路401を大気連通させた場合でも、インク残量検出手段404によって「インク無し」が検出されるまで、一定の負圧維持が可能である。
【0207】
図25は、インク残量エンドシーケンスのフローチャートである。
【0208】
図25に示すように、プリントジョブが開始されると(ステップS50)、インクカートリッジ114のインク残量の検出が行われ、検出結果に基づいてカートリッジ内のインク残量がインク交換アラーム表示の規定量以上であるか否かが判断される(ステップS52)。
【0209】
インクカートリッジ114内のインク残量の検出は、図2で説明した受光素子24、26から得られる信号に基づいて行われる。インク残量の評価は、インクカートリッジ114の交換を促すインク交換表示を行うか否かの判定基準となる規定量(「アラーム表示規定量」という)と、インクカートリッジ114の交換が必要(インク取り出し不能)な最終的なエンドレベルを示す規定量(「交換規定量」という)の2段階で判断される。
【0210】
例えば、交換規定量は、インク残量0.1ml(ミリリットル)に設定され、アラーム表示規定量は、交換規定量より手前のインク残量0.3ml(ミリリットル)に設定される。
【0211】
ステップS52において、インクカートリッジ114内のインク残量がアラーム表示規定量以上と判定されれば(YES判定時)、プリントが継続され(ステップS54)、処理はステップS52に戻る。
【0212】
その一方、ステップS52において、インクカートリッジ114内のインク残量がアラーム表示規定量よりも少ないと判定された場合は(NO判定時)、ステップS56へ進み、インクカートリッジの交換を促す表示(警告表示)が行われる。
【0213】
その後、ユーザによってインクカートリッジ114の交換が行われたか否かを判断し(ステップS58)、インクカートリッジの交換が実施されれば、インク交換表示を消し、プリントを続行する(ステップS54)。
【0214】
ステップS58において、ユーザによるインクカートリッジの交換が実施されずに、NO判定となった場合には、ステップS60へ進む。ステップS60では、インクカートリッジ114内のインク残量が交換規定量以上であるか否かが判断される。インクカートリッジ114内に交換規定量以上のインクが残っている場合には、そのままプリントを続行する(ステップS54)。
【0215】
インクカートリッジの交換が行われないまま、プリントが継続され、ステップS60において、インク残量が交換規定量よりも少ないと判定された場合は(NO判定時)、インクカートリッジ114のインク取り出し口(インク供給口16)の下流近傍に設けた大気開放バルブ92を開放し(ステップS62)、この大気開放バルブ92の位置するインク供給路からサブタンク190内のインクを使用してプリントを続行する(図24参照)。
【0216】
この際、ユーザに対しインクカートリッジ交換の表示は継続される。また、大気開放バルブ92を開いてプリントを続行する間、インク供給路に設けたインク残量検出手段404によってインク供給路内のインク残量が検出され、プリントを継続するに足るインク量がインク供給路内に残っているか否かが判断される(図25のステップS64)。
【0217】
ステップS64でインク供給路内のインク残量が「有る」と判断されると、ステップS66に進み、ユーザによるインクカートリッジ114の交換が実施されたか否かの判断を行う。インクカートリッジの交換が実施されずに、NO判定となった場合には、プリントを続行して、ステップS64へ戻る。
【0218】
こうして、ステップS64でインク供給路内のインク残量が「有る」と判断されている間(YES判定時)は、プリントが続行されるが、ステップS64でインク供給路内のインク残量が「無し」と判断されると、プリントを停止する(ステップS68)。
【0219】
また、ユーザによってインクカートリッジ114の交換が実施され、ステップS66でYES判定となった場合には、インク交換表示を消すが、引き続き大気開放バルブ92の位置するインク供給路からサブタンク内のインクを使用してプリントを続行する。その後、当該インク供給路内のインク及びサブタンク内の負圧が規定値以上になった場合に、大気開放バルブ92を閉じて、既述の初期充填動作を行い(ステップS68)、インク供給路内にインクを充填する。
【0220】
なお、インク供給路内のインク残量の検出は、図24で説明したようにインク供給チューブにセンサを設ける形態に限らず、吐出液滴サイズと吐出液滴数をカウントしてインク消費量を計算することにより、流路内のインク残量を推定することで検出を行ってもよい。
【0221】
図25で説明した制御を行うことにより、インクカートリッジ内のインクが無くなっても、インク供給路内に残るインクを利用してプリント続行が可能となる。
【0222】
また、本例のインクジェット記録装置110は、以下のような利点も有する。
【0223】
すなわち、本例のインクジェット記録装置110によれば、給紙部118(給紙カセット)からヘッド部112へ記録紙116を搬送する搬送路を記録紙116の表面と裏面とを反転させる構造とし、給紙部118とその上部に設けられるヘッド部112との間にインクカートリッジ114を備え、給紙カセット及びインクカートリッジ114の着脱操作を装置の正面側(前面側)から行う構造を有するので、装置の奥行き方向の寸法を縮小することができ、更に、装置上面のフリースペース化が実現される。
【0224】
また、インクカートリッジ114を扁平形状とすることで、インクカートリッジ114の高さ方向の寸法を小さくすることが可能になり、装置全体の高さを低くすることが可能になる。
【0225】
インクカートリッジ114が装着されるサブカートリッジ140を備え、サブカートリッジ140内にインク供給系を収納し、更に、サブカートリッジ140は装置本体の正面側から装置本体と着脱可能に構成されるので、インク供給系をコンパクトにまとめることができ、装置内の構造が簡素化される。
【0226】
縁なし印字時や回復処理時に発生する廃インクが収容される廃インクタンク162をサブカートリッジ140内に備え、廃インクタンク162をサブカートリッジ140と着脱可能に構成するので、メンテナンス性の向上が見込まれる。
【0227】
また、サブカートリッジ140には、ヘッド部112直下の印字領域における記録紙116のガイドとなる搬送ガイド部150及び縁なし印字時の記録紙116の幅からはみ出したインクを受けるインク受容部152として機能するガイド部材154を備え、該ガイド部材154をサブカートリッジと着脱可能に構成されるので、印字領域における記録紙116の搬送上の不具合が防止され、縁なし印字時に発生する搬送ガイド部150の汚れのメンテナンスが容易になる。
【0228】
各色の印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kは、インク供給時にサブカートリッジ140内に備えられるインク供給系と接続され、ヘッドノズル面とインクカートリッジ114との水頭圧差によってインク供給系から負圧維持部126及びヘッド部112へインクが供給される。また、ヘッド部112の上には、印字中におけるヘッド内の負圧をコントロールする負圧維持部126が接続され、この負圧維持部126によりヘッドノズル面とインクカートリッジとの水頭圧差を基準としてヘッドの内部圧力(負圧)が制御されるので、ヘッドの内部に負圧発生し維持するポンプ等の圧力発生源が不要である。
【0229】
上述したインクジェット記録装置110における負圧維持部126は、弾性変形部材(可塑性膜192及び板バネ194)により負圧を発生させこれを維持する方式であるため、毛細管力を利用してヘッド内の負圧を発生させ維持する従来の吸収部材方式に比べて、インクカートリッジ114内に残留するインクの量が少なくなるので、インク使用率の向上が見込まれる。
【0230】
また、本インクジェット記録装置110は、サブタンク190内に気液分離機能を有する構成であり、従来のヘッドと分離される側に気液分離機能を有するインク吸収部材が設けられる構成におけるインク吸収部材に残留するインクがなく、無駄なインクが発生しない。
【0231】
上述したように、インク供給部に毛細管力を利用したインク吸収部材を介在させる従来方式では、インクの粘度上昇に伴い圧力損失が大きくなりインク供給の応答性が悪化するといった弊害が生じていた。特に低温時にはインクの粘度が高くなり、更に印字デューティが大きい場合にはインク供給の応答性が問題となった。
【0232】
本例では、インク供給部に毛細管力を用いたインク供給部材を備えていないので、上記従来方式に比べてインク供給の応答性が高くなり、インク供給時間が短縮される。また、インク供給の応答性がよいために印字ヘッド内の一定の負圧維持が容易であり、プリント物の濃度変化などを防止する効果を奏している。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】本発明の実施形態に係るインクカートリッジの斜視図
【図2】図1の2−2線に沿う断面図
【図3】インク袋の斜視図
【図4】インク袋の他の形態を示す斜視図
【図5】インク袋の変形の仕方を説明するために用いた断面図
【図6】インク袋の他の形態を示す斜視図
【図7】インク袋の他の形態を示す断面図
【図8】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の要部構成図
【図9】印字ヘッドのノズル配列例を示す図
【図10】印字ヘッドの内部構造例を示す断面図
【図11】本発明の他の実施形態に係るインクジェット記録装置の要部構成図
【図12】本発明の他の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図13】図12のインクジェット記録装置に装着されるサブカートリッジの斜視図
【図14】図12のインクジェット記録装置に装着されるサブカートリッジの平面図
【図15】ヘッド部の平面模式図
【図16】ヘッド部上に搭載される負圧維持部の構成を示す図
【図17】サブタンクの容積変位を説明するために用いた図
【図18】負圧維持部の内部圧力を検出する手段の一例を示す説明図
【図19】サブカートリッジのインク供給連結部とヘッド部側のインク供給用の連結部の構造例を示す断面図
【図20】図16に示す気泡排出口に接続される逆止弁の構造を示す断面図
【図21】ヘッド部及び回復ユニットの概略構成を示す模式図
【図22】本例のインクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図
【図23】印字実行中のインク供給制御の手順を示すフローチャート
【図24】インク供給系の構成を示した模式図
【図25】インク残量エンドシーケンスのフローチャート
【符号の説明】
【0234】
10…インクカートリッジ、12…カートリッジ容器、14,60,70…インク袋、16…インク供給口、20,22…発光素子、24,26…受光素子、30,32,34,36…開口、40…IC記憶チップ、44…折り目、50,52…光透過領域、62,68…板バネ、80…キャリッジ、82…ヘッド部、82A…ノズル面、84…サブタンクユニット、86…ガイドシャフト、88…ガイドレール、100,112C,112M,112Y,112K…印字ヘッド、101…ノズル、108…加圧素子、110…インクジェット記録装置、112…ヘッド部、112A…ノズル面、114…インクカートリッジ、116…記録紙、124…キャリッジ、126…負圧維持部、148…インク供給連結部、149…連結部、160…回復ユニット、180…気泡排出チャンバ、188…逆止弁、190…サブタンク、192…可塑性膜、194…板バネ、196…弾性変形部材、220…検出機構、260…キャップ、288…吸引ポンプ、402…インク供給チューブ、404…インク残量検出手段
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に用いられるインクカートリッジの構造及びそのインクカートリッジを使用するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等により撮影された画像などを印刷記録する装置としてインクジェット記録装置(インクジェットプリンター)が広く普及している。家庭用のインクジェット記録装置の多くは、キャリッジに搭載した印字ヘッドを紙送り方向と直交する主走査方向に往復走行させながらインク吐出を行うシリアル走査方式が採用されており、印字ヘッドの上部に縦型のインクカートリッジ(インクタンク)が配置されている。
【0003】
かかる従来のインクカートリッジの内部には、ポリマー発泡体などのインク吸収体が配設されており、当該インク吸収体の毛細管力で負圧を発生させている。特許文献1では、使用済みカートリッジ内のポリマー発泡体を廃棄する際の環境問題に配慮して、カートリッジ内部にバネを利用した負圧発生用の圧力調整器を配設する構造が提案されている。しかし、特許文献1にはインク残量の検出方法について記載されていない。この点、特許文献2は、インク量により外径寸法が可変するインク袋に当接するレバーの位置をセンサで検出することでインク残量を検出する構成を開示している。
【特許文献1】特開平6−155759号公報
【特許文献2】特開2002−248795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、家庭用のインクジェット記録装置の多くに採用されている構造、すなわち、キャリッジのヘッド上にインクカートリッジを搭載する方式では、ヘッド上部に容積の大きいカートリッジを持ち、ヘッドとともに往復走行(主走査)するため、ヘッドの走行空間として装置内に大きいスペースが必要であり、空間の有効活用がなされない欠点がある。
【0005】
また、上記従来のインクカートリッジは、カートリッジ内にインク以外のポリマー発泡体等の部材が収納されるため、インクの収納効率が悪いという問題もある。
【0006】
その一方で、業務用などのワイドフォーマット機では、インク収納効率のよいインク袋方式が知られているが、揚水高さで負圧を付与するので、ヘッド内圧を規定の圧力にしようとすると、インク袋の設置場所に制約がある。
【0007】
また、インク袋方式は、容積変化量を緻密に把握することが困難なため、特許文献2に開示された従来のインク残量検出の方法ではインク残量を正確に把握することが難しい。特に、家庭用のインクジェット記録装置のような比較的小容量のインクカートリッジにインク袋方式を適用すると、その容積変化量を正確に検出することはさらに困難となる。その結果、インク袋内のインクを最後まできれいに使いきることができず、無駄なインク量が多くなってしまうという欠点がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、装置のスペース効率向上に寄与するインクカートリッジを提供すること、収納されているインクを無駄なく使用できるインクカートリッジを提供すること、インク残量を正確に検出することができるインクカートリッジを提供すること、装置内におけるインクカートリッジの配置の自由度を高めることができるインクカートリッジを提供することを目的とし、併せて、このようなインクカートリッジを用いるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために請求項1に係る発明は、扁平な箱体形状を有するカートリッジ容器の内部に、インク液を収納する可塑性材料もしくは弾性体からなるインク袋が収納された構造を有するインクカートリッジであって、前記カートリッジ容器は、前記インク袋が収納される容器内部が大気と連通し得る大気連通口を有し、前記インク袋は、前記カートリッジ容器の形状に適合した扁平形状を有し、前記インク袋には、当該インク袋の容積を拡大させる方向に付勢してインク袋内に負圧を発生させる負圧発生手段が設けられ、前記負圧発生手段による負圧方向への付勢力は、前記インク袋内からインクを取り出すために前記インク袋に設けられているインク供給口から遠くなるにつれて連続的にまたは段階的に小さくなっていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、負圧発生手段を有する扁平形状のインクカートリッジ形態としたことで、インクジェット記録装置内におけるインクカートリッジの配置の自由度が高まり、また、装置高さの低減にも寄与し得る。
【0011】
さらに、本発明のインクカートリッジは、インクの消費に伴い、インク供給口(インクの取り出し口)から遠い部分から変形(収縮)するため、インク供給口を封止することなく、インクを無駄なく使用することができ、無駄インクの低減効果がある。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のインクカートリッジの一態様であり、前記負圧発生手段は、前記インク袋の周囲に形成された折り畳みの折り目であり、前記インク供給口から相対的に近い部位の折り目よりも、前記インク供給口から相対的に遠い部位の折り目が大きいことを特徴とする。
【0013】
かかる態様によれば、折り目の弾性を利用して負圧を発生させることができるとともに、内部のインク消費に伴い、インク供給口から遠い折り目の大きい部位が先に変形しやすく、インク供給口を封止することなく、インクを無駄なく使用することができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1記載のインクカートリッジの一態様であり、前記負圧発生手段は、前記インク袋の外周面のうち前記インク供給口に近い部分に設けられたバネ部材を含んで構成されていることを特徴とする。
【0015】
折り畳みの折り目による弾性の利用に代えて、又はこれと組み合わせてバネ部材を用いることで、負圧を発生させることができるとともに、インク供給口に近い部位の付勢力を大きくすることができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1記載のインクカートリッジの一態様であり、前記負圧発生手段は、前記インク袋の外周面において前記インク供給口からの距離が異なる複数の部位に設けられた複数のバネ部材を含んで構成されており、前記インク供給口から相対的に近い部位に配設されるバネ部材の付勢力は、前記インク供給口から相対的に遠い部位に配設されるバネ部材の付勢力よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
付勢力(バネ定数)の異なる複数のバネ部材を用いることで、インク供給口に近い部位の付勢力を大きく、インク供給口から遠い部位の付勢力を小さくする構成を実現できる。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1記載のインクカートリッジの一態様であり、前記インク袋は弾性体によって構成されており、当該弾性体は、前記インク供給口から相対的に近い部位の弾性力が前記インク供給口から相対的に遠い部位の弾性力よりも大きいことを特徴とする。
【0019】
インク袋自体を弾性体で構成し、その弾性力を部位によって変えることで、インク供給口から遠い部位から先に収縮させる構成(インク供給口付近を最後まで封止させない構成)を実現できる。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項5記載のインクカートリッジの一態様であり、前記弾性体によって構成されたインク袋は、前記インク供給口から相対的に近い部位の肉厚が前記インク供給口から相対的に遠い部位の肉厚よりも厚いことを特徴とする。
【0021】
弾性体の厚み(肉厚)を変えることによって、弾性力を変えることができ、インク供給口から遠い部位から先に収縮させる構成(インク供給口付近を最後まで封止させない構成)を実現できる。
【0022】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6の何れか1項に記載のインクカートリッジの一態様であり、前記インク袋は、前記インク供給口からの距離が異なる複数の部位について、当該インク袋の厚み方向に光が貫通し得る光透過性領域を有し、前記カートリッジ容器には、前記複数の部位での光の貫通を可能とする複数の光通過部が形成されていることを特徴とする。
【0023】
インクカートリッジ内のインク残量を検出する手段として、非接触の光学式センサを用いる態様が好ましく、かかる光学式センサの利用を可能にすべく、インク袋及びカートリッジ容器について、光通過が可能な構成とすることが望ましい。特に、本発明のインクカートリッジは、インク供給口に近い部位と、遠い部位とでインク袋の変形の仕方が異なるため、インク供給口から距離が異なる複数の部位で光学式センサによる検出を行うことが望ましい。
【0024】
請求項8に係る発明は、請求項7記載のインクカートリッジの一態様であり、前記光通過部は、前記大気連通口の開口であることを特徴とする。
【0025】
大気連通口を光通過部として兼用することが可能である。
【0026】
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8の何れか1項に記載のインクカートリッジの一態様であり、前記インク袋に対するインク充填終了時の内部負圧、インク充填容量、充填回数、充填日時のうち少なくとも1つの情報を記憶したIC記憶チップが搭載されていることを特徴とする。
【0027】
本発明のインクカートリッジは、インクを再充填することで、繰り返し利用することができるため、充填毎に必要な属性情報をIC記憶チップに書き込むことが好ましい。
【0028】
請求項10に係る発明は、前記目的を達成するインクジェット記録装置を提供する。すなわち、請求項10に係るインクジェット記録装置は、請求項1乃至9の何れか1項に記載のインクカートリッジと、前記インクカートリッジから供給されるインクをノズルから吐出する印字ヘッドと、前記印字ヘッドの上部に配置され、前記インクカートリッジから供給されるインクを貯留するとともに、前記印字ヘッドに連通し、該印字ヘッドへインクを供給するサブタンクと、前記印字ヘッドを記録媒体の搬送方向と直交する方向に走査させる走査手段と、を備えたインクジェット記録装置であって、前記インクカートリッジと前記サブタンクとが連結された状態のときに、前記印字ヘッドのノズル液面圧力が−20mmH2O〜−70mmH2Oとなるように設定されていることを特徴とする。
【0029】
一般にインクジェットヘッド(印字ヘッド)では、ノズル面のメニスカスを維持するために、ヘッド内部を適正な負圧に維持する必要がある。本発明によるインクカートリッジは、インクカートリッジ自体が内部を負圧に維持できる構造のため、印字ヘッドのノズル面の高さ、サブタンクの位置及び構造、インクカートリッジの配置位置(高さ)など、装置の構成を考慮して、インクカートリッジの負圧発生手段の負圧付勢力を適正値に設計することで、インクカートリッジの配置位置による揚水高さなどの圧力に限定されない、多様な配置レイアウトが可能である。すなわち、インクカートリッジをヘッドノズル面の上部に配置する態様も可能であるし、ヘッドノズル面の下部に配置する態様も可能である。
【0030】
なお、記録媒体は、印字ヘッドによって吐出されるインクを受ける媒体であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、その他材質や形状を問わず、様々な媒体があり得る。
【0031】
請求項11に係るインクジェット記録装置は、請求項1乃至9の何れか1項に記載のインクカートリッジと、前記インクカートリッジから供給されるインクをノズルから吐出する印字ヘッドと、前記印字ヘッドの上部に配置され、前記インクカートリッジから供給されるインクを貯留するとともに、前記印字ヘッドに連通し、該印字ヘッドへインクを供給するサブタンクと、前記印字ヘッドを記録媒体の搬送方向と直交する方向に走査させる走査手段と、前記インクカートリッジの前記インク袋内のインク残量を検出するカートリッジ内インク残量検出手段と、前記インクカートリッジから前記印字ヘッドへインクを供給するためのインク供給路と、前記インク袋の前記インク供給口下流近傍に設けられた大気開放バルブと、前記インク供給路内のインク残量を検出する供給路内インク残量検出手段と、前記カートリッジ内インク残量検出手段で検出されたインク残量が所定の規定値を下回った場合に前記大気開放バルブを開放して、プリントを続行する制御を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0032】
かかる態様によれば、インクカートリッジのインク残量がカートリッジ交換必要な規定値に達した場合でも、大気開放バルブより下流のインク供給路内及びサブタンク内のインクを用いて印字ヘッドからのインク吐出を継続することができる。
【0033】
請求項12に係る発明は、請求項10又は11記載のインクジェット記録装置の一態様であり、前記サブタンクの一部の面は、可塑性膜と板バネとを組み合わせて成る弾性変形部材によって構成されており、前記弾性変形部材が変位することにより、当該サブタンク内が負圧に維持されることを特徴とする。
【0034】
かかる態様によれば、サブタンクの負圧維持機能により、ヘッドの内部圧力を負圧に維持することができるので、ポンプなどを用いて負圧を維持する必要がなく、装置構成をコンパクトにすることができる。
【0035】
請求項13に係る発明は、請求項10乃至12の何れか1項に記載のインクジェット記録装置の一態様であり、前記走査手段による前記印字ヘッドの走査領域の少なくとも一方の端部に、前記インクカートリッジの前記インク供給口と繋がるインク供給路のインク供給連結部が設けられ、前記印字ヘッド上のサブタンク側に、前記インク供給連結部に対して連結及び離間可能な連結部が設けられ、前記サブタンク内にインクを供給する場合には前記連結部を前記インク供給連結部に連結させ、前記印字ヘッドによる印字実行時には前記連結部を前記インク供給連結部から離間させることを特徴とする。
【0036】
請求項13に係る発明は、印字実行時に印字ヘッドがインク供給系のインク供給連結部から離間し、サブタンク内のインクによってインク吐出を行い、インク供給時に印字ヘッドのサブタンクをインク供給連結部と連結させてサブタンクへのインク補給を行う、いわゆるピットイン・インク供給方式のインクジェット記録装置の態様を提供する。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、インクジェット記録装置内におけるインクカートリッジの配置の自由度が高まり、装置高さの低減にも効果がある。
【0038】
また、本発明のインクカートリッジは、インク供給口(インクの取り出し口)を封止することなく、インク袋内に収納されたインクを最後まで無駄なく使用することができる。
【0039】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット記録装置によれば、インクカートリッジ内のインクが無くなった場合でも、インク供給路内及びサブタンク内に残るインクを活用して、プリントを続行することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0041】
〔インクカートリッジの構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクカートリッジの斜視図、図2はその断面図である。これらの図面に示したように、本例のインクカートリッジ10は、全体的に扁平な略直方体形状を有するカートリッジ容器12の内側に、インク液を収容する扁平なインク袋14が収納された構造からなる。カートリッジ容器12は、プラスチックなど比較的硬質の材料で形成されたハードケース体であり、所定の外観形状(本例の場合、図示の略直方体形状)を維持できる程度の剛性をもつ。
【0042】
インク袋14は、内部のインク液量に応じて外形が変形し得る可塑性の材料で構成されており、インク液量に追従してインク袋14の形状、内部容積が変化する。インク袋14の一端面には、インク液の取り出し及びインク液の充填用の流路となるインク供給口16が設けられている。この管状のインク供給口16を保持すべく、カートリッジ容器12の対応する位置には、当該インク供給口16が挿入固定される管状の連結部18が突設されている。
【0043】
上記の如く構成されたインクカートリッジ10は、例えば、図2に示すように、厚み方向を重力方向(上下方向)に向け、扁平面を略水平に保った状態(重力方向に対して扁平面が略垂直となる姿勢)でインクジェット記録装置に装着される。かかる装着姿勢を想定したとき、インクジェット記録装置内にはインク残量を検出する手段(「カートリッジ内インク残量検出手段」に相当)としての発光素子20,22及び受光素子24,26がインクカートリッジ10を挟んで上下に対向して配設される。
【0044】
カートリッジ容器12の上面及び下面には、発光素子20,22及び受光素子24,26の位置に対応して、発光素子20,22及び受光素子24,26間の光通過を可能とする開口30,32,34,36(「光通過部」及び「大気連通口」に相当)が形成されている。
【0045】
インク袋14の全周面、若しくは、インク袋14の周面のうち少なくともカートリッジ容器12の開口30,32,34,36に対応する位置の部分は、発光素子20,22から発せられた光がインク袋14を通過して受光素子24,26に到達するようになっている。
【0046】
カートリッジ容器12に形成された開口30,32,34,36は、光の通過経路を形成するのみならず、カートリッジ容器12内を大気と連通させてインク袋14の外側に大気圧を付与する大気連通口としての機能も兼ねる。なお、カートリッジ容器12の開口30,32,34,36に代えて、カートリッジ容器12に光透過性を有する材料(例えば、透明樹脂)から成る透明窓部を設ける態様も可能であり、この場合は大気連通口としての開口が別途形成される。
【0047】
さらに、本例のカートリッジ容器12にはIC記憶チップ40が搭載され、インク充填終了時の内部負圧の値、インク充填容量、充填回数、充填日時などの属性情報がこのIC記憶チップ40に記憶される。IC記憶チップ40は、非接触で読み書き可能な無線ICタグ(Radio Frequency Identification:RFID)を用いる態様が好ましい。
【0048】
図3はインク袋14の斜視図である。図示のように、本例のインク袋14は、その周囲に折り畳み用の折り目44を有し、インク袋14内部のインク液量に応じて折り畳みが可能な蛇腹構造となっている。また、この折り目44の弾性によって、インク袋14の内部が負圧状態に維持される。
【0049】
図3に例示のインク袋14では、インク供給口16に近い側の折り目44が相対的に小さく、インク供給口16から遠い距離の折り目44が相対的に大きくなっている。すなわち、インク袋14の側面のインク供給口16に近い方の折り目44の折り込み量をa1,a2とし、インク供給口16から遠い方の折り目44の折り込み量をb1,b2とするとき、a1<b1,a2<b2の関係を満たし、インク供給口16から距離が大きくなるに伴い、負圧発生力(折り目44の弾性力)が徐々に小さくなるように構成されている。
【0050】
図中の符号50,52は、インク袋14に設けられた光透過性領域であり、これら光透過領域50,52は、図2で説明したカートリッジ容器12の開口30,32の各位置に対応する部位に設けられている。図3では明示しないが、インク袋14の裏側にも同様に、カートリッジ容器12の裏面側の開口34,36(図2参照)の各位置に対応する部位に光通過領域が設けられている。もちろん、インク袋14の全体を光透過性材料で形成する態様も可能である。
【0051】
上記の如く構成されたインクカートリッジ10において、インク充填時には、まず、インク袋14の内部気体及びインクを負圧状態にして排出し、その後、インク供給口16からインクを充填する工程に入る。インク充填工程では、インク袋14の内部圧力を規定の圧力になるように制御しながら、規定負圧(例えば、インクジェット記録装置に装填された使用状態において記録ヘッドのノズルのメニスカスを破壊しない程度の圧力)が発生する範囲内にインクを充填する。
【0052】
充填後、内部負圧の値やインク充填容量などを含む属性情報をIC記憶チップ40に書き込む。
【0053】
本例のインクカートリッジ10は、カートリッジ自体に負圧を発生する手段(ここでは、インク袋14の折り目44)を備えているため、インクカートリッジ10の配置位置による揚水高さなどの圧力に限定されないという利点がある。すなわち、インク袋14によって発生する負圧力を適正値に設定することで、吐出ヘッドのノズル面の上部、下部を問わず、インクカートリッジ10の多様な配置形態が可能である。
【0054】
特に、インクカートリッジ10が装着されるインクジェット記録装置内におけるインクカートリッジ10の配置形態として、カートリッジの扁平方向が水平となるように配置すると、装置高さを低減する効果が大きい。
【0055】
インクジェット記録装置内に本例のインクカートリッジ10が装着され、カートリッジの連結部18が装置側の流路接続口(連結部18の係合受け部)と連結されることにより、インク袋14内のインクがインク供給口16を通って外部に取り出される。インク袋14からインクジェット記録装置の印字ヘッドにインクが供給され、インク袋14内のインクが消費されるに伴い、インク袋14のインク供給口16から遠い部分(弾性力の弱い部分)の折り目44から先に折り畳まれていく。
【0056】
インクの消費量の増加(残量の減少)に伴い、次第にインク袋14が潰れていくが、インク供給口16に近い部分は比較的折り目44の弾性力が強いために、最後まで潰れにくく、インク供給口16付近が封止されにくい。したがって、インクを最後まで無駄なく消費することが可能となり、無駄インクを低減できる。
【0057】
仮に、一様な負圧発生力の可塑性部材からなる単なる扁平のインク袋であるとすると、インク供給口からインクが外部に取り出される際に、インク供給口の近くからインクが外部に取り出されるため、インク供給口付近が先に潰れやすい。そのため、インク供給口から遠い部分に十分なインクが残存しているにもかかわらず、可塑性のインク袋がインク供給口付近で押しつぶされて封止状態となりやすく、インク供給口から離れた部位のインクを取り出すことが困難になるという欠点がある。この点、本発明の実施形態によるインクカートリッジ10によれば、インク供給口16付近が封止状態にならず、最後まで無駄なくインクを取り出すことができる。
【0058】
さらに、本例のインクカートリッジ10は、インク液を再充填することで容器(インク袋14及びカートリッジ容器12)を繰り返し再利用が可能である。インクカートリッジ10を再利用(リサイクル)するときのインク再充填の際は、IC記憶チップ40に上記と同様の情報の書き込みを行う。ただし、繰り返し再利用することによって、インク袋14の折り目44の弾性が劣化することにも配慮し、規定値負圧にすべく充填されたインク量が初期充填のインク量に対し、規定を超える誤差が生じた場合は、リサイクル不能と判断し、インク袋14の交換等を行う。
【0059】
〔インク残量を検出するための構成〕
図2で説明したとおり、本実施形態では、インク袋14の少なくとも一部を光透過性の材料で構成し、扁平なインク袋14の厚み方向に貫通して光を通過可能に構成される。そして、このインク袋14の光通過経路を挟んで片側に発光素子20,22が配置され、反対側に発光素子20,22と対面して受光素子24,26が配置される。受光素子24,26により受光される光量(インク袋14及びインク液を透過する透過光量)は、インク袋内の厚み(インク袋自体の肉厚と、インク袋内に残るインク液の厚みとを含むインク袋の外形の厚み)に依存するため、受光素子24,26から出力される検出信号の値(例えば、電圧信号の値)と、インク残量との相関を示すデータを予め用意しておき、受光素子24,26から得られる検出信号と相関データに基づいて、インク残量を特定(検出)することができる。
【0060】
なお、発光素子20,22の光が貫通する厚み方向に扁平なインクカートリッジ10において、色材含有量3%インクに対し、厚みは5mm以下とすることで良好な検出が可能である。
【0061】
また、インク残量を検出するための手段(発光素子と受光素子の対)は、図2に例示したように、インク供給口16から異なる距離に複数個配置する態様が好ましい。既述のとおり、インクの使用(消費)に伴って、インク供給口16から遠い方のインク袋14の厚み収縮が先行し、インク残量がある程度少なくなった状態でインク供給口16に近い部分のインク袋の厚み収縮が大きくなる。
【0062】
インク袋14を透過する光の光透過量はインク袋14の厚みに対して反比例の関係にあるので、インク供給口16から距離の異なる複数の部位についてインク袋厚を検出する手段(発光素子と受光素子の対)を設け、これら複数の検出手段から得られる情報(複数の受光素子からの検出信号)を用いることで、インクカートリッジ10の使い始め(初期充填量)から使い終わり(カートリッジの交換が必要なインク切れのレベル)まで連続的にインク残量を正確に検出することができる。
【0063】
本例に開示のインク検出手段によれば、インク袋の負圧発生機構による収縮効果により、インク残量が少なくなった状態の検出精度に優れる。
【0064】
また、従来提案されているアクチュエータ方式の検出の場合、接触方式のため、カートリッジの着脱/装填を行った場合には容積変形状態により検出誤差が大きくなるのに対し、本例に開示のインク検出手段は、検出器が非接触型(光学式)であり、かつインク袋の負圧発生機構により、インク袋が一定の容積変形を保つので、着脱、装填を繰り返しても検出誤差を小さくできる。
【0065】
さらに、本例に開示の構成は、光学式の非接触型検出方式のため、検出素子(発光素子、受光素子)は、インクジェット記録装置本体側に配置可能であり、インクカートリッジ装填時の操作性を損なわない。また、インクカートリッジ側に検出素子や、検出用の電極などを持たないため、消耗品であるインクカートリッジのコストを低減できる。
【0066】
上述の例では、インク袋14自体の折り目の弾性によって負圧を発生させているが、負圧発生手段の態様はこの例に限定されず、折り目44に代えて、或いは折り目44と組合せて、負圧発生部材としてのバネ部材を取り付ける態様も可能である。
【0067】
なお、上述の例では、インク袋14の折り目によって構成される負圧発生手段の負圧方向への付勢力は、インク供給口16から遠くなるにつれて連続的に小さくなっているが、本発明の実施に際しては、負圧方向への付勢力が必ずしも連続的に小さくなっていることは要求されず、インク供給口16から遠くなるにつれて、2段階或いは更に多段階の階段状に付勢力が小さくなるような構成でもよい。例えば、負圧発生手段として、板バネを用いる場合、板バネの幅の範囲内では付勢力は概ね一定となり得るが、板バネのない部分、或いは、よりバネ力の小さい板バネを設けた部分との組合せにより、インク袋の全体として、インク供給口16近くから次第に遠くなるしたがって、負圧方向の付勢力を段階的に小さくするように構成することが可能である。
【0068】
図4は、インク袋の他の形態例を示す斜視図である。図4中図3に示した構成と同一または類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0069】
図4に示したインク袋60は、インク供給口16の近い方に板バネ62を備えており、この板バネ62によって、インク袋60を容積拡大方向(負圧発生方向)に付勢している。インク供給口16から遠い部分には板バネが設けられておらず、端面の折り目64によって折り畳み可能となっている。
【0070】
図示のインク袋60によれば、図5(a),(b)に示すように、インク量の減少に伴ってインク袋60のインク供給口16から遠い部位から順に折り畳まれて変形し、インク供給口16の近傍付近は最後まで押し潰されずに、インク供給口16と連通したインク収容空間66の形状が確保される。このため、インク供給口16が封止されずに、インクを最後まで無駄なく取り出すことができる。
【0071】
図4の構成に代えて、図6に示すように、インク供給口16から遠い位置にも板バネ68を設ける態様が可能である。この場合、板バネ68の付勢力は、インク供給口16に近い板バネ62の付勢力よりも小さいものとする。なお、図6中図4に示した構成と同一または類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0072】
図7は、インク袋のさらに他の形態例を示す断面図である。
【0073】
図示のインク袋70は、インク収容部72の全体が弾性体で構成されており、インク供給口16に近い部分の弾性力(バネ定数)が相対的に大きく、インク供給口16から遠い距離の部分の弾性力(バネ定数)が相対的に小さくなっている。具体的には、単一の弾性材料で成形されて成るインク袋70の厚みがインク供給口16からの距離が遠くなるにつれて次第に薄くなるように構成されている。
【0074】
図7に示すように、インク供給口16に近い部位(A部)の厚みをt1、遠い部位(B部)の厚みをt2とすると、A部の厚みt1はB部の厚みt2よりも厚く、t1>t2である。弾性体は、肉厚の3乗に比例して変位量が変わるため、例えば、0.5×t13≒t23を満たすようにインク袋70の厚みt1、t2を設計すると、同一圧力でB部はA部より約2倍変形しやすくなる。
【0075】
図7では、インク袋の厚さを変える実施態様を記載したが、インク袋の材料組成をインク供給口に近い部分と、インク供給口に遠い部分とで変化させることで、弾性力(バネ定数)を変化させてもよい。
【0076】
このような構成によっても、インク袋の負圧を維持しつつ、インクの消費によってインク供給口から遠い部位から順にインク袋を変形させることができるため、インクを無駄なく消費することができる。
【0077】
〔インクカートリッジの配置形態並びに負圧制御について〕
図8は本発明の実施形態に係るインクカートリッジが用いられるシリアル走査型インクジェット記録装置のヘッド部周辺の構成例を示す要部斜視図である。
【0078】
図中符号80はキャリッジ、82はヘッド部、84はサブタンクユニット、86はガイドシャフト、88はガイドレールである。ヘッド部82を搭載したキャリッジ80はガイドシャフト86に支持されており、当該ガイドシャフト86及びこれに平行なガイドレール88に沿って、図示せぬ記録媒体とノズル面との間の距離を一定に保ちつつ、主走査方向(矢印M方向)に滑らかに往復走行可能である。
【0079】
サブタンクユニット84は、キャリッジ80上でヘッド部82の上に配置されている。サブタンクユニット84は、CMYKの各色のインクを貯留する色別のサブタンク84C,84M,84Y,84Kを備えている。各色のサブタンク84C,84M,84Y,84Kは図示せぬ流路形成部材を介して印字ヘッド82と接続されるとともに、それぞれ対応する色のインクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kと接続される。
【0080】
各色のインクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kから供給されたインクは、それぞれ対応する色のサブタンク84C,84M,84Y,84Kに貯留され、ここから下方のヘッド部82へと供給される。
【0081】
図8には明示しないが、ヘッド部82はシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),黒(K)の各色インクを吐出するためノズル列を備えている。各色のノズル列は、それぞれ同一色のインクを吐出する複数のノズルが記録媒体(不図示)の搬送方向(図中矢印Sで示す副走査方向)に並ぶように配列されている。すなわち、ヘッド部82は、Cインクを吐出するCノズルが副走査方向に並んだCノズル列、Mインクを吐出するMノズルが副走査方向に並んだMノズル列、Yインクを吐出するYノズルが副走査方向に並んだYノズル列、Kインクを吐出するKノズルが副走査方向に並んだKノズル列を有し、これらCMYKの各ノズル列が列単位で副走査方向と直交する主走査方向(図中矢印Mで示す方向)に並ぶように配列されている。
【0082】
図9は、ヘッド部82のノズル配列の例を示す図である。各色インクに対応する印字ヘッドは同一構造を有しているので、これらを符号100で表すことにする。
【0083】
印字ヘッド100は、n個のノズル101(101-1〜101-n)を有し、このn個のノズルが2列に千鳥状に並べられている。このようにノズル101を千鳥配置することで、副走査方向に沿って並ぶように投影される実質的なノズル列のノズル間ピッチ(図9中でノズル101-1とノズル101-2の副走査方向の距離h)を小さくすることができる。
【0084】
図10は、1ノズル分(1チャンネル)の液滴吐出素子の構成を示す断面図である。ノズル101はインクが収容される加圧液室102と連通し、更に、ヘッド内の各加圧液室102は、複数の加圧液室102に対してインクを供給する共通流路105と連通する。なお、共通流路105は、各色に対応するサブタンクユニット84(図8参照)に連通しており、吐出用のインクは、サブタンクユニット84から図10に示す共通流路105を介してヘッド内の各加圧液室102に供給される。
【0085】
また、図10に示すように、加圧液室102の内部には、加圧液室102内のインクを加圧する手段としての加圧素子(ここでは、ヒータ)108が設けられている。加圧素子108を駆動して加圧液室102内のインクを沸騰状態にして気泡(バブル)を発生させ、その発生した気泡の圧力によってノズル101からインクが吐出される。すなわち、本例に示す印字ヘッド100には、ヒータの加熱エネルギーにより加圧液室に発生させた気泡の圧力をインクの吐出力に用いるサーマル方式が適用される。
【0086】
なお、本例では、インクの色別にそれぞれ独立の印字ヘッド(Cヘッド,Mヘッド,Yヘッド,Kヘッド)を構成し、これら複数の各色印字ヘッドを組み合わせてヘッド部82(CMYKヘッド)を構成しているが、かかる構成に代えて、1つの(単一の)印字ヘッドの内部流路を色別に個別化する構造(色単位で独立した流路構造)とし、1つの印字ヘッドから複数色のインクを吐出可能な構成としてもよい。
【0087】
図8に例示した構成においては、各色のインクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kは、インクジェット記録装置内において、ヘッド部82上のサブタンクユニット84よりもさらに上方に配置され、それぞれ扁平面を略水平に保ちつつ、各色の(4つの)インクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kが同一平面上で主走査方向に沿って1列に並ぶように配置される。
【0088】
ヘッド部82の吐出面(ノズル面82A)からインクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kまでの高さをLとし、水頭圧差(符号+)P1、インクカートリッジ内の負圧値(符号−)P2、ヘッド部のノズル面の内圧P3とするとき、P3は−20mmH2O〜−70mmH2Oに設定することが望ましい。なお、1mmH2O(ミリ水柱メートル)は約9.8Pa(パスカル)であるから、Pa(パスカル)の単位系で表すと、P3は−196Pa〜−686Paに設定することが望ましい。
【0089】
すなわち、次の関係式、
ヘッドノズル液面圧力P3=(ヘッドノズル面からインクカートリッジ揚水高さ圧:P1)+(インクカートリッジ内圧:P2)
を満たすように、カートリッジ位置(ヘッドノズル面を基準とする鉛直上方の高さ位置、図8におけるL)とカートリッジ内の負圧値を設定する。
【0090】
図8に例示したように、インクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kがヘッド部82のノズル面82Aより鉛直方向の上側に配置される場合は、水頭圧差(P1)はプラス(+)方向であるのでインクカートリッジ内圧力は、この+方向の水頭圧差を吸収すべく、インクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kの内部負圧発生手段の付勢力を設定し、ヘッドノズル液面圧力が規定値の範囲(例えば、−20mmH2O〜−70mmH2O)となるように設定される。
【0091】
図11は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジが用いられるインクジェット記録装置の他の構成を示す要部斜視図である。
【0092】
図示の形態は、図8で説明した例と比較して、インクカートリッジがヘッドノズル面よりも鉛直方向下側に配置される形態となっている点で相違する。図11中、図8の例と同一または類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0093】
図11に示した構成のように、インクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kがヘッド部82のノズル面82Aより鉛直方向の下側に配置される場合は、水頭圧差(P1)はマイナス(−)方向であるが、インクカートリッジ内圧力は、内部負圧発生手段の付勢圧力を設定し、ヘッドノズル液面圧力が規定値範囲になるように設定される。
【0094】
すなわち、次の関係式、
ヘッドノズル液面圧力P3=(ヘッドノズル面からインクカートリッジ揚水高さ圧:P1)+(インクカートリッジ内圧:P2)
を満たすように、インクカートリッジの位置(ヘッドノズル面を基準とする鉛直下方の高さ位置、図11におけるL)及びカートリッジ内の負圧値を設定する。
【0095】
また、各インクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kとサブタンク84C,84M,84Y,84Kとを繋ぐ流路の途中(好ましくは、各インクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kのインク供給口16の近く)には、大気開放が可能なバルブ(大気開放バルブ)92C,92M,92Y,92Kが設けられている。何れかのインクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kについてインク残量エンド(これ以上インク袋からインクを取り出すことができないという残量の限界)が検出された場合に、該当するインクカートリッジ90C,90M,90Y,90Kの大気開放バルブ92C,92M,92Y,92Kを開放する(大気に連通させる)ことでインク供給路内のインクをヘッド部82に送り出すことができる。これにより、インク流路内のインクを無駄なく利用することが可能である。
【0096】
図8及び図11で説明したように、本発明の実施形態に係るインクカートリッジによれば、扁平インクカートリッジの配置高さと、内部の負圧値を設定することで、インクカートリッジの配置自由度を上げる効果があり、装置高さを低減することができる。
【0097】
〔ピットイン・インク供給方式のインクジェット記録装置への適用例〕
図12は本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置110は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kを有するヘッド部112と、各印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kに供給するインクを貯蔵しておくインクカートリッジ114(114C,114M,114Y,114K)と、記録紙116を供給する給紙部118と、ガイドシャフト120に支持されながらガイドレール122に沿ってヘッド部112を記録紙搬送方向と略直交する主走査方向に走査させるキャリッジ124と、ヘッド部112が有する各色の印字ヘッド112K,112C,112M,112Yのそれぞれに連結され、各印字ヘッド112K,112C,112M,112Yの内部に負圧を発生させるとともに各色インクのサブタンクとしても機能する、印字ヘッドと同数の負圧維持部126(126C,126M,126Y,126K)と、を備えている。
【0098】
各色の印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kの構造は、図9及び図10で説明した例と同様であるため、説明を省略する。
【0099】
図12における給紙部118には、所定のサイズに切断されたカット紙が装填される給紙カセットを用いる方式が適用される。複数のサイズの記録紙116に印字を行う場合には、給紙部118に装着されている給紙カセットを取り出し、所望のサイズの記録紙116が装填された給紙カセットに交換する。なお、同一サイズの異なる紙種の記録紙116を装填したカセットを用意してもよい。
【0100】
このように、インクジェット記録装置110は複数種類の記録紙を利用可能に構成されており、給紙カセットには装填される記録紙116の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体が取り付けられ、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、インクジェット記録装置110は使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて装置内の各部が制御される。例えば、記録紙116の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行ってもよい。
【0101】
給紙部118に装填された記録紙116は、給紙ローラ130の回動によって搬送路132に送り出され、搬送路132に設けられた搬送ローラ134に沿って垂直方向上側に搬送されるとともに、搬送路132において表裏が反転されて(搬送路132内で1回ターンして)ヘッド部112の直下へ送られる。記録紙116は、ヘッド部112の直下において搬送ローラ136によって所定の平面性を維持されながら一定の搬送ピッチで水平面内の所定の搬送方向(副走査方向、矢印線で図示)に送られる。
【0102】
記録紙116がヘッド部112の直下の印字領域に到達すると、キャリッジ124を主走査方向に走査させながら、各印字ヘッド112K,112C,112M,112Yの記録紙116と対向する面に設けられたノズルから各色インクを吐出させて主走査方向の印字を実行する。1回の主走査方向に印字が終わると、記録紙116は副走査方向に所定の距離だけ送られ、キャリッジを主走査方向に移動させながら主走査方向の印字が行われる。このようにして、副走査方向に記録紙116を一定ピッチずつ搬送方向へ送りながら主走査方向の印字を繰り返すことで、記録紙116の全面にわたって所望の画像が記録される。所望の画像が形成された記録紙116は、所定の搬送方向に送られて排紙部138から装置外部に排出される。
【0103】
各印字ヘッド112K,112C,112M,112Yのそれぞれに供給されるインクを貯蔵しておくインクカートリッジ114(Cインクに対応するCインクカートリッジ114C、Mインクに対応するMインクカートリッジ114M、Yインクに対応するYインクカートリッジ114Y、Kインクに対応するKインクカートリッジ114K、これらを総称してインクカートリッジ114と記載する。)は、装置本体と分離可能なサブカートリッジ140に設けられるインクカートリッジ挿入口(図12中不図示、図13の符号142C,142M,142Y,142K)に装着される。
【0104】
本例に示すインクジェット記録装置110では、インクカートリッジ114が装着されるサブカートリッジ140を装置前面側から装置本体に着脱可能な構造を有している。また、サブカートリッジ140の正面(サブカートリッジ140を装置本体に装着したときの装置前面に対応する面)には、インクカートリッジ114を挿入するためのインクカートリッジ挿入口142C,142M,142Y,142Kが設けられており、装置の前面(フロント面)側からインクカートリッジ114の着脱(交換)作業が可能な構造となっている。
【0105】
〔サブカートリッジの説明〕
次に、サブカートリッジの構成について説明する。図13は、サブカートリッジ140の斜視図であり、図14はサブカートリッジ140をインクジェット記録装置10本体に装着した状態の装置上側から見た平面図である。なお、図14では、サブカートリッジ140の図示を明示するためヘッド部112と走査機構の詳細な図示は省略されている。
【0106】
図13に示すように、サブカートリッジ140は、その前面(正面)にインクカートリッジ挿入口142C,142M,142Y,142Yを有する。
【0107】
インクカートリッジ挿入口142C,142M,142Y,142Kを介してインクカートリッジ装着部144C,144M,144Y,144Kにインクカートリッジ114C,114M,114Y,114Kが装着されると、インクカートリッジ114C,114M,114Y,114Kはサブカートリッジ140の内部に設けられたインク供給路146を介して、インク供給連結部148(148C,148M,148Y,148K)と連通する。図示の便宜上、図13ではインク供給路146を1本の線で模式的に図示したが、サブカートリッジ140の内部には各色のインクに対応するインク流路が個別に設けられている。
【0108】
インク供給連結部148は、サブカートリッジ140をインクジェット記録装置本体に装着した状態におけるヘッド部112の走査領域の一方の端部に設けられている。ヘッド部112の端部には、サブカートリッジ140のインク供給連結部148に対して連結/離脱可能な連結部149が設けられている(図14参照)。
【0109】
本例に示すインクジェット記録装置110は、ヘッド部112にインク充填が必要になると、キャリッジ124をインク供給連結部148が設けられる走査領域の一方の端部に移動させ、連結部149をインク供給連結部148に接続することで、サブカートリッジ140からヘッド部112にインクが供給されるピットイン・インク供給方式が採用される。
【0110】
ヘッド部112の連結部149とサブカートリッジ140のインク供給連結部148が嵌合連結されるときのヘッド部112の位置をホームポジションとし、記録待機中や印字処理開始時及び印字処理終了時、或いはメンテナンス実行時にはヘッド部112をホームポジションに移動させるようにキャリッジ124の駆動が制御される。
【0111】
サブカートリッジ140には、印字領域における記録紙(図12中の符号116)の搬送ガイドとなる搬送ガイド部150と、縁なし印字時の記録紙116の幅からはみ出したインクを受けるインク受容部152と、の機能を備えたガイド部材154を備えている。このガイド部材154は、その外縁部分に形成された凸部が印字領域における記録紙の搬送ガイド部150となり、周囲を搬送ガイド部150(凸部)で囲まれた領域(凹部)がインク受容部152となっている。
【0112】
ガイド部材154にインクなどの汚れが付着した場合には、ユーザがサブカートリッジ140から取り外して清掃または交換することができる。ガイド部材154には樹脂材料が好適に用いられる。インク受容部152に多孔質部材や不織布など液体を吸収する吸収部材を備え、インク受容部152が廃インクで一杯になるとガイド部材154から吸収部材のみを取り出すように構成すると、インク受容部152のメンテナンスが容易になる。
【0113】
サブカートリッジ140には、ヘッド部112のノズル面に対して密着し得るキャップ部材(図14中不図示、図21中の符号260)と、該キャップ部材に連通する吸引ポンプ(図14中不図示、図21中の符号288)と、を有する回復ユニット160が配設される。回復ユニット160は、ヘッド部112がサブカートリッジ140に連結された状態(ホームポジションに位置する状態)で、ヘッド部112のノズル面直下に位置している。回復ユニット160の構成について詳細は後述するが、印字処理開始前や印字待機中などの非印字時には、ヘッド部112のノズル面にキャップ部材を密着させて、ノズル内のインクの乾燥を防止し、インクの粘度上昇による吐出異常を回避する。
【0114】
また、ノズル内(ヘッド内)に気泡が発生した場合やノズル内の増粘インクをノズルから除去する場合には、前記キャップ部材をノズル面に密着させて吸引ポンプを作動させることでノズルからインクを吸引する。この吸引動作により、ヘッド部112には連結部149側から新しいインクが供給される。
【0115】
サブカートリッジ140には、回復ユニット160により吸引された廃インクを回収する廃インクタンク(廃インク回収部)162を備えている。この廃インクタンク162は、サブカートリッジ140に設けられた廃インク流路164を介して回復ユニット160と連通される。
【0116】
廃インクタンク162は、サブカートリッジ140を装置本体から取り出した状態でサブカートリッジ140の下面側から取り外すことができる。したがって、廃インクタンク162が廃インクで一杯になった場合には、サブカートリッジ140から取り外して新しい廃インクカートリッジに交換可能であり、廃インクタンク162のみを廃棄することができる。なお、インク受容部152と廃インクタンク162とをチューブなどの流路部材を介して連通させ、インク受容部152に収容されるインクを廃インクタンク162に集めるように構成してもよい。
【0117】
上述したように、印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kへインクを供給するインク供給系と、インク受容部152や回復ユニット160、廃インクタンク162から構成されるインク回収系と、をサブカートリッジ140内に集約して収納することでインクチューブの引き回しや廃インクのメンテナンスをユーザが容易に行うことができる。
【0118】
図15はヘッド部112を上面から見た平面模式図(一部に透視断面を含む図)である。図15に示したように、ヘッド部112は、Cインクを吐出する複数のノズルが副走査方向に配列されたCノズル列172Cと、Mインクを吐出する複数のノズルが副走査方向に配列されたMノズル列172Mと、Yインクを吐出する複数のノズルが副走査方向に配列されたYノズル列172Yと、Kインクを吐出する複数のノズルが副走査方向に配列されたKノズル列172Kと、を備え、ヘッド部112の上部には、各色のノズル列172C,172M,172Y,172Kに対応して各色インク用の負圧維持部126C,126M,126Y,126Kが設けられている。
【0119】
それぞれの負圧維持部126C,126M,126Y,126Kは、チューブその他の適宜の流路形成部材(図中の符号174として図示)を介して、対応する連結部149C,149M,149Y,149Kと連通している。以後、説明の便宜上、特に色を特定せずに、負圧維持部126C,126M,126Y,126Kを指す場合に符号126で表す。同様に、連結部149C,149M,149Y,149Kについても、色を特定しない場合に符号149で表すものとする。
【0120】
ヘッド部112の主走査方向の一端部(連結部149が形成されている側と反対側の端部)には、気泡排出チャンバ180が設けられており、各負圧維持部126の上部に形成された排出口184は、それぞれチューブその他の適宜の流路形成部材より成る気泡排出流路186と逆止弁188とを介して気泡排出チャンバ180に連通されている。なお、逆止弁188に代えて開閉制御可能なバルブ(開閉バルブ)を用いてもよい。
【0121】
また、気泡排出チャンバ180の底面には、複数の開口(気泡排出孔208)が形成されており、この底面に、後述する回復ユニット160のキャップ(図21中の符号260)を密着させて吸引ポンプ(図21中の符号288)で減圧することにより、気泡吸引が行われる。
【0122】
〔負圧維持部の説明〕
次に、負圧維持部126の構造について詳説する。図16は、負圧維持部126の構成を模式的に示した側面図(図15における矢印A方向から見た図)である。
【0123】
図16に示すように、負圧維持部126は、ヘッド部112へ供給されるインクが一旦貯留されるインク収容容積を有するサブタンク190を備え、該サブタンク190の一部の面(側面部)が可塑性膜192と板バネ194とから成る弾性変形部材196によって構成されている。
【0124】
すなわち、サブタンク190は、その内部圧力が大気圧力よりも小さい場合に少なくともその一部が弾性変形する構造を有し、サブタンク190の容積が収縮することで負圧を発生させる構造となっている。また、サブタンク190の内部圧力が大気圧力になった場合は弾性変形の復元力でその容積は復元される。
【0125】
本例の負圧維持部126は、外観形状を維持し得る程度に硬質の材料から成るサブタンク190の容器の一壁面に、円形の可塑性膜192が取り付けられており、この可塑性膜192に十字形状の板バネ194が固着された構造を有し、内部圧力の変化によって可塑性膜192が変位する。
【0126】
サブタンク190は、その内部の圧力が大気圧の場合には板バネ194に変形力が作用しないが、内部圧力が負圧になると、可塑性膜192と板バネ194はサブタンク190の容積を縮小させる方向に変形し、サブタンク190の内部に負圧が発生するように構成されている。
【0127】
可塑性膜192と板バネ194から成る弾性変形部材196がサブタンク190の容積を縮小させる方向に変位すると、板バネ194の弾性力(復元力)により、サブタンク190の内部容積(すなわち、負圧維持部126の内部容積)を拡大させる方向に力が働く。この弾性変形部材196の作用によって、サブタンク190の内部圧力は負圧に維持される。板バネ194の形状(弾性係数)は、弾性変形部材196の変形量と変形時の発生圧力によって適宜設計される。
【0128】
図16に示す態様では、サブタンク190の少なくとも1つの壁面に可塑性膜192と板バネ194とを面同士で接着(溶着)させた弾性変形部材196を備える構成を例示したが、弾性変形部材196は上記構成以外にも、板バネと可塑性膜とをサンドイッチ状にはさみ込んでこれらを溶着する構成でもよい。
【0129】
負圧維持部126には、図15で説明した連結部149へと繋がるインク供給口202と、ヘッド部112との連通口であるヘッド連通口204が設けられている。図13及び図14で説明したように、連結部149がサブカートリッジ140のインク供給連結部148に連結されることにより、インクカートリッジ114と図16のサブタンク190が連通し、インク供給口202を介してサブタンク190内にインクが供給される。
【0130】
また、負圧維持部126の下面(サブタンク190の底面部)には、ヘッド部112との連通口であるヘッド連通口204が設けられており、このヘッド連通口204を介して該サブタンク190からヘッド内にインクが供給される。
【0131】
サブタンク190の上部には、気泡溜まり部206が形成されている。気泡溜まり部206は、上方に向かって流路断面が徐々に小さくなる滑らかな曲面形状(例えば、先細りのテーパー状)を有しており、ヘッド部112からサブタンク190内に流入した気泡がその浮力で上方に移動し、途中で引っかかることなく、気泡溜まり部206に導かれ、気泡溜まり部206の上部に滞留するようになっている。なお、気泡溜まり部206の内面形状は、上記に限らず、例えば、テーパー状(錐面形状)に代えて、半球形状などでもよい。
【0132】
気泡溜まり部206の最上部に設けられた排出口184は、気泡排出流路186と連通している。図15で説明したとおり、気泡排出流路186には逆止弁188(または開閉バルブ)が設けられ、さらに気泡排出流路186の排出口184(気泡排出口)と反対側の端部は気泡排出チャンバ180と連通している(図15参照)。
【0133】
上記構成から成る負圧維持部126によれば、図17に示すように、サブタンク190内のインク量に応じて可塑性膜192が変位し、負圧維持部126の内部圧力も変化する。
【0134】
図17中破線で示す可塑性膜192’はインクが十分に充填された状態(ホームポジションでのピットインによるインク供給が完了した直後の初期状態)を示し、実線で示す可塑性膜192は、印字ヘッドによるインクの消費に伴って、サブタンク190内のインクが減少し、負圧維持部126内部圧力(負圧の絶対値)が大きくなり、インクの補充が必要になった状態を示している。
【0135】
可塑性膜192の変化量と負圧維持部126の内部圧力の変化量(すなわち、サブタンク190の容積変化量)は相関があるため、可塑性膜192の変化量を観測(検出)することで、間接的に負圧維持部126の内部圧力を検出することができる。
【0136】
図18を用いて、負圧維持部126の内部圧力を検出する手段の一例を説明する。図18(a),(b)には、可塑性膜192の変形量を検出する検出機構220(負圧維持部126の内部圧力検出部)の構成例を示す。図18(a),(b)に示す検出機構220は、可塑性膜192の変形量に応じて回動するアクチュエータ222と、2つの光学式センサ224,226を含んで構成される。
【0137】
第1のセンサ224は、可塑性膜192の初期状態に対応する位置に設けられ、負圧維持部126がサブカートリッジ140に連結された状態でヘッド部112のノズル面高さとインクカートリッジ114の位置(高さ)との水頭圧差(サブタンクの初期充填圧力)分の内圧を検出する。
【0138】
第2のセンサ226は、プリント実行時における負圧維持部126の内部圧力(負圧)の上限圧力(ピットインによるインク供給が必要なインク残量のレベルに対応する内部圧力)を検出する。
【0139】
図18(a)は、負圧維持部126がサブカートリッジ140が連結されて負圧維持部126内にインクが充填された状態であり、この状態で検出される負圧維持部126の内部圧力(充填完了時の初期充填圧力)は、例えば、−10mmH2Oである。
【0140】
また、図18(b)は、プリント実行時における負圧維持部126の内部圧力の上限状態(インク補充が必要な状態)であり、この状態で検出される負圧維持部126の内部圧力は、例えば、−70mmH2Oである。
【0141】
なお、図18(a),(b)に示すアクチュエータ222に代わりストレンゲージ(ひずみ検出部材)を用いることも可能である。また、図18(a),(b)には、光学式センサを2つ備える態様を例示したが、2つのセンサのうち第1のセンサ224は省略可能であり、少なくとも、可塑性膜192の変形量(サブタンク190の容積変化量)が所定量以上となったことを検出するセンサ(図18(a),(b)ではセンサ226)を備えていればよい。
【0142】
〔インク供給連結部の構造例〕
図19(a),(b)は、サブカートリッジ140側に設けられるインク供給連結部148と、ヘッド部112の負圧維持部126側に設けられるインク供給用の連結部149の構造例を示す断面図である。
【0143】
図19(a)は、負圧維持部126側の連結部149とサブカートリッジ140のインク供給連結部148が離間した状態を示し、図19(b)は、両者が連結した状態を示す。
【0144】
図19(a)に示すように、負圧維持部126側の連結部149の内部は、弾性部材(例えば、バネ)230の力によってボール(弁体)232をインク流入方向と逆方向(図の右方向)に付勢して、ボール232を小径の流路の端面(弁座)234に押し当ててインク流路を塞ぐ逆止弁の構造を有している。
【0145】
その一方、この連結部149に嵌合されるサブカートリッジ140側のインク供給連結部148は、連結部149の挿入口236に挿入可能なインク供給針244を有し、インク供給針244の先端近くの周面には、インク供給針244の内部流路246と連通する開口穴248が形成されている。
【0146】
図19(a)に示す離間状態では、弾性部材(例えば、バネ)230により付勢されたボール232により、挿入口236の流路が塞がれ、弁が閉じた状態となる。
【0147】
図19(b)に示す連結状態では、挿入口236にインク供給針244が挿入されることにより、インク供給針244の先端によってボール232が弾性部材230の付勢方向と反対方向へ押されて移動し、インク供給針244の開口穴248を通ってインクが連結部149の内部へと流れる。すなわち、図19(b)に示す連結状態ではボール232による弁が開いた状態となり、図12で説明したヘッド部112とインクカートリッジ114とが連通状態となる。
【0148】
〔気泡排出路に用いられる弁構造の例〕
図20(a),(b)には、図16で説明した逆止弁188の構造例を示す。なお、図20(b)は図20(a)の20b−20b’線に沿う断面図である。図20(a)に示すように、逆止弁188は、略球体のボール(弁体)250が流路252内に遊挿された構造を有し、ボール250が収容されている流路252の負圧維持部126と連通する側(図20(a)における下側)には、ボール250により封止可能な大きさの流路断面積を有する開口254が形成され、気泡排出チャンバ180と連通する側(図20(a)における上側)には、ボール250の直径よりも大きな略円形状の内側に凸形状部256を有する開口258(ボール250が当接しても流路が封止されない流路断面の形状を有する開口)を備えている。
【0149】
したがって、気泡排出チャンバ180側の吸引ポンプ(図21に符号288で図示)により吸引される状態ではボール250が開口258の端面(凸形状部256)に当接することで、負圧維持部126側の開口254が開放され、ボール250と開口254の隙間から気泡が排出される(順方向の圧力により逆止弁188が開いた状態)。
【0150】
その一方、気泡排出チャンバ180側の吸引ポンプ(図21に符号288で図示)が停止している状態(気泡排出チャンバ180が吸引されない状態)ではボール250が負圧維持部126側の開口254と接触して開口254を封止する(逆方向の圧力により弁が閉じた状態)。なお、図20(a),(b)に示す弁構造はあくまでも一例であり、他の弁構造を適用してもよい。
【0151】
〔回復ユニットの構成例〕
図21はヘッド部112及び回復ユニット160の概略構成を示す模式図である。同図は、ヘッド部112を正面(図15の矢印B方向)から見た図であり、説明の便宜上、一部に透視断面を含んでいる。図21では、図示の便宜上、Kインク用の負圧発生部126Kについてのみ検出機構220を記載したが、他の色についても同様に、それぞれの負圧維持部126C,126M,126Y,126Kについて検出機構220が設けられている。
【0152】
図21に示すとおり、回復ユニット160は、ヘッド部112のノズル面(インク吐出面)112A及び気泡排出チャンバ180の下面(気泡排出孔208の形成面)に圧接されるキャップ260を備えている。
【0153】
キャップ260は、ノズル面112Aのノズル形成領域を覆う第1のキャップ部(ノズル吸引用キャップ部)262と、気泡排出チャンバ180の気泡排出孔208形成領域を覆う第2のキャップ部(チャンバ吸引用キャップ部)264とが仕切壁266を挟んで一体的に組み合わされた構造を有しており、第1のキャップ部262及び第2のキャップ部264の各排出口272、274は、それぞれ別々のバルブ282,284を介して共通の吸引ポンプ288に接続される。吸引ポンプ288は、図13で説明した廃インクタンク162に接続されている。
【0154】
なお、図21に示した第1のキャップ部262に繋がるバルブ282を「第1バルブ282」と呼び、第2のキャップ部264に繋がるバルブ284を「第2バルブ284」と呼ぶことにする。
【0155】
キャップ260は、不図示の上下駆動機構に支持されており、ノズル面112Aから離れた退避位置と、ノズル面112Aに圧接するキャッピング位置とに移動可能である。なお、ノズル面112Aと気泡排出チャンバ180の下面は同一平面上にあり、ノズル面112A及び気泡排出チャンバ180の下面に接触するキャップ260の接触部には、圧接による密着性(密閉性)を高めるための弾性部材(シール部材)278が設けられている。
【0156】
上記構成によれば、不図示の上下駆動機構を動作させて、ヘッド部112のノズル面112Aに第1のキャップ部262を密着させるとともに、気泡排出チャンバ180の気泡排出孔208の形成面に第2のキャップ部264を密着させて、第1バルブ282、第2284を開き、吸引ポンプ282を動作させることで、ヘッド部112及び負圧維持部126内のインクを吸引して、ヘッド内及び負圧維持部126内の気泡を外部に排出することができる。また、ヘッド部112にインクを初期充填する際にも、キャップ260をノズル面112A及び気泡排出チャンバ180に圧接して、バルブ282,284を制御しつつ吸引ポンプ288を作動させる。
【0157】
本例では、第1のキャップ部262と第2のキャップ部264とを有する1つのキャッブ部材(キャップ260)を用いたが、第1のキャップ部262に相当するノズル吸引用のキャップと、第2のキャップ部264に相当するチャンバ吸引用のキャップとをそれぞれ個別のキャップ部材によって構成し、各キャップ部材について個別に上下駆動機構を設ける態様も可能である。
【0158】
〔制御系の説明〕
図22は、インクジェット記録装置110のシステム制御系の構成を示すブロック図である。本例のインクジェット記録装置110は、インクカートリッジ114(図12参照)のインク残量を検出するためのインク残量検出部320と、負圧維持部126の可塑性膜192の変位を検出するための可塑性膜変位検出部330と、回復ユニット160(図13,図21参照)の吸引ポンプ288を駆動するポンプドライバ340と、第1バルブ282、第2バルブ284並びに大気開放バルブ92を制御するバルブドライバ350を備えている。
【0159】
また、図22に示すとおり、インクジェット記録装置110は、通信インターフェース370、システムコントローラ372、画像メモリ374、ROM375、モータドライバ376、ヒータドライバ378、プリント制御部380、画像バッファメモリ382、ヘッドドライバ384等を備えている。
【0160】
インク残量検出部320には、図2で説明した発光素子20,22及び受光素子24,26、並びに後述するインク供給路(図24の符号401)のインク残量を検出する光学式センサ(図24の符号404)などが含まれる。
【0161】
インク残量検出部320から得られるインクカートリッジ114のインク残量情報は、ホストコンピュータ386のディスプレイなど、所定の表示手段により表示されるとともに、インクカートリッジ114内のインク残量が少なくなると報知手段によりその旨が報知され、インクカートリッジ114の交換が促される。
【0162】
可塑性膜変位検出部330は、図18で説明した検出機構220に相当する。すなわち、各色の負圧維持部126についてそれぞれ可塑性膜192の変位を検出するために配設された光学式のセンサ224,226が図22の可塑性膜変位検出部330に含まれる。
【0163】
可塑性膜変位検出部330から得られる変位情報は、各負圧維持部126の内部のインク残量並びに内部圧力(負圧値)を反映した情報であり、かかる情報に基づき負圧維持部126内のインク残量が所定量を下回ることが検出されると(すなわち、負圧維持部126の内部圧力が所定の値よりも大きな負圧値になると)、ピットインによる負圧維持部126へのインクの補給が行われる。
【0164】
ポンプドライバ340は、システムコントローラ372からの指令に従い、吸引ポンプ288のオン/オフ制御や駆動方向の制御を行う制御ブロックである。
【0165】
バルブドライバ350は、システムコントローラ372からの指令に従い、図21で説明した回復ユニット160のバルブ282,284や、図11で説明した大気開放用のバルブ92(92C,92M,92Y,92K)の開閉を行う制御ブロックである。
【0166】
通信インターフェース370は、ホストコンピュータ386から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース370にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0167】
ホストコンピュータ386から送出された画像データは通信インターフェース370を介してインクジェット記録装置110に取り込まれ、一旦画像メモリ374に記憶される。画像メモリ374は、通信インターフェース370を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ372を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ374は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0168】
システムコントローラ372は、通信インターフェース370、画像メモリ374、ポンプドライバ340、バルブドライバ350、モータドライバ376、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御手段である。システムコントローラ372は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ386との間の通信制御、画像メモリ374の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ388やヒータ389を制御する制御信号を生成する。
【0169】
ROM375には、システムコントローラ372のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM375は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。画像メモリ374は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0170】
モータドライバ376は、システムコントローラ372からの指示にしたがってモータ388を駆動するドライバ(駆動回路)である。なお、図22には、1つのモータドライバ376とモータ388を図示したが、インクジェット記録装置110は、複数のモータ及びこれらを駆動するモータドライバを備えている。一例を挙げると、図12に示す給紙ローラ130を駆動するモータやキャリッジ124を動作させるモータ、記録紙116の搬送路に備えられる搬送ローラ134,136を駆動するモータなどがある。図22に示したシステムコントローラ372は、これら複数のモータに対応した複数のモータドライバを制御している。
【0171】
また、ヒータドライバ378とヒータ389についても同様であり、インクジェット記録装置110は、複数のヒータ及びこれらを駆動するヒータドライバを備えており、システムコントローラ372は、装置内の複数のヒータ及びヒータドライバを制御している。
【0172】
プリント制御部380は、システムコントローラ372の制御に従い、画像メモリ374内の画像データ(多値の入力画像のデータ)からインク吐出制御用の信号(印字データ)を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ384に供給する制御部である。
【0173】
プリント制御部380において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ384を介して各色の印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0174】
プリント制御部380には画像バッファメモリ382が備えられており、プリント制御部380における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ382に一時的に格納される。なお、図22において画像バッファメモリ382はプリント制御部380に付随する態様で示されているが、画像メモリ374と兼用することも可能である。また、プリント制御部380とシステムコントローラ372とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0175】
ヘッドドライバ384はプリント制御部380から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kに設けられた加圧素子108(図10参照)を駆動する。ヘッドドライバ384にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0176】
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース370を介して外部から入力され、画像メモリ374に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の入力画像データが画像メモリ374に記憶される。
【0177】
インクジェット記録装置110では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ374に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ372を介してプリント制御部380に送られ、ディザ法や誤差拡散法などを用いたハーフトーン化処理によって、インク色ごとのドットデータ(打滴配置データ)に変換される。
【0178】
すなわち、プリント制御部380は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部380で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ382に蓄えられる。この色別ドットデータは、各色の印字ヘッド12C,12M,12Y,12Kのノズル101からインクを吐出するためのCMYK打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
【0179】
ヘッドドライバ384は、プリント制御部380から与えられるインク吐出データに基づき、各印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kのノズル101に対応する加圧素子108を駆動するための駆動信号を出力する。
【0180】
記録媒体としての記録紙116の搬送速度とヘッド部112の走査速度に同期して印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kからのインク吐出を制御することにより、記録紙116上に画像が形成される。
【0181】
また、本例のインクジェット記録装置110は、ヘッド部112による印字結果を検出する手段として、印字検出部394を備えている。印字検出部394は、イメージセンサ(例えば、CCD撮像素子やCMOS撮像素子)を含むブロックであり、該イメージセンサによって読み取った読取結果からノズル101の目詰まりその他の吐出異常をチェックする手段として機能する。
【0182】
すなわち、印字検出部394は、記録紙116に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、着弾位置誤差、ドット形状、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部380及びシステムコントローラ372に提供する。
【0183】
次に、上記の如く構成されたインクジェット記録装置110の動作について説明する。
【0184】
〔インクの初期充填動作について〕
インクが未充填の印字ヘッドにインクを初期充填する際、或いはインクカートリッジを交換したときの初期充填の際には、以下に述べる初期充填処理が実行される。
【0185】
先ず、インクカートリッジ114を装置本体(サブカートリッジ140)に装填し、キャリッジ124を走査させてヘッド部112をホームポジションに移動させ、サブカートリッジ140のインク供給連結部148にヘッド部112側の連結部149を連結させる。
【0186】
次に、回復ユニット160のキャップ260を上昇させて、キャップ260をノズル面112A及び気泡排出チャンバ180に圧接する(図21参照)。すなわち、第1のキャップ部262でヘッド部112のノズル形成領域を覆うとともに、第2のキャップ部264で気泡排出チャンバ180の気泡排出孔208の形成領域を覆う。
【0187】
次に、第1のキャップ部262に繋がる第1バルブ282を閉じるとともに、第2キャップ部264に繋がる第2バルブ284を開き、吸引ポンプ288により負圧をかけて、気泡排出流路186の逆止弁188を開き、負圧維持部126(すなわち、サブタンク190)にインクを充填する。
【0188】
このように、インクの初期充填時に第2バルブ284を開き、第1バルブ282を閉じた状態で、負圧維持部126(サブタンク190)の排出口184を介して気泡排出流路186からサブタンク190内の気体を確実に排出することで、サブタンク190内をインクに置換することができる。
【0189】
負圧維持部126(すなわち、サブタンク190)へのインク充填が完了したら、第2バルブ284を閉じるとともに第1バルブ282を開き、吸引ポンプ288により負圧をかけてヘッド内にインクを充填する。
【0190】
インク充填後に吸引ポンプ288を停止すると、インクカートリッジ114の位置(高さ)と、ノズル面高さの水頭差圧分だけ、負圧維持部126の板バネ194が変位し、内圧が維持される。
【0191】
その後、サブカートリッジ140のインク供給連結部148からヘッド部112の連結部149を離間させると、負圧維持部126側のインク供給弁(図19で説明したボール232による逆止弁)が閉じ、負圧維持部126内は板バネ194により負圧に維持される。
【0192】
〔印字中のインク供給制御(ピットイン)について〕
印字中はインク吐出によって負圧維持部126内のインクが消費されるため、負圧維持部126内のインク減少とともに、板バネ194の変位が増加し、負圧が増加する。図18(b)で説明したように、負圧上限が検出されると、ヘッド部112をホームポジションに移動させ、ピットインによるインク補給を行う。ピットインにより、負圧維持部126と、インク供給連結部148が連結された際、負圧維持部126の内部圧力がインク供給連結部148内の圧力より、負圧が大きいため、自然に(供給側からの加圧や被供給側からの吸引などの圧力付与を必要とせずに)インクカートリッジ114から負圧維持部126内へインクが供給される。
【0193】
すなわち、負圧維持部126とインク供給連結部148が連結されると、ノズル面のヘッド内圧力は、インクカートリッジ114とノズル面112Aの揚水高さ分の負圧に回復する。このとき、負圧維持部126の板バネ194が復元する変位分、インクカートリッジ114から負圧維持部126にインクが供給される。
【0194】
図23には、印字実行中のインク供給制御のフローチャートを示す。図23に示すように、プリントが実行されると(ステップS10)、ステップS12において負圧維持部126の可塑性膜192の変位量を検知する第2のセンサ226のオンを監視する。第2のセンサ226がオフと判断されると(ステップS12でNO判定時)、プリントを続行し(ステップS14)、タイマーを用いて第2のセンサ226のスキャンからの時間が計測され(ステップS16)、所定の時間おきに第2のセンサ226のオンが監視される。
【0195】
一方、ステップS12において第2のセンサ226がオンと判断されると(YES判定時)、プリントが中止され、ヘッド部112はホームポジションに移動される(ステップS20)。
【0196】
ヘッド部112がホームポジションに移動されると、負圧維持部126に繋がる連結部149がサブカートリッジ140のインク供給連結部148に連結され(ステップS22)、インクカートリッジ114から負圧維持部126のサブタンク190へインクが供給される(ステップS24)。
【0197】
ステップS24のインク供給中は第1のセンサ224のオンが監視される(ステップS26)。第1のセンサ224がオフの場合には、タイマーを用いて前回の第1のセンサ224のスキャンからの時間が計測され(ステップS28)、所定の時間おきに第1のセンサ224のオンが監視される。
【0198】
一方、ステップS26において第1のセンサ224がオンと判断されると(YES判定時)、負圧維持部126に繋がる連結部149とサブカートリッジ140のインク供給連結部148を離間させ(ステップS30)、当該インク供給制御はステップS12に戻る。
【0199】
上述したように、本実施形態によれば、ピットイン動作によって、サブカートリッジ140のインク供給連結部148に負圧維持部126を連結させた状態ではヘッド部112のノズル面112Aとインクカートリッジ114の水頭圧差によりヘッド内部に適正な負圧を発生させて、インク供給系から負圧維持部126へ自動的にインクを供給することができる。また、インク補給後に、インク供給連結部148との連結を解除し、インク供給連結部148から負圧維持部126を離間させた状態では、ヘッド内部に発生させた負圧は負圧維持部126内の密閉されたサブタンク190により適正に維持される。
【0200】
また、プリントジョブ実行中におけるインク供給を繰り返すことにより連結部149から気泡が混入すると、負圧維持部126(図16参照)の上部にある気泡溜まり部206(図16参照)に該気泡が滞留する。負圧維持部126内の気泡が増加するとサブタンク190内の気泡も増加し、その結果、サブタンク190内に収容されるインク量が減少してしまう。このようにしてサブタンク190内のインク量が減少すると1回のインク供給で印字できるプリント数が減ってしまうので、かかる事態を回避すべく、インク供給のタイミングでキャップ260(図21参照)をノズル面112A及び気泡排出チャンバ180に圧接し、第2バルブ284(図21参照)を開き、第1バルブ282を閉じた状態で、吸引ポンプ288を動作させ、気泡排出口184から負圧維持部126内の気泡を排出するように、制御する態様が好ましい。
【0201】
上述したように、負圧維持部126の気泡排出口184からの気泡吸引手段と、ノズルからのインク吸引手段とを、共通の吸引ポンプ288で兼用し、2種類の吸引モード(吸引ルート)を切り換える切換手段(第1バルブ282及び第2バルブ284)を備える態様によれば、ヘッド部112とサブカートリッジ140とを連結した状態で吸引モードを切り換えて動作させることで、気泡排除、ヘッドメニスカス部の増粘物排除、サブタンク190内へのインク供給、ヘッドノズル面とインクカートリッジ114との水頭圧差による負圧発生、負圧維持を実施可能とする。
【0202】
また、サブタンク190内の気液分離機能でその上側に滞留する気泡を排除するための機能を有しているため、ヘッドへの気泡混入による吐出異常の可能性を低減し、且つ、気液分離された気泡のみを排除可能であり、インクの有効使用率の向上が見込まれる。
【0203】
また、本例のインクジェット記録装置110は、メニスカスの乾燥によりノズル内部のインクが増粘し予備吐出(パージ)、が不可能になった場合に、キャップ260をノズル面112Aに密着させ、更に第1バルブ282を開き(第2バルブ284は閉じる)、吸引ポンプ288を動作させてノズルから増粘インクを吸引することができる。このようにノズル内の劣化インクを吸引除去することで、印字ヘッドは吐出可能な状態になる。
【0204】
なお、図示は省略するが、印字ヘッドのノズルを複数のブロックに分け、キャップ260を該ノズルブロックごとに吸引可能な構造にすることで、吸引による無駄なインク消費を抑制することができる。
【0205】
〔インク残量エンド時のプリントシーケンスについて〕
図24は、インク供給系の構成を模式的に描いた構成図である。同図では、図13で説明したサブカートリッジ140のインク供給連結部148の部分を「ピットイン連結部400」として図示してある。図24に示すように、ピットイン連結部400は、インク供給路401を構成するインク供給チューブ402と大気開放バルブ92を介してインクカートリッジ114と接続されている。インクカートリッジ114は、ヘッド部112のノズル面112Aよりも低い位置に配置されており、インク供給チューブ402によって構成されるインク供給路401には、当該インク供給路401内のインク残量を検出するためのインク残量検出手段(「供給路内インク残量検出手段」に相当、例えば、発光素子と受光素子よりなる光学式センサ)404が設けられている。
【0206】
インクカートリッジ114からピットイン連結部400までのインク供給路401と、該インク供給路401に設けられたインク残量検出手段404は、水平面内(同じ高さの水平面内)に配置される。このような配置形態によれば、大気開放バルブ92を開いてインク供給路401を大気連通させた場合でも、インク残量検出手段404によって「インク無し」が検出されるまで、一定の負圧維持が可能である。
【0207】
図25は、インク残量エンドシーケンスのフローチャートである。
【0208】
図25に示すように、プリントジョブが開始されると(ステップS50)、インクカートリッジ114のインク残量の検出が行われ、検出結果に基づいてカートリッジ内のインク残量がインク交換アラーム表示の規定量以上であるか否かが判断される(ステップS52)。
【0209】
インクカートリッジ114内のインク残量の検出は、図2で説明した受光素子24、26から得られる信号に基づいて行われる。インク残量の評価は、インクカートリッジ114の交換を促すインク交換表示を行うか否かの判定基準となる規定量(「アラーム表示規定量」という)と、インクカートリッジ114の交換が必要(インク取り出し不能)な最終的なエンドレベルを示す規定量(「交換規定量」という)の2段階で判断される。
【0210】
例えば、交換規定量は、インク残量0.1ml(ミリリットル)に設定され、アラーム表示規定量は、交換規定量より手前のインク残量0.3ml(ミリリットル)に設定される。
【0211】
ステップS52において、インクカートリッジ114内のインク残量がアラーム表示規定量以上と判定されれば(YES判定時)、プリントが継続され(ステップS54)、処理はステップS52に戻る。
【0212】
その一方、ステップS52において、インクカートリッジ114内のインク残量がアラーム表示規定量よりも少ないと判定された場合は(NO判定時)、ステップS56へ進み、インクカートリッジの交換を促す表示(警告表示)が行われる。
【0213】
その後、ユーザによってインクカートリッジ114の交換が行われたか否かを判断し(ステップS58)、インクカートリッジの交換が実施されれば、インク交換表示を消し、プリントを続行する(ステップS54)。
【0214】
ステップS58において、ユーザによるインクカートリッジの交換が実施されずに、NO判定となった場合には、ステップS60へ進む。ステップS60では、インクカートリッジ114内のインク残量が交換規定量以上であるか否かが判断される。インクカートリッジ114内に交換規定量以上のインクが残っている場合には、そのままプリントを続行する(ステップS54)。
【0215】
インクカートリッジの交換が行われないまま、プリントが継続され、ステップS60において、インク残量が交換規定量よりも少ないと判定された場合は(NO判定時)、インクカートリッジ114のインク取り出し口(インク供給口16)の下流近傍に設けた大気開放バルブ92を開放し(ステップS62)、この大気開放バルブ92の位置するインク供給路からサブタンク190内のインクを使用してプリントを続行する(図24参照)。
【0216】
この際、ユーザに対しインクカートリッジ交換の表示は継続される。また、大気開放バルブ92を開いてプリントを続行する間、インク供給路に設けたインク残量検出手段404によってインク供給路内のインク残量が検出され、プリントを継続するに足るインク量がインク供給路内に残っているか否かが判断される(図25のステップS64)。
【0217】
ステップS64でインク供給路内のインク残量が「有る」と判断されると、ステップS66に進み、ユーザによるインクカートリッジ114の交換が実施されたか否かの判断を行う。インクカートリッジの交換が実施されずに、NO判定となった場合には、プリントを続行して、ステップS64へ戻る。
【0218】
こうして、ステップS64でインク供給路内のインク残量が「有る」と判断されている間(YES判定時)は、プリントが続行されるが、ステップS64でインク供給路内のインク残量が「無し」と判断されると、プリントを停止する(ステップS68)。
【0219】
また、ユーザによってインクカートリッジ114の交換が実施され、ステップS66でYES判定となった場合には、インク交換表示を消すが、引き続き大気開放バルブ92の位置するインク供給路からサブタンク内のインクを使用してプリントを続行する。その後、当該インク供給路内のインク及びサブタンク内の負圧が規定値以上になった場合に、大気開放バルブ92を閉じて、既述の初期充填動作を行い(ステップS68)、インク供給路内にインクを充填する。
【0220】
なお、インク供給路内のインク残量の検出は、図24で説明したようにインク供給チューブにセンサを設ける形態に限らず、吐出液滴サイズと吐出液滴数をカウントしてインク消費量を計算することにより、流路内のインク残量を推定することで検出を行ってもよい。
【0221】
図25で説明した制御を行うことにより、インクカートリッジ内のインクが無くなっても、インク供給路内に残るインクを利用してプリント続行が可能となる。
【0222】
また、本例のインクジェット記録装置110は、以下のような利点も有する。
【0223】
すなわち、本例のインクジェット記録装置110によれば、給紙部118(給紙カセット)からヘッド部112へ記録紙116を搬送する搬送路を記録紙116の表面と裏面とを反転させる構造とし、給紙部118とその上部に設けられるヘッド部112との間にインクカートリッジ114を備え、給紙カセット及びインクカートリッジ114の着脱操作を装置の正面側(前面側)から行う構造を有するので、装置の奥行き方向の寸法を縮小することができ、更に、装置上面のフリースペース化が実現される。
【0224】
また、インクカートリッジ114を扁平形状とすることで、インクカートリッジ114の高さ方向の寸法を小さくすることが可能になり、装置全体の高さを低くすることが可能になる。
【0225】
インクカートリッジ114が装着されるサブカートリッジ140を備え、サブカートリッジ140内にインク供給系を収納し、更に、サブカートリッジ140は装置本体の正面側から装置本体と着脱可能に構成されるので、インク供給系をコンパクトにまとめることができ、装置内の構造が簡素化される。
【0226】
縁なし印字時や回復処理時に発生する廃インクが収容される廃インクタンク162をサブカートリッジ140内に備え、廃インクタンク162をサブカートリッジ140と着脱可能に構成するので、メンテナンス性の向上が見込まれる。
【0227】
また、サブカートリッジ140には、ヘッド部112直下の印字領域における記録紙116のガイドとなる搬送ガイド部150及び縁なし印字時の記録紙116の幅からはみ出したインクを受けるインク受容部152として機能するガイド部材154を備え、該ガイド部材154をサブカートリッジと着脱可能に構成されるので、印字領域における記録紙116の搬送上の不具合が防止され、縁なし印字時に発生する搬送ガイド部150の汚れのメンテナンスが容易になる。
【0228】
各色の印字ヘッド112C,112M,112Y,112Kは、インク供給時にサブカートリッジ140内に備えられるインク供給系と接続され、ヘッドノズル面とインクカートリッジ114との水頭圧差によってインク供給系から負圧維持部126及びヘッド部112へインクが供給される。また、ヘッド部112の上には、印字中におけるヘッド内の負圧をコントロールする負圧維持部126が接続され、この負圧維持部126によりヘッドノズル面とインクカートリッジとの水頭圧差を基準としてヘッドの内部圧力(負圧)が制御されるので、ヘッドの内部に負圧発生し維持するポンプ等の圧力発生源が不要である。
【0229】
上述したインクジェット記録装置110における負圧維持部126は、弾性変形部材(可塑性膜192及び板バネ194)により負圧を発生させこれを維持する方式であるため、毛細管力を利用してヘッド内の負圧を発生させ維持する従来の吸収部材方式に比べて、インクカートリッジ114内に残留するインクの量が少なくなるので、インク使用率の向上が見込まれる。
【0230】
また、本インクジェット記録装置110は、サブタンク190内に気液分離機能を有する構成であり、従来のヘッドと分離される側に気液分離機能を有するインク吸収部材が設けられる構成におけるインク吸収部材に残留するインクがなく、無駄なインクが発生しない。
【0231】
上述したように、インク供給部に毛細管力を利用したインク吸収部材を介在させる従来方式では、インクの粘度上昇に伴い圧力損失が大きくなりインク供給の応答性が悪化するといった弊害が生じていた。特に低温時にはインクの粘度が高くなり、更に印字デューティが大きい場合にはインク供給の応答性が問題となった。
【0232】
本例では、インク供給部に毛細管力を用いたインク供給部材を備えていないので、上記従来方式に比べてインク供給の応答性が高くなり、インク供給時間が短縮される。また、インク供給の応答性がよいために印字ヘッド内の一定の負圧維持が容易であり、プリント物の濃度変化などを防止する効果を奏している。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】本発明の実施形態に係るインクカートリッジの斜視図
【図2】図1の2−2線に沿う断面図
【図3】インク袋の斜視図
【図4】インク袋の他の形態を示す斜視図
【図5】インク袋の変形の仕方を説明するために用いた断面図
【図6】インク袋の他の形態を示す斜視図
【図7】インク袋の他の形態を示す断面図
【図8】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の要部構成図
【図9】印字ヘッドのノズル配列例を示す図
【図10】印字ヘッドの内部構造例を示す断面図
【図11】本発明の他の実施形態に係るインクジェット記録装置の要部構成図
【図12】本発明の他の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図13】図12のインクジェット記録装置に装着されるサブカートリッジの斜視図
【図14】図12のインクジェット記録装置に装着されるサブカートリッジの平面図
【図15】ヘッド部の平面模式図
【図16】ヘッド部上に搭載される負圧維持部の構成を示す図
【図17】サブタンクの容積変位を説明するために用いた図
【図18】負圧維持部の内部圧力を検出する手段の一例を示す説明図
【図19】サブカートリッジのインク供給連結部とヘッド部側のインク供給用の連結部の構造例を示す断面図
【図20】図16に示す気泡排出口に接続される逆止弁の構造を示す断面図
【図21】ヘッド部及び回復ユニットの概略構成を示す模式図
【図22】本例のインクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図
【図23】印字実行中のインク供給制御の手順を示すフローチャート
【図24】インク供給系の構成を示した模式図
【図25】インク残量エンドシーケンスのフローチャート
【符号の説明】
【0234】
10…インクカートリッジ、12…カートリッジ容器、14,60,70…インク袋、16…インク供給口、20,22…発光素子、24,26…受光素子、30,32,34,36…開口、40…IC記憶チップ、44…折り目、50,52…光透過領域、62,68…板バネ、80…キャリッジ、82…ヘッド部、82A…ノズル面、84…サブタンクユニット、86…ガイドシャフト、88…ガイドレール、100,112C,112M,112Y,112K…印字ヘッド、101…ノズル、108…加圧素子、110…インクジェット記録装置、112…ヘッド部、112A…ノズル面、114…インクカートリッジ、116…記録紙、124…キャリッジ、126…負圧維持部、148…インク供給連結部、149…連結部、160…回復ユニット、180…気泡排出チャンバ、188…逆止弁、190…サブタンク、192…可塑性膜、194…板バネ、196…弾性変形部材、220…検出機構、260…キャップ、288…吸引ポンプ、402…インク供給チューブ、404…インク残量検出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な箱体形状を有するカートリッジ容器の内部に、インク液を収納する可塑性材料もしくは弾性体からなるインク袋が収納された構造を有するインクカートリッジであって、
前記カートリッジ容器は、前記インク袋が収納される容器内部が大気と連通し得る大気連通口を有し、
前記インク袋は、前記カートリッジ容器の形状に適合した扁平形状を有し、
前記インク袋には、当該インク袋の容積を拡大させる方向に付勢してインク袋内に負圧を発生させる負圧発生手段が設けられ、
前記負圧発生手段による負圧方向への付勢力は、前記インク袋内からインクを取り出すために前記インク袋に設けられているインク供給口から遠くなるにつれて連続的にまたは段階的に小さくなっていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
前記負圧発生手段は、前記インク袋の周囲に形成された折り畳みの折り目であり、前記インク供給口から相対的に近い部位の折り目よりも、前記インク供給口から相対的に遠い部位の折り目が大きいことを特徴とする請求項1記載のインクカートリッジ。
【請求項3】
前記負圧発生手段は、前記インク袋の外周面のうち前記インク供給口に近い部分に設けられたバネ部材を含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記負圧発生手段は、前記インク袋の外周面において前記インク供給口からの距離が異なる複数の部位に設けられた複数のバネ部材を含んで構成されており、前記インク供給口から相対的に近い部位に配設されるバネ部材の付勢力は、前記インク供給口から相対的に遠い部位に配設されるバネ部材の付勢力よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のインクカートリッジ。
【請求項5】
前記インク袋は弾性体によって構成されており、当該弾性体は、前記インク供給口から相対的に近い部位の弾性力が前記インク供給口から相対的に遠い部位の弾性力よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のインクカートリッジ。
【請求項6】
前記弾性体によって構成されたインク袋は、前記インク供給口から相対的に近い部位の肉厚が前記インク供給口から相対的に遠い部位の肉厚よりも厚いことを特徴とする請求項5記載のインクカートリッジ。
【請求項7】
前記インク袋は、前記インク供給口からの距離が異なる複数の部位について、当該インク袋の厚み方向に光が貫通し得る光透過性領域を有し、前記カートリッジ容器には、前記複数の部位での光の貫通を可能とする複数の光通過部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項8】
前記光通過部は、前記大気連通口の開口であることを特徴とする請求項7記載のインクカートリッジ。
【請求項9】
前記インク袋に対するインク充填終了時の内部負圧、インク充填容量、充填回数、充填日時のうち少なくとも1つの情報を記憶したIC記憶チップが搭載されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のインクカートリッジと、
前記インクカートリッジから供給されるインクをノズルから吐出する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドの上部に配置され、前記インクカートリッジから供給されるインクを貯留するとともに、前記印字ヘッドに連通し、該印字ヘッドへインクを供給するサブタンクと、
前記印字ヘッドを記録媒体の搬送方向と直交する方向に走査させる走査手段と、
を備えたインクジェット記録装置であって、
前記インクカートリッジと前記サブタンクとが連結された状態のときに、前記印字ヘッドのノズル液面圧力が−20mmH2O〜−70mmH2Oとなるように設定されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項11】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のインクカートリッジと、
前記インクカートリッジから供給されるインクをノズルから吐出する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドの上部に配置され、前記インクカートリッジから供給されるインクを貯留するとともに、前記印字ヘッドに連通し、該印字ヘッドへインクを供給するサブタンクと、
前記印字ヘッドを記録媒体の搬送方向と直交する方向に走査させる走査手段と、
前記インクカートリッジの前記インク袋内のインク残量を検出するカートリッジ内インク残量検出手段と、
前記インクカートリッジから前記印字ヘッドへインクを供給するためのインク供給路と、
前記インク袋の前記インク供給口下流近傍に設けられた大気開放バルブと、
前記インク供給路内のインク残量を検出する供給路内インク残量検出手段と、
前記カートリッジ内インク残量検出手段で検出されたインク残量が所定の規定値を下回った場合に前記大気開放バルブを開放して、プリントを続行する制御を行う制御手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記サブタンクの一部の面は、可塑性膜と板バネとを組み合わせて成る弾性変形部材によって構成されており、前記弾性変形部材が変位することにより、当該サブタンク内が負圧に維持されることを特徴とする請求項10又は11記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記走査手段による前記印字ヘッドの走査領域の少なくとも一方の端部に、前記インクカートリッジの前記インク供給口と繋がるインク供給路のインク供給連結部が設けられ、
前記印字ヘッド上のサブタンク側に、前記インク供給連結部に対して連結及び離間可能な連結部が設けられ、
前記サブタンク内にインクを供給する場合には前記連結部を前記インク供給連結部に連結させ、前記印字ヘッドによる印字実行時には前記連結部を前記インク供給連結部から離間させることを特徴とする請求項10乃至12の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項1】
扁平な箱体形状を有するカートリッジ容器の内部に、インク液を収納する可塑性材料もしくは弾性体からなるインク袋が収納された構造を有するインクカートリッジであって、
前記カートリッジ容器は、前記インク袋が収納される容器内部が大気と連通し得る大気連通口を有し、
前記インク袋は、前記カートリッジ容器の形状に適合した扁平形状を有し、
前記インク袋には、当該インク袋の容積を拡大させる方向に付勢してインク袋内に負圧を発生させる負圧発生手段が設けられ、
前記負圧発生手段による負圧方向への付勢力は、前記インク袋内からインクを取り出すために前記インク袋に設けられているインク供給口から遠くなるにつれて連続的にまたは段階的に小さくなっていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
前記負圧発生手段は、前記インク袋の周囲に形成された折り畳みの折り目であり、前記インク供給口から相対的に近い部位の折り目よりも、前記インク供給口から相対的に遠い部位の折り目が大きいことを特徴とする請求項1記載のインクカートリッジ。
【請求項3】
前記負圧発生手段は、前記インク袋の外周面のうち前記インク供給口に近い部分に設けられたバネ部材を含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記負圧発生手段は、前記インク袋の外周面において前記インク供給口からの距離が異なる複数の部位に設けられた複数のバネ部材を含んで構成されており、前記インク供給口から相対的に近い部位に配設されるバネ部材の付勢力は、前記インク供給口から相対的に遠い部位に配設されるバネ部材の付勢力よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のインクカートリッジ。
【請求項5】
前記インク袋は弾性体によって構成されており、当該弾性体は、前記インク供給口から相対的に近い部位の弾性力が前記インク供給口から相対的に遠い部位の弾性力よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のインクカートリッジ。
【請求項6】
前記弾性体によって構成されたインク袋は、前記インク供給口から相対的に近い部位の肉厚が前記インク供給口から相対的に遠い部位の肉厚よりも厚いことを特徴とする請求項5記載のインクカートリッジ。
【請求項7】
前記インク袋は、前記インク供給口からの距離が異なる複数の部位について、当該インク袋の厚み方向に光が貫通し得る光透過性領域を有し、前記カートリッジ容器には、前記複数の部位での光の貫通を可能とする複数の光通過部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項8】
前記光通過部は、前記大気連通口の開口であることを特徴とする請求項7記載のインクカートリッジ。
【請求項9】
前記インク袋に対するインク充填終了時の内部負圧、インク充填容量、充填回数、充填日時のうち少なくとも1つの情報を記憶したIC記憶チップが搭載されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のインクカートリッジと、
前記インクカートリッジから供給されるインクをノズルから吐出する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドの上部に配置され、前記インクカートリッジから供給されるインクを貯留するとともに、前記印字ヘッドに連通し、該印字ヘッドへインクを供給するサブタンクと、
前記印字ヘッドを記録媒体の搬送方向と直交する方向に走査させる走査手段と、
を備えたインクジェット記録装置であって、
前記インクカートリッジと前記サブタンクとが連結された状態のときに、前記印字ヘッドのノズル液面圧力が−20mmH2O〜−70mmH2Oとなるように設定されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項11】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のインクカートリッジと、
前記インクカートリッジから供給されるインクをノズルから吐出する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドの上部に配置され、前記インクカートリッジから供給されるインクを貯留するとともに、前記印字ヘッドに連通し、該印字ヘッドへインクを供給するサブタンクと、
前記印字ヘッドを記録媒体の搬送方向と直交する方向に走査させる走査手段と、
前記インクカートリッジの前記インク袋内のインク残量を検出するカートリッジ内インク残量検出手段と、
前記インクカートリッジから前記印字ヘッドへインクを供給するためのインク供給路と、
前記インク袋の前記インク供給口下流近傍に設けられた大気開放バルブと、
前記インク供給路内のインク残量を検出する供給路内インク残量検出手段と、
前記カートリッジ内インク残量検出手段で検出されたインク残量が所定の規定値を下回った場合に前記大気開放バルブを開放して、プリントを続行する制御を行う制御手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記サブタンクの一部の面は、可塑性膜と板バネとを組み合わせて成る弾性変形部材によって構成されており、前記弾性変形部材が変位することにより、当該サブタンク内が負圧に維持されることを特徴とする請求項10又は11記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記走査手段による前記印字ヘッドの走査領域の少なくとも一方の端部に、前記インクカートリッジの前記インク供給口と繋がるインク供給路のインク供給連結部が設けられ、
前記印字ヘッド上のサブタンク側に、前記インク供給連結部に対して連結及び離間可能な連結部が設けられ、
前記サブタンク内にインクを供給する場合には前記連結部を前記インク供給連結部に連結させ、前記印字ヘッドによる印字実行時には前記連結部を前記インク供給連結部から離間させることを特徴とする請求項10乃至12の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2008−87282(P2008−87282A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269585(P2006−269585)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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