説明

インクカートリッジ課金システム、インクカートリッジ課金方法、インクカートリッジ課金プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】配達された推奨インクカートリッジを使用していないにも拘わらず、その代金を支払わなければならない。
【解決手段】端末装置CLxは、インクジェットプリンタIPxに使用されているインクカートリッジUIが、未使用のインクカートリッジNIに交換されたとき、当該未使用のインクカートリッジNIが、配達された推奨インクカートリッジRIxであるか否かを識別し、前記未使用のインクカートリッジNIが前記配達された推奨インクカートリッジRIxであると識別されたとき、当該配達された推奨インクカートリッジRIxの使用が開始された旨を、ネットワークNを介して課金装置CDに通知し、前記課金装置CDは、前記通知を受けて、前記配達された推奨インクカートリッジRIxを課金する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに使用することを当該インクジェットプリンタのメーカが推奨している、当該メーカにより製造されたインクカートリッジ(以下、「推奨インクカートリッジ」という。)のサービスセンターが、前記インクジェットプリンタのユーザから配達の依頼を受けることにより、当該サービスセンターの配達員が、前記ユーザに前記推奨インクカートリッジを配達し、当該配達した推奨インクカートリッジについて課金するインクカートリッジ課金システム、インクカートリッジ課金方法、インクカートリッジ課金プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記インクカートリッジ課金システムでは、前記ユーザは、例えば、当該ユーザのインクジェットプリンタに現在使用している推奨インクカートリッジの他に、当該使用している推奨インクカートリッジを使い終えたときに直ちに交換できるように、未使用の推奨インクカートリッジをいくつか備品室などの保管場所に予備として保管しておき、また、実際に交換を終えたとき、使用済みの推奨インクカートリッジを前記保管場所に残しておく。
【0003】
前記ユーザは、前記インクジェットプリンタの使用により、使用している推奨インクカートリッジを使い終える度に、前記保管してある推奨インクカートリッジの一つと交換することで、前記保管してある推奨インクカートリッジ数が漸減し、新たな推奨インクカートリッジの補充が必要になると、前記サービスセンターに前記別な推奨インクカートリッジの配達を依頼する。
【0004】
前記サービスセンターの前記配達員は、前記依頼を受けると、前記ユーザの所に、正確には、前記保管場所に赴き、保管されている前記使用済みの推奨インクカートリッジの個数を数え、その個数と同数の未使用の別な推奨インクカートリッジを補充する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記配達員は、前記別な推奨インクカートリッジを補充すること、即ち、配達が終わると、直ちに、前記ユーザに、当該配達した前記別な推奨インクカートリッジの代金を請求することから、前記ユーザは、当該配達された前記別な推奨インクカートリッジを使用していないにも拘わらず、その代金を支払わなければならないという問題があった。
【0006】
また、前記配達員は、前記使用済みの推奨インクカートリッジの個数を数えるときに、数が多いなどの何らかの理由により、前記使用済みの推奨インクカートリッジの個数を数え間違えることがあるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決すべく、本発明に係るインクカートリッジ課金システムは、ネットワークと、端末装置と、前記ネットワークを介して当該端末装置に接続された課金装置と、前記端末装置に接続されたインクジェットプリンタであって、前記インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジの交換のための配達を受ける前記インクジェットプリンタと、を含み、前記端末装置は、前記インクジェットプリンタに使用されているインクカートリッジが、未使用のインクカートリッジに交換されたとき、当該未使用のインクカートリッジが、配達された推奨インクカートリッジであるか否かを識別し、前記未使用のインクカートリッジが前記配達された推奨インクカートリッジであると識別されたとき、当該配達された推奨インクカートリッジの使用が開始された旨を、前記ネットワークを介して前記課金装置に通知し、前記課金装置は、前記通知を受けて、前記配達された推奨インクカートリッジを課金することを特徴とする。
【0008】
上記した本発明に係るインクカートリッジ課金システムによれば、前記端末装置は、前記インクジェットプリンタに使用されているインクカートリッジが、未使用のインクカートリッジに交換されたとき、当該未使用のインクカートリッジが、前記配達された推奨インクカートリッジであるか否かを識別し、前記配達された推奨インクカートリッジであると識別されたとき、当該配達された推奨インクカートリッジの使用が開始された旨を、前記ネットワークを介して前記課金装置に通知し、前記課金装置が、前記通知を受けて、前記配達された推奨インクカートリッジに課金することにより、前記課金装置が、前記配達された推奨インクカートリッジの課金を、当該配達された推奨インクカートリッジの使用が開始された後に行うことから、従来のような、配達を依頼したユーザが、前記配達された推奨インクカートリッジを使用していないにも拘わらず、代金を支払わなければならないという事態を回避することができる。
【0009】
本発明に係るインクカートリッジ課金システムは、端末装置と、当該端末装置に接続されたインクジェットプリンタであって、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジの交換のための配達を受ける前記インクジェットプリンタと、前記端末装置に接続された通知装置と、を含み、前記端末装置は、前記インクジェットプリンタに使用されているインクカートリッジが、未使用のインクカートリッジに交換される毎に当該未使用のインクカートリッジが、配達された推奨インクカートリッジであるか否かを識別し、前記未使用のインクカートリッジが、前記配達された推奨インクカートリッジであると識別されたとき、当該識別までになされた、交換されたインクカートリッジが配達された推奨インクカートリッジであるとの識別についての、当該配達された推奨インクカートリッジの合計数を計数し、前記通知装置は、前記合計数を前記配達に関わる者に通知することを特徴とする。
【0010】
上記した本発明に係るインクカートリッジ課金システムによれば、前記端末装置は、前記インクジェットプリンタに使用されているインクカートリッジが、未使用のインクカートリッジに交換される毎に当該未使用のインクカートリッジが、配達された推奨インクカートリッジであるか否かを識別し、前記未使用のインクカートリッジが、前記配達された推奨インクカートリッジであると識別されたとき、当該識別までになされた、交換されたインクカートリッジが配達された推奨インクカートリッジであるとの識別についての、当該推奨インクカートリッジの合計数を計数し、前記通知装置は、前記合計数を前記配達に関わる者に通知することにより、従来のような、前記配達に関わる者に含まれる配達員による使用済みの推奨インクカートリッジの計数が不要となることから、前記配達員が計数することにより生じ得る、前記使用済みの推奨インクカートリッジの数え間違いを無くすことができる。
【0011】
上記した本発明に係るインクカートリッジ課金システムは、前記未使用のインクカートリッジのインク及び前記推奨インクカートリッジのインクは、それぞれ、色材組成物を含有し、前記端末装置は、前記未使用のインクカートリッジの種類が前記推奨インクカートリッジであるか否かの識別を、前記未使用のインクカートリッジのインクがセルロース系材料と金属酸化物系材料とを含む分離用基材上を移動するクロマトグラフィーにより得られる前記色材組成物の分離結果を前記推奨インクカートリッジのインクの前記色材組成物の分離結果と比較することにより行うことを特徴とする。
【0012】
上記した本発明に係るインクカートリッジ課金システムによれば、前記端末装置が、前記実際に使用されたインクの種類の識別を、当該インクがセルロース系材料と金属酸化物系材料とを含む分離用基材上を移動するクロマトグラフィーにより得られる前記色材組成物の分離結果に基づき行うことから、前記識別を高精度で行うことができる。
【0013】
本発明に係るインクカートリッジ課金方法は、インクジェットプリンタに、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジを配達する配達工程と、前記インクジェットプリンタに使用されているインクカートリッジが、未使用のインクカートリッジに交換されたとき、当該未使用のインクカートリッジが、配達された推奨インクカートリッジであるか否かを識別する識別工程と、前記未使用のインクカートリッジが、前記配達された推奨インクカートリッジであると識別されたとき、前記配達された推奨インクカートリッジの使用が開始された旨を通知する通知工程と、前記通知を受けて、前記配達された推奨インクカートリッジを課金する課金工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るインクカートリッジ課金方法は、インクジェットプリンタに、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジを配達する配達工程と、前記インクジェットプリンタに使用されているインクカートリッジが、未使用のインクカートリッジに交換される毎に当該未使用のインクカートリッジが、配達された推奨インクカートリッジであるか否かを識別する識別工程と、前記未使用のインクカートリッジが、前記配達された推奨インクカートリッジであると識別されたとき、当該識別までになされた、交換されたインクカートリッジが配達された推奨インクカートリッジであるとの識別についての、当該配達された推奨インクカートリッジの合計数を計数する計数工程と、前記合計数を配達に関わる者に通知する通知工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
上記した本発明に係るインクカートリッジ課金方法は、前記未使用のインクカートリッジのインク及び前記推奨インクカートリッジのインクは、それぞれ、色材組成物を含有し、前記識別工程は、前記未使用のインクカートリッジの種類が前記推奨インクカートリッジであるか否かの識別を、前記未使用のインクカートリッジのインクがセルロース系材料と金属酸化物系材料とを含む分離用基材上を移動するクロマトグラフィーにより得られる前記色材組成物の分離結果を前記推奨インクカートリッジのインクの前記色材組成物の分離結果と比較することにより行うことを特徴とする。
【0016】
本発明に係るインクカートリッジ課金プログラムは、ネットワークと、端末装置と、前記ネットワークを介して当該端末装置に接続された課金装置と、前記端末装置に接続されたインクジェットプリンタで、前記インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジの交換のための配達を受ける前記インクジェットプリンタと、を有するインクカートリッジ課金システムのためのコンピュータにより実行可能なインクカートリッジ課金プログラムであって、前記端末装置に、前記インクジェットプリンタに使用されているインクカートリッジが、未使用のインクカートリッジに交換されたとき、当該未使用のインクカートリッジが、前記配達された推奨インクカートリッジであるか否かを識別させる識別工程と、前記端末装置に、前記未使用のインクカートリッジが、前記推奨インクカートリッジであると識別されたとき、前記配達された推奨インクカートリッジの使用が開始された旨を通知させる通知工程と、前記課金装置に、前記通知を受けて、前記配達された推奨インクカートリッジを課金させる課金工程とを、実行させることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るインクカートリッジ課金プログラムは、端末装置と、当該端末装置に接続されたインクジェットプリンタで、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジの交換のための配達を受ける前記インクジェットプリンタと、前記端末装置に接続された通知装置と、を有するインクカートリッジ課金システムのためのコンピュータにより実行可能なインクカートリッジ課金プログラムであって、前記端末装置に、前記インクジェットプリンタに使用されているインクカートリッジが、未使用のインクカートリッジに交換される毎に当該未使用のインクカートリッジが、配達された推奨インクカートリッジであるか否かを識別させる識別工程と、前記端末装置に、前記未使用のインクカートリッジが、前記配達された推奨インクカートリッジであると識別されたとき、当該識別までになされた、交換されたインクカートリッジが配達された推奨インクカートリッジであるとの識別についての、当該配達された推奨インクカートリッジの合計数を計数させる計数工程と、前記通知装置に、前記合計数を前記配達に関わる者に通知させる通知工程とを、実行させることを特徴とする。
【0018】
上記した本発明に係るインクカートリッジ課金プログラムは、前記未使用のインクカートリッジのインク及び前記推奨インクカートリッジのインクは、それぞれ、色材組成物を含有し、前記識別工程では、前記未使用のインクカートリッジの種類が前記推奨インクカートリッジであるか否かの識別を、前記未使用のインクカートリッジのインクがセルロース系材料と金属酸化物系材料とを含む分離用基材上を移動するクロマトグラフィーにより得られる前記色材組成物の分離結果を前記推奨インクカートリッジのインクの前記色材組成物の分離結果と比較することにより行うことを特徴とする。
【0019】
本発明に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記した本発明に係るインクカートリッジ課金プログラムが記録されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係るインクカートリッジ課金システムの実施例について図面を参照して説明する。
【0021】
《構成》
図1に示されるように、実施例のインクカートリッジ課金システムICSは、推奨インクカートリッジRIのサービスセンターSCを利用して、交換用の推奨インクカートリッジRIの配達を受けているユーザのインクジェットプリンタIPxと、当該インクジェットプリンタIPxに使用されているインクカートリッジである使用インクカートリッジUIが、未使用のインクカートリッジNIに交換されたとき、前記未使用のインクカートリッジNIの種類を識別する。そして、当該識別結果により、配達された推奨インクカートリッジRIxの使用が開始された旨を通知する端末装置CLxと、前記通知を受けて、配達された推奨インクカートリッジRIxを課金する課金装置CDと、前記端末装置CLxに接続された通知装置NDと、端末装置CLxと当該課金装置CDとを接続するネットワークNとを含む。
【0022】
端末装置CLxは、交換された未使用のインクカートリッジNIの種類を識別すべく上記ユーザの所に設けられている。課金装置CDは、サービスセンターSCに設けられている。通知装置NDは、端末装置CLxに接続され、上記ユーザの所に設けられている。
【0023】
《端末装置の構成》
端末装置CLxは、図1に示されるように、識別部10と、検出部11と、通知部12と、処理部13と、記憶部14と、計数部15とを有する。
識別部10は、後述する検出部11により、インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIと未使用のインクカートリッジNIとの交換が検出されたとき、交換された未使用のインクカートリッジNIの種類の識別を、当該未使用のインクカートリッジNIのインクのクロマトグラフィーによる分離によって行うことができるように、分離用基材SB及び推奨インクカートリッジRIを備えている。
【0024】
より具体的には、識別部10は、インクジェットプリンタIPxの未使用のインクカートリッジNIの種類が、推奨インクカートリッジRIと同一であるか否か、換言すれば、推奨インクカートリッジRIであるか非推奨インクカートリッジであるかを、分離用基材SBを用いたクロマトグラフィーにより識別する。より正確には、当該識別を、未使用のインクカートリッジNIのインクが分離用基材SB上を移動するクロマトグラフィーにより得られる第1の色材組成物CC1の分離結果を、同様にして得られる推奨インクカートリッジRIのインクの第2の色材組成物CC2の分離結果と比較することにより行う。
クロマトグラフィーに基づく識別部10の動作の詳細については、後に詳述する。
【0025】
検出部11は、例えば、光センサなどからなり、インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIの着脱などを検出することにより、使用インクカートリッジUIと未使用のインクカートリッジNIとの交換を知得する。
【0026】
通知部12は、例えば、CPUからなり、識別部10の、インクジェットプリンタIPxの交換された未使用のインクカートリッジNIの識別結果が、配達された推奨インクカートリッジRIxであるとき、課金装置CDに対して、前記ネットワークNを介して、配達された推奨インクカートリッジRIxの使用が開始された旨を通知する。
【0027】
処理部13は、例えば、CPUからなり、端末装置CLxを構成する識別部10、検出部11、通知部12、処理部13、記憶部14、計数部15の動作及び状態の監視及び制御に必要な処理を行う。
【0028】
記憶部14は、ハードディスク、磁気テープ、CD−RW等からなり、インクカートリッジ課金システムICSの、動作及び他の動作(図2、図3に図示。)のうち、端末装置CLxの動作(図2のステップS10〜ステップS50、図3のステップS110〜ステップS150及びステップS190。)を規定するプログラムPR1を記憶している。
【0029】
計数部15は、例えば、CPUからなり、識別部10の、インクジェットプリンタIPxに使用されている使用インクカートリッジUIが、未使用のインクカートリッジNIに交換される毎の識別結果により、未使用のインクカートリッジNIが、前記配達された推奨インクカートリッジRIxであると識別されたとき、当該識別までになされた、交換されたインクカートリッジが配達された推奨インクカートリッジRIxであるとの識別についての、当該配達された推奨インクカートリッジRIxの合計数を計数する。
【0030】
《課金装置の構成》
課金装置CDは、課金部20と、表示部21と、処理部22と、記憶部23とを有する。
【0031】
課金部20は、例えば、CPUからなり、端末装置CLxの通知部12からの、配達された推奨インクカートリッジRIxの使用が開始された旨の通知を受けて、配達された推奨インクカートリッジRIxへの課金の旨を知得する。
【0032】
表示部21は、例えば、液晶パネルまたはCRTからなり、上記の配達された推奨インクカートリッジRIxへの課金の旨を表示する。
【0033】
処理部22は、例えば、CPUからなり、課金装置CDを構成する課金部20、表示部21、処理部22、記憶部23の動作及び状態の監視及び制御に必要な処理を行う。
【0034】
記憶部23は、ハードディスク、磁気テープ、CD−RW等からなり、インクカートリッジ課金システムICSの動作(図2に図示。)のうち、課金装置CDの動作(ステップS60〜ステップS90。)を規定するプログラムPR2を記憶している。
【0035】
《通知装置の構成》
通知装置NDは、表示部30と、処理部31と、記憶部32とを有する。
【0036】
表示部30は、例えば、液晶パネルまたはCRTからなり、端末装置CLxの計数部15で計数された、交換されたインクカートリッジが配達された推奨インクカートリッジRIxであるとの識別についての、当該配達された推奨インクカートリッジRIxの合計数を表示する。これにより、配達に関わる者に含まれるサービスセンターSCの配達員に、上記合計数を通知する。
【0037】
処理部31は、例えば、CPUからなり、通知装置NDを構成する表示部30、処理部31、記憶部32の動作及び状態の監視及び制御に必要な処理を行う。
【0038】
記憶部32は、ハードディスク、磁気テープ、CD−RW等からなり、インクカートリッジ課金システムICSの他の動作(図3に図示。)のうち、通知装置NDの動作(ステップS160〜ステップS180。)を規定するプログラムPR3を記憶している。
【0039】
《ネットワークの構成》
ネットワークNは、例えば、有線ネットワーク(メタル,光ファイバー等。)または無線ネットワーク(IEEE802.11等。)であり、そのトポロジーについては、スター型、バス型、リング型等のいずれであってもよい。
【0040】
《動作》
実施例のインクカートリッジ課金システムICSの動作について図2のフローチャート図に沿って説明する。
【0041】
ステップS10:サービスセンターSCの配達員は、ユーザの依頼により推奨インクカートリッジRIを配達する。
【0042】
ステップS20:インクジェットプリンタIPxのユーザは、インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIを使い終えると、使用インクカートリッジUIを未使用のインクカートリッジNIと交換する。
【0043】
ステップS30:端末装置CLxの検出部11は、上記の交換を知得する。
【0044】
ステップS40:端末装置CLxの識別部10は、上記交換された未使用のインクカートリッジNIの種類が、配達された推奨インクカートリッジRIxであるか否かを識別する。
ここで、識別結果が配達された推奨インクカートリッジRIxである場合には、ステップS50に進む。識別結果が配達された推奨インクカートリッジRIxでない場合、即ち非推奨インクカートリッジである場合には、動作を終了する。
【0045】
ステップS50:端末装置CLxの通知部12は、配達された推奨インクカートリッジRIxであるとの識別結果を受けて課金装置CDに対して、配達された推奨インクカートリッジRIxの使用開始の旨を通知する。
【0046】
ステップS60:課金装置CDの課金部20は、上記通知を受けて、配達された推奨インクカートリッジRIxに対する課金の旨を知得する。
【0047】
ステップS70:課金装置CDの表示部21は、配達された推奨インクカートリッジRIxに対する課金の旨を表示する。
【0048】
ステップS80:サービスセンターSCの配達員は、表示部21の課金の旨の表示に基づき、ユーザに対して、配達された推奨インクカートリッジRIxの代金を請求する。
【0049】
ステップS90:ユーザは、サービスセンターSCに対して、配達された推奨インクカートリッジRIxの代金を支払う。
【0050】
《効果》
上述したように、本実施例のインクカートリッジ課金システムICSでは、端末装置CLxが、インクジェットプリンタIPxの交換された未使用のインクカートリッジNIが、配達された推奨インクカートリッジRIxであるか否かを識別する。識別の結果、配達された推奨インクカートリッジRIxであると識別したとき、課金装置CDに、配達された推奨インクカートリッジRIxの使用開始の旨を通知し、課金装置CDが、配達された推奨インクカートリッジRIxに対する課金の旨を表示する。そこで、サービスセンターSCの配達員が、ユーザに代金を請求することにより、従来のような、配達を依頼したユーザが、配達された推奨インクカートリッジRIxを使用していないにも拘わらず、代金を支払わなければならないという事態を回避することができる。
【0051】
また、端末装置CLxが、交換された未使用のインクカートリッジNIのインクの種類の識別を、未使用のインクカートリッジNIのインクが分離用基材SB上を移動するクロマトグラフィーにより得られる第1の色材組成物CC1の分離結果を、同様にして得られる推奨インクカートリッジRIのインクの第2の色材組成物CC2の分離結果と比較することにより行うことから、識別を高精度に行うことができる。
【0052】
なお、本実施例では、課金装置CDは、配達された推奨インクカートリッジRIxについての課金の旨を、表示部21への表示により配達員へ伝達したが、表示部21への表示に限定するものではなく、音声による伝達でもよい。
【0053】
《他の動作》
インクカートリッジ課金システムICSの、上記した動作とは別の、配達された推奨インクカートリッジRIxであると識別されたインクカートリッジの計数に係わる動作について図3のフローチャート図に沿って説明する。
【0054】
ステップS110:サービスセンターSCの配達員は、ユーザの依頼により推奨インクカートリッジRIを配達する。
【0055】
ステップS120:インクジェットプリンタIPxのユーザは、インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIを使い終えると、使用インクカートリッジUIを未使用のインクカートリッジNIと交換する。
【0056】
ステップS130:端末装置CLxの検出部11は、上記の交換を知得する。
【0057】
ステップS140:端末装置CLxの識別部10は、上記の交換毎に、交換された未使用のインクカートリッジNIの種類が、配達された推奨インクカートリッジRIxであるか否かを識別する。
ここで、識別結果が配達された推奨インクカートリッジRIxである場合には、ステップS150に進む。識別結果が配達された推奨インクカートリッジRIxでない場合、即ち非推奨インクカートリッジである場合には、動作を終了する。
【0058】
ステップS150:端末装置CLxの計数部15は、識別結果が配達された推奨インクカートリッジRIxであるとき、当該識別までになされた、交換された未使用のインクカートリッジNIが、配達された推奨インクカートリッジRIxであるとの識別についての、当該配達された推奨インクカートリッジRIxの合計数を計数する。
【0059】
ステップS160:通知装置NDの表示部30は、端末装置CLxの計数部15で計数された上記合計数を表示する。これにより、サービスセンターSCの配達員に上記合計数を通知する。
【0060】
ステップS170:ユーザは、配達された推奨インクカートリッジRIxが漸減し、補充が必要になると、新たに別な推奨インクカートリッジの配達を、サービスセンターSCに依頼する。
【0061】
ステップS180:サービスセンターSCの配達員は、通知装置NDの表示部30に表示された上記合計数に基づき、新たに別な推奨インクカートリッジを配達する。
【0062】
ステップS190:サービスセンターSCの配達員は、上記配達後、端末装置CLxの計数部15の上記合計数をリセットする。
【0063】
《効果》
上述したように、本実施例のインクカートリッジ課金システムICSでは、端末装置CLxは、インクジェットプリンタIPxに使用されている使用インクカートリッジUIが、未使用のインクカートリッジNIに交換される毎に当該未使用のインクカートリッジNIが、配達された推奨インクカートリッジRIxであるか否かを識別する。そして、未使用のインクカートリッジNIが、配達された推奨インクカートリッジRIxであると識別されたとき、当該識別されたときまでに、交換されたインクカートリッジが、配達された推奨インクカートリッジRIxであると識別されている、当該配達された推奨インクカートリッジRIxの合計数を計数し、通知装置NDは、合計数を配達に関わる者に含まれるサービスセンターSCの配達員に通知することにより、従来のような、配達員による使用済みの推奨インクカートリッジの計数が不要となることから、配達員が計数することにより生じ得る、使用済みの推奨インクカートリッジの数え間違いを無くすことができる。
【0064】
なお、本実施例では、通知装置NDは、表示部30に合計数を表示することにより、合計数を配達員に通知したが、表示部30に合計数を表示することに限定するものではなく、合計数を音声により通知しても良い。
また、通知装置NDは、上記ユーザの所に設けられているが、これに限定するものではなく、端末装置CLxに接続されていれば、サービスセンターSCに設けられていても良い。
【0065】
《識別部の概要》
ここで、上記した識別部10について、さらに説明する。
【0066】
識別部10は、インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIの種類の識別を、クロマトグラフィーにより行っている。より詳細には、インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIが推奨インクカートリッジRIであるか、非推奨インクカートリッジであるかを、インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIのインク及び識別部10が予め備えている推奨インクカートリッジRIのインクを、それぞれ分離用基材SB上で移動させるクロマトグラフィーにより行う。
例えば、推奨インクカートリッジRIのインクに含まれる第2の色材組成物CC2が、図4(A)に示されるように、分離用基材SB上で円形状に広がっていることとは対照的に、インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIのインクに含まれる第1の色材組成物CC1が、図4(B)に示されるように、分離用基材SB上で楕円形状に広がっているときには、識別部10は、インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIが推奨インクカートリッジRIでない、即ち、非推奨インクカートリッジであると判断する。
【0067】
《識別部の詳細》
使用インクカートリッジUIのインク及び推奨インクカートリッジRIのインク、第1の色材組成物CC1及び第2の色材組成物CC2、並びに、分離用基材SBの詳細は、以下の通りである。
【0068】
〈使用インクカートリッジUIのインク、推奨インクカートリッジRIのインク〉
使用インクカートリッジUIのインク及び推奨インクカートリッジRIのインクは、水及び水に可溶な有機溶媒のうちの少なくとも一つを媒体とする水性インクである。
【0069】
使用インクカートリッジUIのインクは、インクジェットプリンタIPx自体から、例えば、インクカートリッジ、プリンタヘッド、ヘッドキャップ、廃インクパッド、廃インクタンク等、又は、インクジェットプリンタIPxにより印刷された紙媒体から採取される。採取量は、例えば、綿棒の先端に付着させる程度である。推奨インクカートリッジRIは、端末装置CLxに、例えば、インクジェットプリンタIPxを製造販売する会社から予め供給されている。
【0070】
〈第1、第2の色材組成物〉
第1の色材組成物CC1、第2の色材組成物CC2は、色材として、染料及び顔料のうちの少なくとも一つを含有する。染料としては、直接染料、酸性染料、反応染料、塩基性染料などがある。顔料としては、各種の無機顔料、捺染系顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン顔料などがある。有機顔料としては、レーキ顔料、トナー顔料があるが、どちらでもよい。但し、レーキ顔料の方が、より好適である。
【0071】
〈分離用基材〉
分離用基材SBは、セルロース系材料と金属酸化物系材料とを含有する。セルロース系材料としては、リグノセルロース系材料から分離される天然セルロース、人工セルロース、セルロースの水酸基にアセチル基やアルキル基などの官能基を導入した誘導体がある。セルロース系材料は、シート状等の層状、粒状、繊維状、粉状等いずれかの形態で金属酸化物系材料と複合化されていることが好ましい。
【0072】
金属酸化物系材料としては、シリカ(SiO2)やアルミナ(Al23)などのメタロキサン結合を有する化合物があり、当該メタロキサン結合を構成する金属種は、SiとAlなど2種類以上であってもよい。
【0073】
金属酸化物系材料としては、また、メタロキサン骨格の主鎖や側鎖に有機基を導入したものなどがある。当該有機基としては、アルキル基等の炭素水素基の他、アミノ基、シアノ基及びカルボキシル基などであってもよい。金属酸化物系材料としては、シリカを含有していることが好ましい。金属酸化物系材料は、層状や粒子状の態様でセルロース系材料と複合化されていることが好ましい。
【0074】
セルロース系材料の表面の少なくとも一部に金属酸化物系材料層を備えていてもよく、対照的に、金属酸化物系材料の表面の少なくとも一部にセルロース系材料を有していてもよい。セルロース系材料と金属酸化物系材料とは、マトリックス状であってもよい。セルロース系材料と金属酸化物系材料は、いずれも多孔質であることが好ましい。
【0075】
分離用基材SBは、色材をよく吸着してその拡散を有効に防止すべく、使用インクカートリッジUIのインクや推奨インクカートリッジRIのインクと接触する表層側に、シリカなどの金属酸化物系材料を備えることが好ましい。
【0076】
分離用基材SBは、セルロース系材料と金属酸化物系材料との複合化のためにバインダーを含んでいてもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶化アクリル樹脂、酢酸ビニル−エチレンエマルジョンなど水溶性又は水分散性樹脂がある。蛍光剤を含んでいてもよい。
【0077】
分離用基材SBは、色材の分離能を調整すべく、色材に応じてアミンやポリアミンなどの塩基性化合物や多価金属塩を含有していてもよい。
【0078】
分離用基材SBは、液体クロマトグラフィーの充填材や薄層クロマトグラフィーにおける薄層の一般的な製法により得られ、また、金属酸化物系材料は、ゾルゲル法やアルコキシシラン等の有機金属化合物の加水分解及び重縮合等により得られる。
【0079】
分離用基材SBは、粉末状、粒子状等に充填保持させ(カラムクロマトグラフィー)、又は、薄層状にする(薄層クロマトグラフィー)。
【0080】
〈移動相〉
「移動相」は、分離用基材SBによる色材の分離を良好又は迅速にすべく、及び、移動相の揮発性を抑制すべく、水と相溶する有機溶媒(以下、「高極性溶媒」という。)を含有することが好ましい。高極性溶媒は、1種類の単独でも2種類以上の組み合わせでも構わない。以下で、「混合比率」とは、複数の種類の高極性溶媒の体積の割合をいう。
【0081】
高極性溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなどの炭素数1〜5の直鎖状あるいは分岐状のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の炭素数2〜4のアルキレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数2〜4のポリエチレングリコール類などのグリコール類、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール等の1,2−ジオール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)等の含酸素飽和炭化水素環化合物、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル類、トリエチルアミン、トリメチルアミン等のアミン類がある。
【0082】
アルコール類としては、メタノール、エタノール及び2−プロパノールが好ましく、エタノールがより好ましい。
【0083】
エタノールは、単独で優れており、また、メタノール、アセトン、THF、1,2−ヘキサンジオール、2−プロパノール、ヘキサンから選択される1種又は2種以上との組み合わせでも優れている。特に、エタノールと溶解度パラメータが近接するメタノール及び/又はアセトンを併用することが望ましい。
【0084】
メタノールは、単独で優れており、また、アセトン、THF、1,2−ヘキサンジオール及びクロロホルムから選択される1種又は2種以上との組み合わせでも優れている。特に、アセトン及び/又は1,2−ヘキサンジオールを併用することが望ましい。
【0085】
2−プロパノールは、アセトン及び/又は1,2−ヘキサンジオールを併用することが望ましい。
【0086】
ポリアルキレングリコール類としては、トリエチレングリコールが好ましく、ケトン類としてはアセトンが好ましく、含酸素飽和炭化水素環化合物としては、テトラヒドロフランが好ましい。1,2−ジオール類としては、1,2−へキサンジオール及び1,2−ペンタンジオールが好ましく、1,2−ペンタンジオールがより好ましい。
【0087】
トリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、1,2−ヘキサンジオールなどの1,2−ジオール類は、移動相の極性の制御を少量で効率的に行うべく、移動相において10v/v%以下の混合比率で含有されていることが好ましく、5v/v%以下がより好ましい。
【0088】
移動相は、移動相の揮発性を抑制すべく、また、移動相の極性を向上させるべく、水を含むことが望ましい。例えば、エタノールと水とから移動相を構成する場合、水はエタノールに対して20v/v%以下の混合比率であることが好ましく、10v/v%以下がより好ましく、5v/v%以下がさらに好ましい。
【0089】
移動相は、水とは相溶しない非極性溶媒を含んでもよい。非極性溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、キシレン、ヘキサンなどがある。なお、非極性溶媒のみを移動相として用いると、良好な分離を得られ難い。
【0090】
移動相には、例えば、湿潤剤、浸透剤等として使用可能な水溶性有機溶媒を用いてもよい。
【0091】
第1、第2の色材組成物CC1、CC2の種類に応じて、色材の分離に適した移動相のための移動相の溶解度パラメータ(δ)を、以下の式(1)に基づき設定することにより、色材を効果的に分離することができる。推奨インクの色材(染料など。)の分離には、9.5以上16以下が好ましく、11以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。他方で、15以下が好ましく、14以下がさらに好ましい。従って、11以上15以下が好ましく、12以上14以下であることがさらに好ましい。典型的溶媒の溶解度パラメータ(δ)を表1に例示する。
【0092】
【数1】

溶解度パラメータは、「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版(1991)森定雄著)の記載に基づく。
【0093】
【表1】

また、好ましい移動相は、表2に例示する通りである。
【0094】
【表2】

【0095】
〈クロマトグラフィー〉
クロマトグラフィーとしては、薄層クロマトグラフィー、及び、カラムクロマトグラフィーがある。但し、カラムクロマトグラフィーよりも、薄層クロマトグラフィーを用いることが好ましい。薄層クロマトグラフィーでは、展開用チャンバー(図示せず。)内を移動相(展開溶媒)で満たして飽和した後、使用インクカートリッジUIのインクを負荷した分離用基材SBをチャンバー内にセットして適当な部位まで移動相を展開させて色材を分離した上、チャンバーから分離用基材SBを取り出し乾燥する。展開温度は、38℃以上42℃以下の程度で好ましい分離が得られる傾向がある。例えば、エタノールを単独で展開溶媒として用いた場合、25℃近傍よりも40℃近傍において好ましい分離が得られる。展開溶媒は、水分や金属イオンについてより純度の高い等級の溶媒を用いることが好ましい。
【0096】
他方で、カラムクロマトグラフィーでは、移動相を流して、カラム(図示せず。)内で色材を分離させる。色材は、カラムから最終的に溶出させ適当な検出器によってピークとして検出してもよいし、カラム内に分離した状態で保持させてもよい。色材はそれ自体の色を有しているので透明性のあるカラムに白色〜淡色の分離用基材SBを充填した場合には、カラム内に色材を分離して保持させておくことで色材の分離形態をクロマトグラムとして外部から視認することができる。カラムクロマトグラフィーにおいては、分離の正確性や精度を担保するために、標準物質を使用インクカートリッジUIのインクと同時にカラムに負荷して標準物質の保持時間(RT)を確認することが好ましい。
【0097】
〈識別〉
クロマトグラフィーにより得られたクロマトグラムから使用インクカートリッジUIのインク中の1種又は2種以上の色材の分離データ、すなわち、クロマトグラム及びクロマトグラムにおけるスポットやバンドの色調(カラムクロマトグラフィーの場合はピークの吸収スペクトルによる場合もある。)及びRf値又はRTに基づいて、使用インクカートリッジUIのインク中の第1の色材組成物CC1を識別する。より詳しくは、使用インクUIカートリッジのインクの第1の色材組成物CC1が推奨インクカートリッジRIのインクの第2の色材組成物CC2に一致するか否かを識別する。識別では、具体的には、使用インクカートリッジUIのインクのクロマトグラム(分離データを含む。以下、同様。)と推奨インクカートリッジRIのインクの第2の色材組成物CC2中の色材の既知のクロマトグラム又は推奨インクカートリッジRIのインクの第2の色材組成物CC2を同時に分離して得たクロマトグラムとを対比して、各クロマトグラムの全体から両者が同一の色材組成物と認められるか否か、又は、各クロマトグラム上の分離された個々のスポット又はバンド等の分離データから両者が同一の色材組成物と認められるか否かを判定する。同時に推奨インクカートリッジRIのインクの第2の色材組成物CC2のクロマトグラフィーを実施しないで既知の分離データと対比するときには、標準物質の分離データによって使用インクカートリッジUIのインクの分離データを補正してもよい。
【0098】
識別では、クロマトグラフィーによって色材が良好に分離されているため、クロマトグラム自体でもクロマトグラムから得た分離データによってでも簡易にかつ明瞭に、推奨インクカートリッジRIのインクの色材を含むか否かを識別することができる。従って、操作者の識別能力に拘わらず、簡易にかつ短時間に第1の色材組成物CC1を識別可能である。本識別では、使用インクカートリッジUIのインクが、推奨インクカートリッジRIのインクの第2の色材組成物CC2に含まれない色材を1種でも含有しているか、又は、推奨インクカートリッジRIのインクの第2の色材組成物CC2に含まれるべき色材を含有していないのであれば、使用インクカートリッジUIのインクの第1の色材組成物CC1と推奨インクカートリッジRIのインクの第2の色材組成物CC2とは一致しないと判定できる。前者の場合には、使用インクカートリッジUIのインクの第1の色材組成物CC1は、推奨インクカートリッジRIのインクの第2の色材組成物CC2とは異なるか、又は、推奨インクカートリッジRIのインクの第2の色材組成物CC2を含有していても追加の色材を含有していると判定できる。また、後者の場合には、使用インクカートリッジUIのインク中の第1の色材組成物CC1は、推奨インクカートリッジRIのインクの第2の色材組成物CC2を含有していないと判定できる。
【0099】
また、本識別では、クロマトグラフィーにおいて2種類以上の色材が良好に分離できるため、2種類以上の色材を含有する色材組成物の識別を容易に行うことができる。例えば、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックなどカラー印刷用のインク又はトナーを含有する色材組成物を使用インクカートリッジUIのインクとした場合であっても、容易に識別ができる。必要に応じてクロマトグラムからスポット等の色材を回収して更なる分析を行うこともできる。
【0100】
特に、薄層クロマトグラフィーの場合には、色調及びRf値はクロマトグラムから特別な検出手段を用いることなく目視によって容易に把握でき、クロマトグラムを視認するだけであっても推奨インクカートリッジRIのインクの第2の色材組成物CC2との識別ができることが多い。また、薄層クロマトグラフィーによれば、簡易な構成でクロマトグラフィーを実施できるため、使用インクカートリッジUIのインクを採取したその場において、クロマトグラフィーを実施しその場で識別することもできる。特に、本クロマトグラフィーによれば、良好な分離性を有するため、短い展開時間で早期に識別を完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施例におけるインクカートリッジ課金システムの構成を示す図。
【図2】本発明の実施例におけるインクカートリッジ課金システムの動作を示すフローチャート図。
【図3】本発明の実施例におけるインクカートリッジ課金システムの他の動作を示すフローチャート図。
【図4】本発明の実施例における推奨インクカートリッジのインク及び使用インクカートリッジのインクの分離結果を示す図。
【符号の説明】
【0102】
ICS…インクカートリッジ課金システム、CLx…端末装置、CD…課金装置、N…ネットワーク、ND…通知装置、IPx…インクジェットプリンタ、UI…使用インクカートリッジ、NI…未使用のインクカートリッジ、RIx…配達された推奨インクカートリッジ、RI…推奨インクカートリッジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークと、端末装置と、前記ネットワークを介して当該端末装置に接続された課金装置と、前記端末装置に接続されたインクジェットプリンタであって、前記インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジの交換のための配達を受ける前記インクジェットプリンタと、を含み、
前記端末装置は、前記インクジェットプリンタに使用されているインクカートリッジが、未使用のインクカートリッジに交換されたとき、当該未使用のインクカートリッジが、配達された推奨インクカートリッジであるか否かを識別し、
前記未使用のインクカートリッジが前記配達された推奨インクカートリッジであると識別されたとき、当該配達された推奨インクカートリッジの使用が開始された旨を、前記ネットワークを介して前記課金装置に通知し、
前記課金装置は、前記通知を受けて、前記配達された推奨インクカートリッジを課金することを特徴とするインクカートリッジ課金システム。
【請求項2】
端末装置と、当該端末装置に接続されたインクジェットプリンタであって、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジの交換のための配達を受ける前記インクジェットプリンタと、前記端末装置に接続された通知装置と、を含み、
前記端末装置は、前記インクジェットプリンタに使用されているインクカートリッジが、未使用のインクカートリッジに交換される毎に当該未使用のインクカートリッジが、配達された推奨インクカートリッジであるか否かを識別し、
前記未使用のインクカートリッジが、前記配達された推奨インクカートリッジであると識別されたとき、当該識別までになされた、交換されたインクカートリッジが配達された推奨インクカートリッジであるとの識別についての、当該配達された推奨インクカートリッジの合計数を計数し、
前記通知装置は、前記合計数を前記配達に関わる者に通知することを特徴とするインクカートリッジ課金システム。
【請求項3】
前記未使用のインクカートリッジのインク及び前記推奨インクカートリッジのインクは、それぞれ、色材組成物を含有し、
前記端末装置は、前記未使用のインクカートリッジの種類が前記推奨インクカートリッジであるか否かの識別を、前記未使用のインクカートリッジのインクがセルロース系材料と金属酸化物系材料とを含む分離用基材上を移動するクロマトグラフィーにより得られる前記色材組成物の分離結果を前記推奨インクカートリッジのインクの前記色材組成物の分離結果と比較することにより行うことを特徴とする請求項1または2に記載のインクカートリッジ課金システム。
【請求項4】
インクジェットプリンタに、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジを配達する配達工程と、
前記インクジェットプリンタに使用されているインクカートリッジが、未使用のインクカートリッジに交換されたとき、当該未使用のインクカートリッジが、配達された推奨インクカートリッジであるか否かを識別する識別工程と、
前記未使用のインクカートリッジが、前記配達された推奨インクカートリッジであると識別されたとき、前記配達された推奨インクカートリッジの使用が開始された旨を通知する通知工程と、
前記通知を受けて、前記配達された推奨インクカートリッジを課金する課金工程とを含むことを特徴とするインクカートリッジ課金方法。
【請求項5】
インクジェットプリンタに、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジを配達する配達工程と、
前記インクジェットプリンタに使用されているインクカートリッジが、未使用のインクカートリッジに交換される毎に当該未使用のインクカートリッジが、配達された推奨インクカートリッジであるか否かを識別する識別工程と、
前記未使用のインクカートリッジが、前記配達された推奨インクカートリッジであると識別されたとき、当該識別までになされた、交換されたインクカートリッジが配達された推奨インクカートリッジであるとの識別についての、当該配達された推奨インクカートリッジの合計数を計数する計数工程と、
前記合計数を配達に関わる者に通知する通知工程とを含むことを特徴とするインクカートリッジ課金方法。
【請求項6】
前記未使用のインクカートリッジのインク及び前記推奨インクカートリッジのインクは、それぞれ、色材組成物を含有し、
前記識別工程は、前記未使用のインクカートリッジの種類が前記推奨インクカートリッジであるか否かの識別を、前記未使用のインクカートリッジのインクがセルロース系材料と金属酸化物系材料とを含む分離用基材上を移動するクロマトグラフィーにより得られる前記色材組成物の分離結果を前記推奨インクカートリッジのインクの前記色材組成物の分離結果と比較することにより行うことを特徴とする請求項4または5に記載のインクカートリッジ課金方法。
【請求項7】
ネットワークと、端末装置と、前記ネットワークを介して当該端末装置に接続された課金装置と、前記端末装置に接続されたインクジェットプリンタで、前記インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジの交換のための配達を受ける前記インクジェットプリンタと、を有するインクカートリッジ課金システムのためのコンピュータにより実行可能なインクカートリッジ課金プログラムであって、
前記端末装置に、前記インクジェットプリンタに使用されているインクカートリッジが、未使用のインクカートリッジに交換されたとき、当該未使用のインクカートリッジが、前記配達された推奨インクカートリッジであるか否かを識別させる識別工程と、
前記端末装置に、前記未使用のインクカートリッジが、前記推奨インクカートリッジであると識別されたとき、前記配達された推奨インクカートリッジの使用が開始された旨を通知させる通知工程と、
前記課金装置に、前記通知を受けて、前記配達された推奨インクカートリッジを課金させる課金工程とを、実行させることを特徴とするインクカートリッジ課金プログラム。
【請求項8】
端末装置と、当該端末装置に接続されたインクジェットプリンタで、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジの交換のための配達を受ける前記インクジェットプリンタと、前記端末装置に接続された通知装置と、を有するインクカートリッジ課金システムのためのコンピュータにより実行可能なインクカートリッジ課金プログラムであって、
前記端末装置に、前記インクジェットプリンタに使用されているインクカートリッジが、未使用のインクカートリッジに交換される毎に当該未使用のインクカートリッジが、配達された推奨インクカートリッジであるか否かを識別させる識別工程と、
前記端末装置に、前記未使用のインクカートリッジが、前記配達された推奨インクカートリッジであると識別されたとき、当該識別までになされた、交換されたインクカートリッジが配達された推奨インクカートリッジであるとの識別についての、当該配達された推奨インクカートリッジの合計数を計数させる計数工程と、
前記通知装置に、前記合計数を前記配達に関わる者に通知させる通知工程とを、実行させることを特徴とするインクカートリッジ課金プログラム。
【請求項9】
前記未使用のインクカートリッジのインク及び前記推奨インクカートリッジのインクは、それぞれ、色材組成物を含有し、
前記識別工程では、前記未使用のインクカートリッジの種類が前記推奨インクカートリッジであるか否かの識別を、前記未使用のインクカートリッジのインクがセルロース系材料と金属酸化物系材料とを含む分離用基材上を移動するクロマトグラフィーにより得られる前記色材組成物の分離結果を前記推奨インクカートリッジのインクの前記色材組成物の分離結果と比較することにより行うことを特徴とする請求項7または8に記載のインクカートリッジ課金プログラム。
【請求項10】
請求項7または9に記載のインクカートリッジ課金プログラムが記録されたことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−97252(P2008−97252A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277234(P2006−277234)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】