インクカートリッジ
【課題】 インク漏れに対する信頼性を犠牲にすることなくバッファ機構の空間使用効率を更に高めたインクカートリッジを提供する。
【解決手段】 記録ヘッド部に前記インクを供給するための供給口と、インクカートリッジ内部を大気と連通するための大気連通口とを備え、前記インクを保持するためのインク保持部材で構成されるインクカートリッジにおいて、インク保持部材を密度の異なる少なくとも2つ以上の部材で構成し、前記大気連通口におけるカートリッジ内側開口が内側に突起した煙突先端面に存在し、該煙突先端面は最も密度の低いインク保持部材に全周当接し、該インク保持部材の煙突先端当接面がインク未充填状態である構成とする。
【解決手段】 記録ヘッド部に前記インクを供給するための供給口と、インクカートリッジ内部を大気と連通するための大気連通口とを備え、前記インクを保持するためのインク保持部材で構成されるインクカートリッジにおいて、インク保持部材を密度の異なる少なくとも2つ以上の部材で構成し、前記大気連通口におけるカートリッジ内側開口が内側に突起した煙突先端面に存在し、該煙突先端面は最も密度の低いインク保持部材に全周当接し、該インク保持部材の煙突先端当接面がインク未充填状態である構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置に用いられるインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、いわゆるノンインパクト方式の記録装置であり、高速記録や様々な記録媒体への記録が可能であって、記録時の騒音がほとんど生じないなどの利点を有しており、広く普及している。このようなインクジェット記録装置は、微小なノズルから微小なインク滴を吐出させて記録媒体に記録を行うものであり、一般に、インク滴を吐出するためのノズルを有するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに供給するインクを保持するインクカートリッジとを有している。
【0003】
このインクジェットカートリッジには、たとえばインクジェットヘッドとインクカートリッジとを常時一体化した構成を採用するものと、インクジェットヘッドとインクカートリッジとを着脱可能とし、使用に際して一体化する構成を採用するものとが知られている。
【0004】
前記インクカートリッジには、記録に供されない状態では外部にインクを漏らすことがないようにインクを安定的に保持し、また、記録時には安定してインクジェットヘッドにインクを供給することを可能にすることが要求され、この要求を満足する目的でインクカートリッジにはインクジェットヘッドに供給されるインクの流れに対する背圧、いわゆる負圧を発生するための構成が備えられる。
【0005】
インクカートリッジにおける負圧発生のための一般的な構成例として、例えば、特許文献1(特開昭62−264728号公報)、特許文献2(特開平8−230207号公報)に示すようなウレタンフォーム等の多孔質体を負圧発生部材(インク保持部材)としてインクカートリッジ内に収納し、この多孔質体の毛管力を不圧発生源として利用するものがある。この構成に用いられるインクカートリッジには、含浸作用によりインクを保持するインク保持部材と、インク保持部材に保持されているインクを記録ヘッド部に供給するためのインク供給口と、インクカートリッジの外部と内部の大気を連通させ、内部の負圧の過度な上昇を防止するための大気連通口とインクカートリッジ外部の減圧あるいは高温時においてインク保持部材から漏れるインクを一時的に収容するバッファ室とが設けられている。
【0006】
また、インクカートリッジ内側の壁面には、特許文献3(特開平3−101971号公報)に開示されているように、大気連通口から導入される大気をインク保持部材の方々に供給ことによりインク保持部材に含浸されたインクを均等にインク供給口に導くためのリブが設けられている。
【0007】
上述したインクジェットカートリッジにおいては、インク保持部材に含浸されたインクが、記録ヘッド部のインク消費に応じた毛管力によりインク供給口を介して記録ヘッド部に供給され、記録ヘッド部から被記録媒体に対して吐出される。そして、消費されたインク量に応じて大気連通口からインクカートリッジ内に大気が導入される。
【0008】
以下、上述した従来技術の一般例について図を用いて詳細に説明する。
【0009】
図6は、従来のインクカートリッジ構成を説明するための断面図である。
【0010】
図に示すように、インクカートリッジ10内部にはインクを充填したインク保持部材14が収容されている。このインク保持部材14は、ウレタンスポンジや繊維の集合体から形成されている。また、インクカートリッジ10には、インクカートリッジ10内部を大気と連通させるための大気連通口11および、内部に保持したインクをインクジェット記録ヘッド(不図示)に供給するためのインク供給口12が形成されている。該インク供給口12には、保管状態でインク蒸発やインク漏れを防止する目的でキャップ21が取り付けられてある。また、カートリッジ内側の壁面からは垂直に突き出した複数のリブ13が収容部内側に向かって形成され、この複数のリブ13の先端がインク保持部材14と当接して、リブ13が形成された壁面とインク保持部材14との間に通気路となる空間を確保している。
【0011】
これにより、確保された通気路を通してインクカートリッジ10の収容部に空気が均等に送り込まれ、インク保持部材14によって保持されたインクを効率よく使用することができる。
【0012】
さらに、本構成により形成された通気路となる空間は次の効果も兼ね備えている。
【0013】
インク保持部材14に保持されたインク17は、環境変化や物流中の衝撃等により保持部材内を移動する。インクカートリッジ10内にはインク17中の溶存気体や、インク17注入時に保持部材内にインク17と共に巻き込まれた微小気泡が大気から隔離された閉塞状態で存在している。このような閉塞空間に存在する気体は、温度や圧力が変化した場合に膨張収縮を繰り返し、保持部材中から大気連通口11方面に向けてインク17を押し出す。押し出されたインク17が大気連通口11部へ直接付着するとカートリッジ外部へのインク漏れとなってしまう。そこで大気連通口11形成部周辺に空間を設け、保持部材中から溢れ出したインク17を受け止めるバッファ空間23を形成しているのである。
【0014】
以下図を用いて更に詳細に説明する。
【0015】
図7〜図15はカートリッジのインク漏れについての説明するための図である。
【0016】
図7(a)、図8(a)、図9(a)、図10(a)、図11(a)、図12(a)、図13(a)、図14(a)及び図15(a)はインクカートリッジの側面方向からの断面図である。また、図7(b)、図8(b)、図9(b)、図10(b)、図11(b)、図12(b)、図13(b)、図14(b)及び図15(b)はインクカートリッジの上面方向からの断面図である。
【0017】
図に示すように、環境変化等で押し出されたインク17は図7から図8のようにインクカートリッジ10内を移動し、インク保持部材14上部のバッファ空間23を経て大気連通口11へ向かう。したがって図9のようにインク17の回り込み方によってはバッファ空間23内をインク17で満たす前に大気連通口11部にインク17が到着し、インク漏れを起こすことが懸念される。
【0018】
そのため、一般的にはインクカートリッジ10の置かれる姿勢変化などによるバッファ空間23内のインク17移動のばらつきを考慮して、常に一定のバッファ空間23を使用できるように、バッファ空間23を大きく取り、大気連通口11をその中央部付近に配置する等インク漏れに対するマージンをとった設計が行われている。
【0019】
図10〜図12及び図13〜図15は、それぞれ、インク漏れマージン設計を行った従来のインクカートリッジを示す断面図であり、図10〜図12は通常姿勢(インク供給口12下向き)インクカートリッジであり、図13〜図15は逆姿勢(インク供給口12上向き)インクカートリッジである。
【0020】
図に示すように、環境変化等で押し出されたインク17は図10から図12、図13から図15のようにインク17が移動し、バッファ空間23を経て大気連通口11へ向かう。
【0021】
これらの図に示すように本構成のインクカートリッジ10は、インクカートリッジ10姿勢差を考慮して大気連通口11をバッファ空間23の中央に配置し、各姿勢においても一定のバッファ空間23が使用可能なようになっている。
【特許文献1】特開昭62−264728号公報
【特許文献2】特開平8−230207号公報
【特許文献3】特開平3−101971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
前述のように、インク漏れ信頼性のためにバッファ空間を設けてある従来の構成においては、姿勢差等を考慮するために実際にインクを受け入れる部分は構成されたバッファ空間の半分程度である。
【0023】
一方、近年持ち運びが可能な携帯型のプリンタや、車、携帯電話等、いろいろな製品へのプリンタ搭載などを目的としプリンタの小型化が求められている。よって、プリンタに搭載されるインクカートリッジも極力小型化する必要があり、インクカートリッジ内の空間使用効率を更に高める事が求められている。
【0024】
そこで本発明の目的は、上述した従来技術の問題点に鑑み、インク漏れに対する信頼性を犠牲にすることなくバッファ機構の空間使用効率を更に高めたインクカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するために、本発明のインクカートリッジは以下の構造をとる。
【0026】
本発明におけるインクカートリッジは、記録ヘッド部に前記インクを供給するための供給口と、インクカートリッジ内部を大気と連通するための大気連通口とを備え、前記インクを保持するためのインク保持部材で構成されるインクカートリッジにおいて、該インク保持部材は密度の異なる少なくとも2つ以上の部材で構成され、前記大気連通口におけるカートリッジ内側開口は内側に突起した煙突先端面に存在し、該煙突先端面は最も密度の低いインク保持部材に全周当接し、該インク保持部材の煙突先端当接面はインク未充填状態であることを特徴とするインクカートリッジであり、前記密度の異なる少なくとも2つ以上のインク保持部材は、前記煙突先端面の垂線方向に積層配置されていることを特徴とするインクカートリッジであり、前記煙突先端面に全周当接するインク保持部材の厚みは、カートリッジ内側に突起した煙突高さより厚いことを特徴とするインクカートリッジであり、更に、前記煙突先端面に全周当接する第一のインク保持部材と、該インク保持部材に積層当接する第二のインク保持部材において、当接部を有する面の大きさが
第一のインク保持部材面積 < 第二のインク保持部材面積
であることを特徴とするインクカートリッジであり、また、前記インク保持部材は、ポリオレフィン繊維を主材とするか、または発泡ポリウレタンを主材としてなる事を特徴とするインクカートリッジであり、そして、前記インク保持部材における煙突先端面に全周当接する第一のインク保持部材は、インク保持可能な密度を有するポリオレフィン繊維積層体であるか、またはインク保持可能な開口径を有する発泡ポリウレタンであることを特徴とするインクカートリッジである。
【発明の効果】
【0027】
以上で説明したように、本発明のインクカートリッジは密度の異なる少なくとも2つ以上のインク保持部材で構成され、大気連通口のカートリッジ内側開口が内側に突起した煙突先端面に存在し、該煙突先端面が最も密度の低い第一のインク保持部材に全周当接し、該インク保持部材の煙突先端当接面はインク未充填状態であるため、環境変化や衝撃を受けた時に、インク移動するインクが直接大気連通口へ進入することを防止する。
【0028】
また、第一のインク保持部材の厚みが連通口開口の存在する煙突高さより厚く、前記煙突先端面に全周当接する第一のインク保持部材と、該インク保持部材に積層当接する第二のインク保持部材において、当接部を有する面の大きさが
第一のインク保持部材面積 < 第二のインク保持部材面積
の関係を満たすため第二のインク保持部材からの移動インクは、第一段階では流抵抗成分のない、第一のインク保持部材と当接しない部分からバッファ空間へ移動し、第二段階として、当接部分を介して第一の保持部材をインク移動する時も、その厚みが煙突高さより厚いため、少なくともバッファ空間を全てインクが充填するまでのは、インク漏れが発生しない。
【0029】
すなわち、バッファ空間を今まで以上に有効的に使用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0031】
図1〜図4は、本発明におけるインクカートリッジについての説明図である。
【0032】
図1(a)、図2(a)、図3(a)及び図4(a)はインクカートリッジの側面方向からの断面図である。
【0033】
図1(b)、図2(b)、図3(b)及び図4(b)は、それぞれ図1(a)、図2(a)、図3(a)及び図4(a)に示したインクカートリッジの上面方向からの断面図である。
【0034】
図1(a)に示すようにインクカートリッジ10には、インクカートリッジ10内部を大気と連通させるための大気連通口11および、内部に保持したインク17をインクジェット記録ヘッド(不図示)等に供給するためのインク供給口12が形成され、インク供給口12の外側にはキャップ21が取り付けられており、インク供給口12からのインク蒸発やインク漏れを防ぐ構成となっている。また、筐体内部には、インク17を含浸保持する第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16が装填されている。第2のインク保持部材15は、第3のインク保持部材16と密着し、かつインク供給口12を内側から塞ぐように設けられている。また、第1のインク保持部材22の厚みが大気連通口11の開口部が存在する煙突高さより厚く、前記煙突先端面に全周当接する第1のインク保持部材22と、該インク保持部材に積層当接する第2のインク保持部材16において、当接部を有する面の大きさが
第一のインク保持部材面積 < 第二のインク保持部材面積
としている。また、第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16はともにインク17を含浸保持するものであるが、第3のインク保持部材15のインク保持力(毛管力)は第2のインク保持部材16のインク保持力よりも高くなっている。これによって、第2のインク保持部材16に保持されているインク17が第3のインク保持部材15に効果的に導かれ、第2のインク保持部材16に保持されたインクの消費効率が向上する。ここで、本実施例においてインク保持部材に充填するインクは、前記第1のインク保持部材15および第2のインク保持部材16に対し、濡れ接触角が90°未満の浸透性の高いインクを用いた。
【0035】
また、本実施例においてインク保持部材へのインク注入は、インク供給口12をインクカートリッジ10へのインク注入口として、容器の内部を減圧状態にしてインクを注入する減圧注入方法を用いた。
【0036】
減圧注入を行う場合は、まずインク供給口12に開閉弁を介してインク供給手段を取り付け、大気連通口11に真空ポンプなどの減圧手段を取り付ける。そして、開閉弁を閉じてインク供給口12を塞いだ状態で、大気連通口11から真空ポンプを用いて容器内部の空気を吸引して減圧する。
【0037】
容器内部が所定の圧力に減圧されたら、真空ポンプを停止し大気連通口11を塞いだままの状態で、開閉弁を開き、インク供給手段からインク供給口12を介して容器の内部にインク17を注入する。インクの注入が開始されると、インク供給口12の近傍から第3のインク保持部材16を経て第2のインク保持部材15にインク17が浸透するとともに、容器の内部壁面に沿ってインク注入が進行する。この状態で開閉弁を閉じインク注入を終了して、大気連通口11を大気に開放すると、減圧状態で膨張していた第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16内部の空気が収縮することにより、インクが第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16に引き込まれて充填されるのである。
【0038】
また、カートリッジ内側の壁面からは垂直に突き出した複数のリブ13が収容部内側に向かって形成され、この複数のリブ13の先端が上記第2のインク保持部材16と当接して、リブ13が形成された壁面と第2のインク保持部材16との間にバッファ空間23を確保している。
【0039】
そして、この空間内には第1のインク保持部材22が配され、前記大気連通口11のインクカートリッジ10内側開口部が第1のインク保持部材22に全周密着当接している。
【0040】
また、前記第1のインク保持部材22はインクカートリッジ10内に保持されたインクに対し濡れ接触角が90°以上の部材をもちいた。
【0041】
次に、環境変化等によるインクカートリッジ10内のインク17の流れについて図を用いて詳細に説明する。
【0042】
図1(a)および図1(b)に示すように、初期状態においては第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16中にインク17はしっかりと含浸保持され、第2のインク保持部材15上部のバッファ空間23に溢れ出したインク17は存在しない。
【0043】
次に、環境が変化し、インク17中の溶存気泡の膨張や、インクカートリッジ10内に形成された閉塞空間の気体膨脹などにより第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16中のインク17が押し出されると、図2(a)および図2(b)に示すようにバッファ空間23にあふれ出てくる。第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16に対し濡れ接触角が90°以下のインクでは、吸収体への浸透性が高いこともあって、環境変化等によって第3のインク保持部材16に充填されているインク17は第2のインク保持部材15中のインク未充填領域にも浸透しつつ、第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16とインクカートリッジ10の筐体との間に構成された隙間などを通り大気連通口11側へと移動する。この際、大気連通口11の開口が当接した第1のインク保持部材22は、流抵抗成分となるためインク17は第1のインク保持部材22内に浸透せずにバッファ空間23内を埋めるように溜まってゆく。
【0044】
さらに、第1のインク保持部材22の厚みが大気連通口22の存在する煙突高さより厚いため、インク17が押し出されても図3(a)および図3(b)に示すように、大気連通口11開口が当接した第1のインク保持部材22が全てインク17で充填されるまでは、バッファ空間23を有効に使うことが可能となる。
【0045】
上述の構成では、インク吸収体に対する濡れ接触角が90°未満の浸透性の高いインクを用いたが、本実施例は上述の構成によるものではない。また、インク注入方法も本実施例中に述べた方法に限ったものではない。インクに対して濡れ接触角が90°以上の非濡れ領域を持つ第1のインク保持部材に対してインクカートリッジの大気連通口を当接させる事で本提案の効果を発揮出来るものである。ここでインクカートリッジの大気連通口部と、前記第1のインク保持部材22とを同質の材料で構成し、当接部を溶着する構成とすることで大気連通口開口全周を完全にシールすることで本提案の効果を更に上げることも可能である。
【0046】
以下に、本実施例にて検討した部材とインクとの濡れ性を簡単に表1にまとめた。インクとの濡れ接触角が90°以上の部材に関して本提案の効果を確認することが出来た。
【0047】
【表1】
上述した低浸透性、高浸透性とはあくまで概念であり、実際は用いるインクに対して濡れ接触角90°以上の部材を、コストやインク接液性(化学変化/溶出)等を考慮して適宜選択する事が望ましい。
【0048】
また、本実施例において第1のインク保持部材15および第2のインク保持部材16へのインク注入はインク供給口12からの加圧注入法を用いて説明したが、当然、本実施例にて開示したインク注入方法に限られた物ではない。
【0049】
図5(a)〜図5(d)はインク注入針を用いたインク注入法を示すカートリッジ側面から見た断面図である。
【0050】
本注入法ではインク注入針24を第2のインク保持部材16の上部より挿入し、第2のインク保持部材16中にインク17を直接充填する方法である。
【0051】
本構成ではインク17を充填したい領域に直接インク注入を行うことが可能なため、インク充填領域18が制御しやすいという点で望ましい。ただしこの場合、環境変化等によってインク17が押し出される場合、インク保持部材への濡れ接触角が90°以上のインクでは、インク注入針24が刺さった跡をインク17が移動しやすいため大気連通口11当接部の配置には注意が必要である。
【0052】
以上、実施例中ではバッファ空間23をインクカートリッジ10上面に設けているが、当然、インク供給口や大気連通口の位置も同様に本実施例にて示した場所に限られる物ではない。
【0053】
また、本実施例において、大気連通口開口は第1のインク保持部材の表面部に密着当接しているが、表面への密着性をより高めるために、第1のインク保持部材内部まで突き刺した状態にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態によるインクカートリッジを説明するための断面図である。図1(a)はインクカートリッジを側面から見た断面図、図1(b)はインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図2】図1に引き続き、本発明の第1の実施形態によるインクカートリッジを説明するための断面図である。図2(a)はインクカートリッジを側面から見た断面図、図2(b)はインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図3】図2に引き続き、本発明の第1の実施形態によるインクカートリッジを説明するための断面図である。図3(a)はインクカートリッジを側面から見た断面図、図3(b)はインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図4】図3に引き続き、本発明の第1の実施形態によるインクカートリッジを説明するための断面図である。図4(a)はインクカートリッジを側面から見た断面図、図4(b)はインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図5】本発明の実施形態によるインクカートリッジへのインク注入を説明するための断面図である。
【図6】従来のインクカートリッジを説明する断面図である。
【図7】従来のインクカートリッジを説明するための断面図である。図7(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図7(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図8】図7に引き続き、従来のインクカートリッジを説明するための断面図である。図8(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図8(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図9】図7に引き続き、従来のインクカートリッジを説明するための断面図である。図9(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図9(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図10】従来の別のインクカートリッジを説明するための断面図である。図10(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図10(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図11】図10に引き続き、従来の別のインクカートリッジを説明するための断面図である。図11(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図11(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図12】図11に引き続き、従来の別のインクカートリッジを説明するための断面図である。図12(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図12(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図13】従来の更に別のインクカートリッジを説明するための断面図である。図13(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図13(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図14】図13に引き続き、従来の別のインクカートリッジを説明するための断面図である。図14(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図14(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図15】図14に引き続き、従来の別のインクカートリッジを説明するための断面図である。図15(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図15(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【符号の説明】
【0055】
10 インクカートリッジ
11 大気連通口
12 インク供給口
13 リブ
14 インク保持部材
15 第2のインク保持部材
16 第3のインク保持部材
17 インク
18 インク充填領域
19 インク未充填領域
21 キャップ
22 第1のインク保持部材
23 バッファ空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置に用いられるインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、いわゆるノンインパクト方式の記録装置であり、高速記録や様々な記録媒体への記録が可能であって、記録時の騒音がほとんど生じないなどの利点を有しており、広く普及している。このようなインクジェット記録装置は、微小なノズルから微小なインク滴を吐出させて記録媒体に記録を行うものであり、一般に、インク滴を吐出するためのノズルを有するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに供給するインクを保持するインクカートリッジとを有している。
【0003】
このインクジェットカートリッジには、たとえばインクジェットヘッドとインクカートリッジとを常時一体化した構成を採用するものと、インクジェットヘッドとインクカートリッジとを着脱可能とし、使用に際して一体化する構成を採用するものとが知られている。
【0004】
前記インクカートリッジには、記録に供されない状態では外部にインクを漏らすことがないようにインクを安定的に保持し、また、記録時には安定してインクジェットヘッドにインクを供給することを可能にすることが要求され、この要求を満足する目的でインクカートリッジにはインクジェットヘッドに供給されるインクの流れに対する背圧、いわゆる負圧を発生するための構成が備えられる。
【0005】
インクカートリッジにおける負圧発生のための一般的な構成例として、例えば、特許文献1(特開昭62−264728号公報)、特許文献2(特開平8−230207号公報)に示すようなウレタンフォーム等の多孔質体を負圧発生部材(インク保持部材)としてインクカートリッジ内に収納し、この多孔質体の毛管力を不圧発生源として利用するものがある。この構成に用いられるインクカートリッジには、含浸作用によりインクを保持するインク保持部材と、インク保持部材に保持されているインクを記録ヘッド部に供給するためのインク供給口と、インクカートリッジの外部と内部の大気を連通させ、内部の負圧の過度な上昇を防止するための大気連通口とインクカートリッジ外部の減圧あるいは高温時においてインク保持部材から漏れるインクを一時的に収容するバッファ室とが設けられている。
【0006】
また、インクカートリッジ内側の壁面には、特許文献3(特開平3−101971号公報)に開示されているように、大気連通口から導入される大気をインク保持部材の方々に供給ことによりインク保持部材に含浸されたインクを均等にインク供給口に導くためのリブが設けられている。
【0007】
上述したインクジェットカートリッジにおいては、インク保持部材に含浸されたインクが、記録ヘッド部のインク消費に応じた毛管力によりインク供給口を介して記録ヘッド部に供給され、記録ヘッド部から被記録媒体に対して吐出される。そして、消費されたインク量に応じて大気連通口からインクカートリッジ内に大気が導入される。
【0008】
以下、上述した従来技術の一般例について図を用いて詳細に説明する。
【0009】
図6は、従来のインクカートリッジ構成を説明するための断面図である。
【0010】
図に示すように、インクカートリッジ10内部にはインクを充填したインク保持部材14が収容されている。このインク保持部材14は、ウレタンスポンジや繊維の集合体から形成されている。また、インクカートリッジ10には、インクカートリッジ10内部を大気と連通させるための大気連通口11および、内部に保持したインクをインクジェット記録ヘッド(不図示)に供給するためのインク供給口12が形成されている。該インク供給口12には、保管状態でインク蒸発やインク漏れを防止する目的でキャップ21が取り付けられてある。また、カートリッジ内側の壁面からは垂直に突き出した複数のリブ13が収容部内側に向かって形成され、この複数のリブ13の先端がインク保持部材14と当接して、リブ13が形成された壁面とインク保持部材14との間に通気路となる空間を確保している。
【0011】
これにより、確保された通気路を通してインクカートリッジ10の収容部に空気が均等に送り込まれ、インク保持部材14によって保持されたインクを効率よく使用することができる。
【0012】
さらに、本構成により形成された通気路となる空間は次の効果も兼ね備えている。
【0013】
インク保持部材14に保持されたインク17は、環境変化や物流中の衝撃等により保持部材内を移動する。インクカートリッジ10内にはインク17中の溶存気体や、インク17注入時に保持部材内にインク17と共に巻き込まれた微小気泡が大気から隔離された閉塞状態で存在している。このような閉塞空間に存在する気体は、温度や圧力が変化した場合に膨張収縮を繰り返し、保持部材中から大気連通口11方面に向けてインク17を押し出す。押し出されたインク17が大気連通口11部へ直接付着するとカートリッジ外部へのインク漏れとなってしまう。そこで大気連通口11形成部周辺に空間を設け、保持部材中から溢れ出したインク17を受け止めるバッファ空間23を形成しているのである。
【0014】
以下図を用いて更に詳細に説明する。
【0015】
図7〜図15はカートリッジのインク漏れについての説明するための図である。
【0016】
図7(a)、図8(a)、図9(a)、図10(a)、図11(a)、図12(a)、図13(a)、図14(a)及び図15(a)はインクカートリッジの側面方向からの断面図である。また、図7(b)、図8(b)、図9(b)、図10(b)、図11(b)、図12(b)、図13(b)、図14(b)及び図15(b)はインクカートリッジの上面方向からの断面図である。
【0017】
図に示すように、環境変化等で押し出されたインク17は図7から図8のようにインクカートリッジ10内を移動し、インク保持部材14上部のバッファ空間23を経て大気連通口11へ向かう。したがって図9のようにインク17の回り込み方によってはバッファ空間23内をインク17で満たす前に大気連通口11部にインク17が到着し、インク漏れを起こすことが懸念される。
【0018】
そのため、一般的にはインクカートリッジ10の置かれる姿勢変化などによるバッファ空間23内のインク17移動のばらつきを考慮して、常に一定のバッファ空間23を使用できるように、バッファ空間23を大きく取り、大気連通口11をその中央部付近に配置する等インク漏れに対するマージンをとった設計が行われている。
【0019】
図10〜図12及び図13〜図15は、それぞれ、インク漏れマージン設計を行った従来のインクカートリッジを示す断面図であり、図10〜図12は通常姿勢(インク供給口12下向き)インクカートリッジであり、図13〜図15は逆姿勢(インク供給口12上向き)インクカートリッジである。
【0020】
図に示すように、環境変化等で押し出されたインク17は図10から図12、図13から図15のようにインク17が移動し、バッファ空間23を経て大気連通口11へ向かう。
【0021】
これらの図に示すように本構成のインクカートリッジ10は、インクカートリッジ10姿勢差を考慮して大気連通口11をバッファ空間23の中央に配置し、各姿勢においても一定のバッファ空間23が使用可能なようになっている。
【特許文献1】特開昭62−264728号公報
【特許文献2】特開平8−230207号公報
【特許文献3】特開平3−101971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
前述のように、インク漏れ信頼性のためにバッファ空間を設けてある従来の構成においては、姿勢差等を考慮するために実際にインクを受け入れる部分は構成されたバッファ空間の半分程度である。
【0023】
一方、近年持ち運びが可能な携帯型のプリンタや、車、携帯電話等、いろいろな製品へのプリンタ搭載などを目的としプリンタの小型化が求められている。よって、プリンタに搭載されるインクカートリッジも極力小型化する必要があり、インクカートリッジ内の空間使用効率を更に高める事が求められている。
【0024】
そこで本発明の目的は、上述した従来技術の問題点に鑑み、インク漏れに対する信頼性を犠牲にすることなくバッファ機構の空間使用効率を更に高めたインクカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するために、本発明のインクカートリッジは以下の構造をとる。
【0026】
本発明におけるインクカートリッジは、記録ヘッド部に前記インクを供給するための供給口と、インクカートリッジ内部を大気と連通するための大気連通口とを備え、前記インクを保持するためのインク保持部材で構成されるインクカートリッジにおいて、該インク保持部材は密度の異なる少なくとも2つ以上の部材で構成され、前記大気連通口におけるカートリッジ内側開口は内側に突起した煙突先端面に存在し、該煙突先端面は最も密度の低いインク保持部材に全周当接し、該インク保持部材の煙突先端当接面はインク未充填状態であることを特徴とするインクカートリッジであり、前記密度の異なる少なくとも2つ以上のインク保持部材は、前記煙突先端面の垂線方向に積層配置されていることを特徴とするインクカートリッジであり、前記煙突先端面に全周当接するインク保持部材の厚みは、カートリッジ内側に突起した煙突高さより厚いことを特徴とするインクカートリッジであり、更に、前記煙突先端面に全周当接する第一のインク保持部材と、該インク保持部材に積層当接する第二のインク保持部材において、当接部を有する面の大きさが
第一のインク保持部材面積 < 第二のインク保持部材面積
であることを特徴とするインクカートリッジであり、また、前記インク保持部材は、ポリオレフィン繊維を主材とするか、または発泡ポリウレタンを主材としてなる事を特徴とするインクカートリッジであり、そして、前記インク保持部材における煙突先端面に全周当接する第一のインク保持部材は、インク保持可能な密度を有するポリオレフィン繊維積層体であるか、またはインク保持可能な開口径を有する発泡ポリウレタンであることを特徴とするインクカートリッジである。
【発明の効果】
【0027】
以上で説明したように、本発明のインクカートリッジは密度の異なる少なくとも2つ以上のインク保持部材で構成され、大気連通口のカートリッジ内側開口が内側に突起した煙突先端面に存在し、該煙突先端面が最も密度の低い第一のインク保持部材に全周当接し、該インク保持部材の煙突先端当接面はインク未充填状態であるため、環境変化や衝撃を受けた時に、インク移動するインクが直接大気連通口へ進入することを防止する。
【0028】
また、第一のインク保持部材の厚みが連通口開口の存在する煙突高さより厚く、前記煙突先端面に全周当接する第一のインク保持部材と、該インク保持部材に積層当接する第二のインク保持部材において、当接部を有する面の大きさが
第一のインク保持部材面積 < 第二のインク保持部材面積
の関係を満たすため第二のインク保持部材からの移動インクは、第一段階では流抵抗成分のない、第一のインク保持部材と当接しない部分からバッファ空間へ移動し、第二段階として、当接部分を介して第一の保持部材をインク移動する時も、その厚みが煙突高さより厚いため、少なくともバッファ空間を全てインクが充填するまでのは、インク漏れが発生しない。
【0029】
すなわち、バッファ空間を今まで以上に有効的に使用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0031】
図1〜図4は、本発明におけるインクカートリッジについての説明図である。
【0032】
図1(a)、図2(a)、図3(a)及び図4(a)はインクカートリッジの側面方向からの断面図である。
【0033】
図1(b)、図2(b)、図3(b)及び図4(b)は、それぞれ図1(a)、図2(a)、図3(a)及び図4(a)に示したインクカートリッジの上面方向からの断面図である。
【0034】
図1(a)に示すようにインクカートリッジ10には、インクカートリッジ10内部を大気と連通させるための大気連通口11および、内部に保持したインク17をインクジェット記録ヘッド(不図示)等に供給するためのインク供給口12が形成され、インク供給口12の外側にはキャップ21が取り付けられており、インク供給口12からのインク蒸発やインク漏れを防ぐ構成となっている。また、筐体内部には、インク17を含浸保持する第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16が装填されている。第2のインク保持部材15は、第3のインク保持部材16と密着し、かつインク供給口12を内側から塞ぐように設けられている。また、第1のインク保持部材22の厚みが大気連通口11の開口部が存在する煙突高さより厚く、前記煙突先端面に全周当接する第1のインク保持部材22と、該インク保持部材に積層当接する第2のインク保持部材16において、当接部を有する面の大きさが
第一のインク保持部材面積 < 第二のインク保持部材面積
としている。また、第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16はともにインク17を含浸保持するものであるが、第3のインク保持部材15のインク保持力(毛管力)は第2のインク保持部材16のインク保持力よりも高くなっている。これによって、第2のインク保持部材16に保持されているインク17が第3のインク保持部材15に効果的に導かれ、第2のインク保持部材16に保持されたインクの消費効率が向上する。ここで、本実施例においてインク保持部材に充填するインクは、前記第1のインク保持部材15および第2のインク保持部材16に対し、濡れ接触角が90°未満の浸透性の高いインクを用いた。
【0035】
また、本実施例においてインク保持部材へのインク注入は、インク供給口12をインクカートリッジ10へのインク注入口として、容器の内部を減圧状態にしてインクを注入する減圧注入方法を用いた。
【0036】
減圧注入を行う場合は、まずインク供給口12に開閉弁を介してインク供給手段を取り付け、大気連通口11に真空ポンプなどの減圧手段を取り付ける。そして、開閉弁を閉じてインク供給口12を塞いだ状態で、大気連通口11から真空ポンプを用いて容器内部の空気を吸引して減圧する。
【0037】
容器内部が所定の圧力に減圧されたら、真空ポンプを停止し大気連通口11を塞いだままの状態で、開閉弁を開き、インク供給手段からインク供給口12を介して容器の内部にインク17を注入する。インクの注入が開始されると、インク供給口12の近傍から第3のインク保持部材16を経て第2のインク保持部材15にインク17が浸透するとともに、容器の内部壁面に沿ってインク注入が進行する。この状態で開閉弁を閉じインク注入を終了して、大気連通口11を大気に開放すると、減圧状態で膨張していた第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16内部の空気が収縮することにより、インクが第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16に引き込まれて充填されるのである。
【0038】
また、カートリッジ内側の壁面からは垂直に突き出した複数のリブ13が収容部内側に向かって形成され、この複数のリブ13の先端が上記第2のインク保持部材16と当接して、リブ13が形成された壁面と第2のインク保持部材16との間にバッファ空間23を確保している。
【0039】
そして、この空間内には第1のインク保持部材22が配され、前記大気連通口11のインクカートリッジ10内側開口部が第1のインク保持部材22に全周密着当接している。
【0040】
また、前記第1のインク保持部材22はインクカートリッジ10内に保持されたインクに対し濡れ接触角が90°以上の部材をもちいた。
【0041】
次に、環境変化等によるインクカートリッジ10内のインク17の流れについて図を用いて詳細に説明する。
【0042】
図1(a)および図1(b)に示すように、初期状態においては第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16中にインク17はしっかりと含浸保持され、第2のインク保持部材15上部のバッファ空間23に溢れ出したインク17は存在しない。
【0043】
次に、環境が変化し、インク17中の溶存気泡の膨張や、インクカートリッジ10内に形成された閉塞空間の気体膨脹などにより第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16中のインク17が押し出されると、図2(a)および図2(b)に示すようにバッファ空間23にあふれ出てくる。第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16に対し濡れ接触角が90°以下のインクでは、吸収体への浸透性が高いこともあって、環境変化等によって第3のインク保持部材16に充填されているインク17は第2のインク保持部材15中のインク未充填領域にも浸透しつつ、第2のインク保持部材15および第3のインク保持部材16とインクカートリッジ10の筐体との間に構成された隙間などを通り大気連通口11側へと移動する。この際、大気連通口11の開口が当接した第1のインク保持部材22は、流抵抗成分となるためインク17は第1のインク保持部材22内に浸透せずにバッファ空間23内を埋めるように溜まってゆく。
【0044】
さらに、第1のインク保持部材22の厚みが大気連通口22の存在する煙突高さより厚いため、インク17が押し出されても図3(a)および図3(b)に示すように、大気連通口11開口が当接した第1のインク保持部材22が全てインク17で充填されるまでは、バッファ空間23を有効に使うことが可能となる。
【0045】
上述の構成では、インク吸収体に対する濡れ接触角が90°未満の浸透性の高いインクを用いたが、本実施例は上述の構成によるものではない。また、インク注入方法も本実施例中に述べた方法に限ったものではない。インクに対して濡れ接触角が90°以上の非濡れ領域を持つ第1のインク保持部材に対してインクカートリッジの大気連通口を当接させる事で本提案の効果を発揮出来るものである。ここでインクカートリッジの大気連通口部と、前記第1のインク保持部材22とを同質の材料で構成し、当接部を溶着する構成とすることで大気連通口開口全周を完全にシールすることで本提案の効果を更に上げることも可能である。
【0046】
以下に、本実施例にて検討した部材とインクとの濡れ性を簡単に表1にまとめた。インクとの濡れ接触角が90°以上の部材に関して本提案の効果を確認することが出来た。
【0047】
【表1】
上述した低浸透性、高浸透性とはあくまで概念であり、実際は用いるインクに対して濡れ接触角90°以上の部材を、コストやインク接液性(化学変化/溶出)等を考慮して適宜選択する事が望ましい。
【0048】
また、本実施例において第1のインク保持部材15および第2のインク保持部材16へのインク注入はインク供給口12からの加圧注入法を用いて説明したが、当然、本実施例にて開示したインク注入方法に限られた物ではない。
【0049】
図5(a)〜図5(d)はインク注入針を用いたインク注入法を示すカートリッジ側面から見た断面図である。
【0050】
本注入法ではインク注入針24を第2のインク保持部材16の上部より挿入し、第2のインク保持部材16中にインク17を直接充填する方法である。
【0051】
本構成ではインク17を充填したい領域に直接インク注入を行うことが可能なため、インク充填領域18が制御しやすいという点で望ましい。ただしこの場合、環境変化等によってインク17が押し出される場合、インク保持部材への濡れ接触角が90°以上のインクでは、インク注入針24が刺さった跡をインク17が移動しやすいため大気連通口11当接部の配置には注意が必要である。
【0052】
以上、実施例中ではバッファ空間23をインクカートリッジ10上面に設けているが、当然、インク供給口や大気連通口の位置も同様に本実施例にて示した場所に限られる物ではない。
【0053】
また、本実施例において、大気連通口開口は第1のインク保持部材の表面部に密着当接しているが、表面への密着性をより高めるために、第1のインク保持部材内部まで突き刺した状態にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態によるインクカートリッジを説明するための断面図である。図1(a)はインクカートリッジを側面から見た断面図、図1(b)はインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図2】図1に引き続き、本発明の第1の実施形態によるインクカートリッジを説明するための断面図である。図2(a)はインクカートリッジを側面から見た断面図、図2(b)はインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図3】図2に引き続き、本発明の第1の実施形態によるインクカートリッジを説明するための断面図である。図3(a)はインクカートリッジを側面から見た断面図、図3(b)はインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図4】図3に引き続き、本発明の第1の実施形態によるインクカートリッジを説明するための断面図である。図4(a)はインクカートリッジを側面から見た断面図、図4(b)はインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図5】本発明の実施形態によるインクカートリッジへのインク注入を説明するための断面図である。
【図6】従来のインクカートリッジを説明する断面図である。
【図7】従来のインクカートリッジを説明するための断面図である。図7(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図7(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図8】図7に引き続き、従来のインクカートリッジを説明するための断面図である。図8(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図8(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図9】図7に引き続き、従来のインクカートリッジを説明するための断面図である。図9(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図9(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図10】従来の別のインクカートリッジを説明するための断面図である。図10(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図10(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図11】図10に引き続き、従来の別のインクカートリッジを説明するための断面図である。図11(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図11(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図12】図11に引き続き、従来の別のインクカートリッジを説明するための断面図である。図12(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図12(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図13】従来の更に別のインクカートリッジを説明するための断面図である。図13(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図13(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図14】図13に引き続き、従来の別のインクカートリッジを説明するための断面図である。図14(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図14(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【図15】図14に引き続き、従来の別のインクカートリッジを説明するための断面図である。図15(a)は従来のインクカートリッジを側面から見た断面図、図15(b)は従来のインクカートリッジを上面から見た断面図である。
【符号の説明】
【0055】
10 インクカートリッジ
11 大気連通口
12 インク供給口
13 リブ
14 インク保持部材
15 第2のインク保持部材
16 第3のインク保持部材
17 インク
18 インク充填領域
19 インク未充填領域
21 キャップ
22 第1のインク保持部材
23 バッファ空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッド部に前記インクを供給するための供給口と、インクカートリッジ内部を大気と連通するための大気連通口とを備え、前記インクを保持するためのインク保持部材で構成されるインクカートリッジにおいて、該インク保持部材は密度の異なる少なくとも2つ以上の部材で構成され、前記大気連通口におけるカートリッジ内側開口は内側に突起した煙突先端面に存在し、該煙突先端面は最も密度の低いインク保持部材に全周当接し、該インク保持部材の煙突先端当接面はインク未充填状態であることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
請求項1記載の密度の異なる少なくとも2つ以上のインク保持部材は、前記煙突先端面の垂線方向に積層配置されていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項3】
請求項1記載の煙突先端面に全周当接するインク保持部材の厚みは、カートリッジ内側に突起した煙突高さより厚いことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項4】
請求項1記載の煙突先端面に全周当接する第一のインク保持部材と、該インク保持部材に積層当接する第二のインク保持部材において、当接部を有する面の大きさが
第一のインク保持部材面積 < 第二のインク保持部材面積
の関係を満たすことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク保持部材は、ポリオレフィン繊維を主材としてなる事を特徴とするインクカートリッジ。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク保持部材は、発泡ポリウレタンを主材としてなる事を特徴とするインクカートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク保持部材において、煙突先端面に全周当接する第一のインク保持部材は、インク保持可能な密度を有するポリオレフィン繊維積層体であることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク保持部材において、煙突先端面に全周当接する第一のインク保持部材は、インク保持可能な開口径を有する発泡ポリウレタンであることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項1】
記録ヘッド部に前記インクを供給するための供給口と、インクカートリッジ内部を大気と連通するための大気連通口とを備え、前記インクを保持するためのインク保持部材で構成されるインクカートリッジにおいて、該インク保持部材は密度の異なる少なくとも2つ以上の部材で構成され、前記大気連通口におけるカートリッジ内側開口は内側に突起した煙突先端面に存在し、該煙突先端面は最も密度の低いインク保持部材に全周当接し、該インク保持部材の煙突先端当接面はインク未充填状態であることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
請求項1記載の密度の異なる少なくとも2つ以上のインク保持部材は、前記煙突先端面の垂線方向に積層配置されていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項3】
請求項1記載の煙突先端面に全周当接するインク保持部材の厚みは、カートリッジ内側に突起した煙突高さより厚いことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項4】
請求項1記載の煙突先端面に全周当接する第一のインク保持部材と、該インク保持部材に積層当接する第二のインク保持部材において、当接部を有する面の大きさが
第一のインク保持部材面積 < 第二のインク保持部材面積
の関係を満たすことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク保持部材は、ポリオレフィン繊維を主材としてなる事を特徴とするインクカートリッジ。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク保持部材は、発泡ポリウレタンを主材としてなる事を特徴とするインクカートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク保持部材において、煙突先端面に全周当接する第一のインク保持部材は、インク保持可能な密度を有するポリオレフィン繊維積層体であることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク保持部材において、煙突先端面に全周当接する第一のインク保持部材は、インク保持可能な開口径を有する発泡ポリウレタンであることを特徴とするインクカートリッジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−51762(P2006−51762A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236487(P2004−236487)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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