説明

インクジェットインク用バインダー、それを含むインクジェット印刷用インク及び印刷物

【課題】本発明が解決しようとする課題は、非常に高いレベルの耐擦過性を有し、かつ高光沢の印刷画像を形成可能なインクに使用可能なインクジェットインク用バインダー及び該バインダーを含むインクジェット印刷用インクを提供することである。
【解決手段】本発明は、親水性基含有ポリウレタン(a1)とビニル重合体(a2)とがポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂(A)、及び、水系媒体を含有してなるインクジェットインク用バインダーに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷に使用可能なインク用のバインダー及びそれを含むインクジェット印刷用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、成長が著しいインクジェット印刷関連業界では、インクジェットプリンターの高性能化やインクの改良等が飛躍的に進み、一般家庭でも容易に銀塩写真並みの高光沢で高精細な画像を得ることが可能となりつつある。
なかでもインクについては、従来の染料インクから顔料インクへの移行や、溶剤系から水系への移行等の、高画質化や環境負荷低減を目的とした改良が急速に進められており、現在は、水系の顔料インクをベースとしたインク開発が積極的に行われている。
また、前記インクには、インクジェットプリンター等の高性能化に伴って、年々、一層高いレベルの性能が要求されるようになっており、例えば、印刷画像表面に摩擦等の外力が加わった場合に生じうる、顔料の欠落に起因した印刷画像の劣化等を防止できるレベルの耐擦過性が、近年強く求められている。
【0003】
前記耐擦過性に優れた水系顔料インクとしては、顔料間の密着性を向上させうるバインダー樹脂を、顔料や水系媒体と混合したインクが知られており、例えば、顔料と水系媒体とバインダー樹脂とを含むインクジェット記録用インクであって、前記バインダー樹脂が有機ジイソシアネートとポリオキシエチレングリコール由来の構造を有するジオールとを反応させて得られる、10〜20mgKOH/gの酸価と2000〜100000の数平均分子量とを有するカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂であって、インク全体に対する前記ポリオキシエチレングリコール由来の構造の割合が1〜10重量%であるインクが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
前記インクジェット記録用インクを用いて印刷して得られた画像は、例えば紙間の擦れ等に起因した顔料の脱落を防止できる等、ある程度の耐擦過性を有するものであった。
しかし、インクジェット印刷物の使用分野が広範となるのに伴い、より一層の高いレベルの耐擦過性が求められるなかで、前記インクジェット記録用インクを用いて形成された印刷画像は、例えば極所的に強い外力が加わった場合等に、依然として顔料の脱落等に起因した印刷画像の色落ちや劣化や損傷を引き起こす場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−1639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、非常に高いレベルの耐擦過性を有し、かつ高光沢の印刷画像を形成可能なインクに使用可能なインクジェットインク用バインダー及び該バインダーを含むインクジェット印刷用インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討するなかで、インクバインダーとしてウレタン樹脂よりも比較的硬いアクリル樹脂を用いることにより、外力等に起因した顔料の脱落等を防止できるのではないかと考え、アクリル樹脂をベースとして検討を進めた。
また、前記耐擦過性の向上には、印刷面の滑り性を向上させることが有効ではないかと考え、前記アクリル樹脂にポリシロキサンが結合した複合樹脂を含有するインクバインダーを検討した。
しかし、前記複合樹脂含有インクバインダーでは、依然として前記したレベルの耐擦過性を有する印刷画像を形成することは困難であった。
そこで、前記アクリル樹脂とポリシロキサンとが結合した複合樹脂に、特定のウレタン樹脂を混合した樹脂組成物を含むインクバインダーを検討した。
しかし、前記樹脂組成物であっても、やはり耐擦過性の向上を図ることは困難であった。
そこで、前記アクリル樹脂とポリシロキサンとともに、前記ウレタン樹脂を結合した複合樹脂含有のインクバインダーを検討したところ、予想外にも、耐擦過性の著しく向上した印刷画像を形成できることを見いだした。
【0008】
即ち、本発明は、親水性基含有ポリウレタン(a1)とビニル重合体(a2)とがポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂(A)、及び、水系媒体を含有してなるインクジェットインク用バインダーに関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のインクジェットインク用バインダーを含むインクジェット印刷用インクであれば、強い外力が加わった場合であっても顔料の脱落等を引き起こすことなく、高精細で鮮明な印刷画像を維持することが可能となり、銀塩写真並みの耐擦過性が得られることから、例えば、インクジェット印刷による写真印刷や、インクジェット印刷による高速印刷によって得られた印刷物など様々な用途において使用することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、親水性基含有ポリウレタン(a1)とビニル重合体(a2)とがポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂(A)、水系媒体、及び必要に応じてその他の成分を含有してなるインクジェットインク用バインダーに関するものである。
【0011】
本発明で使用する複合樹脂(A)は、親水性基含有ポリウレタン(a1)とビニル重合体(a2)とがポリシロキサン(a3)を介して結合した構造を有するものである。具体的には、前記親水性基含有ポリウレタン(a1)と前記ポリシロキサン(a3)との結合は、前記親水性基含有ポリウレタン(a1)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との反応によって形成されるものであることが好ましい。また、前記ビニル重合体(a2)と前記ポリシロキサン(a3)との結合は、前記ビニル重合体(a2)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との反応によって形成されるものであることが好ましい。
【0012】
また、前記複合樹脂(A)は、水系媒体中に分散したものであるが、前記複合樹脂(A)の一部が水系媒体中に溶解していても良い。水系媒体中に分散した複合樹脂(A)は、10〜500nmの平均粒子径を有することが、良好な分散安定性を維持するうえで好ましい。なお、ここでいう平均粒子径とは、粒子の動的散乱光を検出する測定原理で粒度分布を求める方法で測定した値を指す。
【0013】
また、前記複合樹脂(A)は、水系媒体中に安定して分散するうえで、親水性基を有することが必須である。
【0014】
親水性基は、主として前記複合樹脂(A)の外層を構成するポリウレタン(a1)中に存在することが必須であるが、必要に応じて、前記ビニル重合体(a2)中に存在していても良い。
【0015】
前記親水性基としては、アニオン性基、カチオン性基、及びノニオン性基を使用できるが、なかでもアニオン性基を使用することがより好ましい。
【0016】
前記アニオン性基としては、例えばカルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基等を使用することができ、なかでも、一部または全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが、良好な水分散性を有する複合樹脂を製造する上で好ましい。
【0017】
前記アニオン性基の中和に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミンや、Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基化合物等が挙げられる。
【0018】
また、前記カチオン性基としては、例えば3級アミノ基等を使用することができる。
前記3級アミノ基の一部又は全てを中和する際に使用することができる酸としては、例えば、蟻酸、酢酸等を使用することができる。また、前記3級アミノ基の一部又は全てを4級化する際に使用することができる4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸類を使用することができる。
【0019】
また、前記ノニオン性基としては、例えばポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)基、及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を使用することができる。なかでもオキシエチレン単位を有するポリオキシアルキレン基を使用することが、親水性をより一層向上させるうえで好ましい。
【0020】
前記親水性基は、前記複合樹脂(A)粒子の良好な水分散安定性を維持する観点から、前記複合樹脂(A)全体に対して50〜1000mmol/kgの範囲で存在することが好ましい。
【0021】
前記複合樹脂(A)は、前記ビニル重合体(a2)からなる構造と前記ポリシロキサン(a3)からなる構造との質量割合[(a2)からなる構造/(a3)からなる構造]が、10/1〜1/10の範囲であることが、インクジュット用インクにおいて良好な保存安定性とインク吐出性と、印字物における耐擦過性を得るうえで好ましく、3/1〜1/3の範囲であることがより好ましい。
また、前記複合樹脂(A)は、前記親水性基含有ポリウレタン(a1)からなる構造と前記ビニル重合体(a2)からなる構造との質量割合[(a2)からなる構造/(a1)からなる構造]が、1/1〜1/50の範囲であることが、インクジュット用インクにおいて良好な保存安定性とインク吐出性と、印字物における耐擦過性を得るうえで好ましい。く、1/3〜1/20の範囲であることがより好ましい。
【0022】
また、前記複合樹脂(A)は、インクジュット用インクにおいて良好な保存安定性とインク吐出性と、印字物における耐擦過性を得るうえで、前記複合樹脂(A)全体に対して1〜30質量%のポリシロキサン(a3)由来の構造を有することが好ましく、1〜15質量%の範囲であることがより好ましい。
【0023】
次に、前記複合樹脂(A)を構成する親水性基含有ポリウレタン(a1)について説明する。
【0024】
前記親水性基含有ポリウレタン(a1)は、非常に高いレベルの耐擦過性を有し、かつ高光沢の印刷画像を形成可能なインクに使用可能な本発明のインクジェットインク用バインダーを得るうえで必須の成分である。
【0025】
前記親水性基含有ポリウレタン(a1)としては、各種のものを使用することができるが、例えば3000〜100000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、3500〜10000の数平均分子量を有するものを使用することが、インクジュット用インクにおいて良好な保存安定性とインク吐出性と、印字物における耐擦過性を得るうえで、好ましい。
【0026】
前記親水性基含有ポリウレタン(a1)は、前記複合樹脂(A)に水分散安定性を付与する上で親水性基を有することが必須である。親水性基は、前記親水性基含有ポリウレタン(a1)全体に対しても、50〜1500mmol/kgの範囲存在することが、複合樹脂(A)に一層良好な水分散性を付与する上で好ましい。
【0027】
前記親水性基含有ポリウレタン(a1)としては、例えばポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタンを使用することができる。前記親水性基含有ポリウレタン(a1)の有する親水性基は、例えば前記ポリオールを構成する一成分として、親水性基含有ポリオールを使用することによって、前記親水性基含有ポリウレタン(a1)中に導入することができる。
【0028】
前記親水性基含有ポリウレタン(a1)の製造に使用可能なポリオールとしては、例えば前記親水性基含有ポリオール及びその他のポリオールを組み合わせ使用することができる。
【0029】
前記親水性基含有ポリオールとしては、例えば2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基含有ポリオールや、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等のスルホン酸基含有ポリオールを使用することができる。また、前記親水性基含有ポリオールとしては、前記した低分子量の親水性基含有ポリオールと、例えばアジピン酸等の各種ポリカルボン酸とを反応させて得られる親水性基含有ポリエステルポリオール等を使用することもできる。
【0030】
前記親水性基含有ポリオールと組み合わせ使用可能なその他のポリオールとしては、本発明のインクジェットインク用バインダーに求められる特性等に応じて適宜使用することができ、例えばポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリエステルポリオール等を使用することができる。
【0031】
なかでも、前記ポリエーテルポリオールは、本発明のインクジェットインク用バインダーに、特に優れたインクジュット用インクにおいて良好な保存安定性とインク吐出性を付与することができるため、前記親水性基含有ポリオールと組み合わせ使用することが好ましい。
【0032】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0033】
前記開始剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
【0034】
また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0035】
前記ポリエーテルポリオールとしては、非常に優れた耐擦過性を付与可能なインクジェットインク用バインダーを得る観点から、ポリテトラメチレングリコールや、テトラヒドロフランとネオペンチルグリコールとを共重合して得られるポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
【0036】
前記ポリテトラメチレングリコールは、例えばテトラヒドロフランを開環重合して得られるものであり、本発明においては、500〜5000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、500〜3500の数平均分子量を有するもの使用することが、インクの保存安定性と耐擦過性を両立する上でより好ましい。
【0037】
また、前記テトラヒドロフランとネオペンチルグリコールとを共重合して得られるポリエーテルポリオールは、テトラヒドロフランの開環した構造とネオペンチルグリコール由来の分岐構造とによって構成されるポリエーテルポリオールである。
【0038】
前記前記テトラヒドロフランとネオペンチルグリコールとを共重合して得られるポリエーテルポリオールは、前記テトラヒドロフランの開環した構造と、前記ネオペンチルグリコール由来の構造単位とからなる、いわゆるA−B型のブロック共重合体であっても、A−B−A型のブロック共重合体であってもよい。
【0039】
前記ポリエーテルポリオールは、例えばテトラヒドロフランとネオペンチルグリコールとを、開環重合触媒の存在下で反応させることによって製造することができる。具体的には、ネオペンチルグリコールを開始剤として、テトラヒドロフランを開環重合することによって製造することができる。
【0040】
前記開環重合触媒としては、特に制限されず公知のものを使用することができ、例えばクロロスルホン酸やフルオロスルホン酸等を使用することができる。
【0041】
前記テトラヒドロフランとネオペンチルグリコールとを共重合して得られるポリエーテルポリオールとしては、500〜5000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、500〜3500の数平均分子量を有するもの使用することが、インクの保存安定性と耐擦過性を両立する上でより好ましい。
【0042】
前記ポリテトラメチレングリコールや前記テトラヒドロフランとネオペンチルグリコールとを共重合して得られるポリエーテルポリオールは、前記親水性基含有ポリウレタン(a1)の製造に使用可能なポリオール全体に対して50〜95質量%の範囲で使用することがインクの保存安定性と耐擦過性を両立する上でより好ましい。
【0043】
また、前記親水性基含有ポリウレタン(a1)の製造に使用可能なポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるものや、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものを使用することができる。
【0044】
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ−ト等を使用することできる。
【0045】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチルプロパノールジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、4,4’−ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
【0046】
また、前記ポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるものや、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0047】
前記低分子量のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコ−ル等を使用することができる。
【0048】
また、前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及びこれらの無水物またはエステル形成性誘導体などを使用することができる。
【0049】
また、前記その他のポリオールとしては、例えばシクロヘキサンジオール等の脂肪族環式構造含有ポリオールや芳香族環式構造含有ポリオール等を、前記した各種ポリオールと組み合わせ使用しても良い。
【0050】
また、前記親水性基含有ポリウレタン(a1)を製造する際に使用するポリイソシアネートとしては、例えばフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族または脂肪族環式構造含有ジイソシアネート等を、単独で使用または2種以上を併用して使用することができる。なかでも、脂肪族環式構造含有ジイソシアネートを使用することが、長期耐候性に優れる塗膜を形成できるため好ましい。
【0051】
前記親水性基含有ポリウレタン樹脂(a1)は、前記したような親水性基の他に、必要に応じてその他の官能基を有していてもよく、かかる官能基としては、後述するポリシロキサン(a3)と反応しうる加水分解性シリル基、シラノール基や、アミノ基、イミノ基、水酸基等が挙げられ、なかでも加水分解性シリル基であることが好ましい。
【0052】
前記親水性基含有ポリウレタン(a1)が有していても良い加水分解性シリル基は、加水分解性基が珪素原子に直接結合した官能基であり、例えば、下記の一般式で表される官能基が挙げられる。
【0053】
【化1】

【0054】
(式中、Rはアルキル基、アリール基又はアラルキル基等の1価の有機基を、Rはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基である。またxは0〜2の整数である。)
【0055】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0056】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基等が挙げられ、前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0057】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0058】
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0059】
前記アシロキシ基としては、例えば、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、フェニルアセトキシ、アセトアセトキシ等が挙げられ、前記アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ等が挙げられ、前記アルケニルオキシ基としては、例えば、アリルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基等が挙げられる。
【0060】
前記Rは、加水分解によって生じうる一般式ROH等の脱離成分の除去が容易であることから、好ましくはそれぞれ独立してアルコキシ基であることが好ましい。
【0061】
また、前記親水性基含有ポリウレタン(a1)が有していても良いシラノール基は、水酸基が直接珪素原子に結合した官能基であって、主に前記した加水分解性シリル基が加水分解して生じる官能基である。
【0062】
前記加水分解性シリル基及びシラノール基は、前記親水性基含有ポリウレタン(a1)全体に対して10〜400mmol/kg存在することが、複合樹脂(A)の良好な水分散安定性を確保するうえで好ましい。
【0063】
次に、前記複合樹脂(A)を構成するビニル重合体(a2)について説明する。
前記ビニル重合体(a2)は、後述するポリシロキサン(a3)を介して前記親水性基含有ポリウレタン(a1)と結合しうるものである。
【0064】
前記ビニル重合体(a2)としては、3000〜100000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、7000〜13000の数平均分子量を有するものを使用することが、インクジュット用インクにおいて良好な保存安定性とインク吐出性と、印字物における耐擦過性を得るうえで好ましい。
【0065】
前記ビニル重合体(a2)としては、例えば各種ビニル単量体を重合開始剤の存在下で重合することによって製造したものを使用することができる。
【0066】
前記ビニル単量体としては、前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基等と反応しうる官能基を、ビニル重合体(a2)中に導入する観点から、加水分解性シリル基含有ビニル単量体や水酸基含有ビニル単量体等を使用することが好ましい。
【0067】
前記加水分解性シリル基含有ビニル単量体としては、例えば3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランもしくは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等を使用することができ、なかでも、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを使用することが好ましい。
【0068】
また、前記水酸基含有ビニル単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0069】
前記ビニル単量体としては、前記加水分解性シリル基含有ビニル単量体や水酸基含有ビニル単量体等の他に、必要に応じてその他のビニル単量体を併用しても良い。
【0070】
前記その他のビニル単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基含有ビニル単量体;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の二級アミノ基含有ビニル単量体;アミノメチルアクリレート等の一級アミノ基含有ビニル単量体等の塩基性窒素原子含有基含有ビニル単量体;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有ビニル単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和カルボン酸のニトリル類;スチレン等の芳香族環を有するビニル化合物;イソプレン等のα−オレフィン類、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のメチロールアミド基及びそのアルコキシ化物含有ビニル単量体;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート等のアジリジニル基含有ビニル単量体;(メタ)アクリロイルイソシアナート等のイソシアナート基及び/またはブロック化イソシアナート基含有ビニル単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有ビニル単量体;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のシクロペンテニル基含有ビニル単量体;アクロレイン等のカルボニル基含有ビニル単量体;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、もしくはこれらの半エステルまたはこれらの塩等のカルボキシル基含有単量体等を1種または2種以上使用することができる。
【0071】
前記ビニル重合体(a2)を製造する際に使用可能な重合開始剤としては、例えば過硫酸塩類、有機過酸化物類、過酸化水素等のラジカル重合開始剤や、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ開始剤を使用することができる。また、前記ラジカル重合開始剤は、例えばアスコルビン酸等の還元剤と併用しレドックス重合開始剤として使用しても良い。
【0072】
前記重合開始剤の代表的なものである過硫酸塩類としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられ、有機過酸化物類として、具体的には、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル類、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等を使用することができる。
【0073】
重合開始剤の使用量は、重合が円滑に進行する量を使用すれば良いが、ビニル重合体(a2)の製造に使用するビニル単量体の全量に対して、10質量%以下とすることが好ましい。
【0074】
次に、前記複合樹脂(A)を構成するポリシロキサン(a3)について説明する。
前記ポリシロキサン(a3)は、前記親水性基含有ポリウレタン(a1)と前記ビニル重合体(a2)との連結部分を構成するものである。
【0075】
前記ポリシロキサン(a3)は、ケイ素原子と酸素原子とからなる鎖状構造を有するものであって、必要に応じて加水分解性シリル基やシラノール基等を有するものである。
【0076】
前記加水分解性シリル基は、加水分解性基が前記ケイ素原子に直接結合した原子団であって、例えば前記親水性基含有ポリウレタン(a1)の説明の際に例示した一般式(I)に示されるような構造からなるものを使用することができる。
【0077】
前記加水分解性基は、水の影響により水酸基を形成しうるものであって、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基、アルケニルオキシ基等が挙げられ、なかでもアルコキシ基や置換アルコキシ基であることが好ましい。
【0078】
また、前記シラノール基は、水酸基が前記ケイ素原子に直接結合した原子団を示すものであって、前記加水分解性シリル基が加水分解した際に形成される。
【0079】
また、前記ポリシロキサン(a3)としては、前記したものの他に、必要に応じてメチル基等のアルキル基やフェニル基等を有しているものを使用することができ、例えばポリシロキサン(a3)を構成するケイ素原子に、フェニル基等の芳香族環式構造、炭素原子数1〜3個を有するアルキル基、及び炭素原子数1〜3個を有するアルコキシ基からなる群より選ばれる1種以上が直接結合したものを使用することが、複合樹脂(A)の良好な水分散安定性を維持するうえでより好ましい。
【0080】
前記ポリシロキサン(a3)としては、例えば後述するシラン化合物を完全にまたは部分的に加水分解縮合して得られるものを使用することができる。
【0081】
前記シラン化合物としては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランもしくは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のオルガノトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシランもしくはメチルフェニルジメトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン類;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシランもしくはジフェニルジクロロシラン等の各種のクロロシラン類や、それらの部分加水分解縮合物等を使用することができ、なかでもオルガノトリアルコキシシランやジオルガノジアルコキシシランを使用することが好ましい。これらシラン化合物は単独使用でも2種類以上の併用でもよい。
【0082】
次に、本発明のインクジェットインク用バインダーの製造方法について説明する。
本発明のインクジェットインク用バインダーの製造方法は、主として、前記複合樹脂(A)を製造する工程と、該複合樹脂(A)を水系媒体中に分散する工程とからなる。
【0083】
はじめに、前記複合樹脂(A)を製造する工程について説明する。
【0084】
前記複合樹脂(A)は、例えば以下の(I)〜(V)の工程によって製造することができる。
【0085】
前記(I)の工程は、例えばイソプロピルアルコール等の有機溶剤中で、前記したビニル単量体を前記重合開始剤の存在下で重合することによってビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液を得る工程である。
【0086】
かかる反応は、例えば重合開始剤を含む有機溶剤中に、前記ビニル単量体を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20〜120℃の範囲で0.5〜24時間程度行うことが好ましい。
【0087】
また、前記(II)の工程は、前記ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液下で前記ビニル重合体(a2)の有する加水分解性シリル基等の反応性官能基と、シラン化合物の有する加水分解性シリル基またはシラノール基との反応と、前記シラン化合物間の加水分解縮合反応とを進行させることによって、ビニル重合体(a2)とポリシロキサン(a3)とが結合した樹脂(C)の有機溶剤溶液を得る工程である。
【0088】
かかる反応は、例えば前記(I)の工程に引き続き、前記ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液中に、前記ポリシロキサン(a3)を形成しうる前記シラン化合物を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20〜120℃の範囲で0.5〜24時間程度行うことが好ましい。
【0089】
前記(II)の工程は、更に2段階の反応工程を経ることが好ましい。具体的には前記ビニル重合体(a2)の有する加水分解性シリル基またはシラノール基と、前記したフェニルトリメトキシシラン等の比較的低分子量のシラン化合物とを反応させる工程と、次いで、該反応物と、メチルトリメトキシシランやエチルトリメトキシシラン等のメチルトリアルコキシシラン及びエチルトリアルコキシシランを予め縮合させた縮合物とを反応させる工程とを経ることが好ましい。ポリシロキサン(a3)の構造形成を上記のような2段階で行うことで、一層、インクジュット用インクにおいて良好な保存安定性とインク吐出性と、印字物における耐擦過性に優れたインクジェットインク用バインダーを得ることができる。
【0090】
また、前記(III)の工程は、親水性基含有ポリウレタン(a1)を製造する工程である。具体的には、前記親水性基含有ポリオールを含むポリオールと前記ポリイソシアネートとを混合し、70〜200℃程度の条件下で攪拌しながら、それらを反応させることによって親水性基含有ポリウレタン(a1)を製造する工程である。前記親水性基含有ポリウレタン(a1)は、前記樹脂(C)とは別に製造し、後述する(IV)の工程においてそれらを混合し反応させることが好ましい。
【0091】
また、前記(IV)の工程は、前記ビニル重合体(a2)とポリシロキサン(a3)とが結合した樹脂(C)と、前記親水性基含有ポリウレタン(a1)とを混合し加水分解縮合させることにより、前記ビニル重合体(a2)と親水性基含有ポリウレタン(a1)とが前記ポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂(A’)の有機溶剤溶液を得る工程である。
【0092】
前記反応は、例えば前記(II)の工程に引き続き、前記樹脂(C)の有機溶剤溶液中に、前記(III)の工程で前記樹脂(C)とは別に製造した親水性基含有ポリウレタン(a1)を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20〜120℃の範囲で0.5〜24時間程度行うことが好ましい。
【0093】
前記工程(I)〜(IV)によって得られた複合樹脂(A’)の有機溶剤溶液は、下記工程(V)によって水性化することが好ましい。
【0094】
工程(V)は、例えば前記(IV)の工程に引き続き、前記複合樹脂(A’)の有する親水性基を中和し、該中和物を水系媒体中に分散する工程である。
【0095】
前記親水性基の中和は、必ずしも行う必要はないが、前記複合樹脂の水分散安定性を向上する観点から、行うことが好ましい。とりわけ前記親水性基がカルボキシル基やスルホン酸基等のアニオン性基である場合には、それらの全部または一部を、塩基性化合物を用いて中和し、カルボキシレート基やスルホネート基とすることが、水分散安定性を一層向上する上で好ましい。
【0096】
前記中和は、例えば前記複合樹脂(A’)の有機溶剤溶液中に、塩基性化合物等を逐次または一括供給し、攪拌することによって行うことができる。
【0097】
前記中和後、複合樹脂(A’)の中和物の有機溶剤溶液中に水系媒体を供給し、次いで、該有機溶剤を除去することによって、複合樹脂(A)が水性媒体中に分散した本発明のインクジェットインク用バインダーを得ることができる。なお、前記インクジェットインク用バインダーの製造工程で使用した有機溶剤は、必要に応じて蒸留等の方法によって除去してもよい。
【0098】
また、前記複合樹脂(A)の分散する水系媒体としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類、等が挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0099】
本発明のインクジェットインク用バインダー全体に対する前記複合樹脂(A)の割合は、インクの優れた保存安定性と優れた耐擦過性とを両立する観点から、1〜40質量%の範囲であることが好ましい。
【0100】
本発明のインクジェットインク用バインダーには、保存安定性やインク吐出性を低下させない範囲で、必要に応じて硬化剤や硬化触媒を併用しても良い。
【0101】
前記硬化剤としては、例えばシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有する化合物、ポリエポキシ化合物、ポリオキサゾリン化合物、ポリイソシアネート等を使用することができ、前記硬化触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸カリウム等を使用することができる。
る。
【0102】
次に、本発明のインクジェット印刷用インクについて説明する。
本発明のインクジェット印刷用インクは、前記インクジェットインク用バインダー、顔料や染料、その他必要に応じて各種の添加剤を含有するものである。
【0103】
前記顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
前記無機顔料としては、例えば酸化チタン、アンチモンレッド、ベンガラ、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等を使用することができる。
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、アゾ系顔料等の有機顔料を使用することができる.これらの顔料は2種類以上のものを併用することができる.また,これらの顔料が表面処理されており,水系媒体に対して自己分散能を有しているものであっても良い。
【0104】
また、前記染料としては、例えばモノアゾ・ジスアゾ等のアゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノイミン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料、フタロシアニン染料、トリアリルメタン系等を使用することができる。
【0105】
また、前記添加剤としては、例えば高分子分散剤や粘度調整剤、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤、防腐剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤をはじめ、従来のインクジェット印刷用インクのバインダーに使用されていたアクリル樹脂等を使用することができる。
【0106】
前記高分子分散剤としては、例えばアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂等を使用することができ、それらはランダム型、ブロック型、グラフト型のいずれのものも使用することができる。前記高分子分散剤を使用する際には、高分子分散剤を中和するために酸または塩基を併用しても良い。
【0107】
前記インクジェット印刷用インクは、例えば以下の製造方法によって調製することができる。
(1)前記顔料または染料と前記水系媒体と前記インクジェットインク用バインダーと必要に応じて前記添加剤とを、各種の分散装置を用いて一括して混合しインクを調製する方法。
(2)前記顔料または染料と前記水系媒体と必要に応じて前記添加物とを、各種の分散装置を用いて混合することで顔料または染料の水系分散体からなるインク前駆体を調製し、次いで、前記顔料または染料の水分散体からなるインク前駆体と前記インクジェットインク用バインダーと、必要に応じて水系媒体と添加物とを、各種の分散装置を用いて混合しインクを調製する方法。
【0108】
上記(2)に記載したインクの製造方法で使用する顔料を含むインク前駆体は、例えば以下の方法によって調製することができる。
(i)顔料及び高分子分散剤等の添加剤を2本ロールやミキサー等を用いて予備混練して得られた混練物と、水系媒体とを各種の分散装置を用いて混合することによって顔料を含む水系分散体からなるインク前駆体を調製する方法。
(ii)顔料と高分子分散剤を各種の分散装置を用いて混合した後、前記高分子分散剤の溶解性をコントロールすることによって該高分子分散剤を前記顔料の表面に堆積させ、更に分散装置を用いてそれらを混合することで顔料を含む水系分散体からなるインク前駆体を調製する方法。
(iii)顔料と前記添加物とを各種の分散装置を用いて混合し、次いで前記混合物と樹脂エマルジョンとを分散装置を用いて混合することによって顔料を含む水系分散体からなるインク前駆体を調製する方法。
【0109】
前記インクジェット印刷用インクの製造に使用可能な分散装置としては、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザーなどを、単独または、2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0110】
前記方法で得られたインクジェット印刷用インク中には、概ね250nm以上の粒子径を有する粗大粒子が存在する場合がある。前記粗大粒子は、プリンターノズルの詰まり等を引き起こし、インク吐出特性を劣化させる場合があるため、前記顔料の水系分散体の調製後、またはインクの調製後に遠心分離又は濾過処理等の方法によって、粗大粒子を除去することが好ましい。
【0111】
前記で得たインクジェット印刷用インクは、200nm以下の体積平均粒子径を有するものを使用することが好ましく、特に写真画質のようにより一層高光沢の画像を形成する場合には、80〜120nmの範囲であることがより好ましい。
【0112】
また、前記インクジェット印刷用インクは、インクジェット印刷用インク全体に対して、前記複合樹脂(A)を0.2〜10質量%、水系媒体を50〜95質量%、顔料を0.5〜15質量%含むことが好ましい。
【0113】
前記方法で得られた本発明のインクジェット印刷用インクは、もっぱらインクジェットプリンターを用いたインクジェット印刷に使用することができ、例えば紙やプラスチックフィルム、金属フィルムまたはシート等の基材に対するインクジェット印刷に使用することができる。インクジェットの方式は特に限定するものではないが、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型など)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式など)などの公知の方式を適用することができる。
【0114】
本発明のインクジェット印刷用インクを用いて印刷された印刷物は、優れた耐擦過性を有することから顔料等の欠落に起因した印刷画像の劣化等を引き起こしにくく、かつ高発色濃度の画像を有するものであるから、例えばインクジェット印刷による写真印刷や、インクジェット印刷による高速印刷によって得られた印刷物など様々な用途に使用することができる。
【実施例】
【0115】
以下、本発明を実施例と比較例により、一層、具体的に説明する。
【0116】
[合成例1]親水性基含有ポリウレタンの有機溶剤溶液(a1−1)の調製
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール(三菱化学(株)製PTMG−2000) 235質量部、イソホロンジイソシアネート(IPDI)157質量部を仕込んで100℃まで昇温し、同温度で1時間反応させた。
次いで、温度を80℃に下げ、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)55質量部、1,6−ネオペンチルグリコール(NPG)6質量部、及び酢酸エチル(EtAc)228質量部を、前記反応容器中へ投入した後、更に80℃で5時間反応させた。
次いで、温度を50℃に下げ、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)47質量部、及びイソプロピルアルコール(IPA)272質量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が5500の親水性基含有ポリウレタンの有機溶剤溶液(a1−1)を得た。
【0117】
[合成例2]親水性基含有ポリウレタンの有機溶剤溶液(a1−2)の調製
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオール骨格を有する数平均分子量2000のポリカーボネートポリオール(宇部興産(株)製 UH−200) 235質量部、IPDI 157質量部を仕込んで100℃まで昇温し、同温度で1時間反応させた。
次いで、温度を80℃に下げ、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)55質量部、ネオペンチルグリコール(NPG)6質量部、及び酢酸エチル(EtAc)228質量部を、前記反応容器中へ投入した後、更に80℃で5時間反応させた。
次いで、温度を50℃に下げ、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)47質量部、及びイソプロピルアルコール(IPA)272質量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が5800の親水性基含有ポリウレタンの有機溶剤溶液(a1−2)を得た。
【0118】
【表1】

【0119】
「PTMG−2000」:数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール(三菱化学(株)製PTMG−2000)
「UH−200」:1,6−ヘキサンジオール骨格を有するポリカーボネートポリオール
「NPG」:ネオペンチルグリコール
「DMPA」:ジメチロールプロピオン酸
「IPDI」:イソホロンジイソシアネート
「APTES」:3−アミノプロピルトリエトキシシラン
【0120】
[合成例3]ビニル重合体の有機溶剤溶液(a2−1)の調製
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、イソプロピルアルコール(IPA)275質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。
次いで、同温度で、メチルメタクリレート(MMA)150質量部、ブチルメタクリレート(BMA)95質量部、ブチルアクリレート(BA)145質量部、アクリル酸(AA)95質量部、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTS)15質量部、IPA 225.0質量部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPEH)25.0質量部を含有する混合物を、前記反応容器中へ4時間で滴下した後、更に同温度で2時間反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が9800のアクリル重合体からなるビニル重合体の有機溶剤溶液(a2−1)を得た。
【0121】
[合成例4]ビニル重合体の有機溶剤溶液(a2−2)の調製
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、イソプロピルアルコール(IPA)275質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。
次いで、同温度で、メチルメタクリレート(MMA)250質量部、ブチルメタクリレート(BMA)190質量部、ブチルアクリレート(BA)30質量部、アクリル酸(AA)15質量部、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTS)15質量部、IPA 225.0質量部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPEH)25.0質量部を含有する混合物を、前記反応容器中へ4時間で滴下した後、更に同温度で2時間反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が10200のアクリル重合体からなるビニル重合体の有機溶剤溶液(a2−2)を得た。
【0122】
【表2】

【0123】
「MMA」 :メチルメタクリレート
「BMA」 :ブチルメタクリレート
「BA」 :ブチルアクリレート
「AA」 :アクリル酸
「MPTS」 :3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
【0124】
[合成例5]ポリシロキサン(a3−1)(メチルトリメトキシシランの縮合物)の調製
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、メチルトリメトキシシラン(MTMS)1421質量部を仕込んで、60℃まで昇温した。
次いで、前記反応容器中に「A−3」〔堺化学(株)製のiso−プロピルアシッドホスフェート〕0.17質量部と脱イオン水207質量部との混合物を5分間で滴下した後、80℃の温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させた。
前記加水分解縮合反応によって得られた縮合物を、温度40〜60℃及び300〜10mmHgの減圧下(メタノールの留去開始時の減圧条件が300mmHgで、最終的に10mmHgとなるまで減圧する条件を言う。以下、同様。)で蒸留することによって前記反応過程で生成したメタノール及び水を除去し、数平均分子量1000のメチルトリメトキシシランの縮合物を含む混合液からなるポリシロキサン(a3−1)(有効成分70質量%)1000質量部を得た。
なお、前記有効成分とは、メチルトリメトキシシラン(MTMS)等のシランモノマーのメトキシ基が全て縮合反応した場合の理論収量(質量部)を、縮合反応後の実収量(質量部)で除した値〔シランモノマーのメトキシ基が全て縮合反応した場合の理論収量(質量部)/縮合反応後の実収量(質量部)〕により算出したものである。
【0125】
[合成例6]ポリシロキサン(a3−2)(エチルトリメトキシシランの縮合物)の調製
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、エチルトリメトキシシラン(ETMS)1296質量部を仕込んで、60℃まで昇温した。
次いで、前記反応容器中に「A−3」〔堺化学(株)製のiso−プロピルアシッドホスフェート〕0.14質量部と脱イオン水171質量部との混合物を5分間で滴下した後、80℃で4時間撹拌して加水分解縮合反応させた。
前記加水分解縮合反応によって得られた縮合物を、温度40〜60℃及び300〜10mmHgの減圧下で蒸留することによって、生成したメタノール及び水を除去し、数平均分子量が1100のエチルトリメトキシシランの縮合物を含む混合液からなるポリシロキサン(a3−2)(有効成分70質量%)1000質量部を得た。
【0126】
【表3】

第3表中の略称について以下に説明する。
「MTMS」 :メチルトリメトキシシラン
「ETMS」 :エチルトリメトキシシラン
【0127】
実施例1〔インクジェットインク用バインダー(i)の調製例〕
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、合成例3で得たビニル重合体の有機溶剤溶液(a2−1)を19.2質量部、PTMS4.3質量部及びDMDMS2.6質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。
次いで、「A−3」〔堺化学(株)製のiso−プロピルアシッドホスフェート〕0.1質量部と脱イオン水1.9質量部との混合物を5分間で滴下し、更に同温度で1時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記ビニル重合体の有機溶剤溶液(a2−1)中のビニル重合体が有する加水分解性シリル基と、前記PTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンとが結合した複合樹脂中間体溶剤溶液(C’−1)を得た。
次いで、前記複合樹脂中間体溶剤溶液(C’−1)と前記メチルトリメトキシシランの縮合物(a3−1)7.4質量部とを混合し、更に、脱イオン水1.8質量部を添加して同温度で16時間撹拌し、加水分解縮合反応させることによって、前記(C’−1)中の前記複合樹脂中間体に、更にメチルトリメトキシシランの縮合物(a3−1)が結合した複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C−1)を得た。
次いで、前記複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C−1)に、合成例5で得た親水性基含有ポリウレタンの有機溶剤溶液(a1−1)345.5質量部を混合し、攪拌下80℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、前記親水性基含有ポリウレタンの有機溶剤溶液(a1−1)中の親水性基含有ポリウレタンが有する加水分解性シリル基と、前記(C−1)中の複合樹脂中間体の有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂の有機溶剤溶液(A’−1)を得た。
次いで、前記複合樹脂の有機溶剤溶液(A’−1)と48%KOH水溶液16.7質量部とを混合することで前記複合樹脂中のカルボキシル基を中和した中和物を得、次いで、該中和物と脱イオン水933.7質量部とを混合したものを、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で4時間蒸留することで、生成したメタノールや有機溶媒及び水を除去することで、不揮発分が20.0質量%のインクジェットインク用バインダー(i)1000質量部を得た。
【0128】
実施例2〔インクジェットインク用バインダー(ii)の調製例〕
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、前記ビニル重合体の有機溶剤溶液(a2−1)を132.2質量部、PTMS25.3質量部及びDMDMS15.4質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。
次いで、「A−3」〔堺化学(株)製のiso−プロピルアシッドホスフェート〕0.3質量部と脱イオン水11.5質量部との混合物を5分間で滴下し、更に同温度で1時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記有機溶剤溶液(a2−1)中のビニル重合体が有する加水分解性シリル基と、前記PTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンとが結合した複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C’−2)を得た。
次いで、前記複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C’−2)と前記メチルトリメトキシシランの縮合物(a3−1)43.8質量部とを混合し、更に、脱イオン水10.6質量部を添加して同温度で16時間撹拌し、加水分解縮合反応させることによって、前記(C’−2)中の複合樹脂中間体に、更にメチルトリメトキシシランの縮合物(a3−1)が結合した複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C−2)を得た。
次いで、前記複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C−2)に、前記親水性基含有ポリウレタンの有機溶剤溶液(a1−1)132.2質量部を混合し、攪拌下80℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、前記(a1−1)中の親水性基含有ポリウレタンの有する加水分解性シリル基と、前記(C−2)中の複合樹脂中間体の有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂の有機溶剤溶液(A’−2)を得た。
次いで、前記複合樹脂の有機溶剤溶液(A’−2)と48%KOH水溶液22.7質量部とを混合することで前記複合樹脂中のカルボキシル基を中和した中和物を得、次いで、該中和物と脱イオン水939.3質量部とを混合したものを、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で4時間蒸留することで、生成したメタノールや有機溶媒及び水を除去し、不揮発分が20.0質量%のインクジェットインク用バインダー(ii)1000質量部を得た。
【0129】
実施例3〔インクジェットインク用バインダー(iii)の調製例〕
前記複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C’−1)と前記メチルトリメトキシシランの縮合物(a3−2)8.1質量部とを混合し、更に、脱イオン水1.6質量部を添加して同温度で16時間撹拌し、加水分解縮合反応させることによって、前記(C’−1)中の複合樹脂中間体に、更にメチルトリメトキシシランの縮合物(a3−2)が結合した複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C−3)を得た。
次いで、前記複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C−3)に、前記親水性基含有ポリウレタンの有機溶剤溶液(a1−1)345.6質量部を混合し、攪拌下80℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、前記(a1−1)中の親水性基含有ポリウレタンの有する加水分解性シリル基と前記(C−3)中の複合樹脂中間体が有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂の有機溶剤溶液(A’−3)を得た。
次いで、前記複合樹脂の有機溶剤溶液(A’−3)と48%KOH水溶液16.7質量部とを混合することで前記複合樹脂中のカルボキシル基を中和した中和物を得、次いで、該中和物と脱イオン水934.2質量部とを混合したものを、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で4時間蒸留することで、生成したメタノールや有機溶媒及び水を除去し、不揮発分が20.0質量%のインクジェットインク用バインダー(iii)1000質量部を得た。
【0130】
実施例4〔インクジェットインク用バインダー(iv)の調製例〕
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、前記ビニル重合体の有機溶剤溶液(a2−2)を19.3質量部、PTMS4.3質量部及びDMDMS2.6質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。
次いで、「A−3」〔堺化学(株)製のiso−プロピルアシッドホスフェート〕0.1質量部と脱イオン水2.0質量部との混合物を5分間で滴下し、更に同温度で1時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記(a2−2)中のビニル重合体が有する加水分解性シリル基と、前記PTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンとが結合した複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C’−4)を得た。
次いで、前記複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C’−4)と前記メチルトリメトキシシランの縮合物(a3−1)7.5質量部とを混合し、更に、脱イオン水1.8質量部を添加して同温度で16時間撹拌し、加水分解縮合反応させることによって、前記(C’−4)中の複合樹脂中間体に、更にメチルトリメトキシシランの縮合物(a3−1)が結合した複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C−4)を得た。
次いで、前記複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C−4)に、前記親水性基含有ポリウレタンの有機溶剤溶液(a1−1)347.3質量部を混合し、攪拌下80℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、前記(a1−1)中の親水性基含有ポリウレタンの有する加水分解性シリル基と前記(C−4)中の複合樹脂中間体が有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂の有機溶剤溶液(A’−4)を得た。
次いで、前記複合樹脂の有機溶剤溶液(A’−4)と48%KOH水溶液14.6質量部とを混合することで前記複合樹脂中のカルボキシル基を中和した中和物を得、次いで、該中和物と脱イオン水933.8質量部とを混合したものを、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で4時間蒸留することで、生成したメタノールや有機溶媒及び水を除去し、不揮発分が20.0質量%のインクジェットインク用バインダー(iv)1000質量部を得た。
【0131】
実施例5〔インクジェットインク用バインダー(v)の調製例〕
前記複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C−1)に、前記親水性基含有ポリウレタンの有機溶剤溶液(a1−2)345.5質量部を混合し、攪拌下80℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、前記(a1−2)中の親水性基含有ポリウレタンの有する加水分解性シリル基と前記(C−1)中の複合樹脂中間体の有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂の有機溶剤溶液(A’−5)を得た。
次いで、前記複合樹脂の有機溶剤溶液(A’−5)と48%KOH水溶液16.7質量部とを混合することで前記複合樹脂中のカルボキシル基を中和した中和物を得、次いで、該中和物と脱イオン水933.7質量部とを混合したものを、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で4時間蒸留することで、生成したメタノールや有機溶媒及び水を除去し、不揮発分が20.0質量%のインクジェットインク用バインダー(v)1000質量部を得た。
【0132】
【表4】

【0133】
第4の脚注
「PTMS」 :フェニルトリメトキシシラン
「DMDMS」 :ジメチルジメトキシシラン
「KOH」 :水酸化カリウム
【0134】
比較例1〔インクジェットインク用バインダー(vi)の調製例〕
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、PTMS4.3質量部及びDMDMS2.6質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。
次いで、「A−3」〔堺化学(株)製のiso−プロピルアシッドホスフェート〕0.1質量部と脱イオン水2.0質量部との混合物を5分間で滴下し、更に同温度で1時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記PTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンとが結合した中間体を得、次いで該中間体と前記メチルトリメトキシシランの縮合物(a3−1)7.5質量部とを混合し、更に、脱イオン水1.8質量部を添加して同温度で16時間撹拌し、加水分解縮合反応させることによって、前記中間体とメチルトリメトキシシランの縮合物(a3−1)とが結合したポリシロキサン(a3’−3)を得た。
次いで、前記ポリシロキサン(a3’−3)と、前記親水性基含有ポリウレタンの有機溶剤溶液(a1−1)366.3質量部を混合し、攪拌下80℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、前記(a1−1)中の親水性基含有ポリウレタンの有する加水分解性シリル基と前記ポリシロキサン(a3’−3)の有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂の有機溶剤溶液(A’−6)を得た。
次いで、前記複合樹脂の有機溶剤溶液(A’−6)と48%KOH水溶液15.0質量部とを混合することで前記複合樹脂中のカルボキシル基を中和した中和物を得、次いで、該中和物と脱イオン水933.8質量部とを混合したものを、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で4時間蒸留することで、生成したメタノールや有機溶媒及び水を除去し、不揮発分が20.0質量%のインクジェットインク用バインダー(vi)1000質量部を得た。
【0135】
比較例2〔インクジェットインク用バインダー(vii)の調製例〕
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、前記ビニル重合体(a2−1)を399.4質量部、PTMS4.0質量部及びDMDMS2.4質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。
次いで、「A−3」〔堺化学(株)製のiso−プロピルアシッドホスフェート〕0.1質量部と脱イオン水1.8質量部との混合物を5分間で滴下し、更に同温度で1時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記ビニル重合体の有機溶剤溶液(a2−1)の有する加水分解性シリル基と、前記PTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンとが結合した複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C’−7)を得た。
次いで、前記複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C’−7)と前記メチルトリメトキシシランの縮合物(a3−1)6.9質量部とを混合し、更に、脱イオン水1.7質量部を添加して同温度で16時間撹拌し、加水分解縮合反応させることによって、前記(C’−7)中の複合樹脂に、更にメチルトリメトキシシランの縮合物(a3−1)が結合した複合樹脂の有機溶剤溶液(C−7)を得た。
次いで、前記複合樹脂の有機溶剤溶液(C−7)と48%KOH水溶液44.5質量部とを混合することで前記複合樹脂中のカルボキシル基を中和した中和物を得、次いで、該中和物と脱イオン水932.6質量部とを混合したものを、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で4時間蒸留することで、生成したメタノールや有機溶媒及び水を除去し、不揮発分が20.0質量%のインクジェットインク用バインダー(vii)1000質量部を得た。
【0136】
比較例3〔インクジェットインク用バインダー(viii)の調製例〕
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、前記ビニル重合体の有機溶剤溶液(a2−1)を18.8質量部、PTMS4.2質量部及びDMDMS2.5質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。
次いで、「A−3」〔堺化学(株)製のiso−プロピルアシッドホスフェート〕0.1質量部と脱イオン水1.9質量部との混合物を5分間で滴下し、更に同温度で1時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記(a2−1)中のビニル重合体の有する加水分解性シリル基と、前記PTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンとが結合した複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C’−8)を得た。
次いで、前記複合樹脂中間体の有機溶剤溶液(C’−8)と前記メチルトリメトキシシランの縮合物(a3−1)7.3質量部とを混合し、更に、脱イオン水1.8質量部を添加して同温度で16時間撹拌し、加水分解縮合反応させることによって、前記(C’−8)中の複合樹脂中間体に、更にメチルトリメトキシシランの縮合物(a3−1)が結合した複合樹脂の有機溶剤溶液(C−8)を得た。
次いで、前記複合樹脂の有機溶剤溶液(C−8)と48%KOH水溶液2.5質量部とを混合することで前記複合樹脂中のカルボキシル基を中和した中和物を得、次いで、該中和物と脱イオン水94.4質量部とを混合したものを、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で4時間蒸留することで、生成したメタノールや有機溶媒及び水を除去し、不揮発分が20.0質量%の水性複合樹脂組成物(C−8−1)100質量部を得た。
【0137】
上記水性複合樹脂組成物(C−8−1)とは別の反応容器に、前記親水性基含有ポリウレタンの有機溶剤溶液(a1−1)346.4質量部と48%KOH水溶液14.2質量部とを混合することで前記(a1−1)中の親水性基含有ポリウレタン中のカルボキシル基を中和した中和物を得、次いで、該中和物と脱イオン水839.3質量部とを混合したものを、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で4時間蒸留することで、生成したメタノールや有機溶媒及び水を除去し、不揮発分が20.0質量%の水性複合樹脂組成物(C−8−2)900質量部を得た。
次いで、前記水性複合樹脂組成物(C−8−1)100質量部と前記水性複合樹脂組成物(C−8−2)900質量部を混合することで、不揮発分が20.0質量%のインクジェットインク用バインダー(viii)1000質量部を得た。
【0138】
【表5】

【0139】
第5の脚注
「PTMS」 :フェニルトリメトキシシラン
「DMDMS」 :ジメチルジメトキシシラン
「KOH」 :水酸化カリウム
【0140】
【表6】

【0141】
第6の脚注
「PTMS」 :フェニルトリメトキシシラン
「DMDMS」 :ジメチルジメトキシシラン
「KOH」 :水酸化カリウム
【0142】
調製例1(キナクリドン系顔料の水系分散体)
ビニル重合体(スチレン/アクリル酸/メタクリル酸=77/10/13(質量比)であり、重量平均分子量が11000、酸価156mgKOH/g)を1500g、キナクリドン系顔料(クロモフタールジェットマジェンタDMQ、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を4630g、フタルイミドメチル化3,10−ジクロロキナクリドン(1分子あたりの平均フタルイミドメチル基数が1.4)を380g、ジエチレングリコールを2600g、及び34質量%水酸化カリウム水溶液688gを、容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50V(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを加温し、内容物温度が60℃になるまで低速(自転回転数:21回転/分,公転回転数:14回転/分)で混練を行い、内容物温度が60℃に達した後、高速(自転回転数:35回転/分,公転回転数:24回転/分)に切り替え、4時間、混練を継続した。
前記混練物に、2時間で総量8000gの60℃に加温したイオン交換水を加え、不揮発分が37.9質量%の着色樹脂組成物を得た。
前記方法で得た着色樹脂組成物の12kgに、ジエチレングリコール744gと、イオン交換水7380gとを少量ずつ添加しながら分散撹拌機で撹拌し、水系顔料分散液の前駆体(分散処理前の水系顔料分散液)を得た。
次いで、この水系顔料分散液前駆体の18kgを、ビーズミル(浅田鉄工(株)製ナノミルNM−G2L、ビーズφ;0.3mmのジルコニアビーズ、ビーズ充填量;85%、冷却水温度;10℃、回転数;2660回転/分(ディスク周速:12.5m/sec)、送液量;200g/10秒)を用いて処理し、前記ビーズミルの通過液を13000G×10分の遠心処理した後、有効孔径0.5μmのフィルターにより濾過処理を行うことによってキナクリドン系顔料の水系顔料分散液を得た.この水系顔料分散体中のキナクリドン系顔料濃度は14.9質量%であった。
【0143】
インクジェット印刷用インクの調製
キナクリドン系顔料の濃度が4質量%で、かつウレタン樹脂の濃度が1質量%となるよう、前記実施例1で得たインクジェットインク用バインダー(i)と、調製例1で得たキナクリドン系顔料と、2−ピロリジノンと、トリエチレングリコールモノブチルエーテルと、グリセリンと、界面活性剤(サーフィノール440、エアープロダクツ社製)とイオン交換水とを、下記配合割合にしたがって混合、攪拌することによって、インクジェット印刷用インク(I)を調製した。また、前記インクジェットインク用バインダー(i)の代わりに、実施例2〜5及び比較例1〜3で得たインクジェットインク用バインダー(ii)〜(viii)をそれぞれ使用すること以外は、前記と同様の方法でインクジェット印刷用インク(II)〜(VIII)を得た。
【0144】
(インクジェット印刷用インクの配合割合)
・調製例1で得たキナクリドン系顔料水系分散体(顔料濃度14.9%);26.8g
・2−ピロリジノン;8.0g
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル;8.0g
・グリセリン;3.0g
・界面活性剤(サーフィノール440、エアープロダクツ社製);0.5g
・イオン交換水;48.7g
・前記実施例1〜5及び比較例1〜3で得たインクジェットインク用のバインダー(不揮発分20質量%);5.0g
【0145】
〔インクジェット印刷用インクの保存安定性の評価方法〕
前記で得たインクジェット印刷用インクの粘度と、該インク中の分散粒子の粒子径を測定した。なお、前記粘度測定は東機産業(株)製のVISCOMETER TV−22を使用し、前記粒子径の測定は、日機装(株)社製のマイクロトラック UPA EX150を使用した。
【0146】
次に、前記インクをスクリュー管等のガラス容器にそれぞれ密栓し、70℃の恒温器内に4週間放置(加熱試験)した後の、前記インクの粘度と、該インク中の分散粒子の粒子径を、前記と同様の方法で測定した。
前記加熱試験前のインクの粘度及び粒子径に対する、加熱試験後の粘度及び粒子径の変化を、それぞれ下記式に基づいて算出し、インクの保存安定性を評価した。
【0147】
(式I)
[(加熱試験後のインク中の分散粒子の粒子径)/(加熱試験前のインク中の分散粒子の粒子径)]×100
【0148】
[判定基準]
○: 粒子径の変化の割合が、5%未満
△: 粒子径の変化の割合が、5%以上10%未満
×: 粒子径の変化の割合が、10%以上
【0149】
(式II)
[(加熱試験後のインクの粘度)/(加熱試験前のインクの粘度)]×100
【0150】
[判定基準]
○: 粘度の変化の割合が、2%未満
△: 粘度の変化の割合が、2%以上5%未満
×: 粘度の変化の割合が、5%以上
【0151】
〔インク吐出性の評価方法〕
前記のインクジェットインクを黒色インクカートリッジに充填したインクカートリッジを取り付けたサーマルジェット方式インクジェットプリンターPhotosmart D5360(ヒューレットパッカード社製)を用いて、診断ページを印刷した後の、該プリンターのノズルの状態を確認した。1ページあたり18cm×25cmの領域の印字濃度設定100%のベタ印刷を連続で20ページ実施した後、再度診断ページを印刷しノズルの状態を確認した。連続ベタ印刷の前後でのノズルの状態変化をインク吐出性として評価した。評価基準を以下に記す。
【0152】
[判定基準]
○:ノズルの状態に変化がないもの
△:インクは吐出するが,吐出方向異常ノズルが発生するもの
×:インクの不吐出が発生するもの
【0153】
〔インクジェット印刷用インクの印刷性能の評価方法〕
(光沢)
インクジェット印刷専用紙である写真用紙(光沢)[HPアドバンスフォト用紙 ヒューレットパッカード社製]の印刷面に、市販のサーマルジェット方式インクジュットプリンター(Photosmart D5360;ヒューレットパッカード社製)を用い、前記インクを黒色インクカートリッジに充填し、印字濃度設定100%のベタ印刷を行った。
24時間室温にて放置後、該印刷部の任意の3箇所の光沢を、マイクロヘイズプラス(株式会社 東洋精機製作所製)を用いて20度の光沢を測定し、その平均値を算出した。
【0154】
(耐擦過性)
写真印刷用紙(光沢)[HPアドバンスフォト用紙 ヒューレットパッカード社製]の印刷面に、市販のサーマルジェット方式インクジュットプリンター(Photosmart D5360;ヒューレットパッカード社製)を用い、前記インクを黒色インクカートリッジに充填し、印字濃度設定100%のベタ印刷を行った。
前記印刷物を常温下で10分間乾燥した後、印刷面を爪で擦過し、該印刷面の色等のこすれ具合を目視で評価した。評価基準を以下に記す。
【0155】
[判定基準]
A: 印刷面に傷は全くなく、印材の剥離等もみられなかった。
B: 印刷表面に若干の傷が発生したものの、色材の剥離等はみられなかった。
C: 印刷表面に著しい傷が発生し、色材の剥離等もみられた。
【0156】
【表7】

【0157】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性基含有ポリウレタン(a1)とビニル重合体(a2)とがポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂(A)、及び、水系媒体を含有してなるインクジェットインク用バインダー。
【請求項2】
前記ポリシロキサン(a3)由来の構造が、複合樹脂(A)全体に対して1〜30質量%の範囲で含まれる請求項1に記載のインクジェットインク用バインダー。
【請求項3】
前記親水性基含有ポリウレタン(a1)からなる構造と前記ビニル重合体(a2)からなる構造との質量割合[(a2)からなる構造/(a1)からなる構造]が、1/1〜1/50の範囲である、請求項1に記載のインクジェットインク用バインダー。
【請求項4】
前記親水性基含有ポリウレタン(a1)と前記ポリシロキサン(a3)との結合が、前記親水性基含有ポリウレタン(a1)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との反応によって形成されるものであり、かつ前記ビニル重合体(a2)と前記ポリシロキサン(a3)との結合が、前記ビニル重合体(a2)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との反応によって形成されるものである、請求項1に記載のインクジェットインク用バインダー。
【請求項5】
前記親水性基含ポリウレタン(a1)が、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールからなる群より選ばれる1種以上と親水性基含有ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるものである、請求項1に記載のインクジェットインク用バインダー。
【請求項6】
前記ビニル重合体(a2)が、加水分解性シリル基含有ビニル単量体及びシラノール基含有ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上を含むビニル単量体を重合して得られるものである、請求項1に記載のインクジェットインク用バインダー。
【請求項7】
前記ポリシロキサン(a3)が、ケイ素原子に結合した芳香族環式構造、ケイ素原子に結合した炭素原子数1〜3個を有するアルキル基、及びケイ素原子に結合した炭素原子数1〜3個を有するアルコキシ基からなる群より選ばれる1種以上を有するものである、請求項1に記載のインクジェットインク用バインダー。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載のインクジェットインク用バインダーと、顔料または染料と、水系媒体とを含有してなるインクジェット印刷用インク。
【請求項9】
請求項8に記載のインクジェット印刷用インクによって印刷の施された印刷物。

【公開番号】特開2010−229310(P2010−229310A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78949(P2009−78949)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】