インクジェットプリンタおよび画像形成方法
【課題】様々な基材上に高精度な画像を形成する。
【解決手段】インクジェットプリンタは、画像形成部12および制御ユニット11を有し、画像形成部12は、画像形成インクの液滴による基材上におけるドットの描画状態を変更する補助インクの液滴を吐出することにより、基材上に補助層を形成し、画像形成インクの液滴を吐出することにより、補助層上に画像を形成する。制御ユニット11の記憶部111には、基材の複数の種類のそれぞれと、補助層の形成時における適正網点面積率とを対応付ける参照テーブルが記憶される。制御ユニット11の網点面積率決定部112では、画像が形成される対象基材の種類を用いて参照テーブルを参照することにより、対象基材上への補助層の形成時における網点面積率が補助インク網点面積率として決定される。これにより、インクジェットプリンタでは、様々な基材上に高精度な画像を形成することができる。
【解決手段】インクジェットプリンタは、画像形成部12および制御ユニット11を有し、画像形成部12は、画像形成インクの液滴による基材上におけるドットの描画状態を変更する補助インクの液滴を吐出することにより、基材上に補助層を形成し、画像形成インクの液滴を吐出することにより、補助層上に画像を形成する。制御ユニット11の記憶部111には、基材の複数の種類のそれぞれと、補助層の形成時における適正網点面積率とを対応付ける参照テーブルが記憶される。制御ユニット11の網点面積率決定部112では、画像が形成される対象基材の種類を用いて参照テーブルを参照することにより、対象基材上への補助層の形成時における網点面積率が補助インク網点面積率として決定される。これにより、インクジェットプリンタでは、様々な基材上に高精度な画像を形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクの液滴を基材に向けて吐出することにより基材上に画像を形成するインクジェットプリンタ、および、インクジェットプリンタにおける画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット方式にて様々な基材上に画像を形成することが行われている。例えば、特許文献1では、画像を直接ダイレクトに安定させてプリントしにくい布材、金属板、皮革などのメディアに、インクジェットプリンタを用いて画像をプリントする場合に、インクジェットヘッドから噴射させたアンダーコート層プリント用のインク液滴により、そのメディアに画像定着用のアンダーコート層をプリントし、そのアンダーコート層表面に、インクジェットヘッドから噴射させた画像プリント用のインク液滴により、画像を重ねプリントする手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−50555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の手法のように、基材(メディア)上に画像定着用のアンダーコート層を形成し、画像プリント用のインクによりアンダーコート層上に画像を形成する場合、アンダーコート層プリント用のインク液滴は100%の網点面積率にて基材上に付与される(すなわち、インク液滴が付与可能な基材上の全ての位置にインク液滴が付与される)。しかしながら、この場合、紙の基材ではコクリング(皺が生じる現象)が発生したり、基材の種類によっては、画像プリント用のインクがアンダーコート層上に適切に定着しないことがあり、アンダーコート層上に形成される画像の精度が低下してしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、様々な基材上に高精度な画像を形成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、インクジェットプリンタであって、画像形成インクの液滴による基材上におけるドットの描画状態を変更する補助インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記基材上に補助層を形成し、前記画像形成インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記補助層上に画像を形成する画像形成部と、基材の複数の種類のそれぞれと、前記補助層の形成時における適正網点面積率とを対応付ける参照テーブルを記憶する記憶部と、画像が形成される対象基材の種類を用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記対象基材上への前記補助層の形成時における網点面積率を補助インク網点面積率として決定する網点面積率決定部とを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、前記基材が紙であり、前記参照テーブルにおいて、各種類の紙における複数の坪量に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、前記網点面積率決定部が、前記対象基材となる紙の坪量も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率を決定する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタであって、前記画像形成インクにより画像が形成される領域として予め設定された画像領域のみに対して前記補助層が形成される。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタであって、前記参照テーブルにおいて、各種類の基材に形成される画像の複数の属性に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、前記網点面積率決定部が、前記対象基材に形成される画像の属性も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率を決定する。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のインクジェットプリンタであって、前記対象基材上に前記画像形成インクにより画像が形成される複数の画像領域が予め設定されており、前記網点面積率決定部が、各画像領域に形成される画像の属性を用いて、前記各画像領域に対する前記補助インク網点面積率を決定する。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のインクジェットプリンタであって、前記各画像領域および前記各画像領域の周囲のみに前記補助層が形成される。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項4ないし6のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、多階調の絵柄画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記絵柄画像の階調値が所定値未満となる部分において、前記補助インク網点面積率が低減される。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項4ないし7のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、線画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記線画像の線部および前記線部の周囲を除く部分において、前記補助インク網点面積率が低減される。
【0014】
請求項9に記載の発明は、インクジェットプリンタにおける画像形成方法であって、前記インクジェットプリンタが、画像形成インクの液滴による基材上におけるドットの描画状態を変更する補助インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記基材上に補助層を形成し、前記画像形成インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記補助層上に画像を形成する画像形成部を備え、前記画像形成方法が、a)基材の複数の種類のそれぞれと、前記補助層の形成時における適正網点面積率とを対応付ける参照テーブルを準備する工程と、b)画像が形成される対象基材の種類を用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記対象基材上への前記補助層の形成時における網点面積率を補助インク網点面積率として決定する工程と、c)前記画像形成部により、前記補助インク網点面積率に従って前記対象基材上に前記補助層を形成するとともに、前記補助層上に前記画像形成インクによる画像を形成する工程とを備える。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の画像形成方法であって、前記基材が紙であり、前記参照テーブルにおいて、各種類の紙における複数の坪量に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、前記b)工程において、前記対象基材となる紙の坪量も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率が決定される。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項9または10に記載の画像形成方法であって、前記c)工程において、前記画像形成インクにより画像が形成される領域として予め設定された画像領域のみに対して前記補助層が形成される。
【0017】
請求項12に記載の発明は、請求項9または10に記載の画像形成方法であって、前記参照テーブルにおいて、各種類の基材に形成される画像の複数の属性に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、前記b)工程において、前記対象基材に形成される画像の属性も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率が決定される。
【0018】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の画像形成方法であって、前記対象基材上に前記画像形成インクにより画像が形成される複数の画像領域が予め設定されており、前記b)工程において、各画像領域に形成される画像の属性を用いて、前記各画像領域に対する前記補助インク網点面積率が決定される。
【0019】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の画像形成方法であって、前記c)工程において、前記各画像領域および前記各画像領域の周囲のみに前記補助層が形成される。
【0020】
請求項15に記載の発明は、請求項12ないし14のいずれかに記載の画像形成方法であって、多階調の絵柄画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記絵柄画像の階調値が所定値未満となる部分において、前記補助インク網点面積率が低減される。
【0021】
請求項16に記載の発明は、請求項12ないし15のいずれかに記載の画像形成方法であって、線画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記線画像の線部および前記線部の周囲を除く部分において、前記補助インク網点面積率が低減される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、様々な基材上に画像形成インクによる高精度な画像を形成することができる。また、補助インクの消費量を抑制することができる。
【0023】
また、請求項2、4、10および12の発明では、画像をより高精度に形成することができ、請求項3、6ないし8、11、並びに、14ないし16の発明では、補助インクの消費量をさらに抑制することができ、請求項5および13の発明では、各画像領域に対して画像をより高精度に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】インクジェットプリンタの構成を示す図である。
【図2】インクジェットプリンタの機能構成を示すブロック図である。
【図3】元画像を示す図である。
【図4】参照テーブルの一部を示す図である。
【図5】基材上に画像を形成する処理の流れを示す図である。
【図6】対象基材上に形成された補助層を示す図である。
【図7】対象基材上に形成された補助層を示す図である。
【図8】参照テーブルの他の例の一部を示す図である。
【図9】対象基材上に形成された補助層を示す図である。
【図10】階調値の和と補助インク網点面積率との関係を示す図である。
【図11】対象基材上に形成された補助層を示す図である。
【図12】対象基材上に形成された補助層を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明の一の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の構成を示す図である。インクジェットプリンタ1は、コンピュータ等を有する制御ユニット11、および、制御ユニット11に接続される画像形成部12を備え、画像形成部12は制御ユニット11からの信号を受けて、紙である基材9にインクジェット方式にて画像を形成(プリント)する。
【0026】
画像形成部12は、インクの微小液滴を基材9の主面に向けて吐出する吐出部121、および、基材9を水平方向に吐出部121に対して相対的に移動する移動機構(図示省略)を有する。吐出部121は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K)の水性インクである画像形成インクの液滴を吐出する画像形成ヘッド122、および、後述の補助インクの液滴を吐出する補助ヘッド123を有する。画像形成部12では、移動機構により、基材9上の各位置が補助ヘッド123の下方および画像形成ヘッド122の下方に順に配置される。これにより、基材9上に補助インクによる補助層が形成され、補助層上に画像形成インクによる画像(以下、「プリント画像」ともいう。)が形成される。なお、画像形成ヘッド122では、C、M、Y、K以外の色(ライトシアン、ライトマゼンタ等)のインクが吐出されてもよい。
【0027】
ここで、補助インクについて説明する。例えば、基材9が上質紙である場合に、水性の画像形成インクの液滴が基材9の主面(紙の表面であり、以下、「記録面」という。)に直接付与されると、画像形成インクは上質紙の記録面において広がりつつ浸透する(染み込む)ため、液滴により描画されるドットが大きくなるとともに、当該ドットの色がくすんで発色性が低下する。また、基材9がコート紙である場合に、水性の画像形成インクの液滴が基材9の記録面に直接付与されると、画像形成インクはコート紙の記録面においてほとんど染み込むことなく大きく広がるため、隣接した位置に付与される液滴同士が混ざって、大きなドットとなったり、色が混ざったりしてしまう(すなわち、粒状性や色間滲みが生じる。)。
【0028】
補助インクは、画像形成インクの液滴による基材9上におけるドットの描画状態を変更する透明な水性インクであり、インクジェットプリンタ1では、後述の条件にて補助インクにより形成された補助層上に画像形成インクの液滴を付与することにより、当該液滴が過度に広がらず、かつ、過度に浸透しない状態(すなわち、液滴が基材9表面上に一定の大きさにて定着してドットが描画される、いわゆるインクジェット適性が得られる状態)が実現される。補助インクはアンカーインクあるいはアンダーコートインクとも呼ばれ、補助層はアンカー層あるいはアンダーコート層とも呼ばれる。インクジェットプリンタ1では、白色または有色の補助インクが用いられてもよい。
【0029】
図2は、インクジェットプリンタ1の機能構成を示すブロック図である。制御ユニット11は、各種データを記憶する記憶部111、後述の補助インク網点面積率を決定する網点面積率決定部112、画像データに対して所定の閾値マトリクス(例えば、FM(Frequency Modulated)スクリーニング用の閾値マトリクス)を用いて網掛け処理(ハーフトーン処理)を施すことにより画像形成用の描画データを生成するデータ変換部113、および、描画データに従って画像形成部12を制御する制御部114を有する。記憶部111には、画像形成インクにより基材9上に記録される予定のカラーの元画像のデータ(本実施の形態ではラスタ形式のデータであり、以下、「元画像データ」という。)21、および、補助層の形成時に参照される参照テーブルのデータ(以下、「参照テーブルデータ」という。)22が予め記憶される。
【0030】
図3は、元画像データ21が示す元画像3を示す図である。元画像3には複数の画像領域(図3中にて符号31〜33を付す細線の矩形にて示す。)が設定されており、各画像領域31〜33には、絵柄、文字、バーコード等の画像の性質を示す属性が関連付けられる。具体的に、画像領域31には写真やイラスト等の多階調の絵柄画像を示す属性が関連付けられ、画像領域32には2値の文字画像を示す属性が関連付けられ、画像領域33には2値のバーコード画像を示す属性が関連付けられる。元画像3において画像領域31〜33以外の領域は空白を示す。元画像データ21には、各画像領域31〜33の位置およびサイズ(すなわち、縦方向および横方向の画素数)、並びに、属性を示す領域情報211が含まれる。
【0031】
図4は、参照テーブルデータ22が示す参照テーブルの一部を示す図である。図4の参照テーブルにおいて、最上段に「紙の種類」と記す左側の列には、「上質紙」、「新聞紙」、「コート紙」等の紙の種類が記される。また、最上段に「坪量」と記す中央の列には、紙の各種類に対して複数の坪量(すなわち、単位面積当たりの基材の重量)が記され、最上段に「適正網点面積率」と記す右側の列には、当該複数の坪量にそれぞれ対応する複数の適正網点面積率が記される。
【0032】
本実施の形態における網点面積率とは、補助層を形成する際に用いられる画像において、所定の大きさの領域に含まれる画素のうち、ドットの描画を指示する値を有する画素の割合(ドットの描画率)を示すものである。すなわち、網点面積率は、基材9上の所定の大きさの領域において補助インクの液滴が付与可能な位置の総数に対する、当該領域中の液滴が実際に付与される位置の個数の割合である。実際には、基材9の主面上において補助インクの液滴はある程度広がるため、100%未満の網点面積率において、当該領域の全体を覆う補助層が形成される。
【0033】
参照テーブルにおける適正網点面積率は、上記インクジェット適性を有する補助層を形成するためのおよそ最小の網点面積率であり、本実施の形態では、後述する参照テーブル作成作業により、各種類の紙の各坪量に対して適正網点面積率が予め決定される。このように、参照テーブルでは、各種類の紙における複数の坪量に対し、補助層の形成時における適正網点面積率が個別に対応付けられる。
【0034】
図5は、インクジェットプリンタ1が基材9上にプリント画像を形成する処理の流れを示す図である。インクジェットプリンタ1では、まず、後述の参照テーブル作成作業により、参照テーブルデータ22が生成され、図2の記憶部111に記憶されて準備される(ステップS11)。
【0035】
続いて、インクジェットプリンタ1において実際にプリント画像が形成される基材9(以下、「対象基材9」という。)の種類が制御ユニット11に入力される。網点面積率決定部112では、対象基材9の種類および坪量を用いて参照テーブルを参照することにより、対象基材9上への補助層の形成時における網点面積率(以下、「補助インク網点面積率」という。)が決定される(ステップS12)。例えば、対象基材9の種類が上質紙であり、対象基材9の坪量が81.4[g/m2]である場合には、図4の参照テーブルに基づいて補助インク網点面積率が25%として自動的に決定される。そして、補助インク網点面積率に相当する25%の階調値(濃度値または画素値)にて一様、かつ、元画像3よりもサイズが大きい補助層画像を示すデータ(以下、「補助層画像データ」という。)がデータ変換部113に出力される。なお、作業者により補助インク網点面積率の値が任意に指定可能とされてもよく、この場合、対象基材9の種類および坪量から特定される網点面積率を微調整することができる。
【0036】
なお、各種類の紙の複数の坪量は、印刷物の用途に応じて事前に定められているため、対象基材9の種類および坪量は、参照テーブルに示される種類および坪量に一致する。対象基材9の坪量が例外的に参照テーブルに示される坪量と相違する場合には、対象基材9の坪量に最も近い参照テーブル中の坪量の適正網点面積率が、補助インク網点面積率として決定されてもよい。また、対象基材9の坪量に対応する適正網点面積率が、参照テーブルに示される複数の坪量の適正網点面積率に基づく補間演算により求められてもよい。さらに、参照テーブルでは各種類の紙において、坪量と適正網点面積率との関係が関数にて表されていてもよい。
【0037】
データ変換部113では、補助層画像データから補助インクの吐出制御用の描画データが生成され、制御部114により、当該描画データに従って図1の画像形成部12が制御される。これにより、基材9の吐出部121に対する相対移動に並行して、補助ヘッド123から基材9に向けて補助インクの液滴が吐出され、対象基材9上に補助層が形成される(ステップS13)。
【0038】
図6は、対象基材9上に形成された補助層41を示す図である。図6では、対象基材9上の補助層41に平行斜線を付すとともに、図3の元画像3の各画像領域31〜33の画像が形成される予定の対象基材9上の領域(以下同様に、「画像領域」という。)を、符号51〜53を付す二点鎖線の矩形にて示す(後述の図7、図9、図11および図12において同様)。インクジェットプリンタ1では、対象基材9上において画像形成インクによりプリント画像が形成可能な領域のおよそ全体(すなわち、プリント可能領域のおよそ全体)に補助インク網点面積率に従って補助インクの液滴が吐出され、透明な補助層41が形成される。
【0039】
また、データ変換部113では、元画像データ21から画像形成インクの吐出制御用の描画データが生成され、制御部114により、当該描画データに従って図1の画像形成部12が制御される。これにより、基材9の吐出部121に対する相対移動に並行して、画像形成ヘッド122から基材9に向けて画像形成インクの液滴が吐出され、補助層41上に元画像データ21が示すカラーのプリント画像(すなわち、元画像3を示すプリント画像)が形成される(ステップS14)。
【0040】
本実施の形態におけるインクジェットプリンタ1では、対象基材9が水平な一方向に連続的に移動する。また、補助ヘッド123が、画像形成ヘッド122よりも対象基材9の進行方向上流側に配置され、補助ヘッド123および画像形成ヘッド122のそれぞれにおいて、複数の吐出口が対象基材9の幅(対象基材9の進行方向に垂直な方向の幅)のおよそ全体に亘って配列される。これにより、基材9上の各位置が補助ヘッド123の下方および画像形成ヘッド122の下方に順に配置されるとともに、ステップS13における補助インクによる補助層41の形成、および、ステップS14における画像形成インクによるプリント画像の形成が並行して行われる。補助層41上に元画像データ21が示す画像の全体が形成されると、インクジェットプリンタ1における画像形成処理が完了する。なお、対象基材9の進行方向において画像形成ヘッド122よりも下流側に、赤外線や温風により対象基材9上のプリント画像を乾燥させる乾燥部が設けられてもよい。
【0041】
次に、参照テーブル作成作業について説明する。参照テーブル作成作業では、各種類の各坪量の複数の基材が準備され、当該複数の基材に対して、互いに相違する複数の網点面積率にて補助層が形成され、当該複数の基材の補助層上に画像形成インクにより同様のプリント画像が形成される。そして、各基材のプリント画像が作業者により観察され、複数の評価項目に関して評価される。表1では、坪量81.4[g/m2]のコート紙である基材において、網点面積率0、15、25、35、40、50、60、70、100%にて形成された補助層上におけるプリント画像の評価結果を示している。
【0042】
【表1】
【0043】
表1では、各評価項目に対する評価結果が「○」、「△」および「×」の3段階にて示されており、「○」は良好であり、「△」は良好ではないが、許容範囲内であり、「×」が許容範囲外である。「発色性」は絵柄画像を示すプリント画像の領域を観察することにより評価され、50%以下の網点面積率では「○」となるが、60%以上の網点面積率では「×」となる。これは、補助層形成時の網点面積率が60%以上となると、C、M、Y、Kの画像形成インクおよび補助インクによる基材記録面における水分が過度に多くなり、画像形成インクが乾燥する前に、画像形成部12において基材の進行方向下流側に配置された搬送ローラに記録面が当接して、記録面上の画像形成インクの一部が当該ローラに奪われるためである。
【0044】
また、「粒状性」および「色間滲み」も絵柄画像を示すプリント画像の領域を観察することにより評価され、35%以下の網点面積率では双方が「△」または「×」となる。これは、網点面積率が35%以下となると、補助インクによる補助層が記録面全体を覆う状態とならず、画像形成インクの液滴が記録面上にて広がって液滴同士が混ざる(大きなドットとなる)領域が存在するためである。「粒状性」に関して、60%以上の網点面積率にて「×」となる理由は「発色性」におけるものと同様である。
【0045】
「バーコード可読性」は、2値のバーコード画像を示すプリント画像の領域を観察することにより評価され、全ての網点面積率で「○」となる。また、「文字品質」は、2値の文字画像を示すプリント画像の領域を観察することにより評価され、50%以上の網点面積率において、基材記録面における水分の影響により「×」となる。表1では、全ての評価項目を考慮して評価結果が最も高い網点面積率40%が、適正網点面積率として決定される。なお、上質紙では、画像形成インクの液滴が基材記録面上において広がりつつ染み込むため、網点面積率が低い範囲において「バーコード可読性」および「文字品質」が低くなる。
【0046】
コクリングの発生および補助インクの消費量(無駄)を抑制するという観点からは、補助層の形成時における網点面積率は低いほど好ましいため、全ての評価項目における評価結果を考慮しつつ、許容可能な範囲で最も小さい網点面積率が適正網点面積率として決定される。したがって、適正網点面積率は、付与された画像形成インクの液滴が過度に広がらず、かつ、過度に浸透しない(すなわち、インクジェット適性が得られる)補助層を形成するためのおよそ最小の網点面積率であるといえる。上記評価項目には、インクが基材9の裏面側まで浸透する、いわゆる裏抜けや、プリント画像の表面を他の部材で擦った際におけるインクの剥離度合いを評価する擦過性等が含められてもよい。
【0047】
上記作業により、各種類の各坪量の基材に対して適正網点面積率が決定され、図4の参照テーブルが作成される。参照テーブルデータ22は記憶部111に記憶され、インクジェットプリンタ1における画像形成処理に利用される。
【0048】
以上に説明したように、インクジェットプリンタ1では、各種類の紙における複数の坪量に対し適正網点面積率を個別に対応付けた参照テーブルが記憶部111にて記憶され、網点面積率決定部112が、対象基材9の種類および坪量を用いて参照テーブルを参照することにより、対象基材9上への補助層41の形成時における網点面積率が補助インク網点面積率として決定される。これにより、様々な基材9上に画像形成インクによる高精度なプリント画像を形成することができる。また、このようなインクジェットプリンタ1では、例えば、他のオフセット印刷機により同様の画像がオフセット印刷された複数の基材(オフセット印刷用の基材であり、その記録面はインクジェット適性を有していない。)に対して個別のプリント画像を高精度に形成することができる。
【0049】
インクジェットプリンタ1では、対象基材9の種類および坪量に合わせて補助インク網点面積率が決定されるため、常時100%の網点面積率にて補助層を形成する場合に比べて、コクリングの発生および補助インクの消費量(補助インクのコスト)を抑制することができる。また、対象基材9上のプリント画像を乾燥させる乾燥部を設ける際には、記録面上の水分が少なくなることにより低い電力にて乾燥部を駆動することが可能となり、乾燥部の消費電力を低減することができる。
【0050】
ところで、仮に同一の大きさの補助層および元画像を基材9上に形成する場合、インクジェットプリンタ1におけるインクの着弾精度や基材9の搬送精度等によっては、補助ヘッド123により形成される補助層と画像形成ヘッド122により形成されるプリント画像とを正確に重ねることが困難となり、補助ヘッド123と画像形成ヘッド122との間で画像(補助層)の形成位置にずれが生じることがある。この場合、基材9の種類によっては、プリント画像の外縁部においてインクが基材9の裏面側まで浸透して裏抜けが発生してしまう。
【0051】
これに対し、インクジェットプリンタ1では、網点面積率決定部112により元画像3よりもサイズが大きい補助層画像が生成されることにより、補助ヘッド123と画像形成ヘッド122との間で画像の形成位置にずれが生じる場合であっても、元画像3を示すプリント画像の全体を補助層41上に確実に形成することができ、裏抜けの発生を防止することができる。
【0052】
上記処理例では、基材9の記録面上においてプリント可能領域のおよそ全体に補助層41が形成されるが、図3の元画像3の画像領域31〜33に対応する基材9上の領域に対してのみ補助層41が形成されてよい。この場合、図2の網点面積率決定部112において、元画像データ21に含まれる領域情報211が参照され、元画像3の画像領域31〜33と(中央の)位置が同じ、かつ、当該画像領域31〜33よりもサイズが僅かに大きい領域において、階調値が補助インク網点面積率に相当する値にて一様となり、他の領域の階調値が0となる補助層画像データが生成される。そして、補助層画像データから生成される描画データに従って画像形成部12が制御されることにより、図7に示すように、画像領域31〜33に対応する基材9上の画像領域51〜53に対してのみ(正確には、画像領域51〜53を図7の縦方向および横方向に僅かに大きくした領域のみに)補助層41が形成される。
【0053】
以上のように、インクジェットプリンタ1では、画像形成インクにより画像が形成される領域として予め設定された画像領域51〜53のみに対して補助層41が形成されることにより、コクリングの発生および補助インクの消費量をさらに抑制することができる。また、各補助層41が画像領域51〜53の全体を包含する領域に形成されることにより、裏抜けの発生を防止することができる。
【0054】
次に、インクジェットプリンタ1における他の処理例について説明する。図8は、本処理例において準備される参照テーブルの一部を示す図である。図8の参照テーブルでは、図4の参照テーブルに対して、最上段に「画像の属性」と記す列が追加されている。当該列には、画像の属性である「絵柄」、「文字」、「バーコード」が記され、「適正網点面積率」の列には、画像の各属性に対応する適正網点面積率が記される。このように、図8の参照テーブルでは、各種類の各坪量の基材に形成される画像の複数の属性に対し適正網点面積率が個別に対応付けられる。なお、図8では、「紙の種類」として「新聞紙」のみが示されるが、実際には、「上質紙」や「コート紙」等の他の種類の紙の各坪量に関しても画像の各属性に対する適正網点面積率が定められている。また、参照テーブルにおいて、「絵柄」、「文字」、「バーコード」以外の属性が追加されてもよい。
【0055】
本処理例では、上述の参照テーブル作成作業と同様の手法にて図8の参照テーブルが準備される(図5:ステップS11)。すなわち、各種類の各坪量の複数の基材に対してそれぞれ複数の網点面積率にて補助層を形成し、当該補助層上に形成される複数の属性のプリント画像を観察することにより、画像の各属性に対する適正網点面積率が決定される。
【0056】
続いて、網点面積率決定部112では、対象基材9の種類および坪量に加えて、元画像データ21の領域情報211に含まれる各画像領域31〜33の属性を用いて図8の参照テーブルを参照することにより、画像領域31〜33に対して補助インク網点面積率が個別に決定される(ステップS12)。そして、各画像領域31〜33と位置が同じ、かつ、当該画像領域31〜33よりもサイズが僅かに大きい領域において、階調値が当該画像領域31〜33の補助インク網点面積率に相当する値にて一様となり、他の領域の階調値が0となる補助層画像データが生成される。
【0057】
インクジェットプリンタ1では、補助層画像データから生成される描画データに従って画像形成部12が制御されることにより、図9に示すように、元画像3の画像領域31〜33に対応する基材9上の画像領域51〜53に対して、当該画像領域31〜33に対して決定された補助インク網点面積率に応じて補助インクが吐出されて補助層41が形成される(ステップS13)。図9では、複数の補助層41に付す平行斜線の幅を相違させることにより、補助層41の形成時における網点面積率の相違を表している(後述の図11において同様)。
【0058】
また、元画像データ21から生成される描画データに従って画像形成部12が制御されることにより、各補助層41に対応する画像領域31〜33の画像が、当該補助層41上に画像形成インクにより形成される(ステップS14)。
【0059】
以上に説明したように、本処理例では、参照テーブルにおいて、各種類の各坪量の基材に形成される画像の複数の属性に対し適正網点面積率が個別に対応付けられる。また、対象基材9上には画像形成インクにより画像が形成される複数の画像領域51〜53が予め設定され、網点面積率決定部112において、対象基材9の種類および坪量、並びに、対象基材9の各画像領域51〜53に形成される画像の属性を用いて参照テーブルを参照することにより、当該画像領域51〜53に対する補助インク網点面積率が決定される。これにより、インクジェットプリンタ1では、各画像領域51〜53に対してプリント画像を高精度に形成することができる。また、各画像領域51〜53および当該画像領域51〜53の周囲のみに補助層41が形成されることにより、コクリングの発生および補助インクの消費量を抑制することができる。
【0060】
図8の参照テーブルを用いる処理例において、絵柄画像の画像領域51に対する補助層41の形成時における網点面積率が、絵柄画像に合わせて変更されてもよい。具体的には、網点面積率決定部112において補助層画像データを生成する際に、図3の元画像3において絵柄画像の画像領域31の各位置(画素)における全ての色成分(C、M、YおよびK)の階調値の和が求められる。また、図10中に符号L1を付す実線にて示すように、階調値の和と補助インク網点面積率との関係(以下、「変換カーブ」という。)が予め準備されており、絵柄画像の画像領域31の各位置に対して、階調値の和を用いて補助インク網点面積率が特定される。これにより、画像領域31の各位置に対応する位置の階調値が、特定された補助インク網点面積率に相当する値を有する補助層画像(すなわち、画像領域31に対応する領域が多値にて表現される補助層画像)が生成される。
【0061】
ここで、図10の変換カーブL1について説明する。変換カーブL1では、階調値の和が0からT1まで増大するのに従って補助インク網点面積率が漸次増大し、階調値の和がT1以上では補助インク網点面積率がR1にて一定となる。変換カーブL1を作成する際には、図8の参照テーブルにおいて、対象基材9の種類および坪量、並びに、絵柄画像から補助インク網点面積率R1が特定される。また、図10中にて符号L2を付す二点鎖線にて示すように、増加関数である基本カーブが実験により各種類の各坪量の基材に対して予め準備されており(図10では、0からT1までの階調値の和の範囲にて基本カーブL2と変換カーブL1とが重なっている。)、基本カーブL2において補助インク網点面積率がR1よりも大きくなる部分をR1に変更することにより、変換カーブL1が作成される。
【0062】
図11は、補助層画像データに基づいて対象基材9上に形成された補助層41を示す図であり、元画像3の画像領域31に対応する対象基材9上の画像領域51近傍のみを示している。また、図11では、画像領域51に形成される絵柄画像の概略を二点鎖線にて示している。既述のように、変換カーブL1は増加関数であり、変換カーブL1を用いて生成される補助層画像データに基づいて補助層41は形成される。したがって、風景写真における空を示す部分等、絵柄画像において階調値の和が比較的小さい部分A1(図11中にて幅が広い平行斜線を付す部分であり、対象基材9は白いため、比較的明るい部分となる。)では、補助層41の形成時における網点面積率が低くなり、当該部分A1に付与される補助インクの量が少なくなる。このような部分A1では、画像形成インクにより形成されるドットの数の密度が低いため、記録面上において画像形成インクの液滴が広がったとしてもプリント画像の質への影響は少ない。
【0063】
一方、絵柄画像において階調値の和が比較的大きい部分A2(図11中にて幅が狭い平行斜線を付す部分)では、補助層41の形成時における網点面積率は、補助インク網点面積率R1となる。したがって、当該部分A2におけるプリント画像の精度は確保される。
【0064】
以上に説明したように、図10の変換カーブL1を用いるインクジェットプリンタ1では、多階調の絵柄画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、絵柄画像の階調値の和が所定値未満となる部分において、補助インク網点面積率が低減される。これにより、プリント画像の精度を維持しつつ補助インクの消費量をさらに抑制することができる。また、コクリング等の発生も抑制されるため、高品質な印刷物を取得することができる。図10の変換カーブL1を用いる手法は、単色の絵柄画像を示す画像領域に対して用いられてもよく、この場合、絵柄画像の画像領域のうち、絵柄画像の階調値が所定値未満となる部分において、補助インク網点面積率が低減される。
【0065】
ところで、仮に、図10の基本カーブL2に従って補助層画像データを生成する場合、多色の絵柄画像では階調値の和、また、単色の絵柄画像では階調値が大きい部分(すなわち、高濃度部分)では、補助インクの付与量および画像形成インクの付与量の双方が多くなるため、コクリングや裏抜けが生じやすくなる。しかしながら、インクジェットプリンタ1では、対象基材9の種類および坪量、並びに、画像の属性にて特定される補助インク網点面積率R1を上限とする変換カーブL1が求められることにより、コクリングや裏抜けの発生を抑制することができる。
【0066】
また、図8の参照テーブルを用いる処理例において、文字画像やバーコード画像等、線部にて表現される2値画像(以下、「線画像」という。)の画像領域52,53に対して、線画像に従って変更した網点面積率にて補助層41が形成されてもよい。具体的には、網点面積率決定部112において補助層画像データを生成する際に、画像領域32,33における線画像の線部を太らせ処理(膨張処理)した画像が生成される。また、対象基材9の種類および坪量、並びに、当該画像領域32,33の画像の属性に基づいて補助インク網点面積率が決定され、太らせ処理後の線部に対応する部分の階調値が当該補助インク網点面積率に相当する値となり、線画像中の線部以外に対応する部分の階調値が0となる補助層画像データが生成される。
【0067】
図12は、補助層画像データに基づいて対象基材9上に形成された補助層41を示す図であり、元画像3の画像領域33に対応する対象基材9上の画像領域53近傍のみを示している。また、図12では、画像領域53に形成されるバーコード画像の概略を二点鎖線にて示している。上記補助層画像データに基づいて補助インクの吐出制御が行われることにより、図12に示すように、線画像の線部を膨張させた領域のみに補助層41が形成される。
【0068】
以上のように、好ましいインクジェットプリンタ1では、線画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、線画像の線部および当該線部の周囲を除く部分において、補助インク網点面積率が0とされる。これにより、インクジェットプリンタ1における基材の搬送精度が低く、補助ヘッド123と画像形成ヘッド122との間で画像の形成位置にずれが生じる場合であっても、線画像における線部を補助層41上に確実に形成することができ、裏抜けの発生を抑制することができる。また、コクリングの発生および補助インクの消費量をさらに抑制することができる。
【0069】
また、インクジェットプリンタ1では、太らせ処理後の線部に対応する部分の階調値が当該補助インク網点面積率に相当する値となり、線画像中の線部以外に対応する部分の階調値が当該値未満かつ0よりも大きい値となる補助層画像データが生成されてもよい。このようにして、線画像の画像領域のうち、線画像の線部および線部の周囲を除く部分において補助インク網点面積率を低減する場合であっても、コクリング等の発生および補助インクの消費量がある程度抑制される。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0071】
基材において坪量の相違による適正網点面積率の相違が小さい場合等には、図4の参照テーブルにおいて坪量が省略されてもよい(図8の参照テーブルにおいて同様)。すなわち、基材の複数の種類のそれぞれと、補助層の形成時における適正網点面積率とを対応付ける参照テーブルを準備し、対象基材の種類のみを用いて参照テーブルを参照して補助インク網点面積率を決定する場合であっても、ある程度高精度なプリント画像を形成することができる。インクジェットプリンタ1において、プリント画像をより高精度に形成するには、対象基材9の坪量、および/または、画像の属性も用いて補助インク網点面積率を決定することが好ましい。
【0072】
インクジェットプリンタ1におけるインクの着弾精度や基材9の搬送精度等によっては、補助層が各画像領域と同じサイズとされてよい。
【0073】
上記実施の形態では、水性のインク(補助インクおよび画像形成インク)が用いられるが、紫外線硬化性を有するインク等、他の種類のインクを用いて対象基材上に補助層が形成され、補助層上にプリント画像が形成されてもよい。他の種類のインクを用いる場合でも、当該種類のインクに合わせた参照テーブルを準備することにより、高精度なプリント画像を形成することができる。
【0074】
補助層および補助層上に形成されるプリント画像は必ずしもFMスクリーニングにて表現される必要はなく、AM(Amplitude Modulated)スクリーニング等にて表現されてもよい。また、描画データの生成時に、補助層画像データおよび元画像データに対して異なる閾値マトリクスが用いられてよく、描画データは、量子化誤差を周辺画素に分配する誤差拡散法等にて生成されてもよい。
【0075】
インクジェットプリンタ1においてプリント画像が形成される基材は紙には限定されず、プラスチックフィルムやガラス板、あるいは、布や金属板等であってもよい。参照テーブルを用いて補助インク網点面積率を決定するインクジェットプリンタ1では、このような基材上においても高精度なプリント画像を形成することができる。
【0076】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0077】
1 インクジェットプリンタ
9 基材
12 画像形成部
22 参照テーブルデータ
41 補助層
51〜53 画像領域
111 記憶部
112 網点面積率決定部
S11〜S14 ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクの液滴を基材に向けて吐出することにより基材上に画像を形成するインクジェットプリンタ、および、インクジェットプリンタにおける画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット方式にて様々な基材上に画像を形成することが行われている。例えば、特許文献1では、画像を直接ダイレクトに安定させてプリントしにくい布材、金属板、皮革などのメディアに、インクジェットプリンタを用いて画像をプリントする場合に、インクジェットヘッドから噴射させたアンダーコート層プリント用のインク液滴により、そのメディアに画像定着用のアンダーコート層をプリントし、そのアンダーコート層表面に、インクジェットヘッドから噴射させた画像プリント用のインク液滴により、画像を重ねプリントする手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−50555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の手法のように、基材(メディア)上に画像定着用のアンダーコート層を形成し、画像プリント用のインクによりアンダーコート層上に画像を形成する場合、アンダーコート層プリント用のインク液滴は100%の網点面積率にて基材上に付与される(すなわち、インク液滴が付与可能な基材上の全ての位置にインク液滴が付与される)。しかしながら、この場合、紙の基材ではコクリング(皺が生じる現象)が発生したり、基材の種類によっては、画像プリント用のインクがアンダーコート層上に適切に定着しないことがあり、アンダーコート層上に形成される画像の精度が低下してしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、様々な基材上に高精度な画像を形成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、インクジェットプリンタであって、画像形成インクの液滴による基材上におけるドットの描画状態を変更する補助インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記基材上に補助層を形成し、前記画像形成インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記補助層上に画像を形成する画像形成部と、基材の複数の種類のそれぞれと、前記補助層の形成時における適正網点面積率とを対応付ける参照テーブルを記憶する記憶部と、画像が形成される対象基材の種類を用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記対象基材上への前記補助層の形成時における網点面積率を補助インク網点面積率として決定する網点面積率決定部とを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、前記基材が紙であり、前記参照テーブルにおいて、各種類の紙における複数の坪量に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、前記網点面積率決定部が、前記対象基材となる紙の坪量も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率を決定する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタであって、前記画像形成インクにより画像が形成される領域として予め設定された画像領域のみに対して前記補助層が形成される。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタであって、前記参照テーブルにおいて、各種類の基材に形成される画像の複数の属性に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、前記網点面積率決定部が、前記対象基材に形成される画像の属性も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率を決定する。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のインクジェットプリンタであって、前記対象基材上に前記画像形成インクにより画像が形成される複数の画像領域が予め設定されており、前記網点面積率決定部が、各画像領域に形成される画像の属性を用いて、前記各画像領域に対する前記補助インク網点面積率を決定する。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のインクジェットプリンタであって、前記各画像領域および前記各画像領域の周囲のみに前記補助層が形成される。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項4ないし6のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、多階調の絵柄画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記絵柄画像の階調値が所定値未満となる部分において、前記補助インク網点面積率が低減される。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項4ないし7のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、線画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記線画像の線部および前記線部の周囲を除く部分において、前記補助インク網点面積率が低減される。
【0014】
請求項9に記載の発明は、インクジェットプリンタにおける画像形成方法であって、前記インクジェットプリンタが、画像形成インクの液滴による基材上におけるドットの描画状態を変更する補助インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記基材上に補助層を形成し、前記画像形成インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記補助層上に画像を形成する画像形成部を備え、前記画像形成方法が、a)基材の複数の種類のそれぞれと、前記補助層の形成時における適正網点面積率とを対応付ける参照テーブルを準備する工程と、b)画像が形成される対象基材の種類を用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記対象基材上への前記補助層の形成時における網点面積率を補助インク網点面積率として決定する工程と、c)前記画像形成部により、前記補助インク網点面積率に従って前記対象基材上に前記補助層を形成するとともに、前記補助層上に前記画像形成インクによる画像を形成する工程とを備える。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の画像形成方法であって、前記基材が紙であり、前記参照テーブルにおいて、各種類の紙における複数の坪量に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、前記b)工程において、前記対象基材となる紙の坪量も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率が決定される。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項9または10に記載の画像形成方法であって、前記c)工程において、前記画像形成インクにより画像が形成される領域として予め設定された画像領域のみに対して前記補助層が形成される。
【0017】
請求項12に記載の発明は、請求項9または10に記載の画像形成方法であって、前記参照テーブルにおいて、各種類の基材に形成される画像の複数の属性に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、前記b)工程において、前記対象基材に形成される画像の属性も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率が決定される。
【0018】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の画像形成方法であって、前記対象基材上に前記画像形成インクにより画像が形成される複数の画像領域が予め設定されており、前記b)工程において、各画像領域に形成される画像の属性を用いて、前記各画像領域に対する前記補助インク網点面積率が決定される。
【0019】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の画像形成方法であって、前記c)工程において、前記各画像領域および前記各画像領域の周囲のみに前記補助層が形成される。
【0020】
請求項15に記載の発明は、請求項12ないし14のいずれかに記載の画像形成方法であって、多階調の絵柄画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記絵柄画像の階調値が所定値未満となる部分において、前記補助インク網点面積率が低減される。
【0021】
請求項16に記載の発明は、請求項12ないし15のいずれかに記載の画像形成方法であって、線画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記線画像の線部および前記線部の周囲を除く部分において、前記補助インク網点面積率が低減される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、様々な基材上に画像形成インクによる高精度な画像を形成することができる。また、補助インクの消費量を抑制することができる。
【0023】
また、請求項2、4、10および12の発明では、画像をより高精度に形成することができ、請求項3、6ないし8、11、並びに、14ないし16の発明では、補助インクの消費量をさらに抑制することができ、請求項5および13の発明では、各画像領域に対して画像をより高精度に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】インクジェットプリンタの構成を示す図である。
【図2】インクジェットプリンタの機能構成を示すブロック図である。
【図3】元画像を示す図である。
【図4】参照テーブルの一部を示す図である。
【図5】基材上に画像を形成する処理の流れを示す図である。
【図6】対象基材上に形成された補助層を示す図である。
【図7】対象基材上に形成された補助層を示す図である。
【図8】参照テーブルの他の例の一部を示す図である。
【図9】対象基材上に形成された補助層を示す図である。
【図10】階調値の和と補助インク網点面積率との関係を示す図である。
【図11】対象基材上に形成された補助層を示す図である。
【図12】対象基材上に形成された補助層を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明の一の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の構成を示す図である。インクジェットプリンタ1は、コンピュータ等を有する制御ユニット11、および、制御ユニット11に接続される画像形成部12を備え、画像形成部12は制御ユニット11からの信号を受けて、紙である基材9にインクジェット方式にて画像を形成(プリント)する。
【0026】
画像形成部12は、インクの微小液滴を基材9の主面に向けて吐出する吐出部121、および、基材9を水平方向に吐出部121に対して相対的に移動する移動機構(図示省略)を有する。吐出部121は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K)の水性インクである画像形成インクの液滴を吐出する画像形成ヘッド122、および、後述の補助インクの液滴を吐出する補助ヘッド123を有する。画像形成部12では、移動機構により、基材9上の各位置が補助ヘッド123の下方および画像形成ヘッド122の下方に順に配置される。これにより、基材9上に補助インクによる補助層が形成され、補助層上に画像形成インクによる画像(以下、「プリント画像」ともいう。)が形成される。なお、画像形成ヘッド122では、C、M、Y、K以外の色(ライトシアン、ライトマゼンタ等)のインクが吐出されてもよい。
【0027】
ここで、補助インクについて説明する。例えば、基材9が上質紙である場合に、水性の画像形成インクの液滴が基材9の主面(紙の表面であり、以下、「記録面」という。)に直接付与されると、画像形成インクは上質紙の記録面において広がりつつ浸透する(染み込む)ため、液滴により描画されるドットが大きくなるとともに、当該ドットの色がくすんで発色性が低下する。また、基材9がコート紙である場合に、水性の画像形成インクの液滴が基材9の記録面に直接付与されると、画像形成インクはコート紙の記録面においてほとんど染み込むことなく大きく広がるため、隣接した位置に付与される液滴同士が混ざって、大きなドットとなったり、色が混ざったりしてしまう(すなわち、粒状性や色間滲みが生じる。)。
【0028】
補助インクは、画像形成インクの液滴による基材9上におけるドットの描画状態を変更する透明な水性インクであり、インクジェットプリンタ1では、後述の条件にて補助インクにより形成された補助層上に画像形成インクの液滴を付与することにより、当該液滴が過度に広がらず、かつ、過度に浸透しない状態(すなわち、液滴が基材9表面上に一定の大きさにて定着してドットが描画される、いわゆるインクジェット適性が得られる状態)が実現される。補助インクはアンカーインクあるいはアンダーコートインクとも呼ばれ、補助層はアンカー層あるいはアンダーコート層とも呼ばれる。インクジェットプリンタ1では、白色または有色の補助インクが用いられてもよい。
【0029】
図2は、インクジェットプリンタ1の機能構成を示すブロック図である。制御ユニット11は、各種データを記憶する記憶部111、後述の補助インク網点面積率を決定する網点面積率決定部112、画像データに対して所定の閾値マトリクス(例えば、FM(Frequency Modulated)スクリーニング用の閾値マトリクス)を用いて網掛け処理(ハーフトーン処理)を施すことにより画像形成用の描画データを生成するデータ変換部113、および、描画データに従って画像形成部12を制御する制御部114を有する。記憶部111には、画像形成インクにより基材9上に記録される予定のカラーの元画像のデータ(本実施の形態ではラスタ形式のデータであり、以下、「元画像データ」という。)21、および、補助層の形成時に参照される参照テーブルのデータ(以下、「参照テーブルデータ」という。)22が予め記憶される。
【0030】
図3は、元画像データ21が示す元画像3を示す図である。元画像3には複数の画像領域(図3中にて符号31〜33を付す細線の矩形にて示す。)が設定されており、各画像領域31〜33には、絵柄、文字、バーコード等の画像の性質を示す属性が関連付けられる。具体的に、画像領域31には写真やイラスト等の多階調の絵柄画像を示す属性が関連付けられ、画像領域32には2値の文字画像を示す属性が関連付けられ、画像領域33には2値のバーコード画像を示す属性が関連付けられる。元画像3において画像領域31〜33以外の領域は空白を示す。元画像データ21には、各画像領域31〜33の位置およびサイズ(すなわち、縦方向および横方向の画素数)、並びに、属性を示す領域情報211が含まれる。
【0031】
図4は、参照テーブルデータ22が示す参照テーブルの一部を示す図である。図4の参照テーブルにおいて、最上段に「紙の種類」と記す左側の列には、「上質紙」、「新聞紙」、「コート紙」等の紙の種類が記される。また、最上段に「坪量」と記す中央の列には、紙の各種類に対して複数の坪量(すなわち、単位面積当たりの基材の重量)が記され、最上段に「適正網点面積率」と記す右側の列には、当該複数の坪量にそれぞれ対応する複数の適正網点面積率が記される。
【0032】
本実施の形態における網点面積率とは、補助層を形成する際に用いられる画像において、所定の大きさの領域に含まれる画素のうち、ドットの描画を指示する値を有する画素の割合(ドットの描画率)を示すものである。すなわち、網点面積率は、基材9上の所定の大きさの領域において補助インクの液滴が付与可能な位置の総数に対する、当該領域中の液滴が実際に付与される位置の個数の割合である。実際には、基材9の主面上において補助インクの液滴はある程度広がるため、100%未満の網点面積率において、当該領域の全体を覆う補助層が形成される。
【0033】
参照テーブルにおける適正網点面積率は、上記インクジェット適性を有する補助層を形成するためのおよそ最小の網点面積率であり、本実施の形態では、後述する参照テーブル作成作業により、各種類の紙の各坪量に対して適正網点面積率が予め決定される。このように、参照テーブルでは、各種類の紙における複数の坪量に対し、補助層の形成時における適正網点面積率が個別に対応付けられる。
【0034】
図5は、インクジェットプリンタ1が基材9上にプリント画像を形成する処理の流れを示す図である。インクジェットプリンタ1では、まず、後述の参照テーブル作成作業により、参照テーブルデータ22が生成され、図2の記憶部111に記憶されて準備される(ステップS11)。
【0035】
続いて、インクジェットプリンタ1において実際にプリント画像が形成される基材9(以下、「対象基材9」という。)の種類が制御ユニット11に入力される。網点面積率決定部112では、対象基材9の種類および坪量を用いて参照テーブルを参照することにより、対象基材9上への補助層の形成時における網点面積率(以下、「補助インク網点面積率」という。)が決定される(ステップS12)。例えば、対象基材9の種類が上質紙であり、対象基材9の坪量が81.4[g/m2]である場合には、図4の参照テーブルに基づいて補助インク網点面積率が25%として自動的に決定される。そして、補助インク網点面積率に相当する25%の階調値(濃度値または画素値)にて一様、かつ、元画像3よりもサイズが大きい補助層画像を示すデータ(以下、「補助層画像データ」という。)がデータ変換部113に出力される。なお、作業者により補助インク網点面積率の値が任意に指定可能とされてもよく、この場合、対象基材9の種類および坪量から特定される網点面積率を微調整することができる。
【0036】
なお、各種類の紙の複数の坪量は、印刷物の用途に応じて事前に定められているため、対象基材9の種類および坪量は、参照テーブルに示される種類および坪量に一致する。対象基材9の坪量が例外的に参照テーブルに示される坪量と相違する場合には、対象基材9の坪量に最も近い参照テーブル中の坪量の適正網点面積率が、補助インク網点面積率として決定されてもよい。また、対象基材9の坪量に対応する適正網点面積率が、参照テーブルに示される複数の坪量の適正網点面積率に基づく補間演算により求められてもよい。さらに、参照テーブルでは各種類の紙において、坪量と適正網点面積率との関係が関数にて表されていてもよい。
【0037】
データ変換部113では、補助層画像データから補助インクの吐出制御用の描画データが生成され、制御部114により、当該描画データに従って図1の画像形成部12が制御される。これにより、基材9の吐出部121に対する相対移動に並行して、補助ヘッド123から基材9に向けて補助インクの液滴が吐出され、対象基材9上に補助層が形成される(ステップS13)。
【0038】
図6は、対象基材9上に形成された補助層41を示す図である。図6では、対象基材9上の補助層41に平行斜線を付すとともに、図3の元画像3の各画像領域31〜33の画像が形成される予定の対象基材9上の領域(以下同様に、「画像領域」という。)を、符号51〜53を付す二点鎖線の矩形にて示す(後述の図7、図9、図11および図12において同様)。インクジェットプリンタ1では、対象基材9上において画像形成インクによりプリント画像が形成可能な領域のおよそ全体(すなわち、プリント可能領域のおよそ全体)に補助インク網点面積率に従って補助インクの液滴が吐出され、透明な補助層41が形成される。
【0039】
また、データ変換部113では、元画像データ21から画像形成インクの吐出制御用の描画データが生成され、制御部114により、当該描画データに従って図1の画像形成部12が制御される。これにより、基材9の吐出部121に対する相対移動に並行して、画像形成ヘッド122から基材9に向けて画像形成インクの液滴が吐出され、補助層41上に元画像データ21が示すカラーのプリント画像(すなわち、元画像3を示すプリント画像)が形成される(ステップS14)。
【0040】
本実施の形態におけるインクジェットプリンタ1では、対象基材9が水平な一方向に連続的に移動する。また、補助ヘッド123が、画像形成ヘッド122よりも対象基材9の進行方向上流側に配置され、補助ヘッド123および画像形成ヘッド122のそれぞれにおいて、複数の吐出口が対象基材9の幅(対象基材9の進行方向に垂直な方向の幅)のおよそ全体に亘って配列される。これにより、基材9上の各位置が補助ヘッド123の下方および画像形成ヘッド122の下方に順に配置されるとともに、ステップS13における補助インクによる補助層41の形成、および、ステップS14における画像形成インクによるプリント画像の形成が並行して行われる。補助層41上に元画像データ21が示す画像の全体が形成されると、インクジェットプリンタ1における画像形成処理が完了する。なお、対象基材9の進行方向において画像形成ヘッド122よりも下流側に、赤外線や温風により対象基材9上のプリント画像を乾燥させる乾燥部が設けられてもよい。
【0041】
次に、参照テーブル作成作業について説明する。参照テーブル作成作業では、各種類の各坪量の複数の基材が準備され、当該複数の基材に対して、互いに相違する複数の網点面積率にて補助層が形成され、当該複数の基材の補助層上に画像形成インクにより同様のプリント画像が形成される。そして、各基材のプリント画像が作業者により観察され、複数の評価項目に関して評価される。表1では、坪量81.4[g/m2]のコート紙である基材において、網点面積率0、15、25、35、40、50、60、70、100%にて形成された補助層上におけるプリント画像の評価結果を示している。
【0042】
【表1】
【0043】
表1では、各評価項目に対する評価結果が「○」、「△」および「×」の3段階にて示されており、「○」は良好であり、「△」は良好ではないが、許容範囲内であり、「×」が許容範囲外である。「発色性」は絵柄画像を示すプリント画像の領域を観察することにより評価され、50%以下の網点面積率では「○」となるが、60%以上の網点面積率では「×」となる。これは、補助層形成時の網点面積率が60%以上となると、C、M、Y、Kの画像形成インクおよび補助インクによる基材記録面における水分が過度に多くなり、画像形成インクが乾燥する前に、画像形成部12において基材の進行方向下流側に配置された搬送ローラに記録面が当接して、記録面上の画像形成インクの一部が当該ローラに奪われるためである。
【0044】
また、「粒状性」および「色間滲み」も絵柄画像を示すプリント画像の領域を観察することにより評価され、35%以下の網点面積率では双方が「△」または「×」となる。これは、網点面積率が35%以下となると、補助インクによる補助層が記録面全体を覆う状態とならず、画像形成インクの液滴が記録面上にて広がって液滴同士が混ざる(大きなドットとなる)領域が存在するためである。「粒状性」に関して、60%以上の網点面積率にて「×」となる理由は「発色性」におけるものと同様である。
【0045】
「バーコード可読性」は、2値のバーコード画像を示すプリント画像の領域を観察することにより評価され、全ての網点面積率で「○」となる。また、「文字品質」は、2値の文字画像を示すプリント画像の領域を観察することにより評価され、50%以上の網点面積率において、基材記録面における水分の影響により「×」となる。表1では、全ての評価項目を考慮して評価結果が最も高い網点面積率40%が、適正網点面積率として決定される。なお、上質紙では、画像形成インクの液滴が基材記録面上において広がりつつ染み込むため、網点面積率が低い範囲において「バーコード可読性」および「文字品質」が低くなる。
【0046】
コクリングの発生および補助インクの消費量(無駄)を抑制するという観点からは、補助層の形成時における網点面積率は低いほど好ましいため、全ての評価項目における評価結果を考慮しつつ、許容可能な範囲で最も小さい網点面積率が適正網点面積率として決定される。したがって、適正網点面積率は、付与された画像形成インクの液滴が過度に広がらず、かつ、過度に浸透しない(すなわち、インクジェット適性が得られる)補助層を形成するためのおよそ最小の網点面積率であるといえる。上記評価項目には、インクが基材9の裏面側まで浸透する、いわゆる裏抜けや、プリント画像の表面を他の部材で擦った際におけるインクの剥離度合いを評価する擦過性等が含められてもよい。
【0047】
上記作業により、各種類の各坪量の基材に対して適正網点面積率が決定され、図4の参照テーブルが作成される。参照テーブルデータ22は記憶部111に記憶され、インクジェットプリンタ1における画像形成処理に利用される。
【0048】
以上に説明したように、インクジェットプリンタ1では、各種類の紙における複数の坪量に対し適正網点面積率を個別に対応付けた参照テーブルが記憶部111にて記憶され、網点面積率決定部112が、対象基材9の種類および坪量を用いて参照テーブルを参照することにより、対象基材9上への補助層41の形成時における網点面積率が補助インク網点面積率として決定される。これにより、様々な基材9上に画像形成インクによる高精度なプリント画像を形成することができる。また、このようなインクジェットプリンタ1では、例えば、他のオフセット印刷機により同様の画像がオフセット印刷された複数の基材(オフセット印刷用の基材であり、その記録面はインクジェット適性を有していない。)に対して個別のプリント画像を高精度に形成することができる。
【0049】
インクジェットプリンタ1では、対象基材9の種類および坪量に合わせて補助インク網点面積率が決定されるため、常時100%の網点面積率にて補助層を形成する場合に比べて、コクリングの発生および補助インクの消費量(補助インクのコスト)を抑制することができる。また、対象基材9上のプリント画像を乾燥させる乾燥部を設ける際には、記録面上の水分が少なくなることにより低い電力にて乾燥部を駆動することが可能となり、乾燥部の消費電力を低減することができる。
【0050】
ところで、仮に同一の大きさの補助層および元画像を基材9上に形成する場合、インクジェットプリンタ1におけるインクの着弾精度や基材9の搬送精度等によっては、補助ヘッド123により形成される補助層と画像形成ヘッド122により形成されるプリント画像とを正確に重ねることが困難となり、補助ヘッド123と画像形成ヘッド122との間で画像(補助層)の形成位置にずれが生じることがある。この場合、基材9の種類によっては、プリント画像の外縁部においてインクが基材9の裏面側まで浸透して裏抜けが発生してしまう。
【0051】
これに対し、インクジェットプリンタ1では、網点面積率決定部112により元画像3よりもサイズが大きい補助層画像が生成されることにより、補助ヘッド123と画像形成ヘッド122との間で画像の形成位置にずれが生じる場合であっても、元画像3を示すプリント画像の全体を補助層41上に確実に形成することができ、裏抜けの発生を防止することができる。
【0052】
上記処理例では、基材9の記録面上においてプリント可能領域のおよそ全体に補助層41が形成されるが、図3の元画像3の画像領域31〜33に対応する基材9上の領域に対してのみ補助層41が形成されてよい。この場合、図2の網点面積率決定部112において、元画像データ21に含まれる領域情報211が参照され、元画像3の画像領域31〜33と(中央の)位置が同じ、かつ、当該画像領域31〜33よりもサイズが僅かに大きい領域において、階調値が補助インク網点面積率に相当する値にて一様となり、他の領域の階調値が0となる補助層画像データが生成される。そして、補助層画像データから生成される描画データに従って画像形成部12が制御されることにより、図7に示すように、画像領域31〜33に対応する基材9上の画像領域51〜53に対してのみ(正確には、画像領域51〜53を図7の縦方向および横方向に僅かに大きくした領域のみに)補助層41が形成される。
【0053】
以上のように、インクジェットプリンタ1では、画像形成インクにより画像が形成される領域として予め設定された画像領域51〜53のみに対して補助層41が形成されることにより、コクリングの発生および補助インクの消費量をさらに抑制することができる。また、各補助層41が画像領域51〜53の全体を包含する領域に形成されることにより、裏抜けの発生を防止することができる。
【0054】
次に、インクジェットプリンタ1における他の処理例について説明する。図8は、本処理例において準備される参照テーブルの一部を示す図である。図8の参照テーブルでは、図4の参照テーブルに対して、最上段に「画像の属性」と記す列が追加されている。当該列には、画像の属性である「絵柄」、「文字」、「バーコード」が記され、「適正網点面積率」の列には、画像の各属性に対応する適正網点面積率が記される。このように、図8の参照テーブルでは、各種類の各坪量の基材に形成される画像の複数の属性に対し適正網点面積率が個別に対応付けられる。なお、図8では、「紙の種類」として「新聞紙」のみが示されるが、実際には、「上質紙」や「コート紙」等の他の種類の紙の各坪量に関しても画像の各属性に対する適正網点面積率が定められている。また、参照テーブルにおいて、「絵柄」、「文字」、「バーコード」以外の属性が追加されてもよい。
【0055】
本処理例では、上述の参照テーブル作成作業と同様の手法にて図8の参照テーブルが準備される(図5:ステップS11)。すなわち、各種類の各坪量の複数の基材に対してそれぞれ複数の網点面積率にて補助層を形成し、当該補助層上に形成される複数の属性のプリント画像を観察することにより、画像の各属性に対する適正網点面積率が決定される。
【0056】
続いて、網点面積率決定部112では、対象基材9の種類および坪量に加えて、元画像データ21の領域情報211に含まれる各画像領域31〜33の属性を用いて図8の参照テーブルを参照することにより、画像領域31〜33に対して補助インク網点面積率が個別に決定される(ステップS12)。そして、各画像領域31〜33と位置が同じ、かつ、当該画像領域31〜33よりもサイズが僅かに大きい領域において、階調値が当該画像領域31〜33の補助インク網点面積率に相当する値にて一様となり、他の領域の階調値が0となる補助層画像データが生成される。
【0057】
インクジェットプリンタ1では、補助層画像データから生成される描画データに従って画像形成部12が制御されることにより、図9に示すように、元画像3の画像領域31〜33に対応する基材9上の画像領域51〜53に対して、当該画像領域31〜33に対して決定された補助インク網点面積率に応じて補助インクが吐出されて補助層41が形成される(ステップS13)。図9では、複数の補助層41に付す平行斜線の幅を相違させることにより、補助層41の形成時における網点面積率の相違を表している(後述の図11において同様)。
【0058】
また、元画像データ21から生成される描画データに従って画像形成部12が制御されることにより、各補助層41に対応する画像領域31〜33の画像が、当該補助層41上に画像形成インクにより形成される(ステップS14)。
【0059】
以上に説明したように、本処理例では、参照テーブルにおいて、各種類の各坪量の基材に形成される画像の複数の属性に対し適正網点面積率が個別に対応付けられる。また、対象基材9上には画像形成インクにより画像が形成される複数の画像領域51〜53が予め設定され、網点面積率決定部112において、対象基材9の種類および坪量、並びに、対象基材9の各画像領域51〜53に形成される画像の属性を用いて参照テーブルを参照することにより、当該画像領域51〜53に対する補助インク網点面積率が決定される。これにより、インクジェットプリンタ1では、各画像領域51〜53に対してプリント画像を高精度に形成することができる。また、各画像領域51〜53および当該画像領域51〜53の周囲のみに補助層41が形成されることにより、コクリングの発生および補助インクの消費量を抑制することができる。
【0060】
図8の参照テーブルを用いる処理例において、絵柄画像の画像領域51に対する補助層41の形成時における網点面積率が、絵柄画像に合わせて変更されてもよい。具体的には、網点面積率決定部112において補助層画像データを生成する際に、図3の元画像3において絵柄画像の画像領域31の各位置(画素)における全ての色成分(C、M、YおよびK)の階調値の和が求められる。また、図10中に符号L1を付す実線にて示すように、階調値の和と補助インク網点面積率との関係(以下、「変換カーブ」という。)が予め準備されており、絵柄画像の画像領域31の各位置に対して、階調値の和を用いて補助インク網点面積率が特定される。これにより、画像領域31の各位置に対応する位置の階調値が、特定された補助インク網点面積率に相当する値を有する補助層画像(すなわち、画像領域31に対応する領域が多値にて表現される補助層画像)が生成される。
【0061】
ここで、図10の変換カーブL1について説明する。変換カーブL1では、階調値の和が0からT1まで増大するのに従って補助インク網点面積率が漸次増大し、階調値の和がT1以上では補助インク網点面積率がR1にて一定となる。変換カーブL1を作成する際には、図8の参照テーブルにおいて、対象基材9の種類および坪量、並びに、絵柄画像から補助インク網点面積率R1が特定される。また、図10中にて符号L2を付す二点鎖線にて示すように、増加関数である基本カーブが実験により各種類の各坪量の基材に対して予め準備されており(図10では、0からT1までの階調値の和の範囲にて基本カーブL2と変換カーブL1とが重なっている。)、基本カーブL2において補助インク網点面積率がR1よりも大きくなる部分をR1に変更することにより、変換カーブL1が作成される。
【0062】
図11は、補助層画像データに基づいて対象基材9上に形成された補助層41を示す図であり、元画像3の画像領域31に対応する対象基材9上の画像領域51近傍のみを示している。また、図11では、画像領域51に形成される絵柄画像の概略を二点鎖線にて示している。既述のように、変換カーブL1は増加関数であり、変換カーブL1を用いて生成される補助層画像データに基づいて補助層41は形成される。したがって、風景写真における空を示す部分等、絵柄画像において階調値の和が比較的小さい部分A1(図11中にて幅が広い平行斜線を付す部分であり、対象基材9は白いため、比較的明るい部分となる。)では、補助層41の形成時における網点面積率が低くなり、当該部分A1に付与される補助インクの量が少なくなる。このような部分A1では、画像形成インクにより形成されるドットの数の密度が低いため、記録面上において画像形成インクの液滴が広がったとしてもプリント画像の質への影響は少ない。
【0063】
一方、絵柄画像において階調値の和が比較的大きい部分A2(図11中にて幅が狭い平行斜線を付す部分)では、補助層41の形成時における網点面積率は、補助インク網点面積率R1となる。したがって、当該部分A2におけるプリント画像の精度は確保される。
【0064】
以上に説明したように、図10の変換カーブL1を用いるインクジェットプリンタ1では、多階調の絵柄画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、絵柄画像の階調値の和が所定値未満となる部分において、補助インク網点面積率が低減される。これにより、プリント画像の精度を維持しつつ補助インクの消費量をさらに抑制することができる。また、コクリング等の発生も抑制されるため、高品質な印刷物を取得することができる。図10の変換カーブL1を用いる手法は、単色の絵柄画像を示す画像領域に対して用いられてもよく、この場合、絵柄画像の画像領域のうち、絵柄画像の階調値が所定値未満となる部分において、補助インク網点面積率が低減される。
【0065】
ところで、仮に、図10の基本カーブL2に従って補助層画像データを生成する場合、多色の絵柄画像では階調値の和、また、単色の絵柄画像では階調値が大きい部分(すなわち、高濃度部分)では、補助インクの付与量および画像形成インクの付与量の双方が多くなるため、コクリングや裏抜けが生じやすくなる。しかしながら、インクジェットプリンタ1では、対象基材9の種類および坪量、並びに、画像の属性にて特定される補助インク網点面積率R1を上限とする変換カーブL1が求められることにより、コクリングや裏抜けの発生を抑制することができる。
【0066】
また、図8の参照テーブルを用いる処理例において、文字画像やバーコード画像等、線部にて表現される2値画像(以下、「線画像」という。)の画像領域52,53に対して、線画像に従って変更した網点面積率にて補助層41が形成されてもよい。具体的には、網点面積率決定部112において補助層画像データを生成する際に、画像領域32,33における線画像の線部を太らせ処理(膨張処理)した画像が生成される。また、対象基材9の種類および坪量、並びに、当該画像領域32,33の画像の属性に基づいて補助インク網点面積率が決定され、太らせ処理後の線部に対応する部分の階調値が当該補助インク網点面積率に相当する値となり、線画像中の線部以外に対応する部分の階調値が0となる補助層画像データが生成される。
【0067】
図12は、補助層画像データに基づいて対象基材9上に形成された補助層41を示す図であり、元画像3の画像領域33に対応する対象基材9上の画像領域53近傍のみを示している。また、図12では、画像領域53に形成されるバーコード画像の概略を二点鎖線にて示している。上記補助層画像データに基づいて補助インクの吐出制御が行われることにより、図12に示すように、線画像の線部を膨張させた領域のみに補助層41が形成される。
【0068】
以上のように、好ましいインクジェットプリンタ1では、線画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、線画像の線部および当該線部の周囲を除く部分において、補助インク網点面積率が0とされる。これにより、インクジェットプリンタ1における基材の搬送精度が低く、補助ヘッド123と画像形成ヘッド122との間で画像の形成位置にずれが生じる場合であっても、線画像における線部を補助層41上に確実に形成することができ、裏抜けの発生を抑制することができる。また、コクリングの発生および補助インクの消費量をさらに抑制することができる。
【0069】
また、インクジェットプリンタ1では、太らせ処理後の線部に対応する部分の階調値が当該補助インク網点面積率に相当する値となり、線画像中の線部以外に対応する部分の階調値が当該値未満かつ0よりも大きい値となる補助層画像データが生成されてもよい。このようにして、線画像の画像領域のうち、線画像の線部および線部の周囲を除く部分において補助インク網点面積率を低減する場合であっても、コクリング等の発生および補助インクの消費量がある程度抑制される。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0071】
基材において坪量の相違による適正網点面積率の相違が小さい場合等には、図4の参照テーブルにおいて坪量が省略されてもよい(図8の参照テーブルにおいて同様)。すなわち、基材の複数の種類のそれぞれと、補助層の形成時における適正網点面積率とを対応付ける参照テーブルを準備し、対象基材の種類のみを用いて参照テーブルを参照して補助インク網点面積率を決定する場合であっても、ある程度高精度なプリント画像を形成することができる。インクジェットプリンタ1において、プリント画像をより高精度に形成するには、対象基材9の坪量、および/または、画像の属性も用いて補助インク網点面積率を決定することが好ましい。
【0072】
インクジェットプリンタ1におけるインクの着弾精度や基材9の搬送精度等によっては、補助層が各画像領域と同じサイズとされてよい。
【0073】
上記実施の形態では、水性のインク(補助インクおよび画像形成インク)が用いられるが、紫外線硬化性を有するインク等、他の種類のインクを用いて対象基材上に補助層が形成され、補助層上にプリント画像が形成されてもよい。他の種類のインクを用いる場合でも、当該種類のインクに合わせた参照テーブルを準備することにより、高精度なプリント画像を形成することができる。
【0074】
補助層および補助層上に形成されるプリント画像は必ずしもFMスクリーニングにて表現される必要はなく、AM(Amplitude Modulated)スクリーニング等にて表現されてもよい。また、描画データの生成時に、補助層画像データおよび元画像データに対して異なる閾値マトリクスが用いられてよく、描画データは、量子化誤差を周辺画素に分配する誤差拡散法等にて生成されてもよい。
【0075】
インクジェットプリンタ1においてプリント画像が形成される基材は紙には限定されず、プラスチックフィルムやガラス板、あるいは、布や金属板等であってもよい。参照テーブルを用いて補助インク網点面積率を決定するインクジェットプリンタ1では、このような基材上においても高精度なプリント画像を形成することができる。
【0076】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0077】
1 インクジェットプリンタ
9 基材
12 画像形成部
22 参照テーブルデータ
41 補助層
51〜53 画像領域
111 記憶部
112 網点面積率決定部
S11〜S14 ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタであって、
画像形成インクの液滴による基材上におけるドットの描画状態を変更する補助インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記基材上に補助層を形成し、前記画像形成インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記補助層上に画像を形成する画像形成部と、
基材の複数の種類のそれぞれと、前記補助層の形成時における適正網点面積率とを対応付ける参照テーブルを記憶する記憶部と、
画像が形成される対象基材の種類を用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記対象基材上への前記補助層の形成時における網点面積率を補助インク網点面積率として決定する網点面積率決定部と、
を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、
前記基材が紙であり、
前記参照テーブルにおいて、各種類の紙における複数の坪量に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、
前記網点面積率決定部が、前記対象基材となる紙の坪量も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率を決定することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェットプリンタであって、
前記画像形成インクにより画像が形成される領域として予め設定された画像領域のみに対して前記補助層が形成されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のインクジェットプリンタであって、
前記参照テーブルにおいて、各種類の基材に形成される画像の複数の属性に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、
前記網点面積率決定部が、前記対象基材に形成される画像の属性も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率を決定することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項5】
請求項4に記載のインクジェットプリンタであって、
前記対象基材上に前記画像形成インクにより画像が形成される複数の画像領域が予め設定されており、
前記網点面積率決定部が、各画像領域に形成される画像の属性を用いて、前記各画像領域に対する前記補助インク網点面積率を決定することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェットプリンタであって、
前記各画像領域および前記各画像領域の周囲のみに前記補助層が形成されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、
多階調の絵柄画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記絵柄画像の階調値が所定値未満となる部分において、前記補助インク網点面積率が低減されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項8】
請求項4ないし7のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、
線画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記線画像の線部および前記線部の周囲を除く部分において、前記補助インク網点面積率が低減されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項9】
インクジェットプリンタにおける画像形成方法であって、
前記インクジェットプリンタが、画像形成インクの液滴による基材上におけるドットの描画状態を変更する補助インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記基材上に補助層を形成し、前記画像形成インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記補助層上に画像を形成する画像形成部を備え、
前記画像形成方法が、
a)基材の複数の種類のそれぞれと、前記補助層の形成時における適正網点面積率とを対応付ける参照テーブルを準備する工程と、
b)画像が形成される対象基材の種類を用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記対象基材上への前記補助層の形成時における網点面積率を補助インク網点面積率として決定する工程と、
c)前記画像形成部により、前記補助インク網点面積率に従って前記対象基材上に前記補助層を形成するとともに、前記補助層上に前記画像形成インクによる画像を形成する工程と、
を備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
請求項9に記載の画像形成方法であって、
前記基材が紙であり、
前記参照テーブルにおいて、各種類の紙における複数の坪量に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、
前記b)工程において、前記対象基材となる紙の坪量も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率が決定されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の画像形成方法であって、
前記c)工程において、前記画像形成インクにより画像が形成される領域として予め設定された画像領域のみに対して前記補助層が形成されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項12】
請求項9または10に記載の画像形成方法であって、
前記参照テーブルにおいて、各種類の基材に形成される画像の複数の属性に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、
前記b)工程において、前記対象基材に形成される画像の属性も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率が決定されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
請求項12に記載の画像形成方法であって、
前記対象基材上に前記画像形成インクにより画像が形成される複数の画像領域が予め設定されており、
前記b)工程において、各画像領域に形成される画像の属性を用いて、前記各画像領域に対する前記補助インク網点面積率が決定されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項14】
請求項13に記載の画像形成方法であって、
前記c)工程において、前記各画像領域および前記各画像領域の周囲のみに前記補助層が形成されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項15】
請求項12ないし14のいずれかに記載の画像形成方法であって、
多階調の絵柄画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記絵柄画像の階調値が所定値未満となる部分において、前記補助インク網点面積率が低減されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項16】
請求項12ないし15のいずれかに記載の画像形成方法であって、
線画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記線画像の線部および前記線部の周囲を除く部分において、前記補助インク網点面積率が低減されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項1】
インクジェットプリンタであって、
画像形成インクの液滴による基材上におけるドットの描画状態を変更する補助インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記基材上に補助層を形成し、前記画像形成インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記補助層上に画像を形成する画像形成部と、
基材の複数の種類のそれぞれと、前記補助層の形成時における適正網点面積率とを対応付ける参照テーブルを記憶する記憶部と、
画像が形成される対象基材の種類を用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記対象基材上への前記補助層の形成時における網点面積率を補助インク網点面積率として決定する網点面積率決定部と、
を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、
前記基材が紙であり、
前記参照テーブルにおいて、各種類の紙における複数の坪量に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、
前記網点面積率決定部が、前記対象基材となる紙の坪量も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率を決定することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェットプリンタであって、
前記画像形成インクにより画像が形成される領域として予め設定された画像領域のみに対して前記補助層が形成されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のインクジェットプリンタであって、
前記参照テーブルにおいて、各種類の基材に形成される画像の複数の属性に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、
前記網点面積率決定部が、前記対象基材に形成される画像の属性も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率を決定することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項5】
請求項4に記載のインクジェットプリンタであって、
前記対象基材上に前記画像形成インクにより画像が形成される複数の画像領域が予め設定されており、
前記網点面積率決定部が、各画像領域に形成される画像の属性を用いて、前記各画像領域に対する前記補助インク網点面積率を決定することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェットプリンタであって、
前記各画像領域および前記各画像領域の周囲のみに前記補助層が形成されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、
多階調の絵柄画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記絵柄画像の階調値が所定値未満となる部分において、前記補助インク網点面積率が低減されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項8】
請求項4ないし7のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、
線画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記線画像の線部および前記線部の周囲を除く部分において、前記補助インク網点面積率が低減されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項9】
インクジェットプリンタにおける画像形成方法であって、
前記インクジェットプリンタが、画像形成インクの液滴による基材上におけるドットの描画状態を変更する補助インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記基材上に補助層を形成し、前記画像形成インクの液滴を前記基材に向けて吐出することにより、前記補助層上に画像を形成する画像形成部を備え、
前記画像形成方法が、
a)基材の複数の種類のそれぞれと、前記補助層の形成時における適正網点面積率とを対応付ける参照テーブルを準備する工程と、
b)画像が形成される対象基材の種類を用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記対象基材上への前記補助層の形成時における網点面積率を補助インク網点面積率として決定する工程と、
c)前記画像形成部により、前記補助インク網点面積率に従って前記対象基材上に前記補助層を形成するとともに、前記補助層上に前記画像形成インクによる画像を形成する工程と、
を備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
請求項9に記載の画像形成方法であって、
前記基材が紙であり、
前記参照テーブルにおいて、各種類の紙における複数の坪量に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、
前記b)工程において、前記対象基材となる紙の坪量も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率が決定されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の画像形成方法であって、
前記c)工程において、前記画像形成インクにより画像が形成される領域として予め設定された画像領域のみに対して前記補助層が形成されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項12】
請求項9または10に記載の画像形成方法であって、
前記参照テーブルにおいて、各種類の基材に形成される画像の複数の属性に対し前記適正網点面積率が個別に対応付けられており、
前記b)工程において、前記対象基材に形成される画像の属性も用いて前記参照テーブルを参照することにより、前記補助インク網点面積率が決定されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
請求項12に記載の画像形成方法であって、
前記対象基材上に前記画像形成インクにより画像が形成される複数の画像領域が予め設定されており、
前記b)工程において、各画像領域に形成される画像の属性を用いて、前記各画像領域に対する前記補助インク網点面積率が決定されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項14】
請求項13に記載の画像形成方法であって、
前記c)工程において、前記各画像領域および前記各画像領域の周囲のみに前記補助層が形成されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項15】
請求項12ないし14のいずれかに記載の画像形成方法であって、
多階調の絵柄画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記絵柄画像の階調値が所定値未満となる部分において、前記補助インク網点面積率が低減されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項16】
請求項12ないし15のいずれかに記載の画像形成方法であって、
線画像が形成される領域として設定された画像領域のうち、前記線画像の線部および前記線部の周囲を除く部分において、前記補助インク網点面積率が低減されることを特徴とする画像形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−158015(P2012−158015A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17824(P2011−17824)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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