説明

インクジェットプリンター用油性インク

【課題】顔料タイプのピエゾ式インクジェットプリンター用油性インクにおいて、印字中にプリンターノズルにインク詰まりがなく、インクの吐出性と吐出回復性が優れ、また、被記録材料に対する定着性および乾燥性が優れたインクを提供すること。
【解決手段】定着樹脂と顔料と溶媒とを含有し、上記溶媒が、一般式(1)で表わされる化合物と環状エステルとを含有し、該環状エステルの量が一般式(1)で表わされる化合物100質量部当たり1〜60質量部であることを特徴とするピエゾ式インクジェットプリンター用油性インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料タイプのピエゾ式インクジェットプリンター用油性インク(以下単に「インク」という場合がある)に関し、詳しくは、プリンターノズルにインク詰まりがなく、インクの吐出性と吐出回復性が優れ、また、被記録材料に対するインクの定着性および乾燥性が優れたインクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録方式には、連続的に吐出しているインクを選択的に被着体に着弾させるコンティニュアス方式および選択的にインクを吐出させるドロップオンデマンド方式があるが、近年、ドロップオンデマンド方式のプリンターが主流となっている。ドロップオンデマンド方式プリンターには、インクを急激に加熱し発生した泡(バブル)によりインクを吐出させるバブル方式と、電圧を印加すると変形するセラミック(ピエゾ)を使用してインクを吐出させるピエゾ式とがある。
【0003】
従来の油性インクを使用する上記のピエゾ式は、ピエゾ素子をポンプとして使用して、電気エネルギーを機械エネルギーに変換してインクを吐出する方式であるため、基本的には、種々のインク材料を吐出することができる。しかしながら、この方式は、信号の有無によって、インクを吐出するために、インクの吐出を中断しているノズル端面では、インク中の溶剤が蒸発することによって、インク中の固形成分の析出によるインクの目詰まり、あるいはインクの濃縮に伴うノズル内でのインクの粘度上昇によりインクの吐出が阻害されるため、小まめなメンテナンスが必要であった。とくに、屋外用の印刷物の作成に使用するインクは、印刷基材としてポリ塩化ビニルシートなどのプラスチックフィルムである非吸収基材を使用するために、比較的、揮発性の高い溶剤をインク溶媒として使用しており、このために、インクの乾燥が速く、インクの目詰まりが顕著に発生する。
【0004】
また、インク中に溶存する空気が一定量を超える場合、ピエゾ素子の高周波振動によるキャビテーションの発生に伴って、プリンターノズル中に発生する微小の気泡が圧力を吸収して、駆動応答性が低下したりする。また、外気温度変化に伴うノズル内での気泡の発生により吐出異常を誘引することがある。
【0005】
上述のことから、従来の油性インクの代わりに高沸点溶剤を使用したインクジェット顔料インク(特許文献1)が提案されている。しかしながら、特許文献1に開示のインクでは、非水系有機溶媒として、グリコールエーテルエステル類のみを単独または2種以上混合して、保存中のインクの増粘や顔料凝集を起こさせない目的で使用しているために、インク中の樹脂などの固形成分の溶剤への溶解性は改良されているが、前述のようなピエゾ式インクジェットプリンターに使用した場合に、十分なインクの吐出性が得られず、また、印字を一時中断して再度印字を継続した場合、インク吐出回復性が低下して、安定した品質の印字物が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−96370公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、顔料タイプのピエゾ式インクジェットプリンター用油性インクにおいて、印字中にプリンターノズルにインク詰まりがなく、インクの吐出性と吐出回復性が優れ、また、被記録材料に対する定着性および乾燥性が優れたインクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、定着樹脂と顔料と溶媒とを含有し、上記溶媒が、下記一般式(1)で表わされる化合物(以下「化合物A」という)と環状エステルとを含有し、該環状エステルの量が下記化合物A100質量部当たり1〜60質量部であることを特徴とするピエゾ式インクジェットプリンター用油性インクを提供する。

(上記一般式(1)中のX1はアルキル基を、X2は水素原子またはアルキル基を、nは1〜4の整数を表わす。)
【0009】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記のインクが従来の溶媒を使用した顔料タイプの油性インクに比べて、とくに、ピエゾ式インクジェットプリンターに使用した場合に、印字中にプリンターノズル端面にインク中の固形分の析出によるインクの目詰まりがなく、また、印字を一度中断して再度印字を続行した場合にもインク吐出回復性が優れており、さらに、インクの濃縮に伴うノズル内でのインクの粘度上昇によるインク吐出性の低下がなく、被記録材料に対するインクの定着性および乾燥性が優れたインクであることを見出した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、顔料タイプの油性インクにおける溶媒を特定の混合物溶媒に置き換えて使用することにより、とくに、ピエゾ式インクジェットプリンターで印字した場合に、ノズル端面にインク中の固形分の析出や、ノズル内においてインク濃縮によるインクの粘度上昇がなく、プリンターノズルからのインクの吐出および吐出回復性、被記録材料に対するインクの定着性および乾燥性が優れたインクが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明を主として特徴づける溶媒は、化合物Aと環状エステルとの混合物であり、該環状エステルは、化合物A100質量部当たり1〜60質量部の割合である。化合物Aおよび環状エステルの各々単独を溶媒とするインクでは、印字に際してプリンターノズルからのインクの吐出性、被記録材料に対する定着性、乾燥性の効果が十分でない。本発明では、これらの化合物Aと環状エステルとを適当な割合でインクの溶媒として混合使用することで、該インクでピエゾ式インクジェットプリンターを使用して印字する場合に、ノズル端面にインク中の固形分の析出や、ノズル内においてインク濃縮によるインクの粘度上昇を抑え、ノズルに対するインクの目詰まり防止およびインクの吐出や吐出回復性を良好にする。
【0012】
前記の環状ステルの配合量が多過ぎる場合には、得られるインクの顔料分散性や保存安定性が低下し、被記録材料の種類によってはインクのはじき現象が発生する。一方、環状エステルの配合量が少な過ぎる場合には、ピエゾ式インクジェットプリンターのノズル端面に、インク中の固形分の析出やノズル内においてインク濃縮によるインクの粘度上昇を誘引し、ノズルに対するインクの目詰まり防止性とインク吐出および吐出回復性が著しく低下する。
【0013】
上記の化合物Aとしては、例えば、エチレングリコールのモノメチルエーテルアセテート、モノエチルエーテルアセテート、およびモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールのモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールのn−プロピルエーテルアセテート、およびn−ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールのエチルエーテルアセテート、およびn−ブチルエーテルアセテートなど、とくに好ましくはエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0014】
また、前記の環状エステルは、とくにピエゾ式インクジェットプリンターにおいて、化合物A単独では十分に満足した結果が得られない、ノズル端面でのインク中の固形分の析出やノズル内においてインク濃縮によるインクの粘度上昇を抑制し、インクの吐出および吐出回復性をさらに向上させる目的で使用する。
【0015】
上記の環状エステルは、エステル官能基を環内に含む常温にて液体のβ−ラクトン類、γ−ラクトン類、δ−ラクトン類、ε−ラクトン類などの環状エステル化合物、好ましくは下記一般式(2)で表わされる環状エステル化合物が挙げられる。

(上記一般式(2)中のX3およびX4は、水素原子または炭素数1〜7のアルキル基またはアルケニル基を、mは1〜3の整数を表わす。)
【0016】
上記の一般式(2)で表わされる環状エステルとしては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトン、γ−ラウロラクトンなどのγ−ラクトン、δ−バレロラクトンなどのδ−ラクトンおよびε−カプロラクトンなどのε−ラクトンが挙げられる。上記ラクトンの内で、とくに好ましくはγ−ブチロラクトンおよび/またはγ−バレロラクトンが挙げられる。
【0017】
また、前記の化合物Aと環状エステルとの総量は、全インク中において80〜98質量%を占める量であることが好ましい。上記総量が上記上限を超える場合には、得られるインクの印字適性が低下し、一方、総量が上記下限未満の場合にはインクの粘度上昇を誘引し、ノズルからのインクの吐出性が低下する。
【0018】
また、前記の化合物Aおよび環状エステルの沸点が130〜250℃のものが好ましく使用される。上記の沸点が高すぎる場合には、インクの乾燥性が低下し、印字物においてブロッキングなどを誘引する。一方、沸点が低過ぎる場合には、得られるインクの乾燥が速過ぎてプリンターノズルのインクの詰まりが発生するなど印字適性が低下する。
【0019】
また、本発明で使用する定着樹脂は、着色剤である顔料を印刷基材に定着させる非水溶性樹脂であり、前記の化合物Aおよび環状エステルに相溶する公知の天然または合成樹脂であり、本発明の目的を妨げないものであればいずれも使用することができる。上記の定着樹脂としては、アクリル系樹脂;塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ブチラール樹脂などのビニル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;繊維素系樹脂;エポキシ系樹脂;ロジン変性フェノール樹脂などのロジン誘導体;石油系樹脂など、好ましくはアクリル系樹脂および/または塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合樹脂が挙げられる。
【0020】
上記のアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリレート([(メタ)アクリレート]とはアクリレートおよびメタクリレート双方を意味する)からなる重合体およびその共重合体などが挙げられる。上記の(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル、プロピル、またはブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ビロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。上記の重合体および共重合体としては、具体的には、例えば、メチルメタクリレート重合体、メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリレート共重合体、その他、(メタ)アクリレートを主成分として、これらに、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリルアミド、ビニルトルエン、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシエチルなどのコモノマーの共重合体など、およびそれらの混合物が挙げられる。上記のアクリル系樹脂の一例としては、ロームアンドハース社から[パラロイドB−66]の商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0021】
また、前記の塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合樹脂としては、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体など、およびそれらの混合物が挙げられる。上記の塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合樹脂の一例としては、日本ユニオンカーバイト社から[VYHH]の商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0022】
また、前記のアクリル系樹脂および塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合樹脂は、各々単独でも、または、各々の樹脂を併用することができる。上記樹脂を併用する場合、その配合割合はアクリル系樹脂/(塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合樹脂)=1〜9/1(質量比)が好ましい。これらの定着樹脂はインク全量中で1〜10質量%の割合で使用することが好ましい。
【0023】
また、本発明のインクに使用する顔料としては、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系、カーボンブラック、ピランスロンオレンジ、ピランスロンレッドなどのピランスロン系、パーマネントレッド2B、ピグメントスカーレット、リトールレッドなどの溶性アゾ顔料、ベンジジンエロー、ハンザエロー、トルイジンレッドなどの不溶性アゾ顔料、キノフタロンエローなどのキノフタロン系、チオインジゴ系、ベンズイミダゾロン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、キナクリドン系などの有機顔料;酸化チタン、群青、紺青、弁柄、亜鉛華、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機顔料などが挙げられる。これらの顔料はインク全量中で0.5〜8質量%の割合で使用することが好ましい。
【0024】
また、本発明のインクでは、必要に応じて、高分子分散剤、界面活性剤、可塑剤、帯電防止剤、粘度調整剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を本発明の目的達成を妨げない範囲において添加して使用することができる。上記の高分子分散剤としては、例えば、主鎖が、ポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカブロラクトン系などからなっており、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基などの極性基を有する分散剤など、好ましくはポリエステル系高分子分散剤が挙げられる。
【0025】
本発明のインクは、上記の各々の成分を公知の方法で均一に混練分散して調製する。その調製方法は、例えば、一例として、前記の溶媒中に前記の分散剤と顔料とを投入して0.3mmのジルコニアビーズにて3時間均一に混練分散して、顔料分散液を調製し、そこに前記の定着樹脂と溶媒とを加えインクを調製する。好ましくはインク粘度が25℃において8〜15mPa・sおよび引火点が60℃以上になるように調製される。なお、インク粘度は、日本シーベルヘグナー製の落球式粘度計(AMVn)にて測定した値である。上記のインク粘度が高すぎると、プリンターノズルにインク詰まりが発生しやすくなり、粘度を下げるためにヘッドを加熱しなければならなくなり、このことはインク中の溶媒が蒸発しやすくなり、さらにインク詰まりが増大する。一方、インク粘度が低過ぎる場合には印字適性が低下する。上記のインクによるポリ塩化ビニルフィルムなどのプラスチックフィルムなどの公知の被記録材料への印字は、通常のピエゾ式インクジェットプリンターを使用して印字することができる。
【実施例】
【0026】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。文中「部」または「%」とあるのはとくに断りのない限り質量基準である。なお、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0027】
(実施例1〜4)
下記の定着樹脂a、顔料b、および溶媒cを使用して表1のように各々を配合して、インク粘度が25℃において8〜15mPa・sになるように均一に混練分散して本発明のインクR1〜R4を調製した。なお、表1における定着樹脂a、顔料bおよび溶媒cは、下記の通りである。
・定着樹脂a:
a1=アクリル系樹脂(ロームアンドハース社製、パラロイドB−66)
a2=ビニル系樹脂(日本ユニオンカーバイト社製、VYHH)
・顔料b:
フタロシアニンブルー
・溶媒c:
c1=エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
c2=γ−ブチロラクトン
c3=γ−バレロラクトン
【0028】

なお、表中の数値は部数である。
【0029】
(比較例1〜3)
[比較例1]
実施例2におけるγ−バレロラクトンを使用せず、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート59.5部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート89.5部に代える以外は実施例2と同様にして比較例のインクS1を調製した。
【0030】
[比較例2]
実施例2におけるγ−バレロラクトンをシクロヘキサノンに代える以外は実施例2と同様にして比較例のインクS2を調製した。
【0031】
[比較例3]
実施例3におけるγ−ブチロラクトンをシクロヘキサノンに代える以外は実施例3と同様にして比較例のインクS3を調製した。
【0032】
上記で得られた各々のインクを使用して、ピエゾ式のSPECTRA NOVAの256ヘッドノズル搭載の吐出評価試験機にて、印字基材として200μmのポリ塩化ビニルフィルム(カンボウプラス社製、WIDEFLEX-PL4)に印字し、印字時のインク吐出性、インクの定着性および乾燥性に関して下記の測定方法にて評価した。評価結果を表2示す。
【0033】
(インク吐出性)
数秒間印字した後、印字を停止してヘッドを放置し、再度印字を開始し、印字直後のヘッドノズルからインクが直進せず曲がって吐出されるか、あるいは吐出不能となるインク吐出不良のノズルが5個以上発現するまでのヘッドの放置時間をもって評価した。
評価点
A:インク吐出不良のノズルが5個以上発現するまでのヘッドの放置時間が5分以上である。
B:インク吐出不良のノズルが5個以上発現するまでのヘッドの放置時間が2分以上5分未満である。
C:インク吐出不良のノズルが5個以上発現するまでのヘッドの放置時間が2分未満である。
【0034】
(インクの定着性)
ベタ印刷および文字印刷を行い、印刷直後に印刷面を指でこすり、印刷面のインク汚れ状態およびインクの剥離状態を肉眼にて評価した。
評価点
A:印刷面にインクの汚れおよび剥離現象が認められない。
B:印刷面にインクの汚れおよび剥離現象が認められる。
【0035】
(インク乾燥性)
印字後、印刷面の指触乾燥の時間を測定し、乾燥性を下記の基準で評価した。 A:指触乾燥の時間が3分未満である。
B:指触乾燥の時間が3分以上である。
【0036】

【0037】
上記評価結果のインク吐出性から、印字を繰り返して行っても、実用上、ノズルからのインク吐出不良が発生しにくく、プリンターヘッドを放置しても吐出回復性が良好であり、また、インクの定着性から被記録材料に対するインクの密着性が優れており、また、インク乾燥性からは連続印字しても、印字物のブロッキングなどが発生せず安定した印字が実施されることが実証されている。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のインクによれば、連続印字してもプリンターヘッドノズルへのインクの詰まりがなく、また、印字間でヘッドを放置してもインク吐出回復性が良好であるなど、インク吐出性やインクの定着性およびインク乾燥性が優れており、ピエゾ式インクジェットプリンター用のインクとして有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着樹脂と顔料と溶媒とを含有し、上記溶媒が、下記一般式(1)で表わされる化合物と環状エステルとを含有し、該環状エステルの量が下記一般式(1)で表わされる化合物100質量部当たり1〜60質量部であることを特徴とするピエゾ式インクジェットプリンター用油性インク。

(上記一般式(1)中のX1はアルキル基を、X2は水素原子またはアルキル基を、nは1〜4の整数を表わす。)
【請求項2】
前記の環状エステルが、下記一般式(2)で表わされる化合物である請求項1に記載のインク。

(上記一般式(2)中のX3およびX4は、水素原子または炭素数1〜7のアルキル基またはアルケニル基を、mは1〜3の整数を表わす。)
【請求項3】
前記の一般式(1)で表わされる化合物と前記の環状エステルとの総量が、全インク中において80〜98質量%を占める請求項1に記載のインク。
【請求項4】
前記の一般式(1)で表わされる化合物が、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートである請求項1に記載のインク。
【請求項5】
前記の環状エステルが、γ−ブチロラクトンおよび/またはγ−バレロラクトンである請求項1に記載のインク。
【請求項6】
前記の一般式(1)で表わされる化合物および前記の一般式(2)で表わされる化合物の沸点が、130℃〜250℃である請求項1または2に記載のインク。
【請求項7】
前記の定着樹脂が、アクリル系樹脂および/または塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合樹脂である請求項1に記載のインク。
【請求項8】
前記の定着樹脂が、アクリル系樹脂と塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合樹脂との混合物であり、アクリル系樹脂/(塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合樹脂)=1〜9/1(質量比)である請求項1に記載のインク。
【請求項9】
粘度が、25℃において8〜15mPa・sである請求項1に記載のインク。
【請求項10】
引火点が60℃以上である請求項1に記載のインク。

【公開番号】特開2012−126908(P2012−126908A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−19446(P2012−19446)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【分割の表示】特願2004−5631(P2004−5631)の分割
【原出願日】平成16年1月13日(2004.1.13)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】