説明

インクジェットプリンタ用インク供給装置

【課題】良好なインクの補給を可能にするとともに、貯留するインクの劣化を防止する。
【解決手段】入口部分を有するインクタンク300と、インクタンク300の入口部分に設けられ、当該インクタンク300へ補給されるインクを受けるインク受け部301と、インク受け部301とインクタンク300の内部とを連通するインク導入管302と、インクタンク300に貯留されるインク量を検知可能な液面センサ303,304と、を備え、インクタンク300は内部を外気と遮断可能に構成され、インク受け部301はインク受け口301aがインク導入管302との連通口301bよりも大口径に形成され、インクタンク300にインクが補給されるときに、インクタンク300の内部で開口するインク導入管302のインク出口302aが、液面センサ303,304に検知されるインク量におけるインクの液面よりも下方に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ用インク供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡易かつ安価に画像を記録できる画像記録手段として、インクジェット方式を用いた画像記録装置が知られている。このインクジェット方式を用いた画像記録装置(以下、インクジェット記録装置という)は、記録ヘッドのノズルからインクを微小な液滴として記録媒体へ吐出することにより所望の画像を記録するものである。
【0003】
ところで、インクジェット記録装置では、一般に、ハンドリング可能な大きさのインクカートリッジが装置本体に着脱自在に設けられ、このインクカートリッジから記録ヘッドへインクが供給される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところが、特に産業用に用いられるような、大量にインクを消費するインクジェット記録装置においては、上記のインクカートリッジではインクの容量が不足してしまう。そのため、このようなインクジェット記録装置は、充分な容量のインクタンクを備えており、このインクタンク内に大量のインクを貯留できるようになっている。
【特許文献1】特開2007−245451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクタンクにインクを貯留させると、主に当該インクタンクへのインクの補給を可能とする構造によりインクと外気とが触れやすくなるために、当該インクが劣化しやすくなってしまう。
【0006】
また、インクタンクへインクを補給する際、大量のインクが勢いよく注がれるために、インクが空気を含んで泡立ち、ノズルの吐出不良を発生させやすくしてしまうほか、インク流によってインク量を検知するセンサが誤作動してしまうことがある。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、良好なインクの補給を可能にするとともに、貯留するインクの劣化を防止することのできるインクジェットプリンタ用インク供給装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
インクを吐出して画像を記録する装置に対し、当該インクを供給するインクジェットプリンタ用インク供給装置であって、
インクを貯留するとともに、インクが補給されるための入口部分を有するインクタンクと、
前記インクタンクの前記入口部分に設けられ、当該インクタンクへ補給されるインクを受けるインク受け部と、
前記インク受け部と前記インクタンクの内部とを連通するインク導入管と、
前記インクタンクに貯留されるインク量を検知可能なインク量検知手段と、
を備え、
前記インクタンクは、内部を外気と遮断可能に構成され、
前記インク受け部は、インク受け口が前記インク導入管との連通口よりも大口径に形成され、
前記インクタンクにインクが補給されるときに、前記インクタンクの内部で開口する前記インク導入管のインク出口が、前記インク量検知手段に検知されるインク量におけるインクの液面よりも下方に位置することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットプリンタ用インク供給装置であって、
前記インク量検知手段は、前記インクタンクに貯留されるインクが所定量未満となる要補給状態におけるインク量を少なくとも検知可能に構成され、
前記インク導入管は、前記インク出口が前記要補給状態におけるインクの液面よりも下方に配設されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ用インク供給装置であって、
前記インク受け部は、漏斗状に形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ用インク供給装置であって、
前記インク受け部は、前記インクタンクに当接支持されることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ用インク供給装置であって、
前記インクタンクの内部と外気とを連通可能な空気連通弁を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ用インク供給装置であって、
前記インク受け部は、前記インクタンクの内部への異物の混入を防止するフィルタ手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、インクタンクは、内部を外気と遮断可能に構成されるので、貯留するインクが外気と触れるのを防ぎ、当該インクの劣化を防止することができる。
【0015】
また、インク受け部は、インク受け口がインク導入管との連通口よりも大口径に形成されるので、インクタンクへ補給されるインクは、直接インク導入管へ注入されずに、確実にインク受け部で受けられて注入速度が緩やかにされる。同時に、インクタンクへインクが補給されるときには、インク導入管のインク出口が、インク量検知手段に検知されるインク量におけるインクの液面よりも下方に位置するので、インクタンクへ補給されるインクは、貯留するインクの液面を勢いよく打ち続けることなく、インク導入管を通じて当該インク中へ滑らかに注入される。これらにより、インクの泡立ちやセンサの誤作動を防止して、良好なインクの補給が可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、インクタンクに貯留されるインクが所定量未満となる要補給状態におけるインク量を検知可能であるとともに、この要補給状態におけるインクの液面よりも下方にインク導入管のインク出口が配設されるので、例えばインクタンク内のインクの残量が極めて少ない状態においても、インクタンクへ補給されるインクは、この残り少ないインク中へインク導入管を通じて確実に滑らかに注入される。したがって、インクの泡立ちやセンサの誤作動を確実に防止して、一層良好なインクの補給が可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、インク受け部は漏斗状に形成されるので、インクタンクへインクを補給する際にインク受け部で受けられたインクは、滑らかに減速されつつインク導入管へ導かれる。したがって、インクの泡立ちやセンサの誤作動を防止して、一層良好なインクの補給が可能となる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、インク受け部はインクタンクに当接支持され、つまり固定されていないので、インクタンクへインクを補給する際に、補給したインクによって押し出されるインクタンク内の空気は、インク受け部とインクタンクとの間隙を通じて、或いはインク受け部を持ち上げて、インクタンク外へ逃げることができる。したがって、インクタンク内を閉塞させることなく、円滑にインクの補給を行うことができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、インクタンクの内部と外気とを連通可能な空気連通弁を備えるので、インクタンクへインクを補給する際に当該空気連通弁を開放することにより、請求項4と同様の効果を奏することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、インク受け部はフィルタ手段を有するので、インクタンクへインクを補給する際に、インクタンクの内部への異物の混入を防止できるとともに、補給されるインクの注入速度を当該フィルタ手段によって一層緩やかにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0022】
本実施の形態に係るインクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)1は、図1に示すように、主に、装置本体2と、インクラック3とを備えている。
【0023】
装置本体2は、図示しない記録媒体を搬送する無端状の搬送ベルト21と、搬送ベルト21上方に配設される略筐体状のキャリッジ22とを備えている。このうち、キャリッジ22には、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック等の8色の各インクを吐出する8基の記録ヘッド(図示せず)が搭載されている。装置本体2は、キャリッジ22を搬送ベルト21の搬送方向と直交する方向へ走査させつつ、各記録ヘッドのノズルから搬送ベルト21上の記録媒体に対して各色のインクを吐出させることにより、記録媒体上へ所定の画像を記録できるように構成されている。
【0024】
インクラック3は、本発明におけるインクジェットプリンタ用インク供給装置であり、図2に示すように、略筐体状に形成されている。当該インクラック3は、装置本体2で消費されるインク量に対し十分に多い量の上記8色のインクを貯留するとともに、装置本体2の各記録ヘッドへ各色のインクを供給するものである。
【0025】
このインクラック3は、図3に示すように、主に、インクタンクユニット30と、送液ポンプ31と、脱気モジュールユニット32と、中間タンク33と、供給ポンプ34とを備えている。なお、これらのインクラック3の構成要素は、後述する脱気モジュールユニット32の真空ポンプ321及び真空トラップ322を除き、各色のインクに対応して計8セット設けられている。
【0026】
インクタンクユニット30は、インクを貯留するタンクである。また、インクタンクユニット30は、後述する構成により外部からのインクの補給が可能になっている。
【0027】
送液ポンプ31は、入口が第1供給管350を通じてインクタンクユニット30と連通され、出口が第2供給管351を通じて脱気モジュールユニット32の脱気モジュール320と連通されている。この送液ポンプ31は、インクタンクユニット30に貯留されるインクを吸い上げ、脱気モジュール320を介して中間タンク33へ送液する。また、第1供給管350の中途部分には送液弁36が配設され、当該第1供給管350の遮断が可能になっている。
【0028】
脱気モジュールユニット32は、主に、脱気モジュール320と、脱気モジュール320内を減圧する真空ポンプ321と、脱気モジュール320と真空ポンプ321との間に配設されて脱気モジュール320から吸引されるインクを溜める真空トラップ322とを備えており、送液されるインクの脱気を行う。
【0029】
このうち、脱気モジュール320は、内部に脱気フィルタ3201を備えるとともに、第3供給管352を通じて中間タンク33と連通されている。脱気フィルタ3201は、真空ポンプ321によって真空圧近傍の圧力に保持された脱気モジュール320内部において、通過するインクを脱気可能なフィルタである。このような構成により、脱気モジュール320は、第2供給管351及び第3供給管352を通じて送液ポンプ31から中間タンク33へ送液されるインクに対し、脱気フィルタ3201による脱気を行うようになっている。
【0030】
真空ポンプ321と真空トラップ322とを連通する配管の中途部分には、真空トラップ322内の圧力を検知するとともに、真空ポンプ321と電気的に接続された圧力検知スイッチ323が配設されている。この圧力検知スイッチ323は、真空トラップ322内の圧力が設定上限圧力より高くなったときに、真空ポンプ321を駆動させて真空トラップ322(脱気モジュール320)内を減圧するとともに、真空トラップ322内の圧力が設定下限圧力より低くなったときに、この真空ポンプ321の駆動を停止させる。これにより、真空トラップ322(脱気モジュール320)内の圧力は、設定された一定範囲の真空圧近傍の圧力に保持される。
【0031】
また、真空トラップ322には、リーク弁324を介して当該真空トラップ322内と外気とを連通するリーク管325が設けられている。このリーク管325は、インクラック3の電源をOFFにしたときにリーク弁324が開かれることで、脱気モジュール320及び真空トラップ322を含む真空経路内の圧力を大気圧に戻すようになっている。
【0032】
なお、本実施の形態においては、真空ポンプ321及び真空トラップ322は、全8色分のインク系統に共通して動作する1組だけが設けられている。つまり、これら真空ポンプ321及び真空トラップ322は、8つの脱気モジュール320と連結されている。
【0033】
中間タンク33は、第3供給管352を通じて脱気モジュール320と連通され、脱気モジュールユニット32で脱気されたインクを保存するタンクである。中間タンク33内には、所定量のインクを検知する液量センサ330が設けられ、図示は省略するが、この液量センサ330は送液ポンプ31と電気的に接続されている。そして、液量センサ330によって中間タンク33内に所定量のインクが検知されるまで、送液ポンプ31によるインクの送液が行われる。こうして、中間タンク33内には常時所定量の脱気済みインクが貯留され、装置本体2へのインク供給不足を防止することができる。
【0034】
供給ポンプ34は、入口が第4供給管353を通じて中間タンク33と連通され、出口が第5供給管354を通じて装置本体2の記録ヘッドと連通されている。この供給ポンプ34は、中間タンク33に貯留される脱気済みインクを吸い上げて装置本体2の記録ヘッドへ送液する。
【0035】
また、インクラック3の筐体には、インク量表示パネル39が設けられている。このインク量表示パネル39には、各色のインクに対応した8つのLED(発光ダイオード)390が表示されており、例えば、インク量が十分多いときには消灯、少なくなってきたら点滅、補給が必要なほど減ったら点灯、といった具合に、LED390の点灯状態によってインクラック3に貯留されている各色のインク量を判別できるようになっている。
【0036】
続いて、インクタンクユニット30の構成の詳細について説明する。
インクタンクユニット30は、図4に示すように、インクタンク300と、インク受け部301と、インク導入管302と、液面センサ303,304とを備えている。
【0037】
インクタンク300は、略円筒状に形成されたタンク部分300aと、タンク部分300aの上面に固定された筒部300bと、筒部300bの上面を覆う蓋板300cとから構成されている。タンク部分300aはインクを貯留する大容量の貯留槽であり、本実施の形態においては約10Lのインクが貯留可能となっている。
【0038】
タンク部分300aの上面であって筒部300bの内側には、筒部300bの内径よりも小径の円形の開口部300dが形成されている。この開口部300d近傍と筒部300bの内側とでインクタンク300の入口部分が構成され、当該入口部分を通じてインクタンク300のタンク部分300aへインクが補給される。
【0039】
筒部300b上方に配設される蓋板300cは、一方の端部をインクラック3の筐体に軸支され、その回動によって筒部300bの上部を開閉できるように構成されている。蓋板300cが軸支される回動孔300eは略楕円状の長穴に形成されており、これにより、蓋板300cを閉めたときに、当該蓋板300cの裏面と筒部300bの上面とが全面に亘って均等に当接するようになっている。また、蓋板300cの裏面であって筒部300bとの当接面には、当該蓋板300cと筒部300bとの当接部をシールするための、図示しないゴムシートが貼付されている。
【0040】
上記のインクタンク300において、タンク部分300aは開口部300d以外を密封され、タンク部分300aと筒部300bとはタンク部分300a内部の気密が保持されるよう接合されている。したがって、インクタンク300は、蓋板300cを閉めて当該蓋板300cと筒部300bとを当接させることにより、内部を外気と遮断可能に構成されている。
【0041】
インク受け部301は、上方に開口するインク受け口301aと、下方でインク導入管302と連通する連通口301bとが滑らかに連結された漏斗状に形成されている。このインク受け部301は、インクタンク300の入口部分を塞ぐように当該入口部分に設けられ、インクタンク300へ補給されるインクを必ず受けるようになっている。より詳細には、図4右上の拡大図に示すように、インク受け部301は、上端部に外周側へ張り出した鍔部301cを有し、タンク部分300aの開口部300dと緩やかに嵌合されつつ、鍔部301c下面がインクタンク300のタンク部分300a上面に全周に亘って当接支持されている。
【0042】
また、インク受け部301は、インク受け口301aと連通口301bとの中間部分において、その内向きの傾斜角度がより平坦なものに変化する部位を有している。そして、当該部位には、インクを補給する際にインクタンク300の内部への異物の混入を防止するフィルタ305が、連通口301bを覆うように載置されている。このフィルタ305は、インク受け部301に固定されていないので、取り外しての清掃や交換が容易である。また、フィルタ305のメッシュサイズは、細かすぎるとインク補給時のインクの注入に時間を要し、粗すぎると異物混入防止の効果が低減することから、0.1〜3.0mm程度が好ましく、0.5〜2.0mm程度がより好ましい。
【0043】
なお、インク受け部301は、漏斗状に形成されなくとも、インク受け口301aがインク導入管302との連通口301bよりも大口径に形成されればよい。また、インク受け部301の材質は、特に限定はされないが、一定の重量を有して安定した載置ができ、かつ、劣化しにくいものとして、ステンレスとするのが好ましい。
【0044】
インク導入管302は、インク受け部301とインクタンク300の内部とを連通する樹脂製の直管であり、連通口301bから下方へ延在するようインク受け部301に固定されている。このインク導入管302は、補給されるインクをインク受け部301からインクタンク300のタンク部分300a内部へ導くものである。
【0045】
インク導入管302の下端部には、インク受け部301の連通口301bと連通するインク出口302aが、インクタンク300の内部において、タンク部分300aの底面から3mm程度離間した高さで下方に向けて開口されている。なお、インク出口302aは、上記の高さに配設されていなくとも、後述の液面センサ304が検知するインクの液面の高さH2よりも下方に配設されていればよい。この場合において、インク出口302aがタンク部分300aの底面と当接するときには、インク導入管302の下端部を斜めにカットしてインク出口302aを斜めに開口させたり、当該下端部にスリットを形成したりするのがよい。
【0046】
液面センサ303,304は、インクタンク300の内部で上下方向に延在するセンサ固定軸306に対し、それぞれ異なる高さに固定された2つのフロートセンサである。これら液面センサ303,304は、タンク部分300aの底面からH1,H2の高さに配設され、インクタンク300に貯留されるインクの液面がH1,H2よりも低くなる状態を検知し、ひいてはこの状態におけるインク量を検知する。本実施の形態においては、H1≒60mm,H2≒20mmである。
【0047】
また、液面センサ303,304は、インク量表示パネル39のLED390のうち対応するインク色のものと電気的に接続されている。これにより、液面センサ303は、インクタンク300に貯留されているインクの液面がH1よりも低くなったことを検知すると、インク量が少なくなってきたことをユーザーに知らせるために、インク量表示パネル39の対応するインク色のLED390を点滅させる。また、液面センサ304は、インクタンク300に貯留されているインクの液面がH2よりも低くなったことを検知すると、インクの補給が必要な要補給状態であることをユーザーに知らせるために、インク量表示パネル39の対応するインク色のLED390を点灯させる。
【0048】
なお、液面センサ303,304は、インクタンク300に貯留されるインクの液面がH1,H2よりも低くなるときのインク量を検知可能であれば、フロートセンサに限定されない。
【0049】
続いて、インクタンク300にインクを補給する際の動作について説明する。
なお、以下では、説明の理解を容易にするために、補給されるインクを補給インクという。
【0050】
まず、図5に示すように、インクタンク300の蓋板300cを開けて筒部300bの上部を開放する。それから、補給用の補給インクが入ったインクパック4を持ち上げ、インクパック4に固定された蛇腹ホース41の先端を筒部300bの内部へ挿入して補給インクを注ぎ込む。なお、蛇腹ホース41は、インクパック4に対し着脱自在であるとともに、インクパック4内へ収納可能に構成されている。
【0051】
筒部300b内へ注がれた補給インクは、インク受け部301で受けられる。このとき、インク受け部301は、インク受け口301aがインク導入管302との連通口301bよりも大口径に形成されているので、インクタンク300へ補給される補給インクは、直接インク導入管302へ注入されずに、確実にインク受け部301で受けられて注入速度が緩やかにされる。更に、インク受け部301は漏斗状に形成されているので、インク受け部301で受けられた補給インクは、滑らかに減速されつつインク導入管302へ導かれる。
【0052】
インク受け部301に受けられた補給インクは、インク導入管302へ導かれる過程で、フィルタ305を通過する。これにより、インクタンク300の内部への異物の混入を防止できるとともに、当該フィルタ305によって補給インクの注入速度を一層緩やかにすることができる。
【0053】
インク導入管302へ導かれた補給インクは、インク出口302aからインクタンク300内部へ流れ込む。ここで、インク導入管302のインク出口302aは、液面センサ304に検知されるインクの液面の高さH2よりも下方に配設されているので、インクの補給が必要な要補給状態、つまりインクの残量が極めて少ない状態においても、インクタンク300へ補給される補給インクは、この残り少ないインク中へインク導入管302を通じて確実に滑らかに注入される。
【0054】
なお、インク導入管302のインク出口302aが、液面センサ304に検知されるインクの液面の高さH2よりも下方に配設されていなくとも、例えば高さH1よりは下方に配設されていた場合に、このインク出口302aがインクの液面よりも下方に位置するとき、つまり液面センサ303がインクの液面がH1よりも低くなることを検知する前に、インクタンク300へ補給インクを補給するようにしてもよい。このようにすれば、インク導入管302のインク出口302aが、インクタンク300に貯留されるインクの液面よりも下方に配設された状態で補給インクを補給できるので、インクタンク300へ補給される補給インクは、貯留するインクの液面を勢いよく打ち続けることなく、インク導入管302を通じて当該インク中へ滑らかに注入される。
【0055】
このとき、インク受け部301は、鍔部301c下面がインクタンク300のタンク部分300a上面に当接支持されており、つまり固定されていないので、補給インクによって押し出されるインクタンク300内の空気は、インク受け部301の鍔部301c下面とインクタンク300のタンク部分300a上面との間隙を通じて、或いはインク受け部301を持ち上げて、インクタンク300外へ逃げることができる。
【0056】
なお、このようにインク受け部301をインクタンク300に当接支持させる構成に代えて、或いは当該構成に加えて、図6に示すように、インクタンク300の内部と外気とを連通可能な空気連通弁307を設けてもよい。インクタンク300へ補給インクを補給する際に当該空気連通弁307を開放することにより、補給インクによって押し出されるインクタンク300内の空気をインクタンク300外へ逃がすことができる。
【0057】
こうして、インクタンク300への補給インクの補給が完了する。
補給が完了した後、インクタンク300の蓋板300cを閉めて、当該蓋板300cと筒部300bとを当接させる。これにより、インクタンク300は、内部を外気と遮断される。
【0058】
以上のように、本実施の形態におけるインクラック3によれば、インクタンク300は、内部を外気と遮断可能に構成されるので、貯留するインクが外気と触れるのを防ぎ、当該インクの劣化を防止することができる。
【0059】
また、インクタンク300へ補給される補給インクは、直接インク導入管302へ注入されずに、確実にインク受け部301で受けられて注入速度が緩やかにされるとともに、貯留するインクの液面を勢いよく打ち続けることなく、インク導入管302を通じて当該インク中へ滑らかに注入されるので、インクの泡立ちやセンサの誤作動を防止して、良好なインクの補給が可能となる。
【0060】
また、インクタンク300へ補給される補給インクは、貯留するインク中へインク導入管302を通じて確実に滑らかに注入されるので、インクの泡立ちやセンサの誤作動を確実に防止して、一層良好なインクの補給が可能となる。
【0061】
また、インク受け部301で受けられた補給インクは、滑らかに減速されつつインク導入管302へ導かれるので、インクの泡立ちやセンサの誤作動を防止して、一層良好なインクの補給が可能となる。
【0062】
また、補給インクによって押し出されるインクタンク300内の空気は、インク受け部301の鍔部301c下面とインクタンク300のタンク部分300a上面との間隙を通じて、或いはインク受け部301を持ち上げて、又は空気連通弁307を通じて、インクタンク300外へ逃げることができるので、インクタンク300内を閉塞させることなく、円滑にインクの補給を行うことができる。
【0063】
また、インク受け部301はフィルタ305を有するので、インクタンク300の内部への異物の混入を防止できるとともに、当該フィルタ305によって補給インクの注入速度を一層緩やかにすることができる。
【0064】
なお、上記実施の形態においては、インクラック3が貯留して装置本体2へ供給するインクの色数を8色としたが、他の色数としてもよい。
【0065】
また、その他の点においても、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】インクジェット記録装置の外観図である。
【図2】インクラックの外観図である。
【図3】インクラックの構成を示すブロック図である。
【図4】インクタンクユニットの断面図である。
【図5】インクタンクにインクを補給する際の動作を説明するための図である。
【図6】インクタンクユニットの別例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
2 装置本体(画像を記録する装置)
3 インクラック(インクジェットプリンタ用インク供給装置)
30 インクタンクユニット
300 インクタンク
301 インク受け部
301a インク受け口
301b 連通口
302 インク導入管
302a インク出口
303、304 液面センサ(インク量検知手段)
305 フィルタ(フィルタ手段)
307 空気連通弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して画像を記録する装置に対し、当該インクを供給するインクジェットプリンタ用インク供給装置であって、
インクを貯留するとともに、インクが補給されるための入口部分を有するインクタンクと、
前記インクタンクの前記入口部分に設けられ、当該インクタンクへ補給されるインクを受けるインク受け部と、
前記インク受け部と前記インクタンクの内部とを連通するインク導入管と、
前記インクタンクに貯留されるインク量を検知可能なインク量検知手段と、
を備え、
前記インクタンクは、内部を外気と遮断可能に構成され、
前記インク受け部は、インク受け口が前記インク導入管との連通口よりも大口径に形成され、
前記インクタンクにインクが補給されるときに、前記インクタンクの内部で開口する前記インク導入管のインク出口が、前記インク量検知手段に検知されるインク量におけるインクの液面よりも下方に位置することを特徴とするインクジェットプリンタ用インク供給装置。
【請求項2】
前記インク量検知手段は、前記インクタンクに貯留されるインクが所定量未満となる要補給状態におけるインク量を少なくとも検知可能に構成され、
前記インク導入管は、前記インク出口が前記要補給状態におけるインクの液面よりも下方に配設されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ用インク供給装置。
【請求項3】
前記インク受け部は、漏斗状に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ用インク供給装置。
【請求項4】
前記インク受け部は、前記インクタンクに当接支持されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ用インク供給装置。
【請求項5】
前記インクタンクの内部と外気とを連通可能な空気連通弁を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ用インク供給装置。
【請求項6】
前記インク受け部は、前記インクタンクの内部への異物の混入を防止するフィルタ手段を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ用インク供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−58429(P2010−58429A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228210(P2008−228210)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】