説明

インクジェットプリンタ

【課題】インクヘッドと固定系部位とを係合離脱自在に係止可能とする係止手段を簡潔な構成とする。
【解決手段】媒体に対して所定の方向に相対的に移動可能に支持された第1キャリッジと、媒体に対して所定の方向に相対的に移動可能に支持されるとともに第1キャリッジの所定の方向における側方に位置するように並設された第2キャリッジと、第1キャリッジに所定の方向と交差する方向に移動自在に配設されたスライド装置と、スライド装置に固定的に配置されるとともに媒体上にインクを吐出可能なインクヘッドと、第2キャリッジに固定的に配置されるとともに媒体を切断可能なカッティングヘッドと、第1キャリッジの所定の方向への移動ならびにスライド装置の所定の方向と交差する方向への移動に伴って移動して、固定系部位と係合離脱自在に係止する係止部材と、第1キャリッジと第2キャリッジとを分離可能に連結する連結手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関し、さらに詳細には、数値制御により記録紙などの媒体上に印刷、例えば、高速かつ高解像度でのカラー印刷などを行う際に用いて好適なインクジェットプリンタに関する。
【0002】
なお、本明細書において「媒体」とは、普通紙などの紙類よりなる各種の記録媒体は勿論のこと、PVC、ポリエステル等の樹脂材料やアルミ、鉄、木材の様な材料などの各種の材料が含まれるものとする。
【0003】
また、本明細書において「インクジェット方式」とは、二値偏向方式あるいは連続偏向方式などの各種の連続方式や、サーマル方式あるいは圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む、従来より公知の各種の手法によるインクジェット技術によって実現される印刷方式を意味するものとする。
【背景技術】
【0004】
従来より、マイクロコンピューターによって全体の動作を制御され、媒体として、例えば、給紙装置によって供給された記録紙上に記録紙の幅方向(なお、本明細書においては、当該記録紙の幅方向を、「主走査方向」と適宜に称することとする。)で移動するインクヘッドを用い、インクジェット方式により記録紙に対して所定の印刷を行うようにしたインクジェットプリンタが知られている。
【0005】
また、上記したインクジェットプリンタにおいては、記録紙に印刷して画像を作成する画像作成の機能に加えて、記録紙に印刷された画像などを切り抜くカッティングの機能を搭載した装置も提案されている。
【0006】
こうした画像作成機能とカッティング機能とを備えたインクジェットプリンタにおいては、画像データに基づいて記録紙に印刷を行って画像を作成する画像作成機能を実現するための構成たるインクヘッドと、画像データに基づいて記録紙を切断するカッティングの機能を実現するための構成たるカッターなどを備えたカッティングヘッドとが配設されている。
【0007】
一般に、上記したようなインクヘッドとカッティングヘッドとを備えたインクジェットプリンタでは、連結手段によってインクヘッドとカッティングヘッドとが分離可能に連結されるとともに、係止手段によってインクヘッドがインクジェットプリンタの固定系部位に係合離脱自在に係止可能となされている。
【0008】
そして、画像データに基づいてインクヘッドによって記録紙に画像を作成する場合には、係止手段がインクヘッドを固定系部位から離脱させるとともに、連結手段がインクヘッドとカッティングヘッドとを連結し、インクヘッドとカッティングヘッドとを一体的に移動させることになる。
【0009】
一方、画像データに基づいてカッティングヘッドによって記録紙を切り抜く場合には、係止手段がインクヘッドを固定系部位に係合するとともに、連結手段がインクヘッドとカッティングヘッドとを分離し、カッティングヘッドのみを移動させることになる。
【0010】

ところで、インクヘッドとカッティングヘッドとを備えた従来のインクジェットプリンタにおいては、インクヘッドをインクジェットプリンタの固定系部位に係合離脱自在に係止可能とする係止手段は、インクヘッドとカッティングヘッドと当該固定系部位との三者間における相対的な移動により、インクヘッドと当該固定系部位とが自動的に係合または離脱するように構成されているためその構成が複雑化し、組み立て作業が煩雑化するという問題点があった。
【0011】

なお、本願出願人が特許出願時に知っている先行技術は、上記において説明したようなものであって文献公知発明に係る発明ではないため、記載すべき先行技術情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インクヘッドとインクジェットプリンタの固定系部位とを係合離脱自在に係止可能とする係止手段を簡潔な構成により実現したインクジェットプリンタを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、媒体上にインクを吐出して印刷を行うとともに上記媒体を切断可能なインクジェットプリンタにおいて、媒体に対して所定の方向に相対的に移動可能に支持された第1のキャリッジと、上記媒体に対して上記所定の方向に相対的に移動可能に支持されるとともに上記第1のキャリッジの上記所定の方向における側方に位置するように並設された第2のキャリッジと、上記第1のキャリッジに上記所定の方向と交差する方向に移動自在に配設されたスライド装置と、上記スライド装置に固定的に配置されるとともに上記媒体上にインクを吐出可能なインクヘッドと、上記第2のキャリッジに固定的に配置されるとともに上記媒体を切断可能なカッティングヘッドと、上記第1のキャリッジの上記所定の方向への移動ならびに上記スライド装置の上記所定の方向と交差する方向への移動に伴って移動して、固定系部位と係合離脱自在に係止する係止部材と、上記第1のキャリッジと上記第2のキャリッジとを分離可能に連結する連結手段とを有するようにしたものである。
【0014】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、媒体上にインクを吐出して印刷を行うとともに上記媒体を切断可能なインクジェットプリンタにおいて、媒体に対して所定の方向に相対的に移動可能に支持された第1のキャリッジと、上記媒体に対して上記所定の方向に相対的に移動可能に支持されるとともに上記第1のキャリッジの上記所定の方向における側方に位置するように並設された第2のキャリッジと、上記第1のキャリッジに上記所定の方向と交差する方向に移動自在に配設されたスライド装置と、上記スライド装置に固定的に配置されるとともに上記媒体上にインクを吐出可能なインクヘッドと、上記第2のキャリッジに固定的に配置されるとともに上記媒体を切断可能なカッティングヘッドと、上記第1のキャリッジの上記所定の方向への移動ならびに上記スライド装置の上記所定の方向と交差する方向への移動に伴って移動して、固定系部位と係合離脱自在に係止する係止部材と、上記第1のキャリッジと上記第2のキャリッジとを分離可能に連結する連結手段とを有し、上記媒体に印刷する場合には、上記係止部材を上記固定系部位から離脱させて、上記第1のキャリッジを上記固定系部位から離脱させるとともに、上記連結手段によって上記第1のキャリッジと上記第2のキャリッジとを連結し、上記第1のキャリッジに配置されたインクヘッドと上記第2のキャリッジに配置されたカッティングヘッドとを一体的に移動し、上記媒体を切断する場合には、上記係止部材を上記固定系部位に係合させて、上記第1のキャリッジを上記固定系部位に係合するとともに、上記連結手段によって上記第1のキャリッジと上記第2のキャリッジとを分離し、上記第2のキャリッジに配置されたカッティングヘッドのみを移動するようにしたものである。
【0015】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、本発明のうち請求項1または2のいずれか1項に記載の発明において、上記スライド装置が、上記第1のキャリッジの壁面に上記所定の方向と交差する方向に延長して配設されたガイドレールと、上記ガイドレールに沿って移動自在に配設された摺動ブロックとを有して構成されるようにしたものである。
【0016】
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、本発明のうち請求項3に記載の発明において、上記インクヘッドが、上記摺動ブロックに対して固定的に配置されるようにしたものである。
【0017】
また、本発明のうち請求項5に記載の発明は、本発明のうち請求項3または4のいずれか1項に記載の発明において、さらに、上記摺動ブロックを駆動する駆動手段を有するようにしたものである。
【0018】
また、本発明のうち請求項6に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2、3、4または5のいずれか1項に記載の発明において、上記所定の方向と交差する方向を、上記所定の方向と直交する方向としたものである。
【0019】
また、本発明のうち請求項7に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2、3、4、5または6のいずれか1項に記載の発明において、上記係止部材が、固定系部位方向へ突出形成されるとともに屈曲した先端部を備え、上記固定系部位が、上記係止部材の上記先端部が係合する孔部を備えるようにしたものである。
【0020】
また、本発明のうち請求項8に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2、3、4、5、6または7のいずれか1項に記載の発明において、上記連結手段をマグネットにより構成するようにしたものである。
【0021】
また、本発明のうち請求項9に記載の発明は、本発明のうち請求項8に記載の発明において、上記マグネットの吸着力が、上記係止部材と固定系部位との係合による係合力より小さくなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以上説明したように構成されているので、簡潔な構成により、インクヘッドとインクジェットプリンタの固定系部位とを係合離脱自在に係止可能とすることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるインクジェットプリンタの実施の形態の一例について詳細に説明するものとする。
【0024】

ここで、図1には本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタの概略構成説明図が示されており、また、図2乃至図4には図1の要部を模式的に示した説明図が示されている。なお、図2は一部を破断した図1のA矢視要部説明図であり、図3は一部を破断した図2のB矢視要部説明図であり、図4は壁部68を取り払った状態における図2のC矢視要部説明図である。
【0025】
本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタ100においては、給紙装置(図示せず。)によって、媒体として幅方向たる主走査方向(図1において符号Dで示す矢印方向)において所定の長さを有する記録紙200が、後述するベース部材114上に供給され、主走査方向と直交する方向たる副走査方向、即ち、記録紙200の長手方向に搬送されるようになされている。
【0026】
こうしたインクジェットプリンタ100は、基台部材112に支持され主走査方向に延長して配設された固定系のベース部材114と、ベース部材114の左右両端でベース部材114に直交して配設された側方部材116L、116Rと、側方部材116R側に配設された側方ユニット118と、左右2つの側方部材116L、116Rを連結する中央壁120と、中央壁120の壁面に主走査方向に延長して配設されたガイドレール122と、中央壁120の壁面に沿って主走査方向に移動自在に配設された駆動ベルト124(図2を参照する。)と、ガイドレール122に摺動自在に装着されたキャリッジ12と、駆動ベルト124に固定的に配設されるとともにガイドレール122に摺動自在に装着されたキャリッジ14と、ベース部材114上の記録紙200と対向するようにしてキャリッジ12に配置されたインクヘッド16と、ベース部材114上の記録紙200と対向するようにしてキャリッジ14に配設されたカッティングヘッド20と、側方ユニット118内に配設されたメンテナンスユニット22とを有して構成されている。
【0027】
なお、こうしたインクジェットプリンタ100の全体の動作は、マイクロコンピューター(図示せず。)によって制御されている。
【0028】
また、符号126は、全体の動作の制御や各種の処理の指示を行うために設けられた操作パネルである。この操作パネルには、操作状態を表示する表示部や、インクヘッド16およびカッティングヘッド20の位置を指定するキーや、画像データなどの信号に基づいて画像の作成または切り抜きを開始するためのキーなどが配設されているものである。
【0029】

ここで、インクヘッド16は、公知の技術を適用できるため詳細な説明および図示は省略するが、それぞれ同様な構成を備える複数のインクヘッドユニットにより構成されており、複数のインクヘッドユニットの下面には、インクを記録紙200に対して吐出する際の吐出口として、複数個のインクジェットノズルがそれぞれ配設されている。
【0030】
そして、インクヘッド16の複数のインクヘッドユニットのそれぞれには、側方ユニット118内に配設されたそれぞれ異なる色の液体状のインクを貯留した複数のインクカートリッジ(図示せず。)からインクチューブ(図示せず。)を介して、それぞれ異なる色のインクが供給されるようになされている。
【0031】
こうした複数のインクヘッドユニットにより構成されるインクヘッド16は、複数のインクヘッドユニットが主走査方向Dに沿って一列に配置され、インクヘッドユニットのインクジェットノズルがベース部材114上の記録紙200に対向可能なようにして、キャリッジ12に配置されている。
【0032】

カッティングヘッド20は、カッター刃38aを備えたカッター38を保持する把持部36を有し、この把持部36にカッター刃38aの高さ位置を変更自在な状態でカッター38が保持されている。このカッター38は、カッター刃38aとして、スイベルナイフ方式、回転方式などの通常の刃物はもちろん、超音波カッター、熱によるヒートカッターなどを用いることができる。そして、操作パネル126を介して指示が入力された時などの所定のタイミングでカッター刃38aの高さ位置を変更し、カッター刃38aを記録紙200上に当接させた状態で主走査方向に移動しながら、画像データに基づいて記録紙200を切り抜くものである。
【0033】
これら記録紙200を切断するカッター38が配置されたカッティングヘッド20は、カッター刃38aの高さ位置を変更したときにベース部材114上の記録紙200に当接可能なようにして、キャリッジ14に固定的に配設されている。
【0034】

ここで、ガイドレール122は直動ガイドにより構成されており、ガイドレール122に沿って移動自在に摺動ブロックたる4個の直動ブロック123a、123b、123c、123dが配設されている。
【0035】
また、ガイドレール122と直動ブロック123a、123b、123c、123dとの間には、ボール125が転動自在に保持されており、このボール125が転動することにより、直動ブロック123a、123b、123c、123dはガイドレール122上をスムーズに移動する。
【0036】
そして、キャリッジ12は、ガイドレール122に移動自在に配設された直動ブロック123a、123bに固定的に取り付けられており、また、キャリッジ14は、ガイドレール122に移動自在に配設された直動ブロック123c、123dに固定的に取り付けられていて、これによりキャリッジ12、14がガイドレール122に摺動自在に装着されることになる。
【0037】
なお、キャリッジ12とキャリッジ14とは主走査方向に沿って順次配置され、具体的には、キャリッジ12が側方部材116R側に配置され、当該キャリッジ12の左方側に隣接してキャリッジ14が配置されている。従って、キャリッジ12に配設されたインクヘッド16とキャリッジ14に配設されたカッティングヘッド20とは、側方部材116Rに近い順で主走査方向Dにおける右側方向(Right Side Direction)から左側方向(Left Side Direction)に向けて、インクヘッド16、カッティングヘッド20の順で配置されることになる。
【0038】

ここで、インクヘッド16は、インクヘッド16を固定的に取り付けて保持するインクヘッドホルダー60と、インクヘッドホルダー60を主走査方向と直交して交差する方向たる上方向(Upper Direction)および下方向(Lower Direction)に移動するスライド装置62とを介してキャリッジ12に配設されている。
【0039】
スライド装置62は、キャリッジ12の壁面に上下方向に延長して配設された直動ガイドよりなるガイドレール62aと、ガイドレール62aに沿って移動自在に配設された摺動ブロック62bとを有して構成されている。
【0040】
また、ガイドレール62aと直動ブロック62bとの間には、ボール62cが転動自在に保持されており、このボール62cが転動することにより、直動ブロック62bはガイドレール62a上をスムーズに移動する。
【0041】
そして、インクヘッドホルダー60は直動ブロック62bに固定的に取り付けられており、これにより、インクヘッド16を保持したインクヘッドホルダー60は、ガイドレール62aに沿って上下方向に摺動自在に移動可能に配置される。
【0042】
また、キャリッジ12の左側方向端部、即ち、側方部材116L側の端部12aには、外周面に雄ねじを形成した回転軸64aを備えたモーター64が配設されている。一方、インクヘッドホルダー60の左側方向端部、即ち、側方部材116L側の端部60aには、回転軸64aの雄ねじとねじ結合する雌ねじを形成された孔部60cを備えたアーム部60dが配設されている。
【0043】
さらに、インクヘッドホルダー60の右側方向端部、即ち、側方部材116R側の端部60eには、先端部66aが下方に屈曲したクランク状に形成された係止部材66が突出形成されている。そして、この係止部材66は、インクジェットプリンタ100の側方部材116Rや中央壁120と一体的に形成された固定系部材たる壁部68に形成された孔部68aと係合離脱されるようになっている。
【0044】
より詳細には、スライド装置62によるインクヘッドホルダー60の上下方向の移動ならびにキャリッジ12の左右方向の移動により、係止部材66の先端部66aを孔部68aに貫通させるとともに、係止部材66の先端部66aの屈曲部位を孔部68aの縁部に係止させ、これにより係止部材66と孔部68aとを係合可能となされている。
【0045】
なお、この実施の形態においては、上記した係止部材66と孔部68aとによって、インクヘッド16が配設されたキャリッジ12をインクジェットプリンタ100の固定系部位たる壁部68に係合離脱自在に固定する係止手段が構成される。なお、係止部材66と孔部68aとの係合離脱操作は、例えば、操作パネル126に設置された操作キーにより行われるものである。
【0046】

また、キャリッジ12の端部12aにおける側方部材116L側に配置された左方部位壁部12Lには、マグネット70が配設されている。そして、キャリッジ14に固定されたカッティングヘッド20の側方部材116R側に位置する右方部位壁部20Rには、左方部位壁部12Lに配設されたマグネット70と吸着可能なマグネット72が配設されている。
【0047】
このキャリッジ12に配設されたマグネット70と、キャリッジ14に固定されたカッティングヘッド20に配設されたマグネット72とにより、キャリッジ12とキャリッジ14との両者が適宜連結または離脱できるようになされている。
【0048】
そして、キャリッジ12とキャリッジ14とを連結したマグネット70とマグネット72との吸着力は、係止部材66と孔部68aとが係合した係合状態の保持力より小さくなるように設定されている。
【0049】
なお、この実施の形態においては、上記したマグネット70とマグネット72とによって、キャリッジ12とキャリッジ14とを連結離脱に連結する連結手段が構成される。
【0050】

そして、キャリッジ14は、駆動ベルト124に固定的に配設されており、駆動ベルト124がモーターなどの駆動装置(図示せず。)の駆動力によって主走査方向に移動すると、この駆動ベルト124の移動に伴ってキャリッジ14はガイドレール122に沿って主走査方向に移動する。
【0051】
ここで、マグネット70とマグネット72とが吸着してキャリッジ12とキャリッジ14とが連結され、係止部材66と孔部68aとの係合が解除されていると、上記したキャリッジ14の移動に伴って、キャリッジ12もガイドレール122に沿って主走査方向に移動する。
【0052】
このようにキャリッジ12ならびにキャリッジ14はいずれも主走査方向に移動するので、キャリッジ12に配設されたインクヘッド16とキャリッジ14に配設されたカッティングヘッド20とは、こうしたキャリッジ12、14の移動に伴って主走査方向に移動する、即ち、側方部材116R側から側方部材116L側へと主走査方向における行き方向で移動するとともに、側方部材116L側から側方部材116R側へと主走査方向における帰り方向で移動する。
【0053】
ここで、上記したようにして主走査方向における行き方向と帰り方向でキャリッジ12、14が移動する移動エリア、即ち、インクヘッド16ならびにカッティングヘッド20の移動エリアは、給紙装置(図示せず。)によってベース部材114上に供給される記録紙200の主走査方向に沿った幅方向における所定の長さと一致するプリントエリアに比べて広いものである。
【0054】
そして、上記したようにしてキャリッジ12ならびにキャリッジ14はいずれも主走査方向に移動するものであるが、印刷を行わないときなど所定のタイミングで、キャリッジ12は帰り方向で移動してプリントエリアから外れて側方ユニット118内の待機位置に留まる。これにより、キャリッジ12に配設されたインクヘッド16が側方ユニット118内に位置するようになされている(図2乃至図3を参照する。)。
【0055】
そして、待機位置に留まるキャリッジ12によりインクヘッド16が待機することになる側方ユニット118内には、インクヘッド16をメンテナンスするメンテナンスユニット22が配設されている。このメンテナンスユニット22は、キャップ装置22a、ワイパー装置(図示せず。)ならびに吸引装置22bを有するものである。
【0056】
キャップ装置22aはノズルキャップ部を備え、側方ユニット118内においてインクヘッドユニットの下面の吐出口たるインクジェットノズルを被覆するものである。このキャップ装置22aにより、印刷を行わないときに側方ユニット118内において待機しているインクヘッドユニットのインクジェットノズルを保護して、インクジェットノズルでインクが固まってしまったり、インクジェットノズルにごみなどが付着するのを防止することができる。
【0057】
ワイパー装置はブレードを備え、当該ブレードは側方ユニット118内においてインクヘッドユニットの下面に当接するものである。このワイパー装置により、印刷を行わないときに側方ユニット118内において待機しているインクヘッドユニットの下面に残留したインクや付着した異物などの付着物を除去することができる。
【0058】
吸引装置22bは、吸引用ポンプや当該吸引用ポンプを駆動するモータなどを備え、印刷を行わないときに側方ユニット118内において待機しているインクヘッドユニットのインクジェットノズルからインクを吸引して、インクジェットノズル内に残留するインクを除去することができる。
【0059】
これらキャップ装置22a、ワイパー装置ならびに吸引装置22bを有するメンテナンスユニット22は、キャリッジ12が主走査方向における帰り方向で移動して静止する側方ユニット118内の待機位置において、当該キャリッジ12に配設されたインクヘッド16の下方側、即ち、インクヘッド16のインクヘッドユニットのインクジェットノズルが配設されたインクの吐出側に位置するようにして側方ユニット118内に配設されている。
【0060】

以上の構成において、上記したインクジェットプリンタ100によって、記録紙200に所望の画像を作成して印刷したり、画像の輪郭などを切り抜いてカッティングする場合の動作を説明する。
【0061】
なお、この実施の形態においては、キャリッジ12が待機位置に静止し、インクヘッド16が側方ユニット118内に位置する状態(図2に示す状態)を初期状態とする。この初期状態においては、マグネット70とマグネット72とが吸着し、連結手段によりキャリッジ12とキャリッジ14とは連結されているとともに、係止部材66と孔部68aとが係合し、係止手段によりキャリッジ12とインクジェットプリンタ100の固定系部位たる壁部68とが係合されている。
【0062】
まず、印刷を行なう場合には、操作パネル126を介した入力指示に従ったマイクロコンピューターの制御により、まず、モーター64を駆動して、モーター64の回転軸64aの回転力を、当該回転軸64aに形成された雄ねじとねじ結合する雌ねじを形成された孔部60cを備えたアーム部60dに伝達し、アーム部60dを連設したインクヘッドホルダー60を上方に移動する。
【0063】
即ち、アーム部60dを連設したインクヘッドホルダー60は、スライド装置62によりキャリッジ12に対して上下方向移動自在に配置されているため、アーム部60dへ伝達された回転軸64aの回転方向に応じて、ガイドレール62aに沿ってインクヘッドホルダー60に取り付けられた直動ブロック62bが摺動して、インクヘッドホルダー60を上方に移動することができる(図5を参照する。)。
【0064】
次に、連結手段により連結されたキャリッジ12とキャリッジ14とを一体的に主走査方向における左側方向に移動すると、係止部材66と孔部68aとの係合が離脱して、キャリッジ12の固定系部材たる壁部68への固定が解除される(図6を参照する。)。
【0065】
その後に、駆動ベルト124の移動に伴ってキャリッジ14を移動すると、キャリッジ12の移動と伴に連結手段によりキャリッジ12と一体化されたキャリッジ14も移動する。即ち、キャリッジ12とキャリッジ14とが一体的に連結した状態で移動し、インクヘッド16により記録紙200に対して印刷を行う。
【0066】

一方、印刷された画像の輪郭などを切り抜いてカッティングを行なう場合には、操作パネル126を介した入力指示に従ったマイクロコンピューターの制御により、一体的に連結したキャリッジ12とキャリッジ14とを主走査方向における右側方向に移動し、係止部材66を孔部68a内へ貫通させる(図5を参照する。)。
【0067】
次に、モーター64を駆動して、モーター64の回転軸64aの回転力を、当該回転軸64aに形成された雄ねじとねじ結合する雌ねじを形成された孔部60cを備えたアーム部60dに伝達し、アーム部60dを連設したインクヘッドホルダー60を下方に移動し、初期状態にする。
【0068】
即ち、アーム部60dを連設したインクヘッドホルダー60は、スライド装置62によりキャリッジ12に対して上下方向移動自在に配置されているため、アーム部60dへ伝達された回転軸64aの回転方向に応じて、ガイドレール62aに沿ってインクヘッドホルダー60に取り付けられた直動ブロック62bが摺動して、インクヘッドホルダー60を下方に移動することができる(図2を参照する。)。
【0069】
その後に、駆動ベルト124の移動に伴ってキャリッジ14を主走査方向における行き方向で移動させる、係止部材66が孔部68aの縁部と係合してキャリッジ12が固定系部材たる壁部68に固定されていて、キャリッジ12とキャリッジ14とを連結したマグネット70とマグネット72との吸着力は、キャリッジ12の係止部材66と孔部68aとが係合した係合状態の保持力はより小さくなるようにして設定されているので、マグネット70とマグネット72は引き離されて、キャリッジ14からキャリッジ12を分離する。
【0070】
そして、マイクロコンピューターの制御により、カッティングヘッド20のカッター38のカッター刃38aの高さ位置が変更され、カッター38のカッター刃38aがベース部材114上の記録紙200に当接した状態で、駆動ベルト124の移動に伴ってキャリッジ14が主走査方向における行き方向および帰り方向で移動して、カッティングヘッド20のカッター38のカッター刃38aにより記録紙200をカッティングすることができる。
【0071】

なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(4)に説明するように変形してもよい。
【0072】
(1)上記した実施の形態においては、スライド装置62が、インクヘッドホルダー60を主走査方向と直交して交差する方向たる上下上方向に移動するようにしたが、スライド装置62は、インクヘッドホルダー60を主走査方向と直交して交差するように上下上方向に移動するものに限られるものではないことは勿論であり、主走査方向と交差する角度や方向は設計に応じて適宜に変更するようにしてよい。
【0073】
(2)上記した実施の形態においては、キャリッジ12とキャリッジ14を分離可能に連結する連結手段がマグネット70とマグネット72とにより構成されるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、連結手段の具体的な構成やその総数、配置位置などは適宜変更可能なものである。例えば、マグネットと鉄板とによって連結手段を構成するようにしてもよい。
【0074】
(3)上記した実施の形態においては、インクヘッド16ならびにカッティングヘッド20が主走査方向に移動し、記録紙200が副走査方向に移動するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、例えば、記録紙200は搬送せずに、インクヘッド16ならびにカッティングヘッド20が主走査方向と副走査方向とに移動する、所謂、フラットベットタイプとして構成してもよい。
【0075】
(4)上記した実施の形態ならびに上記(1)乃至(3)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、所望の媒体に印刷するとともに、当該印刷した画像を切り抜くことができるため、各種のポスターの作成や広告用ディスプレーの作成などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタの概略構成説明図である。
【図2】図2は、図1の要部を模式的に示した説明図であり、一部を破断した図1のA矢視要部説明図である。
【図3】図3は、図1の要部を模式的に示した説明図であり、一部を破断した図2のB矢視要部説明図である。
【図4】図4は、図1の要部を模式的に示した説明図であり、固定系部材である壁部を取り払った状態における図2のC矢視要部説明図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタの動作説明図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタの動作説明図である。
【符号の説明】
【0078】
12、14 キャリッジ
16 インクヘッド
20 カッティングヘッド
22 メンテナンスユニット
38 カッター
60 インクヘッドホルダー
60a、60e 端部
60c 孔部
60d アーム部
62 スライド装置
62a ガイドレール
62b 直動ブロック
64 モーター
64a 回転軸
66 係止部材
66a 先端部
68 壁部
68a 孔部
100 インクジェットプリンタ
112 基台部材
114 ベース部材
116L、116R 側方部材
118 側方ユニット
120 中央壁
122 ガイドレール
124 駆動ベルト
200 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体上にインクを吐出して印刷を行うとともに前記媒体を切断可能なインクジェットプリンタにおいて、
媒体に対して所定の方向に相対的に移動可能に支持された第1のキャリッジと、
前記媒体に対して前記所定の方向に相対的に移動可能に支持されるとともに前記第1のキャリッジの前記所定の方向における側方に位置するように並設された第2のキャリッジと、
前記第1のキャリッジに前記所定の方向と交差する方向に移動自在に配設されたスライド装置と、
前記スライド装置に固定的に配置されるとともに前記媒体上にインクを吐出可能なインクヘッドと、
前記第2のキャリッジに固定的に配置されるとともに前記媒体を切断可能なカッティングヘッドと、
前記第1のキャリッジの前記所定の方向への移動ならびに前記スライド装置の前記所定の方向と交差する方向への移動に伴って移動して、固定系部位と係合離脱自在に係止する係止部材と、
前記第1のキャリッジと前記第2のキャリッジとを分離可能に連結する連結手段と
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
媒体上にインクを吐出して印刷を行うとともに前記媒体を切断可能なインクジェットプリンタにおいて、
媒体に対して所定の方向に相対的に移動可能に支持された第1のキャリッジと、
前記媒体に対して前記所定の方向に相対的に移動可能に支持されるとともに前記第1のキャリッジの前記所定の方向における側方に位置するように並設された第2のキャリッジと、
前記第1のキャリッジに前記所定の方向と交差する方向に移動自在に配設されたスライド装置と、
前記スライド装置に固定的に配置されるとともに前記媒体上にインクを吐出可能なインクヘッドと、
前記第2のキャリッジに固定的に配置されるとともに前記媒体を切断可能なカッティングヘッドと、
前記第1のキャリッジの前記所定の方向への移動ならびに前記スライド装置の前記所定の方向と交差する方向への移動に伴って移動して、固定系部位と係合離脱自在に係止する係止部材と、
前記第1のキャリッジと前記第2のキャリッジとを分離可能に連結する連結手段と
を有し、
前記媒体に印刷する場合には、前記係止部材を前記固定系部位から離脱させて、前記第1のキャリッジを前記固定系部位から離脱させるとともに、前記連結手段によって前記第1のキャリッジと前記第2のキャリッジとを連結し、前記第1のキャリッジに配置されたインクヘッドと前記第2のキャリッジに配置されたカッティングヘッドとを一体的に移動し、
前記媒体を切断する場合には、前記係止部材を前記固定系部位に係合させて、前記第1のキャリッジを前記固定系部位に係合するとともに、前記連結手段によって前記第1のキャリッジと前記第2のキャリッジとを分離し、前記第2のキャリッジに配置されたカッティングヘッドのみを移動する
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記スライド装置は、
前記第1のキャリッジの壁面に前記所定の方向と交差する方向に延長して配設されたガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って移動自在に配設された摺動ブロックと
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記インクヘッドは、前記摺動ブロックに対して固定的に配置された
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項5】
請求項3または4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおいて、さらに、
前記摺動ブロックを駆動する駆動手段を有する
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記所定の方向と交差する方向は、前記所定の方向と直交する方向である
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記係止部材は、固定系部位方向へ突出形成されるとともに屈曲した先端部を備え、
前記固定系部位は、前記係止部材の前記先端部が係合する孔部を備えた
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記連結手段は、マグネットにより構成されている
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項9】
請求項8に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記マグネットの吸着力は、前記係止部材と固定系部位との係合による係合力より小さい
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−152606(P2007−152606A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347527(P2005−347527)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000116057)ローランドディー.ジー.株式会社 (163)
【Fターム(参考)】