説明

インクジェットプリンタ

【課題】印刷ヘッドのノズルの先端を簡単にクリーニングすることができる、インクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】インクジェットプリンタ10は、筐体12を含む。筐体12には、印刷ヘッド54が左右方向に移動可能に設けられる。印刷ヘッド54による印刷領域において、印刷ヘッド54の下方には、被印刷物Pを下から受けるための受け部材70が設けられる。受け部材70は、筐体12に対して、前後方向に移動可能に設けられる。受け部材70は、後方に移動した際、印刷位置に配置され、逆に、前方に移動した際、印刷ヘッド54と受け部材70との間に印刷ヘッド54のノズルの先端をクリーニングするための空間部Sが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクジェットプリンタに関し、特に、たとえば用紙などの薄状の被印刷物の表面に文字や図柄などを印刷することができるインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェットプリンタには、たとえば用紙などの薄状の被印刷物の表面(上面)に印刷ヘッドで文字や図柄などを印刷する際にその被印刷物を下から受けるためのたとえばプラテンなどの受け部材が、印刷領域に設けられている(たとえば特許文献1、2参照)。
このような従来のインクジェットプリンタでは、被印刷物の表面に文字や図柄などを印刷する際に被印刷物が受け部材で下から受けられるので、たとえば用紙などの薄状の被印刷物の表面に文字や図柄などを綺麗に印刷することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−248547号公報
【特許文献2】特開平7−40533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のインクジェットプリンタでは、ノズルクリーニング機構を有するものもあるが、ノズルクリーニング機構を有するものであっても、使用状態などにより、印刷ヘッドのノズルの先端にインクが残り、残ったインクが乾燥して固まり、印刷ヘッドのノズルの先端の少なくとも一部分を塞いでしまう場合がある。この場合、もはや綺麗に印刷することはできず、最悪の場合には何も印刷することができなくなってしまう。そのため、この場合、印刷ヘッドのノズルの先端を、たとえばインクの溶剤を染み込ませたティッシュなどの拭取具を用いて手作業でクリーニングすることが考えられる。
しかしながら、従来のインクジェットプリンタでは、印刷領域において、印刷ヘッドの下方に受け部材があるので、印刷ヘッドのノズルの先端を手作業でクリーニングしようとしても、印刷ヘッドの下方の受け部材が邪魔になって、印刷ヘッドの先端をうまくクリーニングすることができない。さらに、従来のインクジェットプリンタでは、非印刷領域においても、印刷ヘッドの下方にたとえば不要なインクを吸収するパージユニットなどの部材が存在するので、印刷ヘッドのノズルの先端を手作業でうまくクリーニングすることができない。
また、このような従来のインクジェットプリンタでは、一部分を分解し、印刷ヘッドや受け部材を取り外して、印刷ヘッドのノズルの先端を手作業でクリーニングすることが考えられるが、その分解作業や逆に組立て作業は、大変煩雑な作業であって、特に一般のユーザにはできないか、または、できたとしても多大な労力を費やしてしまう。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、印刷ヘッドのノズルの先端を簡単にクリーニングすることができる、インクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかるインクジェットプリンタは、筐体と、筐体の内部に水平方向に移動可能に設けられた印刷ヘッドと、印刷ヘッドによる印刷領域に配置され、印刷ヘッドによって印刷される被印刷物を下から受けるための受け部材とを備えたインクジェットプリンタにおいて、印刷ヘッドの移動可能な水平方向と同じ方向における受け部材の少なくとも一部分が、印刷ヘッドの移動可能な水平方向に交差する別の水平方向に移動可能に形成され、受け部材のその少なくとも一部分をその別の水平方向に移動することによって、印刷ヘッドの先端をクリーニングしやすくするための空間部が、印刷ヘッドと受け部材のその少なくとも一部分との間の部分から筐体の外部に通じるように形成されることを特徴とする、インクジェットプリンタである。
この発明にかかるインクジェットプリンタでは、印刷ヘッドの移動可能な水平方向は、筐体の左右方向であり、印刷ヘッドの移動可能な水平方向に交差する別の水平方向は、筐体の前後方向であり、受け部材のその少なくとも一部分は、最も後方に移動された際に、印刷ヘッドによる印刷領域に配置されるように形成されることが好ましい。
さらに、この発明にかかるインクジェットプリンタでは、受け部材のその少なくとも一部分を最も後方に移動した状態において、受け部材のその少なくとも一部分を筐体に対して固定するための固定手段を含むことが好ましい。
さらに、この発明にかかるインクジェットプリンタでは、受け部材のその少なくとも一部分は、受け部材の全体を含むことが好ましい。
さらに、この発明にかかるインクジェットプリンタでは、筐体の内部に設けられたフレームと、受け部材のその少なくとも一部分をフレームに前後方向に移動可能に取り付けるためのレールとを含むことが好ましい。
【0007】
この発明にかかるインクジェットプリンタでは、被印刷物の表面に文字や図柄などを印刷する際に被印刷物が受け部材で下から受けられるので、たとえば用紙などの薄状の被印刷物の表面に文字や図柄などを綺麗に印刷することができる。
また、この発明にかかるインクジェットプリンタでは、受け部材のその少なくとも一部分をその別の水平方向に移動することによって、印刷ヘッドの先端をクリーニングしやすくするための空間部が、印刷ヘッドと受け部材のその少なくとも一部分との間の部分から筐体の外部に通じるように形成されるので、印刷ヘッドのノズルの先端を、たとえばインクの溶剤を染み込ませたティッシュなどの拭取具を用いて手作業で簡単にクリーニングすることができる。
さらに、この発明にかかるインクジェットプリンタにおいて、印刷ヘッドの移動可能な水平方向が筐体の左右方向であり、印刷ヘッドの移動可能な水平方向に交差する別の水平方向が筐体の前後方向であり、受け部材のその少なくとも一部分が最も後方に移動された際に印刷ヘッドによる印刷領域に配置されるように形成される場合には、受け部材のその少なくとも一部分を最も後方に移動するだけで印刷ヘッドによる印刷領域に簡単に配置することができる。
さらに、この発明にかかるインクジェットプリンタにおいて、受け部材のその少なくとも一部分を最も後方に移動した状態において受け部材のその少なくとも一部分を筐体に対して固定するための固定手段を含む場合には、受け部材を印刷ヘッドによる印刷領域に固定することができる。
さらに、この発明にかかるインクジェットプリンタにおいて、受け部材のその少なくとも一部分が受け部材の全体を含む場合には、印刷ヘッドの先端をクリーニングしやすくするための空間部が受け部材の全体に関連して形成されるので、印刷ヘッドの先端をさらにクリーニングしやすくなる。
さらに、この発明にかかるインクジェットプリンタにおいて、筐体の内部に設けられたフレームと、受け部材のその少なくとも一部分をフレームに前後方向に移動可能に取り付けるためのレールとを含む場合には、受け部材を十分に前方に移動することができるので、印刷ヘッドの先端をクリーニングしやすくするための空間部を十分に広く取ることができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、たとえば用紙などの薄状の被印刷物の表面に文字や図柄などを綺麗に印刷することができるとともに、印刷ヘッドのノズルの先端を容易にクリーニングすることができる、インクジェットプリンタが得られる。
【0009】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明にかかるインクジェットプリンタの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示すインクジェットプリンタにおいて上部カバーを開いた状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示すインクジェットプリンタの概略側面図解図である。
【図4】図1に示すインクジェットプリンタにおいて受け部材などを前方に移動した状態を示す概略側面図解図である。
【図5】図1に示すインクジェットプリンタにおいて受け部材などを前方に移動した状態を示す要部平面図解図である。
【図6】図1に示すインクジェットプリンタにおいて、紙送りローラ、紙押えローラおよびキャリッジなどの関係を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すインクジェットプリンタ10は、筐体12を含む。筐体12は、下方の底部14と、その上方の中間部16と、それらの上方の上部カバー18とを含む。筐体12の底部14は、比較的浅い箱形に形成される。また、中間部16は、筐体12の前面部の上側部分と、その上側部分の両端および上端から後方にのびる部分とを含み、その上側部分の中央には、窪んだ取っ手16aが形成される。なお、このインクジェットプリンタ10において、筐体12の取っ手16aのある側を前、前側または前方などと適宜に呼び、それとは反対側を後、後側または後方などと適宜に呼ぶ。さらに、上部カバー18は、底部14および中間部16の前方部分を除いて底部14および中間部16を覆うようにフード状に形成される。上部カバー18の前下端中央には、印刷された用紙などの被印刷物Pを筐体12の外部に排出する横長の長方形状の排紙口18aが形成される。
【0012】
筐体12の内部には、フレーム20が筐体12の底部14に取り付けられる。また、筐体12の中間部16は、図3、図4および図5に示すように、水平方向でもある左右方向における両端部分が、たとえば水平方向でもある前後方向に伸縮する3段のレール部分22a、22b、22cを有する2組のレール22、22を介して、フレーム20に取り付けられる。この場合、筐体12の中間部16を筐体12の前後方向に移動することができるようにするために、フレーム20に2組のレール22、22の1段目のレール部分22a、22aが取り付けられ、2組のレール22、22の3段目のレール部分22c、22cに筐体12の中間部16が取り付けられる。さらに、フレーム20には、筐体12の上カバー18の前側部分が図2に示すように上下方向に開閉可能になるように、上部カバー18の後下端部分が回動可能に支持される。
【0013】
筐体12の後側には、図3および図4に示すように、給紙部30が設けられる。給紙部30は、用紙などの薄状の被印刷物Pを筐体12の内部の後述する紙送り部40に供給するためのものである。給紙部30は、筐体12の後部に設けられる用紙などの被印刷物Pを保持する紙保持部32を含む。紙保持部32の前方には、紙保持部32に保持されている被印刷物Pを紙送り部40に送る給紙ローラ(図示せず)などが設けられる。したがって、この給紙部30によって、用紙などの被印刷物Pを紙送り部40に供給することができる。
【0014】
筐体12の内部において給紙部30の前方には、紙送り部40が設けられる。紙送り部40は、用紙などの被印刷物Pに印刷する際に被印刷物Pを後述の印刷部50による印刷領域に送るためのものであり、図2などに示すように、フレーム20に取り付けられる左右方向にのびる紙送りローラ42を含む。紙送りローラ42は、紙送り用モータ(図示せず)に連結され、紙送り用モータによって回転することができる。また、筐体12の上部カバー18の内側には、紙押えローラ44が取り付けられる。この紙押えローラ44は、上部カバー18を閉じることによって、図6に示すように、紙送りローラ42と協働して用紙などの被印刷物Pを挟持することができる。そのため、このインクジェットプリンタ10は、グリッドロールタイプのインクジェットプリンタとして形成され、用紙などの被印刷物Pを紙送り部40によって印刷領域に送ることができる。また、紙送りローラ42には、図2に示すように、たとえば円板状のパルスエンコーダ46が取り付けられる。そのため、このパルスエンコーダ46によって、紙送りローラ42の回転数すなわち用紙などの被印刷物Pの位置を検出することができる。
【0015】
筐体12の内部において紙送り部40の前方には、印刷部50が設けられる。印刷部50は、箱形のキャリッジ52を含む。キャリッジ52には、下方に印刷ヘッド54が設けられ、上方に印刷ヘッド54に通じるインクカートリッジ56が交換可能に取り付けられる。この場合、印刷ヘッド54のノズルは、下方を向くように設けられる。なお、インクカートリッジ56には、たとえば顔料を用いた溶剤系のインクが充填されている。また、キャリッジ52の後部の筒状の挿通部52aには、フレーム20に取り付けられた左右方向にのびるガイド軸58が通される。さらに、キャリッジ52の上部の板状の支持部52bが、フレーム20に取り付けられた左右方向にのびる断面コ字形のガイド部材60で支持される。また、特に図6に示すように、キャリッジ52の後部の固着部52cには、タイミングベルト62の一部分が固着される。そのタイミングベルト62は、左右方向に張られるとともに、フレーム20に取り付けられた移動用モータ64の軸に固着されたタイミングギア66に連結される。そのため、移動用モータ64を駆動することによって、タイミングギア66およびタイミングベルト62を介して、キャリッジ52(印刷ヘッド54)を左右方向に移動することができる。また、キャリッジ52の近傍には、図2および図6に示すように、リニアエンコーダ68が設けられる。このリニアエンコーダ68によって、キャリッジ52ないしは印刷ヘッド54の左右方向における位置を検出することができる。
【0016】
キャリッジ52(印刷ヘッド54)の左右方向に移動可能な領域のうち、中間の領域が印刷ヘッド54による印刷領域とされ、両側の領域が非印刷領域とされる。なお、非印刷領域のうち、特に、右側の領域が、印刷ヘッド54のノズル内のインクの乾燥を防止するために、印刷ヘッド54のノズルの先端をキャップするキャッピングステーション(図示せず)とされ、左側の領域が印刷ヘッド54の折返し領域とされる。
【0017】
印刷領域には、印刷ヘッド54によって用紙などの非印刷物Pに印刷する際に非印刷物Pを下から受けるための受け部材70が、キャリッジ52の印刷ヘッド54の下方に位置するように設けられる。受け部材70の上面には、不要なインクを吸収するためのフェルトからなる多数の吸収パッド72が間隔を隔てて設けられる。
また、印刷領域の左側の非印刷領域(折返し領域)には、不要なインクを吸収するためのパージユニット74が設けられる。このパージユニット74は、受け部材70と一体的に形成される。
【0018】
受け部材70およびパージユニット74は、図3、図4および図5に示すように、支持台76を介して、2組のレール22、22の3段目のレール部分22c、22cに取り付けられる。そのため、受け部材70およびパージユニット74は、筐体12の中間部16とともに、たとえば筐体12の中間部16の取っ手16aを用いて、筐体12の前後方向に移動することができる。この場合、受け部材70は、最も後方に移動された際に、印刷ヘッド54による印刷領域に配置される。また、受け部材70は、前方に移動された際に、印刷ヘッド54の先端をクリーニングしやすくするための空間部Sが、印刷ヘッド54と受け部材70との間の部分から筐体12の外部に通じるように形成される。
【0019】
また、受け部材70を支持する支持台76の後方には、受け部材70を最も後方に移動した状態で受け部材70を筐体12(フレーム20)に対して固定するための固定手段としての固定部80が設けられる。固定部80は、受け部材70の後部に設けられる嵌合部材82を含む。嵌合部材82は、たとえばゴムなどの弾性体からなり、後方に開口を有するように略C字状に形成される。また、フレーム20には、受け部材70を最も後方に移動した際に嵌合部材82に嵌まり合う断面円形の嵌合軸84が形成される。そのため、受け部材70を最も後方に移動した場合、嵌合軸84が嵌合部材82に嵌り合い、受け部材70が筐体12(フレーム20)に対して固定される。
【0020】
筐体12の内部において、印刷部50の前方には、排紙部(図示せず)が形成される。排紙部は、印刷された用紙などの被印刷物Pを、排紙口18aを通して筐体12の前方に排出するためのものである。この排紙部によって、印刷部50で印刷された用紙などの被印刷物Pを、排紙口18aを通して、筐体12の前方に排出することができる。
【0021】
このインクジェットプリンタ10では、印刷時において、被印刷物Pの表面に文字や図柄などを印刷する際に被印刷物Pが受け部材70で下から受けられるので、たとえば用紙などの薄状の被印刷物Pの表面に文字や図柄などを綺麗に印刷することができる。
【0022】
また、このインクジェットプリンタ10では、クリーニング時などのメンテナンス時において、受け部材70を前方に移動することによって、印刷ヘッド54の先端をクリーニングしやすくするための空間部Sが、印刷ヘッド54と受け部材70との間の部分から筐体12の外部に通じるように形成されるので、印刷ヘッド54のノズルの先端を、たとえばインクの溶剤を染み込ませたティッシュなどの拭取具を用いて手作業で簡単にクリーニングすることができる。この場合、キャリッジ52(印刷ヘッド54)は、その位置を目視またリニアエンコーダ68などで確認しながら、移動用モータ64などによって印刷位置に移動すればよい。
【0023】
さらに、このインクジェットプリンタ10では、受け部材70が最も後方に移動された際に印刷ヘッド54による印刷領域に配置されるように形成されるので、受け部材70を最も後方に移動するだけで印刷ヘッド54による印刷領域に簡単に配置することができる。
【0024】
さらに、このインクジェットプリンタ10では、受け部材70を最も後方に移動した状態において受け部材70を筐体12に対して固定するための固定部70を含むので、受け部材70を印刷ヘッド54による印刷領域に固定することができる。
【0025】
さらに、このインクジェットプリンタ10では、印刷ヘッド54の先端をクリーニングしやすくするための空間部Sが受け部材70の左右方向における全体に関連して形成されるので、そのような空間部が受け部材70の左右方向における一部分に関連して形成される場合に比べて、印刷ヘッド54の先端をさらにクリーニングしやすくなる。
【0026】
さらに、このインクジェットプリンタ10では、筐体12の内部に設けられたフレーム20と、受け部材70をフレーム20に前後方向に移動可能に取り付けるためのレール22と含むので、受け部材70を十分に前方に移動することができ、印刷ヘッド54の先端をクリーニングしやすくするための空間部Sを十分に広く取ることができる。このインクジェットプリンタ10では、特に3段のレール22を用いているので、単段または2段のレールを用いる場合に比べて、受け部材70をより前方に移動することができ、クリーニングのための空間部Sをさらに広く取ることができ、印刷ヘッド54のノズルの先端の下方に手などがさらに入れやすくなり、印刷ヘッド54のノズルの先端がさらにクリーニングしやすくなる。
【0027】
なお、上述のインクジェットプリンタ10では、ピエゾ素子を用いた印刷ヘッドが用いられているが、この発明では、バブル素子など他の素子を用いた印刷ヘッドが用いられてもよい。
【0028】
また、上述のインクジェットプリンタ10では、受け部材70およびパージユニット74が前後方向に移動可能に形成されているが、この発明では、受け部材70のみまたは受け部材70の左右方向における一部分のみが前後方向に移動可能に形成されてもよい。この場合も、受け部材70の少なくとも一部分を前後方向に移動することができるので、印刷ヘッド54のノズルの先端がクリーニングしやすい。なお、上述のインクジェットプリンタ10では、受け部材70を前後方向に移動するための移動手段として3段のレール22が用いられているが、3段のレール22の代わりに、単段、2段または4段以上のレールや他の移動機構が用いられてもよい。
【0029】
さらに、上述のインクジェットプリンタ10では、受け部材70が左右方向に直交する前後方向に移動可能に形成されているが、この発明では、受け部材70は左右方向に交差する別の水平方向に移動可能に形成されてもよい。たとえば、受け部材70は、前後方向とは斜めの方向に移動可能に形成されてもよい。
【0030】
また、上述のインクジェットプリンタ10では、顔料を用いた溶剤系のインクが使用されているが、この発明にかかるインクジェットプリンタでは、顔料を用いた溶剤系のインクに限らず、染料を用いたインクや水性のインクが使用されてれもよい。これは、このようなインクを使用しても、顔料を用いた溶剤系のインクを使用する場合と同様に、印刷ヘッドのノズルの詰まりの問題を生じることがあるからである。
【0031】
また、この発明にかかるインクジェットプリンタでは、印刷される被印刷物としては、用紙に限らず、シート状や帯状のPETフィルムなどの合成樹脂製フィルムやラベルなどの薄状のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明にかかるインクジェットプリンタは、特にたとえば顔料を用いた溶剤系のインクやUVインクなど乾燥して固まりやすいインクを使用して印刷するインクジェットプリンタに好適に利用される。
【符号の説明】
【0033】
10 インクジェットプリンタ
12 筐体
14 底部
16 中間部
16a 取っ手
18 上カバー
18a 排紙口
20 フレーム
22 レール
22a、22b、22c レール部分
30 給紙部
32 紙保持部
40 紙送り部
42 紙送りローラ
44 紙押えローラ
46 パルスエンコーダ
50 印刷部
52 キャリッジ
52a 挿通部
52b 支持部
52c 固着部
54 印刷ヘッド
56 インクカートリッジ
58 ガイド軸
60 ガイド部材
62 タイミングベルト
64 移動用モータ
66 タイミングギア
68 リニアエンコーダ
70 受け部材
72 吸収パッド
74 パージユニット
76 支持台
80 固定部
82 嵌合部材
84 嵌合軸
P 被印刷物
S 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体、
前記筐体の内部に水平方向に移動可能に設けられた印刷ヘッド、および
前記印刷ヘッドによる印刷領域に配置され、前記印刷ヘッドによって印刷される被印刷物を下から受けるための受け部材を備えたインクジェットプリンタにおいて、
前記印刷ヘッドの移動可能な水平方向と同じ方向における前記受け部材の少なくとも一部分が、前記印刷ヘッドの移動可能な水平方向に交差する別の水平方向に移動可能に形成され、
前記受け部材の前記少なくとも一部分を前記別の水平方向に移動することによって、前記印刷ヘッドの先端をクリーニングしやすくするための空間部が、前記印刷ヘッドと前記受け部材の前記少なくとも一部分との間の部分から前記筐体の外部に通じるように形成されることを特徴とする、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記印刷ヘッドの移動可能な水平方向は、前記筐体の左右方向であり、
前記印刷ヘッドの移動可能な水平方向に交差する別の水平方向は、前記筐体の前後方向であり、
前記受け部材の前記少なくとも一部分は、最も後方に移動された際に、前記印刷ヘッドによる印刷領域に配置されるように形成される、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記受け部材の前記少なくとも一部分を最も後方に移動した状態において、前記受け部材の前記少なくとも一部分を前記筐体に対して固定するための固定手段を含む、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記受け部材の前記少なくとも一部分は、前記受け部材の全体を含む、請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記筐体の内部に設けられたフレーム、および
前記受け部材の前記少なくとも一部分を前記フレームに前後方向に移動可能に取り付けるためのレールを含む、請求項4に記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−121247(P2011−121247A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280054(P2009−280054)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(509339935)
【Fターム(参考)】