説明

インクジェットプリンタ

【課題】画像記録中のノズル圧を一定の負圧に保ちながら、ヘッドを通してインクを往復動させ、ヘッドの冷却性能も一定に保つ。
【解決手段】ノズルに連通する第1及び第2のインク導入部を有するインクヘッドと、第1の導入部と第1の経路を介して接続される第1のインク貯留部と、第2の導入部と第2の経路を介して接続される第2のインク貯留部と、これら貯留部内に空気を供給及び空気を排出することで、これら貯留部内を加減圧する加減圧手段と、加減圧手段の制御手段とを有するインクジェットプリンタであって、制御手段は、ノズル圧をインク吐出可能な負圧に維持しつつ、第1の貯留部内を加圧すると共に第2の貯留部内を減圧する第1のモードと、ノズル圧をインク吐出可能な負圧に維持しつつ、第1の貯留部内を減圧すると共に第2の貯留部内を加圧する第2のモードとを交互に繰り返してヘッド内のインク流を逆転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクヘッドに形成されたノズルから記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ノズル面に複数のノズルが形成されたインクヘッドを搭載し、これらノズルからインクを吐出することによって記録媒体に画像を記録(印刷)する画像記録装置、所謂インクジェットプリンタが知られている。このようなインクジェットプリンタのインクヘッドは、圧電素子又は発熱素子等からなるアクチュエータを有し、このアクチュエータを駆動させてノズルからインクを吐出する。アクチュエータの駆動は、アクチュエータ自体による発熱と、アクチュエータの駆動部(ドライブIC)による発熱との双方を伴っている。これらの発熱は、記録速度の高速化やラインヘッドの採用によるノズル数の増大により、増加する傾向にある。このような発熱によるプリンタの高熱化を抑制するために、インクヘッド内に比較的温度の低いインクを流入させて、そのインクを用いてインクヘッドを冷却する技術が知られている。
【0003】
また、インク吐出の頻度が低いノズルにおけるインクは、揮発によって増粘する。ノズル内のインクが増粘してしまうと、インク吐出の妨げになったり、インク吐出量が変化したりしてしまうなどの不具合が発生してしまう。そこで、インクヘッド内にインクを流入させることでノズル近傍のインクを攪拌させて、インクの増粘を防止する技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、インクヘッド内にインクを供給する供給経路と、インクヘッドからインクを排出する排出経路とを有し、供給経路の一端側にインクカートリッジを、排出経路の一端側にサブタンクをそれぞれ接続し、インクカートリッジとサブタンクとの間でインクを往復動させることが開示されている。
【0005】
例えば、特許文献2には、インクヘッド内にインクを供給する加圧可能な上流サブタンクと、インクヘッドから排出されたインクを貯留する減圧可能な下流サブタンクとを有し、下流サブタンクから上流サブタンクへインクを戻して循環させる方式が開示されている。また、ノズルの詰まり回復を目的として、メンテナンス中に上流サブタンクと下流サブタンクとの間でインク流を反転させることが記載されている。
【0006】
例えば、特許文献3には、画像記録時はインクを循環させず、パージ時のみポンプでインクを循環させ、インク循環経路に付着している気泡を剥がしてインクタンクに回収する方式が開示されている。この方式では、ポンプを正逆回転させることによりインクの流れを逆転させて、気泡に揺さぶりを与えて効率よく除去可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3419220号公報
【特許文献2】特開2009−101668号公報
【特許文献3】特開2000−33714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のインクジェットプリンタにおいて、一般的に、インクヘッドのノズル内は負圧に保たれている。この負圧により、ノズル内には、インクが重力方向上方に窪んだメニスカスが形成され、ノズルからインクが垂れないようになっている。
【0009】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、ノズルの増粘を防止するために、画像記録中も、インクヘッドを通してインクを往復動させる。しかし、この場合、インクヘッド中にインクの流れによる圧損が発生する。この圧損と、インクカートリッジ、インクヘッド及びサブタンクの水頭差とによって決まるノズル圧がメニスカスの耐圧範囲から外れた正圧になると、ノズルからインクが漏れてインクを正常に吐出することができなくなる。また、所定の負圧範囲を超えても、ノズルから空気が吸い込まれてインクを正常に吐出することができなくなる。さらに、上記2つの条件を満たしても、圧力変動が大きい場合には、ノズルからのインク吐出量が変動し、記録される画像の濃度が変わってしまい、記録品質が低下してしまう。また、ノズルを通過するインクの量がその圧力変動で変化してしまい、一定の冷却性能を維持することが困難となってしまう。
【0010】
具体的には、特許文献1には、画像記録中もインクを往復動させることが可能であると記載されているが、インクカートリッジ内を加圧させてインクをサブタンクに持ち上げる場合、インクヘッドのノズルに正圧が加えられることも明記されている。特許文献1では、このような状態でも画像記録可能としているが、一般的に、ノズルに正圧がかかった状態では画像記録を行わない。なぜならば、正圧がかかった状態では、ノズルからインクが漏れ出すことがあり、また、この状態で無理に画像記録を行えば、インク吐出量の変化により記録品質の劣化につながるからである。
つまり、特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、画像記録中にノズル内の負圧を維持した状態でインクを往復動させることができない。
【0011】
また、特許文献2に記載のインクジェットプリンタでは、ノズルの詰まりを解消するためにのみインクを往復動させており、やはり、画像記録中にノズル内の負圧(メニスカス)を維持した状態でインクを往復動させることは考慮していない。また、画像記録時は、インクを循環させるために、インクに直接接触(接液)するポンプが必要となる。従って、インクの材料とポンプなどの循環手段の材料との適合が必要となり、材料の選択肢が限られてしまう。さらに、インクを循環させるための帰還経路も必要となり、インクヘッドを通してインクを流すために上流サブタンクと下流サブタンクを設けるなど、インク経路が複雑でかつスペースを要し、コスト高となってしまう。
【0012】
さらに、特許文献3に記載のインクジェットプリンタでも、特許文献2と同様に、インクを循環するための接液する循環手段に関する問題がある。また、インクを往復動させるパージ時には、ノズルからのインク漏れが生じないように設計できたとしても、画像記録に適したノズル圧を維持することは触れられていない。つまり、画像記録中にインクを往復動させてインクの増粘を防止したり、インクヘッドを冷却したりするには不向きな構成である。
【0013】
具体的には、特許文献3には、どのようにしてノズル内に負圧を形成するのか開示されていない。インクタンクがインクヘッドよりも重力方向上方にあるため、大気開放されているとなれば、ノズルには正圧がかかることとなる。また、ポンプを駆動させることで、ノズルには必ず正圧が加えられる。
つまり、引用文献3に記載のインクジェットプリンタにおいても、画像記録中に負圧を維持した状態でインクを往復動させることができない。
【0014】
本発明は、上述の問題を鑑みてなされたものであり、簡便な構成で、画像記録中もノズル圧を一定の負圧に保ちながら、インクヘッドを通してインクを往復動させ、かつインクによるインクヘッドの冷却性能も一定に保つことができるインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施形態は、インクを吐出する複数のノズルを有し、該ノズルに連通する第1及び第2のインク導入部を有するインクヘッドと、前記第1のインク導入部と第1のインク経路を介して接続された第1のインク貯留部と、前記第2のインク導入部と第2のインク経路を介して接続された第2のインク貯留部と、前記第1及び第2のインク貯留部内に空気を供給、及び前記第1及び第2のインク貯留部内の空気を排出することで、前記第1及び第2のインク貯留部内を加圧及び減圧する加減圧手段と、前記第1及び第2のインク貯留部内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて前記加減圧手段を制御する制御手段と、を具備するインクジェットプリンタにおいて、前記制御手段は、前記ノズルに加える圧力を、該ノズルからインク吐出可能な負圧に維持しつつ、前記第1のインク貯留部内を加圧すると共に、前記第2のインク貯留部内を減圧するように、前記加減圧手段を制御する第1の加減圧モードと、前記ノズルに加える圧力を、該ノズルからインク吐出可能な負圧に維持しつつ、前記第1のインク貯留部内を減圧すると共に、前記第2のインク貯留部内を加圧するように、前記加減圧手段を制御する第2の加減圧モードと、を有し、前記第1の加減圧モードと第2の加減圧モードとを交互に繰り返すことで、前記インクヘッド内のインクの流れる向きを逆転させるインクジェットプリンタである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡便な構成で、画像記録中もノズル圧を一定の負圧に保ちながら、インクヘッドを通してインクを往復動させ、かつインクによるインクヘッドの冷却性能も一定に保つことができるインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、インクジェットプリンタの構成を示す概略図である。
【図2】図2は、第1の実施形態におけるインクジェットプリンタのインク経路を示す概略図である。
【図3】図3は、インクジェットプリンタのインク経路を直線上に示した概略図である。
【図4】図4は、インクジェットプリンタに搭載されているインクヘッドの断面図である。
【図5】図5は、インクジェットプリンタに搭載されているインクヘッドの斜視図である。
【図6】図6は、ノズル圧一定、インク流量可変としてインクタンクからインクカートリッジへインクを流したときのインク温度と流量とのグラフを示す図である。
【図7】図7は、ノズル圧一定、インク流量可変としてインクカートリッジからインクタンクへインクを流したときのインク温度と流量とのグラフを示す図である。
【図8】図8は、ノズル圧及びインク流量を一定としてインクタンクからインクカートリッジへインクを流したときのインクカートリッジ及びインクタンク内の圧力制御のグラフを示す図である。
【図9】図9は、ノズル圧及びインク流量を一定としてインクカートリッジからインクタンクへインクを流したときのインクカートリッジ及びインクタンク内の圧力制御のグラフを示す図である。
【図10】図10は、インク経路中のインク往復動時の圧力制御の時間変化のグラフを示す図である。
【図11】図11は、第1の実施形態におけるインクジェットプリンタのインク経路を示す概略図である。
【図12】図12は、インク経路中のインク往復動時の圧力制御の時間変化のグラフを示す図である。
【図13】図13は、図12に対応した各構成部の制御を示すタイムチャートである。
【図14】図14は、制御部によるインク経路中の制御を示すフローチャートである。
【図15】図15は、第2の実施形態におけるインクジェットプリンタのインク経路を示す概略図である。
【図16】図16は、第3の実施形態におけるインクジェットプリンタのインク経路を示す概略図である。
【図17】図17は、第3の実施形態におけるインク経路中のインク往復動時の圧力制御の時間変化のグラフを示す図である。
【図18】図18は、第4の実施形態におけるインクジェットプリンタのインク経路を示す概略図である。
【図19】図19は、第5の実施形態におけるインクジェットプリンタのインク経路を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、インクジェットプリンタ1の構成を示す概略図である。
インクジェットプリンタ1は、記録媒体2を搬送する搬送部3と、記録媒体2にインクを吐出するインクヘッド100を備えたインク経路4と、搬送部3及びインクヘッド100を始めとするインクジェットプリンタ1の各構成部を制御する制御部5と、を有している。なお、図示しないが、インクジェットプリンタ1は、上記構成部に加えて、記録媒体2を供給する供給部、画像記録された記録媒体2を排出する排出部、インクヘッド100のクリーニングを行うクリーニング部など、通常のインクジェットプリンタが備える構成を有している。
【0020】
インクジェットプリンタ1は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクで記録媒体2に画像を記録する。以下の説明及び図面では、代表的な1色のインクに関わるインク経路4のみが示されているが、インクジェットプリンタ1は、インク色ごとに同様のインク経路を備えている。
【0021】
図2は、インクジェットプリンタ1のインク経路4を示す概略図である。図3は、このインク経路4を直線上に示した概略図である。
インク経路4は、大別すると、記録媒体2にインクを吐出するインクヘッド100と、インクヘッド100に供給するインクを貯留するインク貯留部としてのインクカートリッジ60と、インクヘッド100から排出されるインクを貯留するインク貯留部としてのインクタンク50と、を有している。インクカートリッジ60とインクヘッド100とは、加温部30を介在して第1のインク経路(第1のチューブ)11によって接続されている。また、インクヘッド100とインクタンク50とは、冷却部40を介在して第2のインク経路(第2のチューブ)12によって接続されている。つまり、インク経路4は、インクカートリッジ60から加温部30を介してインクヘッド100へと、さらに、インクヘッド100から冷却部40を介してインクタンク50へと接続された経路である。
【0022】
まず、インクカートリッジ60の構成について説明する。
インクカートリッジ60は、外装61と、可撓性のスパウトパック62と、を有しており、密閉された外装61の中にスパウトパック62が装入されている。スパウトパック62内には、インクが充填されている。インクカートリッジ60は、第1のインク経路11に対して脱着自在に構成されており、第1のインク経路11の一端部に設けられた不図示の中空針がインクカートリッジ60内部のスパウトパック62に貫通されてスパウトパック62内のインクが第1のインク経路11に流れるように連結される。
【0023】
また、インクカートリッジ60には、外装61とスパウトパック62との間に連通する通路が設けられており、この通路に空気経路13の一端側が接続されている。また、空気経路13の他端側には、加減圧手段としてのポンプ21が設けられている。この空気経路13は、さらに、空気経路15の一端側と連通しており、空気経路15には、空気経路13内の圧力を検出する圧力検出手段としての圧力センサ72が設けられている。また、空気経路15の他端側には、電磁弁23が設けられている。例えばチューブポンプで構成されているポンプ21は、制御部5によって、正転により外装61の内部の空気を吸い出したり、逆転して外装61の内部に空気を押し込んだりするように制御される。すなわち、正転時にはスパウトパック環境が減圧され、逆転時には加圧される。このときの圧力が、圧力センサ72で検出される。電磁弁23は、ノーマルオープンタイプであり、ポンプ21が駆動されているときには閉じて外気と遮断する。電磁弁23を開くことで、外装61の内部の気室は大気開放される。
【0024】
次に、インクタンク50の構成について説明する。
インクタンク50の内部には、タンク内のインク液面を検出するためのフロート70が揺動自在に設けられており、フロート70には、図示されないマグネットが保持されている。インクタンク50の外側には、フロート70のマグネットと対向する位置に、ホール素子を備えたセンサ71が取り付けられている。第2のインク経路12の一端部は、インクタンク50の底面近くまで延びた不図示のパイプと連結している。
【0025】
インクタンク50の上面には、インクタンク50内の空気と連通する開口が設けられており、この開口に空気経路14の一端側が接続されている。また、空気経路14の他端側には、加減圧手段としてのポンプ22が設けられている。この空気経路14は、さらに、空気経路16の一端側と連通しており、空気経路16には、空気経路13内の圧力を検出する圧力検出手段としての圧力センサ73が設けられている。また、空気経路16の他端側には、電磁弁24が設けられている。例えばチューブポンプで構成されているポンプ22は、制御部5によって、正転によりインクタンク50の内部の空気を吸い出したり、逆転してインクタンク50の内部に空気を押し込んだりするように制御される。すなわち、正転時にはインクタンク50の内部の空気が減圧され、逆転時には加圧される。このときの圧力が、圧力センサ73で検出される。電磁弁24は、ノーマルクローズタイプであり、ポンプ22が駆動されているときには閉じて外気と遮断する。電磁弁24を開くことで、インクタンク50の内部の気室は大気開放される。
【0026】
次に、インク経路4中に設けられた加温部30及び冷却部40について説明する。
加温部30は、第1のインク経路11中の、インクヘッド100の近傍に配置されている。加温部30は、第1のインク経路11中に、例えば銅やアルミニウムのような熱伝導性の高い金属で作られたインク経路11aを有し、そこに発熱体31が巻き付けられている。発熱体31の外面は、熱伝導性の低い樹脂などでできたカバー32で覆われ、外気と断熱されている。
【0027】
冷却部40は、第2のインク経路12中の、インクタンク50の近傍に配置されている。冷却部40は、例えば、銅やアルミニウムのような熱伝導性の高い金属41で覆われたインク経路12aを有し、また、外気との接触面積を増やすために、金属部分の一部にフィン形状部42を有している。さらに、フィン形状部42に対向してファン43が配置されており、フィン形状部42に風を吹きつけて熱交換効率を高めている。
【0028】
図3に示すように、インク経路4において、加温部30がインクヘッド100の近くに配置されるのに対して、冷却部40はインクヘッド100から相対的に離れた位置に配置される。インク経路4中において、加温部30のところでインクが加温され始める位置をA、インクヘッド100のインク流入口の位置をB、インク流出口の位置をC、冷却部40のインクタンク50側の位置をDとし、V(AB)が経路AB間のインクの体積、V(BC)が経路BC間のインクの体積、つまりインクヘッド100内のインクの体積、V(CD)が経路CD間のインクの体積、つまりインクヘッド100から冷却部40の内部までの体積と定義する。
【0029】
次に、インクヘッド100の内部構造について、図4並びに図5を参照して説明する。
図4は、インクヘッド100の断面図であり、図5は、インクヘッド100の斜視図である。
インクヘッド100には、ベース103の一面側に、周囲を取り囲み中央が空洞部である枠102が接着され、この空洞部にあってベース103の前記一面側に圧電素子104が対をなして接着されている。枠102と圧電素子104とは、前記空洞部を塞ぐようにして、Z軸方向に同じ高さで設けられている。さらに、ノズルプレート101が、枠102と圧電素子104とに対してZ軸方向に積層され、接着されている。
【0030】
圧電素子104には、X軸方向に複数の溝が掘られており、これら溝がチャンネル104aを形成している。これらチャンネル104aは、Y軸方向に平行に掘られている。チャンネル104aは、ピッチ約170μm、幅85μm、深さ300μm程度である。対をなす2つの圧電素子104は、Y軸方向に半ピッチずらして配置されている。
【0031】
また、ノズルプレート101のノズル面101aには、各チャンネル104aの中央部のZ軸方向に、インクを吐出するための複数のノズル(ノズル孔)101bが形成されている。これらノズル孔101bは、Y軸方向に掘られた前記チャンネル104aに対応して、Y軸方向に配列されている。
【0032】
図5に示すように、ベース103には、対をなす圧電素子104の中央部に、Y軸方向に複数の孔103aが配列されている。これら孔103aは、例えば、直径1mm程度で、3mm間隔で配置された貫通孔である。同じく、枠102と圧電素子104とのX軸方向の隙間の位置にも、複数の孔103bが配列されている。
【0033】
ベース103の他面側には、流路部材105、106がZ軸方向に積層され、接着されている。流路部材105には、3本の平行な溝である経路がY軸方向に設けられている。3本の平行な経路のうち、ベース103の複数の孔103aと対向した位置にある1本の経路がインク流路105a、ベース103の複数の孔103bと対向した位置にある2本の経路がインク流路105bである。これらインク流路105a、105bに蓋をするようにして、流路部材105の上に流路部材106が接着されている。
【0034】
流路部材106には、ノズル101bに連通するインク導入部として、2本のパイプ状のインクポート107、108が設けられている。インクポート107の孔は、インク流路105aに、インクポート108の孔は、流路部材106の凸部106aの内部で2本のインク流路105bをつなぐ接続流路106bに、それぞれ接続されている。
【0035】
一端側がインクカートリッジ60に接続されている第1のインク経路11の他端側は、インクポート107に接続されている。また、一端側がインクタンク50に接続されている第2のインク経路12の他端側は、インクポート108に接続されている。
【0036】
続いて、インクヘッド100の内部のインクの流れについて簡単に説明する。
インクポート107から流入したインクは、インク流路105aを通ってインクヘッド100のY軸方向の幅全体に行き渡り、複数の孔103aから1対の圧電素子104の中央部に、インクヘッド100の幅全体に亘って供給される。供給されたインクは、ここで各圧電素子104の方向に分かれ、各チャンネル104a中を通って枠102と圧電素子104との隙間に達する。その後、複数の孔103bから2本のインク流路105bを通り、接続流路106bで合流して、インクポート108からインクヘッド100の外に流出する。
また、本実施形態のインクジェットプリンタ1のインク経路4では、上記流れとは逆向きに、インクポート108から流入したインクがインクポート107を通ってインクヘッド100の外に流出するように流れることもできる。
【0037】
インクヘッド100のチャンネル104aの電極配線は、ベース103の電極接続面103cで、ドライブIC110が搭載されたFPC109と接続されており、各チャンネル104aに電圧波形を加えることにより駆動を行う。インクヘッド100のベース103は、圧電素子104と比較して十分に熱伝導率の高い金属でできていることが好ましい。また、ベース103の中央部には、チャンネル104aの温度の代用としてインクの温度を検出するための温度センサ(サーミスタ)114が設けられている。
【0038】
インクポート107、108は、固定部材111に設けられた穴111c、111dを貫通しており、この貫通部分で接着されて固定部材111と一体となっている。また、固定部材111は、ヘッドカバー113とビス止めされて一体となっている。ヘッドカバー112、113は、組み合わせられることでインクポート107、108、ドライブIC110などを覆う箱形状となる。
【0039】
図4に示すように、ドライブIC110は、図示しないばね等の弾性部材でヘッドカバー112、113の内面に押圧されて密着している。密着性を高めるために、熱伝導性の良いグリス等が塗布される。
【0040】
温度センサ114の出力は、ベース103が熱伝導性の高い材質であることから、その裏側にあるチャンネル104a中を流れるインクの温度とほぼ同じ値を示す。インクの温度によってインクの粘性が変化するため、常に同じ体積のインクを吐出するためには、圧電素子104に与える電圧をそのインクの粘度に適した電圧に制御する必要がある。圧電素子104の部分のインク温度を直接検出するのは難しいため、温度センサ114で検出された温度がインク温度であるとする。
【0041】
圧電素子104が駆動されてインクがノズル101bから吐出されると、圧電素子104が発熱する。この発熱の一部は、吐出されるインクと共に外へ放熱される。また、この発熱の一部は、ベース103へ伝熱され、インクヘッド100の外気へ放熱される。残りの発熱の大半は、ベース103や流路部材105、106に蓄熱される。本実施形態では、これによるインクヘッド100の温度上昇を防止するために、インクヘッド100は、インクポート107からインクを流入させてインクポート108から流出させる、あるいは逆にインクポート108からインクを流入させてインクポート107から流出させることにより、吐出されるインク以外のインクが余分な熱を奪って流れるように設計されている。
【0042】
また、圧電素子104を駆動する際には、ドライブIC110が発熱する。この発熱は、ヘッドカバー112、113に伝達されるが、これらヘッドカバー112、113には、外面に複数の放熱突起112a、113aが設けられているため、インクヘッド100を取り巻く空気と接触する表面積が大きくなり、放熱効果が高められる。
【0043】
第1のインク経路11は、例えば、内径φ4mm、長さ1000mmのチューブである。また、第2のインク経路12は、例えば、内径φ5mm、長さ300mmのチューブである。図2に示すように、インクヘッド100のノズル101b(ノズル面101a)に対して、インクカートリッジ60の水頭差をH1mm、インクタンク50のインク液面までの水頭差をH2mmとする。例えば、H1はノズルから−Z軸方向(鉛直方向下向き)に100mm、H2は−Z軸方向に250mmと設定する。第1のインク経路11、第2のインク経路12及びインクタンク50にインクが入った待機状態では、電磁弁24はノーマルクローズであり、ポンプ22は空気経路14を遮蔽している。電磁弁23は開放されており、ポンプ21は空気経路13を遮蔽している。従って、ノズル101bには、水頭差H1による負圧が作用してメニスカスが形成されている。負圧は、水頭差H1、インク密度ρ及び重力加速度gの積で計算される。インク密度ρを900kg/m、重力加速度を9.8m/sとすると、圧力は−882Paと計算される。インクカートリッジ60の内部の気室の圧力P1は大気圧であり、大気圧を基準に計算すると0Paとなる。また、インクタンク50の内部の気室は密閉され、インクタンク50の内部の気室の圧力P2は水頭差H2と釣り合う正圧となっている。
【0044】
この状態から、インクタンク50内のインクを、第2のインク経路12、インクヘッド100、第1のインク経路11を通ってインクカートリッジ60に流す場合について説明する。
まず、電磁弁24を一瞬開放し、インクタンク50の内部の気室の圧力P2を大気圧にする。この状態で、圧力センサ72、73のゼロ点をリセットする。この瞬間、インクは、サイフォンの原理でインクカートリッジ60側から、Z軸方向にこれよりも低いインクタンク50側へと逆流を始める。しかし、電磁弁23、24をすぐに閉じるので、この逆流は停止する。
【0045】
次に、ポンプ21を正転させて、インクカートリッジ60の内部の気室の圧力P1を減圧する。同時に、ポンプ22を逆転させて、インクタンク50の内部の気室の圧力P2を加圧する。インクの表面張力が28dyn/cmの場合、ノズル101bの直径が25μm程度であれば、前記メニスカスは−4500Pa程度までは壊れることなく、ノズル101bから空気を吸い込むことはない。また、一般的に、インクの吐出に最適なノズル圧があり、この圧力を維持することでインクの吐出量が一定となり、吐出不良が発生する確率が最も少なくなる。ここでは、−1000±500Paを最適吐出圧力とする。
【0046】
チューブの直径と長さ及びインクの粘度から、流路抵抗が計算される。半径r、長さL、インク粘度ηの場合、このチューブ内を流れるインクの流路抵抗Rは、R=8Lη/πrで計算される。また、このチューブ内をインクが流れる流量Qと圧力差ΔPとの関係は、ΔP=RQである。このような関係式を用いて、第1のインク経路11の流路抵抗をR1、インク経路12の流路抵抗をR2、インクヘッド100の流路抵抗をRh、水頭差H1による圧力をh1、水頭差H2による圧力をh2と定義すると、インクタンク50からインクカートリッジ60までの圧力差ΔPは、ΔP=P1+P2+h1+h2で計算される。また、インクタンク50からインクカートリッジ60までの流路抵抗Rは、R=R1+R2+Rhで計算される。インクヘッド100を流れるインク流量Qは、上述のようにQ=ΔP/Rで計算される。このときのノズル101bの部分の圧力(ノズル圧)Phは、ノズル101bに対してインクヘッド100の内部の流路抵抗値が対称である場合には、インクカートリッジ60側からの圧力から計算すると、Ph=P1+h1+(R1+Rh/2)×Qで計算することができる。
【0047】
ここで、インクヘッド100内にインクを流す目的のひとつは、圧電素子104で発生した熱量を奪い、インクヘッド100を冷却することである。25℃におけるインクヘッド100の発熱量から、例えば、インクヘッド100内に0.53ml/sのインクを流す必要があるとした場合、h1、h2、R1、R2、Rhは定数であるから、圧力P1とP2との組み合わせのみで流量Qを決めることができ、例えば、P1を−2500Pa、P2を3000Paと設定すればよい。このとき、ノズル圧は−919Paとなり、最適なノズル圧範囲に維持される。つまり、P1を−2500Pa、P2を3000Paになるまで変化させることで、ノズル圧を−919Paに安定させ、インクヘッド100内を流れるインク流量Qを0.53ml/sとすることができる。P1、P2がその目標圧力に安定するまでは、ノズル圧Phが最適ノズル圧範囲に入るように両者を順次変化させていけばよい。またインク流量Qは、P1、P2がその圧力に達するまでは少量しか流れないが、その間の時間が短ければインクヘッド100の温度上昇は少なく、インクの吐出に影響を与えない温度範囲に制御することができる。
【0048】
インクの温度によって、粘度ηは変動する。インクの温度が5〜45℃まで変化したときの、インクタンクからインクカートリッジへインクを流したときのインク流量Qに関するグラフを図6に示す。インクの温度が低いと粘度ηが大きく、流路抵抗値も大きくなる。従って、P1とP2を前述の定められた圧力になるように圧力センサ72、73で圧力検出しながらポンプ21、22を制御すると、インクの温度が例えば5℃の場合には、インクは0.24ml/sしか流れない。逆に、インクの温度が45℃の場合には、インクは0.96ml/s流れる。しかし、25℃において必要な流量が0.53ml/sであるならば、インク温度が25℃を超えると圧電素子104に印加する電圧も温度に応じて低くなっていくので、それ以上の温度では余分な流量が発生することになる。逆に、それ以下の低温では、圧電素子104に印加する電圧が高く、発熱量も大きい。その割にはインク流量が少ないため、インクヘッド100に熱が蓄熱され、インクヘッド100の温度は上昇していく。インクヘッド100の温度が上昇していくと、その熱量は徐々にインクカートリッジ60へ伝達され、第1のインク経路11内のインクの粘度が下がっていくため、インク流量が増加する方向に働き、極端な蓄熱に至らないところでバランスが取れる。
その温度範囲でのノズル圧は、インクの粘度ηの値にかかわらず、常に一定のノズル圧を維持できている。従って、圧力の面からは、常に安定した吐出可能状態に維持される。
【0049】
次に、インクカートリッジ60内のインクを、第1のインク経路11、インクヘッド100、第2のインク経路12を通ってインクタンク50に流す場合について説明する。
この場合も、インク温度が一定ならば、R1、R2、Rh、h1、h2は定数であるので、P1とP2との設定値のみでインク流量Qとノズル圧を決めることができる。しかし、第1のインク経路11と第2のインク経路12との流路抵抗が等しくない場合には、インクの流れる向きによって、P1とP2との絶対値を変える必要がある。例えば、P1を2500Pa、P2を−480Paに設定すれば、25℃でのインク流量Qは0.55ml/s、ノズル圧は−919kPaにすることが可能である。この方向へインクを流す場合においても、上記同様、インクの温度によって粘度ηが変わるため、5〜45℃までインク温度が変化した場合には、インク流量Qは変化する。その関係を示したグラフを図7に示す。インク流量とヘッド冷却能力との関係は、前述の通り、インクタンク50からインクカートリッジ60へ流れる場合と同様である。
【0050】
さらに、どのインク温度においてもインク流量Qとノズル圧Phとを一定に制御する方法について、図8並びに図9を参照して説明する。
図8では、インクがインクタンク50からインクカートリッジ60へ流れるとして計算している。インクヘッド100に搭載された温度センサ114の温度情報に基づいて、P1、P2の値をその温度の関数として設定する。温度が低くインク粘度ηが大きい低温には、P1、P2の絶対値を大きく設定する。逆に、インク粘度ηが小さくなる高温に移行するに従って、その絶対値が小さくなるように設定する。その値は、前述のようにインク粘度が決まれば、R1、R2、Rh、h1、h2が定数として定まることから、インク流量Qとノズル圧Phが所定の値になるようにP1、P2を設定すればよい。
【0051】
同様に、インクカートリッジ60からインクタンク50へインクを流す場合のP1、P2の圧力設定を表したグラフが図9である。P1、P2の絶対値が逆に流す場合と異なってくるが、制御の方法は同じである。このように、温度センサ114の値に応じて、P1、P2の値を計算し、圧力センサ72、73で圧力を検出しながらポンプ21、22を制御することで、常に所定の必要流量Qとノズル圧Phを維持することが可能である。
【0052】
以上の関係から、インクの流れをインクタンク50からインクカートリッジ60側、インクカートリッジ60からインクタンク50側へと往復移動させる場合のP1、P2の圧力制御のグラフを図10に示す。初期的には、電磁弁24が閉じられており、ノズル圧Phはh1の値−882Paとなっている。流量Qは0である。
【0053】
電磁弁24が開放された瞬間、インクタンク50内のインク液面がインクカートリッジ60よりも下方に位置することから、サイフォンの原理でインクカートリッジ60からインクタンク50へインクが流れ始める。インクが流れることにより、ノズル圧Phは−1662Paまで下がるが、メニスカス耐圧である−4500Paには至らないため、メニスカスが破壊されることはない。
【0054】
電磁弁23、24が閉じられ、P1が−2471Pa、P2が2980Paに向けてノズル圧を常に−919Paに維持するように変えながら制御されると、それにつれてインクはインクタンク50からインクカートリッジ60に向けて流れ始め、流量は急速に増えて0.53ml/sで一定となる。しばらくこの状態を維持すると、インクタンク50内部のインクがインクカートリッジ60へ移動する。インクタンク50内の液面が下がるが、断面積を大きく設計しておけば水頭差H2への影響は小さく、計算から大きく乖離することはない。インクタンク50内のインクが空にならないうちに、P1とP2の圧力の正負関係を逆転させ、今度はインクカートリッジ60からインクタンク50に向けてインクを移動させる。P1を2397Pa、P2を−408Paになるように、徐々に変化させる。その際も、ノズル圧Phが−919Paで一定になるように計算された値にP1、P2を制御する。両者がその値に達したときに、流量は0.53ml/sで一定となる。インクタンク50内の液面が上昇し、センサ71がインクタンク50内のインクが満たされた液面を検出したところで、再びP1とP2の正負関係を逆転させ、インクが流れる向きを反転させる。画像記録中は、この動作を連続して行うことによって、インクヘッド100内をインクが往復動しながら余剰な発熱を奪う。インクに伝達された熱量は、そのインクが冷却部40を通過する際に、金属部材41に伝熱され、ファン43で吹きつけられた外気へ放熱される。
【0055】
一般的に、インクジェットプリンタ1が使用されるオフィス環境(室内環境)では、外気温は高くても35℃程度までであると考えられるので、インクの温度が35℃を超える場合には、その温度差によってインクの熱は外気へ放熱され、45℃を超えることはないであろう。画像記録が終了すると、インクカートリッジ60からインクタンク50へインクを流して、インクタンク50の液面センサ71が満タンを検知したところで、電磁弁23、24を開放し、P1、P2を大気圧に戻す。その瞬間、再びサイフォンの原理でインクカートリッジ60からインクタンク50へインクが流れ、瞬間的にノズル圧Phが−1662Paまで下がり、瞬時に電磁弁24が閉じられることでノズル圧は水頭差H1で決まるh1(−882Pa)に戻り、流量は0となる。
【0056】
図10に示されるように、この制御の間、ノズル圧Phは一定の−919Paに制御されるため、安定した吐出が可能である。吐出量もほとんど変化しない。流量はその向きを交互に変えながら、0〜0.53ml/sまで変化する。流れる方向が変わる時間を最小限にすることにより、その間のインクヘッドの温度上昇は僅かであるため、吐出に影響がでるほど温度が上昇することはない。
【0057】
図11に示すように、H1とH2を同じ高さである−50mmに設定した場合について、図12を参照して説明する。図10と異なる点は、インクの往復動開始時と終了時に電磁弁23、24を同時に開放する点である。H1とH2が等しいので、インク往復動開始もしくは終了に先立って、P1、P2を大気開放すべく電磁弁23、24を開放する。その瞬間もインクが流れないため、ノズル圧Phはh1(=h2)のままであり、瞬間的にノズル圧が変化しないという点が異なる点である。
【0058】
なお、図11では、ポンプ21、22の空気経路13、14には1色分のインクカートリッジ60とインクタンク50が連結されているが、ここに複数色分のインクカートリッジ60とインクタンク50を連結することも容易となる。つまり、電磁弁23、24を開放状態にしておけば、初期的な各色のインクタンク50内の液面はほぼ同じ高さにそろう。画像記録中は全てのインクタンク50の気室が一つのポンプ22で圧力制御される。インクカートリッジ60の気室は、ポンプ21で圧力制御される。インクを、インクヘッド100を通して往復動させながら画像を記録すると、画像記録に供された色のインクは徐々に減ってゆく。従って、インクタンク50の液面を検出する液面検知センサ71が満杯を検出するタイミングは徐々に色毎に異なってしまう。その場合には、所定時間画像記録するごとに電磁弁23、24を開放するだけで、インクタンク50内の液面をほぼ同じ高さに揃えることが可能となる。このように制御すれば、ポンプ21、22で複数種類のインクを同時に各色のインクヘッド100を通して往復動させることが可能となる。
【0059】
このときのタイムチャートを図13に示す。インクを流す方向を切り替えるまでの時間T1は、インクタンク50内の液面が下がりすぎて第2のインク経路12に空気が入らない範囲で設定すればよい。実際には液面の低下は検出していないので、計算上のインク流量Qとインクタンク50内のインク量から計算で求める。また、インク往復動の周期T2は、時間T1経過後からインクタンク50内の液面検知センサ71が満タンを検出するまでの時間で決まる。
【0060】
次に、温度センサ114で検出された圧電素子104内のインクの温度に応じたインク往復動の制御について、図14を参照して説明する。
図14は、制御部5によるインク経路4中の制御を示すフローチャートである。
【0061】
一般的に、インクヘッド100のノズル101bからインクを吐出可能なインクの温度範囲があり、例えば、15〜45℃の範囲で吐出可能である。加温部30は、インクカートリッジ60からインクヘッド100へ移動するインク温度が0℃よりも高ければ、通過するインクをノズル101bから吐出可能な15℃以上まで加温することができる能力を有している。
【0062】
インクジェットプリンタ1の電源が入れられた時点で、温度センサ114により検出されたインク温度が0℃よりも高く15℃以下の場合には(ステップS1)、インク温度が吐出可能範囲にないので、画像記録を禁止したウォームアップモードに入る(ステップS2)。ステップS2のウォームアップモードでは、加温部30をONにし、加温部30内のインクに熱伝達を開始する。このとき、冷却部40のファン43は、OFFにされている。次に、電磁弁23、24を閉じてインクカートリッジ60からインクタンク50へインクを流すように、P1を正圧、P2を負圧に制御する。このときの圧力は、温度センサ114で検出された温度から計算されたインク粘度ηを用いて設定する。そして、インクが図3の点Aからインクヘッド100を通り、点Cを超えたタイミングで、インクの移動方向を逆転させる。さらに、そのインクがほぼ点Aまで戻ったタイミングで再び移動方向を逆転させるという制御を繰り返す。このような動作により、加温部30からインクに与えられた熱量が冷却部40で放熱されるのを防止すると共に、インクヘッド100を効率よく暖めることができる。
【0063】
ここで、加温部30からインクヘッド100内までのインク量は、V(AB)とV(BC)とを加えた程度であり、通常は5ml以内に設計する。従って、インクカートリッジ60及びインクタンク50といったインク経路全体のインクを加温する場合と比べると、極めて短時間で吐出に供されるインクを加温でき、同時にインクを介して温度センサ114が検出するインクヘッド100の温度を15℃以上まで加温することが可能となり、ウォームアップ時間を大幅に短縮することができる。
【0064】
具体的には、ステップS2において、V(AB)を1ml、V(BC)を1mlに設定すれば、0.53ml/sでインクが移動するときには、時間T1が約4秒でインクを流す向きを逆転させればよく、周期T2はその倍の8秒周期となる。V(CD)をV(AB)とV(BC)を加算した量よりも多い量、例えば5ml程度になるように冷却部40の位置を配置すれば、加温部30で加温されたインクが冷却部40に到達することはない。
【0065】
なお、通常のオフィス環境では、インクジェットプリンタ1をONにしたときのインク温度が0℃を下回ることは稀であるため、ほとんどの場合はこの制御で短時間のうちにインク温度を15℃よりも高い温度、つまり画像記録開始可能な温度へともたらすことができる。
【0066】
温度センサ114により検出されたインク温度が15℃よりも高く20℃以下であるとき(ステップS3)、画像記録可能状態に移行する(ステップS4)。ステップS4の画像記録可能状態では、インクの往復動制御を止め、上位画像出力装置から画像記録開始の命令を受信したときには、電磁弁23、24を閉じ、ポンプ21のみを制御してインクカートリッジ60内部の圧力P1とh1とを加算してノズルPhが適正な負圧になるように制御し、加温部30をONにすると共に冷却部40のファン43を停止させた状態とする。
【0067】
このように、加温部30からインクヘッド100までをインク吐出可能な15℃よりも高い温度に加温しておけば、その後はインクの往復動をさせずに加温しながら画像記録するだけで加温部30からインクヘッド100へ15℃以上のインクが流れてくるので、継続してインクを吐出することが可能である。
【0068】
このようにして画像記録を開始した後は、温度センサ114の温度を見ながら制御を行う。インク温度が20℃を超えて25℃以下であれば(ステップS5)、ステップS6の制御に進む。ステップS6では、ステップS4と同様にインクの往復動制御は行わないが、インクを加温し過ぎないようにするために、インク温度に応じて加温部30の電力を制御する。インク温度が上がれば電力を下げる。また、インク温度が25℃を超えて30℃以下であれば(ステップS7)、ステップS8の制御に進み、加温部30の電力を切る。すなわち、温度センサ114で検出される温度が15℃よりも高く30℃以下の場合には、インク往復動制御は行わない。
【0069】
このように制御する場合、加温部30からインクヘッド100近傍のみが暖かく、インク経路4全体でみるとインク粘度が均一ではない。しかし、インク経路4全体の中でごく一部のインク粘度が下がっているのみであるので、図6並びに図7に示されるように、ノズル圧Phは大きな影響を受けることなく、ほぼ目標値近傍に保たれる。
【0070】
インク温度が30℃を超えて45℃以下であれば(ステップS9)、ステップS10の制御に移行する。ステップS10では、インクを往復動させるべく、圧力P1、P2を設定する。ファン43をONにし、加温部30をOFFにする。そして、インクヘッド100内のインクが少なくとも冷却部40を超えて往復動するように、往復移動量をV(BC)とV(CD)を加算した量以上になるように設定する。つまり、インクが冷却部40を通過するように設定することで、インクから熱を奪うようにする。
【0071】
例えば、V(BC)が1ml、V(CD)が5mlになるように設定すると、最低6mlのインクが移動すれば、冷却部40で冷却されたインクがインクヘッド100に達する。時間T1を30秒、周期T2を60秒として0.5ml/sの量のインクを流せば、15mlのインクが往復動するので、冷却部40部分のインクは、インクヘッド100までの6mlから先にさらに9ml移動することができる。その間にインクヘッド100は冷却される。最初からインクヘッド100の位置にあったインクは、インクヘッド100の位置から冷却部40までの区間は冷却されないことになり、インクが往復動する間で冷却されたインクと冷却されていないインクとが交互にインクヘッド100内を流れる。冷却部40における放熱効果を大きくしておけば、インクヘッド100に冷却されたインクと冷却されないインクが交互に流れたとしても、平均的には吐出可能なインク温度になるようにインクヘッド100を冷却することが可能である。
【0072】
しかし、冷却する上では、インクヘッド100から冷却部40までの体積V(BC)+V(BD)に対して移動するインクの量が多いほうが有利である。インク移動量を増やすには、P1とP2との圧力差を大きくすることで、単位時間当たりの流量Qを増やすことができる。さらに時間T1、周期T2を長くすれば、トータルで移動するインク量を増やすことができる。その場合には、設定した時間T1から計算されるインク移動量以上の体積をインクタンク50内に入れるように設計しておけばよい。
【0073】
さらに、インク温度が45℃を超えたならば(ステップS11)、クールダウンモードに入る(ステップS12)。環境温度が異常に高い、あるいは想定した以上の発熱が生じた場合には、インク温度が45℃を超えることが想定される。ステップS11のクールダウンモードでは、画像記録禁止に設定し、インクヘッド100の冷却のみを行いながらインクを往復動させる。時間T1、周期T2は、ステップS10の場合と同様に、例えば、T1を30秒、T2を60秒とする。
【0074】
以上説明したように、第1の実施形態では、ノズル圧を所定値に維持しながら、インクヘッド内を流れるインク流量を自在に設定することができる。また、インクの温度に応じて、加温部と冷却部、及びインク往復動の周期を組み合わせることにより、インク経路全体を加温するモード、往復動するインクでインクヘッドを加温する制御、ヘッド加温後に往復動を停止してインクを加温しながら画像記録するモード、インクを往復動させながらインクを冷却して画像記録を行うモード、などの最適なモードでインクヘッドを所定の温度範囲に維持することができる。
【0075】
以下、本発明の第2乃至第5の実施形態について説明する。以下では、第1の実施形態のインクジェットプリンタ1と同等の構成部材には同じ参照符号を付して、その説明は省略する。
【0076】
[第2の実施形態]
第2の実施形態について、図15を参照して説明する。
第1の実施形態では、インクタンク50及びインクカートリッジ60の気室内の圧力を制御して、これらの間でインクを往復動させる。これに対して、第2の実施形態では、インクカートリッジ60の代わりにインクタンク80を配置し、第1のインク経路11がインクタンク80に連通している。インクタンク80は、インクタンク50と同じ構成で、内部にインク液面を検出するためのフロート70を、外部に液面検知センサ71を有している。また、空気経路13は、インクタンク80の空気部分に連通している。
【0077】
インクタンク80がインクタンク50と異なる点は、インクカートリッジ60からの補給経路17がインクタンク80内に連通している点である。補給経路17には電磁弁25が設けられており、通常は、この電磁弁25によって補給経路17が閉じている。必要に応じてこの電磁弁25を開くことにより、インクカートリッジ60内のインクをインクタンク80に補給する。インク経路4中のインクの制御は、第1の実施形態(図14のフローチャート)と同じである。
【0078】
第2の実施形態の利点は、インクタンク50とインクタンク80との間でインクを往復動させるので、インクカートリッジ60の高さ制限がなく、インクジェットプリンタ1の構成の自由度が高い点である。
【0079】
第1の実施形態では、インクタンク50からインクカートリッジ60にインクを流入させるので、新品のインクカートリッジ60には、インクタンク50から移動される分のインクを収容することができるように、容積に余裕を持たせておくことが必要である。これに対して、第2の実施形態では、インクタンク50、80内の液面が待機時に同じ高さとなっているので、その高さで両インクタンクの液面検知センサ71が満タンを検出するように、電磁弁25を開いて、補給経路17を介してインクカートリッジ60からインクを補給する。インクを往復動させる場合には、両インクタンクの空気収容部に移動するインクを収容することができるだけの体積を持たせた設計にしておくことが必要である。
【0080】
[第3の実施形態]
第3の実施形態について、図16並びに図17を参照して説明する。
第3の実施形態において第2の実施形態と異なる点は、ポンプ22及びセンサ73が取り除かれ、空気経路13、14がポンプ21に連結されている点である。また、インクタンク50、60は全く同形状であり、待機時のインク液面高さH1、H2が等しく、その上部の空気の体積も同じに設計されている。さらに、第1のインク経路11と第2のインク経路12との流路抵抗値が等しくなるように設計されている。例えば、第1及び第2のインク経路11、12は、どちらも内径φ5で長さ300mmとしている。この長さと直径は、計算される流路抵抗値R1とR2が等しくなる値であればよい。
【0081】
例えば、待機時のインクタンク50、80の液面高さをH1=H2=−104.2mmとする。この値は、吐出に最適なノズル圧となるように、インクの密度ρと重力加速度g及び水頭差H1=H2から計算して導いたものである。このように設定すれば、ノズル圧は−919Paとなる。
【0082】
電磁弁23、24を閉じて、ポンプ21が正転してインクタンク80の空気を、空気経路13を通して空気経路14に送り、インクタンク50内に入れると、もともとインクタンク50、80内の空気量は待機時には等しかったので、等分に増減する。この結果、インクタンク80内の空気は負圧に、インクタンク50内の空気は正圧になる。その正負は異なるが、絶対値はほぼ同じ値となる。従って、センサ72でインクタンク80内の圧力が判れば、インクタンク50内の圧力は正負が異なるのみであるので、把握することができる。圧力P1とP2は常に正負が異なるのみで絶対値が等しく推移する。ノズル圧Phは、待機時からインク往復動差時まで水頭差H1(=H2)で決められた圧力に維持される。
【0083】
図17は、本実施形態において、インク流量QとP1、P2の圧力、ノズル圧をグラフにしたものである。インクヘッド100のインク温度を温度センサ114で検出して、インク往復制御や加温部30、冷却部40の制御を組み合わせて行うやり方は、第1の実施形態と同じである。
【0084】
[第4の実施形態]
第4の実施形態について、図18を参照して説明する。
第4の実施形態において第3の実施形態と異なる点は、インクヘッド100に通じる第1及び第2のインク経路11、12が、加温部30及び冷却部40の中を通っている点である。この構成は、第1〜第3の実施形態に独立して併用可能な構成である。
【0085】
第1及び第2のインク経路11、12において、インクヘッド100に近い側に加温部30が配置されている。この加温部30は、外側が断熱材で覆われている。また、冷却部40は、第1及び第2のインク経路11、12において、インクヘッド100と加温部30との距離よりも加温部30から相対的に離れて配置されている。
【0086】
待機時には、電磁弁23、24が解放され、P1、P2は大気圧となる。インクヘッド100のノズル101bからインクタンク50、80内の液面までは、いずれもH1mmとなった位置で安定する。インクタンク内の液面が低い場合には、電磁弁25が開いて、インクカートリッジ60から補給経路17を通ってセンサ71がONになるまで、インクタンク80内にインクが補充される。インクタンク50、80に液面の高低差が生じると、サイフォンの原理でインクがインクタンク80からインクタンク50へ流れ、液面の高さが等しくなる。このようにして、両インクタンク50、80の液面は、センサ71がONとなった高さに調整される。
【0087】
制御部5によるインク経路4中のインクの制御は、図14のフローチャートと同様である。図14のステップS1、S2に示されるように、インクの温度が比較的低いときにインクをインク経路4中で往復動させて加温部30でインクヘッド100を加温する場合、往復動するインクが少なくとも加温部30からインクヘッド100に達するまで動いたところで、インクの動く向きが逆転する。つまり、加温部30にあったインクが冷却部40に向かって動くが、往復動するインクが冷却部40に達しないように冷却部40を配置することによって、加温部30の熱が冷却部40から放熱される割合を最小とし、効率的にインクヘッド100を加温することができる。
【0088】
[第5の実施形態]
次に、第5の実施形態について、図19を参照して説明する。
以下では、主に第4の実施形態との違いについて説明する。第5の実施形態では、インクタンク50、80の上部に、タンク内の空気と連通する可撓性部材90が設けられている。この可撓性部材90は、ナイロン、ポリエチレン、ゴムなどの軟らかい材質でできている。可撓性部材90の内部には圧縮ばね91が装着されており、この圧縮ばね91のばね力が可撓性部材90の体積を大きくする方向に持ち上げる。両インクタンク50、80にそれぞれ接続している空気経路13、14は、間に電磁弁24が介在された空気経路18で遮断可能に連結されている。ポンプ21とインクタンク50との間の空気経路14中には、3方向弁26を介して大気と連通する空気経路19が配置されている。3方向弁26は、通常は、ポンプ21と空気経路19とを連結し、駆動時には、空気経路19を遮断しポンプ21とインクタンク50とを連結する。インクヘッド100のノズル101bと両インクタンク50、80との液面高さH1は、第3並びに第4の実施形態とは異なり、インク吐出に最適なノズル圧を生じる水頭差に設定されていない。例えば、H1=−20mm程度に設定される。
【0089】
待機時には、電磁弁23が大気開放されており、電磁弁24が開いているので、P1、P2は大気圧になっている。水頭差H1が−20mmであるので、ノズル101bよりもインクタンク50、80内のインク液面が低く、ノズル101bからインクが垂れることはない。画像記録時には、インクを往復動させる前に、電磁弁23を閉じる。そして、ポンプ21を正転させて、インクタンク80の内部の空気を空気経路19から外に出すと、インクタンク80の内部は負圧となる。このとき、電磁弁24でインクタンク50の内部も連通しているので、同じく負圧となる。インクタンク50、80の内部が負圧になるのに従って、可撓性部材90は内部の圧縮ばね91を押し縮めながら内部の体積を減らしてゆく。水頭差H1が−20mm分しかないので、圧力センサ72で検出した圧力が−742.6Paとなったときに、ノズル圧Phは−919Paとなっている。この圧力のときに可撓性部材90の内部の体積と圧縮ばね91がつぶれきらないようにばねの力量を設定している。すなわち、水頭差H1が第4の実施形態では−104.2mmであったのを−20mmに変えた分を、この圧縮ばね91で負圧を補っている。
【0090】
圧力センサ72が−742.6Paを検出したとき、電磁弁24を閉じ、3方向弁26を駆動して、空気経路19を遮断すると共にポンプ21とインクタンク50とが空気経路14でつながれる。ここからは、第4の実施形態と同様に、ポンプ21が正転し、インクタンク80内の負圧が大きくなると、その分空気がインクタンク50に移動し、インクタンク50内の圧力が正圧方向に変化する。この結果、インクタンク50内のインクは、第2のインク経路12からインクヘッド100を通ってインクタンク80へと流れる。ポンプ21が逆転することで、インクが流れる向きが逆転する。
【0091】
本実施形態では、可撓性部材90とその内部に設けられた圧縮ばね91とを有する構成により、1つのポンプと複数の弁とを制御して、水頭差H1の値にとらわれることなく、ノズル圧Phを一定にしてインクを往復動させることができる。
【0092】
以上では、インクヘッドを通してインクを往復動作させる方式での、インクヘッドの加温/冷却に関して説明してきた。インクヘッド内をインクが往復動する効果は、加温や冷却にとどまらず、揮発性のあるインクにおいては、ノズルでの揮発による増粘防止にも効的である。
【0093】
インクヘッドの冷却を行うには、単位時間当たり所定量以上のインクがインクヘッド内を流れていればよく、必ずしもインク流量を一定にする必要はない。本実施形態によれば、空気圧を制御することで、インク流量をインク温度にかかわらず一定にすることも可能であるし、必要以上のインク流量が得られればインク温度によってインク流量が変わる制御にすることも可能である。また、ノズルの増粘防止目的では、必要なインク流量を得るべく、圧力を制御することも可能である。
【0094】
また、本実施形態では、ポンプをチューブポンプとし、大気開放用の電磁弁をポンプが配置された経路とは別に設ける構成にしているが、この構成は必ずしも必須ではなく、空気圧の制御ができれば、ポンプはチューブポンプに限定されない。また、ポンプが大気開放可能な方式であれば、電磁弁は上述の実施形態の配置に限定されることなく、例えば、ポンプが取り付けられている空気経路の終端に設けてもよい。要は、インクタンク内の圧力制御が可能で、かつ大気開放が可能であるように組み合わせられればよい。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内でさまざまな改良及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
1…インクジェットプリンタ、2…記録媒体、3…搬送部、4…インク経路、5…制御部、11…第1のインク経路、12…第2のインク経路、13〜16…空気経路、17…補給経路、18、19…空気経路、21、22…ポンプ、23〜25…電磁弁、26…3方向弁、30…加温部、31…発熱体、32…カバー、40…冷却部、41…金属部材、42…フィン形状部、43…ファン、50…インクタンク、60…インクカートリッジ、61…外装、62…スパウトパック、70…フロート、71…センサ、72、73…圧力センサ、80…インクタンク、90…可撓性部材、91…圧縮ばね、100…インクヘッド、101…ノズルプレート、101a…ノズルプレート面、101b…ノズル、102…枠、103…ベース、104…圧電素子、104a…チャンネル、105、106…流路部材、105a、105b…インク流路、106a…凸部、106b…接続流路、107、108…インクポート、109…FPC、110…ドライブIC、111…固定部材、111c、111d…穴、112、113…ヘッドカバー、112a、112b…放熱突起、114…温度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルを有し、該ノズルに連通する第1及び第2のインク導入部を有するインクヘッドと、
前記第1のインク導入部と第1のインク経路を介して接続された第1のインク貯留部と、
前記第2のインク導入部と第2のインク経路を介して接続された第2のインク貯留部と、
前記第1及び第2のインク貯留部内に空気を供給、及び前記第1及び第2のインク貯留部内の空気を排出することで、前記第1及び第2のインク貯留部内を加圧及び減圧する加減圧手段と、
前記第1及び第2のインク貯留部内の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段の検出結果に基づいて前記加減圧手段を制御する制御手段と、を具備するインクジェットプリンタにおいて、
前記制御手段は、
前記ノズルに加える圧力を、該ノズルからインク吐出可能な負圧に維持しつつ、前記第1のインク貯留部内を加圧すると共に、前記第2のインク貯留部内を減圧するように、前記加減圧手段を制御する第1の加減圧モードと、
前記ノズルに加える圧力を、該ノズルからインク吐出可能な負圧に維持しつつ、前記第1のインク貯留部内を減圧すると共に、前記第2のインク貯留部内を加圧するように、前記加減圧手段を制御する第2の加減圧モードと、を有し、
前記第1の加減圧モードと第2の加減圧モードとを交互に繰り返すことで、前記インクヘッド内のインクの流れる向きを逆転させることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インクヘッドの温度を検出する温度センサをさらに具備し、
前記制御手段は、前記温度センサによる温度検出結果に応じて、前記第1の加減圧モードの実行時間及び第2の加減圧モードの実行時間を変更することを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記第1のインク経路及び第2のインク経路内のインクを冷却する冷却手段と、
前記第1のインク経路及び第2のインク経路内のインクを加温し、前記冷却手段よりも前記インクヘッド側に配設される加温手段と、をさらに具備し、
前記制御手段は、インクを加温する場合、インクを冷却する場合に比べて、1回当たりの前記第1の加減圧モードの実行時間又は第2の加減圧モードの実行時間を短くすることを特徴とする請求項2記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記第1のインク貯留部又は前記第2のインク貯留部に、インク液面を検出する液面検出手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記液面検出手段の液面検出結果に応じて、前記第1の加減圧モードと第2の加減圧モードの切替えを行うことを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記制御手段が前記第1及び第2の加減圧モードにおけるそれぞれの加圧のレベル及び減圧のレベルは、前記第1のインク貯留部内のインク液面と前記インクヘッドのノズル位置との水頭差、及び前記第2のインク貯留部内のインク液面と前記インクヘッドのノズル位置との水頭差に応じて設定されることを特徴とする請求項3記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記第1のインク貯留部内と前記第2のインク貯留部内を連通する空気連通経路と、
該空気連通経路上に配設されたポンプと、を有し、
前記制御手段は、前記ポンプを駆動することで、第1のインク貯留部と第2のインク貯留部との間で空気の供給及び排出を行い、前記第1の加減圧モード及び第2の加減圧モードを実行することを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記第1のインク経路及び第2のインク経路内のインクを共に加温する加温手段を有することを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記加温手段は、前記第1のインク経路及び第2のインク経路内のインクを共に加温することを特徴とする請求項3記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記第1のインク経路及び第2のインク経路内のインクを共に冷却する冷却手段を有することを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記冷却手段は、前記第1のインク経路及び第2のインク経路内のインクを共に冷却することを特徴とする請求項3記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−66470(P2012−66470A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212750(P2010−212750)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】