説明

インクジェットプリンタ

【課題】ノズルにかかる圧力を適正値に保ちながらインクを循環させることのできる新たなインク経路を提供する。
【解決手段】記録ヘッド11は、ノズルから液体であるインクを吐出する。インク循環部2は、記録ヘッド11を経由してインクを循環させる循環経路を構成している。インクカートリッジ21は、インクを収容しており、当該循環経路から分岐している補充経路より当該循環経路へ該インクを補充する。定圧弁23は、当該補充経路に挿入されており、当該循環経路側のインクの圧力が所定値以下の期間において開弁状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタには、経路内でインクを循環させながらインクジェットヘッドのノズルからインクを吐出して、記録媒体に画像記録を行うものがある。
例えば、特許文献1には、インク循環経路を有しているインクジェットプリンタが開示されている。この循環経路は、インクジェットヘッドと、当該ヘッドより重力方向上方に配置された上方容器と、当該ヘッドより重力方向下方に配置された下方容器と、下方容器のインクを上方容器に送るポンプと、これらを接続するチューブと、によって構成されている。このプリンタでは、インクの循環中における上方容器と下方容器との液面を一定に保ち、ヘッドのノズル面と上方容器及び下方容器各々のインク液面との高低差によって、当該ヘッドのノズルにかかる圧力を適正な範囲に保っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−533247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように、特許文献1のインクジェットプリンタでは、上方容器と下方容器との2つの容器の高さ関係を調整することでノズルに適正な圧力をかけている。しかしながら、このような容器のプリンタ装置筐体内での配置には物理的な制約がある場合が多いため、上記の高さ関係を調整することは困難であり、調整できたとしてもインク循環経路全体が大型化してしまう。
【0005】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、ノズルにかかる圧力を適正値に保ちながらインクを循環させることのできる新たなインク経路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様のひとつであるインクジェットプリンタは、ノズルから液体であるインクを吐出する記録ヘッドと、該記録ヘッドを経由して該インクを循環させる循環経路を構成しているインク循環部と、該インクを収容しており、該循環経路から分岐している補充経路より該循環経路へ該インクを補充するインク収容器と、該補充経路に挿入されており、該循環経路側の該インクの圧力が所定値以下の期間において開弁状態となる定圧弁と、を有しているというものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ノズルにかかる圧力を適正値に保ちながらインクを循環させることのできる新たなインク経路をインクジェットプリンタに提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係るインクジェットプリンタのインク経路の構成を概略的に示した図である。
【図2】インク循環中において記録ヘッドからインクが吐出された時の定圧弁の動作について説明する図である。
【図3】第1のインク経路の流路抵抗よりも第2のインク経路の流路抵抗を小さくしたときの記録ヘッドのノズルかかる圧力変化を示す図である。
【図4】第1のインク経路の流路抵抗よりも第2のインク経路の流路抵抗を大きくしたときの記録ヘッドのノズルかかる圧力変化を示す図である。
【図5】第1のインク経路の流路抵抗と第2のインク経路の流路抵抗とを等しくしたときの記録ヘッドのノズルかかる圧力変化を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係るインクジェットプリンタのインク経路の構成を概略的に示した図である。
【図7】第3の実施形態に係るインクジェットプリンタのインク経路の構成を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
なお、これより説明するいずれの実施形態に係るインクジェットプリンタにおいても、例えば、シアン(C)、ブラック(K)、マゼンダ(M)、及びイエロー(Y)の4種類の色のインクを用いて記録媒体に画像記録を行う。従って、インク経路もインク色毎に同様のものを備えているが、以下の説明においては、代表的に1色のインクに係るインク経路のみの構成を説明するものとする。
【0010】
また、インクジェットプリンタは、記録媒体を供給する供給部、供給された記録媒体を搬送する搬送部、画像形成後の記録媒体を搬出する排出部、記録ヘッドのクリーニングを行うクリーニング部、インク吐出制御等の装置全体を制御する装置制御部等を備えている。これより説明するいずれの実施形態に係るインクジェットプリンタにおいても、このような、インクジェットプリンタが通常備えている構成要素を備えている。但し、インクジェットプリンタの構成を表した後述の各図面では、これらの構成要素についての描画を省略している。
【0011】
〔第1の実施形態〕
まず図1について説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1のインク経路の構成を概略的に示したものである。
【0012】
このインクジェットプリンタ1のインク経路は、液体であるインクを循環させるインク循環部2と、インク循環部2にインクを補給するための補充部3とを備えており、この両者が接続部4において接続されて構成されている。
【0013】
まず、インク循環部2について説明する。
インク循環部2は、ヘッド部5、ポンプ6、ポンプ6の流出側とヘッド部5の流入側
とを接続する第1のインク経路7、ポンプ6の流入側とヘッド部5の流出側とを接続する第2のインク経路8、及び、負圧生成機構9を備えて構成されている。
【0014】
なお、図1に示した破線矢印は、インク循環部2においてインクを循環させるときのインクが流れる方向を示している。すなわち、インク循環部2では、ポンプ6によって送液されたインクが、第1のインク経路7を経てヘッド部5に供給される。そして、ヘッド部5で使用(吐出)されなかったインクが、第2のインク経路8を経てポンプ6へ帰還する。つまり、インク循環部2では、ポンプ6と、往路である第1のインク経路7と、ヘッド部5と、復路である第2のインク経路8とにより、ヘッド部5の記録ヘッド11を経由する循環経路が構成されている。そして、インク循環部2は、ヘッド部5に対して密閉された経路内でインクを循環させている。
【0015】
次に、インク循環部2の個々の構成について説明する。
ヘッド部5は記録ヘッド11を有しており、外部から入力された画像信号に基づいて記録ヘッド11のノズルからインクを吐出することで記録媒体に対して画像を記録する。なお、本実施形態では、ヘッド部5は、記録ヘッド11を複数備え、記録媒体の記録領域と同じ、又はそれ以上の幅を有するラインヘッドを構成している。もちろん、ヘッド部5は、ラインタイプ(ラインヘッド)の構成に限定されるものではなく、シリアルタイプ(シリアルヘッド)の構成であってもよい。
【0016】
ポンプ6は、ヘッド部5にインクを送液すると共に、ヘッド部5の記録ヘッド11で吐出されなかったインクを帰還させてインク循環部2の循環経路でインクを循環させるためのものである。従って、ポンプ6の送液能力は、第1のインク経路7を経てヘッド部5に供給するインク量が記録ヘッド11のノズルから吐出されるインク量を上回るように設定されている。また、このポンプ6は、インク循環中は、常に駆動されている。
【0017】
なお、ポンプ6によってインクを循環させる際、その揚水圧が脈動変化すると、インク循環部2を流れるインクの流量と、ヘッド部5(より具体的には記録ヘッド11のノズル)にかかる圧力とが脈動変化する。このため、ヘッド部5にかかる圧力を安定させるために、脈動が少ない、又は無脈動のポンプを使用することが望ましい。また、上記に加えてインクは、温度によって粘性が変化することが知られている。このため、インクの粘性の変化に起因するヘッド部5(記録ヘッド11のノズル)にかかる圧力変化を生じさせないポンプ(定圧ポンプ)を使用することがさらに望ましい。
【0018】
第1のインク経路7には、インク分配器12が途中に備えられている。
インク分配器12は、ヘッド部5に備えられている複数の記録ヘッド11の各々の流入口と接続されており、ポンプ6から送られてきたインクを記録ヘッド11の各々に略均等に分配する。
【0019】
このように、第1のインク経路7では、ポンプ6から供給されたインクがインク分配器12によってヘッド部5の複数の記録ヘッド11に供給される。なお、複数の記録ヘッド11を用いない場合などでは、インク分配器12を設けなくてもよい。
【0020】
第2のインク経路8には、インク回収器13と負圧生成機構9とが途中に備えられている。
インク回収器13は、ヘッド部5の複数の記録ヘッド11の流出口と接続されており、ポンプ6から送られてきたインクのうちで記録ヘッド11のノズルから吐出されなかったものをまとめて回収する。
【0021】
負圧生成機構9は、第2のインク経路8上に配置されており、インクの循環を停止している待機時において、インク循環部2内の圧力を所定の負圧とするためのものである。
図1のように形成されたインクジェットプリンタ1のインク経路において、待機時、すなわちポンプ6を動作させていないときには、循環経路をインクが流れない。インクジェットプリンタ1では、この待機時において、負圧生成機構9によって記録ヘッド11の内部を負圧にして記録ヘッド11のノズルにメニスカスを形成させる動作が行われる。つまり、負圧生成機構9は、循環経路のインクの圧力を減圧して前述の所定の負圧とすることで、形成したメニスカスを破壊しないようにするためのものである。このようにすることで、待機時において記録ヘッド11からインクが吐出する(重力方向に垂れ落ちる)ことが防止される。なお、負圧生成機構9で生成する負圧の値は、このメニスカスを破壊しないような圧力の範囲内にする必要があるが、この圧力の範囲はインクの物性により決まるものである。
【0022】
第2のインク経路8には、補充部3と接続するための接続部4が設けられている。詳細は後述するが、ヘッド部5からインクが吐出されたことでインク循環部2内のインクが減少すると、減少分のインクが、補充部3から接続部4を介して補充される。
【0023】
このように、第2のインク経路8では、ヘッド部5で吐出されなかったインクをインク回収器13が回収してポンプ6へと帰還させる。また、第2のインク経路8では、インク循環部2内のインクが減少すると、減少分のインクが補充部3から補充される。なお、複数の記録ヘッド12を用いない場合などでは、インク回収器16を設けなくてもよい。
【0024】
次に、補充部3について説明する。補充部3は、ヘッド部5からの吐出によって減少した分のインクを、インク循環部2において構成されている循環経路へ、前述の接続部4において当該循環経路から分岐しているインク補充経路20より補充する。
【0025】
補充部3は、インクが充填されているインクカートリッジ21、インクカートリッジ21を着脱可能に保持するホルダ22、ホルダ22とインク循環部2とを接続するインク補充経路20、及び、インク補充経路20に挿入されている定圧弁23、を備えている。
【0026】
インクカートリッジ21はインクを収容しているインク収容器であるが、本実施形態のインクカートリッジ21は、収容されているインクが大気圧を受けるような構成を有している。このような構成を有するインクカートリッジ21には、例えば、液体であるインクが充填されている袋体のもの、あるいは、ホルダ22に装着されると容器内部が大気開放される構造を有するものなどがある。本実施形態では、このようなものをインクカートリッジ21として使用する。
【0027】
ホルダ22には、インクカートリッジ21の供給口24と接続するためのジョイント部25が設けられている。ジョイント部25は、定圧弁23が設けられたインク補充経路20を介して第2のインク経路8上の接続部4と接続されている。ホルダ22がインクカートリッジ21を所定の位置で保持すると、ジョイント部25とインクカートリッジ21の供給口24とが接続される。なお、前述したように、インク補充経路20は、インク循環部2の循環経路における記録ヘッド11とポンプ6の流入口との間に配置されている接続部4において循環経路から分岐している。
【0028】
インク補充経路20に挿入されている定圧弁23は、インク循環部2の圧力が所定範囲以下になると開弁状態となり、インク循環部2の圧力が所定範囲に戻ると閉止状態となる弁である。この定圧弁23の動作について、図2を参照しながら説明する。なお、縦軸は圧力を表しており、横軸から上方に離れるほど正圧側に大きい圧力を表しており、また、横軸から下方に離れるほど負圧側に大きい圧力を表している。
【0029】
ポンプ6を駆動させてインク循環部2の循環経路でインクの循環が行われているときに記録ヘッド11が吐出を行うと、循環経路内のインクの量が減少して循環経路内の圧力が減圧される。換言すれば、インク循環部2は、密閉された循環経路となっているため記録ヘッド12からインクが吐出されると、吐出されたインク量だけ循環経路内の圧力が減圧される。すると、この圧力の負圧側への低下によって、インク補充経路20における循環経路側から定圧弁23にかかるインクの圧力も低下する。換言すれば、記録ヘッド12からインクが吐出されることによって、定圧弁23にはより大きな圧力(負圧)がかかることになる。ここで、循環経路内の圧力が所定範囲より負圧側に大きくなると、つまり、循環経路内の圧力が定圧弁23の開弁圧を下回ると、定圧弁23は開弁状態となり、インクカートリッジ21内のインクが、インク補充経路20を介して第2のインク経路8のインクと連通する。これにより、インクカートリッジ21内のインクがインク補充経路20を通ってインク循環部2に補充される。このようにしてインクが補充されると循環経路内のインクの圧力が正圧側に上昇する。その後、循環経路内の圧力が所定範囲内に収まると、つまり、循環経路内の圧力が定圧弁23の開弁圧を上回ると、定圧弁23は閉止状態となり、インク循環部2へのインクの補充が停止する。
【0030】
本実施形態では、定圧弁23が以上のような動作を行うことで、記録ヘッド11のノズルからインクの吐出を行っても、当該ノズルにかかる圧力を適正値に保ちながらインクを循環させることができる。
【0031】
前述したように、待機時、すなわちポンプ6を動作させていないときには、記録ヘッド11のノズル孔には、負圧生成機構9に生成された負圧が与えられている。以降の説明では、待機時に記録ヘッド11のノズル孔に与えられる圧力を「待機時ノズル圧」と称することとする。
【0032】
一方、この状態でポンプ6を駆動してインクの循環を開始させると、循環経路内の圧力は、負圧生成機構9に生成された負圧がかかった状態から変化し、従って、記録ヘッド11のノズルにかかる圧力も変化する。以降の説明では、この、循環経路でインクを循環させているときにおける記録ヘッド11のノズルにかかる圧力、詳細には循環経路でインクを循環させているときにおけるインクの非吐出時(装置制御部がインクを吐出させる制御を行っていないとき)の圧力を、「循環時ノズル圧」と称することとする。
【0033】
インクを循環経路で循環させている期間において、上述の非吐出時に記録ヘッド11のノズル孔からインクが意図せずに垂れ落ちてしまうことを防止するには、循環時ノズル圧を所定範囲内の負圧にしておく必要がある。その一方、このノズルにかかる圧力が負圧側に余りに大きいと、以降の記録ヘッド11のインク吐出動作に支障が生じることがある。
【0034】
そこで、本実施形態では、この循環時ノズル圧を、第1のインク経路7の流路抵抗、及び第2のインク経路8の流路抵抗によって設定する。つまり、循環時ノズル圧は、第1のインク経路7の流路抵抗と第2のインク経路8の流路抵抗との比率(差)によって定まるため、本実施形態では、上述した不具合が生じないようにポンプ6の流出口から記録ヘッド11に至るまでのインクの流路である往路の流路抵抗と、記録ヘッド11からポンプ6の流入口に至るまでのインクの流路である復路の流路抵抗とを所定の比率(差)にすることで循環時ノズル圧を所定範囲内の負圧にしている。なお、経路の流路抵抗は、例えば、円筒管である経路の管の径を変更する、あるいは、その経路長を変更する等の手法により、変更することは容易である。
【0035】
ここで、図3、図4、及び図5について説明する。図3、図4、及び図5は、それぞれ、インクジェットプリンタ1の第1のインク経路の流路抵抗と第2のインク経路の流路抵抗とによってノズルにかかる圧力がどのように変化するか第1の例、第2の例、及び第3の例として図解したものである。
【0036】
図3、図4、及び図5に示した直交軸において、横軸は時間の経過を表している。また、縦軸は圧力を表しており、横軸から上方に離れるほど正圧側に大きい圧力を表しており、また、横軸から下方に離れるほど負圧側に大きい圧力を表している。
【0037】
図3の第1の例は、循環時ノズル圧を、負圧生成機構9が生成する待機時ノズル圧から更に低下させるように設定した場合の圧力の変化を表している。
この第1の例では、第1のインク経路7(往路)の流路抵抗よりも第2のインク経路8(復路)の流路抵抗を小さくしている。このように構成することで、ポンプ6を駆動してインクの循環を開始させると、記録ヘッド11のノズルかかる圧力(循環時ノズル圧)は、待機時ノズル圧より負圧側に大きくなる。なお、この時の循環時ノズル圧は、もちろん、記録ヘッド11のインク吐出動作に支障を生じさせることのない圧力(負圧)となっている。
【0038】
図4の第2の例は、循環時ノズル圧を、負圧生成機構9が生成する待機時ノズル圧から上昇させるように設定した場合のインクの圧力の変化を表している。
この第2の例では、前述の第1の例とは逆に、第1のインク経路7(往路)の流路抵抗よりも第2のインク経路8(復路)の流路抵抗を大きくしている。このように構成することで、ポンプ6を駆動してインクの循環を開始させると、記録ヘッド11のノズルかかる圧力(循環時ノズル圧)は、待機時ノズル圧より正圧側に大きくなる。なお、この時の循環時ノズル圧は、もちろん、記録ヘッド11のインク吐出動作に支障を生じさせることのない圧力(負圧)となっている。
【0039】
図5の第3の例は、循環時ノズル圧を、負圧生成機構9が生成する待機時ノズル圧と一致させるように設定した場合のインクの圧力の変化を表している。
この第3の例では、第1のインク経路7(往路)の流路抵抗と第2のインク経路8(復路)の流路抵抗とを等しくしている。このように構成することで、ポンプ6を駆動してインクの循環を開始させると、記録ヘッド11のノズルかかる圧力(循環時ノズル圧)は、待機時ノズル圧と等しくなる。
【0040】
以上のように本実施形態では、待機時は、負圧生成機構9によって待機時ノズル圧を所定範囲内の負圧に保っている。また、インク循環時は、第1のインク経路7の流路抵抗、及び第2のインク経路8の流路抵抗を所定の比率(差)にすることで循環時ノズル圧を所定範囲内の負圧にしている。こうすることで、記録ヘッド11のノズルにかかる圧力を適正値に保ちながらインクを循環させることができる。
【0041】
なお、本実施形態においては、負圧生成機構9を第2のインク経路8上に設けていたが、代わりに、負圧生成機構9を第1のインク経路7上に設けるようにしてもよい。
【0042】
〔第2の実施形態〕
次に図6について説明する。図6は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1のインク経路の構成を概略的に示したものである。
【0043】
図6に示した構成要素において、図1に示した第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付している。これらの構成要素については詳細な説明を省略する。
この図6の構成は、インクの循環経路における第1のインク経路7に、往路バッファタンク31が挿入されており、更に、第2のインク経路8に、復路バッファタンク32を挿入されている点のみにおいて、図1に示した第1の実施形態に係る構成と異なっている。
【0044】
往路バッファタンク31及び復路バッファタンク32は、内部にインクを溜めるインク溜め部と空気を溜める空気溜め部とを有し、循環経路内での圧力の過渡変動を空気溜め部が吸収する。従って、この構成では、循環経路でインクを循環させるポンプ6として無脈動ポンプを使用しなくても、インク循環部2を流れるインクの流量と記録ヘッド11のノズルにかかる圧力との脈動変化を吸収することが可能になる。
【0045】
なお、図6の構成では、負圧生成機構9が復路バッファタンク32内に設けられている。負圧生成機構9は、復路バッファタンク32内の圧力を減圧して、循環経路のインクの圧力を所定の負圧とする。
【0046】
この図6のインク経路における待機時及びインク循環時の動作は、第1の実施形態におけるものと同様である。また、循環時ノズル圧の設定を、第1のインク経路7の流路抵抗と第2のインク経路8の流路抵抗とに基づいて行うことも第1の実施形態におけるものと同様である。従って、本実施形態におけるこれらの説明は省略する。
【0047】
なお、本実施形態においては、負圧生成機構9を復路バッファタンク32内に設けていたが、代わりに、負圧生成機構9を往路バッファタンク31内に設けるようにしてもよい。
【0048】
〔第3の実施形態〕
次に図7について説明する。図7は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1のインク経路の構成を概略的に示したものである。
【0049】
図7に示した構成要素において、図1に示した第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付している。
この図7に示した構成は、負圧生成機構9が取り除かれている点、及び、インク補充経路20において定圧弁23に対して並列にバイパス経路が設けられ、このバイパス経路に側路弁41が挿入されている点において、図1に示した第1の実施形態に係る構成と異なっている。
【0050】
図7に示した本実施形態に係るインクジェットプリンタ1のインク経路は、液体であるインクを循環させるインク循環部2と、インク循環部2にインクを補給するための補充部3とを備えており、この両者が接続部4において接続されて構成されている。
【0051】
なお、図7に示した破線矢印は、インク循環部2においてインクを循環させるときのインクが流れる方向を示している。すなわち、インク循環部2では、ポンプ6によって送液されたインクが第1のインク経路7を介してヘッド部5に供給される。そして、ヘッド部5で使用(吐出)されなかったインクが、第2のインク経路8を介してポンプ6へ帰還する。つまり、インク循環部2では、ポンプ6と、第1のインク経路7と、ヘッド部5と、第2のインク経路8とにより、ヘッド部5の記録ヘッド11を経由する循環経路が構成されており、ヘッド部5に対して密閉された経路内でインクを循環させている。
【0052】
インク循環部2の個々の構成については、第1の実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
次に、補充部3について説明する。補充部3は、ヘッド部5からの吐出によって減少した分のインクを、インク循環部2において構成されている循環経路へ、前述の接続部4において当該循環経路から分岐しているインク補充経路20より補充する。
【0053】
補充部3は、インクカートリッジ21、ホルダ22、インク補充経路20、及び定圧弁23を備えており、更に、側路弁41を備えている。このうちのインクカートリッジ21、インク補充経路20及び定圧弁23は、第1の実施形態と同様のものであるので、詳細な説明を省略する。
【0054】
側路弁41は、インク循環部2の循環経路でのインクの循環を停止している待機時にのみ開弁状態とされる弁である。
ホルダ22は、記録ヘッド11よりも重力方向下方に配置されている。このホルダ22には、インクカートリッジ21の供給口24と接続するためのジョイント部25が設けられている。ジョイント部25は、インク補充経路20を介して第2のインク経路8上の接続部4と接続されている。ホルダ22が所定の位置でインクカートリッジ21を保持すると、ジョイント部25がインクカートリッジ21の供給口24と接続される。
【0055】
このように形成されたインクジェットプリンタ1のインク経路において、待機時、すなわちポンプ6を動作させていないときには、循環経路をインクが流れない。この時、前述したように、側路弁41は、待機時には開弁状態とされる。従って、この待機時において、記録ヘッド11のノズル孔には、記録ヘッド11のノズル面の高さとインクカートリッジ21内のインク液面の高さとの水頭差42によって生じるインクの水頭差圧が与えられる。本実施形態では、この水頭差圧が前述した待機時ノズル圧となる。つまり、前述した第1の実施形態では、負圧生成機構9が生成していた待機時ノズル圧を、この水頭差42によって制御する。このように、本実施形態では、この水頭差42によって循環経路のインクの圧力を減圧して前述の所定の負圧とすることで、記録ヘッド11のノズル内でインク液面によるメニスカスを破壊しないようにする。このようにすることで、待機時において記録ヘッド11からインクが吐出する(重力方向に垂れ落ちる)ことが防止される。なお、この水頭差42によって生成する負圧の値は、このメニスカスを破壊しないような圧力の範囲内にする必要があるが、この圧力の範囲はインクの物性により決まるものである。
【0056】
この図7のインク経路における待機時及びインク循環時の動作は、第1の実施形態におけるものと同様である。また、循環時ノズル圧の設定を、第1のインク経路7と第2のインク経路8とにおける流路抵抗に基づいて行うことも第1の実施形態におけるものと同様である。従って、本実施形態におけるこれらの説明は省略する。
【0057】
以上までに説明したいずれの実施形態においても、インク補充経路20上に定圧弁23を設けたことで、記録ヘッド11のノズルからインクの吐出を行っても、当該ノズルにかかる圧力を適正値に保ちながらインクを循環させることができる。
【0058】
なお、以上までに説明した各実施形態におけるインク循環部2の循環経路上、若しくはインク補充経路20上に、ヘッド部5に供給されるインクに含まれる異物を除去して、ノズルの目詰まり等に起因する画像形成の不良を防止するためのフィルタを挿入してもよい。
【0059】
また、各実施形態におけるインク循環部2の循環経路上に、インク循環部2を流れるインクの温度を適正な範囲となるように調整するための温度調整部を備えるようにしてもよい。この温度調整部を備える場合には、例えば、インク循環部2に、インクの温度を検出する温度検出部も備えるようにする。そして、この温度検出部が検出したインクの温度が適正な範囲より低い場合には、温度調整部がインクを加熱し、この温度検出部が検出したインクの温度が適正な範囲より高い場合には、温度調整部がインクを冷却するようにする。
【0060】
なお、本発明は、これまでに説明した各実施形態に限定されるものではなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 インクジェットプリンタ
2 インク循環部
3 補充部
4 接続部
5 ヘッド部
6 ポンプ
7 第1のインク経路
8 第2のインク経路
9 負圧生成機構
11 記録ヘッド
12 インク分配器
13 インク回収器
20 インク補充経路
21 インクカートリッジ
22 ホルダ
23 定圧弁
24 供給口
25 ジョイント部
31 往路バッファタンク
32 復路バッファタンク
41 側路弁
42 水頭差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液体であるインクを吐出する記録ヘッドと、
該記録ヘッドを経由して該インクを循環させる循環経路を構成しているインク循環部と、
該インクを収容しており、該循環経路から分岐している補充経路より該循環経路へ該インクを補充するインク収容器と、
該補充経路に挿入されており、該循環経路側の該インクの圧力が所定値以下の期間において開弁状態となる定圧弁と、
を有していることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
該循環経路で該インクを循環させるポンプを更に有しており、
該循環経路が、該ポンプの流出口から該記録ヘッドに至るまでの該インクの流路である往路と、該記録ヘッドから該ポンプの流入口に至るまでの該インクの流路である復路とを有しており、
該循環経路で該インクを循環させているときにおける該記録ヘッドのノズルにおける該インクの非吐出時の圧力の設定を、該往路及び該復路の流路抵抗に基づいて行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
該補充経路が、該復路において該循環経路から分岐していることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
該ポンプが、無脈動のポンプであることを特徴とする請求項2又は3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
該循環経路上に備えられ、内部に該インクを溜めることで該循環経路内での該インクの圧力の過渡変動を吸収するバッファを更に有することを特徴とする請求項2又は3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
該循環経路での該インクの循環を停止している待機時においての該循環経路の該インクの圧力を所定の負圧とする負圧生成機構を更に有していることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
該補充経路において該定圧弁に対して並列に挿入されており、該循環経路での該インクの循環を停止している待機時にのみ開弁状態とされる側路弁を更に有しており、
該インク収容器に収容されている該インクは大気圧を受けており、
該待機時においての該記録ヘッドのノズルにおける該インクの圧力を、該記録ヘッドのノズル面と該インク収容器内のインク液面との水頭差によって制御する、
ことを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−81592(P2012−81592A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227005(P2010−227005)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】