説明

インクジェットプリンタ

【課題】プロセスカラー以外の色の単色画像を、異なる色のインクによる画像の重ね印刷によらずに印刷可能とする。
【解決手段】インク循環式印刷ユニットB3dの下タンク7に2つのインクカートリッジ23a,23bから2色のインクが供給されると、その2色のインクが、インクジェットヘッド5をインク不吐出状態としてインク循環経路15を循環する。その際、インク循環経路15中で2色のインクが混和され、目標色を有する目標色インクが生成される。したがって、2つのプロセスカラーのインクをインク循環経路15上で循環させて混合することで、プロセスカラー以外の目標色のインクを生成し、生成した目標色インクのインク吐出動作をインクジェットヘッド5に行わせることで、目標色の単色画像を、異なる色のインクによる画像の重ね印刷によらずに印刷することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
大量印刷に適した孔版印刷装置には、2つのドラムを併用して2色印刷を可能としたものがある(例えば、特許文献1)。この種の孔版印刷装置では、例えば、一方のドラムで黒色のインクを用いた印刷を行い、他方のドラムで赤色のインクを用いた印刷を行うことで、黒赤の2色を使った2色印刷を行うことができる。このように、一方の色が黒である2色印刷は、例えばチラシのような、黒の単色画像と他の色の単色画像とを一つの記録紙上に印刷する際に用いることができる。
【0003】
ところで、近年のライン型インクジェットプリンタの登場により、孔版印刷装置に近い高速印刷をインクジェット方式の印刷でも実現できるようになった。例えばフルカラー対応のインクジェットプリンタでは、プロセスカラーと呼ばれるC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色のインクが用いられる。
【0004】
インクジェット方式のプリンタでは、上述した4色のプロセスカラーのインクを適宜組み合わせ、記録紙の同一画素上に重ねて吐出することで、所望の色によるフルカラー印刷を行うことができる。したがって、例えば黒赤の2色印刷をインクジェットプリンタで行う際には、赤インクによる画像部分をプロセスカラーの各色インクの重ね印刷で再現することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−103255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、インクジェット方式のプリンタでは、互いに位置をずらして配置した各インク色別のインクジェットヘッドから各色のインクをそれぞれ記録紙に吐出させる。このため、各色のインクでそれぞれ記録紙に印刷される画像を位置ズレなく重ねて赤色の画像を形成するためには、印刷の高速化をある程度制限せざるを得ない。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、プロセスカラー以外の色の単色画像を、異なる色のインクによる画像の重ね印刷によらずに印刷することができるインクジェットプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した本発明のインクジェットプリンタは、
インクタンクと、該インクタンクから供給されたインクを用いてインク吐出動作を行うインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドと前記インクタンクとの間でインクの循環を行うためのインク循環経路とを含むインク循環式印刷ユニットを備えるインクジェットプリンタにおいて、
前記インク循環式印刷ユニットが、収容されたインクの色が互いに異なる複数のインクカートリッジのうち一以上のインクカートリッジからのインクを前記インクタンクに選択的に供給する選択供給手段を有しており、
前記選択供給手段により複数色のインクが前記インクタンクに選択的に供給されたときに、該インクタンクに選択的に供給された複数色のインクを、前記インクジェットヘッドをインク不吐出状態として前記インク循環経路上で循環させて、目標色を有する目標色インクを生成する目標色インク生成手段を備えており、
前記目標色インク生成手段により生成された前記目標色インクを用いて前記インクジェットヘッドにインク吐出動作を行わせることで、前記目標色の画像の印刷を行う、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載した本発明のインクジェットプリンタによれば、選択供給手段が複数のインクカートリッジからのインクをインクタンクに選択的に供給すると、供給された複数色のインクが目標色インク生成手段によって、インク循環経路上で循環される。
【0010】
このとき、インクジェットヘッドがインク不吐出状態とされるので、インク循環経路上で循環される複数色のインク中には、インクが途中で受ける流路抵抗や流路の折曲に伴う回折等によって乱流が生じる。この乱流によってインク循環経路中の複数色のインクが混和され、目標色を有する目標色インクが生成される。
【0011】
したがって、プロセスカラーの複数色のインクをインク循環経路上で循環させて混合することで、プロセスカラー以外の目標色のインクを生成し、生成した目標色インクのインク吐出動作をインクジェットヘッドに行わせることで、目標色の単色画像を、異なる色のインクによる画像の重ね印刷によらずに印刷することができる。
【0012】
これにより、各色のインクによる画像を正確に重ね印刷するために印刷速度の高速化を制限する必要をなくし、プロセスカラー以外の色による単色印刷を孔版印刷装置に近い高速でインクジェットプリンタにより実現させることができる。
【0013】
なお、選択供給手段により選択的にインクタンクに供給するインクの色は、例えば、フルカラーインクジェットプリンタで使用されるC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のうち、混合により色相が変化するC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のうち少なくとも2つとすることができる。
【0014】
また、請求項2に記載した本発明のインクジェットプリンタは、請求項1に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、前記インク循環経路を循環するインクのインク色を検出する循環インク色検出手段と、該循環インク色検出手段が検出した前記インク色及び前記目標色の色差に応じて、前記選択供給手段により選択的に前記インクタンクに供給される各インクの供給元の前記各インクカートリッジからの供給量を制御する選択色インク供給制御手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載した本発明のインクジェットプリンタによれば、請求項1に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、インク循環経路を循環するインクのインク色をある色(プロセスカラーの色及びプロセスカラー以外の色のどちらもを含む)からそれとは異なる目標色(プロセスカラー以外の色)に替える場合や、インク循環経路内の目標色インクの補充が必要になった場合等には、選択供給手段が選択した各インクカートリッジからインクタンクへの各インクの供給が必要となる。このとき、各インクカートリッジからインクタンクへの各インクの供給量は、インク循環経路を循環するインクのインク色と目標色との色差に応じて制御される。
【0016】
したがって、インク循環経路上での循環により複数色のインクを混合して目標色インクを生成する効率を高め、目標色の単色画像を異なる色のインクによる画像の重ね印刷によらずに印刷する際の印刷効率を高めることができる。
【0017】
さらに、請求項3に記載した本発明のインクジェットプリンタは、請求項1又は2に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、前記インク循環経路を循環するインクのインク色を検出する循環インク色検出手段と、前記目標色インク生成手段により前記目標色インクを生成する際に前記循環インク色検出手段が検出した前記インク色及び前記目標色の色差の値が所定のしきい値を超える場合に、前記インクジェットヘッドをインク不吐出状態として前記インク循環経路中のインクを該インク循環経路外に排出させるインク排出手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載した本発明のインクジェットプリンタによれば、請求項1又は2に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、複数色のインクをインク循環経路上で循環させて目標色インクを生成する際に、その時点でインク循環経路を循環しているインクの色が検出される。
【0019】
そして、検出されたインク循環経路のインクのインク色と目標色との色差の値が所定のしきい値を超えていると、インク循環経路のインクがインク循環経路外に一度排出されてから、選択供給手段により選択された各インクカートリッジからのインクがインクタンクを経てインク循環経路を循環し、目標色インクの生成が行われることになる。
【0020】
したがって、長時間をかけて複数色のインクをインク循環経路で循環させなくても、目標色から色相が大きく異なる色のインクがインク循環経路を循環している状態から、インク循環経路内のインクのインク色を目標色インクに替える(インク循環経路内に目標色インクを生成する)ことができる。
【0021】
これにより、インク循環経路上での循環により複数色のインクを混合して目標色インクを生成する効率を高め、目標色の単色画像を異なる色のインクによる画像の重ね印刷によらずに印刷する際の印刷効率を高めることができる。
【0022】
また、請求項4に記載した本発明のインクジェットプリンタは、請求項1、2又は3に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、前記インク循環経路を循環するインクのインク色を検出する循環インク色検出手段と、前記目標色インク生成手段による前記目標色インクの生成中に前記循環インク色検出手段が検出した前記インク色及び前記目標色の色差に基づいて、前記目標色インク生成手段が前記目標色インクを生成するのに要する所要時間を検出する所要時間検出手段と、該所要時間検出手段が検出した前記所要時間を報知出力する所要時間報知手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0023】
請求項4に記載した本発明のインクジェットプリンタによれば、請求項1、2又は3に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、複数色のインクをインク循環経路で循環させて目標色インクを生成する間、インク循環経路を循環するインクのインク色と目標色との色差に基づいて、目標色インクの生成所要時間が検出される。そして、検出された生成目標時間が報知出力される。
【0024】
したがって、目標色インクの生成が完了して目標色インクによる印刷が可能となるタイミングをユーザーに認識させて、目標色による単色印刷を行う際の利便性を向上させることができる。
【0025】
さらに、請求項5に記載した本発明のインクジェットプリンタは、請求項1、2、3又は4に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、前記インク循環経路を循環するインクのインク色を検出する循環インク色検出手段と、前記目標色インク生成手段による前記目標色インクの生成中に前記循環インク色検出手段が検出した前記インク色に基づいて、前記目標色インク生成手段による前記目標色インクの生成が完了したか否かを判定する生成完了判定手段と、該生成完了判定手段の判定結果が生成完了であるときに、前記インク循環経路から前記インクジェットヘッドに供給された前記目標色インクの該インクジェットヘッドによるインク吐出動作を許容し、かつ、前記生成完了判定手段による判定結果が生成未完了であるときに、前記インク循環経路から前記インクジェットヘッドに供給された前記目標色インクの該インクジェットヘッドによるインク吐出動作を禁止する目標色インク吐出制御手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0026】
請求項5に記載した本発明のインクジェットプリンタによれば、請求項1、2、3又は4に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、インク循環経路を循環するインクの色が目標色になるまでは、インクジェットヘッドからのインク吐出動作が禁止され、目標色になってからインクジェットヘッドからのインク吐出動作が許容されることになる。
【0027】
したがって、目標色インクがインク循環経路内で生成される前に目標色以外の色の状態でインク循環経路から供給されたインクがインクジェットヘッドから吐出されて、目標色とは異なる色による印刷が行われてしまうのを、防止することができる。
【0028】
なお、請求項2、3、4又は5に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、前記循環インク色検出手段には、インクにR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の光3原色の検出光を色検出対象のインクに照射しその反射光を受光してインクの色を光学的に検出するインク色検出センサを用いることができる。
【0029】
また、請求項5の生成完了判定手段は、例えば、インク色検出センサが受光した反射光を解析してインクの色のLを算出し、これと、目標色の既知のLとの差分から、目標色インクの生成が完了したか否かを判定するものとしてもよい。あるいは、適当な時間間隔をおいて循環インク色検出手段が検出したインク色の変化を監視し、その変化が飽和したか否かで、目標色インクの生成が完了したか否かを判定するものとしてもよい。
【0030】
上述したインク色検出センサを循環インク色検出手段に用いることで、インクの色を直接的かつ正確に検出することができる。
【0031】
そして、上述したインク色検出センサをインク循環経路に設置して、インク色検出センサが検出するインクの色を循環インク色検出手段がインク循環経路を循環するインクの色として検出する構成としてもよい。あるいは、上述したインク色検出センサをインクタンクに設置し、循環インク色検出手段が、インク色検出センサが検出するインクタンクのインクの色に、インク循環経路における複数色のインクの混合に関与するファクタの諸条件を加味して、インク循環経路を循環するインクの色を検出する構成としてもよい。
【0032】
上述したインク色検出センサをインク循環経路に設置すれば、インク循環経路を循環するインクの色を直接的かつ正確に検出することができる。また、上述したインク色検出センサをインクタンクに設置すれば、インク循環経路よりもインク量の多い箇所に自由度を持たせてセンサを設置することができる。
【0033】
また、請求項6に記載した本発明のインクジェットプリンタは、請求項1、2、3、4又は5に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、前記選択供給手段により選択的に前記インクタンクに供給されるインクの供給元の前記インクカートリッジの変更後、前記目標色インク生成手段による前記目標色インクの生成完了までの間に、該目標色インク生成手段による前記目標色インクの生成前から前記インクジェットヘッド内に残存するインクのインク吐出動作を前記インクジェットヘッドに行わせる残存インク吐出手段をさらに備えることを特徴とする。
【0034】
請求項6に記載した本発明のインクジェットプリンタによれば、請求項1、2、3、4又は5に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、インク循環経路をインクが循環しても、インクジェットヘッド内のインクは滞留したまま循環されない。したがって、複数色のインクをインク循環経路で循環させることでインク循環経路内で目標色インクが生成されても、インクジェットヘッド内のインクの色は目標色に置換されない。
【0035】
そこで、目標色インクの生成が完了するまでの間に、それ以前からインクジェットヘッド内に滞留し残存しているインクの吐出動作を行っておくことで、目標色インクの生成完了後にインクジェットヘッドから吐出されるインクの色が確実に目標色インクとなるようにすることができる。
【0036】
これにより、目標色以外の色の状態でインク循環経路から供給されたインクがインクジェットヘッドから吐出されて、目標色とは異なる色による印刷が行われてしまうのを、防止することができる。
【0037】
さらに、請求項7に記載した本発明のインクジェットプリンタは、請求項1、2、3、4、5又は6に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、前記選択供給手段による複数色のインクの前記インクタンクへの選択的な供給速度を制御する供給速度制御手段をさらに備え、該供給速度制御手段は、前記目標色インクの前記インクジェットヘッドによるインク吐出動作中における前記供給速度を、該インクジェットヘッドによる前記目標色インクの不吐出状態中における前記供給速度よりも遅い速度に制御することを特徴とする。
【0038】
請求項7に記載した本発明のインクジェットプリンタによれば、請求項1、2、3、4、5又は6に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、複数色のインクをインク循環経路で循環させることでインク循環経路内で目標色インクが生成された後、インクジェットヘッドによる目標色インクの吐出動作中には、不吐出動作中よりも遅い速度で、選択された色のインクが対応するインクカートリッジからインクタンクに供給される。
【0039】
したがって、インクジェットヘッドからの吐出によりインク循環経路上の目標色インクが消費されている間は、インクジェットヘッドからの不吐出によりインク循環経路上の目標色インクが消費されていない間よりも、インク循環経路を循環する目標色インクと混合するためにインクカートリッジからインクタンクに新たに供給するインク量が少なくなる。
【0040】
これにより、インクカートリッジからインクタンクに新たに供給される複数色のインクが、インク循環経路を循環している目標色インクと十分に混合されるまで、インク循環経路を循環するインクの色が一時的に目標色から外れてしまう期間が、インクジェットヘッドがインク循環経路のインクを吐出していないときに比べて、吐出しているときの方が短くなる。
【0041】
このため、インク循環経路上の目標色インクを消費しながらそれを補う選択された複数色のインクを新たにインクタンクを経てインク循環経路に供給する際に、それによるインク循環経路上の目標色インクの色ずれを極力抑制することができる。
【0042】
なお、請求項7に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、前記供給速度制御手段は、前記インク循環経路における複数色のインクの混合に関与するファクタの諸条件を加味して決定された速度に、前記目標色インクの前記インクジェットヘッドによるインク吐出動作中における前記供給速度を制御することを特徴とする構成としてもよい。
【0043】
ここで、上述した諸条件とは、例えば、インク循環経路におけるインクの循環速度、インク循環経路を循環するインクの粘度又は粘度に関連する温度、循環経路を循環するインクの総量のうち、一又は複数とすることができる。
【0044】
そして、目標色インクのインクジェットヘッドによるインク吐出動作中における供給速度を、上述したの諸条件を加味して決定された速度に制御することで、インク循環経路における混合で目標色インクが生成される効率に応じた適切な速度で、目標色インクを生成するのに用いる複数色のインクをインクタンク乃至インク循環経路に供給させることができる。
【0045】
また、請求項8に記載した本発明のインクジェットプリンタは、請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、複数組の前記インク循環式印刷ユニットのうち一組の前記インク循環式印刷ユニットのみが前記選択供給手段を有していることを特徴とする。
【0046】
請求項8に記載した本発明のインクジェットプリンタによれば、請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、目標色の単色印刷による画像と他の色の単色印刷による画像とによる2色印刷又は3色以上の印刷を実現することができる。
【0047】
さらに、請求項9に記載した本発明のインクジェットプリンタは、請求項8に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、前記インク循環経路におけるインクの循環速度を制御する循環速度制御手段をさらに備え、該循環速度制御手段が、前記一組のインク循環式印刷ユニットが該一組のインク循環式印刷ユニットを除く他の組のインク循環式印刷ユニットよりも、前記インク循環経路における前記循環速度が速くなるように制御することを特徴とする。
【0048】
請求項9に記載した本発明のインクジェットプリンタによれば、請求項8に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、複数色のインクをインク循環経路で循環させることでインク循環経路内で目標色インクが生成されるインク循環式印刷ユニットでは、他のインク循環式印刷ユニットよりも、インク循環経路を目標色インクが循環する速度(循環速度)が速くなる。
【0049】
したがって、他のインク循環式印刷ユニットでインクをインク循環経路で循環させるのに必要な速度よりも速い速度で、複数色のインクを混合させる必要があるインク循環式印刷ユニットのインク循環経路でインクを循環させて、複数色のインクの混合を効率よく行わせることができる。
【0050】
また、請求項10に記載した本発明のインクジェットプリンタは、請求項8又は9に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、前記目標色インク生成手段による前記目標色インクの生成中に、前記一組のインク循環式印刷ユニットを除く他の組のインク循環式印刷ユニットの前記インク循環経路におけるインクの循環動作を中断させる循環中断制御手段をさらに備えることを特徴とする。
【0051】
請求項10に記載した本発明のインクジェットプリンタによれば、請求項8又は9に記載した本発明のインクジェットプリンタにおいて、一組のインク循環式印刷ユニットのインク循環経路を循環する複数色のインクの混合によって目標色インクを生成している間は、目標色インクを用いた印刷が行えず、したがって、他の組のインク循環式印刷ユニットにおいても、インクジェットヘッドからを吐出させて印刷を行うことができない。
【0052】
そこで、一組のインク循環式印刷ユニットのインク循環経路を循環する複数色のインクの混合によって目標色インクを生成している間、他の組のインク循環式印刷ユニットのインク循環経路におけるインクの循環動作を中断させることで、そのために供給していた電力を、一組のインク循環式印刷ユニットのインク循環経路において目標色インクを生成するための電力として集中して供給し、電力供給の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、プロセスカラー以外の色の単色画像を、異なる色のインクによる画像の重ね印刷によらずに印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係るライン型インクジェットプリンタの概略構成を示す説明図である。
【図2】図1の4つのインク循環式印刷ユニットのうち3つの全体構成を示す説明図である。
【図3】図1の4つのインク循環式印刷ユニットのうち1つの全体構成を示す説明図である。
【図4】図3のインク循環式印刷ユニットの変形例の全体構成を示す説明図である。
【図5】図1のライン型インクジェットプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】図5の制御ユニットのCPUがROMに格納されたプログラムを実行することで行うインク循環式印刷ユニットのインクジェットヘッドから吐出するインクの色の切り替えに関連する処理の概要を示すフローチャートである。
【図7】図5の制御ユニットのCPUがROMに格納されたプログラムを実行することで行うインク循環式印刷ユニットのインクジェットヘッドから吐出するインクの色の切り替えに関連する処理の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係るライン型インクジェットプリンタの概略構成を示す説明図である。図1に示すように、本実施形態のライン型インクジェットプリンタ(以下、「インクジェットプリンタ」と略記する。)1は、給紙部Aと、プリンタ部Bと、乾燥部Cと、排紙部Dと、反転部Eとを備えている。
【0056】
給紙部Aは、記録紙PAを給紙するものである。給紙部Aは、図1の太線で示す搬送経路の最も上流側に配置されている。給紙部Aは、複数の給紙台A1と、複数対の給紙ローラA2とを備えている。給紙ローラA2は、何れかの給紙台A1からこれに続く給紙経路RSにより記録紙PAを搬送してプリンタ部Bへと給紙する。
【0057】
プリンタ部Bは、記録紙PAを搬送しつつ、記録紙PAに画像を印刷する。プリンタ部Bは、給紙部Aの下流側に配置されている。プリンタ部Bは、レジストローラB1と、ベルト搬送部B2と、4個のインク循環式印刷ユニットB3(B3a〜B3d)とを備えている。個々のインク循環式印刷ユニットB3a〜B3dの構成は後述する。
【0058】
レジストローラB1は、給紙部Aまたは反転部Eから搬送される記録紙PAをベルト搬送部B2へと搬送する。ベルト搬送部B2は、レジストローラB1から搬送された記録紙PAを吸引しつつ、乾燥部Cへと搬送する。
【0059】
乾燥部Cは、印刷済みの記録紙PAを乾燥しつつ搬送する。乾燥部Cは、プリンタ部Bの下流側に配置されている。乾燥部Cは、乾燥炉C1と、3対の搬送ローラC2と、加熱送風部C3とを備えている。
【0060】
乾燥炉C1は、記録紙PAをガイドしつつ、加熱送風部C3から送られる加熱気体を貯溜するものである。乾燥炉C1の内部には、記録紙PAの搬送経路のうち図1の実線及び点線で示す通常経路RCの一部を構成する搬送空間(図示略)が形成されている。搬送ローラC2は、乾燥炉C1の内部の記録紙PAを搬送する。
【0061】
排紙部Dは、印刷済みの記録紙PAを排紙して、積層する。排紙部Dは、乾燥部Cの下流側に配置されている。排紙部Dは、通常経路RCの最も下流側に配置されている。排紙部Dは、切替機構D1と、2対の排紙ローラD2と、排紙台D3とを備えている。
【0062】
切替機構D1は、通常経路RCと、図1の一点鎖線で示す両面印刷用の反転経路RRとの間で記録紙PAの搬送経路を切り替るものである。排紙ローラD2は、記録紙PAを排紙台D3へと排紙するものである。
【0063】
反転部Eは、片面が印刷された記録紙PAを反転させてプリンタ部Bへと搬送するものである。反転部Eは、複数対の反転ローラE1と、フリッパE2と、スイッチバック部E3とを備えている。
【0064】
反転ローラE1は、切替機構D1を介して、乾燥部Cから搬送される片面印刷済みの記録紙PAをスイッチバック部E3へと一度搬送する。また、反転ローラE1は、スイッチバック部E3から戻る記録紙PAを、フリッパE2を介して、プリンタ部Bへと搬送する。
【0065】
図2は図1の4つのインク循環式印刷ユニットのうち3つの全体構成を示す説明図である。図2に示す3つのインク循環式印刷ユニットB3a〜B3cは、それぞれ、K(ブラック)、C(シアン)、Y(イエロー)の各色のインクを用いて記録紙PAに印刷するものである。
【0066】
図2の各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3cは、上タンク3からライン型インクジェットヘッド5を経て下タンク7に至るインク流路9と、下タンク7から循環ポンプ11を経て上タンク3に至るインク流路13とにより構成される、インク循環経路15を有している。
【0067】
前記上タンク3は、大気開放弁31を介して大気と連通する空気層33を内部に有している。この空気層33は、循環ポンプ11の作動によりインク循環経路15を循環するインクの圧力に生じる脈動に対する緩衝や、インクジェットヘッド5に設けられるノズルのインクメニスカスの圧力を安定させるためのバッファとして設けられる。また、上タンク3には、内部のインク液面の上限値とその上の限界値とをそれぞれ検出する2つの液面センサ35,37が設けられている。
【0068】
前記インク流路9の途中には、インク流路9を通過するインクの温度を検出する温度センサ91が設けられている。
【0069】
前記インクジェットヘッド5は、ノズルが設けられたブロックを複数有しており、上タンク3よりも下方に配置されている。インクジェットヘッド5の各ノズルには、上タンク3のインク液面とノズルのインクメニスカスとの水頭差に応じた圧力で、インク流路9を介して上タンク3からインクが供給される。
【0070】
前記下タンク7(請求項中のインクタンクに相当)は、インクジェットヘッド5の下方に配置されており、インクジェットヘッド5から余剰のインクが自重により回収される。この下タンク7は、大気開放弁71を介して大気と連通する空気層73を内部に有している。この空気層73は、インク循環経路15におけるインクの循環停止中に、大気圧によりノズルのインクメニスカスの圧力を安定させるために設けられている。
【0071】
また、下タンク7には、内部のインク液面の下限値を検出する液面センサ77が設けられている。さらに、下タンク7には補給用インク流路19と開閉弁21とを介してインクカートリッジ23が接続されている。各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3cのインクカートリッジ23には、プロセスカラーであるK(ブラック)、C(シアン)、Y(イエロー)の各色のインクがそれぞれ充填されている。液面センサ77により下タンク7のインク液面が下限値まで減ったことが検出されると、開閉弁21が適宜開放され、インクカートリッジ23内のインクが補給用インク流路19を介して下タンク7に適量供給される。
【0072】
前記循環ポンプ11は、下タンク7のインクをインク流路13を介して上タンク3に還流させる。このインク流路13の途中には温度調整器25が設けられている。この温度調整器25は、循環ポンプ11により下タンク7から上タンク3に還流されるインクの温度を、インクジェットヘッド5においてインクが適切な吐出速度で吐出される適温に調節するものである。そのために温度調整器25は、加熱用のヒータ251と冷却用のファン253及びヒートシンクを有している。
【0073】
図3は図1の4つのインク循環式印刷ユニットのうち残る1つの全体構成を示す説明図である。図3に示すインク循環式印刷ユニットB3dは、M(マゼンタ)のインクと他の色のインクとのうち一方を用いて、又は、両方を混ぜたインクを用いて、記録紙PAに印刷するものである。
【0074】
図3に示すインク循環式印刷ユニットB3dは、図2に示す3つのインク循環式印刷ユニットB3a〜B3cの大部分と同じ構成を有している。そして、インク循環式印刷ユニットB3dは、それぞれ2つの補給用インク流路19a,19b、開閉弁21a,21b、及び、インクカートリッジ23a,23bを有している。各補給用インク流路19a,19bには、それぞれを通過するインクの温度を検出する温度センサ191a,191bが設けられている。
【0075】
一方のインクカートリッジ23aには、プロセスカラーであるM(マゼンタ)のインクが充填されている。他方のインクカートリッジ23bにはM(マゼンタ)以外の色のインクが充填されている。インクカートリッジ23bに充填するインクの色は、やはり、プロセスカラーの色のどれかである。インクカートリッジ23bに充填するインクの色は、M(マゼンタ)のインクと混合して得ようとするプロセスカラー以外の色(例えば、C(シアン)、Y(イエロー)のどちらか)を適宜選択すればよい。本実施形態では、以後、M(マゼンタ)のインクと混合して得ようとする色を目標色と称する。
【0076】
液面センサ77により下タンク7のインク液面が下限値まで減ったことが検出されると、開閉弁21a,21bのどちらか一方又は両方が適宜開放され、インクカートリッジ23a,23b内の各インクのどちらか一方又は両方が、補給用インク流路19a,19bを介して下タンク7に適量供給される。
【0077】
また、インク循環式印刷ユニットB3dは、インク流路9の途中に、インク流路9を通過するインクの色を検出するインク色検出センサ93を有している。このインク色検出センサ93は、本実施形態では、インク流路9を通過するインクにR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の光3原色の検出光を照射しその反射光を受光して、インクの色を光学的に検出するための出力信号を、後述する制御ユニット29(図5参照)に出力する。
【0078】
さらに、インク循環式印刷ユニットB3dは、廃インクタンク17を有している。この廃インクタンク17は、インクジェットヘッド5から下タンク7に至るインク流路9の途中から分岐されて、開閉弁171を介して接続されている。なお、廃インクタンク17への分岐点と下タンク7との間のインク流路9にも、開閉弁75が介設されている。
【0079】
インク循環経路15でインクを循環させる通常状態では、下タンク7の開閉弁75が開放されると共に、廃インクタンク17の開閉弁171が閉じられる。また、必要に応じてインク循環経路15を循環するインクをインク循環経路15の外に排出する際には、下タンク7の開閉弁75が閉じられると共に、廃インクタンク17の開閉弁171が開放される。
【0080】
上述した本実施形態のインク循環式印刷ユニットB3a〜B3dでは、印刷ジョブの発生を待つ待機中には、インク循環経路15におけるインクの循環が停止され、印刷ジョブが発生しウォームアップまたは印刷動作中となった場合には、インク循環経路15におけるインクの循環が行われる。そして、これらの各動作中にインクジェットヘッド5のインクメニスカスに適正な負圧がかかるように、上タンク3や下タンク7の大気開放弁31,71が開閉される。
【0081】
上述した構成のインク循環式印刷ユニットB3a〜B3dにおいて印刷ジョブ待ちの待機中が続くと、インク循環経路15中のインクの温度が適温より低い温度に低下する。そのため、次に印刷ジョブが発生してインク循環経路15におけるインクの循環が再開された場合に、温度センサ91で検出されるインクの温度が適温に満たないと、インクジェットプリンタ1がウォームアップ動作に入る。このウォームアップ動作では、上タンク3の大気開放弁31が閉じられて、上タンク3の空気層33が大気から遮断される。
【0082】
したがって、ウォームアップ動作中に上タンク3からインクジェットヘッド5にインクが供給されると、それと同量以上のインクが下タンク7から上タンク3に供給されない限り、上タンク3の空気層33に負圧がかかり、上タンク3からインクジェットヘッド5へのインクの供給に制動がかけられることになる。この結果、上タンク3においては、大気開放弁31が開放されている場合に比べて、インクジェットヘッド5に供給されるインク量が減ることになる。
【0083】
これを利用して、ウォームアップ動作中における上タンク3のインクが減る度合いを下げ、あるいは、上タンク3のインクがむしろ下タンク7からのインクの供給により増えるようにして、空気層33の空気がインクに混入してインクジェットヘッド5に供給されてしまうのを抑制することができる。
【0084】
また、ウォームアップ動作では、インク循環経路15を流れるインクが温度調整器25のヒータ251によって適温に加熱される。インクが適温に加熱されると、ウォームアップ動作を終えてインクジェットプリンタ1は印刷動作に入り、各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3dのインクジェットヘッド5のノズルから適宜インクを吐出して印刷ジョブによる印字を行う。
【0085】
上述した構成のインクジェットプリンタ1において印刷ジョブ待ちの待機中が続くと、インク循環経路15中のインクの温度が適温より低い温度に低下する。そのため、次に印刷ジョブが発生してインク循環経路15におけるインクの循環が再開された場合に、温度センサ91で検出されるインクの温度が適温に満たないと、インクジェットプリンタ1がウォームアップ動作に入る。このウォームアップ動作では、上タンク3の大気開放弁31が閉じられて、上タンク3の空気層33が大気から遮断される。
【0086】
したがって、ウォームアップ動作中に上タンク3からインクジェットヘッド5にインクが供給されると、それと同量以上のインクが下タンク7から上タンク3に供給されない限り、上タンク3の空気層33に負圧がかかり、上タンク3からインクジェットヘッド5へのインクの供給に制動がかけられることになる。この結果、上タンク3においては、大気開放弁31が開放されている場合に比べて、インクジェットヘッド5に供給されるインク量が減ることになる。
【0087】
これを利用して、ウォームアップ動作中における上タンク3のインクが減る度合いを下げ、あるいは、上タンク3のインクがむしろ下タンク7からのインクの供給により増えるようにして、空気層33の空気がインクに混入してインクジェットヘッド5に供給されてしまうのを抑制することもできる。
【0088】
また、ウォームアップ動作では、インク循環経路15を流れるインクが温度調整器25のヒータ251によって適温に加熱される。インクが適温に加熱されると、ウォームアップ動作を終えてインクジェットプリンタ1は印刷動作に入り、インクジェットヘッド5のノズルからインクを吐出して印刷ジョブによる印字を行う。
【0089】
ところで、図3に示すインク循環式印刷ユニットB3dは、インクジェットヘッド5が吐出するインクの色を、インクカートリッジ23aに充填されたインクの色であるM(マゼンタ)色と、インクカートリッジ23bに充填されたM(マゼンタ)以外のプロセスカラーのインクの色と、両インクカートリッジ23a,23bのインクを混合して得られるプロセスカラー以外の色とのどれかに、切り替えることができる。
【0090】
例えば、インク循環式印刷ユニットB3dのインクジェットヘッド5が吐出するインクの色を、両インクカートリッジ23a,23bのインクを混合して得られるプロセスカラー以外の色のインクを混合した色にする場合は、次の第1の方法による切り替え動作を行う。
【0091】
この第1の方法による切り替え動作では、まず、両補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bを共に開放する。これにより、両インクカートリッジ23a,23bのインクを下タンク7に供給する。
【0092】
そして、廃インクタンク17の開閉弁171を閉じると共に下タンク7の開閉弁75を開放し、循環ポンプ11を作動させて、下タンク7のインクをインク循環経路15で循環させる。このとき、インク循環経路15を循環する間に両インクカートリッジ23a,23bのインクが混合されるので、十分混合されて目的色のインクとなった時点で、インクジェットヘッド5によりインク吐出動作を行わせる。
【0093】
一方、インク循環式印刷ユニットB3dのインクジェットヘッド5が吐出するインクの色を、2つのインクカートリッジ23a,23bのうちどちらか一方のインクの色にする場合は、次の第2の方法による切り替え動作を行う。
【0094】
この第2の方法による切り替え動作では、まず、2つの補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bのうち一方を開放し他方を閉じる。これにより、使用するインクカートリッジ23a(又はインクカートリッジ23b)のインクを選択的に下タンク7に供給する。
【0095】
そして、廃インクタンク17の開閉弁171を閉じると共に下タンク7の開閉弁75を開放し、循環ポンプ11を作動させて、下タンク7のインクをインク循環経路15で循環させる。続いて、インクジェットヘッド5によりインク吐出動作を行わせる。
【0096】
ところで、インク循環式印刷ユニットB3dのインクジェットヘッド5が吐出するインクの色を切り替える(2色の混合から1色に、1色から2色の混合に、または、一方の色から他方の色に)場合は、切り替え前の色のインクを下タンク7に供給する状態から、切り替え後の色のインクを下タンク7に供給する状態に、補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bの開閉状態を切り替える。
【0097】
このとき、インク循環経路15に切り替え前の色のインクが存在したまま、補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bの開閉状態を切り替えると、切り替え直後からインクジェットヘッド5にインク吐出動作を行わせた場合、切り替え前の色のインクがしばらく吐出することになる。
【0098】
そこで、補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bの開閉状態を切り替えた後、切り替え前の色のインクがインクジェットヘッド5から吐出されなくなるまで予備印刷を行った後、切り換え後の色のインクによる印刷を行ってもよい。
【0099】
また、切り換え後にインクジェットヘッド5が吐出するインクの色が、2つのインクカートリッジ23a,23bのうちどちらか一方のインクの色である場合は、上述した第2の方法の切り替え動作に代えて、次に示す第3乃至第5の方法によるいずれかの切り替え動作を行ってもよい。これら第3乃至第5の方法による切り替え動作は、いずれも、インク循環経路15に存在する切り替え前の色のインクを全て廃インクタンク17に排出した後に、インク循環経路15を循環する切り替え後の色のインクによる印刷を行うようにするものである。
【0100】
まず、第3の方法による切り替え動作では、補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bを共に閉じ、下タンク7の開閉弁75も閉じて、廃インクタンク17の開閉弁171を開放する。そして、循環ポンプ11を作動させて、下タンク7の切り替え前の色のインクを、上タンク3及びインクジェットヘッド5を経由して廃インクタンク17に排出する。
【0101】
切り替え前の色のインクを全て廃インクタンク17に排出したら、廃インクタンク17の開閉弁171を閉じ、下タンク7の開閉弁75を開放すると共に、切り替え後の色のインクに対応する補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bを選択的に開放し、下タンク7に切り換え後の色のインクを供給する。そして、循環ポンプ11を作動させて、切り替え後の色のインクを、上タンク3を経てインクジェットヘッド5に供給し、インクジェットヘッド5から吐出させる。
【0102】
なお、第3の方法による切り替え動作を実行する間、下タンク7の圧力調整のために、下タンク7の大気開放弁71を開放させて下タンク7を大気開放状態としてもよい。また、切り換え後の色のインクを下タンク7に供給した後、インク循環経路15の各部の内壁に切り替え前の色のインクが付着して残っている可能性がある。そこで、インクジェットヘッド5から切り替え後の色のインクを吐出させる前に、しばらくの間、下タンク7の開閉弁75を閉じると共に廃インクタンク17の開閉弁171を開放して、インク循環経路15のインクを廃インクタンク17に排出するようにしてもよい。
【0103】
また、第3の方法による切り替え動作では、インク循環経路15の切り替え前の色のインクを全て廃インクタンク17に排出するので、その後にインク循環経路15に切り替え後の色のインクを循環させる際に空気が混入し、インクジェットヘッド5に入る可能性がある。そこで、インクジェットヘッド5から切り替え後の色のインクを吐出させる前に、しばらくの間、パージング(加圧による強制吐出動作)やフラッシング(全ノズルからの吐出動作)を行って、不吐出状態を解消した後、切り換え後の色のインクによる印刷を行ってもよい。
【0104】
次に説明する第4の方法による切り替え動作は、インクジェットヘッド5に空気が入らないようにする切り替え動作である。第4の方法による切り替え動作では、補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bを共に閉じ、下タンク7の開閉弁75も閉じて、廃インクタンク17の開閉弁171を開放する。そして、循環ポンプ11を作動させて、下タンク7の切り替え前の色のインクを、インク循環経路15乃至インクジェットヘッド5に空気が入らない程度残して、上タンク3及びインクジェットヘッド5を経由して廃インクタンク17に排出する。
【0105】
切り替え前の色のインクの大半を廃インクタンク17に排出したら、切り替え後の色のインクに対応する補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bを選択的に開放し、下タンク7に切り換え後の色のインクを供給する。そして、循環ポンプ11を作動させて、切り替え後の色のインクを、上タンク3を経てインクジェットヘッド5に供給する。
【0106】
この時点では、下タンク7に残した切り替え前の色のインクがインクジェットヘッド5に供給されるので、インクジェットヘッド5にインク吐出動作をさせず、しばらくの間、インクジェットヘッド5に供給されたインクを廃インクタンク17に排出する。そして、切り替え前の色のインクがの廃インクタンク17に全て排出された頃合いを見計らって、廃インクタンク17の開閉弁171を閉じると共に、下タンク7の開閉弁75を開放する。そして、上タンク3を経由して供給された切り替え後の色のインクをインクジェットヘッド5から吐出させる。
【0107】
続いて説明する第5の方法による切り替え動作も、インクジェットヘッド5に空気が入らないようにする切り替え動作である。第5の方法による切り替え動作では、図4の説明図に示すように、インク循環経路15におけるインクの循環方向における上タンク3の下流側を、インクジェットヘッド5をバイパスして下タンク7の開閉弁75の上流側に接続するバイパス流路14を、インク流路9に設ける。また、インク循環経路15のインク循環方向におけるインクジェットヘッド5の上流側と下流側とにそれぞれ開閉弁51,53を設けると共に、バイパス流路14にも開閉弁141を設ける。
【0108】
そして、補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bと、インクジェットヘッド5の上流側の開閉弁51と、インクジェットヘッド5の下流側の開閉弁53とを共に閉じ、下タンク7の開閉弁75を開放したまま、バイパス流路14の開閉弁141と廃インクタンク17の開閉弁171を開放する。
【0109】
これにより、上タンク3の切り替え前の色のインクを重力によりバイパス流路14を介して廃インクタンク17に排出し、下タンク7の切り替え前の色のインクを重力により開閉弁75,171を経て廃インクタンク17に排出する。
【0110】
この時点では、循環ポンプ11の内部や、インク流路9のインクジェットヘッド5と各開閉弁51,53との間の部分に、切り替え前の色のインクが残っている。そこで、上タンク3及び下タンク7の切り替え前の色のインクを廃インクタンク17に排出したら、バイパス流路14の開閉弁141と下タンク7の開閉弁75とを閉じる。そして、切り替え後の色のインクに対応する補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bを選択的に開放して、下タンク7に切り換え後の色のインクを供給する。さらに、インクジェットヘッド5の上流側の開閉弁51と、インクジェットヘッド5の下流側の開閉弁53とを開放し、循環ポンプ11を作動させて、切り替え後の色のインクを、上タンク3を経てインクジェットヘッド5に供給する。
【0111】
これにより、循環ポンプ11の内部や、インク流路9のインクジェットヘッド5と各開閉弁51,53との間の部分に残った、切り替え前の色のインクを、廃インクタンク17に排出する。そして、切り替え前の色のインクがの廃インクタンク17に全て排出された頃合いを見計らって、廃インクタンク17の開閉弁171を閉じると共に、下タンク7の開閉弁75を開放する。そして、上タンク3を経由して供給された切り替え後の色のインクをインクジェットヘッド5から吐出させる。
【0112】
なお、上述した第1乃至第5の各方法による切り替え動作では、切り替え後の色のインクがインクジェットヘッド5に供給される時点でも、インクジェットヘッド5の内部には、切り替え前の色のインクが残存している。そこで、インク循環経路15を循環する切り替え後の色のインクによる印刷を行う前に、インクジェットヘッド5の内部に残った切り替え前の色のインクを吐出させるようにしてもよい。
【0113】
図5は図1のインクジェットプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。本実施形態のインクジェットプリンタ1は、全体制御用の制御ユニット29を有している。この制御ユニット29は、ROM29cに格納されたプログラムをCPU29aがRAM29bの作業領域を使用しながら実行することで、各種の制御処理を実行する。
【0114】
前記制御ユニット29には、インク循環式印刷ユニットB3a〜B3dのインク流路9や補給用インク流路19,19a,19bに設けた温度センサ91,191,191a,191bや、インク循環式印刷ユニットB3dのインク流路9に設けたインク色検出センサ93、上タンク3及び下タンク7の各液面センサ35,37,77が接続されている。
【0115】
また、前記制御ユニット29には、上タンク3及び下タンク7の各大気開放弁31,71、循環ポンプ11、温度調整器25のヒータ251及びファン253、開閉弁21,21a,21b,51,53,75,141,171、並びに、各種情報表示用にインクジェットプリンタ1に設けられたディスプレイ101が接続されている。
【0116】
次に、制御ユニット29のCPU29aがROM29cに格納されたプログラムを実行することで行う、インク循環式印刷ユニットB3dのインクジェットヘッド5から吐出するインクの色の切り替えに関連する処理の概要を、図6及び図7のフローチャートにより説明する。
【0117】
まず、図6に示すように、CPU29aは、インク循環式印刷ユニットB3dのインクジェットヘッド5から吐出するインクの色を切り替えるか否かを確認する(ステップS1)。切り替えない場合は(ステップS1でNO)、切り替えるまでステップS1をリピートし、切り替える場合は(ステップS1でYES)、切り替え後の色が目標色であるか否かを確認する(ステップS3)。
【0118】
目標色でない場合は(ステップS3でNO)、後述するステップS39に移行し、目標色である場合は(ステップS3でYES)、インク循環式印刷ユニットB3a〜B3cの循環ポンプ11を停止させて、インク循環経路15におけるK(ブラック)、C(シアン)、Y(イエロー)の各インクの循環を停止させる(ステップS5)。
【0119】
続いて、CPU29aは、上述した第1の方法による切り替え動作を開始させる(ステップS7)。このとき、インク循環式印刷ユニットB3dの循環ポンプ11を作動させる場合は、他のインク循環式印刷ユニットB3a〜B3cのインク循環経路15におけるインクの循環速度よりも高い速度で、インク循環経路15を2色のインクが循環するように、循環ポンプ11を高い速度(高速)で作動させる。
【0120】
このときに必要となる追加の電力は、ステップS5で停止させたインク循環式印刷ユニットB3a〜B3cの循環ポンプ11の消費電力を利用する。これにより、インク循環式印刷ユニットB3dの循環ポンプ11を高速作動させても、インクジェットプリンタ1の消費電力が上がらないようにすることができる。
【0121】
次に、CPU29aは、2つのインクカートリッジ23a,23bからの2色のインクがインク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15を循環する状態に至ったか否かを確認する(ステップS9)。
【0122】
2色のインクがインク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15を循環する状態に至っていない場合は(ステップS9でNO)、その状態に至るまでステップS9をリピートし、その状態に至った場合は(ステップS9でYES)、インク色検出センサ93の出力信号に基づいて、インク流路9を通過するインクの色(循環インク色)と目標色との色差値が、予め定められたしきい値を超えているか否かを確認する(ステップS11)。
【0123】
なお、インク循環式印刷ユニットB3dの2つのインクカートリッジ23a,23bから下タンク7に供給される2色のインクの既知の色相に基づいて、インク流路9を通過するインクの色(循環インク色)を計算等により求めるようにしてもよい。
【0124】
その場合、インク流路9を通過するインクの色(循環インク色)は、インク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15を循環することによる、インクカートリッジ23a,23bからの2色のインクの混合に関与するファクタの諸条件を加味して、決定してもよい。
【0125】
ここで、諸条件とは、例えば、インク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15におけるインクの循環速度、インク循環経路15を循環する2色のインクの既知の粘度、インク流路9や補給用インク流路19a,19bを通過するインクの粘度に関連する、温度センサ91,191,191a,191bにより検出されるインクの温度、インク循環経路15を循環するインクの総量等のうち、一つ又は複数とすることができる。
【0126】
色差値がしきい値を超えている場合は(ステップS11でYES)、上述した第3乃至第5の方法による切り替え動作中で説明した動作により、インク循環経路15を循環するインクを廃インクタンク17に排出した後(ステップS13)、後述するステップS14に移行する。色差値がしきい値を超えていない場合は(ステップS11でNO)、ステップS13をスキップしてステップS14に移行する。
【0127】
ステップS14では、ステップS11の確認に用いた、インク流路9を通過するインクの色(循環インク色)と目標色との色差値に応じて、補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bの開度調整により、2つのインクカートリッジ23a,23bから下タンク7への各色のインクの供給量を、それぞれ制御する(ステップS14)。この制御は、インク流路9を通過するインクの色(循環インク色)と目標色との色差値が小さくなるのに適した内容で行われる。
【0128】
次に、ステップS15では、CPU29aは、インク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15を循環する2色のインクの混合によって、目標色インクの生成が完了したか否かを確認する。目標色インクの生成が完了したか否かは、インク色検出センサ93による、インク循環式印刷ユニットB3dのインク流路9を通過するインクの色の検出結果に基づいて、確認することができる。
【0129】
例えば、インク色検出センサ93が受光した反射光を解析して、インク循環式印刷ユニットB3dのインク流路9を通過するインクの色のLを算出し、これと、目標色の既知のLとの差分から、目標色インクの生成が完了したか否かを判定するものとしてもよい。
【0130】
あるいは、適当な時間間隔をおいてインク色検出センサ93が検出した、インク循環式印刷ユニットB3dのインク流路9を通過するインクの色の変化を監視し、その変化が飽和したか否かで、目標色インクの生成が完了したか否かを判定するものとしてもよい。
【0131】
そして、目標色インクの生成が完了していない場合は(ステップS15でNO)、目標色インクの生成が完了するまでの所要時間を検出し(ステップS17)、ディスプレイ101(図5参照)の所要時間の表示を、検出した所要時間に更新した後(ステップS19)、ステップS14にリターンする。
【0132】
一方、目標色インクの生成が完了した場合は(ステップS15でYES)、インク循環式印刷ユニットB3dのインクジェットヘッド5の内部に残存した、切り替え前の色のインクを吐出させる(ステップS21)。そして、インク循環式印刷ユニットB3a〜B3cの循環ポンプ11を作動させて、インク循環経路15におけるK(ブラック)、C(シアン)、Y(イエロー)の各インクの循環を再開させる(ステップS23)。
【0133】
次に、CPU29aは、インク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15を循環する目標色インクによる印刷を許可して(ステップS25)、インクジェットヘッド5を目標色インクの不吐出状態(吐出禁止状態)から吐出許可状態に切り替える。このとき、インク循環式印刷ユニットB3dの循環ポンプ11は、ステップS7で開始した、上述の第1の方法による切り替え動作中の速度よりも低い、インクジェットヘッド5からのインク吐出による印刷動作中における速度(低速)に戻す。
【0134】
続いて、CPU29aは、上タンク3の液面センサ35,37や下タンクの液面センサ77の検出結果に基づいて、インク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15を循環する目標色インクのインク量が不足しているか否かを確認する(ステップS27)。不足していない場合は(ステップS27でNO)、後述するステップS37に移行する。
【0135】
一方、目標色インクのインク量が不足している場合は(ステップS27でYES)、インク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15を循環する目標色インクによる印刷を中断して(ステップS29)、インクジェットヘッド5を目標色インクの吐出許可状態から不吐出状態(吐出禁止状態)に切り替える。
【0136】
そして、CPU29aは、補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bの開度を調整して、2つのインクカートリッジ23a,23bから下タンク7への2色のインクの供給速度を、通常速度から高速に切り替える(ステップS31)。次に、インク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15を循環する目標色インクのインク量が不足状態から十分な状態に復帰したか否かを確認する(ステップS33)。
【0137】
復帰していない場合は(ステップS33でNO)、復帰するまでステップS33をリピートし、復帰した場合は(ステップS33でYES)、補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bの開度を調整して、2つのインクカートリッジ23a,23bから下タンク7への2色のインクの供給速度を、高速から通常速度に切り替えた後(ステップS35)、ステップS25にリターンする。
【0138】
また、ステップS27において、インク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15を循環する目標色インクのインク量が不足していない場合(NO)は、ステップS37において、インク循環式印刷ユニットB3dのインクジェットヘッド5から吐出するインクの色を切り替えるか否かを確認する(ステップS37)。切り替えない場合は(ステップS37でNO)、ステップS25にリターンし、切り替える場合は(ステップS37でYES)、一連の処理を終了する。その後、ステップS3からの一連の処理を再び実行する。
【0139】
さらに、ステップS3において、切り替え後の色が目標色でない場合(NO)に、CPU29aは、図7に示すように、上述した第2乃至第4の方法のいずれかによる切り替え動作を開始させる(ステップS39)。このとき、インク循環式印刷ユニットB3dの循環ポンプ11を作動させる場合は、インクジェットヘッド5からのインク吐出による印刷動作中における速度と同じ速度で、循環ポンプ11を作動させる。
【0140】
次に、CPU29aは、インク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15を循環する色のインクによる印刷を許可して(ステップS41)、インクジェットヘッド5をインクの不吐出状態(吐出禁止状態)から吐出許可状態に切り替える。
【0141】
続いて、CPU29aは、上タンク3の液面センサ35,37や下タンクの液面センサ77の検出結果に基づいて、インク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15を循環するインク量が不足しているか否かを確認する(ステップS43)。不足していない場合は(ステップS43でNO)、ステップS43をリピートする。
【0142】
一方、インク循環経路15を循環するインク量が不足している場合は(ステップS43でYES)、一連の処理を終了する。その後、ステップS3からの一連の処理を再び実行する。
【0143】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態では、図6のフローチャートにおけるステップS7及び図7のフローチャートにおけるステップS39が、請求項中の選択供給手段に対応する処理となっている。また、本実施形態では、図6中のステップS7が、請求項中の目標色インク生成手段に対応する処理となっている。
【0144】
さらに、本実施形態では、インク色検出センサ93と制御ユニット29とによって、請求項中の循環インク色検出手段が構成されている。また、本実施形態では、図6中のステップS14が、請求項中の選択色インク供給制御手段に対応する処理となっている。さらに、本実施形態では、図6中のステップS13が、請求項中のインク排出手段に対応する処理となっている。
【0145】
また、本実施形態では、図6中のステップS17が、請求項中の所要時間検出手段に対応する処理となっている。さらに、本実施形態では、図6中のステップS19が、請求項中の所要時間報知手段に対応する処理となっている。また、本実施形態では、図6中のステップS15が、請求項中の生成完了判定手段に対応する処理となっている。さらに、本実施形態では、図6中のステップS15及びステップS25が、請求項中の目標色インク吐出制御手段に対応する処理となっている。
【0146】
また、本実施形態では、図6中のステップS21が、請求項中の残存インク吐出手段に対応する処理となっている。さらに、本実施形態では、図6中のステップS31及びステップS35が、請求項中の供給速度制御手段に対応する処理となっている。
【0147】
また、本実施形態では、図6中のステップS7及びステップS25が、請求項中の循環速度制御手段に対応する処理となっている。但し、ステップS7以降ステップS37でインクの色を切り替えることを確認する(YES)までの間、循環ポンプ11を常に高速作動させるようにしてもよい。さらに、本実施形態では、図6中のステップS5及びステップS23が、請求項中の循環中断制御手段に対応する処理となっている。
【0148】
上述した本実施形態のインクジェットプリンタ1によれば、インク循環式印刷ユニットB3dの下タンク7に2つのインクカートリッジ23a,23bから2色のインクが供給されると、その2色のインクが、インクジェットヘッド5をインク不吐出状態としてインク循環経路15を循環する。その際、2色のインクには、インクが途中で受ける流路抵抗や流路の折曲に伴う回折等によって乱流が生じる。この乱流によりインク循環経路15中で2色のインクが混和され、目標色を有する目標色インクが生成される。
【0149】
したがって、2つのインクカートリッジ23a,23bから下タンク7に供給される2色のプロセスカラーのインクをインク循環経路15上で循環させて混合することで、プロセスカラー以外の目標色のインクを生成し、生成した目標色インクのインク吐出動作をインクジェットヘッド5に行わせることで、目標色の単色画像を、異なる色のインクによる画像の重ね印刷によらずに印刷することができる。
【0150】
なお、図6中のステップS14において、インク流路9を通過するインクの色(循環インク色)と目標色との色差値に応じて、2つのインクカートリッジ23a,23bから下タンク7への各色のインクの供給量をそれぞれ制御する構成は、省略してもよい。
【0151】
しかし、本実施形態のようにこの構成を設ければ、インク循環経路15上での循環により2色のインクを混合して目標色インクを生成する効率を高め、目標色の単色画像を異なる色のインクによる画像の重ね印刷によらずに印刷する際の印刷効率を高めることができる。
【0152】
また、図6中のステップS11において、インク流路9を通過するインクの色(循環インク色)と目標色との色差値が、予め定められたしきい値を超えている場合に、ステップS13において、インク循環経路15を循環するインクを廃インクタンク17に排出する構成は、省略してもよい。
【0153】
しかし、本実施形態のようにこの構成を設ければ、長時間をかけて2色のインクをインク循環経路15で循環させなくても、目標色から色相が大きく異なる色のインクがインク循環経路15を循環している状態から、インク循環経路15内のインクのインク色を目標色インクに替える(インク循環経路15内に目標色インクを生成する)ことができる。
【0154】
これにより、インク循環経路15上での循環により2色のインクを混合して目標色インクを生成する効率を高め、目標色の単色画像を異なる色のインクによる画像の重ね印刷によらずに印刷する際の印刷効率を高めることができる。
【0155】
さらに、図6中のステップS15において、インク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15を循環する2色のインクの混合による目標色インクの生成が完了したと確認されるまでの間、ステップS17において、目標色インクの生成が完了するまでの所要時間を検出し、ステップS19において、ディスプレイ101(図5参照)の所要時間の表示を更新する(ディスプレイ101に所要時間を表示する)ための構成は、省略してもよい。
【0156】
しかし、本実施形態のようにこの構成を設ければ、目標色インクの生成が完了して目標色インクによる印刷が可能となるタイミングをユーザーに認識させて、目標色による単色印刷を行う際の利便性を向上させることができる。
【0157】
また、インクジェットヘッド5から吐出するインクの色を、2つのインクカートリッジ23a,23bから供給される2色のインクを混合した目標色インクに切り替える際に、図6中のステップS25において目標色インクによる印刷が許可されるまでの間、インクジェットヘッド5のインク吐出動作を禁止する(不吐出状態とする)構成は、省略してもよい。
【0158】
しかし、本実施形態のようにこの構成を設ければ、目標色インクがインク循環経路15内で生成される前に目標色以外の色の状態でインク循環経路15から供給されたインクがインクジェットヘッド5から吐出されて、目標色とは異なる色による印刷が行われてしまうのを、防止することができる。
【0159】
さらに、図6中のステップS21において、インク循環式印刷ユニットB3dのインクジェットヘッド5の内部に残存した、切り替え前の色のインクを吐出させる構成は、省略してもよい。
【0160】
しかし、本実施形態のようにこの構成を設ければ、2色のインクをインク循環経路15で循環させても目標色に置換されない、インクジェットヘッド5内の切り替え前の色のインクを、目標色インクによる印刷の開始前にインクジェットヘッド5から吐出させて、目標色インクによる印刷の開始直後に、目標色とは異なる色による印刷が行われてしまうのを、防止することができる。
【0161】
また、図6中のステップS31及びステップS35の処理によって、インクジェットヘッド5からの目標色インクの吐出動作中に、不吐出動作中よりも遅い速度でインクをインクカートリッジ23a,23bから下タンク7に供給させる構成は、省略してもよい。
【0162】
しかし、本実施形態のようにこの構成を設ければ、インクカートリッジ23a,23bから下タンク7に新たに供給される2色のインクが、インク循環経路15を循環している目標色インクと十分に混合されるまで、インク循環経路15を循環するインクの色が一時的に目標色から外れてしまう期間が、インクジェットヘッド5がインク循環経路15のインクを吐出していないときに比べて、吐出しているときの方が短くなる。
【0163】
このため、インク循環経路15上の目標色インクを消費しながら、それを補う2色のインクを、2つのインクカートリッジ23a,23bから下タンク7を経てインク循環経路15に新たに供給する際に、それによるインク循環経路15上の目標色インクの色ずれを極力抑制することができる。
【0164】
さらに、図6中のステップS7及びステップS25の処理によって、インク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15を循環する目標色インクの循環速度が、他のインク循環式印刷ユニットB3a〜B3cのインク循環経路15を循環するインクの循環速度よりも高い速度となるように、循環ポンプ11を高い速度(高速)で作動させる構成は、省略してもよい。
【0165】
しかし、本実施形態のようにこの構成を設ければ、2色のインクをインク循環経路15で循環、混合させて目標色インクを生成する必要があるインク循環式印刷ユニットB3dでは、他のインク循環式印刷ユニットB3a〜B3cよりも、インク循環経路15をインク(目標色インク)に速い速度で循環させて、複数色のインクの混合を効率よく行わせることができる。
【0166】
また、図6中のステップS5及びステップS23の処理によって、インク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15において2色のインクを循環、混合させて目標色インクを生成する際に、他のインク循環式印刷ユニットB3a〜B3cのインク循環経路15におけるインクの循環を中断させる構成は、省略してもよい。
【0167】
しかし、本実施形態のようにこの構成を設ければ、他のインク循環式印刷ユニットB3a〜B3cの循環ポンプ11の作動に用いていた電力を、インク循環式印刷ユニットB3dのインク循環経路15における2色のインクの循環速度を高めるために循環ポンプ11が余分に消費する電力に充てて、電力供給の効率化を図ることができる。
【0168】
なお、本実施形態では、2つのインクカートリッジ23a,23bからの2色のインクを混合して目標色のインクを得る場合について説明したが、3色以上のインクを混合して目的色のインクを得る場合にも、本発明は適用可能である。
【0169】
また、本実施形態では、2色のインクを選択的にインク循環経路15に供給できるインク循環式印刷ユニットB3dの他に、固定の単色インクをインク循環経路15上で循環させる3つのインク循環式印刷ユニットB3a〜B3cを有するインクジェットプリンタ1を例に取って説明した。
【0170】
しかし、本発明は、複数色のインクを選択的にインク循環経路に供給できるインク循環式印刷ユニットのみを有するインクジェットプリンタや、固定の単色インクをインク循環経路上で循環させる2又は4以上のインク循環式印刷ユニットを、複数色のインクを選択的にインク循環経路に供給できるインク循環式印刷ユニットと共に有するインクジェットプリンタにも適用可能である。
【符号の説明】
【0171】
1 ライン型インクジェットプリンタ
3 上タンク
5 インクジェットヘッド
7 下タンク
9 インク流路
11 循環ポンプ
13 インク流路
14 バイパス流路
15 インク循環経路
17 廃インクタンク
19,19a,19b 補給用インク流路
21,21a,21b,51,53,75,141,171 開閉弁
23,23a,23b インクカートリッジ
25 温度調整器
29 制御ユニット
29a CPU
29b RAM
29c ROM
31,71 大気開放弁
33,73 空気層
35,37,77 液面センサ
51,53 開閉弁
91,191,191a,191b 温度センサ
93 インク色検出センサ
101 ディスプレイ
251 ヒータ
253 ファン
A 給紙部
A1 給紙台
A2 給紙ローラ
B プリンタ部
B1 レジストローラ
B2 ベルト搬送部
B3 インク循環式印刷ユニット
B3a〜B3d インク循環式印刷ユニット
C 乾燥部
C1 乾燥炉
C2 搬送ローラ
C3 加熱送風部
D 排紙部
D1 切替機構
D2 排紙ローラ
D3 排紙台
E 反転部
E1 反転ローラ
E2 フリッパ
E3 スイッチバック部
PA 記録紙
RC 通常経路
RR 反転経路
RS 給紙経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクタンクと、該インクタンクから供給されたインクを用いてインク吐出動作を行うインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドと前記インクタンクとの間でインクの循環を行うためのインク循環経路とを含むインク循環式印刷ユニットを備えるインクジェットプリンタにおいて、
前記インク循環式印刷ユニットは、収容されたインクの色が互いに異なる複数のインクカートリッジのうち一以上のインクカートリッジからのインクを前記インクタンクに選択的に供給する選択供給手段を有しており、
前記選択供給手段により複数色のインクが前記インクタンクに選択的に供給されたときに、該インクタンクに選択的に供給された複数色のインクを、前記インクジェットヘッドをインク不吐出状態として前記インク循環経路上で循環させて、目標色を有する目標色インクを生成する目標色インク生成手段を備えており、
前記目標色インク生成手段により生成された前記目標色インクを用いて前記インクジェットヘッドにインク吐出動作を行わせることで、前記目標色の画像の印刷を行う、
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インク循環経路を循環するインクのインク色を検出する循環インク色検出手段と、該循環インク色検出手段が検出した前記インク色及び前記目標色の色差に応じて、前記選択供給手段により選択的に前記インクタンクに供給される各インクの供給元の前記各インクカートリッジからの供給量を制御する選択色インク供給制御手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記インク循環経路を循環するインクのインク色を検出する循環インク色検出手段と、前記目標色インク生成手段により前記目標色インクを生成する際に前記循環インク色検出手段が検出した前記インク色及び前記目標色の色差の値が所定のしきい値を超える場合に、前記インクジェットヘッドをインク不吐出状態として前記インク循環経路中のインクを該インク循環経路外に排出させるインク排出手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記インク循環経路を循環するインクのインク色を検出する循環インク色検出手段と、前記目標色インク生成手段による前記目標色インクの生成中に前記循環インク色検出手段が検出した前記インク色及び前記目標色の色差に基づいて、前記目標色インク生成手段が前記目標色インクを生成するのに要する所要時間を検出する所要時間検出手段と、該所要時間検出手段が検出した前記所要時間を報知出力する所要時間報知手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記インク循環経路を循環するインクのインク色を検出する循環インク色検出手段と、前記目標色インク生成手段による前記目標色インクの生成中に前記循環インク色検出手段が検出した前記インク色に基づいて、前記目標色インク生成手段による前記目標色インクの生成が完了したか否かを判定する生成完了判定手段と、該生成完了判定手段の判定結果が生成完了であるときに、前記インク循環経路から前記インクジェットヘッドに供給された前記目標色インクの該インクジェットヘッドによるインク吐出動作を許容し、かつ、前記生成完了判定手段による判定結果が生成未完了であるときに、前記インク循環経路から前記インクジェットヘッドに供給された前記目標色インクの該インクジェットヘッドによるインク吐出動作を禁止する目標色インク吐出制御手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記選択供給手段により選択的に前記インクタンクに供給されるインクの供給元の前記インクカートリッジの変更後、前記目標色インク生成手段による前記目標色インクの生成完了までの間に、該目標色インク生成手段による前記目標色インクの生成前から前記インクジェットヘッド内に残存するインクのインク吐出動作を前記インクジェットヘッドに行わせる残存インク吐出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記選択供給手段による複数色のインクの前記インクタンクへの選択的な供給速度を制御する供給速度制御手段をさらに備え、該供給速度制御手段は、前記目標色インクの前記インクジェットヘッドによるインク吐出動作中における前記供給速度を、該インクジェットヘッドによる前記目標色インクの不吐出状態中における前記供給速度よりも遅い速度に制御することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
複数組の前記インク循環式印刷ユニットのうち一組の前記インク循環式印刷ユニットのみが前記選択供給手段を有していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記インク循環経路におけるインクの循環速度を制御する循環速度制御手段をさらに備え、該循環速度制御手段は、前記一組のインク循環式印刷ユニットが該一組のインク循環式印刷ユニットを除く他の組のインク循環式印刷ユニットよりも、前記インク循環経路における前記循環速度が速くなるように制御することを特徴とする請求項8記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記目標色インク生成手段による前記目標色インクの生成中に、前記一組のインク循環式印刷ユニットを除く他の組のインク循環式印刷ユニットの前記インク循環経路におけるインクの循環動作を中断させる循環中断制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項8又は9記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−86489(P2012−86489A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236289(P2010−236289)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】