説明

インクジェットヘッドの駆動方法

【課題】各ノズルから吐出されるインク滴の吐出体積と吐出速度の双方を調整し、均一化することで、印字品質を高める。
【解決手段】 基準となる通電波形を供給することにより各ノズルから吐出されるインク滴の吐出体積と吐出速度とを基に、ノズル毎に吐出体積調整量と吐出速度調整量とを求める。次に、このノズル毎の吐出体積調整量と吐出速度調整量とから、ノズル毎に定常区間の時間と維持区間の時間を決定する。そして、このノズル毎に決定された時間の定常区間と維持区間とを有する通電波形の駆動パルス信号を該当するノズルに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インクジェットヘッドの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のノズルを備えたインクジェットヘッドの駆動装置は、各ノズルに対して選択的に所定の通電波形の駆動パルス電圧を印加する。インクジェットヘッドは、電圧が印加されたノズルからインク滴を吐出する。
【0003】
このようなインクジェットヘッドを用いたインクジェットプリンタは、面積階調方式、濃度階調方式あるいはマルチドロップ方式によって階調印字を行う。面積階調方式は、大きさの変わらないインク滴で複数のドットをマトリックス状に打ち込んで1ピクセルとし、ピクセル内のドットの配列の違いで階調を表現する。濃度階調方式は、インク滴の大きさを変えることにより1ドットの濃度を変化させて、階調を表現する。マルチドロップ方式は、インク滴の大きさを変えずに1ドットに対して打ち込むインク滴の数を可変して1ドットの濃度を変化させ、階調を表現する。これらの階調印字方式は、それぞれ一長一短があり、用途に応じて最適な印字方式が採用される。
【0004】
しかしながら、インクジェットヘッドを製造する過程において、部品の寸法精度または組立て精度に、ばらつきが生じるのは避けられない。このため、各圧電部材に同じ通電波形の駆動パルス電圧を印加したとしても、各ノズルから吐出されるインク滴の吐出体積及び吐出速度は一定にはならない。
【0005】
そこで従来から、各ノズルから吐出されるインク滴の吐出体積または吐出速度のばらつきを少なくするための技術がいくつか提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−150257号公報
【特許文献2】特開2006−035670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のインクジェットヘッドの駆動方法は、インク滴の吐出体積または吐出速度のどちらか一方のばらつきを優先的に低減する。このため、各ノズルから吐出されるインク滴の吐出体積と吐出速度の双方を調整し、均一化することで、印字品質をより一層高めることが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
複数のノズルを、圧電部材からなる側壁を隔てて構成し、各ノズルの側壁を構成する圧電部材に所定の通電波形の駆動パルス信号を選択的に供給して圧電部材を変位させ、この圧電部材の変位により各ノズルを選択的に変形させてインク滴を吐出させるインクジェットヘッドの駆動方法の一実施形態は、通電波形を、ノズルの形状を定常状態から容積が拡大する方向に変形させるための電圧を供給する準備区間と、この準備区間が経過した後で前記ノズルの形状を容積が拡大した状態から定常状態に復元させるための電圧を供給する吐出区間と、この吐出区間が経過した後でノズルの形状を定常状態から容積が縮小する方向に変形させるための電圧を供給する後処理区間とに区分する。さらに、準備区間の通電波形を、定常状態を維持する定常区間と容積が拡大する方向に変形させる拡大区間とに区分するとともに、吐出区間の通電波形を、容積が拡大した状態を維持する維持区間と定常状態に復元させる復元区間とに区分する。そして、基準となる通電波形を供給することにより各ノズルから吐出されるインク滴の吐出体積と吐出速度とを基に、ノズル毎に吐出体積調整量と吐出速度調整量とを求め、このノズル毎の吐出体積調整量と吐出速度調整量とから、ノズル毎に定常区間の時間と維持区間の時間を決定手段により決定し、このノズル毎に決定された時間の定常区間と維持区間とを有する通電波形の駆動パルス信号を駆動手段により該当するノズルに供給するようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ライン型インクジェットヘッドの一部を分解して示す斜視図である。
【図2】図2は、ライン型インクジェットヘッドの前方部における横断面図である。
【図3】図3は、ライン型インクジェットヘッドの前方部における縦断面図である。
【図4】図4の(a),(b),(c)は、ライン型インクジェットヘッドの動作原理を説明するための模式図であり、(a)は定常状態を示す図、(b)は負電圧印加状態を示す図、(c)は正電圧印加状態を示す図である。
【図5】図5は、ライン型インクジェットヘッドの1つのノズルからインク滴を吐出させる際に供給される駆動パルス信号の波形図である。
【図6】図6の(a),(b),(c),(d)は、マルチドロップ方式による階調印字の動作原理を説明するための模式図であり、(a)は1階調印字を示す図、(b)は2階調印字を示す図、(c)は3階調印字を示す図、(d)は7階調印字を示す図である。
【図7】図7は、マルチドロップ方式による階調印字を行うときに隣接する3つのノズルに供給される駆動パルス信号の波形図である。
【図8】図8は、通電波形の定常時間と維持時間を可変することで変化する吐出体積の変化量特性を示すグラフである。
【図9】図9は、通電波形の定常時間と維持時間を可変することで変化する吐出速度の変化量特性を示すグラフである。
【図10】図10は、通電波形の定常時間と維持時間を可変することで吐出体積と吐出速度の調整領域が存在することを説明するための概念図である。
【図11】図11は、通電波形の定常時間と維持時間を可変することで変化する吐出体積の変化量特性と調整領域との関係を示すグラフである。
【図12】図12は、通電波形の定常時間と維持時間を可変することで変化する吐出速度の変化量特性と調整領域との関係を示すグラフである。
【図13】図13は、吐出体積と吐出速度の調整領域を説明するための概念図である。
【図14】図14は、調整領域を参照して吐出体積と吐出速度を調整する方法を説明するための概念図である。
【図15】図15の(a),(b),(c)は、サンプルとなる複数のノズルの初期特性を説明するための図であり、(a)はノズル毎の初期吐出体積と初期吐出速度を示す図、(b)はノズル毎に基準に対する初期体積差と初期速度差を示す図、(c)は、初期状態にある各ノズルの統計結果を示す図である。
【図16】図16の(a),(b),(c),(d)は、サンプルとなる複数のノズルの調整段階で生じる値を説明するための図であり、(a)は、ポイントPxの吐出体積調整量Vxと吐出速度調整量Wxを示す図、(b)は、ポイントPxの定常時間Ta_xと維持時間Tb_xを示す図、(c)は、吐出体積調整量と吐出速度調整量の実効値Va,Waを示す図、(d)は、各ノズルのポイントPaでの定常時間Ta_xと維持時間Tb_xの値を示す図である。
【図17】図17の(a),(b),(c)は、サンプルとなる複数のノズルの調整後の特性を説明するための図であり、(a)はノズル毎の調整後吐出体積と調整後吐出速度を示す図、(b)はノズル毎に基準に対する調整後体積差と調整後速度差を示す図、(c)は、調整後の各ノズルの統計結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、インクジェットヘッド駆動方法の実施形態について説明する。
なお、この実施形態は、シェアモードタイプのライン型インクジェットヘッド100に適用した場合である。
【0011】
はじめに、ライン型インクジェットヘッド100の構成について、図1乃至図3を用いて説明する。図1は、ライン型インクジェットヘッド100の一部を分解して示す斜視図、図2は、同ヘッド100の前方部における横断面図、図3は、同ヘッド100の前方部における縦断面図である。
【0012】
ヘッド100は、ベース基板9の前方側の上面に第1の圧電部材1を接合し、この第1の圧電部材1の上に第2の圧電部材2を接合する。ヘッド100は、図2の矢印で示すように、第1の圧電部材1と第2の圧電部材2とを、板厚方向に沿って互いに相反する方向に分極して接合する。そしてヘッド100は、この接合した圧電部材1,2の先端側から後端側に向けて多数の長尺な溝3を設ける。各溝3は、間隔が一定でありかつ平行である。各溝3は、先端が開口し、後端が上方に斜傾する。
【0013】
ヘッド100は、各溝3の側壁及び底面に電極4を設ける。さらにヘッド100は、各溝3の後端から第2の圧電部材2の後部上面に向けて、電極4から延出された引出し電極10を設ける。
【0014】
ヘッド100は、各溝3の上部を天板6で塞ぎ、各溝3の先端をオリフィスプレート7で塞ぐ。天板6は、その内側後方に共通インク室5を備える。ヘッド100は、天板6とオリフィスプレート7とで囲まれた各溝3によって、インクの吐出を行うノズル15を形成する。ノズル15は、インク室とも称される。ヘッド100は、オリフィスプレート7の各溝3と対向する位置にインク吐出口8を開ける。
【0015】
ヘッド100は、ベース基板9の後方側の上面に、導電パターン13が形成されたプリント基板11を接合し、このプリント基板11の上に、駆動手段であるヘッド駆動部を内蔵したドライブIC12を搭載する。ドライブIC12は、導電パターン13に接続する。導電パターン13は、各引出し電極10とワイヤボンディングにより導線14で結合する。
【0016】
次に、上記の如く構成されたライン型インクジェットヘッドの動作原理について、図4及び図5を用いて説明する。
【0017】
図4の(a)は、中央のノズル15aと、このノズル15aに隣接する両隣のノズル15b,15cの電極4がいずれも接地電位の状態を示している。この状態では、ノズル15aとノズル15b及びノズル15aとノズル15cとで挟まれた圧電部材1,2からなる側壁16a,16bは、何ら歪み作用を受けない。
【0018】
図4の(b)は、中央のノズル15aの電極4に負電圧(−Vs)が印加された状態を示している。なお、両隣のノズル15b,15cの電極4はいずれも接地電位である。この状態では、各側壁16a,16bに、圧電部材1,2の分極方向と直交する方向に電界が作用する。この作用により、各側壁16a,16bは、ノズル15aの容積を拡大するようにそれぞれ外側に変形する。
【0019】
図4の(c)は、中央のノズル15aの電極4に正電圧(+Vs)が印加された状態を示している。なお、両隣のノズル15b,15cの電極4はいずれも接地電位である。この状態では、各側壁16a,16bに、圧電部材1,2の分極方向と直交する方向で図4(b)のときとは逆の方向に電界が作用する。この作用により、各側壁16a,16bは、ノズル15aの容積を縮小するようにそれぞれ内側に変形する。
【0020】
図5は、ノズル15aからインク滴を吐出するためにノズル15aの電極4に印加される駆動パルス信号の通電波形を示している。時間Ttによって示される区間は、インク滴の吐出に必要な時間であり、この時間Ttは、準備区間の時間T1、吐出区間の時間T2及び後処理区間の時間T3に区分される。準備時間T1、吐出時間T2及び後処理時間T3は、使用するインクや温度等の条件により、適切な値に設定される。
【0021】
さらに、準備時間T1は、定常区間の時間Taと拡大区間の時間(T1−Ta)とに細分化され、吐出区間の時間T2は、維持区間の時間Tbと復元区間の時間(T2−Tb)とに細分化される。したがって、ノズル15からインク滴を吐出するために必要な通電波形の所要時間Ttは、次の(1)式で表される。
【0022】
Tt=Ta+(T1−Ta)+Tb+(T2−Tb)+T3 …(1)
ここで、定常時間Taと維持時間Tbは、いずれも可変可能である。そこで、定常時間Taと維持時間Tbをいずれも“0”に設定すると、所要時間Ttは、次の(2)式で表される。
【0023】
Tt=T1+T2+T3 …(2)
図5に示すように、ヘッド駆動部は、先ず、時点t0において、ノズル15a,15b,15cに対応した各電極4にそれぞれ0ボルトの電圧を印加する。そして、定常時間Taが経過するのを待機する。この間、各ノズル15a,15b,15cは、図4の(a)の状態となる。
【0024】
定常時間Taが経過して時点t1になると、ヘッド駆動部は、ノズル15aに対応した電極4に所定の負電圧(−Vs)を印加する。そして、準備時間T1が経過するのを待機する。負電圧(−Vs)が印加されると、ノズル15aの両側の側壁16a,16bが、ノズル15aの容積を拡大するようにそれぞれ外側に変形して、図4の(b)の状態となる。この変形により、ノズル15a内の圧力が低下する。このため、共通インク室5からノズル15a内にインクが流れ込む。
【0025】
準備時間T1が経過して時点t2になると、ヘッド駆動部は、さらに維持時間Tbが経過するまで、ノズル15aに対応した電極4に負電圧(−Vs)を印加し続ける。この間、各ノズル15a,15b,15cは、図4の(b)の状態を維持する。
【0026】
維持時間Tbが経過して時点t3になると、ヘッド駆動部は、ノズル15aに対応した電極4に印加する電圧を0ボルトに戻す。そして、吐出時間T2が経過するのを待機する。印加電圧が0ボルトになると、ノズル15aの両側の側壁16a,16bが定常状態に復元されて、図4の(a)の状態に戻る。この復元により、ノズル15a内の圧力が増大する。このため、ノズル15aに対応したインク吐出口8からインク滴が吐出する。
【0027】
吐出時間T2が経過して時点t4になると、ヘッド駆動部は、ノズル15aに対応した電極4に所定の正電圧(+Vs)を印加する。そして、後処理時間T3が経過するのを待機する。正電圧(+Vs)が印加されると、ノズル15aの両側の側壁16a,16bが、ノズル15aの容積を縮小するようにそれぞれ内側に変形して、図4の(c)の状態となる。この変形により、ノズル15a内の圧力がさらに増大する。このため、インク滴の吐出によりノズル15a内に生じる急激な圧力低下が緩和される。
【0028】
後処理時間T3が経過して時点t5になると、ヘッド駆動部は、ノズル15aに対応した電極4に印加する電圧を再度0ボルトに戻す。印加電圧が0ボルトに戻されたことに応じて、ノズル15aの両側の側壁16a,16bが定常状態に復元される。すなわち、各ノズル15a,15b,15cは、図4の(a)の状態に戻る。
【0029】
ヘッド駆動部は、図5に示した通電波形の駆動パルス信号をノズル15aの電極4に供給する。そうすると、ノズル15aに対応したインク吐出口8からインク滴が吐出される。
【0030】
次に、マルチドロップ方式による階調印字について、図6及び図7を用いて説明する。前述したように、マルチドロップ方式は、インク滴の大きさを変えずに1ドットに対して打ち込むインク滴の数を可変して1ドットの濃度を変化させ、階調を表現する。そこで、ヘッド駆動部は、図5に示した通電波形の駆動パルス電圧を、1つのノズル15の電極4に複数回連続して繰り返し入力する。そうすると、このノズル15に対応したインク吐出口8からインク滴が複数回連続して吐出される。すなわち、マルチドロップ方式による階調印字が行われる。
【0031】
図6の(a)〜(d)は、インク吐出口8から吐出するインク滴17と、このインク滴17が記録用紙18上に到達して浸透したドット19の状態を示す。
1階調印字のときには、図6の(a)に示すように、インク滴17が1個である。このため、記録用紙18に浸透するインクの量は少ない。
2階調印字のときには、図6の(b)に示すように、インク滴17が2個である。このため、記録用紙18に浸透するインクの量は、1階調印字のときの略2倍となり、ドットの径も大きくなる。
3階調印字のときには、図6の(c)に示すように、インク滴17が3個である。このため、記録用紙18に浸透するインクの量は、1階調印字のときの略3倍となり、ドットの径はさらに大きくなる。
7階調印字のときには、図7の(d)に示すように、インク滴17が7個である。このため、記録用紙18に浸透するインクの量は、1階調印字のときの略7倍となる。最大階調が7階調とすると、最大径のドットが記録用紙18に印字される。
なお、4階調印字から6階調印字までについては図示しないが、インク滴の数が階調数に応じて増加し、記録用紙18に浸透するインクの量もそれに応じて増加する点は同じである。
【0032】
このように、マルチドロップ方式による階調印字の場合には、吐出するインク滴の数と印字濃度との関係が直線的に変化する。したがって、駆動パルスの数によって吐出するインク滴の数を制御することで、良好な階調印字が実現できる。
【0033】
図7は、最大階調を7階調として印字を行う場合の駆動パルス信号の通電波形を示す。シェアモードタイプのインクジェットヘッドは、あるノズルからインクを吐出するとき、側壁を共有する両隣のノズルは、同時にインクを吐出することはできない。そこで、各ノズル15を、“n”,“n−1”,“n+1”の3つのグループに分割する。具体的には、あるノズルがグループ“n”に属すると仮定すると、このノズルに対して一方の側に隣接するノズルがグループ“n−1”に属し、他方の側に隣接するノズルがグループ“n+1”に属するように分割する。そして、図7に示すように、グループ毎にタイミングをずらして、各ノズルの電極に駆動パルス信号を供給する。
【0034】
ここで、グループ間のディレイ時間を“Td”とすると、最大階調が7階調のときの3分割駆動に要するサイクルタイムTcは、次の(3)式で表される。
Tc=(Tt*7+Td)*3 …(3)
駆動周波数Fは、サイクルタイムTcの逆数になるので、次の(4)式で表される。
【0035】
F=1/(Tt*7+Td)*3 …(4)
ところで、前述したように、図5に示す通電波形の定常時間Taと維持時間Tbは、いずれも可変可能である。そして、この定常時間Taと維持時間Tbとを変化させることによって、ノズル15から吐出するインク滴の吐出体積と吐出速度が変化することが、実験により判明した。吐出体積は、平均的なノズルによって最大階調印字での1ドットを形成するのに必要なインク滴の合計体積である。吐出速度は、平均的なノズルによって最大階調印字での1ドットを形成するのに必要なインク滴の最後の1滴の吐出速度である。
【0036】
実験は、定常時間Taと維持時間Tbをいずれも0[ns]としたときの吐出体積及び吐出速度を基準とする。そして、定常時間Taと維持時間Tbをそれぞれ変化させたときの差分である吐出体積変化量ΔV[pl]と吐出速度変化量ΔW[m/s]とを求めた。
【0037】
図8は、吐出体積変化量ΔV[pl]を示すグラフである。図8において、横軸は定常時間Ta[ns]を示しており、縦軸は吐出体積変化量ΔV[pl]を示している。定常時間Taの変化範囲は、0[ns]から700[ns]までである。維持時間Tbの変化範囲は、0[ns]から850[ns]までである。変化量ΔV[pl]は、プラス方向が体積の増加を示しており、マイナス方向が体積の減少を示している。図8からわかるように、吐出体積は、定常時間Taが長くなると減少し、維持時間Tbが長くなると増加する。
【0038】
図9は、吐出速度変化量ΔW[m/s]を示すグラフである。図9において、横軸は定常時間Ta[ns]を示しており、縦軸は吐出速度変化量ΔW[m/s]を示している。定常時間Taの変化範囲は、0[ns]から700[ns]までである。維持時間Tbの変化範囲は、0[ns]から850[ns]までである。変化量ΔW[m/s]は、プラス方向が速度の増加を示しており、マイナス方向が速度の減少を示している。図9からわかるように、吐出速度は、定常時間Taが長くなると減少し、維持時間Tbが長くなっても減少する。
【0039】
したがって、定常時間Taと吐出体積及び吐出速度との間には、定常時間Taが長くなるほど、吐出体積と吐出速度がいずれも減少する特性がある。維持時間Tbと吐出体積及び吐出速度との間には、維持時間Tbが長くなるほど、吐出体積は増加し、吐出速度は減少する特性がある。
【0040】
この特性を利用すると、図10に示すように、定常時間Taと維持時間Tbとをパラメータとして、吐出体積と吐出速度の調整領域を確保することができる。図10において、曲線Xは、吐出体積変化量ΔV[pl]が“0”となる境界を示しており、曲線Yは、吐出速度変化量ΔW[m/s]が“0”となる境界を示している。曲線Xよりも上側の領域は、吐出体積が増加する。曲線Xよりも下側の領域は、吐出体積が減少する。曲線Yよりも左側の領域は、吐出速度が増加する。曲線Yよりも右側の領域は、吐出速度が減少する。
【0041】
したがって、曲線Xよりも上側で曲線Yよりも左側の領域A1は、吐出体積と吐出速度の両方が増加する調整領域である。曲線Xよりも上側で曲線Yよりも右側の領域A2は、吐出体積が増加し、吐出速度が減少する調整領域である。曲線Xよりも下側で曲線Yよりも右側の領域A3は、吐出体積と吐出速度の両方が減少する調整領域である。曲線Xよりも下側で曲線Yよりも左側の領域A4は、吐出体積が減少し、吐出速度が増加する調整領域である。
【0042】
ここで、吐出体積変化量ΔVと吐出速度変化量ΔWとがいずれも“0”となる定常時間Ta_0と維持時間Tb_0とを基準時間とする。基準時間(Ta_0,Tb_0)は、前記曲線Xと曲線Yとの交点である。そこで、ユーザは、吐出体積の増加方向の最大調整幅+Viと、吐出体積の減少方向の最大調整幅−Vdと、吐出速度の増加方向の最大調整幅+Wiと、吐出速度の減少方向の最大調整幅−Wdとを設定する。そうすると、各最大調整幅を満足するように曲線Xと曲線Yとが定まるので、その交点を基準時間(Ta_0,Tb_0)とする。
【0043】
したがって、設定された各最大調整幅から求められる基準時間(Ta_0,Tb_0)は、複数存在する。定常時間Taと維持時間Tbは短い方が好ましい。そこで、複数の基準時間(Ta_0,Tb_0)のなかから、定常時間Taと維持時間Tbとが最も短い組み合わせを選択する。なお、調整幅+Viと調整幅−Vd及び調整幅+Wiと調整幅−Wdとは、対称である必要はない。
【0044】
図10において、曲線Xと曲線Yとが交差する交点の座標(Ta_0,Tb_0)は、基準時間の定常時間Taと維持時間Tbを示す。
曲線X上の座標(Ta_1,Tb_1)は、吐出体積は変化させずに吐出速度を最大調整幅−Wdまで減少させるときの定常時間Taと維持時間Tbを示す。
曲線X上の座標(Ta_2,Tb_2)は、吐出体積は変化させずに吐出速度を最大調整幅+Wiまで増加させるときの定常時間Taと維持時間Tbを示す。
曲線Y上の座標(Ta_3,Tb_3)は、吐出速度は変化させずに吐出体積を最大調整幅+Viまで増加させるときの定常時間Taと維持時間Tbを示す。
曲線Y上の座標(Ta_6,Tb_6)は、吐出速度は変化させずに吐出体積を最大調整幅−Vdまで減少させるときの定常時間Taと維持時間Tbを示す。
領域A1内の座標(Ta_5,Tb_5)は、吐出体積と吐出速度をそれぞれ最大調整幅+Vi,+Wiまで増加させるときの定常時間Taと維持時間Tbを示す。
領域A2内の座標(Ta_4,Tb_4)は、吐出体積を最大調整幅+Viまで増加させ、吐出速度を最大調整幅−Wdまで減少させるときの定常時間Taと維持時間Tbを示す。
領域A3内の座標(Ta_7,Tb_7)は、吐出体積と吐出速度をそれぞれ最大調整幅−Vd,−Wdまで減少させるときの定常時間Taと維持時間Tbを示す。
領域A4内の座標(Ta_8,Tb_8)は、吐出体積を最大調整幅−Vdまで減少させ、吐出速度を最大調整幅+Wiまで増加させるときの定常時間Taと維持時間Tbを示す。
【0045】
このように、吐出体積と吐出速度の関係は、定常時間Taと維持時間Tbの関係に置き換えることができる。また、定常時間Taと維持時間Tbの関係は、2次元座標の情報として管理することができる。
【0046】
今、吐出体積の増加方向の最大調整幅+Viを2.0[pl]、減少方向の最大調整幅−Vdを−2.0[pl]、吐出速度の増加方向の最大調整幅+Wiを0.9[m/s]、減少方向の最大調整幅−Wdを−0.9[m/s]と設定する。そして、これらの条件を満足する定常時間Taの基準時間Ta_0として400[ns]を選択し、維持時間Tbの基準時間Tb_0として500[ns]を選択する。
【0047】
図11は、定常時間Taが400[ns]であり、維持時間Tbが500[ns]であるときの吐出体積を基準とし、定常時間Taと維持時間Tbをそれぞれ変化させたときの吐出体積変化量ΔV[pl]を示すグラフである。図12は、定常時間Taが400[ns]であり、維持時間Tbが500[ns]であるときの吐出速度を基準とし、定常時間Taと維持時間Tbをそれぞれ変化させたときの吐出速度変化量ΔW[m/s]を示すグラフである。
【0048】
これらのグラフにおいて、基準となる定常時間Taと維持時間Tbは、座標(Ta_0,Tb_0)で示される。
【0049】
この基準から、吐出体積は変化させずに吐出速度を最大調整幅−Wd=−0.9[m/s]まで減少させたときの定常時間Taと維持時間Tbは、座標(Ta_1,Tb_1)で示される。
この基準から、吐出体積は変化させずに吐出速度を最大調整幅+Wi=0.9[m/s]まで増加させたときの定常時間Taと維持時間Tbは、座標(Ta_2,Tb_2)で示される。
この基準から、吐出速度は変化させずに吐出体積を最大調整幅+Vi=2.0[pl]まで増加させたときの定常時間Taと維持時間Tbは、座標(Ta_3,Tb_3)で示される。
この基準から、吐出速度は変化させずに吐出体積を最大調整幅−Vd=−2.0[pl]まで減少させたときの定常時間Taと維持時間Tbは、座標(Ta_6,Tb_6)で示される。
この基準から、吐出体積と吐出速度をそれぞれ最大調整幅+Vi=2.0[pl],+Wi=0.9[m/s]まで増加させたときの定常時間Taと維持時間Tbは、座標(Ta_5,Tb_5)で示される。
この基準から、吐出体積を最大調整幅+Vi=2.0[pl]まで増加させ、吐出速度を最大調整幅−Wd=−0.9[m/s]まで減少させたときの定常時間Taと維持時間Tbは、座標(Ta_4,Tb_4)で示される。
この基準から、吐出体積と吐出速度をそれぞれ最大調整幅−Vd=−2.0[pl],−Wd=−0.9[m/s]まで減少させたときの定常時間Taと維持時間Tbは、座標(Ta_7,Tb_7)で示される。
この基準から、吐出体積を最大調整幅−Vd=−2.0[pl]まで減少させ、吐出速度を最大調整幅+Wi=0.9[m/s]まで増加させたときの定常時間Taと維持時間Tbは、座標(Ta_8,Tb_8)で示される。
【0050】
図11及び図12のグラフから、座標(Ta_1,Tb_1)の定常時間Taと維持時間Tbを設定することによって、吐出体積は基準値だが、吐出速度が0.9[m/s]だけ減少したインク滴が吐出されることがわかる。
座標(Ta_2,Tb_2)の定常時間Taと維持時間Tbを設定することによって、吐出体積は基準値だが、吐出速度が0.9[m/s]だけ増加したインク滴が吐出されることがわかる。
座標(Ta_3,Tb_3)の定常時間Taと維持時間Tbを設定することによって、吐出速度は基準値だが、吐出体積が2.0[pl]だけ増加したインク滴が吐出されることがわかる。
座標(Ta_6,Tb_6)の定常時間Taと維持時間Tbを設定することによって、吐出速度は基準値だが、吐出体積が2.0[pl]だけ減少したインク滴が吐出されることがわかる。
座標(Ta_5,Tb_5)の定常時間Taと維持時間Tbを設定することによって、吐出体積が2.0[pl]だけ増加し、かつ吐出速度が0.9[m/s]だけ増加したインク滴が吐出されることがわかる。
座標(Ta_4,Tb_4)の定常時間Taと維持時間Tbを設定することによって、吐出体積が2.0[pl]だけ増加し、かつ吐出速度が0.9[m/s]だけ減少したインク滴が吐出されることがわかる。
座標(Ta_7,Tb_7)の定常時間Taと維持時間Tbを設定することによって、吐出体積が2.0[pl]だけ減少し、かつ吐出速度が0.9[m/s]だけ減少したインク滴が吐出されることがわかる。
座標(Ta_8,Tb_8)の定常時間Taと維持時間Tbを設定することによって、吐出体積が2.0[pl]だけ減少し、かつ吐出速度が0.9[m/s]だけ増加したインク滴が吐出されることがわかる。
【0051】
したがって、駆動パルス波形の定常時間Taと維持時間Tbとを適宜変化させることによって、ノズル15から吐出するインク滴の吐出体積と吐出速度を所望の値に調整することができる。
【0052】
そこで、所望の吐出体積調整量及び吐出速度調整量を得るのに必要なノズル毎15の定常時間Taと維持時間Tbとを決定する。そして、決定されたノズル毎の定常時間Taと維持時間Tbとを有する通電波形の駆動パルス信号を、それぞれ該当するノズル15に供給する。こうすることにより、各ノズル15から吐出されるインク滴の吐出体積と吐出速度の双方を均一化することができる。インク滴の吐出体積と吐出速度とを均一化することによって、印字品質をより一層向上させることができる。
【0053】
図13は、所望の吐出体積調整量及び吐出速度調整量から、設定すべき定常時間Taと維持時間Tbを決定する決定手段の概念図である。図13において、横軸は吐出体積調整量を示しており、縦軸は吐出速度調整量を示している。また、図13において、ポイントP0〜P8は、図10で示した座標(Ta_0,Tb_0)〜(Ta_8,Tb_8)に対応している。
【0054】
すなわち、ポイントP0は、二次元座標系の原点に設定される。ポイントP0は、座標[Ta_0]で示される定常時間Taと、座標[Tb_0]で示される維持時間Tb、すなわち基準となる定常時間Taと維持時間Tbとが設定された通電波形でノズルが通電されたときに吐出されるインク滴の吐出体積(基準値)と吐出速度(基準値)に対応している。
ポイントP3は、二次元座標系のX軸に相当する第1の座標軸上に設定される。ポイントP3は、座標[Ta_3]で示される定常時間Taと、座標[Tb_3]で示される維持時間Tbとが設定された通電波形でノズルが通電されたときに吐出されるインク滴の吐出体積(基準値+Vi)と吐出速度(基準値)に対応している。
ポイントP6は、第1の座標軸上に設定される。ポイントP6は、座標[Ta_6]で示される定常時間Taと、座標[Tb_6]で示される維持時間Tbとが設定された通電波形でノズルが通電されたときに吐出されるインク滴の吐出体積(基準値−Vd)と吐出速度(基準値)に対応している。
ポイントP1は、第1の座標軸と直交する座標軸、すなわち二次元座標系のY軸に相当する第2の座標軸上に設定される。ポイントP1は、座標[Ta_1]で示される定常時間Taと、座標[Tb_1]で示される維持時間Tbとが設定された通電波形でノズルが通電されたときに吐出されるインク滴の吐出体積(基準値)と吐出速度(基準値−Wd)に対応している。
ポイントP2は、第2の座標軸上に設定される。ポイントP2は、座標[Ta_2]で示される定常時間Taと、座標[Tb_2]で示される維持時間Tbとが設定された通電波形でノズルが通電されたときに吐出されるインク滴の吐出体積(基準値)と吐出速度(基準値+Wi)に対応している。
ポイントP4は、ポイントP3を通る第2の座標軸と平行な直線が、ポイントP1を通る第1の座標軸と平行な直線と交わる交点に設定される。ポイントP4は、座標[Ta_4]で示される定常時間Taと、座標[Tb_4]で示される維持時間Tbとが設定された通電波形でノズルが通電されたときに吐出されるインク滴の吐出体積(基準値+Vi)と吐出速度(基準値−Wd)に対応している。
ポイントP5は、ポイントP3を通る第2の座標軸と平行な直線が、ポイントP2を通る第1の座標軸と平行な直線と交わる交点に設定される。ポイントP5は、座標[Ta_5]で示される定常時間Taと、座標[Tb_5]で示される維持時間Tbとが設定された通電波形でノズルが通電されたときに吐出されるインク滴の吐出体積(基準値+Vi)と吐出速度(基準値+Wi)に対応している。
ポイントP7は、ポイントP6を通る第2の座標軸と平行な直線が、ポイントP1を通る第1の座標軸と平行な直線と交わる交点に設定される。ポイントP7は、座標[Ta_7]で示される定常時間Taと、座標[Tb_7]で示される維持時間Tbとが設定された通電波形でノズルが通電されたときに吐出されるインク滴の吐出体積(基準値−Vd)と吐出速度(基準値−Wd)に対応している。
ポイントP8は、ポイントP6を通る第2の座標軸と平行な直線が、ポイントP2を通る第1の座標軸と平行な直線と交わる交点に設定される。ポイントP8は、座標[Ta_8]で示される定常時間Taと、座標[Tb_8]で示される維持時間Tbとが設定された通電波形でノズルが通電されたときに吐出されるインク滴の吐出体積(基準値−Vd)と吐出速度(基準値+Wi)に対応している。
【0055】
このように規定した各ポイントP0〜P8を用いることで、吐出体積と吐出速度の調整領域として、8つの領域B1〜B8を設定することができる。
【0056】
すなわち、ポイントP0,P2,P5を頂点とする三角形の領域B1と、ポイントP0,P3,P5を頂点とする三角形の領域B2は、いずれもインク滴の吐出体積が増加し、かつ、吐出速度も増加する領域である。そして領域B1は、吐出速度の調整割合が優先される。領域B2は、吐出体積の調整割合が優先される。
【0057】
ポイントP0,P3,P4を頂点とする三角形の領域B3と、ポイントP0,P1,P4を頂点とする三角形の領域B4は、いずれもインク滴の吐出体積が増加し、かつ、吐出速度が減少する領域である。そして領域B3は、吐出体積の調整割合が優先される。領域B4は、吐出速度の調整割合が優先される。
【0058】
ポイントP0,P1,P7を頂点とする三角形の領域B5と、ポイントP0,P6,P7を頂点とする三角形の領域B6は、いずれもインク滴の吐出体積が減少し、かつ、吐出速度も減少する領域である。そして領域B5は、吐出速度の調整割合が優先される。領域B6は、吐出体積の調整割合が優先される。
【0059】
ポイントP0,P6,P8を頂点とする三角形の領域B7と、ポイントP0,P2,P8を頂点とする三角形の領域B8は、いずれもインク滴の吐出体積が減少し、かつ、吐出速度が増加する領域である。そして領域B7は、吐出体積の調整割合が優先される。領域B8は、吐出速度の調整割合が優先される。
【0060】
なお、吐出体積及び吐出速度の調整量が各領域の境界に位置する場合は、どちらの領域を選択してもよい。
【0061】
次に、図14を用いて、各調整領域B1〜B8に特性を遷移させるための条件と、各調整領域B1〜B8での定常時間Taと維持時間Tbの計算方法について説明する。まず、各調整領域B1〜B8に特性を遷移させるための条件について説明する。
【0062】
なお、この説明においては、所望の吐出体積調整量をVaで表わし、所望の吐出速度調整量をWaで表わす。そして、吐出速度調整量Waを吐出体積調整量Vaで除算した商Wa/Vaを、調整量特性変化係数(以下、係数Wa/Vaと称する)として定義する。また、吐出体積の増加方向の最大調整幅を+Viで表わし、減少方向の最大調整幅を−Vdで表わす。また、吐出速度の増加方向の最大調整幅を+Wiで表わし、減少方向の最大調整幅を−Wdで表わす。
【0063】
はじめに、ユーザは、吐出体積調整量Vaが0以上であるか否かを確認する。真であった場合、吐出速度調整量Waが0以上であるか否かを確認する。真であった場合、係数Wa/VaがWi/Vi以上であるか否かを確認する。真であった場合、調整領域B1への遷移となる。偽であった場合、調整領域B2への遷移となる。
【0064】
吐出体積調整量Vaが0以上であるが、吐出速度調整量Waが0以上でなかった場合、ユーザは、係数Wa/Vaが−Wd/Vi以上であるか否かを確認する。真であった場合、調整領域B3への遷移となる。偽であった場合、調整領域B4への遷移となる。
【0065】
吐出体積調整量Vaが0以上でなかった場合、ユーザは、吐出速度調整量Waが0以上であるか否かを確認する。真であった場合、係数Wa/VaがWi/−Vd以上であるか否かを確認する。真であった場合、調整領域B7への遷移となる。偽であった場合、調整領域B8への遷移となる。
【0066】
吐出体積調整量Vaが0以上でなく、吐出速度調整量Waも0以上でなかった場合、ユーザは、係数Wa/Vaが−Wd/−Vd以上であるかを確認する。真であった場合、調整領域B5への遷移となる。偽であった場合、調整領域B6への遷移となる。
【0067】
このように、調整領域B1〜B8は、所望の吐出体積調整量Vaと吐出速度調整量Waの各値から決定することができる。
【0068】
次に、各調整領域B1〜B8での定常時間Taと維持時間Tbの計算方法について説明する。
【0069】
はじめに、図14に示すように、基準となるポイントP0の吐出体積及び吐出速度から、調整領域B1内のポイントPaが示す吐出体積調整量Va及び吐出速度調整量Waだけ吐出体積及び吐出速度を調整する場合を説明する。この場合、ユーザは、最終的に、遷移させるポイントPaの座標(Va,Wa)に対応する定常時間Taと維持時間Tbとを示す座標(Ta_a,Tb_a)を求める。
【0070】
先ず、ユーザは、ポイントP0と遷移させるポイントPaとを結ぶ直線[P0・Pa]が、ポイントP2とポイントP5とを結ぶ直線[P2・P5]と交わる交点Pxの座標(x,y)を求める。このとき、“x”は吐出体積調整量とし、“y”は吐出速度調整量とする。
【0071】
直線[P0・Pa]の一次方程式は、次の(5)式で表わされる。
y=(Wa/Va)・x …(5)
直線[P2・P5]の一次方程式は、次の(6)式で表わされる。
y=Wi …(6)
よって、2つの直線が交わる交点の座標Px(x,y)は、次の(7)式で表わされる。
【0072】
(x,y)=((Va/Wa)・Wi,Wi) …(7)
ここで、上記(7)式により求めた交点Pxの座標(x,y)を、ポイントPxの座標(Vx,Wx)とする。そして、ポイントP2を基準として、ポイントPxでの定常時間Ta_xを求めると、定常時間Ta_xは、次の(8)式で表わされる。
Ta_x=(Ta_5−Ta_2)・(Vx/Vi)+Ta_2 …(8)
同じく、ポイントP2を基準として、ポイントPxでの維持時間Tb_xとを求めると、維持時間Tb_xは、次の(9)式で表わされる。
Tb_x=(Tb_5−Tb_2)・(Vx/Vi)+Tb_2 …(9)
次に、遷移させるポイントPaの座標(Va,Wa)での定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。まず、ポイントP0からポイントPxまでの距離Lxを求める。距離Lxは、次の(10)式で表わされる。なお、(10)式において、ROOT[G]は、Gの平方根を示す。また、記号“^”は、べき乗を示す。以後も同様である。
Lx=ROOT[(Vx)^2+(Wx)^2] …(10)
次に、ポイントP0からポイントPaまでの距離Laを求める。距離Laは、次の(11)式で表わされる。
【0073】
La=ROOT[(Va)^2+(Wa)^2] …(11)
ただし、本実施形態は、調整領域の最大範囲の調整に留める。このため、距離Laが距離Lxより長かった場合、すなわち、調整領域を超える値の要求があった場合には、距離Laを距離Lxとみなす。すなわち、調整領域の最大値での調整を行う。その場合、VaはVxに置換し、WaはWxに置換する。
【0074】
最後に、ポイントP0を基準としてポイントPaでの定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。定常時間Ta_aは、次の(12)式で表わされる。
Ta_a=(Ta_x−Ta_0)・(La/Lx)+Ta_0 …(12)
維持時間Tb_aは、次の(13)式で表わされる。
Tb_a=(Tb_x−Tb_0)・(La/Lx)+Tb_0 …(13)
その他の調整領域B2乃至調整領域B8へ吐出体積と吐出速度を調整する場合についても、概念的には同じである。
【0075】
すなわち、基準となるポイントP0の吐出体積及び吐出速度から、調整領域B2内のポイントPaが示す吐出体積調整量Va及び吐出速度調整量Waだけ吐出体積及び吐出速度を調整する場合は、先ず、ユーザは、ポイントP0と遷移させるポイントPaとを結ぶ直線[P0・Pa]が、ポイントP3とポイントP5とを結ぶ直線[P3・P5]と交わる交点Pxの座標(x,y)を求める。このとき、“x”は吐出体積調整量とし、“y”は吐出速度調整量とする。
【0076】
直線[P0・Pa]の一次方程式は、次の(14)式で表わされる。
y=(Wa/Va)・x …(14)
直線[P3・P5]の一次方程式は、次の(15)式で表わされる。
x=Vi …(15)
よって、2つの直線が交わる交点の座標Px(x,y)は、次の(16)式で表わされる。
【0077】
(x,y)=(Vi,(Wa/Va)・Vi) …(16)
ここで、上記(16)式により求めた交点Pxの座標(x,y)を、ポイントPxの座標(Vx,Wx)とする。そして、ポイントP3を基準として、ポイントPxでの定常時間Ta_xを求めると、定常時間Ta_xは、次の(17)式で表わされる。
Ta_x=(Ta_5−Ta_3)・(Wx/Wi)+Ta_3 …(17)
同じく、ポイントP3を基準として、ポイントPxでの維持時間Tb_xとを求めると、維持時間Tb_xは、次の(18)式で表わされる。
Tb_x=(Tb_5−Tb_3)・(Wx/Wi)+Tb_3 …(18)
次に、遷移させるポイントPaの座標(Va,Wa)での定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。まず、ポイントP0からポイントPxまでの距離Lxを求める。距離Lxは、次の(19)式で表わされる。
【0078】
Lx=ROOT[(Vx)^2+(Wx)^2] …(19)
次に、ポイントP0からポイントPaまでの距離Laを求める。距離Laは、次の(20)式で表わされる。
【0079】
La=ROOT[(Va)^2+(Wa)^2] …(20)
ただし、本実施形態は、調整領域の最大範囲の調整に留める。このため、距離Laが距離Lxより長かった場合、すなわち、調整領域を超える値の要求があった場合には、距離Laを距離Lxとみなす。すなわち、調整領域の最大値での調整を行う。その場合、VaはVxに置換し、WaはWxに置換する。
【0080】
最後に、ポイントP0を基準としてポイントPaでの定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。定常時間Ta_aは、次の(21)式で表わされる。
Ta_a=(Ta_x−Ta_0)・(La/Lx)+Ta_0 …(21)
維持時間Tb_aは、次の(22)式で表わされる。
Tb_a=(Tb_x−Tb_0)・(La/Lx)+Tb_0 …(22)
基準となるポイントP0の吐出体積及び吐出速度から、調整領域B3内のポイントPaが示す吐出体積調整量Va及び吐出速度調整量Waだけ吐出体積及び吐出速度を調整する場合は、先ず、ユーザは、ポイントP0と遷移させるポイントPaとを結ぶ直線[P0・Pa]が、ポイントP3とポイントP4とを結ぶ直線[P3・P4]と交わる交点Pxの座標(x,y)を求める。このとき、“x”は吐出体積調整量とし、“y”は吐出速度調整量とする。
【0081】
直線[P0・Pa]の一次方程式は、次の(23)式で表わされる。
y=(Wa/Va)・x …(23)
直線[P3・P4]の一次方程式は、次の(24)式で表わされる。
x=Vi …(24)
よって、2つの直線が交わる交点の座標Px(x,y)は、次の(25)式で表わされる。
【0082】
(x,y)=(Vi,(Wa/Va)・Vi) …(25)
ここで、上記(25)式により求めた交点Pxの座標(x,y)を、ポイントPxの座標(Vx,Wx)とする。そして、ポイントP3を基準として、ポイントPxでの定常時間Ta_xを求めると、定常時間Ta_xは、次の(26)式で表わされる。
Ta_x=(Ta_4−Ta_3)・(Wx/Wd)+Ta_3 …(26)
同じく、ポイントP3を基準として、ポイントPxでの維持時間Tb_xとを求めると、維持時間Tb_xは、次の(27)式で表わされる。
Tb_x=(Tb_4−Tb_3)・(Wx/Wd)+Tb_3 …(27)
次に、遷移させるポイントPaの座標(Va,Wa)での定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。まず、ポイントP0からポイントPxまでの距離Lxを求める。距離Lxは、次の(28)式で表わされる。
【0083】
Lx=ROOT[(Vx)^2+(Wx)^2] …(28)
次に、ポイントP0からポイントPaまでの距離Laを求める。距離Laは、次の(29)式で表わされる。
【0084】
La=ROOT[(Va)^2+(Wa)^2] …(29)
ただし、本実施形態は、調整領域の最大範囲の調整に留める。このため、距離Laが距離Lxより長かった場合、すなわち、調整領域を超える値の要求があった場合には、距離Laを距離Lxとみなす。すなわち、調整領域の最大値での調整を行う。その場合、VaはVxに置換し、WaはWxに置換する。
【0085】
最後に、ポイントP0を基準としてポイントPaでの定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。定常時間Ta_aは、次の(30)式で表わされる。
Ta_a=(Ta_x−Ta_0)・(La/Lx)+Ta_0 …(30)
維持時間Tb_aは、次の(22)式で表わされる。
Tb_a=(Tb_x−Tb_0)・(La/Lx)+Tb_0 …(30)
基準となるポイントP0の吐出体積及び吐出速度から、調整領域B4内のポイントPaが示す吐出体積調整量Va及び吐出速度調整量Waだけ吐出体積及び吐出速度を調整する場合は、先ず、ユーザは、ポイントP0と遷移させるポイントPaとを結ぶ直線[P0・Pa]が、ポイントP1とポイントP4とを結ぶ直線[P1・P4]と交わる交点Pxの座標(x,y)を求める。このとき、“x”は吐出体積調整量とし、“y”は吐出速度調整量とする。
【0086】
直線[P0・Pa]の一次方程式は、次の(31)式で表わされる。
y=(Wa/Va)・x …(31)
直線[P1・P4]の一次方程式は、次の(32)式で表わされる。
y=−Vd …(32)
よって、2つの直線が交わる交点の座標Px(x,y)は、次の(33)式で表わされる。
【0087】
(x,y)=((Va/Wa)・(−Wd),−Wd) …(33)
ここで、上記(33)式により求めた交点Pxの座標(x,y)を、ポイントPxの座標(Vx,Wx)とする。そして、ポイントP1を基準として、ポイントPxでの定常時間Ta_xを求めると、定常時間Ta_xは、次の(34)式で表わされる。
Ta_x=(Ta_4−Ta_1)・(Vx/Vi)+Ta_1 …(34)
同じく、ポイントP1を基準として、ポイントPxでの維持時間Tb_xとを求めると、維持時間Tb_xは、次の(35)式で表わされる。
Tb_x=(Tb_4−Tb_1)・(Vx/Vi)+Tb_1 …(35)
次に、遷移させるポイントPaの座標(Va,Wa)での定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。まず、ポイントP0からポイントPxまでの距離Lxを求める。距離Lxは、次の(36)式で表わされる。
【0088】
Lx=ROOT[(Vx)^2+(Wx)^2] …(36)
次に、ポイントP0からポイントPaまでの距離Laを求める。距離Laは、次の(37)式で表わされる。
【0089】
La=ROOT[(Va)^2+(Wa)^2] …(37)
ただし、本実施形態は、調整領域の最大範囲の調整に留める。このため、距離Laが距離Lxより長かった場合、すなわち、調整領域を超える値の要求があった場合には、距離Laを距離Lxとみなす。すなわち、調整領域の最大値での調整を行う。その場合、VaはVxに置換し、WaはWxに置換する。
【0090】
最後に、ポイントP0を基準としてポイントPaでの定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。定常時間Ta_aは、次の(38)式で表わされる。
Ta_a=(Ta_x−Ta_0)・(La/Lx)+Ta_0 …(38)
維持時間Tb_aは、次の(39)式で表わされる。
Tb_a=(Tb_x−Tb_0)・(La/Lx)+Tb_0 …(39)
基準となるポイントP0の吐出体積及び吐出速度から、調整領域B5内のポイントPaが示す吐出体積調整量Va及び吐出速度調整量Waだけ吐出体積及び吐出速度を調整する場合は、先ず、ユーザは、ポイントP0と遷移させるポイントPaとを結ぶ直線[P0・Pa]が、ポイントP1とポイントP7とを結ぶ直線[P1・P7]と交わる交点Pxの座標(x,y)を求める。このとき、“x”は吐出体積調整量とし、“y”は吐出速度調整量とする。
【0091】
直線[P0・Pa]の一次方程式は、次の(40)式で表わされる。
y=(Wa/Va)・x …(40)
直線[P1・P7]の一次方程式は、次の(41)式で表わされる。
y=−Vd …(41)
よって、2つの直線が交わる交点の座標Px(x,y)は、次の(42)式で表わされる。
【0092】
(x,y)=((Va/Wa)・(−Wd),−Wd) …(42)
ここで、上記(42)式により求めた交点Pxの座標(x,y)を、ポイントPxの座標(Vx,Wx)とする。そして、ポイントP1を基準として、ポイントPxでの定常時間Ta_xを求めると、定常時間Ta_xは、次の(43)式で表わされる。
Ta_x=(Ta_7−Ta_1)・(Vx/(−Vd))+Ta_1 …(43)
同じく、ポイントP1を基準として、ポイントPxでの維持時間Tb_xとを求めると、維持時間Tb_xは、次の(44)式で表わされる。
Tb_x=(Tb_7−Tb_1)・(Vx/(−Vd))+Tb_1 …(44)
次に、遷移させるポイントPaの座標(Va,Wa)での定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。まず、ポイントP0からポイントPxまでの距離Lxを求める。距離Lxは、次の(45)式で表わされる。
【0093】
Lx=ROOT[(Vx)^2+(Wx)^2] …(45)
次に、ポイントP0からポイントPaまでの距離Laを求める。距離Laは、次の(46)式で表わされる。
【0094】
La=ROOT[(Va)^2+(Wa)^2] …(46)
ただし、本実施形態は、調整領域の最大範囲の調整に留める。このため、距離Laが距離Lxより長かった場合、すなわち、調整領域を超える値の要求があった場合には、距離Laを距離Lxとみなす。すなわち、調整領域の最大値での調整を行う。その場合、VaはVxに置換し、WaはWxに置換する。
【0095】
最後に、ポイントP0を基準としてポイントPaでの定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。定常時間Ta_aは、次の(47)式で表わされる。
Ta_a=(Ta_x−Ta_0)・(La/Lx)+Ta_0 …(47)
維持時間Tb_aは、次の(48)式で表わされる。
Tb_a=(Tb_x−Tb_0)・(La/Lx)+Tb_0 …(48)
基準となるポイントP0の吐出体積及び吐出速度から、調整領域B6内のポイントPaが示す吐出体積調整量Va及び吐出速度調整量Waだけ吐出体積及び吐出速度を調整する場合は、先ず、ユーザは、ポイントP0と遷移させるポイントPaとを結ぶ直線[P0・Pa]が、ポイントP6とポイントP7とを結ぶ直線[P6・P7]と交わる交点Pxの座標(x,y)を求める。このとき、“x”は吐出体積調整量とし、“y”は吐出速度調整量とする。
【0096】
直線[P0・Pa]の一次方程式は、次の(49)式で表わされる。
y=(Wa/Va)・x …(49)
直線[P6・P7]の一次方程式は、次の(50)式で表わされる。
x=−Vd …(50)
よって、2つの直線が交わる交点の座標Px(x,y)は、次の(51)式で表わされる。
【0097】
(x,y)=(−Vd,(Wa/Va)・(−Vd)) …(51)
ここで、上記(51)式により求めた交点Pxの座標(x,y)を、ポイントPxの座標(Vx,Wx)とする。そして、ポイントP6を基準として、ポイントPxでの定常時間Ta_xを求めると、定常時間Ta_xは、次の(52)式で表わされる。
Ta_x=(Ta_7−Ta_6)・(Wx/(−Wd))+Ta_6 …(52)
同じく、ポイントP6を基準として、ポイントPxでの維持時間Tb_xとを求めると、維持時間Tb_xは、次の(53)式で表わされる。
Tb_x=(Tb_7−Tb_6)・(Wx/(−Wd))+Tb_6 …(53)
次に、遷移させるポイントPaの座標(Va,Wa)での定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。まず、ポイントP0からポイントPxまでの距離Lxを求める。距離Lxは、次の(54)式で表わされる。
【0098】
Lx=ROOT[(Vx)^2+(Wx)^2] …(54)
次に、ポイントP0からポイントPaまでの距離Laを求める。距離Laは、次の(55)式で表わされる。
【0099】
La=ROOT[(Va)^2+(Wa)^2] …(55)
ただし、本実施形態は、調整領域の最大範囲の調整に留める。このため、距離Laが距離Lxより長かった場合、すなわち、調整領域を超える値の要求があった場合には、距離Laを距離Lxとみなす。すなわち、調整領域の最大値での調整を行う。その場合、VaはVxに置換し、WaはWxに置換する。
【0100】
最後に、ポイントP0を基準としてポイントPaでの定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。定常時間Ta_aは、次の(56)式で表わされる。
Ta_a=(Ta_x−Ta_0)・(La/Lx)+Ta_0 …(56)
維持時間Tb_aは、次の(57)式で表わされる。
Tb_a=(Tb_x−Tb_0)・(La/Lx)+Tb_0 …(57)
基準となるポイントP0の吐出体積及び吐出速度から、調整領域B7内のポイントPaが示す吐出体積調整量Va及び吐出速度調整量Waだけ吐出体積及び吐出速度を調整する場合は、先ず、ユーザは、ポイントP0と遷移させるポイントPaとを結ぶ直線[P0・Pa]が、ポイントP6とポイントP8とを結ぶ直線[P6・P8]と交わる交点Pxの座標(x,y)を求める。このとき、“x”は吐出体積調整量とし、“y”は吐出速度調整量とする。
【0101】
直線[P0・Pa]の一次方程式は、次の(58)式で表わされる。
y=(Wa/Va)・x …(58)
直線[P6・P8]の一次方程式は、次の(59)式で表わされる。
x=−Vd …(59)
よって、2つの直線が交わる交点の座標Px(x,y)は、次の(60)式で表わされる。
【0102】
(x,y)=(−Vd,(Wa/Va)・(−Vd)) …(60)
ここで、上記(60)式により求めた交点Pxの座標(x,y)を、ポイントPxの座標(Vx,Wx)とする。そして、ポイントP6を基準として、ポイントPxでの定常時間Ta_xを求めると、定常時間Ta_xは、次の(61)式で表わされる。
Ta_x=(Ta_8−Ta_6)・(Wx/Wi)+Ta_6 …(61)
同じく、ポイントP6を基準として、ポイントPxでの維持時間Tb_xとを求めると、維持時間Tb_xは、次の(62)式で表わされる。
Tb_x=(Tb_8−Tb_6)・(Wx/Wi)+Tb_6 …(62)
次に、遷移させるポイントPaの座標(Va,Wa)での定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。まず、ポイントP0からポイントPxまでの距離Lxを求める。距離Lxは、次の(63)式で表わされる。
【0103】
Lx=ROOT[(Vx)^2+(Wx)^2] …(63)
次に、ポイントP0からポイントPaまでの距離Laを求める。距離Laは、次の(64)式で表わされる。
【0104】
La=ROOT[(Va)^2+(Wa)^2] …(64)
ただし、本実施形態は、調整領域の最大範囲の調整に留める。このため、距離Laが距離Lxより長かった場合、すなわち、調整領域を超える値の要求があった場合には、距離Laを距離Lxとみなす。すなわち、調整領域の最大値での調整を行う。その場合、VaはVxに置換し、WaはWxに置換する。
【0105】
最後に、ポイントP0を基準としてポイントPaでの定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。定常時間Ta_aは、次の(65)式で表わされる。
Ta_a=(Ta_x−Ta_0)・(La/Lx)+Ta_0 …(65)
維持時間Tb_aは、次の(66)式で表わされる。
Tb_a=(Tb_x−Tb_0)・(La/Lx)+Tb_0 …(66)
基準となるポイントP0の吐出体積及び吐出速度から、調整領域B8内のポイントPaが示す吐出体積調整量Va及び吐出速度調整量Waだけ吐出体積及び吐出速度を調整する場合は、先ず、ユーザは、ポイントP0と遷移させるポイントPaとを結ぶ直線[P0・Pa]が、ポイントP2とポイントP8とを結ぶ直線[P2・P8]と交わる交点Pxの座標(x,y)を求める。このとき、“x”は吐出体積調整量とし、“y”は吐出速度調整量とする。
【0106】
直線[P0・Pa]の一次方程式は、次の(67)式で表わされる。
y=(Wa/Va)・x …(67)
直線[P2・P8]の一次方程式は、次の(68)式で表わされる。
y=Vi …(68)
よって、2つの直線が交わる交点の座標Px(x,y)は、次の(69)式で表わされる。
【0107】
(x,y)=((Va/Wa)・Vi),Vi) …(69)
ここで、上記(69)式により求めた交点Pxの座標(x,y)を、ポイントPxの座標(Vx,Wx)とする。そして、ポイントP2を基準として、ポイントPxでの定常時間Ta_xを求めると、定常時間Ta_xは、次の(70)式で表わされる。
Ta_x=(Ta_8−Ta_2)・(Vx/(−Vd))+Ta_2 …(70)
同じく、ポイントP2を基準として、ポイントPxでの維持時間Tb_xとを求めると、維持時間Tb_xは、次の(71)式で表わされる。
Tb_x=(Tb_8−Tb_2)・(Vx/(−Vd))+Tb_2 …(71)
次に、遷移させるポイントPaの座標(Va,Wa)での定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。まず、ポイントP0からポイントPxまでの距離Lxを求める。距離Lxは、次の(72)式で表わされる。
【0108】
Lx=ROOT[(Vx)^2+(Wx)^2] …(72)
次に、ポイントP0からポイントPaまでの距離Laを求める。距離Laは、次の(73)式で表わされる。
【0109】
La=ROOT[(Va)^2+(Wa)^2] …(73)
ただし、本実施形態は、調整領域の最大範囲の調整に留める。このため、距離Laが距離Lxより長かった場合、すなわち、調整領域を超える値の要求があった場合には、距離Laを距離Lxとみなす。すなわち、調整領域の最大値での調整を行う。その場合、VaはVxに置換し、WaはWxに置換する。
【0110】
最後に、ポイントP0を基準としてポイントPaでの定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを求める。定常時間Ta_aは、次の(74)式で表わされる。
Ta_a=(Ta_x−Ta_0)・(La/Lx)+Ta_0 …(74)
維持時間Tb_aは、次の(75)式で表わされる。
Tb_a=(Tb_x−Tb_0)・(La/Lx)+Tb_0 …(75)
このように、各調整領域B1〜B8の範囲内であれば、通電波形の定常時間Taと維持時間Tbとを適宜可変することによって、インク滴の吐出体積と吐出速度とを所望の値に調整することができる。
【0111】
次に、具体的な数値を使って、所望の吐出体積調整量と吐出速度調整量とを得るための定常時間Taと維持時間Tbとを求める場合を説明する。
まず、[表1]に吐出体積と吐出速度の調整範囲の条件を示す。
【表1】

【0112】
[表1]に示すように、吐出体積の増加方向の最大調整幅+Viは、2.0[pl]に設定する。吐出体積の減少方向の最大調整幅−Vdは、−2.0[pl]に設定する。吐出速度の増加方向の最大調整幅+Wiは、0.9[m/s]に設定する。吐出速度の減少方向の最大調整幅−Wdは、−0.9[m/s]に設定する。
【0113】
次に、図8と図9の特性グラフを参照に、上記調整範囲の条件を満足するポイントP0〜P8を求める。そして、各ポイントP0〜P8の吐出体積調整量、吐出速度調整量、定常時間Ta_n及び維持時間Tb_nを[表2]に示す。
【表2】

【0114】
さらに、各調整領域B1〜B8へ特性を遷移させるための条件を[表3]に示す。
【表3】

【0115】
次に、サンプルとなる複数のノズルの初期の吐出特性を図15の(a),(b),(c)に示す。図15の(a)は、横軸に初期の吐出体積を示し、縦軸に初期の吐出速度を示す。図15の(b)は、横軸に初期の吐出体積差を示し、縦軸に初期の吐出速度差を示す。図15の(c)は、統計結果を示す。統計結果の項目は、「平均値」,「最小値」,「最大値」,「平均値―最小値」,「最大値−平均値」,「平均値―最小値の百分率(%)」,「最大値−平均値の百分率」,「標準偏差1σ」,「3倍標準偏差3σ」、「標準偏差1σの百分率(%)」,「3倍標準偏差3σの百分率(%)」である。
【0116】
ここで、サンプルとなるノズルの中には、調整範囲を超えるものが存在する。その理由は、調整範囲外のものは調整量が調整範囲の最外郭まで規制されることを示すためである。
【0117】
各ノズルの初期の吐出特性は、ばらつきの指標である3倍標準偏差3σを見ると、吐出体積が10.6%であり、吐出速度が20.3%である。この値から、吐出体積と吐出速度の双方がともにばらついており、平均に対して多方面に広がっていることがわかる。
【0118】
先ず、各ノズルの特性を調整していくうえで、各ノズルはそれぞれどの調整領域へ遷移させるのかを求める。具体的には、ノズル毎に、吐出体積と吐出速度とについてそれぞれ平均値からの差を求める。吐出体積の平均値からの差は、変化させたい吐出体積調整量Vaとなる。吐出速度の平均値からの差は、変化させたい吐出速度調整量Waとなる。そこで次に、調整量特性変化係数Wa/Vaを算出する。そして、吐出体積調整量Vaと、吐出速度調整量Waと、係数Wa/Vaとを、[表3]の条件と照合する。かくして、各ノズルの調整領域を確定する。
【0119】
次に、ノズル毎に、該当する調整領域での計算によって求められていく値を図16の(a)〜(d)に示す。
図16の(a)は、横軸を吐出体積調整量Vx[pl]とし、縦軸を吐出速度調整量Wx[m/s]とする。そして、ノズル毎に、ポイントPxの吐出体積調整量Vx[pl]と吐出速度調整量Wx[m/s]とを、ドットで示す。ポイントPxは、ポイントP0とポイントPaとを結ぶ直線[P0・Pa]と調整領域の最外郭との交点である。
【0120】
図16の(b)は、横軸を定常時間Ta_xとし、縦軸を維持時間Tb_xとする。そして、ノズル毎に、ポイントPxでの定常時間Ta_xと、ポイントPxでの維持時間Tb_xとを、ドットで示す。
【0121】
図16の(c)は、横軸を吐出体積調整量の実効値Vaとし、縦軸を吐出速度調整量の実効値Waとする。そして、ノズル毎に、ポイントPaでの吐出体積調整量Vaと吐出速度調整量Waとを、ドットで示す。調整領域内のものは吐出体積調整量Vaと吐出速度調整量Waが実効値と一致するが、調整領域外のものは調整領域の最外郭で規制している。
【0122】
図16の(d)は、横軸を定常時間Ta_aとし、縦軸を維持時間Tb_aとする。そして、ノズル毎に、ポイントPaでの定常時間Ta_aと、ポイントPaでの維持時間Tb_aとを、ドットで示す。
【0123】
こうして、ノズル毎に求めた定常時間Ta_aと維持時間Tb_aを使った通電波形を各ノズルに供給することにより、各ノズルの吐出体積量と吐出速度量とを所望の値に調整することができる。
【0124】
図17(a),(b),(c)は、定常時間Ta_aと維持時間Tb_aとを可変することで吐出体積量と吐出速度量とを調整した後の各ノズルの吐出特性を示す。図17の(a)は、横軸に調整後の吐出体積を示し、縦軸に調整後の吐出速度を示す。図17の(b)は、横軸に調整後の吐出体積差を示し、縦軸に調整後の吐出速度差を示す。図17の(c)は、統計結果を示す。統計結果の項目は、「平均値」,「最小値」,「最大値」,「平均値―最小値」,「最大値−平均値」,「平均値―最小値の百分率(%)」,「最大値−平均値の百分率」,「標準偏差1σ」,「3倍標準偏差3σ」、「標準偏差1σの百分率(%)」,「3倍標準偏差3σの百分率(%)」である。
【0125】
各ノズルの調整後の吐出特性は、ばらつきの指標である3倍標準偏差3σを見ると、吐出体積が0.8%であり、吐出速度が1.8%である。したがって、図15の初期特性と比較すれば明らかなように、吐出体積及び吐出速度の双方ともばらつきが格段に小さくなっている。なお、サンプルとなるノズルには意図的に調整範囲外のものも含んでいる。このため、調整領域を拡張することで、ばらつきをさらに小さくすることができる。
【0126】
なお、この実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0127】
1,2…圧電部材、4…電極、12…ドライブIC、15(15a,15b,15c)…ノズル、100…ライン型インクジェットヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを、圧電部材からなる側壁を隔てて構成し、前記各ノズルの側壁を構成する前記圧電部材に所定の通電波形の駆動パルス信号を選択的に供給して前記圧電部材を変位させ、この圧電部材の変位により前記各ノズルを選択的に変形させてインク滴を吐出させるインクジェットヘッドの駆動方法であって、
前記通電波形を、前記ノズルの形状を定常状態から容積が拡大する方向に変形させるための電圧を供給する準備区間と、この準備区間が経過した後で前記ノズルの形状を容積が拡大した状態から定常状態に復元させるための電圧を供給する吐出区間と、この吐出区間が経過した後で前記ノズルの形状を定常状態から容積が縮小する方向に変形させるための電圧を供給する後処理区間とに区分し、
さらに、前記準備区間の通電波形を、定常状態を維持する定常区間と容積が拡大する方向に変形させる拡大区間とに区分するとともに、前記吐出区間の通電波形を、容積が拡大した状態を維持する維持区間と定常状態に復元させる復元区間とに区分し、
基準となる通電波形を供給することにより各ノズルから吐出されるインク滴の吐出体積と吐出速度とを基に、ノズル毎に吐出体積調整量と吐出速度調整量とを求め、このノズル毎の吐出体積調整量と吐出速度調整量とから、ノズル毎に前記定常区間の時間と前記維持区間の時間を決定手段により決定し、
このノズル毎に決定された時間の定常区間と維持区間とを有する前記通電波形の駆動パルス信号を駆動手段により該当するノズルに供給することを特徴とするインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項2】
前記決定手段は、
基準となるインク滴の吐出体積と吐出速度を二次元座標系の原点として設定し、
この基準となるインク滴の吐出体積に対する増加方向の最大調整幅と減少方向の最大調整幅とを、前記原点を通る第1の座標軸上に前記原点を挟んで設定するとともに、
前記基準となるインク滴の吐出速度に対する増加方向の最大調整幅と減少方向の最大調整幅とを、前記原点を通りかつ前記第1の座標軸とは直交する第2の座標軸上に前記原点を挟んで設定し、
前記原点と、前記吐出体積の増加方向最大調整幅を示す前記第1の座標軸上の第1の座標点と、前記吐出速度の増加方向最大調整幅を示す前記第2の座標軸上の第2の座標点と、前記第1の座標点を通る前記第2の座標軸と平行な第1の直線が前記第2の座標点を通る前記第1の座標軸と平行な第2の直線と交わる第1の交点とを結ぶ領域を、吐出体積増加かつ吐出速度増加の調整領域として設定し、
前記吐出体積調整量と吐出速度調整量とがいずれも前記基準となるインク滴の吐出体積及び吐出速度よりも増加方向にあるとき、
前記第1の座標軸上の前記吐出体積調整量に相当する第3の座標点を通る前記第2の座標軸と平行な第3の直線が、前記第2の座標軸上の前記吐出速度調整量に相当する第4の座標点を通る前記第1の座標軸と平行な第4の直線と交わる第2の交点の座標を求め、前記原点を基準として前記第2の交点での定常時間と維持時間とを決定することを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項3】
前記吐出体積増加かつ吐出速度増加の調整領域を、前記原点と、前記第1の交点とを結ぶ直線で分割して、前記第1の座標点を含む領域を吐出体積の優先領域とし、前記第2の座標点を含む領域を吐出速度の優先領域とし、
前記第2の交点が前記吐出体積の優先領域内のとき、先ず、前記原点と前記第2の交点とを結ぶ直線が前記第1の直線と交わる第3の交点の座標を求めて、前記第1の座標点を基準として前記第3の交点での定常時間と維持時間とを求め、次に、前記原点から前記第3の交点までの第1の距離と前記原点から前記第2の交点までの第2の距離とを算出し、最後に、前記原点を基準として、前記第3の交点での定常時間及び維持時間と、前記第1の距離及び第2の距離とから、前記第2の交点での定常時間と維持時間とを決定し、
前記第2の交点が前記吐出速度の優先領域内のとき、先ず、前記原点と前記第2の交点とを結ぶ直線が前記第2の直線と交わる第4の交点の座標を求めて、前記第2の座標点を基準として前記第4の交点での定常時間と維持時間とを求め、次に、前記原点から前記第4の交点までの第1の距離と前記原点から前記第2の交点までの第2の距離とを算出し、最後に、前記原点を基準として、前記第4の交点での定常時間及び維持時間と、前記第1の距離及び第2の距離とから、前記第2の交点での定常時間と維持時間とを決定することを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項4】
前記決定手段は、
基準となるインク滴の吐出体積と吐出速度を二次元座標系の原点として設定し、
この基準となるインク滴の吐出体積に対する増加方向の最大調整幅と減少方向の最大調整幅とを、前記原点を通る第1の座標軸上に前記原点を挟んで設定するとともに、
前記基準となるインク滴の吐出速度に対する増加方向の最大調整幅と減少方向の最大調整幅とを、前記原点を通りかつ前記第1の座標軸とは直交する第2の座標軸上に前記原点を挟んで設定し、
前記原点と、前記吐出体積の増加方向最大調整幅を示す前記第1の座標軸上の第1の座標点と、前記吐出速度の減少方向最大調整幅を示す前記第2の座標軸上の第2の座標点と、前記第1の座標点を通る前記第2の座標軸と平行な第1の直線が前記第2の座標点を通る前記第1の座標軸と平行な第2の直線と交わる第1の交点とを結ぶ領域を、吐出体積増加かつ吐出速度減少の調整領域として設定し、
前記吐出体積調整量が前記基準となるインク滴の吐出体積よりも増加方向にあり、かつ前記吐出速度調整量が前記基準となるインク滴の吐出速度よりも減少方向にあるとき、
前記第1の座標軸上の前記吐出体積調整量に相当する第3の座標点を通る前記第2の座標軸と平行な第3の直線が、前記第2の座標軸上の前記吐出速度調整量に相当する第4の座標点を通る前記第1の座標軸と平行な第4の直線と交わる第2の交点の座標を求め、前記原点を基準として前記第2の交点での定常時間と維持時間とを決定することを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項5】
前記吐出体積増加かつ吐出速度減少の調整領域を、前記原点と、前記第1の交点とを結ぶ直線で分割して、前記第1の座標点を含む領域を吐出体積の優先領域とし、前記第2の座標点を含む領域を吐出速度の優先領域とし、
前記第2の交点が前記吐出体積の優先領域内のとき、先ず、前記原点と前記第2の交点とを結ぶ直線が前記第1の直線と交わる第3の交点の座標を求めて、前記第1の座標点を基準として前記第3の交点での定常時間と維持時間とを求め、次に、前記原点から前記第3の交点までの第1の距離と前記原点から前記第2の交点までの第2の距離とを算出し、最後に、前記原点を基準として、前記第3の交点での定常時間及び維持時間と、前記第1の距離及び第2の距離とから、前記第2の交点での定常時間と維持時間とを決定し、
前記第2の交点が前記吐出速度の優先領域内のとき、先ず、前記原点と前記第2の交点とを結ぶ直線が前記第2の直線と交わる第4の交点の座標を求めて、前記第2の座標点を基準として前記第4の交点での定常時間と維持時間とを求め、次に、前記原点から前記第4の交点までの第1の距離と前記原点から前記第2の交点までの第2の距離とを算出し、最後に、前記原点を基準として、前記第4の交点での定常時間及び維持時間と、前記第1の距離及び第2の距離とから、前記第2の交点での定常時間と維持時間とを決定することを特徴とする請求項4記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項6】
前記決定手段は、
基準となるインク滴の吐出体積と吐出速度を二次元座標系の原点として設定し、
この基準となるインク滴の吐出体積に対する増加方向の最大調整幅と減少方向の最大調整幅とを、前記原点を通る第1の座標軸上に前記原点を挟んで設定するとともに、
前記基準となるインク滴の吐出速度に対する増加方向の最大調整幅と減少方向の最大調整幅とを、前記原点を通りかつ前記第1の座標軸とは直交する第2の座標軸上に前記原点を挟んで設定し、
前記原点と、前記吐出体積の減少方向最大調整幅を示す前記第1の座標軸上の第1の座標点と、前記吐出速度の減少方向最大調整幅を示す前記第2の座標軸上の第2の座標点と、前記第1の座標点を通る前記第2の座標軸と平行な第1の直線が前記第2の座標点を通る前記第1の座標軸と平行な第2の直線と交わる第1の交点とを結ぶ領域を、吐出体積減少かつ吐出速度減少の調整領域として設定し、
前記吐出体積調整量と吐出速度調整量とがいずれも前記基準となるインク滴の吐出体積及び吐出速度よりも減少方向にあるとき、
前記第1の座標軸上の前記吐出体積調整量に相当する第3の座標点を通る前記第2の座標軸と平行な第3の直線が、前記第2の座標軸上の前記吐出速度調整量に相当する第4の座標点を通る前記第1の座標軸と平行な第4の直線と交わる第2の交点の座標を求め、前記原点を基準として前記第2の交点での定常時間と維持時間とを決定することを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項7】
前記吐出体積減少かつ吐出速度減少の調整領域を、前記原点と、前記第1の交点とを結ぶ直線で分割して、前記第1の座標点を含む領域を吐出体積の優先領域とし、前記第2の座標点を含む領域を吐出速度の優先領域とし、
前記第2の交点が前記吐出体積の優先領域内のとき、先ず、前記原点と前記第2の交点とを結ぶ直線が前記第1の直線と交わる第3の交点の座標を求めて、前記第1の座標点を基準として前記第3の交点での定常時間と維持時間とを求め、次に、前記原点から前記第3の交点までの第1の距離と前記原点から前記第2の交点までの第2の距離とを算出し、最後に、前記原点を基準として、前記第3の交点での定常時間及び維持時間と、前記第1の距離及び第2の距離とから、前記第2の交点での定常時間と維持時間とを決定し、
前記第2の交点が前記吐出速度の優先領域内のとき、先ず、前記原点と前記第2の交点とを結ぶ直線が前記第2の直線と交わる第4の交点の座標を求めて、前記第2の座標点を基準として前記第4の交点での定常時間と維持時間とを求め、次に、前記原点から前記第4の交点までの第1の距離と前記原点から前記第2の交点までの第2の距離とを算出し、最後に、前記原点を基準として、前記第4の交点での定常時間及び維持時間と、前記第1の距離及び第2の距離とから、前記第2の交点での定常時間と維持時間とを決定することを特徴とする請求項6記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項8】
前記決定手段は、
基準となるインク滴の吐出体積と吐出速度を二次元座標系の原点として設定し、
この基準となるインク滴の吐出体積に対する増加方向の最大調整幅と減少方向の最大調整幅とを、前記原点を通る第1の座標軸上に前記原点を挟んで設定するとともに、
前記基準となるインク滴の吐出速度に対する増加方向の最大調整幅と減少方向の最大調整幅とを、前記原点を通りかつ前記第1の座標軸とは直交する第2の座標軸上に前記原点を挟んで設定し、
前記原点と、前記吐出体積の減少方向最大調整幅を示す前記第1の座標軸上の第1の座標点と、前記吐出速度の増加方向最大調整幅を示す前記第2の座標軸上の第2の座標点と、前記第1の座標点を通る前記第2の座標軸と平行な第1の直線が前記第2の座標点を通る前記第1の座標軸と平行な第2の直線と交わる第1の交点とを結ぶ領域を、吐出体積減少かつ吐出速度増加の調整領域として設定し、
前記吐出体積調整量が前記基準となるインク滴の吐出体積よりも減少方向にあり、かつ前記吐出速度調整量が前記基準となるインク滴の吐出速度よりも増加方向にあるとき、
前記第1の座標軸上の前記吐出体積調整量に相当する第3の座標点を通る前記第2の座標軸と平行な第3の直線が、前記第2の座標軸上の前記吐出速度調整量に相当する第4の座標点を通る前記第1の座標軸と平行な第4の直線と交わる第2の交点の座標を求め、前記原点を基準として前記第2の交点での定常時間と維持時間とを決定することを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項9】
前記吐出体積減少かつ吐出速度増加の調整領域を、前記原点と、前記第1の交点とを結ぶ直線で分割して、前記第1の座標点を含む領域を吐出体積の優先領域とし、前記第2の座標点を含む領域を吐出速度の優先領域とし、
前記第2の交点が前記吐出体積の優先領域内のとき、先ず、前記原点と前記第2の交点とを結ぶ直線が前記第1の直線と交わる第3の交点の座標を求めて、前記第1の座標点を基準として前記第3の交点での定常時間と維持時間とを求め、次に、前記原点から前記第3の交点までの第1の距離と前記原点から前記第2の交点までの第2の距離とを算出し、最後に、前記原点を基準として、前記第3の交点での定常時間及び維持時間と、前記第1の距離及び第2の距離とから、前記第2の交点での定常時間と維持時間とを決定し、
前記第2の交点が前記吐出速度の優先領域内のとき、先ず、前記原点と前記第2の交点とを結ぶ直線が前記第2の直線と交わる第4の交点の座標を求めて、前記第2の座標点を基準として前記第4の交点での定常時間と維持時間とを求め、次に、前記原点から前記第4の交点までの第1の距離と前記原点から前記第2の交点までの第2の距離とを算出し、最後に、前記原点を基準として、前記第4の交点での定常時間及び維持時間と、前記第1の距離及び第2の距離とから、前記第2の交点での定常時間と維持時間とを決定することを特徴とする請求項8記載のインクジェットヘッドの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−45780(P2012−45780A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188595(P2010−188595)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】