インクジェットヘッド駆動方法及びインクジェットヘッド記録装置
【課題】 駆動パルスのパルス幅や駆動周波数を変化させなくてもインクの吐出体積を制御すること。
【解決手段】 インクジェットヘッド駆動方法において、駆動パルスが印加されているインク室13に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているときに駆動パルスを印加することにより当該ノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたことを特徴とする。
【解決手段】 インクジェットヘッド駆動方法において、駆動パルスが印加されているインク室13に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているときに駆動パルスを印加することにより当該ノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接ノズル駆動時の圧力変動を利用して吐出体積を変動させることができるインクジェットヘッドの駆動方法及びインクジェットヘッド記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドを有する記録装置は広く普及されている。このインクジェットヘッドにより印字された印字品質を向上させることが望まれている。例えば、印字品質を向上させる方法として、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインク吐出体積を制御するものが知られている。例えば、インクジェットヘッドのノズルからインクの小液滴を複数回吐出させて、ドットサイズを変化させるものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。この特許文献1、2の方式は、インクジェットヘッドに印加する駆動パルス数を制御することによってノズルからインクの小液滴を複数回吐出させ、この吐出させる小液滴の数を変化させることにより記録媒体に被弾させるインク滴のドットサイズを変化させるようにしたものである。
【0003】
また、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクの吐出体積自体を変化させるものも知られている(特許文献3〜5参照)。これらの方式は、インクジェットヘッドに印加する駆動信号の電圧やパルス幅等を変化させることによりノズルから吐出されるインク滴の体積を変化させるようにしている。
【特許文献1】米国特許4,513,299号
【特許文献2】特開2003-1821
【特許文献3】米国特許5,461,493号
【特許文献4】特開平4-250045号公報
【特許文献5】特許第327,795号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1,2のように、小液滴を複数吐出させる方法は、一つの画素を形成するのに複数のインクの吐出が必要となるため、インクの吐出体積を増加させるためには、高い駆動周波数で複数個の小液滴を吐出させる必要がある。さらに、この特許文献1,2のもので、印字速度を早くするためには、駆動パルスを高い周波数で連続的に印加すると、直前に小液滴を吐出させる駆動パルスで発生するメニスカス振動が加わり、そのメニスカス振動が大きくなって乱れてしまう。このため、インクの吐出速度が低下したり場合によってはインクが不吐出となるため、印字速度を速くすることは困難であった。
【0005】
また、特許文献3〜5に示すように吐出体積を変化させる方法では、変化させる体積に応じて電圧の異なる駆動パルスを複数準備しなければならなかった。また、駆動パルスのパルス幅を変化させることにより吐出体積を制御する方法では、メニスカス位置に対する影響が受けやすく、メニスカス位置が一定になるまでは次の吐出を行うことはできなかった。従って、駆動パルスの駆動周波数を高くすることはできなかった。なぜなら、駆動周波数を高くした場合、メニスカス位置が一定ではないため、インクの吐出体積を安定して制御することはできなかった。
【0006】
このため、印字速度を速くするために、駆動パルスの駆動周波数を高めるようにしたインクジェットヘッドでは、インクの吐出体積の制御を行わないのが主流である。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、その目的は、駆動パルスのパルス幅や駆動周波数を変化させなくてもインクの吐出体積を制御することができるインクジェットヘッド駆動方法及びインクジェットヘッド記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のインクジェットヘッド駆動方法は、インクジェットヘッド駆動方法において、駆動パルスが印加されているインク室に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているときに駆動パルスを印加することにより当該ノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたことを特徴とする。
【0009】
このように、駆動パルスが印加されているインク室に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているとき、駆動パルスを印加するようにしたので、駆動パルスのパルス幅や駆動周波数を変化させなくてもインクの吐出体積を制御することができる。
【0010】
請求項2記載のインクジェットヘッド駆動方法は、インクジェットヘッド駆動方法において、予めダミーパルスをインク室に印加させることにより当該インク室の容積を拡大して隣接するインク室のメニスカス位置を前進させておき、隣接するインク室に駆動パルスを印加することによりノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたことを特徴とする。
【0011】
このように、隣接するインク室の容積を拡大させてメニスカス位置を前進させておき、駆動パルスを印加することによりノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたので、駆動パルスのパルス幅や駆動周波数を変化させなくてもインクの吐出体積を制御することができる。
【0012】
請求項3記載のインクジェットヘッド記録装置は、インクを吐出するノズルが設けられたインク室を備え、このインク室の容積を電気機械変換手段により変化させることによりインクを吐出させているインクジェットヘッドと、前記電気機械変換手段に対して駆動パルスを出力する駆動パルス発生部を具備し、駆動パルス発生部は、駆動パルスが印加されているインク室に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているときに駆動パルスを印加することにより当該ノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたことを特徴とする。
【0013】
このように、駆動パルスが印加されているインク室に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているとき、駆動パルスを印加するようにしたので、駆動パルスのパルス幅や駆動周波数を変化させなくてもインクの吐出体積を制御することができる。
【0014】
請求項4記載のインクジェットヘッド記録装置は、インクを吐出するノズルが設けられたインク室を備え、このインク室の容積を電気機械変換手段により変化させることによりインクを吐出させているインクジェットヘッドと、前記電気機械変換手段に対して駆動パルスを出力する駆動パルス発生部を具備し、駆動パルス発生部は、予めダミーパルスをインク室に印加させることにより当該インク室の容積を拡大して隣接するインク室のメニスカス位置を前進させておき、隣接するインク室に駆動パルスを印加することによりノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたこと特徴とする。
【0015】
このように、隣接するインク室の容積を拡大させてメニスカス位置を前進させておき、駆動パルスを印加することによりノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたので、駆動パルスのパルス幅や駆動周波数を変化させなくてもインクの吐出体積を制御することができる。
【0016】
請求項5記載のインクジェットヘッド駆動方法は、請求項1あるいは請求項2に記載の前記インクジェットヘッドは3分割駆動により駆動されることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載のインクジェットヘッド記録装置は、請求項3あるいは請求項4に記載の前記駆動パルス発生部は3分割駆動による駆動パルスを出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、インクジェットヘッド駆動方法及び記録装置において、駆動パルスが印加されているインク室に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているとき、或いは、隣接するインク室の容積を拡大させてメニスカス位置を前進させておき、駆動パルスを印加することによりノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたので、駆動パルスのパルス幅や駆動周波数を変化させなくてもインクの吐出体積を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面を参照して本発明の一実施の形態に係るインクジェットヘッド記録装置及びインクジェットヘッド駆動方法について説明する。図1は本発明に係るインクジェットヘッドの斜視図、図2は溝5の方向と直交する方向に沿った断面図である。
【0020】
図において、インクジェットヘッド1は、PZT等の圧電材料により形成された圧電材料2,3を図2に示すように2層積層した積層圧電部材4を有する。ここで、圧電部材2,3の分極方向は、矢印に示すように積層圧電部材4の板厚方向に沿って互いに反対方向である。
【0021】
積層圧電部材4には、上側及び前面側が開放された複数の溝5が互いに平行となるように形成されている。これらの溝5は、ダイソーイングのダイヤモンドホイール等により研削加工される。この結果、各溝5は、側壁6により仕切られている。
【0022】
溝5の内面及び積層圧電部材4の上面には、無電解ニッケルメッキ法により形成された複数の電極7が設けられている。ここで、電極7は特にニッケルに限るものではなく、例えば金や銅であってもよい。
【0023】
溝5において、積層圧電部材4の前面側で開口している前面開口部8は、複数のノズル9が形成されたノズルプレート10により閉塞されている。
【0024】
また、溝5の積層圧電部材4の上側に向けて開口している上側開口部11は、蓋部材12により閉塞されている。この蓋部材12には、図示しないインクタンク等に連通される後述する各インク13にインクを供給するインク供給管14が連通されるインク流路としてのインク供給路15が形成されている。
【0025】
蓋部材12及びノズルプレート10によってヘッド基板の溝5の前面開口部8及び上側開口部11が閉塞されていることによりインク室13が形成される。各インク室13は、インク供給路15を介してそれぞれ連通されている。
【0026】
以上のように構成されたインクジェットヘッド1は、図3に示すように接続されてインクジェットヘッド記録装置が構成される。
【0027】
図3において、21はインクジェットヘッド1を統括して制御するためのCPU(中央処理装置)である。このCPU21には、各種制御プログラムが記憶されているROM(リード・オンリ・メモリ)22、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)23、ヘッドドライバ24、モータドライバ25が接続されている。
【0028】
ヘッドドライバ24は、インクジェットヘッド1に対して図4に示すような3分割駆動の駆動パルスや図8に示すダミーパルスを出力する。
【0029】
モータドライバ25には記録媒体(図示しない)をノズルプレート10の表面に沿うように搬送するための搬送モータ26が接続されている。
【0030】
ところで、複数のインク室13は、連続する3つのインク室13A、13B、13Cで1つの組を構成し、各組のインク室13A、13B、13Cに対応する電極7A、7B、7Cにはそれぞれ同じタイミングで図4に示すような駆動パルスが印加される。つまり、3分割駆動される。この実施の形態では、各組のインク室13B→13A→13Cの順にインクを吐出させる場合を例にとり説明する。
【0031】
最初に、インク室13からインクを突出させる基本原理について説明する。まず、インク室13にインクを供給している状態で、インクを突出させるインク室13の両側に位置する電極7へ電圧を印加する。この電圧が印加された電極7に対応する一対の側壁6は、分極方向が相反する圧電部材2,3のシェアモード変形によりインク室13の容積を増加する方向に湾曲する。次に、インクを突出させるインク室13の両側に位置する電極7に逆極性の電圧を印加する。すると、側壁6が急激に初期位置に復帰する。そして、側壁6が初期位置に復帰すると、インク室13内のインクが加圧されて、インク室13内のインクの一部がインク滴となって、ノズル9から吐出される。
【0032】
例えば、インク室13Bからインクを吐出させる場合について説明する。この場合には、インク室13Bの電極7Bとこのインク室13Bに隣接するインク室13A,13Cの電極7A,7Cとの間に図4に示すような波形を有する駆動パルスを印加する。
【0033】
この駆動パルスは、インク室13に変化を与えない待機電圧Vresからインク室の容積を拡大させる第1電圧V1に変化した後に、インク室13を収縮させる第2電圧V2に変化する。
【0034】
さらに詳細に説明すると、駆動パルスは、時刻t1において待機電圧Vresから第1電圧V1に立ち上がる。この電圧V1は一定時間(Tc/2)だけ保持される。なお、Tcは、インクのヘルムホルツ周期、すなわちインクのメニスカス共振周期である。そして、時刻t3において第1電圧V1から待機電圧Vresを経由して第2電圧V2まで急激に立ち下がる。この第2電圧V2は時刻t3からt5までの一定時間Tcだけ保持される。そして、時刻t5において第2電圧V2から待機電圧Vresまで急激に立ち上げ、この待機電圧Vresを一定時間保持させて後、時刻t8において急激に待機電圧Vresまで急激に立ち下げられる。
【0035】
上記した時刻t1からt3までのパルスをプリパルスP1、時刻t4からt5までのパルスを吐出パルスP2、時刻t6からt8までのパルスをダンピングパルスP3と呼ぶことにする。
【0036】
ここで、ダンピングパルスP3のパルス幅は、インク室13のインク圧力の残留振動を効果的にキャンセルできる値に設定される。例えば、このパルス幅は、インクやインクの供給形態等のようなヘッド構造により決定される。例えば、ダンピングパルスP3のパルス幅の中間点と時刻t5との間がTc/4に設定される。
【0037】
次に、図4の駆動パルスによりメニスカス位置がどのように変化するかを図5を参照して説明する。例えば、インク室13Bに図4の駆動パルスが印加されると、プリパルスP1の立ち上がりで両側壁6がインク室13Bの容積を拡大するように外側に変形する。これにより、インク室13Bのインク圧力は低下する。プリパルスP1の第1電圧V1をそのまま保持し続けると、時刻t1からt2までの間は、インク室13Bのインク圧力は負となるため、メニスカス位置はAに示すように後退する。次に、時刻t2でインク室13Bのインク圧力は負圧から正圧に反転するため、時刻t2を過ぎると、メニスカス位置はBに示すように前進する。
【0038】
そして、時刻t4の直前の時刻t3で吐出パルスP2を印加すると、メニスカスの前進速度にインク室13B内のインク圧力の上昇が重なって、ノズル9からインクが吐出される。
【0039】
さらに、時刻t4では、プリパルスP1で発生したメニスカス位置は前進から後退に変化する。そして、このまま吐出パルスP2を保持し続けると、メニスカス位置はCに示すように時刻t4からt4´まで後退し続ける。そして、時刻t4´を過ぎると、メニスカス位置はDで示すように前進する。
【0040】
その後、時刻t5で待機電圧Vresに戻し、時刻t6でダンピングパルスP3を印加することにより、インク室13B内のメニスカス振動が相殺されてEに示すように収束する。
【0041】
このようにして、次のインク室13Bからのインクの吐出タイミングまでは、メイスカス振動が安定する。これにより、連続して高い駆動周波数でインクを吐出させることができる。
【0042】
なお、図6は、図4の駆動パルスと図5のメニスカス位置を重ねて示した図である。
【0043】
以上の説明は、1つのインク室13Bに着目して図4の駆動パルスによりメニスカス位置の変化する様子について説明した。
【0044】
前述したように、本実施の形態では各組ではインク室13B→13A→13Cの順にインクを吐出させる動作が行なわれる。つまり、インク室13B→13A→13Cの順に駆動パルスが図9(B)〜(D)に示すように供給される。インク室13Bはインク室13Aと13Cに側壁6を隔てて隣接しているため、側壁が変形するとその影響をインク室13Bが受ける。つまり、インク室13Aあるいはインク室13Cの容積が拡大する場合には、インク室13Bの容積は縮小し、インク室13Aあるいはインク室13Cの容積が縮小する場合には、インク室13Bの容積は拡大するように動作する。つまり、隣接するインク室13Aあるいは13Bに駆動パルスが印加されることによりインク室13Bのメニスカス位置は、図5の波形を反転した波形に相似する波形となる。
【0045】
図9(C)の時刻t8でインク室13Aに対して図4に示す駆動パルスが印加されると、図9(A)の時刻t8からαに示すようにインク室13Bのメニスカス位置が変動する。
【0046】
さらに、図9(D)の時刻t9でインク室13Cに対して図4に示す駆動パルスが印加されると、図9(A)の時刻t9からβに示すようにインク室13Bのメニスカス位置が変動する。
【0047】
そして、図9(A)のインク室13Bのメニスカス位置は斜線で示すように前進した位置にくる。この斜線中でγで示した位置が最もメニスカス位置が前進した位置である。
【0048】
従って、図9(A)のインク室13Bのメニスカス位置が斜線で示した前進位置にあるときに、インク室13Bに駆動パルスを印加すると、インク室13Bのノズル9から吐出されるインクの量を増加させることができる。従って、駆動パルスのパルス幅や駆動周波数を変化させなくても、インクの吐出量を増加させることができる。このように、パルス幅や駆動周波数を変化させないので高速印字が可能である。
【0049】
図10は図9(A)に示したメニスカス体積位置を実験により求めた図である。例えば、駆動パルスの待機電圧Vresを0V、第1電圧V1を20V、第2電圧−20Vとした場合に、メニスカス位置がXに示すように5×E−15m3 である場合に、通常では20plであるインクの吐出体積を8pl程度増加させることができる。
【0050】
前述したように、インク室13Bのノズル9から吐出されるインクの吐出体積が増加されるのは、インク室13Bに隣接するインク室13A及び13Cに駆動パルスが印加された場合である。
【0051】
従って、図9(B)の駆動パルスD1によっては、インク室13Bのノズル9から吐出されるインクの吐出体積は増加しない。
【0052】
もし、最初にインク室13Bに駆動パルスD1を印加したときにインク室13Bのノズル9から吐出されるインクの吐出体積は増加させたい場合には、インク室13Aに図8に示すようなダミーパルスを印加しておけばよい。このダミーパルスは図4に示した駆動パルスと同じ電圧V1を有し、パルス幅はTc時間である。このようなダミーパルスをインク室13Aに印加することにより、インク室13Aの容積を拡大させている。このインク室13Aと側壁6を隔ててインク室13Bが配置されているため、ダミーパルスによりインク室13Bは縮小する。これにより、インク室13Bのメニスカス位置を前進させることができる。このように、インク室13Bのメニスカス位置を前進させておくことにより、最初に駆動パルスD1を印加した場合でも、インク室13のノズル9から吐出されるインクの吐出体積を増加させることができる。
【0053】
以上のように本発明の一実施の形態によれば、壁を隔てて隣接するインク室に駆動パルスが印加された後にインク室に駆動パルスを印加すると、当該インク室のノズルから吐出されるインクの吐出量を増加させることができる。例えば、3分割駆動の場合には、図11(B)に示すようにドット径で印字される。例えば、図11(a)に示すようにaに示すように3分割駆動がインク室13A→13B→13Cという順番で駆動パルスが印加された後、bに示すように次の3分割駆動が行われる場合について説明する。aに示すタイミングで3分割駆動が行われた場合には、インク室13Aは隣接するインク室に駆動パルスが印加されていないため、図11(A)に示す通常のドット径と同じドットで印字される。次に、bに示すタイミングで3分割駆動が行われた場合には、インク室13Aの一番左のドット30のみ通常の大きさのドットとなる。なぜなら、隣接するインク室に駆動パルスが印加されていないからである。また、aのタイミングでインク室13Aから吐出されたドットは通常のドット径であるが、次のbのタイミングでインク室13Aから吐出される場合には吐出体積が増加されたドット32で印字される。
【0054】
なお、上記した実施の形態では、3分割駆動方法について説明したが、側壁を共有するインク室に対し、同時に駆動パルスを印加させなければ3分割駆動に限定されるものではない。
【0055】
また、2値のみの高速印字を行うことができるインクジェットヘッドに本発明の駆動方法を適用すれば、濃い印字を行いたいときにはノズルからのインクの吐出量を増加させるようにし、淡い印字を行いたいときには、ノズルから吐出させるインクの吐出量を少なくすることにより、階調をもつような印字を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェットヘッドの斜視図。
【図2】同インクジェットヘッドの要部断面図。
【図3】インクジェットヘッド記録装置のブロック図。
【図4】同インクジェットヘッドに供給される駆動パルスを示す図。
【図5】同インクジェットヘッドのメニスカス位置を示す図。
【図6】同インクジェットヘッドに供給される駆動パルスとメニスカス位置との関係を示す図。
【図7】同インクジェットヘッドのインク室13Bのメニスカス位置の変動を示す図。
【図8】同インクジェットヘッドに供給されるダミーパルスを示す図。
【図9】同インクジェットヘッドのインク室13Bのメニスカス位置と各インク室に供給される駆動パルスとの関係を示す図。
【図10】同インクジェットヘッドのインク室のメニスカス位置の変動を示す図。
【図11】図11(A)はインクジェットヘッドで印字される通常印字の印字状態を示す図、図11(B)はインクジェットヘッドで印字される吐出体積が増加された印字状態を示す図。
【符号の説明】
【0057】
1…インジェットヘッド、4…積層圧電部材、6…側壁、10…ノズルプレート、13…圧力室、14…インク供給管、21…CPU、22…ROM、23…RAM、24…ヘッドドライバ、25…モータドライバ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接ノズル駆動時の圧力変動を利用して吐出体積を変動させることができるインクジェットヘッドの駆動方法及びインクジェットヘッド記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドを有する記録装置は広く普及されている。このインクジェットヘッドにより印字された印字品質を向上させることが望まれている。例えば、印字品質を向上させる方法として、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインク吐出体積を制御するものが知られている。例えば、インクジェットヘッドのノズルからインクの小液滴を複数回吐出させて、ドットサイズを変化させるものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。この特許文献1、2の方式は、インクジェットヘッドに印加する駆動パルス数を制御することによってノズルからインクの小液滴を複数回吐出させ、この吐出させる小液滴の数を変化させることにより記録媒体に被弾させるインク滴のドットサイズを変化させるようにしたものである。
【0003】
また、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクの吐出体積自体を変化させるものも知られている(特許文献3〜5参照)。これらの方式は、インクジェットヘッドに印加する駆動信号の電圧やパルス幅等を変化させることによりノズルから吐出されるインク滴の体積を変化させるようにしている。
【特許文献1】米国特許4,513,299号
【特許文献2】特開2003-1821
【特許文献3】米国特許5,461,493号
【特許文献4】特開平4-250045号公報
【特許文献5】特許第327,795号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1,2のように、小液滴を複数吐出させる方法は、一つの画素を形成するのに複数のインクの吐出が必要となるため、インクの吐出体積を増加させるためには、高い駆動周波数で複数個の小液滴を吐出させる必要がある。さらに、この特許文献1,2のもので、印字速度を早くするためには、駆動パルスを高い周波数で連続的に印加すると、直前に小液滴を吐出させる駆動パルスで発生するメニスカス振動が加わり、そのメニスカス振動が大きくなって乱れてしまう。このため、インクの吐出速度が低下したり場合によってはインクが不吐出となるため、印字速度を速くすることは困難であった。
【0005】
また、特許文献3〜5に示すように吐出体積を変化させる方法では、変化させる体積に応じて電圧の異なる駆動パルスを複数準備しなければならなかった。また、駆動パルスのパルス幅を変化させることにより吐出体積を制御する方法では、メニスカス位置に対する影響が受けやすく、メニスカス位置が一定になるまでは次の吐出を行うことはできなかった。従って、駆動パルスの駆動周波数を高くすることはできなかった。なぜなら、駆動周波数を高くした場合、メニスカス位置が一定ではないため、インクの吐出体積を安定して制御することはできなかった。
【0006】
このため、印字速度を速くするために、駆動パルスの駆動周波数を高めるようにしたインクジェットヘッドでは、インクの吐出体積の制御を行わないのが主流である。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、その目的は、駆動パルスのパルス幅や駆動周波数を変化させなくてもインクの吐出体積を制御することができるインクジェットヘッド駆動方法及びインクジェットヘッド記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のインクジェットヘッド駆動方法は、インクジェットヘッド駆動方法において、駆動パルスが印加されているインク室に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているときに駆動パルスを印加することにより当該ノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたことを特徴とする。
【0009】
このように、駆動パルスが印加されているインク室に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているとき、駆動パルスを印加するようにしたので、駆動パルスのパルス幅や駆動周波数を変化させなくてもインクの吐出体積を制御することができる。
【0010】
請求項2記載のインクジェットヘッド駆動方法は、インクジェットヘッド駆動方法において、予めダミーパルスをインク室に印加させることにより当該インク室の容積を拡大して隣接するインク室のメニスカス位置を前進させておき、隣接するインク室に駆動パルスを印加することによりノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたことを特徴とする。
【0011】
このように、隣接するインク室の容積を拡大させてメニスカス位置を前進させておき、駆動パルスを印加することによりノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたので、駆動パルスのパルス幅や駆動周波数を変化させなくてもインクの吐出体積を制御することができる。
【0012】
請求項3記載のインクジェットヘッド記録装置は、インクを吐出するノズルが設けられたインク室を備え、このインク室の容積を電気機械変換手段により変化させることによりインクを吐出させているインクジェットヘッドと、前記電気機械変換手段に対して駆動パルスを出力する駆動パルス発生部を具備し、駆動パルス発生部は、駆動パルスが印加されているインク室に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているときに駆動パルスを印加することにより当該ノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたことを特徴とする。
【0013】
このように、駆動パルスが印加されているインク室に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているとき、駆動パルスを印加するようにしたので、駆動パルスのパルス幅や駆動周波数を変化させなくてもインクの吐出体積を制御することができる。
【0014】
請求項4記載のインクジェットヘッド記録装置は、インクを吐出するノズルが設けられたインク室を備え、このインク室の容積を電気機械変換手段により変化させることによりインクを吐出させているインクジェットヘッドと、前記電気機械変換手段に対して駆動パルスを出力する駆動パルス発生部を具備し、駆動パルス発生部は、予めダミーパルスをインク室に印加させることにより当該インク室の容積を拡大して隣接するインク室のメニスカス位置を前進させておき、隣接するインク室に駆動パルスを印加することによりノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたこと特徴とする。
【0015】
このように、隣接するインク室の容積を拡大させてメニスカス位置を前進させておき、駆動パルスを印加することによりノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたので、駆動パルスのパルス幅や駆動周波数を変化させなくてもインクの吐出体積を制御することができる。
【0016】
請求項5記載のインクジェットヘッド駆動方法は、請求項1あるいは請求項2に記載の前記インクジェットヘッドは3分割駆動により駆動されることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載のインクジェットヘッド記録装置は、請求項3あるいは請求項4に記載の前記駆動パルス発生部は3分割駆動による駆動パルスを出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、インクジェットヘッド駆動方法及び記録装置において、駆動パルスが印加されているインク室に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているとき、或いは、隣接するインク室の容積を拡大させてメニスカス位置を前進させておき、駆動パルスを印加することによりノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたので、駆動パルスのパルス幅や駆動周波数を変化させなくてもインクの吐出体積を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面を参照して本発明の一実施の形態に係るインクジェットヘッド記録装置及びインクジェットヘッド駆動方法について説明する。図1は本発明に係るインクジェットヘッドの斜視図、図2は溝5の方向と直交する方向に沿った断面図である。
【0020】
図において、インクジェットヘッド1は、PZT等の圧電材料により形成された圧電材料2,3を図2に示すように2層積層した積層圧電部材4を有する。ここで、圧電部材2,3の分極方向は、矢印に示すように積層圧電部材4の板厚方向に沿って互いに反対方向である。
【0021】
積層圧電部材4には、上側及び前面側が開放された複数の溝5が互いに平行となるように形成されている。これらの溝5は、ダイソーイングのダイヤモンドホイール等により研削加工される。この結果、各溝5は、側壁6により仕切られている。
【0022】
溝5の内面及び積層圧電部材4の上面には、無電解ニッケルメッキ法により形成された複数の電極7が設けられている。ここで、電極7は特にニッケルに限るものではなく、例えば金や銅であってもよい。
【0023】
溝5において、積層圧電部材4の前面側で開口している前面開口部8は、複数のノズル9が形成されたノズルプレート10により閉塞されている。
【0024】
また、溝5の積層圧電部材4の上側に向けて開口している上側開口部11は、蓋部材12により閉塞されている。この蓋部材12には、図示しないインクタンク等に連通される後述する各インク13にインクを供給するインク供給管14が連通されるインク流路としてのインク供給路15が形成されている。
【0025】
蓋部材12及びノズルプレート10によってヘッド基板の溝5の前面開口部8及び上側開口部11が閉塞されていることによりインク室13が形成される。各インク室13は、インク供給路15を介してそれぞれ連通されている。
【0026】
以上のように構成されたインクジェットヘッド1は、図3に示すように接続されてインクジェットヘッド記録装置が構成される。
【0027】
図3において、21はインクジェットヘッド1を統括して制御するためのCPU(中央処理装置)である。このCPU21には、各種制御プログラムが記憶されているROM(リード・オンリ・メモリ)22、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)23、ヘッドドライバ24、モータドライバ25が接続されている。
【0028】
ヘッドドライバ24は、インクジェットヘッド1に対して図4に示すような3分割駆動の駆動パルスや図8に示すダミーパルスを出力する。
【0029】
モータドライバ25には記録媒体(図示しない)をノズルプレート10の表面に沿うように搬送するための搬送モータ26が接続されている。
【0030】
ところで、複数のインク室13は、連続する3つのインク室13A、13B、13Cで1つの組を構成し、各組のインク室13A、13B、13Cに対応する電極7A、7B、7Cにはそれぞれ同じタイミングで図4に示すような駆動パルスが印加される。つまり、3分割駆動される。この実施の形態では、各組のインク室13B→13A→13Cの順にインクを吐出させる場合を例にとり説明する。
【0031】
最初に、インク室13からインクを突出させる基本原理について説明する。まず、インク室13にインクを供給している状態で、インクを突出させるインク室13の両側に位置する電極7へ電圧を印加する。この電圧が印加された電極7に対応する一対の側壁6は、分極方向が相反する圧電部材2,3のシェアモード変形によりインク室13の容積を増加する方向に湾曲する。次に、インクを突出させるインク室13の両側に位置する電極7に逆極性の電圧を印加する。すると、側壁6が急激に初期位置に復帰する。そして、側壁6が初期位置に復帰すると、インク室13内のインクが加圧されて、インク室13内のインクの一部がインク滴となって、ノズル9から吐出される。
【0032】
例えば、インク室13Bからインクを吐出させる場合について説明する。この場合には、インク室13Bの電極7Bとこのインク室13Bに隣接するインク室13A,13Cの電極7A,7Cとの間に図4に示すような波形を有する駆動パルスを印加する。
【0033】
この駆動パルスは、インク室13に変化を与えない待機電圧Vresからインク室の容積を拡大させる第1電圧V1に変化した後に、インク室13を収縮させる第2電圧V2に変化する。
【0034】
さらに詳細に説明すると、駆動パルスは、時刻t1において待機電圧Vresから第1電圧V1に立ち上がる。この電圧V1は一定時間(Tc/2)だけ保持される。なお、Tcは、インクのヘルムホルツ周期、すなわちインクのメニスカス共振周期である。そして、時刻t3において第1電圧V1から待機電圧Vresを経由して第2電圧V2まで急激に立ち下がる。この第2電圧V2は時刻t3からt5までの一定時間Tcだけ保持される。そして、時刻t5において第2電圧V2から待機電圧Vresまで急激に立ち上げ、この待機電圧Vresを一定時間保持させて後、時刻t8において急激に待機電圧Vresまで急激に立ち下げられる。
【0035】
上記した時刻t1からt3までのパルスをプリパルスP1、時刻t4からt5までのパルスを吐出パルスP2、時刻t6からt8までのパルスをダンピングパルスP3と呼ぶことにする。
【0036】
ここで、ダンピングパルスP3のパルス幅は、インク室13のインク圧力の残留振動を効果的にキャンセルできる値に設定される。例えば、このパルス幅は、インクやインクの供給形態等のようなヘッド構造により決定される。例えば、ダンピングパルスP3のパルス幅の中間点と時刻t5との間がTc/4に設定される。
【0037】
次に、図4の駆動パルスによりメニスカス位置がどのように変化するかを図5を参照して説明する。例えば、インク室13Bに図4の駆動パルスが印加されると、プリパルスP1の立ち上がりで両側壁6がインク室13Bの容積を拡大するように外側に変形する。これにより、インク室13Bのインク圧力は低下する。プリパルスP1の第1電圧V1をそのまま保持し続けると、時刻t1からt2までの間は、インク室13Bのインク圧力は負となるため、メニスカス位置はAに示すように後退する。次に、時刻t2でインク室13Bのインク圧力は負圧から正圧に反転するため、時刻t2を過ぎると、メニスカス位置はBに示すように前進する。
【0038】
そして、時刻t4の直前の時刻t3で吐出パルスP2を印加すると、メニスカスの前進速度にインク室13B内のインク圧力の上昇が重なって、ノズル9からインクが吐出される。
【0039】
さらに、時刻t4では、プリパルスP1で発生したメニスカス位置は前進から後退に変化する。そして、このまま吐出パルスP2を保持し続けると、メニスカス位置はCに示すように時刻t4からt4´まで後退し続ける。そして、時刻t4´を過ぎると、メニスカス位置はDで示すように前進する。
【0040】
その後、時刻t5で待機電圧Vresに戻し、時刻t6でダンピングパルスP3を印加することにより、インク室13B内のメニスカス振動が相殺されてEに示すように収束する。
【0041】
このようにして、次のインク室13Bからのインクの吐出タイミングまでは、メイスカス振動が安定する。これにより、連続して高い駆動周波数でインクを吐出させることができる。
【0042】
なお、図6は、図4の駆動パルスと図5のメニスカス位置を重ねて示した図である。
【0043】
以上の説明は、1つのインク室13Bに着目して図4の駆動パルスによりメニスカス位置の変化する様子について説明した。
【0044】
前述したように、本実施の形態では各組ではインク室13B→13A→13Cの順にインクを吐出させる動作が行なわれる。つまり、インク室13B→13A→13Cの順に駆動パルスが図9(B)〜(D)に示すように供給される。インク室13Bはインク室13Aと13Cに側壁6を隔てて隣接しているため、側壁が変形するとその影響をインク室13Bが受ける。つまり、インク室13Aあるいはインク室13Cの容積が拡大する場合には、インク室13Bの容積は縮小し、インク室13Aあるいはインク室13Cの容積が縮小する場合には、インク室13Bの容積は拡大するように動作する。つまり、隣接するインク室13Aあるいは13Bに駆動パルスが印加されることによりインク室13Bのメニスカス位置は、図5の波形を反転した波形に相似する波形となる。
【0045】
図9(C)の時刻t8でインク室13Aに対して図4に示す駆動パルスが印加されると、図9(A)の時刻t8からαに示すようにインク室13Bのメニスカス位置が変動する。
【0046】
さらに、図9(D)の時刻t9でインク室13Cに対して図4に示す駆動パルスが印加されると、図9(A)の時刻t9からβに示すようにインク室13Bのメニスカス位置が変動する。
【0047】
そして、図9(A)のインク室13Bのメニスカス位置は斜線で示すように前進した位置にくる。この斜線中でγで示した位置が最もメニスカス位置が前進した位置である。
【0048】
従って、図9(A)のインク室13Bのメニスカス位置が斜線で示した前進位置にあるときに、インク室13Bに駆動パルスを印加すると、インク室13Bのノズル9から吐出されるインクの量を増加させることができる。従って、駆動パルスのパルス幅や駆動周波数を変化させなくても、インクの吐出量を増加させることができる。このように、パルス幅や駆動周波数を変化させないので高速印字が可能である。
【0049】
図10は図9(A)に示したメニスカス体積位置を実験により求めた図である。例えば、駆動パルスの待機電圧Vresを0V、第1電圧V1を20V、第2電圧−20Vとした場合に、メニスカス位置がXに示すように5×E−15m3 である場合に、通常では20plであるインクの吐出体積を8pl程度増加させることができる。
【0050】
前述したように、インク室13Bのノズル9から吐出されるインクの吐出体積が増加されるのは、インク室13Bに隣接するインク室13A及び13Cに駆動パルスが印加された場合である。
【0051】
従って、図9(B)の駆動パルスD1によっては、インク室13Bのノズル9から吐出されるインクの吐出体積は増加しない。
【0052】
もし、最初にインク室13Bに駆動パルスD1を印加したときにインク室13Bのノズル9から吐出されるインクの吐出体積は増加させたい場合には、インク室13Aに図8に示すようなダミーパルスを印加しておけばよい。このダミーパルスは図4に示した駆動パルスと同じ電圧V1を有し、パルス幅はTc時間である。このようなダミーパルスをインク室13Aに印加することにより、インク室13Aの容積を拡大させている。このインク室13Aと側壁6を隔ててインク室13Bが配置されているため、ダミーパルスによりインク室13Bは縮小する。これにより、インク室13Bのメニスカス位置を前進させることができる。このように、インク室13Bのメニスカス位置を前進させておくことにより、最初に駆動パルスD1を印加した場合でも、インク室13のノズル9から吐出されるインクの吐出体積を増加させることができる。
【0053】
以上のように本発明の一実施の形態によれば、壁を隔てて隣接するインク室に駆動パルスが印加された後にインク室に駆動パルスを印加すると、当該インク室のノズルから吐出されるインクの吐出量を増加させることができる。例えば、3分割駆動の場合には、図11(B)に示すようにドット径で印字される。例えば、図11(a)に示すようにaに示すように3分割駆動がインク室13A→13B→13Cという順番で駆動パルスが印加された後、bに示すように次の3分割駆動が行われる場合について説明する。aに示すタイミングで3分割駆動が行われた場合には、インク室13Aは隣接するインク室に駆動パルスが印加されていないため、図11(A)に示す通常のドット径と同じドットで印字される。次に、bに示すタイミングで3分割駆動が行われた場合には、インク室13Aの一番左のドット30のみ通常の大きさのドットとなる。なぜなら、隣接するインク室に駆動パルスが印加されていないからである。また、aのタイミングでインク室13Aから吐出されたドットは通常のドット径であるが、次のbのタイミングでインク室13Aから吐出される場合には吐出体積が増加されたドット32で印字される。
【0054】
なお、上記した実施の形態では、3分割駆動方法について説明したが、側壁を共有するインク室に対し、同時に駆動パルスを印加させなければ3分割駆動に限定されるものではない。
【0055】
また、2値のみの高速印字を行うことができるインクジェットヘッドに本発明の駆動方法を適用すれば、濃い印字を行いたいときにはノズルからのインクの吐出量を増加させるようにし、淡い印字を行いたいときには、ノズルから吐出させるインクの吐出量を少なくすることにより、階調をもつような印字を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェットヘッドの斜視図。
【図2】同インクジェットヘッドの要部断面図。
【図3】インクジェットヘッド記録装置のブロック図。
【図4】同インクジェットヘッドに供給される駆動パルスを示す図。
【図5】同インクジェットヘッドのメニスカス位置を示す図。
【図6】同インクジェットヘッドに供給される駆動パルスとメニスカス位置との関係を示す図。
【図7】同インクジェットヘッドのインク室13Bのメニスカス位置の変動を示す図。
【図8】同インクジェットヘッドに供給されるダミーパルスを示す図。
【図9】同インクジェットヘッドのインク室13Bのメニスカス位置と各インク室に供給される駆動パルスとの関係を示す図。
【図10】同インクジェットヘッドのインク室のメニスカス位置の変動を示す図。
【図11】図11(A)はインクジェットヘッドで印字される通常印字の印字状態を示す図、図11(B)はインクジェットヘッドで印字される吐出体積が増加された印字状態を示す図。
【符号の説明】
【0057】
1…インジェットヘッド、4…積層圧電部材、6…側壁、10…ノズルプレート、13…圧力室、14…インク供給管、21…CPU、22…ROM、23…RAM、24…ヘッドドライバ、25…モータドライバ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッド駆動方法において、駆動パルスが印加されているインク室に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているときに駆動パルスを印加することにより当該ノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたことを特徴とするインクジェットヘッド駆動方法。
【請求項2】
インクジェットヘッド駆動方法において、予めダミーパルスをインク室に印加させることにより当該インク室の容積を拡大して隣接するインク室のメニスカス位置を前進させておき、隣接するインク室に駆動パルスを印加することによりノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたことを特徴とするインクジェットヘッド駆動方法。
【請求項3】
インクを吐出するノズルが設けられたインク室を備え、このインク室の容積を電気機械変換手段により変化させることによりインクを吐出させているインクジェットヘッドと、
前記電気機械変換手段に対して駆動パルスを出力する駆動パルス発生部を具備し、
駆動パルス発生部は、駆動パルスが印加されているインク室に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているときに駆動パルスを印加することにより当該ノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたことを特徴とするインクジェットヘッド記録装置。
【請求項4】
インクを吐出するノズルが設けられたインク室を備え、このインク室の容積を電気機械変換手段により変化させることによりインクを吐出させているインクジェットヘッドと、
前記電気機械変換手段に対して駆動パルスを出力する駆動パルス発生部を具備し、
駆動パルス発生部は、予めダミーパルスをインク室に印加させることにより当該インク室の容積を拡大して隣接するインク室のメニスカス位置を前進させておき、隣接するインク室に駆動パルスを印加することによりノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたこと特徴とするインクジェットヘッド記録装置。
【請求項5】
前記インクジェットヘッドは3分割駆動により駆動されることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載のインクジェットヘッド駆動方法。
【請求項6】
前記駆動パルス発生部は3分割駆動による駆動パルスを出力することを特徴とする請求項3あるいは請求項4に記載のインクジェットヘッド記録装置。
【請求項1】
インクジェットヘッド駆動方法において、駆動パルスが印加されているインク室に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているときに駆動パルスを印加することにより当該ノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたことを特徴とするインクジェットヘッド駆動方法。
【請求項2】
インクジェットヘッド駆動方法において、予めダミーパルスをインク室に印加させることにより当該インク室の容積を拡大して隣接するインク室のメニスカス位置を前進させておき、隣接するインク室に駆動パルスを印加することによりノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたことを特徴とするインクジェットヘッド駆動方法。
【請求項3】
インクを吐出するノズルが設けられたインク室を備え、このインク室の容積を電気機械変換手段により変化させることによりインクを吐出させているインクジェットヘッドと、
前記電気機械変換手段に対して駆動パルスを出力する駆動パルス発生部を具備し、
駆動パルス発生部は、駆動パルスが印加されているインク室に隣接するインク室のノズルのメニスカス位置が前進しているときに駆動パルスを印加することにより当該ノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたことを特徴とするインクジェットヘッド記録装置。
【請求項4】
インクを吐出するノズルが設けられたインク室を備え、このインク室の容積を電気機械変換手段により変化させることによりインクを吐出させているインクジェットヘッドと、
前記電気機械変換手段に対して駆動パルスを出力する駆動パルス発生部を具備し、
駆動パルス発生部は、予めダミーパルスをインク室に印加させることにより当該インク室の容積を拡大して隣接するインク室のメニスカス位置を前進させておき、隣接するインク室に駆動パルスを印加することによりノズルから吐出されるインクの吐出量を増加するようにしたこと特徴とするインクジェットヘッド記録装置。
【請求項5】
前記インクジェットヘッドは3分割駆動により駆動されることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載のインクジェットヘッド駆動方法。
【請求項6】
前記駆動パルス発生部は3分割駆動による駆動パルスを出力することを特徴とする請求項3あるいは請求項4に記載のインクジェットヘッド記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−76260(P2006−76260A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265761(P2004−265761)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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