説明

インクジェットヘッド

【課題】各基材、基板を高精度に接合すること。
【解決手段】インクジェットヘッド3は、インクを吐出するノズル11が形成されたノズル基板20と、ノズル基板に積層され、ノズルに連通する圧力室41が形成された圧力室基板40と、圧力室の一壁部を構成し、変位により、圧力室内の圧力を変化させる振動板50と、振動板を挟んで圧力室に対向する位置に設けられ、電圧の印加により振動板を変位させる圧電素子60と、圧電素子に対向し、圧電素子に接続される配線87,91が設けられるとともに、圧力室にインクを導くインク流路88が形成された配線基板80と、を備えており、圧力室基板と配線基板とを互いに熱膨張率の等しい材料で形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に備えられるインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドのノズルからインク滴を吐出させて記録媒体に所望の画像を記録するインクジェット記録装置が知られている。このインクジェット記録装置は、多岐にわたる用途に使用され、それぞれの目的に沿った種類のインクや記録媒体が使用可能となっている。
インクジェットヘッドには、圧電素子の変位を利用して圧力室内のインクを加圧し、圧力室に連通するノズルからインク滴を吐出する圧電方式のヘッドがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
このような圧電方式のヘッドにおいて、高精細な画像を形成するためにノズルを高密度に配置したものがあり、例えば、ノズルとこのノズルに連通した圧力室との組を2次元状に配列させたものが知られている。ノズルを2次元状に配列させることで、ヘッドを小型化させることも可能となっている。
また、複数の圧力室にインクを供給するための共通流路(共通インク室)を圧力室とは異なる層に設けることで、さらなるヘッドの小型化、圧力室の高密度配置を行うことも知られている。さらに、圧電素子に接続される配線を、圧電素子が配置される層とは別の配線基板に設けることにより、多数の圧電素子を高密度に配置した場合でも十分な配線スペースを確保することも知られている。
【0004】
このような圧電方式のヘッドの製造方法として、流路などが形成された複数の基材を積層すると共に互いを接合するというものが知られている。接合を行う際には、高精度に位置決めを行うことにより、高精度な吐出特性を持つヘッドを作ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−264322号公報
【特許文献2】特開2006−281777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基材同士を接合する方法として、加熱を伴う接合方法が知られている。異なる種類の基材を加熱により接合する場合は、熱膨張率の違いにより位置ずれが生じる恐れがある。また、例えば、金属の配線や絶縁膜が形成されたシリコン基材の配線基材のように、複数の素材で構成された基材は、加熱に伴って反りが生じる恐れがある。反りが生じたまま接合すると位置ずれが生じやすく、流路の連通や配線の接続が確実に行われない可能性が高く、インク漏れや導通不良の発生要因となる。また、仮に反ったまま位置ずれなく接合できたとしても、反りの応力によって接合部分が剥がれやすくなり、ヘッドの耐久性が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、基材同士を加熱接合する際の反りを抑制し、接合の位置精度や耐久性を向上させ、吐出精度、信頼性に優れるインクジェットヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、インクジェットヘッドにおいて、
インクを吐出するノズルが形成されたノズル基板と、
前記ノズル基板に積層され、前記ノズルに連通する圧力室が形成された圧力室基板と、
前記圧力室のインクを前記ノズルから吐出させるための力を付与するアクチュエータと、
前記アクチュエータに対向し、前記アクチュエータに接続される配線が設けられるとともに、前記圧力室にインクを導くインク流路が形成された配線基板と、を備え、
前記圧力室基板と前記配線基板とが互いに熱膨張率の等しい材料で形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記圧力室基板と前記配線基板は、同一の材料で形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記圧力室基板と前記配線基板は、シリコンで形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記ノズル基板は、前記圧力室基板及び前記配線基板と互いに熱膨張率の等しい材料で形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記ノズル基板は、前記圧力室基板及び前記配線基板と同じ材料で形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記ノズル基板は、シリコンで形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、圧力室基板と配線基板とが互いに熱膨張率の等しい材料で形成されているので、加熱時の基板の反りを抑制する効果がある。
これにより、隣接する基材との接合を高精度なものにすることができ、また、接合後の反り応力も軽減される。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、圧力室基板と配線基板とが互いに同一の材料で形成されているので、加熱時の基板の反りを抑制する効果がある。
これにより、隣接する基材との接合を高精度なものにすることができ、また、接合後の反り応力も軽減される。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、圧力室基板と配線基板をシリコンで形成することにより、微細な加工も可能となり、各基板の加工精度を向上させることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、圧力室基板と配線基板とノズル基板とが互いに熱膨張率の等しい材料で形成されているので、加熱時の基板の反りを抑制する効果がある。
これにより、隣接する基材との接合を高精度なものにすることができ、また、接合後の反り応力も軽減される。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、圧力室基板と配線基板とノズル基板とが互いに同一の材料で形成されているので、加熱時の基板の反りを抑制する効果がある。
これにより、隣接する基材との接合を高精度なものにすることができ、また、接合後の反り応力も軽減される。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、圧力室基板、配線基板及びノズル基板をシリコンで形成することにより、微細な加工も可能となり、各基板の加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】インクジェット記録装置の要部を示す模式図。
【図2】インクジェットヘッドの斜視図。
【図3】ノズルプレートの下面図。
【図4】インクジェットヘッドの縦断面図。
【図5】図4において圧電素子の周囲を拡大視した図。
【図6】インクジェットヘッドを組み立てる際の接合工程を説明する図。
【図7】図6において圧電素子の周囲を拡大視した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、インクジェットヘッドについて説明する。本発明に係るインクジェットヘッドは、インクジェット記録装置に備えられている。
<インクジェット記録装置>
図1は、インクジェット記録装置1の要部を示す模式図である。
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、記録媒体Pを矢印Zの方向(以下、搬送方向Zという)へ搬送する搬送部2を備えている。記録媒体Pとしては、紙や布帛のほか、インク吸収性の無いプラスチックフィルムや金属類等を用いることが可能であり、特に限定されない。なお、ここでの紙とは、インク吸収性を有するインクジェットプリンタ専用紙は勿論のこと、インク吸収性の弱いコート紙やアート紙、及び普通紙を含むものである。
【0022】
搬送部2の上方には、搬送部2上の記録媒体Pへインク滴Dを吐出するインクジェットヘッド3が配設されている。このインクジェットヘッド3には、インク滴Dを吐出する複数のノズル11が、図中のX方向及びY方向に配列されている(図2参照)。
搬送部2、インクジェットヘッド3は、制御部5に接続されており、この制御部5により制御される。
【0023】
図2は、インクジェットヘッド3の斜視図である。
この図に示すように、インクジェットヘッド3はその下端にインク滴Dを吐出する複数のノズル11が形成されたノズルプレート20を備えている。
図3は、ノズルプレート20の下面図である。
図3に示すように、ノズル11は、X方向に8個並設されてノズル列11aを構成しており、このノズル列11aがY方向に8列並設されてノズルグループ11bを構成している。より詳しくは、ノズルグループ11bは、全てのノズル列11aにおける各ノズル11のX方向の位置が1列おきに僅かずつ重なるとともに、全体として全てのノズル11のX方向の位置が僅かずつ重なるように、各ノズル11のX方向の位置をずらして構成されている。そして、このノズルグループ11bがY方向に2組並設されている。
【0024】
<インクジェットヘッドの構成>
図4は、インクジェットヘッドの縦断面図であり、図5は、図4において圧電素子の周囲を拡大視した図である。
インクジェットヘッド3は、ノズルプレート20、中間プレート30、圧力室プレート40の3枚の基板が積層されて構成されているヘッド基板と、配線基板80と、ヘッド基板と配線基板とを接続する部材とが積層されて構成されている。
【0025】
(ノズルプレート)
図4,図5に示すように、インクジェットヘッド3は、インクを吐出する複数のノズル11が形成されたノズル基板としてのノズルプレート20を備えている。ノズルプレート20は、ノズル11からインクと下方に吐出する際にインクジェットヘッド3の最下層に位置する。ノズルプレート20は、シリコンを基材としており、ドライエッチングにより、インク流路12及びノズル11が形成されている。
【0026】
(中間プレート)
中間プレート30は、ガラスで構成された基板であり、ノズル11へ通じるインク流路31と、後で説明する、圧力室プレート40に設けられた圧力室41とインク流路42を接続するインク流路32とが形成されている。インク流路31,32を形成する方法の一例としては、サンドブラスト法が挙げられる。
中間プレート30は、ノズルプレート20と接合されている。接合の方法としては、陽極接合を挙げることができる。ここで、陽極接合とは、中間プレート30を加熱(300℃〜500℃)し、ノズルプレート20と中間プレート30との間に電圧を印加し、静電引力により両者を接合する方法である。陽極接合を用いることにより、両者を接着するための接着剤が不要となり、インク溶剤による耐久性劣化の恐れがなく、信頼性を高めることができる。
インク流路31は、中間プレート30をノズルプレート20に積層した際に、インク流路12に連通する位置に形成されている。
【0027】
(圧力室プレート)
圧力室プレート40(圧力室基板)は、ノズルプレート20と熱膨張率の等しい材料、具体的には、ノズルプレート20を形成する材料と同一材料のシリコン基板で構成されており、圧力室41と、圧力室41へのインク流路となるインレット(絞り流路)42とが形成されている。圧力室41及びインレット42を形成する方法の一例としては、ドライエッチングが挙げられる。
圧力室プレート40は、ガラス基板である中間プレート30と陽極接合により接合されている。接合に際しては、圧力室41が中間プレート30に形成されたインク流路31と連通するように位置合わせがなされている。ここでの陽極接合も上記中間プレート30の接合と同じ方法である。圧力室プレート40には、ノズル11から吐出するインクを貯留する圧力室41が圧力室プレート40の厚さ方向に貫通するように形成されている。
【0028】
圧力室プレート40には、圧力室41へのインク流路となるインレット(絞り流路)42が当該圧力室プレート40の厚さ方向に貫通するように形成されている。インレット42は、ドライエッチングにより、他のインク流路より細くなるように形成されている。このことにより、流路抵抗をインレット42で規定することになり、所望の吐出特性(液滴径、吐出周波数等)を実現することが可能となる。また、インレット42における流路抵抗等のパラメータが吐出特性に影響するが、インレット42を高精度加工が可能なシリコンを基材とする圧力室プレート40に形成しているので、加工のばらつきも少なく、吐出特性も良好なものとなる。
圧力室41とインレット42は、圧力室プレート40においては互いに独立するように形成されているが、中間プレート30に圧力室プレート40を積層した際に、中間プレート30に形成されたインク流路32を介して連通される。従って、インクは、インレット42、インク流路31を通って圧力室41に貯留される。
【0029】
(振動板)
圧力室プレート40には、振動板50が設けられている。振動板50は、インレット42を回避しつつ、圧力室41の開口を覆うように圧力室プレート40に設けられている。すなわち、振動板50は、圧力室41の一壁部を構成している。
振動板50は、薄板状に形成されており、厚さ方向への変位(弾性変形)により圧力室41内の圧力を変化させることができる。
【0030】
(圧電素子)
振動板50には、当該振動板50を挟んで圧力室41に対向する位置に圧電素子60が設けられている。
圧電素子60は、PZT(lead zirconate titanate)からなるアクチュエータであり、圧力室41のインクをノズル11から吐出させるための力を付与するものである。
圧電素子60は、上面側及び下面側から二つの電極61,62により挟まれ、下面側の電極61が振動板5上に設けられている。圧電素子60及び電極61,62は、振動板50にエッチング等の方法でパターニング形成することにより設けられている。
電極61,62に電圧を印加すると、電極61,62に挟まれた圧電素子60が変位し、圧電素子60の変位により振動板50も変位する。この振動板50の動作により、圧力室41内のインクがノズルからインク滴D(図1参照)として吐出される。
【0031】
(接合部)
振動板50には、絶縁層としての接合部70が設けられており、接合部70を介して、圧力室プレート40が配線基板80と接合されている。
接合部70は、樹脂で形成されている。ここで、使用される樹脂としては、耐インク性(インクによって溶解、性質が変化しない等)を有しており、絶縁材料であれば、特に制限はない。例えば、エポキシ系、ポリイミド系、ポリアミド系、ポリウレタン系、シリコーン系などの樹脂を用いることができる。また、樹脂の中でも、感光性樹脂を用いることがより好ましい。感光性樹脂は、露光、現像を行うことにより微細なパターンを形成することができるものであり、例えば、Du Pont社製のPerMX3000シリーズなどの感光性樹脂を用いることができる。
また、樹脂以外の材料であっても、絶縁性を有する各種材料を使用してもよい。
【0032】
接合部70は、圧力室プレート40に形成されたインレット42と、後で説明する、配線基板80に設けられたインク流路88とを連通するようにしてインク流路72が形成された柱状部材として構成されている。
接合部70には、当該振動板50を挟んで圧力室41に対向する位置に圧電素子60及び電極61,62を収容する空間71が接合部70の厚さ方向に貫通するように形成されている。空間71は、各圧電素子60を個別に収容するように複数形成されている。
接合部70には、空間71とは独立してインク流路72が接合部70の厚さ方向に貫通するように形成されている。
接合部70は、インクジェットヘッド3における、圧電素子60が設けられた領域より外側の領域においては、領域のほぼ全面に存在し、圧力室プレート40と配線基板80を接合している。
【0033】
(配線基板)
接合部70には、配線基板80が積層され、接合されている。配線基板80は、ノズルプレート20及び圧力室プレート40と熱膨張率の等しい材料、具体的には、ノズルプレート20及び圧力室プレート40を形成する材料と同一材料のシリコンを基材としている。
配線基板80の下面には、2層の酸化シリコンの絶縁層82,83が形成され、上面には、同じく酸化シリコンの絶縁層84が形成されている。絶縁層82,83のうち、下方に位置する絶縁層83は、接合部70の上面に当接し、接合されている。
【0034】
配線基板80には、電極61,62に駆動電圧を印加して圧電素子60を変位させるために貫通電極85を通す電極用貫通孔(スルーホール)86が配線基板80の厚さ方向に形成されている。貫通電極85の下端には、水平方向に延在するアルミ配線87の一端が接続されており、このアルミ配線87の他端には、圧電素子60上面の電極62に設けられたスタッドバンプ63が、空間71内に露出した半田64を介して接続されている。アルミ配線87は、配線基板80の下面の2層の絶縁層82,83によって挟まれて保護されている。
配線基板80の上下両面に設けられた絶縁層82,83,84は、アルミ配線87及び銅配線91と、配線基板80そのもの(シリコン)とを絶縁するために設けられている。
配線基板80の上面には、絶縁層84を挟んで銅配線91が設けられ、銅配線91には保護層90が設けられている。保護層90は、上方の共通インク室100を積層、接合する感光性の接着剤であるとともに、銅配線91を保護する保護層となっている。銅配線91は、水平方向に延在されて、一端が貫通電極85の上端に接続されるとともに、他端がフレキシブル基板(図示略)に接続されている。フレキシブル基板はドライバに接続され、ドライバによる制御の下、圧電素子60を駆動(変位)させる。
配線基板80には、インクを圧力室41に導くためのインク流路88が配線基板80の厚さ方向に貫通するように形成されている。インク流路88は、接合部70に配線基板80を積層した際に、インク流路72に連通するように形成されている。
【0035】
(保護層)
配線基板80の上面(接合部70が設けられた面の反対側)には、絶縁層としての保護層90が設けられており、配線基板80上面に設けられている銅配線91を保護している。保護層90を構成する材料は、接合部70と同じ熱膨張率を有する材料、さらには、同一の材料が用いられる。
保護層90には、インクを圧力室41に導くためのインク流路92が保護層90の厚さ方向に貫通するように形成されている。インク流路92は、配線基板80に保護層90を積層した際に、配線基板80に形成されているインク流路88に連通するように形成されている。
【0036】
(共通インク室)
配線基板80の上面には、保護層90を介して共通インク室100が設けられている。共通インク室100の壁面を構成する部材は、接着剤などの固定手段により配線基板80に接合されている。
共通インク室100は、各層におけるインク流路を介して圧力室41に連通されている。共通インク室100は、全ての圧力室41にインク流路を介して連通されており、全ての圧力室41にインクを供給することができるように形成されている。
【0037】
<インクジェットヘッドの接合方法>
図6は、インクジェットヘッドを組み立てる際の接合工程を説明する図であり、図7は、図6において圧電素子の周囲を拡大視した図である。
図6(a),図7に示すように、インクジェットヘッド3を組み立てる際には、ノズルプレート20、中間プレート30、圧力室プレート40、振動板50、圧電素子60を積層、接合した第1のユニット200と、接合部70、配線基板80、保護層90を積層、接合した第2のユニット300とを予め製作しておく。
そして、図6(b)に示すように、第1のユニット200と第2のユニット300を接合する。接合する際には、第1のユニット200におけるスタッドバンプ63と第2のユニット300における半田64とが電気的に接続するように、かつ、第1のユニット200におけるインレット42と第2のユニット300におけるインク流路72とが連通するように、高精度に位置合わせが行われる。
そして、図6(c)に示すように、インク流路92を覆うように保護層90の上面に共通インク室100を接合する。
このように、第1のユニット200と第2のユニット300は、高精度に位置決めされて接合される必要がある。接合の際に位置ずれが生じると、電気的接続が不安定になって圧電素子60の駆動が正常に行われなくなるという不具合が生じるばかりでなく、流路抵抗が増加して吐出特性の変化や吐出精度の低下が起こってしまう。そのため、上記のインクジェットヘッド3においては、ノズル基板20、圧力室プレート40及び配線基板80をいずれもシリコン基材で形成した。これらを同じ材料で形成したことにより、接合の際に加熱した場合でも熱膨張率の違いによる位置ずれの発生が防止される。
【0038】
<作用・効果>
以上のように、インクジェットヘッド3によれば、圧力室プレート40と配線基板80とが互いに熱膨張率の等しい同一材料のシリコンで形成されているので、圧力室プレート40と配線基板80を加熱接合する際の、熱膨張率の違いによる伸び量の差に起因する位置ずれを抑制することができる。
これにより、圧力室プレート40側の流路と配線基板80側の流路との接合位置がずれたり、圧電素子60と配線基板80との接続位置がずれたりするのを抑制することができる。
よって、圧力室プレート40と配線基板80を高精度に接合することができる。
【0039】
さらに、ノズルプレート20も圧力室プレート40及び配線基板80と熱膨張率の等しい同一材料のシリコンで形成することにより、圧力室プレート40側の流路と配線基板80側の流路との接合位置がずれたり、圧電素子60と配線基板80との接続位置がずれたりするのを抑制することができる。また、ノズルプレート20の熱膨張に起因する圧力室プレート40の反りを抑制することができる。
よって、ノズルプレート20、圧力室プレート40及び配線基板80を高精度に接合することができる。
このように、ノズルプレート20、圧力室プレート40及び配線基板80を高精度に接合することで、インク流路における損失が少なくなり、インク吐出のばらつきを抑制することができる。
また、ノズルプレート20、圧力室プレート40及び配線基板80をシリコンで形成することにより、微細な加工も可能となり、加工精度を向上させることができる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の本質的部分を変更しない範囲内で自由に設計変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、ノズルプレート、圧力室プレート及び配線基板を全て同一のシリコン材料で形成したが、各プレート又は基板全体として熱膨張率が等しくなるように構成することができれば、各プレート又は基板を必ずしも同一の材料から形成する必要はない。
また、上記実施形態においては、圧力室プレートと振動板を別個の部材として構成したが、圧力室プレートの一部を薄板状に形成し、その薄板部分を振動板として用いてもよい。この場合、振動板としての別個の部材は不要となり、薄板部分の上面に圧電素子が設けられる。
【符号の説明】
【0041】
1 インクジェット記録装置
3 インクジェットヘッド
11 ノズル
20 ノズルプレート(ノズル基板)
40 圧力室プレート(圧力室基板)
41 圧力室
50 振動板
60 圧電素子(アクチュエータ)
63 スタッドバンプ
64 半田
80 配線基板
85 貫通電極
87 アルミ配線
88 インク流路
91 銅配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルが形成されたノズル基板と、
前記ノズル基板に積層され、前記ノズルに連通する圧力室が形成された圧力室基板と、
前記圧力室のインクを前記ノズルから吐出させるための力を付与するアクチュエータと、
前記アクチュエータに対向し、前記アクチュエータに接続される配線が設けられるとともに、前記圧力室にインクを導くインク流路が形成された配線基板と、を備え、
前記圧力室基板と前記配線基板とが互いに熱膨張率の等しい材料で形成されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記圧力室基板と前記配線基板は、同一の材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記圧力室基板と前記配線基板は、シリコンで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記ノズル基板は、前記圧力室基板及び前記配線基板と互いに熱膨張率の等しい材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記ノズル基板は、前記圧力室基板及び前記配線基板と同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記ノズル基板は、シリコンで形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のインクジェットヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−218641(P2011−218641A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89193(P2010−89193)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】