インクジェットヘッド
【課題】圧電基板を挟んで設けられる電極と駆動回路との間の電気的接続を容易に行うことができると共に圧電基板から発生した熱を効率的に放熱することが可能なインクジェットヘッドの提供。
【解決手段】複数チャネル11と,分極された圧電基板13がチャネル11の一壁面を形成するように積層されてなるヘッドチップ1を有し,チャネル11内部の圧電基板13を個別に変形させインクを吐出するインクジェットヘッドH1であって、圧電基板13の表面及び隣接するチャネル11間の隔壁表面に個別電極が形成されると共にチャネル11と反対側の面に共通電極16が形成され,配線基板2端部はヘッドチップ1との接合面から該接合面と平行で,且つ,チャネル11列方向と直交する方向に張り出しており,個別電極及び共通電極16が,配線電極21,22を介して配線基板2の端部まで電気的に引き出されている。
【解決手段】複数チャネル11と,分極された圧電基板13がチャネル11の一壁面を形成するように積層されてなるヘッドチップ1を有し,チャネル11内部の圧電基板13を個別に変形させインクを吐出するインクジェットヘッドH1であって、圧電基板13の表面及び隣接するチャネル11間の隔壁表面に個別電極が形成されると共にチャネル11と反対側の面に共通電極16が形成され,配線基板2端部はヘッドチップ1との接合面から該接合面と平行で,且つ,チャネル11列方向と直交する方向に張り出しており,個別電極及び共通電極16が,配線電極21,22を介して配線基板2の端部まで電気的に引き出されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルからインクを微小な液滴状に吐出させることによって画像を記録するためのインクジェットヘッドとして、圧電素子の分極方向と平行な方向の電界を発生させることにより圧電素子を伸縮変形させる伸縮モードタイプのインクジェットヘッドが知られている(例えば特許文献1)。このインクジェットヘッドは、圧力室の一壁面を薄い振動板とし、この振動板の上面に圧力室毎に圧電素子を個別に積層している。各圧電素子は、振動板の上面に積層された共通電極上に設けられることで各圧電素子の上面に積層された個別電極との間に挟まれており、これら電極間に圧電素子の分極方向と平行な電界を発生させて圧電素子を個別に伸縮変形させ、圧力室内のインクに吐出のための圧力を付与する。このため、各圧力室を個別に吐出駆動させることができる。
【0003】
しかし、このような伸縮モードタイプのインクジェットヘッドでは、各圧力室の一壁面として薄い振動板を形成しなくてはならず、しかも、圧力室毎に個別に圧電素子を積層形成しなくてはならず、製造工程の煩雑さの問題がある。
【0004】
そこで、従来、各圧力室の開放面を共通の圧電基板によって覆うことで、圧電素子をヘッドチップの表面に配置させると共に、個別に形成する手間を省くようにしたインクジェットヘッドも提案されている(特許文献2〜5)。
【0005】
この特許文献2、3記載のインクジェットヘッドは、伸縮モードタイプの圧電素子とせん断モードタイプの圧電素子とを積層させ、外側を伸縮モードで駆動する圧電素子とし、内側をせん断モードで駆動する圧電素子としたものである。
【0006】
しかし、各圧電素子の層間に個別に電極が必要であり、特に圧力室内に個別に電極を形成する必要があり、電極形成が極めて煩雑であると共に、これら各電極と駆動回路との間の配線接続を行うことが極めて難しいという問題がある。特に圧電素子は変形効率を考えて厚みが極めて薄く形成されるため、圧電素子を挟んで設けられる電極を短絡させることなくそれぞれ駆動回路と電気的に接続させることは極めて困難である。
【0007】
また、このようなインクジェットヘッドでは、通常、特許文献4、5に記載のように、ヘッドチップの最も外側の圧電素子表面に個別電極と共通電極を引き出し、その上に、駆動回路との電気的接続を行うための配線が形成されたフレキシブル配線ケーブルが積層される。
【0008】
フレキシブル配線ケーブルは、樹脂等の熱伝導率の低い材料で構成されているため、駆動により発生した圧電素子で発生した熱が十分に放熱されず、この熱がインクの粘度を低下させて吐出特性に悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−307832号公報
【特許文献2】特開平10−58675号公報
【特許文献3】特開2006−15764号公報
【特許文献4】特開2007−30417号公報
【特許文献5】特開2010−36562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、ヘッドチップに全てのチャネルの一壁面を共通に構成する圧電基板が積層され、該圧電基板を駆動させるインクジェットヘッドにおいて、圧電基板を挟んで設けられる電極と駆動回路との間の電気的接続を容易に行うことができると共に圧電基板から発生した熱を効率的に放熱することが可能なインクジェットヘッドを提供することを課題とする。
【0011】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0013】
1.
インクの入口と出口とがそれぞれ相反する端面に開口する複数のチャネルが形成されると共に、分極された圧電基板が、前記チャネルの一壁面を形成するように積層されてなるヘッドチップを有し、前記チャネルの内部に臨む部分の前記圧電基板を該チャネル毎に個別に変形させることにより、前記チャネル内のインクを該チャネルの出口側に配置されたノズルから吐出するインクジェットヘッドであって、
前記チャネル内における前記圧電基板の表面及び隣接する前記チャネル間の隔壁表面にそれぞれ個別電極が形成されると共に、前記圧電基板の前記チャネルと反対側の面に共通電極が形成され、
前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口が配置される端面に、前記個別電極と電気的に接続される個別引き出し電極が前記個別電極毎に独立し、且つ、前記共通電極と短絡しないように形成されると共に、前記共通電極と電気的に接続される共通引き出し電極が前記個別引き出し電極と短絡しないように形成され、
一端が前記個別引き出し電極及び前記共通引き出し電極とそれぞれ電気的に接続される配線電極が形成されてなる配線基板が、前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口が配置される端面に接合されると共に、前記配線基板の端部は前記ヘッドチップとの接合面から該接合面と平行で、且つ、チャネル列方向と直交する方向に張り出しており、前記個別電極及び前記共通電極が、前記配線電極を介して前記配線基板の前記端部まで電気的に引き出されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
2.
前記共通引き出し電極は、前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口が配置される端面において、チャネル列方向における該チャネル列の外側の領域に形成されていることを特徴とする前記1記載のインクジェットヘッド。
3.
前記個別引き出し電極は、前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口側の端面において、該チャネルの入口を取り囲むように形成されており、
前記配線基板は、前記ヘッドチップの前記チャネルに対応する位置に、個別のインク流路孔が貫通形成されていると共に、前記個別引き出し電極と電気的に接続される前記配線電極の一端は、前記インク流路孔を取り囲むように形成されていることを特徴とする前記1又は2記載のインクジェットヘッド。
4.
前記ヘッドチップはチャネル列を1列だけ有しており、
前記配線電極の他端は、前記配線基板における前記ヘッドチップの前記共通電極が形成されている側の端部と反対側の端部に延びて配列されていることを特徴とする前記1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
5.
前記ヘッドチップはチャネル列を2列有し、該ヘッドチップにおいて2列のチャネル列を間に挟むようにそれぞれ前記圧電基板が相反する外面に配置され、該圧電基板の外面にそれぞれ前記共通電極が形成されており、
前記配線電極の他端は、前記チャネル列毎に前記配線基板の相反する端部に延び、各端部にそれぞれ配列されていることを特徴とする前記1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
6.
前記配線電極の一端は、前記配線基板における前記ヘッドチップとの接合面に配置されると共に、他端は、該配線基板を貫通して前記ヘッドチップとの接合面と反対面に引き出され、該反対面において、前記チャネル列毎に前記配線基板の相反する端部に延び、各端部にそれぞれ配列されていることを特徴とする前記5記載のインクジェットヘッド。
7.
前記圧電基板は、厚み方向の分極方向が互いに反対方向となるように配置された2枚の圧電基板が一体に積層されることによって形成されてなることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
8.
前記圧電基板は、1枚の圧電基板と非分極のセラミックス基板とが一体に積層されることによって形成されてなり、前記非分極のセラミックス基板側が外側となるように前記ヘッドチップに積層されていることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
9.
前記圧電基板は、1枚の圧電基板と1枚の金属板とが一体に積層されることによって形成されてなり、前記金属板側が外側となるように前記ヘッドチップに積層され、前記金属板が前記共通電極とされていることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
10.
前記ヘッドチップの前記共通電極は、ヒートシンクと熱的に接続されていることを特徴とする前記1〜9のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
11.
前記ヒートシンクは、前記共通電極の前記チャネルに対応する領域を避けて前記共通電極に接触していることを特徴とする前記10に記載のインクジェットヘッド。
12.
前記ヒートシンクは、アルミニウムで構成され、少なくとも前記共通電極に接触する表面がアルマイト処理されていることを特徴とする前記11に記載のインクジェットヘッド。
13.
前記ヘッドチップを保持する保持部材が前記ヒートシンクとして機能することを特徴とする前記10〜12のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
14.
前記チャネル間の隔壁の少なくとも一部がせん断モード型の圧電素子で構成されていることを特徴とする前記1〜13のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ヘッドチップに全てのチャネルの一壁面を共通に構成する圧電基板が積層され、該圧電基板を駆動させるインクジェットヘッドにおいて、圧電基板を挟んで設けられる電極と駆動回路との間の電気的接続を容易に行うことができると共に圧電基板から発生した熱を効率的に放熱することが可能なインクジェットヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るインクジェットヘッドの第1の実施形態を示す分解斜視図
【図2】図1に示すインクジェットヘッドの縦断面図
【図3】図1に示すヘッドチップを前端面側から見た分解斜視図
【図4】ヘッドチップの駆動の様子を説明する図
【図5】個別引き出し電極と共通引き出し電極を示す図
【図6】ヘッドチップの製造方法を説明する図
【図7】ヘッドチップの製造方法を説明する図
【図8】ヘッドチップの製造方法を説明する図
【図9】本発明に係るインクジェットヘッドの第2の実施形態を示す正面図
【図10】図9の(x)−(x)線に沿う断面図
【図11】本発明に係るインクジェットヘッドの第3の実施形態を示す正面図
【図12】図11の(xii)−(xii)線に沿う断面図
【図13】本発明に係るインクジェットヘッドの第4の実施形態を示す正面図
【図14】図13の(xiv)−(xiv)線に沿う断面図
【図15】圧電基板の他の態様を示す図
【図16】圧電基板の更に他の態様を示す図
【図17】ヘッドチップ及びヒートシンク部分の断面図
【図18】筐体フレームに収容したインクジェットヘッドを一部断面で示す図
【図19】ヘッドチップの他の態様を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係るインクジェットヘッドの第1の実施形態を示す分解斜視図、図2は、図1に示すインクジェットヘッドの縦断面図、図3は、図1に示すヘッドチップを前端面側から見た分解斜視図、図4は、ヘッドチップの駆動の様子を説明する図、図5は、個別引き出し電極と共通引き出し電極を示す図である。
【0018】
図中、H1はインクジェットヘッド、1はヘッドチップ、2は配線基板、3は外部配線部材、4はインクマニホールドである。
【0019】
ヘッドチップ1は、前端面1a及び後端面1bと、これら前端面1a及び後端面1bに挟まれた上下左右の4つの側端面とを有する六面体からなり、このうち相反する位置にある前端面1aと後端面1bとにかけて、吐出されるインクが貯留されるインク流路となる多数のチャネル11が並設され、1列のチャネル列を形成している。各チャネル11は前端面1aと後端面1bにそれぞれ開口してストレート状に形成されており、前端面1a側の開口がインクの出口、後端面1b側の開口がインクの入口とされている。
【0020】
ヘッドチップ1の前端面1aには、ノズルプレート12が貼着されている。ノズルプレート12は、各チャネル11に対応する位置に、チャネル11の内部と連通しているノズル12aが開口形成されている。
【0021】
ヘッドチップ1は、それぞれ厚み方向に分極処理された2枚の圧電層13a、13bを、図中矢印で示す分極方向が反対方向となるように一体に積層してなる圧電基板13が、該ヘッドチップ1の上側端面又は下側端面のいずれかを構成するように積層されている。本実施形態では、圧電基板13がヘッドチップ1における図中の下側端面を構成している。
【0022】
このようにヘッドチップ1の外側の端面に圧電基板13が配置されることにより、圧電基板13の放熱を行い易くなる。
【0023】
各チャネル11の内部には、圧電基板13の圧電層13aが臨んでいる。すなわち、圧電基板13は、全てのチャネル11に亘って共通に各チャネル11の一壁面(本実施形態では底壁11a)を形成している。
【0024】
各チャネル11内には、圧電基板13の圧電層13aによって形成される底壁11aと、隣接するチャネル11、11間の隔壁14の表面との3面にかけて、チャネル11の全長に亘る個別電極15がそれぞれ形成されている。一方、ヘッドチップ1の下側端面を構成している圧電基板13の外面(圧電層13bの外側面)には共通電極16が形成されている。これにより、圧電基板13は、チャネル11毎の個別電極15と1つの共通電極16とによって挟まれた状態となっている。
【0025】
共通電極16は、圧電基板13の外面の全面に亘って形成されている。これにより、圧電基板13は、共通電極16からなる金属面が放熱面となるので圧電基板13の放熱が一層良好となる。
【0026】
このようなヘッドチップ1のインク吐出時の駆動動作について図4を用いて説明する。
【0027】
個別電極15と共通電極16との間に電位差が生じていない状態では、圧電基板13は平坦な基板状態のままであり、チャネル11内の容積に変動はない(図4(a))。この状態から個別電極15に所定の電圧+Vを印加すると共に、共通電極16を接地すると、個別電極15と共通電極16との間に電界Eが生じる。圧電基板13の各圧電層13a、13bは、図4中の白抜き矢印で示すように、基板の厚さ方向に分極処理されているため、このとき発生した電界は、圧電基板13の分極方向と平行な方向の電界Eとなる。
【0028】
ここで、各圧電層13a、13bには、電界が作用した時にd31モードで伸縮動作するタイプの圧電素子が使用され、互いの分極方向が外側に向くように積層されている。これにより、それぞれ圧電・電歪効果によって、圧電層13aは電界Eに対して直交する方向(層面と平行な方向)に縮むように変形し、圧電層13bは電界Eに対して直交する方向(層面と平行な方向)に伸びるように変形する。その結果、このチャネル11の底壁11aを形成している部分の圧電基板13は、外側(図示下側)に凸湾曲するように変形し、チャネル11の容積を増大させる(図4(b))。
【0029】
その後、個別電極15の電位を元に戻すと、圧電基板13は図4(a)のように平板状に戻るため、図4(b)の状態からチャネル11の容積が縮小されることにより、該チャネル11内の圧力が増大し、チャネル11内のインクに吐出のための圧力が付与される。これによりノズル12aからインク滴が吐出される。
【0030】
このようにヘッドチップ1を駆動させるため、チャネル11内面に形成された個別電極15と、ヘッドチップ1の外面に形成された共通電極16とを駆動回路(図示せず)と電気的に接続させる必要がある。そこで、本実施形態では、ヘッドチップ1の一つの面に、これら個別電極15と共通電極16とをまとめて引き出すようにしている。
【0031】
すなわち、各チャネル11のインクの入口が配置されるヘッドチップ1の後端面1bに、個別電極15と電気的に接続される個別引き出し電極17と、共通電極16と電気的に接続される1つの共通引き出し電極18とが形成されている。個別引き出し電極17は個別電極15毎にそれぞれ独立していると共に、共通電極16及び共通引き出し電極18のいずれとも短絡しないように形成されている。
【0032】
個別引き出し電極17は、一端がチャネル11内の個別電極15と電気的に接続され、他端側がヘッドチップ1における圧電基板13と反対側の端面(上側端面)1c側に向けて伸びている。
【0033】
圧電基板13を共通電極16との間で挟んでいる個別電極15の部分は、図5(a)に示すように、底壁11a上に形成されている部分15aであるため、この個別電極15の部分15aから個別引き出し電極17を引き出すことが好ましい。しかし、通常、圧電基板13は変形効率のために極めて薄く形成されるため、ヘッドチップ1の後端面1b側に面している圧電基板13の部分の面積は極めて小さく、共通電極16と短絡しないように個別電極15の部分15aから個別引き出し電極17を引き出すことは難しい。
【0034】
このため、個別引き出し電極17は、隔壁14の部分を利用して、個別電極15の隔壁14の表面に形成されている部分15bとも電気的に接続するようにしている。すなわち、個別引き出し電極17と個別電極15との接続部分は、個別電極15における底壁11a上に形成されている部分15aと、隔壁14の表面に形成されている部分15bとの双方と電気的に接続されるように、チャネル11の入口部分を取り囲むように形成されている(図5(a))。
【0035】
一方、共通引き出し電極18は、一端が共通電極16と電気的に接続され、他端側がヘッドチップ1の後端面1bにおいて上側端面1cに向けて伸びている。この共通引き出し電極18は、チャネル列方向における該チャネル列の外側の領域となるように、ヘッドチップ1の後端面1bにおける端部近傍に形成され、個別引き出し電極17と区別されて離隔している(図5(b))。
【0036】
このように、それぞれヘッドチップ1における異なる部位及び面に配置されている個別電極15及び共通電極16が、個別引き出し電極17及び共通引き出し電極18によってヘッドチップ1の後端面1bにまとめて引き出されているため、駆動回路との間の電気的接続は、この後端面1bのみにおいて行うことができるようになる。
【0037】
配線基板2は、ヘッドチップ1の各個別引き出し電極17と電気的に接続される配線電極21及び共通引き出し電極18と電気的に接続される配線電極22が同一面に形成された一枚の板状の部材である。この配線基板2に用いられる基板には、非分極のPZTやAlN−BN、AlN等のセラミックス材料からなる基板、低熱膨張のプラスチックやガラスからなる基板等を用いることができる。
【0038】
配線基板2の配線電極21、22が形成された面は、ヘッドチップ1の後端面1bの面積よりも大きな面積を有しており、図2に示すように、少なくともヘッドチップ1のチャネル11の並び方向(チャネル列方向)と直交する方向(図2中の上下方向)に延びてヘッドチップ1からそれぞれ大きく張り出している。
【0039】
個別引き出し電極17に対応する配線電極21は、一端がヘッドチップ1のチャネル11に対応する位置にあり、他端がチャネル列方向と直交する配線基板2の一端部(図1、図2における上端部)まで延びて並列している。各配線電極21の一端には、ヘッドチップ1が接合された際に各チャネル11の入口と対応する位置に、インク流路孔23がそれぞれ個別に貫通形成されている。
【0040】
ヘッドチップ1と配線基板2とは、各個別引き出し電極17と各配線電極21とが電気的に接続されると共に、共通引き出し電極18と配線電極22とが電気的に接続されるように位置決めされ、例えばNi等の金属粒子を含む接着剤を用いて接着される。
【0041】
このとき、配線基板2の各インク流路孔23は、それぞれヘッドチップ1のチャネル11の内部と連通する。このインク流路孔23の周囲には配線電極21が形成されているので、この配線電極21が、ヘッドチップ1の各チャネル11の入口を囲むように形成されている個別引き出し電極17と接合されることで、該チャネル11の入口を取り囲むため、各チャネル11の入口部分でインク漏れが発生するおそれはない。
【0042】
この配線基板2を接合することにより、ヘッドチップ1の各個別電極15と共通電極16は、個別引き出し電極17及び共通引き出し電極18を介して、配線電極21、22によって配線基板2の一端部まで電気的に引き出される。
【0043】
外部配線部材3は、駆動回路(図示せず)からの電気信号(電圧)を各個別電極15に印加すると共に共通電極16を接地するための配線31が一面に形成されており、例えば異方導電フィルム等によって、各配線電極21、22の他端が配列されている配線基板2の一端部側に接合されている。
【0044】
このような外部配線部材3としては、駆動回路との間を電気的に接続可能であれば特に問わないが、フレキシブル基板(FPC)を好ましく用いることができる。
【0045】
インクマニホールド4は、配線基板2のヘッドチップ1とは反対側の面の全面を覆う大きさを有する箱形状に形成されており、配線基板2に接合されることで、その内部に1つの共通インク室41を形成している。共通インク室41のインクは、配線基板2のインク流路孔23を介して、ヘッドチップ1の各チャネル11内に供給される。
【0046】
このインクジェットヘッドH1によれは、圧電基板13を挟んで設けられる個別電極15及び共通電極16を、個別引き出し電極17及び共通引き出し電極18によってヘッドチップ1の後端面1bにまとめて配列させることができ、この後端面1bに配線電極21、22を有する配線基板2を接合することで、個別電極15及び共通電極16を配線基板の2の一端部まで電気的に引き出すことができる。従って、この端部において駆動回路との間をつなぐ外部配線部材3と電気的に接続させることで、駆動回路との間の電気的接続を容易に行うことができる。
【0047】
また、ヘッドチップ1の後端面1bに配線基板2を接合しているため、圧電基板13を外面に露出させたままとすることができ、この圧電基板13の放熱に支障を来すことはない。しかも、共通電極16と電気的に接続される共通引き出し電極18を、ヘッドチップ1の後端面1bにおけるチャネル列の外側に設けたため、圧電基板13の表面で配線接続する必要がなく、この点でも圧電基板13の変形駆動や放熱に支障を来すことはない。
【0048】
次に、このインクジェットヘッドH1におけるヘッドチップ1の製造方法について図6〜図8を用いて説明する。
【0049】
一方の面にセラミックス基板を積層した圧電層13aと、一方の面の全面に共通電極16を蒸着やスパッタ等によって形成した圧電層13bとを用意し、これら圧電層13a、13b同士が直接接合されるように両者を貼り合わせる(図6(a))。
【0050】
各圧電層13a、13bの厚みは、それぞれ100μm〜600μmとすることが好ましい。
【0051】
各圧電層13a、13bは、貼り合わせ時に分極方向が反対方向となるように予め分極処理されており、圧電層13a、13bが貼り合わされることによって圧電基板13が形成される。
【0052】
次いで、セラミックス基板100における圧電基板13の積層面と反対面の全面にレジスト200を塗布し(図6(b))、このレジスト200の側から、後にチャネル11となる溝101をダイシングソー等を用いて形成する(図6(c))。各溝101は、セラミックス基板100の一端から他端にかけて一定幅で直線状に形成され、また、深さは、溝101の底面に圧電基板13の圧電層13aが露出する程度、例えば圧電層13aの表面から10〜20μm程度掘り下げるように加工を行う。
【0053】
次いで、溝101を加工した側から蒸着やスパッタ等によって、全面に例えばNi、Al等の電極用の金属膜300を成膜する(図7(a))。金属膜300は、各溝101内の底面(圧電層13aの表面)、両側面及びレジスト200の上面にかけて一体に成膜される。
【0054】
その後、レジスト200を溶解除去すると共に、このレジスト200上に成膜された部分の金属膜300を除去することにより、金属膜101を溝101毎に独立させ、溝101内の底面及び両側面のみに亘る個別電極15をそれぞれ形成する(図7(b))。
【0055】
次いで、各溝101の上方からセラミックス基板100と同じ材質のカバー基板102を接着することにより、各溝101の上方を閉塞する(図7(c))。これにより、各溝101はストレート状のチャネル11となり、隣接するチャネル11、11の間には隔壁14が形成される。
【0056】
その後、チャネル11が所望の長さとなるように、チャネル11の長さ方向と直交する方向のカットラインCに沿ってフルカットすることにより、ヘッドチップ1をそれぞれ切り出す(図8(a))。
【0057】
切り出されたヘッドチップ1は、チャネル11の入口となる後端面1bに対し、例えば個別引き出し電極17及び共通引き出し電極18となる部位が開口したドライフィルムをマスクとして用いて蒸着やスパッタを行うことで、これら個別引き出し電極17及び共通引き出し電極18を成膜する(図8(b))。蒸着は方向を変えて斜め方向から2回行うことで、各個別電極15及び共通電極16との電気的接続を確実に行うことができる。
【0058】
ヘッドチップ1には、チャネル11内の個別電極15の表面に保護膜(図示せず)を形成することもできる。保護膜を形成することによって水系インクを使用することができるようになる。保護膜としてはパリレン膜が好ましい。
【0059】
以上の製造方法によれば、圧電基板13に対するチャネル11毎に独立した個別電極15を、溝101の内面を含むセラミックス基板100の全面に対して金属膜300を形成した後、不要部分の金属膜300を除去するだけで容易に形成することができ、個別電極とチャネルとを位置決めする等の面倒な作業は不要である。
【0060】
前述の特許文献2(特開平11−307832号公報)や特許文献3(特開平10−58675号公報)に記載の従来技術では、チャンネル基板に接合される側の圧電基板の表面に個別電極をパターニングした後、チャンネル基板に接合するため、チャネルと個別電極を精度良く位置決めする必要がある。実際には、位置ずれをなくすことは困難であり、特許文献2や特許文献3に記載のように、個別電極の幅をチャネルの幅よりも小さくし、位置ずれが生じても有効電極面積がばらつきないようにしてヘッド毎の位置ずれのばらつきによる駆動効率のばらつきを抑えるようにしている。このように特許文献2や特許文献3に記載の技術では、個別電極の幅をチャネルの幅よりも小さくしているため圧電基板の変形領域が小さくなり駆動効率は低下してしまう。
【0061】
本実施形態の製造方法によれば、圧電基板13に対するチャネル11毎に独立した個別電極15を、圧電基板13とチャネルを構成するセラミックス基板100を接合後に個別電極を形成するので、チャネルにおける圧電基板13の全面に個別電極を精度良く形成できるため駆動効率が向上する。
【0062】
図9は第2の実施形態に係るインクジェットヘッドH2の正面図、図10は図9の(x)−(x)線に沿う断面図である。第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1と同一符号の部位は同一構成の部位を示している。
【0063】
このインクジェットヘッドH2は、以上説明した1列のチャネル列を備えたヘッドチップ1を2つ使用し、それぞれの共通電極16の形成面が外側となるように接合することによって一体とした2列のチャネル列を備えたヘッドチップ1Aを有している。各ヘッドチップ1の後端面1bには、上記同様、個別引き出し電極17と共通引き出し電極18とが形成されている。
【0064】
なお、ここに示す態様では、ノズルプレート12はヘッドチップ1毎に設けられているが、ヘッドチップ1A全体で1枚のノズルプレートとしてもよい。
【0065】
また、ヘッドチップ1Aは、2列のチャネル列で、図7(c)におけるカバー基板102の部分を共通にすることで、1枚のカバー基板102の両面にチャネル列が配列される態様としてもよい。
【0066】
配線基板2は、ヘッドチップ1Aに対して1枚だけ設けられ、両外面に配置された共通電極16、16からそれぞれ側方に張り出す大きさを有している。各配線電極21、22は、配線基板2のヘッドチップ1Aとの接合面に共に形成されており、その他端は、チャネル列毎にそれぞれ相反する上下両端部に分かれて延びている。外部配線部材3、3は、この配線基板2の上下各端部において各配線電極21、22と配線31とが対応するように電気的に接続される。
【0067】
また、インク流路孔23は、2列のチャネル列に対応して配線基板2にそれぞれ貫通形成されている。
【0068】
このインクジェットヘッドH2は、ヘッドチップ1Aの両外面に共通電極16、16の面が配置されているため、圧電基板13の変形駆動及び放熱に支障を来すおそれはない。
【0069】
なお、配線電極21、22は、ヘッドチップ1Aの共通電極16、16の後端面1b側の部分を跨ぐ形となるが、ヘッドチップ1Aと配線基板2との間は、個別引き出し電極17及び共通引き出し電極18の厚みと、配線電極21、22の厚みとを足し合わせた分の隙間が形成されるため、配線電極21、22が直に共通電極16、16と接触してしまうことはない。
【0070】
図11は第3の実施形態に係るインクジェットヘッドH3の正面図、図12は図11の(xii)−(xii)線に沿う断面図である。第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1、第2の実施形態に係るインクジェットヘッドH2と同一符号の部位は同一構成の部位を示している。
【0071】
このインクジェットヘッドH3は、ヘッドチップは第2の実施形態に係るインクジェットヘッドH2のヘッドチップ1Aと同一であるが、配線基板2の配線電極21が、ヘッドチップ1Aとの接合面の反対面(インクマニホールド4の接合面)に形成されている点でインクジェットヘッドH2と異なっている。
【0072】
すなわち、ヘッドチップ1Aの個別引き出し電極17と電気的に接続される配線電極21は、ヘッドチップ1Aとの接合面に、チャネル11と対応する位置に個別引き出し電極17との接続端21aが形成され、インク流路孔23を利用した貫通電極部21bを介してヘッドチップ1Aとの接合面の反対面まで引き出され、該反対面において外部配線部材3の配線31と接続されている。
【0073】
また、ヘッドチップ1Aの共通引き出し電極18と電気的に接続される配線電極22は、ヘッドチップ1Aとの接合面の共通引き出し電極18と対応する位置に該共通引き出し電極18との接続端22aが形成されている。この接続端22aの位置には、インク流路孔23と同様に貫通する貫通孔24が形成されており、この貫通孔24を利用した貫通電極部22bを介してヘッドチップ1Aとの接合面の反対面まで引き出され、該反対面において外部配線部材3の配線31と接続されている。
【0074】
このインクジェットヘッドH3によれば、配線基板2の各配線電極21、22は、ヘッドチップ1Aとの接合面と反対面に位置するため、共通電極16の後端面1b側の部分との短絡をより確実に回避できる。
【0075】
図13は第4の実施形態に係るインクジェットヘッドH4の正面図、図14は図13の(xiv)−(xiv)線に沿う断面図である。第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1、第2の実施形態に係るインクジェットヘッドH2及び第3の実施形態に係るインクジェットヘッドH3と同一符号の部位は同一構成の部位を示している。
【0076】
このインクジェットヘッドH4は、以上説明した2列のチャネル列を備えたヘッドチップ1Aを2つ使用し、合計4列のチャネル列を備えたインクジェットヘッドを構成している。各ヘッドチップ1A、1A間は、圧電基板13、13の変形駆動及び放熱を阻害しない程度の間隔Sが開けられており、この間隔Sにおいて放熱用の空気層が形成されている。
【0077】
この配線基板2は、その両面を利用して配線電極が形成されている。すなわち、各ヘッドチップ1Aのチャネル列において、外側(図13における最も上側及び最も下側)に位置するチャネル列の個別引き出し電極17と電気的に接続される配線電極21A及び共通引き出し電極18と電気的に接続される配線電極22Aは、第2の実施形態に係るインクジェットヘッドH2の配線基板2と同様に、ヘッドチップ1Aとの接合面に形成されているが、内側に位置するチャネル列の個別引き出し電極17と電気的に接続される配線電極21B及び共通引き出し電極18と電気的に接続される配線電極22Bは、第3の実施形態に係るインクジェットヘッドH3の配線基板2と同様にして、配線基板2を貫通し、ヘッドチップ1Aとの接合面と反対面に引き出されている。
【0078】
このため、配線基板2の両端部には、それぞれ2枚ずつの外部配線部材3A、3Bが接続され、各配線電極21A、21B、22A、22Bと配線31とが電気的に接続されている。
【0079】
このインクジェットヘッドH4によれば、圧電基板13の変形駆動及び放熱に支障を来すことなく、4列のチャネル列を有するインクジェットヘッドを構成することができる。
【0080】
以上説明したヘッドチップ1、1Aでは、伸縮モードで駆動する圧電基板が、分極方向を反対方向に向けた2層の圧電層13a、13bからなるバイモルフ型の圧電基板13を使用したが、圧電基板13はこれに限らない。以下、その他の態様を示す。
【0081】
図15(a)は、圧電層として1層の圧電層13bのみ使用したユニモルフ型の圧電基板13Aを示している。
【0082】
圧電基板13Aは、圧電層13bと非圧電層13cとを一体に貼り合わせてなるものであり、圧電層13b側がチャネル11に臨むように配置されている。そして、非圧電層13cの外面の全面に共通電極16が形成されている。
【0083】
非圧電層13cには、例えば分極処理されていないセラミックス、シリコン等を用いることができる。その厚みは1μm〜10μmとすることが好ましい。
【0084】
この圧電基板13Aでは、個別電極15と共通電極16との間で電界を発生させると、圧電層13bは層面と平行な方向に伸びるように変形するが、非圧電層13cは伸縮しないため、その結果、圧電基板13Aは、内側(図示上側)に凸湾曲するように変形駆動する。
【0085】
図15(b)も、圧電層として1層の圧電層13bのみ使用したユニモルフ型の圧電基板13Bを示している。
【0086】
この圧電基板13Bは、圧電層13bと弾性金属板13dとを一体に貼り合わせてなるものであり、圧電層13b側がチャネル11に臨むように配置されている。
【0087】
弾性金属板13dには、例えばステンレス鋼(SUS)等を用いることができる。その厚みは10μm〜20μmとすることが好ましい。
【0088】
この圧電基板13Bでは、弾性金属板13d自体を共通電極16として使用することができるため、共通電極を別途形成する必要がない。
【0089】
この圧電基板13Bも、個別電極15と共通電極16との間で電界を発生させると、圧電層13bは層面と平行な方向に伸びるように変形するが、弾性金属板13dは伸縮しないため、この場合も、圧電基板13Bは、内側(図示上側)に凸湾曲するように変形駆動する。
【0090】
以上の実施形態では、圧電基板を伸縮モードで駆動する圧電素子を用いるものを例示したが、圧電基板には例えば図16に示すように、せん断モード型の圧電素子を用いるようにしてもよい。この場合、圧電基板の圧電層13eとして、白抜き矢印で示す分極方向が層面と平行な方向となる圧電素子が用いられる。この圧電基板13Cでは、チャネル11内の個別電極15と共通電極16との間で圧電層13eの分極方向と直交する方向の電界が発生し、この個別電極15と共通電極16との間の圧電層13eがせん断変形する。
【0091】
また、本発明において、ヘッドチップ1の放熱をより良好とするため、図17に示すように、共通電極16をヒートシンク5と熱的に接続するようにしてもよい。圧電基板13の表面に熱伝導率の高い金属製の共通電極16が形成され、この共通電極16がヒートシンク5と熱的に接続することで、圧電基板13で発生した熱を共通電極16からヒートシンク5に伝達させてより効率的に外部に放散できる。
【0092】
ヒートシンク5は、図示するように、共通電極16のチャネル11に対応する領域に非接触部5aを設けることにより非接触部5aの部位において共通電極16との接触を避け、それ以外の領域のみで共通電極16に接触(押圧や接着等により接触)していることが好ましい。これにより、チャネル11の壁面を形成している圧電基板13の変形を阻害することなくヒートシンク5と共通電極16を接続できる。
【0093】
図17に示すヒートシンク5は、複数の凸状の放熱部5bを備え、共通電極16側に突出している凸状部5bの端面を共通電極16に接触させている。この凸状部5bはチャネル11の延伸方向にチャネル出口から配線基板2(図17においては図示せず)の手前まで延在させてもよいし、一部のみに接触させるようにしてもよい。チャネル11の延伸方向に延在させることで放熱効率を高めることができる。
【0094】
ヒートシンク5の材質は金属が好ましく、アルミニウムで構成し、少なくとも共通電極16に接触する表面がアルマイト処理されていることがより好ましい。これにより、アルマイト処理(絶縁被覆)により共通電極16の電位がシールドされノイズ等の発生を防ぐことができる。
【0095】
また、ヘッドチップ1を保持する保持部材をヒートシンクとして機能させるようにしてもよい。例えば、図18に示すように、ヘッドチップ1を保持すると共にインク吐出面(ノズルプレート12)を露出させる開口6aを有し、インクジェットヘッド全体を覆う箱型形状の筺体フレーム(保持部材)6を用いることができる。ここではインクジェットヘッドH2を使用した場合を例示している。この筺体フレーム6を金属等の熱伝導性の高い材質で形成し、インク吐出面を露出させる開口6aの内面をヘッドチップ1の共通電極16の形成面に接触させることで、圧電基板13で発生した熱を共通電極16から筺体フレーム6に伝達させてより効率的に外部に放散できる。筺体フレーム6はヒートシンクの性能を上げるために表面積が広くなるような形状(フィン等)に成型してもよい。
【0096】
なお、この筐体フレーム6の開口6aにおいて、ヘッドチップ1の共通電極16と接触する部分には、図17に示したヒートシンク5と同様に、チャネル11の壁面を形成している圧電基板13の変形を阻害することのないようにするため、共通電極16のチャネル11(図18では示されていない)に対応する領域に非接触部6bを設けることにより非接触部6bの部位において共通電極16との接触を避け、それ以外の領域のみで共通電極16に接触することが好ましい。
【0097】
また、本発明において、図19に示すように、チャネル11間の隔壁14の少なくとも一部がせん断モード型の圧電素子で構成されるようにしてもよい。図19に示す隔壁14は、その高さ方向(図19における上下方向)で白抜き矢印で示す分極方向が反対方向となるように配置された2つの圧電層14a、14bによって形成されているが、このうちの例えば圧電層14aの部分のみが圧電素子であってもよい。この隔壁14には、チャネル11内に臨む壁面に個別電極15が形成されているので、隔壁14の両隣の個別電極15、15の間で分極方向と直交する方向の電界を発生させることで、隔壁14をくの字状にせん断変形させることができる。
【0098】
この場合、伸縮モード又はせん断モード型の圧電基板13の変形による圧力と、せん断モード型の圧電素子からなる隔壁14の変形による圧力が合成されて、チャネル11内のインクに大きな圧力が付与される。そのため、より低い駆動電圧でインクに大きな圧力を付与することができ、駆動効率が高くなる。また、個別電極15に共通の駆動電圧信号を印加することで圧電基板13とせん断モード型の圧電素子からなる隔壁14を駆動できるので駆動回路構成を簡素化できる。
【符号の説明】
【0099】
H1〜H4:インクジェットヘッド
1、1A:ヘッドチップ
1a:前端面
1b:後端面
1c:上側端面
11:チャネル
11a:底壁
12:ノズルプレート
12a:ノズル
13、13A、13B、13C:圧電基板
13a、13b、13e:圧電層
13c:非圧電層
13d:弾性金属板
14:隔壁
14a、14b:圧電層
15:個別電極
15a:底壁上に形成されている部分
15b:隔壁の表面に形成されている部分
16:共通電極
17:個別引き出し電極
18:共通引き出し電極
2:配線基板
21、22:配線電極
23:インク流路孔
24:貫通孔
3:外部配線部材
31:配線
4:インクマニホールド
41:共通インク室
5:ヒートシンク
5a:非接触部
5b:凸状部
6:筐体フレーム
6a:開口
6b:非接触部
100:セラミックス基板
101:溝
102:カバー基板
200:レジスト
300:金属膜
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルからインクを微小な液滴状に吐出させることによって画像を記録するためのインクジェットヘッドとして、圧電素子の分極方向と平行な方向の電界を発生させることにより圧電素子を伸縮変形させる伸縮モードタイプのインクジェットヘッドが知られている(例えば特許文献1)。このインクジェットヘッドは、圧力室の一壁面を薄い振動板とし、この振動板の上面に圧力室毎に圧電素子を個別に積層している。各圧電素子は、振動板の上面に積層された共通電極上に設けられることで各圧電素子の上面に積層された個別電極との間に挟まれており、これら電極間に圧電素子の分極方向と平行な電界を発生させて圧電素子を個別に伸縮変形させ、圧力室内のインクに吐出のための圧力を付与する。このため、各圧力室を個別に吐出駆動させることができる。
【0003】
しかし、このような伸縮モードタイプのインクジェットヘッドでは、各圧力室の一壁面として薄い振動板を形成しなくてはならず、しかも、圧力室毎に個別に圧電素子を積層形成しなくてはならず、製造工程の煩雑さの問題がある。
【0004】
そこで、従来、各圧力室の開放面を共通の圧電基板によって覆うことで、圧電素子をヘッドチップの表面に配置させると共に、個別に形成する手間を省くようにしたインクジェットヘッドも提案されている(特許文献2〜5)。
【0005】
この特許文献2、3記載のインクジェットヘッドは、伸縮モードタイプの圧電素子とせん断モードタイプの圧電素子とを積層させ、外側を伸縮モードで駆動する圧電素子とし、内側をせん断モードで駆動する圧電素子としたものである。
【0006】
しかし、各圧電素子の層間に個別に電極が必要であり、特に圧力室内に個別に電極を形成する必要があり、電極形成が極めて煩雑であると共に、これら各電極と駆動回路との間の配線接続を行うことが極めて難しいという問題がある。特に圧電素子は変形効率を考えて厚みが極めて薄く形成されるため、圧電素子を挟んで設けられる電極を短絡させることなくそれぞれ駆動回路と電気的に接続させることは極めて困難である。
【0007】
また、このようなインクジェットヘッドでは、通常、特許文献4、5に記載のように、ヘッドチップの最も外側の圧電素子表面に個別電極と共通電極を引き出し、その上に、駆動回路との電気的接続を行うための配線が形成されたフレキシブル配線ケーブルが積層される。
【0008】
フレキシブル配線ケーブルは、樹脂等の熱伝導率の低い材料で構成されているため、駆動により発生した圧電素子で発生した熱が十分に放熱されず、この熱がインクの粘度を低下させて吐出特性に悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−307832号公報
【特許文献2】特開平10−58675号公報
【特許文献3】特開2006−15764号公報
【特許文献4】特開2007−30417号公報
【特許文献5】特開2010−36562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、ヘッドチップに全てのチャネルの一壁面を共通に構成する圧電基板が積層され、該圧電基板を駆動させるインクジェットヘッドにおいて、圧電基板を挟んで設けられる電極と駆動回路との間の電気的接続を容易に行うことができると共に圧電基板から発生した熱を効率的に放熱することが可能なインクジェットヘッドを提供することを課題とする。
【0011】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0013】
1.
インクの入口と出口とがそれぞれ相反する端面に開口する複数のチャネルが形成されると共に、分極された圧電基板が、前記チャネルの一壁面を形成するように積層されてなるヘッドチップを有し、前記チャネルの内部に臨む部分の前記圧電基板を該チャネル毎に個別に変形させることにより、前記チャネル内のインクを該チャネルの出口側に配置されたノズルから吐出するインクジェットヘッドであって、
前記チャネル内における前記圧電基板の表面及び隣接する前記チャネル間の隔壁表面にそれぞれ個別電極が形成されると共に、前記圧電基板の前記チャネルと反対側の面に共通電極が形成され、
前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口が配置される端面に、前記個別電極と電気的に接続される個別引き出し電極が前記個別電極毎に独立し、且つ、前記共通電極と短絡しないように形成されると共に、前記共通電極と電気的に接続される共通引き出し電極が前記個別引き出し電極と短絡しないように形成され、
一端が前記個別引き出し電極及び前記共通引き出し電極とそれぞれ電気的に接続される配線電極が形成されてなる配線基板が、前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口が配置される端面に接合されると共に、前記配線基板の端部は前記ヘッドチップとの接合面から該接合面と平行で、且つ、チャネル列方向と直交する方向に張り出しており、前記個別電極及び前記共通電極が、前記配線電極を介して前記配線基板の前記端部まで電気的に引き出されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
2.
前記共通引き出し電極は、前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口が配置される端面において、チャネル列方向における該チャネル列の外側の領域に形成されていることを特徴とする前記1記載のインクジェットヘッド。
3.
前記個別引き出し電極は、前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口側の端面において、該チャネルの入口を取り囲むように形成されており、
前記配線基板は、前記ヘッドチップの前記チャネルに対応する位置に、個別のインク流路孔が貫通形成されていると共に、前記個別引き出し電極と電気的に接続される前記配線電極の一端は、前記インク流路孔を取り囲むように形成されていることを特徴とする前記1又は2記載のインクジェットヘッド。
4.
前記ヘッドチップはチャネル列を1列だけ有しており、
前記配線電極の他端は、前記配線基板における前記ヘッドチップの前記共通電極が形成されている側の端部と反対側の端部に延びて配列されていることを特徴とする前記1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
5.
前記ヘッドチップはチャネル列を2列有し、該ヘッドチップにおいて2列のチャネル列を間に挟むようにそれぞれ前記圧電基板が相反する外面に配置され、該圧電基板の外面にそれぞれ前記共通電極が形成されており、
前記配線電極の他端は、前記チャネル列毎に前記配線基板の相反する端部に延び、各端部にそれぞれ配列されていることを特徴とする前記1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
6.
前記配線電極の一端は、前記配線基板における前記ヘッドチップとの接合面に配置されると共に、他端は、該配線基板を貫通して前記ヘッドチップとの接合面と反対面に引き出され、該反対面において、前記チャネル列毎に前記配線基板の相反する端部に延び、各端部にそれぞれ配列されていることを特徴とする前記5記載のインクジェットヘッド。
7.
前記圧電基板は、厚み方向の分極方向が互いに反対方向となるように配置された2枚の圧電基板が一体に積層されることによって形成されてなることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
8.
前記圧電基板は、1枚の圧電基板と非分極のセラミックス基板とが一体に積層されることによって形成されてなり、前記非分極のセラミックス基板側が外側となるように前記ヘッドチップに積層されていることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
9.
前記圧電基板は、1枚の圧電基板と1枚の金属板とが一体に積層されることによって形成されてなり、前記金属板側が外側となるように前記ヘッドチップに積層され、前記金属板が前記共通電極とされていることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
10.
前記ヘッドチップの前記共通電極は、ヒートシンクと熱的に接続されていることを特徴とする前記1〜9のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
11.
前記ヒートシンクは、前記共通電極の前記チャネルに対応する領域を避けて前記共通電極に接触していることを特徴とする前記10に記載のインクジェットヘッド。
12.
前記ヒートシンクは、アルミニウムで構成され、少なくとも前記共通電極に接触する表面がアルマイト処理されていることを特徴とする前記11に記載のインクジェットヘッド。
13.
前記ヘッドチップを保持する保持部材が前記ヒートシンクとして機能することを特徴とする前記10〜12のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
14.
前記チャネル間の隔壁の少なくとも一部がせん断モード型の圧電素子で構成されていることを特徴とする前記1〜13のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ヘッドチップに全てのチャネルの一壁面を共通に構成する圧電基板が積層され、該圧電基板を駆動させるインクジェットヘッドにおいて、圧電基板を挟んで設けられる電極と駆動回路との間の電気的接続を容易に行うことができると共に圧電基板から発生した熱を効率的に放熱することが可能なインクジェットヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るインクジェットヘッドの第1の実施形態を示す分解斜視図
【図2】図1に示すインクジェットヘッドの縦断面図
【図3】図1に示すヘッドチップを前端面側から見た分解斜視図
【図4】ヘッドチップの駆動の様子を説明する図
【図5】個別引き出し電極と共通引き出し電極を示す図
【図6】ヘッドチップの製造方法を説明する図
【図7】ヘッドチップの製造方法を説明する図
【図8】ヘッドチップの製造方法を説明する図
【図9】本発明に係るインクジェットヘッドの第2の実施形態を示す正面図
【図10】図9の(x)−(x)線に沿う断面図
【図11】本発明に係るインクジェットヘッドの第3の実施形態を示す正面図
【図12】図11の(xii)−(xii)線に沿う断面図
【図13】本発明に係るインクジェットヘッドの第4の実施形態を示す正面図
【図14】図13の(xiv)−(xiv)線に沿う断面図
【図15】圧電基板の他の態様を示す図
【図16】圧電基板の更に他の態様を示す図
【図17】ヘッドチップ及びヒートシンク部分の断面図
【図18】筐体フレームに収容したインクジェットヘッドを一部断面で示す図
【図19】ヘッドチップの他の態様を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係るインクジェットヘッドの第1の実施形態を示す分解斜視図、図2は、図1に示すインクジェットヘッドの縦断面図、図3は、図1に示すヘッドチップを前端面側から見た分解斜視図、図4は、ヘッドチップの駆動の様子を説明する図、図5は、個別引き出し電極と共通引き出し電極を示す図である。
【0018】
図中、H1はインクジェットヘッド、1はヘッドチップ、2は配線基板、3は外部配線部材、4はインクマニホールドである。
【0019】
ヘッドチップ1は、前端面1a及び後端面1bと、これら前端面1a及び後端面1bに挟まれた上下左右の4つの側端面とを有する六面体からなり、このうち相反する位置にある前端面1aと後端面1bとにかけて、吐出されるインクが貯留されるインク流路となる多数のチャネル11が並設され、1列のチャネル列を形成している。各チャネル11は前端面1aと後端面1bにそれぞれ開口してストレート状に形成されており、前端面1a側の開口がインクの出口、後端面1b側の開口がインクの入口とされている。
【0020】
ヘッドチップ1の前端面1aには、ノズルプレート12が貼着されている。ノズルプレート12は、各チャネル11に対応する位置に、チャネル11の内部と連通しているノズル12aが開口形成されている。
【0021】
ヘッドチップ1は、それぞれ厚み方向に分極処理された2枚の圧電層13a、13bを、図中矢印で示す分極方向が反対方向となるように一体に積層してなる圧電基板13が、該ヘッドチップ1の上側端面又は下側端面のいずれかを構成するように積層されている。本実施形態では、圧電基板13がヘッドチップ1における図中の下側端面を構成している。
【0022】
このようにヘッドチップ1の外側の端面に圧電基板13が配置されることにより、圧電基板13の放熱を行い易くなる。
【0023】
各チャネル11の内部には、圧電基板13の圧電層13aが臨んでいる。すなわち、圧電基板13は、全てのチャネル11に亘って共通に各チャネル11の一壁面(本実施形態では底壁11a)を形成している。
【0024】
各チャネル11内には、圧電基板13の圧電層13aによって形成される底壁11aと、隣接するチャネル11、11間の隔壁14の表面との3面にかけて、チャネル11の全長に亘る個別電極15がそれぞれ形成されている。一方、ヘッドチップ1の下側端面を構成している圧電基板13の外面(圧電層13bの外側面)には共通電極16が形成されている。これにより、圧電基板13は、チャネル11毎の個別電極15と1つの共通電極16とによって挟まれた状態となっている。
【0025】
共通電極16は、圧電基板13の外面の全面に亘って形成されている。これにより、圧電基板13は、共通電極16からなる金属面が放熱面となるので圧電基板13の放熱が一層良好となる。
【0026】
このようなヘッドチップ1のインク吐出時の駆動動作について図4を用いて説明する。
【0027】
個別電極15と共通電極16との間に電位差が生じていない状態では、圧電基板13は平坦な基板状態のままであり、チャネル11内の容積に変動はない(図4(a))。この状態から個別電極15に所定の電圧+Vを印加すると共に、共通電極16を接地すると、個別電極15と共通電極16との間に電界Eが生じる。圧電基板13の各圧電層13a、13bは、図4中の白抜き矢印で示すように、基板の厚さ方向に分極処理されているため、このとき発生した電界は、圧電基板13の分極方向と平行な方向の電界Eとなる。
【0028】
ここで、各圧電層13a、13bには、電界が作用した時にd31モードで伸縮動作するタイプの圧電素子が使用され、互いの分極方向が外側に向くように積層されている。これにより、それぞれ圧電・電歪効果によって、圧電層13aは電界Eに対して直交する方向(層面と平行な方向)に縮むように変形し、圧電層13bは電界Eに対して直交する方向(層面と平行な方向)に伸びるように変形する。その結果、このチャネル11の底壁11aを形成している部分の圧電基板13は、外側(図示下側)に凸湾曲するように変形し、チャネル11の容積を増大させる(図4(b))。
【0029】
その後、個別電極15の電位を元に戻すと、圧電基板13は図4(a)のように平板状に戻るため、図4(b)の状態からチャネル11の容積が縮小されることにより、該チャネル11内の圧力が増大し、チャネル11内のインクに吐出のための圧力が付与される。これによりノズル12aからインク滴が吐出される。
【0030】
このようにヘッドチップ1を駆動させるため、チャネル11内面に形成された個別電極15と、ヘッドチップ1の外面に形成された共通電極16とを駆動回路(図示せず)と電気的に接続させる必要がある。そこで、本実施形態では、ヘッドチップ1の一つの面に、これら個別電極15と共通電極16とをまとめて引き出すようにしている。
【0031】
すなわち、各チャネル11のインクの入口が配置されるヘッドチップ1の後端面1bに、個別電極15と電気的に接続される個別引き出し電極17と、共通電極16と電気的に接続される1つの共通引き出し電極18とが形成されている。個別引き出し電極17は個別電極15毎にそれぞれ独立していると共に、共通電極16及び共通引き出し電極18のいずれとも短絡しないように形成されている。
【0032】
個別引き出し電極17は、一端がチャネル11内の個別電極15と電気的に接続され、他端側がヘッドチップ1における圧電基板13と反対側の端面(上側端面)1c側に向けて伸びている。
【0033】
圧電基板13を共通電極16との間で挟んでいる個別電極15の部分は、図5(a)に示すように、底壁11a上に形成されている部分15aであるため、この個別電極15の部分15aから個別引き出し電極17を引き出すことが好ましい。しかし、通常、圧電基板13は変形効率のために極めて薄く形成されるため、ヘッドチップ1の後端面1b側に面している圧電基板13の部分の面積は極めて小さく、共通電極16と短絡しないように個別電極15の部分15aから個別引き出し電極17を引き出すことは難しい。
【0034】
このため、個別引き出し電極17は、隔壁14の部分を利用して、個別電極15の隔壁14の表面に形成されている部分15bとも電気的に接続するようにしている。すなわち、個別引き出し電極17と個別電極15との接続部分は、個別電極15における底壁11a上に形成されている部分15aと、隔壁14の表面に形成されている部分15bとの双方と電気的に接続されるように、チャネル11の入口部分を取り囲むように形成されている(図5(a))。
【0035】
一方、共通引き出し電極18は、一端が共通電極16と電気的に接続され、他端側がヘッドチップ1の後端面1bにおいて上側端面1cに向けて伸びている。この共通引き出し電極18は、チャネル列方向における該チャネル列の外側の領域となるように、ヘッドチップ1の後端面1bにおける端部近傍に形成され、個別引き出し電極17と区別されて離隔している(図5(b))。
【0036】
このように、それぞれヘッドチップ1における異なる部位及び面に配置されている個別電極15及び共通電極16が、個別引き出し電極17及び共通引き出し電極18によってヘッドチップ1の後端面1bにまとめて引き出されているため、駆動回路との間の電気的接続は、この後端面1bのみにおいて行うことができるようになる。
【0037】
配線基板2は、ヘッドチップ1の各個別引き出し電極17と電気的に接続される配線電極21及び共通引き出し電極18と電気的に接続される配線電極22が同一面に形成された一枚の板状の部材である。この配線基板2に用いられる基板には、非分極のPZTやAlN−BN、AlN等のセラミックス材料からなる基板、低熱膨張のプラスチックやガラスからなる基板等を用いることができる。
【0038】
配線基板2の配線電極21、22が形成された面は、ヘッドチップ1の後端面1bの面積よりも大きな面積を有しており、図2に示すように、少なくともヘッドチップ1のチャネル11の並び方向(チャネル列方向)と直交する方向(図2中の上下方向)に延びてヘッドチップ1からそれぞれ大きく張り出している。
【0039】
個別引き出し電極17に対応する配線電極21は、一端がヘッドチップ1のチャネル11に対応する位置にあり、他端がチャネル列方向と直交する配線基板2の一端部(図1、図2における上端部)まで延びて並列している。各配線電極21の一端には、ヘッドチップ1が接合された際に各チャネル11の入口と対応する位置に、インク流路孔23がそれぞれ個別に貫通形成されている。
【0040】
ヘッドチップ1と配線基板2とは、各個別引き出し電極17と各配線電極21とが電気的に接続されると共に、共通引き出し電極18と配線電極22とが電気的に接続されるように位置決めされ、例えばNi等の金属粒子を含む接着剤を用いて接着される。
【0041】
このとき、配線基板2の各インク流路孔23は、それぞれヘッドチップ1のチャネル11の内部と連通する。このインク流路孔23の周囲には配線電極21が形成されているので、この配線電極21が、ヘッドチップ1の各チャネル11の入口を囲むように形成されている個別引き出し電極17と接合されることで、該チャネル11の入口を取り囲むため、各チャネル11の入口部分でインク漏れが発生するおそれはない。
【0042】
この配線基板2を接合することにより、ヘッドチップ1の各個別電極15と共通電極16は、個別引き出し電極17及び共通引き出し電極18を介して、配線電極21、22によって配線基板2の一端部まで電気的に引き出される。
【0043】
外部配線部材3は、駆動回路(図示せず)からの電気信号(電圧)を各個別電極15に印加すると共に共通電極16を接地するための配線31が一面に形成されており、例えば異方導電フィルム等によって、各配線電極21、22の他端が配列されている配線基板2の一端部側に接合されている。
【0044】
このような外部配線部材3としては、駆動回路との間を電気的に接続可能であれば特に問わないが、フレキシブル基板(FPC)を好ましく用いることができる。
【0045】
インクマニホールド4は、配線基板2のヘッドチップ1とは反対側の面の全面を覆う大きさを有する箱形状に形成されており、配線基板2に接合されることで、その内部に1つの共通インク室41を形成している。共通インク室41のインクは、配線基板2のインク流路孔23を介して、ヘッドチップ1の各チャネル11内に供給される。
【0046】
このインクジェットヘッドH1によれは、圧電基板13を挟んで設けられる個別電極15及び共通電極16を、個別引き出し電極17及び共通引き出し電極18によってヘッドチップ1の後端面1bにまとめて配列させることができ、この後端面1bに配線電極21、22を有する配線基板2を接合することで、個別電極15及び共通電極16を配線基板の2の一端部まで電気的に引き出すことができる。従って、この端部において駆動回路との間をつなぐ外部配線部材3と電気的に接続させることで、駆動回路との間の電気的接続を容易に行うことができる。
【0047】
また、ヘッドチップ1の後端面1bに配線基板2を接合しているため、圧電基板13を外面に露出させたままとすることができ、この圧電基板13の放熱に支障を来すことはない。しかも、共通電極16と電気的に接続される共通引き出し電極18を、ヘッドチップ1の後端面1bにおけるチャネル列の外側に設けたため、圧電基板13の表面で配線接続する必要がなく、この点でも圧電基板13の変形駆動や放熱に支障を来すことはない。
【0048】
次に、このインクジェットヘッドH1におけるヘッドチップ1の製造方法について図6〜図8を用いて説明する。
【0049】
一方の面にセラミックス基板を積層した圧電層13aと、一方の面の全面に共通電極16を蒸着やスパッタ等によって形成した圧電層13bとを用意し、これら圧電層13a、13b同士が直接接合されるように両者を貼り合わせる(図6(a))。
【0050】
各圧電層13a、13bの厚みは、それぞれ100μm〜600μmとすることが好ましい。
【0051】
各圧電層13a、13bは、貼り合わせ時に分極方向が反対方向となるように予め分極処理されており、圧電層13a、13bが貼り合わされることによって圧電基板13が形成される。
【0052】
次いで、セラミックス基板100における圧電基板13の積層面と反対面の全面にレジスト200を塗布し(図6(b))、このレジスト200の側から、後にチャネル11となる溝101をダイシングソー等を用いて形成する(図6(c))。各溝101は、セラミックス基板100の一端から他端にかけて一定幅で直線状に形成され、また、深さは、溝101の底面に圧電基板13の圧電層13aが露出する程度、例えば圧電層13aの表面から10〜20μm程度掘り下げるように加工を行う。
【0053】
次いで、溝101を加工した側から蒸着やスパッタ等によって、全面に例えばNi、Al等の電極用の金属膜300を成膜する(図7(a))。金属膜300は、各溝101内の底面(圧電層13aの表面)、両側面及びレジスト200の上面にかけて一体に成膜される。
【0054】
その後、レジスト200を溶解除去すると共に、このレジスト200上に成膜された部分の金属膜300を除去することにより、金属膜101を溝101毎に独立させ、溝101内の底面及び両側面のみに亘る個別電極15をそれぞれ形成する(図7(b))。
【0055】
次いで、各溝101の上方からセラミックス基板100と同じ材質のカバー基板102を接着することにより、各溝101の上方を閉塞する(図7(c))。これにより、各溝101はストレート状のチャネル11となり、隣接するチャネル11、11の間には隔壁14が形成される。
【0056】
その後、チャネル11が所望の長さとなるように、チャネル11の長さ方向と直交する方向のカットラインCに沿ってフルカットすることにより、ヘッドチップ1をそれぞれ切り出す(図8(a))。
【0057】
切り出されたヘッドチップ1は、チャネル11の入口となる後端面1bに対し、例えば個別引き出し電極17及び共通引き出し電極18となる部位が開口したドライフィルムをマスクとして用いて蒸着やスパッタを行うことで、これら個別引き出し電極17及び共通引き出し電極18を成膜する(図8(b))。蒸着は方向を変えて斜め方向から2回行うことで、各個別電極15及び共通電極16との電気的接続を確実に行うことができる。
【0058】
ヘッドチップ1には、チャネル11内の個別電極15の表面に保護膜(図示せず)を形成することもできる。保護膜を形成することによって水系インクを使用することができるようになる。保護膜としてはパリレン膜が好ましい。
【0059】
以上の製造方法によれば、圧電基板13に対するチャネル11毎に独立した個別電極15を、溝101の内面を含むセラミックス基板100の全面に対して金属膜300を形成した後、不要部分の金属膜300を除去するだけで容易に形成することができ、個別電極とチャネルとを位置決めする等の面倒な作業は不要である。
【0060】
前述の特許文献2(特開平11−307832号公報)や特許文献3(特開平10−58675号公報)に記載の従来技術では、チャンネル基板に接合される側の圧電基板の表面に個別電極をパターニングした後、チャンネル基板に接合するため、チャネルと個別電極を精度良く位置決めする必要がある。実際には、位置ずれをなくすことは困難であり、特許文献2や特許文献3に記載のように、個別電極の幅をチャネルの幅よりも小さくし、位置ずれが生じても有効電極面積がばらつきないようにしてヘッド毎の位置ずれのばらつきによる駆動効率のばらつきを抑えるようにしている。このように特許文献2や特許文献3に記載の技術では、個別電極の幅をチャネルの幅よりも小さくしているため圧電基板の変形領域が小さくなり駆動効率は低下してしまう。
【0061】
本実施形態の製造方法によれば、圧電基板13に対するチャネル11毎に独立した個別電極15を、圧電基板13とチャネルを構成するセラミックス基板100を接合後に個別電極を形成するので、チャネルにおける圧電基板13の全面に個別電極を精度良く形成できるため駆動効率が向上する。
【0062】
図9は第2の実施形態に係るインクジェットヘッドH2の正面図、図10は図9の(x)−(x)線に沿う断面図である。第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1と同一符号の部位は同一構成の部位を示している。
【0063】
このインクジェットヘッドH2は、以上説明した1列のチャネル列を備えたヘッドチップ1を2つ使用し、それぞれの共通電極16の形成面が外側となるように接合することによって一体とした2列のチャネル列を備えたヘッドチップ1Aを有している。各ヘッドチップ1の後端面1bには、上記同様、個別引き出し電極17と共通引き出し電極18とが形成されている。
【0064】
なお、ここに示す態様では、ノズルプレート12はヘッドチップ1毎に設けられているが、ヘッドチップ1A全体で1枚のノズルプレートとしてもよい。
【0065】
また、ヘッドチップ1Aは、2列のチャネル列で、図7(c)におけるカバー基板102の部分を共通にすることで、1枚のカバー基板102の両面にチャネル列が配列される態様としてもよい。
【0066】
配線基板2は、ヘッドチップ1Aに対して1枚だけ設けられ、両外面に配置された共通電極16、16からそれぞれ側方に張り出す大きさを有している。各配線電極21、22は、配線基板2のヘッドチップ1Aとの接合面に共に形成されており、その他端は、チャネル列毎にそれぞれ相反する上下両端部に分かれて延びている。外部配線部材3、3は、この配線基板2の上下各端部において各配線電極21、22と配線31とが対応するように電気的に接続される。
【0067】
また、インク流路孔23は、2列のチャネル列に対応して配線基板2にそれぞれ貫通形成されている。
【0068】
このインクジェットヘッドH2は、ヘッドチップ1Aの両外面に共通電極16、16の面が配置されているため、圧電基板13の変形駆動及び放熱に支障を来すおそれはない。
【0069】
なお、配線電極21、22は、ヘッドチップ1Aの共通電極16、16の後端面1b側の部分を跨ぐ形となるが、ヘッドチップ1Aと配線基板2との間は、個別引き出し電極17及び共通引き出し電極18の厚みと、配線電極21、22の厚みとを足し合わせた分の隙間が形成されるため、配線電極21、22が直に共通電極16、16と接触してしまうことはない。
【0070】
図11は第3の実施形態に係るインクジェットヘッドH3の正面図、図12は図11の(xii)−(xii)線に沿う断面図である。第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1、第2の実施形態に係るインクジェットヘッドH2と同一符号の部位は同一構成の部位を示している。
【0071】
このインクジェットヘッドH3は、ヘッドチップは第2の実施形態に係るインクジェットヘッドH2のヘッドチップ1Aと同一であるが、配線基板2の配線電極21が、ヘッドチップ1Aとの接合面の反対面(インクマニホールド4の接合面)に形成されている点でインクジェットヘッドH2と異なっている。
【0072】
すなわち、ヘッドチップ1Aの個別引き出し電極17と電気的に接続される配線電極21は、ヘッドチップ1Aとの接合面に、チャネル11と対応する位置に個別引き出し電極17との接続端21aが形成され、インク流路孔23を利用した貫通電極部21bを介してヘッドチップ1Aとの接合面の反対面まで引き出され、該反対面において外部配線部材3の配線31と接続されている。
【0073】
また、ヘッドチップ1Aの共通引き出し電極18と電気的に接続される配線電極22は、ヘッドチップ1Aとの接合面の共通引き出し電極18と対応する位置に該共通引き出し電極18との接続端22aが形成されている。この接続端22aの位置には、インク流路孔23と同様に貫通する貫通孔24が形成されており、この貫通孔24を利用した貫通電極部22bを介してヘッドチップ1Aとの接合面の反対面まで引き出され、該反対面において外部配線部材3の配線31と接続されている。
【0074】
このインクジェットヘッドH3によれば、配線基板2の各配線電極21、22は、ヘッドチップ1Aとの接合面と反対面に位置するため、共通電極16の後端面1b側の部分との短絡をより確実に回避できる。
【0075】
図13は第4の実施形態に係るインクジェットヘッドH4の正面図、図14は図13の(xiv)−(xiv)線に沿う断面図である。第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1、第2の実施形態に係るインクジェットヘッドH2及び第3の実施形態に係るインクジェットヘッドH3と同一符号の部位は同一構成の部位を示している。
【0076】
このインクジェットヘッドH4は、以上説明した2列のチャネル列を備えたヘッドチップ1Aを2つ使用し、合計4列のチャネル列を備えたインクジェットヘッドを構成している。各ヘッドチップ1A、1A間は、圧電基板13、13の変形駆動及び放熱を阻害しない程度の間隔Sが開けられており、この間隔Sにおいて放熱用の空気層が形成されている。
【0077】
この配線基板2は、その両面を利用して配線電極が形成されている。すなわち、各ヘッドチップ1Aのチャネル列において、外側(図13における最も上側及び最も下側)に位置するチャネル列の個別引き出し電極17と電気的に接続される配線電極21A及び共通引き出し電極18と電気的に接続される配線電極22Aは、第2の実施形態に係るインクジェットヘッドH2の配線基板2と同様に、ヘッドチップ1Aとの接合面に形成されているが、内側に位置するチャネル列の個別引き出し電極17と電気的に接続される配線電極21B及び共通引き出し電極18と電気的に接続される配線電極22Bは、第3の実施形態に係るインクジェットヘッドH3の配線基板2と同様にして、配線基板2を貫通し、ヘッドチップ1Aとの接合面と反対面に引き出されている。
【0078】
このため、配線基板2の両端部には、それぞれ2枚ずつの外部配線部材3A、3Bが接続され、各配線電極21A、21B、22A、22Bと配線31とが電気的に接続されている。
【0079】
このインクジェットヘッドH4によれば、圧電基板13の変形駆動及び放熱に支障を来すことなく、4列のチャネル列を有するインクジェットヘッドを構成することができる。
【0080】
以上説明したヘッドチップ1、1Aでは、伸縮モードで駆動する圧電基板が、分極方向を反対方向に向けた2層の圧電層13a、13bからなるバイモルフ型の圧電基板13を使用したが、圧電基板13はこれに限らない。以下、その他の態様を示す。
【0081】
図15(a)は、圧電層として1層の圧電層13bのみ使用したユニモルフ型の圧電基板13Aを示している。
【0082】
圧電基板13Aは、圧電層13bと非圧電層13cとを一体に貼り合わせてなるものであり、圧電層13b側がチャネル11に臨むように配置されている。そして、非圧電層13cの外面の全面に共通電極16が形成されている。
【0083】
非圧電層13cには、例えば分極処理されていないセラミックス、シリコン等を用いることができる。その厚みは1μm〜10μmとすることが好ましい。
【0084】
この圧電基板13Aでは、個別電極15と共通電極16との間で電界を発生させると、圧電層13bは層面と平行な方向に伸びるように変形するが、非圧電層13cは伸縮しないため、その結果、圧電基板13Aは、内側(図示上側)に凸湾曲するように変形駆動する。
【0085】
図15(b)も、圧電層として1層の圧電層13bのみ使用したユニモルフ型の圧電基板13Bを示している。
【0086】
この圧電基板13Bは、圧電層13bと弾性金属板13dとを一体に貼り合わせてなるものであり、圧電層13b側がチャネル11に臨むように配置されている。
【0087】
弾性金属板13dには、例えばステンレス鋼(SUS)等を用いることができる。その厚みは10μm〜20μmとすることが好ましい。
【0088】
この圧電基板13Bでは、弾性金属板13d自体を共通電極16として使用することができるため、共通電極を別途形成する必要がない。
【0089】
この圧電基板13Bも、個別電極15と共通電極16との間で電界を発生させると、圧電層13bは層面と平行な方向に伸びるように変形するが、弾性金属板13dは伸縮しないため、この場合も、圧電基板13Bは、内側(図示上側)に凸湾曲するように変形駆動する。
【0090】
以上の実施形態では、圧電基板を伸縮モードで駆動する圧電素子を用いるものを例示したが、圧電基板には例えば図16に示すように、せん断モード型の圧電素子を用いるようにしてもよい。この場合、圧電基板の圧電層13eとして、白抜き矢印で示す分極方向が層面と平行な方向となる圧電素子が用いられる。この圧電基板13Cでは、チャネル11内の個別電極15と共通電極16との間で圧電層13eの分極方向と直交する方向の電界が発生し、この個別電極15と共通電極16との間の圧電層13eがせん断変形する。
【0091】
また、本発明において、ヘッドチップ1の放熱をより良好とするため、図17に示すように、共通電極16をヒートシンク5と熱的に接続するようにしてもよい。圧電基板13の表面に熱伝導率の高い金属製の共通電極16が形成され、この共通電極16がヒートシンク5と熱的に接続することで、圧電基板13で発生した熱を共通電極16からヒートシンク5に伝達させてより効率的に外部に放散できる。
【0092】
ヒートシンク5は、図示するように、共通電極16のチャネル11に対応する領域に非接触部5aを設けることにより非接触部5aの部位において共通電極16との接触を避け、それ以外の領域のみで共通電極16に接触(押圧や接着等により接触)していることが好ましい。これにより、チャネル11の壁面を形成している圧電基板13の変形を阻害することなくヒートシンク5と共通電極16を接続できる。
【0093】
図17に示すヒートシンク5は、複数の凸状の放熱部5bを備え、共通電極16側に突出している凸状部5bの端面を共通電極16に接触させている。この凸状部5bはチャネル11の延伸方向にチャネル出口から配線基板2(図17においては図示せず)の手前まで延在させてもよいし、一部のみに接触させるようにしてもよい。チャネル11の延伸方向に延在させることで放熱効率を高めることができる。
【0094】
ヒートシンク5の材質は金属が好ましく、アルミニウムで構成し、少なくとも共通電極16に接触する表面がアルマイト処理されていることがより好ましい。これにより、アルマイト処理(絶縁被覆)により共通電極16の電位がシールドされノイズ等の発生を防ぐことができる。
【0095】
また、ヘッドチップ1を保持する保持部材をヒートシンクとして機能させるようにしてもよい。例えば、図18に示すように、ヘッドチップ1を保持すると共にインク吐出面(ノズルプレート12)を露出させる開口6aを有し、インクジェットヘッド全体を覆う箱型形状の筺体フレーム(保持部材)6を用いることができる。ここではインクジェットヘッドH2を使用した場合を例示している。この筺体フレーム6を金属等の熱伝導性の高い材質で形成し、インク吐出面を露出させる開口6aの内面をヘッドチップ1の共通電極16の形成面に接触させることで、圧電基板13で発生した熱を共通電極16から筺体フレーム6に伝達させてより効率的に外部に放散できる。筺体フレーム6はヒートシンクの性能を上げるために表面積が広くなるような形状(フィン等)に成型してもよい。
【0096】
なお、この筐体フレーム6の開口6aにおいて、ヘッドチップ1の共通電極16と接触する部分には、図17に示したヒートシンク5と同様に、チャネル11の壁面を形成している圧電基板13の変形を阻害することのないようにするため、共通電極16のチャネル11(図18では示されていない)に対応する領域に非接触部6bを設けることにより非接触部6bの部位において共通電極16との接触を避け、それ以外の領域のみで共通電極16に接触することが好ましい。
【0097】
また、本発明において、図19に示すように、チャネル11間の隔壁14の少なくとも一部がせん断モード型の圧電素子で構成されるようにしてもよい。図19に示す隔壁14は、その高さ方向(図19における上下方向)で白抜き矢印で示す分極方向が反対方向となるように配置された2つの圧電層14a、14bによって形成されているが、このうちの例えば圧電層14aの部分のみが圧電素子であってもよい。この隔壁14には、チャネル11内に臨む壁面に個別電極15が形成されているので、隔壁14の両隣の個別電極15、15の間で分極方向と直交する方向の電界を発生させることで、隔壁14をくの字状にせん断変形させることができる。
【0098】
この場合、伸縮モード又はせん断モード型の圧電基板13の変形による圧力と、せん断モード型の圧電素子からなる隔壁14の変形による圧力が合成されて、チャネル11内のインクに大きな圧力が付与される。そのため、より低い駆動電圧でインクに大きな圧力を付与することができ、駆動効率が高くなる。また、個別電極15に共通の駆動電圧信号を印加することで圧電基板13とせん断モード型の圧電素子からなる隔壁14を駆動できるので駆動回路構成を簡素化できる。
【符号の説明】
【0099】
H1〜H4:インクジェットヘッド
1、1A:ヘッドチップ
1a:前端面
1b:後端面
1c:上側端面
11:チャネル
11a:底壁
12:ノズルプレート
12a:ノズル
13、13A、13B、13C:圧電基板
13a、13b、13e:圧電層
13c:非圧電層
13d:弾性金属板
14:隔壁
14a、14b:圧電層
15:個別電極
15a:底壁上に形成されている部分
15b:隔壁の表面に形成されている部分
16:共通電極
17:個別引き出し電極
18:共通引き出し電極
2:配線基板
21、22:配線電極
23:インク流路孔
24:貫通孔
3:外部配線部材
31:配線
4:インクマニホールド
41:共通インク室
5:ヒートシンク
5a:非接触部
5b:凸状部
6:筐体フレーム
6a:開口
6b:非接触部
100:セラミックス基板
101:溝
102:カバー基板
200:レジスト
300:金属膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクの入口と出口とがそれぞれ相反する端面に開口する複数のチャネルが形成されると共に、分極された圧電基板が、前記チャネルの一壁面を形成するように積層されてなるヘッドチップを有し、前記チャネルの内部に臨む部分の前記圧電基板を該チャネル毎に個別に変形させることにより、前記チャネル内のインクを該チャネルの出口側に配置されたノズルから吐出するインクジェットヘッドであって、
前記チャネル内における前記圧電基板の表面及び隣接する前記チャネル間の隔壁表面にそれぞれ個別電極が形成されると共に、前記圧電基板の前記チャネルと反対側の面に共通電極が形成され、
前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口が配置される端面に、前記個別電極と電気的に接続される個別引き出し電極が前記個別電極毎に独立し、且つ、前記共通電極と短絡しないように形成されると共に、前記共通電極と電気的に接続される共通引き出し電極が前記個別引き出し電極と短絡しないように形成され、
一端が前記個別引き出し電極及び前記共通引き出し電極とそれぞれ電気的に接続される配線電極が形成されてなる配線基板が、前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口が配置される端面に接合されると共に、前記配線基板の端部は前記ヘッドチップとの接合面から該接合面と平行で、且つ、チャネル列方向と直交する方向に張り出しており、前記個別電極及び前記共通電極が、前記配線電極を介して前記配線基板の前記端部まで電気的に引き出されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記共通引き出し電極は、前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口が配置される端面において、チャネル列方向における該チャネル列の外側の領域に形成されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記個別引き出し電極は、前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口側の端面において、該チャネルの入口を取り囲むように形成されており、
前記配線基板は、前記ヘッドチップの前記チャネルに対応する位置に、個別のインク流路孔が貫通形成されていると共に、前記個別引き出し電極と電気的に接続される前記配線電極の一端は、前記インク流路孔を取り囲むように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記ヘッドチップはチャネル列を1列だけ有しており、
前記配線電極の他端は、前記配線基板における前記ヘッドチップの前記共通電極が形成されている側の端部と反対側の端部に延びて配列されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記ヘッドチップはチャネル列を2列有し、該ヘッドチップにおいて2列のチャネル列を間に挟むようにそれぞれ前記圧電基板が相反する外面に配置され、該圧電基板の外面にそれぞれ前記共通電極が形成されており、
前記配線電極の他端は、前記チャネル列毎に前記配線基板の相反する端部に延び、各端部にそれぞれ配列されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記配線電極の一端は、前記配線基板における前記ヘッドチップとの接合面に配置されると共に、他端は、該配線基板を貫通して前記ヘッドチップとの接合面と反対面に引き出され、該反対面において、前記チャネル列毎に前記配線基板の相反する端部に延び、各端部にそれぞれ配列されていることを特徴とする請求項5記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記圧電基板は、厚み方向の分極方向が互いに反対方向となるように配置された2枚の圧電基板が一体に積層されることによって形成されてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記圧電基板は、1枚の圧電基板と非分極のセラミックス基板とが一体に積層されることによって形成されてなり、前記非分極のセラミックス基板側が外側となるように前記ヘッドチップに積層されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
前記圧電基板は、1枚の圧電基板と1枚の金属板とが一体に積層されることによって形成されてなり、前記金属板側が外側となるように前記ヘッドチップに積層され、前記金属板が前記共通電極とされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項10】
前記ヘッドチップの前記共通電極は、ヒートシンクと熱的に接続されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項11】
前記ヒートシンクは、前記共通電極の前記チャネルに対応する領域を避けて前記共通電極に接触していることを特徴とする請求項10に記載のインクジェットヘッド。
【請求項12】
前記ヒートシンクは、アルミニウムで構成され、少なくとも前記共通電極に接触する表面がアルマイト処理されていることを特徴とする請求項11に記載のインクジェットヘッド。
【請求項13】
前記ヘッドチップを保持する保持部材が前記ヒートシンクとして機能することを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項14】
前記チャネル間の隔壁の少なくとも一部がせん断モード型の圧電素子で構成されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項1】
インクの入口と出口とがそれぞれ相反する端面に開口する複数のチャネルが形成されると共に、分極された圧電基板が、前記チャネルの一壁面を形成するように積層されてなるヘッドチップを有し、前記チャネルの内部に臨む部分の前記圧電基板を該チャネル毎に個別に変形させることにより、前記チャネル内のインクを該チャネルの出口側に配置されたノズルから吐出するインクジェットヘッドであって、
前記チャネル内における前記圧電基板の表面及び隣接する前記チャネル間の隔壁表面にそれぞれ個別電極が形成されると共に、前記圧電基板の前記チャネルと反対側の面に共通電極が形成され、
前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口が配置される端面に、前記個別電極と電気的に接続される個別引き出し電極が前記個別電極毎に独立し、且つ、前記共通電極と短絡しないように形成されると共に、前記共通電極と電気的に接続される共通引き出し電極が前記個別引き出し電極と短絡しないように形成され、
一端が前記個別引き出し電極及び前記共通引き出し電極とそれぞれ電気的に接続される配線電極が形成されてなる配線基板が、前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口が配置される端面に接合されると共に、前記配線基板の端部は前記ヘッドチップとの接合面から該接合面と平行で、且つ、チャネル列方向と直交する方向に張り出しており、前記個別電極及び前記共通電極が、前記配線電極を介して前記配線基板の前記端部まで電気的に引き出されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記共通引き出し電極は、前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口が配置される端面において、チャネル列方向における該チャネル列の外側の領域に形成されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記個別引き出し電極は、前記ヘッドチップにおける前記チャネルの入口側の端面において、該チャネルの入口を取り囲むように形成されており、
前記配線基板は、前記ヘッドチップの前記チャネルに対応する位置に、個別のインク流路孔が貫通形成されていると共に、前記個別引き出し電極と電気的に接続される前記配線電極の一端は、前記インク流路孔を取り囲むように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記ヘッドチップはチャネル列を1列だけ有しており、
前記配線電極の他端は、前記配線基板における前記ヘッドチップの前記共通電極が形成されている側の端部と反対側の端部に延びて配列されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記ヘッドチップはチャネル列を2列有し、該ヘッドチップにおいて2列のチャネル列を間に挟むようにそれぞれ前記圧電基板が相反する外面に配置され、該圧電基板の外面にそれぞれ前記共通電極が形成されており、
前記配線電極の他端は、前記チャネル列毎に前記配線基板の相反する端部に延び、各端部にそれぞれ配列されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記配線電極の一端は、前記配線基板における前記ヘッドチップとの接合面に配置されると共に、他端は、該配線基板を貫通して前記ヘッドチップとの接合面と反対面に引き出され、該反対面において、前記チャネル列毎に前記配線基板の相反する端部に延び、各端部にそれぞれ配列されていることを特徴とする請求項5記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記圧電基板は、厚み方向の分極方向が互いに反対方向となるように配置された2枚の圧電基板が一体に積層されることによって形成されてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記圧電基板は、1枚の圧電基板と非分極のセラミックス基板とが一体に積層されることによって形成されてなり、前記非分極のセラミックス基板側が外側となるように前記ヘッドチップに積層されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
前記圧電基板は、1枚の圧電基板と1枚の金属板とが一体に積層されることによって形成されてなり、前記金属板側が外側となるように前記ヘッドチップに積層され、前記金属板が前記共通電極とされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項10】
前記ヘッドチップの前記共通電極は、ヒートシンクと熱的に接続されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項11】
前記ヒートシンクは、前記共通電極の前記チャネルに対応する領域を避けて前記共通電極に接触していることを特徴とする請求項10に記載のインクジェットヘッド。
【請求項12】
前記ヒートシンクは、アルミニウムで構成され、少なくとも前記共通電極に接触する表面がアルマイト処理されていることを特徴とする請求項11に記載のインクジェットヘッド。
【請求項13】
前記ヘッドチップを保持する保持部材が前記ヒートシンクとして機能することを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項14】
前記チャネル間の隔壁の少なくとも一部がせん断モード型の圧電素子で構成されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−103488(P2013−103488A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251152(P2011−251152)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】
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