説明

インクジェット光造形法における、光造形品形成用モデル材、光造形品の光造形時の形状支持用サポート材および光造形品の製造方法

【課題】 光硬化時および硬化後の水または吸湿による膨潤または吸湿変形が極めて少ないインクジェット光造形法における光造形品形成用モデル材、光硬化物の水溶解性に優れ、光造形後の除去が容易であるインクジェット光造形法における光造形品の光造形時の形状支持用サポート材等を提供する。
【解決手段】 SP値の加重平均値9.0〜10.3の硬化性樹脂成分を含有してなるインクジェット光造形法における光造形品形成用モデル材;並びに、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(F)、数平均分子量が100〜5,000であるポリオキシプロピレングリコールおよび/または水(G)、並びに光重合開始剤(D)を含有してなるインクジェット光造形法における光造形品の光造形時の形状支持用サポート材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット光造形法における、光造形品形成用モデル材、光造形品の光造形時の形状支持用サポート材、インクジェット光造形用の二液型光硬化性樹脂組成物、該組成物を光硬化させてなる光造形品、および該組成物を用いた光造形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状の光硬化性樹脂にレーザー光や紫外線等の光を照射して、一定のパターンに硬化させ、立体状のデザインモデルやワーキングモデルを作成する方法は幅広く知られており、液状の光硬化性樹脂としては種々のものが提案されている(例えば特許文献1〜6参照)。
近年、インクジェット方式による光造形法が提案され、従来法に比べ、インクジェットノズルから吐出した液状の光硬化性樹脂を硬化させ、積層して光造形することが可能となり、従来のように大型の樹脂液槽や暗室の設置が不要となる等の利点がある。光造形機がコンパクトで小型化できる他、CAD(Computer Aided Design)システムを用いることにより、自由に立体モデルを作成できる3DCADとして注目されている(例えば特許文献7参照)。
【0003】
また、インクジェット方式による光造形法に限らず、複雑な形状の光造形品を作成するために、光造形品を形成するモデル材と光造形時に光造形品の形状を支えるサポート材を使用して光造形する方法も知られている(例えば特許文献8、9参照)。
さらに、インクジェット方式を用いた光造形において、特定のモデル材とサポート材を使用して、光造形品を作成する方法も提示されている(例えば特許文献10〜13参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−204915号公報
【特許文献2】特開平8−59760号公報
【特許文献3】特開平9−169827号公報
【特許文献4】特開平9−316111号公報
【特許文献5】特開2001−310918号公報
【特許文献6】特開2004−59601号公報
【特許文献7】特開2002−67174号公報
【特許文献8】特開2002−178412号公報
【特許文献9】特開2004−255839号公報
【特許文献10】EP1274551B1
【特許文献11】EP1741545A2
【特許文献12】特開2010−155889号公報
【特許文献13】特開2010−155926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レーザー光や紫外線等を照射して光造形する方法は、一般的には、液状の光硬化性樹脂の液面を上下させながら、液面の上方側または下方側からレーザー光や紫外線等を照射して光造形品を作成するが、外部からの光等によっても液状の光硬化性樹脂が硬化してしまうため、専用の暗室を設ける必要があったり、また液状の光硬化性樹脂の一部しか光造形品の作成には使用できなかったり、さらに光造形のために種々の付帯設備が必要なため設備費が非常に高価になる等の問題があるため、一般的にはあまり普及しておらず、設置台数も限定的なものであった。
【0006】
また、インクジェット方式に関しても、上記問題は軽減できるものの、複雑な形状を作成する場合にはやはり問題がある。すなわち、該方式ではモデル材とサポート材を併用することが必要であるが、例えば特許文献10、11、13等に開示されている方法では、モデル材やサポート材の粘度、表面張力および物性は考慮されているものの、光造形後のサポート材を水等で洗浄除去する際に、モデル材を硬化させた光造形品が膨潤変形してしまい造形精度が保てない問題があった。
【0007】
また、サポート材に関しては、特許文献10、11に開示されている方法では、基本的にサポート材がモデル材との結合を形成する架橋ゲルとなってしまうため、サポート材の除去に時間がかかったり、細部まで除去するのが困難である等の問題があった。
特許文献12に開示されているサポート材に関しても、基本的にサポート力と水への溶解性を両立するのは難しく、モデル材の硬化後にサポート材を除去するのに長時間を要したり、アクリロイル基を有するアクリルアミド系の濃度低減や連鎖移動剤量の増加を行った場合には、サポート力を保てない等の問題があった。
さらに、前記公知文献に記載の従来技術は、モデル材とサポート材をインクジェット方式で吐出した際、硬化するまでの間に、両者が混ざり合ってしまい、光造形品の水浸漬時等に混合部分が膨張変形してしまう等の問題に関しては、全く配慮がされていないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、SP値の加重平均値9.0〜10.3の硬化性樹脂成分を含有してなるインクジェット光造形法における光造形品形成用モデル材;水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(F)、オキシプロピレン基を含むアルキレンオキサイド付加物および/または水(G)、並びに光重合開始剤(D)を含有してなるインクジェット光造形法における光造形品の光造形時の形状支持用サポート材;インクジェット光造形法で光造形品を形成するモデル材と、該光造形品の光造形時の形状を支えるサポート材を組み合わせてなる二液型光硬化性樹脂組成物において、該モデル材が上記記載のモデル材であり、該サポート材が上記記載のサポート材であるインクジェット光造形用の二液型光硬化性樹脂組成物;インクジェット光造形法により、上記記載の組成物を光硬化させてなる光造形品;並びに、インクジェット光造形法による光造形品の製造方法において、上記記載の組成物を光造形装置を用いて製造することを特徴とするインクジェット光造形法による光造形品の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のモデル材、サポート材、二液型光硬化性樹脂組成物、該組成物を用いてなる光造形品およびその製造方法は下記の効果を奏する。
(1)モデル材の光硬化時および硬化後の水または吸湿による膨潤変形が極めて少ない。
(2)サポート材の光硬化物は水溶解性に優れ、光造形後の除去が容易である。
(3)二液型光硬化性樹脂組成物において、サポート材はモデル材と相溶せず、光造形品は優れた機械物性を有する。
(4)二液型光硬化性樹脂組成物を用いてなる光造形品は造形精度に優れる。
(5)該光造形品の製造方法は生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】インクジェット方式の三次元造形システムの概略図
【図2】三次元造形装置の構成を示す概略図の側面図
【図3】三次元造形装置の構成を示す概略図の平面図
【図4】各プリンタヘッドのひとつを下方から見た概略図
【図5】各プリンタヘッドに対するモデル材ならびにサポート材を供給する材料供給システムの概略図
【図6】三次元造形装置を作動させ、三次元の造形物の作成途中を示す概略図
【図7】(A)は成形が完了したサポート材を含むモデルを示す概略図、(B)は成形が完了したサポート材を含むモデルからサポート材を除去したモデルを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のインクジェット光造形法における光造形品形成用モデル材は、SP値の加重平均値9.0〜10.3の硬化性樹脂成分を含有してなるモデル材であることを特徴とする。
[モデル材]
本発明のモデル材の硬化性樹脂成分のSP値の加重平均値(以下においては単にSP値ということがある。)は9.0〜10.3、好ましくは9.2〜10.0である。SP値が10.3を超えると、後述するサポート材の硬化物を取り除くために、水中に浸漬したりウォータージェットで水洗すると、モデル材の硬化物が水で膨潤変形し、乾燥しても変形が解消することがなく、モデル材の硬化物を放置すると、吸湿して変形しやすい。また、SP値が9.0未満では該硬化物が脆くなり靱性が低下する。
該モデル材の硬化性樹脂成分のSP値は、モデル材を構成する後述の硬化性樹脂成分(A)〜(C)の種類、含有量を選択することにより、上記範囲に調整することができる。
【0012】
ここにおいてSPは、溶解度パラメーター(Solubility Parameter)を意味し、物質相互の溶解度の目安となるもので、物質間のSP値の差が小さいほど相互の溶解度が大であることが知られている。SP値は下記の計算式から求められる。

SP=[(△H−RT)/V]1/2

但し、V:モル容積(cc/モル)、△H:蒸発潜熱(cal/モル)
R:ガス恒数1.987cal/モル°K
【0013】
共重合体またはブレンド物のSP値は、下記文献に記載されたFedorsらが提案した方法によって計算される。該方法においては、共重合体またはブレンド物のSP値は加成則が成立するとして、共重合体では構成単量体のSP値、またブレンド物では構成成分のSP値を各構成割合(重量%)で比例配分して、SP値の加重平均値として算出される。
【0014】
「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,
FEBRUARY,1974,Vol.14,No.2,Robert
F.Fedors.(147〜154頁)」
【0015】
本発明のモデル材において、硬化性樹脂成分は、単官能エチレン性不飽和単量体(A)、ウレタン基を含有しない多官能エチレン性不飽和単量体(B)、ウレタン基含有エチレン性不飽和単量体(C)および光重合開始剤(D)を含有してなる。
ここにおいてモデル材は、モデル材中の硬化性樹脂成分、すなわち、(A)〜(C)のSP値の加重平均値が9.0〜10.3となるように設計される。
【0016】
[単官能エチレン性不飽和単量体(A)]
単官能エチレン性不飽和単量体(A)としては、エチレン性不飽和基[(メタ)アクリロイル基、N−ビニル基等]を1個有する化合物であれば特に限定されるものではないが、SP値を小さくするという観点から、好ましいのは疎水性の単官能エチレン性不飽和単量体(A1)(SP値が10以下)である。
【0017】
(A1)としては直鎖もしくは分岐のアルキル(メタ)アクリレート[炭素数(以下Cと略記)4〜30の化合物、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートおよびt−ブチル(メタ)アクリレート];脂環含有(メタ)アクリレート[C6〜20の化合物、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびジシクロペンタニル(メタ)アクリレート];複素環含有(メタ)アクリレート[C5〜20の化合物、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン、アダマンチル(メタ)アクリレート]が挙げられる。
【0018】
上記(A1)のうち、モデル材の硬化時の成形温度(50〜90℃)に耐える造形精度向上の観点、および光造形品自体の使用時の耐熱性の観点からさらに好ましいのは、ホモポリマーのガラス転移点(以下Tgと略記)が高い(50℃以上)もの、すなわち、アルキル(メタ)アクリレートのうちのメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、および脂環含有(メタ)アクリレートのうちのイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートであり、これらのうち光反応性の観点からとくに好ましいのは高反応性のアクリレート、すなわち脂環含有アクリレートのうちのイソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、アダマンチルアクリレートである。
【0019】
モデル材中の硬化性樹脂成分、すなわち、(A)〜(C)のSP値の加重平均値を10.3以下に設計できる場合は、(A)として、水溶性の単官能エチレン性単量体(A2)を含有させることができる。本発明において、「水溶性」とは、水に対する溶解度(25℃)が1(g/水100g)以上であることを意味するものとする。
【0020】
(A2)としては、C5〜15の水酸基含有(メタ)アクリレート[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等];数平均分子量[以下Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]200〜2,000の水酸基含有(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびPEG−PPGブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等];C3〜15の(メタ)アクリルアミド誘導体[(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドおよびN−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等]、およびアクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0021】
(A2)の含有量は、モデル材の重量に基づいて通常10%以下、後述するモデル材の光硬化物の水膨潤率の低減の観点から好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、最も好ましくは0%である。
上記単官能エチレン性不飽和単量体(A)は、1種単独使用でも必要により2種以上を併用してもいずれでもよい。
【0022】
[ウレタン基を有しない多官能エチレン性不飽和単量体(B)]
ウレタン基を有しない多官能エチレン性不飽和単量体(B)は、ウレタン基を有さず、しかも2個またはそれ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であればとくに限定されるものではない。モデル材中に(B)を含有させることにより、硬化物の機械強度や弾性率を向上させることができる。
【0023】
(B)としては、分子内に2個またはそれ以上(好ましくは2〜3個)のエチレン性不飽和基を有するものであれば特に限定されないが、SP値を小さくするという観点から好ましいのは疎水性の、ウレタン基を有しない多官能エチレン性不飽和単量体(B1)(SP値が10以下)である。
【0024】
(B1)としては、直鎖もしくは分岐のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[C10〜25の化合物、例えば1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート]、脂環含有ジ(メタ)アクリレート[C10〜30の化合物、例えばジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート]が挙げられる。
【0025】
上記(B1)のうち、モデル材の硬化時の成形温度(50〜90℃)に耐える造形精度向上の観点、および光造形品自体の使用時の耐熱性の観点からさらに好ましいのは、ホモポリマーのガラス転移点が高い(50℃以上)もの、すなわち、分岐のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートのうちのネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、脂環含有ジ(メタ)アクリレートのジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、これらのうち光反応性の観点からとくに好ましいのは高反応性のアクリレート、すなわち、ネオペンチルグリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレートである。
上記ウレタン基を有しない多官能エチレン性不飽和単量体(B)は1種単独使用でも必要により2種以上を併用してもいずれでもよい。
【0026】
[ウレタン基含有エチレン性不飽和単量体(C)]
ウレタン基含有エチレン性不飽和単量体(C)は、1個またはそれ以上のエチレン性不飽和基を有し、ウレタン基を含有する単量体である。モデル材中に(C)を含有させることにより、硬化物に靭性を付与することができ、硬化物の靭性、伸びの調整が可能となる。
(C)としては、水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a)およびポリイソシアネート(b)から形成されてなるものが挙げられ、SP値を小さくするという観点から好ましいのは疎水性(SP値が10.9以下)のもの(C1)である。
【0027】
(a)には、C5以上かつMn5,000以下の化合物、例えば下記のもの、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
(a1):(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド(以下AOと略記。)付加物(AOのアルキレンの炭素数は2〜4である。)
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチルおよびこれらにさらにAOを付加したもの(分子量160以上かつMn5,000以下)等;
(a2):(a1)のε−カプロラクトン付加物(分子量230以上かつMn5,000以下)
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル−ε−カプロラクトン2モル付加物等;
(a3):(メタ)アクリル酸とジオール(Mn300〜5,000)との反応生成物
ジオール[Mn300〜5,000、例えばポリカーボネートジオール、PEG、ポリエステルジオール]のモノ(メタ)アクリレート等;
【0028】
(a4):(メタ)アクリル酸とエポキシドとの反応生成物(C8〜30)
3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ビフェノキシ−2−ヒドロキシプロプル(メタ)アクリレート;
(a5):(メタ)アクリル酸と3官能以上のポリオール(分子量92以上かつMn5,000以下)との反応生成物
グリセリンモノ−およびジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ−およびジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ−、ジ−およびトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンモノ−、ジ−およびトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−およびペンタ(メタ)アクリレート、およびこれらのAO付加物(付加モル数1〜100)等;
これらの(a)のうち、靭性の観点から好ましいのは(a1)、(a2)である。
【0029】
ポリ(ジ、トリまたはそれ以上)イソシアネート(b)には、芳香族ポリイソシアネート[C(NCO基中のCを除く、以下同じ)6〜20の化合物、例えば2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,
4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)]、脂肪族ポリイソシアネート[C2〜18の化合物、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)]、脂環式ポリイソシアネート[C4〜45の化合物、例えばイソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4−および/または2,6−メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)]、芳香脂肪族ポリイソシアネート[C8〜15の化合物、例えばm−および/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)]、これらのヌレート化物、およびこれらの混合物が含まれる。
【0030】
ウレタン基含有エチレン性不飽和単量体(C)を製造するに際しては、硬化物の靭性、伸びの観点から、さらに、(a)を除くその他の、水酸基を有し不飽和基を有しない成分(f)を反応成分として含有させてもよい。
(f)としてはC1以上かつMn3,000以下の、多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリアルキレングリコール等)および1価のアルコール(メタノール、エタノール等)が挙げられる。これらのうち硬化物の耐衝撃性の観点から好ましいのは、1価のアルコールである。
【0031】
(C)のMnは、硬化物の耐衝撃性の観点から好ましい下限は500、さらに好ましくは700、組成物の取り扱い性、硬化物の造形精度の観点から好ましい上限は5,000、さらに好ましくは2,000である。
【0032】
(C)のエチレン性不飽和基の官能基数は、硬化物の硬度および耐衝撃性の観点から好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜3である。
【0033】
[光重合開始剤(D)]
光重合開始剤(D)としては、
ベンゾイン化合物[C14〜18の化合物、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル];
アセトフェノン化合物〔C8〜18の化合物、例えばアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン〕;
アントラキノン化合物[C14〜19の化合物、例えば2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン];
チオキサントン化合物[C13〜17の化合物、例えば2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン];
ケタール化合物[C16〜17の化合物、例えばアセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール];
ベンゾフェノン化合物[C13〜21の化合物、例えばベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン];
ホスフィンオキシド[C22〜28の化合物、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド];
およびこれらの混合物等が挙げられる。
これらの(D)は1種単独使用でも2種以上の併用でもいずれでもよい。
【0034】
上記(D)のうち、硬化物が黄変しにくいという耐光性の観点から好ましいのは、アセトフェノン化合物およびホスフィンオキシド、さらに好ましいのは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドおよびビス−(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、とくに好ましいのは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0035】
モデル材中の(A)〜(D)の各含有量(重量%)は、(A)は光硬化物のTgの向上および耐脆性の観点から好ましくは50〜90%、さらに好ましくは55〜85%;(B)は光硬化物の機械強度および耐脆性の観点から好ましくは3〜25%、さらに好ましくは4〜20%;(C)は光硬化物の靱性および硬度の観点から好ましくは5〜35%、さらに好ましくは8〜30%;(D)は光硬化速度および光硬化物の機械物性の観点から好ましくは0.1〜10%、さらに好ましくは0.3〜8%である。
【0036】
[その他の添加剤(E)]
モデル材には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりその他の添加剤(E)を含有させることができる。
(E)には、重合禁止剤、界面活性剤、着色剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、充填剤等が含まれ、目的に応じて種々選択することができ、1種の単独使用または2種以上の併用のいずれでもよい。
【0037】
後述する本発明のインクジェット光造形法による光造形品の製造方法においては、インクジェット方式によっても異なるが、多くの場合成形温度は50〜90℃程度であり、機器内での暴走重合の回避や単量体の安定性向上の観点から、重合禁止剤を加えることが好ましい。
【0038】
重合禁止剤としては、フェノール化合物[ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン等]、硫黄化合物[ジラウリルチオジプロピオネート等]、リン化合物[トリフェニルフォスファイト等]、アミン化合物[フェノチアジン等]等が挙げられる。
重合禁止剤の使用量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、通常5%以下、単量体の安定性および重合速度の観点から好ましくは0.1〜3%である。
【0039】
界面活性剤としては、分子量264以上かつMn5,000以下、例えばPEG型非イオン界面活性剤[ノニルフェノールのエチレンオキサイド(以下EOと略記)1〜40モル付加物、ステアリン酸EO1〜40モル付加物等]、多価アルコール型非イオン界面活性剤(ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等)、フッ素含有界面活性剤(パーフルオロアルキルEO1〜50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等)、変性シリコーンオイル[ポリエーテル変性シリコーンオイル、(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等]等が挙げられる。
界面活性剤の使用量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、通常3%以下、添加効果および光硬化物物性の観点から好ましくは0.1〜2%である。
【0040】
着色剤としては、顔料および/または染料が挙げられる、顔料には有機および無機顔料が含まれ、例えば下記のものを例示することができる。
(1)アゾ顔料
不溶性モノアゾ顔料(トルイジンレッド、パーマネントカーミンFB、ファストイエローG等)、不溶性ジスアゾ顔料(ジスアゾイエローAAA、ジスアゾオレンジPMP等)、アゾレーキ(溶性アゾ顔料)(レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B等)、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等;
(2)多環式顔料
フタロシアニンブルー、インダントロンブルー、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等;
(3)染つけレーキ
塩基性染料(ビクトリアピュアブルーBOレーキ等)、酸性染料(アルカリブルートーナー等)等;
(4)その他
アジン顔料(アニリンブラック等)、昼光蛍光顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料等。
【0041】
無機顔料としては、下記の(1)および(2)が挙げられる。
(1)金属酸化物(酸化鉄、酸化クロム、酸化チタン等)
(2)カーボンブラック
【0042】
着色剤の使用量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、通常2%以下、着色効果および光硬化物物性の観点から好ましくは0.1〜1%である。
【0043】
酸化防止剤としては、フェノール化合物〔単環フェノール(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等)、ビスフェノール[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等]、多環フェノール[1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等]等〕、硫黄化合物(ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート等)、リン化合物(トリフェニルホスファイト等)、アミン化合物(オクチル化ジフェニルアミン等)等が挙げられる。
酸化防止剤の使用量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、通常3%以下、酸化防止効果および光硬化物物性の観点から好ましくは0.1〜2%である。
【0044】
連鎖移動剤としては、炭化水素[C6〜24の化合物、例えば芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)および不飽和脂肪族炭化水素(1−ブテン、1−ノネン等)
];ハロゲン化炭化水素(C1〜24の化合物、例えばジクロロメタン、四塩化炭素);アルコール(C1〜24の化合物、例えばメタノール、1−ブタノール);チオール(C1〜24の化合物、例えばエチルチオール、1−オクチルチオール);ケトン(C3〜24の化合物、例えばアセトン、メチルエチルケトン);アルデヒド(C2〜18の化合物、例えば2−メチル−2−プロピルアルデヒド、1−ペンチルアルデヒド);フェノール(C6〜36の化合物、例えばフェノール、m−、p−およびo−クレゾール);キノン(C6〜24の化合物、例えばヒドロキノン);アミン(C3〜24の化合物、例えばジエチルメチルアミン、ジフェニルアミン);およびジスルフィド(C2〜24の化合物、例えばジエチルジスルフィド、ジ−1−オクチルジスルフィド)等が挙げられる。
連鎖移動剤の使用量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、通常10%以下、単量体の重合性および単量体と連鎖移動剤との相溶性の観点から好ましくは0.05〜5%である。
【0045】
充填剤としては、金属粉(アルミニウム粉、銅粉等)、金属酸化物(アルミナ、シリカ、タルク、マイカ、クレー等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム等)、金属塩(炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等)、繊維[無機繊維(炭素繊維、ガラス繊維、アスベスト等)、有機繊維(コットン、ナイロン、アクリル、レーヨン繊維等)等]、マイクロバルーン(ガラス、シラス、フェノール樹脂等)、炭素類(カーボンブラック、石墨、石炭粉等)、金属硫化物(二硫化モリブデン等)、有機粉(木粉等)等が挙げられる。
充填剤の使用量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、通常30%以下、充填効果およびインクジェット吐出可能粘度、光硬化物物性の観点から好ましくは3〜20%である。
【0046】
(E)の合計の使用量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、通常30%以下、添加効果および光硬化物物性の観点から好ましくは0.05〜20%である。
【0047】
[モデル材中の水溶性成分]
モデル材中の水溶性成分の含有量は、光硬化物の水膨潤変形や吸湿変形の防止の観点から好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。なお、ここにおいて水溶性成分とは、前記定義した水への溶解度が1(g/水100g)以上である成分を指し、モデル材を構成する前記(A)〜(D)、および必要により加えられる(E)のうちの該溶解度を示すものである。
【0048】
[モデル材の光硬化物のTg]
インクジェット方式による光造形法では、通常50〜90℃で光造形されることから、モデル材の光硬化物のTgは、光硬化物の耐熱性および光造形品の反り低減の観点から好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは55〜110℃、とくに好ましくは60〜100℃である。ここにおいて、光硬化物のTgは後述の方法で評価される値である。該Tgは、モデル材を構成する(A)〜(D)の各成分の種類、含有量を選択することにより、上記範囲に調整することができる。
【0049】
[モデル材の光硬化物の水膨潤率]
モデル材の光硬化物の水膨潤率(重量%)は、光造形精度の観点から好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.7%以下、とくに好ましくは0.5%以下である。ここにおいて、光硬化物の水膨潤率は後述の方法で評価される値である。該水膨潤率は、モデル材を構成する(A)〜(D)の各成分の種類、含有量を選択することにより、上記範囲に調整することができる。
【0050】
[モデル材の光硬化物の水膨潤変形]
モデル材の光硬化物の水膨潤変形(mm)は、光造形精度の観点から好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下、とくに好ましくは0.5mm以下である。ここにおいて、水膨潤変形は後述の方法で評価される値である。該水膨潤変形は、モデル材を構成する(A)〜(D)の各成分の種類、含有量を選択することにより、上記範囲に調整することができる。
【0051】
本発明のモデル材は、インクジェット光造形法で光造形品を形成するモデル材と、該光造形品の光造形時の形状を支えるサポート材を組み合わせてなる二液型光硬化性樹脂組成物におけるモデル材として用いられる。二液型光硬化性樹脂組成物において、併用されるサポート材としては公知のサポート材が使用できるが、光硬化物の優れた水溶解性による光造形後の除去の容易さ、およびモデル材との非相溶性による光造形品の優れた造形精度と機械物性の観点から、下記の本発明のサポート材を使用することが好ましい。
【0052】
[サポート材]
本発明におけるサポート材は、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(F)、オキシプロピレン基を含むアルキレンオキサイド付加物および/または水(G)、並びに光重合開始剤(D)を含有してなる。
【0053】
[水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(F)]
水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(F)は、光造形後にサポート材の硬化物をすばやく水に溶解させるために、サポート材の構成成分として用いられる。
【0054】
(F)中の水溶性の多官能エチレン性不飽和単量体(H)は、(F)の製造工程中で副生する可能性のあるものであるが、その含有量(重量%)は、(F)の重合後のホモポリマーの水溶性の観点から好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、とくに好ましくは0%である。
【0055】
(F)としては、C5〜15の水酸基含有(メタ)アクリレート[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等];Mn200〜1,000の水酸基含有(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(C1〜4)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(C1〜4)ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびPEG−PPGブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等];C3〜15の(メタ)アクリルアミド誘導体[(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチルメタ)アクリルアミド、N−プロピルメタ)アクリルアミド、N−ブチルメタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチルメタ)アクリルアミド、N,N’−ジエチルメタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピルメタ)アクリルアミドおよびN−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等]、および(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。これらは1種単独の使用でも、あるいは2種以上を併用してもいずれでもよい。
【0056】
前記水溶性の多官能エチレン性不飽和単量体(H)としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PEG−PPGブロックポリマーのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
上記(F)のうち、光反応性の観点から好ましいのはアクリレートおよびアクリルアミド誘導体、さらに好ましいのはヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートおよび4−ヒドロキシブチルアクリレート、アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N’−ジメチルアクリルアミド、N,N’−ジエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−、N−ヒドロキシプロピル−およびN−ヒドロキシブチルアクリルアミドであり、また、人体への皮膚低刺激性の観点から好ましいのはアクリロイルモルフォリン、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドである。
【0058】
[オキシプロピレン基を含むアルキレンオキサイド付加物および/または水(G)]
(G)はオキシプロピレン基を含むアルキレンオキサイド付加物である。(G)としては活性水素化合物に少なくともプロピレンオキサイドを単独またはプロピレンオキサイドとその他のアルキレンオキサイドを付加したものである。このうち好ましいのはプロピレンオキサイドの単独付加物(ポリオキシプロピレングリコール)である。活性水素化合物としては、1〜4価アルコール、アミン化合物などが挙げられ、このうち好ましいのは2価アルコールまたは水である。
【0059】
(G)としては、サポート材の硬化物のサポート力と水への溶解性の両立の観点から硬化前の(F)と相溶し、かつ(F)の光硬化物と相溶しない数平均分子量が100〜5,000のポリオキシプロピレングリコールおよび/または水である。ポリオキシプロピレングリコールの数平均分子量として好ましいのは200〜3,000であり、より好ましいのは400〜2,000である。
【0060】
一方、硬化前のモデル材とサポート材の相溶防止あるいは混合防止の観点から好ましいのは水である。(G)が水の場合は、硬化前のモデル材とサポート材が相溶、あるいは混合しあうことはなくなるため、硬化前のモデル材とサポート材の相溶、混合の問題に起因するモデル材とサポート材の各硬化物の混合部分の諸物性低下の問題や膨潤変形の問題を完全に解消することができる。
【0061】
[光重合開始剤(D)]
サポート材に用いる光重合開始剤は、基本的にモデル材における前記の光重合開始剤(D)と同じものを使用するが、(G)が水の場合は、水溶性の光重合開始剤が使用される。
(D)のうち水溶性光重合開始剤としては、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパン−1−オン等が挙げられるが、水溶性のものであれば特に限定されることはない。
【0062】
サポート材中の(F)、(G)、(D)の各含有割合(重量%)は、(F)はサポート材の光硬化物を固体状としてサポート力を発揮させる観点および該光硬化物の水への溶解性の観点から、好ましくは3〜45%、さらに好ましくは3〜43%、とくに好ましくは4〜40%;(G)は該光硬化物の水への溶解性およびサポート力の観点から好ましくは50〜95%、さらに好ましくは53〜93%、とくに好ましくは55〜90%;(D)はサポート材の光硬化性および光硬化物の水への溶解性の観点から好ましくは0.1〜10%、さらに好ましくは0.3〜8%、とくに好ましくは0.5〜6%である。
【0063】
[その他の添加剤(E)]
サポート材には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりその他の添加剤(E)を含有させることができる。
サポート材にもモデル材におけるその他の添加剤(E)と同様のものが使用できる。
(E)には、重合禁止剤、着色剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、充填剤等が含まれ、目的に応じて種々選択することができ、1種の単独使用または2種以上の併用のいずれでもよい。
(F)、(G)、(D)の合計重量に基づく各(E)の使用量(%)は、モデル材における、前記(A)〜(D)の合計重量に基づく各(E)の使用量(%)と同様であり、また(F)、(G)、(D)の合計重量に基づく(E)の合計の使用量(%)についても、前記(A)〜(D)の合計重量に基づく(E)の合計の使用量(%)と同様である。
【0064】
[サポート材の硬化物の水溶解性]
サポート材の硬化物の水溶解性は、後述の方法で測定される水溶解時間(該硬化物が水に浸漬してから完全に溶解するまでに要する時間)で評価することができる。該水溶解時間は、通常24時間以下、サポート力および造形精度の観点から好ましくは0.1〜20時間、さらに好ましくは0.1〜12時間である。
該水溶解時間は、サポート材を構成する(F)、(G)、(D)の成分について、それらの種類および使用量を選択することにより、上記範囲に調整することができる。
【0065】
[サポート材の硬化物のサポート力]
本発明におけるサポート力とは、サポート材の硬化物がモデル材の硬化物を支える性能であり、後述する方法で測定される、サポート材の硬化物のデュロメータ硬さ(単位:HDA)で表すことができる。
該サポート力は、光造形品の造形精度およびサポート材の硬化物の水への溶解性の観点から好ましくは17〜35、さらに好ましくは20〜30である。
該サポート力は、サポート材を構成する(F)、(G)、(D)の成分について、それらの種類および使用量を選択することにより、上記範囲に調整することができる。
【0066】
本発明のサポート材は、インクジェット光造形法で光造形品を形成するモデル材と、該光造形品の光造形時の形状を支えるサポート材を組み合わせてなる二液型光硬化性樹脂組成物におけるサポート材として用いられる。二液型光硬化性樹脂組成物において、併用されるモデル材としては公知のモデル材が使用できるが、光硬化時および硬化後の水または吸湿による膨潤変形の少なさ、およびサポート材との非相溶性による光造形品の優れた造形精度と機械物性の観点から、上記の本発明のモデル材を使用することが好ましい。
【0067】
[光造形品の製造方法]
本発明の光造形品は、後述する光造形装置を用いて通常以下の手順で製造される。
(1)二液型光硬化性樹脂組成物の製造
本発明のモデル材および本発明のサポート材を用いた二液型光硬化性樹脂組成物について説明する。
(1−1)モデル材の製造
モデル材の硬化性樹脂成分(A)〜(D)、および必要により加えられるその他の添加剤(E)を、混合撹拌装置等を用いて均一混合し、モデル材の樹脂組成物を製造する。
(1−2)サポート材の製造
サポート材の構成成分(F)、(G)、(D)、および必要により加えられるその他の添加剤(E)を、混合撹拌装置等を用いて均一混合し、サポート材の樹脂組成物を製造する。
【0068】
(2)三次元造形システムを用いた光造形品の製造
図1は、インクジェット方式の三次元造形システムの概略図である。図1に示すように、このシステムは、パソコンなどの1と、この1と接続される三次元造形装置2とから構成されている。1は、造形すべき物体の三次元CADデータの入力を受け付け、この入力されたCADデータを三次元造形用のデータとして、例えばSTL(Stereo Lithographyの略)データに変換し、更に、この三次元STLデータから、Z方向にスライスした各レイヤ(層)のデータを生成する。
【0069】
詳細には、造形するワークに対応するモデル材のデータに加え、造形時にモデル材を支持するためのサポート材のデータも生成する。一般的には、例えばZ方向において、下方位置のモデル材の幅より、上方位置のモデル材の幅が大きく、いわゆるオーバーハングしている部分がある場合、1にインストールされているソフトウエアにより、下方位置のモデル材のX、Y方向の周囲にサポート材を配置することにより、このオーバーハング部分を下方より支持するように自動的にサポート材が設けられるようになっている。
【0070】
更に、1では、三次元造形装置2の保有する造形空間内における、造形用の三次元データのX、YならびにZ方向における位置決めならびに姿勢の決定を、STLデータを用いて行う機能も有している。より具体的には、1の画面上に、三次元造形装置2の保有する造形テーブル上の造形空間を三次元的に表現した仮想三次元空間を表示するとともに、この空間の初期設定位置に、造形すべき物体の三次元のSTLデータを表示し、この画面上において、マウスやカーソルなどのポインティングデバイスを用いて、造形すべき物体の三次元のSTLデータを、三次元造形装置2の保有する造形空間に対して、所望の位置並びに姿勢を決定することができる。
【0071】
三次元造形装置2は、上述したZ方向にスライスした各レイヤ(層)のデータを1から一括または各レイヤ単位で受け取り、各レイヤのデータに基づいて、三次元造形装置2の有する、後述する二次元プリンタヘッドを主走査方向(X方向)ならびに副走査方向(Y方向)に走査させるとともに、モデル材吐出用のプリンタヘッドからモデル材とサポート材吐出用のプリンタヘッドからサポート材を吐出することにより、各層の形成を行うものである。
【0072】
図2ならびに図3は、三次元造形装置2の構成を示す概略図であり、図2は側面図、図3は、平面図である。
図に示すように、三次元造形装置2は、Z方向に移動可能な造形テーブル21と、この造形テーブル上にモデル材を吐出するためのモデル材用のプリンタヘッド22と、この造形テーブル上にサポート材を吐出するためのサポート材用のプリンタヘッド23と、プリンタヘッド22ならびに23から吐出され、造形テーブル21上に形成された層の上面を平滑にするために、余分なモデル材ならびにサポート材を除去するためのローラ24と、塗布された少なくともモデル材を光硬化させるためのUV光源25とを有する。
【0073】
上述したプリンタヘッド22、23と、平滑化のためのローラ24と、UV光源25は、プリンタヘッドモジュール26に位置決めされて搭載され、図示しない駆動手段によって、造形テーブル21の上方において、主走査方向(X方向)ならびに副走査方向(Y方向)に一体的に駆動される。
【0074】
図4は、各プリンタヘッド22ならびに23のひとつを下方から見た概略図である。図4に示すように、各プリンタヘッド22ならびに23は、造形デーブルに対向する面に、副走査方向(Y方向)に所定の間隔を持って設けられる、モデル材やサポート材を吐出するための複数のオリフィスを有している。
【0075】
図2において、左側から右側に移動する主走査方向(往路)において少なくともプリンタヘッド22ならびに23からモデル材とサポート材を造形テーブル上に吐出する場合、ローラ24は、上述した主走査方向の右端部から左方向に移動する復路において作用するようになっており、その際のローラの回転方向は、図に示す矢印方向、つまり時計回りに回転する。
言い換えれば、ローラ24が作用する時点のプリンタヘッドモジュール26が走査する方向と同じ向きに回転するように制御されることが好ましい。
【0076】
UV光源25は、副走査方向に沿って伸びており、その長さは少なくとも、各プリンタヘッドに設けられるすべてのオリフィスを含む長さを有することが望ましい。
また、UV光源25としては、光硬化型の樹脂を硬化させるために一般的によく用いられるUVランプまたはLEDを用いることが好ましい。
また、造形テーブル21は、図示しない駆動手段によって、各レイヤ(層)に対応する各スライスデータに基づいて各レイヤ(層)を形成する毎に、次のレイヤの形成に先だって、各レイヤの厚み分だけ、下方(Z方向)に移動する。
【0077】
図5は、各プリンタヘッド22ならびに23に対するモデル材ならびにサポート材を供給する材料供給システムの概略図である。
各プリンタヘッド22ならびに23に対しては、モデル材ならびにサポート材のカートリッジ27ならびに28が各々接続され、その接続経路途中に各々供給用ポンプ29ならびに30が設けられている。各カートリッジ27ならびに28は、内部のモデル材またはサポート材がなくなると、交換可能となっている。
【0078】
次に、上述したインクジェット方式の三次元造形システムを用いた三次元造形方法について述べる。
三次元造形のためのCADデータが1に入力されると、STLデータに変換されるとともに、上述した画面上にて、三次元造形装置2の保有する造形空間内における三次元的なデータ(モデル)の姿勢を決定した後、1からZ方向の各スライスデータが三次元造形装置2に送られる。
三次元造形装置2は、プリンタヘッドモジュール26を主走査方向に往復動作させるとともに、その往復動作中に、受け取った各スライスデータに基づき適切な位置にモデル材とサポート材とを各プリンタヘッド22ならびに23から吐出制御させることにより、各スライスデータに対応する各層を造形テーブル上に積層していく。
各層には少なくともモデル材がプリンタヘッド22から適切な位置に吐出され、必要に応じて、サポート材もプリンタヘッド23から適切な位置に吐出され各層が造形されることになる。
【0079】
更に、例えば、図2の左から右方向(往路)にプリンタヘッドモジュール26が移動する過程において、各プリンタヘッド22ならびに23からモデル材とサポート材が吐出される場合、その復路(図2の右から左方向)の過程において、ローラ24が既に造形テーブル21上に塗布されているモデル材とサポート材から形成される表面の平滑化を図るために、余分な材料を取り除くため、モデル材とサポート材の表面に対して接触しつつ、上述した回転方向に回転しつづける。
そして、このローラ24によって平滑化された表面に対して、プリンタヘッドモジュール26に載置されるUV光源25から紫外線を照射することによって、造形テーブル21上に形成されている最上面に位置する層の硬化を行わせる。なお、各層は、少なくともモデル材によって形成され、必要に応じてサポート材を加えて形成されることは言うまでもない。
従って、各層の形成は、各プリンタヘッド22ならびに23からモデル材とサポート材の吐出により、造形テーブル21上の最上面に位置する層の形成、その層の表面をローラ24による平滑化、平滑化された、造形テーブル21上の最上面に位置する層に対する紫外線の照射による層の硬化によって行われ、これらの工程を繰り返すことにより、三次元のモデルを造形することになる。
【0080】
図6は、三次元造形装置2を作動させ、三次元の造形物の作成途中を示す概略図である。図に示すMの部分がモデル材によって各層が積層されている部分であり、Sの部分がサポート材によって各層が積層されている部分である。
上述したように、Mの部分のモデル材がZ方向の下方から上方に略Sの字状になっているため、図に示すモデル材の左右の湾曲している部分を支持するために、Sの部分にサポート材が設けられるように造形させている。
【0081】
図7の(A)は、このようにして造形が完了したサポート材を含むモデルを示す概略図であり、図7の(B)は、造形が完了したサポート材を含むモデルからサポート材を除去したモデルを示す概略図である。
図7の(A)に示すように、三次元造形装置2により、三次元のモデルの成形が完了した時点では、このモデルには、成形中のモデル材の支持のためのサポート材が一体的に形成されている。このため、このサポート材は、水溶解性の材料からなっているため、例えば水に浸けることにより、図7の(B)に示すようなモデル材のみからなるモデルを得ることができる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0083】
製造例1
反応容器に、2−ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン付加物[商品名「プラクセル
FA−4D」、ダイセル化学工業(株)製、付加モル数4]100部、IPDIのヌレート化物[商品名「VESTANAT T1890」、デグサジャパン(株)製]64部、およびウレタン化触媒[ビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液)以下同じ。]0.03部を仕込み、80℃で12時間反応させ、ウレタンアクリレート(C−1)を得た。(C−1)のMnは1,730であった。
【0084】
製造例2
反応容器にポリテトラメチレングリコール[商品名「PTMG−1000」、三菱化学(株)製、Mn1,000]100部、IPDI
33.3部およびウレタン化触媒0.05部を仕込み、80℃で4時間反応させ、その後2−ヒドロキシエチルアクリレート11.6部を加え(NCO/OH当量比=1/1)、80℃で8時間反応させてウレタンアクリレート(C−2)を得た。(C−2)のMnは1,606であった。
【0085】
製造例3
撹拌機を備えた反応容器に、TDI28.59部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.021部、ジブチル錫ジラウレート0.072部およびフェノチアジン0.007部を仕込み、これらを撹拌しながら液温度が10℃以下になるまで氷冷した。数平均分子量1000のオキシプロピレングリコール26450部を加え、液温が35℃以下になるように制御しながら2時間攪拌して反応させた。次に、2−ヒドロキシプロピルアクリレート9.70部を滴下し、さらに、ヒドロキシエチルアクリレート24.74部を滴下して、液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネート基濃度が0.1%以下になった時を反応終了とし、ウレタンアクリレート「UA−1」を得た。(特開2010−155926号公報に記載の[合成例1:ウレタンアクリレート(B)の合成]の方法)
【0086】
実施例1−1〜1−7、比較例1−1〜1−5
表1に示す配合組成(部)で均一混合して、実施例および比較例の各モデル材を得た。後述の<評価項目1>で各モデル材を評価した。結果を表1に示す。
ここにおいて、比較例1−1は、前記の、特許文献1(特開平1−204915);比較例1−2、1−3は、特許文献13(特開2010−155926号公報);比較例1−4は、特許文献10(EP1274551B1)にそれぞれ記載のモデル材を使用した。
【0087】
実施例2−1〜2−13、比較例2−1〜2−6
表2に示す配合組成(部)で均一混合して、実施例および比較例の各サポート材を得た。後述の<評価項目2>で各サポート材を評価した。結果を表2に示す。
ここにおいて、比較例2−1、2−2は、前記特許文献10(EP1274551B1);比較例2−3、2−4は、特許文献12(特開2010−155889号公報)にそれぞれ記載のサポート材を使用した。
【0088】
実施例3−1〜3−4、比較例3−1〜3−3
表3に示すように組み合わせて、後述の<評価項目3>でモデル材/サポート材の関係を評価した。結果を表3に示す。
ここにおいて、比較例でのモデル材/サポート材の組合せは、比較例3−1、3−2は、前記の特許文献12及び13に記載のものの組合せ、また比較例3−3は、特許文献10に記載のものの組合せである。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
なお、表1、2における記号が示す内容は以下のとおりである。
A−1:イソボルニルアクリレート[商品名「ライトアクリレートIBXA」、共栄社化学(株)製、平均官能基数1]
A−2:アクリロイルモルフォリン[商品名「ACMO」、(株)興人製、平均官能基数1]
A−3:2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート[商品名「エポキシエステルM−600A」、共栄社化学(株)製、平均官能基数1]
A−4:フェノキシエチルアクリレート[商品名「SR−339」、サートマー(株)製、平均官能基数1]
A−5:1−アダマンチルアクリレート[商品名「1−AdA」、大阪有機化学工業(株)製、平均官能基数1]
A−6:ステアリルアクリレート[商品名「STA」、大阪有機化学工業(株)製、平均官能基数1]
【0093】
B−1:ジシクロペンタンジメチロールジアクリレート[商品名「ライトアクリレートDCP−A」、共栄社化学(株)製、平均官能基数2]
B−2:ビスフェノールAのPO2モル付加物ジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物[商品名「エポキシエステル3002A」、共栄社化学(株)製、平均官能基数2]
B−3:トリメチロールプロパントリアクリレート[商品名「SR−351」、サートマー(株)製、平均官能基数3]
B−4:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート[商品名「ライトアクリレート1,6HX−A」、共栄社化学(株)製、平均官能基数2]
【0094】
C−3:ウレタンアクリレートオリゴマー[商品名「Photomer6010」、コグニス(株)製、平均官能基数2]
D−1:1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド[商品名「ルシリンTPO」、BASF(株)製]
D−2:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア184」、チバスペシャルティケミカルズ(株)製]
D−3:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン[商品名「イルガキュア907」、チバスペシャルティケミカルズ(株)製]
D−4:1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパン−1−オン[商品名「イルガキュア2959」、チバスペシャルティケミカルズ(株)製]
【0095】
E−1:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン[商品名「BYK307」、ビックケミージャパン(株)製]
E−2:ヒドロキノンモノメチルエーテル[和光純薬工業(株)製]
E−3:カーボンブラック[商品名「MHIブラック#220」、御国色素(株)製]
【0096】
F−1:N−ヒドロキシエチルアクリルアミド[商品名「HEAA」、(株)興人製、平均官能基数1]
F−2:アクリロイルモルフォリン[商品名「ACMO」、(株)興人製、平均官能基数1]
F−3:ポリエチレングリコールモノアクリレート(Mn約336)[商品名「BisomerPEA6」、コグニス(株)製、平均官能基数1]
G−1:PPG(Mn約400)[商品名「サンニックスPP−400」、三洋化成工業(株)製]
G−2:PPG(Mn約1,000)[商品名「サンニックスPP−1000」、三洋化成工業(株)製]
G−3:水
G−4:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(Mn約2,000)[商品名「ニューポールPE−61」、三洋化成工業(株)製]
G−5:ポリオキシプロピレングリセリルエーテル(Mn約1,500)[商品名「サンニックスGP−1500」、三洋化成工業(株)製]
G’−1:プロピレングリコール[和光純薬工業(株)製]
G’−2:PEG(Mn約400)[商品名「PEG−400」、三洋化成工業(株)製]
【0097】
E−4:2,4−ジフェニル−4−メチル−ペンテン[和光純薬工業(株)製]
E−5:ジ亜リン酸[和光純薬工業(株)製]
E−6:フェノチアジン[和光純薬工業(株)製]
【0098】
H−1:ポリエチレングリコールジアクリレート(Mn約600)[商品名「SR−610」、サートマー(株)製、平均官能基数2]
H−2:ポリエチレングリコールジアクリレート(Mn1,000)[商品名「SR−740A」、サートマー(株)製、平均官能基数3]
【0099】
[1]モデル材の評価方法
ガラス板[商品名「GLASS PLATE」、アズワン(株)製、200mm×200mm×厚さ5mm]の上面四辺に厚さ1mmのスペーサーを配し、10cm×10cmの正方形に仕切る。該正方形内に表1の各樹脂組成物(モデル材)を注型した後、同様の別のガラス板を重ねて載せる。紫外線照射装置[型番「ECS301G1」、アイグラフィックス(株)製。以下同じ。]により、紫外線を300mJ/cm照射した後、硬化物をガラス板から離型し、カッターで幅5mm、長さ50mmの形状に切り出して成形物の試験片を得た。該試験片について下記の方法で性能評価を行った。評価結果は試験片5枚の平均値で示す。
【0100】
<評価項目1>
(1)ガラス転移点(Tg)(℃)
動的粘弾性測定(DMA)装置[型番「Rheogel−E4000」、(株)ユービーエム製]を用いて、DMA法により、引張モード、10Hzで測定した。
【0101】
(2)水膨潤率(%)
ASTM D570の吸水率測定法に準じて測定した。膨潤率(%)は下記の式から求めた。但し、水はイオン交換水を用い、水温は25℃で測定した。

水膨潤率(%)
=100×(水浸漬後の重量−水浸漬前の重量)/(水浸漬前の重量)

(3)水浸漬時の膨潤変形(mm)
上記(2)と同様に水浸漬させた試験片を水中から取り出してすぐに台上に水平に置いたときに、反りが認められる試験片の端部と台表面との間の最大距離(mm)を測定し、水浸漬時の膨潤変形とした。
【0102】
(4)破断強度(N/mm
オートグラフ[(株)島津製作所製]を用いて、試験速度50mm/分で引張り、JIS K7113に準じて引張破断強度を測定し、破断強度とした。
(5)破壊エネルギー(脆さ)(J)
上記(4)での測定の際、破断するまでに加わったエネルギーを、破断までの応力−ひずみ曲線の面積から求め、破壊エネルギーとした。破壊エネルギーが大であるほど靱性に優れ、小であるほど脆いことを示す。
【0103】
(6)吸湿時の変形(mm)
試験片の長さ方向の片端をチャックで掴み(掴み距離5mm)、水平固定した状態で、恒温恒湿器(40℃、90%RH)中で24時間静置後、重力による変形で垂れ下がった試験片の固定端部とは反対側の片端の当初の水平面からの距離を測定し、吸湿時の変形(mm)とした。
(7)保管時の変形(mm)
上記(6)と同様に試験片を水平固定した状態で、恒温恒湿器(40℃、10%RH)中で24時間静置後、重力による変形で垂れ下がった試験片の固定端部とは反対側の片端の当初の水平面からの距離を測定し、保管時の変形(mm)とした。
【0104】
[2]サポート材の評価方法
<評価項目2>
(1)水溶解時間(h)
スライドガラス[商品名「MICRO SLIDE GLASS S1225」、松浪硝子工業(株)製、76mm×26mm×厚さ1.2〜1.5mm。以下同じ。]の上面に、表2の各樹脂組成物(サポート材)を1g採取し、紫外線照射装置により、紫外線を300mJ/cm照射して硬化物を得た。該硬化物について下記の方法で水溶解時間(水溶解性評価)を測定した。
100mlのビーカーに、イオン交換水を100ml入れ、ここに上記硬化物を浸漬した。1時間毎に硬化物を目視で観察し、浸漬開始から完全溶解までに要した時間を水溶解時間とした。
【0105】
(2)サポート材の除去性
シリコーンゴム栓[商品名「シリコーンゴム栓No.1)」、(株)テラオカ製、上径16mm、下径12mm、高さ19mm]加工して中央部を縦方向に貫通する直径4mmの孔を有するものとし、これをスライドガラスの上に孔が上を向くように置き、孔にサポート材を流し込んで満たし、紫外線照射装置により、紫外線を1,000mJ/cm照射して硬化物を得た。次に、ビーカーに入れた100mlのイオン交換水に該硬化物をシリコーンゴム栓ごと浸漬した。24時間後にシリコーンゴム栓を取り出し、サポート材の除去性を下記の基準で評価した。
<評価基準>
○:サポート材の除去性良好。(孔が完全に貫通)
△:サポート材の除去性不十分(孔が貫通していない部分あり)
×:サポート材の除去性不良。(孔が膨潤した硬化物で詰まっている)
【0106】
(3)サポート力(HDA硬さ)
サポート力とは、サポート材の硬化物がモデル材の硬化物を支える性能であり、JIS K7215に準じて、タイプAデュロメータ硬さによって評価した。評価サンプルは次のように作成し、硬度測定は厚さ約5mmで行った。
ガラス板[商品名「GLASS
PLATE」、アズワン(株)製、200mm×200mm×厚さ5mm]の上面四辺に厚さ5mmのスペーサーを配し、3cm×3cmの正方形に仕切る。該正方形内に表1の樹脂組成物を注型した後、空気が入らないように同様の別のガラス板を載せる。(空気が入った場合はガラス板を傾けて抜く)。紫外線照射装置により、紫外線を1,000mJ/cm2照射した後、ガラス板から離型し成形物を得た。
<評価基準>
◎:サポート力が十分にある。(HDA25〜36未満)
○:サポート力がある。
(HDA17〜25未満)
△:サポート力が不十分。
(HDA10〜17未満)
×:サポート力がない。
(HDA10未満)
HDAが36以上の場合、サポート材除去性が悪化する。
【0107】
[3]モデル材/サポート材の関係評価方法
<評価項目3>
(1)モデル材/サポート材の分離性
10mlのメスシリンダー[商品名「TPXメスシリンダー」、(株)テラオカ製]に、表2のサポート材(実施例2−1〜2−13または比較例2−1〜2−6のうちの1種)の樹脂組成物を3g入れ、その上から、表1のモデル材(実施例1−1〜1−7または比較例1−1〜1−5のうちの1種)の樹脂組成物3gをサポート材に混ざらないように静かに入れた。光が入らないようにメスシリンダー全体をアルミ箔で覆い24時間静置後の様子を観察して、モデル材とサポート材の分離性の観点から下記の基準で評価した。
<評価基準>
◎:分離性良好(モデル材とサポート材が界面で完全に分離している)
○:分離性が十分認められる(モデル材とサポート材が界面でほぼ分離している)
△:分離性が認められるが不十分(モデル材とサポート材は分離しているが、界面が白濁し相溶状態)
×:分離性がない。(モデル材とサポート材が全体的に白濁し相溶)
【0108】
(2)モデル材/サポート材の接触部の状態(水浸漬後)
スライドガラスの上面に、モデル材とサポート材の組み合わせで、相互に接触するように各樹脂組成物を1gずつ隣接させて採取し、紫外線照射装置により、紫外線を300mJ/cm照射して硬化物を得た。次に、ビーカーに入れた100mlのイオン交換水に該硬化物をスライドガラスごと浸漬した。24時間後に取り出し、サポート材が接触していたモデル材の硬化物表面の状態を下記の基準で評価した。
<評価基準>
○:表面はモデル材単独硬化の場合と同じ。(サポート材の接触面にサポート剤の硬化物が残らない。)
△:表面に少しべたつきがある。(サポート材の接触面に少しのサポート材の硬化物が残る。)
×:表面がゲル状に膨潤している。(サポート材の接触面に多くのサポート剤の硬化物が残る。モデル材とサポート材が混合。)
【0109】
(3)モデル材/サポート材の境界部の造形精度
上記<評価項目3>(2)と同様に硬化物を作成するが、紫外線照射装置で照射する直前に、針(1.0mm径)をモデル材中に垂直に突き刺し先端をガラス面まで到達させた後、そのままサポート材側に水平移動してモデル材がサポート材側に細く伸びる部分を作成する。この状態ですぐに紫外線照射して得られた硬化物を上記<評価項目3>(2)と同様にイオン交換水に浸漬した。24時間後に取り出し、モデル材とサポート材の境界部の状態を下記の基準で評価した。
<評価基準>
○:境界部の造形精度良好(細く伸ばしたモデル材がほぼそのまま硬化して残っている。)
△:境界部の造形精度やや不良[細く伸ばしたモデル材の根元部分(断面積が約1mm2)のみが硬化して残っている。]
×:造形精度不良(細く伸ばしたモデル材の部分がなくなり、伸ばした箇所が特定できない。)
【0110】
表1の結果から、本発明のモデル材の樹脂組成物(実施例1−1〜1−7)を硬化させてなる成形物は、比較のモデル材の樹脂組成物(比較例1−1〜1−5)を硬化させてなる成形物に比べて、水による膨潤変形や、乾燥時の変形が少ないため、モデル材の光造形時における造形精度を向上できるだけでなく、モデル材の硬化後の光造形物の吸湿変形等も抑制することができ、より優れたものであることがわかる。
表2の結果から、本発明のサポート材の樹脂組成物(実施例2−1〜2−13)を硬化させてなる硬化物は、比較のサポート材の樹脂組成物(比較例2−1〜2−6)を硬化させてなる硬化物に比べて、水溶解性、サポート力の両立において、より優れることがわかる。
また、表3の結果から、本発明のモデル材の樹脂組成物(実施例1−1、1−6)は、比較のモデル材の樹脂組成物(比較例1−2、1−4)に比べて、サポート材の樹脂組成物と相溶し難く混ざり合わないため、硬化するまでの間に、モデル材とサポート材との混合部分がほとんどなく、硬化物の膨潤変形や諸物性低下および造形精度のズレ等を抑制することができ、より優れたものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の、インクジェット光造形用の二液型光硬化性樹脂組成物を構成するモデル材は、光硬化時および硬化後の水または吸湿による膨潤または吸湿変形が極めて少なく、また、サポート材の光硬化物は水溶解性に優れ、光造形後の除去が容易であり、得られる光造形品は造形精度および機械物性に優れることから、該二液型光硬化性樹脂組成物は立体モデルの製造用材料として好適に用いることができ極めて有用である。
【符号の説明】
【0112】
1 パーソナルコンピュータ(PC)
2 三次元造形装置
21 Z方向に移動可能な造形テーブル
22 モデル材用のプリンタヘッド
23 サポート材用のプリンタヘッド
24 ローラ
25 UV光源
26 プリンタヘッドモジュール
27 モデル材のカートリッジ
28 サポート材のカートリッジ
29 供給用ポンプ
30 供給用ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SP値の加重平均値9.0〜10.3の硬化性樹脂成分を含有してなるインクジェット光造形法における光造形品形成用モデル材。
【請求項2】
硬化性樹脂成分が、単官能エチレン性不飽和単量体(A)、ウレタン基を含有しない多官能エチレン性不飽和単量体(B)、ウレタン基含有多官能エチレン性不飽和単量体(C)および光重合開始剤(D)を含有してなる請求項1記載のモデル材。
【請求項3】
モデル材の重量に基づいて、(A)の含有量が50〜90%、(B)の含有量が3〜25%、(C)の含有量が5〜35%、(D)の含有量が0.1〜10%である請求項2記載のモデル材。
【請求項4】
10重量%以下の水溶性成分を含有する請求項1〜3のいずれか記載のモデル材。
【請求項5】
モデル材の光硬化物の水膨潤率が1重量%以下である請求項1〜4のいずれか記載のモデル材。
【請求項6】
モデル材の光硬化物のガラス転移点が50〜120℃である請求項1〜5のいずれか記載のモデル材。
【請求項7】
水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(F)、オキシプロピレン基を含むアルキレンオキサイド付加物および/または水(G)、並びに光重合開始剤(D)を含有してなるインクジェット光造形法における光造形品の光造形時の形状支持用サポート材。
【請求項8】
(G)が数平均分子量100〜5,000であるポリオキシプロピレングリコールおよび/または水である請求項7記載のサポート材
【請求項9】
サポート材の重量に基づいて、(F)の含有量が3〜45%、(G)の含有量が50〜95%、(D)の含有量が0.1〜10%である請求項7または8記載のサポート材。
【請求項10】
(G)が、(F)と相溶し、かつ(F)の光硬化物と相溶しない水溶性非反応性化合物である請求項7〜9のいずれか記載のサポート材。
【請求項11】
サポート材の光硬化物が、17〜35HDAのデュロメータ硬さを有する請求項7〜10のいずれか記載のサポート材。
【請求項12】
インクジェット光造形法で光造形品を形成するモデル材と、該光造形品の光造形時の形状を支えるサポート材を組み合わせてなる二液型光硬化性樹脂組成物において、該モデル材が請求項1〜6のいずれか記載のモデル材であり、該サポート材が請求項7〜11のいずれか記載のサポート材であるインクジェット光造形用の二液型光硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
インクジェット光造形法により、請求項12記載の組成物を光硬化させてなる光造形品。
【請求項14】
インクジェット光造形法による光造形品の製造方法において、請求項13記載の組成物を三次元造形システムを用いて製造することを特徴とするインクジェット光造形法による光造形品の製造方法。
【請求項15】
三次元造形システムが、パーソナルコンピュータ(PC)と、該PCと接続される三次元造形装置から構成される請求項14記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−111226(P2012−111226A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208389(P2011−208389)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】