説明

インクジェット印刷法及びインクジェットインクセット

下記工程を順に含むインクジェット印刷法:a)同じ色及び色濃度を持つが異なる組成を持つ二つ以上のカラーインクジェットインクをインクジェットプリンターに対して準備する;b)前記二つ以上のカラーインクジェットインクを制御された量で混合する;c)前記二つ以上のカラーインクジェットインクの混合物をインクジェットプリンターでインク受容体上に印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクが異なる種類のインク受容体上に噴射される、インクジェット印刷法及びインクジェットインクセットに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷では、インク流体の小滴は印刷装置とインク受容体の間の物理的接触なしにインク受容体表面上に直接印刷される。印刷装置は印刷データを電子的に記憶し、小滴を像に従って噴射するための機構を制御する。印刷は、インク受容体を横切って印刷ヘッドを動かすか又はその逆又はその両方によって達成される。
【0003】
インクジェットインクをインク受容体上に噴射するとき、インクは一般的には、液体ビヒクル及び一つ以上の固形物、例えば色素又は顔料及びポリマー結合剤を含む。かかるインクの最適な組成が、使用される印刷法及び印刷されるインク受容体の性質に依存することはすぐに理解されるだろう。インク組成は大まかに以下のものに分類されることができる:
・水系、乾燥機構は吸収、浸透及び蒸発を伴う;
・溶剤系、乾燥は主に蒸発を伴う;
・油系、乾燥は吸収及び浸透を伴う;
・ホットメルト又は相変化、インクは放出温度では液体であるが室温で固体であり、乾燥は固形化によって代替される;
・UV硬化性、乾燥は重合化によって代替される。
【0004】
最初の三つの種類のインク組成は多少吸収性の受容媒体のためにより好適であり、一方ホットメルトインク及びUV硬化性インクは通常、非吸収性インク受容体上に印刷されることは明らかである。
【0005】
しかしながら、実質的に非吸収性のインク受容体上のUV硬化性インクの挙動及び相互作用は吸収性インク受容体上の水系インクと比較して極めて複雑であることを見出した。特に、インク受容体上のインクの良好かつ制御された広がりは問題があることが証明され、接着問題は異なる種類の非吸収性インク受容体を使用するときに観察されることがある。同じ問題は結合剤を含む溶剤系インクジェットインクが異なる種類の非吸収性インク受容体上に噴射されるときに観察された。
【0006】
これらの問題にアプローチする一つの方法は異なる種類の支持体のために異なるインクセットを開発して使用することであるが、プリンターのインク及び印刷ヘッドの変更は極めて時間を消費し、工業的印刷環境に対しては本当に価値ある解決策ではないので、これは好ましい解決策ではない。それゆえ、一般的なアプローチはインク受容体の表面化学を好適な表面層被覆で又はプラズマもしくはコロナ処理のような予備処理によって変更することである。
【0007】
コロナ放電処理及びプラズマ処理は支持体を処理するために使用される装置のコスト、複雑性及び維持管理を増加する。支持体は、支持体の処理を干渉し、従ってインクの均一な分散及び接着をもたらさない有意な不純物又は不整を含んでもよい。
【0008】
噴射前に表面層の適用によって異なるインク受容体上で同じインクジェットインクセットを使用する他の可能性はまた、インクジェットプリンターの複雑性を増大する。一般的に、表面層は例えばEP 1671805 A(AGFA)及びUS 2003021961(3M)のインクジェット印刷法のようにインクジェットインクを噴射する前に被覆及び乾燥又は硬化されるが、それはWO 00/30856(XAAR)のように湿式未硬化表面層を残すこともできる。
【0009】
しかしながら、全ての異なる支持体のために好適な表面層の単一組成は利用可能でない。WO 2006/111707(SUN CHEMICAL)はインクジェット印刷の工程を開示し、そこではi)プライマーが支持体材料に適用される;ii)インクはプライマ−塗りされた支持体上にインクジェット印刷される;iii)印刷品質に関する特徴が評価される;iv)プライマーの組成は印刷品質に関連する評価特性に依存して調整される;及びv)調整されたプライマー組成は支持体材料に適用され、インクはプライマー塗りされた支持体材料上にインクジェット印刷されて所望の製品を与える。表面層はインク層の厚さを実質的に増加し、それはインク層の異なる外観と可撓性の減少をもたらしうる。
【0010】
インクジェットインクが噴射前に無色の液体又は他のカラーインクと混合されるインクジェット印刷法もまた、調査された。
【0011】
US 6550892(KODAK)は、無色液体インクを異なる色の液体インクと混合し、インク混合物を印刷ヘッドの放出室に送出することによって選択可能なカラーインクの小滴を受容体に送出するためのドロップオンデマンドのインクジェット印刷システムを開示する。また、US 6050680(CANON)は、着色剤を含有する第一インクと着色剤を含有しない第二インクの混合によって各色について異なる濃度を有する複数のインクで像を記録できるインクジェット記録装置に関する。
【0012】
US 6097406(KODAK)は、複数の着色剤又は着色剤プリカーサが混合されて所望の着色剤を生成する連続色調像を印刷するためのインクジェット印刷装置を開示する。
【0013】
着色インクを混合する代わりに、US 4614953(LAITRAM)は、固体色素をキャリア液中に噴射して着色インクを形成することによって単一蒸気流のインクを利用するカラーインクジェット印刷機構を開示する。その機構は、予備混合能力のため、三色インクでのディザー技術を使用して可能であるものより幅広い範囲の色調が可能である。
【0014】
US 5854642(CANON)は、同じ色調を有するインクを含有するインク瓶を開示し、衣服に対して各々の種類の繊維に適応された異なる組成物が与えられる。インクは、使用される着色剤の種類によって組成が異なる。
【0015】
プリンターのいかなる複雑な又はコストのかかる適応を要求せずに従来のインクジェットプリンターを使用して幅広い種類のインク受容体上に一貫した画像品質でインクジェットインクを印刷できることが望ましいだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ガラス、金属又は重合体表面のような非吸収性支持体を含む幅広い種類の異なるインク受容体上に印刷することは、頻繁に首尾一貫しない画像品質及び/又はインク受容体へのインクの接着問題を起こす。支持体の変更はインクジェットインクセット、第二のインクジェットプリンター又は支持体の幾つかの処理の厄介な変更を必要とすることが多く、それらは生産性の理由のために全て望ましくない。
【0017】
本発明の目的は、画像品質の首尾一貫性、支持体への画像の接着性のような物理的特性、及び生産性について妥協することなく従来のインクジェットプリンターを使用して幅広い種類の異なるタイプの支持体を取扱うことができるインクジェットインクセット及びインクジェット印刷法を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、以下の記載から明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
噴射前にインクジェットインクを無色液体及びカラーインクと混合することは、あまり適切でない混合によって着色剤濃度の変化を起こし、それはたとえインクジェットプリンターの色管理に対する適応に時間を消費しないとしても色域又は画像品質の差に導く。
【0020】
ほぼ同じ濃度で同じ着色剤を含有するが、残りの部分、即ちいわゆるインクキャリアが良く選択された異なる組成を持つインクを混合することによって、インクジェットプリンターの色管理を調整する必要なしで幅広い種類の支持体について所望の分散及び/又は接着及び画像品質を示す画像を生成できることを見出した。
【0021】
本発明の目的は、下記工程を順に含むインクジェット印刷法で実現される:
a)同じ色及び色濃度を持つが異なる組成を持つ二つ以上のカラーインクジェットインクをインクジェットプリンターに対して準備する;
b)前記二つ以上のカラーインクジェットインクを制御された量で混合する;そして
c)前記二つ以上のカラーインクジェットインクの混合物をインクジェットプリンターでインク受容体上に印刷する。
【0022】
本発明の目的はまた、同じ色及び色濃度を持つが異なる組成を有する二つ以上のカラーインクジェットインクを含むインクジェットインクセットで実現される。
【発明の効果】
【0023】
放射線硬化性インクジェット印刷では、同じ色及び色濃度を有するカラーインクジェットインクを混合する方法は高い硬化スピードを得るために有利に使用された。カラーインクジェットインクの安定性は一つのインクに光開始剤を、同じ色の別のカラーインクに共開始剤を含めることによって改良された。同じ色及び色濃度の異なるカラーインクジェットインクに高い濃度の光開始剤と重合相乗剤を含めることによって高い硬化スピードを示すインクジェットインク混合物が作られることができる。
【0024】
同じ色及び色濃度の二つ以上のカラーインクジェットインクの混合は、以下のものに関する多くの目的のために有利に利用されることができる:
・画像品質、例えばドットサイズ、光沢、線品質及びにじみ;
・インクの物理的特性、例えば粘度、温度、保存安定性、表面張力、乾燥時間、硬化スピード、支持体への接着性、可撓性及びインク層の硬さ;及び
・プリンターの噴射性能、例えば待ち時間、ノズル板の貯留(pooling)、欠乏ノズル(failing nozzles)、小滴形成、及びサテライト(satellite)形成。
【0025】
インクジェットインクと支持体の間の光沢の差は通常、画像品質を月並みのものに導く。高い又は低い光沢プリントをもたらす対応するカラーインクを適切な比率で混合することによって、インクジェットインクの光沢は特定の支持体のそれとマッチすることができ、それは改良された画像品質をもたらす。異なる光沢値を有する第二の支持体に対しては、高い光沢値を有するインクジェットと低い光沢値を有するインクジェットの別の比率が次いで選択される。
【0026】
噴射直前に同じ色及び色濃度の二つ以上のカラーインクジェットインクを混合することはまた、機密保護文書のためにセキュリティ機能を含めるように有利に開発されることができる。通常、混ぜ物のないカラーインクはそのとき蛍光化合物、燐光化合物、サーモクロミック化合物、玉虫色化合物又は磁気粒子を含む別のカラーインクと十分に選択された比率で混合される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下の図面はインクジェットプリンターにおける又はインクジェットプリンターでの同じ色及び色濃度のカラーインクジェットインクを混合するための可能な構成の単なる例である。
【0028】
【図1】図1は、第二インク「インク2」及び続いて第三インク「インク3」が制御された量で添加される管を介して第一インク「インク1」をインクジェット印刷ヘッドに供給するシステムの概略図である。
【0029】
【図2】図2は、第二インク「インク2」と第三インク「インク3」が制御された量で添加される管を介して第一インク「インク1」をインクジェット印刷ヘッドに供給するシステムの概略図である。
【0030】
【図3】図3は、第一インク「インク1」と第二インク「インク2」を制御された量でインク混合室に供給し、次いでインク混合室がインク混合物をインクジェット印刷ヘッドに送出するシステムの概略図である。
【0031】
【図4】図4は、第一インク「インク1」と第二インク「インク2」を制御された量でインク混合室に供給し、次いでインク混合室が、第三インク「インク3」が制御された量で添加される管を介して、インク混合物をインクジェット印刷ヘッドに送出するシステムの概略図である。
【0032】
【図5】図5は、第一インク「インク1」、第二インク「インク2」、及び第三インク「インク3」を制御された量でインクジェット印刷ヘッドに含まれるインク混合室(図示せず)に供給するシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
本発明を開示するときに使用される用語「インクジェットインクセット」は、インクジェットプリンターに結合されるインクジェットインクセットを意味する。それは例えば四つのインクジェットインクC,M,Y及びKを各々含む二つの別個の商業的に入手可能なCMYKインクジェットインクセットから作られることができる。但し、両CMYKインクジェットインクセットからの同じ色のインクジェットインクが本発明の条件を満たすことが必要である。あるいは、本発明に従っている、二つのシアンインクC及びC′、二つのマゼンタインクM及びM′、二つのイエローインクY及びY′並びに二つのブラックインクK及びK′を含むCC′MM′YY′KK′インクジェットインクセットを使用することもできる。
【0034】
本発明を開示するときに使用される用語「着色剤」は色素及び顔料を意味する。
【0035】
本発明を開示するときに使用される用語「色素」は、それが適用される媒体において関係する周囲条件下で10mg/L以上の溶解度を有する着色剤を意味する。
【0036】
用語「顔料」は、関係する周囲条件下で適用媒体において実際に不溶解性であり、従ってその適用媒体において10mg/L未満の溶解度を持つ着色剤として、参考のためにここに組み入れられるDIN 55943に規定される。
【0037】
本発明を開示するときに使用される用語「C.I.」はカラーインデックスの略語として使用される。
【0038】
本発明を開示するときに使用される用語「UV」は紫外線の略語として使用される。
【0039】
本発明を開示するときに使用される用語「紫外線」は100〜400ナノメートルの波長範囲の電磁放射線を意味する。
【0040】
本発明を開示するときに使用される用語「wt%」は他に特記しない限りインクの全重量に基づく重量%の略語として使用される。
【0041】
本発明を開示するときに使用される用語「化学線」は光化学反応を開始することができる電磁放射線を意味する。
【0042】
本発明を開示するときに使用される用語「ノリッシュI型開始剤」は、励起後に開裂し、すぐにラジカル反応を開始する開始剤を意味する。
【0043】
本発明を開示するときに使用される用語「ノリッシュII型開始剤」は、実際に反応を開始するフリーラジカルになる第二化合物から水素引き抜き又は電子抽出によってフリーラジカルを励起状態において形成する開始剤を意味する。第二化合物は共開始剤又は重合相乗剤と称される。相乗剤は、炭素原子を有し、窒素原子に対してα位置に少なくとも一つの水素原子を持つ化合物である。
【0044】
本発明を開示するときに使用される用語「光酸発生剤」は、化学線にさらすと酸又はヘミ酸を発生する開始剤を意味する。光酸発生剤はまた、カチオン開始剤と称される。
【0045】
本発明を開示するときに使用される用語「熱開始剤」は、熱にさらすと反応開始種を発生する開始剤を意味する。
【0046】
用語「アルキル」は、アルキル基における炭素原子の各数に対して可能な全ての変形を意味し、三つの炭素原子に対してはn−プロピル及びイソプロピル、四つの炭素原子に対してはn−ブチル、イソブチル及びターシャリブチル、五つの炭素原子に対してはn−ペンチル、1,1−ジメチル−プロピル、2,2−ジメチルプロピル及び2−メチル−ブチルなどを意味する。
【0047】
インクジェット印刷法
インクジェット印刷法は下記工程を順に含む:
a)同じ色及び色濃度を持つが異なる組成を持つ二つ以上のカラーインクジェットインクをインクジェットプリンターに対して準備する;
b)前記二つ以上のカラーインクジェットインクを制御された量で混合する;
c)前記二つ以上のカラーインクジェットインクの混合物をインクジェットプリンターでインク受容体上に印刷する。
【0048】
特定のインク受容体にインク混合物を適応させる可能性はインクセットに存在する同じ色及び色濃度のカラーインクジェットインクの数とともに増大するが、異なる支持体上の接着性及び画像品質の首尾一貫性の多くの問題が、同じ色及び色濃度の二つのカラーインクジェットインクだけを使用することによって既に解決されることができる。
【0049】
別の実施形態では、インクジェットインクセットは全ての異なる支持体を取り扱うために同じ色及び色濃度の三つのカラーインクジェットインクを含む。
【0050】
最も好ましい実施形態では、インクセットはカラー、例えばシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックカラーの各々に対して同じ色及び色濃度の二つ以上のカラーインクジェットインクを含み、そこでは異なるカラーインクは固形分及び液体成分の対応する組成を持つ。例えば、着色剤を除いて、第一イエローインクの同じ固形分及び溶剤が対応する第一シアンインクにほぼ同じ量で見出されることができ、一方第二イエローインクの異なる固形分及び溶剤が対応する第二シアンインクにほぼ同じ量でも見出される。
【0051】
別の実施形態では、インクジェット印刷法は、同じ色及び色濃度の二つ以上のカラーインクジェットインク、及び同じ色であるがより小さい色濃度の二つ以上のカラーインクジェットインクを含む、いわゆる「マルチ濃度」インクジェットインクセットを使用する。例えば、インクセットは、同じ色濃度の二つ以上の「濃いマゼンタ」インクジェットインク、及び同じ色濃度であるが「濃いマゼンタ」インクジェットインクの色濃度より小さい二つ以上の「薄いマゼンタ」インクジェットインクを含んでもよい。別の好ましい実施形態では、マルチ濃度インクジェットインクセットはマゼンタ及びシアンの色に対して濃い及び薄いインクジェットインクを含む。濃い黒及び薄い黒のインクはまた、インクジェットインクセットに存在させてもよい。
【0052】
本発明によるインクジェット印刷法は、同じ色であるがより小さい色濃度の二つ以上のカラーインクジェットインクが同じ種類の着色剤を含むインクジェットインクセットを使用することが好ましい。最も好ましくは、着色剤は同一である。
【0053】
本発明によるインクジェット印刷法では、二つ以上のカラーインクジェットインクにおける着色剤は正確に同じ量で存在させることが好ましいが、インクジェットインクを製造するときの濃度の小さな変動は許容されうる。最も好ましくは、前記二つ以上のカラーインクジェットインクの第一インクにおける着色剤の量は、前記二つ以上のカラーインクジェットインクの第二インクジェットインクにおける着色剤の量と、前記第一インクにおける着色剤の重量に基づいて好ましくは10wt%以下、より好ましくは5wt%以下だけ異なる。
【0054】
表1は、マゼンタ及びシアンインクが溶剤系インクジェットインクセットにおいてどのようになるかの説明を与える。マゼンタインクは全て、インクの全重量に基づいて同じマゼンタ顔料及びポリマー分散剤をそれぞれ4.0wt%の量で含む。溶剤混合物は全て、同じ溶剤1を同じ量で含み、それはインクジェットインクの製造方法の結果であることができるだろう。通常、第一に、濃厚な顔料分散体は一つ以上の分散溶剤(ここでは単一の分散溶剤「溶剤1」が使用される)を使用して調製され、それは次いで一つ以上のインク溶剤(ここでは溶剤2〜4)及び他の化合物、例えば界面活性剤、安定剤などで希釈される。インク溶剤2〜4は三つのマゼンタインクA,B及びCにおいて異なる濃度で存在させるか又は存在させない。溶剤1〜4のほぼ同じ混合物が対応する三つのシアンインクD,E及びFに使用される。例えば、シアンインクDはマゼンタインクAに一致する。特定のインク受容体を選択すると、マゼンタインクA,B及びCはある比率で一緒に混合されるだろう:同じ比率は通常、例えばマゼンタインク混合物及びシアンインク混合物の接着特性がその特定の支持体上で多かれ少なかれ同じであるように対応するインクD,E及びFを混合するために使用されるだろう。

【0055】
一つの実施形態では、インクセットは同じ色及び色濃度の二つのカラーインクジェットインクを含み、そこでは第一のカラーインクジェットインクは多量の一つ以上の界面活性剤を含み、第二のカラーインクジェットインクは界面活性剤がないか又は少量の一つ以上の界面活性剤を含むことだけが異なる。インク供給システムにおいて二つのカラーインクジェットインクを混合することによってインク混合物のいかなる希望の表面張力も得られることができる。但し、好適な界面活性剤が選択されること、そしてこれらが希望の表面張力の全範囲を包含するために第一カラーインクジェットインクにおいて十分に高い量で存在することが条件である。表面張力を制御すると、プリンターは表面エネルギーの異なるインク受容体上で同じ分散特性を得ることができる。
【0056】
好ましい実施形態では、接着性と表面張力はともにインクをある比率で混合することによって制御される。表2は四つのマゼンタインクを含むインクジェットインクセットについてこれを説明する。この場合において、界面活性剤はインクDに添加される。インクDは、界面活性剤の添加を補償しかつマゼンタ顔料濃度を一定に保つために必要な修正がなされる溶剤3及び4の量を除いてインクBと一致する。特定の支持体上の接着性に対して最適化されたインクA,B及びCのあるインク混合物では、インクBの量は、接着特性を変更しないが支持体上の希望のインク分散特性を達成するためにインク混合物を特定の表面張力に適応することでインクDによって置換されることができる。インクBのための選択は、インクBがインク混合物中で多量に最も頻繁に使用されることによって与えられることができる。別の選択は、インクA及び/又はC中に少量の界面活性剤を含め、インクDを使用してインク混合物の表面張力を「微調整」することであることができる。

【0057】
本発明によるインクジェット印刷法はまた、分散安定性及び/又は硬化スピードを改良するために放射線硬化性インクジェットインクと組み合わせて有利に使用されることができる。これは表3によって例示され、そこではインクAは光開始剤及び重合抑制剤を含むが重合相乗剤を含まず、一方インクBはこの活性相乗剤を含むが光開始剤を含まない。両インクは極めて良好な貯蔵安定性を示すが、いったん混合されると迅速に誘導される重合によって劣った安定性を示しうる。噴射直前にこれらのインクを混合することは高い硬化スピードを得るために有利に使用されることができる。

【0058】
同じ色及び色濃度
本発明では二つのインクが同じ色及び濃度を有するかどうかを決定するために以下の手順が使用された。
【0059】
プリンターに使用されたインク配合物から出発して、1:1000の質量の希釈が調製された。希釈のための溶剤はインク分散体と相溶性でなければならないことは明らかである。即ち、溶剤は化学的及び物理的安定性が維持されるように選択されるべきである。なぜならば、さもないと追加の光散乱、例えば粒子凝集による色変化が起こりうるからである。好ましくは、希釈溶剤はインクの一つ以上の液体成分から選択される。以下に与えられた実施例では、DPDGAは希釈溶剤として使用された。
【0060】
希釈されたインク分散体から分光光度計で透過率の測定値τが収集された。測定は直接照明及び広範な積分検出(diffusely integrating detection)のジオメトリーに基づいた。かかる分光光度計の一例はASTM E179−96による測定ジオメトリーτ(8/d)を実現するPerkin Elmerからの複光束分光光度計である。
【0061】
10mmの光路を有する石英キュベットを、希釈されたインクで満たし、次いで積分球の入口に接触させて置いた。基準測定のため、薄めていない溶剤で満たした同じ石英キュベットを使用した。希釈されたインクの透過スペクトルは、希釈溶剤と石英キュベットに対して補正するために基準測定の透過スペクトルによって割った。これらのスペクトルからCIE L座標を、CIE 1931標準観測者(2度)及びD50光源に基づいたASTM E308−01に従って計算した。CIE L座標からCIE ΔE2000色差を1になる工業依存パラメータK,K及びKのセットで計算した。
【0062】
本発明が意図されるインクジェット印刷の適用分野に照らして、二つのインクA及びBはもしCIE ΔE2000>5.0が所定の観測者及び光源に対して得られる(即ち、スペクトルマッチングが要求されない)なら異なる色及び濃度を有するものとして見なさされる。もしインクAとインクBの間の色差CIE ΔE2000が5.0より大きかったら、一般的にカラーマネジメントに関するインクジェット印刷システムの新しい特性付けが要求され、一方2.0より小さい差はプリンターだけの新しい線形化によって補償されうる。その意味において、2.0より小さいか又はそれに等しい対の色差CIE ΔE2000を有する二つのインクA及びBは同じ色及び濃度を持つものとして見なされる。
【0063】
要求の多い印刷用途のためには1.5より小さいか又はそれに等しい色差CIE ΔE2000が同じ色及び濃度に対して要求される。さらに一層制限的な比色アプローチでは、もし色差CIE ΔE2000が1.0より小さいか又はそれに等しいなら同じ色及び濃度が実現される。
【0064】
参考文献
・ASTM D2244−02 Standard Practice for Calculation of Colour Tolerances and Colour Differences from Instrumentally measured Colour Coordinates
・ASTM E179−96(2003)Standard Guide for Selection of Geometric Conditions for Measurements of Reflection and Transmission Properties of Materials
・ASTM E308−01 Standard Practice for Computing the Colours of Objects by Using the CIE system
【0065】
インクジェットプリンター&インク供給システム
工業用インクジェットプリンターは一般的に、インクをインクジェット印刷ヘッドに供給するためのインク供給システムを含む。インクジェット印刷ヘッドは連続的に又はオンデマンドのいずれかで小滴を形成する。「連続的」は、インク小滴の連続流れが例えばインク供給物を加圧することによって作られることを意味する。「オンデマンド(On demand)」は、印刷ヘッドにインクを保持する表面張力に瞬間的に打ち勝つ物理的操作によってのみインク小滴が印刷ヘッドから噴射される点で「連続的」とは異なる。インクは、メニスカスを形成するノズルに保持される。インクは、液体に固有の表面張力に打ち勝つ何らかの他の力がない限り、所定の場所にとどまる。最も一般的な方法は、インクに対する圧力を突然上昇させ、インクをノズルから噴出することである。ドロップオンデマンドのインクジェット印刷ヘッドの一つのカテゴリーは電気ひずみの物理的現象、適用された電界に応答するトランスデューサの寸法の変化を使用する。電気ひずみは圧電性材料において最も強く、従ってこれらの印刷ヘッドは圧電性印刷ヘッドと言及される。圧電性材料のこの極めて小さい寸法変化は、小さな室からインクの小滴を絞り出すために十分な大きさの体積変化を発生するために大きな面積にわたって利用される。圧電性印刷ヘッドは一列に配置された多数の小さいインク室を含み、各々は個々のノズルと電気ひずみの原理に従ってノズルからインク小滴を噴射するために必要な体積変化を作るために変形可能な壁領域とを持つ。
【0066】
好ましい実施形態では、インクジェットプリンターは選択可能なカラーインク混合物の小滴をインク受容体に送出するための圧電性印刷ヘッドを有するドロップオンデマンドインクジェット印刷システムである。
【0067】
インクジェットインクは、インクジェット印刷ヘッドの滑らかな操作を得るためにインクをまず状態調節するインク供給システムによって印刷ヘッドのインク噴射室に供給される。状態調節は例えばインクのガス抜き及びノズルでの背圧の制御を含む。
【0068】
圧電性印刷ヘッドのインク室における気泡の存在は印刷ヘッドの操作不具合を起こすことが多いことが知られている。もし空気がインク室に存在するなら、インク室壁の一部の圧電性変形から生じる意図された圧力変化は空気によって吸収され、インク圧力は影響されないだろう。ノズル中のインク表面張力はメニスカスを維持し、インク室から小滴が噴射されないだろう。圧電性印刷ヘッド中の圧電変換器が操作される周波数(kHz〜MHzの範囲)では、インク中の気泡だけでなく溶解された空気も上記の操作不具合を起こしうる。従来技術では、インク室の上流に(即ちインクがインク室に入る前に)空気トラップを作ることによってインク室における気泡を避けるためのコンセプトが開示されている。インクが印刷ヘッドに供給される前の中間タンクで気泡を浮かび上がらせインクから排出することができる空気干渉器又はガス分離器の形での解決策がEP 714779 A(CANON)及びUS 4929963(HP)において提案されている。
【0069】
インク供給システムの第二の注意点はノズルでの圧力であり、それは十分に調節されかつ良好に操作する印刷ヘッドには重要である。インクジェット印刷ヘッドはわずかに負のノズル圧力又は背圧でも最も良好に操作する。実際にはこれはベント付きインク供給システムにおける自由インク表面とノズルにおけるメニスカスの間の高さの差を維持することによって達成されることが多い。即ち、ベント付き供給タンクにおける自由インク表面はノズルにおけるメニスカスのレベルの下に2センチメートルで重量測定法で維持される。この高さの差はノズルにおける背圧を制御するために静水圧差を確立した。印刷ヘッド構成を往復運動するときにインク供給タンクは軸外に位置される。即ち、走査しない。なぜならば、そうでなければ印刷ヘッドに対するインク供給タンクの下方位置は印刷媒体輸送路を妨げるからである。例えばUS 4929963(HP)に開示されるように、軸外インク供給タンクを軸上印刷ヘッドと接続するためにフレキシブル管が使用される。印刷ヘッドの加速及び減速中、メニスカスの圧力バランスを有意に乱しうる圧力波が管に作られ、負圧の減少の場合にはノズルの浸出に導き、又は負圧の増加の場合にはメニスカスの破壊及びインク流路中への空気の取り入れに導きうる。往復印刷ヘッドの用途において背圧を制御するために多くのアプローチが提案されている。往復キャリジ上の印刷ヘッドとともに装着された圧力緩衝器又はダンパーの形の背圧調節機構はEP 1120257 A(SEIKO EPSON)及びUS 6485137(APRION DIGITAL)に開示されている。1G以上のキャリジの加速及び減速のためには、これらの装置の応答時間は不十分である。EP 1142713 A(SEIKO EPSON)では、ベント付きサブタンクが使用される。サブタンクは印刷ヘッドの近くの局所的なインクリザーバとして作用し、軸外に位置されるメインタンクから間欠的に満たされる。解決策は、ベント付きサブタンクの自由インク表面とメニスカスの間の局所的な静圧差を維持することによってノズル背圧の良好な制御を与える。
【0070】
インク混合手段
インクを混合するための手段はインクと適合しうる材料(例えば溶剤系インクジェットインクが混合されることになるときには耐溶剤性材料)から作られる限り、それらの選択に対して実際の制限はない。
【0071】
インクはインクジェットプリンターの様々な場所で、例えばインクジェットプリンターへのインクジェットインクの最初の接続部で直接的に、インクジェット印刷ヘッドの近く又はさらには印刷ヘッドの内側で混合されることができる。インク混合の場所と印刷ヘッドノズルの間の距離が小さいほど、印刷される新しいインク受容体に適応するためにこぼれるインクは少ない。
【0072】
一つの好ましい実施形態では、インク混合手段は、高速走査方向に沿って前後方向に移動する印刷ヘッドの集成体を含むキャリジ中にそれを含めることができるようにコンパクトな設計を有する。
【0073】
好ましくは、インク混合物中に気泡を導入しないインク混合手段が選択される。
【0074】
色域において首尾一貫した画像品質を得るために要求されないが、好ましくはインクが完全に適切に混合されるインク混合手段が選択される。
【0075】
色素ベースのインクのような一部のインクジェットインクに対しては、インク混合手段は一つの導管に一緒に行く複数の導管から単になってもよく、それはインクを混合するために多数の鋭利な曲がり又はV曲がりを作る。
【0076】
さらに複雑なインク混合手段はポンプ、弁、混合室などを含んでもよい。
【0077】
もし必要なら、インク混合は熱の蓄積を防止するために冷却を伴って実施されてもよい。放射線硬化性インクのためには、インク混合は、化学線が実質的に除外された光条件下でできるだけ多く実施される。
【0078】
一つの実施形態では、同じ色及び色濃度の二つ以上のカラーインクジェットインクは、導管を介してインクジェット印刷ヘッドに供給され、そこではインク混合物がその場で導管で作られる。一つのカラーインクジェットインクの源と印刷ヘッドの噴射室の間の導管中への二つ以上のカラーインクジェットインク源からのインクを選択的に計量するために流量制御器が適応される。この実施形態によるインク供給システムは図1及び図2によって例示される。
【0079】
別の実施形態では、インク供給システムは、同じ色及び色濃度の二つ以上のカラーインクジェットインクがインク混合物を印刷ヘッドに送出する前に制御された量で最初に混合されるインク混合室を含む。この実施形態によるインク供給システムは図3によって例示される。
【0080】
二つの前の実施形態はまた、同じ色及び色濃度の少なくとも三つのカラーインクジェットインクが部分的にインク混合室に、そして部分的にその場でインク混合室と印刷ヘッドの間の導管に制御された量で混合されるインク供給システムを与えるように組み合わせることができる。この実施形態によるインク供給システムは図4によって例示される。
【0081】
別の実施形態では、同じ色及び色濃度の二つ以上のカラーインクジェットインクの制御された量の混合は印刷ヘッド内で起こる。この実施形態によるインク供給システムは図5によって例示される。
【0082】
インク混合システム(の一部)を印刷ヘッド内に位置させることができるが、インク混合システムは印刷ヘッドから分離されていることが好ましい。これは広い範囲の既に商業的に入手可能な印刷ヘッド及びインクジェットプリンターへのインク供給システムの接続を可能にし、従って印刷ヘッドの複雑性及び開発コストを増大しない。さらに、例えばインクの凝集が起こるときに印刷ヘッド内に位置されないインク混合システムではメンテナンスがずっと容易である。
【0083】
インクセットに対して混合手段が各色のために存在し、それに対してインクジェットインクセットにおいて同じ色及び色濃度の二つ以上のカラーインクジェットインクが存在することが好ましいことは明らかである。
【0084】
計算手段
好ましい実施形態では、インク供給システムはインク混合工程を制御するためにコンピュータに接続される。これは、所望のインク混合物を得るために、弁の開閉、ポンプによる流れの制御、攪拌機の回転速度及び他の機械的構成を含めてもよい。しかしながら、コンピュータはまた、特定のインク受容体上で使用されるインク混合物のデータを記憶しかつ呼び出すために使用されることが好ましい。これは、過去に同じインクジェットインクセットで既に印刷された特定のインク受容体へのインクジェットプリンターの高速調整を可能にする。
【0085】
別の実施形態では、コンピュータは、印刷パターンの検査後に画像品質、接着性などの所望の特性を示すインク混合物の選択を可能にする、前に使用されていないインク受容体上の異なるインク混合物の試験パターンを生成するために使用されてもよい。各回に新しい支持体がインク受容体として使用されるこの方法を使用すると、特定のインク受容体のインク混合データのデジタルライブラリを生じる。このインク混合データはインクジェットインクの比率及びその画像品質及び物理的特性に対する関係を含む。ライブラリ、より好ましくはデジタルライブラリの使用は生産性の向上に導く。
【0086】
多数の特徴的な特性に対して、プリンターの下流に、線幅、縁の直線性、斑点、印刷濃度、光沢及び/又は色の強さを測定又は評価することができる手段を含めることによって異なるインク混合物の試験パターンの評価を自動化することができる。
【0087】
インクジェットインク受容体
本発明によるインクジェット印刷法のために好適なインク受容体はいかなる特定のタイプにも制限されず、透明、半透明又は不透明であることができる。インク受容体は着色されていてもよく又は金属蒸着されていてもよい。それは、例えば印刷後に別の支持体に画像を転写するための一時的な支持体であることができる。木製扉、パネル及びセラミックスの上の直接印刷及び3D印刷のような用途はまた、本発明の範囲に含まれる。
【0088】
水性インクは一般的に吸収性のインク受容体上で印刷される。溶剤系インクジェットインク及び放射線硬化性インクはまた、水性溶液に対して実質的にインク非吸収性の受容体上に印刷されることができる。例えば、標準的な紙はインク吸収性受容体である。他方、樹脂被覆紙、例えばポリエチレン被覆紙又はポリプロピレン被覆紙は通常、実質的に非吸収性である。
【0089】
インク受容体は少なくとも一つのインク受容層を有する支持体を含んでもよい。インク受容体はたった一つの層からなってもよく、又はそれは二つ、三つ又はそれより多い層から構成されてもよい。インク受容層は一種以上のポリマー結合剤及び所望により充填剤を含有してもよい。インク受容層及び任意の補助層(例えば耐カール及び/又は接着目的のための裏層)はさらに、良く知られた従来の成分、例えば被覆助剤として作用する界面活性剤、架橋剤、可塑剤、媒染剤として作用するカチオン物質、光安定剤、pH調整剤、帯電防止剤、殺生物剤、滑剤、白化剤及び艶消剤を含んでもよい。
【0090】
インク受容層及び任意の補助層は、耐水性及び非ブロッキング特性のような所望の特徴を与えるためにある程度架橋されてもよい。架橋はまた、取り扱いの結果として要素上の指紋の形成に対する耐性及び耐磨耗性を与えるのに有用である。
【0091】
インク受容層のために好適な支持体は、溶剤系インクジェットインク又は放射線硬化性インクのために好適なインク受容体であり、ポリマー支持体、例えばセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル、配向ポリスチレン(OPS)、配向ナイロン(ONy)、ポリプロピレン(PP)、配向ポリプロピレン(OPP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、及び種々のポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ(ビニルアセタール)、ポリエーテル及びポリスルホンアミド、不透明白色ポリエステル及びポリエチレンテレフタレートとポリプロピレンの押出ブレンドを含む。アクリル樹脂、フェノール樹脂、ガラス及び金属はまた、インク受容体として使用されてもよい。他の好適なインク受容体材料はModern Approaches to Wettability:Theory and Applications.Edited by SCHRADER,Malcolm E.,et al.New York:Plenum Press,1992.ISBN 0306439859に見出すことができる。
【0092】
インク受容体はまた、充填剤として鉱物粒子を含んでもよく、例えばCaCO含有PET,TiO含有PET、非晶質PET(APET)及びグリコール化PET(PETG)を含んでもよい。
【0093】
インク受容体は自己接着性裏層を与えられてもよい。自己接着性PVCインク受容体の例はAVERY−DENNISONからのMPI(商標)ビニル、METAMARKからのDigital(商標)ビニル、MULTI−FIXからのMulti−fix(商標)デジタル白色ビニル、及びGRAFITYPからのGrafiprint(商標)ビニルを含む。
【0094】
ポリエステルフィルム支持体、特にポリエチレンテレフタレートは特定の用途、特に優れた寸法安定性を持つタイプに対して好ましい。かかるポリエステルがインク受容体として使用されるとき、支持体への噴射されたインク層の接着を改良するために下塗り層を使用してもよい(もし下塗りされていない支持体とともに実質的に非吸収性のインク受容体を構成するなら)。この目的のために有用な下塗り層は写真技術において良く知られており、例えば塩化ビニリデン/アクリロニトリル/アクリル酸ターポリマー又は塩化ビニリデン/メチルアクリレート/イタコン酸ターポリマーのような塩化ビニリデンのポリマーを含む。安定剤、平滑化添加剤、艶消剤、ワックスのような物理的なフィルム特性のための調整剤もまた、必要により下塗り層に添加してもよい。
【0095】
インク受容層はまた、金属酸化物又は金属(例えばアルミニウム及び鋼)のような無機材料から作られてもよい。
【0096】
他の好適なインク受容体は厚紙、木材、複合ボード、被覆プラスチック、キャンバス、織布、ガラス、植物繊維製品、皮革、磁気材料及びセラミックスからなる群から選択されてもよい。
【0097】
インクジェットインクセット
本発明によるインクジェットインクセットは、同じ色及び色濃度を持つが異なる固体及び/又は液体成分を含む二つ以上のカラーインクジェットインクを含む。
【0098】
好ましい実施形態では、二つ以上のカラーインクジェットインクは同じ着色剤を含有する。好ましくは、前記二つ以上のカラーインクジェットインクの第一インク中の各着色剤の量は、前記二つ以上のカラーインクジェットインクの第二インクジェットインク中の着色剤の量に対して10wt%以下、より好ましくは5wt%以下、最も好ましくは2wt%以下(全て第一インク中の着色剤の全重量に基づく)だけ異なる。最も好ましくは、カラー顔料は前記二つ以上のカラーインクジェットインクの各々において同じ量で存在する。
【0099】
一つの実施形態では、二つ以上のカラーインクジェットインクは異なる量の界面活性剤及び/又は異なるタイプの界面活性剤を含有する。
【0100】
好ましい実施形態では、二つ以上のカラーインクジェットインクは溶剤系インクジェットインクである。
【0101】
別の好ましい実施形態では、二つ以上のカラーインクジェットインクは放射線硬化性インクジェットインクである。
【0102】
放射線硬化性インクジェットインクのさらに好ましい実施形態では、光開始剤は、前記二つ以上の放射線硬化性カラーインクジェットインクの少なくとも一つに存在させ、前記二つ以上の放射線硬化性カラーインクジェットインクの少なくとも一つの他のインクに存在させない。さらに好ましい実施形態では、共開始剤又は重合相乗剤は、光開始剤を含まない二つ以上のカラーインクジェットインクの少なくとも一つに存在させる。別のさらに好ましい実施形態では、抑制剤は、光開始剤を含む前記二つ以上のカラーインクジェットインクの少なくとも一つに存在させる。
【0103】
別の実施形態では、インクジェットインクセットはさらに、異なる固体及び/又は液体成分を含む二つ以上の無色インクジェットインクを含んでもよい。これらの無色インクジェットインクは例えばトップコート層で画像の光沢を低下又は増強するために使用されてもよい。トップコート層はまた、画像の耐溶剤性又は耐久性を増強するため又は食品の包装材料上で印刷するときに抽出物の量を減少するために適用されることができる。
【0104】
インクジェットプリンターにおけるインクジェットインクセットは同じ色及び色濃度の二つ以上のカラーインクジェットインクを異なる体積で含んでもよい。ときどき一つのインクが他のものよりずっと早く消費されることがある。例えば他のインクはあまり頻繁に使用されない支持体上の良好な接着性に向けられているからである。特に放射線硬化性インクに対しては限られた保存寿命を与えられているので、インクの浪費及びそれに対して割り当てられるコストは減少されることができる。
【0105】
インクジェットインク
本発明によるインクセットにおけるインクジェットインクは非水性インクジェットインクであることが好ましい。非水性インクジェットインクでは、噴射温度で非水性液体である分散媒体に成分を存在させる。
【0106】
用語「非水性液体」は、水を全く含まない液体キャリアを指す。しかしながら、少量、一般的にインクの全重量に基づいて5wt%未満の水を存在させることができる。この水は意図的に添加されないが、例えば極性有機溶剤のような他の成分を介するコンタミとして配合物中に入れられた。5wt%より多い量の水は非水性インクジェットインクを不安定にし、好ましくは水含有量は全重量分散媒体に基づいて1wt%未満であり、最も好ましくは水を全く存在させない。
【0107】
本発明によるインクジェットインクセットの二つ以上のカラーインクジェットインクは着色剤として顔料を含有することが好ましい。もし着色剤が自己分散性顔料でないなら、インクジェットインクはまた、分散剤、より好ましくはポリマー分散剤を含有することが好ましい。
【0108】
本発明によるインクセットのインクジェットインクはさらに、少なくとも一種の界面活性剤を含有してもよい。
【0109】
本発明によるインクセットのインクジェットインクは、そのインクの蒸発速度を低下させる能力のため、ノズルの目詰まりを防止するために少なくとも一種の保湿剤を含有してもよい。
【0110】
本発明による着色カラーインクジェットインクは少なくとも一種の分散相乗剤を含有してもよい。分散相乗剤の混合物は分散安定性をさらに改良するために使用されてもよい。
【0111】
本発明によるインクセットのインクジェットインクは有機溶剤系、油系及び硬化性インクジェットインクからなる群から選択されるインクジェットインクであることが好ましい。硬化性インクジェットインクは放射線硬化性であることが好ましい。
【0112】
インクジェットインクの粘度は100s−1の剪断速度でかつ30℃で100mPa.sより小さいことが好ましい。インクジェットインクの粘度は100s−1の剪断速度でかつ10〜70℃の噴射温度で好ましくは30mPa.sより小さく、より好ましくは15mPa.sより小さく、最も好ましくは2〜10mPa.sである。
【0113】
硬化性インクジェットインクは分散媒体として異なる官能価を持つモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーを含有してもよい。モノ、ジ、トリ及び/又はそれより高い官能価のモノマー、オリゴマー又はプレポリマーの組み合わせを含む混合物を使用してもよい。重合反応を開始するための開始剤と称される触媒は硬化性インクジェットインク中に含めてもよい。開始剤は熱開始剤であることができるが、光開始剤であることが好ましい。光開始剤はポリマーを形成するためのモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーより少ない活性化のためのエネルギーを要求する。硬化性顔料分散体に使用するために好適な光開始剤はノリッシュI型開始剤、ノリッシュII型開始剤又は光酸発生剤であってもよい。
【0114】
本発明によるインクセットの硬化性インクジェットインクはさらに、少なくとも一種の抑制剤を含有してもよい。
【0115】
CMYKインクジェットインクセットはまた、画像の色域をさらに拡大するために赤、緑、青及びオレンジのような一つ以上の余分のインクで広げられてもよい。CMYKインクセットはまた、粒状性の低下によって画像品質を改良するためにカラーインク及び/又は黒色インクの両方の強い濃度と軽い濃度の組み合わせによって広げられてもよい。
【0116】
着色剤
本発明によるインクジェットインクセットの二つ以上のカラーインクジェットインクは少なくとも一種の着色剤を含有する。インクジェットインクに使用される着色剤は顔料、色素又はそれらの組み合わせであってもよい。有機及び/又は無機顔料を使用してもよい。
【0117】
二つ以上の放射線硬化性インクジェットインク又は溶剤系インクジェットインクは着色剤として顔料を含有することが好ましい。
【0118】
インクジェットインク中の顔料は黒、シアン、マゼンタ、黄、赤、オレンジ、紫、青、緑、茶、それらの混合物などであってもよい。
【0119】
カラー顔料はHERBST,Willy,et al.Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications.3rd edition.Wiley−VCH,2004.ISBN 3527305769によって開示されたものから選択されてもよい。
【0120】
好適な顔料はC.I.Pigment Yellow 1,3,10,12,13,14,17,55,65,73,74,75,83,93,97,109,111,120,128,138,139,150,151,154,155,180,185及び213を含む。
【0121】
特に好ましい顔料はC.I.Pigment Yellow 120,151,154,175,180,181及び194である。
【0122】
最も好ましい黄色顔料はC.I.Pigment Yellow 120,139,150,155及び213である。
【0123】
特に好ましい顔料はC.I.Pigment Red 17,22,23,41,48:1,48:2,49:1,49:2,52:1,57:1,81:1,81:3,88,112,122,144,146,149,169,170,175,176,184,185,188,202,206,207,210,216,221,248,251,254,255,264,270及び272を含む。装飾積層体を製造するために最も好ましいものはC.I.Pigment Red 254及びC.I.Pigment Red 266である。他の非水性インクジェット用途のために最も好ましい顔料はC.I.Pigment Red 122及びC.I.Pigment Violet 19である。
【0124】
特に好ましい顔料はC.I.Pigment Violet 1,2,19,23,32,37及び39である。
【0125】
特に好ましい顔料はC.I.Pigment Blue 15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,56,61及び(架橋された)アルミニウムフタロシアニン顔料である。
【0126】
特に好ましい顔料はC.I.Pigment Orange 5,13,16,34,40,43,59,66,67,69,71及び73である。
【0127】
特に好ましい顔料はC.I.Pigment Green 7及び36である。
【0128】
特に好ましい顔料はC.I.Pigment Brown 6及び7である。
【0129】
好適な顔料は上の特に好ましい顔料の混合結晶を含む。商業的に入手可能な例はCiba Specialty ChemicalsからのCinquasia Magenta RT−355−Dである。
【0130】
カーボンブラックは黒色インクジェットインクのための顔料として好ましい。好適な黒色顔料材料はPigment Black 7(例えばMITSUBISHI CHEMICALからのCarbon Black MA8(登録商標))、CABOT CoからのRegal(登録商標)400R,Mogul(登録商標)L,Elftex(登録商標)320、又はDEGUSSAからのCarbon Black FW18,Special Black 250,Special Black 350,Special Black 550,Printex(登録商標)25,Printex(登録商標)35,Printex(登録商標)55,Printex(登録商標)90,Printex(登録商標)150Tのようなカーボンブラックを含む。好適な顔料の追加の例はUS 5389133(XEROX)に開示されている。
【0131】
また、二つ以上のカラーインクジェットインクにおいて顔料の混合物を作ることもできる。ある用途のために、中性の黒色インクジェットインクが好ましく、例えば黒色顔料とシアン顔料をインク中に混合することによって得られることができる。インクジェット用途は例えば包装インクジェット印刷又は織物インクジェット印刷のために一つ以上のスポットカラーを要求してもよい。銀及び金はインクジェットポスター印刷及び店頭ディスプレイのために望ましい色であることが多い。
【0132】
また、非有機顔料を二つ以上のカラーインクジェットインクに存在させてもよい。特に好ましい顔料はC.I.Pigment Metal 1,2及び3である。無機顔料の例は酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、弁柄、カドミウムレッド、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、酸化クロムグリーン、コバルトグリーン、コハク、チタンブラック及び合成鉄黒を含む。
【0133】
一般に、顔料は、ポリマー分散剤又は界面活性剤のような分散剤によって分散媒体において安定化される。しかしながら、顔料の表面は、いわゆる「自己分散可能な」又は「自己分散する」顔料、即ち分散剤なしで分散媒体に分散可能である顔料を得るように変性されることができる。
【0134】
インクジェットインク中の顔料粒子は、特に噴射ノズルでのインクジェット印刷装置を通るインクの自由な流れを可能にするのに十分なほど小さいべきである。また、最大の色の強さのために小さい粒子を使用し、沈降を遅くすることが望ましい。
【0135】
数平均顔料粒子サイズは好ましくは0.050〜1μm、より好ましくは0.070〜0.300μm、特に好ましくは0.080〜0.200μmである。最も好ましくは、数平均顔料粒子サイズは0.150μm以下である。しかしながら、例えば二酸化チタン顔料を含む白色インクジェットインクのための平均顔料粒子サイズは0.100〜0.300μmであることが好ましい。
【0136】
顔料は顔料分散体の全重量に基づいて10〜40wt%、好ましくは15〜30wt%の量でインクジェットインクを作るために使用される顔料分散に使用されることが好ましい。インクジェットインクでは、顔料はインクジェットインクの全重量に基づいて0.1〜20wt%、好ましくは1〜10wt%の量で使用されることが好ましい。
【0137】
本発明によるインクセットにおける二つ以上のカラーインクジェットインクのために好適な色素(染料)は直接色素、酸性色素、塩基性色素及び反応性色素を含む。
【0138】
二つ以上のカラーインクジェットインクのために好適な直接色素は以下のものを含む:
・C.I.Direct Yellow 1,4,8,11,12,24,26,27,28,33,39,44,50,58,85,86,100,110,120,132,142,及び144
・C.I.Direct Red 1,2,4,9,11,134,17,20,23,24,28,31,33,37,39,44,47,48,51,62,63,75,79,80,81,83,89,90,94,95,99,220,224,227及び343
・C.I.Direct Blue 1,2,6,8,15,22,25,71,76,78,80,86,87,90,98,106,108,120,123,163,165,192,193,194,195,196,199,200,201,202,203,207,236,及び237
・C.I.Direct Black 2,3,7,17,19,22,32,38,51,56,62,71,74,75,77,105,108,112,117,154及び195
【0139】
二つ以上のカラーインクジェットインクのために好適な酸性色素は以下のものを含む:
・C.I.Acid Yellow 2,3,7,17,19,23,25,20,38,42,49,59,61,72,及び99
・C.I.Acid Orange 56及び64
・C.I.Acid Red 1,8,14,18,26,32,37,42,52,57,72,74,80,87,115,119,131,133,134,143,154,186,249,254,及び256
・C.I.Acid Violet 11,34,及び75
・C.I.Acid Blue 1,7,9,29,87,126,138,171,175,183,234,236,及び249
・C.I.Acid Green 9,12,19,27,及び41
・C.I.Acid Black 1,2,7,24,26,48,52,58,60,94,107,109,110,119,131,及び155
【0140】
二つ以上のカラーインクジェットインクのために好適な反応性色素は以下のものを含む:
・C.I.Reactive Yellow 1,2,3,14,15,17,37,42,76,95,168,及び175
・C.I.Reactive Red 2,6,11,21,22,23,24,33,45,111,112,114,180,218,226,228,及び235
・C.I.Reactive Blue 7,14,15,18,19,21,25,38,49,72,77,176,203,220,230,及び235
・C.I.Reactive Orange 5,12,13,35,及び95
・C.I.Reactive Brown 7,11,33,37,及び46
・C.I.Reactive Green 8及び19
・C.I.Reactive Violet 2,4,6,8,21,22,及び25
・C.I.Reactive Black 5,8,31,及び39
【0141】
二つ以上のカラーインクジェットインクのために好適な塩基性色素は以下のものを含む:
・C.I.Basic Yellow 11,14,21,及び32
・C.I.Basic Red 1,2,9,12,及び13
・C.I.Basic Violet 3,7,及び14
・C.I.Basic Blue 3,9,24,及び25
【0142】
もしカラーインクジェットインクが水を含有するなら、色素は適切な範囲のpHでのみ理想的な色を明示することができる。それゆえ、インクジェットインクはpH調整剤をさらに含むことが好ましい。
【0143】
好適なpH調整剤はNaOH,KOH,NEt,NH,HCl,HNO,HSO及び(ポリ)アルカノールアミン、例えばトリエタノールアミン及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパニオールを含む。好ましいpH調整剤はNaOH及びHSOである。
【0144】
色素はインクジェットインクの全重量に基づいて0.1〜30wt%、好ましくは1〜20wt%の量で二つ以上のカラーインクジェットインクに使用される。
【0145】
特定の実施形態では、着色剤はセキュリティ機能を導入するために使用される蛍光着色剤である。蛍光着色剤の好適な例はTinopal(登録商標)SFDのようなTinopal(登録商標)グレード、Uvitex(登録商標)NFW及びUvitex(登録商標)OBのようなUvitex(登録商標)グレード(全てCIBA SPECIALTY CHEMICALSから入手可能);CLARIANTからのLeukophor(登録商標)グレード及びBAYERからのBlancophor(登録商標)REU及びBlancophor(登録商標)BSUのようなBlancophor(登録商標)グレードを含む。
【0146】
分散剤
典型的なポリマー分散剤は二つのモノマーのコポリマーであるが、三つ、四つ、五つ又はそれより多くのモノマーを含有してもよい。ポリマー分散剤の特性はモノマーの性質とそれらのポリマー中の分布の両方に依存する。好適なコポリマー分散剤は以下のポリマー組成を持つ:
・ランダム重合されたモノマー(例えばモノマーA及びBをABBAABABに重合);
・交互重合されたモノマー(例えばモノマーA及びBをABABABABに重合);
・勾配(漸減)重合されたモノマー(例えばモノマーA及びBをAAABAABBABBBに重合);
・ブロックコポリマー(例えばモノマーA及びBをAAAAABBBBBBに重合)、そこではブロックの各々のブロック長は(2個、3個、4個、5個又はそれより多い)はポリマー分散剤の分散能力に対して重要である;
・グラフトコポリマー(グラフトコポリマーは主鎖に結合された側鎖を有するポリマー主鎖からなる);及び
・これらのポリマーの混合形態、例えばブロック状の勾配コポリマー。
【0147】
ポリマー分散剤は線状、くし形/枝分かれ、星状、樹状(デンドリマー及び超分岐ポリマーを含む)を含む様々なポリマー構成を持ってもよい。ポリマーの構造についての一般的な概括はODIAN,George,Principles Of Polymerization,4th edition,Wiley−Interscience,2004,p.1−18によって与えられる。
【0148】
くし形/枝分かれポリマーは主ポリマー鎖に沿って様々な中央枝分かれ点(少なくとも三つの枝分かれ点)から突出する結合モノマー分子の側部の枝を持つ。
【0149】
星状ポリマーは、三つ又はそれより多い、同様の又は異なる線状ホモポリマー又はコポリマーが単一の芯に一緒に結合される枝分かれしたポリマーである。
【0150】
樹状ポリマーはデンドリマー及び超分岐ポリマーの種類を含む。良く規定された単分散構造を有するデンドリマーでは、全ての枝分かれ点が使用されるが(多段階合成)、超分岐ポリマーは複数の枝分かれ点、及びポリマー成長(一段階重合工程)とともにさらなる枝分かれに導く多官能枝分かれを持つ。
【0151】
好適なポリマー分散剤は付加又は縮合型重合によって製造されてもよい。重合方法はODIAN,George,Principles Of Polymerization,4th edition,Wiley−Interscience,2004,p.39−606に記載されたものを含む。
【0152】
付加重合法はフリーラジカル重合(FRP)及び制御された重合技術を含む。好適な制御されたラジカル重合法は以下のものを含む:
・RAFT:可逆的付加解裂型連鎖移動;
・ATRP:原子移動ラジカル重合;
・MADIX:移動活性キサンテートを使用する可逆的付加解裂型連鎖移動法;
・触媒連鎖移動(例えばコバルト錯体を使用);
・ニトロキシド(例えばTEMPO)媒介重合。
【0153】
他の好適な制御された重合法は以下のものを含む:
・GTP:基移動重合;
・リビングカチオン(開環)重合;
・アニオン配位挿入開環重合;及び
・リビングアニオン(開環)重合。
【0154】
可逆的不可解裂型移動(RAFT):制御された重合は、成長するポリマーラジカルと休眠ポリマー鎖の間の迅速な連鎖移動を介して起こる。様々なポリマー幾何学形状を有する分散剤のRAFT合成についての調査論文はQUINN J.F.et al.,Facile Synthesis of comb,star,and graft polymers via reversible addition−fragmentation chain transfer(RAFT)polymerization,Journal of Polymer Science,Part A:Polymer Chemistry,Vol.40,2956−2966,2002に与えられている。
【0155】
基移動重合(GTP):ABブロックコポリマーの合成のために使用されるGTPの方法はSPINELLI,Harry J,GTP and its use in water based pigment dispersants and emulsion stabilisers,Proc.of 20th Int..Conf.Org.Coat.Sci.Technol.,New Platz,N.Y.,State Univ.N.Y.,Inst.Mater.Sci.p.511−518に記載されている。
【0156】
樹状ポリマーの合成は文献:The synthesis of dendrimers in NEWCOME,G.R.,et al.Dendritic Molecules:Concepts,Synthesis,Perspectives.VCH:WEINHEIM,2001に記載されている。超分岐重合はBURCHARD,W..Solution properties of branched macromolecules.Advances in Polymer Science.1999,vol.143,no.II,p.113−194に記載されている。超分岐材料はFLORY,P.J..Molecular size distribution in three−dimensional polymers.VI.Branched polymer containing A−R−Bf−1−type units.Journal of the American Chemical Society.1952,vol.74,p.2718−1723に記載されるように多官能重縮合によって得られることができる。
【0157】
リビングカチオン重合は例えばWO 2005/012444(CANON),US 20050197424(CANON)及びUS 20050176846(CANON)に開示されるようにポリビニルエーテルの合成のために使用される。アニオン配位開環重合は例えばラクトンに基づいたポリエステルの合成のために使用される。リビングアニオン開環重合は例えばポリエチレンオキサイドマクロモノマーの合成のために使用される。
【0158】
フリーラジカル重合(FRP)は連鎖機構を介して行なわれ、それは基本的にフリーラジカルを含む反応の四つの様々なタイプからなる:(1)非ラジカル種からのラジカル生成(開始)、(2)置換アルケンへのラジカル付加(増殖)、(3)原子移動及び原子引き抜き反応(連鎖移動及び不均化による停止)、及び(4)ラジカル−ラジカル再結合反応(結合による停止)。
【0159】
上記ポリマー組成物の幾つかを有するポリマー分散剤はUS 6022908(HP),US 5302197(DU PONT)及びUS 6528557(XEROX)に開示されている。
【0160】
好適なランダムコポリマー分散剤はUS 5648405(DU PONT),US 6245832(FUJI XEROX),US 6262207(3M),US 20050004262(KAO)及びUS 6852777(KAO)に開示されている。
【0161】
好適な交互コポリマー分散剤はUS 20030017271(AKZO NOBEL)に開示されている。
【0162】
好適なブロックコポリマー分散剤、特に疎水性及び親水性ブロックを含有するブロックコポリマー分散剤は多数の特許に記載されている。例えば、US 5859113(DU PONT)はABブロックコポリマーを開示し、US 6413306(DU PONT)はABCブロックコポリマーを開示する。
【0163】
好適なグラフトコポリマー分散剤はCA 2157361(DU PONT)(疎水性ポリマー主鎖及び親水性側鎖)に開示され、他のグラフトコポリマー分散剤はUS 6652634(LEXMARK),US 6521715(DU PONT)に開示されている。
【0164】
好適な枝分かれコポリマー分散剤はUS 6005023(DU PONT),US 6031019(KAO),US 6127453(KODAK)に記載されている。
【0165】
好適な樹状コポリマー分散剤は例えばUS 6518370(3M),US 6258896(3M),US 2004102541(LEXMARK),US 6649138(QUANTUM DOT),US 2002256230(BASF),EP 1351759 A(EFKA ADDITIVES)及びEP 1295919 A(KODAK)に記載されている。
【0166】
インクジェットインクのためのポリマー分散剤の好適な設計はSPINELLI,Harry J.,Polymeric Dispersants in Inkjet technology,Advanced Materials,1998,Vol.10,no.15,p.1215−1218に開示されている。
【0167】
ポリマー分散剤を製造するために使用されるモノマー及び/又はオリゴマーはPolymer Handbook Vol.1+2,4th edition,edited by J.BRANDRUP et al.,Wiley−Interscience,1999に見出されるモノマー及び/又はオリゴマーであることができる。
【0168】
顔料分散剤として有用なポリマーは自然に存在するポリマーを含み、その特別な例は、グルー、ゼラチン、カゼイン、及びアルブミンの如き蛋白質;アラビアゴム及びトラガカントの如き自然に存在するゴム;サポニンの如きグルコシド;プロピレングリコールアルギネートの如きアルギン酸及びアルギン酸誘導体;及びメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びエチルヒドロキシセルロースの如きセルロース誘導体;羊毛及び絹、及び合成ポリマーを含む。
【0169】
ポリマー分散剤を合成するためのモノマーの好適な例はアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸(又はそれらの塩)、無水マレイン酸;アルキル(メタ)アクリレート(線状、枝分かれした及びシクロアルキル)、例えばメチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート、例えばベンジル(メタ)アクリレート及びフェニル(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;他のタイプの官能基(例えばオキシラン、アミノ、フルオロ、ポリエチレンオキサイド、ホスフェート置換)を有する(メタ)アクリレート、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート;アリル誘導体、例えばアリルグリシジルエーテル;スチレン類、例えばスチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトスチレン及びスチレンスルホン酸;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド(N−モノ及びN,N−二置換を含む)、例えばN−ベンジル(メタ)アクリルアミド;マレイミド、例えばN−フェニルマレイミド;ビニル誘導体、例えばビニルアルコール、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルナフタレン及びビニルハライド;ビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル;及びカルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート及びビニルベンゾエートを含む。典型的な縮合型ポリマーはポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミン、ポリイミド、ポリケトン、ポリエステル、ポリシロキサン、フェノール−ホルムアルデヒド、ウレア−ホルムアルデヒド、メラミン−ホルムアルデヒド、ポリサルファイド、ポリアセタール又はそれらの組み合わせを含む。
【0170】
好適なコポリマー分散剤はアクリル酸/アクリロニトリルコポリマー、酢酸ビニル/アクリルエステルコポリマー、アクリル酸/アクリルエステルコポリマー、スチレン/アクリル酸コポリマー、スチレン/メタアクリル酸コポリマー、スチレン/メタアクリル酸/アクリルエステルコポリマー、スチレン/α−メチルスチレン/アクリル酸コポリマー、スチレン/α−メチルスチレン/アクリル酸/アクリルエステルコポリマー、スチレン/マレイン酸コポリマー、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ビニルナフタレン/アクリル酸コポリマー、ビニルナフタレン/マレイン酸コポリマー、酢酸ビニル/エチレンコポリマー、酢酸ビニル/脂肪酸/エチレンコポリマー、酢酸ビニル/マレイン酸エステルコポリマー、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、酢酸ビニル/アクリル酸コポリマーである。
【0171】
コポリマー分散剤の好適な化学はまた、以下のものを含む:
・(付加重合によって作られた)カルボン酸終端ポリエステルとポリ(エチレンイミン)の縮合法の生成物であるコポリマー;及び
・以下のものと多官能イソシアネートの反応の生成物であるコポリマー
− イソシアネートと反応できる基で単置換された化合物、例えばポリエステル;
− イソシアネートと反応できる二つの基を含有する化合物(架橋剤);又は
− イソシアネート基と反応できる基及び少なくとも一つの塩基性環窒素を有する化合物。
【0172】
好適なポリマー分散剤の詳細なリストはMC CUTCHEON,Functional Materials,North American Edition,Glen Rock,N.J.:Manufacturing Confectioner Publishing Co.,1990,p.110−129に開示されている。
【0173】
好適な顔料安定剤はまた、DE 19636382(BAYER),US 5720802(XEROX),US 5713993(DU PONT),WO 96/12772(XAAR)及びUS 5085689(BASF)に開示されている。
【0174】
一つのポリマー分散剤又は二つ以上のポリマー分散剤の混合物は分散安定性をさらに改良するために存在させてもよい。ときには界面活性剤も顔料分散剤として使用されることができ、従ってポリマー分散剤と界面活性剤の組み合わせもまた可能である。
【0175】
ポリマー分散剤はノニオン、アニオン又はカチオンの性質であることができ、イオン分散剤の塩もまた使用することができる。
【0176】
ポリマー分散剤は好ましくは5〜1000、より好ましくは10〜500、最も好ましくは10〜100の重合度DPを有する。
【0177】
ポリマー分散剤は好ましくは500〜30000、より好ましくは1500〜10000の数平均分子量Mnを有する。
【0178】
ポリマー分散剤は好ましくは100000より小さい、より好ましくは50000より小さい、最も好ましくは30000より小さい平均分子量Mwを有する。
【0179】
ポリマー分散剤は好ましくは2より小さい、より好ましくは1.75より小さい、最も好ましくは1.5より小さいポリマー分散度PDを有する。
【0180】
ポリマー分散剤の市販例は以下のものである:
・BYK CHEMIE GMBHから入手可能なDISPERBYK(登録商標)分散剤;
・NOVEONから入手可能なSOLSPERSE(登録商標)分散剤;
・DEGUSSAから入手可能なTEGO(登録商標)DISPERS(登録商標)分散剤;
・MUENZING CHEMIEから入手可能なEDAPLAN(登録商標)分散剤;
・LYONDELLから入手可能なETHACRYL(登録商標)分散剤;
・ISPから入手可能なGANEX(登録商標)分散剤;
・CIBA SPECIALTY CHEMICALS INCから入手可能なDISPEX(登録商標)及びEFKA(登録商標)分散剤;
・DEUCHEMから入手可能なDISPONER(登録商標)分散剤;及び
・JOHNSON POLYMERから入手可能なJONCRYL(登録商標)分散剤。
【0181】
特に好ましいポリマー分散剤はNOVEONからのSolsperse(登録商標)分散剤、CIBA SPECIALTY CHEMICALS INCからのEfka(登録商標)分散剤及びBYK CHEMIE GMBHからのDisperbyk(登録商標)分散剤を含む。
【0182】
溶剤系顔料分散のための特に好ましい分散剤はNOVEONからのSolsperse(登録商標)32000及び39000である。
【0183】
油系顔料分散のための特に好ましい分散剤はNOVEONからのSolsperse(登録商標)11000,11200,13940,16000,17000及び19000である。
【0184】
UV硬化性顔料分散のための特に好ましい分散剤はNOVEONからのSolsperse(登録商標)32000及び39000分散剤である。
【0185】
ポリマー分散剤は顔料の重量に基づいて好ましくは2〜600重量%、より好ましくは5〜200重量%の量で使用される。
【0186】
分散相乗剤
分散相乗剤は通常、アニオン部分とカチオン部分からなる。分散相乗剤のアニオン部分はカラー顔料と類似の分子を有し、分散相乗剤のカチオン部分は分散相乗剤のアニオン部分の電荷を補償するために一つ以上のプロトン及び/又はカチオンからなる。
【0187】
分散相乗剤はポリマー分散剤より少ない量で添加されることが好ましい。ポリマー分散剤/分散相乗剤の比率は顔料に依存し、実験的に決定されるべきである。一般的には、wt%ポリマー分散剤/wt%分散相乗剤の比率は2:1〜100:1、好ましくは2:1〜20:1で選択される。
【0188】
商業的に利用可能である好適な分散相乗剤はNOVEONからのSolsperse(登録商標)5000及びSolsperse(登録商標)22000を含む。
【0189】
装飾積層体を製造するためのインクジェットインクセットに使用されるマゼンタインクのために特に好ましい顔料はジケトピロロピロール顔料である。優れた分散安定性及び品質を得るために、好ましくは分散相乗剤は係属中のヨーロッパ特許出願EP 05111360に開示されたようなジケトピロロピロール顔料のために使用された。
【0190】
C.I.Pigment Blue 15:3を分散するとき、スルホン化Cu−フタロシアニン分散相乗剤、例えばNOVEONからのSolsperse(登録商標)5000が好ましい。黄色のインクジェットインクのために好適な分散相乗剤は係属中のヨーロッパ特許出願EP 05111357に開示されたものを含む。
【0191】
分散媒体
一つの実施態様では、分散媒体は有機溶剤からなる。好適な有機溶剤はアルコール、ケトン、エステル、エーテル、グリコール及びポリグリコール及びその誘導体、ラクトン、アミドの如きN含有溶剤を含む。好ましくは、これらの溶剤の一つ以上の混合物が使用される。
【0192】
好適なアルコールの例はメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェニルプロピルアルコール、フルフリルアルコール、アニスアルコール及びフルオロアルコールを含む。
【0193】
好適なケトンの例はアセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、ジエチルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチルn−ブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン及びイソホロン、2,4−ペンタンジオン及びヘキサフルオロアセトンを含む。
【0194】
好適なエステルの例はメチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、イソブチルアセテート、ヘキシルアセテート、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、フェノキシエチルアセテート、エチルフェニルアセテート、メチルラクテート、エチルラクテート、プロピルラクテート、ブチルラクテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ベンジルプロピオネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、アミルアセテート、エチルベンゾエート、ブチルベンゾエート、ブチルラウレ−ト、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミレート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジエチルマロネート、ジプロピルマロネート、ジエチルスクシネート、ジブチルスクシネート、ジエチルグルタレート、ジエチルアジペート、ジブチルアジペート及びジエチルセバケートを含む。
【0195】
好適なエーテルの例はブチルフェニルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ヘキシルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサンを含む。
【0196】
好適なグリコール及びポリグリコールの例はエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコールを含む。
【0197】
好適なグリコール及びポリグリコール誘導体の例はアルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテルの如きエーテル、及びアセテート及びプロピオネートエステルの如き前述のグリコールエーテルのエステルを含み、ジアルキルエーテルの場合、一つだけのエーテル官能(混合されたエーテル/エステルを生じる)又は両エーテル官能(ジアルキルエステルを生じる)がエステル化されることができる。
【0198】
好適なアルキレングリコールモノアルキルエーテルの例はエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチル−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル及びプロピレングリコールモノフェニルエーテルを含む。
【0199】
好適なアルキレングリコールジアルキルエーテルの例はエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル及びプロピレングリコールジブチルエーテルを含む。
【0200】
好適なポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルの例はジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレンモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレンモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレンモノt−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル及びトリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルを含む。
【0201】
好適なポリアルキレングリコールジアルキルエーテルの例はジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレンジn−プロピルエーテル、ジプロピレンジt−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル及びトリプロピレングリコールジエチルエーテルを含む。
【0202】
好適なグリコールエステルの例はエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネートを含む。
【0203】
顔料分散体及びインクジェットインクに使用するために好ましい溶剤は以下の式(PAG)によって表される一つ以上のポリアルキレングリコールジアルキルエーテルである:

式中、R及びRは各々独立して1〜4個の炭素原子を有するアルキル基から選択され;
Yはエチレン基及び/又はプロピレン基を表わし;
nは4〜20から選択される整数である。好ましくは、式(PAG)によって表わされる二つ以上のポリアルキレングリコールジアルキルエーテルの混合物である。
【0204】
式(PAG)によるポリアルキレングリコールジアルキルエーテルのアルキル基R及びRはメチル及び/又はエチルを表わすことが好ましい。最も好ましくは、アルキル基R及びRはともにメチル基である。
【0205】
好ましい実施態様では、式(PAG)によるポリアルキレングリコールジアルキルエーテルはポリエチレングリコールジアルキルエーテルである。
【0206】
別の好ましい実施態様では、二つ、三つ、四つ又はそれより多いポリアルキレングリコールジアルキルエーテル、より好ましくはポリエチレングリコールジアルキルエーテルの混合物を顔料分散体又はインクジェットインクに存在させる。
【0207】
顔料分散体のためのポリアルキレングリコールジアルキルエーテルの好適な混合物はCLARIANTからのPolyglycol DME 200(登録商標),Polyglycol DME 250(登録商標)及びPolyglycol DME 500(登録商標)の如き少なくとも200の分子量を有するポリエチレングリコールジメチルエーテルの混合物を含む。非水性インクジェットインクに使用されるポリアルキレングリコールジアルキルエーテルは好ましくは200〜800の平均分子量を有し、より好ましくは800より多い分子量を有するポリアルキレングリコールジアルキルエーテルを存在させない。ポリアルキレングリコールジアルキルエーテルの混合物は室温で均一な液体混合物であることが好ましい。
【0208】
好適な市販のグリコールエーテル溶剤はUNION CARBIDEからのCellosolve(登録商標)溶剤及びCarbitol(登録商標)溶剤、EASTMANからのEktasolve(登録商標)溶剤、DOWからのDowanol(登録商標)溶剤、SHELL CHEMICALからのOxitoll(登録商標)溶剤、Dioxitoll(登録商標)溶剤、Proxitoll(登録商標)溶剤及びDiproxitoll(登録商標)溶剤、及びLYONDELLからのArcosolv(登録商標)溶剤を含む。
【0209】
ラクトンはエステル結合によって形成された環構造を有する化合物であり、γ−ラクトン(5員環構造)、δ−ラクトン(6員環構造)又はε−ラクトン(7員環構造)型のものであることができる。ラクトンの好適な例はγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−ヘプタラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン及びε−カプロラクトンを含む。
【0210】
N含有有機溶剤の好適な例は2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドン、N−ドデシル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、及びN,N−ジメチルドデカンアミドを含む。
【0211】
別の実施態様では、分散媒体は油タイプの液体を単独で又は有機溶剤と組み合わせて含む。好適な有機溶剤はアルコール、ケトン、エステル、エーテル、グリコール及びポリグリコール及びその誘導体、ラクトン、アミドの如きN含有溶剤、高級脂肪酸エステル及び溶剤系分散媒体のための上記のような溶剤の一種以上の混合物を含む。
【0212】
極性溶剤の量は油の量より少ないことが好ましい。有機溶剤は好ましくは高い沸点、好ましくは200℃以上の沸点を持つ。好適な組み合わせの例は特にオレイルアルコールの使用に対してEP 0808347 A(XAAR)に、そして油及び揮発性有機溶剤の組み合わせに対してEP 1157070 A(MARCONI DATA SYSTEMS)に記載されている。
【0213】
好適な油は飽和炭化水素及び不飽和炭化水素、芳香族油、パラフィン油、抽出パラフィン油、ナフテン油、抽出ナフテン油、水素処理された軽又は重油、植物油、ホワイトオイル、石油ナフサ油、水素置換炭化水素、シリコーン及びそれらの誘導体及び混合物を含む。
【0214】
炭化水素は直鎖又は枝分かれ鎖脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素から選択されてもよい。炭化水素の例はn−ヘキサン、イソヘキサン、n−ノナン、イソノナン、ドデカン及びイソドデカンの如き飽和炭化水素;1−ヘキセン、1−ヘプテン及び1−オクテンの如き不飽和炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン及びデカリンの如き環式飽和炭化水素;シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、及びシクロドデセンの如き環式不飽和炭化水素;及びベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン及びそれらの誘導体の如き芳香族炭化水素である。文献では、用語パラフィン油が使用されることが多い。好適なパラフィン油は通常のパラフィン型(オクタン及びそれより高級のアルカン)、イソパラフィン(イソオクタン及びそれより高級のシクロアルカン)及びシクロパラフィン(シクロオクタン及びそれより高級のシクロアルカン)及びパラフィン油の混合物であることができる。用語「液体パラフィン」は通常のパラフィン、イソパラフィン及び単環式パラフィンの三成分から主になる混合物を言及するために使用されることが多く、それはUS 6730153(SAKATA INX)に記載されているように硫酸洗浄などを通して相対的に揮発性の潤滑油画分を高度に精製することによって得られる。好適な炭化水素はまた、脱芳香族化石油製品として記載されている。
【0215】
ハロゲン化炭化水素の好適な例はメチレンジクロライド、クロロホルム、テトラクロロメタン及びメチルクロロホルムを含む。ハロゲン置換炭化水素の他の好適な例はパーフルオロアルカン、フッ素系不活性液及びフルオロカーボンイオダイドを含む。
【0216】
シリコーンオイルの好適な例はジアルキルポリシロキサン(例えばヘキサメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサン、ヘプタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、トリフルオロプロピルヘプタメチルトリシロキサン、ジエチルテトラメチルジシロキサン)、環状ジアルキルポリシロキサン(例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラ(トリフルオロプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン)、及びメチルフェニルシリコーン油を含む。
【0217】
ホワイトオイルは白色の鉱物油のために使用される用語であり、それは飽和脂肪族及び脂環式非極性炭化水素からなる高度に精製された鉱物油である。ホワイトオイルは疎水性、無色、無味、無臭であり、経時的に色を変化しない。
【0218】
植物油は大豆油、綿実油、ヒマワリ油、菜種油、カラシ油、ゴマ油及びトウモロコシ油の如き半乾性油;オリーブ油、ピーナッツ油及び椿油の如き不乾性油;及び亜麻仁油及び紅花油の如き乾性油を含み、これらの植物油は単独で又はそれらの混合物として使用されることができる。
【0219】
他の好適な油の例は石油、不乾性油及び半乾性油を含む。
【0220】
商業的に入手可能な好適な油はEXXON CHEMICALからのIsopar(登録商標)系列(イソパラフィン)及びVarsol/Naphtha系列、CHEVRON PHILLIPS CHEMICALからの炭化水素、及びSHELL CHEMICALSからのShellsol(登録商標)系列の如き脂肪族炭化水素のタイプを含む。
【0221】
好適な市販の通常パラフィンはEXXON MOBIL CHEMICALからのNorpar(登録商標)系列を含む。
【0222】
好適な市販のナフテン系炭化水素はEXXON MOBIL CHEMICALからのNappar(登録商標)系列を含む。
【0223】
好適な市販の脱芳香族化石油製品はEXXON MOBIL CHEMICALからのExxsol(登録商標)系列を含む。
【0224】
好適な市販のフルオロ置換炭化水素はDAIKIN INDUSTRIES LTD,Chemical Divisionからのフルオロカーボンを含む。
【0225】
好適な市販のシリコーン油はSHIN−ETSU CHEMICAL,Silicone Divisionからのシリコーン液系列を含む。
【0226】
好適な市販のホワイトオイルはCROMPTON CORPORATIONからのWitco(登録商標)ホワイトオイルを含む。
【0227】
もし非水性顔料分散体が硬化可能な顔料分散体であるなら、分散媒体は液体分散媒体を得るために一つ以上のモノマー及び/又はオリゴマーを含む。ときには、分散剤の溶解性を改良するために少量の有機溶剤を添加することが有利でありうる。有機溶剤の含有量はインクジェットインクの全重量に基づくと20重量%未満にすべきである。他の場合において、例えば親水性表面上のインクジェットインクの分散を改良するために少量の水を添加することが有利でありうるが、インクジェットインクは水を全く含有しないことが好ましい。
【0228】
好ましい有機溶剤はアルコール、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、カルビトール、セロソルブ、高級脂肪酸エステルを含む。好適なアルコールはメタノール、エタノール、プロパノール及び1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ブタノール、t−ブタノールを含む。好適な芳香族炭化水素はトルエン及びキシレンを含む。好適なケトンはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2,4−ペンタンジオン及びヘキサフルオロアセトンを含む。また、グリコール、グリコールエーテル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドを使用してもよい。
【0229】
硬化性インクジェットインクの場合において、分散媒体はモノマー及び/又はオリゴマーからなることが好ましい。
【0230】
モノマー及びオリゴマー
硬化可能なインクジェットインクのための硬化可能な化合物としていかなるモノマー又はオリゴマーを使用してもよい。モノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーの組み合わせを使用してもよい。モノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーは異なる官能価を有してもよく、モノ、ジ、トリ及びそれより高い官能価のモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーの組み合わせを含む混合物を使用してもよい。インクジェットインクの粘度はモノマーとオリゴマーの間の比率を変更することによって調整されることができる。
【0231】
通常のラジカル重合、光酸もしくは光塩基生成剤を使用する光硬化システム、又は光誘導交互共重合のうちのいかなる方法を使用してもよい。一般に、ラジカル重合及びカチオン重合が好ましく、開始剤を必要としない光誘導交互共重合を使用してもよい。さらに、これらのシステムの組み合わせの混成系も有効である。
【0232】
カチオン重合は酸素による重合の抑制の不足のために効果に優れるが、高価で、特に高い相対湿度の条件下では遅い。もしカチオン重合が使用されるなら、重合の速度を増大するようにオキセタン化合物とともにエポキシ化合物を使用することが好ましい。ラジカル重合は好ましい重合法である。
【0233】
一般に業界で知られているいかなる重合可能な化合物を使用してもよい。放射線硬化性インクジェットインクにおける放射線硬化性化合物として使用するために特に好ましいものは単官能及び/又は多官能アクリレートモノマー、オリゴマー又はプレポリマー、例えばイソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソアミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ビニルエーテルアクリレート、ビニルエーテルエトキシ(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルスクシン酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ラクトン変性可撓性アクリレート、及びt−ブチルシクロヘキシルアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールA EO(エチレンオキサイド)アダクトジアクリレート、ビスフェノールA PO(プロピレンオキサイド)アダクトジアクリレート、ヒドロキシピバレートネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、アルコシキル化ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート及びポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリ(プロピレングリコール)トリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;又はN−ビニルアミド、例えばN−ビニルカプロラクタム又はN−ビニルホルムアミド;又はアクリルアミドもしくは置換アクリルアミド、例えばアクリロイルモルフォリンである。
【0234】
他の好適な単官能アクリレートはカプロラクトンアクリレート、環式トリメチロールプロパンホルマルアクリレート、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチルデシルアクリレート、アルコキシル化フェノールアクリレート、トリデシルアクリレート及びアルコキシル化シクロヘキサノンジメタノールジアクリレートを含む。
【0235】
他の好適な二官能アクリレートはアルコキシル化シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、アルコシキル化ヘキサンジオールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート及びネオペンチルグリコールジアクリレートを含む。
【0236】
他の好適な三官能アクリレートはプロポキシル化グリセリントリアクリレート及びプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートを含む。
【0237】
他のそれより高い官能価のアクリレートはジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、メトキシル化グリコールアクリレート及びアクリレートエステルを含む。
【0238】
さらに、上述のアクリレートに対応するメタクリレートはこれらのアクリレートで使用されてもよい。メタクリレートのうち、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、及びポリエチレングリコールジメタクリレートがそれらの相対的に高い感度及びインク受容表面に対する高い接着性のために好ましい。
【0239】
さらに、インクジェットインクはまた、重合可能なオリゴマーを含有してもよい。これらの重合可能なオリゴマーの例はエポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、及び直鎖アクリルオリゴマーを含む。
【0240】
スチレン化合物の好適な例はスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン及びp−メトキシ−β−メチルスチレンである。
【0241】
ビニルナフタレン化合物の好適な例は1−ビニルナフタレン、α−メチル−1−ビニルナフタレン、β−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メチル−1−ビニルナフタレン及び4−メトキシ−1−ビニルナフタレンである。
【0242】
N−ビニル化合物の好適な例はN−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニリンドール、N−ビニルピロール、N−ビニルフェノチアジン、N−ビニルアセトアニリド、N−ビニルエチルアセトアミド、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルカプロラクタム及びN−ビニルイミダゾールである。
【0243】
インクジェットインクのカチオン重合可能な化合物は一つ以上のモノマー、一つ以上のオリゴマー又はそれらの組み合わせであることができる。
【0244】
カチオン硬化可能な化合物の好適な例はAdvances in Polymer Science,62,pages 1 to 47(1984)by J.V.Crivelloに見出すことができる。
【0245】
カチオン硬化可能な化合物は少なくとも一つのオレフィン、チオエーテル、アセタール、チオキサン、チエタン、アジリジン、N,O,SもしくはP−複素環式、アルデヒド、ラクタム又は環式エステル基を含んでもよい。
【0246】
カチオン重合可能な化合物の例はモノマー及び/又はオリゴマーエポキシド、ビニルエーテル、スチレン、オキセタン、オキサゾリン、ビニルナフタレン、N−ビニル複素環式化合物、テトラヒドロフルフリル化合物を含む。
【0247】
カチオン重合可能なモノマーは単、二又は多官能又はそれらの混合物であることができる。
【0248】
少なくとも一つのエポキシ基を有する好適なカチオン硬化可能な化合物は“Handbook of Epoxy Resins”by Lee and Neville,McGraw Hill Book Company,New York(1967)及び“Epoxy Resin Technology”by P.F.Bruins,John Wiley and Sons New York(1968)に掲載されている。
【0249】
少なくとも一つのエポキシ基を有するカチオン硬化可能な化合物の例は1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、3−(ビス(グリシジルオキシメチル)メトキシ)−1,2−プロパンジオール、リモネンオキシド、2−ビフェニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エピクロロヒドリン−ビスフェノールSベースのエポキシド、エポキシ化スチレン及びエピクロロヒドリン−ビスフェノールF及びAベースのエポキシド及びエポキシ化ノボラックを含む。
【0250】
分子中に少なくとも二つのエポキシ基を含む好適なエポキシ化合物は脂環式ポリエポキシド、多塩基酸のポリグリシジルエステル、ポリオールのポリグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル、芳香族ポリオールのポリグリシジルエステル、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル、ウレタンポリエポキシ化合物、及びポリエポキシポリブタジエンである。
【0251】
脂環式ビスエポキシドの例はグリコール、ポリオール又はビニルエーテルの如きヒドロキシル成分とエポキシドのコポリマー、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′、4′−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、リモネンビスエポキシド、ヘキサヒドロフタル酸のジクリシジルエステルを含む。
【0252】
少なくとも一つのビニルエーテル基を有するビニルエーテルの例はエチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヒドロキシルブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、p−メチルフェニルビニルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテル、α−メチルフェニルビニルエーテル、β−メチルイソブチルビニルエーテル及びβ−クロロイソブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、4−(ビニルオキシ)ブチルベンゾエート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]アジペート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]スクシネート、4−(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチルベンゾエート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]イソフタレート、ビス[4−(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチル]グルタレート、トリス[4−(ビニルオキシ)ブチル]トリメリテート、4−(ビニルオキシ)ブチルステアタイト、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]ヘキサンジイルビスカルバメート、ビス[4−(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシルメチルテレフタレート、ビス[4−(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシルメチルイソフタレート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル](4−メチル−1,3−フェニレン)−ビスカルバメート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル](メチレンジ−4,1−フェニレン)−ビスカルバメート及び3−アミノ−1−プロパノールビニルエーテルを含む。
【0253】
少なくとも一つのオキセタン基を有するオキセタン化合物の好適な例は3−エチル−3−ヒドロキシメチル−1−オキセタン、オリゴマー混合物1,4−ビス[3−エチル−3−オキセタニルメトキシ]メチル]ベンセン、3−エチル−3−フェノキシメチル−オキセタン、ビス([1−エチル(3−オキセタニル)]メチル)エーテル、3−エチル−3−[(2−エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−[(トリ−エトキシシリルプロポキシ)メチル]オキセタン及び3,3−ジメチル−2(p−メトキシ−フェニル)−オキセタンを含む。
【0254】
放射線とカチオンの両方で硬化可能な組成物に使用されることができるモノマー及びオリゴマーの好ましい種類はここに参照として組み入れられるUS 6310115(AGFA)に記載されたものの如きビニルエーテルアクリレートである。特に好ましい化合物は2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートであり、最も好ましくは化合物は2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレートである。
【0255】
開始剤
硬化可能なインクジェットインクはまた、開始剤を含むことが好ましい。開始剤は典型的には重合反応を開始する。開始剤は熱開始剤であることができるが、光開始剤であることが好ましい。光開始剤はポリマーを形成するためにモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーより活性化するために必要なエネルギーが少ない。硬化可能なインクジェットインクに使用するために好適な光開始剤はNorrish I型開始剤、Norrish II型開始剤又は光酸発生剤であってもよい。
【0256】
硬化可能なインクジェットインクに使用するために好適な熱開始剤はターシャリ−アミルパーオキシベンゾエート、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキシド、2,2−ビス(ターシャリ−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(ターシャリブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(ターシャリ−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,5−ビス(ターシャリ−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス(ターシャリブチルパーオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン、ビス(1−(ターシャリ−ブチルパーオキシ)−1−メチルエチル)ベンゼン、1,1−ビス(ターシャリ−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ターシャリ−ブチルヒドロパーオキシド、ターシャリ−ブチルパーアセテート、ターシャリ−ブチルパーオキシド、ターシャリ−ブチルパーオキシベンゾエート、ターシャリ−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クメンヒドロパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、2,4−ペンタンジオンパーオキシド、過酢酸及び過硫酸カリウムを含む。
【0257】
光開始剤又は光開始剤系は光を吸収し、フリーラジカル及びカチオンの如き開始種の生成のために関与する。フリーラジカル及びカチオンはモノマー、オリゴマー及びポリマーの重合、及び架橋を誘発する多官能モノマー及びオリゴマーとの重合を誘発する高エネルギー種である。
【0258】
化学線での照射は波長又は強度を変えることによって二段階で実現されてもよい。かかる場合には、2タイプの光開始剤を一緒に使用することが好ましい。
【0259】
異なるタイプの開始剤、例えば光開始剤と熱開始剤の組み合わせを使用することができる。
【0260】
好ましいNorrish I型開始剤はベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシド、アシルホスフィンスルファイド、α−ハロケトン、α−ハロスルホン及びα−ハロフェニルグリオキサレートからなる群から選択される。
【0261】
好ましいNorrish II型開始剤はベンゾフェノン、チオキサントン、1,2−ジケトン及びアントラキノンからなる群から選択される。好ましい共開始剤は脂肪族アミン、芳香族アミン及びチオールからなる群から選択される。ターシャリアミン、複素環式チオール及び4−ジアルキルアミノ安息香酸が共開始剤として特に好ましい。
【0262】
好適な光開始剤はCRIVELLO,J.V.,et al.VOLUME III:Photoinitiators for Free Radical Cationic.2nd edition.Edited by BRADLEY,G..London,UK:John Wiley and Sons Ltd,1998.p.287−294に開示されている。
【0263】
光開始剤の特別な例は限定されないが、次の化合物又はそれらの組み合わせを含んでもよい:ベンゾフェノン及び置換されたベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、例えばイソプロピルチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン又は5,7−ジイオド−3−ブトキシ−6−フルオロン、ジフェニルイオドニウムフルオリド及びトリフェニルスルホニウムヘキサフルオホスフェート。
【0264】
好適な市販の光開始剤はCIBA SPECIALTY CHEMICALSから入手可能なIrgacure(登録商標)184,Irgacure(登録商標)500,Irgacure(登録商標)907,Irgacure(登録商標)369,Irgacure(登録商標)1700,Irgacure(登録商標)651,Irgacure(登録商標)819,Irgacure(登録商標)1000,Irgacure(登録商標)1300,Irgacure(登録商標)1870,Darocur(登録商標)1173,Darocur(登録商標)2959,Darocur(登録商標)4265及びDarocur(登録商標)ITX、BASF AGから入手可能なLucerin TPO、LAMBERTIから入手可能なEsacure(登録商標)KT046,Esacure(登録商標)KIP150,Esacure(登録商標)KT37及びEsacure(登録商標)EDB、SPECTRA GROUP Ltdから入手可能なH−Nu(登録商標)470及びH−Nu(登録商標)470Xを含む。
【0265】
好適なカチオン光開始剤は紫外及び/又は可視光への露光で重合を開始するために十分な非プロトン酸又はブレンステッド酸を形成する化合物を含む。使用される光開始剤は単一化合物、二種以上の活性化合物の混合物、又は二種以上の異なる化合物の組み合わせ、即ち共開始剤であってもよい。好適なカチオン光開始剤の限定されない例はアリールジアゾニウム塩、ジアリールイオドニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩などである。
【0266】
硬化可能なインクジェットインクは一種以上の光開始剤、及びエネルギーを光開始剤に移動する一種以上の増感剤を含有する光開始剤系を含有してもよい。好適な増感剤は光還元性キサンテン、フルオレン、ベンゾキサンテン、ベンゾチオキサンテン、チアジン、オキサジン、クマリン、ピロニン、ポルフィリン、アクリジン、アゾ、ジアゾ、シアニン、メロシアニン、ジアリールメチル、トリアリールメチル、アントラキノン、フェニレンジアミン、ベンズイミダゾール、フルオロクロム、キノリン、テトラゾール、ナフトール、ベンジジン、ローダミン、インジゴ及び/又はインダントレン色素を含む。増感剤の量は各場合において硬化可能なインクジェットインクの全重量に基づいて一般に0.01〜15重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0267】
感光性をさらに増大するために、硬化可能なインクジェットインクはさらに、共開始剤を含有してもよい。例えば、チタノセンとトリクロロメチル−s−トリアジン、チタノセンとケトキシムエーテル、アクリジンとトリクロロメチル−s−トリアジンの組み合わせが知られている。感度のさらなる増加はジベンザルアセトン又はアミノ酸誘導体を添加することによって達成されることができる。共開始剤の量は各場合において硬化可能なインクジェットインクの全重量に基づいて一般に0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜10重量%である。
【0268】
共開始剤の好適な例は四つのグループに分類されることができる:
(1)第三脂肪族アミン、例えばメチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン及びN−メチルモルフォリン;
(2)芳香族アミン、例えばアミルパラジメチルアミノベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、及び2−エチルヘキシル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート;
(3)(メタ)アクリル化アミン、例えばジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えばジエチルアミノエチルアクリレート)又はN−モルフォリノアルキル−(メタ)アクリレート(例えばN−モルフォリノエチルアクリレート);及び
(4)アミド又はウレア。
好ましい共開始剤はアミノベンゾエートである。
【0269】
好ましい開始剤系は2−メルカプトベンズオキサゾールの如き共開始剤の存在下の以下の化学式に相当する2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−(7Cl,8Cl)4,4′−ビ−4H−イミダゾールである:

【0270】
別の好ましいタイプの開始剤はオキシムエステルである。好適な例は以下の化学式を有する:

【0271】
開始剤の好ましい量は硬化可能な液体の全重量の0.3〜50重量%、より好ましくは硬化可能なインクジェットインクの全重量の1〜15重量%である。
【0272】
化学線での照射は波長又は強度を変えることによって二段階で実現されてもよい。かかる場合には2タイプの光開始剤を一緒に使用することが好ましい。
【0273】
阻害剤
好適な重合阻害剤はフェノチアジン、フェノール型酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、燐光体型酸化防止剤、(メタ)アクリレートモノマーに一般に使用されるヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、ヒドロキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロールを使用してもよい。これらのうち、アクリル酸から誘導された分子内に二重結合を持つフェノール化合物が、閉鎖された酸素不含環境で加熱されてもその重合抑制効果を持つため特に好ましい。好適な阻害剤は例えばSumitomo Chemical Co.Ltdによって製造されるSumilizer(登録商標)GA−80,Sumilizer(登録商標)GM及びSumilizer(登録商標)GS,CIBA Specialty ProductsからのCiba Irgastab(登録商標)UV10及びRAHNから入手可能なGenorad(登録商標)16である。
【0274】
これらの重合阻害剤の過剰な添加は硬化に対するインク感受性を低下するので、ブレンド前に重合を防止することができる量を決定することが好ましい。重合阻害剤の量は一般に硬化可能なインクジェットインクの全重量の200〜20000ppmである。
【0275】
界面活性剤
界面活性剤はアニオン性、カチオン性、ノニオン性、又は両性イオン性であることができ、通常インクジェットインクの全重量に基づいて20重量%未満の全量で、特にインクジェットインクの全重量に基づいて10重量%未満の全量で添加される。
【0276】
好適な界面活性剤はフッ素化界面活性剤、脂肪酸塩、高級アルコールのエステル塩、アルキルベンゼンスルホネート塩、スルホンスクシネートエステル塩及び高級アルコールの燐酸エステル塩(例えば、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート及びナトリウムジオクチルスルホスクシネート)、高級アルコールのエチレンオキサイドアダクト、アルキルフェノールのエチレンオキサイドアダクト、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキサイドアダクト、及びアセチレングリコール及びそのエチレンオキサイドアダクト(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びAIR PRODUCTS&CHEMICALS INCから入手可能なSURFYNOL(登録商標)104,104H,440,465及びTG)を含む。
【0277】
非水性インクジェットインクに対して好ましい界面活性剤はフルオロ界面活性剤(例えばフッ素化炭化水素)及びシリコーン界面活性剤から選択される。シリコーンは典型的にはシロキサンであり、アルコキシル化、ポリエステル変性、ポリエーテル変性ヒドロキシ官能、アミン変性、エポキシ変性及び他の変性体又はそれらの組み合わせであることができる。好ましいシロキサンはポリマー、例えばポリジメチルシロキサンである。
【0278】
硬化可能なインクジェットインクではフッ素化又はシリコーン化合物が界面活性剤として使用されてもよく、好ましくは架橋可能な界面活性剤が使用される。界面活性効果を有する重合可能なモノマーはシリコーン変性アクリレート、シリコーン変性メタクリレート、アクリル化シロキサン、ポリエーテル変性アクリル変性シロキサン、フッ素化アクリレート、及びフッ素化メタクリレートを含む。界面活性効果を有する重合可能なモノマーはモノ、ジ、トリ又はそれより高い官能価の(メタ)アクリレート又はそれらの混合物であることができる。
【0279】
結合剤
本発明によるインクジェットインクセットの二つ以上のカラーインクジェットインクは結合剤樹脂を含んでもよい。結合剤は粘度制御剤として機能し、また、支持体、例えばポリ塩化ビニル支持体に対して定着性を与える。結合剤は溶剤において良好な溶解性を持つことが好ましい。
【0280】
非水性インクジェットインク組成物は結合剤樹脂を含むことが好ましい。結合剤は粘度制御剤として機能し、また、ポリマー樹脂支持体、例えばポリ塩化ビニル支持体(ビニル支持体とも称される)に対する定着性を与える。結合剤は溶剤における良好な溶解性を持つように選択されなければならない。
【0281】
結合剤樹脂の好適な例はアクリル樹脂、変性アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリルコポリマー、アクリレート樹脂、アルデヒド樹脂、ロジン、ロジンエステル、変性ロジン及び変性ロジン樹脂、アセチルポリマー、ポリビニルブチラールの如きアセタール樹脂、ケトン樹脂、フェノール樹脂及び変性フェノール樹脂、マレイン樹脂及び変性マレイン樹脂、テルペン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセトプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートの如きセルロース型樹脂、及びビニルトルエン−α−メチルスチレンコポリマー樹脂を含む。これらの結合剤は単独で又はそれらの混合物で使用されてもよい。結合剤はフィルム形成熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0282】
インクジェットインクにおける結合剤樹脂の量はインクジェットインクの全重量に基づいて好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、最も好ましくは2〜10重量%の範囲である。
【0283】
保湿剤/浸透剤
もし同じ色及び色濃度の二つ以上のカラーインクジェットインクが有機溶剤又は水を含有するなら、少なくとも一種の保湿剤を、そのインクの蒸発速度を低下する能力によってノズルの詰まりを防止するためにインクに存在させることが好ましい。
【0284】
好適な保湿剤はトリアセチン、N−メチル−2−ピロリドン、グリセロール、ウレア、チオウレア、エチレンウレア、アルキルウレア、アルキルチオウレア、ジアルキルウレア及びジアルキルチオウレア、ジオール(エタンジオール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールを含む);グリコール(プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールを含む)、及びそれらの混合物及び誘導体を含む。好ましい保湿剤はトリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセロール及び1,2−ヘキサンジオールである。保湿剤はインクジェットインク配合物に配合物の0.1〜40重量%、より好ましくは配合物の0.1〜10重量%、最も好ましくは約4.0〜6.0重量%の量で添加されることが好ましい。
【0285】
他の添加剤
本発明によるインクジェットインクセットの二つ以上のカラーインクジェットインクは、他の添加剤、例えば緩衝剤、防カビ剤、pH調整剤、電導性調整剤、キレート化剤、防錆剤、光安定剤、デンドリマー、ポリマー、架橋剤、電導性助剤、金属イオン封鎖剤及びキレート化剤としての溶解性電解質、追加のセキュリティ機能を導入する化合物などを含んでもよい。かかる添加剤は、希望により本発明によるインクジェットインクセットの二つ以上のカラーインクジェットインクにいかなる効果的な量で含まれてもよい。
【0286】
追加のセキュリティ特徴を導入するための化合物は蛍光化合物、燐光化合物、サーモクロミック化合物、虹色化合物及び磁気粒子を含む。好適なUV蛍光及び燐光化合物はHONEYWELLからのLUMILUX(登録商標)ルミネセント顔料、CIBA−GEIGYからのUVITEX(登録商標)OB,KEYSTONEからのKEYFLUOR(登録商標)色素及び顔料及びSYNTHEGENからの蛍光色素を含む。
【0287】
本発明によるインクジェットインクセットの二つ以上のカラーインクジェットインクはさらに、電導性又は半電導性ポリマー、例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、例えばポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、置換又は非置換ポリ(フェニレンビニレン)(PPV)、例えばPPV及びMEH−PPV、ポリフルオレン、例えばPF6などを含んでもよい。
【0288】
着色されたインクジェットインクの製造
着色されたインクジェットインクはポリマー分散剤の存在下で分散媒体において顔料を沈殿又は微粉砕することによって製造されてもよい。
【0289】
混合装置はプレスニーダ、オープンニーダ、遊星形ミキサー、溶解機、及びダルトンユニバーサルミキサーを含んでもよい。好適な微粉砕及び分散装置はボールミル、パールミル、コロイドミル、高速分散機、ダブルローラ、ビーズミル、ペイントコンディショナー、及びトリプルローラを含んでもよい。分散体はまた、超音波エネルギーを使用して作られてもよい。
【0290】
多くの様々なタイプの材料、例えばガラス、セラミックス、金属、及びプラスチックスが微粉砕媒体として使用されてもよい。好ましい実施態様では、粉砕媒体は粒子、好ましくは実質的に球状形状のもの、例えば本質的にポリマー樹脂からなるビーズ又はイットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズを含むことができる。
【0291】
混合、微粉砕及び分散の工程では、各工程は熱の蓄積を防止するために冷却して行なわれ、放射線硬化性インクジェットインクに対して化学線が実質的に除外されている光条件下でできるだけ行なわれる。
【0292】
インクジェットインクは一種より多い顔料を含有してもよく、インクジェットインクは各顔料に対して別個の分散体を使用して製造されてもよく、又は幾つかの顔料は分散体の製造の際に混合又は共微粉砕されてもよい。
【0293】
分散工程は連続式、バッチ式又は半バッチ式で実施されることができる。
【0294】
ミル微粉砕物の成分の好ましい量及び比率は特定の材料及び意図した用途に依存して幅広く変化するだろう。微粉砕混合物の中身はミル微粉砕物及び微粉砕媒体を含む。ミル微粉砕物は顔料、ポリマー分散剤及び液体キャリアを含む。インクジェットインクに対して、顔料は通常、微粉砕媒体を除くと1〜50重量%でミル微粉砕物中に存在する。顔料のポリマー分散剤に対する重量比は20:1〜1:2である。
【0295】
微粉砕時間は、幅広く変化することができ、顔料、機械的手段及び選択される滞留条件、初期及び所望の最終粒子サイズなどに依存する。本発明では、100nm未満の平均粒子サイズを有する顔料分散体を調製してもよい。
【0296】
微粉砕が完了した後、微粉砕媒体は濾過、メッシュスクリーンを通した篩分けなどの通常の分離技術を使用して微粉砕された粒状化合物(乾燥又は液体分散形態のいずれか)から分離される。しばしば篩分けはミル、例えばビーズミル中に組み入れられる。微粉砕された顔料濃縮物は濾過によって微粉砕媒体から分離されることが好ましい。
【0297】
一般に、インクジェットインクを濃縮されたミル微粉砕物の形で作ることが望ましく、それは次いでインクジェット印刷システムに使用するために適切な濃度に希釈される。この技術は装置から多量の顔料インクの製造を可能にする。希釈によって、インクジェットインクは個々の用途に対して、所望の粘度、表面張力、色、色相、飽和濃度、及び印刷領域被覆率に調整される。
【0298】
スペクトル分離率
スペクトル分離率SSFは顔料インクジェットインクを特徴づけるために優れた測度であることが見出された。なぜならば、それは光吸収に関する特性(例えば最大吸光度の波長λmax、吸収スペクトルの形状及びλmaxにおける吸光度値)並びに分散品質及び安定性に関する特性を考慮に入れているからである。
【0299】
高い波長における吸光度の測定は吸収スペクトルの形状についての表示を与える。分散品質は溶液中の固体粒子によって誘導された光散乱の現象に基づいて評価されることができる。透過で測定すると、顔料インクにおける光散乱は実際の顔料の吸光度ピークより高い波長の増大した吸光度として検出されることがある。分散安定性は例えば80℃で一週間の熱処理の前後のSSFを比較することによって評価されることができる。
【0300】
インクのスペクトル分離率SSFは、支持体上に噴出された像又はインク溶液の記録されたスペクトルのデータを使用し、最大吸光度をより高い参照波長λrefにおける吸光度と比較することによって計算される。スペクトル分離率は最大吸光度Amaxの参照波長における吸光度Arefに対する比率として計算される。

【0301】
SSFは大きな色域を有するインクジェットセットを設計するための優れたツールである。しばしばインクジェットインクセットは現在商業化され、そこでは異なるインクは互いに十分に適合しない。例えば、全てのインクの組み合わされた吸収性は可視スペクトル全体に対して完全な吸収を与えない。例えば着色剤の吸収スペクトル間に「間隙」が存在する。別の問題はあるインクが別のインクの範囲で吸収しうることである。これらのインクジェットインクセットの生じた色域は低いか又は月並みである。
【実施例】
【0302】
材料
以下の実施例で使用された全ての材料は特記しない限り、Aldrich Chemical Co.(ベルギー)及びAcros(ベルギー)のような標準的な販売源から容易に入手可能であった。使用された水は脱イオン水であった。
Cinquasia(登録商標)Magenta RT−355−DはCIBA SPECIALTY CHEMICALSからのキナクリドン顔料である。
Sunfast(登録商標)Blue 15:3はSUN CHEMICALから入手可能なシアン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)である。
SOLSPERSE(登録商標)35000及びSOLSPERSE(登録商標)39000はNOVEONからのポリエチレンイミンポリエステル超分散剤である。
Solsperse(登録商標)5000はNOVEONからの分散相乗剤である。
Genorad(登録商標)16はRAHN AGからの重合阻害剤である。
DPGDAはSARTOMERからのジプロピレングリコールジアクリレートである。
Sartomer(登録商標)SR9003はSARTOMERから入手可能な二官能アクリレートモノマーである。
Craynor(登録商標)CN386はSARTOMERから入手可能なアミン変性アクリレート相乗剤である。
Genocure(登録商標)EPDはRAHN AGからのエチル−4−ジメチルアミノベンゾエートである。
Genocure(登録商標)TPOはRAHN AGからの2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシドである。
Genocure(登録商標)PBZはRAHN AGからの光開始剤4−フェニルベンゾフェノンである。
Genocure(登録商標)ITXはRAHN AGからの光開始剤イソチオキサントンである。
BYK(登録商標)UV3510はBYK CHEMIE GMBHからのポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン湿潤剤である。
Byk(登録商標)−333はBYK CHEMIE GMBHからの界面活性剤である。
Fasson PE85白色/S692N/BG40はAVERY DENNISONからの茶色の共押出されかつコロナ処理された白色ポリエチレン支持体である。
PE紙はMONDI PACKAGINGから入手可能なポリエチレン被覆の下塗りされたRC紙である。
Rayoart CGS92はINNOVIA FILMSからの高い光沢の両側被覆のクリアな二軸配向ポリプロピレンフィルムである。
SeeMee Standard EasyはVERSEIDAG−INDUTEX GMBHからのSeemee backlit standard easy、両側被覆PVCである。
Fasson MC Primecoat S2000NはAVERY DENNISONからのFASSON MC Primecoat/S2000N/HF80、白色、片側機械被覆、木材不含印刷紙支持体である。
Oracal 1640はANTALISからのOracal Blanc 1640 Print Vinyl、接着性ポリ塩化ビニル支持体である。
Biprint 650 grはANTALISからのBiprint blanc/couleur、コロナ処理されたポリプロピレン厚紙である。
【0303】
測定方法
1.SSFの測定
インクのスペクトル分離率SSFは、インク溶液の記録されたスペクトルのデータを使用し、最大吸光度と参照波長の吸光度を比較することによって計算された。この参照波長の選択は使用された顔料に依存する:
・もしカラーインクが400〜500nmの最大吸光度Amaxを持つなら、そのとき吸光度Arefは600nmの参照波長で決定されなければならない。
・もしカラーインクが500〜600nmの最大吸光度Amaxを持つなら、そのとき吸光度Arefは650nmの参照波長で決定されなければならない。
・もしカラーインクが600〜700nmの最大吸光度Amaxを持つなら、そのとき吸光度Arefは830nmの参照波長で決定されなければならない。
【0304】
吸光度はShimadzu UV−2101 PC複光束−分光光度計を用いて透過で測定された。インクジェットインクは表4による顔料濃度を持つように酢酸エチルで希釈された。

【0305】
希釈されたインクのUV−VIS−NIR吸収スペクトルの分光光度測定は表5の設定を使用して複光束分光光度計を用いて透過モードで行なわれた。10mmの路長を持つ石英セルが使用され、酢酸エチルがブランクとして選択された。

【0306】
狭い吸収スペクトル及び高い最大吸光度を示す効果的な着色されたインクジェットインクは少なくとも30のSSFの値を有する。
【0307】
2.平均粒子サイズ
非水性インクジェットインクにおける顔料粒子の平均粒子サイズは、動的光散乱の原理に基づいてBrookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusで測定された。インク又は分散体は酢酸エチルで0.002wt%の顔料濃度に希釈された。BI90plusの測定設定は23℃で5回、90°の角度、635nmの波長及びグラフィックス=訂正機能であった。
【0308】
良好なインクジェット特性(噴射特性及び印刷品質)に対して、分散された粒子の平均粒子サイズは200nm未満、好ましくは150nmにすべきである。
【0309】
3.分散安定性
分散安定性は83℃で7日間の熱処理の前後の粒子サイズを比較することによって評価された。良好な分散安定性を示す着色されたインクジェットインクは熱処理後に200nm以下、好ましくは150nm以下の粒子サイズを持つ。
【0310】
4.表面張力
インクジェットインクの表面張力はKRUESS張力計K9で25℃で60秒後に測定された。
【0311】
5.粘度
インクジェットインクの粘度は、CPE40スピンドルを使用して4RPMの剪断速度及び25℃でBrookfield DV−II+粘度計を使用して測定された。
【0312】
6.ドットサイズ
ドットサイズは、(Watec Co.,Ltd.日本からの)WAT−202Bカメラに接続された150×顕微鏡対物を使用して(M−Service&Geraete−Peter Mueller、ドイツからの)CellCheck CNC−SLSで測定された。五つのドットサイズ測定の平均は(M−Service&Geraete−Peter Mueller、ドイツからの)ソフトウェアMetric versie 8.02 Liveを使用して計算された。
【0313】
7.硬化スピード
ランプの最大出力の百分率割合は硬化スピードの尺度としてとられ、数字が低いほど硬化スピードが高い。試料はQチップでの引っ掻きで視覚的損傷を起こさないときに十分に硬化されたと考えられた。
【0314】
8.支持体の表面エネルギー
Owens−Wendt式が、US 2005190245(AGFA)に開示されたのと同じ方法で支持体の表面エネルギーσを算出するために使用された。
【0315】
9.CIE ΔE2000
使用された方法は上述のパラグラフ「同じ色及び色濃度」において開示されている。
【0316】
実施例1
この実施例は、異なる表面張力を有する二つの硬化可能なインクジェットインクを使用すると同じドットサイズが異なる支持体上でどのように得られるかを示す。
【0317】
インクジェットインクの製造
濃厚な顔料分散体P1が表6に従って製造された。

【0318】
濃厚な顔料分散体P1は、顔料Cinquasia(登録商標)Magenta RT−355−Dの360.0g,DPGDAにおける阻害剤Genorad(登録商標)16の50%溶液の36.0g、及びDPGDAにおけるポリマー分散剤Solsperse(登録商標)35000の35%溶液の1028.6gを、DISPERLUX S.A.R.L.,ルクセンブルグからのDISPERLUX(登録商標)Laboratory Dissolver YELLOW 075を使用して30分間混合することによって作られた。微粉砕混合物を次いで、0.4mm直径のイットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズ(TOSOH Co.からの「高耐磨耗性ジルコニア粉砕媒体」での54.4%体積充填及び85分の滞留時間でNETZSCH(登録商標)LABSTAR1によって冷却下で13m/sの回転スピード及び0.6L/minの流速でミルした。微粉砕後、分散体は濾布を使用してビーズから分離された。濃厚顔料分散体P1は96nmの平均粒子サイズ及び60のSSFを有していた。
【0319】
二つの硬化性マゼンタインクジェットインクINK−1及びINK−2は、表7に示すような組成物を得るために20℃の攪拌下で残りの成分を添加することによって濃厚顔料分散体P1から同じ方法で製造された。

【0320】
硬化可能なインクジェットインクINK−1及びINK−2はそれぞれ、20℃で35.1mN/m及び21.8mN/mの表面張力を有していた。
【0321】
印刷及び評価
表8は五つの異なる支持体及びそれらの表面エネルギーを示し、それらはこの実施例のために選択された。

【0322】
五つの支持体SUB−1〜SUB−5は、硬化可能なインクジェットインクINK−1及びINK−2、並びに110μmの印刷ドットサイズを有するために選択された硬化可能なインクジェットインクINK−1及びINK−2からのインク混合物で印刷された。
【0323】
インクは、1.0mmのノズル板とインク受容体の間の距離でAGFAからの固定UPH(登録商標)印刷ヘッドを備えた特注のプリンターで印刷された。インクは、360×360dpiの解像度で5dpdで噴射され、400mm/sで50Wの露光を与える120W DPL−ランプを使用してインラインで硬化された。最終的な硬化は、50Wの露光で330mm/sで噴射された画像を2回通過させることによって与えられた。噴射から硬化までの時間は1.3秒であった。UVランプとインク受容体の間の距離は2.2mmであった。噴射温度は45℃であった。
【0324】
硬化可能なインクジェットインクINK−1,INK−2及びインク混合物に対して得られたドットサイズは表9に示される。

【0325】
表9から、硬化可能なインクジェットインクINK−1又はINK−2の一つで得られた印刷物と比較して約110μmのドットサイズを送出したインク混合物を使用すると極めて首尾一貫した画像品質が得られたことが明らかである。一般に、界面活性剤を全く有さないインクからのドットサイズはまず界面活性剤の添加によってわずかに減少し、次いで追加の界面活性剤の添加で再び増加したことが気づかれた。
【0326】
インクジェットインクINK−2は所望のドットサイズ及び印刷される選択された支持体の関数で選択されるべきである。例えば、もし120μmのドットサイズを持ちたいなら、これは、別の表面処理と組み合わせない限り、支持体SUB−3上にINK−2で可能でなかった。しかしながら、既に高い量のINK−3を要求する他の支持体SUB−4及びSUB−5に対して、120μmのドットサイズを得ることができた。なぜならば、これはINK−1及びINK−2の範囲内であったからである。SUB−4及びSUB−5は表10によるインク混合物で印刷された。

【0327】
別の観察は、同じドットサイズを得るためにインク混合物の表面張力と支持体の表面エネルギーの間に相関関係がないことである。これは表11に示される。

【0328】
頻繁に市販されている支持体がある方法で変性され、それは分散及び接着のようなインクの物理的特性に影響する。支持体SUB−1及びSUB−2はともにポリエチレン支持体であるが、SUB−2は白色化剤として二酸化チタンを含有する。支持体SUB−4はポリメチルメタクリレート被覆を有していた。それゆえ、支持体の表面エネルギーを測定し、それをインク混合物の表面張力で相関させようとする代わりに、異なるインク混合物の範囲で支持体上にドットサイズ印刷試験を実施することがより良好である。
【0329】
実施例2
この実施例は、実施例1の同じ硬化可能なインクジェットインクINK−1及びINK−2のインク混合物を使用した二つの他の支持体SUB−6及びSUB−7上のドットサイズ印刷試験を示す。
【0330】
印刷及び評価
SUB−6はPVC支持体であり、それに対してOracal 1640が使用され、一方、SUB−7はポリプロピレン支持体であり、それに対してBiprint 650grが使用された。支持体SUB−6及びSUB−7上に実施例1と同じ方法で印刷された硬化可能なインクジェットインクINK−1及びINK−2のインク混合物に対して生じたドットサイズは表12に示される。「界面活性剤のwt%」の欄はインク混合物に存在する界面活性剤Byk UV 3510の量に対応する。

【0331】
表12から、支持体SUB−6上の110μmのドットサイズに対して、インク混合物の界面活性剤濃度はインク混合物の全重量に基づいて0.050〜0.100wt%であるべきであることがわかる。SUB−7については、インク混合物の界面活性剤濃度はインク混合物の全重量に基づいて1.000〜2.000wt%であるべきである。正確なインク混合物を決定するために、第二のドットサイズ印刷試験は狭い範囲でなされることができ、又はそれはインク混合物中のINK−2の量又は界面活性剤濃度の関数においてドットサイズをプロットするグラフから誘導されることができる。例えば、SUB−7についてのグラフは1.000〜2.000wt%の界面活性剤で全く直線であり、界面活性剤濃度が約1.31wt%であるべきであること、即ちインク混合物の全重量に基づいて56.33wt%のINK−1及び43.67wt%のINK−2を含むインク混合物が使用されるべきであることが誘導されることができる。
【0332】
表12中のドットサイズデータは、二つの支持体がインク混合物に対して全く異なるように反応することを明らかにする。特定のインク混合物に対して得られたこのドットサイズデータは同じ支持体の将来の使用のためのデータライブラリに記憶されることができる。これは工業用印刷環境において生産性を向上させる。なぜならば画像品質を大きく決定する支持体上のインクの所望の分散のためにインク及び支持体を調整するのに費やさなければならない時間がいらないからである。
【0333】
実施例3
この実施例は、二つの硬化可能なインクジェットインクのインク混合物に対してどのように高い硬化スピードを得ることができるかを示す。これらのインクは、もし単独で作られたなら許容できない分散安定性を持つだろう。
【0334】
インクジェットインクの製造
濃厚な顔料分散体P2は表13に従って製造された。

【0335】
濃厚な顔料分散体P2は、DPGDAにおける阻害剤Genorad(登録商標)16の50%溶液の14.00g、Solsperse(登録商標)5000の5.25g、DPGDAにおけるポリマー分散剤Solsperse(登録商標)39000の30%溶液の326.67g、及びDPGDAの256.08gを、DISPERLUX S.A.R.L.,ルクセンブルグからのDISPERLUX(登録商標)Laboratory Dissolver YELLOW075を使用して30分間混合することによって作られた。微粉砕混合物を次いで、0.4mm直径のイットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズ(TOSOH Co.からの「高耐磨耗性ジルコニア粉砕媒体」)での52%体積充填及び25分の滞留時間でEigerビーズミルによって4250RPMの回転速度で冷却下でミルした。微粉砕後、分散体は濾布を使用してビーズから分離された。濃厚顔料分散体P2は103nmの平均粒子サイズ、53mPa.sの粘度及び37のSSFを有していた。
【0336】
四つの硬化性シアンインクジェットインクINK−3〜INK−6は、表14に示すような組成物を得るために濃厚顔料分散体P2から同じ方法で製造された。

【0337】
硬化性シアンインクジェットINK−5及びINK−6はそれぞれ、共開始剤Craynor(登録商標)CN386及び光開始剤Genocure(登録商標)ITXがなかった。インク混合物MIX−56は、硬化性シアンインクジェットインクINK−5及びINK−6を50:50のwt%比で混合することによって作られた。
【0338】
インクジェットインクの評価
硬化性シアンインクジェットインクINK−3〜INK−6及びインク混合物MIX−56の分散安定性は、インクの製造後、及び83℃で7日間の熱処理後に再び、平均粒子サイズを比較することによって決定された。熱処理後のインク混合物MIX−56の平均粒子サイズは、83℃で7日間の熱処理を受けた後にインクジェットインクINK−5及びINK−6を50:50のwt%比で混合することによって得られた。良好な分散安定性については、インク中の平均粒子サイズは150nm以下に維持されるべきである。

【0339】
硬化スピードは、多くの共開始剤Craynor(登録商標)CN386を添加することによって増大されることができるが、共開始剤の量の増大はまた、分散安定性を劣化させる。表15は、インク混合物MIX−56がインクジェットインクINK−3及びINK−4より良好な分散安定性を示し、同時に極めて高い硬化スピードで硬化されることができることを示す。
【0340】
実施例4
この実施例は、二つのインクジェットインクが同じ色及び色濃度を持つと考えられるときを示す。
【0341】
既に述べたように、二つのインクは、もしCIE ΔE2000が5.0より大きいなら異なる色及び濃度を持つものとして見なされる。幅広いフォーマットのインクジェット印刷用途のようなほとんどのインクジェット用途に対して、もしCIE ΔE2000値が2.0より小さいか又は2.0に等しいなら、二つのインクの色及び濃度の差は許容されることができる。画像の視覚距離によって通常決定されるインクジェット用途が重要であるほど、CIE ΔE2000値を小さくすべきである。
【0342】
CIE ΔE2000は表14のINK−3〜INK−6のインクに対して決定されるが、INK−3のインクは第一インクとして、即ち、参照として使用された。インクは組成において幾分異なるが、全ては同じ量のシアン顔料を含む。表16のCIE ΔE2000に対して得られた値は、何が秤量エラー、純度又は原材料などによって「正常な」インク製造変化として期待されうるかの印象を与える。

【0343】
別の実験では、シアンインクINK−3はDPGDAで希釈され、INK−3と希釈インクの間のCIE ΔE2000は決定された。結果は表17によって与えられる。

【0344】
表16表17を比較することによって、表16の「正常なインク製造変化」は5%のマージン内に十分にあることが結論づけられる。2.0より小さいCIE ΔE2000を要求するインクジェット用途に対して、10%又はさらには15%の希釈はシアンインクに対して許容されうる。しかしながら、着色剤濃度の変化による画像の差はブラックインク及びマゼンタインクに対してより容易に気づかれうる。後者の二つに対しては、10%の希釈が上限と見なしうる。高品質インクジェット印刷用途に対しては、二つ以上のインクの混合エラーは5%より低くすべきである。即ち、1.0より小さいCIE ΔE2000に対する値にすべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を順に含むインクジェット印刷法:
a)同じ色及び色濃度を持つが異なる組成を持つ二つ以上のカラーインクジェットインクをインクジェットプリンターに対して準備する;
b)前記二つ以上のカラーインクジェットインクを制御された量で混合する;そして
c)前記二つ以上のカラーインクジェットインクの混合物をインクジェットプリンターでインク受容体上に印刷する。
【請求項2】
同じ色及び色濃度を持つ二つ以上のカラーインクジェットインクが2.0に等しいか又はそれより小さい対の色差CIE ΔE2000を有する請求項1に記載のインクジェット印刷法。
【請求項3】
二つ以上のカラーインクジェットインクが同じ着色剤を含有する請求項1又は2に記載のインクジェット印刷法。
【請求項4】
カラーインクジェットインクの表面張力が3.0mN/mより多く異なる請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット印刷法。
【請求項5】
二つ以上のカラーインクジェットインクを混合するための制御された量がインク受容体上に印刷される多数のインク混合物を含む印刷試験から選択される請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット印刷法。
【請求項6】
印刷試験の結果がデータライブラリに記憶される請求項5に記載のインクジェット印刷法。
【請求項7】
データライブラリが複数のインク受容体のためのインク混合物の物理的特性及び/又は画像品質についての情報を含む請求項6に記載のインクジェット印刷法。
【請求項8】
データライブラリがコンピュータにより記憶及び管理される請求項7に記載のインクジェット印刷法。
【請求項9】
二つ以上のカラーインクジェットインクを混合するための制御された量がインク受容体上の二つ以上のカラーインクジェットインクの混合物の物理的特性及び/又は画像品質についての情報を含むデータライブラリから選択される請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット印刷法。
【請求項10】
同じ色及び色濃度を持つが異なる組成を有する二つ以上のカラーインクジェットインクを含むインクジェットインクセットであって、前記二つ以上のカラーインクジェットインクが同じ着色剤を含有することを特徴とするインクジェットインクセット。
【請求項11】
同じ色及び色濃度を持つ二つ以上のカラーインクジェットインクが2.0に等しいか又はそれより小さい対の色差CIE ΔE2000を有する請求項10に記載のインクジェットインクセット。
【請求項12】
第一インクの表面張力が同じ色及び色濃度を持つ二つ以上のカラーインクジェットインクの第二インクのそれとは3.0mN/mより多く異なる請求項10〜11のいずれかに記載のインクジェットインクセット。
【請求項13】
第一インクの粘度が同じ色及び色濃度を持つ二つ以上のカラーインクジェットインクの第二インクのそれとは30℃で5.0mPa.sより多く異なる請求項10〜12のいずれかに記載のインクジェットインクセット。
【請求項14】
第一インク中の溶剤の量及び/又は種類が同じ色及び色濃度を持つ二つ以上のカラーインクジェットインクの第二インク中のそれとは異なる請求項10〜13のいずれかに記載のインクジェットインクセット。
【請求項15】
第一インク中のモノマーの量及び/又は種類が同じ色及び色濃度を持つ二つ以上のカラーインクジェットインクの第二インク中のそれとは異なる請求項10〜14のいずれかに記載のインクジェットインクセット。
【請求項16】
第一インク中の開始剤の量及び/又は種類が同じ色及び色濃度を持つ二つ以上のカラーインクジェットインクの第二インク中のそれとは異なる請求項10〜15のいずれかに記載のインクジェットインクセット。
【請求項17】
第一インクの体積が同じ色及び色濃度を持つ二つ以上のカラーインクジェットインクの第二インクのそれとは異なる請求項10〜16のいずれかに記載のインクジェットインクセット。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれかによって規定されるインクジェットインクセットを含むインクジェットプリンター。
【請求項19】
請求項18に記載のインクジェットプリンターと、印刷品質に関連する特性を評価又は測定するための手段との組み合わせ。
【請求項20】
印刷品質に関連する特性を評価又は測定するための手段がインクジェットプリンターに含まれている請求項19に記載の組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−521330(P2010−521330A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541940(P2009−541940)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062708
【国際公開番号】WO2008/074589
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(507381008)アグファ・グラフィクス・エヌヴィ (14)
【Fターム(参考)】