説明

インクジェット印刷装置

【課題】簡易な構成でウォームアップ動作の完了までの時間を短縮する。
【解決手段】インクを印刷媒体に吐出するインクジェットヘッド110と、インクジェットヘッド110とインクを貯留するインクタンク153との間でインクを循環させるインク循環経路157と、インク循環経路157内を循環されるインクを加温する温度調節器161と、インクの粘度に関する情報に基づいて、インクジェットヘッド110にてインクを吐出させることによりインク循環経路157を循環するインク循環総量を低減させると共に、ウォームアップ動作を実行する制御部70とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドによりインクを吐出して印刷用紙に印刷を行うインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、インクジェット方式が適用されたインクジェット印刷装置は、画像情報や文字情報等の印刷データに基づいて、インクジェットヘッドのノズルからインクを印刷用紙に向けて吐出して画像や文字などを印刷することができ、しかも、多色のインクを使用して印刷用紙上に印刷データをカラーで印刷できるので、家庭用や業務用として普及している。
【0003】
このようなインクジェット印刷装置には、インクの加温やインク内に混入したゴミなどの不純物を除去するためにインクを絶えず循環させるインク循環方式のものもよく知られている。
【0004】
このインク循環方式のインクジェット印刷装置に用いられるインクは、低温では粘度が高く、高温では粘度が低いというように温度条件により粘度が変化する温度特性を有している。特に、インクの粘度が高くなると、インク滴の液滴径の大きさや吐出速度にばらつきが生じ、高精細な印刷物を得ることができなくなる場合がある。
【0005】
そのため、印刷を開始する前に、インクを適正な粘度になるように加温するウォームアップ動作を行う必要があるが、このウォームアップ動作の完了までの時間が長いと利用者にとってストレスとなる。
【0006】
そこで、特許文献1には、タンク内に回転する仕切り板を設け、この仕切り板を回転させることにより循環するインクの総量(以下、インク循環総量という)を低減し、これにより、ウォームアップ動作の完了までの時間を短縮するインクジェット印刷装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−196208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載のインクジェット印刷装置では、タンク内に回転する仕切り板を設ける必要があるので、装置構成が複雑化するという課題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でウォームアップ動作の完了までの時間を短縮するインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴は、インクを印刷媒体に吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと前記インクを貯留するインクタンクとの間で前記インクを循環させるインク循環経路と、前記インク循環経路内を循環されるインクを加温する加温手段と、前記インクの粘度に関する情報に基づいて、前記インクジェットヘッドにてインクを吐出させることにより前記インク循環経路を循環するインク循環総量を低減させると共に、前記加温手段に前記インク循環経路内を循環されるインクを加温させるウォームアップ動作を実行する制御手段と、を備えたことにある。
【0011】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴は、前記インクの粘度に関する情報は、所定時間遡った時点からの履歴情報であり、前記制御手段は、前記履歴情報に基づいて、前記インクジェットヘッドにてインクを吐出させることにより前記インク循環経路を循環するインク循環総量を低減させると共に、前記ウォームアップ動作を実行することにある。
【0012】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴は、前記インク又は当該インクジェット印刷装置周辺の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段により検出された温度の履歴を温度履歴情報として記憶する第1の記憶手段と、を更に備え、前記制御手段は、前記温度履歴情報における所定時間遡った時点からの前記温度に、予め定められた第1の閾値以下である温度が含まれる場合に、前記インクジェットヘッドにてインクを吐出させることにより前記インク循環経路を循環するインク循環総量を低減させると共に、前記ウォームアップ動作を実行することにある。
【0013】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第4の特徴は、前記ウォームアップ動作の動作履歴を動作履歴情報として記憶する第2の記憶手段と、を更に備え、前記制御手段は、前記動作履歴情報に所定時間遡った時点からの前記動作履歴に、所定時間以上の前記ウォームアップ動作が行われたことを示す動作履歴が含まれている場合に、前記インクジェットヘッドにてインクを吐出させることにより前記インク循環経路を循環するインク循環総量を低減させると共に、前記ウォームアップ動作を実行することにある。
【0014】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第5の特徴は、外部入力に基づいて設定された温度環境情報を記憶する第3の記憶手段、を更に備え、前記制御手段は、前記温度環境情報に基づいて、前記インクジェットヘッドにてインクを吐出させることにより前記インク循環経路を循環するインク循環総量を低減させると共に、前記ウォームアップ動作を実行することにある。
【0015】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第6の特徴は、前記制御手段は、入力された印刷ジョブを印刷するために使用されるインク量を算出し、この算出されたインク量が前記低減されたインク循環総量を越える場合に、前記インク循環経路を循環するインク循環総量を増加させることにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴によれば、インクの粘度に関する情報に基づいて、インクジェットヘッドにインクを吐出させることによりインク循環経路を循環するインク循環総量を低減させると共に、ウォームアップ動作を実行するので、簡易な構成でウォームアップ動作の完了までの時間を短縮することができる。
【0017】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴によれば、インクの粘度に関する情報は、所定時間遡った時点からの履歴情報であるので、過去の履歴を反映してインク循環総量を低減させることができ、より正確にインク循環総量を低減させるか否かを判定することができる。
【0018】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴によれば、温度履歴情報に基づいてインク循環総量を低減させるので、より正確にインク循環総量を低減させるか否かを判定することができる。
【0019】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第4の特徴によれば、動作履歴情報に基づいてインク循環総量を低減させるので、比較的最近に長時間のウォームアップ動作が行われた場合、インク循環総量を低減させることができる。
【0020】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第5の特徴によれば、外部入力に基づいて設定された温度環境情報に基づいてインク循環総量を低減させるので、利用者の設定どおりにインク循環総量を低減させることができる。
【0021】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第6の特徴によれば、入力された印刷ジョブにに基づいてインク循環総量を低減させるので、印刷ジョブを印刷するためにインクが不足することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置において、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクを循環するインク循環経路を模式的に示した図である。
【図2】本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置の機能構成を示した図である。
【図3】本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置における起動処理の処理手順を示したフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置における印刷処理の所定手順を示したフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置における液位制御処理の処理手順を示したフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置におけるインク温度制御処理の処理手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
<インクジェット印刷装置の構成>
本発明の一実施形態では、画像情報や文字情報等の印刷データに基づいて、インクジェットヘッドのノズルからインクを印刷用紙に向けて吐出して画像や文字などを印刷するインクジェット印刷装置を例に挙げて説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置1において、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクを循環するインク循環経路を模式的に示した図である。
【0026】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置1は、インクIKが貯留された第1のインクタンク(以下、上部インクタンクと記す)153を備えている。そして、この上部インクタンク153と、インクを吐出するインクジェットヘッドユニット30内の上流側に設けたインク供給室123とは、インク供給経路155を介して接続されており、このインク供給経路155上には第1電磁弁154が設けられている。
【0027】
さらに、インクジェットヘッドユニット30内の下流側に設けたインク回収室124と、このインク回収室124から回収したインクIKを貯蔵する第2インクタンク(以下、下部インクタンクと記す)159と、ポンプ160と、温度調節器161と、上部インクタンク153とは、インク回収経路156を介して接続されている。これにより、下部インクタンク159に貯留されたインクは、ポンプ160が起動することにより温度調節器161側へ送出され、また、第2電磁弁158がオン/オフ制御されることにより、インク回収経路156を流れるインクIKの流量が制御される。なお、温度調節器161は、インクIKを加温するためのヒーターからなる加温部と、インクIKを冷却するための冷却ファン(共に図示しない)を備えている。
【0028】
従って、インクIKをインク供給経路155とインク回収経路156とによるインク循環経路157内を循環させる場合、インク循環経路157に設けた第1,第2電磁弁154,158をオン動作させると、上部インクタンク153内に貯蔵されたインクIKはインク供給経路155内を通ってインクジェットヘッドユニット30のインク供給室123内に供給される。そして、このインク供給室123からインクIKが2次元的に配置された複数のインクジェットヘッド110に分配され、各インクジェットヘッド110からインクIKが印刷用紙W上に選択的に吐出される。
【0029】
さらに、各インクジェットヘッド110からインクIKが印刷用紙W上に選択的に吐出された後、各インクジェットヘッド110からの余剰のインクIKがインク回収室124内に集められて、インク回収室124からのインクIKがインク回収経路156内を通って下部インクタンク159内に一時的に貯蔵される。
【0030】
この後、下部インクタンク159内のインクIKは、ポンプ160により送出され、温度調節器161を介して、上部インクタンク153に供給される。
【0031】
また、下部インクタンク159は、インクIKを充填したインクボトル151と接続されており、第3電磁弁152がオン制御されることにより、インクボトル151内に貯留されたフレッシュなインクIKが下部インクタンク159に供給される。
【0032】
なお、上部インクタンク153には、後述する第1液位モードにおける上部インクタンク153内の液位の上限位置を検出する第1上限液位検出部171と、第1上限液位検出部171より下部に設けられ、後述する第2液位モードにおける上部インクタンク153内の液位の上限位置を検出する第2上限液位検出部172と、上部インクタンク153内の液位の下限を検出する下限液位検出部173とを備えている。
【0033】
また、下部インクタンク159には、後述する第1液位モードにおける下部インクタンク159内の液位の上限位置を検出する第1上限液位検出部174と、第1上限液位検出部174より下部に設けられ、後述する第2液位モードにおける下部インクタンク159内の液位の上限位置を検出する第2上限液位検出部175と、下部インクタンク159内の液位の下限を検出する下限液位検出部176とを備えている。
【0034】
<インクジェット印刷装置1の機能構成>
次に、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1の機能構成について説明する。
【0035】
図2は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1の機能構成を示した図である。
【0036】
図2に示すように、インクジェット印刷装置1は、ハードディスク72と、RAM73と、第3電磁弁152と、ポンプ160と、温度調節器161と、電力供給部50と、操作部60と、制御部70と、制御ユニット80と、第1の温度計91と、第2の温度計92とを備えている。これらの構成のうち、第3電磁弁152と、ポンプ160と、温度調節器161との構成については、上述したので、説明を省略する。
【0037】
ハードディスク72は、制御部70が実行する各種制御プログラム等を記憶している。また、ハードディスク72は、インクIKを加温する動作であるウォームアップ動作の動作履歴をウォームアップ動作履歴情報として記憶すると共に、印刷処理の動作履歴を印刷動作履歴情報として記憶する。さらに、ハードディスク72は、現在設定されている液位モード(第1液位モード又は第2液位モード)や、後述する温度環境情報を記憶する。
【0038】
RAM73は、不揮発性半導体等で構成され、制御部70が実行する各種制御プログラムや各種データを記憶している。
【0039】
電力供給部50は、主電源がオンに設定されている場合に、所定の電力を制御部70に供給する。
【0040】
操作部60は、インクジェット印刷装置1の上部に設けられ、表示/入力パネル61と、主電源をオンに設定するための電源キー、読み取りや印刷等を開始させるためのスタートキー、読み取りや印刷等を停止させるためのストップキー、印刷枚数等を入力するためのテンキー(いずれも図示せず)等の各種操作キーとを備え、利用者操作に基づく操作信号を制御部70に供給する。
【0041】
操作部60の表示/入力パネル61は、前面に配置された感圧式あるいは静電式の透明なタッチパネルと、このタッチパネルの裏面に配置された液晶表示パネル(いずれも図示せず)とを有している。利用者は、液晶表示パネルの表示画面を見ながら、タッチパネルの表面を指などで直接触れることで、例えば、11月1日〜3月31日のように、第2液位モードで液位制御を行う期間を示す温度環境情報の設定などの各種の設定入力操作等を行うことができる。
【0042】
制御部70は、インクジェット印刷装置1は中枢的な制御を行う。また、制御部70は、その機能上、モード設定部70aと、温度制御部70bと、液位制御部70cとを備える。
【0043】
モード設定部70aは、インクの粘度に関する情報に基づいて、液位モードを第1液位モード及び第2液位モードのいずれか一方に設定する。
【0044】
ここで、第1液位モードとは、上部インクタンク153及び下部インクタンク159の液位を第1液位に制御するモードのことであり、詳しくは、上部インクタンク153の液位を、第1上限液位検出部171と下限液位検出部173とを用いて液位制御を行うと共に、下部インクタンク159の液位を、第1上限液位検出部174と下限液位検出部176とを用いて液位制御を行うモードのことをいう。
【0045】
また、第2液位モードとは、上部インクタンク153及び下部インクタンク159の液位を、第1液位より低い液位である第2液位に制御するモードのことであり、詳しくは、上部インクタンク153の液位を、第2上限液位検出部172と下限液位検出部173とを用いて液位制御を行うと共に、下部インクタンク159の液位を、第2上限液位検出部175と下限液位検出部176とを用いて液位制御を行うモードのことをいう。
【0046】
また、インクの粘度に関する情報には、後述する温度履歴情報、ウォームアップ動作履歴情報、印刷動作履歴情報、温度環境情報、及び印刷ジョブにより使用されるインク使用量等が含まれる。
【0047】
ここで、温度履歴情報は、第1の温度計91により検出されたインク温度T1と、第2の温度計92により検出されたインクジェット印刷装置1周辺の環境温度T2と、それぞれの検出時刻とが関連付けられた情報である。インクの温度は高くなるに従ってインクの粘度は低下する反比例の関係にあり、インクの温度が決まればインクの粘度が決まることから、温度履歴情報は、インクの粘度に関する情報の1つと言える。
【0048】
ウォームアップ動作履歴情報は、温度調節器161の加温部にインク循環経路内を循環されるインクを加温させるウォームアップ動作が実行された開始日時及び終了日時である。比較的最近に長期間のウォームアップ動作が行われている場合、インクの粘度が高いと予想できることから、ウォームアップ動作履歴情報は、インクの粘度に関する情報の1つと言える。
【0049】
印刷動作履歴情報は、印刷処理が実行された履歴の情報であり、最後に印刷処理を実行した時点情報を含んでいる。最後に印刷処理を実行した時点以降にインクの粘度が高くなったことがある場合に、ウォームアップ動作に長時間を要すると予想できることから、印刷動作履歴情報は、インクの粘度に関する情報の1つと言える。
【0050】
温度環境情報は、利用者の操作に基づいて設定された第2液位モードで液位制御を行う期間を示す情報であり、インクの粘度が高いと予想される期間を示すことから、温度環境情報は、インクの粘度に関する情報の1つと言える。
【0051】
印刷ジョブにより使用されるインク使用量は、印刷ジョブを実行するために必要な量のインクの粘度を、印刷可能な粘度未満にならないように算出される量であるので、印刷ジョブにより使用されるインク使用量は、インクの粘度に関する情報の1つと言える。
【0052】
温度制御部70bは、インク温度T1が印刷可能な下限温度以上であり上限温度以下となるように温度調節器161を制御する。例えば、温度制御部70bは、温度調節器161の加温部にインク循環経路157内を循環されるインクを加温させるウォームアップ動作を実行する。
【0053】
液位制御部70cは、モード設定部70aにより設定された液位モードに基づいて液位を制御する。
【0054】
具体的には、液位制御部70cは、モード設定部70aにより液位モードが第1液位モードに設定された場合、上部インクタンク153及び下部インクタンク159の液位を第1液位となるように制御する。また、液位制御部70cは、モード設定部70aにより液位モードが第2液位モードに設定された場合、インクジェットヘッド110にインクを吐出させることによりインク循環経路157を循環するインク循環総量を低減させ、上部インクタンク153及び下部インクタンク159の液位を第2液位となるように制御する。
【0055】
ここで、インク循環総量とは、インク循環経路157を循環するインクの総量であり、インク循環経路157内のインク量と、上部インクタンク153に貯留されたインク量と、インクジェットヘッドユニット30内のインク量と、下部インクタンク159に貯留されたインク量と、ポンプ160内のインク量と、温度調節器161内のインク量とを加算した量として算出される。
【0056】
第1の温度計91は、インク循環経路157上に設けられ、インク循環経路157内を流れるインクIKのインク温度T1を検出する。
【0057】
第2の温度計92は、インクジェット印刷装置1の筐体外部に設けられ、インクジェット印刷装置1周辺の環境温度T2を検出する。
【0058】
制御ユニット80は、温度記憶部81と、制御部82と、電池83とを備えている。
【0059】
温度記憶部81は、第1の温度計91により検出されたインク温度T1と、第2の温度計92により検出されたインクジェット印刷装置1周辺の環境温度T2とを測定した時刻と共に記憶する。
【0060】
制御部82は、内部に時計を有しており、時計により計時された時刻と、第1の温度計91により検出されたインク温度T1及び第2の温度計92により検出されたインクジェット印刷装置1周辺の環境温度T2とを関連付けて、温度履歴情報として温度記憶部81に記憶させる。
【0061】
電池83は、主電源がオフ、即ち電力供給部50からの電力供給が停止している場合においても、制御部82が動作可能なように電力を供給する。
【0062】
<インクジェット印刷装置1の作用>
次に、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1の作用について説明する。
【0063】
本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1は、主に起動処理、印刷処理、液位制御処理、及びインク温度制御処理を実行する。そのため、各々の処理について以下に詳細に説明する。
【0064】
≪起動処理≫
本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1における起動処理の詳細について説明する。
【0065】
図3は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1における起動処理の処理手順を示したフローチャートである。
【0066】
図3に示すように、制御部70は、電源が投入されると(ステップS101)、前回の印刷時から規定時間以上が経過したか否かを判定する(ステップS103)。具体的には、制御部70は、ハードディスク72に記憶された印刷動作履歴情報に基づいて、最後に印刷処理を実行した時点からの経過時間が予め定めた規定時間以上であるか否かを判定する。
【0067】
ステップS103において、前回の印刷時から規定時間以上が経過したと判定された場合(YESの場合)、制御部70は、ヘッドクリーニング処理を実行する(ステップS105)。例えば、制御部70は、各インクジェットヘッド110のノズルを詰らせないよう少量のインクを吐出させたり、ノズル面に付着したゴミ等をワイパーにより除去したり、洗浄液を超音波で励振させノズル面に噴射させることによりノズル面を洗浄したりする。
【0068】
次に、制御部70のモード設定部70aは、所定時間遡った時点以降、例えば、前回の印刷時以降においてインク温度T1が第1の閾値Th1以下になったことがあるか否かを判定する(ステップS107)。具体的には、モード設定部70aは、ハードディスク72に記憶された印刷動作履歴情報に基づいて、温度記憶部81に記憶された温度履歴情報において、最後に印刷処理を実行した時点からのインク温度に、第1の閾値Th1以下であるインク温度が含まれるか否かを判定する。ここで、第1の閾値Th1は、ウォームアップ動作の開始から完了までの時間が、利用者にとってストレスとならないように予め設定されるインクの温度であり、例えば、15(℃)と設定される。
【0069】
ステップS107において、前回の印刷時からインク温度T1が第1の閾値Th1以下になったことがないと判定された場合(NOの場合)、モード設定部70aは、所定時間遡った時点以降、例えば、前回の印刷時以降において環境温度T2が第2の閾値Th2以下になったことがあるか否かを判定する(ステップS109)。具体的には、モード設定部70aは、ハードディスク72に記憶された印刷動作履歴情報に基づいて、温度記憶部81に記憶された温度履歴情報において、最後に印刷処理を実行した時点からの環境温度T2に、第2の閾値Th1以下である環境温度T2が含まれるか否かを判定する。ここで、第2の閾値Th2は、ウォームアップ動作の開始から完了までの時間が、利用者にとってストレスとならないように予め設定されるインクの温度であり、例えば、13(℃)と設定される。
【0070】
ステップS109において、前回の印刷時以降において環境温度T2が第2の閾値Th2以下になったことがないと判定された場合(NOの場合)、モード設定部70aは、長時間のウォームアップ動作から所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS111)。
【0071】
具体的には、モード設定部70aは、ハードディスク72に記憶されたウォームアップ動作履歴情報に基づいて、所定時間R1を越える時間のウォームアップ動作を最後に実行した時点からの経過時間が予め定めた所定時間R2以上であるか否かを判定する。ここで、所定時間R1は、ウォームアップ動作の開始から完了までの時間が、利用者にとってストレスとならないような時間(例えば、5(分))として予め設定され、所定時間R2は、例えば7(日)というように予め設定される。
【0072】
ステップS111において、前回のウォームアップ動作から所定時間が経過していないと判定された場合(NOの場合)、モード設定部70aは、設定された日時範囲内か否かを判定する(ステップS113)。具体的には、モード設定部70aは、ハードディスク72に記憶された環境温度情報に基づいて、現在日時が第2液位モードで液位制御を行う期間内か否かを判定する。
【0073】
ステップS113において、設定された日時範囲外であると判定された場合(NOの場合)、モード設定部70aは、液位モードを第1液位モードに設定する(ステップS117)。
【0074】
一方、ステップS107〜S113において、YESであると判定された場合、モード設定部70aは、液位モードを第2液位モードに設定する(ステップS115)。
【0075】
そして、モード設定部70aは、設定した液位モードをハードディスク72に記憶する(ステップS119)。
【0076】
次に、制御部70の温度制御部70bは、ウォームアップ動作を実行する(ステップS121)。具体的には、温度制御部70bは、第1の温度計91により検出されたインクの温度T1が35(℃)を越えるまで、温度調節器161に加温させる。
【0077】
そして、温度制御部70bは、ウォームアップ動作の動作履歴をウォームアップ動作履歴情報として記憶する(ステップS123)。具体的には、温度制御部70bは、ウォームアップ動作の開始日時及び終了日時をウォームアップ動作履歴情報として、ハードディスク72に記憶する。
【0078】
以上のように、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1によれば、インクの粘度に関する情報に基づいて、液位モードを第1液位モード及び第2液位モードのいずれか一方に適切に設定することができる。
【0079】
≪印刷処理≫
本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1における印刷処理の詳細について説明する。
【0080】
図4は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1における印刷処理の所定手順を示したフローチャートである。
【0081】
図4に示すように、制御部70は、印刷開始が要求されたか否かを判定する(ステップS201)。具体的には、制御部70は、利用者の操作により、操作部60から、印刷ジョブを含む印刷開始を要求する操作信号が供給されたか否かを判定する。
【0082】
ステップS201において、印刷開始が要求されたと判定された場合、制御部70のモード設定部70aは、ハードディスク72に記憶された液位モードを読み出す(ステップS203)。
【0083】
次に、モード設定部70aは、ステップS203において読み出された液位モードが第2液位モードであるか否かを判定する(ステップS205)。
【0084】
ステップS205において、読み出された液位モードが第2液位モードであると判定された場合(YESの場合)、モード設定部70aは、インク使用量Uを算出する(ステップS207)。具体的には、ステップS201において供給された印刷ジョブに基づいて、この印刷ジョブを実行すると消費するインクの量をインク使用量Uとして算出する。
【0085】
次に、モード設定部70aは、インク使用量Uがインク循環総量を超えたか否かを判定する(ステップS209)。具体的には、第2液位モードが設定されているので、モード設定部70aは、上部インクタンク153において第2上限液位検出部172まで貯留された場合のインク量と、下部インクタンク159において第2上限液位検出部175まで貯留された場合のインク量と、インク循環経路157内のインク量と、インクジェットヘッドユニット30内のインク量と、ポンプ160内のインク量と、温度調節器161内のインク量とを加算した量をインク循環総量TUとして、ステップS207において算出されたインク使用量Uがインク循環総量TUを超えたか否かを判定する。
【0086】
ステップS209において、インク使用量Uがインク循環総量TUを超えたと判定された場合(YESの場合)、モード設定部70aは、液位モードを切り替える(ステップS211)。具体的には、モード設定部70aは、液位モードを第2液位モードから第1液位モードへ切り替え設定し、設定した第1液位モードをハードディスク72に記憶する。
【0087】
次に、制御部70は、印刷を開始する(ステップS213)。具体的には、制御部70は、各インクジェットヘッド110からインクIKを印刷用紙W上に選択的に吐出することにより、印刷処理を実行する。これにより、吐出されたインクIK分だけインク量は減少するので、新たに、インクボトル151から下部インクタンク159へインクIKが供給されなければ、インク循環総量TUは減少する。
【0088】
そして、制御部70は、印刷処理の動作履歴を印刷履歴情報として記憶する(ステップS215)。具体的には、制御部70は、印刷処理の開始日時及び終了日時を印刷履歴情報として、ハードディスク72に記憶する。
【0089】
以上のように、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1によれば、インク使用量Uがインク循環総量TUを超えた場合、液位モードを第2液位モードから第1液位モードへ切り替えるので、印刷ジョブを印刷するためにインクが不足することを防止することができる。
【0090】
≪液位制御処理≫
本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1における液位制御処理の詳細について説明する。
【0091】
図5は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1における液位制御処理の処理手順を示したフローチャートである。
【0092】
図5に示すように、制御部70は、所定の制御周期S1に達したか否かを判定する(ステップS301)。ここで、制御周期S1とは、インクジェット印刷装置1の電源が投入されている間、液位の監視を行う所定の周期である。
【0093】
次に、所定の制御周期S1に達したと判定された場合(YESの場合)、制御部70の液位制御部70cは、上部インクタンク153の液位が上限液位以上か否かを判定する(ステップS303)。具体的には、液位制御部70cは、設定されている液位モードが第1液位モードである場合、第1上限液位検出部171が液位を検出(第1上限液位)していると上限液位以上であると判定し、設定されている液位モードが第2液位モードである場合、第2上限液位検出部172が液位を検出(第2上限液位)していると上限液位以上であると判定する。
【0094】
ステップS303において、上部インクタンク153の液位が上限液位未満であると判定された場合(NOの場合)、液位制御部70cは、下部インクタンク159の液位が下限液位以上か否かを判定する(ステップS305)。具体的には、液位制御部70cは、下限液位検出部176が液位を検出していると下限液位以上であると判定する。
【0095】
ステップS305において、下部インクタンク159の液位が下限液位以上であると判定された場合(YESの場合)、液位制御部70cは、ポンプ160を起動させる(ステップS307)。これにより、下部インクタンク159内のインクIKは、ポンプ160により送出され、温度調節器161を介して、上部インクタンク153に供給される。
【0096】
一方、ステップS303において、上部インクタンク153の液位が上限液位以上であると判定された場合(YESの場合)、液位制御部70cは、ポンプ160を停止させる(ステップS309)。これにより、上部インクタンク153の液位が上限液位となるように制御することができる。
【0097】
また、ステップS305において、下部インクタンク159の液位が下限液位未満であると判定された場合(NOの場合)、液位制御部70cは、第3電磁弁152をオンにする(ステップS311)。これにより、インクボトル151内に貯留されたインクIKが下部インクタンク159に供給される。
【0098】
次に、液位制御部70cは、下部インクタンク159の液位が上限液位以上か否かを判定する(ステップS313)。具体的には、液位制御部70cは、設定されている液位モードが第1液位モードである場合、第1上限液位検出部174が液位を検出(第1上限液位)していると上限液位以上であると判定し、設定されている液位モードが第2液位モードである場合、第2上限液位検出部175が液位を検出(第2上限液位)していると上限液位以上であると判定する。
【0099】
そして、液位制御部70cは、第3電磁弁152がオンされた時点からの経過時間が所定時間R3を経過したか否かを判定する(ステップS315)。
【0100】
ステップS315において、経過時間が所定時間R3を経過したと判定された場合(YESの場合)、液位制御部70cは、操作部60の表示/入力パネル61に、インクボトル151内に貯留されたインクIKがなくなったことを示す「インク無し表示」を表示させる。
【0101】
次に、液位制御部70cは、第3電磁弁152をオフにする(ステップS319)。これにより、インクボトル151内に貯留されたインクIKの下部インクタンク159への供給が停止される。
【0102】
以上のように、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1によれば、第2液位モードが設定されている場合には、印刷処理を実行することにより、インクジェットヘッド110にインクを吐出させると共に、上部インクタンク153及び下部インクタンク159の液位を第2上限液位となるように制御することにより、温度計以外のハードウェア装置を新たに設けることなく、インク循環経路157を循環するインク循環総量を低減させる。このようにインク循環総量が少ないと、インクの温度は上昇し易いので、ウォームアップ動作の完了までの時間を短縮することができる。
【0103】
≪インク温度制御処理≫
本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1におけるインク温度制御処理の詳細について説明する。
【0104】
図6は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1におけるインク温度制御処理の処理手順を示したフローチャートである。
【0105】
図6に示すように、制御部70は、所定の制御周期S2に達したか否かを判定する(ステップS401)。ここで、制御周期S2とは、インクジェット印刷装置1の電源が投入されている間、インク温度の監視を行う所定の周期である。
【0106】
次に、所定の制御周期S2に達したと判定された場合(YESの場合)、制御部70の温度制御部70bは、第1の温度計91により検出されたインク温度T1が下限温度未満か否かを判定する(ステップS403)。ここで、下限温度は、印刷処理が可能な下限の温度であり、例えば35(℃)に予め設定されている。
【0107】
ステップS403において、インク温度T1が下限温度未満であると判定された場合(YESの場合)、温度制御部70bは、温度調節器161の冷却ファンを停止する(ステップS405)と共に、温度調節器161の加温部による加温を開始する(ステップS407)。
【0108】
次に、温度制御部70bは、第1の温度計91により検出されたインク温度T1が上限温度を越えたか否かを判定する(ステップS409)。ここで、上限温度は、印刷処理が可能な上限の温度であり、例えば40(℃)に予め設定されている。
【0109】
ステップS409において、インク温度T1が上限温度を越えたと判定された場合(YESの場合)、温度制御部70bは、温度調節器161の加温部による加温を停止する(ステップS411)と共に、温度調節器161の冷却ファンによる冷却を開始する(ステップS413)。
【0110】
次に、モード設定部70aは、液位モードを第1液位モードに切り替え設定し(ステップS415)、設定した第1液位モードをハードディスク72に記憶する(ステップS417)。
【0111】
このように、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1によれば、インク温度T1が上限温度を越えた場合に、液位モードを第1液位モードに切り替え設定するので、インクのオーバーヒートを防止することができる。
【符号の説明】
【0112】
1…インクジェット印刷装置
30…インクジェットヘッドユニット
50…電力供給部
60…操作部
61…表示/入力パネル
70…制御部
70a…モード設定部
70b…温度制御部
70c…液位制御部
72…ハードディスク
73…RAM
80…制御ユニット
81…温度記憶部
82…制御部
83…電池
91…第1の温度計
92…第2の温度計
110…インクジェットヘッド
150…インク循環経路部
151…インクボトル
152…第3電磁弁
153…上部インクタンク
155…インク供給経路
156…インク回収経路
157…インク循環経路
159…下部インクタンク
160…ポンプ
161…温度調節器
171,174…第1上限液位検出部
172,175…第2上限液位検出部
173,176…下限液位検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを印刷媒体に吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドと前記インクを貯留するインクタンクとの間で前記インクを循環させるインク循環経路と、
前記インク循環経路内を循環されるインクを加温する加温手段と、
前記インクの粘度に関する情報に基づいて、前記インクジェットヘッドにてインクを吐出させることにより前記インク循環経路を循環するインク循環総量を低減させると共に、前記加温手段に前記インク循環経路内を循環されるインクを加温させるウォームアップ動作を実行する制御手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記インクの粘度に関する情報は、所定時間遡った時点からの履歴情報であり、
前記制御手段は、前記履歴情報に基づいて、前記インクジェットヘッドにてインクを吐出させることにより前記インク循環経路を循環するインク循環総量を低減させると共に、前記ウォームアップ動作を実行する
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記インク又は当該インクジェット印刷装置周辺の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段により検出された温度の履歴を温度履歴情報として記憶する第1の記憶手段と、を更に備え、
前記制御手段は、
前記温度履歴情報における所定時間遡った時点からの前記温度に、予め定められた第1の閾値以下である温度が含まれる場合に、前記インクジェットヘッドにてインクを吐出させることにより前記インク循環経路を循環するインク循環総量を低減させると共に、前記ウォームアップ動作を実行する
ことを特徴とする請求項2記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記ウォームアップ動作の動作履歴を動作履歴情報として記憶する第2の記憶手段と、を更に備え、
前記制御手段は、
前記動作履歴情報に所定時間遡った時点からの前記動作履歴に、所定時間以上の前記ウォームアップ動作が行われたことを示す動作履歴が含まれている場合に、前記インクジェットヘッドにてインクを吐出させることにより前記インク循環経路を循環するインク循環総量を低減させると共に、前記ウォームアップ動作を実行する
ことを特徴とする請求項2記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
外部入力に基づいて設定された温度環境情報を記憶する第3の記憶手段、を更に備え、
前記制御手段は、
前記温度環境情報に基づいて、前記インクジェットヘッドにてインクを吐出させることにより前記インク循環経路を循環するインク循環総量を低減させると共に、前記ウォームアップ動作を実行する
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
入力された印刷ジョブを印刷するために使用されるインク量を算出し、この算出されたインク量が前記低減されたインク循環総量を越える場合に、前記インク循環経路を循環するインク循環総量を増加させる
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−213028(P2011−213028A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84828(P2010−84828)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】