説明

インクジェット印刷装置

【課題】インクの漏洩を抑制しつつ、インクを適正温度まで加温する。
【解決手段】インクを貯留する上部インクタンク153と、インクを印刷媒体に吐出するインクジェットヘッド30と、インクジェットヘッド30と上部インクタンク153との間でインクを循環させる第1のインク循環経路157と、上部インクタンク153に接続され、インクジェットヘッドを経由せずにインクを循環させる第2のインク循環経路165と、第1又は第2のインク循環経路165内を循環されるインクの温度を検出する第1の検出部171と、第2のインク循環経路165内を循環されるインクの温度を調整する温度調節器161と、第1の検出部171により検出された温度に基づいて、インクが循環する経路を第1のインク循環経路又は第2の循環経路に切り替えると共に、温度調節器161によりインクの温度を調整させる制御部70とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドによりインクを吐出して印刷用紙に印刷を行うインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、インクジェット方式が適用されたインクジェット印刷装置は、画像情報や文字情報等の印刷データに基いて、インクジェットヘッドのノズルからインクを印刷用紙に向けて吐出して画像や文字などを印刷することができ、しかも、多色のインクを使用して印刷用紙上に印刷データをカラーで印刷できるので、家庭用や業務用として普及している。
【0003】
このようなインクジェット印刷装置に用いられるインクは、低温では粘度が高く、高温では粘度が低いというように温度条件により粘度が変化する温度特性を有している。特に、インクの粘度が高くなると、インク滴の液滴径の大きさや吐出速度にばらつきが生じ、高精細な印刷物を得ることができなくなる場合がある。
【0004】
そこで、温水等によりインクを加温する印刷装置が一般的によく知られており、例えば、特許文献1には、記録ヘッドから流出した下流側のインクを記録ヘッドの上流側へ循環させるためのインク加温循環経路を備え、使用するインク量が少ないと見込まれたときに、インク加温循環経路を選択して、インクを循環させて加温する画像記録装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−269360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の画像記録装置では、インク温度が低温で粘度が高い場合にも、インクを記録ヘッド内に循環させるので、記録ヘッドにかかる圧力が増大し、ノズルからインクが漏洩する場合があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、インクを漏洩させることなく、インクを吐出可能な状態するインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴は、インクを貯留する第1のインクタンクと、前記第1のインクタンクから供給されるインクを印刷媒体に吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと前記第1のインクタンクとの間でインクを循環させる第1のインク循環経路と、前記第1のインクタンクに接続され、前記インクジェットヘッドを経由せずにインクを循環させる第2のインク循環経路と、前記第1のインク循環経路内又は前記第2のインク循環経路内を循環されるインクに関するインク情報を取得する第1の取得手段と、前記第2のインク循環経路内を循環されるインクの温度を調整する温度調整手段と、前記第1の取得手段により取得されたインク情報に基づいて、インクが循環する経路を前記第1のインク循環経路又は前記第2の循環経路に切り替えると共に、前記温度調整手段にインクの温度を調整させる制御手段とを備えたことにある。
【0009】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴は、前記第1のインク循環経路は、前記第1のインクタンクから前記インクジェットヘッドまでのインク供給経路と、前記インクジェットヘッドから前記第1のインクタンクまでのインク回収経路とを有し、前記インク供給経路及び前記インク回収経路を介して前記インクジェットヘッドと前記第1のインクタンクとの間でインクを循環させ、前記第2のインク循環経路は、前記インク供給経路と前記インク回収経路とを接続するバイパス経路を有し、前記バイパス経路と前記第1のインクタンクとの間でインクを循環させることにある。
【0010】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴は、前記第2のインク循環経路内の前記インク回収経路上に設けられ、前記インク回収経路内を循環されるインクに関するインク情報を取得する第2の取得手段、を更に備え、前記第1の取得手段は、前記第2のインク循環経路内の前記インク供給経路上に設けられ、前記インク供給経路内を循環されるインクに関するインク情報を取得し、前記制御手段は、前記第1の取得手段により取得されたインク情報と、前記第1の取得手段により取得されたインク情報と前記第2の取得手段により取得されたインク情報との差とに基づいて、インクが循環する経路を前記第1のインク循環経路又は前記第2の循環経路に切り替えると共に、前記温度調整手段にインクの温度を調整させることにある。
【0011】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第4の特徴は、前記第1のインク循環経路内又は前記第2のインク循環経路内を循環されるインクを貯留する第2のインクタンクと、前記第1のインクタンク及び前記第2のインクタンクにそれぞれ連通して設けられ、前記第1のインクタンク内及び前記第2のインクタンク内を加圧又は減圧する圧調整手段と、を更に備えたことにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴によれば、第1の取得手段により取得されたインクに関するインク情報に基づいて、インクが循環する経路を第1のインク循環経路又は第2の循環経路に切り替えると共に、温度調整手段にインクの温度を調整させるので、インクジェットヘッドを迂回させてインクの温度を調整することができ、これにより、インクの漏洩を抑制しつつ、インクを吐出可能な状態にすることができる。
【0013】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴によれば、第2のインク循環経路は、バイパス経路と第1のインクタンクとの間でインクを循環させるので、第1のインク循環経路及び第2のインク循環経路の一部の経路を共有することができ、製造コストを低減することができる。
【0014】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴によれば、第1の取得手段により取得されたインク情報と、第1の取得手段により取得されたインク情報と第2の取得手段により取得されたインク情報との差とに基づいて、インクが循環する経路を第1のインク循環経路又は第2の循環経路に切り替えると共に、温度調整手段にインクの温度を調整させるので、インクジェットヘッドの上流側と下流側とにおけるインク情報の差が大きい場合に生じやすいインクジェットヘッドからのインクの漏洩や、インクジェットヘッドのノズルへの空気混入を抑制することができる。
【0015】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第4の特徴によれば、加圧又は減圧する圧調整手段を備えるので、第1のインクタンクからインク供給経路へ効率的にインクを流出させると共に、インク回収経路から第2のインクタンクへ効率的にインクを流入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置において、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクを循環するインク循環経路を模式的に示した図である。
【図2】本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置の機能構成を示した図である。
【図3】本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置において、用いられる3種類のインクの粘度特性データをグラフ化した一例を示す。
【図4】本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置の処理手順を示したフローチャートである。
【図5】本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置における第1の検出部により検出された温度、及び第2の検出部により検出された温度の時間的変化を示した図である。
【図6】本発明の実施例2であるインクジェット印刷装置の処理手順を示したフローチャートである。
【図7】本発明の実施例3であるインクジェット印刷装置の処理手順を示したフローチャートである。
【図8】本発明の実施例3であるインクジェット印刷装置における第1の検出部により検出された温度、及び第2の検出部により検出された温度の時間的変化を示した図である。
【図9】本発明の実施例4に係るインクジェット印刷装置において、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクを循環するインク循環経路を模式的に示した図である。
【図10】本発明の実施例4に係るインクジェット印刷装置の処理手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
<インクジェット印刷装置の構成>
本発明の実施例1では、画像情報や文字情報等の印刷データに基づいて、インクジェットヘッドのノズルからインクを印刷用紙に向けて吐出して画像や文字などを印刷するインクジェット印刷装置を例に挙げて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1において、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクを循環するインク循環経路を模式的に示した図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1は、インクIKが貯留された第1のインクタンク(以下、上部インクタンクと記す)153を備えている。そして、この上部インクタンク153と、インクを吐出するインクジェットヘッドユニット30内の上流側に設けたインク供給室123とは、インク供給経路155を介して接続されている。また、上部インクタンク153には、上流大気開放弁154が設けられており、上部インクタンク153の気室内を密閉する。そして、上流大気開放弁154をオン動作することで上部インクタンク153を大気開放することができる。
【0021】
さらに、インクジェットヘッドユニット30内の下流側に設けたインク回収室124と、このインク回収室124から回収したインクIKを貯蔵する第2インクタンク(以下、下部インクタンクと記す)159と、ポンプ160と、温度調節器161と、上部インクタンク153とは、インク回収経路156を介して接続されている。これにより、下部インクタンク159に貯留されたインクは、ポンプ160が起動することにより温度調節器161側へ送出される。なお、温度調節器161は、インクIKを加温するための加温部と、インクIKを冷却するための冷却ファン(共に図示しない)を備えている。
【0022】
下部インクタンク159は下流大気開放弁158が備わっており、下部インクタンク159の気室内を大気開放する。また、下流大気開放弁158をオン動作することで下部インクタンク159を密閉することもできる。下部インクタンク159が大気圧に保たれている時には、下部インクタンク159とインクジェットヘッドのノズルとの水頭差によってノズルにメニスカスが生じるような適切圧力となるように、下部インクタンク159の高さ位置が定められている。
【0023】
また、下部インクタンク159には、下部インクタンク159内の上部の空気層と連通するように第2の圧調整部168が設けられており、この第2の圧調整部168は、下部インクタンク159内上部の空気層を減圧する。これにより、ノズルに適切な負圧を掛けるとともに、インク回収室124内に集められたインクを、効率よくインク回収経路156へ流出させることができる。
【0024】
従って、インクIKをインク供給経路155とインク回収経路156とによる第1のインク循環経路157内を循環させる場合、上部インクタンク153に設けた上流大気開放弁154および下部インクタンク159に設けた下流大気開放弁158をオン動作させて、下部インクタンクに設けた第2の圧調整部168によって下部インクタンク159内上部の空気層を減圧することにより、上部インクタンク153内に貯蔵されたインクIKはインク供給経路155内を通ってインクジェットヘッドユニット30のインク供給室123内に供給される。そして、このインク供給室123からインクIKが2次元的に配置された複数のインクジェットヘッド110に分配され、各インクジェットヘッド110からインクIKが印刷用紙W上に選択的に吐出される。
【0025】
さらに、各インクジェットヘッド110からインクIKが印刷用紙W上に選択的に吐出された後、各インクジェットヘッド110からの余剰のインクIKがインク回収室124内に集められて、インク回収室124からのインクIKがインク回収経路156内を通って下部インクタンク159内に一時的に貯蔵される。
【0026】
この後、下部インクタンク159内のインクIKは、ポンプ160により送出され、温度調節器161を介して、上部インクタンク153に供給される。
【0027】
また、下部インクタンク159は、インクIKを充填したインクボトル151と接続されており、第3電磁弁152がオン制御されることにより、インクボトル151内に貯留されたインクIKが下部インクタンク159に供給される。
【0028】
また、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1には、インク供給経路155とインク回収経路156とを接続するバイパス経路162が設けられている。
【0029】
そして、バイパス経路162とインク供給経路155との接続部には、インク供給経路155から流入したインクIKをバイパス経路162及びインク供給経路155のいずれか一方にインクが流れるように切り替える三方電磁弁である分岐弁163が設けられている。さらに、バイパス経路162とインク回収経路156との接続部には、バイパス経路162及びインク回収経路156のいずれか一方からインク回収経路156にインクが流れるように切り替える三方電磁弁である合流弁164が設けられている。
【0030】
従って、インクIKをインク供給経路155とインク回収経路156とバイパス経路162とよる第2のインク循環経路165内を循環させる場合、インク循環経路部150内に設けた分岐弁163及び合流弁164をオン動作させると、上部インクタンク153内に貯蔵されたインクIKは、インク供給経路155内を通って、インクジェットヘッドユニット30側へ供給されることなく、分岐弁163からバイパス経路162へ流入する。そして、インクIKはバイパス経路162を通って、合流弁164からインク回収経路156へ流入する。
【0031】
なお、分岐弁163の上流側のインク供給経路155上には、インク供給経路155内を流れるインクIKに関するインク情報の1つとして温度を検出する第1の検出部171が設けられ、合流弁164の下流側のインク回収経路156には、インク回収経路156内を流れるインクIKに関するインク情報の1つとして温度を検出する第2の検出部172が設けられている。
【0032】
<インクジェット印刷装置1の機能構成>
次に、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1の機能構成について説明する。
【0033】
図2は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1の機能構成を示した図である。
【0034】
図2に示すように、インクジェット印刷装置1は、第1の検出部171と、第2の検出部172と、ROM72と、RAM73と、分岐弁163と、合流弁164と、温度調節器161と、制御部70とを備えている。これらの構成のうち、第1の検出部171と、第2の検出部172と、分岐弁163と、合流弁164との構成については、上述したので、説明を省略する。
【0035】
ROM72は、不揮発性半導体等で構成され、制御部70が実行する各種制御プログラム等を記憶している。また、ROM72は、インクの種類毎に、温度に対する粘度の関係、即ち粘度特性データを記憶している。
【0036】
図3は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1において、用いられる3種類のインクの粘度特性データをグラフ化した一例を示す。
【0037】
図3では、用いられる3種類のインク毎に粘度特性101〜103を示しており、これらの粘度特性101〜103から、いずれのインクにおいても、インクの温度が高くなるに従って粘度は低下する反比例の関係にあることが分かる。
【0038】
このように、用いられるインクの種類と、インクの温度が定まれば、ROM72に記憶された粘度特性のデータに基づいて、粘度を算出することができる。
【0039】
図2に戻り、操作部60は、インクジェット印刷装置1の上部に設けられ、表示/入力パネル61と、読み取りや印刷等を開始させるためのスタートキー、読み取りや印刷等を停止させるためのストップキー、印刷枚数等を入力するためのテンキー(いずれも図示せず)等の各種操作キーとを備え、利用者操作に基づく操作信号を制御部70に供給する。
【0040】
操作部60の表示/入力パネル61は、前面に配置された感圧式あるいは静電式の透明なタッチパネルと、このタッチパネルの裏面に配置された液晶表示パネル(いずれも図示せず)とを有している。利用者は、液晶表示パネルの表示画面を見ながら、タッチパネルの表面を指などで直接触れることで、インクの種類などの各種の設定入力操作等を行うことができる。
【0041】
制御部70は、インクジェット印刷装置1は中枢的な制御を行う。また、制御部70は、その機能上、温度判定部70aと、加温制御部70bと、弁制御部70cとを備える。
【0042】
温度判定部70aは、第1の検出部171により検出された温度が所定の第1の温度閾値以下であるか、即ちインクの粘度が所定の第1の粘度閾値以上であるか否かを判定する。
【0043】
加温制御部70bは、第1の検出部171により検出された温度が所定の第1の温度閾値以下である、即ちインクの粘度が所定の第1の粘度閾値以上である場合、温度調節器161に加温させる。
【0044】
また、加温制御部70bは、第1の検出部171により検出された温度が所定の第1の温度閾値を越えた、即ちインクの粘度が所定の第1の粘度閾値未満である場合、温度調節器161に加温を停止させる。
【0045】
弁制御部70cは、第1の検出部171により検出された温度が所定の第1の温度閾値以下である、即ちインクの粘度が所定の第1の粘度閾値以上である場合、インクが循環する経路を第1のインク循環経路157から第2のインク循環経路165に切り替える。より具体的には、弁制御部70cは、分岐弁163にインク供給経路155からバイパス経路162にインクが流れるように切り替えさせ、合流弁164にバイパス経路162からインク回収経路156へインクが流れるように切り替えさせる。
【0046】
また、弁制御部70cは、第1の検出部171により検出された温度が所定の第1の温度閾値を越えた、即ちインクの粘度が所定の第1の粘度閾値未満である場合、インクが循環する経路を第2のインク循環経路165から第1のインク循環経路157に切り替える。より具体的には、分岐弁163に、分岐弁163の上流側のインク供給経路155から分岐弁163の下流側のインク供給経路155にインクが流れるように切り替えさせ、合流弁164に、合流弁164の上流側のインク回収経路156から合流弁164の下流側のインク回収経路156へインクが流れるように切り替えさせる。
【0047】
<インクジェット印刷装置1の作用>
次に、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1の作用について説明する。
【0048】
図4は、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1の処理手順を示したフローチャートである。
【0049】
図4に示すように、制御部70は、印刷開始が要求されたか否かを判定する(ステップS101)。具体的には、制御部70は、利用者の操作により、操作部60から印刷開始を要求する操作信号が供給されたか否かを判定する。
【0050】
ステップS101において、印刷開始が要求されたと判定された場合、制御部70の温度判定部70aは、第1の検出部171により検出された温度T1が、予め定められた第1の温度閾値Th1を越えたか否かを判定する(ステップS103)。ここで、上述したように、インクの温度と粘度とは反比例の関係にあるので、温度判定部70aは、温度T1が第1の温度閾値Th1を越えた場合、インクの粘度が、粘度特性データにおける第1の温度閾値Th1に対応する第1の粘度閾値Ch1未満であると判定する。
【0051】
そのため、第1の温度閾値Th1は、使用するインクの種類の粘度特性データに基づいて、インクジェットヘッド110からインクが漏洩しない程度のインクの粘度であり、かつ、印刷可能な粘度となるように、予め適切な値に決定しておく必要がある。
【0052】
ステップS103において、温度T1が、第1の温度閾値Th1以下であると判定された場合(NOの場合)、温度判定部70aは、温度T1に対応するインクIKの粘度が第1の粘度閾値Ch1以上であると判定し、制御部70の弁制御部70cは、分岐弁163及び合流弁164をONにする(ステップS105)。具体的には、弁制御部70cは、分岐弁163にインク供給経路155からバイパス経路162にインクIKが流れるように切り替えさせると共に、合流弁164にバイパス経路162からインク回収経路156へインクIKが流れるように切り替えさせる。
【0053】
次に、制御部70の加温制御部70bは、温度調節器161にインクIKの加温を開始させる(ステップS107)。
【0054】
次に、制御部70の温度判定部70aは、第1の検出部171により検出された温度T1が、第1の温度閾値Th1を越えたか否かを判定する(ステップS109)。
【0055】
ステップS109において、温度T1が、第1の温度閾値Th1を越えたと判定された場合(YESの場合)、温度判定部70aは、温度T1に対応するインクIKの粘度が第1の粘度閾値Ch1未満であると判定し、制御部70の弁制御部70cは、分岐弁163及び合流弁164をOFFにする(ステップS111)。具体的には、弁制御部70cは、分岐弁163に、分岐弁163の上流側のインク供給経路155から分岐弁163の下流側のインク供給経路155にインクが流れるように切り替えさせると共に、合流弁164に、合流弁164の上流側のインク回収経路156から合流弁164の下流側のインク回収経路156へインクが流れるように切り替えさせる。
【0056】
次に、制御部70の加温制御部70bは、温度調節器161にインクIKの加温を停止させる(ステップS113)。
【0057】
そして、制御部70は、印刷を開始する(ステップS115)。具体的には、制御部70は、各インクジェットヘッド110からインクIKを印刷用紙W上に選択的に吐出することにより、印刷処理を実行する。
【0058】
図5は、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1における第1の検出部171により検出された温度T1、及び第2の検出部172により検出された温度T2の時間的変化を示した図である。
【0059】
図5に示すように、t1時点において、印刷開始が要求されると、第1の検出部171により検出された温度T1が第1の温度閾値Th1以下であると判定され、弁制御部70cが、分岐弁163及び合流弁164をONにし、加温制御部70bが、温度調節器161にインクIKの加温を開始させる。これにより、インクIKは、インク供給経路155とインク回収経路156とバイパス経路162とよる第2のインク循環経路165内を循環しながら、加温される。
【0060】
具体的には、上部インクタンク153内に貯蔵されたインクIKは、インク供給経路155内を通って、分岐弁163からバイパス経路162へ流入する。そして、インクIKはバイパス経路162を通って、合流弁164からインク回収経路156へ流入し、温度調節器161により加温されて、上部インクタンク153へ供給される。
【0061】
そのため、t1時点から、第1の検出部171により検出された温度T1及び第2の検出部172により検出された温度T2が上昇している。
【0062】
そして、t3時点において、温度T1が、第1の温度閾値Th1を越えたと判定されると、弁制御部70cが、分岐弁163及び合流弁164をOFFにし、加温制御部70bが、温度調節器161にインクIKの加温を停止させる。これにより、インクIKは、インク供給経路155とインク回収経路156とによる第1のインク循環経路157内を循環する。
【0063】
具体的には、上部インクタンク153内に貯蔵されたインクIKは、インク供給経路155内を通ってインクジェットヘッドユニット30のインク供給室123内に供給される。そして、このインク供給室123からインクIKがインクジェットヘッド110に分配され、各インクジェットヘッド110からインクIKが印刷用紙W上に選択的に吐出される。
【0064】
さらに、その後、各インクジェットヘッド110からの余剰のインクIKがインク回収室124内に集められて、インク回収室124からのインクIKがインク回収経路156内を通って下部インクタンク159内に一時的に貯蔵される。
【0065】
この後、下部インクタンク159内のインクIKは、ポンプ160により送出され、温度調節器161を経由して、上部インクタンク153に供給される。
【0066】
このように、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1によれば、第1の検出部171により検出された温度T1が第1の温度閾値Th1以下である場合(インクの粘度が第1の粘度閾値Ch1以上である場合)に、分岐弁163にインク供給経路155からバイパス経路162にインクが流れるように切り替えさせ、合流弁164にバイパス経路162からインク回収経路156へインクが流れるように切り替えさせると共に、温度調節器161にインクを加温させるので、インクIKをインクジェットヘッド110を経由させることなく加温することができ、これにより、インクジェットヘッド110からのインクIKの漏洩を抑制しつつ、インクIKを適正温度まで加温することができる。
【0067】
また、上部インクタンク153に、上部インクタンク153内の上部の空気層と連通するように第1の圧調整部167を設けて、この第1の圧調整部167が上部インクタンク153内上部の空気層を加圧するように動作することで、上部インクタンク153内の貯留された粘度の高いインクIKを効率よくインク供給経路155およびバイパス経路162へ流出させることができる。
【0068】
また、本発明の実施例1では、分岐弁163の上流側のインク供給経路155上に設けられ、インク供給経路155内を流れるインクIKの温度を検出する第1の検出部171と、合流弁164の下流側のインク回収経路156に設けられ、インク回収経路156内を流れるインクの温度を検出する第2の検出部172とを備える構成としたが、これに限らない。
【0069】
第1の検出部171と第2の検出部172とは、これに限らず、上部インクタンク153内、インクジェットヘッドユニット30内、下部インクタンク159内、第1のインク循環経路157上、又は第2のインク循環経路165上に設けられていてもよい。
【0070】
また、本発明の実施例1では、インク供給経路155とインク回収経路156とを接続するバイパス経路162を有する構成としたが、これに限らず、第1のインク循環経路157とは別に、第2のインク循環経路165として、上部インクタンク153及び下部インクタンク159に接続され、インクIKを循環する循環経路として構成するようにしてもよい。
【実施例2】
【0071】
本発明の実施例1では、第1の検出部171により検出された温度T1が第1の温度閾値Th1を越えた場合に、インクIKに第1のインク循環経路157内を循環させると共に、印刷を開始するインクジェット印刷装置1を例に挙げて説明したが、インクIKに第1のインク循環経路157内を循環させるための閾値と、印刷を開始するための閾値を異なる値としてもよい。
【0072】
そこで、本発明の実施例2では、第1の検出部171により検出された温度T1が第3の温度閾値Th3を越えた場合に、インクIKに第1のインク循環経路157内を循環させ、第1の検出部171により検出された温度T1が第4の温度閾値Th4を越えた場合に、印刷を開始するインクジェット印刷装置1Aを例に挙げて説明する。
【0073】
なお、本発明の実施例2に係るインクジェット印刷装置1Aは、図1及び図2に示した本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1の構成と同一の構成を備えるので、説明を省略する。
【0074】
図6は、本発明の実施例2であるインクジェット印刷装置1Aの処理手順を示したフローチャートである。なお、図6に示す処理ステップのうち、図4に示したフローチャートにおける処理ステップと同一ステップ番号が付された処理は、それぞれ同一処理であるので、説明を省略する。
【0075】
ステップS101において、印刷開始が要求されたと判定された場合、本発明の実施例2であるインクジェット印刷装置1Aに備えられた制御部70の温度判定部70aは、第1の検出部171により検出された温度T1が、予め定められた第3の温度閾値Th3を越えたか否かを判定する(ステップS201)。上述したように、インクの温度と粘度とは反比例の関係にあるので、温度判定部70aは、温度T1が第3の温度閾値Th3を越えた場合、インクの粘度が、粘度特性データにおける第3の温度閾値Th3に対応する第3の粘度閾値Ch3未満であると判定する。
【0076】
そのため、第3の温度閾値Th3は、使用するインクの種類の粘度特性データに基づいて、インクジェットヘッド110からインクが漏洩しない程度のインクの粘度になるように、予め適切な値に決定しておく必要がある。
【0077】
ステップS107において、加温が開始されると、制御部70の温度判定部70aは、第1の検出部171により検出された温度T1が、第3の温度閾値Th3を越えたか否かを判定する(ステップS203)。
【0078】
ステップS111において、分岐弁163及び合流弁164がOFFにされると、温度判定部70aは、第1の検出部171により検出された温度T1が、予め定められた第4の温度閾値Th4を越えたか否かを判定する(ステップS201)。温度判定部70aは、温度T1が第4の温度閾値Th4を越えた場合、インクの粘度が、粘度特性データにおける第4の温度閾値Th4に対応する第4の粘度閾値Ch4未満であると判定する。
【0079】
そのため、第4の温度閾値Th4は、使用するインクの種類の粘度特性データに基づいて、インクIKの温度が印刷開始な温度、即ち、インク滴の液滴径の大きさや吐出速度にばらつきが生じないような温度となるように、予め適切な値に決定しておく必要がある。
【0080】
以上のように、本発明の実施例2であるインクジェット印刷装置1Aによれば、インクIKに第1のインク循環経路157内を循環させるための第3の温度閾値Th3と、印刷を開始するための第4の温度閾値Th4とを異なる値としているので、インクジェットヘッド110からのインクIKの漏洩を抑制しつつ、インクIKを適正温度まで加温しつつ、印刷開始までの時間を短縮することができる。
【実施例3】
【0081】
本発明の実施例1では、第1の検出部171により検出された温度T1が第1の温度閾値Th1以下の場合に、インクIKに第2のインク循環経路165内を循環させるインクジェット印刷装置1を例に挙げて説明した。
【0082】
ここで、インクジェットヘッド110の下流側であるインク回収経路156のインクの粘度が、インクジェットヘッド110の上流側であるインク供給経路155内のインクの粘度に比べて非常に高い場合、インクジェットヘッド110のノズルからのインクIKが漏洩する可能性があり、また、インクジェットヘッド110の下流側であるインク回収経路156のインクの粘度が、インクジェットヘッド110の上流側であるインク供給経路155内のインクの粘度に比べて非常に低い場合、インクジェットヘッド110のノズルからの空気が混入する可能性がある。
【0083】
そこで、本発明の実施例3では、第1の検出部171により検出されたインクの温度T1が第1の温度閾値Th1を越え、かつ、第1の検出部171により検出されたインクの温度T1と第2の検出部172により検出されたインクの温度T2との差が第2の温度閾値Th2以上の場合に、インクIKに第1のインク循環経路157内を循環させるインクジェット印刷装置1を例に挙げて説明する。
【0084】
図7は、本発明の実施例3であるインクジェット印刷装置1Bの処理手順を示したフローチャートである。なお、図7に示す処理ステップのうち、図4に示したフローチャートにおける処理ステップと同一ステップ番号が付された処理は、それぞれ同一処理であるので、説明を省略する。
【0085】
図7に示すように、ステップS103において、第1の検出部171により検出された温度T1が、第1の温度閾値Th1を越えたと判定された場合(YESの場合)、温度判定部70aは、第1の検出部171により検出された温度T1と第2の検出部172により検出された温度T2との差が、第2の温度閾値Th2を越えたか否かを判定する(ステップS301)。ここで、第2の温度閾値Th2は、高すぎても低すぎても、インクジェットヘッド110のノズルからインクIKが漏洩したり、インクジェットヘッド110のノズルから空気が混入したりするので、適切な値を設定しておく必要がある。
【0086】
ステップS109において、第1の検出部171により検出された温度T1が、第1の温度閾値Th1を越えたと判定された場合(YESの場合)、温度判定部70aは、第1の検出部171により検出された温度T1と第2の検出部172により検出された温度T2との差が、第2の温度閾値Th2を越えたか否かを判定する(ステップS303)。
【0087】
図8は、本発明の実施例3であるインクジェット印刷装置1Bにおける第1の検出部171により検出された温度T1、及び第2の検出部172により検出された温度T2の時間的変化を示した図である。
【0088】
図8に示すように、t11時点において、印刷開始が要求されると、温度判定部70aは、第1の検出部171により検出された温度T1が第1の温度閾値Th1を越えているが、第1の検出部171により検出された温度T1と第2の検出部172により検出された温度T2との差T3が第2の温度閾値Th2以上であると判定する。そこで、弁制御部70cが、分岐弁163及び合流弁164をONにし、加温制御部70bが、温度調節器161にインクIKの加温を開始させる。これにより、インクIKは、インク供給経路155とインク回収経路156とバイパス経路162とよる第2のインク循環経路165内を循環しながら、加温される。
【0089】
具体的には、上部インクタンク153内に貯蔵されたインクIKは、インク供給経路155内を通って、分岐弁163からバイパス経路162へ流入する。そして、インクIKはバイパス経路162を通って、合流弁164からインク回収経路156へ流入し、温度調節器161により加温されて、上部インクタンク153へ供給される。
【0090】
そのため、t11時点から、第1の検出部171により検出された温度T1及び第2の検出部172により検出された温度T2が上昇すると共に、第2のインク循環経路165内を加温されながら循環させるので、温度T1と温度T2との差が時間の経過と共に小さくなる。
【0091】
そして、t13時点において、温度判定部70aは、第1の検出部171により検出された温度T1と第2の検出部172により検出された温度T2との差T4が第2の温度閾値Th2未満であると判定すると、弁制御部70cが、分岐弁163及び合流弁164をOFFにし、加温制御部70bが、温度調節器161にインクIKの加温を停止させる。これにより、インクIKは、インク供給経路155とインク回収経路156とによる第1のインク循環経路157内を循環する。
【0092】
このように、本発明の実施例3に係るインクジェット印刷装置1Bによれば、第1の検出部171により検出された温度T1が第1の温度閾値を越え(インクの粘度が第1の粘度閾値Ch1未満であり)、かつ、第1の検出部171により検出された温度T1と第2の検出部172により検出された温度T2との差が第2の温度閾値以上の場合に、分岐弁163にインク供給経路155からバイパス経路162にインクが流れるように切り替えさせ、合流弁164にバイパス経路162からインク回収経路156へインクが流れるように切り替えさせることにより、インクIKに第1のインク循環経路157内を循環させると共に、温度調節器161にインクIKを加温させるので、より、インクジェットヘッド110のノズルからのインクIKの漏洩や、インクジェットヘッド110のノズルからの空気の混入を防止することができる。
【実施例4】
【0093】
本発明の実施例1では、第1の検出部171により検出された温度T1が第1の温度閾値Th1以下の場合に、インクIKに第2のインク循環経路165内を循環させるインクジェット印刷装置1を例に挙げて説明した。
【0094】
本発明の実施例4では、第1の検出部171により検出された温度T1が適温範囲外である場合に、上部インクタンク153内に貯蔵されたインクIKを一時的に貯留するインクジェット印刷装置1Cを例に挙げて説明する。
【0095】
<インクジェット印刷装置の構成>
図9は、本発明の実施例4に係るインクジェット印刷装置1Cにおいて、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクを循環するインク循環経路を模式的に示した図である。
【0096】
図9に示すように、本発明の実施例4に係るインクジェット印刷装置1Cは、図1に示した本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1と同様に、上部インクタンク153と、インクを吐出するインクジェットヘッドユニット30内の上流側に設けたインク供給室123とは、インク供給経路155を介して接続されており、このインク供給経路155上には第1電磁弁154が設けられている。
【0097】
さらに、インクジェットヘッドユニット30内の下流側に設けたインク回収室124と、下部インクタンク159と、ポンプ160と、温度調節器161と、上部インクタンク153とを備え、それぞれは、インク回収経路156を介して接続されている。
【0098】
また、上部インクタンク153と下部インクタンク159とは、一時貯留経路181を介して接続されており、この一時貯留経路181上にはインクIKを一時貯留する中間インクタンク182が設けられている。
【0099】
一時貯留経路181上には、第4電磁弁183と第5電磁弁184とが設けられており、第4電磁弁183がオン制御されることにより、上部インクタンク153に貯留されたインクIKが一時貯留経路181へ流入され、第5電磁弁184がオン制御されることにより、一時貯留経路181に貯留されたインクIKが下部インクタンク159へ流入される。
【0100】
<インクジェット印刷装置1の作用>
次に、本発明の実施例4に係るインクジェット印刷装置1Cの作用について説明する。
【0101】
図10は、本発明の実施例4に係るインクジェット印刷装置1Cの処理手順を示したフローチャートである。
【0102】
図10に示すように、制御部70は、所定の制御周期に達したか否かを判定する(ステップS401)。この制御周期は、例えば、1(秒)に設定される。
【0103】
ステップS401において、所定の制御周期に達したと判定された場合、制御部70の温度判定部70aは、第1の検出部171により検出された温度T1が、予め定められた第5の温度閾値Th5を越えたか否かを判定する(ステップS403)。ここで、上述したように、インクの温度と粘度とは反比例の関係にあるので、温度判定部70aは、温度T1が第5の温度閾値Th5を越えた場合、インクの粘度が、粘度特性データにおける第5の温度閾値Th5に対応する第5の粘度閾値Ch5未満であると判定する。
【0104】
そのため、第5の温度閾値Th5は、使用するインクの種類の粘度特性データに基づいて、インクジェットヘッド110からインクが漏洩しない程度のインクの粘度であり、かつ、印刷可能な粘度となるように、予め適切な下限値として決定しておく必要がある。
【0105】
ステップS403において、温度T1が、第5の温度閾値Th5以下であると判定された場合(NOの場合)、温度判定部70aは、温度T1に対応するインクIKの粘度が第5の粘度閾値Ch5以上であると判定し、弁制御部70cは、中間インクタンク182にインクがあるか否かを判定する(ステップS405)。具体的には、弁制御部70cは、中間インクタンク182に設けられた液位検出部185が液位を検出しているか否かを判定する。
【0106】
ステップS405において、中間インクタンク182にインクがないと判定された場合(NOの場合)、制御部70の弁制御部70cは、第4電磁弁183をONにする(ステップS407)。これにより、上部インクタンク153に貯留されたインクIKが一時貯留経路181へ流入され、インク循環経路157を循環されるインク量が低減するので、短時間でインクを適正温度まで加温することができる。
【0107】
次に、弁制御部70cは、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS409)。
【0108】
ステップS409において、所定時間が経過したと判定された場合(YESの場合)、弁制御部70cは、第4電磁弁183をOFFにする(ステップS411)。これにより、上部インクタンク153から一時貯留経路181へのインクIKの流入が停止する。
【0109】
一方、ステップS403において、温度T1が、第5の温度閾値Th5を越えたと判定された場合(YESの場合)、温度判定部70aは、温度T1に対応するインクIKの粘度が第5の粘度閾値Ch5未満であると判定し、温度T1が、第6の温度閾値Th6未満か否かを判定する(ステップS413)。
【0110】
ここで、上述したように、インクの温度と粘度とは反比例の関係にあるので、温度判定部70aは、温度T1が第6の温度閾値Th6未満の場合、インクの粘度が、粘度特性データにおける第6の温度閾値Th6に対応する第6の粘度閾値Ch6を越えたであると判定する。
【0111】
そのため、第6の温度閾値Th6は、使用するインクの種類の粘度特性データに基づいて、インクジェットヘッド110からインクが漏洩しない程度のインクの粘度であり、かつ、印刷可能な粘度となるように、予め適切な上限値として決定しておく必要がある。
【0112】
ステップS413において、温度T1が、第6の温度閾値Th6未満であると判定された場合(YESの場合)、温度判定部70aは、温度T1に対応するインクIKの粘度が第6の粘度閾値Ch6未満であると判定し、弁制御部70cは、中間インクタンク182にインクがあるか否かを判定する(ステップS415)。具体的には、弁制御部70cは、中間インクタンク182に設けられた液位検出部185が液位を検出しているか否かを判定する。
【0113】
ステップS415において、中間インクタンク182にインクがあると判定された場合(YESの場合)、制御部70の弁制御部70cは、第5電磁弁184をONにする(ステップS417)。これにより、中間インクタンク182に貯留されたインクIKが下部インクタンク159へ流入される。
【0114】
次に、弁制御部70cは、下部インクタンク159の液位が上限を越えたか否かを判定する(ステップS419)。具体的には、温度判定部70aは、下部インクタンク159に設けられた液位検出部191が液位を検出したか否かを判定する。
【0115】
ステップS419において、下部インクタンク159の液位が上限を越えたと判定された場合(YESの場合)、制御部70の弁制御部70cは、第5電磁弁184をOFFにする(ステップS421)。これにより、中間インクタンク182から下部インクタンク159へのインクIKの流入が停止する。
【0116】
一方、ステップS413において、温度T1が、第6の温度閾値Th6以上であると判定された場合(NOの場合)、弁制御部70cは、中間インクタンク182にインクがあるか否かを判定する(ステップS423)。具体的には、弁制御部70cは、中間インクタンク182に設けられた液位検出部185が液位を検出しているか否かを判定する。
【0117】
ステップS423において、中間インクタンク182にインクがないと判定された場合(NOの場合)、制御部70の弁制御部70cは、第4電磁弁183をONにする(ステップS425)。これにより、上部インクタンク153に貯留されたインクIKが一時貯留経路181へ流入され、インク循環経路157を循環されるインク量が低減するので、短時間でインクを適正温度まで冷却することができる。
【0118】
次に、弁制御部70cは、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS427)。
【0119】
ステップS427において、所定時間が経過したと判定された場合(YESの場合)、弁制御部70cは、第4電磁弁183をOFFにする(ステップS429)。これにより、上部インクタンク153から一時貯留経路181へのインクIKの流入が停止する。
次に、温度判定部70aは、温度T1が、第6の温度閾値Th6未満か否かを判定する(ステップS431)。
【0120】
ステップS431において、温度T1が、第6の温度閾値Th6以上であると判定された場合(NOの場合)、制御部70の弁制御部70cは、第3電磁弁152をONにする(ステップS433)。これにより、インクボトル151内に貯留されたインクIKが下部インクタンク159に供給されるので、短時間でインクを適正温度まで冷却することができる。
【0121】
次に、弁制御部70cは、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS435)。
【0122】
ステップS435において、所定時間が経過したと判定された場合(YESの場合)、弁制御部70cは、第3電磁弁152をOFFにする(ステップS437)。これにより、インクボトル151から下部インクタンク159へのインクIKの流入が停止する。
【0123】
以上のように、本発明の実施例4に係るインクジェット印刷装置1Cによれば、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1の効果に加え、短時間でインクを適正温度まで加温することができる。
【0124】
なお、本発明の実施例1〜4では、第1の検出部171により温度T1を検出すると共に第2の検出部172により温度T2を検出し、この検出された温度T1,T2の少なくともいずれか一方に基づいて、分岐弁163及び合流弁164を切り替えさせると共に、温度調節器161にインクIKの温度を調整させたが、これに限らない。具体的には、インクIKに関するインク情報として、インクIKの粘度、インクIKの流量、又はインク経路における圧力等に基づいて、分岐弁163及び合流弁164を切り替えさせると共に、温度調節器161にインクIKの温度を調整させるようにしてもよい。
【0125】
例えば、第1の検出部171及び第2の検出部172により、それぞれインクIKの粘度を直接検出し、この検出された粘度に基づいて、分岐弁163及び合流弁164を切り替えさせると共に、温度調節器161にインクの温度を調整させるようにしてもよい。
【0126】
また、第1の検出部171及び第2の検出部172により、それぞれインクIKの流量を検出し、この検出されたインクIKの流量に基づいて、分岐弁163及び合流弁164を切り替えさせると共に、温度調節器161にインクIKの温度を調整させるようにしてもよい。ここには図示しないが、どのようなインクにおいても、インクIKの粘度が高くなるにつれてインクIKの流量が低下することがわかっており、インクIKの粘度と流量は反比例の関係にある。したがって、インクIKの流量が定まれば、インクIKの粘度も定まる。
【0127】
さらに、インクIKに関する情報として、インクIKの温度とインク経路における圧力とに基づいて、分岐弁163及び合流弁164を切り替えさせると共に、温度調節器161にインクの温度を調整させるようにしてもよい。
【0128】
例えば、第1の検出部171によりインクIKの温度T1および分岐弁163の上流側のインク供給経路155における圧力P1を検出し、第2の検出部172により合流弁164の下流側のインク回収経路156における圧力P2を検出する。そして、この検出された温度T1と圧力P1,P2に基づき、第1の検出部171により検出された温度T1が第1の温度閾値を越え(インクの粘度が第1の粘度閾値Ch1未満であり)、かつ、第1の検出部171により検出された圧力P1と第2の検出部172により検出された圧力P2との圧力差が圧力閾値Phを超えた場合に、分岐弁163及び合流弁164を切り替えさせると共に、温度調節器161にインクを加温させるようにしてもよい。
【0129】
ここで、圧力閾値Phは、分岐弁163の上流側のインク供給経路155における圧力P1と合流弁164の下流側のインク回収経路156における圧力P2に大きな圧力差が生じると、インクジェットヘッド110のノズルからインクIKが漏洩したり、インクジェットヘッド110のノズルから空気が混入したりするので、予め適切な値を設定しておく必要がある。
【符号の説明】
【0130】
1,1A,1B,1C…インクジェット印刷装置
30…インクジェットヘッドユニット
60…操作部
70…制御部
70a…温度判定部
70b…加温制御部
70c…弁制御部
110…インクジェットヘッド
153…上部インクタンク
155…インク供給経路
156…インク回収経路
157…第1のインク循環経路
159…下部インクタンク
161…温度調節器(温度調整手段)
162…バイパス経路
163…分岐弁
164…合流弁
165…第2のインク循環経路
167…第1の圧調整部
168…第2の圧調整部
171…第1の検出部(第1の取得手段)
172…第2の検出部(第2の取得手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯留する第1のインクタンクと、
前記第1のインクタンクから供給されるインクを印刷媒体に吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドと前記第1のインクタンクとの間でインクを循環させる第1のインク循環経路と、
前記第1のインクタンクに接続され、前記インクジェットヘッドを経由せずにインクを循環させる第2のインク循環経路と、
前記第1のインク循環経路内又は前記第2のインク循環経路内を循環されるインクに関するインク情報を取得する第1の取得手段と、
前記第2のインク循環経路内を循環されるインクの温度を調整する温度調整手段と、
前記第1の取得手段により取得されたインク情報に基づいて、インクが循環する経路を前記第1のインク循環経路又は前記第2のインク循環経路に切り替えると共に、前記温度調整手段にインクの温度を調整させる制御手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記第1のインク循環経路は、
前記第1のインクタンクから前記インクジェットヘッドまでのインク供給経路と、前記インクジェットヘッドから前記第1のインクタンクまでのインク回収経路とを有し、前記インク供給経路及び前記インク回収経路を介して前記インクジェットヘッドと前記第1のインクタンクとの間でインクを循環させ、
前記第2のインク循環経路は、
前記インク供給経路と前記インク回収経路とを接続するバイパス経路を有し、前記バイパス経路と前記第1のインクタンクとの間でインクを循環させる
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記第2のインク循環経路内の前記インク回収経路上に設けられ、前記インク回収経路内を循環されるインクに関するインク情報を取得する第2の取得手段、を更に備え、
前記第1の取得手段は、
前記第2のインク循環経路内の前記インク供給経路上に設けられ、前記インク供給経路内を循環されるインクに関するインク情報を取得し、
前記制御手段は、
前記第1の取得手段により取得されたインク情報と、前記第1の取得手段により取得されたインク情報と前記第2の取得手段により取得されたインク情報との差とに基づいて、インクが循環する経路を前記第1のインク循環経路又は前記第2のインク循環経路に切り替えると共に、前記温度調整手段にインクの温度を調整させる
ことを特徴とする請求項2記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記第1のインク循環経路内又は前記第2のインク循環経路内を循環されるインクを貯留する第2のインクタンクと、
前記第1のインクタンク及び前記第2のインクタンクにそれぞれ連通して設けられ、前記第1のインクタンク内及び前記第2のインクタンク内を加圧又は減圧する圧調整手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のインクジェット印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−213080(P2011−213080A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86074(P2010−86074)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】