説明

インクジェット印刷装置

【課題】インクジェットヘッドの吐出面の撥インク膜の劣化を低減する。
【解決手段】インクの吐出面に形成された撥インク膜を有し、互いに異なる種類のインクを吐出する複数のインクジェットヘッド31と、インクジェットヘッド31のクリーニング時にインクジェットヘッド31からインクを排出させる排出部と、クリーニング時のインクを排出した後のインクジェットヘッド31の吐出面をワイプして、吐出面からインクを除去するワイパ432とを備え、ワイパ432は、各インクジェットヘッド31に対応するインクのうち、撥インク膜の劣化に与える影響の度合が最大のインクである劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドの吐出面をワイプする前に、少なくとも1つの他のインクジェットヘッドの吐出面の少なくとも一部をワイプする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出するインクジェットヘッドを有するインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット印刷装置において、インクジェットヘッドの正常な吐出状態を維持するために、インクジェットヘッドのクリーニングを行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
クリーニング動作の一例として、インクジェットヘッドからインクを強制的に排出するパージを行い、排出されたインクとともに、インクの吐出面に付着したゴミやインク滴をワイパで除去する一連の動作が知られている。
【0004】
ここで、インクジェットヘッドの吐出面には、一般に、インクをはじく撥インク膜が形成されている。この撥インク膜を設けることにより、インクを吐出するノズル内のメニスカス形状を適正に維持して良好な吐出性を実現することができる。また、撥インク膜により、クリーニング動作におけるワイプ時のインク除去性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−47679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、撥インク膜は、上述のようなクリーニング動作の際、インクとの接触やワイパの摺動の影響により劣化する。この劣化の起こりやすさは、インクの種類の影響を受ける。例えば、撥インク膜の劣化に影響を与える成分が多く含まれているインクに対応するインクジェットヘッドでは、撥インク膜が劣化しやすい。
【0007】
撥インク膜が劣化すると、ノズル内のメニスカス形状を適正に維持できずにインクの吐出異常を招くことがある。しかし、特許文献1等の従来の技術では、クリーニング動作により生じる撥インク膜の劣化については考慮されておらず、撥インク膜の劣化を低減するための技術が要望されていた。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、撥インク膜の劣化を低減することができるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴は、インクの吐出面に形成された撥インク膜を有し、互いに異なる種類のインクを吐出する複数のインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドのクリーニング時に前記インクジェットヘッドからインクを排出させる排出部と、クリーニング時にインクを排出した後の前記インクジェットヘッドの吐出面をワイプして、吐出面からインクを除去するワイパとを備え、前記ワイパは、前記各インクジェットヘッドに対応するインクのうち、前記撥インク膜の劣化に与える影響の度合が最大のインクである劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドの吐出面をワイプする前に、少なくとも1つの他のインクジェットヘッドの吐出面の少なくとも一部をワイプすることにある。
【0010】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴は、前記劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッド以外の少なくとも1つのインクジェットヘッドの吐出面に、クリーニング時に排出されたインクを保持する排出インク保持部を備えることにある。
【0011】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴は、前記ワイパに設置され、前記インクジェットヘッドの吐出面から除去したインクを保持する除去インク保持部を備えることにある。
【0012】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第4の特徴は、前記排出部は、前記劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッド以外の少なくとも1つのインクジェットヘッドのインクの排出量を、前記劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドのインクの排出量よりも多くすることにある。
【0013】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第5の特徴は、前記ワイパは、各インクジェットヘッドのワイプを、対応するインクの前記撥インク膜の劣化に与える影響の度合の小さい方から順に行うことにある。
【0014】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第6の特徴は、前記ワイパは、前記複数のインクジェットヘッドの配列方向に略直交するワイプ方向に相対移動しながら前記各インクジェットヘッドのワイプを行うものであり、前記劣化影響最大インクのインクジェットヘッドに対応する位置を頂点として前記ワイプ方向の下流側に凸な形状に形成された部分を有することにある。
【0015】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第7の特徴は、前記各インクジェットヘッドに対応する各インクの前記撥インク膜の劣化に与える影響の度合の大小は、各インクに含まれる成分と前記撥インク膜とのマッチングを考慮して判断されたものであることにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴によれば、劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドの吐出面をワイプする前に、少なくとも1つの他のインクジェットヘッドの吐出面の少なくとも一部をワイプすることで、劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドの吐出面のワイプ時に、吐出面に付着している劣化影響最大インクとワイパに付着している他のインクとの混合を生じさせることができる。これにより、劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドの撥インク膜に接触するインクの劣化影響度を低下させ、撥インク膜の劣化を低減することができる。
【0017】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴によれば、インクジェットヘッドの排出インク保持部に保持された多量のインクをワイパで除去し、その後にワイプするインクジェットヘッドの吐出面に付着しているインクと混合させることが可能となる。これにより、吐出面に付着しているインクに、より劣化影響度の小さいインクを多く混合させながらワイプを行うことが可能となり、撥インク膜の劣化をより低減することができる。
【0018】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴によれば、インクジェットヘッドの吐出面から除去したインクをワイパが備える除去インク保持部に保持し、その後にワイプするインクジェットヘッドの吐出面に付着しているインクと混合させることが可能となる。これにより、吐出面に付着しているインクに、より劣化影響度の小さいインクを多く混合させながらワイプを行うことが可能となり、撥インク膜の劣化をより低減することができる。
【0019】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第4の特徴によれば、劣化影響度の小さいインクの排出量を多くすることで、ワイプ時において、吐出面に付着しているインクに、より劣化影響度の小さいインクを多く混合させることが可能となり、撥インク膜の劣化をより低減することができる。
【0020】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第5の特徴によれば、各インクジェットヘッドのワイプを、対応するインクの撥インク膜の劣化に与える影響の度合の小さい方から順に行うことで、各インクジェットヘッドのワイプ時において、吐出面に付着しているインクに、より劣化影響度の小さいインクを混合させながらワイプを行うことができ、撥インク膜の劣化を低減することができる。
【0021】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第6の特徴によれば、ワイプ時において、劣化影響最大インク以外の他のインクがワイパの頂点に向かって流れる。これにより、劣化影響最大インクに、劣化影響度の小さい他のインクが混合されるので、ワイプによる撥インク膜の劣化を低減することができる。
【0022】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第7の特徴によれば、インクの種類に応じて劣化影響度の大小が適切に決定される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。
【図2】メンテナンスユニットの平面図である。
【図3】メンテナンスユニットおよびインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図4】図2におけるA−A線に沿った断面図である。
【図5】第1の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の機能構成を示すブロック図である。
【図6】第1の実施の形態におけるクリーニング動作を説明するための動作図である。
【図7】第1の実施の形態におけるクリーニング動作を説明するための動作図である。
【図8】第1の実施の形態におけるクリーニング動作を説明するための動作図である。
【図9】第1の実施の形態におけるクリーニング動作を説明するための動作図である。
【図10】第1の実施の形態におけるクリーニング動作を説明するための動作図である。
【図11】単色のクリーニングが指定された場合のインクジェット印刷装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】単色のクリーニングが指定された場合におけるワイパのワイプ開始位置の一例を示す図である。
【図13】インクジェットヘッドによってインクの排出量を変えた場合の吐出面に付着したインクを示す図である。
【図14】排出インク保持部の概略構成図である。
【図15】排出インク保持部によるインクの保持を説明する図である。
【図16】第1の実施の形態の変形例1におけるメンテナンスユニットの平面図である。
【図17】図16におけるA−A線に沿ったワイパ部の断面図である。
【図18】第1の実施の形態の変形例1におけるワイプ時のワイパ周辺の様子を示す図である。
【図19】第1の実施の形態の変形例2におけるメンテナンスユニットの斜視図である。
【図20】図19におけるワイパ部の部分拡大図である。
【図21】第1の実施の形態の変形例3におけるメンテナンスユニットの斜視図である。
【図22】図21のメンテナンスユニットにおけるブラシ部の側面図である。
【図23】第2の実施の形態におけるメンテナンスユニットの平面図である。
【図24】第2の実施の形態におけるワイプ時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0025】
また、以下に示す各実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0026】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図、図2は、図1に示すインクジェット印刷装置に設けられたメンテナンスユニットの平面図、図3は、メンテナンスユニットおよびインクジェットヘッドの分解斜視図、図4は、図2におけるA−A線に沿った断面図、図5は、第1の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の機能構成を示すブロック図である。以下の説明において、ユーザが位置する図1の紙面表方向を前方とする。また、図1に示すように、ユーザから見て、上下左右を上下左右方向とする。
【0027】
図1に示すように第1の実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、搬送部2と、ヘッドユニット3と、メンテナンスユニット4とを備える。
【0028】
搬送部2は、ヘッドユニット3に対向して設けられた搬送ベルト21と、搬送ベルト21を周回駆動させる駆動ローラ22と、駆動ローラ22に従動する従動ローラ23,24,25とを備える。
【0029】
搬送ベルト21は、駆動ローラ22および従動ローラ23,24,25に掛け渡され、印刷時において、駆動ローラ22の駆動により無端移動し、左側に設けられた図示しない給紙台から供給される用紙を保持して搬送する。
【0030】
搬送部2は、印刷時における位置である印刷位置と、その下方の退避位置との間で移動可能に構成されている。搬送部2の退避位置への移動は、ヘッドユニット3のクリーニングを行う際に、メンテナンスユニット4を搬送部2とヘッドユニット3との間に移動させるために行われる。
【0031】
ヘッドユニット3は、ライン型のインクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yを有し、搬送ベルト21により搬送される用紙にインクを吐出して画像を印刷するものである。インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yは、搬送部2の上方において、左右方向に所定間隔で配列される。インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yは、それぞれ、C(シアン)、K(ブラック)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の色の、異なる種類のインクをノズル(図示せず)から吐出する。
【0032】
図2、図3に示すように、インクジェットヘッド31Cは、3×2の千鳥型のマトリックス状に配置された6個の単位ヘッド311Cから構成されている。インクジェットヘッド31K,31M,31Yも同様に、それぞれ6個の単位ヘッド311K,311M,311Yから構成されている。
【0033】
なお、色の区別が必要ない場合等に、符号における色を示すアルファベットの添え字(C,K,M,Y)を省略して、例えば、インクジェットヘッドの符号を「31」、単位ヘッドの符号を「311」のように表記することがある。
【0034】
インクジェットヘッド31の単位ヘッド311のインクの吐出面(下面)には、撥インク膜が形成されている。撥インク膜は、インクをはじく性質を有する材料からなり、例えば、アモルファスフッ素樹脂からなる。
【0035】
メンテナンスユニット4は、インクジェットヘッド31の吐出面のクリーニングを行うものである。メンテナンスユニット4は、印刷時には、図1において実線で示す待機位置に配置される。待機位置は、搬送部2の右側の下方にある。メンテナンスユニット4は、クリーニングを行う際には、図1において破線で示すクリーニング位置に移動される。クリーニング位置は、搬送部2とインクジェットヘッド31との間にある。
【0036】
図2〜図5に示すように、メンテナンスユニット4は、インク受け部材41と、駆動部42と、ワイパ部43と、移動モータ44と、上下モータ45とを備える。なお、図2〜図4は、メンテナンスユニット4がクリーニング位置に配置された状態における図である。
【0037】
インク受け部材41は、クリーニングよって除去されたインク等を受けるものである。インク受け部材41は、メンテナンスユニット4の各部材を保持する。インク受け部材41は、直方体形状に形成されている。インク受け部材41の中央部には、インク等を受けるための凹部41aが形成されている。凹部41aは、平面視にて、インクジェットヘッド31が配置されている領域よりも大きくなるように形成されている。インク受け部材41の上側は、開口されている。
【0038】
駆動部42は、クリーニング時にワイパ部43を左右方向に移動させるものである。駆動部42は、ワイパ駆動モータ421と、駆動ベルト422と、1対の駆動プーリ423a,423bと、1対のネジ歯車424a,424bとを備える。
【0039】
ワイパ駆動モータ421は、回転駆動力を生じさせる。ワイパ駆動モータ421は、インク受け部材41の左壁の外側に配置されている。ワイパ駆動モータ421の回転方向は、切り換え可能である。ワイパ部43を右方向に移動させるときのワイパ駆動モータ421の回転方向を順回転方向、ワイパ部43を左方向に移動させるときのワイパ駆動モータ421の回転方向を逆回転方向とする。ワイパ駆動モータ421は、出力ギヤ421aを有する。出力ギヤ421aは、駆動ベルト422にワイパ駆動モータ421の回転駆動力を伝達する。出力ギヤ421aは、駆動ベルト422の中央部に配置されている。駆動ベルト422は、ワイパ駆動モータ421から伝達された回転駆動力を駆動プーリ423a,423bへと伝達する。駆動ベルト422は、駆動プーリ423aと駆動プーリ423bとの間に掛け渡されている。
【0040】
1対の駆動プーリ423a,423bは、駆動ベルト422から伝達された回転駆動力をネジ歯車424a,424bへと伝達する。駆動プーリ423aと駆動プーリ423bとは、前後方向に所定の間隔を開けて、同じ高さに配置されている。駆動プーリ423a,423bは、インク受け部材41の左壁の内側に回転可能に支持されている。
【0041】
ネジ歯車424a,424bは、ワイパ駆動モータ421から伝達された回転駆動力によってワイパ部43を左右方向に移動させる。ネジ歯車424a,424bは、凹部41aの左右方向の略全長にわたって設けられている。ネジ歯車424a,424bの左端部は、それぞれ駆動プーリ423a,423bの右端に固定されている。ネジ歯車424a,424bの右端部は、インク受け部材71の右壁に回転可能に支持されている。これにより、ネジ歯車424a,424bは、それぞれ駆動プーリ423a,423bとともに回転される。
【0042】
ワイパ部43は、インクジェットヘッド31の単位ヘッド311のインクの吐出面311aをワイプして、吐出面311aに付着したインク等を除去してクリーニングするものであり、取付台431と、ワイパ432とを備える。
【0043】
取付台431は、ワイパ432が取り付けられるものであり、前後方向に細長い角柱状の部材により構成されている。取付台431には、1対のネジ孔431a,431bが形成されている。ネジ孔431a,431bには、ネジ歯車424a,424bが貫通され、かつ、螺合されている。これにより、ネジ歯車424a,424bが回転されると、取付台431は左右方向に移動する。
【0044】
ワイパ432は、インクジェットヘッド31の単位ヘッド311の吐出面311aを摺動することによってインク等を除去して、吐出面311aをクリーニングする。ワイパ432は、弾性変形可能なゴム等の材料で構成されている。ワイパ432は、細長い長方形の薄板状に形成されている。図2に示すように、ワイパ432の長さは、単位ヘッド311が配置されている範囲の前後方向の長さ以上になっている。ワイパ432の下端部は、図示しない固定具によって取付台431の右側面に固定されている。ワイパ432の上端部は、図4に示すように、取付台431の上面よりも高くなるように構成されている。ワイパ432の上端部は、クリーニング位置において、単位ヘッド311の吐出面311aよりも高くなるように配置されている。これにより、ワイパ432は、左右方向に移動されて単位ヘッド311と接すると、弾性変形されて吐出面311aを摺動する。
【0045】
移動モータ44は、メンテナンスユニット4を図1に示した待機位置と後述する退避位置との間で移動させるものである。
【0046】
上下モータ45は、搬送部2とともにメンテナンスユニット4を上下に移動させるものである。これにより、上下モータ45は、搬送部2およびメンテナンスユニット4を図1に示したクリーニング位置、印刷位置、および退避位置の間で移動させる。
【0047】
また、図5に示すように、インクジェット印刷装置1は、加圧部5C,5K,5M,5Yと、記憶部6と、操作パネル部7と、制御部8とを備える。
【0048】
加圧部5C,5K,5M,5Yはそれぞれ、各色のインクボトル(図示せず)からインクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yにインクを供給する経路を加圧するものであり、ポンプ等からなる。加圧部5C,5K,5M,5Yは、クリーニング動作時にインクを強制的に排出するパージを行う際に、インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yへインクを供給する経路を加圧してインクを排出させる。加圧部5C,5K,5M,5Yは、本発明の排出部に相当する。
【0049】
記憶部6は、ハードディスク等の不揮発性の記憶媒体を備える。記憶部6は、インクジェット印刷装置1で用いるC,K,M,Yの各色のインクの、撥インク膜の劣化に与える影響の度合(劣化影響度)の大きさの順を示す劣化影響度情報を予め記憶している。
【0050】
インクの劣化影響度は、インクの成分により異なる。インクの成分は、インクの種類によって異なるため、C,K,M,Yのインクにはそれぞれ異なる成分が含まれている。このため、劣化影響度が各色のインクで異なる。例えば、Kのインクに含まれるカーボンブラック顔料等の成分は、撥インク膜の劣化に与える影響が大きい。インクジェット印刷装置1では、C,K,M,Yのインクの劣化影響度の大小が、このような成分と撥インク膜とのマッチングを考慮して判断され、劣化影響度の大きさの順を示す劣化影響度情報が記憶部6に予め記憶されている。これにより、インクの種類に応じて劣化影響度の大小が適切に決定される。
【0051】
なお、顔料インクであれば、インク中の顔料コンテントおよび顔料粒子径によっても、劣化影響度が異なる。顔料コンテントが高いほど、または顔料粒子径が大きいほど、劣化影響度が大きい傾向がある。顔料インクを用いる場合は、上記のようなインクの成分に加えて、顔料コンテントおよび顔料粒子径の大きさも考慮して劣化影響度を判断するようにしてもよい。
【0052】
操作パネル部7は、各種操作ボタン、タッチパネル(いずれも図示せず)等を有し、ユーザによる入力操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。
【0053】
制御部8は、CPU、メモリ(いずれも図示せず)等を備えて構成され、インクジェット印刷装置1全体の動作を統括的に制御するものである。
【0054】
次に、インクジェット印刷装置1におけるクリーニング動作について説明する。
【0055】
クリーニング動作は、予め定められたタイミングや、ユーザによる指示が入力されたタイミング等で行われる。まず、全色のインクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yに対するクリーニングを実施する動作について説明する。
【0056】
ここで、第1の実施の形態において、インクジェット印刷装置1で使用される4色のインクの劣化影響度の大小関係は、K>M>Y>Cであるとする。劣化影響度が最大のインク(劣化影響最大インク)はKのインクである。
【0057】
クリーニング動作を行うにあたって、まず、メンテナンスユニット4がクリーニング位置に移動される。この際、まず、制御部8は、上下モータ45を駆動させて、図6に示すように、搬送部2を印刷位置から下方の退避位置へと移動させる。次いで、制御部8は、移動モータ44を駆動させて、図7に示すように、メンテナンスユニット4を待機位置から左上方の退避位置へと移動させる。
【0058】
その後、制御部8は、上下モータ45を駆動させて、図8に示すように、搬送部2を退避位置から上方のクリーニング位置へと移動させる。これにより、メンテナンスユニット4が、退避位置からクリーニング位置へと移動する。ここで、メンテナンスユニット4がクリーニング位置に移動されると、図4に示したように、ワイパ432の上端部は、インクジェットヘッド31の単位ヘッド311の吐出面311aよりも上方に位置する。また、図2のように、ワイパ432は、左右方向において、最も左側のインクジェットヘッド31Cの左側に配置されている。
【0059】
メンテナンスユニット4のクリーニング位置への移動が終了すると、制御部8は、各インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yからパージによりインクを排出するために、加圧部5C,5K,5M,5Yにより、インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yへインクを供給する経路を加圧するよう制御する。これにより、各単位ヘッド311においてノズルからインクが押し出される。これにより排出されたインクが吐出面311aに付着する。
【0060】
次いで、制御部8は、ワイパ駆動モータ421を順回転方向に駆動させる。これにより、ワイパ駆動モータ421の回転駆動力が、出力ギヤ421a、駆動ベルト422、駆動プーリ423a,423bを伝達して、ネジ歯車424a,424bを回転させる。この結果、ワイパ432が、ネジ歯車424a,424bに螺合されている取付台431とともに右方向へと移動する。
【0061】
図9に示すように、ワイパ432の上部が単位ヘッド311Cと接触する位置まで移動すると、ワイパ432は単位ヘッド311Cに押圧されて弾性変形する。この状態でさらにワイパ432が右方向へ移動すると、ワイパ432の右面が、単位ヘッド311Cの吐出面311aを摺動する。このように行われるワイプにより、パージにより吐出面311aに付着したインク9が、吐出面311aに付着したゴミ等とともに除去される。ワイパ432がインクジェットヘッド31Cの右側まで移動した状態では、図10に示すように、ワイパ432の右面上に、単位ヘッド311Cの吐出面311aから除去したインク9が付着している。
【0062】
その後、ワイパ432は、インクジェットヘッド31Kの単位ヘッド311Kの吐出面311aをワイプする。この際、ワイパ432の右面上にはCのインク9が付着している状態である。このため、単位ヘッド311Kの吐出面311aに付着しているインクと、ワイパ432に付着しているインク9とが混合されながら、ワイパ432が単位ヘッド311Kの吐出面311aを摺動する。
【0063】
前述のように、第1の実施の形態において、インクジェット印刷装置1における劣化影響最大インクはKのインクである。インクジェットヘッド31Kのワイプを行う際には、インクジェットヘッド31Cをワイプしたことにより、Kのインクよりも劣化影響度が小さいCのインクがワイパ432の右面上に存在している。このため、単位ヘッド311Kのワイプの際には、パージにより単位ヘッド311Kの吐出面311aに付着しているインクと、ワイパ432の右面上のインクとが混合されながらワイプされるが、この混合インクは、Kのインクよりも劣化影響度が低いものになっている。
【0064】
以降、単位ヘッド311M,311Yのワイプにおいても同様に、吐出面311aに付着しているインクと、ワイパ432に付着しているインクとが混合されながら、ワイパ432が吐出面311aを摺動する。
【0065】
ワイパ432がインクジェットヘッド31Yよりも右側まで移動すると、制御部8は、ワイパ駆動モータ421を停止する。これにより、ワイパ432および取付台431が停止する。なお、制御部8は、ワイパ432の位置を位置検出センサやロータリーエンコーダ等により検出する。
【0066】
ワイプ後は、混色したインクがインクジェットヘッド31のノズル内に残っているおそれがある。そこで、制御部8は、インクジェットヘッド31を駆動してインクを吐出(フラッシング)させてもよい。
【0067】
次いで、制御部8は、上下モータ45を駆動させて、搬送部2とともにメンテナンスユニット4を下方の退避位置へと移動させる。この退避位置では、ワイパ432の上端部は、単位ヘッド311の吐出面311aよりも下方に位置する。
【0068】
次いで、制御部8は、ワイパ駆動モータ421を逆回転方向に駆動させて、ワイパ432を左方向へと移動させ、図2におけるワイパ432の位置に相当する初期位置まで移動すると、ワイパ駆動モータ421を停止させる。ここで、メンテナンスユニット4は退避位置に配置されているので、ワイパ432は、単位ヘッド311と接触することなく移動する。
【0069】
次いで、制御部8は、移動モータ44を駆動させて、メンテナンスユニット4を図1において実線で示す待機位置まで移動させる。そして、制御部8は、上下モータ45を駆動させて、搬送部2を図1に示す印刷位置へと移動させる。以上により、一連のクリーニング動作が終了する。
【0070】
なお、すべてのインクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yのパージ後、各インクジェットヘッドのワイプを、対応するインクの劣化影響度の小さい順に、順次行うようにしてもよい。例えば、第1の実施の形態では、劣化影響度の大小関係が前述のようにK>M>Y>Cであるので、インクジェットヘッド31C→31Y→31M→31Kの順にワイプを行う。この場合、制御部8は、インクジェットヘッド31Cをワイプした後、一度メンテナンスユニット4を退避位置へ移動し、インクジェットヘッド31Yの右側へワイパ432を移動し、その後、メンテナンスユニット4をクリーニング位置へ移動してから、ワイパ432を左方向に移動しながらインクジェットヘッド31Y,31M,31Kを順次ワイプするよう制御する。このように、対応するインクの劣化影響度の小さい順に各インクジェットヘッドのワイプをすることで、各インクジェットヘッドのワイプ時において、吐出面に付着しているインクに、それより劣化影響度の小さいインクを混合させながらワイプを行うことができる。
【0071】
次に、単色のクリーニングが指定された場合のインクジェット印刷装置1の動作について説明する。単色のクリーニングは、ユーザが必要に応じて操作パネル部7を操作して指示した際に行われる。
【0072】
図11は、インクジェット印刷装置1において単色のクリーニングが指定された場合の動作を示すフローチャートである。図11に示すフローチャートの処理は、ユーザの操作パネル部7の操作により、色の指定およびクリーニングを開始する指示がされるのに応じて開始となる。
【0073】
まず、ステップS10において、制御部8は、上下モータ45を駆動させて、図6に示すように、搬送部2を印刷位置から下方の退避位置へと移動させ、次いで、移動モータ44を駆動させて、図7に示すように、メンテナンスユニット4を待機位置から左上方の退避位置へと移動させる。
【0074】
次いで、ステップS20において、制御部8は、記憶部6に記憶されている劣化影響度情報を参照して、ユーザ操作により指定された色が、劣化影響最大インクの色であるか否かを判断する。劣化影響最大インクの色である場合(ステップS20:YES)、ステップS40に進み、劣化影響最大インクの色でない場合(ステップS20:NO)、ステップS30に進む。
【0075】
ステップS30では、制御部8は、指定された色のインクジェットヘッドよりも劣化影響度が小さいインクに対応するインクジェットヘッドが、指定された色のインクジェットヘッドに左右方向の少なくともいずれかにおいて隣接しているか否かを判断する。劣化影響度が小さいインクのインクジェットヘッドが隣接している場合(ステップS30:YES)、ステップS40に進み、隣接していない場合(ステップS30:NO)、ステップS80に進む。例えば、指定された色がMである場合、インクジェットヘッド31Mに、Mのインクより劣化影響度の小さいYのインクに対応するインクジェットヘッド31Yが隣接しているため、ステップS30の判断はYESとなる。一方、例えば、指定された色がCである場合は、インクジェットヘッド31Cに隣接するインクジェットヘッド31Kは、Cのインクより劣化影響度の大きいKのインクに対応するものであるため、ステップS30の判断はNOとなる。
【0076】
ステップS40では、制御部8は、ワイパ駆動モータ421を駆動して、指定された色のインクジェットヘッドと、当該インクジェットヘッドに隣接する、指定された色のインクよりも劣化影響度が小さいインクに対応するインクジェットヘッドとをワイプするための開始位置にワイパ432を移動させる。ワイプは隣接するインクジェットヘッド側から行うようにする。
【0077】
次いで、ステップS50において、制御部8は、上下モータ45を駆動させて、図8に示すように、搬送部2を退避位置から上方のクリーニング位置へと移動させる。これにより、メンテナンスユニット4が、退避位置からクリーニング位置へと移動する。この結果、例えば、指定された色が劣化影響最大インクの色であるKである場合、図2に示すように、インクジェットヘッド31Kに隣接するインクジェットヘッド31C,31Mのうち、対応するインクの劣化影響度がより小さいインクジェットヘッド31Cの左側にワイパ432が配置される。また、指定された色がMの場合であれば、図12に示すように、ワイパ432は、インクジェットヘッド31Mに隣接する、Mのインクより劣化影響度の小さいYのインクに対応するインクジェットヘッド31Yの右側に配置される。
【0078】
次いで、ステップS60において、制御部8は、指定された色に対応するインクジェットヘッドと、当該インクジェットヘッドに隣接する、指定された色のインクよりも劣化影響度が小さいインクに対応するインクジェットヘッドとにおいてパージを実施するよう、対象のインクジェットヘッドに対応する加圧部を制御する。
【0079】
例えば、指定された色が劣化影響最大インクの色であるKである場合、制御部8は、インクジェットヘッド31C,31Kからパージによりインクを排出するよう加圧部5C,5Kを制御する。また、指定された色がMである場合、制御部8は、インクジェットヘッド31M,31Yからパージによりインクを排出するよう加圧部5M,5Yを制御する。
【0080】
そして、ステップS70において、制御部8は、ワイパ駆動モータ421を駆動させ、ワイパ432を移動させて、対象のインクジェットヘッドのワイプを行う。
【0081】
例えば、指定された色が劣化影響最大インクの色であるKである場合、制御部8は、ワイパ駆動モータ421を順回転方向に駆動させる。これにより、ワイパ432が、図2に示した位置から右方向に移動し、まずインクジェットヘッド31Cの単位ヘッド311Cをワイプする。これにより、ワイパ432の右面にCのインクが付着する。その後、ワイパ432は、インクジェットヘッド31Kの単位ヘッド311Kをワイプする。この際、パージにより単位ヘッド311Kの吐出面311aに付着したKのインクと、ワイパ432の右面に付着したCのインクとが混合されながら、単位ヘッド311Kの吐出面311aがワイプされる。ワイパ432がインクジェットヘッド31Kの右側まで移動すると、制御部8は、ワイパ駆動モータ421を停止する。
【0082】
また、指定された色がMである場合、制御部8は、ワイパ駆動モータ421を逆回転方向に駆動させる。これにより、ワイパ432が、図12に示すインクジェットヘッド31Yの右側の位置から左方向に移動し、まずインクジェットヘッド31Yの単位ヘッド311Yをワイプする。これにより、ワイパ432の左面にYのインクが付着する。その後、ワイパ432は、インクジェットヘッド31Mの単位ヘッド311Mをワイプする。この際、パージにより単位ヘッド311Mの吐出面311aに付着したMのインクと、ワイパ432の左面に付着したYのインクとが混合されながら、単位ヘッド311Mの吐出面311aがワイプされる。ワイパ432がインクジェットヘッド31Mの左側まで移動すると、制御部8は、ワイパ駆動モータ421を停止する。
【0083】
上述のステップS30の判断が「NO」であった場合、ステップS80において、制御部8は、ワイパ駆動モータ421を駆動して、指定された色のインクジェットヘッドをワイプするための開始位置にワイパ432を移動させる。
【0084】
次いで、ステップS90において、制御部8は、上下モータ45を駆動させて、搬送部2を退避位置から上方のクリーニング位置へと移動させる。これにより、メンテナンスユニット4が、退避位置からクリーニング位置へと移動する。この結果、例えば、指定された色がYであるとすれば、図示は省略するが、インクジェットヘッド31Yの左側にワイパ432が配置される。
【0085】
次いで、ステップS100において、制御部8は、指定された色に対応するインクジェットヘッドにおいてパージを実施するよう、対象のインクジェットヘッドに対応する加圧部を制御する。指定された色がYであれば、制御部8は、インクジェットヘッド31Yからパージによりインクを排出するよう加圧部5Yを制御する。
【0086】
その後、ステップS70に進み、制御部8は、ワイパ駆動モータ421を駆動させ、ワイパ432を移動させて、指定された色のインクジェットヘッドのワイプを行う。指定された色がYであれば、制御部8が、ワイパ駆動モータ421を順回転方向に駆動させることにより、ワイパ432が、インクジェットヘッド31Yの左側の位置から右方向に移動し、インクジェットヘッド31Yの単位ヘッド311Yをワイプする。ワイパ432がインクジェットヘッド31Yの右側まで移動すると、制御部8は、ワイパ駆動モータ421を停止する。
【0087】
ワイプが終了すると、前述した全色のインクジェットヘッド31のクリーニングの場合と同様に、制御部8は、上下モータ45を駆動させて、搬送部2とともにメンテナンスユニット4を下方の退避位置へと移動させた後、ワイパ駆動モータ421を駆動させて、図2におけるワイパ432の位置に相当する初期位置までワイパ432を移動させる。その後、制御部8は、移動モータ44を駆動させて、メンテナンスユニット4を図1において実線で示す待機位置まで移動させ、上下モータ45を駆動させて、搬送部2を図1に示す印刷位置へと移動させる。以上により、一連のクリーニング動作が終了する。
【0088】
上記のように、単色のクリーニングが指定された場合において、指定された色が劣化影響最大インクの色である場合、隣接するインクジェットヘッドとともにパージおよびワイプを行う。つまり、劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドの単独でのクリーニングは行わない。これにより、劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドのワイプ時に吐出面311aの撥インク膜に接触するインクは、劣化影響最大インクと、それより劣化影響度の小さいインクとの混合のインクとなる。このため、劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドの撥インク膜に接触するインクの劣化影響度を、劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッド単独でクリーニングする場合よりも低く抑えることができる。
【0089】
また、劣化影響最大インク以外の色のクリーニングが指定された場合でも、指定された色のインクジェットヘッドに隣接するインクジェットヘッドに対応するインクが、指定された色のインクよりも劣化影響度が小さい場合は、隣接するインクジェットヘッドとともにパージおよびワイプを行う。これにより、指定された色のインクジェットヘッドのワイプ時に吐出面311aの撥インク膜に接触するインクは、指定された色のインクと、それより劣化影響度の小さいインクとの混合のインクとなる。このため、指定された色のインクジェットヘッドの撥インク膜に接触するインクの劣化影響度を、指定された色のインクジェットヘッド単独でクリーニングする場合よりも低く抑えることができる。
【0090】
ここで、指定された色のインクジェットヘッドの左右に隣接するインクジェットヘッドの両方が、指定された色のインクよりも劣化影響度が小さいインクに対応するものである場合、より劣化影響度が小さいインクに対応するインクジェットヘッドを、指定された色のインクジェットヘッドとともにクリーニングするものとして選択すればよい。
【0091】
なお、劣化影響最大インク以外の色の単色のクリーニングは、対応する1つのインクジェットヘッド単独で行い、劣化影響最大インクの色が指定された場合のみ、劣化影響最大インクのインクジェットヘッドとそれに隣接するインクジェットヘッドとを一緒にクリーニングするようにしてもよい。
【0092】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、全色のクリーニングを行う場合でも指定された単色のクリーニングを行う場合でも、劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドの吐出面311aをワイプする前に、他のインクジェットヘッドの吐出面311aのワイプが行われる。これにより、劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドの吐出面311aのワイプ時に、劣化影響最大インクと、それより劣化影響度の小さいインクとの混合が生じる。これにより、劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドの撥インク膜に接触するインクの劣化影響度を低下させ、撥インク膜の劣化を低減することができる。
【0093】
また、単色のクリーニングが指示された場合でも、当該インクジェットヘッドに隣接するインクジェットヘッドに対応するインクの方が当該インクジェットヘッドに対応するインクよりも劣化影響度が小さければ、単独でのパージおよびワイプは行わない。この場合、隣接するインクジェットヘッドとともにパージを行い、隣接するインクジェットヘッドのワイプに続いて、当該インクジェットヘッドのワイプを行う。これにより、当該インクジェットヘッドの撥インク膜に接触するインクの劣化影響度を低下させ、撥インク膜の劣化を低減することができる。
【0094】
なお、本実施の形態では、左側からインクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yの順に配列されているため、前述のように、全色のクリーニングを行う際に、図2の位置(初期位置)から右方向にワイパ432を移動させてワイプを行うと、劣化影響最大インクであるKのインクに対応するインクジェットヘッド31Kの前に、インクジェットヘッド31Cがワイプされることになる。これに対し、例えば、インクジェットヘッド31Kが最も左側にある配置だとすると、全色のクリーニングを行う際に、図2の位置から右方向にワイパ432を移動させてワイプを行うと、インクジェットヘッド31Kが最初にワイプされることになる。この場合、Kのインクと他のインクとの混合が生じず、インクジェットヘッド31Kにおいて撥インク膜が劣化しやすくなる。そこで、インクジェットヘッド31Kが最も左側にある配置である場合、全色のクリーニングを行うときに、まずワイパ432を最も右側にあるインクジェットヘッドの右側に配置し、ワイパ駆動モータ421を逆回転方向に駆動させて、左方向にワイプするようにすれば、劣化影響最大インクであるKのインクと他のインクとの混合を生じさせることができる。
【0095】
ただし、インクジェットヘッド31Kが最も左側にある配置の場合は、インクジェット印刷装置1において、メンテナンスユニット4を、図2、図3で示した構成に対して左右反転した構成とすることが好ましい。このように、各色のインクジェットヘッド31の配列順によっては、インクジェット印刷装置1において、メンテナンスユニット4を、図2、図3で示した構成に対して左右反転した構成とすることが好ましい。
【0096】
また、パージを行う際に、インクジェットヘッドによってインクの排出量を変えるようにしてもよい。例えば、全色のクリーニングを実施する際、劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッド以外の少なくとも1つのインクジェットヘッドのインクの排出量を、劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドのインクの排出量よりも多くする。
【0097】
この場合、例えば、制御部8は、全色のクリーニングを実施する際、パージにおいて、劣化影響度が最小のインクであるCのインクの排出量が他のインクの排出量よりも多くなるように加圧部5を制御する。パージによるインクの排出量を多くするためには、制御部8は、加圧部5による加圧力を増加させたり、加圧時間を長くしたりすればよい。これにより、パージ後、ワイパ432によるワイプの開始時において、図13に示すように、インクジェットヘッド31Cにおける吐出面311aには、他のインクジェットヘッド31K,31M,31Yよりも多くのインク9が付着した状態となる。これにより、インクジェットヘッド31Kをワイプする際、劣化影響最大インクであるKのインクに、劣化影響度のより小さいインクが多く混合されることになる。この結果、インクジェットヘッド31Kにおける吐出面311aの撥インク膜の劣化をより低減することができる。
【0098】
また、単色のクリーニングが指定された場合において、指定された色のインクジェットヘッドを、当該インクジェットヘッドに隣接する、指定された色のインクよりも劣化影響度が小さいインクに対応するインクジェットヘッドとともにクリーニングする場合、指定された色のインクジェットヘッドよりも、隣接するインクジェットヘッドのほうが、パージ時のインクの排出量が多くなるようにしてもよい。
【0099】
また、劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッド以外の少なくとも1つのインクジェットヘッドにおける吐出面311aに、クリーニング時にパージにより排出されたインクを保持する機構(排出インク保持部)を設けてもよい。
【0100】
図14は、パージにより排出されたインクを保持する排出インク保持部を備えた単位ヘッド311の概略構成を示す斜視図である。図14に示すように、単位ヘッド311の吐出面311aは、ノズルの吐出孔が形成されたノズルプレート312と、ノズルプレート312の周囲において単位ヘッド311本体を保護するための保護板313とから構成されている。撥インク膜はノズルプレート312の表面に設けられている。ノズルプレート312に隣接する位置に、ノズルの配列方向に延びる溝状の排出インク保持部314が形成されている。
【0101】
図14のような構成の単位ヘッド311によれば、図15に示すように、パージにより排出されたインク9が溝状の排出インク保持部314に流れ込み、多くのインクが保持される。インク9は、表面張力により落下が抑えられる。
【0102】
例えば、劣化影響度が最小のCのインクに対応するインクジェットヘッド31Cの単位ヘッド311Cを、図14のような構成とする。この単位ヘッド311Cをワイプすると、多くのインクがワイパ432に付着する。これにより、他のインクジェットヘッドとともにクリーニングする場合、他のインクジェットヘッドのワイプ時には、劣化影響度の小さいインクが多く混合されることになる。この結果、他のインクジェットヘッドにおける吐出面311aの撥インク膜の劣化をより低減することができる。
【0103】
なお、図14では、排出インク保持部314をノズルプレート312の一方側のみに設けた例を示したが、両側に設けてもよい。
【0104】
また、ワイパ432を、インクを内部に保持可能なスポンジ等の部材により構成してもよい。これにより、ワイパ432に多量のインクを保持できる。これにより、劣化影響度が大きいインクに対応するインクジェットヘッドのワイプを行う際に、それより前にワイプしたインクジェットヘッドから除去した、多量の劣化影響度が小さいインクを混合させることが可能となり、撥インク膜の劣化をより低減することができる。
【0105】
(第1の実施の形態の変形例1)
上記第1の実施の形態におけるメンテナンスユニットを変更した変形例1について説明する。
【0106】
図16は、第1の実施の形態の変形例1に係るインクジェット印刷装置におけるメンテナンスユニットの平面図、図17は、図16におけるA−A線に沿ったワイパ部の断面図である。
【0107】
図16に示すように、変形例1におけるメンテナンスユニット4Aは、図2等に示した第1の実施の形態におけるメンテナンスユニット4のワイパ部43を、ワイパ部43Aに置き換えたものである。
【0108】
ワイパ部43Aは、図2、図4等に示した第1の実施の形態におけるワイパ部43に対し、取付台431を取付台433に置き換え、ワイパ432を挟んで取付台433と反対側に設置されたインク保持部材434を追加した構成である。
【0109】
取付台433は、ワイパ432が取り付けられるものであり、前後方向に細長い角柱状の部材により構成されている。取付台433には、ワイパ432に沿って前後方向に延びる溝部4331が形成されている。溝部4331は、ワイパ432によりインクジェットヘッド31の吐出面311aから除去したインクを受けて保持する。取付台433には、1対のネジ孔433a,433bが形成されている。ネジ孔433a,433bには、ネジ歯車424a,424bが貫通され、かつ、螺合されている。これにより、ネジ歯車424a,424bが回転されると、取付台433は左右方向に移動する。
【0110】
インク保持部材434は、図17に示すような断面略L字形状の、前後方向に細長い部材からなる。インク保持部材434は、ワイパ432との間に形成される空間において、ワイパ432によりインクジェットヘッド31の吐出面311aから除去したインクを受けて保持する。取付台433の溝部4331およびインク保持部材434は、本発明の除去インク保持部を構成する。
【0111】
上記のように構成されたワイパ部43Aでは、ワイパ432によりインクジェットヘッド31の吐出面311aから除去したインクを、取付台433の溝部4331またはインク保持部材434で保持する。そして、例えばインク保持部材434にインクを保持した状態で吐出面311aのワイプを行うと、図18に示すように、インク保持部材434に保持された多量のインク9と吐出面311aに付着しているインク9とを混合させながらワイプを行うことができる。
【0112】
これにより、劣化影響度が大きいインクに対応するインクジェットヘッドのワイプを行う際に、多量の劣化影響度が小さいインクとの混合が可能となり、撥インク膜に接触するインクの劣化影響度を大きく低下させ、撥インク膜の劣化をより低減することができる。
【0113】
(第1の実施の形態の変形例2)
上記第1の実施の形態におけるメンテナンスユニットを変更した変形例2について説明する。
【0114】
図19は、第1の実施の形態の変形例2に係るインクジェット印刷装置におけるメンテナンスユニットの斜視図、図20は、図19におけるワイパ部の部分拡大図である。
【0115】
図19に示すように、変形例2におけるメンテナンスユニット4Bは、図2等に示した第1の実施の形態におけるメンテナンスユニット4のワイパ部43を、ワイパ部43Bに置き換えたものである。
【0116】
ワイパ部43Bは、図19、図20に示すように、基台部435と、ブラシ部436とを備える。
【0117】
基台部435は、ブラシ部436の基台となるものであり、前後方向に細長い角柱状の部材により構成されている。基台部435には、ネジ歯車424a,424bが貫通され、かつ、螺合される1対のネジ孔が形成されている。これにより、ネジ歯車424a,424bが回転されると、基台部435は左右方向に移動する。
【0118】
ブラシ部436は、基台部435の上面に密に植えられた多数の繊維437からなる。繊維437は、直径が例えば数十μm程度であり、その先端部は球状に形成されている。繊維437の先端の球状部分の直径は、インクジェットヘッド31のノズルの直径よりも大きくなっている。ノズルの直径は、例えば23μm程度である。ブラシ部436は、繊維437間の毛細管力により、インクジェットヘッド31の吐出面311aから除去したインクを保持することができる。このため、ブラシ部436は、インクを内部に保持可能な部材から構成されているということができる。
【0119】
上記のように構成されたワイパ部43Bでは、ワイパとして機能するブラシ部436によりインクジェットヘッド31の吐出面311aをワイプすると、吐出面311aから除去したインクが、繊維437間の毛細管力によりブラシ部436に保持される。
【0120】
ブラシ部436にインクを保持した状態で他のインクジェットヘッド31の吐出面311aのワイプを行うと、ブラシ部436に保持されたインクと吐出面311aに付着しているインクとを混合させながらワイプを行うことができる。
【0121】
これにより、劣化影響度が大きいインクに対応するインクジェットヘッドのワイプを行う際に、多量の劣化影響度が小さいインクとの混合が可能となり、撥インク膜の劣化を低減することができる。
【0122】
また、ブラシ部436によりワイプを行うので、吐出面311aに凹凸がある場合でも、確実にインクやゴミを除去できる。また、繊維437の先端が球状であるので、吐出面311aへの接触状態を一定にすることができ、効率よくインク等を除去できる。また、繊維437の先端が球状であるので、吐出面311aの撥インク膜へのダメージを抑えることができる。
【0123】
また、繊維437の先端の球状部分の直径が、インクジェットヘッド31のノズルの直径より大きいので、ワイプ時に繊維437がノズル内に入りこむことを回避できる。これにより、ワイプ時にインクジェットヘッド31から無駄にインクを引き出してしまうことを抑制できる。
【0124】
(第1の実施の形態の変形例3)
上記第1の実施の形態におけるメンテナンスユニットを変更した変形例1について説明する。
【0125】
図21は、第1の実施の形態の変形例3に係るインクジェット印刷装置におけるメンテナンスユニットの斜視図、図22は、図21のメンテナンスユニットにおけるブラシ部の側面図である。
【0126】
図21に示すように、変形例3におけるメンテナンスユニット4Cは、図2等に示した第1の実施の形態におけるメンテナンスユニット4のワイパ部43を、ワイパ部43Cに置き換えたものである。
【0127】
ワイパ部43Cは、図21に示すように、取付台438と、1対の支持板439a,439bと、ワイパ440とを備える。
【0128】
取付台438は、前後方向に細長い角柱状の部材からなる。取付台438の前後方向の両端には、ワイパ440を取り付けるための支持板439a,439bが固定されている。取付台438には、ネジ歯車424a,424bが貫通され、かつ、螺合される1対のネジ孔が形成されている。これにより、ネジ歯車424a,424bが回転されると、取付台438は左右方向に移動する。
【0129】
ワイパ440は、円柱形状の軸部材441と、軸部材441の周面に密に植えられた多数の繊維437からなるブラシ部442とを備えて構成される。ワイパ440は、1対の支持板439a,439bの間に軸支されている。ワイパ440は、その中心軸周りに回転可能に構成してもよい。ブラシ部442は、繊維437間の毛細管力により、インクジェットヘッド31の吐出面311aから除去したインクを保持することができる。
【0130】
このようなメンテナンスユニット4Cによっても、上述の変形例2と同様の作用効果を得ることができる。
【0131】
[第2の実施の形態]
上記第1の実施の形態におけるメンテナンスユニットを変更した第2の実施の形態について説明する。
【0132】
図23は、第2の実施の形態に係るインクジェット印刷装置におけるメンテナンスユニットの平面図である。図23に示すように、第2の実施の形態におけるメンテナンスユニット4Dは、インク受け部材41と、駆動部42と、ワイパ部43Dとを備える。
【0133】
上述した第1の実施の形態におけるメンテナンスユニット4は、インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yの配列方向(左右方向)にワイパ432を移動させてワイプを行う構成であった。つまり、メンテナンスユニット4のワイプ方向は左右方向であった。これに対し、第2の実施の形態におけるメンテナンスユニット4Dにおいては、図23に示すように、インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yの配列方向に略直交する方向(前後方向)がワイプ方向となる。
【0134】
メンテナンスユニット4Dにおいて、駆動部42のワイパ駆動モータ421等は、インク受け部材41の後側の壁に配置されている。また、ネジ歯車424a,424bは、凹部41aの前後方向の略全長にわたって設けられている。ネジ歯車424a,424bの後端部は、それぞれ駆動プーリ423a,423bの前端に固定されている。ネジ歯車424a,424bの前端部は、インク受け部材71の前側の壁に回転可能に支持されている。
【0135】
ワイパ部43Dは、第1の実施の形態におけるワイパ部43と同様のものを、平面視にて、一箇所で折れ曲がった「く」の字形に形成した構成である。ワイパ部43Dは、「く」の字の頂点Pの左右方向における位置が、劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドに対応する位置に配置され、ワイプ方向の下流側(後側)に凸となるように構成される。ここで、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同様に、Kのインクが劣化影響最大インクであるとする。したがって、図23に示すように、頂点Pが、左右方向において、Kの単位ヘッド311Kが並ぶ2つの列の間に配置されている。ワイパ432の左右方向の両端間に、左右方向における単位ヘッド311が配置されている範囲が収まるようになっている。ワイパ部43Dは、ネジ歯車424a,424bが回転されると、前後方向に移動する。
【0136】
ワイプを開始する前の初期状態では、図23に示すように、ワイパ部43Dは、前後方向において、最も後側の単位ヘッド311の後側に配置されている。
【0137】
第2の実施の形態では、パージによりインクジェットヘッド31からインクを排出した後、ワイパ432を図23に示した初期位置から前方向に移動させると、ワイパ432が「く」の字形状であることから、インクジェットヘッド31Kの吐出面311aがワイプされる前に、他のインクジェットヘッド31C,31M,31Yの吐出面311aの一部がワイプされる。そして、図24に示すように、ワイパ432でインクジェットヘッド31C,31M,31Yの単位ヘッド311C,311M,311Yの吐出面311aから除去されたC,M,Yのインクが、頂点Pに向かって流れる。なお、図24は、インクジェットヘッド31およびワイパ432を下側から見た状態の図である。
【0138】
これにより、インクジェットヘッド31Kの単位ヘッド311Kがワイプされる際、C,M,Yのインクが、劣化影響最大インクであるKのインクに混合される。この結果、単位ヘッド311Kをワイプする際に吐出面311aの撥インク膜に接触するインクの劣化影響度を低下させ、撥インク膜の劣化を低減することができる。
【0139】
なお、ワイパ432の形状は、図23に示したような「く」の字形状に限らず、後側に凸な放物線状や円弧状等の形状でもよい。また、劣化影響最大インクのインクジェットヘッドに対応する位置において後側に凸な部分を有していれば、「W」(「M」)字形状等でもよい。
【0140】
また、第1の実施の形態と同様に、インクジェットヘッドによってパージの際のインクの排出量を変えるようにしてもよい。
【0141】
また、第1の実施の形態と同様に、劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッド以外の少なくとも1つのインクジェットヘッドにおける吐出面311aに、図14に示したような排出インク保持部314を設けてもよい。
【0142】
また、第1の実施の形態と同様に、ワイパ432を、インクを保持可能なスポンジ等の部材により構成してもよい。
【0143】
また、第1の実施の形態の変形例1において図17等で示したインク保持部材434のような、インクジェットヘッド31から除去したインクを保持する除去インク保持部をワイパ432に設置してもよい。
【0144】
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明は第1の実施の形態とその変形例、および第2の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0145】
上記各実施の形態においては、4つのインクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yを備える例で説明したが、インクジェットヘッドの数はこれに限らず、複数であればよい。
【0146】
また、上記各実施の形態においては、固定のインクジェットヘッドに対してワイパが移動する例を示したが、これに限らず、インクジェットヘッドに対してワイパが相対的に移動するものであればよい。
【0147】
また、上記各実施の形態においては、パージ動作を、インク経路を加圧してインクジェットヘッドからインクを押し出す加圧パージとして説明しているが、インクジェットヘッドから吸引によりインクを引き出す吸引パージを行う構成としてもよい。
【0148】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0149】
1 インクジェット印刷装置
2 搬送部
3 ヘッドユニット
4,4A,4B,4C,4D メンテナンスユニット
5 加圧部
6 記憶部
7 操作パネル部
8 制御部
31 インクジェットヘッド
41 インク受け部材
42 駆動部
43,43A,43B,43C,43D ワイパ部
44 移動モータ
45 上下モータ
311 単位ヘッド
311a 吐出面
314 排出インク保持部
432,440 ワイパ
434 インク保持部材
436,442 ブラシ部
4331 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクの吐出面に形成された撥インク膜を有し、互いに異なる種類のインクを吐出する複数のインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドのクリーニング時に前記インクジェットヘッドからインクを排出させる排出部と、
クリーニング時にインクを排出した後の前記インクジェットヘッドの吐出面をワイプして、吐出面からインクを除去するワイパとを備え、
前記ワイパは、前記各インクジェットヘッドに対応するインクのうち、前記撥インク膜の劣化に与える影響の度合が最大のインクである劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドの吐出面をワイプする前に、少なくとも1つの他のインクジェットヘッドの吐出面の少なくとも一部をワイプすることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッド以外の少なくとも1つのインクジェットヘッドの吐出面に、クリーニング時に排出されたインクを保持する排出インク保持部を備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記ワイパに設置され、前記インクジェットヘッドの吐出面から除去したインクを保持する除去インク保持部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記排出部は、前記劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッド以外の少なくとも1つのインクジェットヘッドのインクの排出量を、前記劣化影響最大インクに対応するインクジェットヘッドのインクの排出量よりも多くすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
前記ワイパは、各インクジェットヘッドのワイプを、対応するインクの前記撥インク膜の劣化に与える影響の度合の小さい方から順に行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
前記ワイパは、前記複数のインクジェットヘッドの配列方向に略直交するワイプ方向に相対移動しながら前記各インクジェットヘッドのワイプを行うものであり、前記劣化影響最大インクのインクジェットヘッドに対応する位置を頂点として前記ワイプ方向の下流側に凸な形状に形成された部分を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項7】
前記各インクジェットヘッドに対応する各インクの前記撥インク膜の劣化に与える影響の度合の大小は、各インクに含まれる成分と前記撥インク膜とのマッチングを考慮して判断されたものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−40828(P2012−40828A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185983(P2010−185983)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】