説明

インクジェット式印刷装置

【課題】記録ヘッドから噴射されるインクの着弾位置に影響を与えることなく、印刷された記録媒体を平坦として排紙でき、印刷画像の乱れを解消でき、きちんと積み重ねることができる構成が簡単なインクジェット式印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】インクジェット方式により印刷が終了した印刷用紙21を搬送する搬送ベルト装置51を備え、搬送ベルト装置51の上流部に、搬送ベルト装置51により搬送されている印刷用紙21の表面を点接触で押さえる点接触ローラ52を配置し、搬送ベルト装置51の下流部に、搬送ベルト装置51により搬送されている印刷用紙21を下方へ吸引するファン装置53を配置し、第1および第2の搬送ローラ41,42と搬送ベルト装置51を同期駆動し、印刷用紙21の搬送速度を同一とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ガイド上を搬送されている記録媒体に対して、記録ヘッドより水性インクをインクジェット方式で噴射して印刷を行うインクジェット式印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記インクジェット式印刷装置には、基本的な問題がある。すなわち、印刷時に印刷用紙(記録媒体)の表面に水性インクを吹き付けることから、印刷直後から、急激な表裏の水分量の相違により印刷用紙が急激に丸まる巻き込み現象(以下、カール現象と呼称する。)が発生し、あるいは水性インクの水分により印刷用紙の紙面全体が皺状に波打つ現象(以下、コックリング現象と呼称する。)が発生して、印刷用紙が平坦でなくなるという問題である。そして、このように印刷直後から印刷用紙が平坦でなくなると、印字されたインクが印刷装置内で擦れてとれてしまい印字障害(白ぬけ)が発生し、印刷画像が乱れるという問題が発生し、また印刷用紙をきちんと積み重ねておくことができなくなるという問題が発生する。
【0003】
そこで、特許文献1には、搬送ローラによりインクジェットヘッドの下方へ印刷用紙を搬送して印刷し、この印刷が終了した印刷用紙を、静電気力で搬送ベルトに吸着して平坦とし搬送する技術が提案されている。
【0004】
また特許文献2には、インクジェットヘッドの下方へ印刷用紙を搬送する搬送ベルトに、多数の孔(ベルト孔)を設け、インクジェットヘッドの下方に、印刷用紙を吸引するプラテンファンを配置し、インクジェットヘッドの上方に、クリーンエアを装置内に取り込む吸引ファンを配置し、これらプラテンファンと吸引ファンの風量を制御することにより、プラテンに印刷用紙を密着させ、印刷用紙を平坦とする技術が提案されている。また特許文献2には、プラテンファンと吸引ファンによって発生するエアーの流れにより、インクジェットヘッドより印刷用紙に噴射されるインクの印刷用紙表面への到達位置(以下、着弾位置と呼称する。)がずれて画像が不鮮明となる恐れがあるが、プラテンファンと吸引ファンの風量を制御し、印刷用紙をプラテンに吸着するために必要なインクジェットヘッドの上方と下方の差圧を必要最小限になるように調整することにより、着弾位置のずれが解消されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−254355号公報
【特許文献2】特開2007−076175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、インクジェットヘッド上流側の搬送ローラとインクジェットヘッド下流側の搬送ベルトによる印刷用紙の搬送速度にずれが生じると、印刷用紙の引っ張りあいが生じ、インクジェットヘッドより印刷用紙に噴射されるインクの着弾位置が微妙にずれ、印刷画像の乱れを生じる恐れがあった。
【0007】
また特許文献2の構成では、インクジェットヘッドの下方に搬送ベルトおよびファンを配置しているために、インクジェットヘッドのキャップを、このヘッドに接近させる昇降装置の配置が困難であるという問題があった。このキャップの昇降装置は、インクジェットヘッドのフラッシング動作とキャッピング動作とワイピング動作のときに使用される。フラッシング動作とは、インクジェットヘッドの性能を維持・回復するため、印刷の直前や印刷の合間を見計らって、キャップをヘッドに接近させ、印刷とは関係しない一定量のインクをキャップへ吐出しヘッドのノズル詰まりを防止するためのインクの空打ち動作、キャッピング動作とは、インクジェットヘッドのノズルの乾燥を防止するためにキャップをヘッド(ノズル)に接近させ被せる動作、ワイピング動作とは、キャップをヘッドに接近させ、ノズルの先端に付着したインクを払拭する動作である。
【0008】
また特許文献2の構成では、プラテンファンと吸引ファンの風量を制御して、インクジェットヘッドより印刷用紙に噴射されるインクの着弾位置がずれる恐れを解消しているが、このような制御をするためには構成が複雑になり、また噴射されるインクは、数ピコリットルであり、エアーの流れに影響を受けやすいので、微妙な調整が必要になるという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、記録ヘッドから噴射されるインクの着弾位置に影響を与えることなく、印刷された記録媒体を平坦として排紙でき、印刷画像の乱れを解消でき、きちんと積み重ねることができる構成が簡単なインクジェット式印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のインクジェット式印刷装置は、搬送ローラにより搬送ガイド上を搬送されている記録媒体に対して、記録ヘッドより水性インクをインクジェット方式で噴射して印刷を行うインクジェット式印刷装置であって、前記インクジェット方式により印刷が終了した記録媒体を搬送する搬送ベルト装置を備え、前記搬送ベルト装置の上流部に、前記搬送ベルト装置により搬送されている記録媒体の表面を点接触で押さえる点接触ローラを配置し、前記搬送ベルト装置の下流部に、前記搬送ベルト装置により搬送されている記録媒体を下方へ吸引する吸引装置を配置し、前記搬送ローラと前記搬送ベルト装置を同期駆動し、前記搬送ローラと前記搬送ベルト装置による前記記録媒体の搬送速度を同一としたことを特徴とする。
【0011】
また本発明のインクジェット式印刷装置において、前記ファン装置による前記記録媒体の吸引を遮断する遮断装置を備え、前記ファン装置の直前に、前記搬送ベルト装置により搬送されている記録媒体を検出する上流側検出手段を配置し、前記上流側検出手段により前記記録媒体が検出されているとき、前記ファン装置による吸引を実行し、前記上流側検出手段により前記記録媒体が検出されていないとき、前記遮断装置によりファン装置による吸引を遮断することを特徴とする。
【0012】
また本発明のインクジェット式印刷装置において、前記ファン装置による前記記録媒体の吸引を遮断する遮断装置を備え、前記ファン装置の直前に、前記搬送ベルト装置により搬送されている記録媒体を検出する上流側検出手段を配置し、前記ファン装置の直後に、前記搬送ベルト装置により搬送されている記録媒体を検出する下流側検出手段を配置し、前記上流側検出手段および前記下流側検出手段により前記記録媒体が検出されているとき、前記ファン装置による吸引を実行し、前記上流側検出手段または前記下流側検出手段により前記記録媒体が検出されていないとき、前記遮断装置により前記ファン装置による吸引を遮断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、印刷された記録媒体が搬送ベルト装置により搬送されるとき、まず記録媒体の表面が、搬送ベルト装置の上流部に配置された点接触ローラにより点接触で押えられ、続いて搬送ベルト装置の下流部に配置された吸引装置により下方へ吸引され、記録媒体はベルトに押し付けられることによって、カール現象あるいはコックリング現象により丸まる、あるいは波打とうとする記録媒体を平坦にでき、よって印刷画像の乱れを解消でき、排出された記録媒体をきちんと積み重ねることができる。
【0014】
また吸引装置の上流側に点接触ローラを配置して、インクジェットヘッドとの間に距離を設けたことにより、吸引装置により発生するエアーの流れが、インクジェットヘッドより噴射されるインクの流れに影響してインクの着弾位置がずれる恐れを解消でき、よって印刷画像の乱れを解消でき、また点接触ローラの採用により、記録媒体の搬送力を確保できるとともに、印刷直後のインクで濡れている記録媒体の表面(印刷面)を、出来るだけ触ることがないように(汚すことがないように)押さえることができる。
【0015】
また搬送ローラと搬送ベルト装置の搬送速度が同一にされることより、搬送ローラと搬送ベルト装置との間での記録媒体の引っ張り合いを解消でき、この引っ張り合いにより生じるインクの着弾位置の微妙なずれ、印字の抜けを解消でき、印刷画像の乱れを解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態におけるインクジェット式印刷装置の画像形成部および排紙部の側面図である。
【図2】同インクジェット式印刷装置の画像形成部および排紙部の平面図である。
【図3】同インクジェット式印刷装置の排紙部の搬送ベルト装置の要部斜視図である。
【図4】同インクジェット式印刷装置の排紙部のシャッター装置の平面図であり、(a)は遮蔽板が閉じた状態、(b)は遮蔽板が開いた状態を示す。
【図5】同インクジェット式印刷装置の全体構成を示す模式図である。
【図6】本発明の他の実施の形態におけるインクジェット式印刷装置の画像形成部および排紙部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図5に示すように、インクジェット式印刷装置11は、給紙機構部12、用紙搬送機構部13、画像形成部(印刷装置本体部)14、排紙部(排紙装置部)15、紙受け機構部16から構成されている。
【0018】
給紙機構部12は、記録媒体である印刷用紙21を積載する給紙台22と、給紙台22から印刷用紙21を1枚ずつ繰り出すための給紙ローラ23および捌き台24を備え、用紙搬送機構部13は、給紙機構部12より繰り出された印刷用紙21を画像形成部14へ供給する上下で対をなす搬送ローラ25を備えており、印刷用紙21を1枚ずつ画像形成部14へ供給する。そして、画像形成部14において印刷された印刷用紙21は、排紙部15により排出され、紙受け機構部16に重ねられる。
【0019】
画像形成部14と排紙部15について詳細に説明する。
[画像形成部14]
図1および図2に示すように、画像形成部14は、水性インクをインクジェット方式で印刷用紙21の紙面に噴射して印刷を行う印刷部であり、印刷用紙21の搬送面30を形成し、搬送面30上の印刷用紙21を下方から支持する搬送ガイド31と、搬送面30上の印刷用紙21を搬送方向Aに搬送(移動)する搬送ローラ32と、搬送面30の上方に配置された複数のライン型記録ヘッド33と、規制部材34と、用紙導入部材35を備えている。前記搬送面30は、低摩擦部材(あるいは低摩擦剤をコーティングしたもの)で構成される。
【0020】
「ライン型記録ヘッド33」
前記ライン型記録ヘッド33は、搬送方向Aと直交する方向に所定幅の画像形成範囲を有しており、模式的にかつ透過的に示すように、ライン状に形成した複数のインク吐出部33aを搬送方向Aに沿って複数段に配置したものであり、一つのインク吐出部33aにおいて複数色を吐出するタイプであっても良く、一つのインク吐出部33aにおいて単色を吐出し、インク吐出部33a毎に異なる色を吐出するタイプであっても良く、その構造は公知のものであるので説明を省略する。また図5に示すように、各ライン型記録ヘッド33に対向して、その下方にそれぞれキャップ手段36が配置されており、キャップ手段36は、各ライン型記録ヘッド33にそれぞれ対応したキャップ37と、吸引用ポンプ38と、廃液タンク39を有している。前記キャップ37は、昇降装置(図示せず)により垂直に昇降可能に構成され、キャップ37が昇降してライン型記録ヘッド33に接近できるように開口部30aが、各ライン型記録ヘッド33に対応して搬送ガイド31(搬送面30)に設けられ、昇降装置を使用する、上記フラッシング動作とキャッピング動作とワイピング動作を可能としている。
【0021】
また複数のライン型記録ヘッド33は、千鳥状に配列してあり、搬送方向Aと直交する方向に所定間隔で並列配置した複数のライン型記録ヘッド33で記録ヘッド列を形成し、記録ヘッド列を搬送方向Aに沿って多段に配置している。
【0022】
このため、搬送方向Aと直交する方向においては、全てのライン型記録ヘッド33の画像形成範囲が重なることはなく、複数のライン型記録ヘッド33を並列に配置して実質的に記録領域の幅を広げた画像形成装置をなしている。本実施の形態では、2つの記録ヘッド列を搬送方向Aの前後に配置しているが、記録ヘッド列の数は本実施の形態に例示する構成に限るものではない。以下において、ライン型記録ヘッド33は、前段の記録ヘッド列に配列したものを第1のライン型記録ヘッド33Aとし、後段の記録ヘッド列に配列したものを第2のライン型記録ヘッド33Bとして説明する。
【0023】
「搬送ローラ32」
搬送ローラ32は、前段の第1のライン型記録ヘッド33Aの上流側にそれぞれ配置された第1の搬送ローラ41と、後段の第2のライン型記録ヘッド33Bの上流側にそれぞれ配置された第2の搬送ローラ42から構成されている。各搬送ローラ41,42はそれぞれ上下に対をなす上側搬送ローラ(従動ローラ)41a,42aと下側搬送ローラ(駆動ローラ)41b,42bとから構成され、搬送ガイド31には、各下側搬送ローラ41b,42bの配置位置に対応して開口部31aが形成され、各下側搬送ローラ41b,42bが開口部31aを介して搬送面30から上方へ所定距離(例えば0.8mm)だけ突出しており、搬送ガイド31上の印刷用紙21を、上側搬送ローラ41a,42aとピンチして搬送できるように構成されている。
【0024】
また第1および第2の搬送ローラ41,42は、下側搬送ローラ41b、42bの駆動軸(回転軸)41c,42cが上側搬送ローラ41a,42aの従動軸(回転軸)41d,42dよりも搬送方向Aにおいて上流側に位置されており、これにより、搬送ローラ41,42を通過する際に、印刷用紙21は搬送面30に向けて斜め下方に送り出される。なお、搬送方向Aにおける搬送ローラ32の数は本実施の形態に例示する構成に限るものではない。
【0025】
「規制部材34」
搬送ガイド31の上方には、搬送方向Aとは直角な方向に、複数の規制部材34が搬送面30と対向して、かつ搬送面30との間に所定間隙(例えば2mm)を介して配置されている。これら規制部材34は、第1のライン型記録ヘッド33Aよりも搬送方向Aの上流側へ第1の搬送ローラ41まで延在し、搬送方向Aで第2のライン型記録ヘッド33Bの上流側直近まで延在している。
【0026】
規制部材34は導電性材料からなり、印刷用紙21に帯電した静電気を除去して用紙の張付きを防止し、印刷用紙21と前段の第1のライン型記録ヘッド33Aとの接触を規制するものであり、規制部材34の下面が第1のライン型記録ヘッド33Aおよび第2のライン型記録ヘッド33Bの下面よりも所定距離(例えば0.5mm)だけ下方に突出している。
【0027】
また規制部材34は、後段の第2のライン型記録ヘッド33Bの上流側において、前段の第1のライン型記録ヘッド33Aの画像形成範囲外、つまり隣接し合う第1のライン型記録ヘッド33Aの間に位置している。
【0028】
「用紙導入部材35」
前段の第1のライン型記録ヘッド33Aの上流側には、用紙導入部材35が搬送面30と対向して、かつ搬送面30との間に所定間隙(例えば2mm)を介して配置されている。これら用紙導入部材35は、第1のライン型記録ヘッド33Aの上流側に第1の搬送ローラ41まで延在している。
【0029】
また用紙導入部材35は搬送方向Aと直交する方向に少なくとも第1のライン型記録ヘッド33Aと同等の所定幅を有しており、規制部材34と規制部材34の間に配置している。
【0030】
また、上記規制部材34および用紙導入部材35は搬送方向Aの上流側端面の角部が面取りした形状をなし、搬送面30との間が広く開いており、印刷用紙21のエッジを逃がす構造をなしている。
[排紙部15]
排紙部15は、後段の第2のライン型記録ヘッド33Bの直ぐ下流側で搬送面30上を搬送された印刷用紙21を搬送面30と同じ高さで、かつ同じ搬送方向Aに搬送する搬送ベルト装置51を備え、搬送ベルト装置51の上流部に、搬送ベルト装置51により搬送されている印刷用紙21の表面を点接触で押さえる3列の点接触ローラ52を配置し、搬送ベルト装置51の下流部に、搬送ベルト装置51により搬送されている印刷用紙21を下方へ吸引するファン装置(吸引装置の一例)53を配置している。
【0031】
またファン装置53の上方に、ファン装置53による印刷用紙21の吸引を遮断するシャッター装置(遮断装置の一例)54を備え、ファン装置53の上流側直前に、搬送ベルト装置51により搬送されている印刷用紙21を検出する上流側光電スイッチ(上流側検出手段の一例)55を配置し、ファン装置53の下流側直後に、搬送ベルト装置51により搬送されている印刷用紙21を検出する下流側光電スイッチ(下流側検出手段の一例)56を配置している。
【0032】
前記搬送ベルト装置51は、駆動ローラ61と、従動ローラ62と、これらローラ61,62間に巻かれ、印刷用紙21を搬送する複数本の無端状ベルト63とから構成されている。前記無端状ベルト63は、搬送方向Aとは直角な方向に、間隔をおいて配列されており、無端状ベルト63の上面と搬送面30のレベルを一致させるために、図3に示すように、各ローラ61,62にはベルト63の厚さだけ凹部61A,62Aが設けられ、凹部61A,62A間に無端状ベルト63が巻かれている。また無端状ベルト63は、搬送方向Aとは直角な方向に、間隔をおいて配列されている。前記ファン装置53は、上下の無端状ベルト63間に配置され、前記間隔から印刷用紙21を吸引し、また上記光電スイッチ55,56は、前記間隔の上方と下方に対向して配置された投光器と受光器により構成され、透過光量の変化により印刷用紙21を検出する。
【0033】
また各点接触ローラ52は、回転自在に支持された回転軸52aに取り付けられており、各無端状ベルト63の上方に各列の3個の点接触ローラ52が配置されている。点接触ローラ52と無端状ベルト63により印刷用紙21をピンチして搬送するが、印刷用紙21と点接触することで、未だ印刷直後でインクが乾いていない印刷用紙21の表面(画像形成面)に対して最小限に接触する状態で印刷用紙21を搬送することを可能としている。
【0034】
またシャッター装置54は、図4に示すように、ファン装置53の上方を覆う2枚の遮蔽板65を平面的に配置し、これら遮蔽板65を搬送方向Aとは直角な方向に移動させてファン装置53の上方(吸引口)を開放または遮蔽する(開閉する)ことにより、ファン装置53による印刷用紙21の吸引を可能または遮断する構成とされている。このシャッター装置54のコントローラ(図示せず)は、上流側光電スイッチ55と下流側光電スイッチ56の印刷用紙21の検出信号を入力し、ともにON(印刷用紙21の検出でON)のとき遮蔽板65を開き、ファン装置53による印刷用紙21の吸引を可能としている。またコントローラは、少なくとも一方がOFFのとき、シャッター装置54は遮蔽板65を閉じ、ファン装置53による印刷用紙21の吸引が出来ないようにしている。このように上流側光電スイッチ55および下流側光電スイッチ56により印刷用紙21を検出されているとき、遮蔽板65が開かれてファン装置53による吸引が実行され、上流側光電スイッチ55または下流側光電スイッチ56により印刷用紙21が検出されていないとき、遮蔽板65が閉じられてファン装置53による吸引が遮断される。
【0035】
また図1に示すように、第1および第2の搬送ローラ41,42の下側搬送ローラ(駆動ローラ)41b,42bの駆動軸41c,42cと、搬送ベルト装置51の駆動ローラ61の駆動軸(回転軸)61aにはそれぞれプーリー71が取り付けられており、これらプーリー71とテンションを維持する2個の補助プーリー72と駆動プーリー73間に渡って駆動ベルト74が巻かれており、駆動プーリー73に駆動モータ75の回転軸が連結されている。この構成により、駆動モータ75の駆動により駆動プーリー73、駆動ベルト74、補助プーリー72を介して3個のプーリー71が同期して回転駆動され、各搬送ローラ41,42の下側搬送ローラ(駆動ローラ)41b,42bと搬送ベルト装置51の駆動ローラ61が同期駆動され、印刷用紙21は、各搬送ローラ41,42と搬送ベルト装置51により同じ搬送速度で搬送される。
[作用効果]
上記した構成により、本実施の形態では以下の作用効果を奏している。
【0036】
印刷用紙21の搬送方向Aに沿って多段に記録ヘッド列を配置し、各記録ヘッド列の第1のライン型記録ヘッド33Aおよび第2のライン型記録ヘッド33Bがそれぞれ所定幅の画像形成範囲において印刷用紙21に画像(印字)を形成することで、印刷用紙21の任意の位置に画像を形成することができる。
【0037】
つまり、前段の第1の搬送ローラ41の上側搬送ローラ41aと下側搬送ローラ41bにより印刷用紙21をピンチして浮き上がりを防止する状態で搬送方向Aに搬送し、印刷用紙21を第1のライン型記録ヘッド33Aと搬送面30との間に搬送して第1のライン型記録ヘッド33Aで印刷用紙21に画像を形成する。
【0038】
さらに、第1のライン型記録ヘッド33Aを通過した印刷用紙21を第2の搬送ローラ42の上側搬送ローラ42aと下側搬送ローラ42bによりピンチして浮き上がりを防止する状態で搬送方向Aに搬送し、印刷用紙21を第2のライン型記録ヘッド33Bと搬送面30との間に搬送して第2のライン型記録ヘッド33Bで印刷用紙21に画像を形成する。
【0039】
この際に、ライン型記録ヘッド33は搬送面30の上方に千鳥状に配列しているので、前段の第1のライン型記録ヘッド33Aの画像形成範囲と後段の第2のライン型記録ヘッド33Bの画像形成範囲が重ならず、後段の第2の搬送ローラ42を前段の第1のライン型記録ヘッド33Aの画像形成範囲外に配置することが可能になる。
【0040】
よって、後段の第2の搬送ローラ42は前段の第1のライン型記録ヘッド33Aにより画像形成した画像形成済領域に触れることなく印刷用紙21に当接し、印刷用紙21が搬送面30の上から浮き上がることを防止できる。
【0041】
さらに、後段の第2の搬送ローラ42を前段の記録ヘッド列と後段の記録ヘッド列との間に配置することで、前段の第1の搬送ローラ41と後段の第2の搬送ローラ42とが前段の第1のライン型記録ヘッド33Aを隔てた搬送方向Aの前後位置で印刷用紙21の浮き上がりを防止する。
【0042】
したがって、印刷用紙21と第1および第2のライン型記録ヘッド33A,33Bとの間隔である紙間を狭く設定しても印刷用紙21が第1および第2のライン型記録ヘッド33A,33Bに当接することがなく、鮮明な印字結果を得ることができる。
【0043】
次に、第1および第2の搬送ローラ41,42において、下側搬送ローラ41b,42bの駆動軸41c,42cが上側搬送ローラ41a,42aの従動軸41d,42dよりも搬送方向Aにおいて上流側に位置することで、第1および第2の搬送ローラ41,42を通過する際に、印刷用紙21は搬送面30に向けて斜め下方に送り出される。つまり、印刷用紙21は下方へ向けてカールするように矯正される。
【0044】
よって、印刷用紙21は、第1および第2のライン型記録ヘッド33A,33Bから離間する方向に付勢されながら、第1および第2のライン型記録ヘッド33A,33Bと搬送面30との間を通過する。また、印刷用紙21が前段の第1のライン型記録ヘッド33Aを通過する際に、搬送方向Aに沿って規制部材34が印刷用紙21の浮き上がりを防止する。搬送ローラ41,42が印刷用紙21を下方へ向けてカールするように矯正することで、搬送方向Aにおいて第2のライン型記録ヘッド33Bに沿った領域には、印刷用紙21の浮き上がりを防止する規制部材を配置する必要がない。
【0045】
したがって、印刷用紙21と第1および第2のライン型記録ヘッド33A,33Bとの間隔である紙間を狭く設定しても印刷用紙21が第1および第2のライン型記録ヘッド33A,33Bに当接することがなく、インク汚れが発生せず、鮮明な印字結果を得ることができる。
【0046】
また、用紙導入部材35が、印刷用紙21を前段の第1のライン型記録ヘッド33Aと搬送面30との間に導入する際のジャムの発生を抑制する。
第2のライン型記録ヘッド33Bで画像が形成された印刷用紙21は、すなわち画像形成部14から搬出された印刷用紙21は、搬送ベルト装置51により搬送されて、すなわち排紙部15により排出されて、紙受け機構部16に重ねられる。搬送ベルト装置51では、上流側の点接触ローラ52により印刷用紙21の表面(印刷面)が、点接触で押さえれ、搬送力が確保され、印刷終了直後の印刷用紙21の表面に対して最小限に接触する状態で印刷用紙21が搬送され、続いて、上流側光電スイッチ55と下流側光電スイッチ56がともに印刷用紙21を検出しているときのみシャッター装置54の遮蔽板65が開かれ、ファン装置53により印刷用紙21が吸引されて無端状ベルト63に押し付けられて、上記カール現象とコックリング現象により丸まろう、波打とうとする印刷用紙21が平坦とされて搬送される。
【0047】
以上のように本実施の形態によれば、印刷された印刷用紙21が搬送ベルト装置51により搬送されるとき、まず、印刷用紙21の表面が、搬送ベルト装置51の上流部に配置された点接触ローラ52により点接触で押さえれ、続いて搬送ベルト装置51の下流部に配置されたファン装置53により下方へ吸引されることによって、上記カール現象とコックリング現象により丸まろう、波打とうとする印刷用紙21を平坦にでき、よって印刷画像の乱れを解消でき、排出された印刷用紙21をきちんと積み重ねることができる。なお、ファン装置53は、印刷された印刷用紙21が搬出された直後に配置したほうが、効果的にカール現象およびコックリング現象が解消されるが、ファン装置により発生するエアーの流れが、ライン型記録ヘッド33より噴射されるインクの流れに影響してインクの着弾位置がずれる恐れがあるために、搬送ベルト装置51の上流側にファン装置53までの距離を置き、この距離の中に、点接触ローラ52を配置し、搬送力を確保するとともに、印刷直後のインクで濡れている表面を、極力汚すことがないように押さえ、搬出直後のカール現象およびコックリング現象を解消する。また第1および第2の搬送ローラ41,42と搬送ベルト装置51による印刷用紙21の搬送速度が同一にされることより、搬送ローラ41,42と搬送ベルト装置51との間での印刷用紙21の引っ張り合いを解消でき、よって、この引っ張り合いにより生じるインクの着弾位置の微妙なずれを解消でき、印刷画像の乱れを解消することができる。このように、ライン型記録ヘッド33から吹き付けられるインクに影響を与えることなく、印刷用紙21は点接触ローラ52およびファン装置53により無端状ベルト63上に固定されながら、第1および第2の搬送ローラ41,42と同じ搬送速度で搬送され、印刷用紙21の搬送に起因する画像乱れを防止できる。
【0048】
また本実施の形態によれば、ファン装置53上に印刷用紙21が搬送されると印刷用紙21が吸引され、印刷用紙21が搬送されてしまうとシャッター装置54により吸引が遮断されることによって、ファン装置53によるエアーの乱れがライン型記録ヘッド33から吹き付けられるインクに与える影響を軽減することができる。
【0049】
なお、本実施の形態によれば、シャッター装置54は、上流側光電スイッチ55と下流側光電スイッチ56がともに印刷用紙21を検出しているときのみ遮蔽板65を開き、ファン装置53による印刷用紙21の吸引を可能とし、上流側光電スイッチ55と下流側光電スイッチ56の一方また両方とも印刷用紙21を検出していないとき、シャッター装置54は遮蔽板65を閉じ、ファン装置53による印刷用紙21の吸引が出来ないようにして構成しているが、シャッター装置54は、上流側光電スイッチ55が印刷用紙21を検出しているときに遮蔽板65を開き、ファン装置53による印刷用紙21の吸引を可能とし、上流側光電スイッチ55が印刷用紙21を検出していないときに遮蔽板65を閉じてファン装置53による印刷用紙21の吸引が出来ないようにしてもよい。これにより、印刷用紙21が上流側光電スイッチ55の下方を通過しているとき、すなわち一部でもファン装置53上方にかかっているとき、ファン装置53により吸引され、平坦にされる。
【0050】
また本実施の形態によれば、搬送ベルト装置51の駆動ローラ61は、点接触ローラ52と印刷用紙21をピンチする搬送ローラを兼ねているが、図6に示すように、別途、点接触ローラ52とともに印刷用紙21をピンチする下側搬送ローラ68を設け、この下流に搬送ベルト装置51を設けるようにしてもよい。このとき、下側搬送ローラ68の回転軸68aには、2個のプーリー77を設け、一方のプーリー77を前記駆動ベルト74に掛け、他方のプーリー77と搬送ベルト装置51の駆動ローラ61のプーリー71との間に第2の駆動ベルト78を掛けて同期駆動するように構成する。
【0051】
また本実施の形態によれば、シャッター装置54は、遮蔽板65を平面的に移動させることにより、ファン装置53の上方を開閉する構成としているが、このような構成に限ることはなく、例えば、平面的に細長い遮蔽板を並べ、これら遮蔽板の姿勢を水平と垂直に変えることにより開閉する構成としてもよい。
【0052】
また本実施の形態によれば、プーリー71と駆動ベルト74を使用して、搬送ローラ41,42と搬送ベルト装置51を同期駆動して、印刷用紙21を同じ搬送速度で搬送しているが、このようなプーリー71と駆動ベルト74に限ることなく、搬送ローラ41,42と搬送ベルト装置51を同期駆動することも可能である。例えば、ラックとピニオンの組み合わせ、歯車とチェーンの組み合わせなどにより可能である。
【0053】
また本実施の形態によれば、ファン装置53は、上下の無端状ベルト63間に配置されているが、必ずしも、このように無端状ベルト63間に配置する必要はなく、前記間隔から印刷用紙21を吸引できる位置に配置すればよい。また吸引口のみを無端状ベルト63間に配置し、ファン装置53を別の位置に配置し、吸引口とダクトで接続する構成としてもよい。またファン装置53を1台のみ設置しているが、1台に限ることはなく、複数台であってもよい。
【0054】
また本実施の形態によれば、無端状ベルト63を所定の間隔を置いて配置し、前記間隔から印刷用紙21を吸引しているが、無端状ベルト63を孔開きベルトとし、この孔から印刷用紙21を吸引するようにしてもよい。
【0055】
また本実施の形態によれば、印刷用紙21を検出する上流側検出手段と下流側検出手段を光電スイッチ55,56により構成しているが、このような光電スイッチに限ることはなく、例えば、上方にカメラを配置して上方から無端状ベルト63を撮影し、その撮像データの変化により印刷用紙21を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
11 インクジェット式印刷装置
12 給紙機構部
13 用紙搬送機構部
14 画像形成部
15 排紙部
16 紙受け機構部
21 印刷用紙
30 搬送面
31 搬送ガイド
32 搬送ローラ
33 ライン型記録ヘッド
34 規制部材
35 用紙導入部材
37 キャップ
41 第1の搬送ローラ
41c 駆動軸
42 第2の搬送ローラ
42c 駆動軸
51 搬送ベルト装置
52 点接触ローラ
53 ファン装置
54 シャッター装置
55 上流側光電スイッチ
56 下流側光電スイッチ
61 駆動ローラ
61a 回転軸
62 従動ローラ
63 無端状ベルト
65 遮蔽板
71 プーリー
73 駆動プーリー
74 駆動ベルト
75 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ローラにより搬送ガイド上を搬送されている記録媒体に対して、記録ヘッドより水性インクをインクジェット方式で噴射して印刷を行うインクジェット式印刷装置であって、
前記インクジェット方式により印刷が終了した記録媒体を搬送する搬送ベルト装置を備え、
前記搬送ベルト装置の上流部に、前記搬送ベルト装置により搬送されている記録媒体の表面を点接触で押さえる点接触ローラを配置し、
前記搬送ベルト装置の下流部に、前記搬送ベルト装置により搬送されている記録媒体を下方へ吸引する吸引装置を配置し、
前記搬送ローラと前記搬送ベルト装置を同期駆動し、前記搬送ローラと前記搬送ベルト装置による前記記録媒体の搬送速度を同一としたこと
を特徴とするインクジェット式印刷装置。
【請求項2】
前記ファン装置による前記記録媒体の吸引を遮断する遮断装置を備え、
前記ファン装置の直前に、前記搬送ベルト装置により搬送されている記録媒体を検出する上流側検出手段を配置し、
前記上流側検出手段により前記記録媒体が検出されているとき、前記ファン装置による吸引を実行し、前記上流側検出手段により前記記録媒体が検出されていないとき、前記遮断装置によりファン装置による吸引を遮断すること
を特徴とする請求項1に記載のインクジェット式印刷装置。
【請求項3】
前記ファン装置による前記記録媒体の吸引を遮断する遮断装置を備え、
前記ファン装置の直前に、前記搬送ベルト装置により搬送されている記録媒体を検出する上流側検出手段を配置し、
前記ファン装置の直後に、前記搬送ベルト装置により搬送されている記録媒体を検出する下流側検出手段を配置し、
前記上流側検出手段および前記下流側検出手段により前記記録媒体が検出されているとき、前記ファン装置による吸引を実行し、前記上流側検出手段または前記下流側検出手段により前記記録媒体が検出されていないとき、前記遮断装置により前記ファン装置による吸引を遮断すること
を特徴とする請求項1に記載のインクジェット式印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−208244(P2010−208244A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58827(P2009−58827)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】