説明

インクジェット式記録装置

【課題】記録ヘッドと排出弁手段とを精度よく配置する。
【解決手段】ヘッドホルダ9は、底壁部9cとその底壁部9cの周囲に立ち上がった側壁部9dとを有する。この側壁部9dの一部を構成するように、排出通路51〜54を内部に有する排出筐体45a〜45dがヘッドホルダ9に一体に設けられる。底壁部9cに記録ヘッド30が固定される。ヘッドホルダ9に搭載されるインクタンク40の上部に、インク貯留室の上部空間に連通する排出通路95〜98が設けられ、この排出通路95〜98の下流端が、筐体45a〜45dの上端開口に接続したする導入部材42a〜42dに接続具44a〜44dを介して接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式記録装置において、記録ヘッドを保持する箱形状のヘッドホルダに、インク貯留室を有するインクタンクが搭載されものは知られている(例えば、特許文献1参照)。そのインク貯留室は記録ヘッドのインク流入口部と接続されている。インク貯留室内のインクから分離したエアを外部に排出する排出通路は開閉可能な弁体を介して外部に開口されている。
【0003】
そのようなインクジェット式記録装置においては、通常、記録ヘッドが記録媒体と対向しない待機位置において、記録ヘッドのノズルからインクを吸引等する回復機構部と、上記弁体を開閉操作する操作部材とが隣接して配置されている。そして、記録ヘッドが回復機構部と対向した状態で、操作部材により弁体の開閉も行われる。よって、記録ヘッドと弁体とは精度よく配置されている必要がある。
【特許文献1】特開2005−271552号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のものでは、排出通路、弁体を内部に備える排出筐体はインクタンクと一体に設けられ、それらが、記録ヘッドを保持するヘッドホルダに取り付けられるようになっている。そのため排出筐体は、インクタンクが取り付けられるヘッドホルダや記録ヘッドなどの複数の部品を介して取付位置が決定されることになるので、部品公差のバラツキが重畳され、記録ヘッドに対し精度よく配置することが困難である。
【0005】
本発明は、排出筐体をヘッドホルダに一体に設けることにより、記録ヘッドと排出筐体とを精度よく配置できるインクジェット式記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、記録ヘッドを保持する箱形状のヘッドホルダに、インク貯留室を有するインクタンクが搭載され、前記インク貯留室が、そのインク貯留室からインクを導き出すインク導出路を介して前記記録ヘッドのインク流入口部と接続され、前記インク貯留室内のインクもしくはそのインクから分離したエアを排出する排出通路が開閉可能な弁体を介して外部に開口され、前記弁体が、前記ヘッドホルダ外に設けた操作部材により開閉操作されるインクジェット式記録装置において、前記ヘッドホルダは、底壁部とその底壁部の周囲に立ち上がった側壁部とを有し、前記記録ヘッドは前記底壁部に固定され、前記インクタンクは、前記底壁部又はその底壁部に固定された前記記録ヘッドに固定され、前記排出通路の少なくとも一部を内部に有する排出筐体は、前記側壁部の一部を構成するように前記ヘッドホルダに一体に設けられていることを特徴とする。
【0007】
このようにすれば、排出通路の少なくとも一部を内部に有する排出筐体は、ヘッドホルダの側壁部の一部を構成するように前記ヘッドホルダに一体に設けられているので、記録ヘッドと排出筐体との位置関係が、前記ヘッドホルダへの前記記録ヘッドの固定精度に依存するだけとなり、簡単な構成でもって、前記記録ヘッドと排出筐体とが精度よく配置される。よって、操作部材と弁体との位置関係も精度よくすることができる。
【0008】
請求項2に記載のように、請求項1のインクジェット式記録装置において、前記排出筐体を構成する側壁部の一部は、前記開閉操作方向と平行に延びるとともに前記排出筐体はその上端が開口する構成とされ、前記開口には、前記インク貯留室の上部に連通する導入部材が接続されるとともにその導入部材にて前記弁体が前記排出筐体の内部に保持されている構成とすることも可能である。
【0009】
このようにすれば、インク貯留室の上部に連通する導入部材を通じて、インクもしくはそのインクから分離しインク貯留室に溜まっているエアを排出することができる。弁体を排出筐体内部に保持することができる。また、排出筐体を構成する側壁部の一部は、操作部材の開閉操作方向と平行に延びているので、弁体を開閉操作するための操作力が小さくてよくなる。
【0010】
請求項3に記載のように、請求項2のインクジェット式記録装置において、前記排出通路が前記インクタンクの上部から前記排出筐体にわたって形成され、前記インクタンク側の排出通路の下流端部が、可撓性を有する接続部材を介して、前記導入部材に接続されている構成とすることができる。
【0011】
このようにすれば、前記インクタンク側の排出通路の下流端部が、可撓性を有する接続部材を介して、前記導入部材に無理なく接続される。
【0012】
請求項4に記載のように、請求項1〜3のいずれかのインクジェット式記録装置において、前記排出筐体は、前記側壁の一部を構成して筒状に形成され、その下端を下方に開口しており、前記弁体は、前記排出筐体の内部に移動可能に収納され、前記排出筐体の下端開口を通して前記操作部材により開閉操作される構成とすることができる。
【0013】
このようにすれば、排出筐体が、ヘッドホルダの側壁の一部として筒状に形成されることで、前記記録ヘッドと排出筐体とが精度よく配置される。よって、弁体は、排出筐体の下端開口を通して前記操作部材により精度よく開閉操作される。
【0014】
請求項5に記載のように、請求項1〜4のいずれかのインクジェット式記録装置において、前記ヘッドホルダは、記録媒体に沿って移動可能に設けられ、前記弁体の下端部は、前記記録ヘッドの側方近傍に位置し、前記記録ヘッドが前記記録媒体と対向する位置の外において、前記記録ヘッドと対向してその記録ヘッドのノズルから排出したインクを受ける回復機構部と、前記操作部材とが隣接して配置されている構成とすることができる。
【0015】
このようにすれば、弁体の下端部が、前記記録ヘッドの側方近傍に位置するので、前記記録ヘッドと対向してその記録ヘッドのノズルから排出したインクを受ける回復機構部と、前記操作部材とを隣接して配置することができ、コンパクト化が図れる。
【0016】
請求項6に記載のように、請求項1〜5のいずれかのインクジェット式記録装置において、前記インクタンクには、複数の前記インク貯留室が設けられ、前記各インク貯留室には、インクを種類別に収容するインク供給源から、各インクを種類別にインク供給チューブを介して供給され、前記各インク貯留室から前記記録ヘッドにインクを供給し、前記複数のインク貯留室及び前記記録ヘッドを記録媒体に対して走査しながらインクを吐出する構成とされ、前記排出通路は、前記各インク貯留室ごとに設けられている構成とすることができる。
【0017】
このようにすれば、インクタンクからインク供給チューブを介してインク貯留室、記録ヘッドにインクが供給されるタイプのものにおいて、請求項1〜5の発明が実現される。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記のように、排出通路の少なくとも一部を内部に有する排出筐体を、前記側壁部の一部を構成するように前記ヘッドホルダに一体に設けているので、記録ヘッドと排出筐体とを精度よく配置することができ、弁体を操作部材により確実に操作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0020】
図1は本発明に係るインクジェット式記録装置の主要構成を平面的に示す説明図である。
【0021】
図1に示すように、インクジェット式記録装置1は、その内部において、2本のガイド軸6,7が前後に平行に設けられ、そのガイド軸6,7に、キャリッジを兼用するヘッドホルダ9が取付けられている。ヘッドホルダ9には、記録媒体(図示せず)に対し、インクを吐出して記録を行う記録ヘッド30が保持されている。ヘッドホルダ9には、複数のインク貯留室91〜94を有するインクタンク40が搭載され、各インク貯留室から記録ヘッドにインクが供給される。ヘッドホルダ9は、回転駆動される無端ベルト11に連結され、このベルト11の回転駆動により、ガイド軸6,7上を記録媒体に沿って移動可能に設けられ、記録ヘッド30が記録媒体に対して走査しながら、記録ヘッド30のノズル35〜38(図2参照)からインクを吐出する構成とされている。なお、前記各インク貯留室には、ヘッドホルダ9外に設けられインクを種類別に収容するインク供給源すなわち複数のインクカートリッジから、各インクを種類別に可撓性のインク供給チューブを介して供給される。
【0022】
インクタンク40は、後述するように上側タンク部40Aと下側タンク部40Bとが接合されてなり、図5に示すように、両タンク部40A,4Bにまたがってイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクのインク貯留室91,92,93,94が形成されている。各インク貯留室91〜94の上部空間は、インクに含まれていたエアが分離されて一時的に蓄積される蓄積部として機能するようになっている。各インク貯留室91〜94の上端は、上側タンク部40Aの上面に、各インク貯留室ごとに凹溝として形成された排出通路95〜98の上流端にそれぞれ接続されている。各排出通路95〜98の下流端は、その排出通路ごとに設けた排出弁手段47の各筐体45a,45b,45c,45d内の各排出通路51〜54の上端にそれぞれ接続されている。なお、各排出通路95〜98は、それらの開放上面を可撓性のフィルム81(図5(a)参照)で覆うことで画定されている。
【0023】
ヘッドホルダ9は、図4および図5に示すように、底壁部9cとその底壁部9cの周囲に立ち上がった側壁部9dとを有する箱形状に形成され、上面が開口されている。記録ヘッド30は底壁部9cの下面に下方へ露出して固定されている。記録ヘッド30は、下面に多数のノズル35,36,37,38の列を記録ヘッド30の走査方向Xに並べて有するキャビティユニット32を有し、その上側に、前記ノズル内のインクに選択的に吐出圧力を付与する圧電アクチュエータ31を積層して有する。なお、圧電アクチュエータ31の上面には、圧電アクチュエータ31に駆動電圧を印加するフレキシブルフラットケーブル41の基端部分が固定されている。
【0024】
また、記録ヘッド30は、その上面に四角枠状の補強フレーム33を介在させて、ヘッドホルダ9の底壁部9cの下面との間に注入した接着剤(図示せず)により固定される。そして、インクタンク40の各インク貯留室91〜94の下端は、補強フレーム33に設けたインク通路孔33a〜33dを通じて、前記キャビティユニット32の上面に開口した各インク流入口部に接続されている。インクタンク40の各インク貯留室からノズル35〜38に列ごとにインクが供給される。なお、記録ヘッド30と補強フレーム33との間の下面側における段差を解消し記録ヘッド30を保護するために、記録ヘッド30の周囲に位置する保護カバー34が、補強フレーム33の下側に取り付けられている。
【0025】
ヘッドホルダ9内の底壁部9cの上には、インクタンク40が収容され、ヘッドホルダ9に固定されている。なお、インクタンク40は、ヘッドホルダ9に代えて、ヘッドホルダ9に固定された記録ヘッド30に固定することも可能である。
【0026】
各排出弁手段47は、排出通路51〜54を内部に有する筒状の排出筐体45a〜45dと、その内部に収納した弁体102とから構成されている。各筐体45a〜45dは、図4および図5に示すように、記録ヘッド30の走査方向Xと直交する方向に並んで相互に連続した形状に形成され、それぞれヘッドホルダ9の側壁部9dに沿って上下方向に延びている。この側壁部9dは、後述する排出弁手段47を開閉操作する操作部材としての突出軸部121の開閉操作方向と平行である。各筐体45a〜45dは、側壁部9dの一部を構成するようにヘッドホルダ9に一体に設けられている。この各筐体45a〜45dはその上端が開口し、下端部は、ヘッドホルダ9に保持される記録ヘッド30の側方近傍に位置し開口している。このように、排出弁手段47をヘッドホルダ9に側壁部9dの一部として一体に設けることにより、ヘッドホルダ9に保持される記録ヘッド30と排出弁手段47との位置関係を、ヘッドホルダ9への記録ヘッド30の固定精度に依存するだけとなる。よって、記録ヘッド30と排出弁手段47(筐体45a〜45d)とが精度よく配置される。
【0027】
各筐体45a〜45dの上端開口には、導入部材42a,42b,42c,42dが接続されている。この各導入部材42a〜42dは、それぞれ排出通路51〜54に連通する貫通孔を上下方向に貫通して有し、支持部材43に一体的に設けられている。支持部材43は、各導入部材42a〜42dの長手方向のほぼ中間位置を支持する支持部43aと、この支持部43aの両端に連接され側壁部9dに掛け止め等により取り付けるための取付部43b,43cとを備える。この支持部材43が側壁部9dに取り付けられることで、各筐体45a〜45d内の排出通路51〜54に、後述する弁体とコイルスプリングとを保持し、各導入部材42a〜42dの貫通孔を連通させるようになっている。 インクタンク40側の排出通路95〜98の下流端部は、ほぼ水平に向いた筒状の接続部95a〜98aとされる。この接続部95a〜98aが、可撓性を有する接続具44a,44b,44c,44dを介して、導入部材42a〜42dの上端部に接続されている。各接続具44a〜44dは、下端が導入部材42a〜42dの上端に嵌挿される筒状の鉛直部44aa〜44daと、この鉛直部44aa〜44daの上端に一端が連通され他端が接続部95a〜98aに接続される筒状の水平部44ab〜44dbとを有する。各接続具44a〜44dは一体化されて接続部材44となっている。
【0028】
よって、各筐体45a〜45d内の排出通路51〜54は、導入部材42a〜42d、接続部材44の接続具44a〜44d、インクタンク40側の排出通路95〜98を通じて、インク貯留室の上部空間に連通するようになっている。
【0029】
排出弁手段47は、通常、各筐体45a〜45d内の排出通路51〜54の外部への開放を遮断した状態にある。この排出弁手段47を駆動制御して適宜開放動作させることにより、インク貯留室91〜94内のインクもしくはその上部空間に蓄積されるエアを、排出通路95〜98および各筐体45a〜45d内の排出通路51〜54を通じて外部に排出することができる。
【0030】
各排出弁手段47の内部構成は、各排出通路51〜54のいずれも同様の構成であるので、以下、図5(a)(b)を参照して、イエローインクについてのみ説明する。
【0031】
筐体45d内の排出通路54は、上下方向に長くかつ上下に開口するもので、上端が排出通路98に連通する一方、下端が外部に排出孔54cとして開口し、弁体102dが摺動可能である弁室として機能する。排出通路54は、上側の大径孔部54aと、下側に位置する小径孔部54bとを有している。また、小径孔部54bの下側にそれに連通して、外部への開放部分として機能する排出孔54cもそれらと同軸状に有している。
【0032】
弁体102dは、大径の弁部102daと、その下端に一体に連接した小径のバルブロッド102dbと、弁部102aに接触する位置でバルブロッド102dbに嵌合されたリング状のシール材102dcとを備える。排出通路54の大径孔部54aには大径の弁部102daが、小径孔部54bにはバルブロッド102dbが、それぞれインクもしくはエアの流通を可能にする隙間を残して挿入されている。バルブロッド102daは、後述するように弁開放時に、メンテナンスユニット120に設けられた突出軸部121によって押し上げられるため、それの下端が(弁閉止状態で)排出孔54c近傍に位置するようになっている。
【0033】
また、弁体102dは、導入部材42dの下面部との間に設けたコイルスプリング103dによって、弁部102daをシール材102dcを介して大径部52aと小径部52bとの間の段状の弁座面に当接する方向に付勢されている。後述する突出軸部121による押し上げ力が弁体102dに作用しない通常時は、排出弁手段47は、排出通路54の外部への連通を遮断した弁閉止状態となる。
【0034】
記録ヘッド30の回復処理、及びインクタンク40内のインクもしくはエアの除去処理を行うメンテナンスユニット120について以下説明する。メンテナンスユニット120は、記録ヘッド30のノズル35〜38の開口面を開閉可能に覆う第1のキャップ部材122(回復機構部)と、各排出筐体45a〜45dの下端面(すなわち排出孔51c〜54c)を開閉可能に覆う第2のキャップ部材123とを隣接して備える。このメンテナンスユニット120は、記録媒体と記録ヘッド30が対向しない待機位置において、ヘッドホルダ9外のインクジェット式記録装置の本体に設けられている。
【0035】
第1のキャップ部材122は、記録ヘッド30と対向してその記録ヘッド30のノズル35〜38から排出したインクを受けるものである。第2のキャップ部材123は、排出弁手段47を開閉操作する操作部材としての突出軸部121を囲んで、各筐体45a〜45dの排出孔51c〜54cから排出したインクもしくはエアの排出とともに排出したインクを受けるものである。
【0036】
そして、前述したように排出筐体45がヘッドホルダ9に側壁部9dの一部として一体に設けられ、ヘッドホルダ9に保持される記録ヘッド30と排出弁手段47とが精度よく配置されるので、第1および第2のキャップ部材121,122と、記録ヘッド30および排出弁手段47との位置関係を精度よくすることができる。また、第2のキャップ部材123内の突出軸部121と排出通路54の小径孔部54bとの位置関係も精度よくすることができる。
【0037】
両キャップ部材122,123は、公知のメンテナンスユニットと同様の上下移動機構124により、上下移動可能に支持される。記録ヘッド30が、記録媒体と対向しない待機位置に移動したときに、記録ヘッド30のノズル開口面及び排出弁手段47の各筐体45a〜45dの下端面に密着する上昇位置にキャップ部材122,123がそれぞれ移動し、他の位置ではそれらの面から離隔するように下降位置に移動する。また、第1のキャップ部材122と第2のキャップ部材123は、切替弁126により択一的に吸引ポンプ125に接続される。
【0038】
第2のキャップ部材123は、そのキャップ部材123よりも突出した突出軸部121を各排出孔51c〜54cと対向する位置にそれぞれ有する。第2のキャップ部材123が各筐体45a〜45dの下端面に密着したとき、突出軸部121は、弁体102a〜102dをコイルスプリング103a〜103dの付勢力に抗して押し上げ、弁部102daをシール材102dcとともに弁座面から離す弁開放状態にする。
【0039】
記録が行われている通常時には、排出弁手段47は、上記のように弁閉止状態にあり、各インク貯留部12〜15から記録ヘッド30のノズル列にインク色毎にインクが供給され、各ノズル列から記録媒体に吐出される。一方、記録ヘッド30が待機位置に移動したときには、第2のキャップ部材123が排出筐体45の下端面に密着することで、バルブロッド102dbが突出軸部121(操作部材)によって上方に押し上げられ、弁開放状態となる。この状態で、第2のキャップ部材123と吸引ポンプ125を切替弁126により接続し、吸引ポンプ125を駆動することにより、各インク貯留室91〜94の上部空間内に蓄積したエアもしくは増粘インクを一括して吸引し外部に排出する。その後、切替弁126を切り替えて第1キャップ部材122と吸引ポンプ125を接続し、吸引ポンプ125を駆動することにより、記録ヘッド30のノズル35〜38内のインクを吸引して排出する。
【0040】
前述した実施の形態のほか、本発明は、次にように構成することも可能である。
【0041】
(i)前記実施の形態において、第2のキャップ部材123および吸引ポンプ125により各インク貯留室91〜94の上部空間に蓄積したエアを専ら排出するようにしたり(その場合インクも少量排出される)、あるいは、インク供給源からインクタンクへインクを供給するインク供給チューブやインクタンクの上部で増粘したインクを排出するようにすることも可能である、
(ii)図6に示すように、記録ヘッド30’インクを供給するにインクタンク40’の上部から、排出通路95’がヘッドホルダ9’と一体に形成された筐体45’の上部にわたって形成され、排出通路95’の、各筐体45’の上方部分に下方に突出する筒状の接続部95a’をそれぞれインク毎に設け、この接続部95a’をそれぞれゴムパッキン99を介して各筐体45’の上方開口に接続される構成とすることも可能である。インクタンク40’をヘッドホルダ9’にねじ100にてねじ止めすることで、ゴムパッキン99が圧縮され、接続部分のシール性が確保される。
【0042】
(iii)メンテナンスユニット120において、記録ヘッド30のノズル35〜38からのインク吸引および排出筐体を通じてのインクやエアの排出を連続して行うようにしてもよいし、第1および第2のキャップ122,123を別々の上下移動機構により昇降させて、ノズル35〜38からのインク吸引のみ、または排出筐体を通じてのエアやインクの排出のみを、それぞれ単独に行うようにしてもよい。
【0043】
(iv)吸引ポンプ125の吸引動作に代えて、インク供給源すなわちインクカートリッジ側から、インクに正圧を加えて、インク貯留室内を加圧し記録ヘッド30のノズル35〜38から増粘したインクや異物を排出したり、排出筐体を通じてインクやエアを排出したりすることもできる。あるいは、吸引動作とインクヘの正圧印加を併用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るインクジェット式記録装置の主要構成を平面的に示す説明図である。
【図2】インクタンクが搭載されたヘッドホルダの底面図である。
【図3】同平面図である。
【図4】前記インクタンクとヘッドホルダとの関係を示す分解斜視図である。
【図5】(a)は図3のA−A線における断面図、(b)は図5(a)のB部の拡大図である。
【図6】変形例の説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 インクジェット式記録装置
9 ヘッドホルダ
9c 底壁部
9d 側壁部
30 記録ヘッド
40 インクタンク
42a〜42d エア導入部材
44 接続部材
44a〜44d 接続具
45a〜45d 筐体
47 排出弁手段
51〜54 排出通路
51c〜54c 排出孔
91〜94 インク導出路
95〜98 排出通路
95a〜98a 接続部
120 メンテナンスユニット
121 突出軸部(操作部材)
122 第1のキャップ部材(回復機構部)
123 第2のキャップ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを保持する箱形状のヘッドホルダに、インク貯留室を有するインクタンクが搭載され、前記インク貯留室が前記記録ヘッドのインク流入口部と接続され、前記インク貯留室内のインクもしくはそのインクから分離したエアを排出する排出通路が開閉可能な弁体を介して外部に開口され、前記弁体が、前記ヘッドホルダ外に設けた操作部材により開閉操作されるインクジェット式記録装置において、
前記ヘッドホルダは、底壁部とその底壁部の周囲に立ち上がった側壁部とを有し、
前記記録ヘッドは前記底壁部に固定され、
前記インクタンクは、前記底壁部又はその底壁部に固定された前記記録ヘッドに固定され、
前記排出通路の少なくとも一部を内部に有する排出筐体は、前記側壁部の一部を構成するように前記ヘッドホルダに一体に設けられていることを特徴とするインクジェット式記録装置。
【請求項2】
前記排出筐体を構成する側壁部の一部は、前記開閉操作方向と平行に延びるとともに前記排出筐体はその上端が開口する構成とされ、 前記開口には、前記インク貯留室の上部に連通する導入部材が接続されるとともにその導入部材にて前記弁体が前記排出筐体の内部に保持されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェット式記録装置。
【請求項3】
前記排出通路が前記インクタンクの上部から前記排出筐体にわたって形成され、
前記インクタンク側の排出通路の下流端部が、可撓性を有する接続部材を介して、前記導入部材に接続されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項4】
前記排出筐体は、前記側壁の一部を構成して筒状に形成され、その下端を下方に開口しており、
前記弁体は、前記排出筐体の内部に移動可能に収納され、前記排出筐体の下端開口を通して前記操作部材により開閉操作されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
【請求項5】
前記ヘッドホルダは、記録媒体に沿って移動可能に設けられ、
前記弁体の下端部は、前記記録ヘッドの側方近傍に位置し、
前記記録ヘッドが前記記録媒体と対向する位置の外において、前記記録ヘッドと対向してその記録ヘッドのノズルから排出したインクを受ける回復機構部と、前記操作部材とが隣接して配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
【請求項6】
前記インクタンクには、複数の前記インク貯留室が設けられ、前記各インク貯留室には、インクを種類別に収容するインク供給源から、各インクを種類別にインク供給チューブを介して供給され、
前記各インク貯留室から前記記録ヘッドにインクを供給し、前記複数のインク貯留室及び前記記録ヘッドを記録媒体に対して走査しながらインクを吐出する構成とされ、
前記排出通路は、前記各インク貯留室ごとに設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−194919(P2008−194919A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31586(P2007−31586)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】