説明

インクジェット捺染方法、及び捺染された捺染物

【課題】目割れの無いシャープで鮮明な図柄・模様を表現することができる捺染用立毛布帛、その捺染方法、及び捺染された捺染物を提供すること。
【解決手段】立毛布帛Fをインクジェット捺染する方法であって、インクジェット捺染前に、前もって地組織を含む立毛部の一部分を着色処理Aするための予備的処理を行うインクジェット捺染方法。その着色処理は、立毛布帛Fの裏面から着色処理されたものである。本発明によって得られた立毛布帛Fを捺染すると、目割れのないシャープ且つ鮮明な図柄・模様を付与することができる。特に、折り曲げ加工部分に目割れが生じることがなく商品価値が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捺染に関し、更に詳しくは、インクジェット捺染方法及び捺染が行われた捺染物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、椅子張り地などの布帛には、風合いや高級志向の問題から立毛布帛が主として用いられている。
ところが、立毛布帛は表面が立毛されているため、該立毛部に空間が存在し染色性に問題点が多い。
従って、捺染を行うに際しても、立毛布帛以外の布帛のように十分鮮明な図柄を施すことはできない。
特に最近、盛んに行われているインクジェット印写法による捺染においても同様である。
【0003】
その最も大きな問題点として、捺染を行った際、立毛部の毛元(根元)から毛先方向にかけてのある範囲部分において、染料の浸透不良が生ずる点がある(図3参照)。
そして、前記部分に染料の染着不足が起きる結果、染色されない糸の地色(白色に近い)が肉眼に印象づけられ、いわゆる「目割れ」と言われる現象が発生する(図4参照)。
【0004】
特に、立毛布帛面に直接触れたり、又は曲げたりした時、立毛部の根元付近が大きく露出する結果、根元付近の染着不足の部分が白く目立つ現象である。
とりわけ、立毛部の毛足の長さ(立毛長ともいう)が0.8mm以上で且つ立毛密度が10000本/cm2 以上の立毛布帛においては、その「目割れ」現象が特に目立ってくる。
尚、この点は、発明者等も実験で確かめている。
そこで、この問題に関しても種々の検討がなされてきた。
【0005】
第1に採られた対策は、捺染を行なう際、立毛部に付与される捺染糊の浸透性を浸透剤の添加等により極力アップせしめ、捺染糊を立毛部の根元付近まで深く付与し捺染する方法である。
また、捺染の一種であるインクジェット捺染においては、立毛部に印写される染料インクの浸透性を向上せしめ該インクを立毛部の根元付近まで濃く印写する方法である。
【0006】
しかしこの方法では、比較的毛足の短く、且つ立毛密度の疎な特定の立毛布帛では比較的効果はあるのに対し、毛足が長く且つ立毛密度の高い立毛布帛では別の新しい問題が発生するのである。
つまり、立毛の根元まで確実に染着すべく浸透性をアップせしめると、付与された図柄・模様に強いニジミ、ボケ等の現象が発生しインクジェットの持ち味であるシャープで鮮明図柄・模様が得られなくなる。
そこで、全く新しい方法が検討された。
【0007】
即ち立毛布帛全体を浸染法により予め染色し、捺染時に、染料が付着する毛先に近い必要部分のみを抜色し捺染する抜染法である。
しかしこの方法では、目割れ問題は解消するが、新たな問題として毛先の抜色部分の白度が充分に得られなくなり、シャープで鮮明な色相の図柄・模様を付与することは出来ない。
特に図柄・模様に、鮮明で明るい色調を要求される場合は、これが大きなダメージとなってくるのである。
【0008】
加えるに、上述の抜染法により表現された図柄・模様の色相は、耐光堅牢度が極めて低く、耐久性を必要とする箇所に使用すると、製品として致命的欠点となる。
また、立毛布帛全体を浸染法により予め付与される図柄・模様よりも淡い色彩で染色し、その上に捺染する方法が試みられたが、根元付近が淡色であるため、やはり目割れが目立ち易かったり、色が重ねられるため、鮮明色が得られないなどの問題があった。
【0009】
以上に述べた以外の方法として、立毛布帛の地組織部を先染糸や原着糸を用いて編織することにより目割れを防止する方法が考えられた。
しかし、この方法でも立毛布帛の立毛部の毛元(根元)から毛先方向にかけてのある範囲部分において、やはり上述の如く染着が行われず、目割れ問題は依然として解消されない(図5参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平2−6118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は以上のような技術的な背景をもとになされたものである。
即ち、本発明の目的は、目割れの無いシャープで鮮明な図柄・模様を表現することができるインクジェット捺染方法、及び捺染された捺染物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らはこの様な技術的課題に対し鋭意研究を進めた結果、捺染されない部分である立毛部の毛元(根元)から毛先方向にかけてのある範囲部分を、予備的に前もって積極的に着色処理しておくことにより、目割れ現象が防止されることを見出し、この知見により本発明のインクジェット捺染方法、及び捺染された捺染物を完成させたものである。
【0013】
即ち、本発明は、(1)、立毛布帛をインクジェット捺染する方法であって、インクジェット捺染前に、前もって地組織を含む立毛部の一部分を着色処理する予備的処理を行い、目割れを解消するインクジェット捺染方法に存する。
【0014】
そして、(2)、立毛布帛をインクジェット捺染する方法であって、インクジェット捺染前に、前もって地組織を含む立毛部の一部分を、表面の図柄のポイント或いは中心となる図柄・模様の濃度の比較的低い部分の色相と同系色の色相又は同系色に近似の色相で着色処理する予備的処理を行い、目割れを解消するインクジェット捺染方法に存する。
【0015】
そしてまた、(3)、前記立毛部の立毛長が0.8mm以上で且つ立毛密度が10000本/cm以上である上記(2)記載のインクジェット捺染方法に存する。
【0016】
そしてまた、(4)、前記立毛部の一部分が毛元から毛先方向にかけて立毛長の5〜90%の部分である上記(2)記載のインクジェット捺染方法に存する。
【0017】
そしてまた、(5)、地組織を含む立毛部の一部分を着色処理する予備的処理は、立毛布帛の裏面から着色処理するものである上記(2)記載のインクジェット捺染方法に存する。
【0018】
そしてまた、(6)、裏面からの着色処理は、模様を含まない無地色である上記(5)記載のインクジェット捺染方法に存する。
【0019】
そしてまた、(7)、上記(2)乃至(6)のいずれか1記載のインクジェット捺染方法によって製造される座席シート張り地用の捺染物に存する。
【0020】
本発明はその目的に沿ったものであれば、上記1から7中から選ばれた2つ以上を組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によって得られた立毛布帛を捺染すると、目割れのないシャープ且つ鮮明な図柄・模様を付与することができる。
また本発明によって得られる捺染法は、同様に目割れのないシャープ且つ鮮明な図柄・模様を付与することができる。
対象として、例えば椅子張り地に使用した場合にも、折り曲げ加工部分に目割れが生じることはなく、商品価値が高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の本質は、捺染により染色できない部分、すなわち、毛元(根元)から毛先方向にかけてのある範囲部分を前もって着色のために予備的処理を施しておくことにより、その後なされる捺染の欠点を防止する点にある(図1参照)。
ここで、図1の(a)→(b)が予備的処理であり、(b)→(c)がその後の捺染である。
例えば、原理的にいうならば、予備的処理で捺染(例えば、インクジェット印写)の色と同じ色に着色処理することにより、立毛部は全体が同色に染められて目割れは完全に防止されることとなる。
【0023】
(1)対象となる立毛布帛
本発明で言う立毛布帛Fとは、モケット、ベルベット、別珍等のパイル編織物、更に起毛加工して得られる起毛編織物である。
その素材としては、合成繊維、具体的にはポリエステル系、ポリアミド系繊維等が使われ、またこれらの合成繊維とセルロース系又はタンパク質系繊維を組み合わせて使用することもできる。
【0024】
(2)準備工程
立毛布帛は準備工程として、精練工程、ヒートセット工程、及び必要に応じて起毛工程を経るが、その処理は、通常の立毛布帛の前処理条件に準じて行えばよい。
本発明の捺染の一つであるインクジェット捺染においては、布帛へのインクジェット印写に際し、ニジミの無い鮮明な図柄・模様を付与するために、特許文献1、その他に開示されている様に予め、該部に非染着性高分子からなるインク受容層を形成せしめることがより好ましい。
【0025】
立毛部の毛先部分へのインクジェット印写についても同様であり、使用染料インクに対して非染着性高分子からなるインク受容層を立毛部の被染部に成形せしめ、該被染部に印写させたインクを確実に保持することにより、インク残留率を高め、このインク中の染料によって被染物を効果的に染色すると同時にニジミを防止する。
また、インクジェット捺染において、裏面からの染色により、地組織及び立毛の根元部分の染色される長さを正確に設定するためには、前出の特許文献1の処理は非常に効果的である。
【0026】
(3)地組織を含む立毛部の一部分(立毛部の一部分とは毛元から毛先方向にかけてのある範囲部分)への着色(処理)のために行う予備的処理
予備的処理とは、地組織及び立毛部の一部分を、好適には布帛の裏面から着色処理を施しておくことである。
着色処理は、地組織と、立毛部の根元(毛元)から毛先にかけて立毛長の5〜90%に施され、特に好ましくは20〜70%の範囲である。
【0027】
上記着色処理が、5%より小さいと目割れ現象が解消されにくく、90%より大きいと効果もサチレートし、むしろ、染料の消費量の観点から見てコスト高である。
着色処理の手法としては、具体的にはコーティング法、グラビア法、スプレー法等が採用される。
【0028】
ここでは代表的なコーティング法について説明する。
(a)コーティング法
立毛布帛の裏面より着色処理するコーティング法としては、ロールコータによる処理方式(図2参照)、ナイフコータによる処理方式、および従来の捺染機を利用したロータリースクリーン又はスクリーンによる処理方式等があるが、いずれも所定の染料を規定量含有した糊(paste)を布帛の裏面より塗布することで行う。
もっとも、布帛の地組織によっては、例えばダブルラッシェル等の比較的密度の高い布帛では、必要に応じ、このコーティング処理を2回以上繰り返すのが良い。
【0029】
(b)コーティング糊の粘度
立毛布帛の地組織の構造と糊の粘度が地組織及び立毛部の染色に大きく影響するため、予めテストを行い布帛により最適粘度を設定すべきである。
本発明においては、裏面よりのコーティングにより地組織と立毛部の根元(毛元)から毛先にかけて、立毛長の5〜90%の範囲で十分染着可能となる粘度に設定される。
【0030】
ここで、染料を含有した糊の粘度が高すぎると、地組織は染色されても立毛部の根元(毛元)から毛先にかけての染色必要部分がほとんど染色されず、やはり目割れが発生する。
逆に粘度が低すぎると、いわゆる極端な"裏漏れ"現象が生じ、部分的に立毛部の毛先付近まで染色される箇所が発生する。
【0031】
その結果、毛先の均一な白度が確保できなくなり、立毛布帛の表面に鮮明な図柄・模様を形成することが出来なくなる。
使用糊の最適粘度はコーティング法、立毛布帛の地組織、さらには立毛布帛の繊維素材により異なるが、ほぼ以下の如くである。
ロールコータ及びナイフコータ方式では1,000〜4,000cps、ロータリースクリーン方式では4,000〜8,000cps、スクリーン方式では5,000〜9,000cpsである。
【0032】
(c)コーティング糊の組成
糊の組成については、基本的には捺染糊の組成に浸透剤を1〜5%程度添加してコーティング糊とする。
コーティング糊は、天然糊剤として小麦デンプン等のでんぷん類、トラガントゴム、アラビアゴム等の天然ゴム類、及び海藻類等があり、加工糊剤としては、CMC等の繊維素誘導体類、加工でんぷん類及び加工天然ゴム類等があり、更に合成糊剤としてビニル系誘導体類、ポリアクリル酸誘導体類及び合成ゴム類等がある。
【0033】
本発明において地組織及び立毛部の必要長(根元から毛先方向へのある長さ範囲)を予備的に着色処理するためには、より良い浸透性が要求され、そのために糊の粘度調整以外に上述の如く浸透剤を糊剤中に添加するのがよい。
【0034】
更に薬剤として、ヒドロトロープ剤、抗還元剤、防腐剤、消泡剤、pH調整剤(リンゴ酸等)等を必要に応じ添加する。
地組織及び立毛部の根元部分に対し所定の求める色相に着色するために、糊剤中に添加される染料については、立毛布帛を構成している繊維素材の種類により最適な染料を選定すべきであるが、基本的には捺染用染料が使用できる。
【0035】
具体的には、例えば、綿、レーヨン等では直接染料、反応性染料等が使用され、ナイロン、絹等では、酸性染料、直接染料が使用され、ポリエステル系繊維では分散染料が使用され、アクリル系染料や、カチオン可染ポリエステル系繊維では、カチオン性染料が使用される。
【0036】
(d)立毛布帛Fの表面に印写形成される図柄・模様と予め予備的処理(着色処理)される部分A(地組織とそれを含む立毛部の一部分、尚、立毛部の一部分とは毛元から毛先方向にかけてのある範囲部分)との色相の関連性
先述したように、毛一本付近に着目した場合、予備的処理(着色処理)する部分、即ち地組織と毛元から毛先方向にかけてのある範囲部分(以下地組織サイドとする)が、後で行われる捺染と同じ色合いであると毛の毛元から毛先まで同色に染色されることとなる。
【0037】
しかし、予備的処理(着色処理)は裏面から布全体を一様に着色するので、捺染による図柄・模様の色相と同じ図柄・模様の色相に着色することはできない。
従って、捺染された図柄・模様、すなわち立毛部の毛先付近に印写される図柄・模様及び色相が極力そのままの印象で視認できるように、地組織サイドの色相、濃度を選択する必要がある。
【0038】
具体的にいうと、予備的処理(着色処理)による地組織サイドの着色の色は、表面の図柄のポイント或いは中心となる図柄・模様の濃度の比較的低い部分の色相と同系色の色相又は同系色に近似の色相とするのがよい。
また、地組織サイドの濃度の決定に当たっては、上述の柄のポイント部の比較的濃度の低い部分の図柄・模様に占める面積割合、および該部以外の柄の色相が考慮され決定される。
【0039】
(4)立毛布帛の乾燥
地組織サイドを予備的処理により着色した該布帛を、テンタータイプの乾燥機により、約130℃×2〜5分で乾燥する。
【0040】
(5)立毛布帛の立毛部の毛先部分の図柄・模様付与
上記の乾燥された立毛布帛の表面から捺染を行い、図柄・模様を形成する。
本発明の捺染法とはフラットスクリーン捺染法、ロータリースクリーン捺染法、ロール捺染法、転写捺染法等の捺染糊を印捺する方式のもの、更には、染料インクを用いるインクジェット捺染方法がある。
【0041】
後者のインクジェット捺染における印写手法としては、圧力パルス型、加圧振動型、静電加速型等があるが、染料インク液滴を吐出し印写する方式であれば特に限定されない。
捺染糊及び染料インク成分としては、立毛部に染着可能な染料を含有せしめることが必要であり、立毛部を構成している繊維素材により、直接染料、反応性染料、酸性染料、分散染料、及びカチオン性染料等が使用される。
【0042】
即ち、具体的には、立毛部の素材が綿、レーヨン等であれば、直接染料、反応性染料等が、ナイロン、絹等であれば酸性染料、直接染料等が、ポリエステル系繊維では分散染料等が、アクリル系繊維やカチオン可染ポリエステル系繊維では、カチオン性染料等が主に使用される。
更に又、捺染方式により、適した捺染糊又は染料インクの設計をする必要がある。
【0043】
染料糊でいうと、具体的には、ph調整剤、抗還元剤、金属イオン封鎖剤、更に湿潤剤、濃染化剤、浸透剤、防腐剤等必要に応じ添加剤等を添加する。
染料インクでいうと、具体的には、粘度、表面張力、等の調整の為の物性調整剤、インク保管管理上、必要な防黴剤、殺菌剤、更に乾燥防止剤等必要に応じ添加剤を添加する。
【0044】
(6)固着発色処理、洗浄処理及び乾燥仕上げセット
印捺(インクジェット捺染であればインクジェット印写)された布帛は、該印捺及び予備的処理(着色処理)によって付与された染料の固着発色の為の湿熱処理を行い、更に、洗浄処理によって未固着の染料の除去が行われる。
なお、これらの処理条件は常法のものが採用される。
以上のような方法で、捺染の行われた立毛布帛Fを、乾燥・仕上げ・セットされたものが、本発明の捺染物として得られる。
この捺染物としては、例えば、自動車,鉄道,航空機,船舶等の運輸機器に搭載された座席シート用張り地類、ソファー,カウチ,スツール,リクライニングシート,ソファーベッド等の家具用の張り地類、室内装飾用張り地等として得られる。
次に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はその実施例に限定されることなく種々の変形例が可能である。
【実施例】
【0045】
〔実施例1〕
パイル糸が150dのポリエステルウーリ糸、地糸が120dのポリエステルフィラメント糸からなるダブルラッシェル地を、センターカットした後、通常の工程による下加工(精練→ヒートセット→整毛→シャーリング)を行い、テスト布1(立毛長は;2.3mm、立毛密度;33,000本/cm2 )とした。
上記テスト布1に、ロータリースクリーンを使用して下記の条件にて、立毛面の裏面よりコーティング糊をコーティングすることで予備的処理(裏面着色処理)した。
【0046】
「コーティング糊の処方」
染料
CI Disperse Biue 56 6.0%
糊剤
「ケルプアルギンM (海成化工株式会社)」 2.5%
ph調整剤
「りんご酸50 (扶桑化学工業株式会社)」 0.3%
抗還元剤
「MS−1iq (明成化学工業株式会社)」 1.0%
浸透剤
「サクシノール50 (センカ株式会社)」 1.0%
水 89.2%
計 100 %
【0047】
「コーティング糊の粘度」 5,000cps
得られた布帛を130℃で3分間乾燥した結果、地組織部及び立毛部の毛元から毛先方向にかけて立毛長のほぼ65%が着色された。
次いで、該布帛の表面からフラットスクリーン捺染法により後述の(a),(b)の図柄・模様を印捺した。
【0048】
「捺染糊処方」 (粘度8,500cps)
染料
CI Disperse Biue 56 5.0%
糊剤
「ファインガムHE (第一工業製薬株式会社)」 5.0%
ph調整剤
「りんご酸50 (扶桑化学工業株式会社)」 0.3%
抗還元剤
MS−1iq (明成化学工業株式会社)」 1.0%
濃染化剤
「マイグレスHMニュー (明成化学工業株式会社)」 2.0%
浸透剤
「セブノールLV (七福化学株式会社)」 1.0%
水 85.7%
計 100 %
【0049】
「印捺方法」
フラットスクリーン捺染機
(型紗密度700mesh、スキージ硬度44度、スピード5m/分、乾燥温度125℃)
(a) 一辺が30mmの正方形(目割れを見るため)
(b) 長さ40mm巾1mmの細線による十字形(シャープ性及び鮮明度を見るため)
次いで、印捺された立毛布帛を175℃で10分間湿熱処理し、その後、通常による洗浄工程、乾燥工程及び整毛工程を通した。
【0050】
〔実施例2〕
「コーティング糊の処方」と「コーティング糊の粘度」を下記の条件とした以外は〔実施例1〕と同様に行った。
「コーティング糊の処方」
染料
CI Disperse Biue 56 6.0%
糊剤
「ケルプアルギンM (海成化工業株式会社)」 3.0%
ph調整剤
「りんご酸50 (扶桑化学工業株式会社)」 0.3%
抗還元剤
「MS−1iq (明成化学工業株式会社)」 1.0%
浸透剤
「サクシノール50 (センカ株式会社)」 0.5%
水 89.2%
計 100 %
【0051】
「コーティング糊の粘度」 7,000cps
予備的処理(裏面着色処理)によって、コーティング糊により地組織部及び立毛部の毛元から毛先方向にかけて立毛長のほぼ40%が染色された。
【0052】
〔比較例1〕
テスト布1に対して予備的処理(裏面着色処理)を行わなかった。
そして実施例と同じようにフラットスクリーン捺染を行った。
〔比較例2〕
テスト布1の地糸の代わりにブラックの原着糸を使用した布〔テスト布2(立毛長は;2.3mm、立毛密度;33,000本/cm2 )〕を用意し、これに対して予備的処理(裏面着色処理)を行わなかった。
そして実施例と同じようにフラットスクリーン捺染を行った。
以上の実施例と比較例における染色性の評価結果を表1に示す。
【0053】
〔表1〕

【0054】
次に捺染としてインクジェット捺染を採用した場合の実施例(実施例3、比較例3を示す。
〔実施例3〕
パイル糸が180dのポリエステルスパン糸、地糸が100dのポリエステルフィラメント糸からなるダブルラッシェル地に、通常の工程による下加工(精練→ヒートセット→整毛→シャーリング)を行い、次いでインク受容層付与の為の前処理を行いテスト布3(立毛長は;2.6mm、立毛密度;38,000本/cm2 )とした。
上記テスト布3にロータリースクリーンを使用して下記の条件にて裏面より染料を含有する糊をコーティングすることで予備的処理(裏面着色処理)した。
【0055】
「糊の処方」
CI Disperse Red 127 6.0%
糊剤
「ケルプアルギンM (海成化工株式会社)」 2.5%
りんご酸50 「(扶桑化学工業株式会社)」 0.3%
抗還元剤
「MS−1iq (明成化学工業株式会社)」 1.0%
浸透剤 1.0%
「サクシノール50 (センカ株式会社)」
水 89.2%
計 100 %
【0056】
「糊の粘度」 5,000cps
予備的処理した布帛を125℃で5分間乾燥した結果、染料を含有する糊により地組織部及び立毛部の毛元から毛先方向にかけて立毛長のほぼ65%が着色された。
次いで、該布帛の表面からインクジェット印写法により、後述の(a),(b)の図柄模様を印写した。
【0057】
「インク処方」 (インク粘度2.0cps)
CI Disperse Red 127 5 部
陰イオン界面活性剤 4 部
消泡剤「サーフィノール104E」 0.05部
「(日信化学工業株式会社製)」
エチレングリコール 3 部
ケイ酸 0.1 部
イオン交換水 残 部
計 100 部
【0058】
「インクジェット印写方法」
オンデマンド方式シリアル走査型印写装置
(ノズル径50μm、駆動電圧100V、周波数5KHZ、解像度300ドット/吋、4×4マトリックス)
(a) 一辺が30mmの正方形(目割れを見るため)
(b) 長さ40mm巾1mmの細線による十字形(シャープ性及び鮮明度を見るため)
次いでインクジェット印写された立毛布帛を175℃で10分間湿熱処理し、その後、通常による洗浄工程、乾燥工程及び整毛工程を通した。
【0059】
〔比較例3〕
テスト布3に対して予備的処理(裏面着色処理)を行わなかった。
そして実施例と同じようにインクジェット印写を行った。
〔比較例4〕
テスト布3の地糸の代わりにブラックの原着糸を使用した布〔テスト布4(立毛長は;2.6mm、立毛密度;38,000本/cm2 )〕を用意し、これに対して予備的処理(裏面着色処理)は行わなかった。
そして実施例と同じようにインクジェット印写を行った。
以上の実施例と比較例における染色性の評価結果を表2に示す。
【0060】
〔表2〕

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明の原理を説明する模式図である。 (a)は、予備的処理(着色処理)をしていない立毛布帛を、(b)予備的処理(着色処理)を施した立毛布帛を、(c)インクジェット印写した後の立毛布帛を現す。
【図2】図2は、コーティング方法の例を示す図である。
【図3】図3は、地組織も立毛部も着色されていない場合のインクジェット捺染例を示す模式図であり、(a)はインクジェット捺染前を、また(b)はインクジェット捺染後を示す。
【図4】図4は、目割れ現象を説明する模式図である。
【図5】図5は、地組織が原着糸により着色されている場合のインクジェット捺染例を示す模式図であり、(a)はインクジェット捺染前を、また(b)はインクジェット捺染後を示す。
【符号の説明】
【0062】
A…予備的処理(着色処理)した部分
A1…原着糸により着色した部分
B…インクジェット捺染した部分
F…立毛布帛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立毛布帛をインクジェット捺染する方法であって、インクジェット捺染前に、前もって地組織を含む立毛部の一部分を着色処理する予備的処理を行い、目割れを解消することを特徴とするインクジェット捺染方法。
【請求項2】
立毛布帛をインクジェット捺染する方法であって、インクジェット捺染前に、前もって地組織を含む立毛部の一部分を、表面の図柄のポイント或いは中心となる図柄・模様の濃度の比較的低い部分の色相と同系色の色相又は同系色に近似の色相で着色処理する予備的処理を行い、目割れを解消することを特徴とするインクジェット捺染方法。
【請求項3】
前記立毛部の立毛長が0.8mm以上で且つ立毛密度が10000本/cm以上であることを特徴とする、請求項2記載のインクジェット捺染方法。
【請求項4】
前記立毛部の一部分が毛元から毛先方向にかけて立毛長の5〜90%の部分であることを特徴とする、請求項2記載のインクジェット捺染方法。
【請求項5】
地組織を含む立毛部の一部分を着色処理する予備的処理は、立毛布帛の裏面から着色処理するものであることを特徴とする、請求項2記載のインクジェット捺染方法。
【請求項6】
裏面からの着色処理は、模様を含まない無地色であることを特徴とする、請求項5記載のインクジェット捺染方法。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれか1項記載のインクジェット捺染方法によって製造される座席シート張り地用の捺染物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−2391(P2007−2391A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136505(P2006−136505)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【分割の表示】特願平8−219066の分割
【原出願日】平成8年8月2日(1996.8.2)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】