説明

インクジェット捺染装置及び印捺物の製造方法

【課題】印捺実行時に被捺染材にかけるテンションの有無あるいはテンションの大きさの差を利用して印捺画像の品質を向上すること。
【解決手段】被捺染材の一方の面にインクを吐出するインク吐出部3と、前記被捺染材にテンションを付与するテンション付与機構17と、前記テンション付与機構によって被捺染材に付与されるテンションを制御する制御部15とを備え、前記制御部は、テンションを付与しない状態から任意の設定値までの範囲内の大きさのテンションを付与する第1のテンション付与状態と、前記設定値より大きなテンションを付与する第2のテンション付与状態とを切り換え可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛すなわち被捺染材に対してインクジェット方式で印捺を行うインクジェット捺染装置及び印捺物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から布帛の一方の面である表側の面にインクを吐出して図柄等の画像を印捺する際に、布帛の性質上発生しやすい歪や皺を除去するために、該布帛にテンションをかけた状態で印捺を行う技術が下記の特許文献1に記載されている。
【0003】
また、このインクジェット捺染装置を使用して布帛に印捺する場合には、インクを吐出した布帛の一方の面からのみ当該印捺画像を視認できるようにする場合の他に、前記一方の面の裏側のとなる他方の面からも前記一方の面に印捺した画像を視認できるようにする場合がある。
この両面視認可能な印捺の場合には、布帛の一方の面に、インクを吐出するのに先立ってインクの浸透を促進させるために浸透液を付与し、該浸透液が付与された状態の布帛の面にインクを吐出する技術が下記の特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−203752号公報
【特許文献2】米国特許第2011/0879825号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術は歪や皺を除去するために布帛にテンションをかけるというものである。該テンションの有無を利用して印捺画像の品質を向上すること、即ちインクが布帛内部にまで進入し且つ画像の輪郭部は明確である印捺や、滲みの低減された印捺の実現については全く考慮されていない。
【0006】
また、前記特許文献2に記載の技術は、前記浸透液を用いることで両面視認可能な印捺にはなっているが、浸透液を深く且つムラ無く浸透させる浸透性の向上については全く考慮されていない。
【0007】
本発明の目的は、印捺実行時に被捺染材にかけるテンションの有無あるいはテンションの大きさの差を利用して印捺画像の品質を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の第1の態様に係るインクジェット捺染装置は、被捺染材の一方の面にインクを吐出するインク吐出部と、前記被捺染材にテンションを付与するテンション付与機構と、前記テンション付与機構によって前記被捺染材に付与されるテンションを制御する制御部とを備え、前記制御部は、テンションを付与しない状態から任意の設定値までの範囲内の大きさのテンションを付与する第1のテンション付与状態と、前記設定値より大きなテンションを付与する第2のテンション付与状態とを切り換え可能であることを特徴とするものである。
【0009】
ここで「被捺染材」とは、印捺の対象となる「布地」を意味し、綿、絹、羊毛等の天然繊維やナイロン等の化学繊維あるいはこれらを混ぜた複合繊維の織物、編物、不織布等が含まれ、ロール状に巻かれた長尺のものと、所定の長さにカットされたものの両方が含まれる。更に、縫製後のハンカチ、スカーフ、タオル、カーテン、シーツ、ベッドカバー等のファニチャーの類の他、縫製前の状態のパーツとして存在する裁断前後の布地等も含まれる。
本願明細書で「印捺」とは前記被捺染材に印刷することを意味する。
【0010】
また、ここで「テンションを付与しない状態」とは、厳密に特定する必要はなくおよその基準として使われている。そのおよその基準は、被捺染材がその表面に皺が無い程度に均されて保持されている程度であり、該被捺染材に対して伸びる方向の力がかかっていないと言える状態を意味する。また「テンションを付与しない状態から任意の設定値まで」における「設定値」は僅かにテンションがかかっているが実質的にテンションがかかっていない状態と言える程度から被捺染材に対して伸びる方向に力が作用している状態まで採用可能である。そして、この設定値は予め設定されているようにしてもよいし、ユーザーによって調整できるようにしてもよい。
【0011】
本態様によれば、テンションを付与しない状態から任意の設定値までの範囲内の大きさのテンションを付与する第1のテンション付与状態と、前記設定値より大きなテンションを付与する第2のテンション付与状態とを切り換えて印捺を実行するので、印捺実行時に被捺染材にかけるテンションの有無あるいはテンションの大きさの差を利用して所望の印捺画像を得ることが可能になる。
例えば、第2のテンション付与状態で被捺染材の織り目を拡げた状態でインクを吐出して形成した一次画像の上に、第1のテンション付与状態に切り換えて、即ち前記拡がった織り目を元に戻して単に皺の無い程度のテンションの状態にして、再度インクを吐出して二次画像(最終の印捺画像)を形成する。こうすることで、インクが被捺染材の内部にまで進入し(一次画像)且つ画像の輪郭部は明確である印捺(二次画像)を実現することができる。また、これにより滲みも低減された印捺を実現することができる。
また、浸透液を用いることで両面視認可能な印捺を行う場合にも、本態様によれば、浸透液付与時とその後のインク吐出時とで前記テンションを切り換えることによって、浸透液を被捺染材に深く且つムラ無く浸透させることができる(浸透性の向上)。これにより、両面視認可能な印捺画像の品質を向上することができる。また、これにより滲みも低減された印捺を実現することができる。
すなわち本態様によれば、第1のテンション付与状態と第2のテンション付与状態とを切り換えて印捺を実行することで、印捺画像の品質を向上することができる。
【0012】
本発明の第2の態様に係るインクジェット捺染装置は、前記第1の態様において、前記被捺染材の一方の面にインクを吐出するのに先行してインクの浸透液を付着させる付着部材を備え、前記被捺染材に対する前記浸透液の付着は前記第2のテンション付与状態で行い、前記インクの吐出は前記第1のテンション付与状態で行うことを特徴とするものである。
【0013】
本態様によれば、最初に被捺染材を相対的に大きな第2のテンション付与状態にし、織り目を広げた状態で浸透液を織り目内部までムラ無く進入させることができる。
次に、前記浸透液がムラ無く進入された被捺染材を相対的に小さな第1のテンション付与状態にして印捺を実行するので、被捺染材の他方の面からの印捺画像の視認性を向上させることができる。そして、インクの滲みを抑えた明瞭な印捺画像が得られるようになる。
【0014】
本発明の第3の態様に係るインクジェット捺染装置は、前記第1の態様又は第2の態様において、前記制御部は、前記第1のテンション付与状態と前記第2のテンション付与状態を含む複数の多段階のテンション付与状態から選定された二以上のテンション付与状態を、前記インク吐出部から被捺染材にインクを吐出して画像を形成しつつ切り換える制御モードを備えていることを特徴とするものである。
【0015】
本態様によれば、前記制御部は、前記第1のテンション付与状態と前記第2のテンション付与状態を含む複数の多段階のテンション付与状態から選定された二以上のテンション付与状態を、前記インク吐出部から被捺染材にインクを吐出して印捺画像を形成しつつ切り換える制御モードを備えている。すなわち、テンションの大きさの異なる二以上のテンション付与状態を、被捺染材にインクを吐出して印捺画像を形成しつつ切り換えるので、印捺データに基づいて忠実に再現される本来の印捺画像とは異なる規則的にあるいは不規則的にデフォルメされた趣の異なる印捺画像を形成することが可能になる。
ここで、「切り換え」は繰り返し行われることが印捺画像のデフォルメを進める上では好ましい。
【0016】
本発明の第4の態様に係るインクジェット捺染装置は、前記第1の態様から第3の態様のいずれか一つにおいて、前記インク吐出部は、被捺染材の搬送方向と交差する方向に往復移動可能なシリアル方式のインク吐出部であり、前記インク吐出部の往路走行時と往路走査時とで前記第1のテンション付与状態と第2のテンション付与状態とを切り換えることを特徴とするものである。
【0017】
本態様によれば、前記第1の態様から第3の態様のいずれか一つの作用効果を、シリアル方式のインク吐出部の往路走行時と往路走査時とで前記第1のテンション付与状態と第2のテンション付与状態とを切り換えて印捺を実行することで、得ることができる。
【0018】
本発明の第5の態様に係るインクジェット捺染装置は、前記第1の態様から第4の態様のいずれか一つにおいて、前記テンション付与機構は、被捺染材に対して搬送方向にテンションを付与する第1のテンション付与機構と、前記搬送方向と交差する幅方向にテンションを付与する第2のテンション付与機構との少なくとも一方を備えることを特徴とするものである。
【0019】
本態様によれば、被捺染材の性状や種類あるいはユーザーの意思に応じて被捺染材の搬送方向にテンションを付与したい場合には第1のテンション付与機構を使用し、被捺染材の幅方向にテンションを付与したい場合には第2のテンション付与機構を使用し、被捺染材の搬送方向と幅方向の両方向にテンションを付与したい場合には第1のテンション付与機構と第2のテンション付与機構とを同時に使用することが可能になる。これにより、前記第1の態様から第4の態様のいずれか一つの作用効果をえることができる。
【0020】
本発明の第6の態様に係る印捺物の製造方法は、前記第1の態様から第5の態様のいずれか一つの態様に係るインクジェット捺染装置を使用することによって実行される印捺物の製造方法であって、前記第1のテンション付与状態で印捺を実行する第1の印捺実行モードと、前記第2のテンション付与状態で印捺を実行する第2の印捺実行モードと、を切り換えて印捺を実行することを特徴とするものである。
【0021】
本態様によれば、例えば被捺染材にテンションをかけない状態または設定値以下の相対的に小さなテンションをかけた状態で印捺を実行したい場合には、第1の印捺実行モードを採択することで輪郭部まで明瞭な印捺画像が形成された印捺物を得ることが可能になる。
【0022】
一方、例えば設定値より大きな相対的に大きなテンションをかけた状態で印捺を実行したい場合には、第2の印捺実行モードを採択することで被捺染材の織り目を広げて織り目内部へのインクの浸透性を向上させた他方の面からの視認性の良好な印捺物を得ることが可能になる。
【0023】
本発明の第7の態様に係る印捺物の製造方法は、前記第1の態様から第5の態様のいずれか一つの態様に係るインクジェット捺染装置を使用することによって実行される印捺物の製造方法であって、前記第1のテンション付与状態と前記第2のテンション付与状態とを含む複数の多段階のテンション付与状態から選定された二以上のテンション付与状態で印捺を実行する二以上の印捺実行モードを、前記インク吐出部から被捺染材にインクを吐出して画像を形成しつつ切り換えることを特徴とするものである。
【0024】
本態様によれば、テンションの大きさの異なる二以上のテンション付与状態で印捺を実行する二以上の印捺実行モードを、前記インク吐出部から被捺染材にインクを吐出して印捺画像を形成しつつ切り換えて印捺を実行する。これにより、印捺データに基づいて忠実に再現される本来の印捺画像とは異なる規則的にあるいは不規則的にデフォルメされた趣の異なる印捺画像が形成された印捺物を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1に係るインクジェット捺染装置の要部の概略構成を示す平面図。
【図2】本発明の実施例1に係るインクジェット捺染装置の要部の概略構成を示す正面図。
【図3】本発明の実施例1に係るインクジェット捺染装置の印捺動作の一例を模式的に示す平面図。
【図4】本発明の実施例1に係るインクジェット捺染装置の印捺動作の他の一例を模式的に示す平面図。
【図5】本発明の実施例1に係るインクジェット捺染装置の印捺の流れの一例を段階的に示す説明図。
【図6】本発明の実施例1に係るインクジェット捺染装置の印捺の流れの他の一例を段階的に示す説明図。
【図7】本発明の実施例1に係るインクジェット捺染装置の印捺時の動作の流れを示すフローチャート。
【図8】本発明の実施例2に係るインクジェット捺染装置の要部の概略構成を示す平面図。
【図9】本発明の実施例2に係るインクジェット捺染装置の二以上の印捺実行モードを切り換えて実行する印捺の流れを段階的に示す説明図。
【図10】本発明の印捺物の製造方法を異なる各印捺実行モードで実行した場合の印捺物を示す平面図。
【図11】本発明の実施例2に係るインクジェット捺染装置の印捺時の動作の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施例1と実施例2に基づいて本発明に係るインクジェット捺染装置1の構造と、該インクジェット捺染装置1を使用することによって実行される印捺物の製造方法について説明する。
最初に、本発明の実施例に係るインクジェット捺染装置1の概略構成を図1に基づいて説明する。
【0027】
本発明の実施例に係るインクジェット捺染装置1は、被捺染材(以下、「布帛」ともいう)Tの一方の面(以下、「表側の面」ともいう)7にインクCを吐出して所望の印捺画像Gを形成するインク吐出部3と、前記インク吐出部3の存する印捺実行領域4に被捺染材Tを搬送し、印捺後の印捺物Uを装置外部に排出する搬送手段11と、印捺を実行する被捺染材TにテンションFを付与するテンション付与機構17と、前記テンション付与機構17によって被捺染材Tに付与されるテンションFの付与状態を制御する制御部15と、を備えている。
【0028】
そして、本実施例では、被捺染材Tの搬送方向Aと幅方向Bのいずれか一方、または双方に伸びる性質の素材または織り方によって形成されている被捺染材Tに対して特に効果を発揮し、一例として生地の伸縮性に富むポリエステルとウレタンを含む混紡生地製の被捺染材T等が好適な材料として挙げられる。
インク吐出部3は、図示しないインクカートリッジ等からチューブ等を介して供給されるインクCを被捺染材Tの一方の面7に吐出して直接、印捺を実行する部材である。また、該インク吐出部3としては、キャリッジ5に搭載されて被捺染材Tの搬送方向Aと交差する幅方向Bを走査方向として往復移動しながらインクCを吐出する、いわゆるシリアル方式のインク吐出部3と、被捺染材Tの幅方向Bの印捺範囲を一挙に印捺する、いわゆるライン方式のインク吐出部3とのいずれの方式のインク吐出部3でも適用可能である。
【0029】
搬送手段11としては、一対のニップローラーによって構成される搬送用ローラー13を備える構成が一例として適用でき、この他、被捺染材Tを所定量ずつ繰り出す繰出しローラーと、印捺後の被捺染材Tを巻き取る巻取りローラーと、搬送中の被捺染材Tの弛みを取って案内するガイドローラーとを備える構成や被捺染材Tを支持台上のセットトレイにセットしてタイミングベルト等を介して支持台ごと被捺染材Tを搬送する構成等が採用可能である。
【0030】
テンション付与機構17としては、被捺染材Tに対して搬送方向AにテンションFを付与する第1のテンション付与機構18と、幅方向BにテンションFを付与する第2のテンション付与機構19のいずれか一方、または双方が適用できる。
第1のテンション付与機構18としては、例えば印捺実行領域4を挟んで前記搬送用ローラー13の下流側に設けられる一対のニップローラーによって構成されるテンションローラー21を備える構成が採用できる。この場合には、前記テンションローラー21の回転速度を前記搬送用ローラ13の回転速度よりも幾分、速く回転させることによってテンションFを得る。
【0031】
一方、第2のテンション付与機構19としては、被捺染材Tの幅方向Bの両端部に配置されている軸23の方向が被捺染材Tの搬送方向Aと平行な図1に示すようなテンションローラー対25が一例として適用できる。この場合、該テンションローラー対25は、図1中、左方に位置する第1テンションローラー27と右方に位置する第2テンションローラー29をそれぞれ回転方向が逆方向で同じ大きさ(同速度で同じ回転角度)の回転が被捺染材Tに対してテンションFがかかる方向に作用する。
【0032】
制御部15では、被捺染材Tに対してテンションFをかけるか、かけないかの制御と、テンションFをかける場合のテンションFの大きさとテンションFをかけるタイミングとテンションFの付与時間等のテンションFの付与状態が制御される。
また、前記テンションFの付与状態の設定は、ユーザーからの設定情報31等に基づいて実行され、該設定情報31には、当該被捺染材Tが伸び易いか伸び難いかの性状の違いや被捺染材の素材、厚さ、織り方、繊維の太さ、織り目の間隔等によって区分けされる種類の違い、あるいはユーザーの意思決定に基づく情報等が含まれる。
【0033】
また、前記制御部15では、前記テンションFの付与状態の制御に加えて、被捺染材Tの送り量の制御や前記インク吐出部3から吐出されるインクCの吐出タイミングや吐出量の制御を含むインクジェット捺染装置1の全般の制御が併せて実行される。
そして、前記テンション付与機構17を使用することによって実行されるテンションFの付与状態での印捺の実行に関する構成が本発明のインクジェット捺染装置1の特徴的構成になっている。
【0034】
[実施例1](図1から図7参照)
図1に実施例1に係るインクジェット捺染装置1Aの要部の概略構成が図示されている。本実施例に係るインクジェット捺染装置1Aは、インク吐出部3としてシリアル方式のインク吐出部3が採用されており、搬送手段11として搬送用ローラー13を備えた構成が採用されている。
また、テンション付与機構17として、被捺染材Tの搬送方向AにテンションFを付与する第1のテンション付与機構18と、被捺染材Tの幅方向BにテンションFを付与する第2のテンション付与機構19との両方が設けられている。
【0035】
また、制御部15において制御するテンションFの付与状態には、テンションFを付与しない状態から任意の設定値aまでの第1のテンション付与状態32(図5)と、前記設定値aより大きな第2のテンション付与状態33(図5)が含まれている。そして、これら2つのテンション付与状態33の切り換えが本実施例において当該制御部15の主要な制御になっている。
また、本実施例では、前記インク吐出部3の往路走行時と復路走行時の両方で連続して印捺を実行する図3に示す第1の印捺動作35と、前記インク吐出部3の往路走行時と復路走行時のいずれか一方のみで印捺を実行する図4に示す第2の印捺動作37を採ることができる。
【0036】
因みに、前記インク吐出部3の図3に示す第1の印捺動作35は、速乾性のインクCや浸透性の高いインクCを使用した場合に適した印捺動作で、印捺速度を速くして印捺完了時間を短くする効果が得られる。
一方、前記インク吐出部3の図4に示す第3の印捺動作37は、乾燥に時間がかかるインクCや浸透性の低いインクCを使用した場合に適した印捺動作で、往路走行時と復路走行時の一方がインクCを吐出しないで移動することになる分、印捺速度が遅くなるが、その時間を被捺染材T上のインクCの乾燥と浸透性を促進させるために充てることが可能になる。
【0037】
また、本実施例では、前記インク吐出部3の往路走行時と、復路走行時とで前記第1のテンション付与状態32と第2のテンション付与状態33とを切り替えて印捺を実行する。
従って、前記第1の印捺動作35によって印捺を実行する場合には、例えば図5中の(A)から(C)に示す最初の片道の走行時に相対的に大きなテンションFをかける第2のテンション付与状態33で印捺を実行することによって、被捺染材Tの織り目を広げて織り目内部へのインクCの浸透性を促進させ、図5中の(D)から(F)に示す次の片道の走行時に相対的に小さなテンションFをかける第1のテンション付与状態32で印捺を実行することによって、印捺画像Gの輪郭を明瞭にした印捺ができるようになる。
そして、このような態様で印捺を実行した場合には、インクCの塗布量を多くした場合でも滲みの少ない印捺画像Gの印捺物Uが得られるようになり、最初に印捺したインクCの輪郭の多くが次に印捺したインクCの輪郭内に収まるため表面に現れる印捺画像Gのシャープな輪郭はそのまま維持される。
【0038】
更に、本実施例に係るインクジェット捺染装置1Aには、被捺染材Tの一方の面7にインクCを吐出するのに先立ってインクCの浸透を助長させる浸透液Sを付着させる付着部材として、前記インク吐出部3の幅方向Bの側方に浸透液Sを吐出する吐出ヘッド39が並設されている。
そして、該吐出ヘッド39は、前記インク吐出部3と共にキャリッジ5に搭載されて該キャリッジ5と一体になって、被捺染材Tの幅方向Bを走査方向として往復移動しながら浸透液Sを吐出できる。
尚、本実施例で使用する浸透液Sとしては、インクジェット印捺用のインクCとして通常使用されている浸透剤や界面活性剤が使用できる。
【0039】
このような浸透剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル(日本乳化剤社製:ニューコール1006)、テトラエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル(日本乳化剤社製:ニューコール1004)などの多価アルコールのアルキルエーテル類、尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
また、多価アルコールのアルキルエーテル類としては、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルを一種または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
また、界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類;アルキル硫酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤;サーフィノール61、82、104、440、465、485(何れも商品名、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)、オルフィンE1010、オルフィンSTG、オルフィンY(何れも商品名、日信化学社製)等のアセチレングリコ−ル系界面活性剤;カチオン性界面活性剤;両イオン性界面活性剤、KF−353A、KF6017、X−22−6551、AW−3(何れも商品名、信越化学工業社製)等のオルガノポリシロキサン系界面活性剤等を挙げることができる。
浸透液は、上記した浸透剤を、浸透液の全質量に対して概ね10〜30質量%、また、界面活性剤を概ね0.1〜3.0質量%含むことが好ましい。
【0041】
そして、このような浸透液Sを使用して前記第1の印捺動作35によって印捺を実行する場合には、例えば図6中の(A)から(C)に示す最初の片道の走行時に相対的に大きなテンションFをかける第2のテンション付与状態33で吐出ヘッド39から浸透液Sを吐出することによって、被捺染材Tの織り目を広げて織り目内部まで浸透液Sが行き渡るようにする。そして、図6中の(D)から(F)に示す次の片道の走行時に相対的に小さなテンションFをかける第1のテンション付与状態32で印捺を実行することによって、インクCの滲みを抑え、印捺が完了した印捺物Uの他方の面9からも印捺画像Gが明瞭に視認できる印捺物Uが得られるようになる。
【0042】
また、このようにして構成される本実施例1にかかるインクジェット捺染装置1Aを使用することによって実行される本発明の印捺物の製造方法は、前記第1のテンション付与状態32で印捺を実行する第1の印捺実行モード41と、前記第2のテンション付与状態33で印捺を実行する第2の印捺実行モード43と、を切り換えて印捺を実行することによって印捺物Uを製造する。
尚、前記第1の印捺実行モード41は、テンション付与機構17を有しない一般のインクジェット捺染装置において実行されている印捺実行モードと同じか、該印捺実行モードに近い通常印捺仕様の印捺実行モードになっており、前記第2の印捺実行モード43は、被捺染材Tの性状や種類の違い等に応じて当該被捺染材TにテンションFを加えて印捺を実行するテンション印捺仕様の印捺実行モードになっている。
【0043】
次に、図7に示すフローチャートに基づいて実施例1に係るインクジェット捺染装置1Aの印捺時の動作の流れを説明する。
印捺の実行が指令されると、先ず、ステップS1で第1の印捺実行モード41で印捺を実行するか否かの判断が行われる。ステップS1では、ユーザーの設定情報31等に基づいて被捺染材Tの性状や種類及びユーザーの意思決定等に適合した判断が行われる。
【0044】
ステップS1で第1の印捺実行モード41で印捺を実行すると判断された場合には、ステップS2に移行し被捺染材TにテンションFをかけない状態または、テンション付与機構17を駆動して設定値a以下の小さなテンションFをかけた状態にする。
次に、ステップS3に移行して第1の印捺実行モード41での印捺が実行される。
【0045】
一方、前記ステップS1で第1の印捺実行モード41で印捺を実行しないと判断された場合には、第2の印捺実行モード43で印捺を実行すると判断されてステップS4に移行する。
ステップS4ではテンション付与機構17を駆動して被記録材Tに設定値aより大きなテンションFをかけた状態にする。
【0046】
次に、ステップS5に移行して第2の印捺実行モード43での印捺が実行される。
また、前記ステップS3の第1の印捺実行モード41での印捺実行後と、前記ステップS5の第2の印捺実行モード43での印捺実行後は、それぞれステップS6に移行して当該部位の印捺の実行を継続するか否かの判断が行われる。
【0047】
ステップS6で当該部位の印捺の実行を継続しないと判断された時は、当該部位の印捺の実行を終了し、次の部位の印捺の実行に移行する。一方、ステップS6で当該部位の印捺の実行を継続すると判断された時はステップS1に戻り、前記ステップS1からステップS6までの処理が繰り返し実行される。
因みに、前述した図5に示す2回の印捺を連続的に実行する場合と、前述した図6に示す浸透液Sの吐出とインクCの吐出を連続的に実行する場合には、図7のフローチャートのステップS1からステップS4、S5、S6へと移行し、ステップS6から再びステップS1に戻り、ステップS2、S3、S6へと移行して当該部位の一連の印捺が終了することになる。
【0048】
そして、このような構成の本実施例に係るインクジェット捺染装置1Aと、該インクジェット捺染装置1Aを使用することによって実行される印捺物の製造方法によれば、被捺染材Tの性状や種類あるいは実行する印捺形態に応じて前記第1のテンション付与状態32と、第2のテンション付与状態33と、を切り換えることによって、当該被捺染材Tの性状や種類あるいは実行する印捺形態に適合した印捺画像Gが形成された印捺物Uを得ることができる。
【0049】
[実施例2](図8から図11参照)
図8に実施例2に係るインクジェット捺染装置1Bの要部の概略構成が図示されている。本実施例に係るインクジェット捺染装置1Bは、前記実施例1に係るインクジェット捺染装置1Aと大部分の構成が同じであり、テンション付与機構17の一部の構成と、制御部15で扱う印捺実行モードの一部の構成のみが前記実施例1と相違している。
従って、ここでは前記実施例1と共通の構成については基本的に説明を省略し、前記実施例1と相違する構成を中心にして説明する。
【0050】
即ち、本実施例では、テンション付与機構17によって被捺染材Tに付与するテンションFが設定値aを境に設定値a以下の第1のテンションF1と、設定値aより大きな第2のテンションF2との2段階のみに切り換えるだけでなく、更に細かく多段階に、あるいは無段階にテンションFの大きさを変えることができる。
そして、前記制御部15は、本実施例では第3の印捺実行モードとして、前記第1のテンション付与状態32と前記第2のテンション付与状態33を含む複数の多段階のテンション付与状態から選定された二以上のテンション付与状態を、前記インク吐出部3から被捺染材Tにインクを吐出して印捺画像を形成しつつ切り換える制御モードを備えている。
【0051】
前記第3の印捺実行モードで印捺を実行すると、図9において模式的に示すように通常の印捺では得られない規則的にないし不規則的にデフォルメされた印捺画像Gが形成されるようになる。
以下、図9に基づいて説明すると、図9(A)に示すテンションFをかけない状態で印捺実行領域4に供給された被捺染材Tは、印捺の実行の開始と並行してテンションFをかけたり、かけなかったり、テンションFの大きさを規則的にないし不規則的に変化させることによって伸び縮みを繰り返す。
【0052】
例えば、図9(B)のプロセスでは、被捺染材TにテンションFをかけて伸ばした状態でインクCを吐出した場合を示している。そして、この状態では印捺データ通りの大きさの印捺画像G1が形成される。
次に、図9(C)のプロセスに移行すると、被捺染材TにかかっていたテンションFが取り除かれて被捺染材Tが元の大きさに縮むため、前記図9(B)のプロセスで形成した印捺画像G1も縮んで小さくなる。また、図9(C)の状態でインクCを吐出すると、印捺データ通りの大きさの印捺画像G2が形成されるため、図9(C)に示すように前記印捺画像G1との間に段差ができた印捺画像Gとなる。
【0053】
以下、図9(D)(E)に示すように、テンションFの大きさを変化させながらインクCを吐出させる印捺を繰り返すと、大きさの違う印捺画像G3、G4が連接ないし分断された状態で形成され、最終的に図9(F)に示すように輪郭にずれが生じたり、途中で画像が分断された状態の本来の印捺データとは違うデフォルメされた印捺画像Gが形成されるようになる。
【0054】
また、本実施例では前記実施例1で行った第1のテンション付与状態32と第2テンション付与状態33も採択できるように構成されているため、第1のテンション付与状態32を採択して印捺を実行した場合には、図10(A)に示すように印捺データに忠実な大きさで輪郭が明瞭な印捺画像Gが形成される。
【0055】
同様に、第2のテンション付与状態33を採択して印捺を実行した場合には、図10(B)に示すように、印捺後の被捺染材Tの収縮によって印捺データよりも幾分大きさが小さくなり、当該収縮率が方向によって多少違うため、輪郭に幾分乱れが生じた印捺画像Gが形成される。
更に、第3のテンション付与状態45を採択して印捺を実行した場合には、図10(C)に示すように前述したようにデフォルメされた印捺画像Gが形成される。
【0056】
また、このようにして構成される本実施例2に係るインクジェット捺染装置1Bを使用することによって実行される本発明の印捺物の製造方法は、前記第1のテンション付与状態32で印捺を実行する第1の印捺実行モード41と、前記第2のテンション付与状態33で印捺を実行する第2の印捺実行モード43と、更に前記第3の印捺実行モード47と、を切り換えて印捺を実行することによって印捺物Uを製造する。
尚、前記第1の印捺実行モード41と第2の印捺実行モード43は前述した実施例1で述べたのと同様の印捺仕様の印捺実行モードになっており、前記第3の印捺実行モード47は、ユーザーの意思によって、印捺画像Gに変化を持たせたい場合に採択される伸縮印捺仕様の印捺実行モードになっている。
【0057】
次に、図11に示すフローチャートに基づいて実施例2に係るインクジェット捺染装置1Bの印捺時の動作の流れを説明する。
印捺の実行が指令されると、先ず、ステップS11で第1の印捺実行モード41で印捺を実行するか否かに判断が行われる。ステップS11では、ユーザーの設定情報31等に基づいて被捺染材Tの性状や種類及びユーザーの意思決定等に適合した判断が行われる。
【0058】
ステップS11で第1の印捺実行モード41で印捺を実行すると判断された場合には、ステップS12に移行し、被捺染材TにテンションFをかけない状態またはテンション付与機構17を駆動して設定値a以下の小さなテンションFをかけた状態にする。
次に、ステップS13に移行して第1の印捺実行モード41での印捺が実行される。
【0059】
一方、前記ステップS11で第1の印捺実行モード41で印捺を実行しないと判断された場合には、ステップS14に移行して第2の印捺実行モード43で印捺を実行するか否かの判断が行われる。
ステップS14で第2の印捺実行モード43で印捺を実行すると判断された場合には、ステップS15に移行し、被捺染材Tに設定値aより大きなテンションFをかけた状態にする。
【0060】
次に、ステップS16に移行して第2の印捺実行モード43での印捺が実行される。
また、前記ステップS14で第2の印捺実行モード43で印捺を実行しないと判断された場合には、第3の印捺実行モード47で印捺を実行すると判断されてステップS17に移行する。
ステップS17ではテンション付与機構17を駆動して被捺染材Tに規則的ないし不規則的に大きさが変化するテンションFをかけた状態にする。
【0061】
次に、ステップS18に移行して第3の印捺実行モード47での印捺が実行される。
また、前記ステップS13の第1の印捺実行モード41での印捺実行後と、前記ステップS16の第2の印捺実行モード43での印捺実行後と、前記ステップS18の第3の印捺実行モード47での印捺実行後は、それぞれステップS19に移行して当該部位の印捺の実行を継続するか否かの判断が行われる。
【0062】
ステップS19で当該部位の印捺を実行を継続しないと判断された場合は、当該部位の印捺の実行を終了し、次の部位の印捺の実行に移行する。一方、ステップS19で当該部位の印捺の実行を継続すると判断された場合はステップS11に戻り、前記ステップS11からステップS19までの処理が繰り返し実行される。
そして、このような構成の本実施例に係るインクジェット捺染装置1Bと、該インクジェット捺染装置1Bを使用することによって実行される印捺物の製造方法によれば、被捺染材Tの性状や種類あるいはユーザーの意思に応じて前記第1にテンション付与状態32と、第2のテンション付与状態33と、第3のテンション付与状態45と、切り換えることによって、当該被捺染材Tの性状や種類あるいはユーザーの意思に適合した印捺画像Gが形成された印捺物Uを得ることができる。
【0063】
[他の実施例]
本発明に係るインクジェット捺染装置1及び印捺物の製造方法は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
例えばテンション付与機構17は、前記実施例1及び実施例2のように搬送方向AにテンションFを付与する第1のテンション付与機構18と、幅方向BにテンションFを付与する第2のテンション付与機構19と、を二つとも備える他、いずれか一方のみを備える構成であっても構わない。テンションを付与する構造も前記構造に限定されず、テンションの切り換えが可能な他の構造も適用可能である。
【0064】
また、制御部15において制御するテンション付与状態は、テンションFをかけるか、かけないかの制御やテンションFの大きさを可変する制御だけでなく、テンションFをかけるタイミングやテンションFをかける時間を設定する制御を含めることが可能である。
従って、例えば被捺染材Tの性状や種類に応じて第1のテンション付与状態32と第2のテンション付与状態33とを切り換える制御を行う場合に、当該被捺染材Tの印捺に先立って前記第1のテンション付与状態32と第2のテンション付与状態33のいずれか一方を採択し、採択した第1のテンション付与状態32または第2のテンション付与状態33のまま印捺画像Gが形成される最後まで当該被捺染材Tに対する印捺を実行することが可能である。
【0065】
一方、前記実施例1及び実施例2でも触れたように当該一つの印捺画像Gの形成中に第1のテンション付与状態32と第2のテンション付与状態33とを切り換えたり、第3のテンション付与状態45においてテンションFを可変することも可能である。
そして、その場合には、インク吐出部3ないし吐出ヘッド39の往路走行時と復路走行時でテンションFの付与状態を切り換えたり、所定幅ごとの印捺を行う、いわゆるバンド印捺を行う場合には、バンドごとにテンションFの付与状態を切り換えることが可能である。更に細かく往路走行時及び復路走行時中にテンションFの付与状態を複数回、切り換えることも可能である。
この他、前記実施例1及び実施例2において採用した浸透液Sの付着部材である吐出ヘッド39を省略してインク吐出部3のみをキャリッジに搭載した構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 インクジェット捺染装置 、3 インク吐出部、4 印捺実行領域、
5 キャリッジ、7 一方の面(表側の面)、9 他方の面(裏側の面)、
11 搬送手段、13 搬送用ローラー、15 制御部、17 テンション付与機構、
18 第1のテンション付与機構、19 第2のテンション付与機構、
21 テンションローラー、23 軸、25 テンションローラー対、
27 第1テンションローラー、29 第2テンションローラー、31 設定情報、
32 第1のテンション付与状態、33 第2のテンション付与状態、
35 第1の印捺動作、37 第2の印捺動作、39 吐出ヘッド、
41 第1の印捺実行モード、43 第2の印捺実行モード、
45 第3のテンション付与状態、47 第3の印捺実行モード、
T 被捺染材(布帛)、C インク、S 浸透液、A 搬送方向、B 幅方向、
U 印捺物、G 印捺画像、F テンション、a 設定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被捺染材の一方の面にインクを吐出するインク吐出部と、
前記被捺染材にテンションを付与するテンション付与機構と、
前記テンション付与機構によって前記被捺染材に付与されるテンションを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、テンションを付与しない状態から任意の設定値までの範囲内の大きさのテンションを付与する第1のテンション付与状態と、前記設定値より大きなテンションを付与する第2のテンション付与状態とを切り換え可能であることを特徴とするインクジェット捺染装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたインクジェット捺染装置において、
前記被捺染材の一方の面にインクを吐出するのに先行してインクの浸透液を付着させる付着部材を備え、
前記被捺染材に対する前記浸透液の付着は前記第2のテンション付与状態で行い、前記インクの吐出は前記第1のテンション付与状態で行うことを特徴とするインクジェット捺染装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたインクジェット捺染装置において、
前記制御部は、前記第1のテンション付与状態と前記第2のテンション付与状態とを含む複数の多段階のテンション付与状態から選定された二以上のテンション付与状態を、前記インク吐出部から被捺染材にインクを吐出して画像を形成しつつ切り換える制御モードを備えていることを特徴とするインクジェット捺染装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載されたインクジェット捺染装置において、
前記インク吐出部は、被捺染材の搬送方向と交差する方向に往復移動可能なシリアル方式のインク吐出部であり、
前記インク吐出部の往路走行時と往路走査時とで前記第1のテンション付与状態と第2のテンション付与状態とを切り換えることを特徴とするインクジェット捺染装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載されたインクジェット捺染装置において、
前記テンション付与機構は、被捺染材に対して搬送方向にテンションを付与する第1のテンション付与機構と、前記搬送方向と交差する幅方向にテンションを付与する第2のテンション付与機構との少なくとも一方を備えることを特徴とするインクジェット捺染装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載されたインクジェット捺染装置を使用することによって実行される印捺物の製造方法であって、
前記第1のテンション付与状態で印捺を実行する第1の印捺実行モードと、
前記第2のテンション付与状態で印捺を実行する第2の印捺実行モードと、を切り換えて印捺を実行することを特徴とする印捺物の製造方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載されたインクジェット捺染装置を使用することによって実行される印捺物の製造方法であって、
前記第1のテンション付与状態と前記第2のテンション付与状態とを含む複数の多段階のテンション付与状態から選定された二以上のテンション付与状態で印捺を実行する二以上の印捺実行モードを、前記インク吐出部から被捺染材にインクを吐出して画像を形成しつつ切り換えることを特徴とする印捺物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−96045(P2013−96045A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243254(P2011−243254)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】