説明

インクジェット用インクおよびその用途

【課題】低温での硬化が可能であり、耐熱性および電気絶縁性が高い絶縁膜を得ることができるインクジェット用インクを提供する。
【解決手段】式(1)で表されるジイミド化合物(A)と、溶媒(B)とを含むインクジェット用インク。


[式(1)中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基であり、複数あるYはそれぞれ独立に炭素数1〜100の二価の有機基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インク、該インクから形成されたポリイミド膜およびその形成方法、該ポリイミド膜が形成されたフィルム基板、該フィルム基板を有する電子部品、該ポリイミド膜が形成されたシリコンウエハー基板、ならびに該シリコンウエハー基板を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、耐熱性および電気絶縁性に優れるため、電子通信分野で広く用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。ポリイミドを所望のパターン膜として使用する場合、従来はエッチングや感光性ポリイミドを用いてパターンを形成する方法が一般的であった。しかしながら、パターンの形成にはフォトレジスト、現像液、エッチング液、剥離液などの多種大量の薬液を必要とし、また、煩雑な工程を必要とした。そこで近年、インクジェットにより所望のポリイミドのパターン膜を形成する方法が検討されている。
【0003】
インクジェット用インクは各種提案されているが(例えば、特許文献4〜5参照)、インクジェット用インクとして吐出・印刷するためには、インクの粘度、表面張力、溶媒の沸点などの様々なパラメータを最適化しなくてはならない。
【0004】
粘度に関しては、一般的には吐出温度(吐出時のインクの温度)において、1〜50mPa・s程度の低粘度であることが求められている。特にピエゾ方式のインクジェット印刷の場合は、圧電素子の吐出圧力が小さいため、粘度が大きくなると場合によってはインクが吐出不能となる。
【0005】
表面張力に関しては、20〜70mN/mの範囲に調整することが好ましく、20〜40mN/mの範囲に調整することがより好ましい。表面張力が低過ぎると、インクがプリンターヘッドのノズルから吐出された直後に広がってしまい、良好な液滴が形成できなくなることがある。反対に表面張力が高過ぎると、メニスカスを形成できなくなるため、吐出不能になることがある。
【0006】
溶媒の沸点に関しては、100〜300℃であることが好ましく、150〜250℃であることがより好ましい。沸点が低過ぎると、プリンターヘッドのノズル部におけるインク中の溶媒が、特にインクを加温して吐出する場合に蒸発してしまう。それによってインクの粘度が変化し、インクが吐出できなくなる、あるいはインクの成分が固化してしまうことがある。反対に沸点が高過ぎると、印刷後のインクの乾燥が遅すぎて、印刷パターンが悪化することがある。
【0007】
ポリイミド系のインクジェット用インクは、ポリイミドあるいは加熱処理することによりポリイミドとなるポリアミド酸を含む。ポリアミド酸を含むインクジェット用インクとしては、粘度およびポリマー濃度が特定の範囲に設定され、沸点および表面張力が特定の範囲にある溶媒を含む樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、前記インクジェット用インクは、パターンの形成時に300℃以上という高温焼成を必要としている。したがって、例えば、ディスプレイ用途のプラスチック基板やプリント配線板用途の銅貼積層板などでは、塗布対象の基板の耐熱温度が低いため、前記高温焼成では支障を来たすという問題がある。また、一般的にポリアミド酸を含むインクジェット用インクにおいては、焼成時の硬化収縮により、基板およびポリイミド膜の反りが問題となることが多い。
【0008】
他方、ポリイミドあるいはポリアミド酸は、分子量が高いため、インクジェット用インクとして最適な粘度のインクを調製するためには、溶媒の割合を増やしてインク中のポリアミド酸の含有量を少なくする必要がある。
【0009】
しかしながら、これによって、1回のインクジェッティングで得られるポリイミド膜の厚みが小さくなってしまう。ポリイミド膜の用途によっては、10μm以上の厚みが求められる場合がある。この場合、インクジェットで重ね塗りすることによりこの厚みの膜を形成することはできる。しかしながら、1回のインクジェッティングで得られるポリイミド膜の厚みが小さくなることにより、重ね塗りする回数が増える、すなわち絶縁膜の形成工程が多くなるという点が問題となる。
【0010】
特許文献6では、ポリイミドあるいはポリアミド酸の含有量を大きくするために、ポリアミド酸の重量平均分子量を低くして、インクの低粘度化を図ることが提案されている。しかしながら、重量平均分子量が10,000より小さくなると、そのインクからは充分な機械的強度のポリイミド膜が得られない。そのため特許文献6では、重量平均分子量が10,000〜50,000に制御されている。そのような重量平均分子量では、インクジェット用インクとして使用可能なポリアミド酸濃度は15〜20重量%程度と、依然として小さいものであった。
【0011】
また、熱架橋剤と、該熱架橋剤と反応可能な基を有する重量平均分子量300〜9,000のポリイミドまたはポリベンゾオキサゾールとを含むインクジェット用熱硬化性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献7参照)。特許文献7に記載の発明は、フェノール性水酸基、カルボキシル、スルホンアミドなどの熱架橋剤と反応可能な基を有するポリイミドまたはポリベンゾオキサゾールを含む組成物に関する。しかしながら、前記組成物はエポキシ化合物、メチロール化合物、アルコキシメチロール化合物、ビスマレイミド、不飽和結合を有するビスイミド化合物、アセチレン化合物などの熱架橋剤を必須成分とするため、保存安定性や熱硬化時の残存未反応物などが問題となる。
【0012】
他方、モノアミンと酸無水物基を2つ有する化合物(例えば、テトラカルボン酸二無水物)とを用いて得られるイミド化合物についても、各種提案されている。
【0013】
例えば、(A)特定構造のポリアミド酸および特定構造の可溶性ポリイミドからなるマトリックス樹脂の群の少なくとも一種と、(B)M(OR6n7mで表される化合物、特定構造の硝酸化合物および特定構造のジピバロイルメタン化合物からなる金属化合物の群の少なくとも一種と、(C)特定構造のアミン化合物、特定構造の酢酸化合物、特定構造のアセトン化合物、特定構造のアミド酸および下記に示される分子鎖末端にアルコキシル基を有するイミド(イミド化合物)からなる安定剤の群の少なくとも一種とからなる高誘電性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献8参照)。前記組成物は、耐熱性の高いポリアミド酸および可溶性ポリイミドの少なくとも一種からなるマトリックス樹脂と、高誘電性の金属化合物と、安定剤としてのイミド化合物とを、水とともに混合して得られる、特殊な高誘電性樹脂組成物である。
【0014】
【化1】

【0015】
[式中、R5は1価の有機基を示す。その他については特許文献8参照。]
また、(a)ポリシロキサン、(b)キノンジアジド化合物、(c)溶剤、(d)下記に示されるイミドシラン化合物(イミド化合物)を含有する感光性シロキサン組成物が提案されている(例えば、特許文献9参照)。
【0016】
【化2】

【0017】
[式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、フェニル基
、フェノキシ基またはそれらが置き換えられた有機基を表す。その他については特許文献9参照。]
しかしながら、特許文献8および9で提案されている組成物は、インクジェット印刷により直接パターンを得る際に使用されるインクジェット用インクとは、その設計思想および使用法が全く異なるものである。すなわち、特許文献8および9で提案されているイミド化合物は、全てインクジェットでの使用が想定されているものでなく、インクジェット用インクとして必要な粘度等の最適化、また、低温焼成については何ら考慮されたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2000−039714号公報
【特許文献2】特開2003−238683号公報
【特許文献3】特開2004−094118号公報
【特許文献4】特開2003−213165号公報
【特許文献5】特開2006−131730号公報
【特許文献6】特開2005−187596号公報
【特許文献7】特開2007−314647号公報
【特許文献8】特開平6−234917号公報
【特許文献9】国際公開第2008/065944号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述する状況の下、(1)低温(例えば200℃以下)での硬化が可能であり、耐熱性および電気絶縁性が高い絶縁膜を得ることができるインクジェット用インク、および(2)粘度、溶剤の沸点などの様々なパラメータをインクジェット用に最適化したインクであって、インクジェットヘッドの耐久性を低下させない溶媒を使用できるインクジェット用インクが求められている。また、(3)1回のジェッティングで比較的厚い膜厚(2μm以上)を有するポリイミド膜を形成することができる、イミド系化合物を高濃度で含むインクジェット用インクが求められている。
【0020】
本発明は、上述の特性を有するインクジェット用インクの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、特定構造のジイミド化合物(A)と溶媒(B)とを含むインクジェット用インクを用いることで、上記課題(1
)および(2)を解決できることを見出した。さらに、前記化合物(A)および(B)に加えて、エポキシ樹脂等を含むインクジェット用インクを用いることで、上記課題(3)を解決できることを見出した。
【0022】
即ち本発明は、以下の[1]〜[25]から構成される。
【0023】
[1]式(1)で表されるジイミド化合物(A)と、溶媒(B)とを含むインクジェット用インク。
【0024】
【化3】

【0025】
[式(1)中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基であり、複数あるYはそれぞれ独立に炭素数1〜100の二価の有機基である。]
[2]ジイミド化合物(A)が、式(2)で表されるジイミド化合物および式(2’)で表されるジイミド化合物からなる群から選ばれる1種以上である前記[1]項に記載のインクジェット用インク。
【0026】
【化4】

【0027】
[式(2)中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基であり、複数あるRはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数6〜10のアリールであり、前記アルキルは、ヒドロキシル、フェノール、チオール、スルフィド、インドールまたはイミダゾールを含んでいてもよい。式(2)’中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基であり、複数あるnはそれぞれ独立に2〜11の整数である。]
[3]ジイミド化合物(A)が、式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物(a1)と式(4)で表されるアミノ酸(a2)とを反応させて得られるジイミド化合物である前記[1]項または前記[2]項に記載のインクジェット用インク。
【0028】
【化5】

【0029】
[式(3)中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基であり、式(4)中、Yは炭素数1〜100の二価の有機基である。]
[4]アミノ酸(a2)が、式(5)で表されるアミノ酸および式(6)で表されるアミノ酸からなる群から選ばれる1種以上である前記[3]項に記載のインクジェット用インク。
【0030】
【化6】

【0031】
[式(5)中、Rは水素、炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数6〜10のアリールであり、前記アルキルは、ヒドロキシル、フェノール、チオール、スルフィド、インドールまたはイミダゾールを含んでいてもよい。式(6)中、nは2〜11の整数である。]
[5]テトラカルボン酸二無水物(a1)が、ピロメリット酸二無水物、3,3',4
,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノン
テトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,
3'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルス
ルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、エタンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸,[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン]ジ−4,1−フェニレンエステル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸オキシジ−4,1−フェニレンエステル、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無
水物、3,3’,4,4’−ビシクロへキシルテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物および5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物からなる群から選ばれる1種以上である前記[3]項または前記[4]項に記載のインクジェット用インク。
【0032】
[6]アミノ酸(a2)が、グリシン、アラニン、β−アラニン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、システイン、メチオニン、セリン、トレオニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸および12−アミノラウリン酸からなる群から選ばれる1種以上である前記[3]〜[5]のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0033】
[7]さらにエポキシ樹脂を含む前記[1]〜[6]のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0034】
[8]エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、オキシランを有するモノマーの重合体、アルコキシシリルとオキシランとを有する化合物、およびオキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体からなる群から選ばれる1種以上である前記[7]項に記載のインクジェット用インク。
【0035】
[9]エポキシ樹脂が、式(I)〜(VI)からなる群から選ばれる1種以上である前記[7]項に記載のインクジェット用インク。
【0036】
【化7】

【0037】
[式(V)中、Rf、RgおよびRhはそれぞれ独立に水素または炭素数1〜30の有機基
である。式(VI)中、Rcは炭素数2〜100の四価の有機基であり、Rdは炭素数1〜30の二価の有機基であり、Reは式(VII)〜(IX)からなる群から選ばれる一価の有機基である。]
【0038】
【化8】

【0039】
[式(VII)中、Rfは水素または炭素数1〜3のアルキルである。]
[10]ジイミド化合物(A)の含有量が、インク全量に対して、5〜95重量%である前記[1]〜[9]のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0040】
[11]インクジェット吐出温度における粘度が、1〜50mPa・sである前記[1]〜[10]のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0041】
[12]溶媒(B)が、乳酸エチル、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランおよびジフェニルジエトキシシランからなる群から選ばれる1種以上を含有する溶媒である前記[1]〜[11]のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0042】
[13]溶媒(B)全量に対して、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−ビニル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムおよびカルバミド酸エステルからなる群から選ばれる1種以上の溶媒の含有量が、0を越え、20重量%以下である前記[1]〜[12]のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0043】
[14]溶媒(B)全量に対して、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−ビニル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムおよびカルバミド酸エステルからなる群から選ばれる1種以上の溶媒の含有量が、0重量%である前記[1]〜[12]のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0044】
[15]溶媒(B)の含有量が、インク全量に対して、1〜94.9重量%である前記[12]〜[14]のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0045】
[16]溶媒(B)の含有量が、インク全量に対して、30〜90重量%である前記[12]〜[14]のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0046】
[17]さらに、高分子化合物、アルケニル置換ナジイミド化合物、シリコンアミド酸化合物、アクリル樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤およびエポキシ硬化剤からなる群から選ばれる1種以上を含む前記[1]〜[16]のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0047】
[18]高分子化合物が、テトラカルボン酸二無水物(e1)とジアミン(e2)とを少なくとも用いて得られ、式(7)で表される構成単位を有するポリアミド酸またはそのイミド化重合体である前記[17]項に記載のインクジェット用インク。
【0048】
【化9】

【0049】
[式(7)中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基であり、Yは炭素数2〜100の二価の有機基である。]
[19]前記[1]〜[18]のいずれか1項に記載のインクジェット用インクから得られる、イミド化合物の膜またはイミド化合物のパターン膜。
【0050】
[20]前記[1]〜[18]のいずれか1項に記載のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって基板上に塗布して塗膜を形成した後、前記塗膜を硬化処理して得られる、イミド化合物の膜またはイミド化合物のパターン膜。
【0051】
[21]前記[1]〜[18]のいずれか1項に記載のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって基板上に塗布して塗膜を形成する工程、および前記塗膜を硬化処理する工程を含む、イミド化合物の膜またはイミド化合物のパターン膜の形成方法。
【0052】
[22]前記[19]項または前記[20]項に記載のイミド化合物の膜またはイミド化合物のパターン膜が基板上に形成されたフィルム基板。
【0053】
[23]前記[22]項に記載のフィルム基板を有する電子部品。
【0054】
[24]前記[19]項または前記[20]項に記載のイミド化合物の膜またはイミド化合物のパターン膜が基板上に形成されたシリコンウエハー基板。
【0055】
[25]前記[24]項に記載のシリコンウエハー基板を有する電子部品。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、(1)低温(例えば200℃以下)での硬化が可能であり、耐熱性および電気絶縁性が高い絶縁膜を得ることができるインクジェット用インク、および(2)
粘度、溶剤の沸点などの様々なパラメータをインクジェット用に最適化したインクであって、インクジェットヘッドの耐久性を低下させない溶媒を使用できるインクジェット用インクを提供することができる。本発明の好ましい態様によれば、さらに、(3)1回のジェッティングで比較的厚い膜厚(2μm以上)を有するポリイミド膜を形成することができる、イミド系化合物を高濃度で含むインクジェット用インクも提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の各構成について説明する。
【0058】
[1.インクジェット用インク]
本発明のインクジェット用インクは、下記式(1)で表されるジイミド化合物(A)と、溶媒(B)とを含む。以下、ジイミド化合物(A)および溶媒(B)について順次説明する。
【0059】
1.1 ジイミド化合物(A)
ジイミド化合物(A)は、下記式(1)で表される化合物である。
【0060】
【化10】

【0061】
式(1)中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基であり、複数あるYはそれぞれ独立に炭素数1〜100の二価の有機基である。
【0062】
ジイミド化合物(A)は、下記式(2)で表されるジイミド化合物および下記式(2’)で表されるジイミド化合物からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0063】
【化11】

【0064】
式(2)中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基であり、複数あるRはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数6〜10のアリールである。前記アルキルは、直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、前記アルキルは、ヒドロキシル、フェノール、チオール、スルフィド、インドール(インドリル)またはイミダゾールを含ん
でいてもよい。式(2)’中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基であり、複数あるnはそれぞれ独立に2〜11の整数である。
【0065】
上記アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチ
ル、イソブチル、t−ブチルなどが挙げられる。上記アルキルの炭素数は、好ましくは1
〜8、より好ましくは1〜4である。
【0066】
上記アリールとしては、フェニル、ベンジル、トリル、キシリル、ナフチルなど挙げられる。
【0067】
上記ヒドロキシルを含むアルキルとしては、例えば、上記アルキルが有する水素原子をヒドロキシルに置き換えた基が挙げられ、具体的にはヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、s−ヒドロキシブチルなどが挙げられる。
【0068】
上記フェノールを含むアルキルとしては、例えば上記アルキルが有する水素原子をフェノールに置き換えた基が挙げられ、具体的には4−ヒドロキシベンジルなどが挙げられる。
【0069】
上記チオールを含むアルキルとしては、例えば上記アルキルが有する水素原子をチオールに置き換えた基が挙げられ、具体的には1−メルカプトメチルなどが挙げられる。
【0070】
上記スルフィドを含むアルキルとしては、例えば上記アルキルが有するメチレンをスルフィドに置き換えた基が挙げられる。
【0071】
上記インドールまたはイミダゾールを含むアルキルとしては、上記アルキルが有する水素原子をインドールまたはイミダゾールに置き換えた基が挙げられる。
【0072】
ジイミド化合物(A)は、例えば、下記式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物(a1)と下記式(4)で表されるアミノ酸(a2)とを反応させて得ることができる。
【0073】
【化12】

【0074】
式(3)中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基である。式(4)中、Yは炭素数1〜100の二価の有機基である。
【0075】
1.1.1 テトラカルボン酸二無水物(a1)
テトラカルボン酸二無水物(a1)は上記式(3)で表され、具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニル
エーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、エタンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸,[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン]ジ−4,1−フェニレンエステル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸オキシジ−4,1−フェニレンエステル、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(下記a1−1)、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物および5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物(下記a1−26)などが挙げられる。また、4,4’−[(イソプロピリデン)ビス(p−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物、3,3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン琥珀酸二無水物および下記式a1−1〜a1−61で表される化合物などが挙げられる。
【0076】
【化13】

【0077】
【化14】

【0078】
【化15】

【0079】
【化16】

【0080】
【化17】

【0081】
【化18】

【0082】
【化19】

【0083】
【化20】

【0084】
【化21】

【0085】
【化22】

【0086】
【化23】

【0087】
【化24】

【0088】
【化25】

【0089】
テトラカルボン酸二無水物(a1)の上記具体例の中でも、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸オキシジ−4,1−フェニレンエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビシクロへキシルテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、式a−1,式a1−4、式a1−26で表される化合物を用いることが好ましい。また、用途によっては高い透明性が必要とされるが、このような場合には、3,
3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)を用いることが特に好ましい。
【0090】
1.1.2 アミノ酸(a2)
アミノ酸(a2)は上記式(4)で表され、具体的には下記式(5)で表されるアミノ酸および下記式(6)で表されるアミノ酸から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0091】
【化26】

【0092】
式(5)中、Rは水素、炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数6〜10のアリールである。前記アルキルは、直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、前記アルキルは、ヒドロキシル、フェノール、チオール、スルフィド、インドール(インドリル)またはイミダゾールを含んでいてもよい。式(6)中、nは2〜11の整数である。式(5)中のRの好ましい基および例示は、上記式(2)で説明した基および例示と同様である。
【0093】
アミノ酸(a2)としては、具体的にはグリシン、アラニン、β−アラニン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、システイン、メチオニン、セリン、トレオニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸および12−アミノラウリン酸などが挙げられる。
【0094】
1.1.3 ジイミド化合物(A)を合成するための反応条件
ジイミド化合物(A)は、例えば、テトラカルボン酸二無水物(a1)とアミノ酸(a2)とを用いて合成されたジアミド酸化合物を、イミド化することにより得ることができる。
【0095】
反応中間体であるジアミド酸化合物は、テトラカルボン酸二無水物(a1)およびアミノ酸(a2)を混合して、穏やかな反応条件下で合成することができる。
【0096】
上記の穏やかな反応条件とは、例えば、常圧下、温度5〜60℃、反応時間0.2〜20時間で、好ましくは温度5〜30℃、反応時間0.2〜3時間で、触媒を使用することなく、テトラカルボン酸二無水物(a1)の酸無水物基が反応により開環して生じたカルボキシル基あるいはアミノ酸(a2)のカルボキシル基を活性化させることなく反応させる、という条件である。カルボキシル基の活性化とは、例えば、酸クロリドへの変換である。
【0097】
上記の穏やかな反応条件では、テトラカルボン酸二無水物(a1)の酸無水物基とアミノ酸(a2)のアミノ基とが反応して生じたカルボキシル基が、アミノ酸(a2)のアミノ基と反応することがないため、遊離のカルボキシル基を有するジアミド酸化合物が得られる。
【0098】
ジイミド化合物(A)は、上記ジアミド酸化合物をイミド化することにより製造することができる。イミド化は、熱的方法あるいは脱水触媒および脱水剤を用いた化学的方法により進めることができるが、精製処理を行わないで使用できる熱的方法により進めることが好ましい。
【0099】
上記アミド酸化合物のイミド化は、熱的方法、具体的には加熱還流により進めることが好ましい。還流の条件は、使用する反応溶媒により異なるが、通常は70〜230℃、好ましくは140〜230℃で、通常は1.5〜10時間、好ましくは2〜4時間である。温度が70℃以上であると膜が形成可能なジイミド化合物(A)が得られやすい。温度が140℃以上であるとイミド化が充分に進み、より強固な膜を形成可能なジイミド化合物(A)が得られやすい。温度が230℃以下であると比較的沸点の高い溶媒を用いても還流可能である。加熱還流後には、通常、反応溶媒ならびにイミド化反応によって生じる水を留去する。
【0100】
また、上記の緩やかな反応条件に代えて、アミド酸化合物の合成およびイミド化を上記還流条件下で進めることにより、ジイミド化合物(A)を得てもよい。
【0101】
《テトラカルボン酸二無水物(a1)およびアミノ酸(a2)の仕込み量》
テトラカルボン酸二無水物(a1)およびアミノ酸(a2)の仕込み量としては、テトラカルボン酸二無水物(a1)1モルに対して、アミノ酸(a2)を0.5〜4.0モル用いることが好ましく、0.7〜3.0モル用いることがより好ましく、1.0〜2.4モル用いることがさらに好ましい。
【0102】
《反応溶媒》
上記ジアミド酸化合物およびジイミド化合物(A)を合成する際に用いられる反応溶媒は、ジアミド酸化合物およびジイミド化合物(A)が合成できれば特に限定されるものではない。
【0103】
反応溶媒としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、シクロヘキサノン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール、エチルラクテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル(1−ブトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(1−エトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1
−メトキシ−2−プロパノール)、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチレングリコールモノビニルエーテル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、1−ビニル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよびγ−ブチロラクトンを挙げることができる。
【0104】
これらの反応溶媒の中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびγ−ブチロラクトンが溶解性の面で好ましい。
【0105】
反応溶媒は1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記反応溶媒以外の他の溶媒を、反応溶媒に混合して用いることもできる。
【0106】
反応溶媒は、反応をスムーズに進行させる観点から、テトラカルボン酸二無水物(a1)およびアミノ酸(a2)の合計100重量部に対して、100重量部以上用いることが好ましく、100〜400重量部用いることがより好ましい。
【0107】
《添加順序》
テトラカルボン酸二無水物(a1)およびアミノ酸(a2)の反応系への添加順序は、特に限定されない。例えば、(1)テトラカルボン酸二無水物(a1)とアミノ酸(a2)とを同時に反応溶媒に加える方法、(2)アミノ酸(a2)を反応溶媒中に溶解させた後に、前記反応溶媒にテトラカルボン酸二無水物(a1)を添加する方法、(3)テトラカルボン酸二無水物(a1)を反応溶媒中に溶解させた後に、前記反応溶媒にアミノ酸(a2)を添加する方法など何れの方法も用いることができる。
【0108】
ジイミド化合物(A)は既にイミド化されているので、硬化処理時の硬化収縮が小さく、また比較的低温焼成でも電気的特性(イミドに由来する絶縁性、耐熱性、機械的特性)が確保される。また、ジイミド化合物(A)は既にイミド化されているので、アミック酸型の化合物と比較して、保存安定性が優れている。
【0109】
1.1.4 ジイミド化合物(A)の含有量
本発明のインクジェット用インク中のジイミド化合物(A)の含有量は、5〜95重量%であることが好ましく、10〜70重量%であることがより好ましく、20〜50重量%であることがさらに好ましい。このような濃度範囲であると、一回のジェッティングで比較的厚い膜厚(例えば2μm以上)を有するポリイミド膜を形成することが可能であり、しかも、インクの粘度をインクジェット印刷可能な粘度範囲に調整することができる。
【0110】
ジイミド化合物(A)の濃度が高いほど、インクジェット用インクから得られるポリイミド膜の膜厚が大きくなるため好ましい。その一方で、インクジェット用インクの粘度も高くなる傾向にあるため、場合によってはインクジェット印刷機でインクジェット用インクが吐出できなくなるという問題が生じる。本発明者らが鋭意検討した結果、特に上記の濃度範囲であれば、膜厚の大きなポリイミド膜を形成可能で、問題なく吐出できるインクジェット用インクが得られることを見出した。特に、後述するエポキシ樹脂等を配合することによって、容易にジイミド化合物(A)の高濃度化(例えば20重量%以上)を達成できる。
【0111】
1.2 溶媒(B)
本発明のインクジェット用インクは、溶媒(B)を含む。溶媒(B)は、ジイミド化合物(A)を溶解することができる溶媒であれば、特に制限されない。また、単独ではジイミド化合物(A)を溶解しない溶媒であっても、他の溶媒と混合することによってジイミド化合物(A)を溶解するようになるのであれば、そのような混合溶媒を溶媒(B)として用いることが可能である。
【0112】
溶媒(B)の沸点は、通常150〜300℃、好ましくは150〜250℃である。
【0113】
溶媒(B)としては、例えば、乳酸エチル、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、シクロヘキサノン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール、エチルラクテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル(1−ブトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(1−エトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチレングリコールモノビニルエーテル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、1−ビニル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよびγ−ブチロラクトンを挙げることができる。
【0114】
これらの溶媒の中でも、インクジェットヘッドの耐久性向上の観点から、乳酸エチル、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランおよびジフェニルジエトキシシランからなる群から選ばれる1種以上を含有する溶媒が好ましい。
【0115】
なお、以上例示した溶媒の中で、インクジェットヘッドの耐久性が問題となる場合、アミド系溶媒の使用を低減することも好ましい。このような場合、アミド系溶媒の含有量は
、溶媒(B)全量に対して、0を越え、20重量%以下であることが好ましい。あるいは、アミド系溶媒の含有量は、0重量%であること、すなわち溶媒(B)が非アミド系溶媒であることが好ましい。
【0116】
上記アミド系溶媒とは、例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−ビニル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムおよびカルバミド酸エステルが挙げられる。
【0117】
ところで、上述したように、ジイミド化合物(A)および反応中間体であるジアミド酸化合物の合成には反応溶媒を使用する。このため、ジイミド化合物(A)の合成が完了したときに前記反応溶媒が残存している場合、その反応溶媒を溶媒(B)として使用することもできる。
【0118】
溶媒(B)は1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0119】
溶媒(B)の含有量は、インクジェット用インク全量に対して、1〜94.9重量%(溶媒以外の成分の濃度が5.1〜99重量%)とすることが好ましく、30〜90重量%(溶媒以外の成分の濃度が10〜70重量%)とすることがより好ましく、50〜80重量%(溶媒以外の成分の濃度が20〜50重量%)とすることがさらに好ましい。1重量%以上では、インクジェット用インクの粘度が大きくなり過ぎず、ジェッティング特性は良好である。94.9重量%以下では、1回のジェッティングで形成できるイミド化合物の膜が薄くなり過ぎることがない。
【0120】
1.3 エポキシ樹脂
本発明のインクジェット用インクは、さらにエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂を用いることにより、インクジェット印刷に適した低粘度化とジイミド化合物(A)の高濃度化(例えば20重量%以上)との両立が可能であり、また、充分な機械的強度のポリイミド膜を得ることができる。ジイミド化合物(A)の高濃度化が可能であるため、1回のジェッティングで比較的厚い膜厚(2μm以上)を有するポリイミド膜を形成することができる。
【0121】
エポキシ樹脂は、オキシランやオキセタンを有する化合物であれば特に限定されない。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、オキシランを有するモノマーの重合体、アルコキシシリルとオキシランとを有する化合物、オキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0122】
オキシランを有するモノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートおよびメチルグリシジル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0123】
オキシランを有するモノマーと共重合を行う他のモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレー
ト、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミドおよびN−フェニルマレイミドを挙げることができる。
【0124】
オキシランを有するモノマーの重合体およびオキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体の好ましい具体例としては、ポリグリシジルメタクリレート、メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、ベンジルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、n−ブチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などが挙げられる。インクジェット用インクがこれらのエポキシ樹脂を含有すると、インクジェット用インクから形成されたポリイミド膜の耐熱性が良好となるため好ましい。
【0125】
エポキシ樹脂の市販品としては、商品名「エピコート807」、「エピコート815」、「エピコート825」、「エピコート827」、「エピコート828」、「エピコート190P」、「エピコート191P」(以上、油化シェルエポキシ(株)製)、商品名「エピコート1004」、「エピコート1256」(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、商品名「アラルダイトCY177」、商品名「アラルダイトCY184」(日本チバガイギー(株)製)、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド3000」、「EHPE−3150」(ダイセル化学工業(株)製)、商品名「テクモアVG3101L」(三井化学(株)製)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを挙げることができる。これらの中でも、商品名「アラルダイトCY184」、商品名「セロキサイド2021P」、商品名「テクモアVG3101L」、商品名「エピコート828」は、得られるポリイミド膜の平坦性が特に良好であるため好ましい。
【0126】
エポキシ樹脂は1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0127】
さらにエポキシ樹脂の具体例としては、下記式(I)〜(VI)の化合物が挙げられる。これらの中でも、下記式(I)、(IV)および(V)の化合物は、得られるポリイミド膜の平坦性が特に良好であるため好ましい。
【0128】
【化27】

【0129】
式(V)中、Rf、RgおよびRhはそれぞれ独立に水素または炭素数1〜30の有機基で
あり、水素または炭素数1〜10のアルコキシであることが好ましい。式(VI)中、Rc
は炭素数2〜100の四価の有機基であり、Rdは炭素数1〜30の二価の有機基であり
、Reは下記式(VII)〜(IX)からなる群から選ばれる一価の有機基である。
【0130】
【化28】

【0131】
式(VII)中、Rfは水素または炭素数1〜3のアルキルである。
【0132】
式(VI)で表される化合物は、例えば、下記式(VI−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物と下記式(VI−2)で表されるヒドロキシルを有する化合物とを溶媒中で反応させて得ることができる。
【0133】
【化29】

【0134】
式(VI−1)および(VI−2)中のRc、RdおよびReは、それぞれ上記式(VI)中のRc、RdおよびReと同義である。
【0135】
式(VI−2)中、Rdは炭素数1〜30の二価の有機基であるが、例えば、炭素数1〜
30の直鎖状または分枝状の二価の有機基であり、環構造または酸素を含んでいてもよく、環構造としては、フェニル、シクロヘキシル、ナフチル、シクロヘキセニル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルなどが挙げられる。
【0136】
式(VI)で表される化合物として、特に好ましくは下記式(VI’)で表される化合物が挙げられる。
【0137】
【化30】

【0138】
式(VI−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、好ましくは後述する高分子化合物(ポリアミド酸またはそのイミド化重合体)の合成に用いることができる、テトラカルボン酸二無水物(e1)である。
【0139】
式(VI−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物1モルに対して、式(VI−2)で表されるヒドロキシルを有する化合物を1.9〜2.1モル用いることが好ましく、式(VI−2)で表されるヒドロキシルを有する化合物を1.95〜2.05モル用いることがさらに好ましく、式(VI−2)で表されるヒドロキシルを有する化合物を2モル用いることが特に好ましい。式(VI−2)で表されるヒドロキシルを有する化合物は、2種以上の化合物を併用してもよいが、1種であることが好ましい。
【0140】
また、式(VI)で表される化合物は、例えば、式(VI−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、ヒドロキシルおよび二重結合を有する化合物とを反応させた後、得られた化合物の二重結合部分を酸化させてエポキシ基にすることにより、製造することもできる。
【0141】
式(VI)で表される化合物を合成するために用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えばジイミド化合物(A)を合成するための反応溶媒が挙げられる。
【0142】
溶媒は、反応をスムーズに進行させる観点から、式(VI)で表される化合物の反応原料の合計100重量部に対して50重量部以上使用することが好ましい。反応温度は80℃〜130℃が好ましく、反応時間は2〜8時間が好ましい。また、反応原料の反応系への添加順序は特に限定されない。
【0143】
エポキシ樹脂は1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0144】
本発明のインクジェット用インク中のエポキシ樹脂濃度は特に限定されないが、0.1〜70重量%が好ましく、1〜50重量%がさらに好ましい。このような濃度範囲であると、本発明のインクジェット用インクから形成されたポリイミド膜の耐熱性、耐薬品性および平坦性が良好である。また、容易にジイミド化合物(A)の高濃度化(例えば20重
量%以上)を達成できる。
【0145】
1.4 添加剤
本発明のインクジェット用インクは、ジイミド化合物(A)と溶媒(B)とを含み、さらにその他の添加剤を含んでもよい。目的とする特性によっては、本発明のインクジェット用インクは、高分子化合物、アルケニル置換ナジイミド化合物、シリコンアミド酸化合物、アクリル樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤およびエポキシ硬化剤からなる群から選ばれる1種以上、さらに、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマー、顔料、染料などの添加剤を含んでもよい。なお、本発明のインクジェット用インクは、有色または無色のどちらであっても構わない。
【0146】
1.4.1 高分子化合物
本発明のインクジェット用インクは、さらに高分子化合物を含んでいてもよい。エポキシ樹脂に代えて、あるいはエポキシ樹脂とともに高分子化合物を用いることにより、インクジェット印刷に適した低粘度化とジイミド化合物(A)の高濃度化(例えば20重量%以上)との両立が可能であり、また、充分な機械的強度のポリイミド膜を得ることができる。ジイミド化合物(A)の高濃度化が可能であるため、1回のジェッティングで比較的厚い膜厚(2μm以上)を有するポリイミド膜を形成することができる。
【0147】
高分子化合物としては、例えば、ポリアミド酸、可溶性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアミド酸エステル、ポリエステル、アクリル酸ポリマー、アクリレートポリマー、ポリビニルアルコールおよびポリオキシエチレンが挙げられ、ポリアミド酸および可溶性ポリイミドなどのポリイミド系高分子化合物が好ましい。
【0148】
高分子化合物としては、テトラカルボン酸二無水物(e1)とジアミン(e2)とを少なくとも用いて得られ、下記式(7)で表される構成単位を有するポリアミド酸またはそのイミド化重合体が特に好ましい。
【0149】
【化31】

【0150】
式(7)中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基であり、Yは炭素数2〜100の二価の有機基である。
【0151】
テトラカルボン酸二無水物(e1)としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物(a1)の例として挙げた化合物が挙げられる。ジアミン(e2)としては、例えば、後述する式(e2−1)で表されるジアミンが挙げられる。
【0152】
高分子化合物とは、構成単位を有する化合物のことを指す。特に、重量平均分子量が1,000〜10,000である高分子化合物が、溶媒(B)に対する溶解性が優れており、インクジェット用インクの含有成分として好ましい。溶媒(B)に対する溶解性の観点からは、高分子化合物の重量平均分子量は、より好ましくは1,000〜7,500であり、さらに好ましくは1,000〜5,000であり、特に好ましくは1,000〜2,000である。
【0153】
重量平均分子量が1,000以上であると、加熱処理によって蒸発することがなく、化学的・機械的に安定である。また重量平均分子量が2,000以下であると、高分子化合物の溶媒(B)に対する溶解性が特に高いので、インクジェット用インク中の高分子化合物の濃度を高くすることができる。このため、インクジェット用インクを塗布して得られる塗膜の柔軟性と耐熱性とを向上させることができる。
【0154】
本発明のインクジェット用インク中の高分子化合物濃度は、通常0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%である。このような濃度範囲であると、絶縁膜として良好な特性を付与できることがある。
【0155】
【化32】

【0156】
式(e2−1)中、Yは炭素数2〜100の二価の有機基である。
【0157】
ジアミン(e2)としては、例えば、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンおよび下記式(I)〜(VII)で表される化合物が挙げられる。
【0158】
【化33】

【0159】
式(I)中、A1は、−(CH2m−であり、ここでmは2〜6の整数である。
【0160】
式(III)、(V)および(VII)中、A2は、単結合、−O−、−S−、−S−S−、
−SO2−、−CO−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH32−、−C(CF32−、−(CH2n−、−O−(CH2n−O−または−S−(CH2n−S−であり、
ここでnは1〜6の整数である。
【0161】
式(VI)および(VII)中、2つ存在するA3は、それぞれ独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH32−、−C(CF32−または炭素数1〜3のアルキレンである。
【0162】
以上の式(I)〜(VII)において、シクロヘキサン環またはベンゼン環が有する少な
くとも一つの水素原子は、−Fまたは−CH3で置き換えられていてもよい。
【0163】
式(I)で表される化合物としては、例えば、下記式(I−1)〜(I−3)で表される化合物が挙げられる。
【0164】
【化34】

【0165】
式(II)で表される化合物としては、例えば、下記式(II−1)、(II−2)で表される化合物が挙げられる。
【0166】
【化35】

【0167】
式(III)で表される化合物としては、例えば、下記式(III−1)〜(III−3)で表
される化合物が挙げられる。
【0168】
【化36】

【0169】
式(IV)で表される化合物としては、例えば、下記式(IV−1)〜(IV−5)で表される化合物が挙げられる。
【0170】
【化37】

【0171】
式(V)で表される化合物としては、例えば、下記式(V−1)〜(V−30)で表される化合物が挙げられる。
【0172】
【化38】

【0173】
【化39】

【0174】
【化40】

【0175】
【化41】

【0176】
【化42】

【0177】
【化43】

【0178】
【化44】

【0179】
【化45】

【0180】
【化46】

【0181】
式(VI)で表される化合物としては、例えば、下記式(VI−1)〜(VI−6)で表される化合物が挙げられる。
【0182】
【化47】

【0183】
【化48】

【0184】
【化49】

【0185】
式(VII)で表される化合物としては、例えば、下記式(VII−1)〜(VII−11)で
表される化合物が挙げられる。
【0186】
【化50】

【0187】
【化51】

【0188】
【化52】

【0189】
【化53】

【0190】
【化54】

【0191】
【化55】

【0192】
これらの中でも、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、p−フェニレンジアミン(IV−1)、m−フェニレンジアミン(IV−2)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(V−1)、3,3’−ジアミノジフェニルメタン(V−3)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(V−4)、4,4'−ジアミノジフェニル
エーテル(V−13)、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン(V−30)、2,2'−ジアミノジフェニルプロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]メタン(VII−1)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(VII−8)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(VII−10)が好ましい。
【0193】
ジアミン(e2)としては、さらに下記式(VIII)で表される化合物が挙げられる。
【0194】
【化56】

【0195】
式(VIII)中、A4は、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CON
H−または−(CH2p−であり、ここでpは1〜6の整数である。R6は、ステロイド
骨格を有する基、または、シクロヘキサン環およびベンゼン環からなる群より選ばれる少なくとも1種の環構造を有する基である。なお、ベンゼン環に結合している2つのアミノ基の位置関係がパラ位のときは、R6は炭素数1〜30のアルキルであってもよく、前記
位置関係がメタ位のときは、R6は炭素数1〜10のアルキル、または−F、−CH3、−OCH3、−OCH2F、−OCHF2もしくは−OCF3で置き換えられていてもよいフェ
ニルであってもよい。
【0196】
6における上記炭素数1〜30のアルキルおよび炭素数1〜10のアルキルは、直鎖
状であっても分岐状であってもよい。これらのアルキルにおいては、任意の−CH2−が
−CF2−、−CHF−、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてい
てもよく、任意の−CH3が−CH2F、−CHF2または−CF3で置き換えられていてもよい。
【0197】
式(VIII)において、2つのアミノ基はフェニル環炭素に結合しているが、2つのアミノ基の結合位置関係は、メタ位またはパラ位であることが好ましい。さらに2つのアミノ基はそれぞれ、「R6−A4−」のベンゼン環への結合位置を1位としたときに、3位および5位、または2位および5位に結合していることが好ましい。
【0198】
式(VIII)で表される化合物としては、例えば、下記式(VIII−1)〜(VIII−11)で表される化合物が挙げられる。
【0199】
【化57】

【0200】
【化58】

【0201】
式(VIII−1)、(VIII−2)、(VIII−7)および(VIII−8)中、R7は炭素数1
〜30の有機基であり、炭素数3〜12のアルキルまたは炭素数3〜12のアルコキシであることが好ましく、炭素数5〜12のアルキルまたは炭素数5〜12のアルコキシであることがさらに好ましい。
【0202】
式(VIII−3)〜(VIII−6)および(VIII−9)〜(VIII−11)中、R8は炭素数
1〜30の有機基であり、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数1〜10のアルコキシであることが好ましく、炭素数3〜10のアルキルまたは炭素数3〜10のアルコキシであることがさらに好ましい。
【0203】
式(VIII)で表される化合物としては、さらに、例えば、下記式(VIII−12)〜(VIII−17)で表される化合物が挙げられる。
【0204】
【化59】

【0205】
式(VIII−12)〜(VIII−15)中、R9は炭素数1〜30の有機基であり、炭素数
4〜16のアルキルであることが好ましく、炭素数6〜16のアルキルであることがさらに好ましい。
【0206】
式(VIII−16)および式(VIII−17)中、R10は炭素数1〜30の有機基であり、炭素数6〜20のアルキルであることが好ましく、炭素数8〜20のアルキルであることがさらに好ましい。
【0207】
式(VIII)で表される化合物としては、さらに、例えば、下記式(VIII−18)〜(VIII−38)で表される化合物が挙げられる。
【0208】
【化60】

【0209】
【化61】

【0210】
【化62】

【0211】
式(VIII−18)、(VIII−19)、(VIII−22)、(VIII−24)、(VIII−25)、(VIII−28)、(VIII−30)、(VIII−31)、(VIII−36)および(VIII−37)中、R11は炭素数1〜30の有機基であり、炭素数1〜12のアルキルまたは炭素数1〜12のアルコキシであることが好ましく、炭素数3〜12のアルキルまたは炭素数3〜12のアルコキシであることがさらに好ましい。
【0212】
式(VIII−20)、(VIII−21)、(VIII−23)、(VIII−26)、(VIII−27)、(VIII−29)、(VIII−32)〜(VIII−35)および(VIII−38)中、R12は水素、−F、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、−CN、−OCH2F、−OCHF2または−OCF3であり、炭素数3〜12のアルキルまたは炭素数3
〜12のアルコキシであることが好ましい。
【0213】
式(VIII−33)と(VIII−34)中、A5は炭素数1〜12のアルキレンである。
【0214】
式(VIII)で表される化合物としては、さらに、例えば、下記式(VIII−39)〜(VIII−48)で表される化合物が挙げられる。
【0215】
【化63】

【0216】
【化64】

【0217】
式(VIII)で表される化合物のうち、式(VIII−1)〜式(VIII−11)で表される化合物が好ましく、式(VIII−2)、式(VIII−4)、式(VIII−5)および式(VIII−6)で表される化合物がさらに好ましい。
【0218】
本発明において、ジアミン(e2)としては、さらに下記式(IX)〜(X)で表される化合物が挙げられる。
【0219】
【化65】

【0220】
【化66】

【0221】
式(IX)および(X)中、R13は水素または−CH3であり、2つ存在するR14はそれ
ぞれ独立に水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数2〜20アルケニルであり、2つ存在するA6はそれぞれ独立に単結合、−C(=O)−または−CH2−である。
【0222】
式(X)中、R15およびR16はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルである。
【0223】
式(IX)中、ステロイド核のB環に結合した「NH2−Ph−A6−O−」(−Ph−は、フェニレンを示す)は、ステロイド核の6位の炭素に結合していることが好ましい。また、2つのアミノ基は、それぞれフェニル環炭素に結合しているが、A6のフェニル環へ
の結合位置に対して、メタ位またはパラ位に結合していることが好ましい。
【0224】
式(X)中、2つの「NH2−(R16−)Ph−A6−O−」(−Ph−は、フェニレンを示す)は、それぞれフェニル環炭素に結合しているが、該フェニル環にステロイド核および「NH2−(R16−)Ph−A6−O−」が結合していると考えた場合、ステロイド核と「NH2−(R16−)Ph−A6−O−」との位置関係は、メタ位またはパラ位であることが好ましい。また、2つのアミノ基はそれぞれフェニル環炭素に結合しているが、A6
に対してメタ位またはパラ位に結合していることが好ましい。
【0225】
式(IX)で表される化合物としては、例えば、下記式(IX−1)〜(IX−4)で表される化合物が挙げられる。
【0226】
【化67】

【0227】
式(X)で表される化合物としては、例えば、下記式(X−1)〜(X−8)で表される化合物が挙げられる。
【0228】
【化68】

【0229】
【化69】

【0230】
ジアミン(e2)としては、さらに下記一般式(XI)および(XII)で表される化合物
が挙げられる。
【0231】
【化70】

【0232】
式(XI)中、R17は水素または炭素数1〜20のアルキルであり、該アルキルにおいて、任意の−CH2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていて
もよく、2つ存在するA7はそれぞれ独立に−O−または炭素数1〜6のアルキレンであ
り、A8は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり、環Tは1,4−フェニレンま
たは1,4−シクロヘキシレンであり、hは0または1である。
【0233】
【化71】

【0234】
式(XII)中、R18は炭素数2〜30のアルキルであり、これらの中でも炭素6〜20
のアルキルが好ましい。R19は水素または炭素数1〜30のアルキルであり、これらの中でも炭素1〜10のアルキルが好ましい。2つ存在するA9はそれぞれ独立に−O−また
は炭素数1〜6のアルキレンである。
【0235】
式(XI)中、2つのアミノ基はそれぞれフェニル環炭素に結合しているが、A7に対し
てメタ位またはパラに結合していることが好ましい。また、式(XII)中、2つのアミノ
基はそれぞれフェニル環炭素に結合しているが、A9に対してメタ位またはパラ位に結合
していることが好ましい。
【0236】
式(XI)で表される化合物としては、例えば、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]−4−メチルシクロヘキサンなどの、式(XI−1)〜(XI−9)で表される化合物が挙げられる。
【0237】
【化72】

【0238】
【化73】

【0239】
式(XI−1)〜(XI−3)中、R20は水素または炭素数1〜20のアルキルである。
【0240】
式(XI−4)〜(XI−9)中、R21は水素または炭素数1〜20のアルキルであり、水素または炭素数1〜10のアルキルであることが好ましい。
【0241】
式(XII)で表される化合物としては、例えば、式(XII−1)〜(XII−3)で表され
る化合物が挙げられる。
【0242】
【化74】

【0243】
式(XII−1)〜(XII−3)中、R22は炭素数2〜30のアルキルであり、これらの中でも炭素数6〜20のアルキルが好ましく、R23は水素または炭素数1〜30のアルキルであり、これらの中でも水素または炭素数1〜10のアルキルが好ましい。
【0244】
さらに、ジアミン(e2)の例として、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,4−ブタンジオールビス(3−アミノプロピル)エーテル、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,
10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,6−ビス(4−((4−アミノフェニル)メチル)フェニル)ヘキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、1,4−ビス(3−アミノプ
ロピル)ピペラジン,N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびネオペンチルグリコールビス(4−アミノフェニル)エーテルも挙げられる。
【0245】
上述のとおり、ジアミン(e2)としては、例えば、上記式(I)〜(XII)で表され
る化合物を用いることができるが、これらの化合物以外の、一級アミノ基を2つ以上有する化合物も用いることができる。例えば、ナフタレン構造を有するナフタレン系ジアミン、フルオレン構造を有するフルオレン系ジアミン、またはシロキサン結合を有するシロキサン系ジアミンなどを単独で、または他の一級アミノ基を2つ以上有する化合物として挙げた化合物と混合して用いることができる。
【0246】
シロキサン系ジアミンは特に限定されるものではないが、下記式(XIII)で表される化合物が、本発明において好ましく使用され得る。
【0247】
【化75】

【0248】
式(XIII)中、R3およびR4はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、R5はメチレンまたはアルキルで置き換えられていてもよいフェニレンであり、2
つのxはそれぞれ独立に1〜6の整数であり、yは1〜70の整数である。複数存在するR3、R4およびR5は、それぞれ互いに同じでも異なっていてもよい。
【0249】
さらに好ましくは、ジアミン(e2)として、下記式(11)〜(18)で表される化合物が挙げられる。下記式中、R24およびR25はそれぞれ独立に炭素数3〜20のアルキルである。
【0250】
【化76】

【0251】
【化77】

【0252】
なお、ポリアミド酸またはそのイミド化重合体を合成するために用いることができる、ジアミン(e2)は、本明細書に記載された化合物に限定されることなく、本発明の目的が達成される範囲内で、他にも種々の形態の一級アミノ基を2つ以上有する化合物を用いることができる。
【0253】
また、ポリアミド酸またはそのイミド化重合体の用途によっては高い透明性が必要とされるが、そのような場合には、上記式(XIII)において、y=1〜15の整数である化合物を用いることが特に好ましい。
【0254】
1.4.2 アルケニル置換ナジイミド化合物
アルケニル置換ナジイミド化合物は、分子内に少なくとも1つのアルケニル置換ナジイミド構造を有する化合物であれば特に限定されないが、好ましくは、例えば、国際公開第2008/059986号パンフレットに記載されている、式(II-1)で表されるアルケニル置換ナジイミド化合物等が挙げられる。
【0255】
【化78】

【0256】
式(II-1)中、R14およびR15はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたはベンジルであり、nは1〜2の整数であり、
n=1のとき、R16は水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のヒドロキシアルキル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリール、ベンジル、−{(Cq2q)Ot(Cr2rO)us2sX}(ここで、q、r、sはそれぞれ独立に2〜
6の整数、tは0または1の整数、uは1〜30の整数、Xは水素または水酸基である)で表されるポリオキシアルキレンアルキル、−(R)a−C64−R17(ここで、aは0
または1の整数、Rは炭素数1〜4のアルキレン、R17は水素または炭素数1〜4のアルキルを表す)で表される基、−C64−T−C65(ここで、Tは−CH2−、−C(C
32−、−CO−、−S−またはSO2−である)で表される基、またはこれらの基の
芳香環に直結した1〜3個の水素が水酸基で置き換えられた基であり、
n=2のとき、R16は−Cp2p−(ここで、pは2〜20の整数である)で表される
アルキレン、炭素数5〜8のシクロアルキレン、−{(Cq2qO)t(Cr2rO)us
2s}−(ここで、q、r、sはそれぞれ独立に2〜6の整数、tは0または1の整数、uは1〜30の整数である)で表されるポリオキシアルキレン、炭素数6〜12のアリーレン、−(R17a−C64−R18−(ここで、aは0または1の整数、R17およびR18
はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレンである)で表される基、−C64−T−C6
4−(ここで、Tは−CH2−、−C(CH32−、−CO−、−O−、−OC64C(CH3264O−、−S−、−SO2−である)で表される基、またはこれらの基の芳
香環に直結する1〜3個の水素が水酸基で置き換えられた基である。
【0257】
式(II-1)で表されるアルケニル置換ナジイミド化合物の中でも、
14およびR15がそれぞれ独立に水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたはベンジルであり、
nが2であり、
16が−Cp2p−(ここで、pは2〜10の整数である。)で表されるアルキレン、
−(R17a−C64−R18−(ここで、aは0または1の整数、R17およびR18はそれ
ぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレンである)で表される基、または−C64−T−C6
4−(ここで、Tは−CH2−、−C(CH32−、−CO−、−O−、−OC64C(CH3264O−、−S−または−SO2−である)で表される基である、
アルケニル置換ナジイミド化合物が好ましい。
【0258】
式(II-1)で表されるアルケニル置換ナジイミド化合物の中でも、R14およびR15がそれぞれ独立に水素または炭素数1〜6のアルキルであり、nが2であり、R16が−(CH26−、下記式(II-2)で表される基または下記式(II-3)で表される基である、アルケニル置換ナジイミド化合物が特に好ましい。
【0259】
【化79】

【0260】
本発明のインクジェット用インク中のアルケニル置換ナジイミド化合物濃度は、通常0〜40重量%、好ましくは0〜20重量%である。このような濃度範囲であると、絶縁膜として良好な特性を付与できることがある。
【0261】
1.4.3 シリコンアミド酸化合物
シリコンアミド酸化合物は、分子内にアミド酸構造を有するシリコンアミド酸化合物であれば特に限定されないが、例えば、国際公開第2008/123190号パンフレットに記載されている、分子内に少なくとも2つのアミド酸構造を有する、下記式(III)で
表されるシリコンアミド酸または下記式(IV)で表されるシリコンアミド酸が挙げられる。
【0262】
式(III)で表されるシリコンアミド酸の中でも、下記式(III-1)、(III-2)または
(III-3)で表されるシリコンアミド酸が好ましい。式(IV)で表されるシリコンアミド
酸の中でも、下記式(IV-1)、(IV-2)、(IV-3)または(IV-4)で表されるシリコンアミド酸が好ましい。
【0263】
【化80】

【0264】
式(III)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素、ハロゲンまたは炭素数1〜100の一価の有機基であり、Xは炭素数1〜100の四価の有機基であり、Yは炭素数1〜
20の有機基である。
【0265】
【化81】

【0266】
式(III-1)、(III-2)または(III-3)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素、ハロゲンまたは炭素数1〜100の一価の有機基であり、R1、R2およびR3の内の少な
くとも一つは炭素数1〜20のアルコキシ基を含み、aは1〜20の整数である。
【0267】
【化82】

【0268】
式(IV)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素、ハロゲンまたは炭素数1〜10
0の一価の有機基であり、Y’は炭素数1〜20の三価の有機基であり、X’は炭素数1〜100の二価の有機基である。
【0269】
【化83】

【0270】
式(IV-1)、(IV-2)、(IV-3)および(IV-4)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立
に水素、ハロゲンまたは炭素数1〜100の一価の有機基であり、R1、R2およびR3
内の少なくとも一つは炭素数1〜20のアルコキシ基を含み、aは1〜20の整数である。式(IV-3)中のRは炭素数2〜30の一価の有機基である。式(IV-4)のRは水素または炭素数1〜20のアルキルである。
【0271】
本発明のインクジェット用インク中のシリコンアミド酸化合物濃度は、通常0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%である。このような濃度範囲であると、絶縁膜として良好な特性を付与できることがある。
【0272】
1.4.4 アクリル樹脂
アクリル樹脂は、アクリル基またはメタクリル基を有する樹脂であれば特に限定されない。アクリル樹脂としては、例えば、ヒドロキシルを有する単官能重合性モノマー、ヒドロキシルを有しない単官能重合性モノマー、二官能(メタ)アクリレートまたは三官能以上の多官能(メタ)アクリレートの単独重合体、あるいはこれらのモノマーの共重合体が挙げられる。
【0273】
ヒドロキシルを有する単官能重合性モノマーの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらの中でも、形成される膜を柔軟にできる点から、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートが好ましい。
【0274】
ヒドロキシルを有しない単官能重合性モノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジ
ル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタ−3−イルメチルエーテル、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、ビニルトルエン、(メタ)アクリルアミド、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニ
ルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、N−アクリロイルモルホリン、5−テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチル(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]およびシクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]を挙げることができる。
【0275】
二官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレートおよびジペンタエリスリトールジアクリレートを挙げることができる。
【0276】
三官能以上の多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレートおよびウレタン(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0277】
アクリル樹脂は1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0278】
本発明のインクジェット用インク中のアクリル樹脂濃度は特に限定されないが、0.1〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がさらに好ましい。このような濃度範囲であると、本発明のインクジェット用インクから形成された塗膜の耐熱性、耐薬品性、平坦性が良好である。
【0279】
1.4.5 界面活性剤
界面活性剤は、本発明のインクジェット用インクの下地基板への濡れ性、レベリング性、または塗布性を向上させるために使用することができ、本発明のインクジェット用インク100重量%中、0.01〜1重量%の量で用いられることが好ましい。
【0280】
界面活性剤としては、本発明のインクジェット用インクの塗布性を向上できる点から、例えば、商品名「Byk−300」、「Byk−306」、「Byk−335」、「Byk−310」、「Byk−341」、「Byk−344」、「Byk−370」(ビック・ケミー(株)製)等のシリコン系界面活性剤;商品名「Byk−354」、「ByK−358」、「Byk−361」(ビック・ケミー(株)製)等のアクリル系界面活性剤;商品名「DFX−18」、「フタージェント250」、「フタージェント251」(ネオス(株)製)等のフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
【0281】
界面活性剤は1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0282】
1.4.6 帯電防止剤
帯電防止剤は、本発明のインクジェット用インクの帯電を防止するために使用することができ、本発明のインクジェット用インク100重量%中、0.01〜1重量%の量で用いられることが好ましい。
【0283】
帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、公知の帯電防止剤を用いることができる。具体的には、酸化錫、酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物、酸化錫・酸化インジウム複合酸化物などの金属酸化物や四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0284】
帯電防止剤は1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0285】
1.4.7 カップリング剤
カップリング剤は、特に限定されるものではなく、公知のカップリング剤を用いることができ、本発明のインクジェット用インク100重量%中、0.01〜3重量%の量で用いられることが好ましい。
【0286】
カップリング剤としてはシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤として具体的には、トリアルコキシシラン化合物またはジアルコキシシラン化合物などを挙げることができる。
【0287】
トリアルコキシシラン化合物またはジアルコキシシラン化合物としては、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン
、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノエチル−γ−イミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランを挙げることができる。これらの中でも、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0288】
カップリング剤は1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0289】
1.4.8 エポキシ硬化剤
エポキシ硬化剤は、特に限定されるものではなく、公知のエポキシ硬化剤を用いることができ、本発明のインクジェット用インク100重量%中、0.2〜5重量%の量で用いられることが好ましい。
【0290】
具体的には、有機酸ジヒドラジド化合物、イミダゾールおよびその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物などを挙げることができる。
【0291】
さらに具体的には、ジシアンジアミド等のジシアンジアミド類、アジピン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等の有機酸ジヒドラジド、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチルイミダゾリル−(1’)]−エチルトリアジン、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、無水フタル酸、無水トリメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物などの酸無水物、またはトリメリット酸が挙げられる。これらの中でも透明性が良好なトリメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物が好ましい。
【0292】
エポキシ硬化剤は1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0293】
1.5 インクジェット用インクの粘度
本発明のインクジェット用インクの、インクジェットヘッドから吐出するときの温度(吐出温度)における粘度は、通常1〜50mPa・s、好ましくは3〜30mPa・s、より好ましくは3〜20mPa・s、さらに好ましくは3〜15mPa・sである。粘度が前記範囲にあると、インクジェット塗布方法によるジェッティング精度が向上する。粘度が15mPa・sより小さいと、インクジェット吐出不良が生じることがない。
【0294】
また常温(25℃)でジェッティングを行う場合も多いため、本発明のインクジェット用インクの25℃における粘度は、1〜50mPa・sであることが好ましく、3〜30mPa・sであることがより好ましく、3〜20mPa・sであることがさらに好ましく、3〜15mPa・sであることが特に好ましい。25℃における粘度が15mPa・sより小さいと、インクジェット吐出不良が生じることがない。
【0295】
1.6 インクジェット用インクの表面張力
本発明のインクジェット用インクの25℃における表面張力は、通常20〜45mN/m、好ましくは25〜35mN/mである。表面張力が前記範囲にあると、ジェッティングにより良好な液滴が形成でき、かつメニスカスを形成することができる。
【0296】
1.7 インクジェット用インクの水分量
本発明のインクジェット用インク中の水分量は、10,000ppm以下が好ましく、5,000ppm以下がさらに好ましい。水分量が前記範囲であると、インクジェット用インクの粘度変化が少なく、保存安定性に優れる。
【0297】
[2.イミド化合物の膜]
本発明のイミド化合物の膜は、本発明のインクジェット用インクを、例えばインクジェット塗布方法によって基板上に塗布して塗膜を形成した後、ホットプレートまたはオーブンなどで加熱処理することにより、全面または所定のパターン状(例えばライン状)のイミド化合物の膜として得ることができる。また、本発明のイミド化合物の膜の形成は、加熱処理に限定されず、UV処理やイオンビーム、電子線、ガンマ線などの処理でもよい。
【0298】
本発明のイミド化合物の膜またはイミド化合物のパターン膜から形成された絶縁膜は、例えば、耐熱性および電気絶縁性が高く、充分な機械的強度を有し、反り量が少なく、電子部品の信頼性や歩留まりを向上させることができる。
【0299】
2.1 インクジェット塗布方法
本発明のインクは、含有成分を適正に選択することにより、様々な方法で吐出が可能であり、インクジェット塗布方法によれば、本発明のインクジェット用インクを予め定められたパターン状に塗布することができる。
【0300】
本発明のインクをインクジェット塗布方法により塗布する場合に、その方法としては各種のタイプがある。吐出方法としては、例えば、圧電素子型、バブルジェット(登録商標)型、連続噴射型および静電誘導型が挙げられる。本発明のインクジェット用インクを用いて塗布を行う際の好ましい吐出方法は、圧電素子型である。この圧電素子型のヘッドは、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクとを備えた、オンデマンドインクジェット塗布ヘッドであり、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させる。
【0301】
インクジェット塗布装置は、塗布ヘッドとインク収容部とが別体となった構成に限らず、それらが分離不能に一体になった構成であってもよい。また、インク収容部は、塗布ヘッドに対して、分離可能または分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもののほか、装置の固定部位に設けられて、インク供給部材、例えば、チューブを介して塗布ヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。
【0302】
また、塗布ヘッドに対して、好ましい負圧を作用させるための構成をインクタンクに設ける場合には、インクタンクのインク収納部に吸収体を配置した形態、あるいは可撓性のインク収容袋とこれに対しその内容積を拡張する方向の付勢力を作用させるバネ部とを有した形態などを採用することができる。塗布装置は、シリアル塗布方式を採るもののほか、塗布媒体の全幅に対応した範囲にわたって塗布素子を整列させてなるラインプリンタの形態をとるものであってもよい。
【0303】
2.2 イミド化合物の膜の形成方法
本発明のイミド化合物の膜の形成方法は、本発明のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって基板上に塗布して塗膜を形成する工程、および前記塗膜を硬化処
理する工程を含む。
【0304】
上記塗膜を形成した後、通常、ホットプレートまたはオーブンなどでの加熱により溶媒を気化等させて除去する、すなわち乾燥する。この加熱条件は各成分の種類および配合割合によって異なるが、通常70〜150℃で、オーブンを用いた場合は5〜15分間、ホットプレートを用いた場合は1〜15分間乾燥する。
【0305】
乾燥した後、塗膜の耐熱性、耐薬品性、平坦性、さらには充分な機械的強度を得るために、通常150〜350℃で、オーブンを用いた場合は30〜90分間、ホットプレートを用いた場合は5〜30分間加熱処理(硬化処理)することにより、イミド化合物の膜を形成することができるが、好ましくは200℃以下の比較的低温で硬化処理を行うことができる。
【0306】
インクジェット塗布方法を用いてパターン状に印刷した場合には、パターン状の膜(パターン膜)が形成される。本明細書では、特に言及のない限り、イミド化合物の膜は、イミド化合物のパターン状の膜(パターン膜)を含むものとする。
【0307】
このようにして得られたポリイミド膜は、本発明の好ましい態様に係るインクジェット用インクが、ジイミド化合物(A)を高濃度で含んでいることから、従来のインクジェット用インクの塗布、加熱により形成されていたポリイミド膜よりも厚く、その厚みは通常2μm以上であり、好ましくは2〜5μmである。
【0308】
このように本発明の好ましい態様に係るインクジェット用インクからは、1回のジェッティングで厚いポリイミド膜を得ることができる。このため、例えば10μm程度の厚い絶縁膜を形成する場合には、従来のインクジェット用インクよりも、重ね塗りの回数を減らすことができ、絶縁膜の製造工程を短縮することができる。
【0309】
本発明のインクジェット用インクを用いてパターン膜を形成する場合、インクジェット印刷により必要な部分のみに描画すればよい。このため、エッチング等の他の方法に比べて材料使用量が圧倒的に少なく、フォトマスクを使用する必要等がないので、多品種大量生産が可能であり、また製造に要する工程数も低減できる。
【0310】
[3.基板]
本発明のフィルム基板は、例えば、配線が形成されたポリイミドフィルム等の基板上に、本発明のインクをインクジェット塗布方法によって全面または所定のパターン状(ライン状等)に塗布し、その後、上記で説明したように基板を乾燥し、さらに加熱してポリイミド膜を形成させて得られる。
【0311】
本発明のシリコンウエハー基板は、例えば、シリコンウエハー等の基板上に、本発明のインクをインクジェット塗布方法によって全面または所定のパターン状に塗布し、その後、上記で説明したように基板を乾燥し、さらに加熱してポリイミド膜を形成されて得られる。
【0312】
本発明で用いることができるポリイミド膜は、好ましくは上述したポリイミドフィルム等の基板上あるいはシリコンウエハー基板上に形成されるが、特にこれに限定されるものではなく公知の基板上に形成することができる。
【0313】
本発明に適用可能な基板としては、例えば、FR−1、FR−3、FR−4、CEM−3、またはE668等の各種規格に適合する、ガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、グリーンエポキシ基板、およびBTレジン基
板が挙げられる。
【0314】
本発明に適用可能な他の基板としては、例えば、銅、黄銅、リン青銅、ベリリウム銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、スズ、クロム、またはステンレス等の金属からなる基板(それらの金属を表面に有する基板であってもよい);酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、ジルコニウムのケイ酸塩(ジルコン)、酸化マグネシウム(マグネシア)、チタン酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛(PT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、硫化カドニウム、硫化モリブデン、酸化ベリリウム(ベリリア)、酸化ケイ素(シリカ)、炭化ケイ素(シリコンカーバイト)、窒化ケイ素(シリコンナイトライド)、窒化ホウ素(ボロンナイトライド)、酸化亜鉛、ムライト、フェライト、ステアタイト、ホルステライト、スピネル、またはスポジュメン等のセラミックスからなる基板(それらのセラミックスを表面に有する基板であってもよい);PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PCT(ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、テフロン(登録商標)、熱可塑性エラストマー、または液晶ポリマー等の樹脂からなる基板(それらの樹脂を表面に有する基板であってもよい);シリコン、ゲルマニウム、またはガリウム砒素等の半導体基板;ガラス基板;酸化スズ、酸化亜鉛、ITO、またはATO等の電極材料が表面に形成された基板;αGEL(アルファゲル)、βGEL(ベータゲル)、θGEL(シータゲル)、またはγGEL(ガンマゲル)(以上、株式会社タイカの登録商標)等のゲルシートが挙げられる。
【0315】
[4.電子部品]
本発明の電子部品は、上述のフィルム基板を有する電子部品、あるいは上述のシリコンウエハー基板を有する電子部品である。このように本発明のフィルム基板を利用して、フレキシブルな電子部品が得られる。また、本発明のシリコンウエハー基板を利用して、半導体電子部品が得られる。
【実施例】
【0316】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における各物性の測定方法は、以下の通りである。
【0317】
(i)粘度
溶液の粘度は、25℃にて、E型粘度計(TOKYO KEIKI製 VISCONIC EHD)で測定した。
【0318】
(ii)誘電率、体積抵抗率、耐電圧
インクをクロム基板上にし、スピンコートにより薄膜を形成した後、80℃のホットプレート上で15分間、乾燥させ、さらにオーブンに入れて180℃で、30分間、硬化させた。その後、得られたイミド化合物の膜上にアルミニウムを蒸着させて電極を作成した。
【0319】
誘電率は、プレシジョンLCRメーター E4980A(Agilent Technologies社製)を用いて測定した。体積抵抗率および耐電圧は、ディジタル超絶縁/微少電流計 DSM−8104(日置電機株式会社製)を用いて測定した。
【0320】
(iii)5%重量減温度
5%重量減温度は、線膨張係数測定用の試料片を用いて、示差熱重量同時測定装置(セイコーインスツルメント社製、SSC5200)で測定した。測定条件を下記に示す。
・試料重量:5mg
・膜厚:80μm
・昇温開始温度:30℃
・昇温終了温度:500℃
・昇温速度:10℃/min
・雰囲気:空気中
(iv)線膨張係数
インクジェット用インクを基材(アルミホイル)上にアプリケーターを用いて塗布した。80℃のホットプレート上で15分間、乾燥させ、さらにオーブンに入れて180℃で30分間、加熱し、基材の片面に製膜した。基材からイミド化合物の膜を剥離した後、熱・応力・歪測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、TMA/SS6100)を用いて、熱線膨張係数を測定した。測定条件を下記に示す。
・試料長さ:10mm
・試料幅:3mm
・膜厚:80μm
・昇温開始温度:30℃
・昇温終了温度:300℃
・昇温速度:10℃/min
・雰囲気:空気中
・線膨張係数の算出:50〜125℃(ファーストスキャン)
(v)ライン幅、エッジの直線性、膜厚
FUJIFILM Dimatix社製インクジェット塗布装置DMP−2831で、基板(1.5mm厚のガラスエポキシ樹脂両面銅張り板)上に、1ドット幅でドットピッチ40ミクロンに設定した長さ5cmのライン塗布を加温(40℃)で行った。インクジェットヘッドのヒーターの設定をOFFとし、ピエゾ電圧は16V、駆動周波数は5kHzとした。基板を80℃のホットプレートで5分間乾燥した後、180℃のオーブンで60分間加熱し、ライン状に形成されたイミド化合物の絶縁膜を得た。
【0321】
絶縁膜を株式会社キーエンス製のカラーレーザー顕微鏡VK8710で観察した。ライン幅は、装置に付属している解析ソフトを用いて測定した。また、エッジの直線性は、目視で確認した。KLA−Tencor Japan株式会社製の触針式膜厚計αステップ200を使用し、3箇所の測定値の相加平均値を膜厚とした。
【0322】
実施例および比較例で用いた、テトラカルボン酸無水物、溶剤および添加剤またはその原料の名称を以下の略号で示す。以下の記述にはこの略号を使用する。
テトラカルボン酸無水物
ODPA:3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
TA−O:1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸オキシジ−4,1−フェニレンエステル
TAHQ:p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)
BTDA:3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
TDA:4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物
MCDA:5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
MMDA:シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
BPDA−H:3,3’,4,4’−ビシクロへキシルテトラカルボン酸二無水物
BTA−H:ビシクロ[2,2,2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物
溶媒
EDM :ジエチレングリコールメチルエチルエーテル
エポキシ樹脂
S510:3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
[実施例1]
反応容器に、ODPA 3.25g(10.48mmol)、イソロイシン 2.75g(20.96mmol)およびEDM 14.04gを加え、170℃で3時間加熱攪拌した。反応終了後、EDMおよび反応で生じた水を除去した。反応物、S510およびEDMの重量比(反応物:S510:EDM)が、1:1:2になるように、EDMおよびS510を加えた。この混合物を100℃で20分攪拌することによりインクジェット用インクを調製した。このインクを用いて上記(i)〜(v)の評価を行った。上記(i)〜(iv)の評価結果を表2に示す。また、ライン幅はインクを塗布したときの幅をほぼ維持しており、エッジの直線性も良好であり、膜厚2.1μmで充分な厚みを有していた。
【0323】
[実施例2〜19]
実施例1において、表1に記載の種類・量のテトラカルボン酸二無水物(a1)、アミノ酸(a2)および反応溶媒を使用し、かつ、表1に記載の重量比となるよう反応物にS510およびEDMを加えたこと以外は実施例1と同様にして、インクジェット用インクを調製した。上記(i)〜(iv)の評価結果を表2に示す(実施例5および実施例11のみ上記(iv)の評価を行った。また、実施例10は、上記(i)の評価のみ行った)。なお、これらの結果から、用いたインクジェット用インクは、200℃以下の低温で硬化が可能であることがわかった。
【0324】
[実施例20]
反応容器に、ODPA 4.33g(13.97mmol)、イソロイシン 3.64g(27.94mmol)およびEDM 12.00gを加え、170℃で3時間加熱攪拌した。反応終了後、EDMおよび反応で生じた水を除去した。除去したEDMおよび水の量は合わせて12.42gであった。反応物0.60gを取り出し、これにEDM1.40gを注ぎ溶解させることによりインクジェット用インクを得た。インクの粘度は7.8cPであった。
【0325】
[比較例1]インクジェット用インク(C1)
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた500mlの四つ口フラスコに、以下に示す原料を仕込み、乾燥窒素気流下40℃で10時間攪拌した後、70℃に昇温して8時間攪拌し、黄色透明なポリアミド酸の8重量%溶液を得た。この溶液をそのままインクジェット用インク(C1)とした。
【0326】
ODPA 20.0g
DDS(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン) 16.0g
NMP(N−メチル−2−ピロリドン) 414.0g
インクジェット用インク(C1)の粘度は9.1mPa・sであった。また、インク(C1)では、溶媒としてEDMを使用すると反応生成物が析出するため、NMPを使用した。ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定したポリアミド酸の重量平均分子量は25,000であった。
【0327】
このインク(C1)を用いて上記(v)の評価を行った。その結果、ライン幅は610
〜680μmとなり、インクを塗布したときのライン幅より大幅に広がってしまった。エッジの直線性も不充分でギザギザがあった。膜厚も0.4μmであり、充分な厚みを有していなかった。
【0328】
[比較例2]
反応容器に、無水こはく酸(3.2718g)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(7.2324g)およびテトラエトキシシラン(4.5024g)を添加し、180℃で3時間還流した。反応後の反応溶液をインクジェット用インク(C2)とした。インク(C2)中の固形分濃度は70重量%であり、インク(C2)の粘度は24.9mPa・sであった。
【0329】
このインク(C2)を用いて上記(i)〜(v)の評価を行った。上記(i)〜(iv)の評価結果を表2に示す。また、ライン幅は110μmであり、エッジの直線性はギザギザしておらず良好であり、膜厚は10.2μmであった。
【0330】
【表1】

【0331】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0332】
本発明のインクジェット用インクの活用法として、例えば、フレキシブル配線基板用絶縁膜、半導体素子用絶縁膜およびそれらを用いた電子部品などが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるジイミド化合物(A)と、溶媒(B)とを含むインクジェット用インク。
【化1】

[式(1)中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基であり、複数あるYはそれぞれ独立に炭素数1〜100の二価の有機基である。]
【請求項2】
ジイミド化合物(A)が、式(2)で表されるジイミド化合物および式(2’)で表されるジイミド化合物からなる群から選ばれる1種以上である請求項1に記載のインクジェット用インク。
【化2】

[式(2)中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基であり、複数あるRはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数6〜10のアリールであり、前記アルキルは、ヒドロキシル、フェノール、チオール、スルフィド、インドールまたはイミダゾールを含んでいてもよい。式(2)’中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基であり、複数あるnはそれぞれ独立に2〜11の整数である。]
【請求項3】
ジイミド化合物(A)が、式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物(a1)と式(4)で表されるアミノ酸(a2)とを反応させて得られるジイミド化合物である請求項1または2に記載のインクジェット用インク。
【化3】

[式(3)中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基であり、式(4)中、Yは炭素数1
〜100の二価の有機基である。]
【請求項4】
アミノ酸(a2)が、式(5)で表されるアミノ酸および式(6)で表されるアミノ酸からなる群から選ばれる1種以上である請求項3に記載のインクジェット用インク。
【化4】

[式(5)中、Rは水素、炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数6〜10のアリールであり、前記アルキルは、ヒドロキシル、フェノール、チオール、スルフィド、インドールまたはイミダゾールを含んでいてもよい。式(6)中、nは2〜11の整数である。]
【請求項5】
テトラカルボン酸二無水物(a1)が、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',
4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4−ジカル
ボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、エタンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸,[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン]ジ−4,1−フェニレンエステル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸オキシジ−4,1−フェニレンエステル、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロへキシルテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物および5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物からなる群から選ばれる1種以上である請求項3または4に記載のインクジェット用インク。
【請求項6】
アミノ酸(a2)が、グリシン、アラニン、β−アラニン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、システイン、メチオニン、セリン、トレオニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸および12−アミノラウリン酸からなる群から選ばれる1種以上である請求項3〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項7】
さらにエポキシ樹脂を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項8】
エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、オキシランを有するモノマーの重合体、アルコキシシリルとオキシランとを有する化合物、およびオキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体からなる群から選ばれる1種以上である請求項7に記載のインクジェット用インク。
【請求項9】
エポキシ樹脂が、式(I)〜(VI)からなる群から選ばれる1種以上である請求項7に記載のインクジェット用インク。
【化5】

[式(V)中、Rf、RgおよびRhはそれぞれ独立に水素または炭素数1〜30の有機基
である。式(VI)中、Rcは炭素数2〜100の四価の有機基であり、Rdは炭素数1〜30の二価の有機基であり、Reは式(VII)〜(IX)からなる群から選ばれる一価の有機基である。]
【化6】

[式(VII)中、Rfは水素または炭素数1〜3のアルキルである。]
【請求項10】
ジイミド化合物(A)の含有量が、インク全量に対して、5〜95重量%である請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項11】
インクジェット吐出温度における粘度が、1〜50mPa・sである請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項12】
溶媒(B)が、乳酸エチル、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランおよびジフェニルジエトキシシランからなる群から選ばれる1種以上を含有する溶媒である請求項1〜11のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項13】
溶媒(B)全量に対して、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−ビニル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムおよびカルバミド酸エステルからなる群から選ばれる1種以上の溶媒の含有量が、0を越え、20重量%以下である請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項14】
溶媒(B)全量に対して、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−ビニル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムおよびカルバミド酸エステルからなる群から選ばれる1種以上の溶媒の含有量が、0重量%である請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項15】
溶媒(B)の含有量が、インク全量に対して、1〜94.9重量%である請求項12〜14のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項16】
溶媒(B)の含有量が、インク全量に対して、30〜90重量%である請求項12〜14のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項17】
さらに、高分子化合物、アルケニル置換ナジイミド化合物、シリコンアミド酸化合物、アクリル樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤およびエポキシ硬化剤からなる群から選ばれる1種以上を含む請求項1〜16のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項18】
高分子化合物が、テトラカルボン酸二無水物(e1)とジアミン(e2)とを少なくとも用いて得られ、式(7)で表される構成単位を有するポリアミド酸またはそのイミド化重合体である請求項17に記載のインクジェット用インク。
【化7】

[式(7)中、Xは炭素数2〜100の四価の有機基であり、Yは炭素数2〜100の二価の有機基である。]
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載のインクジェット用インクから得られる、イミド化合物の膜またはイミド化合物のパターン膜。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか1項に記載のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって基板上に塗布して塗膜を形成した後、前記塗膜を硬化処理して得られる、イミド化合物の膜またはイミド化合物のパターン膜。
【請求項21】
請求項1〜18のいずれか1項に記載のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって基板上に塗布して塗膜を形成する工程、および前記塗膜を硬化処理する工程を含む、イミド化合物の膜またはイミド化合物のパターン膜の形成方法。
【請求項22】
請求項19または20に記載のイミド化合物の膜またはイミド化合物のパターン膜が基板上に形成されたフィルム基板。
【請求項23】
請求項22に記載のフィルム基板を有する電子部品。
【請求項24】
請求項19または20に記載のイミド化合物の膜またはイミド化合物のパターン膜が基板上に形成されたシリコンウエハー基板。
【請求項25】
請求項24に記載のシリコンウエハー基板を有する電子部品。

【公開番号】特開2012−6992(P2012−6992A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141342(P2010−141342)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】