説明

インクジェット用インク

【課題】顔料系インクジェット用インクで形成される画像の彩度、濃度が高く、色調調整が容易で、かつインクの保存性に優れ、画像の耐水性、吐出安定性が良好で、特に印字曲がりの無い、インクジェット方式のプリンタで印字することができるインクジェット用インクを提供すること。
【解決手段】少なくとも顔料、分散剤、水、蛍光染料で染着され平均粒子径が50〜200nmの樹脂微粒子(A)、及びオルガノポリシロキサン系界面活性剤を含むことを特徴とするインクジェット用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光染料で染着された樹脂微粒子を含んでなる、画像濃度及び特に画像彩度が高く、微妙な色調調整が容易で、かつインクの保存性に優れ、画像の耐水性に優れ、吐出安定性が良好で、印字曲がりの無い、インクジェット方式のプリンタで印字することができるインクジェット用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録方式に用いるインクとしては、各種の水溶性染料を水単体もしくは水と水溶性溶剤からなる溶媒中に溶解し、必要に応じて各種添加剤を添加したものが主流であった。
【0003】
しかし、このような染料系インクを用いて印字を行なった場合、被記録材上での記録画像の耐水性が悪く、水をこぼしたりすると容易に記録部分の染料のにじみが生ずるという問題や、耐光性が悪いため、記録部分に光が当ると色調変化や濃度低下が発生するという問題があった。
【0004】
染料系インクの上記問題を改良するため、着色剤として染料の替りにカーボンブラックや各種有機顔料を用いた、いわゆる顔料系インクをインクジェット記録方式に適用することが知られている。
【0005】
顔料系インクを用いて印字を行なった場合、被記録材上で乾燥したインクは着色剤が顔料であるため、水がかかっても染料のように溶解してにじみが発生することはなく、耐水性が良好である。
また、顔料は染料に比較して光に対する反応性が低いため、顔料系インクの耐光性は染料系インクに較べ優れている。
【0006】
このような顔料系インクは、一般に顔料と液媒体と分散剤よりなる混合物をボールミル、サンドミル等の分散機で分散処理を行ない製造した顔料分散液に必要に応じて各種添加剤を添加して製造するが、インクジェット記録用インクに使用する顔料分散液は印刷装置(インクジェットプリンタ)のノズル詰まり防止、印字画像の鮮明性、2次色再現性、透明性確保のため、通常200nm以下の粒子径レベルまで顔料分散液中の顔料粒子を微粒子化分散する必要がある。更に50nm以下のレベルにまで微粒子化すれば、染料インクに近い、高彩度で透明性の高い画像が形成し得ることが知られている。
しかしながら、例えばマゼンタ色で従来主に使用されている顔料のひとつであるキナクリドン系顔料等では、微粒子化によりある程度画像彩度は上昇するが、染料インクで形成されたマゼンタ色画像の彩度には及んでいない。
【0007】
特許文献1(特開2002−30237号公報)には、顔料を樹脂により被覆してなる着色剤と、アセチレングリコール系界面活性剤又はポリシロキサン系界面活性剤から選ばれた浸透剤、水溶性有機溶剤を含むインクジェット記録用インクが記載され、特許文献2(特開2002−114932号公報)には、水、自己分散可能な顔料、水溶性有機溶剤、界面活性剤を含み、該界面活性剤としてポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテル又はアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物から選ばれたものを0.01〜3質量%添加することにより、普通紙に対する接触角を65°〜90°としたインクジェット記録用インクが記載されているが、これらは、蛍光染料による彩度向上を意図したものではない。
顔料インクの画像彩度向上の試みとしては、特許文献3(特開平10−130558公報)があり、インクに蛍光顔料をインク量に対し0.1重量%〜3重量%添加する。これにより、彩度を約5%程度向上させることが開示されている。
しかし、この様に蛍光顔料を通常の顔料に添加した場合作成されたインクは、通常顔料の固形分と蛍光顔料を混合するため、その分の固形分が追加されたものとなり、インク溶液中は多大な固形分濃度となる。このインクを用いてインクジェットプリンタで印字評価を行った場合、(1)画像性の低下、(特に画像彩度の低下)、(2)インクをピエゾ方式のインクジェットプリンタにセットし1ヶ月間放置後、再度印字を行なった際にインクが詰まりインク供給ができず印字ができなくなる課題があった。
【0008】
また、特許文献4(特開平9−227817号公報)には、多量の蛍光染料が被印刷体表面に残留するようにして被印刷体表面での蛍光染料の濃度を高くし、蛍光発光強度の高い像を形成することが可能な水性ジェット印刷用蛍光インク及び該インクによる蛍光発光マーキング方法が提供されている。
しかしながら、特許文献4記載のインクをインクジェット用インクとして使用するには、画像濃度が低く単独での使用ができない。
このような混合タイプの場合(蛍光顔料を通常の顔料に添加した場合作成されたインク)必要な画像濃度が得られないという課題がある。
特許文献5(特開2001−181544号公報)にも、分野は違うが、このような染着樹脂微粒子を用いた水性ペン用の水性インクが記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2002−30237号公報
【特許文献2】特開2002−114932号公報
【特許文献3】特開平10−130558号公報
【特許文献4】特開平9−227817号公報
【特許文献5】特開2001−181544公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、顔料系インクジェット用インクで形成される画像の彩度、濃度が高く、色調調整が容易で、かつインクの保存性に優れ、画像の耐水性、吐出安定性が良好で、特に印字曲がりの無い、インクジェット方式のプリンタで印字することができるインクジェット用インクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係るインクジェット用インクは、少なくとも顔料、分散剤、水、蛍光染料で染着され平均粒子径が50〜200nmの樹脂微粒子(A)、及びオルガノポリシロキサン系界面活性剤を含むことを特徴とするインクジェット用インクとすることにより、画像の彩度、濃度が高く、微妙な色調調整が容易で、かつインクの保存安定性に優れ、また画像の耐水性に優れ、吐出安定性が良好で、特に印字曲がりの無い、インクジェット方式のプリンタで印字することができるインクジェット用インクを提供し得たものである。
【0012】
すなわち、上記課題は、以下に示す本発明の(1)〜(23)の構成によって解決される。
(1)「少なくとも顔料、分散剤、水、蛍光染料で染着され平均粒子径が50〜200nmの樹脂微粒子(A)、及びオルガノポリシロキサン系界面活性剤を含むことを特徴とするインクジェット用インク」、
(2)「前記オルガノポリシロキサン系界面活性剤が、疎水基にメチルポリシロキサン、親水基にポリオキシエチレンの構造をもつ、非イオン界面活性剤であることを特徴とする前記第(1)項に記載のインクジェット用インク」、
(3)「前記オルガノポリシロキサン系界面活性剤のHLB値が5以上18以下であることを特徴とする前記第(2)項に記載のインクジェット用インク」、
(4)「前記蛍光染料で染着された樹脂微粒子(A)固形分を0.1〜40.0重量%含んでなることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項に記載のインクジェット用インク」、
(5)「前記顔料の平均粒子径が10〜200nmであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載のインクジェット用インク」、
(6)「前記顔料を1〜15重量%含んでなることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載のインクジェット用インク」、
(7)「前記分散剤が、下記一般式(I)で表わされるEOナフタレン化合物であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載のインクジェット用インク;
【0013】
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリル基、アラルキル基を表わし、lは0〜7の整数を表わし、nは20〜200の整数を表わす。)」、
(8)「前記EOナフタレン化合物が、POE(n=40)βナフチルエーテルであることを特徴とする前記第(7)項に記載のインクジェット用インク」、
(9)「アルカンジオールをさらに含んでなることを特徴とする前記第(1)項乃至第(10)項のいずれかに記載のインクジェット用インク」、
(10)「前記第(1)項乃至第(9)項に記載のインクジェットインクを製造する方法であって、少なくとも顔料、分散剤、水よりなる顔料分散体に、自己乳化型ポリウレタン樹脂の水性エマルジョンを添加して調合した構成物を作成し、攪拌操作を行なった後、蛍光染料で染着され平均粒子径が50〜200nmの樹脂微粒子(A)を添加し、更に攪拌操作を行なった後、その混合物に、オルガノポリシロキサン系界面活性剤、湿潤剤、消泡剤、滲み防止剤、PH緩衝剤、防腐剤からなる群から選ばれた添加剤を、必要に応じ添加する順序で作成することを特徴とするインクジェットインクの製造方法」、
(11)「前記自己乳化型ポリウレタンがアニオン型であることを特徴とする前記第(10)項に記載のインクジェット用インクの製造方法」、
(12)「前記ポリウレタン固形分を0.01〜7重量%含んでなることを特徴とする前記第(10)項又は第(11)項に記載のインクジェット用インクの製造方法」、
(13)「前記ポリウレタンエマルジョンの平均粒子径が50nm以下であることを特徴とする前記第(10)項乃至第(12)項のいずれかに記載のインクジェット用インクの製造方法」、
(14)「前記第(10)項乃至第(13)項のいずれかに記載の方法で作成されたことを特徴とするインクジェット用インク」、
(15)「前記第(1)項乃至第(9)項のいずれかに記載のインクジェット用インク又は前記第(14)項に記載のインクジェット用インクを含有することを特徴とするインクカートリッジ」、
(16)「画像形成装置に着脱可能であることを特徴とする前記第(15)項に記載のインクカートリッジ」、
(17)「前記第(1)項乃至第(9)項のいずれかに記載のインクジェット用インク又は前記第(14)項に記載のインクジェット用インクを用いて受容体に画像が形成されていることを特徴とする画像形成体」、
(18)「前記第(1)項乃至第(9)項のいずれかに記載のインクジェット用インク又は前記第(14)項に記載のインクジェット用インクを用いて受容体に画像を形成することを特徴とする画像形成方法」、
(19)「前記画像形成装置がインクジェットプリンタであることを特徴とする前記第(16)項に記載のインクカートリッジ」、
(20)「インクジェットプリンタから受容体に前記第(1)項乃至第(9)項のいずれかに記載のインクジェット用インク又は前記第(14)項に記載のインクジェット用インクを吐出させることを特徴とする前記第(18)項に記載の画像形成方法」、
(21)「前記インクジェットプリンタが、ピエゾ方式のインクジェットプリンタであることを特徴とする前記第(20)項に記載の画像形成方法」、
(22)「前記インクジェットプリンタが、サーマル方式のインクジェットプリンタであることを特徴とする前記第(20)項に記載の画像形成方法」、
(23)「前記受容体が紙であることを特徴とする前記第(17)項に記載の画像形成体」。
【発明の効果】
【0014】
本発明のインクジェット用インクは、画像彩度が高くインクの安定性に優れ、且つインクの詰まりのないかつ印字曲がりが無く吐出安定性に優れているという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
前記第(1)〜(14)項によれば、画像の彩度、濃度が高く、色調調整が容易で、かつ保存安定性、画像の耐水性に優れ、吐出安定性が良好で、特に印字曲がりの無い、インクジェット方式のプリンタで印字することができるインクジェット用インクを提供し得る。
【0016】
また、前記第(1)項のインクジェット用インクにおいて、界面活性剤がオルガノポリシロキサン系界面活性剤であることが好ましい。
これらの中でも本発明においてはオルガノポリシロキサン部を有する化合物に親水性ポリマー鎖を有する化合物が好ましく、前記親水性ポリマー鎖としては、ポリエーテル結合を含有するものが特に好ましい。オルガノポリシロキサン系界面活性剤の添加量は、オルガノポリシロキサン系界面活性剤固形分として0.01〜10重量%が好ましい。0.01重量%より少ない場合、顔料に吸着するオルガノポリシロキサン系界面活性剤成分が少なく顔料同士の吸着が多くなり画像性が悪くなる。また、受容体にインクが着弾した場合の浸透性の制御性が悪い。
10重量%より多い場合オルガノポリシロキサン系界面活性剤成分が多いことでインク液の粘度が上昇し好ましくない。
また、染着樹脂微粒子(A)の平均粒子径は50〜200nmであることが好ましい。50nm未満では蛍光強度が低下するため、画像の彩度が低くなり、200nmを超えるとインクの吐出安定性が悪くなる。
更に染着樹脂微粒子(A)の平均粒子径は70〜150nmであることがより好ましい。平均粒子径は70〜150nmとすることにより顔料粒子の乱反射を防ぎ、かつ濃度均一な印字画像を提供できる。
【0017】
また、本発明の染着樹脂微粒子(A)を作成するには、公知の方法、例えば特許文献5(特開2001−181544号公報)に記載された実施例に開示されている方法を用いればよい。参考のため、特許文献5には、親水性付与のためのアクリルニトリルモノマー(A)、一般式CH=C(R)−CO・O(Y)n−O・PO(OH)で表されるビニルモノマー(B)(式中、Yは−CH2−、−CH2−CH(CH2・X)−で、nは1〜5)、及び、親水性付与のための一般式CH=C(R)−p−C−SONaで表されるビニルモノマー(C)の共重合体を染料で染着した樹脂粒子を用いた水性ペン用水性インクが開示されており、また、該染着樹脂粒子の製造例として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8.5g、非イオン界面活性剤[花王(株)製“エマルゲンLS−110”]7gを含む水440ccを、攪拌下で80℃に昇温させ、アクリロニトリル140g、スチレン119g、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート14gを混合撹拌した後、過硫酸カリウム2.1gを投入した後、この混合モノマーを上記分液ロートからフラスコ内に撹拌下3時間に亘って添加し、4時間で重合を終了し、得られた重合物に、水200g、カヤクリルブリリアントイエローF2G[日本化薬(株)製ベイシックイエロー40]20g、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤[花王(株)製“デモールEP”]21gを常温撹拌下で添加し、均一に混合した後、徐々に昇温させ、80℃1時間に亘って染色して粒子径0.1μmで鮮明な黄色の微粒子分散液を得たことが記載(実施例1)され、同得られた重合物に、水200g、ローダミンF3B[BASF社製“バソニールレッド560”]0.3g、ローダミンF4G[BASF社製“バソニールレッド485”]2.0g、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤[同上]17.5gを常温撹拌下で添加し、均一に混合した後、徐々に昇温させ、85℃1時間に亘って染色して粒子径0.1μm鮮明な桃色の微粒子分散液を得たことが記載(実施例2)され、実施例1の2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート14gの代わりに、スチレンスルホン酸Na[東ソー(株)製“スピノマーNass”]0.5g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4.9gを共重合させた実施例3が記載され、実施例3におけるカヤクリルブリリアントイエローF2G[日本化薬(株)製ベイシックイエロー40]20gの代わりに、ローダミンF3B[BASF社製“バソニールレッド560”]0.3g、ローダミンF4G[BAS社F製“バソニールレッド485”]2.0gを用いて桃色染着した微粒子を得たことが記載(実施例4)されている。
本発明における蛍光染料の比率については、染色体100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、0.1から5重量部が更に好ましい。
【0018】
本発明のオルガノポリシロキサン系界面活性剤としては、例えばポリジメチルシロキサンなどのオルガノポリシロキサン部を有する化合物(シリコーン系化合物)の側鎖、及び/又は末端に親水性の基や親水性ポリマー鎖を有する化合物がー般的である。前記親水性の基や親水性ポリマー鎖としては例えばポリエーテル結合(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキンドやこれらの共重合体など)、ポリグリセリン(C3Η6O(CH2CH(OH)CH2O)n−Hなど)、ピロリドン、ベタイン(C3Η6N+Me2−CH2COO―など)、硫酸塩(C3H6O(C2H4O)n−SO3Naなど)、リン酸塩(C3Η6O(C2H4O)n−P(=O)OHONaなど)、4級塩(C3H6N+Me3Cl−など)が挙げられる。なお、上記化学式中nは1以上の整数を表わす。
【0019】
また末端に重合性ビニル基を有するポリジメチルシロキサンなどと共重合可能なその他のモノマー(該モノマーの少なくとも一部には(メタ)アクリル酸やその塩などの親水性モノマーを用いることが好ましい)との共重合で得られる側鎖にポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系化合物鎖を有するビニル系共重合体などなども挙げられる。
【0020】
これらの中でも本発明においてはオルガノポリシロキサン部を有する化合物に親水性ポリマー鎖を有する化合物が好ましく、前記親水性ポリマー鎖としては、ポリエーテル結合を含有するものが特に好ましい。
【0021】
前記第(2)項のインクジェット用インクにおいてオルガノポリシロキサン系界面活性剤が、疎水基にメチルポリシロキサン、親水基にポリオキシエチレンの構造をもつ、非イオン界面活性剤であることが特に好ましい。
【0022】
具体的に本発明に好適のオルガノポリシロキサン系界面活性剤としては、信越シリコーン(株)社製の、KF640、KF642、KF643、KF351A、KF352A、KF353A、KF354A、KF355A、KF−615,KF−945,KF−618,KF−6004、日本エマルジョン社製の、SS−5050K、SS−1906EX、SS−5602、東レダウコーニングシリコーン社製の、SH3746オイル、SH3748オイル、SH3749オイル、SH3771オイル、SH8400などが挙げられる。
【0023】
前記第(3)項のインクジェット用インクにおいてオルガノポリシロキサン系界面活性剤のHLB値が5以上18以下であることが特に好ましい。
【0024】
オルガノポリシロキサン系界面活性剤のHLBの値が18を超えると水溶性と油溶性のバランスが水溶性に偏る。また、HLBの値が5未満であると水溶性と油溶性のバランスが油溶性に偏る。インク受容体にバランスが偏ったインクが着弾した場合、浸透性の制御性が悪くなる。
【0025】
HLB値は界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表わす値であり(Hydrophile-Lipophile Balance)HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなる。
【0026】
【数1】

【0027】
したがって親水性−新油性のバランス(HLB値)の異なった活性剤を選定することができる。
ポリオキシエチレン系の活性剤を例にとると、エチレンオキサイド基の個数が少ないと程HLB値は低く(油溶性)、エチレンオキサイド基の個数が多いと、HLB値は高く(水溶性)なる。
【0028】
前記第(10)項のインクジェット用インクにおいて、少なくとも顔料、分散剤、水よりなる顔料分散体に自己乳化型ポリウレタン樹脂の水性エマルジョンを添加して調合した構成物を作成し、攪拌操作(より好ましくは10分以上)を行なった後、平均粒子径が90〜200nmの蛍光染料で染着された樹脂微粒子(A)を添加し、更に攪拌操作(より好ましくは10分以上)を行なった後、その混合物に、湿潤剤、界面活性剤、消泡剤、滲み防止剤、PH緩衝剤、防腐剤からなる群から選ばれた添加剤を必要に応じ添加する順序で作成することが好ましい。
【0029】
顔料を界面活性剤で分散するには、顔料粉体と水と界面活性剤をプレミックス後、サンドミル、ダイノーミル等の分散機を用いて公知の方法で分散する。
このようにして得られた顔料分散体に上記の順序でポリウレタンエマルジョンを添加して調合した構成物を作成することにより顔料分散体が凝集を防ぐべく安定な状態におかれ、各々の紛体同士の凝集が防止されてインクとして粘度の安定な状態におかれる。
【0030】
このような順序の方法を採らなかったそれ以外の順序において作成された混合物によるインクジェットインクは、不安定な分散状態の液組成物となる。
このモデルとしては、顔料分散体にポリウレタンエマルジョンを添加して顔料にポリウレタンエマルジョンが吸着しその後その外側に平均粒子径が50〜200nmの蛍光染料で染着された樹脂微粒子(A)が吸着し、蛍光染料で染着された樹脂微粒子(A)と顔料分散体が凝集を防ぐべく最適な安定状態におかれ、各々の紛体同士の凝集が防止されている。
【0031】
前記(4)項のインクジェット用インクにおいて、蛍光染料で染着された樹脂微粒子(A)固形分を0.1〜40.0重量%とすることが好ましく、0.5〜25.0重量%とすることがより好ましい。0.1重量%よりも低いと画像彩度の向上効果が低くなり、40.0重量%よりも高くなると、液の安定性、及びマゼンタの色調が悪くなる。
更に好ましくは蛍光染料で染着された樹脂微粒子(A)固形分を0.5〜25.0重量%とすることが好ましい。
樹脂微粒子(A)固形分を0.1〜40.0重量%とすることにより顔料粒子の溶液中の安定性が高まり、インク吐出液の液滴が均一となり、画像彩度の向上効果が高まりより高彩度な印字画像を提供できる。
【0032】
前記(11)項のインクジェット用インクにおいて、自己乳化型ポリウレタンがアニオン型であることが好ましい。
ポリウレタン系樹脂のエマルジョンは、比較的親水性の通常のポリウレタン系樹脂を外部に乳化剤を使用してエマルジョン化したものと、樹脂自体に乳化剤の働きをする官能基を共重合等の手段で導入した自己乳化型のエマルジョンがあり顔料や分散剤との各種組み合わせにおいて、常に分散安定性に優れているのはアニオン型自己乳化型ポリウレタンのエマルジョン樹脂である。
その際、顔料の固着性・分散安定性の面でポリウレタン系樹脂はポリエステル型、ポリカーボネート型よりエーテル型である場合の方が好ましい。
自己乳化型ポリウレタンがアニオン型でない場合、液の安定性が悪くなる。
【0033】
前記(12)項のインクジェット用インクにおいて、ポリウレタンエマルジョンの添加量は、ポリウレタン固形分として0.01〜7重量%が好ましい。0.01重量%より少ない場合、顔料に吸着するポリウレタン成分が少なく顔料同士の吸着が多くなり液の粘度が上昇してしまう。7重量%より多い場合ポリウレタン同士の接着により液の安定性が悪くなる。
【0034】
前記(13)項のインクジェット用インクにおいて、ポリウレタンエマルジョンの平均粒子径は50nm以下であることが好ましい。平均粒子径が50nmより大きいとインク液の沈降が起き好ましくない。
【0035】
前記(5)項のインクジェット用インクにおいて、顔料の平均粒子径は10〜200nmであることが好ましく、より好ましくは20〜100nmである。平均粒子径を10nmより小さくすることは、長時間分散が必要であり、かつインクの保存安定性も悪くなる。平均粒子径が200nmを超えると、画像彩度が低くなるばかりでなく、ノズル詰まりが多くなり、インクの吐出安定性が悪くなる。
なお、本発明における顔料の平均粒子径は、日機装(株)製マイクロトラックUPAで測定した値を示している。
【0036】
前記(6)項のインクジェット用インクにおいて、顔料の含有量は1〜15重量%が好ましく、より好ましくは3〜12重量%である。顔料の含有量が1重量%より少ないと、画像濃度が低くなり、15重量%より多いとノズル詰まりが多くなり、インクの吐出安定性が悪くなる。
【0037】
前記第(7)項および(8)項のインクジェット用インクによれば、顔料の分散安定性が良好となり、画像彩度の高い顔料系インクジェット用インクが提供される。
特に前記一般式(I)のEOナフタレン化合物、その中でもPOE(n=40)βナフチルエーテルが特に好ましく使用できる。
【0038】
前記第(9)項のインクジェット用インクによれば、よりインクの泡立ちが抑制され、かつ画像彩度の高い顔料系インクジェット用インクが提供される。
アルカンジオールの含有量は0.2〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.3〜10重量%である。アルカンジオールの含有量が0.2重量%より少ないと画像彩度が低くなり、15重量%より多いとインクの保存安定性が悪くなる。
アルカンジオールとしては特に限定されるものではないが、好ましくは、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,3−ヘプタンジオール、2−メチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0039】
本発明に用いる蛍光染料としては、塩基染料(カチロン染料含む)、直接染料、蛍光増白染料等各種の染料群より選択使用でき、特に昼光蛍光染料の一種及び二種以上及び昼光蛍光染料と普通染料(蛍光性の無い染料)との併用が有効であるが、これに限定されるものではない。
具体的には、カラーインデックスナンバー(C・I)で示して、BASIC YELLOW 1、BASIC YELLOW 40、BASIC RED 1、BASIC RED 13、BASICVIOLET 7、BASIC VIOLET 10、BASIC ORANGE 22、BASIC BLUE 7、BASIC GREEN 1、DIRECT YELLOW 85、DIRECT ORANGE 8、DIRECTRED 9、DIRECT BLUE 22、DIRECT GREEN 6、FLUORESCENT BRIGHTENING AGENT 55、FLUORESCENT BRIGHTENING WHITEX WS 52、FLUORESCENT 162、FLUORESCENT 112等が挙げられるが、これらのうちではBASIC YELLOW 40、BASIC RED1、BASIC VIOLET 10、FLUORESCENT BRIGHTENING WHITEX WS 52が好ましい。
【0040】
これらの染料による着色は、乳化重合時または重合後のいずれでも行なうことができる。その条件に関しては、大気圧下ないし加圧下で40〜110℃、1〜5時間撹拌状態に置くのが好ましく、染料の使用量は乳化重合体(固形分)100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
【0041】
本発明のインクジェット用インクは、着色剤として顔料を含んでなる。
マゼンタインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、168、176、184、185、202、209、ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、16、22、60、63、66等が挙げられる。
【0042】
本発明において、顔料はその表面に水分散性付与基を有し、分散剤が無くとも安定に分散状態が維持できる、いわゆる自己分散型顔料(表面処理顔料)でも良いし、顔料表面の全体をポリマーで被覆し、これにより分散剤が無くとも安定に分散状態が維持できる、いわゆるカプセル型顔料(水分散性ポリマー包含顔料)でも良いし、分散剤により分散された顔料でも良い。
【0043】
本発明においては、顔料は界面活性剤によって分散された顔料分散液としてインクに添加されるのが好ましい。
また、界面活性剤としては下記一般式(I)で表わされるEOナフタレン化合物が好ましい。
【0044】
【化2】


(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリル基、アラルキル基を表わし、lは0〜7の整数を表わし、nは20〜200の整数を表わす。)
更に前記EOナフタレン化合物が、POE(n=40)βナフチルエーテルであることがより好ましい。
【0045】
本発明のインクジェット用インクにおいて、水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。
また、紫外線照射、または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いることにより、インクを長期間保存する場合にカビやバクテリアの発生を防ぐことができるので好適である。
【0046】
本発明においてインクジェット用インクに含有する水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イロプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
なお、インクジェット用インクの水溶性有機溶剤の含有量としては、環境性等の点も考慮すると50重量%以下が好ましい。
【0047】
本発明に用いるPH緩衝剤としては、アミノエタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、2−アミノエチル硫酸エステル、N−アセチル−L−システイン、カテコール、ピロガロール、o−フェノールスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、フロログルシノール、レソルシノール、アスパラギン、アルギニン、L−アロトレオニン、オルニチン、オルニチン塩酸塩、グルタチオン(還元型)、グルタチオン(酸化型)、グルタミン、シスチン、システイン、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、シトルニン、L−セリン、DL−セリン、チロシン、トリプトファン、L−トレオニン、DL−トレオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、ホモシステイン、DL−メチオニン、L−メチオニン、リシン、リシン塩酸塩、4−アミノピリジン、ピリドキサール、ピリドキシン塩酸塩、モルホリン、イノシン、ウラシル、グアニン、グアノシン、ヒポキサンチン、プリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、3−モルホリノプロパンスルホン酸、[Nトリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノ]エタンスルホン酸、N−2−ヒドキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸、ピペラジン−N−N’−ビス(2−ヒドキシプロパン)−3−スルホン酸、3−[N−(トリスヒドロキシメチル)メチルアミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−ヒドキシプロパンスルホン酸、N−2’−ヒドロキシエチルピペラジン−N−2−ヒドキシプロパン−3−スルホン酸、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸、トリス(ヒドキシメチル)アミノメタン、N−[トリス(ヒドキシメチル)メチル]グリシン、グリシルグルシン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン、N−[トリス(ヒドキシメチル)メチル]−3−アミノプロパンスルホン酸、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール3−[(1.1ジメチル−2ヒドロキシエチル)アミノ]−2ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸、N−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−3−アミノプロパンスルホン酸、3−シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸等が挙げられるが、特に、3−[(1.1ジメチル−2ヒドロキシエチル)アミノ]−2ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸、N−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−3−アミノプロパンスルホン酸、3−シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸が特に好ましい。
【0048】
PH緩衝剤の添加量としては0.001%以上10%以下、好ましくは0.005%以上5%以下、より好ましくは0.05%以上2%以下である。PH緩衝剤の量が0.001%未満だとPHの変化を抑制する効果が小さく、10%より多いとインクの粘度が大きくなる傾向にある。
【0049】
本発明のインクジェット用インクを用いて印字する手段としては、連続噴射型あるいはオンデマンド型の記録ヘッドを有するインクジェット方式のプリンタ(インクジェットプリンタ)による印刷方法が挙げられる。なお、オンデマンド型としては、例えばピエゾ方式、サーマルインクジェット方式、静電方式等が例示される。
【0050】
さらに、本発明のインク組成物を収容したインクカートリッジの構成、本発明のインク組成物を吐出させて記録を行なうインクジェットプリント装置の構成、該プリント装置での画像形成方法に関しては、本発明が関連する技術分野における公知技術、例えば特開2000−198958号公報に開示されたものなどを参照することで、容易に実施することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数は重量部を表わすものである。
【0052】
(実施例1)
2Lのフラスコに冷却管、温度計、モノマー投入用500mlの分液ロート及び攪拌装置を取り付け、ウォーターバスにセットした。
次に、このフラスコに水を440ml、ドデシルベンゼンスルホン酸Naを8.5g、エマルゲンLS−110(花王株式会社製)を7g入れ、内温を80℃まで昇温させた。次に過硫酸カリウム2.1gを昇温させた内容物に投入した後、アクリロニトリルを140g、スチレンを120g、アクリル酸を13g、を混合攪拌したモノマー液を上記分液ロートからフラスコ内に攪拌下3時間かけて滴下し、4時間で重合を終了した。
得られた重合物に、水200g、ローダミンF3B(BASF社製「バニソールレッド560」)を0.3g、ローダミンF4G(BASF社製「バニソールレッド485」)を2.0g、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤(花王株式会社製「デモールEP」)17.5gを常温攪拌下で添加し、均一に混合した後、徐々に昇温させ、85℃で1時間に亘って染着を行ない、平均粒子径90nmの鮮明な桃色の微粒子分散液を得た。
本微粒子分散液に対し、水分を調整して固形分濃度40%の蛍光微粒子分散液(F)とした。
【0053】
次に、下記構成の混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社KDL型、メディア:0.3mmφジルコニアボール使用)で20時間循環分散し、平均粒子径95.0nmの顔料分散液(A)を得た。
ピグメントレッド122 150部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガフォアマゼンタDMQ)
POE(n=40)βナフチルエーテル 56.5部
蒸留水 795部
【0054】
上記の方法で得られた顔料分散液(A)に(ii)の自己乳化アニオン型ポリエーテル型ポリウレタンエマルジョンを添加した後30分間充分に攪拌を行ない顔料分散液(B)とした。
(i)顔料分散液(A) 34.0部
(ii)自己乳化アニオン型ポリエーテル型ポリウレタンエマルジョン 10.0部
(三井武田ケミカル社製 タケラックW−5025
固形分=30.0%、平均粒子径=20.3nm)
上記の方法で得られた顔料分散液(B)に蛍光微粒子分散液(F)を添加した後30分間充分に攪拌を行ない分散液(C)とした。
(i)顔料分散液(B) 44.0部
(ii)固形分濃度40%の蛍光微粒子分散液(F) 30.0部
【0055】
その後、下記インク材料(1)によりインク液を調製し、30分攪拌後、孔径0.8μmのメンブランフィルターで濾過、真空脱気して本発明のインクジェット用インクを得た。
・インク材料(1)
(iii)グリセリン 5.0部
(iv)ジエチレングリコール 15.0部
(v)1−アミノ−2−エチル−2.3−プロパンジオール 2.0部
(vi)オルガノポリシロキサン系界面活性剤 KF643
信越シリコーン社製 (HLB値 14.0) 2.5部
(v)蒸留水 4.0部
添加の順は、顔料分散液(A)に自己乳化アニオン型ポリエーテル型ポリウレタンエマルジョンを添加し30分攪拌し、その後、蛍光微粒子分散液(F)を添加し30分攪拌し、その後(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(v)の混合液を添加する順で作成した。
【0056】
(実施例2)
実施例1において、(iv)オルガノポリシロキサン系界面活性剤 KF642(HLB値12.0)信越シリコーン社製2.5部とした他は、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット用インクを得た。
【0057】
(実施例3)
実施例1において、(iv)オルガノポリシロキサン系界面活性剤 KF640(HLB値13.5)信越シリコーン社製2.5部とした他は、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット用インクを得た。
【0058】
(実施例4)
実施例1においてポリエーテル型ポリウレタンエマルジョン(三井武田ケミカル社製 タケラックW−5025)を14.0部、蒸留水の量を0部とした他は、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット用インクを得た。
【0059】
(実施例5)
実施例1において、更に2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを3部加え、蒸留水の使用量を8.3部とした他は、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット用インクを得た。
【0060】
(比較例1)
実施例1の(iv)オルガノポリシロキサン系界面活性剤 KF643(HLB値 14.0)信越シリコーン社製 0部とした他は、実施例1と同様にして、インクジェット用インクを得た。
【0061】
(比較例2)
実施例1の自己乳化アニオン型ポリエーテル型ポリウレタンエマルジョンW−5025 10.0部を、Johnson Polymer Joncryl 74J 9.0部とした他は、実施例1と同様にして、インクジェット用インクを得た。
【0062】
(比較例3)
実施例1の鮮明な桃色の微粒子の平均粒子径が550nmであるものを用いた他は、実施例1と同様にして、インクジェット用インクを得た。
【0063】
(比較例4)
実施例1の鮮明な桃色の微粒子の固形分を0.007重量%とした他は、実施例1と同様にして、インクジェット用インクを得た。
【0064】
このようにして得られたインクジェット用インクをEPSON社製のピエゾ方式のインクジェットプリンタEM−930C及びHP社製のサーマル方式のインクジェットプリンタDesk Jet 880Cで普通紙(X−4024)と光沢紙(エプソン社フォト光沢紙)に印字した。
次に、EM−930Cでの普通紙印字画像をXrite濃度計にて測定し、画像彩度を算出した。結果を表1に示す。
また、このようにして得られたインクジェット用インクをEPSON社製のピエゾ方式のインクジェットプリンタEM−930Cにセットし1ヶ月間放置し、その後上述と同じ様にして印字を行なった。
この際、インク供給ができず印字ができなかったものをインク詰まりと表わした。
なお、表1において、画像の彩度とは、画像サンプルのベタ画像の測色をXrite濃度計にて行ない、色度図上にプロットし、色度図上の原点からの距離をいう。
【0065】
次に、面積率5%のベタ画像テストパターンをインクジェットプリンタEM−930C及びインクジェットプリンタDesk Jet 880CでA4サイズの普通紙に連続で200枚印字し、印字終了後、200枚目のベタ印字画像をルーペで観察し、印字曲がりによる白スジまたは低濃度スジの本数を確認した。その結果を表1に示す。
【0066】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料、分散剤、水、蛍光染料で染着され平均粒子径が50〜200nmの樹脂微粒子(A)、及びオルガノポリシロキサン系界面活性剤を含むことを特徴とするインクジェット用インク。
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサン系界面活性剤が、疎水基にメチルポリシロキサン、親水基にポリオキシエチレンの構造をもつ、非イオン界面活性剤であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサン系界面活性剤のHLB値が5以上18以下であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
前記蛍光染料で染着された樹脂微粒子(A)固形分を0.1〜40.0重量%含んでなることを特徴とする請求項1乃至3に記載のインクジェット用インク。
【請求項5】
前記顔料の平均粒子径が10〜200nmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項6】
前記顔料を1〜15重量%含んでなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項7】
前記分散剤が、下記一般式(I)で表わされるEOナフタレン化合物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリル基、アラルキル基を表わし、lは0〜7の整数を表わし、nは20〜200の整数を表わす。)
【請求項8】
前記EOナフタレン化合物が、POE(n=40)βナフチルエーテルであることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット用インク。
【請求項9】
アルカンジオールをさらに含んでなることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項10】
請求項1乃至9に記載のインクジェットインクを製造する方法であって、少なくとも顔料、分散剤、水よりなる顔料分散体に、自己乳化型ポリウレタン樹脂の水性エマルジョンを添加して調合した構成物を作成し、攪拌操作を行なった後、蛍光染料で染着され平均粒子径が50〜200nmの樹脂微粒子(A)を添加し、更に攪拌操作を行なった後、その混合物に、オルガノポリシロキサン系界面活性剤、湿潤剤、消泡剤、滲み防止剤、PH緩衝剤、防腐剤からなる群から選ばれた添加剤を、必要に応じ添加する順序で作成することを特徴とするインクジェットインクの製造方法。
【請求項11】
前記自己乳化型ポリウレタンがアニオン型であることを特徴とする請求項10に記載のインクジェット用インクの製造方法。
【請求項12】
前記ポリウレタン固形分を0.01〜7重量%含んでなることを特徴とする請求項10又は11に記載のインクジェット用インクの製造方法。
【請求項13】
前記ポリウレタンエマルジョンの平均粒子径が50nm以下であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載のインクジェット用インクの製造方法。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれかに記載の方法で作成されたことを特徴とするインクジェット用インク。
【請求項15】
請求項1乃至9のいずれかに記載のインクジェット用インク又は請求項14に記載のインクジェット用インクを含有することを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項16】
画像形成装置に着脱可能であることを特徴とする請求項15に記載のインクカートリッジ。
【請求項17】
請求項1乃至9のいずれかに記載のインクジェット用インク又は請求項14に記載のインクジェット用インクを用いて受容体に画像が形成されていることを特徴とする画像形成体。
【請求項18】
請求項1乃至9のいずれかに記載のインクジェット用インク又は請求項14に記載のインクジェット用インクを用いて受容体に画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項19】
前記画像形成装置がインクジェットプリンタであることを特徴とする請求項16に記載のインクカートリッジ。
【請求項20】
インクジェットプリンタから受容体に請求項1乃至9のいずれかに記載のインクジェット用インク又は請求項14に記載のインクジェット用インクを吐出させることを特徴とする請求項18に記載の画像形成方法。
【請求項21】
前記インクジェットプリンタが、ピエゾ方式のインクジェットプリンタであることを特徴とする請求項20に記載の画像形成方法。
【請求項22】
前記インクジェットプリンタが、サーマル方式のインクジェットプリンタであることを特徴とする請求項20に記載の画像形成方法。
【請求項23】
前記受容体が紙であることを特徴とする請求項17に記載の画像形成体。

【公開番号】特開2008−231211(P2008−231211A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71327(P2007−71327)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】