説明

インクジェット画像形成機器に使用可能なヘッドチップ及びその製造方法

【課題】インクジェット画像形成機器のヘッドチップを提供すること。
【解決手段】基板1の上部に形成され、熱を発生させるヒーター3と、ヒーター3の上部に形成され、インキを収容するインキチャンバー6aが設けられるチャンバー層6と、チャンバー層6の上部に形成され、インキチャンバー6aと対応してノズル8aが設けられるノズル層8と、ヒーター3から発生した熱の一部をノズル8aに伝達する熱伝逹層7とを含む構成とし、ノズル8aを通過して噴射されるインキが、熱伝逹層7を介して伝達される熱により加熱され、粘度が低くなるようにした。これにより、ノズル8aから噴射されるインキが容易に切れ、球形に近い形態のインキ液滴が得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット画像形成機器に使用可能なヘッドチップ及びその製造方法に関し、より詳細には、熱駆動方式で動作するインクジェット画像形成機器に使用できるヘッドチップとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェット画像形成機器とは、用紙のような印刷媒体にインキを噴射して画像を形成する装置のことをいう。従来のインクジェット画像形成機器のヘッドチップとして、例えば、下記の特許文献1のように、基板と、熱を発生させるヒーターと、インキが供給されるインキチャンバーが設けられているチャンバー層と、インキが噴射されるノズルが設けられているノズル層と、を含み、ヒーターから発生する熱によりインキチャンバー中のインキから気泡ができ、気泡の膨張力によりインキがノズルから吐出されるようにする熱駆動方式のインクジェット画像形成機器のヘッドチップがある。
【0003】
【特許文献1】大韓民国特許公開第10−2006−133127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来のインクジェット画像形成機器のヘッドチップに使われるインキは、粘性を持つ液体であるため、ノズルから吐出されるインキ液滴の形状は尻尾がついたかのように伸張された形態で噴射され、このような伸張形態のインキ液滴により形成されるドットは楕円形状となるが、このような楕円形状のドットでは高解像度の印刷物が得難いという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、より球形に近いインキ液滴を形成することが可能な、新規かつ改良されたインクジェット画像形成機器に使用可能なヘッドチップ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、基板の上部に形成され、熱を発生させるヒーターと、前記ヒーターの上部に形成され、インキを収容するインキチャンバーが設けられるチャンバー層と、前記チャンバー層の上部に形成され、前記インキチャンバーと対応してノズルが設けられるノズル層と、前記ヒーターから発生した熱の一部をノズルに伝達する熱伝逹層と、を含むことを特徴とする、インクジェット画像形成機器に使用可能なヘッドチップが提供される。
【0007】
前記熱伝逹層は、前記チャンバー層を貫通して形成され、一端が前記ヒーターと隣接して配置される第1熱伝逹部と、前記第1熱伝逹部の他端から前記ノズルに延在して形成される第2熱伝逹部と、を含むことができる。
【0008】
前記ヘッドチップは、前記基板と前記ヒーター間の断熱を行う断熱層と、前記ヒーターを覆って保護するヒーター保護層と、をさらに含むことができる。
【0009】
前記ヘッドチップは、前記インキチャンバーの下面を形成し、熱及びインキによる腐食を防止するキャビテーション防止層をさらに含むことができる。
【0010】
前記第1熱伝逹部の一端は、前記キャビテーション防止層に当接した状態で形成されることができる。
【0011】
なお、前記チャンバー層の前記インキチャンバー両側には、前記第1熱伝逹部の形成のための熱伝逹溝が前記チャンバー層を貫通して形成されることができる。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、基板の上側にヒーターを形成し;インキを収容するインキチャンバーと前記ヒーターから発生した熱が貫通して伝達されるように形成された熱伝逹溝とが備えられたチャンバー層を形成し;前記熱伝逹溝に、熱が前記チャンバー層を介して伝達されるようにする第1熱伝逹部を形成し;前記インキチャンバー内に犠牲層を形成し;前記第1熱伝逹部及び前記犠牲層の上部に、前記第1熱伝逹部から熱が伝達される第2熱伝逹部を形成し;前記チャンバー層及び第2熱伝逹部の上部に、ノズルが設けられているノズル層を形成し;前記犠牲層を除去することを含むことを特徴とする、インクジェット画像形成機器に使用可能なヘッドチップの製造方法が提供される。
【0013】
前記ヒーターは、前記基板の上部に断熱層が形成された後に、前記断熱層の上部に形成される。
【0014】
前記チャンバー層は、前記ヒーターの上側に前記ヒーターの保護のためのヒーター保護層が形成され、前記ヒーター保護層の上側に酸化防止のためのキャビテーション防止層が形成された後に、前記キャビテーション防止層の上部に形成される。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、基板の上部に形成され、熱を発生させるヒーターと、前記基板の上部に形成され、吐出されるインキを収容するインキ流れ領域と、前記インキ流れ領域の上部に形成され、前記インキ流れ領域と対応してノズルが設けられるノズル層と、前記ヒーターから発生した熱の一部を前記ノズルに伝達する熱伝逹層と、を含むことを特徴とする、インクジェット画像形成機器に使用可能なヘッドチップが提供される。
【0016】
前記インキ流れ領域はインキを収容し、前記ヘッドチップを介してノズルにインキを流すことができる。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、基板の上側にヒーターを形成し;前記ヒーターから発生した熱を伝達する熱伝逹溝が貫通形成されるインキ流れ領域を形成し;前記熱伝逹溝に、熱が前記インキ流れ領域を貫通して伝達されるようにする第1熱伝逹部を形成し;前記インキ流れ領域内に犠牲層を形成し;前記第1熱伝逹部から熱が伝達され、前記犠牲層の一部にまで延在する第2熱伝逹部を形成し;前記犠牲層及び第2熱伝逹部の上側に、ノズルが設けられているノズル層を形成し;前記犠牲層を除去することを含むことを特徴とする、インクジェット画像形成機器に使用可能なヘッドチップの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ヒーターの熱をノズルに伝達する熱伝逹層が形成され、ノズルを通過して噴射されるインキが、熱伝逹層を介して伝達される熱により加熱されて粘度が低くなるようになっているので、ノズルから噴射されるインキが容易に切れ、球形に近い形態のインキ液滴を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
本発明の一実施形態によるインクジェット画像形成機器に使用可能なヘッドチップは、図1に示すように、シリコンからなる基板1と、電源の印加によって熱を発生するヒーター3と、ヒーター3と基板1との間に形成され、ヒーター3と基板1間の断熱を行う断熱層2と、ヒーター3の上部に形成され、ヒーター3を保護するヒーター保護層4と、タンタルのような金属物質からなり、ヒーター保護層4の上部に形成されて熱やインキによる表面酸化を防止するキャビテーション防止層5と、キャビテーション防止層5の上部に形成され、インキが供給されるインキチャンバー6aが形成されるチャンバー層6と、チャンバー層6の上部に形成され、インキチャンバー6aと対応する位置にインキが噴射されるノズル8aが形成されたノズル層8と、を含む。ここで、キャビテーション防止層5の上部に、インキチャンバー6aの設けられたチャンバー層6が形成されるので、キャビテーション防止層5がインキチャンバー6aの下面を形成する。
【0021】
また、本実施形態によるインクジェット画像形成機器のヘッドチップは、ヒーター3から発生した熱をノズル8aに伝達し、ノズル8aから噴射されるインキを加熱する熱伝逹層7が形成されている。
【0022】
熱伝逹層7は、一端がヒーター3と隣接するように配置され、ヒーター3から発生した熱が伝達されるようになっており、他端はノズル8aに延在するように形成され、ヒーター3から発生した熱の一部がノズル8aに伝達されるようにすることによって、ノズル8aを通過するインキを加熱できるようになっている。本実施形態で、熱伝逹層7は、チャンバー層6を貫通して形成され、一端がキャビテーション防止層5に当接するように形成され、ヒーター3から発生した熱が伝達される第1熱伝逹部7aと、第1熱伝逹部7aの他端からノズル8aに延在する第2熱伝逹部7bと、を含む。このため、チャンバー層6のインキチャンバー6a両側にはチャンバー層6を貫通して熱伝逹溝6bが形成され、この熱伝逹溝6b内に感光性銀(Ag)ペーストを使って第1熱伝逹部7aを形成することができる。
【0023】
したがって、ヒーター3から発生した熱の一部は、熱伝逹層7を介してノズル8aに伝達され、これによりノズル8aから噴射/吐出されるインキは加熱され、温度が高まる。液体の粘度は液体の温度増加によって減少するので、インキの粘度は低くなり、容易に切れられる状態となる。したがって、ノズル8aから噴射されたインキは粘度が低く、よって、短い長さで切れる。すなわち、これらインキ液滴は、インキの低粘性によってどのような大きさにも吐出されることができる。したがって、球形に近い形態のインキ液滴が得られ、高解像度の印刷物が得られるのに必要な円形に近い形態のドットが得られる。
このように構成された本発明によるインクジェット画像形成機器に使用可能なヘッドチップ製造方法について説明すると、下記の通りである。
【0024】
まず、図2に示すように、シリコンからなる基板1の上側に、酸化シリコン(SiOx)からなる断熱層2を形成し、断熱層2の上側にヒーター3を形成し、ヒーター3の上側にシリコン窒化膜(SiNx)からなるヒーター保護層4を形成し、ヒーター保護層4の上側に酸化防止のためにタンタル(Ta)からなるキャビテーション防止層5を形成し、インキチャンバー6aと熱伝逹溝6bがそれぞれ設けられたチャンバー層6を形成した後、図3に示すように、感光性銀(Ag)ペーストを熱伝逹溝6bに埋め込み、熱伝逹層7の第1熱伝逹部7aを形成する。続いて、図4に示すように、インキチャンバー6aに、インクジェット画像形成機器のヘッドチップ製造が完了した後に除去される犠牲層9を埋め込んだ後、第1熱伝逹部7aと犠牲層9の上側に熱伝逹層7の第2熱伝逹部7bを形成した後、図5に示すように、チャンバー層6及び第2熱伝逹部7bの上部に、ノズル8aが設けられているノズル層8を形成し、最終的に犠牲層9をインキチャンバー6aから除去することで、図1に示すようなインクジェット画像形成機器のヘッドチップの製造を完了する。
【0025】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態によるインクジェット画像形成機器のヘッドチップを示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態によるインクジェット画像形成機器のヘッドチップ製造過程を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態によるインクジェット画像形成機器のヘッドチップ製造過程を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態によるインクジェット画像形成機器のヘッドチップ製造過程を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態によるインクジェット画像形成機器のヘッドチップ製造過程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 基板
2 断熱層
3 ヒーター
4 ヒーター保護層
5 キャビテーション防止層
6 チャンバー層
6a インキチャンバー
6b 熱伝逹溝
7 熱伝逹層
7a 第1熱伝逹部
7b 第2熱伝逹部
8 ノズル層
8a ノズル
9 犠牲層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上部に形成され、熱を発生させるヒーターと;
前記ヒーターの上部に形成され、インキを収容するインキチャンバーが設けられるチャンバー層と;
前記チャンバー層の上部に形成され、前記インキチャンバーと対応してノズルが設けられるノズル層と;
前記ヒーターから発生した熱の一部をノズルに伝達する熱伝逹層と;
を含むことを特徴とする、インクジェット画像形成機器に使用可能なヘッドチップ。
【請求項2】
前記熱伝逹層は:
前記チャンバー層を貫通して形成され、一端が前記ヒーターと隣接して配置される第1熱伝逹部と;
前記第1熱伝逹部の他端から前記ノズルに延在して形成される第2熱伝逹部と;
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のヘッドチップ。
【請求項3】
前記基板と前記ヒーター間の断熱を行う断熱層と;
前記ヒーターを覆って保護するヒーター保護層と;
をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のヘッドチップ。
【請求項4】
前記インキチャンバーの下面を形成し、熱及びインキによる腐食を防止するキャビテーション防止層をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項5】
前記第1熱伝逹部の一端は、前記キャビテーション防止層に当接した状態で形成されることを特徴とする、請求項4に記載のヘッドチップ。
【請求項6】
前記チャンバー層の前記インキチャンバー両側には、前記第1熱伝逹部の形成のための熱伝逹溝が前記チャンバー層を貫通して形成されることを特徴とする、請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項7】
基板の上側にヒーターを形成し;
インキを収容するインキチャンバーと前記ヒーターから発生した熱が貫通して伝達されるように形成された熱伝逹溝とが備えられたチャンバー層を形成し;
前記熱伝逹溝に、熱が前記チャンバー層を貫通して伝達されるように第1熱伝逹部を形成し;
前記インキチャンバー内に犠牲層を形成し;
前記第1熱伝逹部及び前記犠牲層の上部に、前記第1熱伝逹部から熱が伝達される第2熱伝逹部を形成し;
前記チャンバー層及び第2熱伝逹部の上部に、ノズルが設けられているノズル層を形成し;
前記犠牲層を除去すること;
を含むことを特徴とする、インクジェット画像形成機器用ヘッドチップの製造方法。
【請求項8】
前記ヒーターは、前記基板の上部に断熱層が形成された後に、前記断熱層の上部に形成されることを特徴とする、請求項7に記載のヘッドチップの製造方法。
【請求項9】
前記チャンバー層は、前記ヒーターの上側に前記ヒーターの保護のためのヒーター保護層が形成され、前記ヒーター保護層の上側に酸化防止のためのキャビテーション防止層が形成された後に、前記キャビテーション防止層の上部に形成されることを特徴とする、請求項7に記載のヘッドチップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−6710(P2009−6710A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143298(P2008−143298)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】