説明

インクジェット記録ヘッド

【課題】単一のインクジェット記録ヘッドにおいて、記録液の液滴の大きさおよび量を変えて吐出可能であり、高速記録と高密度および高品位記録とをともに達成し、しかも低コスト化や構成の小型化および簡略化を図る。
【解決手段】1枚の第1プレートH1200上に、2つの記録素子基板H1100,H11101が搭載されている。ブラックインクが供給されてこれを吐出させる第1の記録素子基板H1100では、記録素子H1103と吐出口H1107との間の距離が長く、収容されるインク量が多いため、大ドットでベタ印字などが効率よく行える。カラーインクが供給されてこれを吐出させる第2の記録素子基板H1101では、記録素子H1103と吐出口H1107との間の距離が短く、収容されるインク量が少ないため、小ドットで高精細な高品位記録が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の記録液を吐出口から吐出して液滴を形成して記録動作を行う記録装置と、それに用いられるインクジェット記録ヘッドに関する。なお、本発明のインクジェット記録ヘッドは、一般的なプリント装置のほか、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリント部を有するワードプロセッサ等の装置、さらには、各種処理装置と複合的に組み合わされた産業用記録装置に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、いわゆるノンインパクト記録方式の記録装置であり、高速な記録と様々な記録媒体に対して記録することが可能であって、記録における騒音が殆ど生じないと言った特徴を持つ。このようなことから、インクジェット記録装置は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、ワードプロセッサ等の記録機構を担う装置として、広く採用されている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置に搭載される記録ヘッドにおける代表的なインク吐出方式としては、ピエゾ素子などの電気機械変換体を用いたもの、レーザーなどの電磁波を照射して発熱させ、この発熱による作用でインク滴を吐出させるもの、あるいは発熱抵抗体を有する電気熱変換素子によってインクを加熱し、膜沸騰の作用によりインク滴を吐出させるものなどが知られている。電気熱変換素子を用いたインクジェット記録ヘッドは、電気熱変換素子を記録液室内に設け、これに記録信号となる電気パルスを供給して発熱させることによりインクに熱エネルギーを与え、そのときの記録液の相変化により生じる記録液の発泡時(沸騰時)の気泡圧力を利用して、微小な吐出口から微小なインク滴を吐出させて、記録媒体に対し記録を行うものであり、一般に、インク滴を吐出するためのインクジェット記録ノズルと、このノズルにインクを供給する供給系とを有している。
【0004】
このようなインクジェット記録ヘッドを備えた記録装置は低コストで高品位な文字や画像が出力可能である。
【0005】
従来から低価格でカラープリントが出力できる利点から、液体に膜沸騰を生じせしめ気泡の形成(発生、成長、消泡、消滅)に伴って、液滴を吐出させ、本願出願人であるキヤノン株式会社提案のバブルジェット方式の吐出原理に基づく、bubble jet方式(以下、BJ方式と称す)が主流となったプリンタが市場の大半を占めている。このプリンタは、黒系液体としてのブラックインクおよびシアン、マゼンタ、イエローのカラー系液体を吐出する各ヘッド部に、共通してバブルジェット方式を用いている。
【0006】
一般に各ヘッド部の吐出口は、数的には高画質の傾向から、64個から増えて128個、256個等が用いられており、1インチ当たりの吐出口数で言うところの「dpi」で、300dpi、600dpi等の高密度で配置される。これらの吐出口に対して配置される電気熱変換体としての発熱体は、数μsecオーダーから10μsecオーダーのパルス的な駆動によって応答して、膜沸騰による気泡を形成するが、高周波的で駆動できるため、高速プリント、高画質の形成を達成して、近年では単位時間当たりに駆動される発熱体が増加する傾向にある。
【0007】
一方、前記バブルジェット方式の改良として、本願出願人が提案した新方式として、前記気泡を大気に連通させることで、液滴を一定化せしめ、微小液滴の吐出を可能にした大気連通方式、いわゆるbubble through jet方式(以下、BTJ方式と称す)を用いたプリンタが市場に投入されている。このプリンタも、前記プリンタ同様のブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色用のヘッド部を有し、それぞれBTJ方式を共通して用いることで、微小液滴の安定吐出量の確保に基づく高画質プリントを達成している。このプリントの利点は以下の通りである。
【0008】
銀塩写真と同等の高品位カラー記録を達成するためには、紙上でドットが見えない(粒状感が無い)程度に小ドット化することが必要であり、カラーインクの液滴は、約5pl(ピコリットル、10-12リットル)、ドット径40〜50μm、解像度600×1200〜1200×1200dpi(dpiは1インチ当たりのドット数を示す単位)程度に設定される。また、ブラックインクに関しても、文字の解像度やシャープネスを向上させることを考えると、小さな液滴により紙上に小さなドットを形成することが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平01−242259号公報
【特許文献2】特開平08−048035号公報
【特許文献3】特開平10−119272号公報
【特許文献4】特開平10−044420号公報
【特許文献5】特開平05−261941号公報
【特許文献6】特開平09−193405号公報
【特許文献7】特開平09−052363号公報
【特許文献8】特開2000−168088号公報
【特許文献9】特開平06−344575号公報
【特許文献9】特開昭60−161973号公報
【特許文献10】特開昭63−221121号公報
【特許文献11】特開昭64−9216号公報
【特許文献12】特開平2−140219号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.POLYMER SCI:Symposium No. 56 383-395(1976)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、ブラックインクの場合、文字等の記録の他に、所定域全面を塗りつぶす、いわゆるベタ印字が行われることも多い。微小な液滴の吐出によってこのようなベタ印字を行う場合、吐出回数が多くなり記録時間が長くなる傾向にある。そこで、カラーインクに比べて大きな、液滴量30pl、ドット径80μm、解像度600dpi程度のブラックインクの液滴を形成して吐出させることが好ましい。
【0012】
このように、カラーインク(シアン、マゼンタ、イエロー)とブラックインクとで液滴の大きさおよび量を変える場合、吐出口面積を増大させるか、流路設計を行うこと等が知られているが、プリンタ全体から見ると新たな課題が発生した。
【0013】
すなわち、前記BJ方式を用いたブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各ヘッド部に対して、カラーの微小滴形成を行うための設計を行うと、吐出速度や吐出量のばらつきが発生し、ブラックの液滴の紙面に対する着弾精度と同様のカラーインクの着弾精度か、もしくはそれより悪い傾向を示してしまう。
【0014】
一方、前記BTJ方式を用いたブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各ヘッド部に対して、ブラックの液滴量を増加させようとすると、電気熱変換体のヒータを大きくし、かつ吐出口面積を大きくすることで対処可能ではあるが、駆動周波数を高めることができず、吐出時のミストが多くなってしまう。
【0015】
また、前者、後者とも、ヘッド部単体の設計が可能であるものの、プリンタに用いて駆動する場合の単位時間当たりのヒータ駆動数が増加するにつれて、用いることのできるヒータ数に限界が発生し、高密度のヘッドを効率よく利用できなくなってしまった。しかも、吐出速度の所定レベル以上の確保と、吐出量の安定性の観点から見ても、ブラックとカラーの両者が、それぞれの目標を満足するレベルにプリンタとしてまとめることにも困難が発生した。無論、電源を大型化したり、複数電源を用いたりしてプリンタを設計することは可能であるが、極めて高価なものとなったり、プリンタ全体が大型化してしまうため、現実的ではない。
【0016】
本発明者達は、このような検討から、吐出ヘッド単体ではなく、総合的見地から、ブラック系インクの吐出とカラー系インクの吐出を吐出量、吐出速度、安定性において追求したところ、吐出方式自体を異ならせることで、前述の相反する問題を解決できるという知見に至った。
【0017】
また、プリンタに対するヘッド部のコンパクト性の観点および装着性の精度からのヘッド部の構成をより一層満足するための製造方法についても追求し、両者の基準面の共通化の知見を得て、これを得るに至った。
【0018】
そこで本発明の目的は、ブラックインクを用いた高速記録と、カラーインクを用いた高密度かつ高品位記録とを達成でき、低コスト化や構成の小型化および簡略化が図れるインクジェット記録ヘッドおよび記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の特徴は、記録液に吐出エネルギーを付与する複数の記録素子と、吐出エネルギーを受容する記録液を貯留する複数の流路と、複数の流路に記録液を供給する供給口と、前記記録素子に対向して設けられた記録液を吐出する複数の吐出口とを有する記録素子基板を複数備えてなるインクジェット記録ヘッドにおいて、少なくとも1つの記録素子基板における記録素子と吐出口との間の距離と、他の記録素子基板における記録素子と吐出口との間の距離とが異なるとともに、両者の記録素子による液体吐出方式が異なるところにある。
【0020】
記録液として黒系の液体が供給される記録素子基板における記録素子と吐出口との間の距離が相対的に長く、記録液としてカラー系の液体が供給される記録素子基板における記録素子と吐出口との間の距離が相対的に短いことが好ましい。
【0021】
また、記録液として黒系の液体が供給される記録素子基板の吐出口から吐出される記録液の吐出量が相対的に多く、記録液としてカラー系の液体が供給される記録素子基板の吐出口から吐出される記録液の吐出量が相対的に少ないことが好ましい。
【0022】
さらに、ブラックの液滴量より半分以下のカラーの液滴量を吐出するための第2の基板の第2の記録素子の配列密度を、ブラックの液滴量を吐出するための第1の基板の第1の記録素子の2倍の配列密度にすることにより、ブラック用の第1の記録素子とカラー用の第2の記録素子を同一周期で加熱駆動することができ、簡単な構成で、耐久性を落とすこと無く、高速印字が達成できる。
【0023】
このような構成によると、ブラックの記録液は大液滴として吐出させることにより、ベタ印字などが高速で行える一方、カラーの記録液は小液滴として吐出させることにより、高精細の高品位記録が可能になる。
【0024】
さらに、記録液として黒系の液体が供給される記録素子基板の記録素子による液体吐出方式が、記録素子の作動により記録液に発泡をもたらすとともに、該発泡により形成された気泡が消泡して消滅する吐出方式であり、記録液としてカラー系の液体が供給される記録素子基板の記録素子による液体吐出方式が、記録素子の作動により記録液に発泡がもたらされる際に該発泡により形成された気泡が吐出口から外部に連通する吐出方式であることが好ましい。
【0025】
この構成によると、カラーの記録液を吐出させた後、発泡圧は外部に逃げ、消泡時のメニスカスの振動が小さいため、リフィルが速やかに行われ、高速記録に寄与する。
【0026】
複数の記録素子基板が、同一平面上に配置された実質的に同じ厚さの基板と、該基板上に積層されている吐出口形成部材とを有し、少なくとも1つの記録素子基板は、吐出口形成部材の高さが他の記録素子基板と異なっていることにより、記録素子と吐出口との間の距離が異なっていることが好ましい。
【0027】
さらに本発明の他の特徴は、複数の記録素子基板のそれぞれが複数の記録素子を配した基板と該基板に積層されている吐出口形成部材とを有し、記録液を吐出する複数の吐出口が吐出口形成部材の光パターニングによって形成されているところにある。
【0028】
記録液として黒系の液体が供給される記録素子基板における記録素子と吐出口との間の距離が100μm以下であることが好ましい。
【0029】
記録液として黒系の液体が供給される記録素子基板の吐出口から吐出される記録液の吐出速度をVBk、吐出量をVdBkとし、記録液としてカラー系の液体が供給される記録素子基板の吐出口から吐出される記録液の吐出速度をVCl、吐出量をVdClとしたとき、
Cl>VBk≧8m/sec
かつ
VdBk>VdCl
であることが好ましい。
【0030】
記録液として黒系の液体が供給される記録素子基板の記録素子と吐出口との間の距離をOHBk、記録素子と吐出口形成部材との間の距離をhBkとし、記録液としてカラー系の液体が供給される記録素子基板の記録素子と吐出口との間の距離をOHCl、記録素子と吐出口形成部材との間の距離をhClとしたとき、
Bk>hCl
かつ
OHBk>hBk×2
であることが好ましい。
【0031】
本発明の記録装置は、前記したいずれかの構成のインクジェット記録ヘッドと、複数の記録素子基板にそれぞれ記録液を供給する複数のインクタンクとを有している。
【0032】
複数の記録素子基板の複数の記録素子に供給される電気的エネルギーが同一の電源から供給されることが好ましい。
【0033】
複数の記録素子基板が同一の基材に実装されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によると、1つのインクジェット記録ヘッドに、記録素子と吐出口との間の距離が異なる複数の記録素子基板が設けられているため、インクジェット記録ヘッドを複数個用意することなく、異なる吐出方式で異なる量の記録液を吐出させることができる。従って、ブラックインクは大きな液滴を形成し、カラーインクは小さな液滴を形成して、ブラックインクによる記録を高速かつ高効率化するとともに、カラーインクによる記録を高品質化することができる。しかも、構成が簡単で、大型化を招くおそれがなく、製造コストを低く抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1における記録ヘッドカートリッジの斜視図である。
【図2】図1に示す記録ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施例1における記録素子基板の構成を示す一部切り欠き説明斜視図である。
【図4】本発明の実施例1における他の記録素子基板の構成を示す一部切りかき説明斜視図である。
【図5】本発明の実施例1における記録素子ユニットの要部分解模式断面図である。
【図6】本発明の実施例1における記録素子ユニットの要部拡大断面図である。
【図7】本発明の実施例1における記録素子ユニットの要部拡大分解斜視図である。
【図8】2通りのインク吐出方式を説明する模式図である。
【図9】本発明の実施例1における記録素子基板および第1のプレートの拡大断面図である。
【図10】インク流路、オリフィス部形成前の基板の模式的斜視図である。
【図11】溶解可能なインク流路パターンを形成した基板の模式図である。
【図12】被覆樹脂層を形成した基板の模式図である。
【図13】被覆樹脂層にインク吐出口のパターン露光を行っている基板の模式図である。
【図14】パターニングされた被覆樹脂層を現像した基板の模式図である。
【図15】溶解可能な樹脂パターンを溶出した基板の模式図である。
【図16】インク供給部材を配置した基板の模式図である。
【図17】本発明の実施例2の第2の記録素子基板の説明図である。
【図18】本発明の実施例2の第2の記録素子基板を用いた記録ヘッドカートリッジの斜視図である。
【図19】本発明の液体吐出記録ヘッドを搭載可能な記録装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0037】
図1〜図4は、本発明が実施もしくは適用される好適なヘッドカートリッジ、記録ヘッド、インクタンクのそれぞれの構成およびそれぞれの関係を説明する図である。以下、これらの図面を参照して各構成要素の説明を行う。
【0038】
本実施形態の記録ヘッド(インクジェット記録ヘッド)は、図1,2よりわかるように、記録ヘッドカートリッジを構成する一構成要素であり、記録ヘッドカートリッジは、記録ヘッドと、記録ヘッドに着脱自在に設けられたインクタンクとから構成されている。記録ヘッドは、インクタンクから供給されるインク(記録液)を、記録情報に応じて吐出口から吐出する。
【0039】
この記録ヘッドカートリッジは、インクジェット記録装置本体に載置されているキャリッジ(不図示)の位置決め手段および電気的接点によって固定支持されるとともに、キャリッジに対して着脱可能となっている。インクタンクはブラックのインク用、シアンのインク用、マゼンタのインク用、イエローのインク用の4つが設けられている。このようにインクタンクのそれぞれが記録ヘッドに対してシールゴムH1800側に着脱自在であり、それぞれのインクタンクが交換可能となっていることにより、インクジェット記録装置における印刷のランニングコストが低減される。
【0040】
次に、記録ヘッドを構成しているそれぞれの構成要素毎に順を追ってさらに詳しく説明する。
【0041】
(1)記録ヘッド
記録ヘッドH1001は、電気信号に応じて膜沸騰をインクに対して生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体(記録素子)を用いて記録を行うバブルジェット方式のサイドシュータ型の記録ヘッドである。
【0042】
記録ヘッドH1001は、図2の分解斜視図に示すように、記録素子ユニットH1002とインク供給ユニット(記録液供給手段)H1003とタンクホルダーH2000から構成されている。
【0043】
さらに、記録素子ユニットH1002は、第1の記録素子基板H1100、第2の記録素子基板H1101、第1のプレート(第1の支持部材)H1200、電気配線テープ(可撓性の配線基板)H1300、電気コンタクト基板H2200、第2のプレート(第2の支持部材)H1400で構成されており、また、インク供給ユニットH1003は、インク供給部材H1500、流路形成部材H1600、ジョイントシール部材H2300、フィルターH1700、シールゴムH1800から構成されている。
【0044】
(1−1)記録素子ユニット
図3は、第1の記録素子基板H1100の構成を説明するために一部分解した斜視図である。第1の記録素子基板H1100は、厚さ0.5〜1mmのSi基板H1110の片面に、インクを吐出するための複数の記録素子(電気熱変換素子)H1103と、各電気熱変換素子H1103に電力を供給するAl等の電気配線が、成膜技術により形成されている。そして、この電気熱変換素子H1103に対応する複数のインク流路と複数の吐出口H1107とがフォトリソグラフィ技術により形成されるとともに、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口H1102が反対側の面(裏面)に開口するように形成されている。また、記録素子基板H1100は第1のプレートH1200に接着され固定されており、ここにインク供給口H1102が形成されている。さらに、第1のプレートH1200には、開口部を有する第2のプレートH1400が接着され固定されており、この第2のプレートH1400を介して、電気配線テープH1300が記録素子基板H1100に対して電気的に接続されるように保持されている。この電気配線テープH1300は、記録素子基板H1100にインクを吐出するための電気信号を印加するものであり、記録素子基板H1100に対応する電気配線と、この電気配線部に位置しプリンタ本体からの電気信号を受け取る外部信号入力端子H1301とを有し、この外部信号入力端子H1301は、インク供給部材H1500の背面側に位置決めされ固定されている。
【0045】
インク供給口H1102は、Siの結晶方位を利用した異方性エッチングやサンドブラストなどの方法で形成されている。すなわち、Si基板H1110が、ウエハー面方向に<100>、厚さ方向に<111>の結晶方位を持つ場合、アルカリ系(KOH,TMAH,ヒドラジン等)による異方性エッチングで、約54.7度の角度でエッチングを進行させ得る。これにより所望の深さにエッチングを行い、長溝状の貫通口からなるインク供給口H1102を形成する。インク供給口H1102を挟んで両側に電気熱変換素子H1103がそれぞれ1列ずつ千鳥状に配列されている。電気熱変換素子H1103と、電気熱変換素子H1103に電力を供給するAl等の電気配線は、成膜技術により形成されている。さらに、前記電気配線に電力を供給するための電極H1104が電気熱変換素子H1103の両外側に配列されており、電極H1104にはAu等のバンプH1105が熱超音波圧着法で形成されている。そして、Si基板H1110上には、電気熱変換素子H1103に対応したインク流路を形成するためのインク流路壁H1106と吐出口H1107が樹脂材料でフォトリソグラフィ技術によりに形成され、吐出口群H1108が形成されている。電気熱変換素子H1103に対向して吐出口H1107が設けられているため、インク供給口H1102から供給されたインクは電気熱変換素子H1103の発熱作用により発生した気泡により吐出口H1107から吐出される。
【0046】
また図4は第2の記録素子基板H1101の構成を説明するために一部分解した斜視図である。第2の記録素子基板H1101は3色のインクを吐出させるための記録素子基板であり、3個のインク供給口H1102が並列して形成されており、それぞれのインク供給口H1102を挟んだ両側に電気熱変換素子H1103とインク吐出口H1107が形成されている。第1の記録素子基板H1100と同じようにSi基板H1110にインク供給口H1102や電気熱変換素子H1103、電気配線、電極H1104などが形成されておりその上に樹脂材料でフォトリソグラフィ技術によりインク流路やインク吐出口H1107が形成されている。そして、第1の記録素子基板H1100と同様に電気配線に電力を供給するための電極H1104にはAu等のバンプH1105が形成されている次に第1のプレートH1200は、例えば、厚さ0.5〜10mmのアルミナ(Al23)材料で形成されている。なお、第1のプレートH1200の材料は、アルミナに限られることなく、記録素子基板H1100の材料の線膨張率と同等の線膨張率を有し、かつ、記録素子基板H1100材料の熱伝導率と同等もしくは同等以上の熱伝導率を有する材料で作られてもよい。第1のプレートH1200の材料は、例えば、シリコン(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア、窒化珪素(Si34)、炭化珪素(SiC)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)のうちいずれであってもよい。第1のプレートH1200には、第1の記録素子基板H1100にブラックのインクを供給するためのインク連通口H1201と、第2の記録素子基板H1101にシアン、マゼンタ、イエローのインクを供給するためのインク連通口H1201が形成されており、記録素子基板のインク供給口H1102が第1のプレートH1200のインク連通口H1201にそれぞれ対応し、かつ、第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板H1101はそれぞれ第1のプレートH1200に対して位置精度良く接着固定されている。接着に用いられる第1の接着剤は、低粘度で硬化温度が低く、短時間で硬化し、硬化後比較的高い硬度を有し、かつ、耐インク性のあるものが望ましい。その第1の接着剤は、例えば、エポキシ樹脂を主成分とした熱硬化接着剤であり、この第1の接着層の厚みは50μm以下が望ましい。
【0047】
電気配線テープH1300は、第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板H1101に対してインクを吐出するための電気信号を印加するものである。この電気配線テープH1300は、それぞれの記録素子基板H1100,H1101を組み込むための複数のデバイスホール(開口部)H1,H2と、それぞれの記録素子基板H1100,H1101の電極H1104に対応する電極端子H1302と、この電気配線テープH1300の端部に位置しプリンタ本体装置からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301を有する電気コンタクト基板H2200と電気的接続をおこなうための電極端子部を有しており、この電極端子部と電極リードH1302とは連続した銅箔の配線パターンでつながっている。この電気配線テープH1300は、例えば、配線が2層構造をなし表層がレジストフィルムによって覆われているフレキシブル配線基板からなる。この場合、外部信号入力端子H1301の裏面側(外面側)には、補強板が接着され、平面性向上が図られている。補強板としては、例えば0.5〜2mmのガラスエポキシ、アルミニウム等の耐熱性を有する材料が使用される。
【0048】
電気配線テープH1300と第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板H1101は、それぞれ電気的に接続されており、接続方法は、例えば、記録素子基板の電極H1104上のバンプH1105と、電気配線テープH1300の電極リードH1302とが、熱超音波圧着法により電気接合される。
【0049】
第2のプレートH1400は、例えば、厚さ0.5〜1mmの一枚の板状部材であり、例えばアルミナ(Al23)等のセラミックや、Al、SUSなどの金属材料で形成されている。ただし、第2のプレートH1400の材料は、これらに限定されるものではなく、記録素子基板H1100,H1101および第1のプレートH1200と同等の線膨張率を有し、かつ、それらの熱伝導率と同等以上の熱伝導率を有する材料であってもよい。
【0050】
そして、第2のプレートH1400は、第1のプレートH1200に接着固定された第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板H1101の外形寸法よりも大きな開口部をそれぞれ有する形状である。また、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101と電気配線テープH1300を平面的に電気接続できるように、第1のプレートH1200に第2の接着層H1203により接着されており、電気配線テープH1300の裏面が第3の接着層H1306により接着固定される。
【0051】
第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101と電気配線テープH1300の電気接続部分は、第1の封止剤(不図示)および第2の封止剤により封止され、電気接続部分をインクによる腐食や外的衝撃から保護している。第1の封止剤は、主に電気配線テープの電極端子H1302と記録素子基板のバンプH1105との接続部の裏面側と記録素子基板の外周部分を封止し、第2の封止剤は、前記接続部の表側を封止している。
【0052】
さらに電気配線テープH1300の端部にプリンタ本体装置からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301を有する電気コンタクト基板H2200が、異方性導電フィルム等を用いて熱圧着され電気的に接続されている。
【0053】
そして電気配線テープH1300は、第2のプレートH1400に接着されると同時に、第1のプレートH1200および第2のプレートH1400の一側面に沿って折り曲げられ、第1のプレートH1200の側面に第3の接着層H1306により接着される。第2の接着剤は、粘度が低く、接触面に薄い第2の接着層H1203を形成し得るとともに、耐インク性を有するものが好ましい。また、第3の接着層H1306は、例えば、エポキシ樹脂を主成分とした厚さ100μm以下の熱硬化接着剤層である。
【0054】
(1−2)インク供給ユニット(記録液供給手段)
インク供給部材H1500は、例えば、樹脂成形により形成されている。該樹脂材料には、形状的剛性を向上させるためにガラスフィラーを5〜40%混入した樹脂材料を使用することが望ましい。
【0055】
図1、図2に示すように、インクタンクを着脱自在に保持するインク供給部材H1500は、インクタンクから記録素子ユニットH1002にインクを導くためのインク供給ユニットH1003の一構成部品であり、流路形成部材H1600が超音波溶着されて、インクタンクから第1のプレートH1200に至るインク流路H1501が形成されている。また、インクタンクと係合するジョイント部には、外部からのゴミの進入を防ぐためのフィルターH1700が溶着により接合されており、さらに、ジョイント部からのインクの蒸発を防止するために、シールゴムH1800が装着されている。
【0056】
また、記録ヘッドカートリッジをインクジェット記録装置本体のキャリッジに装着位置に案内するための装着ガイドH1601、記録ヘッドカートリッジをヘッドセットレバーによりキャリッジに装着固定するための係合部、キャリッジの所定の装着位置に位置決めするためのX方向(キャリッジスキャン方向)の突き当て部H1509、Y方向(記録メディア搬送方向)の突き当て部H1510、Z方向(インク吐出方向)の突き当て部H1511を備えている。また、記録素子ユニットH1002の電気コンタクト基板H2200を位置決め固定する端子固定部H1512を有し、端子固定部H1512およびその周囲には複数のリブが設けられ、端子固定部H1512を有する面の剛性を高めている。
【0057】
(1−3)記録ヘッドユニットとインク供給ユニットの結合
先述の図2に示した通り、記録ヘッドは、記録素子ユニットH1002をインク供給ユニットH1003に結合しさらにタンクホルダーH2000と結合することにより完成する。結合は以下のように行われる。
【0058】
記録素子ユニットH1002のインク連通口(第1のプレートH1200のインク連通口H1201)とインク供給ユニットH1003のインク連通口(流路形成部材H1600のインク連通口H1602)とを、インクがリークしないように連通させるため、ジョイントシール部材H2300を介してそれぞれの部材を圧着するようビスH2400で固定する。この際同時に、記録素子ユニットH1002はインク供給ユニットのX方向、Y方向、Z方向の基準位置に対して正確に位置決めされ固定される。
【0059】
そして記録素子ユニットH1002の電気コンタクト基板H2200はインク供給部材H1500の一側面に、端子位置決めピン(2ヶ所)と端子位置決め穴(2ヶ所)により位置決めされ、固定される。固定方法としては、例えば、インク供給部材H1500に設けられた端子位置決めピンをかしめることにより固定されるが、その他の固定手段を用いて固定しても良い。
【0060】
さらにインク供給部材H1500のタンクホルダーとの結合穴および結合部をタンクホルダーH2000に嵌合させ結合することにより、記録ヘッドH1001が完成する。すなわち、インク供給部材H1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、シールゴムH1800から構成されるタンクホルダー部と、記録素子基板H1100,H1101、第1のプレートH1200、配線基板H1300、第2のプレートH1400から構成される記録素子部とを接着等で結合することにより、記録ヘッドが構成されている。その完成図を図8に示している。
【0061】
(2)記録ヘッドカートリッジ
先述のように、各インクタンクの内部には、対応する色のインクが収納されている。また、それぞれのインクタンクには、インクタンク内のインクを記録ヘッドに供給するためのインク連通口が形成されている。例えばインクタンクが記録ヘッドに装着されると、インクタンクのインク連通口が記録ヘッドのジョイント部に設けられたフィルターH1700と圧接され、インクタンク内のインクがインク連通口から記録ヘッドのインク流路H1501を介して第1のプレートH1200を通り第1の記録素子基板H1100に供給される。
【0062】
そして、電気熱変換素子H1103と吐出口H1107のある発泡室にインクが供給され、電気熱変換素子H1103に与えられる熱エネルギーによって被記録媒体である記録用紙に向けて吐出される。
【0063】
[実施例1]
本発明の実施例1について図5〜12を参照して説明する。
【0064】
図5は記録素子ユニットH1002の要部分解模式断面図、図6は要部模式断面図である。
【0065】
図5に示すように、電気配線テープH1300は、ボンディング部周辺が3層構造になっており、表側にポリイミドのベースフィルムH1300a、中間に銅箔H1300b、裏側にソルダーレジストH1300cという構成である。この電気配線テープH1300には、第1の記録素子基板H1100が挿入されるデバイスホール(開口部)H1と、第2の記録素子基板H1101が挿入されるデバイスホールH2が設けられ、記録素子基板H1100,H1101のバンプH1005と接続されるインナーリード(電極リード)H1302が金メッキされて露出している。
【0066】
以下、本実施例の記録素子ユニットの製造方法を図9および図10を参照して工程順に説明する。
【0067】
まず、第1および第2の記録素子基板の製造方法を示す。
【0068】
図10から図16は、第1,2の記録素子基板(インクジェット記録ヘッド)の基本的な態様を示すための摸式図であり、本発明に係わるインクジェット記録ヘッドの構成とその製作手順の一例が示されている。
【0069】
まず、本態様においては、例えば図10に示されるような、ガラス、セラミックス、プラスチックあるいは金属等からなる基板1が用いられる。
【0070】
このような基板1は、液流路構成部材の一部として機能し、また、後述のインク流路およびインク吐出口を形成する材料層の支持体として機能し得るものであれば、その形状、材質等に特に限定されることなく使用できる。上記基板1上には、電気熱変換素子あるいは圧電素子等のインク吐出エネルギー発生素子2が所望の個数配置される。このような、インク吐出エネルギー発生素子2によって記録液小滴を吐出させるための吐出エネルギーがインク液に与えられ、記録が行われる。ちなみに、例えば、上記インク吐出エネルギー発生素子2として電気熱変換素子が用いられる時には、この素子が近傍の記録液を加熱することにより、記録液に状態変化を生起させ吐出エネルギーを発生する。また、例えば、圧電素子が用いられる時は、この素子の機械的振動によって、吐出エネルギーが発生される。
【0071】
なお、これらの素子2には、これら素子を動作させるための制御信号入力用電極8が接続されている。また、一般にはこれら吐出エネルギー発生素子の耐用性の向上を目的として、保護層等の各種機能層が設けられるが、もちろん本発明においてもこのような機能層を設けることは一向に差し支えない。
【0072】
図10において、インク供給のための開口部3を基板1上に予め設けておき、基板後方よりインクを供給する形態を例示した。該開口部3の形成においては、基板1に穴を形成できる手段であれば、いずれの方法も使用できる。例えば、ドリル等機械的手段にて形成しても構わないし、レーザー等の光エネルギーを使用しても構わない。また、基板1にレジストパターン等を形成して化学的にエッチングしても構わない。
【0073】
もちろん、インク供給口を基板1に形成せず、樹脂パターンに形成し、基板1に対してインク吐出口と同じ面に設けてもよい。
【0074】
次いで、図11に示すように、上記インク吐出エネルギー発生素子2を含む基板1上に、溶解可能な樹脂にてインク流路パターン4を形成する。最も一般的な手段としては感光性材料にて形成する手段が挙げられるが、スクリーン印刷法等の手段にても形成は可能である。感光性材料を使用する場合においては、インク流路パターンが溶解可能であるため、ポジ型レジストか、あるいは溶解性変化型のネガ型レジストの使用が可能である。
【0075】
レジスト層の形成の方法としては、基板上にインク供給口を設けた基板を使用する場合には、該感光性材料を適当な溶剤に溶解し、PETなどのフィルム上に塗布、乾燥してドライフィルムを作成し、ラミネートによって形成することが好ましい。上述のドライフィルムとしては、ポリメチルイソプロピルケトン、ポリビニルケトン等のビニルケトン系光崩壊性高分子化合物を好適に用いることができる。というのは、これら化合物は、光照射前は高分子化合物としての特性(被膜性)を維持しており、インク供給口3上にも容易にラミネート可能であるためである。
【0076】
また、インク供給口3に後工程で除去可能な充填物を配置し通常のスピンコート法、ロールコート法等で被膜を形成しても構わない。
【0077】
このように、インク流路をパターニングした溶解可能な樹脂材料層4上に、図12に示すように、さらに被覆樹脂層5を通常のスピンコート法、ロールコート法等で形成する。ここで、該樹脂層5を形成する工程において、溶解可能な樹脂パターンを変形せしめない等の特性が必要となる。すなわち、被覆樹脂層5を溶剤に溶解し、これをスピンコート、ロールコート等で溶解可能な樹脂パターン4上に形成する場合、溶解可能な樹脂パターン4を溶解しないように溶剤を選択する必要がある。
【0078】
次に、本実施例に用いる被覆樹脂層5について説明する。被覆樹脂層5としては、インク吐出口3をフォトリソグラフィで容易にかつ精度よく形成できることから、感光性のものが好ましい。このような感光性被覆樹脂層5は、構造材料としての高い機械的強度、基板1との密着性、耐インク性と、同時にインク吐出口の微細なパターンをパターニングするための解像性が要求される。このため、エポキシ樹脂のカチオン重合硬化物が構造材料として優れた強度、密着性、対インク性を有し、かつ前記エポキシ樹脂が常温にて固体状であれば、優れたパターニング特性を有する。
【0079】
まず、エポキシ樹脂のカチオン重合硬化物は、通常の酸無水物もしくはアミンによる硬化物に比較して高い架橋密度(高Tg)を有するため、構造材として優れた特性を示す。また、常温にて固体状のエポキシ樹脂を用いることで、光照射によりカチオン重合開始剤より発生した重合開始種のエポキシ樹脂中への拡散が抑えられ、優れたパターニング精度、形状を得ることができる。
【0080】
溶解可能な樹脂層上に被覆樹脂層を形成する工程は、常温で固体状の被覆樹脂を溶剤に溶解し、スピンコート法で形成することが望ましい。
【0081】
薄膜コーティング技術であるスピンコート法を用いることで、被覆樹脂層5は均一にかつ精度良く形成することができ、従来方法では困難であったインク吐出圧力発生素子2とオリフィス間の距離を短くすることができ、小液滴吐出を容易に達成することができる。
【0082】
ここで、被覆樹脂層5を溶解可能な樹脂層4上にフラットに形成するために、スピンコート時に被覆樹脂を溶剤に対して30〜70wt%の濃度で、さらに好ましくは40〜60wt%の濃度で溶解させることにより被覆樹脂層5表面をフラットにすることが可能となる。
【0083】
本実施例に用いる固体状のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAとエピクロヒドリンとの反応物のうち分子量がおよそ900以上のもの、含ブロモスフェノールAとエピクロヒドリンとの反応物、フェノールノボラックあるいはo−クレゾールノボラックとエピクロヒドリンとの反応物、特開昭60−161973号公報、特開昭63−221121号公報、特開昭64−9216号公報、特開平2−140219号公報に記載のオキシシクロヘキサン骨格を有する多感応エポキシ樹脂等があげられる。
【0084】
上記エポキシ樹脂を硬化させるための光カチオン重合開始剤としては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩[J.POLYMER SCI:Symposium No. 56 383-395(1976)参照]や旭電化工業株式会社のSP−150、SP−170等が挙げられる。
【0085】
次いで、上記化合物からなる感光性被覆樹脂層5に対して、図13に示すように、マスク6を介してパターン露光を行う。本態様の感光性被覆樹脂層5は、ネガ型であり、インク吐出口を形成する部分をマスクで遮蔽する(むろん、電気的な接続を行う部分も遮蔽する。図示せず。)。
【0086】
パターン露光は、使用する光カチオン重合開始剤の感光領域に合わせて紫外線、Deep−UV光、電子線、X線などから適宜選択することができる。
【0087】
本実施例のノズル材は、配線や、記録素子がパターニングされたSiウエハー上に樹脂をスピンコートで塗布し、その後パターニングして形成する。
【0088】
本実施例において使用されるノズル材の樹脂分はBk、カラー用で同じであり、それぞれ溶媒、粘度を変え、異なるOHを実現している。
【0089】
詳しく記すと、カラー用ノズル材は、エポキシ樹脂分約60%にMIBK、ジグライム等の溶媒を混ぜ、粘度を約60(mPa・s)程度にし、1回スピンコートすることで、約25μmのOHを実現している。また、Bkに関しては、エポキシ樹脂分約60%にキシレン等を溶媒とし、粘度を約120(mPa・s)とし、3回重ねてスピンコートすることで、約75μmのOHを実現している。スピンコート後は、Bk、カラーとも同様の装置でパターニングし、ヘッドにしていく。
【0090】
このように、Bk,カラーのウエハー(ウエハー厚は同じ)、ノズル材は異なるものの、同じスピンナーでのノズル材塗布、同様の露光機でのパターニングが可能であり、工程としては、専用のものを用いる必要は無く、異なるOHを同一の工程で作製することが可能となる。
【0091】
ここで、これまでの工程は、すべて従来のフォトリソグラフィ技術を用いて位置合わせが可能であり、オリフィスプレートを別途作成し基板と張り合せる方法に比べて、格段に精度をあげることができる。こうしてパターン露光された感光性被覆樹脂層5は、必要に応じて反応を促進するために、加熱処理を行ってもよい。ここで、前述のごとく、感光性被覆樹脂層は常温で固体状のエポキシ樹脂で構成されているため、パターン露光で生じるカチオン重合開始種の拡散は制約を受け、優れたパターニング精度、形状を実現できる。
【0092】
次いで、パターン露光された感光性被覆樹脂層5は、適当な溶剤を用いて現像され、図14に示すように、インク吐出口を形成する。ここで、未露光の光性被覆樹脂層の現像時に同時にインク流路を形成する溶解可能な樹脂パターン4を現像することも可能である。ただし、一般的に、基板1上には複数の同一または異なる形態のヘッドが配置され、切断工程を経てインクジェット記録ヘッドとして使用されるため、切断時のごみ対策として、図14に示すように感光性被覆樹脂層5のみを選択的に現像することにより、インク流路を形成する樹脂パターン4を残し(液室内に樹脂パターン4が残存するため切断時に発生するゴミが入り込まない)、切断工程後に樹脂パターン4を現像することも可能である(図15)。また、この際、感光性被覆樹脂層5を現像する時に発生するスカム(現像残渣)は、溶解可能な樹脂層4と共に溶出されるためノズル内には残渣が残らない。
【0093】
前述したように架橋密度を上げる必要がある場合には、この後、インク流路およびインク吐出口が形成された感光性被覆樹脂層5を還元剤を含有する溶液に浸漬および加熱することにより後硬化を行う。これにより、感光性被覆樹脂層5の架橋密度はさらに高まり、基板に対する密着性および耐インク性は非常に良好となる。もちろん、この銅イオン含有溶液に浸漬加熱する工程は、感光性被覆樹脂層5をパターン露光し、現像してインク吐出口を形成した直後に行っても一向にさしつかえなく、その後で溶解可能な樹脂パターン4を溶出しても構わない。また浸漬、加熱工程は、浸漬しつつ加熱しても構わないし、浸漬後に加熱処理を行っても構わない。
【0094】
このような還元剤としては、還元作用を有する物質であれば有用であるが、特に銅トリフラート、酢酸銅、安息香酸銅など銅イオンを含有する化合物が有効である。前記化合物の中でも、特に銅トリフラートは非常に高い効果を示す。さらに前記以外にアスコルビン酸も有用である。
【0095】
このようにして形成したインク流路およびインク吐出口を形成した基板に対して、インク供給のための部材7およびインク吐出圧力発生素子を駆動するための電気的接合(図示せず)を行ってインクジェット記録ヘッドが形成される(図16)。
【0096】
本実施態様では、インク吐出口の形成をフォトリソグラフィによって行ったが、本発明はこれに限ることなく、マスクを変えることによって、酸素プラズマによるドライエッチングやエキシマレーザーによってもインク吐出口を形成することができる。エキシマレーザーやドライエッチングによってインク吐出口を形成する場合には、基板が樹脂パターンで保護されてレーザーやプラズマによって傷つくことがないため、精度と信頼性の高いヘッドを提供することも可能となる。さらに、ドライエッチングやエキシマレーザー等でインク吐出口を形成する場合は、被覆樹脂層5は感光性のもの以外にも熱硬化性のものも適用可能である。本実施例に使用される記録素子基板は、H1100、H1101(カラー、Bk)ともほぼ同じ厚みのSiウエハー(厚み約625μm)を用いており、記録素子、配線がパターニングされ、ノズル材がパターニングされたウエハー状態で、各記録素子基板上に設けられた、電気接点用パッドの上に、バンプを形成する。その後、ウエハーを切断し、各々の記録素子基板に分割する。
【0097】
本実施例において、第2のプレートH1400は、事前に第1のプレートH1200上に接着剤により貼りつけられている。この第2のプレートH1400には、第1、第2の記録素子基板が入るような穴が設けられている。
【0098】
次に、貼りつけ装置に位置決めされ、固定された、前記第1のプレートH1200の、第1の録素子基板H1100が貼りつけられるべきところに、エポキシ系UV/熱硬化型接着剤を塗布し、前記貼りつけ装置に具されたカメラにより、第1の記録素子基板H1100に設けられたアライメントマークを画像処理し、位置を決め、貼り付ける。そのとき、前記接着剤は前記第1の記録素子基板H1100より少しはみ出すように塗布しておき、貼りつけ後、貼りつけ装置で第1の記録素子基板H1100を押えながら、UV光を照射し、前記接着剤を仮硬化させ、貼りつけた前期第1の記録素子基板H1100が動かなくなるようにしておく。次に、第2の記録素子基板を同様の方法で前記第1のプレート1200に貼りつけ、仮硬化を行う。この時、本実施例の第1、第2の記録素子基板は基本的に基板の厚み(ノズル材を除く部分)が同じなので、アライメントのカメラの一部は、共通で使用することが可能である。その後、オーブンに入れ、熱で前記接着剤を硬化させる。
【0099】
次に、前記第1、第2の記録素子基板H1100、H1101、第2のプレートH1400が貼りつけられた代のプレートH1200の、第2のプレート上に、前記第1及び第2の記録素子基板の電気接点部と位置決めを(本実施例においては画像処理を行った)行い、電気配線テープH1300を接着剤を用いて貼りつけ、前記記録素子基板に設けられたバンプと、前記電気配線テープH1300に設けられた電極リードを熱超音波法により電気接合する。本実施例において、第2のプレートは厚みが同じ第1と第2の記録素子基板のバンプと電気配線テープの電極リードが適当な位置に来るような厚みとなっている。
【0100】
さらに、記録素子基板H1100の電極H1104上のバンプH1105と、電気配線テープH1300の電極リードH1302との接合部を樹脂により封止して、インク等でショートしないようにしている。
【0101】
図7には、図2に示されている第1,2のプレートH1200,H1400、第1,2の記録素子基板H1100,H1101、電気配線テープH1300を拡大した分解図および断面図を示している。図5〜7を参照して本実施例の構成をより詳細に説明する。
【0102】
本実施例において、第1のプレートH1200および第2のプレートH1400はアルミナ製であり、電気配線テープ(フレキシブルプリント基板)H1300は、前記の通り、ベースフィルム、銅箔配線、ソルダーレジストの三層構造であり、デバイスホールH1,H2が設けられ、金メッキされた電極リードH1302が露出している。
【0103】
本実施例の第2のプレートH1400は、単一の板状の部材であり、記録素子基板H1100およびH1101が挿入されるための穴が2ヶ所設けられており、第1のプレートH1200に接着されて固定されている。また、電気配線テープH1300は、記録素子基板H1100およびH1101を露出するために形成されたデバイスホールH1,H2を除く領域の全面が、第3の接着層H1306により第2のプレートH1400に接着されている。
【0104】
本実施例のインクジェット記録装置においては、ブラックヘッドと、カラーヘッドの両方を同一の支持基板上に組付けて一体化しているので、お互いのヘッドのインクの着弾位置の修正が不要である。
【0105】
本実施例では、前記した構成のインクジェット記録ヘッドにおいて、第1の記録素子基板H1100を用いてブラックインクを吐出させ、第2の記録素子基板H1101を用いて、シアン、マゼンタ、イエローの3色のカラーインクを吐出させる。
【0106】
また、第1の記録素子基板H1100のノズル構成は、片側300dpiでインク供給路の両側にノズルが千鳥状に配置され、600dpiの記録素子が構成されている。第2の記録素子基板H1101は、1つの基板にインク供給口H1102が3つ設けられ、シアン、マゼンタ、イエローの吐出口H1107が、片側600dpiで千鳥状に配置され、1200dpiの記録素子が構成されている。本実施例のインクジェット記録ヘッドでは、ブラック用とカラー用の2つの記録素子基板H1100,H1101を非常に高精度に配置するため、1枚の第1のプレートH1200上に両記録素子基板H1100,H1101を搭載している。また、記録装置本体からの電源やデータ等の供給を行うための電気コンタクト基板H2200や電気配線テープH1300を、2つの記録素子基板H1100,H1101で共用するようにして、部品点数削減および低コスト化を図っている。
【0107】
本実施例のインクジェット記録ヘッドは、記録装置本体のキャリッジに装着され、キャリッジに設けられた電気接点と、インクジェット記録ヘッドに設けられた電気コンタクト基板H2200とが、電気的に接続される。本実施例の両記録素子基板H1100,H1101は、ブラック用とカラー用とで吐出量が異なるように構成されている。図8は、第1の記録素子基板および第2の記録素子基板の吐出方式を説明する説明図である。なお、図中において第1の記録素子基板および第2の記録素子基板は同一の電源に接続されており、かつ同一平面(点線)上に配置されている構成を示す。
【0108】
本実施例の第2の記録素子基板H1101は、吐出量を安定させ高画質カラー印字を行うために、いわゆるバブルスルージェット方式(BTJ方式)のインクジェット記録方式を採用している。
【0109】
通常のバブルジェット方式(BJ方式)の場合、図8に示すように、吐出口−記録素子間距離(吐出口大気側端と記録素子の最短距離)OHが比較的長く、記録素子(電気熱変換素子)H1103の加熱によるインク発泡時に、この気泡AはインクI中に発生しこのインクIに封じ込められた状態で存在する。これに対し、BTJ方式の場合、図8に示すように、吐出口−記録素子間距離OHが比較的短いため、記録素子H1103の加熱によるインク発泡時に、インクを吐出させるとともにこの気泡AはインクI中から吐出口H1107を介して外部に連通する。
【0110】
このBTJ方式のノズルは、吐出口面積SO×吐出口−記録素子間距離(OH)が吐出量Vdと実質的に等しい。例えば、吐出量Vd=約5plとする場合、吐出口−記録素子間距離OH=25μm、吐出口面積SO=200μm2(直径φ=約16μm)とすればよい。
【0111】
一方、第1の記録素子基板H1100は、ブラックインクの印字が美しく見え、かつ印字速度を高速にするために、インクの吐出量Vdを約30plにしている。BTJ方式によりこの吐出量を達成するためには、吐出口−記録素子間距離OH=25μmのとき、吐出口面積SO=1200μm2(直径φ=約39μm)とする必要がある。このようなノズル構成にする場合、所望の吐出量を達成するためには、35μm×35μm程度の大型の記録素子(電気熱変換素子)H1103を用いなければならない。また、吐出口H1107が記録素子H1103よりも大きくなるので、吐出される液滴の直進性が失われる。吐出口−記録素子間距離OHを大きくすれば吐出口面積SOを小さくすることができるが、流路抵抗が大きくなるため、さらに大きな記録素子H1103が必要となり、省エネルギーの観点から好ましくない。そこで本実施例では、ブラック用の第1の記録素子基板H1100は、BTJ方式ではなく通常のBJ方式を採用している。そして、吐出口−記録素子間距離OH=70〜80μm程度、吐出口面積SO=600〜800μm2程度の寸法にしている。
【0112】
また、本実施例において、先に述べたようにブラック用と、カラー用で、記録素子の配置密度がそれぞれ、片側300dpi(両側600dpi)と片側600dpi(両側1200dpi)と異なっている。これは、ブラック、カラーとも吐出量がそれぞれ約30pl、約5plと異なるものの、どちらも同時に最速(1パス)で印字可能なようにする為である。
【0113】
また、インクの吐出量が大きく異なるが、ブラックインクは被記録媒体上であまり広がらないような組成にし、カラーは比較的被記録媒体上で広がる(にじみ率が大きい)組成にして用いている。
【0114】
例えば、本実施例に用いたブラック、カラーインクの物性値は、
ブラック: 粘度 約2(Pa・s)、 表面張力 約40(N/m)
カラー : 粘度 約2(Pa・s)、 表面張力 約30(N/m)
と言うものを用いた。
【0115】
しかし、本発明のインクジェット記録ヘッドに用いられるインクは、上記物性値のインクに限るものではない。
【0116】
そして、このようなバブルジェット記録方式のプリントヘッドにおいては、電気熱変換体からの余剰の熱によりヘッドの温度が上昇し、インクの温度が上昇し、インク物性(おもに粘度)が変化することにより吐出状態が変化することがある。また、低温の環境においてはインクの粘度が高く吐出しづらくなることも知られている。これらの温度変化に対し、電気熱変換体に加わる熱量をコントロールしたり、プリントヘッドに加熱用素子を設けたりすることにより温度変化を抑える方法が知られている。しかし、ブラック用の第1の記録素子基板とカラー用の第2の記録素子基板では前述の通り電気熱変換体の大きさが異なり、また、基板サイズが異なることからそれぞれ別々の温度制御が必要であり構成が複雑である、という問題があった。
【0117】
しかし、ブラック用の第1の記録素子基板とカラー用の第2の記録素子基板とを熱伝導率の高い同一の支持基板上に接着することで、それぞれの基板温度を共通化することができ構成を単純化することができる。
【0118】
なお、吐出速度に関しては、着弾精度および初期吐出特性を満足することを考えると8m/sec以上であることが好ましい。
【0119】
また、前述の吐出量と吐出速度とを満足するためには吐出口−記録素子間距離OHは100μm以下であることが望ましい。
【0120】
図9に示すように、本実施例のインクジェット記録ヘッドでは、同一のプレート(第1のプレートH1200)上に、カラーインク用のBTJ方式の記録素子基板H1101と、ブラックインク用の通常のBJ方式の記録素子基板H1100とを搭載している。この両記録素子基板H1100,H1101は、インク吐出方式も、インク吐出量も異なるため、駆動させるための投入エネルギーが異なる。しかし、この記録素子基板H1100,H1101に供給される電源電圧は同じである。これは、記録装置本体に装着される電源が単一である方が低コストで済むからである。
【0121】
同じ電源電圧で各記録素子基板H1100,H1101の記録素子H1103に電流を流し、インクを膜沸騰を発生させ、異なる体積のインクを吐出させるために、本実施例のインクジェット記録ヘッドでは、記録素子H1103に電流を流す時間(パルス幅)を変えて駆動している。
【0122】
本実施例において、Bk、カラーともチップの駆動電圧は、19(V)である。また、Bkのヒータサイズは、37μm□、吐出口は丸型で径は約φ25μmであり、カラーのヒータサイズは、26μm□、吐出口は丸型で径は約φ16μmである。
【0123】
上記ヘッドの駆動パルス幅は、シングルパルス相当で、Bkが約1.4〜3μs程度であり、カラーが約0.6〜1.1μs程度である。このパルス幅は、ヒータボードの成膜の状態や、ヒータの駆動本数によりそれぞれ適正な値が、プリンタ内に記憶されたパルステーブルから引き出され使用される。このテーブル値を引き出す為には、製造工程中で、それぞれのインクジェット記録ヘッドの抵抗値や、吐出させるぎりぎりのパルス幅等を測定し、インクジェット記録ヘッドに具されたROMに書き込み、インクジェット記録装置で読み出してもよいし、インクジェット記録装置上で、インクジェット記録ヘッドのヒータ抵抗値等を読み取り、適正なパルスを与えるなどしても良い。
【0124】
一般的に、パルス幅(Pw)と、吐出速度(v)との相関関係は、パルス幅(Pw)が短くなるにつれ、吐出速度(v)が下がってくる。
【0125】
従って本実施例においては、吐出の特性を合わせる為、ダブル(w)パルスを採用している。以下に数点例をあげる。
【0126】
この時ダブルパルスは、プレパルス−休み時間−メインパルスの関係で表記する。単位は全て(μs)である。
【0127】
Bk カラー
シングル ダブル シングル ダブル
1.5 0.542-1.583-1.167 0.625 0.250-0.417-0.500
2.0 0.479-1.146-1.667 0.917 0.167-0.167-0.833
2.5 0.354-0.688-2.250 1.000 0.125-0.083-0.958
上記パルス幅は、本実施例の一例であり、本発明を限定するものではない。
【0128】
また、本実施例では、記録素子基板H1100,H1101の複数の記録素子H1103を駆動させる際に、流れる電流が大きくなるので、記録装置本体からインクジェット記録ヘッドまでの配線中で電圧降下が発生する。それによって、記録素子基板H1100,H1101に印加される電圧が下がり吐出量が低下することを防ぐための制御として、同時に駆動される記録素子H1103の数に応じて駆動パルス幅を変更している。
【0129】
これらのパルス幅の信号は、記録装置本体から、共用の電気コンタクト基板H2200および電気配線テープH1300を介して、各記録素子基板H1100,H1101に供給される。このような構成を採用することにより、駆動方式の異なる記録素子基板H1100,H1101を、非常にスペース効率よく、かつ低コストで提供することが可能になっている。
【0130】
また、このような構成により印字記録を行った際の第1の記録素子基板H1100の温度および第2の記録素子基板H1101の温度について説明する。第1の記録素子基板H1100のみにより平均デューティー10%(2.2W)で記録を行った場合、第1の記録素子基板H1100の温度上昇は4℃、第2の記録素子基板H1101の温度上昇は2℃であった。次に第2の記録素子基板H1101のみで平均デューティー50%(3.5W)で記録を行った場合、第1の記録素子基板H1100の温度上昇は4℃、第2の記録素子基板H1101の温度上昇は6℃であった。さらに、第1の記録素子基板H1100により平均デューティー10%(2.2W)、第2の記録素子基板H1101により平均デューティー50%(3.5W)で記録を行った場合、第1の記録素子基板H1100の温度上昇は7℃、第2の記録素子基板H1101の温度上昇は8℃であった。このように、それぞれの基板に異なる熱量を加えてもそれぞれの基板の温度差は2℃程度であり、同一の吐出状態を保つことができた。
【0131】
[実施例2]
ここでは実施例1の構成と異なる部分のみを図17〜図18を参照して説明する。
【0132】
図17は第2の記録素子基板の変形例を示すもので図17(a)は正面図、図17(b)は断面図である。また図18はこの記録素子基板をインクジェット記録ヘッドに組み込んだ図である。
【0133】
本実施例の、カラー記録に使用する第2の記録素子基板800は、図17(c)に代表して示すように、エネルギー変換素子としての電気熱変換素子(記録素子)65を含む基板67と、吐出口61を形成するオリフィスプレート66とを備えている。基板67は、面方位<100>のシリコン単結晶で形成され、基板67上には、複数の電気熱変換素子65の列、各列の電気熱変換素子65を駆動するための駆動回路63、外部と接続するためのコンタクトパッド69、駆動回路63およびコンタクトパッド69を接続する配線68等が半導体プロセスを用いて形成されている。また、基板67には上述の駆動回路63、電気熱変換素子65、配線68等を除いた領域に、異方性エッチングにより形成された貫通口が5つ設けられ、それぞれ後述する吐出口列71〜73,81〜83に液体を提供するためのインク供給口62,62aを形成している。なお、図17(a)は基板67に対して略透明なオリフィスプレート66を形成した状態を模式的に表しており、上述の電気熱変換素子やインク供給口は省略して描かれている。
【0134】
基板67上に設けられるオリフィスプレート66は感光性エポキシ樹脂で形成され、フォトリソグラフィ技術を用いて前述の電気熱変換素子65に対応して、吐出口61および液流路60が形成されている。
【0135】
また記録素子基板800は、コンタクトパッド69を電気配線テープの電極端子と接続することで、この配線板に繋がった外部信号入力端子が記録装置の電気接続部と接続した際に、駆動信号などを記録装置から受け取ることができる。さらに、インク供給口62,62a等はインク供給ユニットの流路形成部材H1600のインク流路を介して各色のインクタンクと連通される。
【0136】
また本実施例では、吐出口61は複数設けられ、それらが所定のピッチで配設されることで、互いに略平行な吐出口列(吐出部)71〜73,81〜83を形成している。ここで、図17(a)において、吐出口列71〜73のそれぞれ図面上からi番目の吐出口は、図17(a)に示す矢印方向に対して一致している。このように、記録ヘッドカートリッジが記録装置等に搭載されて走査されるときの走査方向に関して、吐出口列71〜73は、それぞれ対応する吐出口が一致するように配列されており、第1の吐出口列群70が形成されている。吐出口列81〜83についても吐出口列71〜73と同様に配列されており、吐出口列81〜83によって第1の吐出口列群70に隣接するように第2の吐出口列群80が形成されている。
【0137】
この第2の記録素子基板800は、1つの基板にインク供給口が5つ設けられ、順番に、片側にシアンインク用ノズル、片側にマゼンタインク用ノズル、両側にイエローインク用ノズル、片側にマゼンタインク用ノズル、片側にシアンインク用ノズルというノズル配置になっており、片側600dpiで千鳥状に配置され、1200dpiの記録素子が構成されている。
【0138】
すなわち、2つの吐出口列群による6つの吐出口列について、最も外側の吐出口列73,83ではシアン(C)を、吐出口列72,82ではマゼンタ(M)を、最も内側の互いに隣接する吐出口列71,81ではイエロー(Y)を吐出する。そのため、インク供給口62a(中央部に設けられたインク供給口)にはイエローインクが、インク供給口62aに隣接する2つのインク供給口62にはマゼンタインクが、最も外側の2つのインク供給口62にはシアンインクが、それぞれY,M,C各色独立のインクタンクから供給されている。このように、中央のインク供給口62aは2つの吐出口列71,81に対して液体を供給するものであり、インク供給口62aおよび液流路60aはこれら2つの吐出口列71,81の共通の液室部として機能する。
【0139】
このように、2つの吐出口列群が隣接する部分に、それぞれ同じ種類の液体を吐出する吐出口列を並べ、この部分を中央にして他の同種の吐出口列およびそれらの駆動回路を略対称に配置することで、インク供給口62,62aとしての貫通口、および駆動回路や電気熱変換素子などを基板に対して等間隔に無駄無く配置し、基板サイズを小さくすることができる。しかも、このように同種の液体を吐出する吐出口列を線対称に配置したことで、往復記録(双方向プリント)の際、記録媒体上に所望の色を形成するための1画素に対するインク打ち込み(吐出)順が往路走査と復路走査で同じになるので、走査方向に関わらず発色が均一になり往復印字による色むらの発生を防止することができる。
【0140】
さらに、図17(a)および図17(b)より明らかなように、第1の吐出口列群70と、第2の吐出口列群80とは、それぞれの吐出口群を形成する吐出口列71〜73,81〜83の各吐出口が前述した走査方向に対して互いに補完し合うように、記録ヘッドの副走査方向(本例の場合、吐出口列の配列方向に一致する)に対して、ちょうど吐出口配列のピッチの1/2だけずれて配設されている。これにより、吐出口配列ピッチに対して実質2倍の高精細印字が可能となる。
【0141】
さらに、第2の記録素子基板800では電気熱変換素子65の配列密度を1200dpiにし、カラーの液滴量を4〜8plに設定している。一方、実施例1で説明した第1の記録素子基板H1100では電気熱変換素子の配列密度を600dpiにし、ブラックの液滴量を20〜40plに設定している。そのため、第2の記録素子基板800の各電気熱変換素子65の大きさはブラック用の第1の記録素子基板H1100の電気熱変換素子よりも小さく、また各吐出口61の大きさも第1の記録素子基板7の吐出口よりも小さい。例えば、ブラックの液滴30plを得るために、第1の記録素子基板7の吐出口−電気熱変換素子間距離OHは70〜80μm、吐出口面積SOは600〜800μm2である。一方、カラーの液滴5plを得るために、第2の記録素子基板8のOHは25μm、SOは200μm2である。この条件は上述の実施例1と同じである。
【0142】
本実施例では、上記のとおりの構成の第2の記録素子基板800と、実施例1で説明したとおりの第1の記録素子基板H1100とを、第1のプレートH1300上に接着固定して、実施例1で説明したのと同じ構成の記録ヘッドカートリッジ(図18参照)を組み立てた。
【0143】
また、カラー用の第2の記録素子基板800上の電気熱変換素子の密度をブラック用の第1の記録素子基板H1100上の電気熱変換素子の2倍の密度で配列する(例えば、第1の記録素子基板H1100上の電気熱変換体の密度が600dpi、第2の記録素子基板800上の電気熱変換素子の密度が1200dpi)ことにより、25KHz、16時分割駆動を行っても約2.5μsの加熱パルス幅を確保することができた。通常のパルス幅1μsに対し、電気熱変換体の抵抗値の製造バラツキや、吐出電流による電圧降下の補正を行ってもパルス幅は2μs程度に抑えられ、10パルスまで問題なく使用できた。これに対し、第2の記録素子基板800上の電気熱変換体の密度を第1の記録素子基板H1100上の電気熱変換体の密度と等しくした場合、同じ記録速度を得るためには50KHzが必要であり、パルス幅は1.25μs以下に抑える必要がある。この場合、前記のパルス幅による補正が十分行えないため、電圧を上げて使用する必要があり、同一面積を埋めるためには、ブラックの2倍のパルス数が必要であるのにもかかわらず、10パルスで電気熱変換体が破断してしまった。
【0144】
なお、往復連続印字を行う場合は、第1の実施の形態に比べてさらに記録素子基板の温度が変化しやすいが、本実施形態によれば、往復印字記録を行った際の第1の記録素子基板H1100の温度および第2の記録素子基板800の温度は次のようになった。
【0145】
すなわち、第2の記録素子基板800のみにより平均デューティー50%(3.5W)で記録を行った場合、第1の記録素子基板H1100の温度上昇は3℃、第2の記録素子基板8の温度上昇は5℃であった。また、第2の記録素子基板800のみにより平均デューティー100%(7W)で記録を行った場合、第1の記録素子基板H1100の温度上昇は8℃、第2の記録素子基板800の温度上昇は10℃であった。このように、往復印字という温度上昇の厳しい条件においてもそれぞれの基板どうしの温度差を少なく保つことができて良好な吐出状態を得ることができた。
【0146】
本実施例でも、実施例1と同様に、第1の記録素子基板7の吐出口面と第2の記録素子基板800の吐出口面がそれぞれ第1プレートH1200の裏面を基準として高さが異なっている。すなわちモノクロ記録用に使用する第1の記録素子基板H1100の吐出口面の方が、カラー記録用に用いる第2の記録素子基板800の吐出口面よりも基準面からの高さが高くなっている。
【0147】
(インクジェット記録装置)
最後に、上述したようなカートリッジタイプの記録ヘッドを搭載可能な液体吐出記録装置について説明する。図19は、本発明の液体吐出記録ヘッドを搭載可能な記録装置の一例を示す説明図である。
【0148】
図19に示す記録装置において、図1に示した記録ヘッドカートリッジH1000がキャリッジ102に位置決めして交換可能に搭載されており、キャリッジ102には、記録ヘッドカートリッジH1000上の外部信号入力端子を介して各吐出部に駆動信号等を伝達するための電気接続部が設けられている。
【0149】
キャリッジ102は、主走査方向に延在して装置本体に設置されたガイドシャフト103に沿って往復移動可能に案内支持されている。そして、キャリッジ102は主走査モータ104によりモータプーリ105、従動プーリ106およびタイミングベルト107等の駆動機構を介して駆動されるとともにその位置および移動が制御される。また、ホームポジションセンサ130がキャリッジ102に設けられている。これにより遮蔽板136の位置をキャリッジ102上のホームポジションセンサ130が通過した際に位置を知ることが可能となる。
【0150】
印刷用紙やプラスチック薄板等の記録媒体108は給紙モータ135からギアを介してピックアップローラ131を回転させることによりオートシートフィーダ(ASF)132から一枚ずつ分離給紙される。更に搬送ローラ109の回転により、記録ヘッドカートリッジH1000の吐出口面と対向する位置(プリント部)を通って搬送(副走査)される。搬送ローラ109はLFモータ134の回転によりギアを介して行われる。その際、給紙されたかどうかの判定と給紙時の頭出し位置の確定は、ペーパエンドセンサ133を記録媒体108が通過した時点で行われる。さらに、記録媒体108の後端が実際にどこに有り、実際の後端から現在の記録位置を最終的に割り出すためにもペーパエンドセンサ133は使用されている。
【0151】
なお、記録媒体108は、プリント部において平坦なプリント面を形成するように、その裏面をプラテン(不図示)により支持されている。この場合、キャリッジ102に搭載された記録ヘッドカートリッジH1000は、それらの吐出口面がキャリッジ102から下方へ突出して前記2組の搬送ローラ対の間で記録媒体108と平行になるように保持されている。
【0152】
記録ヘッドカートリッジH1000は、各吐出部における吐出口の並び方向が上述したキャリッジ102の走査方向に対して交差する方向になるようにキャリッジ102に搭載され、これらの吐出口列から液体を吐出して記録を行なう。
【符号の説明】
【0153】
1 基板
2 インク吐出エネルギー発生素子
3 開口部
4 インク流路パターン
5 被覆樹脂層
6 マスク
8 制御信号入力用電極
60 液流路
61 吐出口
62,62a インク供給口
63 駆動回路
65 エネルギー変換素子としての電気熱変換素子(記録素子)
66 オリフィスプレート
67 基板
68 配線
69 コンタクトパッド
70 第1の吐出口列群
71〜73,81〜83 吐出口列
80 第2の吐出口列群
102 キャリッジ
103 ガイドシャフト
104 主走査モータ
105 モータプーリ
106 従動プーリ
107 タイミングベルト
108 記録媒体
109 搬送ローラ
130 ホームポジションセンサ
131 ピックアップローラ
132 オートシートフィーダ(ASF)
133 ペーパエンドセンサ
134 LFモータ
135 給紙モータ
800 第2の記録素子基板
H1,H2 デバイスホール(開口部)
H1000 記録ヘッドカートリッジ
H1001 記録ヘッド
H1002 記録素子ユニット
H1003 インク供給ユニット(記録液供給手段)
H1100 第1の記録素子基板
H1101 第2の記録素子基板
H1102 インク供給口
H1103 記録素子(電気熱変換素子)
H1104 電極
H1105 バンプ
H1106 インク流路壁
H1107 吐出口
H1108 吐出口群
H1110 Si基板
H1200 第1のプレート(第1の支持部材)
H1201 インク連通口
H1203 第2の接着層
H1300 電気配線テープ(可撓性の配線基板)
H1300a ベースフィルム
H1300b 銅箔
H1300c ソルダーレジスト
H1301 外部信号入力端子
H1302 電極端子(電極リード)
H1306 第3の接着層
H1400 第2のプレート(第2の支持部材)
H1500 インク供給部材
H1501 インク流路
H1509 X方向(キャリッジスキャン方向)の突き当て部
H1510 Y方向(記録メディア搬送方向)の突き当て部
H1511 Z方向(インク吐出方向)の突き当て部
H1512 端子固定部
H1600 流路形成部材
H1601 装着ガイド
H1602 インク連通口
H1700 フィルター
H1800 シールゴム
H2000 タンクホルダー
H2200 電気コンタクト基板
H2300 ジョイントシール部材
H2400 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録液に吐出エネルギーを付与する複数の記録素子と、前記吐出エネルギーを受容する記録液を貯留する複数の流路と、前記複数の流路に前記記録液を供給する供給口と、前記記録素子に対向して設けられ前記記録液を吐出する複数の吐出口と、を有する記録素子基板を複数備えてなるインクジェット記録ヘッドにおいて、
少なくとも1つの前記記録素子基板における前記記録素子と前記吐出口との間の距離と、他の前記記録素子基板における前記記録素子と前記吐出口との間の距離とが異なるとともに、両者の記録素子による液体吐出方式が異なることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項2】
前記記録液として黒系の液体が供給される前記記録素子基板における前記記録素子と前記吐出口との間の距離が相対的に長く、前記記録液としてカラー系の液体が供給される前記記録素子基板における前記記録素子と前記吐出口との間の距離が相対的に短い、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項3】
前記記録液として黒系の液体が供給される前記記録素子基板の前記吐出口から吐出される前記記録液の吐出量が相対的に多く、前記記録液としてカラー系の液体が供給される前記記録素子基板の前記吐出口から吐出される前記記録液の吐出量が相対的に少ない、請求項2に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項4】
前記記録液としてカラー系の液体が供給される前記記録素子基板における前記記録素子の配列密度は、前記記録液として黒系の液体が供給される前記記録素子基板における前記記録素子の配列密度の約2倍であることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項5】
前記複数の記録素子基板が同一の基材に実装されている、請求項4に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項6】
前記支持基板の熱膨張率および熱伝導率が、前記第1の基板と第2の基板の熱膨張率および熱伝導率にほぼ等しい請求項5に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項7】
前記記録液として黒系の液体が供給される前記記録素子基板の前記記録素子による液体吐出方式が、前記記録素子の作動により前記記録液に発泡をもたらすとともに、該発泡により形成された気泡が消泡して消滅する吐出方式であり、前記記録液としてカラー系の液体が供給される前記記録素子基板の前記前記記録素子による液体吐出方式が、前記記録素子の作動により前記記録液に発泡がもたらされる際に該発泡により形成された気泡が前記吐出口から外部の大気と連通する吐出方式である、請求項2に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項8】
前記複数の記録素子基板が、同一平面上に配置された実質的に同じ厚さの基板と、該基板上に積層されている吐出口形成部材とを有し、少なくとも1つの前記記録素子基板は、前記吐出口形成部材の高さが他の前記記録素子基板と異なっていることにより、前記記録素子と前記吐出口との間の距離が異なっている、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項9】
前記複数の記録素子基板のそれぞれが前記複数の記録素子を配した基板と該基板に積層されている吐出口形成部材とを有し、前記記録液を吐出する複数の吐出口が前記吐出口形成部材の光パターニングによって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項10】
前記記録液として黒系の液体が供給される前記記録素子基板における前記記録素子と前記吐出口との間の距離が100μm以下である、請求項9に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項11】
前記記録液として黒系の液体が供給される前記記録素子基板の前記吐出口から吐出される前記記録液の吐出速度をVBk、吐出量をVdBkとし、前記記録液としてカラー系の液体が供給される前記記録素子基板の前記吐出口から吐出される前記記録液の吐出速度をVCl、吐出量をVdClとしたとき、
Cl>VBk≧8m/sec
かつ
VdBk>VdCl
である、請求項3に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項12】
前記記録液として黒系の液体が供給される前記記録素子基板の前記記録素子と前記吐出口との間の距離をOHBk、前記記録素子と前記吐出口形成部材との間の距離をhBkとし、前記記録液としてカラー系の液体が供給される前記記録素子基板の前記記録素子と前記吐出口との間の距離をOHCl、前記記録素子と前記吐出口形成部材との間の距離をhClとしたとき、
Bk>hCl
かつ
OHBk>hBk×2
である、請求項2に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドと、前記複数の記録素子基板にそれぞれ前記記録液を供給する複数のインクタンクと、を有する記録装置。
【請求項14】
前記複数の記録素子基板の前記複数の記録素子に供給される電気的エネルギーが同一の電源から供給される、請求項13の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−69890(P2010−69890A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107(P2010−107)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【分割の表示】特願2001−209398(P2001−209398)の分割
【原出願日】平成13年7月10日(2001.7.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】