説明

インクジェット記録媒体の製造方法

【課題】キャスト処理により製造される、給紙の際の曲げ割れを抑制したインクジェット記録媒体の製造方法を提供することである。
【解決手段】透気性の支持体上に少なくとも1層のインク受理層を設け、最上層のインク受理層にポリビニルアルコールを含有するインクジェット記録媒体の製造方法において、最上層のインク受理層をポリビニルアルコールに有効な水溶性可塑剤を含有する再湿潤液を用いてキャスト処理して成ることを特徴とするインクジェット記録媒体の製造方法により解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透気性の支持体を用いてキャスト処理して成るインクジェット記録媒体の製造方法に関し、特に給紙の際の曲げ割れの発生を抑制したインクジェット記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンターやプロッターの目覚ましい進歩により、フルカラーでしかも高精細な画像が容易に得られるようになってきた。
【0003】
インクジェット記録方式は、種々の動作原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙等の記録媒体に付着させ、画像・文字等の記録を行うものである。インクジェットプリンターやプロッターはコンピューターにより作成した文字や各種図形等の画像情報のハードコピー作成装置として、種々の用途において近年急速に普及している。特に多色インクジェット記録方式により形成されるカラー画像は製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画と比較しても遜色のない記録を得ることが可能であり、さらに作成部数が少ない用途においては、印刷技術や写真技術よりも安価で済むことから広く応用されている。特に近年の急速な画像データのデジタル化やデジタルカメラの普及に伴い、インクジェット記録方式は、記録したデジタルデータの出力用途すなわち銀塩写真方式の代替として使用されるようになってきている。
【0004】
近年、インクジェットプリンターの一般家庭への普及に伴い、プリンターの設置面積の省スペース化が求められている。省スペース化型の一つとして、インクジェット記録媒体をプリンター前面下部の給紙トレイに印刷面を下にセットし、ピックアップ後、プリンター内部で反転、印刷面を上にしてから印刷する前面給排紙方式が採用されている(例えば、引用文献1および2参照)。
【0005】
この前面給排紙方式では、インクジェット記録媒体がプリンター内部の搬送経路で3cm程度のロールに沿って反転するため、外側の印刷面に応力がかかる。銀塩写真方式の代替として提供されるインクジェット記録媒体の印刷面は無機顔料と親水性バインダーとから成るインク受理層を一般的に有している。このインク受理層に前記のような応力がかかると割れ(以降、「曲げ割れ」と記載する。)が発生する。曲げ割れは、印刷画像の品質を損なうことがあり好ましいものではない。
【0006】
インクジェット記録シートの折り割れを改善する方法として、気相法シリカおよびポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールに有効な水溶性可塑剤を含有するインク受理層がある(例えば、特許文献3参照)。また、インクジェット記録シートの折り割れを改善する方法として気相法シリカおよび親水性バインダー、架橋剤として有機ホウ素ポリマーを含有するインク受理層がある(例えば、特許文献4参照)。特許文献3が如き方法では、記録媒体が部分的に折り曲げられたときの耐性であって、記録媒体の搬送経路で記録用紙全体にかかる応力に関する耐性と異なる。特許文献4が如き方法では、架橋剤を用いた受理層の強度アップを図るため、強度アップを求めるとインク受理層の塗工液の安定性が低下し、強度アップをある程度犠牲にすると搬送速度や応力のかかる程度によっては曲げ割れを防ぐことが不十分となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−262356号公報
【特許文献2】特開2001−146340号公報
【特許文献3】特開2001−10211号公報
【特許文献4】特開2010−17888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、搬送経路にて反転されても曲げ割れの発生が抑制できる、銀塩写真方式の代替えとなり得る、再湿潤液を用いてキャスト処理して成るインクジェット記録媒体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題の解決は、透気性の支持体上に少なくとも1層のインク受理層を設け、最上層のインク受理層にポリビニルアルコールを含有するインクジェット記録媒体の製造方法において、最上層のインク受理層をポリビニルアルコールに有効な水溶性可塑剤を含有する再湿潤液を用いてキャスト処理して成ることを特徴とするインクジェット記録媒体の製造方法によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法により、キャスト処理の操業性に優れ、且つ得られたインクジェット記録媒体は、給紙の際の搬送経路にて反転されても曲げ割れの発生が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のインクジェット記録媒体の製造方法を詳細に説明する。
【0012】
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、透気性の支持体上に少なくとも1層のインク受理層を設け、最上層のインク受理層の塗工組成物を塗工し、一旦乾燥または半ば乾燥した状態にした後、得られたインク受理層へ再湿潤液を供給することにより再び可塑性を有する状態に最上層のインク受理層を戻した後、湿潤状態となった最上層のインク受理層を加熱したキャストドラムに圧着し、最上層のインク受理層表面にキャストドラムの鏡面を写し取るいわゆるリウェット法のキャスト処理して成る方法である。且つポリビニルアルコールに有効な水溶性可塑剤を含有する再湿潤液を用いて、ポリビニルアルコールを含有する最上層のインク受理層を湿潤状態とする製造方法である。
【0013】
リウェット法は、塗工組成物を塗工後そのままキャスト処理する所謂直接法に比べてキャストドラム鏡面の写し取られた面質や製造安定性に優れる。しかしながら、一旦乾燥または半ば乾燥した状態のインク受理層を再び可塑性を有した状態にさせることが重要であり、最上層のインク受理層の塗工組成物において、バインダーとしてポリビニルアルコールとポリビニルアルコールに有効な水溶性可塑剤を含有する場合は可塑性を有する状態に戻すことを制御することが難しく、鏡面から写し取られた面に亀裂が発生する場合やキャストドラムに焦げ付く場合があり、面質ばかりか操業性に劣る。
【0014】
ポリビニルアルコールに有効な水溶性可塑剤を含有する再湿潤液を用いて、ポリビニルアルコールを含有する最上層のインク受理層を可塑性を有する状態に戻す製造方法によって、優れた操業性が得られる。さらに、曲げ割れ発生を抑制したインクジェット記録媒体を得ることができる。
【0015】
本発明に用いられるポリビニルアルコールに有効な水溶性可塑剤としては、ポリビニルアルコールに有効な水溶性可塑剤として公知の物質であれば特に制限はなく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ブタンジオール、ブタントリオール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、尿素等を挙げることができる。好ましくは、キャスト処理の操業性および曲げ割れ発生の抑制の点からポリエチレングリコールが好ましい。
【0016】
ポリビニルアルコールに有効な水溶性可塑剤の再湿潤液への含有量は特に制限はないが、曲げ割れ発生の抑制および操業性の点で、インクジェット記録媒体として、最上層のインク受理層のポリビニルアルコールの含有量(g/m)に対する、再湿潤液として供給された水溶性可塑剤の最上層のインク受理層への付与量(g/m)は50質量%以上300質量%以下の範囲が好ましい。さらに好ましくは、100質量%以上200質量%以下である。また水溶性可塑剤の種類に依存するが、300質量%を超えると得られたインクジェット記録媒体のインク吸収性が低下する場合がある。
【0017】
本発明において、再湿潤液は、コロイダルシリカを含有することが好ましい。再湿潤液がコロイダルシリカを含有することにより、最上層のインク受理層の表面近傍に集中してコロイダルシリカが分布することとなり、より高い光沢感と優れた面質を得ることができる。
【0018】
本発明において、再湿潤液に用いられるコロイダルシリカは、湿式法で合成された平均一次粒子径が5nm以上40nm以下の合成シリカが好ましい。その形状は、一般的に球状または球状に近い形状をしているものが好ましい。なお、コロイダルシリカの平均一次粒子径は、動的散乱法を用いて測定された値である。
【0019】
インクジェット記録媒体がより高い光沢感と優れた面質を得るために、再湿潤液に用いられるコロイダルシリカの含有量は、再湿潤液中の総固形分に対して0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上5質量%以下の範囲がさらに好ましい。
【0020】
本発明において、再湿潤液を最上層のインク受理層へ供給する方法に公知の塗工方法を用いることができる。例えば、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテンコーター、ショートドウェルコーター、サイズプレス、スプレーなどの各種装置である。
【0021】
本発明において、再湿潤液は、界面活性剤を含有することが好ましい。再湿潤液に界面活性剤を添加することで、再湿潤液が最上層のインク受理層表面へ均一に供給でき、光沢感の均一性が格段に向上する。かかる界面活性剤は、コロイダルシリカと水溶性可塑剤との混和性に問題がなければ特に制限はなく、公知の界面活性剤であって、例えば、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩、ドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤、脂肪酸アミン塩、第四級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などの陽イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アセチレングリコールなどの非イオン性界面活性剤がある。特にアセチレングリコールは、再湿潤液が起泡することなく、インク受理層表面に均一に供給することが可能であり好ましい。
【0022】
本発明において、キャストドラムからの剥離性を向上させ操業安定性を高める目的として油性物質または油性物質の水性分散物等の離型剤を再湿潤液に添加、あるいは再湿潤液とは別の液でキャスト処理に先立って最上層のインク受理層に供給することが好ましい。また、離型剤はインク受理層に含有させることもできる。離型剤としては、例えば、ジメチルオクチルアミン、ジメチルオクタデシルアミン等の高級アルキルアミンまたはこれらの塩、トリメチルオクチルアンモニウムクロリド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロリドなどの高級アルキル四級アンモニウム塩、オレイン酸、ステアリン酸、カプリル酸などの高級カルボン酸またはこれらの塩、オクチルアルコール、オクタデシルアルコールなどの高級アルコール、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、シリコーン油などが挙げられる。
【0023】
本発明において、透気性の支持体としては透気性を有するものであれば特に限定されない。好ましくは、木材パルプおよび填料を主体として含有さらに必要に応じて各種添加剤を含有する紙料から抄造して得られる原紙、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、箔紙、クラフト紙、バライタ紙、含浸紙、蒸着紙、水溶性紙等の紙基材である。また、透気性を有する不織布や樹脂シート類も用いることができる。
【0024】
前記の木材パルプとしては、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等である。これらのパルプは、叩解機で叩解度(フリーネス)を調整することにより、紙力、抄紙適性等を制御することができる。パルプの叩解度は、特に限定しないが、平滑性を高めるためには叩解度を進める方が好ましい。また、ECF、TCFパルプ等の塩素フリーパルプを好ましく使用できる。
【0025】
前記の填料としては、シリカ、焼成カオリン、ゼオライトなどの多孔質顔料や、炭酸カルシウム、クレー、タルク、カオリン、二酸化チタン等である。中でも、特に炭酸カルシウムは白色度が高い原紙となり好ましい。
【0026】
原紙が含有する各種添加剤としては、サイズ剤、定着剤、紙力増強剤、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤等である。さらに抄紙機のサイズプレス工程において、顔料またはデンプン、ポリビニルアルコール類、カチオン樹脂、アニオン樹脂等を塗工・含浸させて表面強度やサイズ度等を調整できる。原紙の坪量は特に限定しないが、60g/m以上230g/m以下が好ましい。
【0027】
本発明において、原紙や紙基材は、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置を使用してカレンダー処理を行ってもよい。
【0028】
本発明において、インクジェット記録媒体は、透気性の支持体上にインク受理層の塗工組成物を塗工することによって、少なくとも1層のインク受理層を設ける。本発明において、最上層のインク受理層とは、支持体からみて最も外側に位置するインク受理層である。
【0029】
本発明において、最上層のインク受理層はポリビニルアルコールを含有する。ポリビニルアルコールとしては、各鹸化度のポリビニルアルコールまたはそのシラノール変性体、カルボキシル変性体、カチオン変性体等の各種誘導体を用いることができる。最上層のインク受理層の塗工組成物がポリビニルアルコールを含有することにより、最上層のインク受理層はポリビニルアルコールを含有することができる。
【0030】
本発明において、最上層のインク受理層は公知のバインダーを含有することができる。バインダーとしては例えば、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体の天然化合物またはその誘導体、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、水溶性メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリ尿素ポリアミド樹脂等の水溶性樹脂化合物またはそのカルボキシル変性体、アミド変性体、カチオン変性体等の誘導体、並びにスチレン−ブタジエン系、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル系、エチレン−酢酸ビニル系、ポリウレタン系等の水分散性樹脂化合物またはそのカルボキシル、アミド、各種アミン基による変性体等の変性誘導体を含有することができる。
【0031】
本発明において、最上層のインク受理層は公知の顔料を含有することができる。顔料としては例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、コロイダルアルミナ、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、水酸化マグネシウム等の無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、メラミン樹脂等の有機顔料が挙げられる。顔料は、特に高い光沢感を得られることから合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、コロイダルアルミナが好ましい。最上層のインク受理層の塗工組成物が顔料を含有することにより、最上層のインク受理層は顔料を含有することができる。
【0032】
本発明において、インク受理層の層数は必要に応じて適宜に決定することができる。なお、単層の場合は該層が最上層のインク受理層となる。最上層のインク受理層以外のインク受理層は、最上層のインク受理層と同様に公知の顔料または公知のバインダー、ポリビニルアルコールを含有することができる。最上層のインク受理層の塗工組成物と最上層のインク受理層以外の塗工組成物との配合は同一でも異なっていても構わない。
【0033】
最上層を含む各インク受理層の塗工組成物には、例えば、染料定着剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤などの各種添加剤を適宜配合することができる。
【0034】
最上層を含む各インク受理層の塗工組成物の塗工には、例えば、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテンコーター、ショートドウェルコーター、サイズプレス、スプレーなどの各種装置をオンマシンあるいはオフマシンで用いることができる。
【0035】
最上層を含む各インク受理層の塗工組成物の塗工量は、要求される光沢感や支持体の種類等により異なるので一概には言えないが、通常は各層がそれぞれ固形分で5g/m以上30g/m以下、合計では5g/m以上40g/m以下が好ましい。また各インク受理層の塗工後にマシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置を使用して平坦化仕上げを行ってもよい。
【0036】
本発明において、最上層を含む各インク受理層の塗工組成物を塗工し乾燥を行う場合には、例えば、熱風ドライヤー、エアーホイルドライヤー、エアーキャップドライヤー、シリンダードライヤー、赤外線ドライヤー等の各種乾燥装置を使用して常法に従って実施することができる。
【実施例】
【0037】
以下に本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。実施例において示す「部」および「%」は特に明示しない限り質量部および質量%を示す。
【0038】
(実施例1)
[インク受理層の塗工組成物1の調製]
水350部に四ホウ酸ナトリウム十水和物6部(HBO換算で0.97部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(トクヤマ社製ファインシールX−37B)100部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分48%のスチレン−ブタジエン(SBR)ラテックス(JSR社製0623N)83.3部(固形分40部)を添加・混合してインク受理層塗工組成物1を得た。
【0039】
[インク受理層の塗工組成物2の調製]
[アルミナ水和物ゾルの調製]
水299部に酢酸1部を混合し、擬ベーマイト構造を有するアルミナ水和物(サソール社製Disperal HP14;平均1次粒子径14nm)100部を添加し、そのまま2時間攪拌して解膠し、固形分濃度25%のアルミナ水和物ゾルを得た。
【0040】
得られたアルミナ水和物ゾルの100部(固形分25部)に、ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235)の10%水溶液62.5部(固形分6.25部)を添加し、インク受理層塗工組成物2を調製した。
【0041】
[再湿潤液1の調製]
水に有効成分100%のポリエチレングリコール(純正化学株式会社製)を3.0%、有効成分100%の界面活性剤(日信化学工業社製オルフィンE1010)を0.05%に再湿潤液中の各々の有効成分濃度がなるように添加、混合して有効成分3.05%の再湿潤液1を得た。
【0042】
[インクジェット記録媒体の作製]
坪量157g/mの原紙(三菱製紙社製ダイヤフォーム)上に、インク受理層塗工組成物1を、乾燥後の塗工量が15g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風ドライヤーを用いて乾燥させ塗工紙を得た。次いで得られた塗工紙を、ソフトカレンダーを用いて処理した後、最上層のインク受理層としてインク受理層塗工組成物2を乾燥後の塗工量が15g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風ドライヤーを用いて乾燥させ最上層のインク受理層を有する塗工紙を得た。次いで得られた最上層のインク受理層を有する塗工紙を、ソフトカレンダーを用いて処理した後、最上層のインク受理層に対する再湿潤液1の付与量が30g/mとなるようエアーナイフコーターを用いてこの塗工紙に再湿潤液1を供給し湿潤させた後、温度95℃に加熱したキャスト装置のキャストドラムに、線圧20kN/m、速度25m/minで圧着し、乾燥後にキャストドラムより剥離することで実施例1のインクジェット記録媒体を作製した。
【0043】
(実施例2)
実施例1の再湿潤液1を下記再湿潤液2に変更した以外は実施例1と同様にして実施例2のインクジェット記録媒体を得た。
【0044】
[再湿潤液2の調製]
水に有効成分100%のポリエチレングリコール(純正化学株式会社製)を15.0%、有効成分100%の界面活性剤(日信化学工業社製オルフィンE1010)を0.05%に再湿潤液中の各々の有効成分濃度がなるように添加、混合して有効成分15.05%の再湿潤液2を得た。
【0045】
(実施例3)
実施例1の再湿潤液1を下記再湿潤液3に変更した以外は実施例1と同様にして実施例3のインクジェット記録媒体を得た。
【0046】
[再湿潤液3の調製]
水に有効成分100%のポリエチレングリコール(純正化学株式会社製)を15.0%、固形分50%で平均一次粒子径30nmのコロイダルシリカ分散液(グレース社製LUDOX TM−50)を7%(固形分3.5%)、有効成分100%の界面活性剤(日信化学工業社製オルフィンE1010)を0.05%に再湿潤液中の各々の有効成分濃度および固形分濃度がなるように添加、混合して有効成分および固形分を合わせて18.55%の再湿潤液3を得た。
【0047】
(実施例4)
実施例1の再湿潤液1を下記再湿潤液4に変更した以外は実施例1と同様にして実施例4のインクジェット記録媒体を得た。
【0048】
[再湿潤液4の調製]
水に有効成分100%のグリセリン(純正化学株式会社製)を15.0%、有効成分100%の界面活性剤(日信化学工業社製オルフィンE1010)を0.05%に再湿潤液中の各々の有効成分濃度がなるように添加、混合して有効成分15.05%の再湿潤液4を得た。
【0049】
(実施例5)
実施例1の再湿潤液1を下記再湿潤液5に変更した以外は実施例1と同様にして実施例5のインクジェット記録媒体を得た。
【0050】
[再湿潤液5の調製]
水に有効成分100%のポリエチレングリコール(純正化学株式会社製)を40.0%、有効成分100%の界面活性剤(日信化学工業社製オルフィンE1010)を0.05%に再湿潤液中の各々の有効成分濃度がなるように添加、混合して有効成分40.05%の再湿潤液5を得た。
【0051】
(比較例1)
実施例1の再湿潤液1を下記再湿潤液6に変更した以外は実施例1と同様にして比較例1のインクジェット記録媒体を得た。
【0052】
[再湿潤液6の調製]
水に有効成分100%の界面活性剤(日信化学工業社製オルフィンE1010)を0.05%に再湿潤液中の有効成分濃度がなるように添加、混合して有効成分0.05%の再湿潤液6を得た。
【0053】
(比較例2)
実施例1の再湿潤液1を下記再湿潤液7に変更した以外は実施例1と同様にして比較例2のインクジェット記録媒体を得た。
【0054】
[再湿潤液7の調製]
水に固形分50%で粒径30nmのコロイダルシリカ分散液(グレース社製LUDOX TM−50)を3.5%、有効成分100%の界面活性剤(日信化学工業社製オルフィンE1010)を0.05%に再湿潤液中の各々の固形分濃度および有効成分濃度がなるように添加、混合して有効成分および固形分を合わせて3.55%の再湿潤液7を得た。
【0055】
(比較例3)
実施例1のインク受理層塗工組成物2を下記インク受理層塗工組成物3に、再湿潤液1を再湿潤液6に変更した以外は実施例1と同様にして比較例3のインクジェット記録媒体を得た。
【0056】
[インク受理層塗工組成物3の調製]
アルミナ水和物ゾルの100部(固形分25部)に、ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235)の10%水溶液62.5部(固形分6.25部)、有効成分100%のポリエチレングリコール(純正化学株式会社製)9.375部を添加し、インク受理層塗工組成物3を調製した。
【0057】
[曲げ割れの評価]
23℃50%RH環境下に得られたインクジェット記録媒体を8時間調湿し、前面給排紙インクジェットプリンター(ヒューレットパッカード社製フォトスマート8230)で黒ベタを印字し、搬送時に発生した曲げ割れを目視評価した。○および△の評価が実用上問題無いレベルである。
○:全く曲げ割れは見られず。
△:僅かに曲げ割れが見られるが、実用上問題の無いレベル。
×:著しく曲げ割れが認められる。
【0058】
[面質の評価]
得られたインクジェット記録媒体について、キャスト処理後の最上層のインク受理層の面質を目視判定した。○および△の評価が実用上問題無いレベルである。
○:良好。
△:実用上問題は無いが、均一性に欠ける。
×:目視で認識できる亀裂や塗工層の剥がれがあり、劣る。
【0059】
[キャスト処理の操業性の評価]
実施例および比較例の最上層のインク受理層を設けた各々の塗工紙50枚を各々の再湿潤液によりキャスト処理し、キャストドラムの汚れの度合いを目視で観察した。○の評価が実用上問題無いレベルである。
○:まったく汚れていない。
△:部分的に汚れが認められる。
【0060】
各実施例と各比較例で得られたインクジェット記録媒体の曲げ割れ、面質、キャスト処理の操業性の評価結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1から明らかなように、ポリビニルアルコールに有効な水溶性可塑剤を含有した再湿潤液を用いて、ポリビニルアルコールを含有する最上層のインク受理層をキャスト処理して成るインクジェット記録媒体の製造方法は操業性に優れ、得られたインクジェット記録媒体は曲げ割れの発生が抑制されることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透気性の支持体上に少なくとも1層のインク受理層を設け、最上層のインク受理層にポリビニルアルコールを含有するインクジェット記録媒体の製造方法において、最上層のインク受理層をポリビニルアルコールに有効な水溶性可塑剤を含有する再湿潤液を用いてキャスト処理して成ることを特徴とするインクジェット記録媒体の製造方法。

【公開番号】特開2012−196942(P2012−196942A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64090(P2011−64090)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】