説明

インクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法

【課題】非吸収性被記録媒体を用いた場合でもインク滲みが抑制され、被記録媒体間での画像均一性が高く、また打滴干渉に起因する線幅の不均一や色ムラ等の発生を抑制でき、かつ、画像の被記録媒体への定着性に優れ、更に、色再現性及び保存安定性に優れたインクジェット記録用インクセット及び記録方法を提供する。
【解決手段】ラジカル重合性化合物、光重合開始剤、及び、着色剤を含有する着色液と、ラジカル重合性化合物及び光重合開始剤を含有する下塗り液とを含むインクジェット記録用インクセットであって、該下塗り液が下記式(I)で表される増感剤を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法に関し、詳しくは、高速に、高画質な画像を形成するのに好適なインクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク吐出口からインクを液滴で吐出するインクジェット方式は、小型で安価であり、被記録媒体に非接触で画像形成が可能である等の理由から多くのプリンタに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、及び、熱エネルギーによるインクの沸騰現象を利用しインクを液滴吐出する熱インクジェット方式は、高解像度、高速印字性に優れるという特徴を有する。
現在、インクジェットプリンタにより、普通紙あるいは、プラスチックなど非吸水性の被記録媒体にインクを打滴して印字する際の高速化、高画質化及び被記録媒体への定着性が重要な課題となっている。
インクジェット記録方法は、インクの液滴を画像データに従って吐出し、被記録媒体上にこれら液滴にてラインを形成したり、画像を形成するものであるが、特に上記非吸収性の被記録媒体に記録を行う場合には、打滴後の液滴の乾燥や被記録媒体への浸透に時間が掛かると、画像に滲みが生じやすく、また、被記録媒体上で隣接するインク液滴間で混合が生じ、鮮鋭な画像形成の妨げとなるなど、実用上問題があった。液滴間での混合の際には、打滴された隣接の液滴が合一して液滴の移動が起こるために、着弾した位置からずれ、細線を描く場合には線幅の不均一が生じ、着色面を描く場合には色ムラ等が発生する(以下、打滴干渉と言う)。また、線幅の不均一と着色面の色ムラ発生の程度が被記録媒体表面のインク吸収性や濡れ性により異なるため、用いるインク及びその吐出条件を一定にしたとしても、種々の被記録媒体間で画像が異なってしまうという問題もあった。
また、上記問題に加えて、非吸収性の被記録媒体に記録した画像は、剥がれやく、擦過性に劣るなど、画像の定着性の点でも問題になっている。
【0003】
上記課題を解決する方法として、これまでに様々な技術が提案されている。
その例として、高精細な描画性を付与するために、反応性を有する2液式のインクを用い、被記録媒体上において両者を反応させるものがあり、例えば、塩基性ポリマーを有する液体を付着させた後、アニオン染料を含有するインクを記録する方法(例えば、特許文献1参照)や、カチオン性物質を含む液体組成物を適用した後、アニオン性化合物と色材を含有するインクを適用する方法(例えば、特許文献2参照)、等が開示されている。
また、インクとして紫外線硬化型インクを適用し、被記録媒体上に吐出した紫外線硬化型色インクのドットにそれぞれの吐出タイミングに合わせて紫外線を照射し、増粘させて隣接するドットが互いに混合しない程度にプレ硬化させ、その後更に紫外線を照射して本硬化させるインクジェット記録方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
更に、透明又は半透明な非吸収性被記録媒体上に、放射線硬化型白色インクを下塗り層として均一に塗設し、放射線照射により固化あるいは増粘させた後に、放射線硬化型色インクセットを用いたインクジェット記録を行うことにより色インクの視認性、滲み、種々の被記録媒体間での画像が異なってしまう問題を改良する技術(例えば、特許文献4及び5参照)が提案されている。また、上記放射線硬化型白色インクに変えて、実質上、透明な活性光線硬化型インクをインクジェットヘッドにより塗設する技術(例えば、特許文献6、7及び8参照)も提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−60783号公報
【特許文献2】特開平8−174997号公報
【特許文献3】特開2004−42548号公報
【特許文献4】特開2003−145745号公報
【特許文献5】特開2004−42525号公報
【特許文献6】特開2005−96254号公報
【特許文献7】特開2006−137185号公報
【特許文献8】特開2006−137183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、特定の基材に対しては打滴干渉や滲みの問題は回避できるが、画像の定着性の観点では不十分である。一方、特許文献3に記載の方法では、滲みは抑制され、画像の定着性は改善されているが、種々の被記録媒体間での画像が異なってしまう問題は残っており、液滴間の混合に起因する線幅の不均一や色ムラ等の解消には不十分である。また、特許文献4及び5に記載の方法では液滴間の混合に起因する線幅の不均一や色ムラ等の解消には不十分である。
更に、特許文献6、7、及び8に記載の方法によっても、液滴間の混合に起因する線幅の不均一や色ムラ等の問題が残る。また、特許文献6に記載のラジカル重合系のインクセットを用いた場合、インクの硬化性が不十分であり、硬化膜ベトツキや膜剥がれが問題となる。特許文献7に記載の方法では、インクドット同士がつながりにくく、インク付与量が少ないと色濃度低下が起きる場合があり、また、インク付与量を増やすとリレーフ感が問題になる。更に、特許文献7及び8に記載の放射線硬化可能な液層やインクセットを用いて場合、高濃度な画像や彩度高い画像を印字しようと単位画素当たりに付与するインク液量を上げたり、インクに含まれる着色剤濃度を上げたりすると、膜内部の硬化が不十分となることがある。膜内部の硬化性を上げるために特許文献7及び8に記載の増感剤、例えばチオキサントン化合物の含有濃度を上げると(例えば、4重量%以上)、放射線硬化可能な液層や透明インクが黄着色し色再現が悪くなり画像設計上好ましくないことが分かった。更にこの場合、寒冷地(−15℃以下)での保存安定性に問題があり、チオキサントン化合物の析出が発生することがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、いずれの非吸収性被記録媒体を用いた場合でもインク滲みが効果的に抑制され、種々の被記録媒体間での画像均一性が高く、また打滴干渉に起因する線幅の不均一や色ムラ等の発生を抑制でき、かつ、画像の被記録媒体への定着性に優れ、更に、色再現性及び保存安定性に優れたインクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は下記の<1>、<7>及び<8>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>から<6>、<9>、<10>と共に以下に記載する。
<1> 少なくともラジカル重合性化合物、光重合開始剤、及び、着色剤を含有する着色液と、少なくともラジカル重合性化合物及び光重合開始剤を含有する下塗り液とを少なくとも含み、該下塗り液が下記式(I)で表される増感剤を含むことを特徴とするインクジェット記録用インクセット、
【0008】
【化1】

【0009】
前記式(I)において、XはO、S、又は、NRを表す。nは0又は1を表す。Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立に水素原子、又は一価の置換基を表す。
【0010】
<2> 前記下塗り液が光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する<1>に記載のインクジェット記録用インクセット、
<3> 前記着色液が前記式(I)で示される増感剤を含有する<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用インクセット、
<4> 前記着色液が光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する<1>乃至<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセット、
<5> 前記下塗り液が界面活性剤を含有する<1>乃至<4>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセット、
<6> 着色液の表面張力をγAとし、下塗り液の表面張力をγBとしたとき、γA>γBを満たす<1>乃至<5>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセット、
<7> 被記録媒体上に下塗り液を付与する工程と、前記下塗り液を半硬化させる工程と、半硬化された前記下塗り液上に着色液を吐出して画像形成を行う工程と、を含むことを特徴とする<1>乃至<6>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセットを用いるインクジェット記録方法、
<8> 異なる色相を有する着色液Aと着色液Bを用いて2次色を形成する場合に、着色液Aを半硬化させる工程と、半硬化された前記着色液A上に着色液Bを吐出する工程と、を含むことを特徴とする<1>乃至<6>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセットを用いたインクジェット記録方法、
<9> 前記下塗り液を半硬化させる工程及び/又は着色液Aを半硬化させる工程が、紫外光照射工程である<7>又は<8>に記載のインクジェット記録方法、
<10> 前記下塗り液を半硬化させる紫外光及び/又は着色液Aを半硬化させる紫外光が、少なくとも波長が340nm以上400nm以下の紫外光を含む<9>に記載のインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、いずれの非吸収性被記録媒体を用いた場合でもインク滲みが効果的に抑制され、種々の被記録媒体間での画像均一性が高く、また打滴干渉に起因する線幅の不均一や色ムラ等の発生を抑制でき、かつ、画像の被記録媒体への定着性に優れ、更に、色再現性及び保存安定性に優れたインクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。
(1)インクジェット記録用インクセット
本発明のインクジェット記録用インクセットは、少なくともラジカル重合性化合物、光重合開始剤、及び、着色剤を含有する着色液と、少なくともラジカル重合性化合物及び光重合開始剤を含有する下塗り液とを少なくとも含み、該下塗り液が下記式(I)で表される増感剤を含むことを特徴とする。
【0013】
【化2】

【0014】
前記式(I)において、XはO、S、又は、NRを表す。nは0又は1を表す。Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立に水素原子、又は一価の置換基を表す。
【0015】
このインクジェット記録用インクセットを用いることによって、いずれの非吸収性被記録媒体を用いた場合でもインク滲みが効果的に抑制され、種々の被記録媒体間での画像均一性が高く、また打滴干渉(液滴間の混合)に起因する線幅の不均一や色ムラ等の発生を抑制できる。
本発明のインクジェット記録用インクセットを構成する主要な要件について、以下に詳細に説明する。
【0016】
(着色液)
本発明のインクジェット記録用インクセットを構成する液体組成物(本発明において、液体組成物とは、着色液及び下塗り液の総称である。)のうち、着色液は、少なくともラジカル重合性化合物、光重合開始剤、及び、着色剤を含有する。
ラジカル重合性化合物は画像定着性の観点から、該着色液への添加濃度として、着色液の総重量に対して、40重量%以上98重量%以下(尚、本発明において、「40重量%以上95重量%以下」を「40〜95重量%」又は「40重量%〜95重量%」とも表記することとする。以下、同様。)であることが好ましく、50〜95重量%であることがより好ましく、60〜90重量%であることが更に好ましい。ラジカル重合性化合物の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、粘度が適切であるので好ましい。
光重合開始剤の添加濃度としては、着色液の総重量に対して、0.1〜20.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜18.0重量%、更に好ましくは1.0〜15.0重量%である。光重合開始剤の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、表面ベトツキ低減の観点から適切であるので好ましい。
着色剤は、該着色液の添加濃度として、着色液の総重量に対して50重量%以下であることが好ましく、1〜30重量%であることがより好ましく、2〜20重量%であることが更に好ましい。着色剤の添加量が上記範囲内であると良好な画像濃度及び保存安定性が得られるので好ましい。
【0017】
膜(吐出された液滴)内部の硬化性を高める観点から、該着色液は、増感剤として前記式(I)で示される増感剤を含有することが好ましい。該増感剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
該着色液に含有する該増感剤の添加濃度としては、着色液の総重量に対して、0.1〜15.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10.0重量%、更に好ましくは1.0〜8.0重量%である。添加量が上記範囲内であると、良好な膜(吐出された液滴)内部の硬化性を得ることができるので好ましい。尚、2種以上の該増感剤を使用する場合には総量として上記範囲内とすることが好ましい。
【0018】
また、膜(吐出された液滴)内部の硬化性を更に高める観点から、該着色液は、光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。該着色液には、アシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物のうち、どちらか一方を含んでいてもよいし、両方を併用してもよい。
該着色液に含有するアシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物の添加濃度としては、着色液の総重量に対して、0.1〜20.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜18.0重量%であり、更に好ましくは1.0〜15.0重量%である。添加量が上記範囲内であると、良好な膜(吐出された液滴)内部の硬化性を得ることができるので好ましい。尚、アシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される2種以上の化合物を使用する場合には、総量として上記範囲内とすることが好ましい。
【0019】
該着色液は、室温で液体であればよいが、インクジェットによる打滴適正の観点から、25℃における粘度は100mPa・s以下又は60℃における粘度が30mPa・s以下であることが好ましく、25℃における粘度は60mPa・s以下又は60℃における粘度が20mPa・s以下であることがより好ましく、25℃における粘度は40mPa・s以下又は60℃における粘度が15mPa・s以下であることが更に好ましい。
同じく、インクジェットによる打滴適正の観点から、該着色液の25℃における表面張力は18〜40mN/mが好ましく、20〜35mN/mがより好ましく、22〜32mN/mが更に好ましい。
ここでの「粘度」は、東機産業(株)製のRE80型粘度計を用いて求めた粘度である。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い、10rpmの回転数にて測定を行なった。但し、60mPa・sより高粘度なものについては、必要により回転数を5rpm、2.5rpm、1rpm、0.5rpm等に変化させて測定を行なった。
また、ここで、前記表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定した値である。
【0020】
(下塗り液)
本発明のインクジェット記録用インクセットを構成する液体組成物のうち、下塗り液は、少なくともラジカル重合性化合物、光重合開始剤、及び、前記式(I)で示される増感剤を含むことを特徴とする。
ラジカル重合性化合物は画像定着性の観点から、該下塗り液への添加濃度として、下塗り液の総重量に対して、40〜98重量%であることが好ましく、50〜95重量%であることがより好ましく、60〜90重量%であることが更に好ましい。ラジカル重合性化合物の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、粘度が適切であるので好ましい。
光重合開始剤の添加濃度としては、下塗り液の総重量に対して、0.1〜20.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜18.0重量%、更に好ましくは1.0〜15.0重量%である。光重合開始剤の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、表面ベトツキ低減の観点から適切であるので好ましい。
該下塗り液に含有する前記式(I)で表される増感剤の添加濃度としては、下塗り液の総重量に対して、0.1〜15.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10.0重量%、更に好ましくは1.0〜8.0重量%である。添加量が上記範囲内であると、良好な膜内部の硬化性を得ることができるので好ましい。増感剤は1種を単独で使用してもよく、また、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合には、総量として添加濃度が前記範囲内であることが好ましい。
【0021】
また、膜内部の硬化性を更に高める観点から、該下塗り液は、光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。該下塗り液には、アシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物のうち、どちらか一方を含んでいてもよいし、両方を併用してもよい。
該下塗り液に含有するアシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物の添加濃度としては、下塗りの総重量に対して、0.1〜20.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜18.0重量%、更に好ましくは1.0〜15.0重量%である。添加量が上記範囲内であると、良好な膜内部の硬化性を得ることができるので好ましい。尚、アシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される2種以上の化合物を使用する場合には、総量として上記範囲内とすることが好ましい。
【0022】
被記録媒体上に均一に塗設する観点から、下塗り液の25℃における粘度は1,000mPa・s以下又は60℃における粘度が300mPa・s以下であることが好ましく、25℃における粘度は600mPa・s以下又は60℃における粘度が200mPa・s以下であることがより好ましく、25℃における粘度は400mPa・s以下又は60℃における粘度が150mPa・s以下であることが特に好ましい。
同じく、被記録媒体上に均一に塗設する観点から、下塗り液の25℃における表面張力は16mN/m以上38mN/m以下が好ましく、18mN/m以上33mN/m以下がより好ましく、20mN/m以上30mN/m以下が更に好ましい。
【0023】
また、画像の色再現性を高める観点から、該下塗り液は実質的に着色剤は含有しないか、もしくは、白色顔料を含有することが好ましい。尚、前記「着色剤を実質的に含有しない」とは、これは被記録媒体の黄ばみを修正するための微量の青色顔料の使用や、視認できない程度のごく微量の含有をも除外するものではない。その許容量としては、下塗り液全重量に対して1重量%以下であることが好ましく、含有しないことが特に好ましい。
また、好ましく用いることができる白色顔料は、(着色剤)の項目に記載する。
【0024】
以下、着色液及び下塗り液に使用される各種成分について説明する。
(式(I)で表される増感剤)
本発明において、下塗り液は、式(I)で表される増感剤を含有する。また、着色液も式(I)で表される増感剤を含有することが好ましい。
【0025】
【化3】

【0026】
前記式(I)において、XはO、S、又は、NRを表す。nは0又は1を表す。Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立に水素原子、又は一価の置換基を表す。
【0027】
前記式(I)において、XはO、S、又は、NRを表し、ここでRは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。nは0又は1を表す。
Xとしては、O又はSであることが好ましく、Sであることがより好ましい。
【0028】
nは0又は1を表す。ここで、nが0の場合、R7及びR8と結合した炭素原子は存在せず、ヘテロ原子を含むXと、R5及びR6と結合した炭素原子と、が直接結合して、Xを含む5員のヘテロ環を構成することになる。
【0029】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立に水素原子、又は一価の置換基を表す。
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が1価の置換基を表す場合の、1価の置換基としては、ハロゲン原子、脂肪族基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の非環状又は環状の炭化水素基)芳香族基、複素環基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホニル基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基などが挙げられ、なかでも、好ましくは、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子であり、更に好ましくはアルキル基及びハロゲン原子である。
これらの1価の置換基は、更に上記の置換基で置換されていてもよい。例えば、アルキル基は、ハロゲン原子によって置換されたハロアルキル基であってもよく、カルボキシ基で置換されたカルボキシアルキル基等であってもよい。
【0030】
尚、式(I)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が1価の置換基を表す場合のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基のような炭素数1〜4個のものが好ましく挙げられる。
同様に、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基のような炭素数1〜4個のものが好ましく挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0031】
より好適に用いることのできる増感剤としては、下記式(I−A)で示される増感剤が挙げられる。
【0032】
【化4】

【0033】
前記式(I−A)において、XはO又はSを表す。nは0又は1を表す。R1A、R2A、R3A、R4A、R5A、R6A、R7A及びR8Aはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。
これらの1価の置換基は、更に上記の置換基で置換されていてもよい。例えば、アルキル基は、ハロゲン原子によって置換されたハロアルキル基であってもよく、カルボキシ基で置換されたカルボキシアルキル基等であってもよい。
【0034】
更に好適に用いることのできる増感剤としては、下記式(I−B)で示される増感剤が挙げられる。
【0035】
【化5】

【0036】
前記式(I−B)において、XはO又はSを表す。R1B、R2B、R3B、R4B、R5B、R6B、R7B及びR8Bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。
これらの1価の置換基は、更に上記の置換基で置換されていてもよい。例えば、アルキル基は、ハロゲン原子によって置換されたハロアルキル基であってもよく、カルボキシ基で置換されたカルボキシアルキル基等であってもよい。
【0037】
更に好適に用いることのできる増感剤としては、下記式(I−C)で示される増感剤が挙げられる。
【0038】
【化6】

【0039】
前記式(I−C)において、R1C、R2C、R3C、R4C、R5C、R6C、R7C及びR8Cはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。
これらの1価の置換基は、更に上記の置換基で置換されていてもよい。例えば、アルキル基は、ハロゲン原子によって置換されたハロアルキル基であってもよく、カルボキシ基で置換されたカルボキシアルキル基等であってもよい。
【0040】
本発明に好適に用いることのできる、式(I)で表される増感剤の具体例〔例示化合物(I−1)〜(I−96)〕を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、本発明において、構造式の一部は、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する。また、Meはメチル基、Butはtert−ブチル基、Priはイソプロピル基を意味する。
【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

【0050】
尚、上記式(I)で表される増感剤は、例えば、特開2004−189695号公報、Tetrahedron, vol.49, p.939〜 , 1993、Journal of Organic Chemistry, p.893〜, 1945、及び、Journal of Organic Chemistry, p.4939〜, 1965などに記載の公知の方法によって合成することができる。
【0051】
(ラジカル重合性化合物)
着色液及び下塗り液に使用されるラジカル重合性化合物について説明する。
重合性化合物としては、各種(メタ)アクリレートモノマーが好ましく使用できる。
例えば、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソアミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイキシエチルコハク酸、2−アクリロイキシエチルフタル酸、2−アクリロイキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ラクトン変性可とう性アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート等の単官能モノマーが挙げられる。
【0052】
また、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能モノマーが挙げられる。
【0053】
この他、重合性のオリゴマー類も、モノマー同様に配合可能である。重合性オリゴマーとしては、エポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、直鎖アクリルオリゴマー等が挙げられる。
【0054】
着色液及び下塗り液を構成するラジカル重合性化合物としては、上記に挙げるラジカル重合性化合物を適宜用いることができるが、硬化物の柔軟性及び耐擦性を向上させる観点から、該ラジカル重合性化合物は、単官能環状アクリレート類であることが好ましく、更に、好ましくは、下記のうちいずれかの化合物(M−1乃至M−29)である。
【0055】
【化16】

【0056】
【化17】

【0057】
(光重合開始剤)
本発明において、着色液及び下塗り液が含有する光重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。本発明に用いることができる光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いることのできる光重合開始剤は、活性放射線の照射により重合開始種を生成する化合物である。活性放射線としては、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できるが、装置コストや操作上の安全性の観点から、紫外線又は可視光線が好ましい。
具体的な光重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue, 93, 435 (1993)や、R. S. Davidson著、Journal of Photochemistry and Biology A: Chemistry, 73. 81 (1993)や、J. P. Faussier, Photoinitiated Polymerization-Theory and Applications: Rapra Review vol.9, Report, Rapra Technology (1998)や、M. Tsunooka et al., Prog. Polym. Sci., 21, 1 (1996)に多く記載されている。また、(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く記載されている。更には、F. D. Saeva, Topics in Current Chemistry, 156, 59 (1990)、G. G. Maslak, Topics in Current Chemistry, 168, 1 (1993)、H. B. Shuster et al, JACS, 112, 6329 (1990)、I. D. F. Eaton et al, JACS, 102, 3298 (1980)等に記載されているような、増感剤の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0058】
更に前述の通り、膜内部の硬化性を更に高める観点から、本発明において、光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。また、本発明において、光重合開始剤として、少なくとも一種のアシルホスフィンオキサイド化合物及び、少なくとも一種のα−アミノアセトフェノン化合物を併用することがより好ましい。
好ましく用いることができるアシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物は以下の通りである。
【0059】
<アシルホスフィンオキサイド化合物>
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、下記式(2)又は下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0060】
【化18】

【0061】
前記式(2)中のR1及びR2は、それぞれ独立に脂肪族基、芳香族基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、複素環基を表し、R3は、脂肪族基、芳香族基、複素環基を表す。前記R1とR2は結合して5員環乃至9員環を形成してもよい。前記環構造は、環構造中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環であってもよい。
前記R1、R2又はR3で表される脂肪族基は、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基等が挙げられ、中でも、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基が好ましく、アルキル基、置換アルキル基が特に好ましい。また、前記脂肪族基は、環状脂肪族基でも鎖状脂肪族基でもよい。また、鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。
前記アルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基が挙げられ、該アルキル基の炭素原子数としては、1以上30以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。置換アルキル基のアルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲については、アルキル基の場合と同様である。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ネオペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。
前記置換アルキル基の置換基としては、−COOH(カルボキシル基)、−SO3H(スルホ基)、−CN(シアノ基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、−OH(ヒドロキシ基)、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、メチルチオエチルチオエチル基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)、置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、複素環基等が挙げられる。ここで、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、ホスホノ基は、塩の状態であってもよい。その際、塩を形成するカチオンは、陽イオンを形成し得る基であり、有機カチオン性化合物、遷移金属配位錯体カチオン(特許2791143号公報に記載の化合物等)又は金属カチオン(例えば、Na+、K+、Li+、Ag+、Fe2+、Fe3+、Cu+、Cu2+、Zn2+、Al3+等)が好ましい。
【0062】
前記アルケニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルケニル基が挙げられ、該アルケニル基の炭素原子数としては、2以上30以下が好ましく、2以上20以下がより好ましい。また、該アルケニル基は、置換基を有する置換アルケニル基、無置換のアルケニル基のいずれであってもよく、置換アルケニル基のアルケニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルケニル基の場合と同様である。前記置換アルケニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
前記アルキニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキニル基が挙げられ、該アルキニル基の炭素原子数としては、2以上30以下が好ましく、2以上20以下がより好ましい。また、該アルキニル基は、置換基を有する置換アルキニル基、無置換のアルキニル基のいずれであってもよく、置換アルキニル基のアルキニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルキニル基の場合と同様である。置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
前記アラルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル側鎖を有するアラルキル基が挙げられ、該アラルキル基の炭素原子数としては、7以上35以下が好ましく、7以上25以下がより好ましい。また、該アラルキル基は、置換基を有する置換アラルキル基、無置換のアラルキル基のいずれであってもよく、置換アラルキル基のアラルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアラルキル基の場合と同様である。置換アラルキル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。また、アラルキル基のアリール部分が置換基を有していてもよく、該置換基としては前記アルキル基の場合と同様の置換基及び炭素数30以下の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が例示できる。
【0063】
前記R1、R2又はR3で表される芳香族基としては、例えば、アリール基、置換アリール基が挙げられる。アリール基の炭素原子数としては、6以上30以下が好ましく、6以上20以下がより好ましい。置換アリール基のアリール部分の好ましい炭素原子数の範囲としては、アリール基と同様である。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等が挙げられる。置換アリール基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基及び炭素数30以下の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられる。
前記R1又はR2で表される脂肪族オキシ基としては、炭素数1以上30以下のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、フェノキシエトキシ基等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
前記R1又はR2で表される芳香族オキシ基としては、炭素数6以上30以下のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基、メチルフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、オクチルオキシフェニルオキシ基等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
前記R1、R2又はR3で表される複素環基としては、N、O又はS原子を含む複素環基が好ましく、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピロリル基等が挙げられる。
【0064】
【化19】

【0065】
前記式(3)中のR4及びR6は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、複素環基を表し、R5は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基を表す。
前記R4、R5又はR6で表される、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記式(2)における場合と同様の置換基が挙げられる。
前記式(3)におけるアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基としては、前記式(2)における場合と同義である。
【0066】
前記式(2)で表される化合物は、下記式(4)で表される化合物であることがより好ましい。
【0067】
【化20】

【0068】
式(4)中、R7及びR8はそれぞれ独立に、フェニル基、メトキシ基、又は、イソプロポキシ基を表し、R9は2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2−メチルフェニル基(o−トルイル基)、イソブチル基、又は、t−ブチル基を表す。
【0069】
前記式(3)で表される化合物は、下記式(5)で表される化合物であることがより好ましい。
【0070】
【化21】

【0071】
式(5)中、R10及びR12はそれぞれ独立に、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、又は、2,6−ジメトキシフェニル基を表し、R11はフェニル基、又は、2,4,4−トリメチルペンチル基を表す。
【0072】
前記式(2)又は(3)で表されるアシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報等に記載の化合物を挙げることできる。
具体的なアシルホスフィンオキサイド化合物の例としては、以下に示す化合物(例示化合物(P−1)乃至(P−26))が挙げられるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0073】
【化22】

【0074】
【化23】

【0075】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、モノアシルホスフィンオキサイド化合物及びビスアシルホスフィンオキサイド化合物等を使用することができ、モノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、公知のモノアシルホスフィンオキサイド化合物を使用することができる。例えば特公昭60−8047号公報、特公昭63−40799号公報に記載のモノアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。具体例としては、イソブチリル−メチルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、2−エチルヘキサノイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、p−トルイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、o−トルイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4−ジメチルベンゾイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、p−三級ブチルベンゾイル−フェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、アクリロイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−エチルヘキサノイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、o−トルイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、p−三級ブチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、3−ピリジルカルボニル−ジフェニルホスフィンオキサイド、アクリロイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイル−フェニルホスフィン酸ビニルエステル、アジポイル−ビス−ジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、p−トルイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、4−(三級ブチル)−ベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−2−エチルヘキサノイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチル−シクロヘキサノイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル及びピバロイル−フェニルホスフィン酸イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0076】
ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては公知のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が使用できる。例えば特開平3−101686号、特開平5−345790号、特開平6−298818号に記載のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。具体例としては、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−クロルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−デシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−クロル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0077】
これらの中でも、本発明において、アシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819:チバスペシャルティケミカルズ社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(DAROCUR TPO:チバスペシャルティケミカルズ社製、LUCIRIN TPO:BASF社製)などが好ましい。
【0078】
<α−アミノアセトフェノン化合物>
α−アミノアセトフェノン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を使用することもできる。
該α−アミノアセトフェノン化合物としては下記の式(1)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【0079】
【化24】

【0080】
式中X1は下記(a)、(b)又は(c)で表される基を表す。
【0081】
【化25】

式中pは0又は1である。
【0082】
【化26】

式中qは0乃至3の整数であり、rは0又は1である。
【0083】
【化27】

【0084】
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子、OH基、炭素数1以上12以下のアルキル基(尚、特に断りのない場合、アルキル基とは直鎖状又は分岐状のアルキル基を意味する。本発明において、同様。)、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、芳香環基、又は、複素環基を表す。前記芳香環基としては、フェニル基、又は、ナフチル基が好ましく例示できる。また、前記複素環基としては、フリル基、チエニル基、又は、ピリジル基が好ましく例示できる。
Yにおけるアルキル基、アルコキシ基、芳香環基、及び、複素環基は置換基を有していてもよい。
Yにおけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、OH基、ハロゲン原子、−N(X102(X10は水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基、もしくはフェニル基を表す。)、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、−COOR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。)、−CO(OCH2OCH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)、又は、−OCOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。
Yにおけるアルコキシ基が有していてもよい置換基としては、−COOR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。)、又は、−CO(OCH2CH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)が挙げられる。
Yにおける芳香環基又は複素環基が有していてもよい置換基としては、−(OCH2CH2nOH(nは1以上20以下の整数を表す。)、−(OCH2CH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)、炭素数1以上8以下のアルキルチオ基、フェノキシ基、−COOR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。)、−CO(OCH2CH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)、フェニル基、又は、ベンジル基が挙げられる。
これら置換基は、可能であれば2以上有していてもよく、可能であれば、置換基を更に置換していてもよい。
また、式中、X12は水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、又は、フェニル基を表す。X13、X14及びX15は互いに独立して水素原子、又は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。X13とX14とは架橋して炭素数3以上7以下のアルキレン基を形成してもよい。
【0085】
式中X2は前記X1と同じ基、炭素数5もしくは6のシクロアルキル基、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、フェニル基を表す。
2におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
2におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、又は、フェニル基が挙げられる。
2におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。
これら置換基は、可能であれば2以上有していてもよく、可能であれば、置換基を更に置換していてもよい。
また、式中X1とX2とは架橋して次式で表される基を形成してもよい。
【0086】
【化28】

【0087】
式中X3は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基、又は、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基を表す。
3におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及び、フェニルアルキル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、−CN、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。
式中X4は炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、又は、フェニル基を表す。
4におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、フェニルアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
4におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及び、フェニルアルキル基が有していてもよい置換基としては、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシル基、−CN、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。また、X4におけるアルキル基が置換基を有する場合、置換されるアルキル基の炭素数は2以上4以下であることが好ましい。
4におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。
ここで、X2とX4とは架橋して炭素数1以上7以下のアルキレン基、炭素数7以上10以下のフェニルアルキレン基、o−キシリレン基、2−ブテニレン基、又は、炭素数2もしくは3のオキサ−もしくはアザ−アルキレン基を形成してもよい。
また、X3とX4とは架橋して炭素数3以上7以下のアルキレン基を形成してもよい。
3とX4とが架橋して形成するアルキレン基は、置換基として、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキルを表す。)を有していてもよく、また、結合中に−O−、−S−、−CO−、又は、−N(X16)−(X16は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、結合鎖中に1もしくは2以上の−O−、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基、−CH2CH2CN、−CH2CH2COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)、炭素数2以上8以下のアルカノイル基もしくはベンゾイル基を介在させた炭素数1以上12以下のアルキル基を表す。)を介在させてもよい。
式中X5、X6、X7、X8、X9は互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数5もしくは6のシクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、−OX17基、−SX18基、−SO−X18基、−SO2−X18基、−N(X19)(X20)基、−NH−SO2−X21基、又は、次式で表される基を表す。
【0088】
【化29】

【0089】
式中、Zは−O−、−S−、−N(X10)−X11−N(X10)−又は次式で表される基を表す。X1、X2、X3及びX4は前記式(1)と同義である。
【0090】
【化30】

【0091】
式中X10は前記と同じ、X11は炭素数が2以上16以下の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、又はこれらの鎖中に1以上の−O−、−S−、もしくは−N(X10)−が介在する炭素数が2以上16以下の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基(X10は前記と同じ)を表す。
17は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、−(CH2CH2O)nH(nは2以上20以下の整数)、炭素数2以上8以下のアルカノイル基、炭素数3以上12以下のアルケニル基、シクロヘキシル基、ヒドロシクロヘキシル基、フェニル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、又は、−Si(R4r(R53-r(R4は炭素数1以上8以下のアルキル基、R5はフェニル基、rは1、2もしくは3)を表す。
17におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
17におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、−CN、−OH、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数3以上6以下のアルケニルオキシ基、−OCH2CH2CN、−CH2CH2COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)、−COOH、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。また、X17におけるアルキル基が置換基を有する場合、置換されるアルキル基の炭素数は1以上6以下であることが好ましい。
17におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。
18は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上12以下のアルケニル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基を表す。
18におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
18におけるアルキル基が有していてもよい置換基は、−SH、−OH、−CN、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、−OCH2CH2CN、又は、−OCH2CH2COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキルを表す。)が挙げられる。
18におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。
19及びX20は互いに独立して水素原子;炭素数1以上12以下のアルキル基;炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキル基;炭素数2以上10以下のアルコキシアルキル基;炭素数3以上5以下のアルケニル基;炭素数5以上12以下のシクロアルキル基;炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基;フェニル基;ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基により置換されたフェニル基;又は炭素数2若しくは3のアルカノイル基;又はベンゾイル基を表す。また、X19とX20とは架橋して炭素数2以上8以下のアルキレン基、又は、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基もしくは−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル)基により置換された炭素数2以上8以下のアルキレン基;結合鎖中に−O−、−S−もしくは−N(X16)−を介在させた炭素数2以上8以下のアルキレン基(X16は前記と同じ)を形成してもよい。
21は炭素数1以上18以下のアルキル基;フェニル基;ナフチル基;又は、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基もしくは炭素数1以上8以下のアルコキシ基によって置換されたフェニル基もしくはナフチル基を表す。
【0092】
式(1)は式(d)で表されることがより好ましい。
【0093】
【化31】

【0094】
式(d)中、X1及びX2はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、又は、ベンジル基を表し、−NX34はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基又は、モルフォリノ基を表し、X5は、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、炭素数1以上8以下のアルキルチオ基、ジメチルアミノ基、又は、モルフォリノ基を表す。これらの中でも−NX34はジメチルアミノ基、又は、モルフォリノ基であることがより好ましい。
【0095】
更に、α−アミノアセトフェノン化合物として、上記式(1)で表される化合物の酸付加物塩を使用することもできる。
また、市販のα−アミノアセトフェノン化合物として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製からイルガキュア907(IRGACURE 907)、イルガキュア369(IRGACURE 369)、イルガキュア379(IRGACURE 379)の商品名で入手可能な重合開始剤が例示できる。
【0096】
α−アミノアセトフェノン化合物として、具体的には、以下の化合物が例示できる。
例えば、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジエチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−エチルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ジメチルアミノ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(IRGACURE 369)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−ジメチルアミノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォルニル)フェニル]−1−ブタノン(IRGACURE 379)などが挙げられる。
【0097】
<その他重合開始剤>
着色液及び下塗り液は、それぞれ、その他の光重合開始剤を含有することができる。重合開始剤は、ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。その他の重合開始剤としてはα−ヒドロキシアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物が例示できる。
〔α−ヒドロキシアセトフェノン化合物〕
α−ヒドロキシアセトフェノン化合物は、下記式(6)で表される化合物であることが好ましい。
【0098】
【化32】

【0099】
式(6)中、R1は水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、又は、炭素数1以上10以下のアルコキシ基を表す。R2、R3は互いに独立して、水素原子、又は、炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。また、R2とR3は結合して炭素数4以上8以下の環を形成していてもよい。
上記アルキル基、アルコキシ基、アルキル基及び炭素数4以上8以下の環は、置換基を有していてもよく、置換基としては式(2)で挙げた置換基を例示できる。
【0100】
α−ヒドロキシアセトフェノン類としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(DAROCURE 1173)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルブタン−1−オン、1−(4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−オクチルフェニル)プロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−メチルチオフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブロモフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ジメチルアミノフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−カルボエトキシフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRGACURE 2959)などが挙げられる。
また、市販のα−ヒドロキシアセトフェノン化合物として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製からイルガキュア184(IRGACURE 184)、ダロキュア1173(DARUCUR 1173)、イルガキュア127(IRGACURE 127)、イルガキュア2959(IRGACURE 2959)の商品名で入手可能な重合開始剤も使用することができる。
【0101】
〔オキシムエステル化合物〕
オキシムエステル化合物としては、下記式(7)で表される化合物であることが好ましい。
【0102】
【化33】

【0103】
式中、Ar1は、ナフタレン構造、アントラセン構造、アントラキノン構造、ベンゾフェノン構造、チアントレン構造、フェノキサチアン構造、ジフェニルチオエーテル構造、チオキサントン構造、及びモルホリノベンゼン構造からなる群から選ばれる構造を表す。中でも、ナフタレン構造、アントラキノン構造、ベンゾフェノン構造、ジフェニルチオエーテル構造、チオキサントン構造、及びモルホリノベンゼン構造が好ましく、チオキサントン構造が特に好ましい。Ar2は、フェニル基を表す。これらの構造又は基は、メチル基、エチル基等のアルキル基、ハロゲン原子、−CN(シアノ基)等の置換基を有していてもよい。
nは、1又は2の整数を表す。nが1のとき、Mは、メチル基、エチル基等の炭素数1以上20以下のアルキル基、シクロプロパン基、シクロヘキサン基等の炭素数5以上8以下のシクロアルキル基、アセチルオキシ基、プロピノイルオキシ等の炭素数2以上20以下のアルカノイル基、プロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル等の炭素数2以上12以下のアルコキシカルボニル基、複数のポリメチレン基がエーテル結合によって連結された二価の基の1つの結合手にアルコキシ基が連結された1価の基、フェニル基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基、フェノキシカルボニル基、炭素数7以上13以下のアラルキルカルボニルオキシ基、炭素数7以上13以下のアラルキルオキシカルボニル基、又は炭素数1以上6以下のアルキルチオ基を表す。これらの中でも、Mが炭素数1以上20以下のアルキル基又はフェニル基であることが好ましい。
【0104】
nが2のとき、Mは、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1以上12以下のアルキレン基、テトラメチレン基等の炭素数3以上12以下のポリメチレン基、オキシプロピレンオキシ基、オキシブチルオキシ基等の炭素数1以上12以下のオキシアルキレンオキシ基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、−CO−O−A−O−CO−、−CO−O−(CH2CH2O)m−CO−、又は−CO−A−CO−を表し、Aは、炭素数2以上12以下のアルキレン基を表し、mは、1以上20以下の整数を表す。これらの中でも、Mが炭素数1以上6以下のアルキレン基、炭素数1以上6以下のポリメチレン基、又はシクロヘキシレン基であることが好ましい。
【0105】
オキシムエステル化合物として、具体的には、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
また、市販のオキシムエステル化合物として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製からイルガキュアOXE−01(1−(4−フェニルチオフェニル)−1,2−オクタンジオン−2−(O−ベンゾイルオキシム))、イルガキュアOXE−02(1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−エタノン−1−(O−アセチルオキシム))の商品名で入手可能な重合開始剤も使用することができる。
【0106】
その他、具体的な光重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue, 93, 435 (1993)や、R. S. Davidson著、Journal of Photochemistry and Biology A: Chemistry, 73, 81 (1993)や、J. P. Faussier "Photoinitiated Polymerization - Theory and Applications": Rapra Review, vol.9, Report, Rapra Technology (1998)や、M. Tsunooka et al, Prog. Polym. Sci., 21, 1 (1996)に多く記載されている。また、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187ページから192ページ参照、には、化学増幅型フォトレジスト等に利用される化合物が多く記載されている。更には、F. D. Saeva, Topics in Current Chemistry, 156, 59 (1990)、G. G. Maslak, Topics in Current Chemistry, 168, 1 (1993)、H. B. Shuster et al, JACS, 112, 6329 (1990)、I. D. F. Eaton et al, JACS, 102, 3298 (1980)等に記載されているような、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られている。
【0107】
(着色剤)
本発明においては、着色液は、少なくとも着色剤を含有する。一方、下塗り液は実質的に着色剤を含有しないか、もしくは、白色顔料を含有することが好ましい。
本発明において用いることのできる着色剤には、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の顔料、染料を適宜選択して用いることができる。中でも、着色液及び任意で下塗り液に含まれる着色剤としては、特に耐光性に優れるとの観点から顔料であることが好ましい。
【0108】
本発明に好ましく使用される顔料について述べる。
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。更に、市販の顔料分散体や表面処理された顔料、例えば、顔料を分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等も、本発明の効果を損なわない限りにおいて用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W. Herbst, K. Hunger, Industrial Organic Pigments、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0109】
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等)、C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー200(Novoperm Yellow 2HG)の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0110】
赤あるいはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン、CINQUASIA Magenta RT−355T;チバ・スペシャリティケミカルズ社製)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0111】
青あるいはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3(IRGALITE BLUE GLO;チバ・スペシャリティケミカルズ社製)(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
【0112】
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしてはSPECIAL BLACK 250(デグサ社製)が例示できる。
【0113】
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。従って、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0114】
着色剤の分散には、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
着色剤の分散を行う際には、界面活性剤等の分散剤を添加することができる。
また、着色剤を添加するにあたっては、必要に応じて、分散助剤として、各種着色剤に応じたシナージストを用いることも可能である。分散助剤は、着色剤100重量部に対し、1重量部以上50重量部以下添加することが好ましい。
【0115】
着色液及び下塗り液において、着色剤などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、着色液及び下塗り液は、活性エネルギー線硬化型の液体であることが好ましく、着色液及び/又は下塗り液を、被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化された着色液又は下塗り液から形成された画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、重合性化合物を用い、なかでも、最も粘度が低い重合性化合物を選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0116】
ここで用いる着色剤の平均粒径は、微細なほど発色性に優れるため、0.01μm以上0.4μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.02μm以上0.2μm以下の範囲である。最大粒径は3μm以下、好ましくは1μm以下となるよう、着色剤、分散剤、分散媒の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、着色液、下塗り液の保存安定性、着色液、下塗り液の透明性及び硬化感度を維持することができる。本発明においては分散性、安定性に優れた前記分散剤を用いることにより、微粒子着色剤を用いた場合でも、均一で安定な分散物が得られる。
着色液及び下塗り液中における着色剤の粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法により測定することができる。本発明においては、レーザー回折・散乱法を用いた測定により得られた値を採用する。
【0117】
<界面活性剤>
着色液及び下塗り液は、界面活性剤を含有することが好ましく、特に、下塗り液が界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明に使用される界面活性剤は、下記の界面活性剤が例示できる。例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。具体的には、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。尚、前記公知の界面活性剤として、有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8から17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
特に本発明において使用される界面活性剤は、上記界面活性剤に限定されることはなく、添加濃度に対して効率的に表面張力を低下させる能力のある添加剤であればよい。
【0118】
<その他添加剤>
本発明における着色液及び下塗り液には、前記重合性化合物、重合開始剤など加え、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。例えば、得られる画像の耐候性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。また、着色液及び下塗り液の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。
更に、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤、吐出物性の制御を目的としたチオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類、インク組成物と基材との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することができる。
また、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
【0119】
(着色液と下塗り液の表面張力の関係)
非記録媒体上に付与した着色液の硬化を開始するまでの間、形成された画像の滲みを長時間防止する観点から、着色液の表面張力をγAとし、下塗り液の表面張力をγBとしたとき、γAとγBとの関係は、γA>γBを満たすことが好ましく、γA−γB≧1を満たすことが更に好ましく、γA−γB≧2を満たすことが特に好ましい。
前記表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定される値である。
【0120】
(2)インクジェット記録方法
<記録方法>
本発明のインクジェット記録方法においては、画像を形成するための着色液と下塗り液として用いる下塗り液で構成されるインクジェット記録用インクセットを用いる。
該記録方法は、(i)被記録媒体上に下塗り液を付与する工程と、(ii)前記下塗り液を半硬化させる工程と、(iii)半硬化された前記下塗り液上に着色液を吐出して画像形成を行う工程と、を含む少なくとも3つの工程で構成される。
画像の耐擦性や密着性を向上させる観点から、上記3つの工程の後に、(iv)画像を完全に硬化させる工程を含むことが好ましい。また、本発明における着色液は、複数色の着色液を多色インクセットとして用いることが好ましい。このように多色インクセットを用いる場合は、各色の着色液を被記録媒体に付与した後に、その着色液液滴を半硬化させる工程を構成とすることが更に好ましい。例えば、異なる色相を有する着色液Aと着色液Bを用いて2次色を形成する場合は、着色液Aを半硬化させる工程の後に、半硬化された前記着色液A上に着色液Bを吐出する工程を行う構成とすることが好ましい。
【0121】
従って、本発明のインクジェット記録方法の最も好ましい工程は図1に示すとおりである。
図1に本発明に好適に使用できるインクジェット記録方法の概念図を示す。図1を参照しながら以下に詳説する。
被記録媒体6は、被記録媒体搬送手段7A及び7Bにより搬送され、図1では、左から右方向に搬送されている。
被記録媒体及び被記録媒体搬送手段は特に限定されるものではないが、図1に示す本実施形態では被記録媒体としてプラスチックフィルムを使用しており、また、被記録媒体搬送手段としてフィルム巻き出し機(7A)、フィルム巻き取り機(7B)を使用している。
第一工程にて、下塗り液を付与する手段1により、被記録媒体6上に下塗り液を付与する。下塗り液を付与する手段としては、ロールコーターが例示できる。
続いて、第二工程にて、下塗り液を半硬化させる手段2により、被記録媒体6上に付与された下塗り液を半硬化させる。下塗り液を半硬化させる手段としては、紫外線光源が例示できる。
第三工程において、被記録媒体6上で半硬化させた下塗り液の膜上に着色液を付与する手段3Yで着色画像を形成する。図1では、イエロー着色液を付与し、イエロー画像を形成している。イエロー着色液を付与する手段3Yとしては、イエロー用インクジェット記録ヘッドが例示できる。第四工程では、第三工程で付与された着色液を半硬化させる手段4Yにより、イエロー着色液を半硬化させる。図1では、着色液を半硬化させる手段として紫外線光源が使用されており、下塗り液の膜上に付与されたイエロー着色液を半硬化させている。
第五工程において、被記録媒体上で半硬化させた下塗り液及び/又はイエロー液体の膜上にシアン着色液を付与する手段3Cにより、シアン着色液を付与し、シアン画像を形成する。シアン着色液を付与する手段3Cとしては、シアン用インクジェット記録ヘッドが例示できる。第六工程では、第五工程で付与された着色液を半硬化させる。図1では、シアン着色組成物を半硬化させる手段4Cとして、紫外線光源が使用されており、下塗り液及び/又はイエロー着色組成物の膜上に付与されたシアン着色液を半硬化させている。
同様にして、第七工程においては、マゼンタ着色液を付与する手段3Mにて下塗り液、イエロー着色液、シアン着色液の何れかの膜上にマゼンタ画像を形成後、第八工程において、マゼンタ着色液を半硬化させる手段4Mにより、付与したマゼンタ着色液を半硬化させる。
更に、第九工程においては、下塗り液、イエロー着色液、シアン着色液、マゼンタ着色液の何れかの膜上にブラック着色液を付与する手段3Kにてブラック画像を形成する。第十工程において、ブラック着色液を半硬化させる手段4Kにより、ブラック着色液を半硬化させる。
続いて、第十一工程において、形成されたフルカラーの画像を完全に硬化させる手段5により、形成されたフルカラーの画像を完全に硬化させる。
尚、ここで、第十工程を省略することも可能であり、その場合は最後の着色液が付与された被記録媒体は、半硬化させる工程を経ることなく、完全に硬化される。
次に各工程について説明する。
【0122】
<被記録媒体上に下塗り液を付与する工程>
前記、被記録媒体上に下塗り液を付与する工程にて、下塗り液は、被記録媒体上に着色液の液滴の吐出によって形成される画像と同一領域もしくは該画像より広い領域に付与することが好ましい。
また、下塗り液の付与量(単位面積あたりの重量比)としては、着色液体組成物の最大液滴量(1色につき)を1とした場合に0.05以上5以下の範囲内であることが好ましく、0.07以上4以下の範囲内がより好ましく、0.1以上3以下の範囲内が特に好ましい。
【0123】
本発明のインクジェット記録方法においては、被記録媒体上に下塗り液を付与する手段としては、塗布装置又はインクジェットノズル等を用いることができる。
前記塗布装置としては、特に制限はなく、公知の塗布装置の中から目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。詳しくは、原崎勇次著「コーティング工学」を参照できる。
中でも、装置コストの点で、下塗り液の被記録媒体上への付与は、比較的安価なバーコーター又はスピンコーターを用いた塗布、あるいはインクジェット法による付与が好ましい。
【0124】
<下塗り液及び/又は着色液を半硬化させる工程>
本発明において、「半硬化」とは、部分的な硬化(partially cured; partial curing)を意味し、下塗り液及び/又は着色液が部分的に硬化しているが完全に硬化していない状態をいう。被記録媒体(基材)上に適用された下塗り液又は下塗り液上に吐出された着色液が半硬化している場合、硬化の程度は不均一であってもよい。例えば、下塗り液及び/又は着色液は深さ方向に硬化が進んでいることが好ましい。
【0125】
下塗り液及び/又は着色液を半硬化させる方法としては、(1)酸性ポリマーに対して、塩基性化合物を付与する、又は塩基性ポリマーに対して、酸性化合物、金属化合物を付与するなど、いわゆる凝集現象を用いる方法、(2)下塗り液及び/又は着色液を予め高粘度に調製し、これに低沸点有機溶媒を添加することによって低粘化しておき、低沸点有機溶媒を蒸発させて元の高粘度に戻す方法、(3)高粘度に調製した下塗り液及び/又は着色液を加熱しておき、冷却することによって元の高粘度に戻す方法、(4)下塗り液及び/又は着色液に活性エネルギー線又は熱を与えて硬化反応を起こさせる方法など、既知の増粘方法が挙げられる。中でも(4)下塗り液及び/又は着色液に活性エネルギー線又は熱を与えて硬化反応を起こさせる方法が好ましい。
【0126】
活性エネルギー線又は熱を与えて半硬化反応を起こさせる方法とは、被記録媒体に付与された下塗り液及び/又は着色液の表面における重合性化合物の重合反応を不充分に行なう方法である。
【0127】
ラジカル重合性の下塗り液又は着色液を、空気中又は部分的に不活性ガスで置換した空気中等の酸素を多く含む雰囲気中で重合させる場合には、酸素のラジカル重合抑制作用のために、被記録媒体上に適用された下塗り液層又は着色液の液滴(以下、着色液液滴ともいう。)の表面においてラジカル重合が阻害される傾向がある。この結果、半硬化は不均一となり、下塗り液層又は着色液液滴の内部でより硬化が進行し、表面の硬化が遅れる傾向となる。ここで、下塗り液層とは、基材上に付与された下塗り液の層である。
【0128】
カチオン重合性の下塗り液又は着色液を、湿気を有する雰囲気中で重合させる場合にも、水分のカチオン重合阻害作用があるために、被記録媒体上に適用された下塗り液層又は着色液液滴の内部でより硬化が進行し、表面の硬化が遅れる傾向となる。
【0129】
本発明において、ラジカル光重合性の下塗り液又は着色液を、ラジカル重合抑制的な酸素の共存下で使用して、部分的に光硬化すると、下塗り液及び/又は着色液の硬化は外部よりも内部にて、より進行する。
特に、前記下塗り液の表面においてはその内部と比べて空気中の酸素の影響で重合反応が阻害され易い。従って、活性エネルギー線又は熱の付与条件を制御することにより、下塗り液を半硬化させることができる。
【0130】
これらの中でも、活性エネルギー線の照射により半硬化させることが好ましい。活性エネルギー線としては、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。これらの中でも紫外線又は可視光であることが好ましく、紫外線であることがより好ましい。更に、活性放射線のピーク波長は、増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、340〜400nmであることが更に好ましい。
【0131】
下塗り液及び/又は着色液の半硬化に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、活性エネルギー線によりエネルギーを付与する場合には、1〜500mJ/cm2程度が好ましい。また、加熱によりエネルギーを付与する場合は、被記録媒体の表面温度が40〜80℃の温度範囲となる条件で0.1〜1秒間加熱することが好ましい。
【0132】
活性光や加熱などの活性エネルギー線又は熱の付与により、重合開始剤の分解による活性種の発生が促進されると共に、活性種の増加や温度上昇により、活性種に起因する重合性又は架橋性材料の重合もしくは架橋による硬化反応が促進される。
また、増粘(粘度上昇)も、活性光の照射、又は加熱によって好適に行なうことができる。
【0133】
半硬化の状態の下塗り液上に着色液が打滴され、又は、半硬化の状態の着色液上に、これとは異なる着色液(特に色相の異なる着色液)が打滴されると、得られる印刷物の品質に好ましい技術的効果をもたらす。また、その作用機構を印刷物の断面観察により確認できる。
【0134】
基材上に設けられた、厚さが約5μmの厚さの半硬化状態の下塗り液上に約12pL(ピコリットル;以下同様)の着色液を打滴した場合の高密度に打滴された部分(高濃度部分)を一例として説明する。
図2は、半硬化状態の下塗り液層上に着色液を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図2に示す印刷物の作製において、下塗り液は半硬化され、基材16側の方が表面層よりも硬化が進行している。図2では、半硬化状態の下塗り液層に着色液を付与された下塗り層14が示されている。
この場合には、得られる画像10の断面には、以下の3つの特徴が観察される。
(1)着色液硬化物12の一部は表面に出ている、
(2)着色液硬化物12の一部は下塗り層14に潜り込んでいる、かつ、
(3)着色液硬化物12の下側と基材16の間には下塗り層14が存在する。
即ち、半硬化状態の下塗り液層上に着色液を付与することによって得られた印刷物は、図2で模式的に示されるような断面を有している。上記の(1)、(2)及び(3)の状態を満たす場合には、半硬化した下塗り液に着色液が付与されたといえる。この場合には、高密度に打滴された着色液の液滴は相互に繋がって着色膜を形成しており、均一で高い色濃度を与える。尚、下塗り層とは、下塗り液層を硬化して得られた層の意である。
【0135】
図3及び図4は、未硬化状態の下塗り液層上に着色液を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図3及び図4では、未硬化状態の下塗り液層に着色液を付与された下塗り層18が示されている。
未硬化状態の下塗り液層に着色液を打滴した場合は、着色液の全部が下塗り液層に潜り込むか、及び/又は、着色液の下部には下塗り液が存在しない状態となる。具体的には、図3においては、得られる画像10の断面切片において、着色液硬化物12が、下塗り層18に完全に潜り込んでおり、着色液硬化物12の一部が表面にでていない。また、図4に示すように、得られる画像10の断面切片において、着色液硬化物12の下部には、下塗り層18が存在しない。
この場合は、高密度に着色液を付与しても、液滴同士が独立するため、色濃度が低下する原因となる。
【0136】
図5は、完全硬化状態の下塗り液層上に着色液を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図5では、完全硬化状態の下塗り液層に着色液を付与された下塗り層20が示されている。
完全に硬化した下塗り液層に着色液を打滴した場合は、着色液は下塗り液層に潜り込まない状態となる。具体的には図5に示されるように、着色液硬化物12は、下塗り層20に潜り込んでいない。
このような状態は、打滴干渉の発生の原因となり、均一な着色液膜層が形成できず、色再現性の低下を招く。
【0137】
高密度に着色液液滴を付与した場合に液滴同士が独立することなく、均一な着色液の液層(着色膜)を形成する観点、及び、打滴干渉の発生を抑制する観点から、単位面積当たりの下塗り液の転写量は、単位面積当たりに付与する着色液の最大液滴量よりも十分に少ないことが好ましい。即ち、下塗り液層の単位面積当たりの転写量(重量)をM(下塗り液)とし、単位面積当たりに付与する着色液の最大重量をm(着色液)とすると、M(下塗り液)、m(着色液)は、以下の関係を満たすことが好ましい。
〔m(着色液)/30〕≦〔M(下塗り液)〕≦〔m(着色液)〕
また、〔m(着色液)/20〕≦〔M(下塗り液)〕≦〔m(着色液)/3〕であることがより好ましく、〔m(着色液)/10〕≦〔M(下塗り液)〕≦〔m(着色液)/5〕であることが更に好ましい。ここで、単位面積当たりに付与する着色液の最大重量は1色当たりの最大重量である。
〔m(着色液)/30〕≦〔M(下塗り液)〕であると、打滴干渉の発生を抑制することができ、更にドットサイズの再現性に優れるので好ましい。また、M(下塗り液)≦m(着色液)であると、均一な着色液の液層の形成ができ、濃度の高い画像を得ることができるので好ましい。
【0138】
尚、単位面積当たりの下塗り液層の転写量は、以下に述べる転写試験により求めたものである。半硬化過程の終了後(例えば、活性エネルギー線の照射後)であって着色液の液滴を打滴する前に、普通紙などの浸透媒体を半硬化状態の下塗り液層に押し当てて、浸透媒体に転写した下塗り液の量の重量測定によって定義するものである。
例えば、着色液の最大吐出量が、600×600dpiの打滴密度で、1画素(ドット)当たり12ピコリットルであったとすると、単位面積当たりに付与する着色液の最大重量m(着色液)は、0.74mg/cm2となる(ここでは、着色液の密度を約1.1g/cm3と仮定した。)。従って、下塗り液層の転写量は、単位面積当たり0.025mg/cm2以上0.74mg/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは0.037mg/cm2以上0.25mg/cm2以下であり、更に好ましくは0.074mg/cm2以上0.148mg/cm2以下である。
【0139】
着色液A及び着色液Bで2次色を形成する時は、半硬化状態の着色液A上に着色液Bを付与することが好ましい。
図6は、半硬化状態の着色液A上に着色液Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図6では、半硬化状態の着色液Aに着色液Bを付与されて得られた着色液A硬化物24及び着色液B硬化物22が示されている。
半硬化状態の着色液A上に着色液Bを打滴した場合は、着色液Bの一部が着色液Aに潜り込み、かつ、着色液Bの下部には着色液Aが存在する状態となる。即ち、半硬化状態の着色液A上に着色液Bを付与することによって得られた印刷物は、図6で示されるように、着色液B硬化物22の一部が表面にでており、また、着色液B硬化物22の一部は着色液A硬化物24に潜り込んでいる。また、着色液B硬化物22の下部には着色液A硬化物が存在している。着色液Aの硬化膜(着色膜A、図6の着色液A硬化物24)及び着色液Bの硬化膜(着色膜B、図6の着色液B硬化物22)が積層された状態になり、良好な色再現が可能となる。
【0140】
図7及び図8は、未硬化状態の着色液A上に着色液Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図7では、未硬化状態の着色液Aに着色液Bを付与されて得られた着色液A硬化物26及び着色液B硬化物22が示されている。
未硬化状態の着色液Aに着色液Bを打滴した場合は、着色液Bの全部が着色液Aに潜り込むか、及び/又は、着色液Bの下部には着色液Aが存在しない状態となる。即ち、得られた画像の断面図を観察すると、図7に示すように、着色液B硬化物22の全部が着色液A硬化物26に潜り込んでいる、及び/又は図8に示すように、着色液B硬化物22の下層には着色液A硬化物26が存在しない。この場合は、高密度に着色液Bの液滴を付与しても、液滴同士が独立するため、2次色の彩度低下の原因となる。
【0141】
図9は、完全硬化状態の着色液A上に着色液Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図9では、完全硬化状態の着色液Aに着色液Bを付与されて得られた着色液A硬化物28及び着色液B硬化物22が示されている。完全に硬化した着色液Aに着色液Bを打滴した場合は、着色液Bは着色液Aに潜り込まない状態となる。図9に示すように、得られる画像の断面図では、着色液B硬化物22が着色液A硬化物28に潜り込んでいない。このような状態は、打滴干渉の発生の原因となり、均一な着色液膜層が形成できず、色再現性の低下を招く。
【0142】
高密度に着色液B液滴を付与した場合に液滴同士が独立することなく、均一な着色液Bの液層を形成する観点、及び、打滴干渉の発生を抑制する観点から、単位面積当たりの着色液Aの転写量は、単位面積当たりに付与する着色液Bの最大液滴量よりも十分に少ないことが好ましい。即ち、着色液A層の単位面積当たりの転写量(重量)をM(着色液A)とし、単位面積当たりに吐出する着色液Bの最大重量をm(着色液B)とすると、M(着色液A)とm(着色液B)は、以下の関係を満たすことが好ましい。
〔m(着色液B)/30〕≦〔M(着色液A)〕≦〔m(着色液B)〕
また、〔m(着色液B)/20〕≦〔M(着色液A)〕≦〔m(着色液B)/3〕であることがより好ましく、〔m(着色液B)/10〕≦〔M(着色液A)〕≦〔m(着色液B)/5〕であることが更に好ましい。
〔m(着色液B)/30〕≦〔M(着色液A)〕であると、打滴干渉の発生を抑制することができ、更に、ドットサイズ再現性に優れるので好ましい。また、〔M(着色液A)〕≦〔m(着色液B)〕であると、均一な着色液の液層の形成ができ、濃度の高い画像を得ることができるので好ましい。
【0143】
尚、単位面積当たりの着色液Aの転写量(重量)は、以下に述べる転写試験により求めたものである。半硬化過程の終了後(例えば、活性エネルギー線の照射後)であって着色液Bの液滴を打滴する前に、普通紙などの浸透媒体を半硬化状態の着色液A層に押し当てて、浸透媒体に転写した着色液Aの量の重量測定によって定義するものである。
例えば、着色液Bの最大吐出量が、600×600dpiの打滴密度で、1画素当たり12ピコリットルであったとすると、単位面積当たりに吐出する着色液Bの最大重量m(着色液)は、0.74mg/cm2となる(ここでは、着色液Bの密度を約1.1g/cm3と仮定した。)。従って、着色液A層の転写量は、単位面積当たり0.025mg/cm2以上0.74mg/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは0.037mg/cm2以上0.25mg/cm2以下であり、更に好ましくは0.074mg/cm2以上0.148mg/cm2以下である。
【0144】
エチレン性不飽和化合物又は環状エーテルに基づく硬化反応の場合には、未重合率をエチレン性不飽和基又は環状エーテル基の反応率により定量的に測定することができる(後述)。
【0145】
前記下塗り液及び/又は着色液の半硬化状態を活性エネルギー線の照射や加熱によって重合を開始する重合性化合物の重合反応によって実現する場合は、印刷物の擦過性を向上させる観点から、未重合率(A(重合後)/A(重合前))は、0.2以上0.9以下であることが好ましく、0.3以上0.9以下であることがより好ましく、0.5以上0.9以下であることが特に好ましい。
【0146】
ここで、A(重合後)は、重合反応後の重合性基による赤外吸収ピークの吸光度であり、A(重合前)は、重合反応前の重合性基による赤外吸収ピークの吸光度である。例えば、下塗り液及び/又は着色液の含有する重合性化合物がアクリレートモノマーもしくはメタクリレートモノマーである場合は、810cm-1付近に重合性基(アクリレート基、メタクリレート基)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸光度で、前記未重合率を定義することが好ましい。また、重合性化合物がオキセタン化合物である場合は、986cm-1付近に重合性基(オキセタン環)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸光度で、前記未重合率を定義することが好ましい。重合性化合物がエポキシ化合物である場合は、750cm-1付近に重合性基(エポキシ基)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸光度で、前記未重合率を定義することが好ましい。
【0147】
また、赤外吸収スペクトルを測定する手段としては、市販の赤外分光光度計を用いることができ、透過型及び反射型のいずれでもよく、サンプルの形態で適宜選択することが好ましい。例えば、BIO−RAD社製赤外分光光度計FTS−6000を用いて測定することができる。
【0148】
<被記録媒体上に着色液を付与する工程>
本発明において、半硬化した下塗り液及び/又は着色液の膜上に吐出を行う着色液は、0.1pL以上100pL以下の液滴サイズにて(好ましくはインクジェットノズルにより)打滴されることが好ましい。液滴サイズが前記範囲内であると、高鮮鋭度の画像を高い濃度で描写できる点で有効である。また、より好ましくは0.5pL以上50pL以下である。
下塗り液の付与後、着色液液滴が打滴されるまでの打滴間隔としては、5μ秒以上10秒以下の範囲内であることが好ましい。打滴間隔が前記範囲内であると、本発明の効果を顕著に奏し得る点で有効である。着色液液滴の打滴間隔は、より好ましくは10μ秒以上5秒以下であり、特に好ましくは20μ秒以上5秒以下である。
【0149】
着色液を付与する手段としては、インクジェットヘッドを用いることが好ましい。インクジェットヘッドとしては、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変え、インクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式、等のヘッドが好適である。
【0150】
<画像を完全に硬化させる工程>
本発明における「完全硬化」とは、下塗り液及び着色液の内部及び表面が完全に硬化した状態をいう。具体的には、完全硬化の工程の終了後(例えば、活性エネルギー線の照射後や加熱後)、普通紙などの浸透媒体を押し当てて、浸透媒体に下塗り液又は着色液表面が転写したかどうかによって判断することができる。即ち、全く転写しない場合を完全に硬化した状態という。
画像を完全硬化させる硬化手段には活性エネルギー線を照射する光源、電気ヒータやオーブン等の加熱器などを目的等に応じて選択することができる。
前記活性エネルギー線としては、紫外線のほか例えば可視光線、α線、γ線、X線、電子線などが使用可能である。これらのうち、活性エネルギー線としては、コスト及び安全性の点で、電子線、紫外線、可視光線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
完全硬化反応に必要なエネルギー量は、組成、特に重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、一般には100mJ/cm2以上10,000mJ/cm2以下程度である。
活性エネルギー線を照射する好適な装置としては、メタルハライドランプ、水銀灯、LED光源等が挙げられる。
【0151】
また、前記加熱によりエネルギーを付与する場合は、加熱手段として熱を発する装置を用いることができる。この場合、下塗り液及び着色液が付与された基材に対し、該基材の表面温度が50℃以上100℃以下の温度範囲となる条件で0.5秒間以上10秒間以下加熱することが好ましい。
加熱による場合、温度上昇により、重合性化合物の重合もしくは架橋による硬化反応が促進され、液滴の衝突により形成された形状は、より強固となる。これにより、強固な画像が得られるので好ましい。
加熱は、非接触型の加熱手段を使用して行なうことができ、オーブン等の加熱炉内を通過させる加熱装置や、紫外光〜可視光〜赤外光等の全面露光による加熱装置等が好適である。
加熱手段としての露光に好適な光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、カーボンアーク灯、水銀灯等が挙げられる。
【0152】
尚、図1ではイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色の着色液を使用したが、これに限定されるものではなく、ホワイト着色液を使用することもできる。吐出する着色液の順番は特に限定されるわけではないが、明度の低い着色液から被記録媒体に付与することが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色を使用する場合には、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えた5色の着色液を使用する場合にはホワイト→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
着色液は少なくとも1種を使用すればよいが、フルカラー画像を得るためには、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの着色液又はイエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトの5つの着色液を使用することが好ましい。更に、本発明はこれに限定されず、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、グレー、ブラック、ホワイト、イエローの8つの着色液を使用することもできる。
【0153】
本発明において、インクジェット記録方法は上記のインクジェット記録方法に限定されず、本発明のインクジェット記録用インクセットは、他のインクジェット記録方法にも使用できる。
即ち、着色液にて画像を形成した後、下塗り液をオーバーコート層として吐出又は塗布する等、当業者に公知の方法を適宜選択することができる。
【0154】
<被記録媒体>
本発明において、被記録媒体に用いる材料としては、特に限定されずいずれの材料を使用してもよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム及びアルミニウム板が挙げられる。
本発明において、被記録媒体として、非吸収性被記録媒体が好適に使用される。前記インクジェット記録方法では、下塗り液を付与した後に着色液を付与することにより、これまで打滴干渉によって精細な画像の形成が困難であった様々な非吸収性被記録媒体に対して高精細な画像が形成可能である。
【実施例】
【0155】
以下、本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
本発明に使用した素材は以下に示す通りである。
PB15:3(IRGALITE BLUE GLO;チバスペシャリティー ケミカルズ社製、シアン顔料)
PV19(CINQUASIA MAGENTA RT−355D;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、マゼンタ顔料)
PY120(NOVOPERM YELLOW H2G;クラリアント社製、イエロー顔料)
カーボンブラック(SPECIAL BLACK 250;デグサ社製、ブラック顔料)
二酸化チタン(CR60−2;石原産業社製、白色顔料)
Rapicure DVE3(トリエチレングリコールジビニルエーテル;GAF社製、希釈剤)
DPGDA(ジプロピレングリコールジアクリレート;ダイセル・サイテック(株)製、多官能モノマー)
A−TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート;新中村化学工業社製、多官能モノマー)
FA512A(ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト(例示化合物(M−11));日立化成工業社製、単官能モノマー)
BYK―307(ビックケミー社製、界面活性剤)
BYK−168(ビックケミー社製、分散剤)
ソルスパース5000(ノベオン社製、分散剤)
ソルスパース36000(ノベオン社製、分散剤)
FIRSTCURE ST−1(Albemarle社製、重合禁止剤)
DAROCUR TPO(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、光重合開始剤)
IRGACURE 819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、光重合開始剤)
IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、光重合開始剤)
IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、光重合開始剤)
Speedcure ITX(2−イソプロピルチオキサントンと4−イソプロピルチオキサントンの混合物;Lambson社製、増感剤)
【0156】
(シアン顔料分散物Aの作製)
PB15:3(IRGALITE BLUE GLO) 30重量部
Rapicure DVE3 50重量部
BYK−168 20重量部
以上の成分を混合し、1時間スターラーで撹拌した。撹拌後の混合物をビーズミル分散にて分散し、顔料分散物Aを得た。分散条件は直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間は、3時間で行った。以上の工程を経てシアン顔料分散物Aを得た。
【0157】
(マゼンタ顔料分散物Aの作製)
PV19(CINQUASIA MAGENTA RT−355D)30重量部
Rapicure DVE3 28重量部
BYK−168 42重量部
以上の成分を混合し、1時間スターラー撹拌した。撹拌後の混合物をビーズミルにて分散し、顔料分散物Aを得た。分散条件は直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間、6時間で行った。以上の工程を経てマゼンタ顔料分散物Aを得た。
【0158】
(イエロー顔料分散物Aの作製)
PY120(NOVOPERM YELLOW H2G) 30重量部
Rapicure DVE3 28重量部
BYK−168 42重量部
以上の成分を混合し、1時間スターラー撹拌した。撹拌後の混合物をビーズミルにて分散し、顔料分散物Aを得た。分散条件は直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間、6時間で行った。以上の工程を経てイエロー顔料分散物Aを得た。
【0159】
(ブラック顔料分散物Aの作製)
カーボンブラック(SPECIAL BLACK 250) 40重量部
Rapicure DVE3 29重量部
BYK−168 30重量部
ソルスパース5000 1重量部
以上の成分を混合し、1時間スターラー撹拌した。撹拌後の混合物をビーズミルにて分散し、顔料分散物Aを得た。分散条件は直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間、3時間で行った。以上の工程を経てブラック顔料分散物Aを得た。
【0160】
(ホワイト顔料分散物の作製)
二酸化チタン(CR60−2) 60重量部
DPGDA 36重量部
ソルスパース36000 4重量部
以上の成分を混合し、1時間スターラー撹拌した。撹拌後の混合物をビーズミルにて分散し、顔料分散物Aを得た。分散条件は直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間、3時間で行った。以上の工程を経てホワイト顔料分散物Aを得た。
【0161】
(下塗り液及び着色液の作製)
表1〜表5に示す成分(単位は重量部)を撹拌混合溶解し、下塗り液及び着色液を得た。尚、これらの下塗り液及び着色液の表面張力を、表面張力計(協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定したところ、いずれの着色液の表面張力も、24〜26mN/mの範囲内であった。一方、下塗り液の表面張力は、21〜23mN/mの範囲内であった。
【0162】
マゼンタ着色液M1乃至M6の組成及び表面張力の評価結果を以下の表に示す。
【0163】
【表1】

【0164】
シアン着色液C1乃至C6の組成及び表面張力の評価結果を以下の表に示す。
【0165】
【表2】

【0166】
イエロー着色液のY1乃至Y6の組成及び表面張力の評価結果を以下の表に示す。
【0167】
【表3】

【0168】
ブラック着色液Bk1乃至Bk6の組成及び表面張力の評価結果を以下の表に示す。
【0169】
【表4】

【0170】
ホワイト着色液W1乃至W6の組成及び表面張力の評価結果を以下の表に示す。
【0171】
【表5】

【0172】
下塗り液U1乃至U8の組成及び表面張力の評価結果を以下の表に示す。
【0173】
【表6】

【0174】
ここで、表中の各化合物を以下に示す。
重合性化合物A:DPGDA(ジプロピレングリコールジアクリレート;ダイセル・サイテック(株)製、多官能モノマー)
重合性化合物B:A−TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート;新中村化学工業社製、多官能モノマー)
重合性化合物C:FA512A(ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト;日立化成工業社製、単官能モノマー)
希釈剤A:Rapicure DVE3(トリエチレングリコールジビニルエーテル;GAF社製,希釈剤)
界面活性剤A:BYK―307(ビックケミー社製、界面活性剤)
禁止剤A:FIRSTCURE ST−1(Albemarle社製、重合禁止剤)
開始剤A:DAROCUR TPO(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、光重合開始剤)
開始剤B:IRGACURE 819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、光重合開始剤)
開始剤C:IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、光重合開始剤)
開始剤D:IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、光重合開始剤)
増感剤A:下記化学式A
増感剤B:下記化学式B
増感剤C:Speedcure ITX(2−イソプロピルチオキサントンと4−イソプロピルチオキサントンの混合物;Lambson社製、増感剤)
【0175】
【化34】

【0176】
【化35】

【0177】
【化36】

【0178】
【化37】

【0179】
【化38】

【0180】
(画像記録装置)
調製した5色分の着色液(M1〜M6、C1〜C6、Y1〜Y6、Bk1〜Bk6、W1〜W6)は、インクジェットプリンタ(東芝テック社製ヘッド搭載=打滴周波数:6.2KHz、ノズル数:636、ノズル密度:300npi(ノズル/インチ、以下同様)、ドロップサイズ:6pl〜42plを7段階に可変のヘッドを2つ配列して600npiにしたものをフルライン配列したヘッドセットを5組搭載)に装填した。
ヘッドは記録媒体搬送方向上流からホワイト、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックという順で機体に固定して、更にホワイトインク用ヘッドの上流に下塗り液のロールコーター及び半硬化用光源を設置した。尚、ここで下塗り液としては、下塗り液1〜8(U1〜U8)を使用した。
ヘッドの直下を被記録媒体が移動可能な構造に構成すると共に、着色液(M1〜M6、C1〜C6、Y1〜Y6、W1〜W6)が装填されたホワイト、イエロー、シアン、マゼンタ各ヘッドに対して被記録媒体の進行方向にそれぞれピニング用光源(半硬化用光源)を配置し、ブラックインクヘッド下流にはメタルハライドランプ(光強度3,000mW/cm2)を5基設置した。
尚、半硬化用光源及びピニング光源としては、LED光源を使用した。LEDとしては日亜化学製NCCU033を用いた。本LEDは1チップから波長365nmを中心とした340nm以上400nm以下の波長の紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、被記録媒体表面での露光強度は、光が約100mW/cm2となるように、電流及び光源と被記録媒体の距離を調節した。
メタルハライドランプによる照射エネルギーは、点灯するメタルハライドランプの数によって、300〜1,500mJ/cm2まで調整することができる。具体的には、300mJ/cm2(1基点灯)、600mJ/cm2(2基点灯)、900mJ/cm2(3基点灯)、1,200mJ/cm2(4基点灯)、1,500mJ/cm2(5基点灯)となる。
【0181】
(実施例1)
上記画像記録装置を用いて、以下に記載する手順にて、プラスチックフィルムA(白色ポリエチレン製)及びプラスチックフィルムB(透明ポリエチレン製)に画像を形成し、印刷物を得た。
【0182】
印字手順は下記の通り(1)から(12)である。
(1)ロールコーターにより下塗り液(U1)を5μmの厚みに均一に付与した(塗布速度400mm/s)。
(2)下塗り液(U1)を付与後に半硬化用光源で露光を行ない(光強度100mW/cm2)、付与された下塗り液(U1)を半硬化状態にした。
(3)ホワイトヘッドによって、前記下塗り液が付与された被記録媒体上にホワイト着色液(W1)を付与してホワイト画像を形成した。
(4)ピニング用光源にて露光を行ない(光強度100mW/cm2)、ホワイト液を半硬化状態にした。
(5)イエローヘッドによって、被記録媒体上にイエロー着色液(Y1)を付与してイエロー画像を形成した。
(6)ピニング用光源にて露光を行ない(光強度100mW/cm2)、イエロー着色液を半硬化状態にした。
(7)シアンヘッドによって、被記録媒体上にシアン着色液(C1)を付与してシアン画像を形成した。
(8)ピニング用光源にて露光を行ない(光強度100mW/cm2)、シアン着色液を半硬化状態にした。
(9)マゼンタヘッドによって、被記録媒体上にマゼンタ着色液(M1)を付与してマゼンタ画像を形成した。
(10)ピニング用光源にて露光を行ない(光強度100mW/cm2)、マゼンタ着色液を半硬化状態にした。
(11)ブラックヘッドによって、被記録媒体上にブラック着色液(Bk1)を付与してブラック画像を形成した。
(12)メタルハライドランプにて露光を行ない(光強度3,000mW/cm2)、画像を完全に硬化させた。また、点灯させるメタルハライドランプの数によって、300〜1,500mJ/cm2まで露光エネルギーを調整した。
尚、ここで非記録媒体の搬送速度は400mm/s、1ドットあたりの着色液の液量は約12ピコリットルとした。3次色(例えば、シアンとマゼンタとイエロー)の画像を形成する場合は、上記手順にて(3)、(4)、(10)及び(11)を省略した。また、2次色(例えば、シアンとマゼンタ)の画像を形成する場合は、上記手順にて(3)から(6)、(10)及び(11)を省略した。1次色(例えば、イエロー)の画像を形成する場合は、上記手順にて(3)、(4)及び(6)から(11)を省略した。またプラスチックフィルムAを用いる場合はホワイトインクの付与工程((3)、(4))を省略した。
【0183】
(実施例2〜16、比較例1〜6)
表6に記載するように、着色液と下塗り液を入れ替えた以外は、実施例1と同様にして、記録物(画像)を作製した。ただし、白色顔料を含有する下塗り液(U5)を用いた場合(インクセット5及びインクセット19)には、ホワイト着色液(W1〜W6)は使用せずに記録物を得た。
【0184】
<転写量の測定及び評価>
実施例1〜16及び比較例1〜6のいずれにおいても、工程(3)、(5)、(7)、(9)、(11)で付与する単位面積当たりの着色液の最大付与量(重量)は、各色着色液とも0.74mg/cm2〜0.87mg/cm2の範囲内であった。
工程(2)、(4)、(6)、(7)、(8)、(10)における半硬化用光源での露光及びピニング用光源での露光の後でサンプルを抜き取り、転写試験によって転写する下塗り液の重量を測定したところ、いずれの工程後においても0.10mg/cm2〜0.12mg/cm2の範囲内であった。
従って、下塗り液層の単位面積当たりの転写量(重量)M(下塗り液)と単位面積当たりに吐出する着色液の最大重量m(着色液)の関係は、
〔m(着色液)/10〕≦〔M(下塗り液)〕≦〔m(着色液)/5〕
を満たしていた。
【0185】
更に、工程(4)におけるピニング用光源露光後のホワイト着色液の転写量、工程(6)におけるピニング用光源露光後のイエロー着色液の転写量、工程(8)におけるピニング用光源露光後のシアン着色液の転写量、工程(10)におけるピニング用光源露光後のマゼンタ着色液の転写量を、各工程の後でサンプルを抜き取り、転写試験によって測定した。いずれの着色液に対しても単位面積当たりの転写量は、0.10mg/cm2〜0.12mg/cm2の範囲内であった。
従って、異なる色相を有する着色液の組合せにおいて、先に被記録媒体上に付与する着色液A未硬化部の単位面積当たりの重量M(着色液A)と後で付与する着色液Bの単位面積当たりの最大重量m(着色液B)の関係は、
〔m(着色液B)/10〕≦〔M(着色液A)〕≦〔m(着色液B)/5〕
を満たしていた。
【0186】
尚、転写試験は非浸透媒体として普通紙(富士ゼロックス社製コピー用紙C2、商品コードV436)を用いて実施した。抜き取った被記録媒体上の半硬化状態の下塗り液又は半硬化状態の着色液に、均一な力(500〜1000mN/cm2)で普通紙を押し付け、約1分間静置した。その後、静かに普通紙を剥がし、転写試験前後の普通紙の重量を測定し、下塗り液又は着色液で画像を形成した面積で除することによって、単位面積当たりの転写量(重量)を求めた。
【0187】
<評価項目>
〔タックフリー感度(表面硬化性)〕
印刷後の表面のベトツキが無くなる露光エネルギーによってタックフリー感度を定義した。
印刷後の表面のベトツキの有無は、印刷直後に普通紙(富士ゼロックス社製コピー用紙C2)を押し付け、下塗り液及び/又は着色液の移りが起きる場合はベトツキ有り、移りが起きない場合はベトツキ無しと判断した。
露光エネルギーは、300mJ/cm2、600mJ/cm2、900mJ/cm2、1,200mJ/cm2、1,500mJ/cm2と変化させた。
ここでは、タックフリー感度は低い方が内部硬化性の観点から好ましく、特に、1,000mJ/cm2以下であることが好ましい。
尚、タックフリー感度は、プリント物A(図10(a))を用いて評価した。図10(a)において、400は1次色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、もしくは、ホワイト)で形成したベタ印画部であり、600×600dpiの画素密度で、1画素当たり12ピコリットルの着色液液滴を付与して、1次色ベタ画像を印画した。401は、着色液を付与していない部分であり、着色液は付与せず、下塗り液が表面に出ている。
尚、透明の下塗り液(U1〜U4、U6〜U8)を用いた場合はプラスチックフィルムAを被記録媒体として用い、白色の下塗り液(U5)を用いた場合はプラスチックフィルムBを被記録媒体として用いた。
【0188】
〔爪擦り感度(内部硬化性)〕
印刷後の爪擦りによる膜の剥がれや破れが無くなる露光エネルギーによって爪擦り感度を定義した。印刷後に印刷物をギターピック、又は、爪によって5回擦り、膜の剥がれや破れが起きない場合は、爪擦りによる膜の剥がれや破れが無しと判断した。
露光エネルギーは、300mJ/cm2、600mJ/cm2、900mJ/cm2、1,200mJ/cm2、1,500mJ/cm2と変化させた。
爪擦りによる膜の剥がれや破れが生じない露光エネルギーを爪擦り感度として評価した。
ここでは、爪擦り感度は低い方が内部硬化性の観点から好ましく、特に、1,000mJ/cm2以下であることが好ましい。
尚、爪擦り感度は、プリント物B(図10(b))を用いて評価した。図10(b)において、402は3次色(ホワイト、シアン、イエロー)もしくは2次色(シアン、イエロー)のベタ印画部を示し、各色とも600×600dpiの画素密度で、1画素当たり12ピコリットルの着色液液滴を付与して、3次色もしくは2次色のベタ画像を印画した。403は、着色液を付与していない部分であり、下塗り液が表面に出ている。
透明の下塗り液(U1〜U4、U6〜U8)を用いた場合はプラスチックフィルムAを被記録媒体として用い、3次色画像を形成した。また、白色の下塗り液(U5)を用いた場合はプラスチックフィルムBを被記録媒体として用い、2次色画像を形成した。
【0189】
〔色味評価〕
下塗り液の塗布硬化物と被記録媒体の色差ΔEによって、下塗り液が色再現性に及ぼす影響の判断基準とした。
下塗り液を厚み5μmでプラスチックフィルムA又はプラスチックフィルムBに均一に塗布し、メタルハライドランプにて露光を行ない(光強度3,000mW/cm2)塗布硬化物を得た。透明の下塗り液(U1〜U4、U6〜U8)を用いた場合はプラスチックフィルムAを被記録媒体として用い、白色の下塗り液(U5)を用いた場合はプラスチックフィルムBを被記録媒体として用いた。
色差ΔEは、塗布硬化物の色度(a*1、b*1)、明度(L1)、及び、プラスチックフィルムA又はプラスチックフィルムBの色度(a*2、b*2)、明度(L2)をグレタグ社製SPM100−IIにて測定し、
ΔE={(a*1−a*2)2+(b*1−b*2)2+(L1−L2)21/2
を計算して求めた。
ここでは、ΔEは小さい方が色再現性の観点から好ましく、特に、ΔE<1であることが好ましい。
【0190】
〔保存安定性(高温)〕
着色液及び下塗り液10mlをサンプル瓶に詰め、60℃の環境で4週間保管した。
保管前後でのインクの粘度の変化(Δ粘度)で高温での保存安定性を評価した。
Δ粘度=|保管前の粘度(mPa・s)−保管後の粘度(mPa・s)|
尚、ここで、保管前の粘度(mPa・s)と保管後の粘度(mPa・s)は、東機産業(株)製のRE80型粘度計を用いて求めた。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い、10rpmの回転数にて測定を行なった。但し、60mPa・sより高粘度なものについては、必要により回転数を5rpm、2.5rpm、1rpm、0.5rpm等に変化させて測定を行なった。
ここでは、Δ粘度は小さい方が保存安定性の観点から好ましく、特に、Δ粘度<1であることが好ましい。
【0191】
〔保存安定性(低温)〕
下塗り液10mlをサンプル瓶に詰め、−15℃の環境で2週間保管した。
析出の有無で低温での保存安定性を評価した。析出の有無は、目視もしくは光学顕微鏡で観察し判断した。
ここでは、析出が無い方が保存安定性の観点から好ましい。
尚、着色液は着色剤が含有しているため析出の有無の判断が困難である。そこで、作製した着色液を−15℃の環境で2週間保管した後、上記画像記録装置に充填して印画実験を実施したところ、吐出不良などの問題は発生しなかった。
同様に、白色の下塗り液(U5)も白色顔料が含有しているため析出の有無の判断が困難である。そこで、作製した下塗り液(U5)を−15℃の環境で2週間保管した後、上記画像記録装置に充填して印画実験を実施したが、塗布故障などの問題は発生しなかった。
【0192】
〔文字再現性〕
10ptの文字の印刷物によって文字再現性を下記評価基準に従い、目視で評価した。尚、文字再現性の評価は最高露光照度の1,500mJ/cm2で実施した。
良好:打滴干渉、にじみ、混色がなくはっきりとした文字が印字できた。
不良:打滴干渉、にじみ、混色が発生し、文字として認識できなかった。
尚、文字再現性は、プリント物C(図4(c))を用いて評価した。図4(c)において、404は3次色(ホワイト、シアン、イエロー)もしくは2次色(シアン、イエロー)のベタ印画部(背景ベタ部)を示し、600×600dpiの画素密度で、1画素当たり12ピコリットルの着色液液滴を付与して背景画像を印画した。405はブラック文字部(「Fuji」(Times New Roman、10pt))であり、600×600dpiの画素密度で、1画素当たり12ピコリットルのブラック着色液を付与して印字した。透明の下塗り液(U1〜U4、U6〜U8)を用いた場合はプラスチックAを被記録媒体として用い3次色画像を形成した。白色下塗り液(U5)を用いた場合はプラスチックBを被記録媒体として用い、2次色画像を形成した。
【0193】
〔画像切片の観察〕
5種類の1次色及び5種類の着色液から任意に選択した2次色を用いて作製し、完全硬化させて得られたプリント物をミクロトームにより切断し、光学顕微鏡(Nikon社製光学顕微鏡 measuring microscope MM−40)により観察した。尚、切片を得るためにミクロトーム(ライカ社製ミクロトームRM2255)を使用した。
【0194】
実施例1〜16のインクセットを用いて得られた画像のうち1次色の部分は、図2で示すように、着色液硬化物12の一部が表面にでており、また、その一部が下塗り層14に潜り込んでいた。また、着色液硬化物12の下部には、下塗り層14が観察された。更に、均一な着色液の硬化層の形成が確認できた。
【0195】
実施例1〜16のインクセットを用いてて得られた画像のうち2次色(着色液Aと着色液Bで形成された場合)の部分は、図6で示すように、着色液B硬化物22の一部が表面にでており、また、その一部が着色液A硬化物24に潜り込んでいた。更に、着色液B硬化物22の下部には、着色液A硬化物24の層が観察された。更に、均一な着色液Bの硬化層の形成が確認できた。一方、着色液A硬化物24の下には、下塗り層14が観察された。
【0196】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】図1は、本発明に好適に使用できるインクジェット記録装置の概念図の一例である。
【図2】図2は、半硬化状態の下塗り液層上に着色液を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図3】図3は、未硬化状態の下塗り液層上に着色液を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図4】図4は、未硬化状態の下塗り液層上に着色液を打滴して得られた印刷物の他の一実施態様を示す断面模式図である。
【図5】図5は、完全硬化状態の下塗り液層上に着色液を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図6】図6は、半硬化状態の着色液A上に着色液Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図7】図7は、未硬化状態の着色液A上に着色液Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図8】図8は、未硬化状態の着色液A上に着色液Bを打滴して得られた印刷物の他の一実施態様を示す断面模式図である。
【図9】図9は、完全硬化状態の着色液A上に着色液Bを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図10】図10は、実施例で形成した画像を示す概念模式図である。
【符号の説明】
【0198】
1 下塗り液体組成物を付与する手段
2 下塗り液体組成物を半硬化させる手段
3Y、3C、3M、4K 着色液体組成物を付与する手段
4Y、4C、4M、4K 着色液体組成物を半硬化させる手段
5 画像を完全に硬化させる手段
6 被記録媒体
7A、7B 被記録媒体搬送手段
10 画像
12 着色液硬化物
14 半硬化状態の下塗り液層に着色液を付与された下塗り層
16 基材
18 未硬化状態の下塗り液層に着色液を付与された下塗り層
20 完全硬化状態の下塗り液層に着色液を付与された下塗り層
22 着色液B硬化物
24 半硬化状態の着色液Aに着色液Bを付与されて得られた着色液A硬化物
26 未硬化状態の着色液Aに着色液Bを付与されて得られた着色液A硬化物
28 完全硬化状態の着色液Aに着色液Bを付与されて得られた着色液A硬化物
400 1次色で形成したベタ印画部
401 着色液を付与していない部分(下塗り液が表面に出ている)
402 3次色もしくは2次色のベタ印画部
403 着色液を付与していない部分(下塗り液が表面に出ている)
404 3次色もしくは2次色のベタ印画部
405 ブラック文字部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともラジカル重合性化合物、光重合開始剤、及び、着色剤を含有する着色液と、
少なくともラジカル重合性化合物及び光重合開始剤を含有する下塗り液とを少なくとも含み、
該下塗り液が下記式(I)で表される増感剤を含むことを特徴とする
インクジェット記録用インクセット。
【化1】

前記式(I)において、XはO、S、又は、NRを表す。nは0又は1を表す。Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立に水素原子、又は一価の置換基を表す。
【請求項2】
前記下塗り液が光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する請求項1に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項3】
前記着色液が前記式(I)で示される増感剤を含有する請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項4】
前記着色液が光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項5】
前記下塗り液が界面活性剤を含有する請求項1乃至4のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項6】
着色液の表面張力をγAとし、下塗り液の表面張力をγBとしたとき、γA>γBを満たす請求項1乃至5のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項7】
被記録媒体上に下塗り液を付与する工程と、
前記下塗り液を半硬化させる工程と、
半硬化された前記下塗り液上に着色液を吐出して画像形成を行う工程と、を含むことを特徴とする
請求項1乃至6のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセットを用いるインクジェット記録方法。
【請求項8】
異なる色相を有する着色液Aと着色液Bを用いて2次色を形成する場合に、
着色液Aを半硬化させる工程と、
半硬化された前記着色液A上に着色液Bを吐出する工程と、を含むことを特徴とする
請求項1乃至6のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセットを用いたインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記下塗り液を半硬化させる工程及び/又は着色液Aを半硬化させる工程が、紫外光照射工程である請求項7又は請求項8に記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記下塗り液を半硬化させる紫外光及び/又は着色液Aを半硬化させる紫外光が、少なくとも波長が340nm以上400nm以下の紫外光を含む請求項9に記載のインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−246832(P2008−246832A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90682(P2007−90682)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】