説明

インクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法

【課題】非吸収性の記録媒体を含む多種多様な記録媒体に対してシングルパス方式を用いた高速印刷が可能であるインクジェット記録用インクセット、及び、前記インクジェット記録用インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】インク組成物A及びインク組成物Bを有し、前記インク組成物Aは、エチレン性不飽和化合物、及び、ラジカル重合開始剤を含有し、前記インク組成物Bは、オキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物、並びに、カチオン重合開始剤を含有することを特徴とするインクジェット記録用インクセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク吐出口からインクを液滴で吐出するインクジェット方式は、小型で安価であり、被記録媒体に非接触で画像形成が可能である等の理由から多くのプリンタに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、及び熱エネルギーによるインクの沸騰現象を利用しインクを液滴吐出する熱インクジェット方式は、高解像度、高速印字性に優れるという特徴を有する。
【0003】
最近では、家庭用又はオフィス用の写真印刷や文書印刷にとどまらず、インクジェットプリンターを用いた商業用印刷機器や産業用印刷機器の開発が行われるようになってきた。従来の家庭用又はオフィス用のインクジェットインク及び記録方法に対して、商業用印刷機器や産業用印刷機器を目的としたインクジェットインク及び記録方法には、形成した画像の色再現性が広いこと、プラスチックなどの非浸透型の被記録媒体、及び、透明や金属光沢有する被記録媒体など多種多様な被記録媒体に印刷可能なことが強く要求されるようになってきた。すなわち、従来のインクジェット記録方法に対して、商業用や産業用の印刷に用いられるインクジェット記録方法としては、以下の3点が特に求められている。
第1に、非吸収性の記録媒体を含む多種多様な記録媒体に対して定着が可能であること、第2に、高速印刷が可能であること(特に、シングルパス方式によるインクジェット記録が可能であることが望まれる。)、第3に、高画質な画像(高精細、高濃度、高彩度、打滴干渉がない)の印刷が可能であること、である。
【0004】
上記課題を解決する方法として、これまでに様々な技術が提案されている。
高速印刷が可能なインクジェット記録方法として、ラジカル重合性化合物を含有したインクジェットインクを用いた記録方法(例えば特許文献1)、及び、カチオン重合性化合物を含有するインクジェットインクを用いた記録方法(例えば特許文献2)が開示されている。これらは、紫外線硬化によってインクを硬化定着させる紫外線硬化型インクジェット記録方法であり、従来の水性インクと溶剤インクを用いたインクジェット記録方法と比較して速乾性に優れており、高速印刷が可能となった。
最近では、ラジカル重合性組成物とカチオン重合性組成物を混合したインクジェット記録方法(特許文献3)や、カチオン重合性化合物とラジカル重合開始剤を含有するインク、及び、ラジカル重合性化合物とカチオン重合開始剤を含有するインクの2種類のインクを用いたインクジェット記録方法(特許文献4)も開示されている。
さらに、シングルパス方式を採用することよって、さらに印刷の高速化を図ったインクジェット記録方法として、異なる色相のインクを積層する場合、下層のインクを半硬化する技術が開示されている(特許文献5)。
【0005】
【特許文献1】特表2000−504778号公報
【特許文献2】特許第3893833号公報
【特許文献3】特開2006−8998号公報
【特許文献4】特開2007−238648号公報
【特許文献5】特開2008−23980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1から4に記載の方法では、紫外線硬化型インクを採用することにより、ある程度の印刷の高速化が可能になったが、シングルパス方式により印刷した場合、打滴干渉による画像の乱れ、精細性の悪化、彩度の低下などが発生するため、商業用、及び、産業用印刷に要求される印刷速度は見込めない。
特許文献5に記載の方法において、ラジカルインクのインクセットで積層した場合は、酸素重合阻害のために、表面の硬化には高強度の照射が必要である。また、イエローやブラックなど光吸収の高い着色剤を用いた場合は、下層の硬化不足が問題となることがある。一方、酸素重合阻害が起きないカチオンインクのインクセットで積層した場合は、下層のインクを半硬化することが難しく、彩度の低下、表面光沢の低下、及び、バンディングの発生が問題となる。
【0007】
本発明は、非吸収性の記録媒体を含む多種多様な記録媒体に対してシングルパス方式を用いた高速印刷が可能であるインクジェット記録用インクセット、及び、前記インクジェット記録用インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は下記の<1>及び<5>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<4>及び<6>〜<8>とともに以下に記載する。
<1> インク組成物A及びインク組成物Bを有し、前記インク組成物Aは、エチレン性不飽和化合物、及び、ラジカル重合開始剤を含有し、前記インク組成物Bは、オキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物、並びに、カチオン重合開始剤を含有することを特徴とするインクジェット記録用インクセット、
<2> インク組成物Aが着色剤を含有し、該着色剤がシアン着色剤、マゼンタ着色剤、及び、ホワイト着色剤よりなる群から選択された少なくとも1つの着色剤である、上記<1>に記載のインクジェット記録用インクセット、
<3> インク組成物Bが着色剤を含有し、該着色剤がブラック着色剤及び/又はイエロー着色剤である、上記<1>又は上記<2>に記載のインクジェット記録用インクセット、
<4> 下塗り液体組成物をさらに含む、上記<1>〜上記<3>いずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセット、
<5> 被記録媒体上にインク組成物Aを吐出する工程、前記インク組成物Aを半硬化する工程、及び、前記半硬化されたインク組成物A上にインク組成物Bを吐出する工程をこの順で有し、前記インク組成物Aは、エチレン性不飽和化合物、及び、ラジカル重合開始剤を含有し、前記インク組成物Bは、オキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物、並びに、カチオン重合開始剤を含有することを特徴とするインクジェット記録方法、
<6> 前記インク組成物Aを吐出する工程の前に、被記録媒体上に下塗り液体組成物を付与する工程を有する、上記<5>に記載のインクジェット記録方法、
<7> 前記インク組成物Aを吐出する工程の前に、被記録媒体上に下塗り液体組成物を付与する工程、及び、該下塗り液体組成物を半硬化させる工程をこの順で有する、上記<5>又は上記<6>に記載のインクジェット記録方法、
<8> インク組成物Aを半硬化する工程が、340〜400nmの範囲に発光ピークを有する紫外光を照射する工程である、上記<5>〜上記<7>いずれか1つに記載のインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非吸収性の記録媒体を含む多種多様な記録媒体に対してシングルパス方式を用いた高速印刷が可能であるインクジェット記録用インクセット、及び、前記インクジェット記録用インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録用インクセットは、インク組成物A及びインク組成物Bを有し、前記インク組成物Aは、エチレン性不飽和化合物、及び、ラジカル重合開始剤を含有し、前記インク組成物Bは、オキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物、並びに、カチオン重合開始剤を含有することを特徴とする。
上記のインクジェット記録用インクセットによって、非浸透性の記録媒体など多種多様な記録媒体に対して、定着性、色再現性、精細性に優れた印刷を高速に行うことが可能となる。
また、本発明のインクジェット記録方法は、被記録媒体上にインク組成物Aを吐出する工程、前記インク組成物Aを半硬化する工程、及び、前記半硬化されたインク組成物A上にインク組成物Bを吐出する工程をこの順で有し、前記インク組成物Aは、エチレン性不飽和化合物、及び、ラジカル重合開始剤を含有し、前記インク組成物Bは、オキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物、並びに、カチオン重合開始剤を含有することを特徴とする。
【0011】
本発明のインクジェット記録用インクセット(以下、単に「インクセット」ともいう。)は、上記インク組成物A及びインク組成物Bの、少なくとも2種のインク組成物から構成される。インク組成物A及びインク組成物Bは、着色剤を含有することが好ましく、異なる色相を有する複数のインク組成物A及び/又は複数のインク組成物Bから構成されるインクセットとすることもできる。なお、インク組成物AをインクAともいい、インク組成物BをインクBともいい、インク組成物A(インクA)及びインク組成物B(インクB)を総称して、インク組成物、及び/又はインクともいうこととする。
【0012】
本発明において、好ましいインクセットとしては、インク組成物Aが白色顔料を含有するホワイトインク組成物であり、組成物Bが白色以外の着色剤を含有するインク組成物(着色液体組成物)である。好ましいインクセットの具体例としては、インク組成物Aがホワイトインク組成物であり、インク組成物Bがシアンインク組成物、マゼンタインク組成物、イエローインク組成物、及び、ブラックインク組成物であるインクセットが好ましく用いることができる。
より好ましいインクジェット記録用インクセットとしては、インク組成物Aが白色顔料を含有するホワイトインク組成物、及び、ホワイト以外の着色剤を含有するインク組成物であり、インク組成物Bがインク組成物Aと色相の異なる着色剤を含有するインク組成物である。
特に好ましいインクセットの具体例としては、インク組成物Aがホワイトインク組成物、シアンインク組成物、及び、マゼンタインク組成物であり、インク組成物Bがイエローインク組成物、ブラックインク組成物であるインクセットが例示できる。
【0013】
また、本発明のインクジェット記録用インクセットは、インク組成物A及びインク組成物Bに加えて、下塗り液体組成物(以下、「下塗り液」ともいうこととする。)を含有することが好ましい。
以下、インク組成物A、インク組成物B及び下塗り液について詳述する。
【0014】
(インク組成物A)
本発明に好適に用いられるインクジェット記録用インクセットを構成するインク組成物Aは、少なくともエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)、及び、ラジカル重合開始剤を含有する。また、インク組成物Aは着色剤を含有することが好ましい。
インク組成物Aにおいて、エチレン性不飽和化合物は画像定着性の観点から、インク組成物Aへの添加濃度として、インク組成物Aの総重量に対して、40重量%以上98重量%以下であることが好ましく、50重量%以上95重量%以下であることがより好ましく、60重量%以上90重量%以下であることが特に好ましい。エチレン性不飽和化合物の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、粘度が適切であるので好ましい。
なお、本発明において、インク組成物Aがオキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物を含有することを排除するものではないが、インク組成物A中のオキセタン化合物及びオキシラン化合物の総量は、インク組成物Aの総重量に対して20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましく、含有しないことが最も好ましい。
【0015】
ラジカル重合開始剤の添加濃度としては、インク組成物Aの総重量に対して、0.1〜20.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜18.0重量%、さらに好ましくは1.0〜15.0重量%である。ラジカル重合開始剤の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、表面ベトツキ低減の観点から適切であるので好ましい。
着色剤は、該インク組成物Aへの添加濃度として、インク組成物Aの総重量に対して50重量%以下であることが好ましく、1重量%以上30重量%以下であることがより好ましく、2重量%以上20重量%以下であることが特に好ましい。着色剤の添加量が上記範囲内であると良好な画像濃度及び保存安定性が得られるので好ましい。
なお、2種以上のエチレン性不飽和化合物、ラジカル重合開始剤及び/又は着色剤を使用する場合には、それぞれの総量として上記範囲内とすることが好ましい。
【0016】
インク組成物Aは、室温で液体であればよいが、インクジェットによる打滴適正の観点から、25℃における粘度は100mPa・s以下又は60℃における粘度が30mPa・s以下であることが好ましく、25℃における粘度は60mPa・s以下又は60℃における粘度が20mPa・s以下であることがより好ましく、25℃における粘度は40mPa・s以下又は60℃における粘度が15mPa・s以下であることが特に好ましい。
同じく、インクジェットによる打滴適正の観点から、インク組成物Aの25℃における表面張力は18mN/m以上40mN/m以下が好ましく、20mN/m以上35mN/m以下がより好ましく、22mN/m以上32mN/m以下がさらに好ましい。
ここでの「粘度」は、東機産業(株)製のRE80型粘度計を用いて求めた粘度である。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い、10rpmの回転数にて測定を行う。但し、60mPa・sより高粘度なものについては、必要により回転数を5rpm、2.5rpm、1rpm、0.5rpm等に変化させて測定を行う。
また、ここで、前記表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定した値である。
【0017】
硬化性向上の観点から、インク組成物Aは下記式(I)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0018】
【化1】

【0019】
前記式(I)において、XはO、S、又は、NRを表す。nは0又は1の整数表す。Rはアルキル基、又はアシル基を表す。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及び、R8はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。R1、R2、R3、及び、R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。
【0020】
同じく硬化性向上の観点から、インク組成物Aは、アミン化合物、中でも、3級アミン化合物(3級アミン構造を有する化合物)を含有することが好ましい。
【0021】
(インク組成物B)
本発明に好適に用いられるインクジェット記録用インクセットを構成するインク組成物Bは、オキセタン環及び/又はオキシラン基を有するカチオン重合性化合物(オキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物)、並びに、カチオン重合開始剤を含有する。また、インク組成物Bは、着色剤を含有することが好ましい。
【0022】
オキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物は画像定着性の観点から、インク組成物Bへの添加濃度として、インク組成物Bの総重量に対して、40重量%以上98重量%以下であることが好ましく、50重量%以上95重量%以下であることがより好ましく、60重量%以上90重量%以下であることが特に好ましい。オキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、粘度が適切であるので好ましい。
また、インク組成物Bは、オキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物以外に、他の重合性化合物を含有していてもよいが、他の重合性化合物の含有量は、インク組成物Bの総重量に対して、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。特に、ビニルエーテル化合物を除くエチレン性不飽和化合物の含有量は10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、含有しないことがさらに好ましい。
【0023】
カチオン重合開始剤の添加濃度としては、インク組成物Bの総重量に対して、0.1〜20.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜18.0重量%、さらに好ましくは1.0〜15.0重量%である。カチオン重合開始剤の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、表面ベトツキ低減の観点から適切であるので好ましい。
着色剤は、該インク組成物Bへの添加濃度として、インク組成物Bの総重量に対して50重量%以下であることが好ましく、1重量%以上30重量%以下であることがより好ましく、2重量%以上20重量%以下であることが特に好ましい。着色剤の添加量が上記範囲内であると良好な画像濃度及び保存安定性が得られるので好ましい。
なお、2種以上のオキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物を使用する場合には、オキセタン化合物及びオキシラン化合物の総量として上記範囲内とすることが好ましい。また、2種以上のカチオン重合開始剤、着色剤を使用する場合には、それぞれの総量として上記範囲内とすることが好ましい。
【0024】
インク組成物Bは、室温で液体であればよいが、インクジェットによる打滴適正の観点から、25℃における粘度は100mPa・s以下又は60℃における粘度が30mPa・s以下であることが好ましく、25℃における粘度は60mPa・s以下又は60℃における粘度が20mPa・s以下であることがより好ましく、25℃における粘度は40mPa・s以下又は60℃における粘度が15mPa・s以下であることが特に好ましい。
同じく、インクジェットによる打滴適正の観点から、インク組成物Bの25℃における表面張力は18mN/m以上40mN/m以下が好ましく、20mN/m以上35mN/m以下がより好ましく、22mN/m以上32mN/m以下がさらに好ましい。
なお、前記粘度及び表面張力は、インク組成物Aと同様の方法にて測定することができる。
【0025】
(下塗り液体組成物)
本発明に好適に用いられる下塗り液体組成物(下塗り液)としては、少なくともエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)、及び、重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤はラジカル重合開始剤であることが好ましい。
エチレン性不飽和化合物は画像定着性の観点から、該下塗り液への添加濃度として、下塗り液の総重量に対して、40重量%以上98重量%以下であることが好ましく、50重量%以上95重量%以下であることがより好ましく、60重量%以上90重量%以下であることが特に好ましい。エチレン性不飽和化合物の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、粘度が適切であるので好ましい。
重合開始剤の添加濃度としては、下塗り液の総重量に対して、0.1〜20.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜18.0重量%、さらに好ましくは1.0〜15.0重量%である。重合開始剤の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、表面ベトツキ低減の観点から適切であるので好ましい。
【0026】
本発明において、下塗り液は白色顔料を有するか、又は、着色剤を実質的に含有しないことが好ましい。
なお、前記「着色剤を実質的に含有しない」とは、無色透明の染料・顔料の含有や、視認できない程度のごく微量の含有をも除外するものではない。その許容量としては、下塗り液体組成物全重量に対して1重量%以下であることが好ましく、含有しないことが特に好ましい。
また、下塗り液が白色顔料を含有する場合、白色顔料の添加量は、下塗り液体組成物の総重量に対して、5〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは6.5〜30重量%であり、さらに好ましくは8〜20重量%である。
【0027】
被記録媒体上に均一に塗設する観点から、下塗り液の25℃における粘度は1,000mPa・s以下又は60℃における粘度が300mPa・s以下であることが好ましく、25℃における粘度は600mPa・s以下又は60℃における粘度が200mPa・s以下であることがより好ましく、25℃における粘度は400mPa・s以下又は60℃における粘度が150mPa・s以下であることが特に好ましい。
同じく、被記録媒体上に均一に塗設する観点から、下塗り液の25℃における表面張力は16mN/m以上38mN/m以下が好ましく、18mN/m以上33mN/m以下がより好ましく、20mN/m以上30mN/m以下がさらに好ましい。
【0028】
以下、インク組成物A、インク組成物B、及び、下塗り液体組成物に使用される各種成分について説明する。
【0029】
<エチレン性不飽和化合物>
本発明において、インク組成物Aはエチレン性不飽和化合物を含有する。また、下塗り液体組成物はエチレン性不飽和化合物を含有することが好ましい。
エチレン性不飽和化合物は、分子内にエチレン性不飽和結合を有する化合物である。具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド化合物、ビニル化合物(例えば、脂肪族ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、N−ビニル化合物)が例示できる。
これらの中でもエチレン性不飽和化合物としては、各種(メタ)アクリレートモノマーが好ましく使用できる。
例えば、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソアミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイキシエチルコハク酸、2−アクリロイキシエチルフタル酸、2−アクリロイキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ラクトン変性可とう性アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート等の単官能モノマーが挙げられる。
【0030】
また、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能モノマーが挙げられる。
【0031】
この他、重合性のオリゴマー類も、モノマー同様に配合可能である。重合性オリゴマーとしては、エポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、直鎖アクリルオリゴマー等が挙げられる。
【0032】
本発明において、ラジカル重合性化合物として、環状構造を有するラジカル重合性モノマーを使用することが好ましく、環状構造を有するラジカル重合性モノマーとして、脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマー及び/又は芳香族単官能ラジカル重合性モノマーを使用することが好ましい。
脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマー及び芳香族単官能ラジカル重合性モノマーは、以下の式(A1)で表される単官能ラジカル重合性モノマーであることが好ましい。なお、脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマーとは、ヘテロ原子を含んでもよい脂環式炭化水素基を有する単官能ラジカル重合性モノマーであり、芳香族単官能ラジカル重合性モノマーとは、芳香族基を有する単官能ラジカル重合性モノマーである。また、単官能ラジカル重合性モノマーは、重合性のあるエチレン性不飽和結合を1つのみ有する化合物であり、重合性のあるエチレン性不飽和結合を有する基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基が好ましく例示できる。
なお、脂肪族環状構造を有するラジカル重合性モノマーは、脂肪族環状構造の他にラジカル重合性基を有しており、脂肪族環状構造内に有するエチレン性不飽和結合は、重合性のあるエチレン性不飽和結合に該当しない。
【0033】
【化2】

【0034】
上記式(A1)において、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は、単結合、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(O)O−若しくはOC(O)−)、アミド結合(―C(O)NH−若しくは−NHC(O)−)、カルボニル結合(−C(O)―)、分岐を有していてもよい炭素数20以下のアルキレン基、又はこれらを組み合わせた第2の2価の連結基が結合してもよく、第1の2価の連結基のみ又は第2の2価の連結基を有する場合はエーテル結合、エステル結合及び炭素数20以下のアルキレン基を有するものが好ましい。
2は単環芳香族基及び多環芳香族基を含む芳香族基又は脂環式炭化水素基であり、前記芳香族基及び脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、シロキサン基、炭素数30以下の置換基を有していてもよく、前記芳香族基又は脂環炭化水素基の環状構造には、O、N、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0035】
上記式(A1)において、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
また、X1はエステル結合(−C(O)O−)を有するものであることが好ましい。
すなわち、本発明において、脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマー及び芳香族単官能ラジカル重合性モノマーは、アクリレート(アクリル酸エステル)又はメタクリレート(メタクリル酸エステル)であることが好ましい。
【0036】
これらの脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマー及び芳香族単官能ラジカル重合性モノマーの含有量は、下塗り液体組成物の10〜70重量%であることが好ましく、より好ましくは15〜60重量%であり、さらに好ましくは20〜50重量%である。また、インク組成物Aの10〜70重量%であることが好ましく、15〜60重量%であることがより好ましく、20〜50重量%であることがさらに好ましい。含有量が上記範囲内であると、良好な硬化性及び硬化膜の柔軟性を得ることができるので好ましい。なお、脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマーと、芳香族単官能ラジカル重合性モノマーとを併用することもできるし、いずれか一方のみを用いることも好ましい。
【0037】
〔脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマー〕
式(A1)のR2は脂環式炭化水素基でもよい。また、O、N、Sなどのヘテロ原子を含む脂環式炭化水素基を有する基でもよい。
脂環式炭化水素基は、炭素数3〜12のシクロアルカン類を有する基でもよい。
上記O、N、Sなどのヘテロ原子を含む脂環式炭化水素基は、具体的には、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、イソオキサゾリジン、イソチアゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン、チオモルフォリン、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾールから1つ以上の水素を除いた基が例示できる。
これらの脂環式炭化水素基及びヘテロ環を有する脂環式炭化水素基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、シロキサン基、さらに置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくはO、N、S等のヘテロ原子を含む複素環基、又は、2価の置換基としてオキシ基(=O)であることが好ましい。
【0038】
脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマーは、下記式(A2)で表されるノルボルネン骨格を有する化合物であることがより好ましい。
【0039】
【化3】

【0040】
式(A2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は2価の連結基を表し、エーテル基(−O−)、エステル基(−C(O)O−若しくは−OC(O)−)、アミド基(−C(O)NR’−)、カルボニル基(−C(O)−)、窒素原子(−NR’−)、置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルキレン基、又は、これらを2以上組み合わせた2価の基であることが好ましい。なお、R’は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表す。R2は置換基を表し、rは0〜5の整数を表し、qは環状炭化水素構造を表し、前記環状炭化水素構造として炭化水素結合以外にカルボニル結合(−C(O)−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)を含んでいてもよく、r個存在するR2はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよく、また、ノルボルネン骨格中の一炭素原子をエーテル結合(−O−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)で置換してもよい。
式(A2)中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0041】
式(A2)におけるX1のビニル基と結合する端部は、X1のカルボニル炭素とビニル基とが結合するエステル基又はアミド基であることが好ましく、より好ましくはエステル結合である。特に、H2C=C(R1)−C(O)O−の構造を有するものであることが好ましい。その場合、ノルボルネン骨格と結合するX1の他の部分は、単結合であっても、前記の基から任意に選択したものであってもよい。
1及びX1を含むビニル部分(H2C=C(R1)−X1−)は、脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。なお、「各脂環式炭化水素構造上」とは、式(A2)におけるノルボルネン構造上及びqを含む環状炭化水素構造上を指す。
また、着色剤との親和性を向上させるという観点から、式(A2)におけるX1の脂環式炭化水素構造と結合する端部は、酸素原子であることが好ましく、エーテル性酸素原子であることがより好ましく、式(A2)におけるX1は−C(O)O(CH2CH2O)p−(pは1又は2を表す。)であることがさらに好ましい。
【0042】
式(A2)におけるR2はそれぞれ独立に置換基を表し、脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。また、r個存在するR2はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
r個存在するR2は、それぞれ独立に1価又は多価の置換基であってもよく、1価の置換基として水素原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、さらに置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基、又は、2価の置換基としてオキシ基(=O)であることが好ましい。
2の置換数rは0〜5の整数を表す。
【0043】
式(A2)におけるqは、環状炭化水素構造を表し、その両端はノルボルネン骨格の任意の位置で置換していてもよく、単環構造であっても、多環構造であってもよく、また、前記環状炭化水素構造として炭化水素結合以外に、カルボニル結合(−C(O)−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)を含んでいてもよい。
【0044】
前記式(A2)で表されるモノマーとしては、式(A3)又は式(A4)で表されるモノマーであることが好ましい。なお、式(A4)中の環状炭化水素構造中の不飽和結合は、ラジカル重合性が低く、本発明において、式(A4)で表される化合物は単官能ラジカル重合性モノマーである。
【0045】
【化4】

【0046】
式(A3)及び式(A4)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は2価の連結基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立に置換基を表し、s及びtはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、また、s個存在するR3及びt個存在するR4はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0047】
式(A3)又は式(A4)におけるR1及びX1は、式(A2)におけるR1及びX1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(A3)又は式(A4)におけるR1及びX1を含むビニル部分は、式(A3)又は式(A4)における下記に示す各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。
【0048】
【化5】

【0049】
式(A3)又は式(A4)におけるR3及びR4はそれぞれ独立に置換基を表し、式(A3)又は式(A4)における上記各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。R3及びR4における置換基は、式(A2)のR2における置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(A3)又は式(A4)におけるs及びtはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、また、s個存在するR3及びt個存在するR4はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0050】
式(A2)で表されるモノマーとして、単官能アクリレートの好ましい具体例を以下に示す。
なお、下記例示化合物の一部において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する。
【0051】
【化6】

【0052】
式(A2)で表されるモノマーとして、単官能メタクリレートの好ましい具体例を以下に示す。
【0053】
【化7】

【0054】
式(A2)で表されるモノマーとして、単官能アクリルアミドの好ましい具体例を以下に示す。
【0055】
【化8】

【0056】
〔芳香族単官能ラジカル重合性モノマー〕
芳香族単官能ラジカル重合性モノマーは、以下の式(A5)で表される重合性モノマーであることが好ましい。
【0057】
【化9】

【0058】
(式(A5)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は2価の連結基を表し、R6は置換基を表し、uは0〜5の整数を表し、また、u個存在するR5はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよく、複数のR5がお互いに結合して環を形成してもよく、その環は芳香環であってもよい。)
【0059】
式(A5)中、R1として好ましくは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
1は式(A2)におけるX1と同義であり、その好ましい範囲も同じである。
u個存在するR5は、それぞれ独立に1価又は多価の置換基であってもよく、1価の置換基として水素原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、又は、さらに置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基であることが好ましい。
【0060】
式(A5)中、複数のR5は、お互いに結合して環を形成している場合には、芳香環を形成していることが好ましい。
すなわち、式(A5)中、芳香族基として好ましいものは、単環芳香族であるベンゼンから1つ以上の水素を除いた基(フェニル基、フェニレン基等)のほか、2〜4つの環を有する多環芳香族基であり、限定されるものではない。具体的には、ナフタレン、アントラセン、1H−インデン、9H−フルオレン、1H−フェナレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、テトラフェニレン、ビフェニレン、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、クリセン、プレイアンデン等から1つ以上の水素原子を除いた基が例示できる。
【0061】
これらの芳香族基は、O、N、S等のヘテロ原子を含む芳香族複素環基であってもよい。具体的には、フラン、チオフェン、1H−ピロール、2H−ピロール、1H−ピラゾール、1H−イミダゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、2H−ピラン、2H−チオピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール等の単環芳香族複素環化合物から、少なくとも1つの水素原子を除いた基が挙げられる。
【0062】
また、チアントレン、イソベンゾフラン、イソクロメン、4H−クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、β−カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピロリジン、等の多環芳香族複素環化合物から、少なくとも1つの水素原子を除いた基が挙げられる。
【0063】
上記の芳香族基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、シロキサン基、炭素数30以下の置換基を1又は2以上有していてもよい。例えば無水フタル酸や無水フタルイミドのように芳香族基が有する2以上の置換基でO、N、S等のヘテロ原子を含む環状構造を形成してもよい。
【0064】
本発明において、多環芳香族基としてさらに好ましいものは、2〜3つの環を有する多環芳香族基であり、特に好ましいものは、ナフチル基である。
【0065】
芳香族単官能ラジカル重合性モノマーの具体例として[L−1]〜[L−71]が好ましく挙げられるが、下記に限定されたものではない。
【0066】
【化10】

【0067】
【化11】

【0068】
【化12】

【0069】
【化13】

【0070】
【化14】

【0071】
【化15】

【0072】
【化16】

【0073】
<オキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物>
本発明に用いることができるカチオン重合性化合物は、光酸発生剤から発生する酸により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているオキシラン化合物(以下、「エポキシ化合物」ともいう。)、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
本発明において、インク組成物Bはオキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物を含有し、さらに、ビニルエーテル化合物を併用することもできる。
【0074】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、脂肪族エポキシドなどが挙げられ、芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0075】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0076】
本発明に用いることのできる単官能及び多官能のエポキシ化合物を詳しく例示する。
単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0077】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0078】
これらのエポキシ化合物の中でも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0079】
本発明に使用できるオキセタン化合物は、少なくとも1つのオキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
本発明の硬化性組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、硬化性組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後の硬化性組成物の被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0080】
分子内に1〜2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(1)〜(3)で示される化合物等が挙げられる。
【0081】
【化17】

【0082】
a1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基を表す。分子内に2つのRa1が存在する場合、それらは同じであっても異なるものであってもよい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、フルオロアルキル基としては、これらアルキル基の水素のいずれかがフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
a2は、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数2〜6個のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられ、芳香環を有する基としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。アルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が、アルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が、N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。また、Ra2は置換基を有していてもよく、置換基としては、1〜6のアルキル基、フッ素原子が挙げられる。
【0083】
a3は、線状又は分枝状アルキレン基、線状又は分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、線状又は分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基又はカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基、又は、以下に示す基を表す。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、ポリ(アルキレンオキシ)基としては、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
【0084】
【化18】

【0085】
a3が上記多価基である場合、Ra4は、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基を表す。
a5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF32、又は、C(CH32を表す。
a6は、炭素数1〜4個のアルキル基、又は、アリール基を表し、nは0〜2,000の整数である。Ra7は炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する1価の基を表す。下記式中、Ra8は炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基であり、mは0〜100の整数である。
【0086】
【化19】

【0087】
式(1)で表される化合物として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(OXT−212:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製)が挙げられる。式(2)で表される化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(OXT−121:東亞合成(株)製)が挙げられる。また、式(3)で表される化合物としては、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221:東亞合成(株)製)が挙げられる。
【0088】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0089】
【化20】

【0090】
式(4)において、Ra1は、前記式(1)におけるのと同義である。また、他か連結基であるRa9としては、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
【0091】
【化21】

【0092】
上記Aにおいて、Ra10はメチル基、エチル基又はプロピル基を表す。また、上記Dにおいて、pは1〜10の整数である。
【0093】
また、本発明に好適に用いることのできるオキセタン化合物の別の態様として、側鎖にオキセタン環を有する下記式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0094】
【化22】

【0095】
式(5)において、Ra1及びRa8は前記式におけるのと同義である。Ra11はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0096】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217号公報、段落番号0021乃至0084に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に用いることができる。
特開2004−91556号公報に記載されたオキセタン化合物も本発明に使用することができる。段落番号0022乃至0058に詳細に記載されている。
本発明で使用するオキセタン化合物の中でも、硬化性組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。
【0097】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0098】
以下に、単官能ビニルエーテルと多官能ビニルエーテルを詳しく例示する。
単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0099】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0100】
本発明に用いることのできるカチオン重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、硬化性組成物硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、オキセタン化合物とオキシラン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、ビニルエーテル化合物とを併用することが好ましい。
【0101】
(重合開始剤)
インク組成物A、インク組成物B及び下塗り液体組成物は、重合開始剤を含有する。重合開始剤としては、光重合開始剤及び熱重合開始剤が例示できるが、本発明において、半硬化する工程及び完全硬化する工程において放射線(好ましくは紫外線)を照射することが好ましいことから、重合開始剤は光重合開始剤であることが好ましい。なお、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用することもできる。
インク組成物A、及び、下塗り液体組成物が含有する光重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。本発明に用いることができる光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、インク組成物Bが含有する光重合開始剤としては、公知のカチオン重合開始剤を使用することができる。本発明に用いることができる光重合開始剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用することもできる。
【0102】
本発明に用いることのできる光重合開始剤は、活性放射線の照射により重合開始種を生成する化合物である。活性放射線としては、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できるが、装置コストや操作上の安全性の観点から、紫外線又は可視光線が好ましい。
具体的な光重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Review, 93, 435 (1993)や、R. S. Davidson著、Journal of Photochemistry and Biology A: Chemistry, 73. 81(1993)や、J. P. Faussier, Photoinitiated Polymerization-Theory and Applications: Rapra Review vol.9, Report, Rapra Technology (1998) や、M. Tsunooka et al., Prog. Polym. Sci., 21, 1 (1996) に多く記載されている。また、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)(187〜192ページ参照)に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く記載されている。さらには、F. D. Saeva, Topics in Current Chemistry, 156, 59 (1990)、G. G. Maslak, Topics in Current Chemistry, 168, 1 (1993)、H. B. Shuster et al, JACS, 112, 6329 (1990)、I. D. F. Eaton et al, JACS, 102, 3298(1980) 等に記載されているような、増感剤の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的若しくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0103】
<ラジカル重合開始剤>
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、及び(l)アミン化合物、等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、上記(a)〜(l)の化合物を単独若しくは組み合わせて使用してもよい。本発明におけるラジカル重合開始剤は単独若しくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
【0104】
(a)芳香族ケトン類
芳香族ケトン類としては、ベンゾフェノン化合物、チオキサントン化合物、アルキルフェノンが例示できる。また、アルキルフェノン化合物としては、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物及び、α−アミノアセトフェノン化合物が例示できる。
芳香族ケトン類の好ましい例としては、RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY, J. P. FOUASSIER and J. F. RABEK, pp.77〜117 (1993) 記載のベンゾフェノン骨格を有する化合物(ベンゾフェノン化合物)又はチオキサントン骨格を有する化合物(チオキサントン化合物)等が挙げられる。好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。
【0105】
〔ベンゾフェノン化合物〕
ベンゾフェノン化合物としては、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタロフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルフェニルスルフィド等が例示できる。ベンゾフェノン化合物としては、ジアミノベンゾフェノン化合物を用いることも好ましい。ジアミノベンゾフェノン化合物としては、p,p'−テトラメチルジアミノベンゾフェノンが例示できる。
【0106】
〔チオキサントン化合物〕
また、チオキサントン化合物としては、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が例示できる。
【0107】
〔α−ヒドロキシアセトフェノン化合物〕
本発明において、芳香族ケトン化合物として、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物を使用することが好ましく、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物は、下記式(6)で表される化合物であることが好ましい。
【0108】
【化23】

【0109】
式(6)中、R1は水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、又は、炭素数1以上10以下のアルコキシ基を表す。R2、R3は互いに独立して、水素原子、又は、炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。また、R2とR3は結合して炭素数4以上8以下の環を形成していてもよい。
上記アルキル基、アルコキシ基、アルキル基及び炭素数4以上8以下の環は、置換基を有していてもよく、置換基としては式(2)で挙げた置換基を例示できる。
【0110】
α−ヒドロキシアセトフェノン類としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(DAROCURE 1173)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルブタン−1−オン、1−(4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−オクチルフェニル)プロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−メチルチオフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブロモフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ジメチルアミノフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−カルボエトキシフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRGACURE 2959)などが挙げられる。
また、市販のα−ヒドロキシアセトフェノン化合物として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製からイルガキュア184(IRGACURE 184)、ダロキュア1173(DARUCUR 1173)、イルガキュア127(IRGACURE 127)、イルガキュア2959(IRGACURE 2959)の商品名で入手可能な重合開始剤も使用することができる。
【0111】
〔α−アミノアセトフェノン化合物〕
α−アミノアセトフェノン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を使用することもできる。該α−アミノアセトフェノン化合物としては下記の式(1)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【0112】
【化24】

【0113】
式中X1は下記(a)、(b)又は(c)で表される基を表す。
【0114】
【化25】

式中pは0又は1である。
【0115】
【化26】

式中qは0から3の整数であり、rは0又は1である。
【0116】
【化27】

【0117】
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子、OH基、炭素数1以上12以下のアルキル基(なお、特に断りのない場合、アルキル基とは直鎖状又は分岐状のアルキル基を意味する。以下、同じ。)、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、芳香環基、又は、複素環基を表す。前記芳香環基としては、フェニル基、又は、ナフチル基が好ましく例示できる。また、前記複素環基としては、フリル基、チエニル基、又は、ピリジル基が好ましく例示できる。
Yにおけるアルキル基、アルコキシ基、芳香環基、及び、複素環基は置換基を有していてもよい。
Yにおけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、OH基、ハロゲン原子、−N(X102(X10は水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基、若しくはフェニル基を表す。)、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、−COOR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。)、−CO(OCH2OCH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)、又は、−OCOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。
Yにおけるアルコキシ基が有していてもよい置換基としては、−COOR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。)、又は、−CO(OCH2CH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)が挙げられる。
Yにおける芳香環基又は複素環基が有していてもよい置換基としては、−(OCH2CH2nOH(nは1以上20以下の整数を表す。)、−(OCH2CH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)、炭素数1以上8以下のアルキルチオ基、フェノキシ基、−COOR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。)、−CO(OCH2CH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)、フェニル基、又は、ベンジル基が挙げられる。
これら置換基は、可能であれば2以上有していてもよく、可能であれば、置換基をさらに置換していてもよい。
また、式中、X12は水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、又は、フェニル基を表す。X13、X14及びX15は互いに独立して水素原子、又は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。X13とX14とは架橋して炭素数3以上7以下のアルキレン基を形成してもよい。
【0118】
式中X2は前記X1と同じ基、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、フェニル基を表す。
2におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
2におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、又は、フェニル基が挙げられる。
2におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。
これら置換基は、可能であれば2以上有していてもよく、可能であれば、置換基をさらに置換していてもよい。
また、式中X1とX2とは架橋して次式で表される基を形成してもよい。
【0119】
【化28】

【0120】
式中X3は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基、又は、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基を表す。
3におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及び、フェニルアルキル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、−CN、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。
式中X4は炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、又は、フェニル基を表す。
4におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、フェニルアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
4におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及び、フェニルアルキル基が有していてもよい置換基としては、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシル基、−CN、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。また、X4におけるアルキル基が置換基を有する場合、置換されるアルキル基の炭素数は2以上4以下であることが好ましい。
4におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。
ここで、X2とX4とは架橋して炭素数1以上7以下のアルキレン基、炭素数7以上10以下のフェニルアルキレン基、o−キシリレン基、2−ブテニレン基、又は、炭素数2若しくは3のオキサ−若しくはアザ−アルキレン基を形成してもよい。
また、X3とX4とは架橋して炭素数3以上7以下のアルキレン基を形成してもよい。
3とX4とが架橋して形成するアルキレン基は、置換基として、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキルを表す。)を有していてもよく、また、結合中に−O−、−S−、−CO−、又は、−N(X16)−(X16は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、結合鎖中に1若しくは2以上の−O−、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基、−CH2CH2CN、−CH2CH2COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)、炭素数2以上8以下のアルカノイル基若しくはベンゾイル基を介在させた炭素数1以上12以下のアルキル基を表す。)を介在させてもよい。
式中X5、X6、X7、X8、X9は互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、−OX17基、−SX18基、−SO−X18基、−SO2−X18基、−N(X19)(X20)基、−NH−SO2−X21基、又は、次式で表される基を表す。
【0121】
【化29】

【0122】
式中、Zは−O−、−S−、−N(X10)−X11−N(X10)−又は次式で表される基を表す。X1、X2、X3及びX4は前記式(1)と同義である。
【0123】
【化30】

【0124】
式中X10は前記と同じ、X11は炭素数が2以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又はこれらの鎖中に1以上の−O−、−S−、若しくは−N(X10)−が介在する炭素数が2以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基(X10は前記と同じ)を表す。
17は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、−(CH2CH2O)nH(nは2以上20以下の整数)、炭素数2以上8以下のアルカノイル基、炭素数3以上12以下のアルケニル基、シクロヘキシル基、ヒドロシクロヘキシル基、フェニル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、又は、−Si(R4r(R53-r(R4は炭素数1以上8以下のアルキル基、R5はフェニル基、rは1、2若しくは3)を表す。
17におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
17におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、−CN、−OH、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数3以上6以下のアルケニルオキシ基、−OCH2CH2CN、−CH2CH2COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)、−COOH、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。また、X17におけるアルキル基が置換基を有する場合、置換されるアルキル基の炭素数は1以上6以下であることが好ましい。
17におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。
18は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上12以下のアルケニル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基を表す。
18におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
18におけるアルキル基が有していてもよい置換基は、−SH、−OH、−CN、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、−OCH2CH2CN、又は、−OCH2CH2COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキルを表す。)が挙げられる。
18におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。
19及びX20は互いに独立して水素原子;炭素数1以上12以下のアルキル基;炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキル基;炭素数2以上10以下のアルコキシアルキル基;炭素数3以上5以下のアルケニル基;炭素数5以上12以下のシクロアルキル基;炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基;フェニル基;ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基により置換されたフェニル基;又は炭素数2若しくは3のアルカノイル基;又はベンゾイル基を表す。また、X19とX20とは架橋して炭素数2以上8以下のアルキレン基、又は、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基若しくは−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル)基により置換された炭素数2以上8以下のアルキレン基;結合鎖中に−O−、−S−若しくは−N(X16)−を介在させた炭素数2以上8以下のアルキレン基(X16は前記と同じ)を形成してもよい。
21は炭素数1以上18以下のアルキル基;フェニル基;ナフチル基;又は、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基若しくは炭素数1以上8以下のアルコキシ基によって置換されたフェニル基若しくはナフチル基を表す。
【0125】
式(1)は式(d)で表されることがより好ましい。
【0126】
【化31】

【0127】
式(d)中、X1及びX2はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、又は、ベンジル基を表し、−NX34はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基又は、モルフォリノ基を表し、X5は、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、炭素数1以上8以下のアルキルチオ基、ジメチルアミノ基、又は、モルフォリノ基を表す。これらの中でも−NX34はジメチルアミノ基、又は、モルフォリノ基であることがより好ましい。
【0128】
さらに、α−アミノアセトフェノン化合物として、上記式(1)で表される化合物の酸付加物塩を使用することもできる。
また、市販のα−アミノアセトフェノン化合物として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製からイルガキュア907(IRGACURE 907)、イルガキュア369(IRGACURE 369)、イルガキュア379(IRGACURE 379)の商品名で入手可能な重合開始剤が例示できる。
【0129】
α−アミノアセトフェノン化合物として、具体的には、以下の化合物が例示できる。
例えば、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジエチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−エチルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ジメチルアミノ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(IRGACURE 369)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−ジメチルアミノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォルニル)フェニル]−1−ブタノン(IRGACURE 379)などが挙げられる。
【0130】
(b)アシルホスフィン化合物
アシルホスフィン化合物としては、下記式(2)又は下記式(3)で表されるアシルホスフィンオキサイド化合物であることが好ましい。
【0131】
【化32】

【0132】
前記式(2)中のR1及びR2は、それぞれ独立に脂肪族基、芳香族基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、複素環基を表し、R3は、脂肪族基、芳香族基、複素環基を表す。前記R1とR2は結合して5員環乃至9員環を形成してもよい。前記環構造は、環構造中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環であってもよい。
前記R1、R2又はR3で表される脂肪族基は、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基等が挙げられ、中でも、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基が好ましく、アルキル基、置換アルキル基が特に好ましい。また、前記脂肪族基は、環状脂肪族基でも鎖状脂肪族基でもよい。鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。
前記アルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基が挙げられ、該アルキル基の炭素原子数としては、1以上30以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。置換アルキル基のアルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲については、アルキル基の場合と同様である。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ネオペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。
前記置換アルキル基の置換基としては、−COOH(カルボキシル基)、−SO3H(スルホ基)、−CN(シアノ基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、−OH(ヒドロキシ基)、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、メチルチオエチルチオエチル基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)、置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、複素環基等が挙げられる。ここで、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、ホスホノ基は、塩の状態であってもよい。その際、塩を形成するカチオンは、陽イオンを形成し得る基であり、有機カチオン性化合物、遷移金属配位錯体カチオン(特許2791143号公報に記載の化合物等)又は金属カチオン(例えば、Na+、K+、Li+、Ag+、Fe2+、Fe3+、Cu+、Cu2+、Zn2+、Al3+等)が好ましい。
【0133】
前記アルケニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルケニル基が挙げられ、該アルケニル基の炭素原子数としては、2以上30以下が好ましく、2以上20以下がより好ましい。また、該アルケニル基は、置換基を有する置換アルケニル基、無置換のアルケニル基のいずれであってもよく、置換アルケニル基のアルケニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルケニル基の場合と同様である。前記置換アルケニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
前記アルキニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキニル基が挙げられ、該アルキニル基の炭素原子数としては、2以上30以下が好ましく、2以上20以下がより好ましい。また、該アルキニル基は、置換基を有する置換アルキニル基、無置換のアルキニル基のいずれであってもよく、置換アルキニル基のアルキニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルキニル基の場合と同様である。置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
前記アラルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル側鎖を有するアラルキル基が挙げられ、該アラルキル基の炭素原子数としては、7以上35以下が好ましく、7以上25以下がより好ましい。また、該アラルキル基は、置換基を有する置換アラルキル基、無置換のアラルキル基のいずれであってもよく、置換アラルキル基のアラルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアラルキル基の場合と同様である。置換アラルキル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。また、アラルキル基のアリール部分が置換基を有していてもよく、該置換基としては前記アルキル基の場合と同様の置換基及び炭素数30以下の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が例示できる。
【0134】
前記R1、R2又はR3で表される芳香族基としては、例えば、アリール基、置換アリール基が挙げられる。アリール基の炭素原子数としては、6以上30以下が好ましく、6以上20以下がより好ましい。置換アリール基のアリール部分の好ましい炭素原子数の範囲としては、アリール基と同様である。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等が挙げられる。置換アリール基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基及び炭素数30以下の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられる。
前記R1又はR2で表される脂肪族オキシ基としては、炭素数1以上30以下のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、フェノキシエトキシ基等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
前記R1又はR2で表される芳香族オキシ基としては、炭素数6以上30以下のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基、メチルフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、オクチルオキシフェニルオキシ基等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
前記R1、R2又はR3で表される複素環基としては、N、O又はS原子を含む複素環基が好ましく、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピロリル基等が挙げられる。
【0135】
【化33】

【0136】
前記式(3)中のR4及びR6は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、複素環基を表し、R5は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基を表す。
前記R4、R5又はR6で表される、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記式(2)における場合と同様の置換基が挙げられる。
前記式(3)におけるアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基としては、前記式(2)における場合と同義である。
【0137】
前記式(2)で表される化合物は、下記式(4)で表される化合物であることがより好ましい。
【0138】
【化34】

【0139】
式(4)中、R7及びR8はそれぞれ独立に、フェニル基、メトキシ基、又は、イソプロポキシ基を表し、R9は2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2−メチルフェニル基(o−トルイル基)、イソブチル基、又は、t−ブチル基を表す。
【0140】
前記式(3)で表される化合物は、下記式(5)で表される化合物であることがより好ましい。
【0141】
【化35】

【0142】
式(5)中、R10及びR12はそれぞれ独立に、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、又は、2,6−ジメトキシフェニル基を表し、R11はフェニル基、又は、2,4,4−トリメチルペンチル基を表す。
【0143】
前記式(2)又は(3)で表されるアシルホスフィン化合物としては、例えば、特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報等に記載の化合物を挙げることできる。
具体的なアシルホスフィン化合物の例としては、以下に示す化合物(例示化合物(P−1)乃至(P−26))が挙げられるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0144】
【化36】

【0145】
【化37】

【0146】
アシルホスフィン化合物としては、モノアシルホスフィンオキサイド化合物及びビスアシルホスフィンオキサイド化合物等を使用することができ、モノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、公知のモノアシルホスフィンオキサイド化合物を使用することができる。例えば特公昭60−8047号公報、特公昭63−40799号公報に記載のモノアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。具体例としては、イソブチリル−メチルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、2−エチルヘキサノイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、p−トルイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、o−トルイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4−ジメチルベンゾイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、p−三級ブチルベンゾイル−フェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、アクリロイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−エチルヘキサノイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、o−トルイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、p−三級ブチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、3−ピリジルカルボニル−ジフェニルホスフィンオキサイド、アクリロイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイル−フェニルホスフィン酸ビニルエステル、アジポイル−ビス−ジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、p−トルイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、4−(三級ブチル)−ベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−2−エチルヘキサノイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチル−シクロヘキサノイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル及びピバロイル−フェニルホスフィン酸イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0147】
ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては公知のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が使用できる。例えば特開平3−101686号、特開平5−345790号、特開平6−298818号の各公報に記載のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。具体例としては、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−クロルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−デシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−クロル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0148】
これらの中でも、本発明において、アシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(DAROCUR TPO:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、LUCIRIN TPO:BASF社製)などが好ましい。
【0149】
(c)芳香族オニウム塩化合物
芳香族オニウム塩化合物としては、周期律表の15、16及び17族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、又はIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、及び同422570号の各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、及び同2833827号の各明細書に記載されるジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、及び特公昭46−42363号の各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウムテトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号、及び同52−14279号の各公報記載の化合物が好適に使用される。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0150】
(d)有機過酸化物
有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系の化合物が好ましい。
【0151】
(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0152】
(f)ケトオキシムエステル化合物
ケトオキシムエステル化合物としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0153】
(g)ボレート化合物
ボレート化合物の例としては、米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号の各明細書に記載されている化合物が挙げられる。
【0154】
(h)アジニウム化合物
アジニウム化合物の例としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号、及び特公昭46−42363号の各公報記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0155】
(i)メタロセン化合物
メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号の各公報記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
また、チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等を挙げることができる。
【0156】
(j)活性エステル化合物
活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、及び同0388343号の各明細書、米国特許3901710号、及び同4181531号の各明細書、特開昭60−198538号、及び特開昭53−133022号の各公報に記載されるニトロベンズルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、及び同0101122号の各明細書、米国特許4618564号、同4371605号、及び同4431774号の各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、及び特開平4−365048号の各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、及び特開昭59−174831号の各公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0157】
(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物
炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、例えば、若林ら著、Bull. Chem. Soc. Japan、42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物等を挙げることができる。
【0158】
(l)アミン化合物
アミン化合物としては、アルキレンジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)、ポリアルキレン(アルキレンの炭素数2〜6)ポリアミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン等)、アルキル又はヒドロキシアルキルアミン化合物(アルキル(炭素数1〜3)アミノプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミン、メチルイミノビスプロピルアミン等)、N−アミノエチルピペラジン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イホロンジアミン、水添メチレンジアニリン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンテカン等、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等が挙げられる。
【0159】
また、F. C. Schaefer等によるJ. Org. Chem.、29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等を挙げることができる。ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号に記載の化合物群、あるいはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群、等を挙げることができる。
【0160】
本発明において、インク組成物Aはラジカル重合開始剤を含有し、また、下塗り液を使用する場合には、該下塗り液がラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。
本発明において、ラジカル重合開始剤としては上記(a)〜(l)から選択された任意のラジカル重合開始剤を使用することができるが、特に、(a)芳香族ケトン類及び(b)アシルホスフィン化合物を好適に使用することができる。
また、芳香族ケトン類としては、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物を好ましく使用することができる。
【0161】
<カチオン重合開始剤>
本発明のインク組成物において、後述するように、カチオン重合性化合物を併用する場合には、カチオン重合開始剤を併用することが好ましい。
【0162】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩を挙げることができる。第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができる。第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができる。第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0163】
本発明に好適に用いられるカチオン重合開始剤例〔(b−1)〜(b−96)〕を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0164】
【化38】

【0165】
【化39】

【0166】
【化40】

【0167】
【化41】

【0168】
【化42】

【0169】
【化43】

【0170】
【化44】

【0171】
【化45】

【0172】
【化46】

【0173】
【化47】

【0174】
(式(I)で表される化合物)
本発明において、インク組成物Aは、下記式(I)で表される化合物を含有することが好ましい。該化合物を用いると、好ましい半硬化状態を低い露光エネルギーで形成することが可能になり、より速い印刷速度での印刷が可能になる。なお、式(I)で表される化合物は、重合開始剤として機能するものではなく、増感剤として機能するものであることが好ましい。
なお、下塗り液体組成物が下記式(I)で表される化合物を含有することも好ましい。また、インク組成物Bが下記式(I)で表される化合物を含有することもできる。
【0175】
【化48】

前記式(I)において、XはO、S、又は、NRを表す。nは0又は1を表す。Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。
【0176】
前記式(I)において、XはO、S、又は、NRを表し、ここでRは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。nは0又は1を表す。
Xとしては、O又はSであることが好ましく、Sであることがより好ましい。
【0177】
nは0又は1を表す。ここで、nが0の場合、R7及びR8と結合した炭素原子は存在せず、ヘテロ原子を含むXと、R5及びR6と結合した炭素原子と、が直接結合して、Xを含む5員のヘテロ環を構成することになる。
【0178】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が1価の置換基を表す場合の、1価の置換基としては、ハロゲン原子、脂肪族基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の非環状又は環状の炭化水素基)芳香族基、複素環基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホニル基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基などが挙げられ、中でも、好ましくは、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはアルキル基及びハロゲン原子である。
これらの1価の置換基は、さらに上記の置換基で置換されていてもよい。例えば、アルキル基は、ハロゲン原子によって置換されたハロアルキル基であってもよく、カルボキシ基で置換されたカルボキシアルキル基等であってもよい。
【0179】
なお、式(I)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が1価の置換基を表す場合のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基のような炭素数1〜4個のものが好ましく挙げられる。
同様に、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基のような炭素数1〜4個のものが好ましく挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0180】
化合物(I)は、下記式(I−A)で表される化合物であることが好ましい。
【0181】
【化49】

【0182】
前記式(I−A)において、XはO又はSを表す。nは0又は1を表す。R1A、R2A、R3A、R4A、R5A、R6A、R7A及びR8Aはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。
これらの1価の置換基は、さらに上記の置換基で置換されていてもよい。例えば、アルキル基は、ハロゲン原子によって置換されたハロアルキル基であってもよく、カルボキシ基で置換されたカルボキシアルキル基等であってもよい。
【0183】
さらに好適に用いることのできる化合物(I)としては、下記式(I−B)で示される化合物が挙げられる。
【0184】
【化50】

【0185】
前記式(I−B)において、XはO又はSを表す。R1B、R2B、R3B、R4B、R5B、R6B、R7B及びR8Bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。
これらの1価の置換基は、さらに上記の置換基で置換されていてもよい。例えば、アルキル基は、ハロゲン原子によって置換されたハロアルキル基であってもよく、カルボキシ基で置換されたカルボキシアルキル基等であってもよい。
【0186】
さらに好適に用いることのできる化合物(I)としては、下記式(I−C)で示される化合物が挙げられる。
【0187】
【化51】

【0188】
前記式(I−C)において、R1C、R2C、R3C、R4C、R5C、R6C、R7C及びR8Cはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。
これらの1価の置換基は、さらに上記の置換基で置換されていてもよい。例えば、アルキル基は、ハロゲン原子によって置換されたハロアルキル基であってもよく、カルボキシ基で置換されたカルボキシアルキル基等であってもよい。
【0189】
本発明に好適に用いることのできる、式(I)で表される化合物の具体例〔例示化合物(I−1)〜(I−96)〕を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明において、構造式の一部は、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する。また、Meはメチル基、Butはtert−ブチル基、Priはイソプロピル基を意味する。
【0190】
【化52】

【0191】
【化53】

【0192】
【化54】

【0193】
【化55】

【0194】
【化56】

【0195】
【化57】

【0196】
【化58】

【0197】
【化59】

【0198】
【化60】

【0199】
なお、上記式(I)で表される化合物は、例えば、特開2004−189695号公報、Tetrahedron, vol.49, p.939〜 , 1993、Journal of Organic Chemistry, p.893〜, 1945、及び、Journal of Organic Chemistry, p.4939〜, 1965などに記載の公知の方法によって合成することができる。
【0200】
(アミン化合物)
本発明のインクセットを構成するインク組成物Aは、アミン化合物を含有することが好ましい。なお、下塗り液がアミン化合物を含有することも好ましく、インク組成物Bがアミン化合物を含有していてもよい。
従来、インク組成物を半硬化させる工程において、短い露光時間で好ましい半硬化状態を形成することが困難であった。
ラジカル重合性の紫外線硬化組成物の硬化性を向上させるために酸素重合阻害の影響を低減させる手段としては、(1)重合開始剤濃度を上げて酸素濃度に対するラジカル発生濃度を十分に高めること、(2)硬化組成物の極性を上げて酸素の溶解度を下げ組成物中の酸素濃度を小さくたもつこと、(3)パーオキシラジカルの再活性を促す添加剤であるアミン化合物やエチレンオキサイド鎖を有する化合物などを添加しておくことなどが、一般的に知られている。
発明者が検討したところ、方法(1)及び(2)では、酸素濃度の低い膜内部及び酸素濃度の高い膜表層の両方の硬化性が向上し、好ましい半硬化状態の形成が困難であった。特に、例えば後述する図1に示す実施態様では、ホワイトインク組成物は、完全に硬化させる工程までに、3回の半硬化させる工程を経る。このように、複数回半硬化させる工程を経た場合、完全に硬化してしまい、好ましい半硬化状態を維持することが困難であった。
これに対し、方法(3)では、酸素濃度の低い膜内部での硬化性が効果的に向上し、好ましい半硬化状態の形成が低エネルギーでも可能になることを見出した。
【0201】
特に、パーオキシラジカルの再活性を促す添加剤としてアミン化合物が有効であり、中でも、3級アミン化合物(3級アミン構造を有する化合物)が好ましい。3級アミン化合物を用いると、好ましい半硬化状態を低い露光エネルギーで形成することが可能になり、より速い印刷速度での印刷が可能になる。
本発明において、アミン化合物として、分子内に重合性不飽和結合及び環状アミン構造を有する化合物を使用することが好ましい。
以下、本発明で特に好ましく用いることができるアミン化合物「分子内に重合性不飽和結合及び環状アミン構造を有する化合物(特定環状アミン化合物)」について詳細に説明する。
【0202】
<特定環状アミン化合物>
該化合物が有する重合性不飽和結合としては、二重結合又は三重結合が挙げられ、ラジカル重合性の二重結合であることが好ましい。すなわち、アミン化合物はエチレン性不飽和結合を有することが好ましい。インク組成物Aとして好適な低粘度組成物とするため、及び、画像形成において柔軟な硬化膜を得ることができるという観点から、特定環状アミン化合物が有する重合性不飽和結合、好ましくはエチレン性不飽和結合の数は1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
好ましいエチレン性不飽和結合を含む官能基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等が挙げられ、インク組成物Aの硬化感度の観点から(メタ)アクリロイル基であることが好ましく、アクリロイル基であることが特に好ましい。なお(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基のいずれか又は両方をいう。
【0203】
環状アミン構造としては、環構造を形成する原子の少なくとも1つが窒素原子である環状アミン構造であれば特に限定されずに用いることができる。
環構造の環の員数は3〜7であることが好ましく、4〜7であることがより好ましく、5〜6であることが特に好ましい。
該環構造を形成する結合は単結合であっても二重結合であってもよいが、単結合であることがより好ましい。結合が単結合、すなわち形成される環状アミン構造が脂環構造となることにより、硬化速度の向上効果、特に、空気中で硬化した際の酸素による重合阻害の抑制効果が顕著になり、高い硬化性を有することができる利点を有する。
【0204】
該環構造内に含まれる窒素原子の数は1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、該環構造内に窒素原子を1つのみ有する構造が特に好ましい。
環状アミン構造を形成する環には、導入可能な場合には置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては炭素数1〜4程度の比較的短鎖のアルキル基が挙げられ、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
また、環状アミン構造における環を形成する構成成分として、窒素原子のほかに酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子が含まれていてもよい。
【0205】
環状アミン構造のうち、特に好ましいものとしては、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環が挙げられ、置換基を有する下記式(1)で示されるピペリジン環が特に好ましいものとして挙げられる。
【0206】
【化61】

【0207】
式(1)中、R1はアルキル基又は置換アルキル基を表す。
1は炭素数1以上のアルキル基であり、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。好ましいアルキル基としては、より具体的には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ノニル基などが挙げられ、メチル基、エチル基及びブチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。また窒素原子に隣接する炭素原子上に水素原子を有することが好ましく、水素原子の数は2以上であることが好ましい。
【0208】
1が置換アルキル基の場合、導入可能な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が好ましく挙げられる。
2〜R5はそれぞれ独立にメチル基又はエチル基を表すが、メチル基であることが好ましく、中でも、R2〜R5の全てがメチル基であることがより好ましい。
【0209】
特定環状アミン化合物において、環状アミン構造は連結基を介して重合性不飽和結合と連結されるが、連結される部位は、環状アミン構造である前記式(1)におけるR2〜R5が存在する部位を除けば、いずれの部位が重合性不飽和結合と連結されていてもよい。
特定環状アミン化合物としては、より具体的には、下記式(2)、(3)及び(4)で表される如き化合物、すなわち環状アミン構造に、所定の連結基を介して重合性二重結合が結合している化合物が好ましい。
【0210】
【化62】

【0211】
式(2)〜(4)中、R1〜R5はそれぞれ式(1)におけるR1〜R5と同義であり、好ましい範囲も同様である。
6はメチル基又は水素原子を表し、水素原子であることが好ましい。
Zは2価の連結基又は単結合を表し、酸素原子又は上述のR1で表されるアルキル基から水素原子を除したアルキレン基が好ましく、炭素数1〜20のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数3〜12のアルキレン基であることが特に好ましい。
該Zで表されるアルキレン基は、メチレン基(−CH2−)からなるメチレン鎖中に、−CO−、−O−、−S−又は−NR7−から選択される2価の基を有していてもよく、メチレン基からなるアルキレン鎖中にエーテル結合(−O−)を有するものが好ましい。中でも、アルキレン基の両末端にエーテル結合(−O−)を有するものが特に好ましい。
なお、ここでR7は水素原子又は上述のR1がアルキル基である場合のR1と同義である。またR7がR1と同義である場合は、好ましい範囲も同様である。
ここで、Zで表されるアルキレン基としては、炭素数3〜12程度のアルキレン基が特に好ましく、具体的には例えば、プロピレン基、ブチレン基、オクチレン基、ノニレン基等が挙げられる。これらアルキレン基中のメチレン基からなる鎖状構造中には、上述の−CO−、−O−、−S−又は−NR7−から選択される2価の基を有していてもよい。また、これらの2価の連結基は2種以上を組み合わせて構成される2価の連結基であってもよい。
Aは2価の有機基を表し、メチレン基(−CH2−)又は酸素原子(−O−)であることが好ましい。
本発明において好適に用いることのできる、特定環状アミン化合物の具体例〔例示化合物(A−1)〜(A−26)〕を以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。また、各例示化合物において立体異性体が存在する場合は、それらのいずれを用いてもよく、立体異性体の混合物を用いてもよい。
【0212】
【化63】

【0213】
【化64】

【0214】
【化65】

【0215】
これらの中でも、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−7)、(A−12)、(A−17)などが好ましく、(A−1)、(A−2)がより好ましく、(A−1)が特に好ましい。
特定環状アミン化合物は、例えば、Makromolekulare Chemie. 第181巻3号595〜634頁(1980年)、Journal of Applied Polymer Science 第69巻13号2649〜2656頁(1998年)、Journal of Applied Polymer Science 第75巻9号1103〜1114頁(2000年)、Polymers for Advanced Technologies 第13巻247〜253頁(2002年)、特開平3−251569号公報に記載されている公知の合成方法により製造することができ、また、ファンクリルFA−711MM(日立化成工業(株)製)等の市販品としても入手可能である。
【0216】
アミン化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
また、アミン化合物の含有量は、インク組成物Aの総量に対し、0.1〜20重量%であることが好ましく、0.2〜10重量%であることがより好ましく、0.3〜5重量%であることがさらに好ましい。
アミン化合物の含有量が上記範囲内であると、低い露光エネルギーで良好な半硬化状態を得ることができる。
なお、2種以上のアミン化合物を使用する場合には、総量として上記範囲内とすることが好ましい。
【0217】
(着色剤)
本発明において、インク組成物A及びインク組成物Bは、着色剤を含有することが好ましい。また、下塗り液体組成物は、白色顔料を含有するか、又は、着色剤を含有しないことが好ましい。
本発明において用いることのできる着色剤には、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の顔料、染料を適宜選択して用いることができる。中でも、着色剤としては、特に耐光性に優れるとの観点から顔料であることが好ましい。
【0218】
本発明に好ましく使用される顔料について述べる。
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。さらに、市販の顔料分散体や表面処理された顔料、例えば、顔料を分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等も、本発明の効果を損なわない限りにおいて用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W. Herbst, K. Hunger, Industrial Organic Pigments、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0219】
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等)、C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー200(Novoperm Yellow 2HG)の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0220】
赤あるいはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン、CINQUASIA Magenta RT−355T;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0221】
青あるいはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3(IRGALITE BLUE GLO;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
【0222】
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしてはSPECIAL BLACK 250(デグサ社製)が例示できる。
【0223】
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、さらに、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0224】
着色剤の分散には、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
着色剤の分散を行う際には、界面活性剤等の分散剤を添加することができる。
また、着色剤を添加するにあたっては、必要に応じて、分散助剤として、各種着色剤に応じたシナージストを用いることも可能である。分散助剤は、着色剤100重量部に対し、1重量部以上50重量部以下添加することが好ましい。
【0225】
着色剤などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、インク組成物及び下塗り液体組成物は被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク組成物及び下塗り液体組成物中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、重合性化合物を用い、中でも、最も粘度が低い重合性化合物を選択することが分散適性やインク組成物及び下塗り液体組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0226】
ここで用いる着色剤の平均粒径は、微細なほど発色性に優れるため、0.01μm以上0.4μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.02μm以上0.2μm以下の範囲である。最大粒径は3μm以下、好ましくは1μm以下となるよう、着色剤、分散剤、分散媒の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができる。
インク組成物中における着色剤の粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法により測定することができる。本発明においては、レーザー回折・散乱法を用いた測定により得られた値を採用する。
【0227】
(界面活性剤)
本発明において、下塗り液体組成物、インク組成物A及びインク組成物Bは、界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明に使用される界面活性剤は、下記の界面活性剤が例示できる。例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。具体的には、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記公知の界面活性剤として、有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8から17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
特に本発明において使用される界面活性剤は、上記界面活性剤に限定されることはなく、添加濃度に対して効率的に表面張力を低下させる能力のある添加剤であればよい。
【0228】
本発明においては、被記録媒体上に目的の大きさのドットを形成する観点から、下塗り液は界面活性剤を含有することが好ましく、下記の条件(A)、(B)及び(C)の全てを満たすことが好ましい。
(A)下塗り液の表面張力は、いずれかのインク組成物の表面張力よりも小さい。
(B)下塗り液に含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、
γs(0)−γs(飽和)>0(mN/m)
の関係を満たす。
(C)下塗り液の表面張力は、
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2の関係を満たす。
【0229】
ここで、γsは、下塗り液の表面張力の値である。γs(0)は、下塗り液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに表面張力が飽和した該液の表面張力の値である。γs(飽和)最大は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
【0230】
<条件(A)>
本発明において、前述の通り、被記録媒体上に目的の大きさのインクドット(インク組成物の打滴)を形成するためには、下塗り液の表面張力γsを、いずれかのインク組成物の表面張力γkよりも小さくすることが好ましい。
さらに、着滴から露光までの間のインクドットの拡大をより効果的に防ぐ観点から、γs<γk−3(mN/m)であることがより好ましく、γs<γk−5(mN/m)であることが特に好ましい。
また、フルカラーの画像を印字する場合は、画像の鮮鋭性を向上させる観点から、下塗り液の表面張力γsは、少なくとも視感度の高い着色剤を含有するインク組成物の表面張力よりも小さくすることが好ましく、全てのインク組成物の表面張力より小さくすることがより好ましい。なお、視感度の高い着色剤としては、マゼンタ、ブラック及びシアンの色を呈する着色剤が挙げられる。
また、インク組成物の表面張力γkと下塗り液の表面張力γsの値が上記の関係を満たしていても、両者の値がそれぞれ15mN/m未満であるとインクジェット打滴時に液滴の形成が困難になり不吐出が生じる場合がある。一方、50mN/mを超えると、インクジェットヘッドとの濡れ性が悪くなり不吐出の問題が生じる場合がある。したがって、吐出適正の観点から、インク組成物の表面張力γkと下塗り液の表面張力γsとは、それぞれ15mN/m以上50mN/m以下の範囲内であることが好ましく、18mN/m以上40mN/m以下の範囲内であることがより好ましく、20mN/m以上38mN/m以下の範囲内であることが特に好ましい。
ここで、前記表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温20℃、60%RHにて測定した値である。
【0231】
<条件(B)と条件(C)>
本発明において、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、下塗り液は少なくとも1種類以上の界面活性剤を含有することが好ましい。なお、この場合は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、下記の条件(B)を満たすことが好ましい。
γs(0)−γs(飽和)>0(mN/m) …条件(B)
さらに、下塗り液の表面張力は、下記の条件(C)の関係を満たすことが好ましい。
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2 …条件(C)
【0232】
既述のように、γsは、下塗り液の表面張力の値である。また、γs(0)は、下塗り液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに表面張力が飽和した該液の表面張力の値である。γs(飽和)最大は、下塗り液に含有する界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
【0233】
なお、前記γs(0)は、下塗り液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値を測定することによって得られる。また、前記γs(飽和)は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の含有濃度を0.01質量%ずつ増加させた場合に、界面活性剤濃度の変化に対する表面張力の変化量が0.01mN/m以下になったときの該液の表面張力を測定することによって得られる。
【0234】
以下、前記γs(0)、γs(飽和)、γs(飽和)最大について具体的に説明する。
例えば、下塗り液(例1)を構成する成分が、高沸点溶媒(フタル酸ジエチル、和光純薬工業(株)製)、重合性材料(ジプロピレングリコールジアクリレート、Akcros社製)、重合開始剤(TPO、下記の開始剤−1)、フッ素系界面活性剤(メガファック
F475、大日本インキ化学工業(株)製)、炭化水素系界面活性剤(スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム)とした場合、γs(0)、γs(飽和)1(フッ素系界面活性剤を添加した時)、γs(飽和)2(炭化水素系界面活性剤を添加した時)、γs(飽和)、及び、γs(飽和)最大は、下記の通りとなる。
【0235】
【化66】

【0236】
すなわち、γs(0)は、下塗り液のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値であり、36.7mN/mとなる。また、該液に前記フッ素系界面活性剤を添加し、濃度を増加させた時の該液の表面張力の飽和値をγs(飽和)1としたとき、その値は20.2mN/mとなる。さらに、同様に該液に前記炭化水素系界面活性剤を添加し、濃度を増加させた時の該液の表面張力の飽和値をγs(飽和)2としたとき、その値は30.5mN/mとなる。
【0237】
前記下塗り液(例1)は、前記条件(B)を満たす界面活性剤を2種類含有するため、γs(飽和)は、フッ素系界面活性剤を添加した時(γs(飽和)1)と炭化水素系界面活性剤を添加した時(γs(飽和)2)の2つの値をとり得る。ここでγs(飽和)最大は、前記γs(飽和)1及びγs(飽和)2のうちの最大値であることから、γs(飽和)2の値となる。
以上より、それらをまとめると下記のようになる。
γs(0)=36.7mN/m
γs(飽和)1=20.2mN/m(フッ素系界面活性剤を添加した時)
γs(飽和)2=30.5mN/m(炭化水素系界面活性剤を添加した時)
γs(飽和)最大=30.5mN/m
【0238】
以上の結果から、下塗り液の表面張力γsとしては、
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2=33.6mN/m
の関係を満たすことが好ましい。
なお、前記条件(C)については、着滴から露光までの間のインク滴の拡大をより効果的に防ぐ観点から、下塗り液の表面張力としては、
γs<γs(0)−3×{γs(0)−γs(飽和)最大}/4
の関係を満たすことがより好ましく、
γs≦γs(飽和)最大
の関係を満たすことが特に好ましい。
【0239】
インク組成物及び下塗り液は、所望の表面張力が得られるように組成を選択すればよいが、界面活性剤を含有することが好ましい。既述のように、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、下塗り液は少なくとも1種の界面活性剤を含有することが好ましい。
【0240】
<その他添加剤>
本発明において、インク組成物A、インク組成物B及び下塗り液体組成物には、前記重合性化合物、重合開始剤など加え、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。例えば、得られる画像の耐候性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。また、安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。
さらに、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤、吐出物性の制御を目的としたチオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類、下塗り液体組成物やインク組成物と被記録媒体(基材)との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することができる。
また、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
【0241】
(インク組成物と下塗り液体組成物の表面張力の関係)
被記録媒体上に付与したインク組成物の硬化を開始するまでの間、形成された画像の滲みを長時間防止する観点から、インク組成物の表面張力をγAとし、下塗り液体組成物の表面張力をγBとしたとき、γAとγBとの関係は、γA>γBを満たすことが好ましく、γA−γB≧1を満たすことがさらに好ましく、γA−γB≧2を満たすことが特に好ましい。
前記表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定される値である。
【0242】
(インクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録方法は、被記録媒体上にインク組成物Aを吐出する工程、前記インク組成物Aを半硬化する工程、及び、前記半硬化されたインク組成物A上にインク組成物Bを吐出する工程をこの順で有し、前記インク組成物Aは、エチレン性不飽和化合物、及び、ラジカル重合開始剤を含有し、前記インク組成物Bは、オキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物、並びに、カチオン重合開始剤を含有することを特徴とする。すなわち、本発明のインクジェット記録用インクセットを構成するインク組成物A及びインク組成物Bを用いてインクジェット記録を行う。
また、前記インク組成物A及び前記インク組成物Bを付与する前に、被記録媒体上に下塗り液体組成物を付与する工程を有することが好ましく、前記インク組成物A及び前記インク組成物Bを付与する工程の前に、被記録媒体上に下塗り液体組成物を付与する工程、及び、該下塗り液体組成物を半硬化させる工程を有することがより好ましい。
【0243】
本発明のインクジェット記録方法の最も好ましい工程は図1に示すとおりである。図1に本発明に好適に使用できるインクジェット記録方法の概念図を示す。図1を参照しながら以下に詳説する。
最も好ましい工程に用いるインクセットとしては、エチレン性不飽和化合物及びラジカル重合開始剤を含有するインク組成物Aがホワイトインク組成物、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物であり、オキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物、並びに、カチオン重合開始剤を含有するインク組成物Bがイエローインク組成物、ブラックインク組成物である。ホワイトインク組成物、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物、イエローインク組成物、ブラックインク組成物は、図中のインクジェット記録ヘッド3W、3C、3M、3Y、3Kにそれぞれ充填される。
被記録媒体6は、被記録媒体搬送手段7A及び7Bにより搬送され、図1では、左から右方向に搬送されている。
被記録媒体及び被記録媒体搬送手段は特に限定されるものではないが、図1に示す本実施形態では被記録媒体としてプラスチックフィルムを使用しており、また、被記録媒体搬送手段としてフィルム巻き出し機(7A)、フィルム巻き取り機(7B)を使用している。
【0244】
第一工程にて、下塗り液を付与する手段1により、被記録媒体6上に下塗り液を付与する。ここで、図1では、下塗り液を付与する手段1としては、ロールコーターを用いている。
第二工程にて、下塗り液の半硬化させる手段2により、被記録媒体6上に付与された下塗り液を半硬化させる。図1では、下塗り液を半硬化させる手段2としては、紫外線光源を用いている。
第三工程において、被記録媒体6上で半硬化させた下塗り液の膜上にインクジェット記録ヘッド(3W)でホワイト画像を形成する。
第四工程において、ホワイトインク組成物を半硬化させる手段(4W)により、ホワイトインク組成物を半硬化させる。
第五工程において、被記録媒体上で半硬化させた下塗り液及び/又はホワイトインク組成物の膜上にインクジェット記録ヘッド(3C)により、シアンインク組成物を付与し、シアン画像を形成する。
第六工程において、シアンインク組成物を半硬化させる手段(4C)により、下塗り液及び/又はホワイトインク組成物の膜上に付与されたシアンインク組成物を半硬化させる。
第七工程においては、インクジェット記録ヘッド(3M)にて下塗り液、ホワイトインク組成物、シアンインク組成物のいずれかの膜上にマゼンタ画像を形成する。
第八工程において、マゼンタインク組成物を半硬化させる手段(4M)により、付与したマゼンタインク組成物を半硬化させる。
第九工程においては、下塗り液、ホワイトインク組成物、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物のいずれかの膜上にインクジェット記録ヘッド(3Y)にてイエロー画像を形成する。
第十工程においては、下塗り液、ホワイトインク組成物、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物のいずれかの膜上にインクジェット記録ヘッド(3K)にてブラック画像を形成する。
第十一工程において、形成されたフルカラーの画像を完全に硬化させる手段5により、形成されたフルカラーの画像を完全に硬化させる。
【0245】
ここで、例えば、第七工程〜第九工程において、エチレン性不飽和化合物及びラジカル重合性化合物を含有するマゼンタインク組成物を半硬化し、この上にオキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物、並びに、カチオン重合開始剤を含有するイエローインク組成物が吐出されれば、本発明のインクジェット記録方法に該当する。なお、第三工程〜第五工程に示されるように、エチレン性不飽和化合物及びラジカル重合開始剤を含有するインク組成物(ホワイトインク組成物)を半硬化し、この上に、エチレン性不飽和化合物及びラジカル重合開始剤を含有するインク組成物(シアンインク組成物)を付与する工程を有していてもよい。
また、インク組成物Bをさらに半硬化する工程を有していてもよいし、完全に硬化させる工程のみを有していてもよい(例えば、第十一工程)。
以下、上記工程を構成する各要件について詳細に記載する。
【0246】
<被記録媒体上に下塗り液体組成物を付与する工程>
前記、被記録媒体上に下塗り液体組成物(下塗り液)を付与する工程にて、下塗り液体組成物液(下塗り液)は、被記録媒体上にインク組成物の液滴の吐出によって形成される画像と同一領域若しくは該画像より広い領域に付与することが好ましい。
また、下塗り液体組成物の付与量(単位面積あたりの重量比)としては、インク組成物の最大付与量(1色につき)を1とした場合に0.05以上5以下の範囲内であることが好ましく、0.07以上4以下の範囲内がより好ましく、0.1以上3以下の範囲内がさらに好ましい。
本発明のインクジェット記録方法においては、被記録媒体上に下塗り液体組成物を付与する手段としては、塗布装置又はインクジェットノズル等を用いることができる。
前記塗布装置としては、特に制限はなく、公知の塗布装置の中から目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。詳しくは、原崎勇次著「コーティング工学」を参照できる。
中でも、装置コストの点で、下塗り液体組成物の被記録媒体上への付与は、比較的安価なバーコーター又はスピンコーターを用いた塗布、あるいはインクジェット法による付与が好ましい。
【0247】
<下塗り液体組成物(下塗り液)及び/又はインク組成物を半硬化させる工程>
本発明において、「半硬化」とは、部分的な硬化(partially cured; partial curing)を意味し、下塗り液及び/又はインク組成物が部分的に硬化しているが完全に硬化していない状態をいう。被記録媒体(基材)上に適用された下塗り液又は下塗り液上に吐出されたインク組成物が半硬化している場合、硬化の程度は不均一であってもよい。例えば、下塗り液及び/又はインク組成物は深さ方向に硬化が進んでいることが好ましい。
【0248】
下塗り液及び/又はインク組成物を半硬化させる方法としては、(1)酸性ポリマーに対して、塩基性化合物を付与する、又は塩基性ポリマーに対して、酸性化合物、金属化合物を付与するなど、いわゆる凝集現象を用いる方法、(2)下塗り液及び/又はインク組成物を予め高粘度に調製し、これに低沸点有機溶媒を添加することによって低粘化しておき、低沸点有機溶媒を蒸発させて元の高粘度に戻す方法、(3)高粘度に調製した下塗り液及び/又はインク組成物を加熱しておき、冷却することによって元の高粘度に戻す方法、(4)下塗り液及び/又はインク組成物に活性エネルギー線又は熱を与えて硬化反応を起こさせる方法など、既知の増粘方法が挙げられる。中でも(4)下塗り液及び/又はインク組成物に活性エネルギー線又は熱を与えて硬化反応を起こさせる方法が好ましい。
【0249】
活性エネルギー線又は熱を与えて半硬化反応を起こさせる方法とは、被記録媒体に付与された下塗り液及び/又はインク組成物の表面における重合性化合物の重合反応を不充分に行う方法である。
【0250】
ラジカル重合性の下塗り液又はインク組成物を、空気中又は部分的に不活性ガスで置換した空気中等の酸素を多く含む雰囲気中で重合させる場合には、酸素のラジカル重合抑制作用のために、被記録媒体上に適用された下塗り液層又はインク組成物の液滴(以下、インク液滴ともいう。)の表面においてラジカル重合が阻害される傾向がある。この結果、半硬化は不均一となり、下塗り液層又はインク液滴の内部でより硬化が進行し、表面の硬化が遅れる傾向となる。ここで、下塗り液層とは、被記録媒体上に付与された下塗り液の層である。
【0251】
本発明において、ラジカル光重合性の下塗り液又はインク組成物Aを、ラジカル重合抑制的な酸素の共存下で使用して、部分的に光硬化すると、下塗り液及び/又はインク組成物の硬化は外部よりも内部にて、より進行する。
特に、前記下塗り液の表面においてはその内部と比べて空気中の酸素の影響で重合反応が阻害され易い。したがって、活性エネルギー線又は熱の付与条件を制御することにより、下塗り液を半硬化させることができる。
【0252】
これらの中でも、活性エネルギー線の照射により半硬化させることが好ましい。活性エネルギー線としては、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。これらの中でも紫外線又は可視光であることが好ましく、紫外線であることがより好ましい。さらに、活性放射線のピーク波長は、増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、340〜400nmであることがさらに好ましい。
【0253】
下塗り液及び/又はインク組成物の半硬化に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、活性エネルギー線によりエネルギーを付与する場合には、1〜500mJ/cm2程度が好ましい。また、加熱によりエネルギーを付与する場合は、被記録媒体の表面温度が40〜80℃の温度範囲となる条件で0.1〜1秒間加熱することが好ましい。
【0254】
活性光や加熱などの活性エネルギー線又は熱の付与により、重合開始剤の分解による活性種の発生が促進されると共に、活性種の増加や温度上昇により、活性種に起因する重合性又は架橋性材料の重合若しくは架橋による硬化反応が促進される。
また、増粘(粘度上昇)も、活性光の照射、又は加熱によって好適に行うことができる。
【0255】
半硬化の状態の下塗り液上にインク組成物が打滴され、又は、半硬化の状態のインク組成物上に、これとは異なるインク組成物(特に色相の異なるインク組成物)が打滴されると、得られる印刷物の品質に好ましい技術的効果をもたらす。また、その作用機構を印刷物の断面観察により確認できる。
【0256】
被記録媒体(基材)上に設けられた、厚さが約5μmの厚さの半硬化状態の下塗り液上に約12pL(ピコリットル;以下同様)のインク組成物を打滴した場合の高密度に打滴された部分(高濃度部分)を一例として説明する。
図2は、半硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図2に示す印刷物の作製において、下塗り液は半硬化され、基材16側の方が表面層よりも硬化が進行している。図2では、半硬化状態の下塗り液層にインク組成物を付与された下塗り層14が示されている。
この場合には、得られる画像10の断面には、以下の3つの特徴が観察される。
(1)インク組成物硬化物(以下、「インク硬化物」ともいう。)12の一部は表面に出ている、
(2)インク硬化物12の一部は下塗り層14に潜り込んでいる、かつ、
(3)インク硬化物12の下側と基材16の間には下塗り層14が存在する。
すなわち、半硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を付与することによって得られた印刷物は、図2で模式的に示されるような断面を有している。上記の(1)、(2)及び(3)の状態を満たす場合には、半硬化した下塗り液にインク組成物が付与されたといえる。この場合には、高密度に打滴されたインク組成物の液滴は相互に繋がってインク膜を形成しており、均一で高い色濃度を与える。なお、下塗り層とは、下塗り液層を硬化して得られた層の意である。
【0257】
図3及び図4は、未硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図3及び図4では、未硬化状態の下塗り液層にインク組成物を付与された下塗り層18が示されている。
未硬化状態の下塗り液層にインク組成物を打滴した場合は、インク組成物の全部が下塗り液層に潜り込むか、及び/又は、インク組成物の下部には下塗り液が存在しない状態となる。具体的には、図3においては、得られる画像10の断面切片において、インク硬化物12が、下塗り層18に完全に潜り込んでおり、インク硬化物12の一部が表面に出ていない。また、図4に示すように、得られる画像10の断面切片において、インク硬化物12の下部には、下塗り層18が存在しない。
この場合は、高密度にインク組成物を付与しても、液滴同士が独立するため、色濃度が低下する場合がある。
【0258】
図5は、完全硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図5では、完全硬化状態の下塗り液層にインク組成物を付与された下塗り層20が示されている。
完全に硬化した下塗り液層にインク組成物を打滴した場合は、インク組成物は下塗り液層に潜り込まない状態となる。具体的には図5に示されるように、インク硬化物12は、下塗り層20に潜り込んでいない。
このような状態は、打滴干渉の発生の原因となり、均一なインク組成物の膜層が形成できず、色再現性の低下を招く場合がある。
【0259】
本発明において、被記録媒体上に下塗り液を付与する工程は必須ではなく、被記録媒体上に下塗り液層を形成せずにインク組成物を吐出することもできるが、様々な被記録媒体に画像を形成するという観点からは、下塗り液層を形成することが好ましい。
また、被記録媒体上の下塗り液を付与した後、下塗り液を半硬化させる工程は必須の工程ではないが、打滴干渉を抑制することができ、また、優れた色濃度を得ることができるので、硬化した下塗り液層にインク組成物を打滴することが好ましい。
【0260】
高密度にインク組成物の液滴を付与した場合に液滴同士が独立することなく、均一なインク組成物の液層(インク膜)を形成する観点、及び、打滴干渉の発生を抑制する観点から、単位面積当たりの下塗り液の転写量は、単位面積当たりに付与するインク組成物の最大液滴量よりも十分に少ないことが好ましい。すなわち、下塗り液層の単位面積当たりの転写量(重量)をM(下塗り液)とし、単位面積当たりに付与するインク組成物の最大重量をm(インク)とすると、M(下塗り液)、m(インク)は、以下の関係を満たすことが好ましい。
〔m(インク)/30〕≦〔M(下塗り液)〕≦〔m(インク)〕
また、
〔m(インク)/20〕≦〔M(下塗り液)〕≦〔m(インク)/3〕
であることがより好ましく、
〔m(インク)/10〕≦〔M(下塗り液)〕≦〔m(インク)/5〕
であることがさらに好ましい。ここで、単位面積当たりに付与するインク組成物の最大重量は1色当たりの最大重量である。
〔m(インク)/30〕≦〔M(下塗り液)〕であると、打滴干渉の発生を抑制することができ、さらにドットサイズの再現性に優れるので好ましい。また、M(下塗り液)≦m(インク)であると、均一なインク組成物の液層の形成ができ、濃度の高い画像を得ることができるので好ましい。
【0261】
なお、単位面積当たりの下塗り液層の転写量は、以下に述べる転写試験により求めたものである。半硬化過程の終了後(例えば、活性エネルギー線の照射後)であってインク組成物の液滴を打滴する前に、普通紙などの浸透媒体を半硬化状態の下塗り液層に押し当てて、浸透媒体に転写した下塗り液の量の重量測定によって定義するものである。
例えば、インク組成物の最大吐出量が、600×600dpiの打滴密度で、1画素(ドット)当たり12ピコリットルであったとすると、単位面積当たりに付与するインク組成物の最大重量m(インク)は、0.74mg/cm2となる(ここでは、インク組成物の密度を約1.1g/cm3と仮定した。)。したがって、下塗り液層の転写量は、単位面積当たり0.025mg/cm2以上0.74mg/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは0.037mg/cm2以上0.25mg/cm2以下であり、さらに好ましくは0.074mg/cm2以上0.148mg/cm2以下である。
【0262】
本発明において、異なる色相を有するインク組成物X(インクX)及びインク組成物Y(インクY)で2次色を形成する時は、半硬化状態のインク組成物X上にインク組成物Yを付与することが好ましい。
本発明において、半硬化するインク組成物Xは、エチレン性不飽和化合物及びラジカル重合性化合物を含有する、インク組成物Aであることが好ましい。
インク組成物Y上に、さらに、インク組成物X及びインク組成物Yとは色相の異なるインク組成物Zを付与する場合には、半硬化状態のインク組成物Y上にインク組成物Zを付与することが好ましい。インク組成物Yを半硬化する場合には、インク組成物Yはエチレン性不飽和化合物及びラジカル重合性化合物を含有する、インク組成物Aであることが好ましい。
なお、インク組成物Yを半硬化する工程を経ずに、完全硬化させる場合には、インク組成物はオキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物、並びに、カチオン重合開始剤を含有する、インク組成物Bとすることが好ましい。
すなわち、半硬化する(半硬化工程を有する)インク組成物は、エチレン性不飽和化合物及びラジカル重合開始剤を含有するインク組成物Aとし、半硬化しない(半硬化行程を有しない)インク組成物は、オキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物、並びに、カチオン重合開始剤を含有する、インク組成物Bとすることが好ましい。
【0263】
図6は、半硬化状態のインクX上にインクYを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図6では、半硬化状態のインクXにインクYを付与されて得られたインクX硬化物24及びインクY硬化物22が示されている。
半硬化状態のインクX上にインクYを打滴した場合は、インクYの一部がインクXに潜り込み、かつ、インクYの下部にはインクXが存在する状態となる。すなわち、半硬化状態のインクX上にインクYを付与することによって得られた印刷物は、図6で示されるように、インクY硬化物22の一部が表面に出ており、また、インクY硬化物22の一部はインクX硬化物24に潜り込んでいる。また、インクY硬化物22の下部にはインクX硬化物が存在している。インクXの硬化膜(インク膜X、図6のインクX硬化物24)及びインクYの硬化膜(インク膜Y、図6のインクY硬化物22)が積層された状態になり、良好な色再現が可能となる。
【0264】
図7及び図8は、未硬化状態のインクX上にインクYを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図7では、未硬化状態のインクXにインクYを付与されて得られたインクX硬化物26及びインクY硬化物22が示されている。
未硬化状態のインクXにインクYを打滴した場合は、インクYの全部がインクXに潜り込むか、及び/又は、インクYの下部にはインクXが存在しない状態となる。すなわち、得られた画像の断面図を観察すると、図7に示すように、インクY硬化物22の全部がインクX硬化物26に潜り込んでいる、及び/又は、図8に示すように、インクY硬化物22の下層にはインクX硬化物26が存在しない。この場合は、高密度にインクYの液滴を付与しても、液滴同士が独立するため、2次色の彩度が低下する。
【0265】
図9は、完全硬化状態のインクX上にインクYを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。図9では、完全硬化状態のインクXにインクYを付与されて得られたインクX硬化物28及びインクY硬化物22が示されている。完全に硬化したインクXにインクYを打滴した場合は、インクYはインクXに潜り込まない状態となる。図9に示すように、得られる画像の断面図では、インクY硬化物22がインクX硬化物28に潜り込んでいない。このような状態は、打滴干渉の発生の原因となり、均一なインク膜層が形成できず、色再現性が低下する。
【0266】
高密度にインクY液滴を付与した場合に液滴同士が独立することなく、均一なインクYの液層を形成する観点、及び、打滴干渉の発生を抑制する観点から、単位面積当たりのインクXの転写量は、単位面積当たりに付与するインクYの最大液滴量よりも十分に少ないことが好ましい。すなわち、インクX層の単位面積当たりの転写量(重量)をM(インクX)とし、単位面積当たりに吐出するインクYの最大重量をm(インクY)とすると、M(インクX)とm(インクY)は、以下の関係を満たすことが好ましい。
〔m(インクY)/30〕≦〔M(インクX)〕≦〔m(インクY)〕
また、
〔m(インクY)/20〕≦〔M(インクX)〕≦〔m(インクY)/3〕
であることがより好ましく、
〔m(インクY)/10〕≦〔M(インクX)〕≦〔m(インクY)/5〕
であることがさらに好ましい。
〔m(インクY)/30〕≦〔M(インクX)〕であると、打滴干渉の発生を抑制することができ、さらに、ドットサイズ再現性に優れるので好ましい。また、〔M(インクX)〕≦〔m(インクY)〕であると、均一なインクの液層の形成ができ、濃度の高い画像を得ることができるので好ましい。
【0267】
なお、単位面積当たりのインクXの転写量(重量)は、以下に述べる転写試験により求めたものである。半硬化過程の終了後(例えば、活性エネルギー線の照射後)であってインクYの液滴を打滴する前に、普通紙などの浸透媒体を半硬化状態のインクX層に押し当てて、浸透媒体に転写したインクXの量の重量測定によって定義するものである。
例えば、インクYの最大吐出量が、600×600dpiの打滴密度で、1画素当たり12ピコリットルであったとすると、単位面積当たりに吐出するインクYの最大重量m(インクY)は、0.74mg/cm2となる(ここでは、インクYの密度を約1.1g/cm3と仮定した。)。したがって、インクX層の転写量は、単位面積当たり0.025mg/cm2以上0.74mg/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは0.037mg/cm2以上0.25mg/cm2以下であり、さらに好ましくは0.074mg/cm2以上0.148mg/cm2以下である。
【0268】
エチレン性不飽和化合物に基づく硬化反応の場合には、未重合率をエチレン性不飽和基の反応率により定量的に測定することができる(後述)。
【0269】
前記下塗り液及び/又はインク組成物の半硬化状態を、活性エネルギー線の照射や加熱によって重合を開始する重合性化合物の重合反応によって実現する場合は、印刷物の擦過性を向上させる観点から、未重合率(A(重合後)/A(重合前))は、0.2以上0.9以下であることが好ましく、0.3以上0.9以下であることがより好ましく、0.5以上0.9以下であることが特に好ましい。
【0270】
ここで、A(重合後)は、重合反応後の重合性基による赤外吸収ピークの吸光度であり、A(重合前)は、重合反応前の重合性基による赤外吸収ピークの吸光度である。例えば、下塗り液及び/又はインク組成物Aの含有する重合性化合物がアクリレートモノマー若しくはメタクリレートモノマーである場合は、810cm-1付近に重合性基(アクリレート基、メタクリレート基)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸光度で、前記未重合率を定義することが好ましい。
【0271】
また、赤外吸収スペクトルを測定する手段としては、市販の赤外分光光度計を用いることができ、透過型及び反射型のいずれでもよく、サンプルの形態で適宜選択することが好ましい。例えば、BIO−RAD社製赤外分光光度計FTS−6000を用いて測定することができる。
【0272】
<被記録媒体上にインク組成物を付与する工程>
本発明において、インク組成物は、0.1pL以上100pL以下の液滴サイズにて(好ましくはインクジェットノズルにより)打滴されることが好ましい。液滴サイズが前記範囲内であると、高鮮鋭度の画像を高い濃度で描写できる点で有効である。また、より好ましくは0.5pL以上50pL以下である。
下塗り液体組成物を被記録媒体上に付与する場合、下塗り液体組成物の付与後、インク液滴が打滴されるまでの打滴間隔としては、5μ秒以上10秒以下の範囲内であることが好ましい。打滴間隔が前記範囲内であると、本発明の効果を顕著に奏し得る点で有効である。インク液滴の打滴間隔は、より好ましくは10μ秒以上5秒以下であり、特に好ましくは20μ秒以上5秒以下である。
【0273】
インク組成物を付与する手段としては、インクジェットヘッドを用いることが好ましい。インクジェットヘッドとしては、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式、等のヘッドが好適である。
【0274】
<画像を完全に硬化させる工程>
本発明における「完全硬化」とは、下塗り液体組成物及びインク組成物の内部及び表面が完全に硬化した状態をいう。具体的には、完全硬化の工程の終了後(例えば、活性エネルギー線の照射後や加熱後)、普通紙などの浸透媒体を押し当てて、浸透媒体に下塗り液体組成物又はインク組成物表面が転写したかどうかによって判断することができる。すなわち、全く転写しない場合を完全に硬化した状態という。
画像を完全硬化させる硬化手段には活性エネルギー線を照射する光源、電気ヒータやオーブン等の加熱器などを目的等に応じて選択することができる。
前記活性エネルギー線としては、紫外線のほか例えば可視光線、α線、γ線、X線、電子線などが使用可能である。これらのうち、活性エネルギー線としては、コスト及び安全性の点で、電子線、紫外線、可視光線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
完全硬化反応に必要なエネルギー量は、組成、特に重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、一般には100mJ/cm2以上10,000mJ/cm2以下程度である。
活性エネルギー線を照射する好適な装置としては、メタルハライドランプ、水銀灯、LED光源等が挙げられる。
【0275】
また、前記加熱によりエネルギーを付与する場合は、加熱手段として熱を発する装置を用いることができる。この場合、下塗り液体組成物及びインク組成物が付与された基材に対し、該基材の表面温度が50℃以上100℃以下の温度範囲となる条件で0.5秒間以上10秒間以下加熱することが好ましい。
加熱による場合、温度上昇により、重合性化合物の重合若しくは架橋による硬化反応が促進され、液滴の衝突により形成された形状は、より強固となる。これにより、強固な画像が得られるので好ましい。
加熱は、非接触型の加熱手段を使用して行うことができ、オーブン等の加熱炉内を通過させる加熱装置や、紫外光〜可視光〜赤外光等の全面露光による加熱装置等が好適である。
加熱手段としての露光に好適な光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、カーボンアーク灯、水銀灯等が挙げられる。
【0276】
なお、本発明において、半硬化させる工程及び完全硬化させる工程は、いずれも放射線照射により行うことが好ましく、紫外線照射により行うことがより好ましい。
【0277】
なお、図1ではホワイト、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの5色のインク組成物を使用したが、これに限定されるものではなく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のインク組成物を使用することもできる。吐出するインク組成物の順番は特に限定されるわけではないが、明度の高いインク組成物から被記録媒体に付与することが好ましく、また、紫外線吸収の少ないインク組成物から被記録媒体に付与することが好ましい。イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色を使用する場合には、シアン→マゼンタ→イエロー→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えた5色のインク組成物を使用する場合にはホワイト→シアン→マゼンタ→イエロー→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
インク組成物は少なくとも2種を使用すればよいが、フルカラー画像を得るためには、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つのインク組成物又はイエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトの5つのインク組成物を使用することが好ましい。さらに、本発明はこれに限定されず、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、グレー、ブラック、ホワイト、イエローの8つのインク組成物を使用することもできる。
【0278】
本発明において、インクジェット記録方法は上記のインクジェット記録方法に限定されず、本発明のインクジェット記録用インクセットは、他のインクジェット記録方法にも使用できる。
すなわち、インク組成物にて画像を形成した後、下塗り液をオーバーコート層として吐出又は塗布する等、当業者に公知の方法を適宜選択することができる。
【0279】
<被記録媒体>
本発明において、被記録媒体に用いる材料としては、特に限定されずいずれの材料を使用してもよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム及びアルミニウム板が挙げられる。
本発明において、被記録媒体として、非吸収性被記録媒体が好適に使用される。前記インクジェット記録方法では、下塗り液体組成物を付与した後にインク組成物を付与することにより、これまで打滴干渉によって精細な画像の形成が困難であった様々な非吸収性被記録媒体に対して高精細な画像が形成可能である。
【実施例】
【0280】
以下、本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を表し、「%」は「重量%」を表す。
【0281】
<顔料分散物の作製>
表1に示す成分(単位は重量部)を混合し、1時間スターラーで撹拌した。撹拌後の混合物をビーズミル分散にて分散し、顔料分散物を得た。分散条件は直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間は、2〜4時間で行った。
【0282】
【表1】

【0283】
表1で使用した各成分は、以下の通りである。
・二酸化チタン:CR60−2(石原産業(株)製)
・シアン顔料A:PB15:3(IRGALITE BLUE GLO;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
・マゼンタ顔料A:PV19(CINQUASIA MAGENTA RT−355D;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
・イエロー顔料A:PY155(NOVOPERM YELLOW 4Gー01;クラリアント社製)
・カーボンブラック:SPECIAL BLACK 250(デグサ社製)
・分散剤A:BYK−168(ビックケミー社製)
・分散剤B:ソルスパース36000(ノベオン社製)
・分散溶媒A:Rapicure DVE3(トリエチレングリコールジビニルエーテル;GAF社製)
【0284】
<インク組成物の作製>
表2〜表4に示す成分(単位は重量部)を撹拌混合溶解し、インク組成物を得た。なお、これらのインク組成物の表面張力を、表面張力計(協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定したところ、いずれのインク組成物の表面張力も、24〜25mN/mの範囲内であった。
【0285】
【表2】

【0286】
【表3】

【0287】
【表4】

【0288】
表2〜表4で使用した各成分は以下の通りである。
・重合性化合物A:FA512AS(ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート;日立化成工業(株)製)
・重合性化合物B:DPGDA(ジプロピレングリコールジアクリレート;ダイセル・サイテック(株)製)
・重合性化合物C:A−TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート;新中村化学工業(株)製)
・重合性化合物D:OXT−221(ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル;東亞合成(株)製、オキセタン環を有する化合物)
・重合性化合物E:OXT−101(3−エチルー3−ヒドロキシメチルオキセタン;東亞合成(株)製、オキセタン環を有する化合物)
・重合性化合物F:OXT−211(3−フェニル−3−フェノキシメチルオキセタン;東亞合成(株)製、オキセタン環を有する化合物)
・重合性化合物G:Cel3000(1,2:8,9ジエポキシリモネン;ダイセル化学工業(株)製、オキシラン基を有する化合物)
・開始剤A:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(アシルホスフィンオキサイド化合物であるラジカル重合開始剤)
・開始剤B:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(アシルホスフィンオキサイド化合物であるラジカル重合開始剤)
・開始剤C:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(芳香族ケトン類であるラジカル重合開始剤)
・開始剤D:IRGACURE 250(A:ヨードニウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)及びプロピレンカーボネートの混合物;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、光重合開始剤)(オニウム塩であるカチオン重合開始剤)
・増感剤A:下記化合物(B−1)
・増感剤B:9,10−ジブトキシアントラセン
・界面活性剤A:BYK―307(ビックケミー社製、界面活性剤)
・禁止剤A:FIRSTCURE ST−1(Albemarle社製、重合禁止剤)
・アミン化合物A:下記化合物(A−1)
【0289】
【化67】

【0290】
【化68】

【0291】
【化69】

【0292】
【化70】

【0293】
【化71】

【0294】
【化72】

【0295】
【化73】

【0296】
【化74】

【0297】
<下塗り液体組成物の作製>
表3に示す成分(単位は重量部)を撹拌混合溶解し、下塗り液体組成物を得た。なお、表面張力を、表面張力計(協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定したところ、表面張力は23〜24mN/mの範囲内であった。
【0298】
【表5】

【0299】
表5で使用した各成分は、表2〜表4で使用したものと同一である。
【0300】
(画像記録装置)
調製した5色分のインク組成物(W1〜W3、C1〜C3、M1〜M3、Y1〜Y3、Bk1〜Bk3)は、インクジェットプリンタ(東芝テック(株)製ヘッド搭載=打滴周波数:6.2KHz、ノズル数:636、ノズル密度:300npi(ノズル/インチ、以下同様)、ドロップサイズ:6pl〜42plを7段階に可変のヘッドを2つ配列して600npiにしたものをフルライン配列したヘッドセットを5組搭載)に装填した。
ヘッドは記録媒体搬送方向上流からホワイト、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックという順で機体に固定して、さらにホワイトインク用ヘッドの上流に下塗り液のロールコーター及び半硬化用光源(光強度60mW/cm2のLED光源ユニットを2基)を設置した。なお、ここで下塗り液としては、下塗り液(U1)を使用した。
ヘッドの直下を被記録媒体が移動可能な構造に構成すると共に、ホワイト、シアン、マゼンタ各ヘッドに対して被記録媒体の進行方向にそれぞれ半硬化用光源(光強度60mW/cm2のLED光源ユニットを2基)を配置し、イエロー及びブラックインクヘッド下流にはメタルハライドランプ(光強度3,000mW/cm2)を設置した。
【0301】
印字手順は下記の通り(1)から(11)である。
(1)ロールコーターにより下塗り液(U1)を5μmの厚みに均一に付与した。
(2)下塗り液(U1)を付与後に半硬化用光源で露光を行い(光強度60mW/cm2)、付与された下塗り液(U1)を半硬化状態にした。
(3)ホワイトヘッドによって、前記下塗り液が付与された被記録媒体上にホワイトインクを付与してホワイト画像を形成した。
(4)半硬化用光源にて露光を行い(光強度60mW/cm2)、ホワイトインクを半硬化状態にした。
(5)シアンヘッドによって、被記録媒体上にシアンインクを付与してシアン画像を形成した。
(6)半硬化用光源にて露光を行い(光強度60mW/cm2)、シアンインクを半硬化状態にした。
(7)マゼンタヘッドによって、被記録媒体上にマゼンタインクを付与してマゼンタ画像を形成した。
(8)半硬化用光源にて露光を行い(光強度60mW/cm2)、マゼンタインクを半硬化状態にした。
(9)イエローヘッドによって、被記録媒体上にイエローインクを付与してイエロー画像を形成した。
(10)ブラックヘッドによって、被記録媒体上にブラックインク(Bk1)を付与してブラック画像を形成した。
(11)メタルハライドランプにて露光を行い(光強度3,000mW/cm2)、画像を完全に硬化させた。
なお、ここで被記録媒体の搬送速度は50〜400mm/s、1ドットあたりのインク液の液量は約12ピコリットルとした。2次色(例えば、シアンとマゼンタ)の画像を形成する場合は、上記手順にて(3)、(9)及び(10)を省略した。1次色(例えば、イエロー)の画像を形成する場合は、上記手順にて(3)、(5)、(7)及び(10)を省略した。
【0302】
なお、半硬化用光源としては、LED光源を使用した。LEDとしては日亜化学工業(株)製NCCU033を用いた。本LEDは1チップから波長365nmを中心とした340nm以上400nm以下の波長の紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、被記録媒体表面での露光強度は、光が約60mW/cm2となるように、電流及び光源と被記録媒体の距離を調節した。上記のLED光源ユニット2基を並べて、一つの半硬化光源として使用した。
被記録媒体の搬送はロール搬送とし、記録媒体上には600dpi×600dpiの画像を形成した。なお、ここで被記録媒体はプラスチックフィルムA(透明PET)、及び、プラスチックフィルムB(白色PVC)を使用した。
【0303】
(実施例1)
上記の実験機の各色インクジェット記録ヘッドに、インクセット1のインクを充填し、幾つかの画像を印刷した。なお、印刷速度を100〜800mm/秒の間で変更した。
文字画像Aは文字「Fuji」(Times New Roman、30pt、20pt、10pt、5pt)をブラックインクで600×600dpiの打滴密度で印字する画像である。
ベタ画像Cは、シアン1次色のベタ画像であり600×600dpiの打滴密度で印字する画像である。同様に、ベタ画像Mはマゼンタ1次色、ベタ画像Yはイエロー1次色の画像である。
ベタ画像CWは、600×600dpiの打滴密度のホワイトベタ画像の上層に、600×600dpiの打滴密度のシアンベタ画像を印字する1次色画像である。同様に、ベタ画像MW、ベタ画像YWは、600×600dpiの打滴密度のホワイトベタ画像の上層に、600×600dpiの打滴密度のマゼンタ及びイエローのベタ画像を印字する1次色画像である。
ベタ画像MCは、600×600dpiの打滴密度のシアンベタ画像の上層に、600×600dpiの打滴密度のマゼンタベタ画像を印字する2次色画像である。同様に、ベタ画像YM、及び、ベタ画像YCは、600×600dpiの打滴密度のマゼンタ、又は、シアンベタ画像の上層に、600×600dpiの打滴密度のイエローのベタ画像を印字する2次色画像である。
ベタ画像MCWは、600×600dpiの打滴密度ホワイトベタ画像の上層に、600×600dpiの打滴密度のシアンベタ画像、及び、マゼンタ画像を印字する2次色画像である。同様に、ベタ画像YMW、及び、ベタ画像YCWは、600×600dpiの打滴密度のホワイトベタ画像の上層に、600×600dpiの打滴密度のマゼンタとイエローのベタ画像、及び、シアンとイエローのベタ画像を印字する2次色画像である。
【0304】
(実施例2、比較例1、2)
表6に記載するように、インク組成物と下塗り液を入れ替えた以外は、実施例1と同様にして、印刷を実施した。なお、実施例2では下塗り液を使用せず、被記録媒体に直接印刷を実施した。
【0305】
【表6】

【0306】
(半硬化状態の確認:転写量の測定)
実施例1、2及び比較例1、2のいずれにおいても、工程(3)、(5)、(7)、(9)、(10)で付与する単位面積当たりのインク組成物(インク)の最大付与量(重量)は、各色インク組成物とも0.74mg/cm2〜0.87mg/cm2の範囲内であった。
工程(2)、(4)、(6)、(8)における半硬化用光源での露光後でサンプルを抜き取り、転写試験によって転写する下塗り液及びインク液の重量を測定した結果を表7〜10に示す。なお、50〜400mm/secの範囲で印刷速度を変更した。
【0307】
なお、転写試験は非浸透媒体として普通紙(富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2、商品コードV436)を用いて実施した。抜き取った被記録媒体上の半硬化状態の下塗り液又は半硬化状態のインクに、均一な力(500〜1,000mN/cm2)で普通紙を押し付け、約1分間静置した。その後、静かに普通紙を剥がし、転写試験前後の普通紙の重量を測定し、下塗り液又はインクを形成した面積で除することによって、求めた。
【0308】
【表7】

【0309】
【表8】

【0310】
【表9】

【0311】
【表10】

【0312】
表7〜10の指標は以下の通りである。
不足(半硬化不足):下塗り液層の単位面積当たりの転写量(重量)M(下塗り液)と単位面積当たりに吐出するインクの最大重量m(インク)の関係は、
〔M(下塗り液)〕≧〔m(インク)/5〕
であった。若しくは、半硬化したインクの未硬化部の単位面積当たりの重量M(インクX)とその直後で付与するインクの単位面積当たりの最大重量m(インクY)の関係は、
〔M(インクX)〕≧〔m(インクY)/5〕
を満たしていた。
良好(半硬化良好):下塗り液層の単位面積当たりの転写量(重量)M(下塗り液)と単位面積当たりに吐出するインクの最大重量m(インク)の関係は、
〔m(インク)/10〕<〔M(下塗り液)〕<〔m(インク)/5〕
を満たしていた。若しくは、半硬化したインクの未硬化部の単位面積当たりの重量M(インクX)とその直後で付与するインクの単位面積当たりの最大重量m(インクY)の関係は、
〔m(インクY)/10〕<〔M(インクX)〕<〔m(インクY)/5〕
を満たしていた。
過剰(半硬化過剰):下塗り液層の単位面積当たりの転写量(重量)M(下塗り液)と単位面積当たりに吐出するインクの最大重量m(インク)の関係は、
〔m(インク)/10〕≧〔M(下塗り液)〕
であった。若しくは、半硬化したインクの未硬化部の単位面積当たりの重量M(インクX)とその直後で付与するインクの単位面積当たりの最大重量m(インクY)の関係は、
〔m(インクY)/10〕≧〔M(インクX)〕
であった。
【0313】
官能評価によって、文字がはっきり視認できる文字サイズを表11に示した。
ここに示す文字サイズが小さい方が好ましい。
【0314】
<十分な色濃度が得られる印刷速度(評価プリント画像:ベタ画像)>
印刷速度を800mm/sec、600mm/sec、400mm/sec、200mm/sec、100mm/secと変えて、印刷物を作製した。それぞれの印刷速度での画像濃度をグレタグ社製SPM100−IIにて測定した(下地に白色コートを置いて測定した)。表13に示す各印刷物での好ましい反射濃度が得られた印刷速度を表11に示した。ここに示す印刷速度は大きい方が好ましい。
【0315】
<十分な硬化性が得られる印刷速度(評価プリント画像:文字画像A、ベタ画像)>
印刷速度を800mm/sec、600mm/sec、400mm/sec、200mm/sec、100mm/secと変えて、印刷物を作製した。それぞれの印刷速度で転写テストを実施し、インクの転写が無くなる印刷速度を表12に示した。ここに示す印刷速度は大きい方が好ましい。
なお、転写試験は非浸透媒体として普通紙(富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2、商品コードV436)を用いて実施した。印刷物に均一な力(500〜1000mN/cm2)で普通紙を押し付け、約1分間静置した。その後、静かに普通紙を剥がし、普通紙へのインクの付着の有無を目視で確認した。評価結果を下記の表12に示す。
【0316】
【表11】

【0317】
表11中のNGは、打滴干渉が発生し均一なベタ画像が得られなかったことを示す。
十分な硬化性が得られる印刷速度の評価結果を以下に示す。
【0318】
【表12】

【0319】
【表13】

【図面の簡単な説明】
【0320】
【図1】本発明に好適に使用できるインクジェット記録装置の概念図の一例である。
【図2】半硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図3】未硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図4】未硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を打滴して得られた印刷物の他の一実施態様を示す断面模式図である。
【図5】完全硬化状態の下塗り液層上にインク組成物を打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図6】半硬化状態のインクX上にインクYを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図7】未硬化状態のインクX上にインクYを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図8】未硬化状態のインクX上にインクYを打滴して得られた印刷物の他の一実施態様を示す断面模式図である。
【図9】完全硬化状態のインクX上にインクYを打滴して得られた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図10】2次色画像の断面図の例である。
【符号の説明】
【0321】
1 下塗り液を付与する手段
2 下塗り液を半硬化させる手段
3W、3C、3M、3Y、3K インクジェット記録ヘッド
4W、4C、4M、4Y、4K インク組成物を半硬化させる手段
5 フルカラーの画像を完全に硬化させる手段
6 被記録媒体
7A、7B 被記録媒体搬送手段
10 画像
12 インク硬化物
14 半硬化状態の下塗り液層にインク組成物を付与された下塗り層
16 基材
18 未硬化状態の下塗り液層にインク組成物を付与された下塗り層
20 完全硬化状態の下塗り液層にインク組成物を付与された下塗り層
22 インクY硬化物
24 半硬化状態のインクXにインクYを付与されて得られたインクX硬化物
26 未硬化状態のインクXにインクYを付与されて得られたインクX硬化物
28 完全硬化状態のインクXにインクYを付与されて得られたインクX硬化物
30 先打滴のインク液層
32 後打滴のインク液層
34 独立した後打滴のインク液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク組成物A及びインク組成物Bを有し、
前記インク組成物Aは、エチレン性不飽和化合物、及び、ラジカル重合開始剤を含有し、
前記インク組成物Bは、オキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物、並びに、カチオン重合開始剤を含有することを特徴とする
インクジェット記録用インクセット。
【請求項2】
インク組成物Aが着色剤を含有し、該着色剤がシアン着色剤、マゼンタ着色剤、及び、ホワイト着色剤よりなる群から選択された少なくとも1つの着色剤である、請求項1に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項3】
インク組成物Bが着色剤を含有し、該着色剤がブラック着色剤及び/又はイエロー着色剤である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項4】
下塗り液体組成物をさらに含む、請求項1〜3いずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項5】
被記録媒体上にインク組成物Aを吐出する工程、
前記インク組成物Aを半硬化する工程、及び、
前記半硬化されたインク組成物A上にインク組成物Bを吐出する工程をこの順で有し、
前記インク組成物Aは、エチレン性不飽和化合物、及び、ラジカル重合開始剤を含有し、
前記インク組成物Bは、オキセタン化合物及び/又はオキシラン化合物、並びに、カチオン重合開始剤を含有することを特徴とする
インクジェット記録方法。
【請求項6】
前記インク組成物Aを吐出する工程の前に、
被記録媒体上に下塗り液体組成物を付与する工程を有する、
請求項5に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記インク組成物Aを吐出する工程の前に、
被記録媒体上に下塗り液体組成物を付与する工程、及び、
該下塗り液体組成物を半硬化させる工程をこの順で有する、
請求項5又は6に記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
インク組成物Aを半硬化する工程が、340〜400nmの範囲に発光ピークを有する紫外光を照射する工程である、請求項5〜7いずれか1つに記載のインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−221419(P2009−221419A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69633(P2008−69633)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】