説明

インクジェット記録装置、インク回収方法及びインクジェット記録方法

【課題】インクジェット記録装置でのインク回収について、新たな技術を提供することを目的とする。
【解決手段】メインタンク402からタンク間インクライン420A,420Bを介してサブタンク204にインクを供給し、サブタンク204からタンクヘッド間インクライン206を介して記録ヘッド202にインクを供給し、記録ヘッド202に形成されたノズルからインクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、サブタンク204内を加圧し、サブタンク204に収容されている黒色インクを、大気開放されたメインタンク402に逆流させることとしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置でのインク回収に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクジェット記録装置が、布帛その他の記録媒体への画像の記録に利用されている。そして、インクジェット記録装置については多くの技術が提案されている。例えば、布帛種等の被プリント媒体の変更とともに変更されるインクの交換を容易かつ清潔に行うことができる画像形成装置として、プリント媒体にプリントを行う1組のプリントヘッドに対して、当該プリントヘッドにインクを供給する供給系として、複数組のヘッド接合部、インク供給チューブ、ならびにインク貯蔵タンクを設けた構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、エアポンプとインクが封入されたインクパックを収納するケースとの間のエア流路に、ケース内に空気を供給する状態とケース内の空気を吸引する状態とを切り換えることができる加減圧バルブを介在させ、加減圧バルブを切り換えて、ケース内の空気を吸引して、ケース内を減圧することによってインパックの容積を増加させて、中継タンク内のインクをインクパック内に逆流させるインクジェット式プリンタが提案されている。なお、このインクジェット式プリンタによれば、例えば、使用するインクの種類を変更する際、インクの浪費を抑制することができるとされている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
なお、インクジェット記録装置では記録ヘッドに形成されたノズルの詰まりが問題となることがあるが、この点に関し、若干の空気がインクジェット記録ヘッド内に侵入するが、これらは何ら問題ではない、との報告もなされている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−246713号公報
【特許文献2】特開2005−138552号公報
【特許文献3】特開2000−85141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、インクジェット記録装置(特許文献1の画像形成装置、特許文献2のインクジェット式プリンタ)では、所定の場合、使用されるインクの交換(置換)が必要になる。
【0007】
本発明は、インクジェット記録装置でのインク回収について、新たな技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑みなされた本発明は、第1タンクからタンク間流路を介して第2タンクにインクを供給し、第2タンクからタンクヘッド間流路を介して記録ヘッドにインクを供給し、記録ヘッドに形成されたノズルからインクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、第2タンク内を加圧し、第2タンクに収容されているインクを、大気開放された第1タンクに逆流させることとしたものである。
【0009】
本発明を反映した第1の課題解決手段は、第1タンクからタンク間流路を介して第2タンクにインクを供給し、前記第2タンクからタンクヘッド間流路を介して記録ヘッドにインクを供給し、前記記録ヘッドに形成されたノズルから前記インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、前記第1タンクを大気開放状態に移行可能な第1弁機構と、前記タンク間流路を介して、前記第2タンクに収容されているインクを、前記第1弁機構によって大気開放された第1タンクに逆流させる場合に、前記インクジェット記録装置に接続された圧縮装置からの圧縮空気によって、前記第2タンクを加圧状態に移行させるための第2弁機構と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0010】
これによれば、第2タンクに収容されているインクを効率良く第1タンクに逆流させることができる。ここで、第1タンク内を減圧し、負圧を利用し、第2タンクに収容されているインクを回収する構成と比較し、第1の課題解決手段による構成は、次の点において有用である。先ず、減圧する構成によれば、インクに含まれる溶存気体が発泡し、これによってインクの流路内に気体が発生してしまうのに対し、第1の課題解決手段のインクジェット記録装置では、このような現象が発生しない。ここで、溶存気体が発泡し、インクの流路内に発生した気体は、記録ヘッドのインク吐出用のノズルを詰まらせる原因となる。
【0011】
次に、減圧する構成によれば、発生させられる圧力差は約0.1MPa(大気圧)である。これに対し、第1の課題解決手段による構成によれば、これ以上の圧力で第2タンクを加圧することが可能である。したがって、第2タンクに収容されたインクを、より勢いよく逆流させることが可能で、インクの回収効率を向上させることができる。例えば、回収に要する時間を短縮することができる。
【0012】
第2の課題解決手段は、第1の課題解決手段のインクジェット記録装置であって、前記タンクヘッド間流路に、前記タンクヘッド間流路を開閉する第3弁機構を備えることを特徴とする。
【0013】
これによれば、第2タンク内の圧力が記録ヘッドに作用することを防止することができる。
【0014】
第3の課題解決手段は、第1又は第2の課題解決手段のインクジェット記録装置であって、前記インクジェット記録装置は、第1のタンク間流路と第2のタンク間流路とを備え、前記第1タンクと前記第2タンクとは前記第1のタンク間流路と前記第2のタンク間流路とのいずれか一方にて接続されていることを特徴とする。
【0015】
これによれば、インクの交換(インク置換)を容易に行うことができる。具体的には、インク毎に、第1のタンク間流路と第2のタンク間流路とを切り換えることができるため、インクの交換にともなうインクジェット記録装置の洗浄個所が減少し、これによって洗浄に要する作業時間を短縮することができる。
【0016】
第4の課題解決手段は、第1タンクからタンク間流路を介して第2タンクにインクを供給し、前記第2タンクからタンクヘッド間流路を介して記録ヘッドにインクを供給し、前記記録ヘッドに形成されたノズルから前記インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記第1タンクに前記第2タンクに収容されているインクを回収するインク回収方法であって、前記第1タンクに備えられた第1弁機構を大気開放状態に移行する第1工程と、前記第1工程後に、前記第2タンク内を加圧し、前記第2タンクに収容されているインクを、前記タンク間流路を介して、前記第1タンクに逆流させる第2工程と、を含むことを特徴とするインク回収方法である。
【0017】
これによれば、第2タンクに収容されているインクを効率良く第1タンクに逆流させることができる。
【0018】
第5の課題解決手段は、第1タンクからタンク間流路を介して第2タンクにインクを供給し、前記第2タンクからタンクヘッド間流路を介して記録ヘッドにインクを供給し、前記記録ヘッドに形成されたノズルから前記インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記第1タンクに備えられた第1弁機構を大気開放状態に移行する第1工程と、前記第1工程後に、前記第2タンク内を加圧し、前記第2タンクに収容されている一のインクを、前記タンク間流路を介して、大気開放された第1タンクに逆流させ、前記第1タンクに前記一のインクを回収する第2工程と、前記第2工程後に、前記第2工程において回収された一のインクが収容された第1タンクを、前記回収されたインクとは異なる他のインクが収容された第1タンクに交換する第3工程と、前記第1弁機構を作動し、大気開放状態にある前記第1タンクを加圧状態に移行し、前記第1タンクに収容された他のインクを、前記タンク間流路を介して前記第2タンクに供給する第4工程と、前記第2タンクに供給された他のインクを、前記第2タンクから前記タンクヘッド間流路を介して前記記録ヘッドに供給する第5工程と、前記ノズルから前記他のインクを吐出して前記記録媒体に前記画像を記録する第6工程と、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法である。
【0019】
これによれば、インクジェット記録装置で使用されるインクを効率的に交換し、記録媒体に画像を記録することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、インクジェット記録装置でのインク回収について、新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】インクジェット記録装置の外観を示す図
【図2】メインタンク(断面)及びフィルタを示す図
【図3】キャリッジ(断面)を示す図
【図4】インクジェット記録装置を構成する各部の接続状態を示す図
【図5】インク回収及びインク置換の工程を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を反映した上記課題解決手段を実施するための実施形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。上記課題解決手段は以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。
【0023】
(インクジェット記録装置の概要)
図1は、インクジェット記録装置の全体(正面)を示す図である。インクジェット記録装置100は、キャリッジ200と搬送装置300とインク供給装置400とメンテナンス装置500とを備える。また、インクジェット記録装置100は、タイミングベルト等のキャリッジ駆動機構600を備える。インクジェット記録装置100においてキャリッジ200は、キャリッジ駆動機構600によって水平方向(図1のキャリッジ200内に記載の矢印(移動方向)参照)に移動可能に設置されている。
【0024】
インクジェット記録装置100は、いわゆる走査型の記録装置であって、キャリッジ200を、記録媒体320の搬送方向に対し垂直方向に、所定の範囲、移動させながら、記録媒体320に画像を記録する。例えば、記録媒体320の素材が布帛であるとき、紫外線等の光線により硬化するインク又は電子線照射型のインク等が使用される。画像の記録に使用されるインクは、インク供給装置400からキャリッジ200に、タンク間インクライン(タンク間流路)420を介して供給される。
【0025】
タンク間インクライン420は、主として使用されるインク、例えば、黒色インクの流路である第1タンク間インクライン420Aと、所定の場合に黒色インクに置換して使用されるインク、例えば、青色インクの流路である第2タンク間インクライン420Bとを含む。キャリッジ200(具体的には、キャリッジ200内のサブタンク。詳細は後述する。)とインク供給装置400(具体的には、インク供給装置400内のメインタンク。詳細は後述する。)とは、第1タンク間インクライン420A,420Bのいずれか一方を介して接続されている。
【0026】
メンテナンス装置500は、キャリッジ200がキャリッジ駆動機構600によってメンテナンス装置500の上部へ移動してきた際に、キャリッジ200を構成する記録ヘッド202(図3参照)のノズル面を清掃(ワイピング)し、記録ヘッド202に形成されたノズルのリフレッシュを行う機能等を有する装置である。
【0027】
なお、インクジェット記録装置100は、自装置の制御を司る制御装置(図示を省略)を備える。制御装置は、インクジェット記録装置100において自動的に実行される各種動作を制御する。ここで、制御装置は、例えば、演算処理を実行するCPUと、各種処理のためのプログラムを記憶するROMと、演算処理を実行するための作業領域としてのRAMにより構成され、CPUが、ROMに記憶された、例えば、画像の記録動作のためのプログラムをRAM上で実行することで、記録媒体320に画像が記録される。また、CPUが、ROMに記憶された、例えば、メインタンクへのインク回収及びインク置換のためのプログラムをRAM上で実行することで、インクジェット記録装置100を構成する各部が作動し、インクが回収、置換される。インクジェット記録装置100でのインク回収等の動作についての詳細は、後述する。
【0028】
図2は、インク供給装置内に備えられるメインタンク及びフィルタを示す図である。
メインタンク402は、インク、例えば、主として使用される黒色インクを収容したインクボトル404と、インクボトル404を収納する金属容器406とを含む。メインタンク402は、重量計408の上に設置され、その重量が計測される。重量計408による計量によって、例えば、メインタンク402(詳細には、インクボトル404)に収容されているインクの量を検出することができる。
【0029】
金属容器406には、三方弁(第1弁機構)410が取り付けられている。金属容器406は密閉構造を有する。三方弁410を第1方向に切り替えると、所定の圧縮装置(図4参照)によって圧縮された空気が、金属容器406内に流入し、インクボトル404に収容されたインクが圧縮空気により加圧される。加圧されたインクは、タンク間インクライン420を介して、キャリッジ200側に供給(圧送)される。タンク間インクライン420には、タンク間インクライン420の開閉を制御するインク供給制御弁422(図4参照)が設置されている。キャリッジ200側にインクが圧送される場合、インク供給制御弁422は開放状態にされる。
【0030】
例えば、黒色インクを収容したインクボトル404が金属容器406に収納されている場合、圧縮空気により加圧された黒色インクは、第1タンク間インクライン420A及び開放状態の第1インク供給制御弁422A(図4参照)を介して、キャリッジ200側に圧送される。なお、この場合、第2インク供給制御弁422Bは閉鎖状態にされている。また、青色インクを収容したインクボトル404が金属容器406に収納されている場合、圧縮空気により加圧された青色インクは、第2タンク間インクライン420B及び開放状態の第2インク供給制御弁422B(図4参照)を介して、キャリッジ200側に圧送される。なお、この場合、第1インク供給制御弁422Aは閉鎖状態にされている。
【0031】
タンク間インクライン420を介して圧送されるインクは、タンク間インクライン420に設置されたフィルタ412を通過する際、ろ過され、これによって、インク内の不純物が除去される。なお、フィルタ412は、必須の構成ではなく、フィルタ412を設置するか否かは、所定の条件の下、適宜判断される。三方弁410を第2方向に切り替えると、金属容器406の内部は大気開放状態(大気圧)になる。メインタンク402は、インクボトル404に収容されたインクを攪拌する攪拌装置414を備える。
【0032】
図3は、キャリッジを示す図である。キャリッジ200は、インクを吐出するノズルが形成された記録ヘッド202と、インク供給装置400のメインタンク402から供給されるインクを収容するサブタンク204とを含む。記録ヘッド202とサブタンク204とはタンクヘッド間インクライン(タンクヘッド間流路)206により接続されている。サブタンク204に収容されたインクは、メインタンク402から圧送されるインク圧力によって、記録ヘッド202に供給される。サブタンク204はエアライン接続口208を備える。
【0033】
タンクヘッド間インクライン206には、所定のバルブ(第3弁機構)210が設置されている。なお、バルブ210は、タンクヘッド間インクライン206の開閉を制御することができるものであれば、いずれの構成(種類)をも採用することができる。バルブ210が開放状態である場合、サブタンク204に収容されているインクを記録ヘッド202に供給(圧送)することができる。バルブ210が閉鎖状態である場合、記録ヘッド202とサブタンク204との間は遮断される。
【0034】
図4は、インクジェット記録装置を構成する各部の接続状態を示す図である。図4の各部に付した符号に関し、図2及び図3に記載の各構成と同一の構成を示すものについては、同一の符号を付している。以下において上述した構成は、その説明を省略する。
【0035】
サブタンク204が備えるエアライン接続口208には、エアライン212が接続されている。エアライン212は、所定の個所で真空ポンプ側と圧縮装置側との2方向に分岐し、分岐した各々には、電磁弁214A,214B(第2弁機構)が接続されている。ここで、電磁弁214A,214Bは、次のように作動する。例えば、記録ヘッド202のノズルが詰まり、これを解消する場合、又は、サブタンク204に収容されているインクを逆流させ、メインタンク402に回収する場合、電磁弁214Aが閉鎖状態となり、電磁弁214Bが開放状態になる。電磁弁214A,214Bが、このような状態に作動することにより、サブタンク204内に圧縮空気が流入し、サブタンク204内は加圧状態になる。
【0036】
これに対し、インクジェット記録装置100が通常の状態(例えば、記録媒体320に画像を記録可能な状態)である場合、電磁弁214Aが開放状態となり、かつ電磁弁214Bが閉鎖状態となる。電磁弁214A,214Bが、このような状態に作動することにより、サブタンク204内の空気が吸引され、サブタンク204内は負圧状態になる。サブタンク204内を負圧状態とすることで、下向きに設置された記録ヘッド202からのインク漏れが防止される。
【0037】
詳細は後述するが、サブタンク204に収容されているインクを逆流させ、メインタンク402に回収する場合の三方弁410、インク供給制御弁422、バルブ210及び電磁弁214A,214Bの各状態を、ノズル詰まりを解消する場合と比較し、説明する。上述のとおり、電磁弁214Aが閉鎖状態であり、電磁弁214Bが開放状態である点において両者は共通する。これに対し、ノズル詰まりを解消する場合、インク供給制御弁422は閉鎖状態であるが、インク回収時においてインク供給制御弁422は開放状態である。ノズル詰まりを解消する場合、インク供給制御弁422が閉鎖状態であるため、三方弁410の状態は問題とならないのに対し、インク回収時において三方弁410は開放状態である。本実施形態の構成では、このようにノズル詰まりを解消するために設けられていた各弁機構を利用して効率的なインク回収を実現している。なお、ノズル詰まりを解消する場合、電磁弁214A,214Bを所定の状態にした後、所定の時間経過(インク押し出しのために指定された時間)を条件として、電磁弁214Bを閉鎖状態にし、電磁弁214Aを開放状態にする(上記「インクジェット記録装置100が通常の状態である場合」の記載参照)。
【0038】
(インク回収工程及びインク置換工程)
図5は、インク回収工程及びインク置換工程を説明する図である。なお、以下では、主として使用されている黒色インクを回収し、青色インクに置換する場合を例に説明する。先ず、図5の「(A)黒色インク記録工程」は、例えば、布帛等の記録媒体320に黒色インクを使用して画像を記録しているインクジェット記録装置100の各部の状態を示したものである。メインタンク402には黒色インクが収容(金属容器406に黒色インクを収容したインクボトル404が収納された状態)されている。この黒色インクはフィルタ412と第1タンク間インクライン420Aと第1インク供給制御弁422Aとを通過して、キャリッジ200のサブタンク204に供給される。また、黒色インクは、サブタンク204から、タンクヘッド間インクライン206とバルブ210とを通過し、記録ヘッド202に供給され、記録ヘッド202に形成されたノズルから吐出される。したがって、上記各部は、黒色インクが充填された状態になっている。
【0039】
記録ヘッド202に形成されたノズルから黒色インクが吐出されている場合、インク供給制御弁422Aは閉鎖状態とされる。ここで、サブタンク204に収容されたインクが、画像記録にともない所定量以下となった場合、インク供給制御弁422Aが開放状態にされ、メインタンク402の黒色インクが第1タンク間インクライン420Aを介してサブタンク204に圧送される。
【0040】
このような状態から使用するインクを青色インクに置換する場合、先ず、黒色インクが回収される(図5の「(B)黒色インク回収工程」参照)。具体的には、メインタンク402の三方弁410が、三方弁のタイプに応じた所定の方法によって作動し、メインタンク402内が大気開放状態にされる。また、これとともに、バルブ210についても、そのタイプに応じた所定の方法で、開放状態(サブタンク204から記録ヘッド202にインクを供給可能な状態)から閉鎖状態(サブタンク204と記録ヘッド202との間が遮断された状態)にされる。なお、バルブ210が電磁弁等である場合、制御装置は、閉鎖状態に移行するための指示を取得し、バルブ210が閉鎖状態となるよう制御する。
【0041】
そして、制御装置は、「(A)黒色インク記録工程」において開放状態にされていた電磁弁214A(図4参照)を閉鎖状態にし、かつ閉鎖状態にされていた電磁弁214B(図4参照)を開放状態にする。これにより、サブタンク204内に圧縮装置(図4参照)による圧縮空気が流入し、サブタンク204内が大気圧以上の加圧状態に移行する。上述のとおり、記録ヘッド202のノズルが詰まった場合もサブタンク204内が加圧状態にされるが、インク回収時のサブタンク204内の圧力は、ノズル詰まりの場合と比較し同等以上に設定される。例えば、サブタンク204内は、圧縮装置から供給される約70kPa〜90kPaの圧縮空気によって加圧される。なお、インク回収時の圧縮空気の圧力について、インク粘度を考慮し、より高圧、例えば、200kPaを上限とした範囲内に設定される場合もある。
【0042】
また、制御装置は、電磁弁214A,214Bに対する制御を実行するとともに、第1インク供給制御弁422Aが開放状態となるよう制御する。これによって、サブタンク204に収容されている黒色インクは、サブタンク204から排出され、第1タンク間インクライン420A等をメインタンク402側に逆流し、メインタンク402に回収される。なお、「(B)黒色インク回収工程」において、第2タンク間インクライン420Bを経由した流路は遮断されており、サブタンク204内が加圧状態となった場合、黒色インクが第2タンク間インクライン420Bに流入することはない。
【0043】
黒色インクの回収状況は、重量計408によって計測される値に基づき判断される。例えば、制御装置は、重量計408によって計測される値を所定の間隔で繰り返して取得し、取得した値に変動がないことを検出したとき、サブタンク204に収容されていた黒色インクの回収が終了したと判断する。重量計408が示す値を視認した作業者が、同様の判断を行うような構成とすることもできる。なお、インク回収の終了は、これ以外の手法によって判断することもできる。例えば、予め第1タンク間インクライン420A等の容積と、回収流路上の各部の容積を取得しておき、インク回収に要する時間を算出し、この時間の経過をもって、終了と判断するような構成を採用することもできる。インク回収動作が終了したと判断された場合、制御装置は、開放状態にある電磁弁214Bを閉鎖状態にする。
【0044】
「(B)黒色インク回収工程」が終了したと判断された場合、続けて、「(C)メインタンク&各部交換及び記録ヘッド洗浄工程」が実行される。この工程では、メインタンク402に収容されている黒色インクが青色インクに交換(置換)される。具体的には、作業者が、金属容器406から黒色インクが収容されたインクボトル404を取り出し、青色インクが収容されているインクボトル404を新たに金属容器406に収納する。また、作業者はフィルタ412を交換する。さらに、作業者はサブタンク204を交換する。なお、各部の交換(取外し、取付け)作業は、どのような順序で行われてもよい。
【0045】
作業者は、タンクヘッド間インクライン206がサブタンク204に接続されていない状態で、タンクヘッド間インクライン206にインク置換装置(図示を省略)を接続し、記録ヘッド202に透明インクを供給する。これによって、記録ヘッド202内に残存している黒色インクがノズルから排出され、透明インクに置換される(図5の「(C)メインタンク&各部交換及び記録ヘッド洗浄工程」における記録ヘッド202参照)。すなわち、記録ヘッド202内から黒色インクが除去(洗浄)される。なお、布帛等の記録媒体320への画像の記録には、上述しとおり紫外線硬化型のインク等が使用されるが、このようなインクは、例えば、水に溶解しない。そのため、記録ヘッド202の洗浄には、透明インクが利用され、黒色インクを透明インクで洗い流すこととしている。
【0046】
作業者は、記録ヘッド202を洗浄した後、タンクヘッド間インクライン206に青色インク用のサブタンク204を接続する。また、作業者は、新たに接続されたサブタンク204にタンク間インクライン420を接続する。この際、作業者は、サブタンク204に、黒色インクの場合とは異なり、第2インク供給制御弁422Bを含む第2タンク間インクライン420Bを接続する。さらに、作業者は、メインタンク402に第2タンク間インクライン420Bを接続する(例えば、図2参照)。
【0047】
「(C)メインタンク&各部交換及び記録ヘッド洗浄工程」が終了した後、続けて、「(D)青色インク供給工程」が実行される。この工程では、先ず、メインタンク402の三方弁410が、所定の方法で圧縮装置側に切り換えられる(図4参照)。これにより、金属容器406内に圧縮空気が流入し、メインタンク402内は加圧状態になる。また、制御装置は、第2インク供給制御弁422Bを開放状態にする。これにより、メインタンク402に収容(詳細には、インクボトル404に収容)されている青色インクが第2タンク間インクライン420Bを介してサブタンク204に供給(圧送)される。
【0048】
次に、制御装置は、閉鎖状態にある電磁弁214Bを開放状態にする。閉鎖状態にある電磁弁214A(図4参照)は、そのままの状態が維持される。これにより、サブタンク204内は加圧状態となる。なお、サブタンク204内は、圧縮装置から供給される約70kPa〜90kPaの圧縮空気によって加圧される。また、制御装置は、開放状態にある第2インク供給制御弁422Bを閉鎖状態にする。これにより、サブタンク204に収容されている青色インクが、第2タンク間インクライン420Bを逆流することなく、タンクヘッド間インクライン206を介して記録ヘッド202に供給される。ここで、供給される青色インクの量は、例えば、50cc程度である。青色インクが供給された記録ヘッド202では、透明インクがノズルから排出される(図5の「(E)記録ヘッド送液工程」参照)。なお、バルブ210は、所定のタイミングで開放状態にされている。
【0049】
以上の工程が終了した場合、インクジェット記録装置の各部は、青色インクが充填された状態になり、布帛等の記録媒体320に、青色インクを使用して画像を記録することができる。
【0050】
(本実施形態による有利な効果)
以上に説明した本実施形態の構成によれば、サブタンク204に収容されているインクをメインタンク402に回収する場合、サブタンク204を大気圧以上の圧力に加圧するため、サブタンク204に収容されているインクを、効率よく回収することができる。なお、本実施形態の構成によれば、メインタンク402側が負圧の状態になることがなく、したがって、インクに含まれる溶存気体が発泡し、発泡による気体がインクの流路内(メインタンク402、サブタンク204、タンク間インクライン420、タンクヘッド間インクライン206)に発生することがない。また、負圧に耐え得る部材を採用した構成とする必要がない。
【0051】
本実施形態の構成によれば、サブタンク204に収容するためにサブタンク204を大気圧以上の圧力に加圧する場合、バルブ210が閉鎖状態とされるため、サブタンク204内の圧力がノズルに作用することがなく、ノズル内のインクを、その状態に維持することができる。種々の点を考慮し、ノズルからインク流路内への気体(空気)の侵入を防止すべき場合であっても、ノズル内にインクが維持されるため、ノズルからの侵入による気体がインク流路内に発生することがない。
【0052】
(変形例)
以上説明した構成の他、次のような構成を採用することができる。
【0053】
(1)上記では、メインタンク402内、より詳細には、金属容器406内を大気開放状態とするための構成として三方弁410を採用した。三方弁410のタイプとしては、手動のもの又は電磁弁等の構成を採用することができる。例えば、三方弁410として電磁弁を採用した場合、インクジェット記録装置100の制御装置は、自身を構成するROMからインク回収のためのプログラムをRAM上で実行することで、この電磁弁を大気開放状態となる方向に切り換える。すなわち、制御装置は、メインタンク402(金属容器406)が大気開放状態に移行するよう電磁弁を制御する。なお、制御装置は、これとともに、開放状態にあるタンクヘッド間インクライン206が閉鎖状態となるようバルブ210を制御する。そして、メインタンク402が大気開放状態で、かつタンクヘッド間インクライン206が閉鎖状態である場合に、制御装置は、サブタンク204内が加圧状態になるよう制御する(電磁弁214Aを閉鎖状態とし、電磁弁214Bを開放状態に制御する。)。各弁(バルブ)に手動のものを採用した構成では、各弁は作業者によって操作される。
【0054】
これによれば、インクジェット記録装置100において、インク回収動作を適切に自動制御することができる。なお、この変形例の場合、三方弁410同様、バルブ210についても、電気信号の入力によって作動する電磁弁等を採用する。
【0055】
(2)上記では、主として使用されるインクを黒色インクとし、置換して使用されるインクを青色インクとして説明した。しかし、主として使用されるインク及び置換して使用されるインクの色は、いずれの色であってもよい。例えば、主として使用されるインクを、青色インク又は赤色インクとし、置換して使用されるインクを、黒色インク又は透明インクとすることもできる。
【0056】
(3)上記では、置換して使用されるインクを青色のインク1色とし、したがって、置換時に使用されるタンク間インクライン420及びインク供給制御弁422について、第2タンク間インクライン及び第2インク供給制御弁422Bを備えるインクジェット記録装置100に基づき説明した。しかし、これ以外の構成を採用することもできる。例えば、青色インクの他にも、置換して使用されるインクがある場合、これ用の第3タンク間インクライン及び第3インク供給制御弁を採用したインクジェット記録装置とすることができる。置換して使用されるインクの色(種類)に応じて、置換時のタンク間インクライン420及びインク供給制御弁422を備える構成とすればよい。
【0057】
(4)上記では、サブタンク204のインクを回収するに際し(図5の「(B)黒色インク回収工程」参照)、サブタンク204内を加圧状態とするために電磁弁214Aを閉鎖状態とする一方、電磁弁214Bを開放状態に作動させる構成を採用した。しかし、これ以外の構成を採用することもできる。例えば、電磁弁214A及び電磁弁214Bを、1つの弁(三方弁)とした構成とすることもできる。この場合、サブタンク204のインクを回収する際、三方弁は真空ポンプ側を遮断し、圧縮装置側が開放される状態に作動する。
【0058】
(5)上記では、「(B)黒色インク回収工程」でサブタンク204が加圧状態に移行する際、バルブ210を閉鎖状態としていた。しかし、これ以外の構成を採用することもできる。記録ヘッド202に形成されたノズルの径は、サブタンク204に収容されたインクが逆流するタンク間インクライン420の径と比較し、極めて小さい。したがって、バルブ210を閉鎖状態とすることなく、換言すれば、バルブ210を開放状態のままで、サブタンク204を加圧状態としても、サブタンク204に収容されたインクの多くは、タンク間インクライン420を逆流する。この場合、バルブ210の開閉を実行する必要がなく、この点において、回収工程を簡素化することができる。バルブ210そのものを備えない構成のインクジェット記録装置100とすることもできる。
【符号の説明】
【0059】
100 インクジェット記録装置
202 記録ヘッド
204 サブタンク
206 タンクヘッド間インクライン
210 バルブ
214A、214B 電磁弁
402 メインタンク
404 インクボトル
406 金属容器
410 三方弁
420 タンク間インクライン
420A 第1タンク間インクライン
420B 第2タンク間インクライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1タンクからタンク間流路を介して第2タンクにインクを供給し、前記第2タンクからタンクヘッド間流路を介して記録ヘッドにインクを供給し、前記記録ヘッドに形成されたノズルから前記インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記第1タンクを大気開放状態に移行可能な第1弁機構と、
前記タンク間流路を介して、前記第2タンクに収容されているインクを、前記第1弁機構によって大気開放された第1タンクに逆流させる場合に、前記インクジェット記録装置に接続された圧縮装置からの圧縮空気によって、前記第2タンクを加圧状態に移行させるための第2弁機構と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記タンクヘッド間流路に、前記タンクヘッド間流路を開閉する第3弁機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記インクジェット記録装置は、第1のタンク間流路と第2のタンク間流路とを備え、前記第1タンクと前記第2タンクとは前記第1のタンク間流路と前記第2のタンク間流路とのいずれか一方にて接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
第1タンクからタンク間流路を介して第2タンクにインクを供給し、前記第2タンクからタンクヘッド間流路を介して記録ヘッドにインクを供給し、前記記録ヘッドに形成されたノズルから前記インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記第1タンクに前記第2タンクに収容されているインクを回収するインク回収方法であって、
前記第1タンクに備えられた第1弁機構を大気開放状態に移行する第1工程と、
前記第1工程後に、前記第2タンク内を加圧し、前記第2タンクに収容されているインクを、前記タンク間流路を介して、前記第1タンクに逆流させる第2工程と、を含むことを特徴とするインク回収方法。
【請求項5】
第1タンクからタンク間流路を介して第2タンクにインクを供給し、前記第2タンクからタンクヘッド間流路を介して記録ヘッドにインクを供給し、前記記録ヘッドに形成されたノズルから前記インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記第1タンクに備えられた第1弁機構を大気開放状態に移行する第1工程と、
前記第1工程後に、前記第2タンク内を加圧し、前記第2タンクに収容されている一のインクを、前記タンク間流路を介して、大気開放された第1タンクに逆流させ、前記第1タンクに前記一のインクを回収する第2工程と、
前記第2工程後に、前記第2工程において回収された一のインクが収容された第1タンクを、前記回収されたインクとは異なる他のインクが収容された第1タンクに交換する第3工程と、
前記第1弁機構を作動し、大気開放状態にある前記第1タンクを加圧状態に移行し、前記第1タンクに収容された他のインクを、前記タンク間流路を介して前記第2タンクに供給する第4工程と、
前記第2タンクに供給された他のインクを、前記第2タンクから前記タンクヘッド間流路を介して前記記録ヘッドに供給する第5工程と、
前記ノズルから前記他のインクを吐出して前記記録媒体に前記画像を記録する第6工程と、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−221602(P2010−221602A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73004(P2009−73004)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】