インクジェット記録装置および記録データ生成方法
【課題】インクジェット記録装置の記録特性に応じたノズル間の記録データ分配によるドット記録位置の違いが生じず、つなぎ処理をしても濃度むらが低減できる。
【解決手段】ドットを記録するための記録データを、ある記録ヘッドに設けられた第1の記録素子により使用されるデータと、同じ記録ヘッドに設けられた第2の記録素子により使用されるデータとに分配する。記録素子の配列方向において記録領域がオーバーラップする、第1の記録ヘッドの記録素子列の一部と第2の記録ヘッドの記録素子列の一部とのそれぞれから記録に使用される記録データを、オーバーラップする記録領域の記録に使用する記録素子のうちの端の記録素子の配列方向の位置が一致する同じ記録ヘッドに設けられている第1の記録素子列と第2記録素子列とを組とし、第1記録ヘッド組からの記録に使用されるデータ量と第2記録ヘッド組からの記録に使用されるデータ量との比率を決定する。
【解決手段】ドットを記録するための記録データを、ある記録ヘッドに設けられた第1の記録素子により使用されるデータと、同じ記録ヘッドに設けられた第2の記録素子により使用されるデータとに分配する。記録素子の配列方向において記録領域がオーバーラップする、第1の記録ヘッドの記録素子列の一部と第2の記録ヘッドの記録素子列の一部とのそれぞれから記録に使用される記録データを、オーバーラップする記録領域の記録に使用する記録素子のうちの端の記録素子の配列方向の位置が一致する同じ記録ヘッドに設けられている第1の記録素子列と第2記録素子列とを組とし、第1記録ヘッド組からの記録に使用されるデータ量と第2記録ヘッド組からの記録に使用されるデータ量との比率を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置および記録データ生成方法に関し、詳しくは、重複した記録領域を有する複数の記録ヘッドを備えた記録ヘッドユニットを用いて記録を行う際の記録データ生成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどのインクジェット記録装置で用いられる、複数の記録ヘッドを配列してそれぞれの記録ヘッドより長い一定の範囲にわたってノズルを配列した記録ヘッドユニットでは、隣接する記録ヘッドの一部が重複した記録領域を有するように記録ヘッドが配列される。そして、上記重複する記録領域を記録するそれぞれの記録ヘッドの一部の記録データは、他の重複しない部分の記録データ生成とは異なる態様で行われる。すなわち、上記重複する記録領域の記録データは、それぞれの記録ヘッドに所定の割合で分配する記録データ生成処理が行われる(以下、つなぎ処理ともいう)。
【0003】
また、上述のような複数の記録ヘッドが配列して構成される記録ヘッドユニットのように多数のノズルが設けられた記録ヘッドユニットでは、複数のノズル間で吐出量などの記録特性にわずかながらばらつきがあることが多い。そして、このようなばらつきに起因した記録画像における濃度むらを低減するための提案が従来なされている。その一例として、には、複数のノズルの実際の液滴量を求め、これに基づいて、吐出液滴量の比較的多いノズルと少ないノズルの使用比率、つまり、記録データの分配率を定めることにより全体として目標平均液滴量になるようにすることが記載されている。これにより、複数のノズル間で吐出量などの記録特性にばらつきがあっても濃度むらが低減された記録を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7249815号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、に記載の技術では、記録濃度のばらつきが補正される一方、記録されるドットのパターンが変化することがある。すなわち、吐出液滴量の比較的多いノズルと少ないノズルの使用比率によっては、本来あるノズルで記録しようとしていたドットが上記分配によって他のノズルで記録されることになり、記録位置が異なってしまうことがある。このため、一定以上の大きな補正を行おうとすると、濃度は補正されるもののドットパターンの違いが視認されてしまい、画像品位が低下することになる。
【0006】
ところで、以上のような記録特性に応じたノズル間の記録データの分配が適切に行われてドットパターンの違いが生じないとしても、上述したつなぎ処理を適用すると、上記分配処理における記録データの排他性が損なわれるという問題がある。そして、その結果として、記録ドットの欠損や重複が発生し別の濃度むらを生じることになる。
【0007】
本発明の目的は、記録特性に応じたノズル間の記録データ分配によるドット記録位置の違いを生じず、またつなぎ処理を行っても記録ドットの欠損などによる濃度むらを低減することが可能なインクジェット記録装置および記録データ生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインクジェット記録装置は、
記録媒体上に第1のサイズのドットを形成するための第1の記録素子が配列されている第1の記録素子列と、第1のサイズより小さい第2のサイズのドットを形成するための第2の記録素子が配列されていて、前記第1の記録素子列と沿うように設けられた第2の記録素子列と、がそれぞれ記録素子の配列方向と交差する方向に配列された記録ヘッドの複数個を有し、異なる前記記録ヘッドの前記記録素子列の一部同士が前記配列方向で対応する記録媒体上の記録領域がオーバーラップするように配置されている記録ヘッドユニットを用いて記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記ドットを記録するための記録データを、ある記録ヘッドに設けられた前記第1の記録素子による記録に使用されるデータと、同じ前記記録ヘッドに設けられた前記第2の記録素子による記録に使用されるデータと、に分配する分配手段と、
前記配列方向において記録領域がオーバーラップする、第1の記録ヘッドの前記記録素子列の一部と第2の記録ヘッドの前記記録素子列の一部とのそれぞれからの記録に使用される前記記録データを、オーバーラップする前記記録領域の記録に使用する記録素子のうちの端の記録素子の前記配列方向の位置が一致している同じ記録ヘッドに設けられている前記第1の記録素子列と前記第2の記録素子列とを組とし、前記第1の記録ヘッドの前記組からの記録に使用されるデータの量と前記第2の記録ヘッドの前記組からの記録に使用されるデータの量との比率を決定する決定手段と、
を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の構成によれば、記録特性に応じたノズル間の記録データ分配によるドット記録位置の違いを生じず、またつなぎ処理を行っても記録ドットの欠損などによる濃度むらを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用可能な記録装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】(a)および(b)は、記録ヘッドユニットの詳細構成を示す図である。
【図3】第1実施形態の画像処理の図である。
【図4】第1実施形態の画像処理を説明するフローチャートである。
【図5】(a)および(b)は、誤差拡散処理の一例を説明する図である。
【図6】第1実施形態の各量子化Levelの大小ドット分配パターンを説明する説明図である。
【図7】つなぎ処理を説明する図である。
【図8】(a)〜(d)は、本発明の課題を説明する図である。
【図9】(a)および(b)は、同じく本発明の課題を説明する図である。
【図10】第1実施形態に係るノズル吐出量補正処理における、記録データを大小ノズルへ分配するための分配率を決定する処理を示すフローチャートである。
【図11】第1実施形態に係る斥力ポテンシャルを用いた大小ドット分配パターン生成処理を示すフローチャートである。
【図12】第1実施形態の斥力ポテンシャルを用いた分配パターン生成過程を説明する図である。
【図13】上記斥力ポテンシャルを説明する説明図である。
【図14】(a)〜(c)は、本発明に適用可能なつなぎ処理の概略を説明する図である。
【図15】(a)〜(d)は、第1実施形態の大小ノズル列ペア決定の説明をする図である。
【図16】第2実施形態の画像処理の概要を説明する図である。
【図17】第2実施形態の画像処理を説明するフローチャートである。
【図18】(a)〜(c)は、第2実施形態に係る大小ノズル列ペア決定の説明をする図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
<ラインプリンタ概要>
図1は、本発明の一実施形態にかかるインクジェット記録装置1の概略構成を示すブロック図である。記録装置1はインクジェット式のラインプリンタであり、同図に示すように制御ユニット2、インクカートリッジ61〜64、記録ヘッドユニット7、記録媒体搬送機構8などを備えている。インクカートリッジ61〜64には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の色を表す各インクに対応している。
【0013】
記録ヘッドユニット7は、フルラインタイプの記録ヘッドユニットであり、記録媒体と対向する面に、記録媒体の搬送方向と直交する方向に配列した複数のノズルからなる、インク色ごとのノズル列を複数備えている。本実施形態の記録ヘッドは、熱によってインク中に発生する気泡によってノズルからインクを吐出する方式のものである。インクカートリッジ61〜64内の各インクは、インク導入管61a〜64aを通じて記録ヘッドの対応するインク色ごとの各ノズルに供給され、これらのノズルからインクが吐出されて、記録媒体100に記録が行われる。
【0014】
記録媒体搬送機構8は、紙送りモーター81と紙送りローラー82を備えている。紙送りモーター81は紙送りローラー82を回転させることにより、記録媒体100を記録ヘッドユニット7の位置まで紙送りローラー82と直交する方向に搬送する。
【0015】
コンピュータによって構成される制御ユニット2は、CPU3とRAM41とROM42などを有して構成されており、上述した記録ヘッドユニット7や紙送りローラー81の動作を制御する。また、CPU3は、ROM42内に記憶された制御プログラムをRAM41に展開して実行することにより、図4などを参照して後述する記録データ生成などの処理や記録媒体搬送機構8の制御などを行う。
【0016】
図2(a)および(b)は、図1に示した記録ヘッドユニット7の詳細構成を1つのインク色について示す図である。図2(a)に示すように、本実施形態の記録ヘッドユニット7は、それぞれノズル配列方向と交差する方向に並ぶ4つのノズル列を備えた記録ヘッド(記録チップ)71〜74を千鳥状に配置して構成されるものである。すなわち、記録ヘッドユニットは、ノズルの一部同士を重複(オーバーラップ)させて、複数個が設けられている。これにより、一部重複する記録ヘッド(第1の記録ヘッドおよび第2の記録ヘッド)の記録領域が重複する。
【0017】
これらの千鳥状配置の記録ヘッドのノズルから吐出されるインクは、記録媒体の搬送とインク吐出のタイミングを調整することにより、記録ヘッドの配列方向に沿う1つのラスターを形成するようにドットを記録することができる。図2(b)は、記録ヘッドユニット7を構成する記録ヘッドの1つである記録ヘッド71の詳細を示す図である。記録ヘッド71は、2種類のドット径(第1のサイズと、第1のサイズより小さい第2のサイズ)を記録できるノズル列71a,71b,71c,71dから形成されている。このうち、ノズル列71aおよび71c(第1の記録素子列)は、ノズル列71bおよび71d(第2の記録素子列)より大きいドット径を記録することができる。すなわち、ノズル列71aおよび71cの各ノズルは、比較的大きい体積のインク滴を吐出し、ノズル列71bおよび71dの各ノズルは、比較的小さい体積のインク滴を吐出する。なお、本実施形態では、記録特性の異なるノズル列を71a・71cと71b・71dのように2列ずつ持つ構成としたが、それぞれ1列または3列以上としたり、千鳥配置など2次元的な配置としたりしてもよい。つまり、ノズル列が複数配列した記録ヘッドであればよい。また、本実施形態の記録ヘッドユニット7は熱により発生する気泡によってインクを吐出するものとしたが、この方式に限られるものではない。複数の記録ヘッドを搬送方向に直交する方向に配列し、さらに複数の記録特性を持つ記録ドットを同一のラスターに形成して画像データの記録を行うフルラインヘッドであればよい。例えば、ピエゾ式など他のインク吐出方式のインクジェット式記録ヘッドユニットであっても良いし、異なる記録特性を持つ記録ドットが記録可能であれば、1つのノズルから複数の異なる記録特性を持つ記録ドットを記録可能な記録ヘッドユニットでもよい。さらに、インク色についても、前述したCMYK以外のインクでもよい。
【0018】
図3は、図1に示した制御ユニット2による、記録データ生成のための画像処理構成を示すブロック図である。また、図4は、画像処理の手順を示すフローチャートである。概略を説明すると、図3の画像入力部31によって、図4に示すステップS11の画像取得が行われる。同様に、色変換処理部32によってステップS12の色分解が行われ、量子化処理部33によってステップS13の量子化が行われる。さらに、ドット記録位置決定部34によってステップS14のドット位置決定が行われ、記録ドット配置分配処理部35によってステップS15の記録ドット分配が行われる。また、大小ノズル列ペア決定処理部36によってステップS16の大小ノズル列ペアの決定が行われる。そして、記録ドット分配処理部37は、大小ドット分配パターン記憶部41、記録特性取得部51、補正目標値設定部52、および大小ドット分配率決定部53を用いて、ステップS17のノズル吐出量補正を行う。さらに、つなぎマスク処理部38は、マスクパターン記憶部43を用いて、ステップS18、S19のつなぎ処理を行う。最後に、ステップS20で、以上の処理によって生成された記録データに基づき各ノズル列によるドットの記録、すなわち、図1にて上述した記録動作を行う。
【0019】
以下、図4に示した処理の詳細を以下に説明する。
【0020】
<ドットデータ生成処理>
図4のステップS11〜S14で、ドットデータ生成処理が行われる。すなわち、例えば、メモリーカード91(図1)に保存された画像データは、図3に示す画像入力部31、色変換処理部32、量子化処理部33、ドット記録位置決定部34によって処理が施され、記録媒体上のドット配置で表される記録データに変換される。以下では、この記録ドット配置データ内の記録ドットの形成を表す記録データは記録ドットデータともいう。
【0021】
より詳細には、画像処理が開始されると、ステップS11で制御ユニット2は画像入力部31を用いてメモリーカード91より記録すべき画像データを読み込む。ここでは画像データは解像度600dpiでRGB各8bit256階調のカラー画像であるとして説明する。しかし、カラー画像によらずモノクロ画像でも同様に適用することができる。次に、ステップS12で、色変換処理部32は色変換処理を行い600dpiの解像度のCMYK各色8bit256階調の画像に変換する。この色変換処理は、R、G、Bの各階調値の組み合わせによって表現されているRGBカラー画像を、記録のために使用される各色の階調値によって表現されたデータに変換する処理である。記録装置1は、C、M、Y、Kの4色のインクを用いて画像を記録している。そこで、本実施形態の色変換処理部32は、RGBで表された画像データをC、M、Y、Kの各色の階調値によって表現されたデータに変換する処理を行う。
【0022】
次に、ステップS13で、量子化処理部33は量子化処理を行う。この量子化処理は、8ビット256階調の階調数を持つ画像データを、記録装置1で記録可能な少ない階調(ここでは5値を例に説明する)に、階調値を低減させる処理である。一般的に、量子化処理としては誤差拡散法やディザ法が用いられることが多い。
【0023】
図5(a)および(b)はこの量子化処理を説明する図である。図5(a)は、誤差拡散処理の概念を示し、図5(b)は、この誤差拡散おける、閾値、出力レベル、評価値の関係を示す図である。これら図に示すように、先ず、画像濃度値(In)と周辺画素からの拡散誤差値(dIn)とを加算して補正濃度値(In+dIn)を得る。そして、比較器にて、求めた補正濃度値(In+dIn)と閾値(threshold)とを比較し、補正濃度値の値に応じて閾値により定められた出力レベルを出力する。この場合において、補正濃度値(In+dIn)が“32以下”であれば、出力レベルとして“Level0”を、“32より大きく96以下”であれば、出力レベルとして“Level1”を出力する。次に、補正濃度値(In+dIn)から評価値(Evaluation)を引いた多値化誤差(Error=In+dIn-Evaluation)を算出し、誤差を周辺画素へ拡散させるために、重み付け演算を行って誤差バッファに加算する。ここで、出力Lレベルと評価値の関係は図5(b)に従い、出力レベルが”Level4“であるときは、評価値は”255“、”Level3“のときは”192“、”Level2“のときは”128“、”Level1“のときは”64“、”Level0“ときは”0“となる。最後に、注目画素位置に拡散された誤差値を誤差バッファから取り出し、重み係数の総和で正規化し、次の画素の拡散誤差(dIn)とする。以上の処理を全画素に繰り返し実行する。以上のようにして8ビット256階調のデータを5階調へと量子化する。
【0024】
次に、ステップS14で、ドット記録位置決定部34は、記録画素単位で低階調に量子化された量子化後の画像データから、該記録画素内の記録ドット配置を決定する。図6は、記録画素が600dpiでLevel0〜4の5値の量子化後画像データを、記録ドット解像度1200dpiのドットパターンで表すためのドット記録位置を示したものである。例えば、量子化後の結果がLevel1の場合、600dpiの記録画素内には1ドットのみ記録され、そのドット記録位置は「左上(図6の(a))」「左下(図6の(b))」「右下(図6の(c))」「右上(図6の(d))」が繰り返される。他のレベルに対しても同様の操作を行い、画像データをドットのパターンデータに変換したデータのまとまりを記録ドット配置データとする。そして、この記録ドット配置データを、ステップS15で、記録媒体に対応した領域に配置されデータとするドット分配を行う。
【0025】
図4に示すように、次にステップS16、S17で、ノズル吐出量補正処理、およびそれに続くステップS18、S19でつなぎ処理を行うが、これに関連して本発明が解決する問題点を、先ず、説明する。すなわち、つなぎ処理を適用することにより、ノズル吐出量補正処理における記録特性に応じた各ノズル列への記録データの分配において記録データの排他性が損なわれるという問題について説明する。
【0026】
図2(a)に示す、複数の記録ヘッドを配列したラインタイプの記録ヘッドユニットでは、隣り合う記録ヘッド間の重なり部分において、記録データをそれぞれの記録ヘッドでどのように分担して記録するのかを決める処理を行う(本明細書では、つなぎ処理という)。このつなぎ処理の1つの方法として、記録ヘッドのノズル列ごとにつなぎ処理を行う領域をずらす方法がある。図7は、隣接する記録ヘッド1,2の複数のノズル列A、B、C、Dの各列同士でのつなぎ処理をずらして行う方法を説明する図である。中央のマス目はノズル列を複数のノズルのブロックに分けた際の記録媒体上の位置に対応し、塗りつぶされたマスは記録に使用することを表している。図7示すように、記録ヘッド1、2の同じローマ字で示される列が使用される領域でそのノズル列のつなぎ処理が行われ、2ブロックずつずらしながらA〜D列のつなぎ処理が行われる。例えば、A列のつなぎ処理領域では、記録ヘッド1、2それぞれのノズル列A同士について、図8(c)、(d)で後述されるような記録データの振り分けが行われる。また、ノズル列B、C、Dについては、それぞれのノズル列に分配された記録データがそのままそのノズル列の記録データとされる。
【0027】
ノズル吐出量補正を行った後、このつなぎ処理を行うと、ノズル吐出量補正において記録ヘッドごとに複数のノズル列に分配した記録データについて、記録ヘッド間相互の排他性が損なわれ、結果として、記録データの欠損や重複による濃度むらを生じることがある。すなわち、ノズル吐出量補正処理では、記録ヘッドごとにそれぞれの複数のノズル列に所定の分配率で記録データの分配が行われるが、分配された記録ヘッドごとの記録データは、複数のノズル間で排他性を持っている。そして、分配された記録データがそのまま個別に記録に用いられれば、そもそも排他性が損なわれることはない。しかし、その後に、各記録ヘッドの記録データのうちつなぎ処理に供される記録データについては、記録ヘッド間で関連づけられため、記録ヘッド間相互で排他性が損なわれる場合がある。
【0028】
図8(a)〜(d)は、記録データの欠損や重複による濃度むらの発生を説明する図である。説明を容易にするため記録ヘッド1、2が2列のノズル列を持つ場合を例にして説明する。図8(a)に示す1つのマス目は記録媒体上の画素に対応し、黒丸は記録データ(以下、記録ドットともいう)配置を表す。図8(a)に示すようにつなぎ領域ではすべての画素にドットが記録される記録ドット配置であるとする。図8(b)は、ノズル吐出量補正を行った記録ヘッド1、2の各ノズル列の記録ドット配置を示している。図8(b)は、一例として記録ヘッド1では各ノズル列への記録ドットの分配率が1:1、記録ヘッド2では1:3の場合を示している。図8(b)に示されるように、記録ヘッド1、2において記録ドットの分配率が異なるためつなぎ処理を行う記録ヘッド1のノズル列1−aと記録ヘッド2のノズル列2−aの記録ドット配置は一致していない。図8(c)は、つなぎ処理で記録ドットの分配を行うマスクを示している。図8(d)はノズル列1−aおよび2−aによりつなぎ処理が行われる領域で使用されるノズル列を示している。塗りつぶされたマスが使用されるノズル列を表しており、このつなぎ処理では、ノズル列1−a、2−a、2−bが使用される。
【0029】
図9(a)は、図8(c)に示すマスクAによって分配されたノズル列1−aの記録ドットおよびマスクBによって分配されたノズル列2−aの記録ドットの配置を示している。この結果、図8(d)に示されるつなぎ領域に使用されるすべてのノズル列の記録ドット配置(図8(b)の2−b、図9(a)の1−a、2−a)を合わせると、図9(b)で表される記録ドット配置となる。すなわち、図9(b)において、二重丸は2つのドットを記録することを表しており、空白はドットが記録されないことを表しており、記録ドットの欠損や重複が発生していることが分かる。この場合、図8(b)において、同じ記録ヘッドのノズル列1−aとノズル列1−bの記録データは、ノズル吐出量補正処理による分配によって相互に排他性を持っている。同じく、記録ヘッド2のノズル列2−aとノズル列2−bの記録データは、ノズル吐出量補正処理による分配によって相互に排他性を持っている。この状態に対して、つなぎ処理を行う領域では、上述のように、ノズル列1−a、ノズル列2−a、およびノズル列2−bの記録データが用いられる。この際、ノズル列1−aとノズル列2−aの記録データは、つなぎ処理のマスクA、Bによって相互に排他性がある。従って、ノズル列1−aとノズル列2−bの記録データの間で排他性がない状態となることがある。
【0030】
本発明は、以上のような、ノズル吐出量補正処理の後つなぎ処理を行うことによって生じ得る記録データの排他性の欠如による記録ドットの欠損や重複の発生を防止するものである。以下では、先ず、本実施形態に係るノズル吐出量補正およびつなぎ処理の概要について説明する。
【0031】
<ノズル吐出量補正>
ノズル吐出量補正は、図4におけるステップS16の大小ノズル列ペア決定処理の後、ステップS17で行われる。ステップS16の大小ノズル列ペア決定処理については、本発明のいくつかの実施形態として後述する。
【0032】
本実施形態のノズル吐出量補正における記録特性は、記録ヘッドユニット7の各記録ヘッド(71,72,73,74)のノズルの吐出量とする。
【0033】
図10は、ノズル吐出量補正処理における、記録データを大小ノズルへ分配するための分配率を決定する処理を示すフローチャートである。ステップS01で、記録特性取得部51によって記録ヘッド71〜74それぞれにおける大ノズル列(記録ヘッド71の71aおよび71c)および小ノズル列(同71bおよび71d)の吐出量情報を得る。次に、ステップS02で、補正目標値設定部52によって、各記録ヘッド71〜74のノズルで吐出すべき目標吐出量を設定する。次に、ステップS03で、大小ドット分配率決定部53によって、記録ヘッドごとに読み取った吐出量と設定した補正目標吐出量とから、大、小ノズルに対する記録データの分配率を決定する。本実施形態では、ノズル列71aおよび71cの各ノズル平均吐出量が3ng、ノズル列71bおよび71dの各ノズル平均吐出量が2ng、目標吐出量が2.5ngであるから、記録ヘッド71の分配率は大ノズル列(3ng):小ノズル列(2ng)=1:1とする。
【0034】
次に、以上のように決定された分配率で大、小ノズル列に分配する処理を説明する。図3に示す記録ドット分配処理部37は、大小ドット分配率決定部53に記録ドットを記録するノズル位置に関する情報(本実施形態ではどの記録ヘッドで記録されるかの情報)を伝達した後、記録ヘッドの記録特性情報に応じて決定された分配率情報を受け取る。続いて、その分配率情報を大小ドット分配パターン記憶部41に伝達した後、大小ドット分配パターンを受け取る。そして、その大小分配パターンを用いて、図4のステップS14で決定された記録ドット配置データ内の各記録ドットデータを、異なる記録特性を持つ記録ドットデータに分配して異なる記録特性のそれぞれの記録データを生成する。本実施形態では、3ngと2ngの2種類の記録ドットを用いて、それぞれの記録ドット数が1:1になるよう分配された大小それぞれの1200dpi、2値の大小記録ドット配置データを得る。
【0035】
上記大小ドット分配パターン生成の一例としての処理を説明する。図11は、斥力ポテンシャルを用いた大小ドット分配パターン生成処理を示すフローチャートである。図11において、ステップS101で大小ドット分配パターンを生成したい量子化Levelの記録ドット配置を入力する。本説明では、量子化Level1として図12(a)の記録ドット配置を例に説明する。図12(a)の記録ドット配置は記録ドット配置データを記録媒体上のドットイメージとして表したものである。黒丸はドットの形成を表し、記録ドットデータのイメージに対応する。マス目は記録媒体上の画素を表す。次に、ステップS102で大小ドット分配率と、前記入力された量子化Levelの記録ドット数から必要な大ドット数を計算する。本実施形態では、図12(a)の記録ドット数が16で、大小ドット分配率が1:1のため、必要な大ドット数は16×0.5=8ドットとなる。次に、ステップS103で記録ドット配置のうち“斥力ポテンシャル_積算値”が最小の記録ドットを選択する。1ドット目の分配については、“斥力ポテンシャル_積算値”はいずれの位置も“0”であるため、任意の記録ドットを選択する。本説明では{X,Y}={7,4}(図12(b)の星印の位置)が選択されたものとする。次に、ステップS104で、選択した記録ドットを大ドットに分配する(図12(c−1)の二重丸印)。次に、ステップS105で“斥力ポテンシャル_積算値”に、分配された大ドットの斥力ポテンシャルを加算する。
【0036】
図13は、この斥力ポテンシャルを説明する図である。本実施形態では、配置ドットを中心により傾きの大きい斥力ポテンシャルを得るため、配置ドットの中心が“50000”、それ以外の点では、「10000÷距離の4乗」の等方的な斥力ポテンシャルを用いている。図13(a−1)はポテンシャルをグラフ化したもの、図13(a−2)は横軸X座標(0〜7)、縦軸Y座標(0〜7)の各座標の斥力ポテンシャルを表した表である。図13(a−1)、(a−2)から明らかなように、{4,4}を中心に急激な傾きをもったポテンシャルが得られている。この図13(a−1)、(a−2)に示すポテンシャルの中心を{0,0}に移したのが、図13(b−1)、(b−2)に示すものである。この単ドットの斥力ポテンシャルをPot_aloneとすると、位置{x,y}のポテンシャルは、
Pot_alone=50000 {x=0、y=0}
10000÷(x^2+y^2)^2 {x≠0、y≠0}
境界条件を満たすために、斜め方向も含む上下左右にも同じパターンが連続するとして、位置{x,y}における斥力ポテンシャルPot{x,y}は、
Pot_0(x,y)=Pot_alone(x+array_X、y+arrya_Y)
+Pot_alone(x 、y+arrya_Y)
+Pot_alone(x−array_X、y+arrya_Y)
+Pot_alone(x+array_X、y)
+Pot_alone(x 、y)
+Pot_alone(x−array_X、y)
+Pot_alone(x+array_X、y−array_Y)
+Pot_alone(x 、y−array_Y)
+Pot_alone(x−array_X、y−array_Y)
array_X:記録ドットパターンのXサイズ(本実施形態では8)
array_Y:記録ドットパターンのYサイズ(本実施形態では8)
となる。この時の斥力ポテンシャルの状態を図13(c−1)、(c−2)に示す。
【0037】
任意の位置{a,b}に大ドットが配置された場合の{x,y}の斥力ポテンシャルは{a,b}からの相対位置を前記Pot_0(x,y)に代入すればよいので、斥力ポテンシャルは、
Pot_ab(x,y)=Pot_0( Pos_x, Pos_y)
Pos_x=x−a {x≧aの場合}、 a−x{x≦aの場合}
Pos_y=y−b {y≧bの場合}、 b−y{y≦bの場合}
となる。
【0038】
図12(c−2)にステップS105で座標{7,4}に斥力ポテンシャルを加算した“斥力ポテンシャル_積算値”の積算値を示す。図12(c−3)は、このときの“斥力ポテンシャル_積算値”の等高線グラフである。図に示すように、大ドットを配置した{X,Y}={7,4}の位置を中心に斥力ポテンシャルの数値が積算されていることがわかる。
【0039】
次に、図11のステップS106で、大ドットを配置した位置の記録ドットを未配分から配分済みに変更する。次に、ステップS107で、配置済み大ドット数と先にステップS102で求めた必要大ドット数とを比較し、未達の場合にはステップS103に戻って繰り返す。
【0040】
2ドット目の大ドット配置について引き続き説明する。図12(c−2)で“網掛け部分”が、記録ドットが配置されている箇所を示している。ステップS103でその“網掛け部分”から最も“斥力ポテンシャル_積算値”の小さい箇所を探し、該当箇所の記録ドットを選択する。図12(c−2)では、{2,1}および{2,7}が同じ値のため、乱数でどちらを選択するか決定し、本実施形態では{2,7}が選択されたものとする。記録ドットが選択されると、1ドット目と同様にステップS104、S105で選択ドットを大ドットに分配し、さらに“斥力ポテンシャル_積算値”に新しい大ドットの斥力ポテンシャルを加算する。図12(d−1)は{2,7}に大ドットを配分した様子、図12(d−2)は{2,7}に新たに配分された大ドットの斥力ポテンシャルを加算したときの“斥力ポテンシャル_積算値“を示す。また、図12(d−3)は”斥力ポテンシャル_積算値“の等高線グラフを示す。以上、配置済み大ドット数が必要大ドット数に達するまで上記処理は繰り返し実施される。図12(e)は大小分配率が1:1のとき、大ドットが全体の半分の8個配置された状態を示す説明図である。次に、必要大ドット数に達すると、図11のステップS108で残りの未配分の記録ドットは、小ドットに分配され、記録ドット配置および大小分配率に沿った大小分配パターンを得ることができる。図12(f)は本実施形態で斥力ポテンシャルを用いて大小分配パターンを生成した例である。このように斥力ポテンシャルを用いて大ドットを配置することにより、記録ドット配置の中で、大ドットがより分散されて配置される。大ドットが分散配置されると、大小分配率による濃度補正の位置によるばらつきが抑えられるとともに、より視認されやすい大ドットの粗密差がなくなるため、粒状性や一様性についても良好な結果が得られる。
【0041】
<つなぎ処理>
図14(a)〜(c)は、本発明の実施形態に係るつなぎ処理の概略を説明する図である。このつなぎ処理は、図3に示したつなぎ部マスク処理部37が主に実行する。図14(a)の中央部に示すように、つなぎ領域の記録データが記録媒体上の記録ドットの配置として表されるものとする。黒丸は、ドットの形成を表し、また、マス目は記録媒体上の画素を表す。図14(a)は、記録ヘッド71、72のつなぎ領域の記録データが、すべての画素にドットが形成されるデータである例を示している。本実施形態では、つなぎ処理に際して、つなぎ領域の各記録ヘッドに記録ドットデータを振り分けるために、マスクを利用する。図14(b)はその一例を示しており、ノズル列方向に記録ドットの濃度が変わる振り分けパターンである。つなぎ処理は、マスクと記録ドット配置データとの論理積を求める処理であり、図14(b)中の黒で示される四角と記録ドット配置データ内の記録ドットデータ(黒丸)との論理積を対応する画素ごとにとるものである。より具体的には、図14(b)に示すように、記録を許容するマスク画素について互いに排他関係にあるマスクAとマスクBが用いられる。マスクAを記録ヘッド71の記録データに、マスクBを記録ヘッド72の記録データに適用して、上記論理積演算を行うことにより、図14(c)に示すような、各記録ヘッドのつなぎ領域の記録データを得ることができる。図14(c)において、左側が記録ヘッド72に振り分けられた記録データを、右側が記録ヘッド71に振り分けられる記録データをそれぞれ示している。すなわち、所定領域内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して分配を行う。
【0042】
以上、概略を説明したノズル吐出量補正処理およびつなぎ処理に関連して行われる大小ノズル列ペアの決定処理の実施形態について次に説明する。
【0043】
(第1実施形態)
<大小ノズル列ペア決定処理>
本処理は、図4に示すステップS15〜S16の処理に関連し、図3に示す大小ノズル列ペア決定処理部36によって実行されるものである。図15(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態に係る大小ノズル列ペアを決定する処理の詳細を説明する図である。
【0044】
記録ドット配置分配処理部35(図3)は、ステップS11〜S14(図4)のドットデータ生成処理により生成された記録データを、図15(a)に示すような、相互に補完(排他)関係にある複数の記録データに分配する(ステップS15)。同図は、総ての画素にドットを記録する記録データを2つの記録データA、Bに分配する例を示している。続いて、ステップS16で、大小ノズル列ペア決定処理部36が、記録ヘッド71、72それぞれに対して記録データAの記録を行う大小ノズル列ペア、記録データBの記録を行う大小ノズル列ペアをそれぞれ決定する。本実施形態では、記録データAの記録を行う大小ノズル列ペアとして、ノズル列71a−71bペアおよびノズル列72a−72bペアを定め、記録データBの記録を行う大小ノズル列ペアとして、ノズル列71c−71dペアおよびノズル列72c−72dペアを定める。
【0045】
次に、記録ドット分配処理部37は、ステップS17において、記録ヘッド71、72それぞれについて、大小ノズル列ペアの記録特性(吐出量の大小)に基づいて記録データA、Bそれぞれにノズル吐出量補正を行い、図15(b)に示す各ノズル列の記録データを生成する。図15(b)は、記録ヘッド71の大小分配率が1:1、記録ヘッド72の大小分配率が1:3の例を示している。
【0046】
以上のように求められた、大小ノズルペア決定処理およびそれに基づくノズル吐出量補正処理の結果の記録データに対して、つなぎ部マスク処理部38は、大小ノズル列ペアに対するつなぎ処理を行う(図4のステップS18、S19)。本実施形態では、ノズル列71a−71bペアとノズル列72a−72bペア、ノズル列71c−71dペアとノズル列72c−72dペアによりつなぎ処理が行われる。図15(c)は、つなぎ処理で用いるマスクの一部を示す図である。大小のノズル列ペア71a−71bペアとノズル列72a−72bペアに対してつなぎ処理を行う場合、ノズル列71a−71bペアにマスクAを、ノズル列72a−72bペアにマスクBを用い、つなぎ領域の記録データ図15(d)が得られる。ノズル列71c−71dペアとノズル列72c−72dペアについても同様に、大小ノズルペア決定処理、ノズル吐出量補正処理およびつなぎ処理が行われる。すなわち、大小のノズル列ペア71c−71dペアとノズル列72c−72dペアに対してつなぎ処理を行う場合、ノズル列71c−71dペアにマスクAを、ノズル列72c−72dペアにマスクBを用いる。すなわち、オーバーラップする記録領域内の所定の部分内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して分配の比率が決定される。
【0047】
以上のように生成されたつなぎ領域の記録データを用いて、ステップS20(図4)によって記録媒体上のつなぎ領域にドットが記録される。
【0048】
以上の実施形態によれば、つなぎ処理を行う直前のノズル列71a−71bペアの各ノズル列の記録データ(図15(b))を合わせたドット配置は、図15(a)に示す記録データAと同じものである。また、ノズル列72a−72bペアの各ノズル列の記録データ(図15(b))を合わせたドット配置も、図15(a)に示す記録データAと同じものである。つまり、本発明において、記録ヘッドごとにつなぎ処理に用いられるノズル列の記録データを合わせた記録データで示される、つなぎ領域のドット配置は、つなぎ処理を行う直前において記録ヘッド間で同一になる。
【0049】
換言すれば、つなぎ領域の記録に用いられる、ノズル列71a−71bペアとノズル列72a−72bペアの組の記録データと、ノズル列71c−71dペアとノズル列72c−72dペアの組の記録データとは、図15(a)に示す記録データAと記録データBにそれぞれ基づくものである。すなわち、これら記録データAと記録データBは互いに補完(排他)の関係にあることから、ノズル列71a−71bペアおよびノズル列72a−72bペアの組の記録データと、ノズル列71c−71dペアおよびノズル列72c−72dペアの組の記録データとは排他関係にあり、かつ記録ヘッド間で同じ排他関係にある。従って、マスク処理を経て最終的に得られるつなぎ領域の、記録ヘッド間の記録データも互いに(同じ)排他関係を有することになり、記録データの重複や欠損を生じることがない。
【0050】
(第2実施形態)
図16、図17および図18は、本発明の第2の実施形態に係る、それぞれ画像処理の構成、手順および記録データの変化を説明する図であり、第1実施形態に係る図3、図4および図15と同様の図である。本実施形態は、ドットデータ生成処理、ノズル吐出量補正およびつなぎ処理は、第1実施形態と同様であるため、ここでは大小ノズル列ペアの決定処理の第1実施形態との違いを主に説明する。
【0051】
<大小ノズル列ペア決定処理>
本実施形態の大小ノズル列ペア決定処理は、図17のステップS216〜S217において、図16に示す大小ノズル列ペア決定処理部237によって実行される。つなぎを行う記録ヘッドとして記録ヘッド71、72の場合を例に説明する。
【0052】
図18(a)は、ステップS211〜S214のドット生成処理により生成された記録データ(図18(a)の記録ドット配置)を、記録ヘッド71、72の記録特性(吐出量の大小)に基づいてノズル吐出量補正(S215)を施した結果を示している。第1実施形態同様、記録ヘッド71の大小分配率が1:1、記録ヘッド72の大小分配比率が1:3の例を示している。
【0053】
次に、図16の記録ドット配置分配処理部236は、記録ドット配置データを補完関係のある複数の記録ドット配置データに分配するために複数の分配マスクパターン(以下分配マスクと称する)を持つ。本実施形態では、図18(b)に示す2つの分配マスク(分配マスクA、B)を用いる。記録ドット配置分配処理部236は、記録ヘッド71、72ごとにノズル吐出量補正をした大小ドット記録データそれぞれを、分配マスクA、Bにより分配する。そして、大小ノズル列ペア決定処理部237は、分配された各記録データのドット記録を担当するノズル列を決める(図18(c))。分配マスクの働きはつなぎ部のマスクと同様である。
【0054】
図18(c)において、記録ヘッド71の大小ドット記録データ(図18(a)に示す71−大ドット、71−小ドット)それぞれに分配マスクAを適用して生成した記録データの担当ノズル列を、ノズル列71a、ノズル列71bに決定する。また、記録ヘッド71の大小ドット記録データ(図18(a)に示す71−大ドット、71−小ドット)それぞれに分配マスクBを適用して生成した記録データの担当ノズル列を、ノズル列71c、ノズル列71dに決定する。記録ヘッド72に対しても同様の方法で各記録ドット分配データの担当ノズル列を決定する。すなわち、記録ヘッド72の大小ドット記録データ(図18(a)に示す72−大ドット、72−小ドット)それぞれに分配マスクAを適用して生成した記録データの担当ノズル列を、ノズル列72a、ノズル列72bに決定する。また、記録ヘッド72の大小ドット記録データ(図18(a)に示す72−大ドット、72−小ドット)それぞれに分配マスクBを適用して生成した記録データの担当ノズル列を、ノズル列72c、ノズル列72dに決定する。
【0055】
次に、大小ノズル列ペア決定処理部237は、同じ分配マスクを用いて分配された記録データを担当する大小ノズル列をペアとする(S217)。図18(c)において、ノズル列71aとノズル列71b、ノズル列71cとノズル列71d、ノズル列72aとノズル列72b、ノズル列72cとノズル列72dを、それぞれ大小ノズル列ペアとする。つなぎ処理は第1実施形態と同様にノズル列71a−71bペアとノズル列72a−72bペア、71c−71dペアとノズル列72c−72dペアによって行われる。
【0056】
以上の処理の結果得られる、図18(c)に示す記録データ71a、71bを足し合わせた記録データのドット配置と、記録データ72a、72bを足し合わせた記録データのドット配置は一致している。すなわち、第2実施形態においても記録ヘッドごとにつなぎ処理に用いられるノズル列の記録ドット配置データを合わせた記録ドット配置データのつなぎ領域のドット形成位置は、つなぎ処理を行う直前において記録ヘッド間で同一になる。
【0057】
換言すれば、つなぎ領域の記録に用いられる、ノズル列71a−71bペアとノズル列72a−72bペアの組の記録データと、ノズル列71c−71dペアとノズル列72c−72dペアの組の記録データとは、図18(a)に示すマスクA、Bの処理によって相互に同じ排他関係となる。従って、最終的に得られるつなぎ領域の、記録ヘッド間の記録データも互いに排他関係を有することになり、記録データの重複や欠損を生じることがない。
【0058】
(他の実施形態)
図8に示した、記録ヘッドが2列のノズル列を有する場合も同様に本発明を適用することができる。例えば、図8(b)に示す記録ヘッド1の記録データ1−aに対して図18(a)に示すマスクAを適用し、記録ヘッド1の記録データ1−bに対して図18(a)に示すマスクBを適用する。同様に、記録ヘッド2の記録データ2−aに対してマスクAを適用し、記録データ2−bに対してマスクBを適用する。これにより、最終的に得られるつなぎ領域の、記録ヘッド間の記録データも互いに排他関係を有することになり、記録データの重複や欠損が生じることを防止できる。
【符号の説明】
【0059】
1 記録装置
7 記録ヘッド
34 ドット記録位置決定部
35 記録ドット配置分配処理部
36 大小ノズル列ペア決定処理部
37 記録ドット分配処理部
38 つなぎ部マスク処理部
53 0大小ドット分配率決定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置および記録データ生成方法に関し、詳しくは、重複した記録領域を有する複数の記録ヘッドを備えた記録ヘッドユニットを用いて記録を行う際の記録データ生成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどのインクジェット記録装置で用いられる、複数の記録ヘッドを配列してそれぞれの記録ヘッドより長い一定の範囲にわたってノズルを配列した記録ヘッドユニットでは、隣接する記録ヘッドの一部が重複した記録領域を有するように記録ヘッドが配列される。そして、上記重複する記録領域を記録するそれぞれの記録ヘッドの一部の記録データは、他の重複しない部分の記録データ生成とは異なる態様で行われる。すなわち、上記重複する記録領域の記録データは、それぞれの記録ヘッドに所定の割合で分配する記録データ生成処理が行われる(以下、つなぎ処理ともいう)。
【0003】
また、上述のような複数の記録ヘッドが配列して構成される記録ヘッドユニットのように多数のノズルが設けられた記録ヘッドユニットでは、複数のノズル間で吐出量などの記録特性にわずかながらばらつきがあることが多い。そして、このようなばらつきに起因した記録画像における濃度むらを低減するための提案が従来なされている。その一例として、には、複数のノズルの実際の液滴量を求め、これに基づいて、吐出液滴量の比較的多いノズルと少ないノズルの使用比率、つまり、記録データの分配率を定めることにより全体として目標平均液滴量になるようにすることが記載されている。これにより、複数のノズル間で吐出量などの記録特性にばらつきがあっても濃度むらが低減された記録を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7249815号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、に記載の技術では、記録濃度のばらつきが補正される一方、記録されるドットのパターンが変化することがある。すなわち、吐出液滴量の比較的多いノズルと少ないノズルの使用比率によっては、本来あるノズルで記録しようとしていたドットが上記分配によって他のノズルで記録されることになり、記録位置が異なってしまうことがある。このため、一定以上の大きな補正を行おうとすると、濃度は補正されるもののドットパターンの違いが視認されてしまい、画像品位が低下することになる。
【0006】
ところで、以上のような記録特性に応じたノズル間の記録データの分配が適切に行われてドットパターンの違いが生じないとしても、上述したつなぎ処理を適用すると、上記分配処理における記録データの排他性が損なわれるという問題がある。そして、その結果として、記録ドットの欠損や重複が発生し別の濃度むらを生じることになる。
【0007】
本発明の目的は、記録特性に応じたノズル間の記録データ分配によるドット記録位置の違いを生じず、またつなぎ処理を行っても記録ドットの欠損などによる濃度むらを低減することが可能なインクジェット記録装置および記録データ生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインクジェット記録装置は、
記録媒体上に第1のサイズのドットを形成するための第1の記録素子が配列されている第1の記録素子列と、第1のサイズより小さい第2のサイズのドットを形成するための第2の記録素子が配列されていて、前記第1の記録素子列と沿うように設けられた第2の記録素子列と、がそれぞれ記録素子の配列方向と交差する方向に配列された記録ヘッドの複数個を有し、異なる前記記録ヘッドの前記記録素子列の一部同士が前記配列方向で対応する記録媒体上の記録領域がオーバーラップするように配置されている記録ヘッドユニットを用いて記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記ドットを記録するための記録データを、ある記録ヘッドに設けられた前記第1の記録素子による記録に使用されるデータと、同じ前記記録ヘッドに設けられた前記第2の記録素子による記録に使用されるデータと、に分配する分配手段と、
前記配列方向において記録領域がオーバーラップする、第1の記録ヘッドの前記記録素子列の一部と第2の記録ヘッドの前記記録素子列の一部とのそれぞれからの記録に使用される前記記録データを、オーバーラップする前記記録領域の記録に使用する記録素子のうちの端の記録素子の前記配列方向の位置が一致している同じ記録ヘッドに設けられている前記第1の記録素子列と前記第2の記録素子列とを組とし、前記第1の記録ヘッドの前記組からの記録に使用されるデータの量と前記第2の記録ヘッドの前記組からの記録に使用されるデータの量との比率を決定する決定手段と、
を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の構成によれば、記録特性に応じたノズル間の記録データ分配によるドット記録位置の違いを生じず、またつなぎ処理を行っても記録ドットの欠損などによる濃度むらを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用可能な記録装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】(a)および(b)は、記録ヘッドユニットの詳細構成を示す図である。
【図3】第1実施形態の画像処理の図である。
【図4】第1実施形態の画像処理を説明するフローチャートである。
【図5】(a)および(b)は、誤差拡散処理の一例を説明する図である。
【図6】第1実施形態の各量子化Levelの大小ドット分配パターンを説明する説明図である。
【図7】つなぎ処理を説明する図である。
【図8】(a)〜(d)は、本発明の課題を説明する図である。
【図9】(a)および(b)は、同じく本発明の課題を説明する図である。
【図10】第1実施形態に係るノズル吐出量補正処理における、記録データを大小ノズルへ分配するための分配率を決定する処理を示すフローチャートである。
【図11】第1実施形態に係る斥力ポテンシャルを用いた大小ドット分配パターン生成処理を示すフローチャートである。
【図12】第1実施形態の斥力ポテンシャルを用いた分配パターン生成過程を説明する図である。
【図13】上記斥力ポテンシャルを説明する説明図である。
【図14】(a)〜(c)は、本発明に適用可能なつなぎ処理の概略を説明する図である。
【図15】(a)〜(d)は、第1実施形態の大小ノズル列ペア決定の説明をする図である。
【図16】第2実施形態の画像処理の概要を説明する図である。
【図17】第2実施形態の画像処理を説明するフローチャートである。
【図18】(a)〜(c)は、第2実施形態に係る大小ノズル列ペア決定の説明をする図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
<ラインプリンタ概要>
図1は、本発明の一実施形態にかかるインクジェット記録装置1の概略構成を示すブロック図である。記録装置1はインクジェット式のラインプリンタであり、同図に示すように制御ユニット2、インクカートリッジ61〜64、記録ヘッドユニット7、記録媒体搬送機構8などを備えている。インクカートリッジ61〜64には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の色を表す各インクに対応している。
【0013】
記録ヘッドユニット7は、フルラインタイプの記録ヘッドユニットであり、記録媒体と対向する面に、記録媒体の搬送方向と直交する方向に配列した複数のノズルからなる、インク色ごとのノズル列を複数備えている。本実施形態の記録ヘッドは、熱によってインク中に発生する気泡によってノズルからインクを吐出する方式のものである。インクカートリッジ61〜64内の各インクは、インク導入管61a〜64aを通じて記録ヘッドの対応するインク色ごとの各ノズルに供給され、これらのノズルからインクが吐出されて、記録媒体100に記録が行われる。
【0014】
記録媒体搬送機構8は、紙送りモーター81と紙送りローラー82を備えている。紙送りモーター81は紙送りローラー82を回転させることにより、記録媒体100を記録ヘッドユニット7の位置まで紙送りローラー82と直交する方向に搬送する。
【0015】
コンピュータによって構成される制御ユニット2は、CPU3とRAM41とROM42などを有して構成されており、上述した記録ヘッドユニット7や紙送りローラー81の動作を制御する。また、CPU3は、ROM42内に記憶された制御プログラムをRAM41に展開して実行することにより、図4などを参照して後述する記録データ生成などの処理や記録媒体搬送機構8の制御などを行う。
【0016】
図2(a)および(b)は、図1に示した記録ヘッドユニット7の詳細構成を1つのインク色について示す図である。図2(a)に示すように、本実施形態の記録ヘッドユニット7は、それぞれノズル配列方向と交差する方向に並ぶ4つのノズル列を備えた記録ヘッド(記録チップ)71〜74を千鳥状に配置して構成されるものである。すなわち、記録ヘッドユニットは、ノズルの一部同士を重複(オーバーラップ)させて、複数個が設けられている。これにより、一部重複する記録ヘッド(第1の記録ヘッドおよび第2の記録ヘッド)の記録領域が重複する。
【0017】
これらの千鳥状配置の記録ヘッドのノズルから吐出されるインクは、記録媒体の搬送とインク吐出のタイミングを調整することにより、記録ヘッドの配列方向に沿う1つのラスターを形成するようにドットを記録することができる。図2(b)は、記録ヘッドユニット7を構成する記録ヘッドの1つである記録ヘッド71の詳細を示す図である。記録ヘッド71は、2種類のドット径(第1のサイズと、第1のサイズより小さい第2のサイズ)を記録できるノズル列71a,71b,71c,71dから形成されている。このうち、ノズル列71aおよび71c(第1の記録素子列)は、ノズル列71bおよび71d(第2の記録素子列)より大きいドット径を記録することができる。すなわち、ノズル列71aおよび71cの各ノズルは、比較的大きい体積のインク滴を吐出し、ノズル列71bおよび71dの各ノズルは、比較的小さい体積のインク滴を吐出する。なお、本実施形態では、記録特性の異なるノズル列を71a・71cと71b・71dのように2列ずつ持つ構成としたが、それぞれ1列または3列以上としたり、千鳥配置など2次元的な配置としたりしてもよい。つまり、ノズル列が複数配列した記録ヘッドであればよい。また、本実施形態の記録ヘッドユニット7は熱により発生する気泡によってインクを吐出するものとしたが、この方式に限られるものではない。複数の記録ヘッドを搬送方向に直交する方向に配列し、さらに複数の記録特性を持つ記録ドットを同一のラスターに形成して画像データの記録を行うフルラインヘッドであればよい。例えば、ピエゾ式など他のインク吐出方式のインクジェット式記録ヘッドユニットであっても良いし、異なる記録特性を持つ記録ドットが記録可能であれば、1つのノズルから複数の異なる記録特性を持つ記録ドットを記録可能な記録ヘッドユニットでもよい。さらに、インク色についても、前述したCMYK以外のインクでもよい。
【0018】
図3は、図1に示した制御ユニット2による、記録データ生成のための画像処理構成を示すブロック図である。また、図4は、画像処理の手順を示すフローチャートである。概略を説明すると、図3の画像入力部31によって、図4に示すステップS11の画像取得が行われる。同様に、色変換処理部32によってステップS12の色分解が行われ、量子化処理部33によってステップS13の量子化が行われる。さらに、ドット記録位置決定部34によってステップS14のドット位置決定が行われ、記録ドット配置分配処理部35によってステップS15の記録ドット分配が行われる。また、大小ノズル列ペア決定処理部36によってステップS16の大小ノズル列ペアの決定が行われる。そして、記録ドット分配処理部37は、大小ドット分配パターン記憶部41、記録特性取得部51、補正目標値設定部52、および大小ドット分配率決定部53を用いて、ステップS17のノズル吐出量補正を行う。さらに、つなぎマスク処理部38は、マスクパターン記憶部43を用いて、ステップS18、S19のつなぎ処理を行う。最後に、ステップS20で、以上の処理によって生成された記録データに基づき各ノズル列によるドットの記録、すなわち、図1にて上述した記録動作を行う。
【0019】
以下、図4に示した処理の詳細を以下に説明する。
【0020】
<ドットデータ生成処理>
図4のステップS11〜S14で、ドットデータ生成処理が行われる。すなわち、例えば、メモリーカード91(図1)に保存された画像データは、図3に示す画像入力部31、色変換処理部32、量子化処理部33、ドット記録位置決定部34によって処理が施され、記録媒体上のドット配置で表される記録データに変換される。以下では、この記録ドット配置データ内の記録ドットの形成を表す記録データは記録ドットデータともいう。
【0021】
より詳細には、画像処理が開始されると、ステップS11で制御ユニット2は画像入力部31を用いてメモリーカード91より記録すべき画像データを読み込む。ここでは画像データは解像度600dpiでRGB各8bit256階調のカラー画像であるとして説明する。しかし、カラー画像によらずモノクロ画像でも同様に適用することができる。次に、ステップS12で、色変換処理部32は色変換処理を行い600dpiの解像度のCMYK各色8bit256階調の画像に変換する。この色変換処理は、R、G、Bの各階調値の組み合わせによって表現されているRGBカラー画像を、記録のために使用される各色の階調値によって表現されたデータに変換する処理である。記録装置1は、C、M、Y、Kの4色のインクを用いて画像を記録している。そこで、本実施形態の色変換処理部32は、RGBで表された画像データをC、M、Y、Kの各色の階調値によって表現されたデータに変換する処理を行う。
【0022】
次に、ステップS13で、量子化処理部33は量子化処理を行う。この量子化処理は、8ビット256階調の階調数を持つ画像データを、記録装置1で記録可能な少ない階調(ここでは5値を例に説明する)に、階調値を低減させる処理である。一般的に、量子化処理としては誤差拡散法やディザ法が用いられることが多い。
【0023】
図5(a)および(b)はこの量子化処理を説明する図である。図5(a)は、誤差拡散処理の概念を示し、図5(b)は、この誤差拡散おける、閾値、出力レベル、評価値の関係を示す図である。これら図に示すように、先ず、画像濃度値(In)と周辺画素からの拡散誤差値(dIn)とを加算して補正濃度値(In+dIn)を得る。そして、比較器にて、求めた補正濃度値(In+dIn)と閾値(threshold)とを比較し、補正濃度値の値に応じて閾値により定められた出力レベルを出力する。この場合において、補正濃度値(In+dIn)が“32以下”であれば、出力レベルとして“Level0”を、“32より大きく96以下”であれば、出力レベルとして“Level1”を出力する。次に、補正濃度値(In+dIn)から評価値(Evaluation)を引いた多値化誤差(Error=In+dIn-Evaluation)を算出し、誤差を周辺画素へ拡散させるために、重み付け演算を行って誤差バッファに加算する。ここで、出力Lレベルと評価値の関係は図5(b)に従い、出力レベルが”Level4“であるときは、評価値は”255“、”Level3“のときは”192“、”Level2“のときは”128“、”Level1“のときは”64“、”Level0“ときは”0“となる。最後に、注目画素位置に拡散された誤差値を誤差バッファから取り出し、重み係数の総和で正規化し、次の画素の拡散誤差(dIn)とする。以上の処理を全画素に繰り返し実行する。以上のようにして8ビット256階調のデータを5階調へと量子化する。
【0024】
次に、ステップS14で、ドット記録位置決定部34は、記録画素単位で低階調に量子化された量子化後の画像データから、該記録画素内の記録ドット配置を決定する。図6は、記録画素が600dpiでLevel0〜4の5値の量子化後画像データを、記録ドット解像度1200dpiのドットパターンで表すためのドット記録位置を示したものである。例えば、量子化後の結果がLevel1の場合、600dpiの記録画素内には1ドットのみ記録され、そのドット記録位置は「左上(図6の(a))」「左下(図6の(b))」「右下(図6の(c))」「右上(図6の(d))」が繰り返される。他のレベルに対しても同様の操作を行い、画像データをドットのパターンデータに変換したデータのまとまりを記録ドット配置データとする。そして、この記録ドット配置データを、ステップS15で、記録媒体に対応した領域に配置されデータとするドット分配を行う。
【0025】
図4に示すように、次にステップS16、S17で、ノズル吐出量補正処理、およびそれに続くステップS18、S19でつなぎ処理を行うが、これに関連して本発明が解決する問題点を、先ず、説明する。すなわち、つなぎ処理を適用することにより、ノズル吐出量補正処理における記録特性に応じた各ノズル列への記録データの分配において記録データの排他性が損なわれるという問題について説明する。
【0026】
図2(a)に示す、複数の記録ヘッドを配列したラインタイプの記録ヘッドユニットでは、隣り合う記録ヘッド間の重なり部分において、記録データをそれぞれの記録ヘッドでどのように分担して記録するのかを決める処理を行う(本明細書では、つなぎ処理という)。このつなぎ処理の1つの方法として、記録ヘッドのノズル列ごとにつなぎ処理を行う領域をずらす方法がある。図7は、隣接する記録ヘッド1,2の複数のノズル列A、B、C、Dの各列同士でのつなぎ処理をずらして行う方法を説明する図である。中央のマス目はノズル列を複数のノズルのブロックに分けた際の記録媒体上の位置に対応し、塗りつぶされたマスは記録に使用することを表している。図7示すように、記録ヘッド1、2の同じローマ字で示される列が使用される領域でそのノズル列のつなぎ処理が行われ、2ブロックずつずらしながらA〜D列のつなぎ処理が行われる。例えば、A列のつなぎ処理領域では、記録ヘッド1、2それぞれのノズル列A同士について、図8(c)、(d)で後述されるような記録データの振り分けが行われる。また、ノズル列B、C、Dについては、それぞれのノズル列に分配された記録データがそのままそのノズル列の記録データとされる。
【0027】
ノズル吐出量補正を行った後、このつなぎ処理を行うと、ノズル吐出量補正において記録ヘッドごとに複数のノズル列に分配した記録データについて、記録ヘッド間相互の排他性が損なわれ、結果として、記録データの欠損や重複による濃度むらを生じることがある。すなわち、ノズル吐出量補正処理では、記録ヘッドごとにそれぞれの複数のノズル列に所定の分配率で記録データの分配が行われるが、分配された記録ヘッドごとの記録データは、複数のノズル間で排他性を持っている。そして、分配された記録データがそのまま個別に記録に用いられれば、そもそも排他性が損なわれることはない。しかし、その後に、各記録ヘッドの記録データのうちつなぎ処理に供される記録データについては、記録ヘッド間で関連づけられため、記録ヘッド間相互で排他性が損なわれる場合がある。
【0028】
図8(a)〜(d)は、記録データの欠損や重複による濃度むらの発生を説明する図である。説明を容易にするため記録ヘッド1、2が2列のノズル列を持つ場合を例にして説明する。図8(a)に示す1つのマス目は記録媒体上の画素に対応し、黒丸は記録データ(以下、記録ドットともいう)配置を表す。図8(a)に示すようにつなぎ領域ではすべての画素にドットが記録される記録ドット配置であるとする。図8(b)は、ノズル吐出量補正を行った記録ヘッド1、2の各ノズル列の記録ドット配置を示している。図8(b)は、一例として記録ヘッド1では各ノズル列への記録ドットの分配率が1:1、記録ヘッド2では1:3の場合を示している。図8(b)に示されるように、記録ヘッド1、2において記録ドットの分配率が異なるためつなぎ処理を行う記録ヘッド1のノズル列1−aと記録ヘッド2のノズル列2−aの記録ドット配置は一致していない。図8(c)は、つなぎ処理で記録ドットの分配を行うマスクを示している。図8(d)はノズル列1−aおよび2−aによりつなぎ処理が行われる領域で使用されるノズル列を示している。塗りつぶされたマスが使用されるノズル列を表しており、このつなぎ処理では、ノズル列1−a、2−a、2−bが使用される。
【0029】
図9(a)は、図8(c)に示すマスクAによって分配されたノズル列1−aの記録ドットおよびマスクBによって分配されたノズル列2−aの記録ドットの配置を示している。この結果、図8(d)に示されるつなぎ領域に使用されるすべてのノズル列の記録ドット配置(図8(b)の2−b、図9(a)の1−a、2−a)を合わせると、図9(b)で表される記録ドット配置となる。すなわち、図9(b)において、二重丸は2つのドットを記録することを表しており、空白はドットが記録されないことを表しており、記録ドットの欠損や重複が発生していることが分かる。この場合、図8(b)において、同じ記録ヘッドのノズル列1−aとノズル列1−bの記録データは、ノズル吐出量補正処理による分配によって相互に排他性を持っている。同じく、記録ヘッド2のノズル列2−aとノズル列2−bの記録データは、ノズル吐出量補正処理による分配によって相互に排他性を持っている。この状態に対して、つなぎ処理を行う領域では、上述のように、ノズル列1−a、ノズル列2−a、およびノズル列2−bの記録データが用いられる。この際、ノズル列1−aとノズル列2−aの記録データは、つなぎ処理のマスクA、Bによって相互に排他性がある。従って、ノズル列1−aとノズル列2−bの記録データの間で排他性がない状態となることがある。
【0030】
本発明は、以上のような、ノズル吐出量補正処理の後つなぎ処理を行うことによって生じ得る記録データの排他性の欠如による記録ドットの欠損や重複の発生を防止するものである。以下では、先ず、本実施形態に係るノズル吐出量補正およびつなぎ処理の概要について説明する。
【0031】
<ノズル吐出量補正>
ノズル吐出量補正は、図4におけるステップS16の大小ノズル列ペア決定処理の後、ステップS17で行われる。ステップS16の大小ノズル列ペア決定処理については、本発明のいくつかの実施形態として後述する。
【0032】
本実施形態のノズル吐出量補正における記録特性は、記録ヘッドユニット7の各記録ヘッド(71,72,73,74)のノズルの吐出量とする。
【0033】
図10は、ノズル吐出量補正処理における、記録データを大小ノズルへ分配するための分配率を決定する処理を示すフローチャートである。ステップS01で、記録特性取得部51によって記録ヘッド71〜74それぞれにおける大ノズル列(記録ヘッド71の71aおよび71c)および小ノズル列(同71bおよび71d)の吐出量情報を得る。次に、ステップS02で、補正目標値設定部52によって、各記録ヘッド71〜74のノズルで吐出すべき目標吐出量を設定する。次に、ステップS03で、大小ドット分配率決定部53によって、記録ヘッドごとに読み取った吐出量と設定した補正目標吐出量とから、大、小ノズルに対する記録データの分配率を決定する。本実施形態では、ノズル列71aおよび71cの各ノズル平均吐出量が3ng、ノズル列71bおよび71dの各ノズル平均吐出量が2ng、目標吐出量が2.5ngであるから、記録ヘッド71の分配率は大ノズル列(3ng):小ノズル列(2ng)=1:1とする。
【0034】
次に、以上のように決定された分配率で大、小ノズル列に分配する処理を説明する。図3に示す記録ドット分配処理部37は、大小ドット分配率決定部53に記録ドットを記録するノズル位置に関する情報(本実施形態ではどの記録ヘッドで記録されるかの情報)を伝達した後、記録ヘッドの記録特性情報に応じて決定された分配率情報を受け取る。続いて、その分配率情報を大小ドット分配パターン記憶部41に伝達した後、大小ドット分配パターンを受け取る。そして、その大小分配パターンを用いて、図4のステップS14で決定された記録ドット配置データ内の各記録ドットデータを、異なる記録特性を持つ記録ドットデータに分配して異なる記録特性のそれぞれの記録データを生成する。本実施形態では、3ngと2ngの2種類の記録ドットを用いて、それぞれの記録ドット数が1:1になるよう分配された大小それぞれの1200dpi、2値の大小記録ドット配置データを得る。
【0035】
上記大小ドット分配パターン生成の一例としての処理を説明する。図11は、斥力ポテンシャルを用いた大小ドット分配パターン生成処理を示すフローチャートである。図11において、ステップS101で大小ドット分配パターンを生成したい量子化Levelの記録ドット配置を入力する。本説明では、量子化Level1として図12(a)の記録ドット配置を例に説明する。図12(a)の記録ドット配置は記録ドット配置データを記録媒体上のドットイメージとして表したものである。黒丸はドットの形成を表し、記録ドットデータのイメージに対応する。マス目は記録媒体上の画素を表す。次に、ステップS102で大小ドット分配率と、前記入力された量子化Levelの記録ドット数から必要な大ドット数を計算する。本実施形態では、図12(a)の記録ドット数が16で、大小ドット分配率が1:1のため、必要な大ドット数は16×0.5=8ドットとなる。次に、ステップS103で記録ドット配置のうち“斥力ポテンシャル_積算値”が最小の記録ドットを選択する。1ドット目の分配については、“斥力ポテンシャル_積算値”はいずれの位置も“0”であるため、任意の記録ドットを選択する。本説明では{X,Y}={7,4}(図12(b)の星印の位置)が選択されたものとする。次に、ステップS104で、選択した記録ドットを大ドットに分配する(図12(c−1)の二重丸印)。次に、ステップS105で“斥力ポテンシャル_積算値”に、分配された大ドットの斥力ポテンシャルを加算する。
【0036】
図13は、この斥力ポテンシャルを説明する図である。本実施形態では、配置ドットを中心により傾きの大きい斥力ポテンシャルを得るため、配置ドットの中心が“50000”、それ以外の点では、「10000÷距離の4乗」の等方的な斥力ポテンシャルを用いている。図13(a−1)はポテンシャルをグラフ化したもの、図13(a−2)は横軸X座標(0〜7)、縦軸Y座標(0〜7)の各座標の斥力ポテンシャルを表した表である。図13(a−1)、(a−2)から明らかなように、{4,4}を中心に急激な傾きをもったポテンシャルが得られている。この図13(a−1)、(a−2)に示すポテンシャルの中心を{0,0}に移したのが、図13(b−1)、(b−2)に示すものである。この単ドットの斥力ポテンシャルをPot_aloneとすると、位置{x,y}のポテンシャルは、
Pot_alone=50000 {x=0、y=0}
10000÷(x^2+y^2)^2 {x≠0、y≠0}
境界条件を満たすために、斜め方向も含む上下左右にも同じパターンが連続するとして、位置{x,y}における斥力ポテンシャルPot{x,y}は、
Pot_0(x,y)=Pot_alone(x+array_X、y+arrya_Y)
+Pot_alone(x 、y+arrya_Y)
+Pot_alone(x−array_X、y+arrya_Y)
+Pot_alone(x+array_X、y)
+Pot_alone(x 、y)
+Pot_alone(x−array_X、y)
+Pot_alone(x+array_X、y−array_Y)
+Pot_alone(x 、y−array_Y)
+Pot_alone(x−array_X、y−array_Y)
array_X:記録ドットパターンのXサイズ(本実施形態では8)
array_Y:記録ドットパターンのYサイズ(本実施形態では8)
となる。この時の斥力ポテンシャルの状態を図13(c−1)、(c−2)に示す。
【0037】
任意の位置{a,b}に大ドットが配置された場合の{x,y}の斥力ポテンシャルは{a,b}からの相対位置を前記Pot_0(x,y)に代入すればよいので、斥力ポテンシャルは、
Pot_ab(x,y)=Pot_0( Pos_x, Pos_y)
Pos_x=x−a {x≧aの場合}、 a−x{x≦aの場合}
Pos_y=y−b {y≧bの場合}、 b−y{y≦bの場合}
となる。
【0038】
図12(c−2)にステップS105で座標{7,4}に斥力ポテンシャルを加算した“斥力ポテンシャル_積算値”の積算値を示す。図12(c−3)は、このときの“斥力ポテンシャル_積算値”の等高線グラフである。図に示すように、大ドットを配置した{X,Y}={7,4}の位置を中心に斥力ポテンシャルの数値が積算されていることがわかる。
【0039】
次に、図11のステップS106で、大ドットを配置した位置の記録ドットを未配分から配分済みに変更する。次に、ステップS107で、配置済み大ドット数と先にステップS102で求めた必要大ドット数とを比較し、未達の場合にはステップS103に戻って繰り返す。
【0040】
2ドット目の大ドット配置について引き続き説明する。図12(c−2)で“網掛け部分”が、記録ドットが配置されている箇所を示している。ステップS103でその“網掛け部分”から最も“斥力ポテンシャル_積算値”の小さい箇所を探し、該当箇所の記録ドットを選択する。図12(c−2)では、{2,1}および{2,7}が同じ値のため、乱数でどちらを選択するか決定し、本実施形態では{2,7}が選択されたものとする。記録ドットが選択されると、1ドット目と同様にステップS104、S105で選択ドットを大ドットに分配し、さらに“斥力ポテンシャル_積算値”に新しい大ドットの斥力ポテンシャルを加算する。図12(d−1)は{2,7}に大ドットを配分した様子、図12(d−2)は{2,7}に新たに配分された大ドットの斥力ポテンシャルを加算したときの“斥力ポテンシャル_積算値“を示す。また、図12(d−3)は”斥力ポテンシャル_積算値“の等高線グラフを示す。以上、配置済み大ドット数が必要大ドット数に達するまで上記処理は繰り返し実施される。図12(e)は大小分配率が1:1のとき、大ドットが全体の半分の8個配置された状態を示す説明図である。次に、必要大ドット数に達すると、図11のステップS108で残りの未配分の記録ドットは、小ドットに分配され、記録ドット配置および大小分配率に沿った大小分配パターンを得ることができる。図12(f)は本実施形態で斥力ポテンシャルを用いて大小分配パターンを生成した例である。このように斥力ポテンシャルを用いて大ドットを配置することにより、記録ドット配置の中で、大ドットがより分散されて配置される。大ドットが分散配置されると、大小分配率による濃度補正の位置によるばらつきが抑えられるとともに、より視認されやすい大ドットの粗密差がなくなるため、粒状性や一様性についても良好な結果が得られる。
【0041】
<つなぎ処理>
図14(a)〜(c)は、本発明の実施形態に係るつなぎ処理の概略を説明する図である。このつなぎ処理は、図3に示したつなぎ部マスク処理部37が主に実行する。図14(a)の中央部に示すように、つなぎ領域の記録データが記録媒体上の記録ドットの配置として表されるものとする。黒丸は、ドットの形成を表し、また、マス目は記録媒体上の画素を表す。図14(a)は、記録ヘッド71、72のつなぎ領域の記録データが、すべての画素にドットが形成されるデータである例を示している。本実施形態では、つなぎ処理に際して、つなぎ領域の各記録ヘッドに記録ドットデータを振り分けるために、マスクを利用する。図14(b)はその一例を示しており、ノズル列方向に記録ドットの濃度が変わる振り分けパターンである。つなぎ処理は、マスクと記録ドット配置データとの論理積を求める処理であり、図14(b)中の黒で示される四角と記録ドット配置データ内の記録ドットデータ(黒丸)との論理積を対応する画素ごとにとるものである。より具体的には、図14(b)に示すように、記録を許容するマスク画素について互いに排他関係にあるマスクAとマスクBが用いられる。マスクAを記録ヘッド71の記録データに、マスクBを記録ヘッド72の記録データに適用して、上記論理積演算を行うことにより、図14(c)に示すような、各記録ヘッドのつなぎ領域の記録データを得ることができる。図14(c)において、左側が記録ヘッド72に振り分けられた記録データを、右側が記録ヘッド71に振り分けられる記録データをそれぞれ示している。すなわち、所定領域内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して分配を行う。
【0042】
以上、概略を説明したノズル吐出量補正処理およびつなぎ処理に関連して行われる大小ノズル列ペアの決定処理の実施形態について次に説明する。
【0043】
(第1実施形態)
<大小ノズル列ペア決定処理>
本処理は、図4に示すステップS15〜S16の処理に関連し、図3に示す大小ノズル列ペア決定処理部36によって実行されるものである。図15(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態に係る大小ノズル列ペアを決定する処理の詳細を説明する図である。
【0044】
記録ドット配置分配処理部35(図3)は、ステップS11〜S14(図4)のドットデータ生成処理により生成された記録データを、図15(a)に示すような、相互に補完(排他)関係にある複数の記録データに分配する(ステップS15)。同図は、総ての画素にドットを記録する記録データを2つの記録データA、Bに分配する例を示している。続いて、ステップS16で、大小ノズル列ペア決定処理部36が、記録ヘッド71、72それぞれに対して記録データAの記録を行う大小ノズル列ペア、記録データBの記録を行う大小ノズル列ペアをそれぞれ決定する。本実施形態では、記録データAの記録を行う大小ノズル列ペアとして、ノズル列71a−71bペアおよびノズル列72a−72bペアを定め、記録データBの記録を行う大小ノズル列ペアとして、ノズル列71c−71dペアおよびノズル列72c−72dペアを定める。
【0045】
次に、記録ドット分配処理部37は、ステップS17において、記録ヘッド71、72それぞれについて、大小ノズル列ペアの記録特性(吐出量の大小)に基づいて記録データA、Bそれぞれにノズル吐出量補正を行い、図15(b)に示す各ノズル列の記録データを生成する。図15(b)は、記録ヘッド71の大小分配率が1:1、記録ヘッド72の大小分配率が1:3の例を示している。
【0046】
以上のように求められた、大小ノズルペア決定処理およびそれに基づくノズル吐出量補正処理の結果の記録データに対して、つなぎ部マスク処理部38は、大小ノズル列ペアに対するつなぎ処理を行う(図4のステップS18、S19)。本実施形態では、ノズル列71a−71bペアとノズル列72a−72bペア、ノズル列71c−71dペアとノズル列72c−72dペアによりつなぎ処理が行われる。図15(c)は、つなぎ処理で用いるマスクの一部を示す図である。大小のノズル列ペア71a−71bペアとノズル列72a−72bペアに対してつなぎ処理を行う場合、ノズル列71a−71bペアにマスクAを、ノズル列72a−72bペアにマスクBを用い、つなぎ領域の記録データ図15(d)が得られる。ノズル列71c−71dペアとノズル列72c−72dペアについても同様に、大小ノズルペア決定処理、ノズル吐出量補正処理およびつなぎ処理が行われる。すなわち、大小のノズル列ペア71c−71dペアとノズル列72c−72dペアに対してつなぎ処理を行う場合、ノズル列71c−71dペアにマスクAを、ノズル列72c−72dペアにマスクBを用いる。すなわち、オーバーラップする記録領域内の所定の部分内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して分配の比率が決定される。
【0047】
以上のように生成されたつなぎ領域の記録データを用いて、ステップS20(図4)によって記録媒体上のつなぎ領域にドットが記録される。
【0048】
以上の実施形態によれば、つなぎ処理を行う直前のノズル列71a−71bペアの各ノズル列の記録データ(図15(b))を合わせたドット配置は、図15(a)に示す記録データAと同じものである。また、ノズル列72a−72bペアの各ノズル列の記録データ(図15(b))を合わせたドット配置も、図15(a)に示す記録データAと同じものである。つまり、本発明において、記録ヘッドごとにつなぎ処理に用いられるノズル列の記録データを合わせた記録データで示される、つなぎ領域のドット配置は、つなぎ処理を行う直前において記録ヘッド間で同一になる。
【0049】
換言すれば、つなぎ領域の記録に用いられる、ノズル列71a−71bペアとノズル列72a−72bペアの組の記録データと、ノズル列71c−71dペアとノズル列72c−72dペアの組の記録データとは、図15(a)に示す記録データAと記録データBにそれぞれ基づくものである。すなわち、これら記録データAと記録データBは互いに補完(排他)の関係にあることから、ノズル列71a−71bペアおよびノズル列72a−72bペアの組の記録データと、ノズル列71c−71dペアおよびノズル列72c−72dペアの組の記録データとは排他関係にあり、かつ記録ヘッド間で同じ排他関係にある。従って、マスク処理を経て最終的に得られるつなぎ領域の、記録ヘッド間の記録データも互いに(同じ)排他関係を有することになり、記録データの重複や欠損を生じることがない。
【0050】
(第2実施形態)
図16、図17および図18は、本発明の第2の実施形態に係る、それぞれ画像処理の構成、手順および記録データの変化を説明する図であり、第1実施形態に係る図3、図4および図15と同様の図である。本実施形態は、ドットデータ生成処理、ノズル吐出量補正およびつなぎ処理は、第1実施形態と同様であるため、ここでは大小ノズル列ペアの決定処理の第1実施形態との違いを主に説明する。
【0051】
<大小ノズル列ペア決定処理>
本実施形態の大小ノズル列ペア決定処理は、図17のステップS216〜S217において、図16に示す大小ノズル列ペア決定処理部237によって実行される。つなぎを行う記録ヘッドとして記録ヘッド71、72の場合を例に説明する。
【0052】
図18(a)は、ステップS211〜S214のドット生成処理により生成された記録データ(図18(a)の記録ドット配置)を、記録ヘッド71、72の記録特性(吐出量の大小)に基づいてノズル吐出量補正(S215)を施した結果を示している。第1実施形態同様、記録ヘッド71の大小分配率が1:1、記録ヘッド72の大小分配比率が1:3の例を示している。
【0053】
次に、図16の記録ドット配置分配処理部236は、記録ドット配置データを補完関係のある複数の記録ドット配置データに分配するために複数の分配マスクパターン(以下分配マスクと称する)を持つ。本実施形態では、図18(b)に示す2つの分配マスク(分配マスクA、B)を用いる。記録ドット配置分配処理部236は、記録ヘッド71、72ごとにノズル吐出量補正をした大小ドット記録データそれぞれを、分配マスクA、Bにより分配する。そして、大小ノズル列ペア決定処理部237は、分配された各記録データのドット記録を担当するノズル列を決める(図18(c))。分配マスクの働きはつなぎ部のマスクと同様である。
【0054】
図18(c)において、記録ヘッド71の大小ドット記録データ(図18(a)に示す71−大ドット、71−小ドット)それぞれに分配マスクAを適用して生成した記録データの担当ノズル列を、ノズル列71a、ノズル列71bに決定する。また、記録ヘッド71の大小ドット記録データ(図18(a)に示す71−大ドット、71−小ドット)それぞれに分配マスクBを適用して生成した記録データの担当ノズル列を、ノズル列71c、ノズル列71dに決定する。記録ヘッド72に対しても同様の方法で各記録ドット分配データの担当ノズル列を決定する。すなわち、記録ヘッド72の大小ドット記録データ(図18(a)に示す72−大ドット、72−小ドット)それぞれに分配マスクAを適用して生成した記録データの担当ノズル列を、ノズル列72a、ノズル列72bに決定する。また、記録ヘッド72の大小ドット記録データ(図18(a)に示す72−大ドット、72−小ドット)それぞれに分配マスクBを適用して生成した記録データの担当ノズル列を、ノズル列72c、ノズル列72dに決定する。
【0055】
次に、大小ノズル列ペア決定処理部237は、同じ分配マスクを用いて分配された記録データを担当する大小ノズル列をペアとする(S217)。図18(c)において、ノズル列71aとノズル列71b、ノズル列71cとノズル列71d、ノズル列72aとノズル列72b、ノズル列72cとノズル列72dを、それぞれ大小ノズル列ペアとする。つなぎ処理は第1実施形態と同様にノズル列71a−71bペアとノズル列72a−72bペア、71c−71dペアとノズル列72c−72dペアによって行われる。
【0056】
以上の処理の結果得られる、図18(c)に示す記録データ71a、71bを足し合わせた記録データのドット配置と、記録データ72a、72bを足し合わせた記録データのドット配置は一致している。すなわち、第2実施形態においても記録ヘッドごとにつなぎ処理に用いられるノズル列の記録ドット配置データを合わせた記録ドット配置データのつなぎ領域のドット形成位置は、つなぎ処理を行う直前において記録ヘッド間で同一になる。
【0057】
換言すれば、つなぎ領域の記録に用いられる、ノズル列71a−71bペアとノズル列72a−72bペアの組の記録データと、ノズル列71c−71dペアとノズル列72c−72dペアの組の記録データとは、図18(a)に示すマスクA、Bの処理によって相互に同じ排他関係となる。従って、最終的に得られるつなぎ領域の、記録ヘッド間の記録データも互いに排他関係を有することになり、記録データの重複や欠損を生じることがない。
【0058】
(他の実施形態)
図8に示した、記録ヘッドが2列のノズル列を有する場合も同様に本発明を適用することができる。例えば、図8(b)に示す記録ヘッド1の記録データ1−aに対して図18(a)に示すマスクAを適用し、記録ヘッド1の記録データ1−bに対して図18(a)に示すマスクBを適用する。同様に、記録ヘッド2の記録データ2−aに対してマスクAを適用し、記録データ2−bに対してマスクBを適用する。これにより、最終的に得られるつなぎ領域の、記録ヘッド間の記録データも互いに排他関係を有することになり、記録データの重複や欠損が生じることを防止できる。
【符号の説明】
【0059】
1 記録装置
7 記録ヘッド
34 ドット記録位置決定部
35 記録ドット配置分配処理部
36 大小ノズル列ペア決定処理部
37 記録ドット分配処理部
38 つなぎ部マスク処理部
53 0大小ドット分配率決定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に第1のサイズのドットを形成するための第1の記録素子が配列されている第1の記録素子列と、第1のサイズより小さい第2のサイズのドットを形成するための第2の記録素子が配列されていて、前記第1の記録素子列と沿うように設けられた第2の記録素子列と、がそれぞれ記録素子の配列方向と交差する方向に配列された記録ヘッドの複数個を有し、異なる前記記録ヘッドの前記記録素子列の一部同士が前記配列方向で対応する記録媒体上の記録領域がオーバーラップするように配置されている記録ヘッドユニットを用いて記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記ドットを記録するための記録データを、ある記録ヘッドに設けられた前記第1の記録素子による記録に使用されるデータと、同じ前記記録ヘッドに設けられた前記第2の記録素子による記録に使用されるデータと、に分配する分配手段と、
前記配列方向において記録領域がオーバーラップする、第1の記録ヘッドの前記記録素子列の一部と第2の記録ヘッドの前記記録素子列の一部とのそれぞれからの記録に使用される前記記録データを、オーバーラップする前記記録領域の記録に使用する記録素子のうちの端の記録素子の前記配列方向の位置が一致している同じ記録ヘッドに設けられている前記第1の記録素子列と前記第2の記録素子列とを組とし、前記第1の記録ヘッドの前記組からの記録に使用されるデータの量と前記第2の記録ヘッドの前記組からの記録に使用されるデータの量との比率を決定する決定手段と、
を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記分配手段は所定領域内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して前記分配を行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記決定手段は所定領域内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して前記比率の決定を行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記決定手段は前記オーバーラップする記録領域内の所定の部分内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して前記比率の決定を行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
記録媒体上に第1のサイズのドットを形成するための第1の記録素子が配列されている第1の記録素子列と、第1のサイズより小さい第2のサイズのドットを形成するための第2の記録素子が配列されていて、前記第1の記録素子列と沿うように設けられた第2の記録素子列と、がそれぞれ記録素子の配列方向と交差する方向に配列された記録ヘッドの複数個を有し、異なる前記記録ヘッドの前記記録素子列の一部同士が前記配列方向で対応する記録媒体上の記録領域がオーバーラップするように配置されている記録ヘッドユニットを用いて記録を行うための記録データ生成方法であって、
前記ドットを記録するための記録データを、ある記録ヘッドに設けられた前記第1の記録素子による記録に使用されるデータと、同じ前記記録ヘッドに設けられた前記第2の記録素子による記録に使用されるデータと、に分配する分配工程と、
前記配列方向において記録領域がオーバーラップする、第1の記録ヘッドの前記記録素子列の一部と第2の記録ヘッドの前記記録素子列の一部とのそれぞれからの記録に使用される前記記録データを、オーバーラップする前記記録領域の記録に使用する記録素子のうちの端の記録素子の前記配列方向の位置が一致している同じ記録ヘッドに設けられている前記第1の記録素子列と前記第2の記録素子列とを組とし、前記第1の記録ヘッドの前記組からの記録に使用されるデータの量と前記第2の記録ヘッドの前記組からの記録に使用されるデータの量との比率を決定する決定工程と、
を有したことを特徴とする記録データ生成方法。
【請求項6】
前記分配工程は所定領域内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して前記分配を行うことを特徴とする請求項5に記載の記録データ生成方法。
【請求項7】
前記決定工程は所定領域内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して前記比率の決定を行うことを特徴とする請求項5に記載の記録データ生成方法。
【請求項8】
前記決定工程は前記オーバーラップする記録領域内の所定の部分内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して前記比率の決定を行うことを特徴とする請求項5に記載の記録データ生成方法。
【請求項9】
コンピュータに読み取られることにより、当該コンピュータに請求項5ないし8のいずれかの記録データ生成方法を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
記録媒体上に第1のサイズのドットを形成するための第1の記録素子が配列されている第1の記録素子列と、第1のサイズより小さい第2のサイズのドットを形成するための第2の記録素子が配列されていて、前記第1の記録素子列と沿うように設けられた第2の記録素子列と、がそれぞれ記録素子の配列方向と交差する方向に配列された記録ヘッドの複数個を有し、異なる前記記録ヘッドの前記記録素子列の一部同士が前記配列方向で対応する記録媒体上の記録領域がオーバーラップするように配置されている記録ヘッドユニットを用いて記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記ドットを記録するための記録データを、ある記録ヘッドに設けられた前記第1の記録素子による記録に使用されるデータと、同じ前記記録ヘッドに設けられた前記第2の記録素子による記録に使用されるデータと、に分配する分配手段と、
前記配列方向において記録領域がオーバーラップする、第1の記録ヘッドの前記記録素子列の一部と第2の記録ヘッドの前記記録素子列の一部とのそれぞれからの記録に使用される前記記録データを、オーバーラップする前記記録領域の記録に使用する記録素子のうちの端の記録素子の前記配列方向の位置が一致している同じ記録ヘッドに設けられている前記第1の記録素子列と前記第2の記録素子列とを組とし、前記第1の記録ヘッドの前記組からの記録に使用されるデータの量と前記第2の記録ヘッドの前記組からの記録に使用されるデータの量との比率を決定する決定手段と、
を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記分配手段は所定領域内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して前記分配を行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記決定手段は所定領域内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して前記比率の決定を行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記決定手段は前記オーバーラップする記録領域内の所定の部分内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して前記比率の決定を行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
記録媒体上に第1のサイズのドットを形成するための第1の記録素子が配列されている第1の記録素子列と、第1のサイズより小さい第2のサイズのドットを形成するための第2の記録素子が配列されていて、前記第1の記録素子列と沿うように設けられた第2の記録素子列と、がそれぞれ記録素子の配列方向と交差する方向に配列された記録ヘッドの複数個を有し、異なる前記記録ヘッドの前記記録素子列の一部同士が前記配列方向で対応する記録媒体上の記録領域がオーバーラップするように配置されている記録ヘッドユニットを用いて記録を行うための記録データ生成方法であって、
前記ドットを記録するための記録データを、ある記録ヘッドに設けられた前記第1の記録素子による記録に使用されるデータと、同じ前記記録ヘッドに設けられた前記第2の記録素子による記録に使用されるデータと、に分配する分配工程と、
前記配列方向において記録領域がオーバーラップする、第1の記録ヘッドの前記記録素子列の一部と第2の記録ヘッドの前記記録素子列の一部とのそれぞれからの記録に使用される前記記録データを、オーバーラップする前記記録領域の記録に使用する記録素子のうちの端の記録素子の前記配列方向の位置が一致している同じ記録ヘッドに設けられている前記第1の記録素子列と前記第2の記録素子列とを組とし、前記第1の記録ヘッドの前記組からの記録に使用されるデータの量と前記第2の記録ヘッドの前記組からの記録に使用されるデータの量との比率を決定する決定工程と、
を有したことを特徴とする記録データ生成方法。
【請求項6】
前記分配工程は所定領域内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して前記分配を行うことを特徴とする請求項5に記載の記録データ生成方法。
【請求項7】
前記決定工程は所定領域内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して前記比率の決定を行うことを特徴とする請求項5に記載の記録データ生成方法。
【請求項8】
前記決定工程は前記オーバーラップする記録領域内の所定の部分内の複数の画素ごとに記録を許容するか否かを定めたマスクパターンを利用して前記比率の決定を行うことを特徴とする請求項5に記載の記録データ生成方法。
【請求項9】
コンピュータに読み取られることにより、当該コンピュータに請求項5ないし8のいずれかの記録データ生成方法を実行させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−236409(P2012−236409A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97899(P2012−97899)
【出願日】平成24年4月23日(2012.4.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月23日(2012.4.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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