説明

インクジェット記録装置および該装置におけるインク汚れ検知方法

【課題】記録ローラへのインク転写を検出可能なインクジェット記録装置。
【解決手段】記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に記録を行う記録手段と、記録媒体の搬送方向において記録ヘッドの下流側に設けられ、記録媒体に接して回転しながら記録媒体を搬送する搬送手段と、搬送方向において搬送手段の下流側に設けられ、記録媒体の画像を読み取る読取手段と、読取手段で読み取った画像を用いて搬送手段へのインクの転写を検知する検知手段と、を備え、記録手段は、記録媒体上の画像を記録する画像領域とは異なる非画像領域に、検知手段が前記搬送手段へのインクの転写を検知するためのパターンを記録するインクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインク汚れの検知が可能なインクジェット記録装置、およびそのインク汚れ検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出し記録を行うインクジェット記録装置では、記録媒体に生じたインク汚れが記録装置の記録媒体搬送機構の構成部材に転写したり、さらにその転写したインク汚れが後続の記録媒体に再転写するという問題が知られている。
【0003】
このようなインク汚れの低減に関して、特許文献1には、記録媒体搬送方向において、記録ヘッドの下流側の記録媒体搬送手段を押付け手段と重ならない位置に設けて、押付け手段からのインク汚れの記録媒体への再転写を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−055839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクジェット記録装置において、搬送量の誤差などによって複数の記録ヘッドによる記録領域が重なり、それによって記録媒体で吸収できないインクの溢れを生じ、それがインク汚れとなることがある。また、記録ヘッドの昇温によってインクの吐出量が増加し、それがインク溢れとなることもある。このようなインク汚れが搬送ローラなどに付着し、さらにそれが記録媒体に再転写してしまうことがある(以下、この現象を「ローラ転写」ともいう)。特許文献1の再転写防止の構成は、上述のような原因によるインク汚れの記録媒体への再転写を防ぐことはできない。また、このようなインク汚れをあらかじめ検知することは困難であり、インク汚れが検知されないまま記録を継続すると、記録媒体はインクで汚れ続け、無駄な紙ゴミおよびインク消費が生じる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、搬送ローラないし記録媒体において生じる可能性のあるインク汚れを検知してそれを防止し、さらに、インク汚れによって無駄になる記録媒体やインクの量を低減できるインクジェット記録装置およびその方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に記録を行う記録手段と、記録媒体の搬送方向において記録ヘッドの下流側に設けられ、記録媒体に接して回転しながら記録媒体を搬送する搬送手段と、搬送方向において搬送手段の下流側に設けられ、記録媒体の画像を読み取る読取手段と、読取手段で読み取った画像を用いて搬送手段へのインクの転写を検知する検知手段と、を備え、記録手段は、記録媒体上の画像を記録する画像領域とは異なる非画像領域に、検知手段が搬送手段へのインクの転写を検知するためのパターンを記録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
画像記録中に記録媒体からインク溢れが生じ、溢れたインクが搬送ローラへ付着し、さらに記録媒体へ転写してしまった場合でも、転写を検知し、転写により汚れた記録媒体を検品することができる。また、転写が生じる状態のまま記録し続けることがなくなるので、無駄な紙ゴミやインク消費の量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態の記録ヘッドのインク吐出面におけるノズルの配列を示す図である。
【図3】第1の実施形態の記録媒体上に記録される画像およびパターンの模式図である。
【図4】(a)から(c)は、第1の実施形態の検知用パターンおよびカットマークの詳細図である。
【図5】第1の実施形態の転写判定RGB値を示す図である。
【図6】第1の実施形態の検知用パターンの解析処理の手順を示す図である。
【図7】(a)および(b)は、第1の実施形態の詳細な転写判定方法を示す図である。
【図8】第1の実施形態のローラクリーニングの手順を示す図である。
【図9】第1の実施形態のローラクリーニングにおけるパターンを示す図である。
【図10】第2の実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す図である。
【図11】第2の実施形態の記録ヘッドのインク吐出面におけるノズルの配列を示す図である。
【図12】第2の実施形態の記録媒体上に記録される画像およびパターンの模式図である。
【図13】(a)および(b)は、第2の実施形態の検知用パターンの詳細図である。
【図14】第2の実施形態の転写判定RGB値を示す図である。
【図15】第2の実施形態の検知用パターンの解析処理の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付の図面を参照しつつ述べる。
(第1の実施形態)
図1および2を参照して、本発明の第1の実施形態のインクジェット記録装置およびこれに用いる記録ヘッドについて説明する。
【0011】
図1は本実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す図である。本実施形態のインクジェット記録装置は、記録媒体カセット2、搬送ローラ3、4、スキャナー5、カッター6a、カットマークセンサ6b、ソータ7、記録ヘッド8を備える。また、本実施形態のインクジェット記録装置は、制御部として、搬送制御部9、記録ヘッド制御部10、スキャナー制御部11、カッター制御部12、ソータ制御部13を備える。以下、記録媒体の搬送方向をX方向、X方向と直交する方向をY方向と呼ぶことにする。まず、記録媒体1は、搬送機構の構成部材たる搬送ローラ3、4によりこれを挟持し、搬送ローラ3、4を搬送制御部9で制御して回転させることによって搬送される。搬送と共に、インクを吐出するための吐出データに基づいて記録ヘッド制御部10によって記録ヘッド8のノズルより記録媒体1の所定領域にインクを吐出させて、画像を記録する。記録ヘッド8はインク色毎に独立した記録媒体幅のラインヘッドであり、記録媒体の搬送方向において、上流側からC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の順に3個の記録ヘッド8a、8b、8cが配置されている。搬送された記録媒体1に記録されるパターンは、スキャナー5をスキャナー制御部11で動作させることでRGB値として読み込むことができる。さらに、搬送された記録媒体1は、切断部であるカッター6aをカッター制御部12で動作させることで切断することができる。切断動作は記録媒体上に記録されたカットマークをカットマークセンサ6bで検知したタイミングで行われる。切断された記録物はソータ7に積載される。ソータは、記録物の画像サイズや用途によって分別するために様々なトレー、例えば、大サイズトレー、小サイズトレー、廃棄用トレーなどを備えており、ソータ制御部でどのトレーに記録物を出すか選択することができ、記録物の整理を可能とする。
【0012】
図2は本実施形態の記録ヘッドのインク吐出面におけるノズルの配列を示す図である。本実施形態では、記録ヘッド8a(シアン)のインク吐出面に複数のノズル14の開口が縦横に配置され、複数のノズル開口が一直線上に並んで構成されたノズル列が、A列、B列、C列、D列の順に並んでいる。ノズル開口は各列につき1024個並んでおり、各列の対応するノズル開口は、図中、同一のseg(セグメント)番号で示されるように、一直線上に配列されている。ノズル解像度は1200dpiとなっている。本実施形態においては、記録ヘッド8aは、図2中矢印でX方向として示される記録媒体搬送方向にD列からA列のノズル列が順に並ぶように、インクジェット記録装置に設置される。他の記録ヘッド8b(マゼンタ)、8c(イエロー)も同様の構成を取る。
【0013】
図3および4を参照して、本発明の第1の実施形態の検知用パターンについて説明する。
【0014】
図3は、本実施形態の記録媒体上に記録される画像およびパターンを模式的に示している。図中、符号1は記録媒体を示し、符号Sは所望の画像を、符号15は検知用パターンを、符号16はカットマークを示している。本実施形態においては、所望の画像を記録した画像領域I間の非画像領域NIに検知用パターン15およびカットマーク16を記録する。転写をスキャナーで検知するための余白が検知用パターンの後に設けられており、この余白領域を含めた領域17をスキャナー5で読み込む。
【0015】
図4(a)は、本実施形態の検知用パターンおよびカットマークの詳細な図を示している。検知用パターン15は、異色のインクによるベタパターンが千鳥状に隣接したパターンであり、また搬送ローラ4のニップ部分に対応した位置にのみ記録される。異色のベタパターンとして、位置aではシアンとマゼンタのパターンであるCMパターン15aが記録される。同様に、位置bではマゼンタとイエローのMYパターン15b、位置cではシアンとイエローのCYパターン15cが記録される。これらのパターンは、各色について設計上の最大インク打ち込み量で記録される。本明細書における「インク打ち込み量」とは、記録媒体の単位面積に吐出されるインク重量であり、インク滴の吐出量が一定である場合はインクドットの発数に置き換えて表現することもできる。スキャナー5で読み取った領域17のうち、パターン15から−X方向(すなわち記録媒体搬送方向の上流側)に搬送ローラ4の周長Lだけ離れた位置にあり、かつ搬送ローラ4のニップ部分の位置に対応した領域17a、17b、17cを解析に使用する。また、カットマーク16はCMY3色で記録されている。インク打ち込み量を増やしていくと一般に記録物の濃度は濃くなっていくことが知られているが、カットマークのインク打ち込み量は、カットマークセンサがカットマークを検知するのに十分な記録濃度を実現できる量であればよい。ここで、検知用パターン15は、上述のように、非画像領域NIにおいて搬送ローラ4のニップ部分に対応した位置にのみ記録される。検知用パターン15が記録された非画像領域NIと同一領域内の、Y方向において検知用パターン15とは異なる位置にカットマーク16を配置することで、領域NIに記録されるパzターンの全長を短くして紙ゴミとなる記録媒体の量を削減することが可能である。
【0016】
図4(b)は、記録ヘッド間で+X方向の搬送ずれが起きた場合の、インク溢れが発生した場合の検知用パターンを示している。本実施形態において複数の記録ヘッドおよび各記録ヘッドの複数のノズル列は、記録媒体搬送方向に離間して配置されている。本明細書における「搬送ずれ」は、記録媒体が、離間して配置された複数の記録ヘッドおよび/または複数のノズル列の間を搬送される際に生じ得る、記録媒体の搬送誤差に起因する記録画像の位置のずれをいう。本実施形態において搬送ずれは+X方向に一律に起きており、検知用パターン15aでは、Cに対してMが+100μmだけX方向にずれている。同様に、パターン15bではMに対してYが+100μm、パターン15cではCに対してYが+200μmだけX方向にずれている。記録ヘッド間の搬送ずれが起こった場合、異色のベタパターンが重複して記録された領域Wでインク溢れが起こる。溢れたインクは、記録媒体と共に搬送され、X方向における記録ヘッドの下流側に位置する搬送ローラの表面にその回転に伴い付着し、さらに記録媒体に転写される。すなわち、本実施形態においては、異色のベタパターンの境界位置から−X方向に搬送ローラ4の周長Lだけ離れた領域17a、17b、17c内の位置に、それぞれインク溢れによる汚れ18a、18b、18cが付着する。溢れるインク色は時間的に後で打たれたインク色となるので、位置aのCMパターンではMインク、位置bのMYパターンではYインク、位置cのCYパターンではYインクが溢れる。従って、転写判定に用いる閾値は、図5のようにパターン(搬送ローラのニップ部の位置)に対応させて決めることができる。すなわち、位置aではMインクに対応させてG値を閾値とし、位置bおよび位置cではYインクに対応させてB値を閾値とする。この閾値を転写判定RGB値と呼ぶことにする。
【0017】
図4(c)は、記録ヘッド間で、記録媒体搬送方向と直交する−Y方向の搬送ずれが起きた場合の、インク溢れが発生した場合の検知用パターンを示している。搬送ずれは−Y方向に一律に起きており、そのずれ量は、Cに対してMが−100μm、Mに対してYが−100μm、Cに対してYが−200μmとなっている。この場合も、異色のベタパターンの境界位置から−X方向に搬送ローラ4の周長Lだけ離れた領域17a、17b、17c内の位置に、それぞれインク溢れによる汚れ18a、18b、18cが付着する。溢れるインク色は時間的に後で打たれたインク色となるので、位置aのCMパターンではMインク、位置bのMYパターンではYインク、位置3のCYパターンではYインクが溢れる。従って、転写判定に用いる閾値は、前述した図5と同様に決めることができる。
【0018】
このように、本実施形態における検知用パターンは異色のインクのベタパターンを千鳥状に配置しているので、各インク色の記録ヘッド間の搬送ずれが±X方向であれ±Y方向であれ、ローラ転写を検知することが可能である。
【0019】
図6は、ローラ転写の検知を目的とした検知用パターンの解析処理の手順を示す図である。以下にフローの詳細を説明する。
【0020】
始めに、スキャナーで、検知用パターンから−X方向にローラ周長だけ移動した領域17を400dpiの解像度で読み取る(図6ステップS1)。読み取ったパターンのうち、搬送ローラのニップ部の位置に対応した領域17a、17b、17cをスキャナー制御部で解析し、各ローラについてローラ転写が発生しているか判定する(図6ステップS2、S3、S4)。前述したように、判定に用いるRGB値は、位置aの解析にはG値を、位置bおよびcの解析にはB値を用いる。
【0021】
ここで、転写判定方法について図7(a)および(b)を参照しつつ説明する。図7(a)のように、解析領域内のRGB値の最小値が転写判定のための閾値である転写判定RGB値を超えている場合は、ローラ転写は発生していないと判定する。図7(b)のように、解析領域内のRGB値の最小値が転写判定RGB値以下である場合は、ローラ転写が発生したと判定する。この図では閾値を200と設定しているが、閾値は記録媒体の種類やインクジェット記録装置本体によって適正な値に変更してもよい。
【0022】
全てのローラについて転写が起こっていないと判定された場合は、さらに検知を続けるかを判断し(図6ステップS5)、続行する場合はステップS1に戻り、続行しない場合は、転写検知処理を終了する。一方、ステップS2からS4でいずれか一つのローラについてローラ転写が発生していると判定された場合は、画像記録を中断する指令を出力する(図6ステップS6)。そして、ローラ転写で汚れた可能性のある記録物を廃棄用トレーに出す(図6ステップS7)。これによって、ローラ転写で汚れた記録物があったとしても、それを検品して廃棄することができる。また、ローラ転写が起こった状態のまま画像記録を続行することはなくなるので、無駄な紙ゴミとなる汚れた記録媒体の量およびインクの消費量を低減することができる。
【0023】
ここで、ローラ転写を検知して記録を中断した場合、搬送ローラ4がインクで汚れたままで画像記録を再開しても記録物が汚れてしまうので、ローラクリーニング処理に移行する(ステップS8)。ローラクリーニング処理は、例えば、搬送ローラ4に付着したインク汚れが記録媒体へ再転写しない状態となるまで、画像を記録せずに記録動作を継続することにより行う。このローラクリーニング処理のシーケンスについては図8に示す。まず、ローラクリーニングパターンを記録する(図8ステップR1)。ローラクリーニングパターンは、図9に示すように、記録媒体の画像領域に、インクを吐出しない白画像を1枚、非画像領域に、切断に必要なカットマークのみを記録するパターンである。その後、領域17をスキャナー5で読み取り(図8ステップR2)、全てのローラの汚れが取れたかどうかを搬送ローラのニップ部の位置に対応した領域17a、17b、17cのRGB値を読み込んで確認する(図8ステップR3、R4、R5)。汚れているかどうかの判定は、図5および図7(a)、(b)に示す転写判定条件と同様の判定条件によって判定する。全てのローラの汚れが取れていると判定された場合はローラクリーニングを終了する。何れか一つのローラが汚れていると判定された場合は、再度クリーニングを行う。汚れが取れるまでクリーニングを継続する。
【0024】
ローラクリーニング処理を実行した後は、ローラ転写が再び起こらないように、記録モードを変更し、通常の記録モードよりもインク打ち込み量を低減させた転写回避モードに移行する(図6ステップS9)。転写回避モードのインク打ち込み量は通常の記録モードの0.8倍とする。インク打ち込み量を低減させる手段は、入力画像のドット数を減らす方法であってもよいし、駆動条件を変えて吐出量を減らす方法であってもよい。
【0025】
本実施形態では、毎画像間に検知パターンを記録している場合を説明したが、検知パターンは、画像複数枚間隔で挿入してもよく、任意のタイミングで挿入してもよい。
【0026】
本実施形態では、画像読取装置としてスキャナーを用いた構成としたが、他の画像読取装置であってもよい。
【0027】
(第2の実施形態)
図10および11を参照して、本発明の第2の実施形態のインクジェット記録装置およびこれに用いる記録ヘッドについて説明する。
【0028】
図10は本実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す図である。図10中、図1に示す第1の実施形態のインクジェット記録装置と共通する構成については、同一の符号で示し、ここでは詳細な説明を割愛する。本実施形態のインクジェット記録装置は、第1の実施形態と同様に、記録媒体を切断するためのカッターを備え、カッター26をカッター制御部12で動作させることで記録媒体1を切断することができる。一方、本実施形態では、カッターマークセンサ(図1の符号6b)は必須の構成要素ではなく、切断の動作は、記録媒体上に記録された検知用パターンをスキャナー5で検知したタイミングに基づき実行することができる。また、第1の実施形態では、インク色毎の記録ヘッド8a、8b、8cを用いるのに対し、本実施形態の記録ヘッド28は、CMY3色のインクのノズル列を持つ単一の記録媒体幅のラインヘッドである。
【0029】
図11は本実施形態の記録ヘッドのインク吐出面におけるノズルの配列を示す図である。図2に示す第1の実施形態の記録ヘッドにおける同色のインクを吐出する4つのノズル列AからDの代わりに、本実施形態の記録ヘッドは、CMYの3色のインクを吐出する3つのノズル列を有する。すなわち、本実施形態では、記録ヘッド28のインク吐出面に複数のノズル14の開口が縦横に配置され、複数のノズル開口が一直線上に並んで構成されたノズル列が、そこから吐出されるインク色の観点でC、M、Yの順に並んでいる。ノズル開口は各列につき1024個並んでおり、各列の対応するノズル開口は、図中、同一のseg(セグメント)番号で示されるように、一直線上に配列されている。ノズル解像度は1200dpiとなっている。本実施形態においては、記録ヘッド28は、図11中矢印でX方向として示される記録媒体搬送方向にCからYのインク色のノズル列が順に並ぶように、インクジェット記録装置に設置される。
【0030】
ここで、本発明の第2の実施形態の検知用パターンは、カットマークを兼ねたパターンであり、かつ吐出不良ノズルを回復させるための予備吐出パターンでもある。すなわち、検知用パターンの記録は、予備吐出動作を兼ねる。以下、図12および13を参照して説明する。
【0031】
図12は、本実施形態の記録媒体上に記録される画像およびパターンを模式的に示している。図中、符号1は記録媒体を示し、符号Sは所望の画像を、符号35は検知用パターンを示している。本実施形態においては、所望の画像を記録した画像領域I間の非画像領域NIに検知用パターン35を記録する。また、転写をスキャナーで検知するための余白が検知用パターンの後に設けられている。本実施形態においては、検知用パターン35の少なくとも一部とその後に設けられた余白領域とを含めた領域37をスキャナー5で読み込む。
【0032】
図13(a)は、本実施形態の検知用パターンの詳細な図を示している。検知用パターン35は、異色のインクによるベタパターンが千鳥状に隣接したパターンであり、各色について設計上の最大インク打ち込み量で記録される。次に、スキャナー5で読み取った領域37のうち、検知用パターン35から−X方向に搬送ローラ4の周長Lだけ移動した位置にあり、かつ搬送ローラ4のニップ部分の位置に対応した領域37a、37b、37cを解析に使用する。また、本実施形態においては、検知用パターン35はカットマークも兼ねており、領域37をスキャナーで読み込み、領域37に含まれる検知用パターン35を検知したタイミングに基づいて記録媒体を切断する。第1の実施形態の検知用パターン15は、記録媒体の幅方向(矢印Y方向)において搬送ローラ4のニップ部分に対応した位置のみに記録されている。それに対し、本実施形態の検知用パターン35は、記録媒体の全幅に記録されている。そのため、検知用パターン35の記録において、全インク色の全ノズルから回復に十分な発数のインク滴を吐出することが可能であるので、この記録は、固着したインクを排出して吐出詰まりを解消する予備吐出(フラッシング)の役割も担っている。
【0033】
図13(b)は、記録ヘッド全体が昇温したことにより記録媒体上にインク溢れが発生した場合の検知用パターンを示している。すなわち、記録ヘッド全体が昇温すると、CMY全色のインク吐出量が設計値よりも増え、それにより、記録媒体に記録された検知用パターン35全体でインク溢れが起こる。本実施形態においては、検知用パターン35から−X方向に搬送ローラ4の周長Lだけ移動した領域37a、37b、37cに、それぞれインク溢れによる汚れが付着する。転写が起きれば、領域37a、37b、37cのRGB値は、インク汚れの付着が無い状態の、すなわち記録媒体1の固有のいわゆる紙白のRGB値からずれた値となる。故に、図14のように、各ローラ位置について解析領域のRGB値の最小値が、転写判定のための閾値である転写判定RGB値以下であれば、ローラ転写が発生したと判定すればよい。この図では閾値を200と設定しているが、閾値は記録媒体の種類やインクジェット記録装置本体によって適正な値に変更してもよい。
【0034】
ローラ転写の検知を目的とした検知用パターンの解析手順については、第1実施例と同様の手順で図15のような形で行えばよい。
【0035】
本実施形態では、毎画像間に検知用パターンを記録している場合を説明したが、検知用パターンは、画像複数枚間隔で挿入してもよく、任意のタイミングで挿入してもよい。
【0036】
本実施形態では、画像読取装置としてスキャナーを用いた構成としたが、他の画像読取装置であってもよい。また、本実施形態では、RGB値に基づいて転写判定を行ったが、これに限られず、他の光学的濃度に基づいて転写判定を行うことができる。したがって、本実施形態では、CMYの3色のインクを用いる構成としたが、インク色はこれらに限られず、黒、灰色等のインクを用いる構成であってもよい。
【0037】
本実施形態では、インク溢れの要因として昇温の場合を上げたが、各インク色のノズル列間の搬送ずれなど他の要因によるローラ転写に関しても検知することができる。
【0038】
このように、本発明は、搬送ローラの位置に対応した検知用パターンを非画像領域に記録し、当該パターンから搬送ローラの周長だけ移動した領域を画像読取装置で読み込んで解析することで、ローラ転写を検知するものである。本発明によれば、ローラ転写によってインクで汚れた記録物を検品し、廃棄することが可能となる。また、ローラ転写を検知した際に、記録を中断し、ローラクリーニング処理を行い、記録モードをインク打ち込み量のより少ない記録モードに変更することにより、ローラ転写およびそれによる記録媒体の汚れの再発生を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1 記録媒体
4 下流側搬送ローラ
5 スキャナー
6a カッター
6b カットマークセンサ
8a、8b、8c 記録ヘッド
15a、15b、15c 検知用パターン
16 カットマーク
17a、17b、17c 解析領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に記録を行う記録手段と、
記録媒体の搬送方向において前記記録ヘッドの下流側に設けられ、記録媒体に接して回転しながら記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送方向において前記搬送手段の下流側に設けられ、記録媒体の画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段で読み取った画像を用いて前記搬送手段へのインクの転写を検知する検知手段と、
を備え、
前記記録手段は、記録媒体上の画像を記録する画像領域とは異なる非画像領域に、前記検知手段が前記搬送手段へのインクの転写を検知するためのパターンを記録することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記読取手段は、記録媒体上の解析領域の光学的濃度を読み取り、前記解析領域は前記パターンが記録された領域から前記搬送手段の回転の周長だけ前記搬送方向の上流側に離れた領域を含む領域であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記検知手段は、前記読取手段で読み取った光学的濃度と、前記パターンに対応して設定された光学的濃度の閾値とを用いて、前記搬送手段へのインクの転写を検知することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記搬送方向において前記読取手段の下流側に配置され、記録媒体を切断する切断手段をさらに備え、
前記切断手段は、前記パターンを前記読取手段で読み取ったタイミングに基づいて、記録媒体の切断を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記搬送方向において画像読取手段の下流側に配置され、記録媒体を切断する切断手段をさらに備え、
前記記録手段は、前記パターンを記録した前記非画像領域と同一領域内の、前記搬送方向と直交する方向において前記パターンとは異なる位置に、記録媒体の切断のタイミングを検知するためのカットマークを記録し、
前記切断手段は、カットマークを読み取ったタイミングで、記録媒体の切断を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記パターンを記録する動作は、ノズルの吐出不良を解消するための予備吐出を兼ねていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記搬送方向において前記読取手段の下流側に配置されたソータ手段をさらに備え、
前記検知手段が前記搬送手段へのインクの転写を検知した場合には、画像の記録を中断し、汚れた可能性がある記録物を前記ソータ手段に含まれる廃棄用のトレーに出すことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記搬送手段に付着したインク汚れを取るクリーニング手段をさらに備え、
前記検知手段が前記搬送手段へのインクの転写を検知した場合には、記録手段は画像の記録を中断し、前記クリーニング手段でクリーニングを行うことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
インク打ち込み量に関する記録モードの設定手段をさらに備え、
前記検知手段が前記搬送手段へのインクの転写を検知した場合に、前記設定手段は、記録モードを、インク打ち込み量がより少ない記録モードに変更することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
記録媒体上の画像を記録する画像領域とは異なる非画像領域に、パターンを記録する工程と、
前記パターンが記録された記録媒体の解析領域の光学的濃度を読み取って、記録媒体に接して回転しながら記録媒体を搬送する搬送手段へのインクの転写を検知する工程と、
を有し、前記解析領域は、前記パターンが記録された領域から前記搬送手段の回転の周長だけ搬送方向の上流側に離れた領域を含む領域であることを特徴とするインク汚れ検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−14068(P2013−14068A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148157(P2011−148157)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】