説明

インクジェット記録装置及びインクジェット記録装置の制御方法

【課題】 インクジェット記録装置を用いてメッシュ状の印刷メディアに印刷するときに、プラテンのインク汚れを防止するインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 インクジェット記録装置のプラテンを、インクジェットヘッドと対向する部分とそうでない部分に分割したプラテンを用いる。インクジェットヘッドと対向した部分のプラテンの下にカムを配置し、そのカムを駆動手段によって回転駆動させ、プラテンを昇降させる。インクジェットヘッドから吐出されたインクが、メッシュ状の印刷メディアを貫通した場合、降下したプラテン上に配置したトレーに貫通したインクが溜められ、印刷メディアの裏面への付着を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラテンを有する記録装置に関し、特に、メッシュ状の記録メディアに画像を形成するインクジェット記録装置及びインクジェット記録装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおいては、インクジェットヘッドからインクを吐出し、文字や画像を多種多様の印刷メディアへ記録することができる。例えば、シート状の塩化ビニルやターポリンなどの印刷メディアへ、塗料としてソルベントインクを使用し、画像や文字を記録するものがある。また、これらの印刷メディアは屋外で使用されこともあり、ターポリンなどは建築物のカバーシートや看板などに利用されている。さらに、印刷メディアの中にはメッシュ状の物が存在している。インクジェットプリンタは、メッシュ状のメディアへインクを吐出し、文字や画像を印刷することもできる。しかし、メッシュ状の印刷メディアを使った場合、インクが印刷メディアを通り抜けてプラテンを汚してしまい、さらにその汚れが印刷メディアの裏面を汚してしまうという不具合が発生する。
【0003】
この課題に対して従来は、ポリエステル製の不織布を間紙として使い、この間紙を印刷用メディアの裏面とプラテン間に配置し、印刷用メディアと伴に搬送し、貫通したインクをこの間紙に吸い取らせることで回避していた。
【0004】
また、特開2002−337405公報には、プラテンの印刷インク着弾面の1箇所以上が凹状に切り欠かれていて、該凹状部分にインク吸収素材からなるインク吸収部材が装着されているインクジェットプリンタが開示されている。印刷メディアを貫通したインクを凹状部分のインク吸収素材に吸収させ、印刷メディアの裏面へインク付着することを防止している。またこのインクジェットプリンタは、プラテンが着脱可能、インク吸収素材が交換可能である。
【特許文献1】特開2002−337405
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の手法では、間紙を印刷メディアと伴に搬送する場合は、印刷メディアと同量の間紙が必要であり、印刷メディアが重く大きくなる。印刷メディアと間紙を重ねて搬送させたり、印刷後に印刷メディアと間紙を分離させたりする必要があり、インクジェットプリンタへの印刷メディアの装着性や取り扱い性が悪い。
【0006】
また、プラテンに凹状部分を設け、そこへインク吸着部材を粘着させたプリンタを用いた場合、プラテンはインク吸収素材を使用する専用プラテンとなる。印刷メディアによっては印刷面にたわみや皺が出やすいものがあり、凹状部分で皺やたわみとなり、印刷するのが困難となる。また、プラテンを交換する場合は、凹状部分のあるプラテンを取り外して、平らな面のプラテンを装着しなければならず、プリンタの取り扱い性が悪くなる。また、インク吸収素材に付着したインクはすぐに乾燥せず、印刷メディアの交換やインク吸収素材の交換の時にメディアや操作者に付着してしまう不具合など、取り扱い性が悪く、不便であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為の手段として、本願発明の第一の態様は、印刷メディアを搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送された前記印刷メディアにインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを搭載し搬送方向に対して垂直方向に移動するキャリッジと、前記インクジェットヘッドに対向する位置に配置されたプラテンを有するインクジェット記録装置において、前記プラテンと前記インクジェットヘッドとの距離を可変する昇降手段と前記昇降手段を操作する操作手段を有し、前記操作手段を操作し、前記昇降手段によって前記プラテンと前記インクジェットヘッドとの距離を変えることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0008】
さらに第二の態様は、前記昇降手段は前記プラテンの前記インクジェットヘッドとは反対側に当接するプラテン駆動手段を有し、前記操作手段を操作することで前記プラテン駆動手段を動作させ、前記プラテンの位置を可変することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0009】
さらに第三の態様は、前記プラテン駆動手段は、前記プラテンに当接したカムと、前記カムを回転させる軸とを有し、前記操作手段は前記軸と接続され、前記操作手段を操作することで前記軸を回転させ、前記カムと当接した前記プラテンの位置を可変することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0010】
また第四の態様は、前記プラテン駆動手段は、前記プラテンを加圧するバネと前記プラテンの位置を固定するロックを有し、前記ロックは前記プラテンを固定する複数の位置に対応した複数のロックからなり、前記操作手段を操作することによって前記ロックを解除すると前記プラテンは可動し、所望の位置で前記ロックによって前記プラテンの位置を固定することを特徴とするインクジェット記録装置としてもよい。
【0011】
さらに第五の態様は、第一の態様において前記昇降手段は、前記プラテンに配置されたプラテンネジ部と、プラテン支持板に支持され前記プラテンネジ部と係合する支持板ネジ部と、前記プラテンネジ部か支持板ネジ部のいずれかを回転駆動するネジ駆動手段とを有し、前記操作手段を操作することで前記ネジ駆動手段を動作させ、前記プラテンネジ部か支持板ネジ部のいずれかを回転させ、前記プラテンの位置を可変することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0012】
第六の態様は、上述第一から第五の態様のインクジェット記録装置において、ヒーターと、前記ヒーターを駆動し、前記ヒーターの温度を制御する駆動制御手段と、を更に有し、前記ヒーターは前記プラテンに配置され、前記駆動制御手段は、前記操作手段の操作に応じて、前記ヒーターの温度を可変することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0013】
第七の態様は、上述第一から第五の態様のインクジェット記録装置において、吸引ファンと、前記吸引ファンを駆動し、前記吸引ファンの吸引力を制御する駆動制御手段と、前記プラテンに配置された吸引孔と、前記吸引孔に連通した吸引室と、を更に有し、前記駆動制御手段は、前記操作手段の操作に応じて、前記吸引ファンの吸引力を可変することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0014】
第八の態様は、第一の態様において、前記インクジェットヘッドのプラテンからの距離を可変するヘッド位置調整手段を更に有し、前記ヘッド位置調整手段は前記操作手段に連動し、前記プラテンを前記インクジェットヘッドから遠ざける方向に移動させたときに、前記ヘッド位置調整手段は前記インクジェットヘッドを前記プラテンから遠ざける方向に移動させることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0015】
第九の態様は、印刷メディアを搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送された前記印刷メディアにインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを搭載し搬送方向に対して垂直方向に移動するキャリッジと、前記インクジェットヘッドに対向する位置に配置されたプラテンを有するインクジェット記録装置の制御方法において、前記プラテンは前記プラテンを加熱するヒーターを更に有し、前記インクジェット記録装置は前記ヒーターを制御するヒーター制御手段を更に有し、前記プラテンは前記印刷メディアに応じて前記プラテンの位置が前記インクジェットヘッド離接する方向に移動可能であり、前記プラテンが前記インクジェットヘッドと離れる方向に移動した状態で印刷するとき、前記ヒーターにより前記プラテンを加熱して印刷することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法である。
【0016】
さらに第十の態様は、前記プラテンは前記印刷メディアを吸引する吸引手段を更に有し、前記インクジェット記録装置は前記吸引手段を制御する吸引制御手段を更に有し、前記プラテンが前記インクジェットヘッドと離れる方向に移動した状態で印刷するとき、前記吸引手段の動作を停止させて前記印刷メディアを搬送し、前記印刷メディアに印刷することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法である。
【0017】
また第十一の態様は、前記プラテンは前記印刷メディアを吸引する吸引手段を更に有し、前記インクジェット記録装置は前記吸引手段を制御する吸引制御手段を更に有し、前記プラテンが前記インクジェットヘッドと離れる方向に移動した状態で、前記プラテン上にインク受けがある場合に印刷するとき、前記吸引手段を動作させ、前記印刷メディアに印刷することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、印刷メディアを通り抜けたインクによる印刷メディアの裏面の汚れを防止する。また、印刷メディアを通り抜けたインクはトレーに溜まり、印刷メディアの裏面を汚すことを防止する。さらに、トレーに溜まったインクはヒータによって加熱され、すばやく蒸発させることができるので、印刷メディアの裏面を汚すことを防止できる。また、プラテンを昇降させることができるので、プラテンを降ろした状態ではメッシュ状の印刷メディアを使い、印刷メディアの裏面の汚れを防止し、プラテンを上げた状態では、印刷メディアをプラテンに吸着した状態で印刷するので高品位の印刷が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明のインクジェット記録装置の要部構成を概略的に示す断面図である。図2は本発明のインクジェット記録装置の構成を示す断面図の部分的拡大図である。図1と図2を用いてインクジェット記録装置20の構成を説明する。インクジェット記録装置20は、印刷メディア19へ画像を形成する記録装置である。ヘッド1はキャリッジ2に固定され、キャリッジ2はレール3に移動可能の固定されている。レール3に沿ってキャリッジ2を移動させ、印刷メディア19を搬送ローラ9とピンチローラ10によって搬送し、ヘッド1からインクを吐出することで、印刷メディア19へ画像を形成する。ヘッド1に対向する位置に第一のプラテン6がヘッド1と離接可能に移動するようにプラテン支持アーム11に設置されている。また、キャリッジ2には、ヘッド1が第一のプラテン6と離接可能に移動できるようにヘッド1の高さを調整するヘッド高さ調整レール21を備えている。
【0020】
印刷前の印刷メディア19は供給ローラ15に巻かれている。印刷後の印刷メディア19は巻取りローラ14によって巻き取られて保管される。
【0021】
搬送ローラ9が回転駆動されると、搬送ローラ9に圧接されているピンチローラ10が連れ回りする。印刷メディア19は搬送ローラ9とピンチローラ10によって挟まれ、必要な量だけ搬送される。印刷メディア19は供給ローラ15から搬送ローラ9まで間に、メディアに皺がよらないように、所定のテンションをかける為に供給テンションローラ17によって、テンションをかけている。また、搬送ローラ9から巻取りローラ14までの間も、印刷メディア19に皺がよらないように、巻取りテンションローラ16によって印刷メディア19が張る方向、つまり搬送方向に圧力をかけている。
【0022】
第1の軸22と第2の軸23はプラテン支持アーム11に回転可能に取り付けられている。第1の軸22には、第1のカム4が固定され、第1の軸22が回転すると第1のカム4が連動して回転する。第1のカム4は好ましくは第1の軸22の延設方向に複数個配置するのが好ましい。第2の軸23には、第2のカム5が固定され、第2の軸23が回転すると第2のカム5が連動して回転する。第2のカム5は好ましくは第2の軸23の延設方向に複数個配置するのが好ましい。第1のプラテン6を複数のカムで支持することで、がたつきを防止できる。
【0023】
プラテンは、第1のプラテン6、第2のプラテン7、第3のプラテン8の3部分からなっている。第1のプラテン6はヘッド1と離接方向に移動可能であるが、第2のプラテンと第3のプラテンはプラテン支持アーム11に固定して設置されている。第1のプラテン6はヘッド1と対向する位置にあるが、第2のプラテン7と第3のプラテン8はヘッド1とは対向せず、キャリッジ2と対向する位置に配置されている。第1のプラテン6はヘッド1とは反対側つまり裏面に第1のカム4と第2のカム5が当接している。第1のカム4と第2のカム5は偏芯していて、回転することで、第1のプラテン6を上位下方向に移動させる。
【0024】
第1のプラテン6、第2のプラテン7、第3のプラテン8には複数の貫通孔が形成され、れている。そして、第1のプラテン6、第2のプラテン7、第3のプラテン8の下側には吸引ボックス12が配置され、吸引ボックス12にはファン13が取り付けられている。ファン13によって吸引ボックス12内の気圧を下げることで、第1のプラテン6、第2のプラテン7、第3のプラテン8に印刷メディア19を吸い付けることができる。印刷メディア19を吸い付けながら搬送することで、ヘッド1と印刷メディア19の距離が一定の状態でインクを吐出することができるので、インクが付着の仕方が一定となり、画質の品質が良い画像を形成できる。
【0025】
これらの部品はフレーム18に取り付けられ、インクジェット記録装置20を構成する。
【0026】
次に図3と図4を用いてプラテンの昇降状態を説明する。図3は本発明のインクジェット記録装置のプラテンの上昇状態を表した断面図である。図4は本発明のインクジェット記録装置のプラテンの降下状態を表した断面図である。メッシュ状の印刷メディア19に印刷する場合、印刷メディア19を貫通してインクがプラテンに付着してしまい、プラテンを汚すばかりか、印刷メディア19の裏面も汚してしまう。そこで、メッシュ状の印刷メディア19を使用する場合は、ヘッド1と対向する部分の第1のプラテン6を降下位置にし、そこへトレーやインク吸収材を置く事で、インクが印刷メディア19の裏面を汚さないようにしている。メッシュ状ではない印刷メディア19を使う場合は、第1のプラテン6を上昇位置にし、印刷メディア19に印刷をする。
【0027】
図3は第1のプラテン6を上昇位置にした場合の図である。第1のカム4と第2のカム5によって第一のプラテン6が持ち上げられている。この状態での印刷は、ファン13が動作し、吸引ボックス12内の気圧が下がるので、吸引孔25を通して吸引ボックス12内に空気が吸われる。また、ヒーター26は予め決められた印刷時の温度設定値の温度を保つ。メディアガイド24は印刷メディア19の両側端を押さえ印刷メディア19が捲れないようにしている。
【0028】
図4は第1のプラテン6を降下位置にした場合の図である。第1のカム4と第2のカム5によって第一のプラテン6が下げられている。第1のプラテン6はプラテン支持アーム11の方向にバネで引かれているので、カムの当接する位置によって第1のプラテン6の位置が移動する。この状態での印刷はメッシュ状の印刷メディアの印刷に対応している。
メッシュ状の印刷メディアの場合は、吸引ではプラテンに吸い寄せられないのでファン13の動作を停止する。また、ヒーター26は予め決められたメッシュ状の印刷メディアの印刷時の温度設定値の温度に可変する。
【0029】
メッシュ状の印刷メディアの場合はプラテンに吸引されないので、メディアガイド24によって両側端を押さえ印刷メディア19が捲れないようにする。さらに搬送方向に印刷メディアにテンションをかけながら印刷する。また、ヘッド1を矢印27の方向、つまり、プラテンから離れる方向に移動させる。メッシュ状の印刷メディアの場合はプラテンに吸引されないので、印刷メディアの位置が吸引されたときに比べてプラテンから浮いてしまい、ヘッド1と接触してしまうので、ヘッド1をプラテンから離す方向に移動させて、接触を防止しながら印刷する。
【0030】
図5は本発明のインクジェット記録装置のプラテンの別の降下状態を表した断面図である。第1のプラテン6が降下した位置にトレー28を配置する。トレー28にインクを溜め、ヒーター26によって第1のプラテン6を加熱して、さらにトレー28に伝わった熱で溜まったインクの気化を即す。さらに、ファン13を動作させることで、吸引孔25によってトレー28を第1のプラテン6へ引き寄せるので、印刷中にトレー28が、がたつくことで印刷メディア19やヘッド1に接触することを防止する。また、トレー28の代わりに、不織布のインク吸収材を敷くこともでき、その場合も吸引をおこなうことで、インク吸収材を第1のプラテンに吸い寄せておくことができ、印刷メディア19の裏面にインクが付着するのを防止できる。ヒーター26により加熱することで、インクの気化が早まり、印刷メディアの裏面にインクが付着しにくくし、さらに、インクが乾くことで、トレー28や印刷メディア19の扱いが容易となる。
【0031】
図6は本発明のインクジェット記録装置の印刷メディアへ印刷している状態を表した斜視図である。レール3に沿ってキャリッジ2が往復移動し、印刷メディア19に印刷する。キャリッジ2の移動面に対向して、第1のプラテン6が配置され、第1のプラテン6をまたぐようにメディアガイド24が設置されている。メディアガイド24は印刷メディア19の両側端を押さえ、捲れ防止する。特にメッシュ状の印刷メディア19を使用した場合、プラテンによる吸引がされないので、印刷メディア19の両側端をメディアガイド24で押さえつける必要がある。さらに印刷メディア19は搬送方向に引かれ常に張っている状態にしながら印刷を行う。なるべく印刷メディア19とヘッド1の間隔を一定にして印刷することで、印刷画像の品質を良くしている。
【0032】
図7は本発明のインクジェット記録装置の構成を表すブロック図である。CPU29はROM30に記憶されたプログラムに基づき動作し、装置全体の動作の制御を行う制御手段である。ROM30は不揮発性メモリであり、プログラム、印刷条件による温度設定や吸引の有り無しの条件値などの各種設定値を記憶する。RAM31はCPU29の演算のワークエリアや、一時的なデータの保存を行う。LCD32はCPU29の制御により、ユーザーに対して入力の指示やメッセセージなどデータの表示を行う。スイッチ33はインクジェット記録装置20の入力操作を行う入力手段である。
【0033】
ヒーター26は第1のプラテン6を加熱するヒーターである。ヒーター26はヒーター駆動回路34の駆動信号により、加熱温度を可変する。ヒーター駆動回路34はCPU29によって制御される。ファン13はファン駆動回路35の駆動信号により、動作を行う。ファン駆動回路35はCPU29によって制御される。第1のプラテン6はプラテン駆動手段40によって昇降する。プラテン駆動手段40はプラテン位置指示手段36の操作によって駆動される。プラテン位置指示手段36はCPUへ第1のプラテン6が上昇位置にあるか下降位置にあるかの信号を出力する。また、プラテン位置指示手段36の操作に連動して、ヘッド位置調整手段41が動作する。
【0034】
ヘッド位置調整手段41はヘッドの高さを変更する為に、ヘッド高さ調整レール21に沿ってキャリッジ2を移動させる。第1のプラテン6を降下位置にした場合に、キャリッジ2を第1のプラテン6から遠ざける方向にスライドさせる。第1のプラテン6を上昇位置にした場合に、キャリッジ2を第1のプラテン6に近づける方向にスライドさせる。メッシュ状の印刷メディア19を使う場合に、吸引がなくなるので、印刷時に印刷メディア19が捲れてヘッド1と衝突しないように予めヘッド1の位置を印刷メディア19から遠ざける為である。
【0035】
キャリッジ駆動回路37はCPU29からの制御信号に基づいてキャリッジ2をレール3に沿って往復移動させる。ヘッド駆動回路38はCPU29からの制御信号に基づいてヘッド1を駆動して、インクを吐出する。搬送ローラ駆動回路39はCPU29からの制御信号に基づいて搬送ローラ9を駆動し、印刷メディア19を搬送する。
【0036】
次に、第1のプラテン6を昇降させたときの動作について説明する。図8は本発明のインクジェット記録装置の動作を表すフローチャートである。第1のプラテン6を昇降させる操作がプラテン位置指示手段36によって行われると、印刷準備処理S1が開始する。
【0037】
第1のプラテン6を上昇位置(ヘッド1から離れる位置)にするか降下位置(ヘッド1に近づく位置)にするのかの入力値がCPU29へ入力される(処理S2)。
【0038】
次に入力された値がヘッドから離れる位置か否かを判断する。離れる位置なら処理S4へ進み、近づく位置なら処理S11へ進む(処理S3)。
【0039】
処理S4では、第1のプラテン6がヘッド1から離れる位置に移動する場合、ファン13を停止する。CPU29はファン駆動回路35へファンを停止する制御信号を出力し、ファン駆動回路35はファン13を停止する。吸引が停止される。次に処理5でCPU29はヒーター駆動回路34へヒーター温度を変更する制御信号、ここでは上昇させる制御信号を出力する。ヒーター駆動回路34はヒーター26の温度を上昇させる。トレー28に溜まるインクを早く蒸発させる為に温度を高くする制御を行う。
【0040】
次に処理11では、第1のプラテン6がヘッド1に近づく位置に移動する場合、ファン13を動作させる。CPU29はファン駆動回路35へファンを動作させる制御信号を出力し、ファン駆動回路35はファン13を動作させる。吸引が開始される。次に処理12でCPU29はヒーター駆動回路34へヒーター温度を変更する制御信号、ここでは下げる制御信号を出力する。
【0041】
次に処理S6では、ヘッド位置確認表示を行う。CPU29はプラテン位置指示手段36によって行われた操作入力により、現在どのような状態であるかを表示する。ファン13は動作状態の表示、ヒーター温度の表示、第1のプラテン6の位置の表示、ヘッド1の位置の表示を行い、ユーザーはこれを確認する。ユーザーは問題がなければ印刷を開始する為の操作をスイッチ33を用いて入力する(処理S7)。
【0042】
次に処理S8では、入力されたのが印刷開始のスイッチ入力か、否かの判断を行い、印刷開始の指示ならば処理S9へ進み印刷処理を開始し、処理S10へ進み印刷準備処理を終了させる。印刷開始の指示でなければ、もう一度再設定する為に処理を終了させるため、処理S10へ進み印刷準備処理を終了させる。
【0043】
ここで別の態様として、ファン13の動作の制御を第一のプラテン6が降下状態のときに、トレー28の有無によって制御することができる。トレー28がある場合にはファン28を停止させないで動作を続け、トレー28がない場合にはファン28を停止させる制御を行う。こうすることで、トレー28を第1のプラテン6へ吸いつけることができ、密着するので熱が伝わりやすくなり、また、トレー28のがたつきの防止ができる。また、トレー28の代わりにインク吸収材を使った場合にも使える制御である。また、トレイ28は検出手段や有無の入力をする入力手段を用いて、トレイ28の有無判断が可能である。
【0044】
図9は本発明のインクジェット記録装置のプラテンを駆動する第1の構成を表す構成図である。プラテン位置指示手段は、レバー36であり、A位置とB位置間を動作する。A位置は第1のプラテン6の上昇位置を、B位置は第1のプラテンの下降位置をそれぞれ示している。レバー36はA位置とB位置で固定ができる。
【0045】
レバー36は歯車42を介して第1の軸22と接続し、レバー36を操作することで、第1の軸22が回転する。第1の軸22は第2の軸23とリンクされ、連動して回転する。第1の軸22に設置された第1のカム4と第2の軸23に設置さされた第2のカム5が回転すると、第1のカム4と第2のカム5に当接している第1のプラテン6が上下に移動する。ここで、プラテン支持アーム11に第一のプラテンをヘッド1に対して離接方向に移動可能にバネによって支持し、レバー36のA位置とB位置でロックするロック機構(不図示)を設け、第1のプラテン6の位置を固定してもよい。
【0046】
図10は本発明のインクジェット記録装置のプラテンを駆動する第2の構成を表す構成図である。例えばスイッチなどのプラテン位置支持手段36から第1のプラテン6を上昇位置あるいは降下位置にするよう操作すると、それに応じた信号がCPUに入り、その信号に基づいてCPU29はモータ駆動回路43へ制御信号を出力する。モータ駆動回路43はモータ44を回転させる。第1の軸22は、モータ44の回転が伝えられ、回転する。第2の軸23は第1の軸22にリンクされ連動して回転する。第1の軸22に設置された第1のカム4と第2の軸23に設置さされた第2のカム5が回転すると、第1のカム4と第2のカム5に当接している第1のプラテン6が上下に移動する。プラテン位置支持手段36の操作に基づいて、モータ44が回転し、その回転によって、第1のプラテン6が所定の位置へ昇降する。
【0047】
図11は本発明のインクジェット記録装置のプラテンを駆動する第3の構成を表す構成図である。第1のプラテン6の昇降手段として、スライド手段を用いた例である。スライド手段として、雄ネジと雌ネジを用い、一方ネジを回転させる事で、他方ネジをスライドさせ、他方のネジに固定された第1のプラテン6を昇降させる。
【0048】
プラテン位置指示手段36によって、第1のプラテン6を上昇位置にするか降下位置にするかの操作をすると、そのどちらかの信号がCPU29に入る。CPU29が入力した信号に基づいて、モータ44を所望の回転方向へ回転させる為の制御をする。CPU29は、入力した信号に基づいて演算した右回転か左回転かを示す駆動制御信号をモータ駆動回路43へ出力する。モータ44はモータ駆動回路43の駆動信号に基づいて回転する。モータ44の回転は、プラテン支持アーム11側に回転可能に取り付けられた支持板ネジ45に伝えられる。支持板ネジ45はその場で回転する。第1のプラテン6に固定されたプラテンネジ46は支持板ネジ45と係合するように設置している。第1のプラテン6は上下方向にスライド可能にプラテン支持アーム11に取り付けられている。第2のプラテン7と第3のプラテン8がプラテン支持アーム11に固定され、第1のプラテン6はその間に上下に移動可能の配置されている。支持板ネジ45が回転すると、それにかみ合ったプラテンネジ46と第1のプラテン6が回転の方向によって上下に移動する。
【0049】
図12は本発明のインクジェット記録装置のトレイの状態を表す断面図である。メッシュ状の印刷メディアへ印刷する場合、印刷メディアの隙間をインクが通り抜けトレイ28に達する。トレイ28には深さの半分程度までインクを吸収する吸収材47が敷き詰められている。このインク吸収材47にインクが到達し、インク滴48がインク吸収材47に付着する。付着したインク滴48はヒーター26によって加熱された第1のプラテン6から矢印49の方向に熱が伝わり、トレイ28、吸収材47を介してインク滴48を加熱する。インク滴48は熱により気化が促進される。吸収材47はインクを吸収する不織布が好ましい。
【0050】
また、トレイ28に吸収材47を敷き詰めるのは、インクがトレイ28に跳ね返って印刷メディアの裏面を汚すのを防止する為、また乾燥後のインクの処理が容易となり、またインクの飛散を防止する為である。また、トレイ28は第1のプラテン6からの熱をよく伝える為に、第1のプラテンの表面の凹凸形状とトレイ28の裏面の凹凸の形状とが係合する形状にする事が好ましい。また、トレイ28は熱を良く伝える為に表面を黒色に着色している事が好ましい。また、トレイ28は熱をよく伝える為に金属製、好ましくは第1のプラテンと同素材かまたはアルミニュウム合金である事が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0051】

【図1】本発明のインクジェット記録装置の要部構成を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の構成を示す断面図の部分的拡大図である。
【図3】本発明のインクジェット記録装置のプラテンの上昇状態を表した断面図である。
【図4】本発明のインクジェット記録装置のプラテンの降下状態を表した断面図である。
【図5】本発明のインクジェット記録装置のプラテンの別の降下状態を表した断面図である。
【図6】本発明のインクジェット記録装置の印刷メディアへ印刷している状態を表した斜視図である。
【図7】本発明のインクジェット記録装置の構成を表すブロック図である。
【図8】本発明のインクジェット記録装置の動作を表すフローチャートである。
【図9】は本発明のインクジェット記録装置のプラテンを駆動する第1の構成を表す構成図である。
【図10】本発明のインクジェット記録装置のプラテンを駆動する第2の構成を表す構成図である。
【図11】本発明のインクジェット記録装置のプラテンを駆動する第3の構成を表す構成図である。
【図12】本発明のインクジェット記録装置のトレイの状態を表す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 インクジェットヘッド
2 キャリッジ
3 レール3
4 第1のカム
5 第2のカム
6 第1のプラテン
7 第2のプラテン
8 第3のプラテン
9 搬送ローラ
10 ピンチローラ
11 プラテン支持アーム
12 吸引ボックス
13 ファン
14 巻き取りローラ
15 供給ローラ
16 巻き取りテンションローラ
17 供給テンションローラ
18 フレーム
19 印刷メディア
20 インクジェット記録装置
21 ヘッド高さ調整レール
22 第1の軸
23 第2の軸
24 メディアガイド
25 吸引孔
26 ヒーター
27 矢印
28 トレイ
42 歯車
45 支持板ネジ
46 プラテンネジ
47 吸収剤
48 インク滴
49 矢印
50 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷メディアを搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送された前記印刷メディアにインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを搭載し搬送方向に対して垂直方向に移動するキャリッジと、前記インクジェットヘッドに対向する位置に配置されたプラテンを有するインクジェット記録装置において、
前記プラテンと前記インクジェットヘッドとの距離を可変する昇降手段と前記昇降手段を操作する操作手段を有し、
前記操作手段を操作し、前記昇降手段によって前記プラテンと前記インクジェットヘッドとの距離を変えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記昇降手段は前記プラテンの前記インクジェットヘッドとは反対側に当接するプラテン駆動手段を有し、前記操作手段を操作することで前記プラテン駆動手段を動作させ、前記プラテンの位置を可変することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記プラテン駆動手段は、前記プラテンに当接したカムと、前記カムを回転させる軸とを有し、前記操作手段は前記軸と接続され、前記操作手段を操作することで前記軸を回転させ、前記カムと当接した前記プラテンの位置を可変することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記プラテン駆動手段は、前記プラテンを加圧するバネと前記プラテンの位置を固定するロックを有し、前記ロックは前記プラテンを固定する複数の位置に対応した複数のロックからなり、前記操作手段を操作することによって前記ロックを解除すると前記プラテンは可動し、所望の位置で前記ロックによって前記プラテンの位置を固定することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記昇降手段は、前記プラテンに配置されたプラテンネジ部と、プラテン支持板に支持され前記プラテンネジ部と係合する支持板ネジ部と、前記プラテンネジ部か支持板ネジ部のいずれかを回転駆動するネジ駆動手段とを有し、前記操作手段を操作することで前記ネジ駆動手段を動作させ、前記プラテンネジ部か支持板ネジ部のいずれかを回転させ、前記プラテンの位置を可変することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
ヒーターと、前記ヒーターを駆動し、前記ヒーターの温度を制御する駆動制御手段と、を更に有し、前記ヒーターは前記プラテンに配置され、前記駆動制御手段は、前記操作手段の操作に応じて、前記ヒーターの温度を可変することを特徴とする請求項1から5のいずれ1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
吸引ファンと、前記吸引ファンを駆動し、前記吸引ファンの吸引力を制御する駆動制御手段と、前記プラテンに配置された吸引孔と、前記吸引孔に連通した吸引室と、を更に有し、前記駆動制御手段は、前記操作手段の操作に応じて、前記吸引ファンの吸引力を可変することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記インクジェットヘッドのプラテンからの距離を可変するヘッド位置調整手段を更に有し、前記ヘッド位置調整手段は前記操作手段に連動し、前記プラテンを前記インクジェットヘッドから遠ざける方向に移動させたときに、前記ヘッド位置調整手段は前記インクジェットヘッドを前記プラテンから遠ざける方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
印刷メディアを搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送された前記印刷メディアにインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを搭載し搬送方向に対して垂直方向に移動するキャリッジと、前記インクジェットヘッドに対向する位置に配置されたプラテンを有するインクジェット記録装置の制御方法において、
前記プラテンは前記プラテンを加熱するヒーターを更に有し、前記インクジェット記録装置は前記ヒーターを制御するヒーター制御手段を更に有し、前記プラテンは前記印刷メディアに応じて前記プラテンの位置が前記インクジェットヘッド離接する方向に移動可能であり、前記プラテンが前記インクジェットヘッドと離れる方向に移動した状態で印刷するとき、前記ヒーターにより前記プラテンを加熱して印刷することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項10】
前記プラテンは前記印刷メディアを吸引する吸引手段を更に有し、前記インクジェット記録装置は前記吸引手段を制御する吸引制御手段を更に有し、前記プラテンが前記インクジェットヘッドと離れる方向に移動した状態で印刷するとき、前記吸引手段の動作を停止させて前記印刷メディアを搬送し、前記印刷メディアに印刷することを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項11】
前記プラテンは前記印刷メディアを吸引する吸引手段を更に有し、前記インクジェット記録装置は前記吸引手段を制御する吸引制御手段を更に有し、前記プラテンが前記インクジェットヘッドと離れる方向に移動した状態で、前記プラテン上にインク受けがある場合に印刷するとき、前記吸引手段を動作させ、前記印刷メディアに印刷することを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−29020(P2009−29020A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195697(P2007−195697)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(395003187)株式会社セイコーアイ・インフォテック (173)
【Fターム(参考)】