説明

インクジェット記録装置

【課題】 インクジェットヘッドが固有に有する各ノズルから吐出するインクの吐出体積に関するばらつきを原因とする記録媒体上の濃度むらを視覚的に低減できるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 入力画像信号に基づいて印字を行うときに、入力画像信号が示す濃度と、その濃度に応じて吐出されたインクにより形成される記録媒体上のドットが示す濃度とが異なる濃度となるノズルを示す情報をヘッド情報信号から取得し、制御部182は、入力画像信号が示す濃度と異なった濃度で印字する第1の印字領域のドット面積と入力画像信号が示す濃度と同じ濃度で印字する第2の印字領域のドット面積とに応じて補正テーブル生成部182aにより補正テーブルを生成し、その補正テーブルを用いて第1の印字領域の印字に用いるノズルから吐出するインクの階調を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数階調のインクを吐出することができ、印字情報に基づいて画像記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置としては、オンデマンド型のインクジェットプリンタが知られている。このインクジェットプリンタは、インクを吐出するノズルと、インクを貯蔵するインク室とを有するインクジェットヘッドを備えている。インクジェットプリンタは、インク室に体積変動を生じさせることによりノズルから所定階調のインクを吐出させ、記録媒体上に画像を形成する。インク室内に体積変動を与える制御方式としては、圧電部材の歪み変形を利用した圧電制御方式や発熱体を利用した制御方式などがある。このような制御方式により体積変動をインク室毎に与えることでオンデマンドに印字を行うことができる。
【0003】
このようなインクジェット記録装置に用いるインクジェットヘッドは、複数のノズルを用いて印字を行っている。このため、各ノズルのインクの出力特性が均一であるのが理想であるが、製造上のばらつきやインクの吐出動作時のインク室内での圧力変動の伝播等のばらつきによりノズルから吐出するインクの吐出体積が増加したり、減少したりする。このようにインクの吐出体積が変化してしまうことにより、記録媒体上で濃度むらが発生する場合がある。
【0004】
このような事態を防止するものとしては、インクジェットヘッドを複数配置した長尺なインクジェットヘッドユニットの各インクジェットヘッド端部に生じる濃度むらを視覚的に低減するものとして、各インクジェットヘッドの全てのノズルから吐出するインクに対して補正を行う技術(例えば、特許文献1参照。)、各インクジェットヘッドの端部から吐出するインクを誤差拡散法を用いて処理する技術(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【特許文献1】特開2003−320647号公報
【特許文献2】特開2003−326747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、インクジェットヘッドは複数のノズルを有し、そのノズルからインクを吐出することにより印字を行うが、製造上のばらつきやインクの吐出動作時のインク室内での圧力変動の伝播等のばらつきによりインクの吐出体積が増加し、又は、減少する。このため、インクジェットヘッドは、それぞれノズルから吐出するインクの吐出体積に関して固有のばらつきを持っている。
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載されたものでは、各インクジェットヘッドの端部により印字する印字領域の濃度むらを視覚的に低減することができるが、インクジェットヘッドの端部以外の領域に生じる濃度むらについては、なんら記載がない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、インクジェットヘッドが固有に有する各ノズルから吐出するインクの吐出体積に関するばらつきを原因とする記録媒体上の濃度むらを視覚的に低減できるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のインク室と、複数のインク室にインクを供給するために複数のインク室それぞれと連通する共通インク室と、インク室毎に設けられたインクを吐出するノズルとを有するインクジェットヘッドを設け、印字情報に基づいて、複数のインク室からインクを吐出するインク室を選択するとともに選択したインク室に体積変動を生じさせ印字情報が示す濃度に応じた階調のインクを吐出し、記憶媒体上でドットを形成するインクジェット記録装置において、印字情報に基づいて印字を行うときに、印字情報が示す濃度と、その濃度に応じて吐出されたインクにより形成される記録媒体上のドットが示す濃度とが異なる濃度となるノズルを示すヘッド情報を参照し、印字情報が示す濃度と異なった濃度で印字する第1の印字領域のドット面積と前記印字情報が示す濃度と同じ濃度で印字する第2の印字領域のドット面積とに応じて、第1の印字領域の印字に用いるノズルから吐出するインクの階調を補正するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、インクジェットヘッドが固有に有する各ノズルから吐出するインクの吐出体積に関するばらつきを原因とする記録媒体上の濃度むらを視覚的に低減できるインクジェット記録装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の各実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は、インクジェットヘッド1の構成を概略的に示す図である。図1に示すように、インクジェットヘッド1は、複数のインク室2を並べて配置するとともに各インク室2の前面にオリフィスプレート3を配置し、各インク室2の後方に共通インク室4を配置して形成している。オリフィスプレート3には、各インク室2に対応して外側に向かって径が徐々に小さくなるノズル5が開けられている。共通インク室4の各インク室2と反対側に、外部から共通インク室4にインクを供給するためのインク供給口6が設けられている。このインクジェットヘッド1は、後述するヘッド駆動部16から与えられる駆動信号に応じてインク室2に体積変動を生じさせることにより、ノズル5から所定階調のインクを吐出するようになっている。
【0012】
図2は、上述したインクジェットヘッド1を設けたインクジェット記録装置100の概略的な制御構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置100は、制御装置11、コントロールパネル制御部12、コントロールパネル13、プリンタ制御部14、用紙搬送部15、ヘッド駆動部16、インクジェットヘッド1、画像メモリ17、補正処理部18などを有している。
【0013】
制御装置11は、マイクロプロセッサ、メモリ等からなる。制御装置11は、メモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、コントロールパネル制御部12、プリンタ制御部14、ヘッド駆動部16を総括的に制御する。
【0014】
コントロールパネル13は、ユーザに必要な情報を表示する表示部と、ユーザからの指示を受付けるための操作部を有している。コントロールパネル制御部12は、コントロールパネル13の表示部の表示を制御するとともに、操作部から受付けたユーザの指示を制御装置11へ送信する。操作部には、記録スイッチ等の各種スイッチやキー等が設けられている。記録スイッチは、インクジェット記録装置100に画像記録の開始を指示するためのスイッチである。また、ユーザはコントロールパネル13を利用して印字に使用する記録媒体の種類、例えば光沢紙や普通紙等を指示できるようになっている。
【0015】
ヘッド駆動部16は、入力された画像信号に基づいてインクを吐出するインク室2を各インク室2の中から選択し、選択したインク室2に体積変動を生じさせるための駆動信号を与えることにより、ノズル5からインクを吐出させる。
【0016】
この第1の実施の形態のインクジェット記録装置100では、インクジェットヘッド1の各ノズル5から吐出するインクの吐出体積は、図3に示すように、インク室2に体積変動を与える電圧tを可変することにより、変化させることができ、電圧と吐出体積とが比例して変化するt1からt2の間の電圧を、例えば7分割制御することで、1階調から7階調の制御を行い、これとインクを吐出させない0階調を含めて8階調の印字制御をヘッド駆動部16は行えるようになっている。また、プリンタ制御部14の制御により用紙搬送部15で搬送する用紙の搬送速度を遅くすることで、1階調増した9階調の印字制御が可能になるモードも搭載している。
【0017】
上述した構成のインクジェットヘッド1には、記憶手段としてのメモリ1aが設けられている。このメモリ1aには、ヘッド情報が記憶されている。ヘッド情報とは、インクジェットヘッド1の検査過程において求められたノズルから吐出するインクが記録媒体上で濃度むらを生じる領域である濃度補正領域と、その濃度補正領域と隣接する非濃度補正領域を示すノズル番号情報及び記録媒体別に各階調の濃度補正領域、非濃度補正領域の平均ドット面積情報である。
【0018】
プリンタ制御部14は用紙搬送部15の用紙搬送動作を制御する。用紙搬送部15は、図示しない給紙カセット等に収納されている用紙を1枚づつインクジェットヘッド1の下側に所定の速度で搬送し、その後、外部へ用紙を排出する。
【0019】
画像メモリ17は、入力された入力画像信号を記憶する。ここでは、入力画像信号は、図示しない擬似階調処理を施した後の0階調から7階調までの階調値と入力画像サイズ(α,β)情報である。
【0020】
補正処理部18には、画像メモリ17に記憶された入力画像信号、記録媒体情報信号及びヘッド情報信号が入力される。ここで記録媒体信号とは、上述したユーザがコントロールパネル13を利用して指示した記録媒体の種類、例えば光沢紙や普通紙を示す信号であり、コントロールパネル制御部12、制御装置11を介して入力される(記録媒体情報取得手段)。また、補正処理部18では、詳細は後述するが入力画像信号と記録媒体信号とから補正の有無を判定する処理及び入力画像信号とヘッド情報信号とから補正テーブルを作成し、入力画像信号を補正する処理を行う。
【0021】
続いて、入力画像信号と記録媒体信号が入力されたときの補正処理部18の処理の流れについて図2を参照しながら説明する。
先ず、入力画像信号が画像メモリ17に記憶される。その画像メモリ17に記憶された画像信号は、補正処理部18に入力される。補正処理部18では、入力画像信号と記録媒体信号とにより、濃度に関する補正を行うか否かを判定する。濃度に関する補正を行う場合は、インクジェットヘッド1の1の取り付け時に補正処理部18の制御部182に送られる上述したヘッド情報信号と、入力画像信号を用いて後述する補正テーブルを作成し、補正すべき領域の入力画像信号の補正を行い、補正を行わない場合は入力画像信号をそのままヘッド駆動部16へ送信する。また、これと同時に制御装置11に所定の信号を送信する。この所定の信号を受け、制御装置11はコントロールパネル制御部12、プリンタ制御部14、ヘッド駆動部16へ印字開始を指示する信号を送信する。そして、プリンタ制御部14が用紙搬送部15を制御して用紙の搬送を行うのと同期してヘッド駆動部16がインクジェットヘッド1の選択した各ノズル5に駆動信号を与えて所定階調のインクを吐出させることにより印字がなされる。
【0022】
次に、補正処理部18の構成について図4を参照しながら説明する。なお以下では、入力画像信号が一定の階調値である場合とする。補正処理部18は、図4に示すように、判定手段としての判定部181及び濃度補正手段としての制御部182を有している。
【0023】
補正処理部18では、先ず判定部181で濃度に関する補正を行うか否かの判定を図5に示す判定テーブルTaを参照して行う。図5に示す判定テーブル5aは、入力画像信号の階調値(ドット面積)と記録媒体信号(記録媒体の種類)との関係から補正を行うか否かを判定するために予め定めたものである。この判定テーブルTaの作成方法を以下で説明する。
【0024】
図6に示すように、ノズル5(図6(a))から吐出したインクにより記録媒体上に形成されるドットが記録媒体を完全に覆ってしまう場合(図6(b)には、濃度むらが目立たないので濃度に関する補正を行わない。一方、図7に示すように、ノズル5(図7(a))から吐出したインクにより記録媒体上に形成されるドットが記録媒体を完全に覆わない場合(図7(b))には、濃度むらが目立ってしまうため濃度に関する補正を行う。
【0025】
また、高階調の印字を行う場合でも、にじみの大きい(ドット径の大きい)記録媒体に印字するとドットが記録媒体を完全に覆ってしまうため、濃度に関する補正を行わない(例えば普通紙の7階調)。一方、にじみの少ない(ドット径の小さい)記録媒体では、ドットが記録媒体を完全に覆わないため濃度に関する補正を行う(例えば光沢紙の7階調)。また、低階調、中間調の印字を行う場合は、ドット径が小さく記録媒体を完全に覆うことがないため、濃度に関する補正を行う。
【0026】
従って、図5に示す判定テーブルTaは、光沢紙の場合は1階調から7階調までが濃度に関する補正有り、普通紙の場合は1階調から5階調までが濃度に関する補正有り、6階調及び7階調の場合は濃度に関する補正無しと判定部181が判定するように作成されている。
【0027】
また、判定部181は、切換えスイッチ181aを動作させ、濃度に関する補正有りと判定した場合は入力画像信号を制御部182へ出力し、補正無しと判定した場合は入力画像信号をそのまま補正処理部18外(ヘッド駆動部16)へ出力する。
【0028】
次に、用紙搬送部15に光沢紙がセットされ、7階調の一様な印字を行う場合を例として、補正処理部18の処理について具体的に説明する。この場合、判定部181は、上述したように、判定テーブルTaに基づいて、光沢紙を示す記録媒体信号と入力画像信号の7階調を示す階調値から、濃度に関する補正を行うと判定する。
【0029】
また、ノズル5から吐出するインクの吐出体積の変動等により、記録媒体上で形成される画像に図8に示す特性の濃度むらが発生するインクジェットヘッド1がインクジェット記録装置100に設けられていることとする。図8において、縦軸は濃度を示し、横軸はインクジェットヘッド1のノズル5の配置を示している。同図に示すように、ノズルB1からBnに対応する領域Bの濃度の変化は緩やかであるが、ノズルA1からAnに対応する領域Aの濃度の変化は急峻なものとなっている。図9はこのインクジェットヘッド1を設けたインクジェット記録装置100で7階調一様な画像信号を印字した場合の記録媒体上の記録画像を示す図である。同図の斜線で示す領域(領域A以外の領域)に対して、領域Aの濃度は低下している。図10は、この領域Aと領域Aに隣接する領域Bを拡大した図、すなわち、各ノズルB1,…,Bn、A1,…,Anから吐出されたインクにより形成されたドットを示す図である。7階調一様な画像信号が入力したにも関わらず、インクジェットヘッド1は図8に示す濃度むら特性を有するため、領域Bに印字されたドット径より領域Aに印字されたドット径の方が小さくなっている。以下、領域Aを濃度低下領域A、この濃度低下領域Aと隣接する領域Bを非濃度低下領域Bとする。なお、この実施の形態では、濃度低下領域Aに対応するノズル数と非濃度低下領域Bに対応するノズル数とが等しくなるように、非濃度低下領域Bを設定することとする。また、濃度低下領域A及び非濃度低下領域Bは、ヘッド情報信号(ノズル番号)と入力された入力画像信号の画像サイズ(α,β)から決定する。
【0030】
上述したように、インクジェットヘッド1のメモリ1aには、ノズルから吐出するインクが記録媒体上で濃度むらを生じる領域である濃度補正領域と、その濃度補正領域と隣接する非濃度補正領域のノズル番号情報及び記録媒体別に各階調の濃度補正領域、非濃度補正領域の平均ドット面積情報を示すヘッド情報が記憶されている。すなわち、メモリ1aには、ノズル番号がB1,B2,…,Bnが非濃度低下領域B,A1,A2,…,An(nは1以上。)が濃度低下領域Aであることが記憶されている。このインクジェットヘッド1をインクジェット記録装置100へ取り付けると、インクジェットヘッド1のメモリ1aからヘッド情報が読み出され、ヘッド情報信号として補正処理部18へ入力される。ここで、ノズルA1からAnのノズル個数とノズルB1からBnのノズル個数とは等しくしてなっている。これにより、濃度低下領域Aは(ノズルA1からA4)×4=4×4=16,非濃度低下領域Bは(ノズルB1からB4)×4=4×4=16となり、それぞれ16画素となる。
【0031】
次に、制御部182内の補正テーブル生成部182aの処理について説明する。
濃度を補正する補正処理方法として、平均ドット面積情報を用いて、濃度低下領域Aのドット面積の総和と非濃度低下領域Bのドット面積の総和が略等しくなるように濃度低下領域Aに1階調大きなドットを入れる処理を行うこととする。
【0032】
そこで、先ず、濃度低下領域Aのうち、1階調大きなドットをいれる画素個数Pを求める必要がある。この画素個数Pを求める方法として、ヘッド情報信号に含まれる光沢紙における7階調、8階調での平均ドット面積情報を使用する。濃度低下領域A、非濃度低下領域Bの平均ドット面積をX,Yとする。濃度低下領域Aの1階調大きな(8階調)ドットの平均ドット面積をTとする。濃度低下領域A、非濃度低下領域Bの画素数をそれぞれn、1階調大きなドットを入れ補正する画素個数をPとすると、濃度低下領域Aのドット面積の総和と非濃度ドット面積の総和が略等しくなるようにとは、
【数1】

【0033】
に示す関係で表される。この(1)式により補正する画素個数Pが求められる。
【0034】
図10で説明した場合では、濃度低下領域A、非濃度低下領域Bの平均ドット面積をそれぞれX(=98)、Y(=100)とし、1階調大きな(8階調)ドットの平均ドット面積をT(=102)とする(X:A1,A2,A3,A4ノズルから吐出するインクが7階調のときのドット面積の平均値、Y:B1,B2,B3,B4ノズルから吐出するインクが階調のときのドット面積の平均値)。この数値により画素個数Pを求めると、濃度低下領域A、非濃度低下領域Bの画素数16であることからP=8となる。すなわち、4×4(=16)画素に対し、濃度を補正する画素個数は8個となる。
【0035】
次に、求められた補正する画素個数8個を濃度低下領域Aの16画素のランダムな位置に配置する。このランダムな位置の配置は、乱数を発生させ、その乱数に基づいて位置を決定する。このようにして、図11に示すように濃度低下領域Aの補正テーブルTh1が生成される。図11において、“0”は補正を行わない画素、“1”が補正を行う画素を示している。
【0036】
図12に示す7階調一様な入力画像信号Tiに、補正テーブル生成部182aで生成された補正テーブルTi1のテーブル値を加算器182bにより加算し、濃度低下領域Aに対応する画素の階調値を補正する。すなわち、補正後は、濃度低下領域Aでは、図13のテーブルTj1に示すように、濃度低下領域Aの16画素のうち8画素が1つ大きな8階調で印字されるように補正されている。したがって、インクジェット記録装置100は、インクジェットヘッド1に固有の濃度低下領域Aを、図13に示すテーブルTj1のように補正した後、ヘッド駆動部16へ出力し、印字を行うことにより、濃度むらを視覚的に低減することができる。
【0037】
また、この第1の実施の形態においては、光沢紙に7階調一様な印字を行う場合について述べたが、図5で説明したテーブルで補正有りの設定がされているものであれば、これ以外の記録媒体の種類及び階調についても同様に濃度に関する補正を行うことができる。
【0038】
なお、図8で示したようにインクジェットヘッド1の端部に濃度むら(濃度低下領域A)特性を有する場合だけでなく、図14に示すように、インクジェットヘッド1の中央部に濃度むら(濃度低下領域A)特性を有する場合にも同様に濃度に関する補正を行うことができる。なお、濃度むら特性を中央部に有するインクジェットヘッド1の場合には、補正に用いる非濃度低下領域Bは、濃度低下領域Aに隣接するいずれ側を用いるかを予め定めておけばよい。
【0039】
さらに、インクジェットヘッド1が1つの場合について述べているが、インクジェットヘッド1を複数並べて配置した長尺ヘッドとした場合でも同様に濃度低下領域Aを補正することができ、濃度むらを視覚的に低減することができる。
【0040】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について述べる。
上述の第1の実施の形態では、インクジェットヘッド1のメモリ1aにヘッド情報として、記録媒体別に各階調の濃度補正領域、非濃度補正領域の平均ドット面積情報を付加したが、この第2の実施の形態では、平均ドット面積情報ではなく、記録媒体別に各階調の各ノズル5のドット面積情報を付加するものである。
【0041】
図1に示すインクジェットヘッド1の構成及び図2に示すインクジェット記録装置100の制御構成については、第1の実施の形態と同様であるため説明を省略し、また、具体的な例についても、図8から図10を用いて説明したインクジェットヘッド1により光沢紙に7階調一様な印字を行う場合で説明する。したがって、判定部181は図5に示したテーブルに基づいて、濃度に関する補正を行うと判定する。なお、濃度低下領域A、非濃度低下領域Bを決定する方法も第1の実施の形態と同様であるため説明を省略し、濃度低下領域Aは(ノズルA1からA4)×4=4×4=16,非濃度低下領域Bは(ノズルB1からB4)×4=4×4=16となり、それぞれ16画素となる。
【0042】
次に、制御部182補正テーブル生成部182aの処理について説明する。
濃度を補正する補正処理方法として、各ノズル5のドット面積情報を用いて、濃度低下領域Aのドット面積の総和と非濃度低下領域Bのドット面積の総和が略等しくなるように濃度低下領域Aに1階調大きなドットを入れる処理を行うこととする。
【0043】
そこで、先ず、濃度低下領域Aのうち、1階調大きなドットをいれる画素個数Pを求める必要がある。この画素個数Pを求める方法として、ヘッド情報信号に含まれる光沢紙における7階調、8階調での各ノズル5のドット面積情報を使用する。濃度低下領域Aの各ノズルA1,A2,A3,A4から吐出するインクにより形成される7階調のドット面積をXA1,XA2,XA3,XA4、非濃度低下領域Bの各ノズルB1,B2,B3,B4から吐出するインクにより形成される7階調のドット面積をYB1,YB2,YB3,YB4とする。濃度低下領域Aの1階調大きな(8階調)ドットのドット面積をTA1,TA2,TA3,TA4とする。濃度低下領域A、非濃度低下領域Bの画像サイズβ=4、1階調大きなドットを入れ補正する画素個数を合計P(P=P1+P2+P3+P4)とする(P1,P2,P3,P4はそれぞれTA1,TA2,TA3,TA4を入れる個数。)。この場合に濃度低下領域Aのドット面積の総和と非濃度低下領域Bのドット面積の総和が略等しくなるようにとは、
【数2】

【0044】
に示す関係で表される。
【0045】
このとき図8で示したように、ノズルA4から吐出したインクで形成される領域が最も濃度が低下しているため、8階調ドットを入れる個数は、P1≦P2≦P3≦P4となる。
【0046】
次に、求められた画素個数Pを濃度低下領域Aのランダムな位置に配置する。この位置の配置は、乱数を発生させ、その乱数に基づいて位置を決定する。このようにして、図15に示すに濃度低下領域Aの補正テーブルTh2が作成される。図15において、“0”は補正を行わない画素、“1”が補正を行う画素を示している。
【0047】
図12に示す7階調一様な入力画像信号Tiに、補正テーブル生成部182aで生成された補正テーブルTh2のテーブル値を加算器182bにより加算し、濃度低下領域Aに対応する画素の階調値を補正する。すなわち、補正後は、濃度低下領域Aでは、図16のテーブルTj2に示すように、濃度低下領域Aの16画素のうちノズルA4の4画素、ノズルA3の2画素、ノズルA2の1画素、ノズルA1の1画素が1つ大きな8階調で印字されるように補正されている。したがって、インクジェット記録装置100は、インクジェットヘッド1に固有の濃度低下領域Aを、図16に示すテーブルTj2に示すように、最も濃度が低下している端部側(ノズルA4側)の濃度が濃くなるように補正した後、ヘッド駆動部16へ出力し、印字を行うことにより、第1の実施の形態よりさらに濃度むらを視覚的に低減することができる。
【0048】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について述べる。この第3の実施の形態は、上述の第1及び第2の実施の形態と異なり、濃度が低下する領域ではなく例えば図17に示すように、領域Aが領域Bに対して濃度が高くなる領域が発生する濃度むら特性を有するインクジェットヘッド1の場合について説明する。
【0049】
図1に示すインクジェットヘッド1の構成及び図2に示すインクジェット記録装置100の制御構成などについては同様であるため説明を省略する。この第3の実施の形態では、濃度を補正する補正処理方法として、濃度が高くなる領域A´のドット面積の総和と濃度が高くならない領域B´のドット面積の総和が略等しくなるように領域A´に1階調小さなドットを入れる処理を行うこととする。
【0050】
すなわち、第1の実施の形態と同様に(1)式を用いて、領域A´,領域B´がそれぞれ16画素である場合の補正を行う画素個数Pを求める。この画素個数Pが例えば、8個ならば、この8個を領域A´にランダムに配置する。このようにして、図18に示す領域A´の補正テーブルTh3が生成される。図18において、“0”は補正を行わない画素、“−1”が補正を行う画素を示している。
【0051】
図12に示す7階調一様な入力画像信号Tiに、補正テーブル生成部182aで生成された補正テーブルTh3のテーブル値を加算器182bにより加算し、領域Aに対応する画素の階調値を補正する。すなわち、補正後は、領域A´では、図19のテーブルTj3に示すように、領域Aの16画素のうち8画素が1つ小さな6階調で印字されるように補正されている。したがって、インクジェット記録装置100は、インクジェットヘッド1に固有の濃度が高くなる領域A´を、図19に示すテーブルTj3のように補正した後、ヘッド駆動部16へ出力し、印字を行うことにより、濃度むらを視覚的に低減することができる。
【0052】
また、上記各実施の形態は、インクジェットヘッド1のメモリ1aに、ヘッド情報を記憶させる構成としているため、インクジェット記録装置100にインクジェットヘッド1を新規に取り付ける場合にも、また取りかえる場合にも自動的にインクジェット記録装置100内の補正処理部18にインクジェットヘッド固有のヘッド情報を出力することができる。なお、インクジェットヘッド1のメモリ1aにヘッド情報を記憶する構成に換えて、インクジェット記録装置100の制御装置11に、取り付けるインクジェットヘッド1のヘッド情報を記憶させるように構成しても良い。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化でき、また、実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を変形できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるインクジェットヘッドの概略的な構成を示す図。
【図2】同実施の形態におけるインクジェット記録装置の制御構成を示す図。
【図3】同実施の形態における電圧と吐出体積との関係を示す図。
【図4】同実施の形態における補正処理部の構成を示す図。
【図5】同実施の形態における入力される画像信号の階調値(ドット面積)と記録媒体信号(記録媒体の種類)との関係が予め求められた判定テーブルを示す図。
【図6】同実施の形態における補正を行わない例を示す図。
【図7】同実施の形態における補正を行う例を示す図。
【図8】同実施の形態におけるインクジェットヘッドの濃度むら特性を示す図。
【図9】同実施の形態における濃度むらを示す図。
【図10】同実施の形態における濃度むらが発生するときのドットを示す図。
【図11】同実施の形態における補正テーブルを示す図。
【図12】同実施の形態における7階調一様な画像信号を示す図。
【図13】同実施の形態における補正後の画像信号を示す図。
【図14】同実施の形態における他のインクジェットヘッドの濃度むら特性を示す図。
【図15】同実施の形態における第2の実施の形態における補正テーブルを示す図。
【図16】同実施の形態における補正後の画像信号を示す図。
【図17】本発明の第3の実施の形態におけるインクジェットヘッドの濃度むら特性を示す図。
【図18】同実施の形態における補正テーブルを示す図。
【図19】同実施の形態における補正後の画像信号を示す図。
【符号の説明】
【0055】
1…インクジェットヘッド,1a…メモリ,2…インク室,3…オリフィスプレート,4…共通インク室,5…ノズル,11…制御装置,13…コントロールパネル,17…画像メモリ,18…補正処理部,181…判定部、182…制御部,182a…補正テーブル生成部,Ta…判定テーブル,Th1,Th2,Th3…補正テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインク室と、前記複数のインク室にインクを供給するために前記複数のインク室それぞれと連通する共通インク室と、前記インク室毎に設けられたインクを吐出するノズルとを有するインクジェットヘッドを設け、印字情報に基づいて、前記複数のインク室からインクを吐出するインク室を選択するとともに前記選択したインク室に体積変動を生じさせ前記印字情報が示す濃度に応じた階調のインクを吐出し、記憶媒体上でドットを形成するインクジェット記録装置において、
前記印字情報が示す濃度と、その濃度に応じて吐出されたインクにより形成される前記記録媒体上のドットが示す濃度とが異なる濃度となるノズルを示すヘッド情報を記憶する記憶手段と、
前記印字情報に基づいて印字を行うときに前記ヘッド情報を参照し、印字情報が示す濃度と異なった濃度で印字する第1の印字領域のドット面積と前記印字情報が示す濃度と同じ濃度で印字する第2の印字領域のドット面積とに応じて、前記第1の印字領域の印字に用いるノズルから吐出するインクの階調を補正する濃度補正手段とを具備することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記記録媒体の種類を示す記録媒体情報を取得する記録媒体情報取得手段と、
記録媒体の種類と印字情報が示す濃度との関係から濃度に関する補正を行う必要があるか否かを判定する判定手段とを具備し、
前記濃度補正手段は、前記判定手段が濃度に関する補正を行う必要があると判定した場合に、前記ヘッド情報を参照して補正を行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記濃度補正手段は、前記第1の印字領域の濃度が前記第2の印字領域が示す濃度より低下している場合に、前記第1の印字領域の印字に用いるノズルから吐出するインクの階調を大きくすることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記濃度補正手段は、前記第1の印字領域の印字に用いるノズルから吐出するインクの階調が、前記記録媒体上におけるドット面積より大きくなる階調であるときは、前記濃度に関する補正は行わないことを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記濃度補正手段は、前記第1の印字領域の濃度が前記第2の印字領域が示す濃度より高くなっている場合に、前記第1の印字領域の印字に用いるノズルから吐出するインクの階調を小さくすることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記濃度補正手段は、前記第1の印字領域のドット面積の総和と、前記第2の印字領域のドット面積の総和が略等しくなるように、前記第1の印字領域の印字に用いるノズルから吐出するインクを1階調ランダムに変化させることを特徴とする請求項1、2、3又は5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記記憶手段は、前記インクジェットヘッドに設けられていることを特徴とする請求項1か6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−21446(P2006−21446A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202067(P2004−202067)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】