説明

インクジェット記録装置

【課題】長時間連続して記録を行った際にも安定して高画質な描画を行うことができ、インクの交換を頻繁に行う必要がなく、かつ、低コストなインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】1以上のインクタンクの少なくとも1つとキャッピング手段およびインクジェットヘッドの少なくとも一方とを接続する連通配管を有し、連通配管は、キャッピング手段およびインクジェットヘッドのキャッピング面に形成された、少なくとも1つのインクタンクの空気を外気と連通させる連通口を備え、キャッピング手段をインクジェットヘッドに装着して、連通配管による外気への連通を断ち、キャッピング手段をインクジェットヘッドから離脱させて、連通配管による外気への連通を行うことを行うこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に向けてインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置に関し、より具体的には、静水圧を利用してインクを循環させて記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式による記録装置(インクジェット記録装置)には、静電駆動方式、サーマルジェット方式あるいは電気機械変換素子(ピエゾ)方式等が用いられている。このインクジェット記録装置に使用される記録体(インク)としては、一般に、溶媒中に着色粒子を分散させたものが用いられている。上述の記録方式を用い、記録用紙等の被記録体にインクを飛翔させることで、記録(印刷)が行われる。
【0003】
静電式のインクジェット記録装置では、通常、インクを貯留するメインのインクタンク(メインタンク)と吐出ヘッドとの間でインクを循環させて、吐出ヘッドに一定量のインクを供給し、吐出ヘッドから被記録体にインクを吐出して描画を行っている。
インクタンクと吐出ヘッドとの間でインクを循環させる方法として、吐出ヘッドとインクタンクの高低差を利用してインクを循環する方法が知られている。例えば、特許文献1には、インクの供給と回収をインク室の配置位置の高低差で行なうインクジェット記録装置が開示されている。
【0004】
図11に、特許文献1に開示されているインクジェット記録装置のインク循環装置の概略構成を示す。
インク循環装置220は、インク回収容器214と、インク流量調整室216と、これらを接続する配管223a〜223dと、フィルタ225と、電磁弁226a、226bと、ポンプ224とを備える。インク流量調整室216は、インク吐出部212に供給するインク流量を調整するためのインク室であり、インク回収容器216は、循環するインクを溜めておくためのインク室である。フィルタ225はインク中の混入物を除去するために設けられ、電磁弁226a及び226bは、インクの流れをコントロールするために設けられている。このインク循環装置220においては、インク回収容器214に蓄えられているインクがポンプ224で吸い上げられ、フィルタ225を通過してインク流量調整室216に送り込まれる。インク流量調整室216に蓄えられたインクは、インク液量調整室216のインク液面とインク吐出部212との高低差で決まる位置エネルギーによる圧力で、インク吐出部212に向かって自然に流れる。
【0005】
インク吐出部212を通過したインクは、インク吐出部212とインク回収容器214との高低差によって、インク回収容器214に向かって自然に流れる。このインク循環装置においては、インク吐出部212の上下に設けたインク流量調整室216とインク回収容器214の高低差によって、インク吐出部212に安定した量のインクを供給するとともに、インク回収容器214への安定したインクの回収を行なっている。
また、インク回収容器のインク量が不足している場合には、補給用インクタンク222からポンプ228によって、配管229及び231を通ってインク回収容器214へインクが供給される。
【0006】
【特許文献1】特開2001−219580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に開示されているインクジェット記録装置においては、インク循環装置220のインク循環経路が密閉されているために、インク吐出部212からインクを連続して吐出したときに、吐出したインク量の分だけインク回収容器214又はインク流量調整室216の内圧が低下する。このため、大気圧とインク回収容器214の内圧との間、又は、大気圧とインク流量調整室216の内圧との間に圧力差が生じ、この差圧により、インク吐出部212からインクが吐出されにくくなるという問題がある。
【0008】
また、このような差圧が生じた状態で、ポンプ224の駆動を停止し、インク流量調整室216へのインクの供給を停止した場合には、インク回収容器214又はインク流量調整室の内圧と大気圧との差圧により、記録ヘッドのインク吐出部212から空気が進入する恐れもある。
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、長時間連続して記録を行った際にも安定して高画質な描画を行うことができ、インクの交換を頻繁に行う必要がなく、かつ、低コストなインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、画像信号に基づいて記録媒体上にインクの吐出を行う吐出口を有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドに装着され、前記吐出口に蓋をするキャッピング手段と、前記インクジェットヘッドに静圧方式によりインクを供給する1以上のインクタンクと、前記1以上のインクタンクの少なくとも1つと前記キャッピング手段および前記インクジェットヘッドの少なくとも一方とを接続する連通配管とを有し、前記連通配管は、前記キャッピング手段および前記インクジェットヘッドのキャッピング面に形成された、前記少なくとも1つのインクタンクの空気を外気と連通させる連通口を備え、前記キャッピング手段を前記インクジェットヘッドに装着して、前記連通配管による外気への連通を断ち、前記キャッピング手段を前記インクジェットヘッドから離脱させて、前記連通配管による外気への連通を行うことを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
ここで、前記連通配管に接続される少なくとも1つのインクタンクは、前記インクジェットヘッドにインクを供給する供給用インクタンクを含み、前記供給インクタンクは、前記インクジェットヘッドよりも高い位置に配置され、オーバーフローによってインク液面の高さを一定に保ちつつ、前記インクジェットヘッドにインクを供給することが好ましい。
さらに、前記連通配管に接続される少なくとも1つのインクタンクは、前記インクジェットヘッドからインクを回収する前記回収用インクタンクを含み、前記回収インクタンクは、前記インクジェットヘッドよりも低い位置に配置され、オーバーフローによってインク液面の高さを一定に保ちつつ、前記インクジェットヘッドからインクを回収することが好ましい。
また、前記連通配管に接続される少なくとも1つのインクタンクは、さらに、前記供給用インクタンクに供給するためのインクおよび/または前記回収用インクタンクから回収されたインクを貯留する貯留タンクおよび前記貯留タンクにインクを補充する補充タンクの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0011】
また、前記連通口が、前記インクジェットヘッドの前記キャッピング手段側の面のみに形成されていることが好ましい。
また、前記連通口が、前記キャッピング手段の前記インクジェットヘッド側の面のみに形成されていることが好ましい。
また、前記キャッピング手段は、前記吐出口と非接触で前記インクジェットヘッドに装着されることが好ましい。
また、前記キャッピング手段は、非稼動状態において、動力が不要な付勢手段によって前記キャップ手段をインクジェットヘッドに押圧することにより、前記インクジェットヘッドの前記吐出口と外気との連通を断つことが好ましい。
前記インクは、少なくとも色材を含む帯電した微粒子を絶縁性の分散媒に分散してなるインクであり、前記インクジェットヘッドは、このインクを前記吐出口から前記記録媒体上に吐出する静電式のインクジェットヘッドであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、連通配管を外気と連通させることで、インクタンク内が外気と連通され、インクタンク内の圧力が一定になり、静圧方式のインクジェット記録装置であっても、長時間連続して安定した記録を行うことができる。さらに、キャッピング手段がインクジェットヘッドに装着して、連通配管の外気との連通を断つことで、キャッピング手段の装着時は、インクタンク内が外気との連通を遮断された状態となり、インクの蒸発が抑制され、インクの乾燥固着や、インクの濃度上昇を防止することができる。さらに、キャッピング手段によって、インクタンク内の状態を切り替えることができるので、簡易な構成の装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のインクジェット記録装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0014】
図1に、本発明のインクジェット記録装置の一例を概念的に示す。
図1に示したインクジェット記録装置(以下、記録装置10という)10は、色材を含む帯電した微粒子(以下、色材粒子とする)を絶縁性のキャリア液(分散媒)に分散してなるインクQを用い、このインクに静電力を作用させることによりインク液滴を吐出する静電式のインクジェット記録装置である。記録装置10は、図1に示すように、基本的に、吐出ヘッド(インクジェットヘッド)12と、キャッピング部材14と、メインタンク16と、供給サブタンク18と、回収サブタンク20と、補充タンク22と、インク循環経路24と、連通管40とを有する。
【0015】
記録装置10のインク循環経路24は、主に、メインタンク16のインクQを吐出ヘッド12に供給するインク供給系と、吐出ヘッド12から吐出されなかったインクQを回収するインク回収系とから構成される。インク供給系は、インク循環ポンプ26、供給サブタンク18、インク循環ポンプ26と供給サブタンク18とを接続する第1供給流路30、供給サブタンク18と吐出ヘッド12とを接続する第2供給流路32、及び、供給サブタンク18内のオーバーフロー管18aからオーバーフローしたインクQを回収する第3回収流路38から主に構成される。また、インク回収系は、回収サブタンク20、吐出ヘッド12と回収サブタンク20とを接続する第1回収流路34、回収サブタンク20内のオーバーフロー管20aからオーバーフローしたインクを回収する第2回収流路36から主に構成される。供給流路や回収流路は、例えば、パイプや可撓性を有するチューブなどから構成することができる。
【0016】
なお、図1は、本発明の特徴的な部位を主に示しているが、本発明の記録装置10は、図に示したインク循環系以外にも、例えば、吐出ヘッド12を駆動してインク液滴を吐出させるドライバ、吐出ヘッド12と対面する所定の経路で、後述するノズル列方向(行方向)と直交する方向に記録媒体Pを搬送(走査搬送)する走査搬送手段、吐出ヘッド12による画像記録に先立って記録媒体Pに所定のバイアス電圧を帯電させる帯電手段(あるいは吐出ヘッド12の制御電極に対する対向電極)、帯電した記録媒体Pを除電する除電手段、所定の経路で記録媒体Pを搬送する搬送手段、搬送される記録媒体Pを検出するセンサ、装置内に滞留するキャリア液等を排出する溶媒排出手段など、公知の静電式のインクジェット記録装置が有する各種の構成要素を有しているのは、もちろんのことである。
【0017】
また、本発明のインクジェット記録装置は、K(黒)のみなどの1色の画像記録を行うモノクロの記録装置であってもよく、また、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、およびKの4色のインクを用いて、記録媒体にフルカラー画像を描画する記録装置であってもよい。
また、吐出ヘッドは静電式のインクジェットヘッドに限定されず、サーマルインクジェットヘッド、ピエゾ素子やマイクロマシン等によってインク室の振動板振動することによりインクを吐出するタイプのインクジェットヘッド等、各種のインクジェットヘッドを好適に利用可能である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の吐出ヘッド12には、吐出口が形成されている面(後述するキャッピング部材側の面)に連通口41が形成されている。この連通口41は、連通配管40に接続されており、連通配管40は、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20及びインク補充タンク22の各タンクの空気部分と連通している。この連通配管40によって、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20及びインク補充タンク22の内部を外気と通気させて、外気と同じ雰囲気としている。連通配管40は、吐出ヘッド12の内部を貫通して連通口41に接続されている。
ここで、連通口41は、吐出口が形成されている部分よりも重力方向上方に設けられることが好ましい。これにより、吐出口よりあふれ出したインクで、連通口41が閉塞されることが防止される。また、連通口41を吐出口が形成されている面よりも突出した形状とすることも好ましく、さらに、連通口41の周りに撥インク処理をすることも好ましい。このように構成することで、吐出口よりあふれ出したインクで、連通口41が閉塞されることをより確実に防止することができる。
【0019】
キャッピング部材14は、インクの循環停止時や長時間描画を行わない間に、吐出ヘッド12の吐出口側に装着されて、吐出ヘッド12の全ての吐出口を外気との連通を断った状態にし、吐出口に残存するインクQの蒸発による乾燥固着を防止するものである。図1に示すように、キャッピング部材14の吐出ヘッド12側の面には連通口42が形成されている。この連通口42は、連通配管40に接続されている。連通配管40については後ほど詳細に説明する。
このようなキャッピング部材14は、静電式のインクジェット記録装置に限らず、各種のインクジェット記録装置で通常に使用されているものが各種利用可能である。
なお、キャッピング部材14の構成についても、後ほど詳述する。
【0020】
また、図に示した記録装置10は、メインタンク16、供給サブタンク18、および回収サブタンク20、ならびに、これらを接続する各流路で構成されるインク循環系を有し、このインク循環系によってインクQを循環することにより、吐出ヘッド12にインクを供給する静圧式のインクジェット記録装置である。
【0021】
メインタンク16は、記録装置10のインク循環系を循環するインクを主に貯留するための密閉型のインクタンクである。メインタンク16は、色材粒子の沈降/堆積を防止するための撹拌手段や、インク吐出の安定性を向上するための温度調節手段を有するのが好ましい。また、メインタンク16の上面には、開口16aが形成されており、開口16aは連通配管40に接続されている。
第1供給流路30上には、メインタンク16から供給サブタンク18にインクQを送液するためのインク循環ポンプ26が配置される。インク循環ポンプ26による送液量は、供給サブタンク18から吐出ヘッド12へのインクQ供給量よりも多く設定される。
【0022】
供給サブタンク18は、第1供給流路30および第2供給流路32が接続される密閉型のインクタンクであり、鉛直方向において吐出ヘッド12よりも上方に配置される。供給サブタンク18に接続された第2供給流路32の他端は、吐出ヘッド12に接続されている。また、図1に示すように、供給サブタンク18の側面の上方には、開口18bが形成されており、開口18bは後述する連通配管40に接続されている。連通配管40は、後ほど詳細に説明する。
供給サブタンク18には、第1供給流路30によってメインタンク16から供給されたインクQが貯留され、貯留されたインクQは第2供給流路32を介して吐出ヘッド12に供給される。
【0023】
また、供給サブタンク18内には、第3回収流路38に接続するオーバーフロー管18aが配置され、かつ、第2供給流路32はオーバーフロー管18aの上端よりも下方に接続される。図示例では、第2供給流路32との接続部を供給サブタンク18の底面に設けた構成としている。
【0024】
供給サブタンク18に貯留されたインクは、供給サブタンク18と吐出ヘッド12(又は回収サブタンク20)の高低差(落差)に応じた圧力で、重力落下によって第2供給流路32から吐出ヘッド12に供給される。
また、供給サブタンク18では、インク循環ポンプ26により供給されたインクがオーバーフロー管18aの高さを超えても、オーバーフロー管18aからオーバーフローして排出されるので、タンク内の液面の高さは一定に保たれる。その結果、供給サブタンク18から吐出ヘッド12へのインクQの供給量および供給圧(圧力ヘッド)は一定に保たれ、いわゆる静圧系でのインク供給が行われる。
なお、オーバーフロー管18aから排出されたインクQは、第3回収流路38から、メインタンク16に戻され、再度、循環に供される。
【0025】
回収サブタンク20は、第1回収流路34および第2回収流路36に接続される密閉型のインクタンクであり、吐出ヘッド12よりも鉛直方向において下方に配置される。前述のように、第1回収流路34の他端は、吐出ヘッド12に、第2回収流路36の他端はメインタンク16に、それぞれ接続される。また、図に示すように、回収サブタンク20の上面には、開口20bが形成されており、開口20bは後述する連通配管40に接続されている。連通配管40は、後ほど詳細に説明する。
回収サブタンク20には、吐出ヘッド12から吐出されなかったインクQが第1回収流路34を通じて貯留される。回収サブタンク20に貯留されたインクQは第2回収流路36からメインタンク16に戻される。
【0026】
吐出ヘッド12から吐出されずに吐出ヘッド12のインク排出口12bから排出されたインクQは、吐出ヘッド12(又は供給サブタンク18)と回収サブタンク20との高低差(落差)に応じた圧力で、重力落下によって第1回収流路34から回収サブタンク20に供給される。回収サブタンク20において、オーバーフロー管20aを超えたインクQは、第2回収流路36を通ってメインタンク16に戻されて、再度、循環に供される。
また、回収サブタンク20のインク液面は、オーバーフロー管20aによって一定に保たれる。これにより、吐出ヘッド12からのインク流入にも、回収サブタンク20の液面の高さに応じた一定の圧量(圧力ヘッド)がかかる。すなわち、吐出ヘッド12に、一定の静圧をかけることができる。
【0027】
記録装置10においては、このように、供給サブタンク18に貯留されているインクの一定の圧力ヘッドで供給サブタンク18から吐出ヘッド12へインク供給するとともに、吐出ヘッド12から回収サブタンク20へのインク供給にも一定の圧力をかける。これにより、吐出ヘッド12の内部に形成されたインク流路に係る圧力、すなわち吐出ヘッド12へのインク供給および排出を完全に静圧にすることができ、後述する吐出ヘッド12の吐出口に形成されるインクQのメニスカス等を安定させることができる。
【0028】
インク補充タンク22は、消費したインクQをメインタンク16に補充する密閉型のタンクであり、インク流路39によって、メインタンク16と接続される。また、図に示すように、インク補充タンク22の上面には、開口22aが形成されており、開口22aは後述する連通配管40に接続されている。連通配管40は、後ほど詳細に説明する。
インク補充タンク22は、メインタンク16内のインクQが、所定濃度で、かつ所定量となるように、メインタンク16にインクを補充する。インク補充タンク22の構成は特に限定されず、例えば、コンクインク(高濃度インク)を貯留するコンクタンクと、インクの希釈液を貯留する希釈液タンクとを有し、所定濃度で、かつ所定量となるように、決定された量のコンクインクおよび希釈液をインクタンクに補充するようにしてもよい。なお、希釈液としては、例えば、後述するインクQのキャリア液を用いればよい。
【0029】
記録装置10において、インクQの補充タイミングには、特に限定はない。例えば、所定枚数の描画毎等に自動的に行ってもよく、インクタンク16内のインクQの量を検出して自動的に行ってもよく、描画した画像を観察したオペレータ等の判断による入力指示に応じて行ってもよく、複数のタイミング決定手段を有し、選択的に行ってもよい。
また、コンクインクおよび希釈液の補充量の決定方法にも、特に限定はない。例えば、インク予想蒸発量に加え、画像データ等から知見した総インク吐出回数、循環しているインクの濃度測定結果、メインタンク16内のインク量などを用いて、インクQの消費量を予測し、メインタンク16内のインクQが所定濃度で所定量となるように、インクの補充量を決定すればよい。
【0030】
本発明の記録装置10においては、供給サブタンク18および/または回収サブタンク20の高さを、適宜、設定することにより、吐出ヘッドの吐出口に形成されるインクQのメニスカスの高さを、高い自由度で選択することも可能である。従って、前記メニスカスの状態や高さをコントロール可能にするために、供給サブタンク18および/または回収サブタンク20の高さを調節するための高さ調節手段を有することが好ましい。
なお、高さ調節手段は、互いに螺合するネジ軸とナットによる方法、シリンダやアクチュエータを用いる方法、カムを用いる方法等、鉛直方向の高さ調整が可能な各種の方法が利用可能である。
【0031】
ここで、連通配管40について説明する。連通配管40は、上述のようにメインタンク16の開口16a、供給サブタンク18の開口18b、回収サブタンク20の開口20b、インク補充タンク22の開口22aと連通している。連通配管40は、上記各タンクの空気部分を互いに通気させ、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20およびインク補充タンク22の空気部分を同一の雰囲気にする。
さらに、連通配管40は、吐出ヘッド12に形成された連通口41と、キャッピング部材14に形成された連通口42とにも接続されている。ここで、吐出ヘッド12及びキャッピング部材14は、外気環境下に配置されているので、連通配管40が、連通口41および42を介して外気と連通される。これにより、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20およびインク補充タンク22の内部は外気と同じ圧力となる。
ここで、上述したように、キャッピング部材14は、休止時に、吐出ヘッド12に装着され、これにより吐出口の外気との連通が断たれる。また、キャッピング部材14が吐出ヘッド12に装着されると、キャッピング部材14および吐出ヘッド12に形成された連通口41および42が塞がれて連通口41および42の外気との連通が断たれる。これにより、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20およびインク補充タンク22の内部も、外気との連通が断たれる。
【0032】
このように、本発明のインクジェット記録装置は、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20およびインク補充タンク22の外気との通気部となる連通口41、42を、キャッピング部材14が吐出ヘッド12に装着されたときに外気との連通を断たれる部分(キャッピング面)に配置している。これにより、キャッピング部材14が吐出ヘッド12から離脱されているとき、すなわち、稼動時は、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20およびインク補充タンク22が外気と連通される。一方、キャッピング部材14が吐出ヘッド12に装着されているとき、すなわち、休止時は、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20およびインク補充タンク22の外気との連通が断たれる。
【0033】
キャッピング部材14が吐出ヘッド12から離脱されている時は、各インクタンクの液面に常に外気と同じ圧力がかかるため、供給サブタンク18から吐出ヘッド12に安定してインクを供給することが可能となり、吐出ヘッド12から安定したインクの吐出が可能となる。また、キャッピング部材14が吐出ヘッド12に装着されている時は、各インクタンクの外気との連通が断たれるので、インクの蒸発が抑制され、インクの蒸発に起因する、インクの乾燥固着やインク濃度の上昇を防止することができる。これにより、長時間記録を行わない場合でも、メンテナンスを不要もしくは軽微なものにでき、さらに、安定したインクの濃度管理を行うことができる。
【0034】
さらに、本発明では、キャッピング部材14および吐出ヘッド12にそれぞれ連通口42及び41を設けることにより、吐出ヘッド12へのキャッピング部材14の着脱動作だけで、インクタンクが外気と連通した状態と、外気との連通が断たれた状態に切り替えることができる。このように、特別な装置を設置することなく、簡易な装置構成で、インクが貯留されるタンク内の雰囲気を制御することができる。
さらに、キャッピング部材14が吐出ヘッド12に装着されている間は、吐出ヘッド12とキャッピング部材14との間に形成される空間の雰囲気もインクタンクと同じ、インクの蒸気に満たされた雰囲気になるので、吐出ヘッド12の吐出口の乾燥をより防止することができる。
【0035】
本実施形態では、連通配管40を、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20およびインク補充タンク22と接続させたが、本発明はこれに限定されず、それらのインクタンクのうち少なくとも1つのインクタンクと連通配管40が接続されていればよい。供給サブタンク18を含む複数のインクタンク16と連通配管40が接続されていることが好ましい。供給サブタンク16と連通配管を接続させることで、吐出ヘッドに安定してインクが供給され、安定した記録を行うことができる。
ここで、本発明のインクジェット記録装置は、連通配管および少なくとも1つのインクタンク(で形成されるエア循環系)を、キャッピング時に外気から封止された連通空間に形成している。
【0036】
次に、本発明に従う記録装置の別の形態として、連通口が吐出ヘッドのみに形成されている場合の構成例について説明する。図2に、吐出ヘッド12のみに連通口45が形成されている記録装置の一例を示す。
【0037】
本実施形態における記録装置は、連通配管44および連通口45以外は、基本的に図1に示した記録装置と同様の構成を有する。従って、両者で同一の構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略し、以下、本実施形態の記録装置に特有の点を重点的に説明する。
本実施形態の記録装置の連通配管44は、吐出ヘッド12と供給サブタンク18とを連通させる連通配管44aと、吐出ヘッド12と回収サブタンク20とを連通させる連通配管44bとを有する。
また、連通口45aおよび連通口45bは吐出ヘッド12のキャッピング部材14側の面に形成され、連通口45aは連通配管44aと接続され、連通口45bは連通配管45bと接続される。連通配管44a及び44bは、吐出ヘッド12を貫通して連通口41及び42とそれぞれ接続されている。
供給タンク18は、連通配管44aおよび連通口45aにより、外気と連通され、回収サブタンク20は、連通配管44bおよび連通口45bにより、外気と連通される。ここで、本実施形態においても、外気と連通させる連通口45a、45bは、吐出ヘッド12のキャッピング部材14側の面に形成されているので、キャッピング部材14を吐出ヘッド12に装着させて連通口45a及び45bを塞ぐことで、供給サブタンク18および回収サブタンク20を、外気と連通が断たれた状態とすることができる。
【0038】
このように、本発明においては、各インクタンクと連通する連通配管を複数設け、それぞれの連通配管を、外気と連通する連通口と個別に接続する構造とすることもできる。そして、各インクタンクに連通されている連通配管をそれぞれ外気と連通させることにより、各インクタンクを外気と同じ雰囲気とすることができる。
また、連通口を吐出ヘッド、キャッピング部材の両方に設けることに限定されず、本実施形態のように、吐出ヘッドのみに連通口を設けるようにしてもよい。
【0039】
次に、上述した記録装置とはさらに異なる構成例について図3を参照して説明する。図3に示した記録装置は、図1において吐出ヘッド12に連通口41を形成せず、キャップ部材14にのみ連通口47を形成し、連通配管46を連通口47と供給サブタンク18と回収サブタンク20に接続した以外は、基本的に図1に示した記録装置と同様の構成を有する。従って、両者で同一の構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略し、以下、本実施形態の記録装置に特有の点を重点的に説明する。
本実施形態の連通配管46は、供給サブタンク18及び回収サブタンク20と連通されている。また、連通口47は、キャッピング部材14を吐出ヘッド12に装着したときに、吐出ヘッド12の側壁面と対面する側に形成され、連通配管46と接続されている構成となっている。連通配管46は、図3に示すように、キャッピング部材14の側壁面を貫通して連通口47と接続されている。
このような構成としても上記と同様に、キャッピング部材14が吐出ヘッド12から離脱されている時は、供給サブタンク18および回収サブタンク20を外気と連通した状態とし、キャッピング部材14が吐出ヘッド12に装着されている時は、供給サブタンク18および回収サブタンク20を外気との連通が断たれた状態とすることができる。
【0040】
次に、キャッピング部材14の構造について図4および図5を参照して詳細に説明する。ここで、図4は、図1に示すインクジェット記録装置のキャッピング部材の概略構成を示す斜視図であり、図5は、図4に示すキャッピング部材14の三面図である。
キャッピング部材14は、上述のように、インクの循環停止時や長時間描画を行わない間に、吐出ヘッド12の全ての吐出口を外気との連通を断った状態にすることにより、吐出口に残存するインクQの蒸発による乾燥固着を防止するものである。
キャッピング部材14は、連通口42を有し吐出ヘッド12と接触するキャッピング用ゴム部材54と、キャッピング用ゴム部材54を支持するゴム保持部材52と、吐出ヘッド12への押しつけ圧を調整する押しつけ圧調整ばね56と、ケース50と、連通口42と連通管44を接続する連通チューブ58とを有する。
【0041】
キャッピング用ゴム部材54は、吐出ヘッド12の吐出口配設面よりも広い矩形面を有する蓋部材であり、吐出ヘッド12に対向する側の矩形面の外周部が、吐出ヘッド12側に凸の構造を有する。キャッピング部材12を吐出ヘッド12に装着したときには、キャッピング用ゴム部材54の外周部のみが、吐出ヘッドの吐出口配設面と接触する。これにより、吐出ヘッド12の吐出口配設面に接触して、吐出口と外気との連通を断つことができる。このように、吐出ヘッド12の吐出口とと直接接触することなく、吐出口を外気との連通を断つことができる構造にすることで、吐出口が複雑な形状の場合や、インクガイドを備える場合の吐出ヘッドも本発明のインクジェット記録装置に用いることができる。
キャッピング用ゴム部材54は、吐出口配設面との密着性と耐インク性を有することが好ましく、例えば、柔軟性を有するゴムあるいは発泡部材で形成され、具体的には、硬度60度以下のNMRゴム、フッ素ゴム等が例示される。
また、キャッピング部材54の表面には、連通口42が形成されている。図示例では、連通口を2箇所に形成したが連通口の数は特に限定されず、いくつ設けてもよい。
【0042】
ゴム保持部材52は、キャッピング用ゴム部材54の吐出ヘッド12との接触面と反対側の面に設けられ、キャッピング用ゴム部材54を保持する。ゴム保持部材52は、剛性と耐インク性のある材料で形成され、具体的には、スレンレス、アルミ等の金属か、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、硬質塩化ビニル等の硬質プラスチックが例示される。
【0043】
押しつけ圧調整ばね56は、ゴム保持部材52とケース50のと間に配置され、キャッピング用ゴム部材54の吐出ヘッド12への押しつけ圧を調整する。ここで、押しつけ圧調整ばね56は、図5に示すように、所定間隔毎に複数設け、吐出ヘッド12への押しつけ圧が一定となるようにすることが好ましい。
【0044】
ケース50は、ゴム保持部材52を図5矢印方向に移動可能に収容し保持するためのケースである。ケース50内に収容され、キャッピング用ゴム部材54を保持したゴム保持部材52は、押し付け圧調整ばね56により適切な圧力で吐出ヘッド12の吐出口配設面に押し付ける。また、複数の押しつけ圧調整ばね56によりゴム保持部材52を保持しているため、キャッピング用ゴム部材54と吐出ヘッド12の吐出口配置面が斜めに配置されていても、ケース50を吐出ヘッド12の吐出口配置面に向けて前進させて、キャッピング用ゴム部材54を吐出ヘッド12の吐出口配置面に接触させたときに、キャッピング用ゴム部材54が傾いて吐出ヘッド12の吐出口配置面と平行な状態で接触する。これにより、吐出ヘッド12の吐出口配置面がキャッピング用ゴム部材54でしっかりと封止される。ケース50全体は、例えば、モータ機構や圧力機構により吐出ヘッド12に向かって移動させられる構成であればよく、キャッピングを行う際には、吐出ヘッド12の吐出口配設面に当接するように移動させられる。
ここで、ケース50は、剛性と耐インク性のある材料で形成されることが好ましく、具体的には、スレンレス、アルミ等の金属か、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、硬質塩化ビニル等の硬質プラスチックが好ましい。
【0045】
連通チューブ58は、キャッピング用ゴム部材54、ゴム保持部材52およびケース50とを貫通して設けられている。連通チューブ58のキャッピング用ゴム部材54側の端部は連通口42を形成し、ケース50側の端部は、図示しない連通管40と接続される。
【0046】
ここで、本発明において、キャッピング部材14の吐出ヘッド12への装着および離脱の制御はどのように行なってもよく、例えば、吐出ヘッド12による記録時(稼動時)以外は、キャッピング部材14を装着させるようにしてもよく、または、所定時間記録が行われなかった場合にキャッピング部材を装着させるようにしてもよい。
【0047】
ここで、本発明においては、キャッピング部材14は、前記キャップ移動手段が非稼動の状態(電源遮断状態)において、本実施形態のように、スプリングや弾性部材等の動力が不要な付勢部材によってキャップ部材を押圧することにより、吐出口を外気との連通が断たれた状態とする構成とするのが好ましい。
上記構成を有することにより、吐出口の外気との連通が断たれた状態中に停電が発生しても、吐出口を外気との連通が断たれた状態に保つことができ、さらにインク循環の停止時における吐出ヘッドおよび各インクタンクの外気との連通が断たれた状態を確実に保つことができる。
【0048】
図6に、吐出ヘッド12の概念図を示す。なお、図6において、(A)は一部断面斜視図を、(B)は断面図を、それぞれ示すものである。
記録装置10においては、負の高電圧に帯電(バイアス電圧を帯電)された記録媒体Pを吐出部の配列方向(後述する行方向)と直交する方向に走査搬送しつつ、記録画像すなわち供給された画像データに応じて吐出ヘッド12の各吐出部を変調駆動して吐出をon/offすることにより、インク液滴Rをオンデマンドで吐出して、記録媒体Pに目的とする画像を記録する。
【0049】
なお、吐出ヘッド12は、前述のように、記録媒体Pの幅に対応する吐出口の列を有するラインヘッドであり、図7に概念的に示すように、多数の吐出部を二次元的に配置したマルチチャンネル構造のインクジェットヘッドであるが、図6においては、構造を明瞭に示すために、吐出部の一部のみを示す。
【0050】
吐出ヘッド12は、色材粒子(前述のように、色材を含み、かつ帯電した微粒子)をキャリア液に分散してなるインクQに、静電力を作用させてインク液滴Rとして吐出する、静電式のインクジェットヘッドで、ヘッド基板72と、吐出基板74と、インクガイド76とを備えている。
吐出ヘッド12において、ヘッド基板72と吐出基板74は、互いに対面して所定の間隔離間して配置され、その間に、各吐出口96にインクQを供給するためのインク流路78が形成される。インクQは、前記インク循環系によってインク流路78を含む所定の経路で循環され、記録時には、インク流路78内を所定方向に所定の速度(例えば、200mm/sのインク流)で、例えば、図中矢印方向に流される。
【0051】
ヘッド基板72は、全ての吐出部に共通なシート状の絶縁性基板であり、その表面には、電気的にフローティング状態である浮遊導電板80が設けられている。
浮遊導電板80には、画像の記録時に、後述する第1制御電極82および第2制御電極84に印加される駆動電圧に応じて誘起される誘導電圧が発生する。また、誘導電圧の電圧値は稼動チャンネル数に応じて自動的に変化する。この誘導電圧により、インク流路78内のインクQに含まれる色材粒子は付勢されて吐出基板74側に泳動し、すなわち、後述する吐出口96のインクQの濃縮が、より好適に行われる。
【0052】
なお、浮遊導電板80は必須の構成要素ではなく、必要に応じて適宜設けるのが好ましい。また、浮遊導電板80は、インク流路78よりもヘッド基板72側に配置されていればよく、例えばヘッド基板72の内部に配置してもよい。また、浮遊導電板80は、吐出部が配置される位置よりもインク流路78の上流側に配置される方が好ましい。また、浮遊導電板80に所定の電圧を印加するようにしても良い。
【0053】
他方、吐出基板74は、ヘッド基板72と同様に全ての吐出部に共通なシート状の絶縁性基板であり、絶縁性基板86と、第1制御電極82と、第2制御電極84と、ガード電極88と、絶縁層90,92および94とを備えている。また、吐出基板74には、各インクガイド76に対応する位置に、インクの吐出口96が貫通して開口しており、インクガイドの先端部分98を吐出基板74の表面から突出してインクガイド76が挿通している。前述のように、ヘッド基板72と吐出基板74とは離間して配置され、その間にインク流路78が形成される。
吐出ヘッド12においては、互いに対応する第1制御電極82、第2制御電極84、吐出口96、およびインクガイド76等によって、1つのインクの吐出部が構成される。
【0054】
第1制御電極82および第2制御電極84は、それぞれ絶縁性基板86の図中上面および下面の表面に、各々に対応する吐出口96の周囲を囲むようにリング状に設けられた円形電極である(図7および図8参照)。絶縁性基板86および第1制御電極82の表面には、その表面を保護すると共に平坦化する絶縁層92が被覆され、同様に、絶縁性基板86および第2制御電極84の表面には、その表面を平坦化するための絶縁層90が被覆されている。さらに、絶縁層92の上には、ガード電極88が形成され、ガード電極88および絶縁層92の上には、その表面を平坦化するための絶縁層94が形成される。
なお、第1制御電極82および第2制御電極84はリング状の円形電極に限定されず、インクガイド76に臨むように配置される電極であれば、例えば略円形電極、分割円形電極、平行電極、略平行電極など、どのような形状であっても良い。
【0055】
図7および図8に示すように、吐出ヘッド12において、インクガイド76、第1制御電極82および第2制御電極84、吐出口96等で構成される各吐出部は、マトリクス状に2次元的に配置されている。
ここで、図7(A)は、図6(A)において、ガード電極88を含み、絶縁性基板86と平行な面で切断した場合の平面図である。また、、図7(B)は、図6(A)において、第1制御電極82を含み、絶縁性基板86と平行な面で切断した場合の平面図である。また、図7(C)は、図6(A)において、第2制御電極84を含み、絶縁性基板86と平行な面で切断した場合の平面図である。
【0056】
具体的には、吐出ヘッド12は、図7(B)および(C)に示すように、行方向(図7横方向)に配列された吐出部の列を、列方向(走査搬送方向(図7縦方向))に3行(A行、B行、C行)有する。なお、図7においては、行方向に5個(1列、2列、3列、4列、5列)の、計15個のマトリクス状に配置された吐出部を示している。
吐出ヘッド12は、ラインヘッドであり、この行方向に記録媒体Pのサイズ全域に対応する吐出部の列(ノズル列)を有している。従って、記録装置10においては、記録媒体Pは行方向(吐出部(吐出口96)の配列方向=ノズル列方向)と直交する列方向に走査搬送されつつ、静電式インクジェットによって描画される。
各行の吐出部は、列方向に対して所定の間隔離間して配置される。また、各行は、吐出部を行方向に互いに1/3ピッチずらして、自身の吐出部が他行の吐出部の間(行方向の間)に位置するように配置される。
【0057】
図7(A)に示すように、ガード電極88は、吐出口96および制御電極に対応する領域が円形に開口するシート状の電極である。すなわち、ガード電極88は、各制御電極の間に形成される。
また、図7(B)に示すように、同じ列に配置された吐出部の第1制御電極82は、相互に接続され、かつ、図7(C)に示すように、同じ行に配置された吐出部の第2制御電極84は、相互に接続されている。
さらに、図示は省略するが、第1制御電極82および第2制御電極84は、それぞれ、駆動電圧(パルス電圧)を印加して、各電極を変調駆動してインク液滴Rの吐出をon/offするための、パルス電源に接続されている。
【0058】
画像の記録時には、同一列に配置された第1制御電極82は同時かつ同一電圧レベルの駆動電圧が印加(on)される。同様に、同一行に配置された第2制御電極84は同時かつ同一電圧レベルに駆動電圧が印加(on)される。
また、記録媒体Pに記録される1行は、列方向に対して、第2制御電極84の行数に相当する3つのグループに分割され、A行、B行およびC行の各行によって、時分割で順次記録される。
例えば、図6に示す例の場合、第2制御電極84のA行目、B行目、C行目を所定のタイミングで順次onする。この駆動に対応して、第1制御電極82を画像データ(記録画像)に応じて変調駆動(on/off)することにより、時分割した3回の記録によって、記録媒体P上に1行分の描画が行われる。前述のように、記録媒体Pは、列方向に搬送されるので、行方向(副走査方向)に、各行の有する記録密度(吐出部密度)の3倍の記録密度の描画を行うことができる。
【0059】
なお、制御電極は、第1制御電極82および第2制御電極84の2層電極構造に限定されず、単層電極構造でもよいし、3層以上の電極構造としても良い。
【0060】
先にも述べたが、ガード電極88は、図7(A)に示すように、各吐出口96の周囲に形成された第1制御電極82および第2制御電極84に相当する部分がリング状に開口する、全ての吐出部に共通なシート状の電極である。すなわち、ガード電極88は、各制御電極間に配置される電極である。絶縁層92およびガード電極88の表面には、その表面を保護するとともに、平坦化する絶縁層94が被覆されている。
ガード電極88には所定の電圧が印加されており、隣接する吐出部のインクガイド76の間に生じる電界干渉を抑制する役割を果たす。
なお、ガード電極88は必須の構成要素ではない。また、吐出基板74には、第1制御電極82または第2制御電極84からのインク流路78方向への反発電界を遮蔽するために、第2制御電極84よりインク流路78側にシールド電極を設けても良い。
【0061】
インクガイド76は、凸状の先端部分98を持つ所定厚みのセラミック製平板である。図示例においては、同一行の吐出部のインクガイド76は、ヘッド基板72上の浮遊導電板80の上に配置された同じ支持体47の上に所定の間隔で配置される。インクガイド76は、吐出基板74に開孔された吐出口96を貫通し、先端部分98を吐出基板74の記録媒体P側の最表面(絶縁層94の図中上側の表面)よりも上部に突出している。
【0062】
インクガイド76の先端部分98は、記録媒体Pの保持手段17に向かって、漸次、細くなる略三角形状(ないしは台形状)に成形されている。
なお、先端部分98(最先端部)は、金属が蒸着されているのが好ましい。この先端部分98の金属蒸着は必須の要素ではないが、これにより、先端部分98の誘電率が実質的に大きくなり、強電界を生じさせ易くできるという効果がある。
【0063】
なお、インクガイド76の形状は、インクQ内の色材粒子を先端部分98に向けて泳動(すなわちインクQを濃縮)させることができれば、特に制限的ではなく、例えば先端部分98は凸状でなくても良い等、自由に変更してもよい。また、インクの濃縮を促進するために、毛細管現象によってインクQを先端部分98に集めるインク案内溝となる切り欠きを、インクガイド76の中央部分に図中上下方向に沿って形成しても良い。
【0064】
前述のように、第2制御電極84は、所定のタイミングで1行ずつ、順次、on(駆動(高電圧レベル(例えば、400〜600V)またはハイインピーダンス状態))され、残りの全ての第2制御電極84はoff(非駆動(接地レベル(接地状態))にされる。また、第1制御電極82は、全ての列が同時に、画像データ(記録画像)に応じて、列単位でon(高電圧レベルまたは接地レベルにされる。これにより、各々の吐出部におけるインクの吐出/非吐出(インク吐出のon/off)が制御される。
【0065】
すなわち、第2制御電極84がonで、かつ第1制御電極82がonの場合にはインクQがインク液滴Rとして吐出(吐出on)され、第1制御電極82および第2制御電極84の少なくとも一方がoffの場合にはインクは吐出されない(吐出off)。
そして、各々の吐出部から吐出されたインク液滴Rは、負のバイアス電圧を帯電された記録媒体Pに引き寄せられ、記録媒体Pの所定位置に付着して画像が形成される。
【0066】
上記のように、下層の第2制御電極84の行を順次onし、画像データに応じて上層の第1制御電極82をon/offした場合、第1制御電極82が画像データに応じてonされるため、列方向のそれぞれの吐出部を中心として、その両側の吐出部では、第1制御電極82が高電圧レベルまたは接地レベルに頻繁に変化する。この場合、画像の記録時にガード電極88を所定のガード電位、例えば接地レベル等にバイアスすることにより、隣接する吐出部の電界の影響を排除することができる。
【0067】
吐出ヘッド12では、第1制御電極82または第2制御電極84の一方、または両方で、インク吐出のon/offの制御を行うかは何ら制限的ではない。すなわち、制御電極側のインクon/offの時の電圧値と記録媒体P側の電圧値との差分が所定値よりも大きい場合にはインクが吐出され、所定値よりも小さい場合にはインクが吐出されないように、制御電極側および記録媒体P側の電圧を適宜設定すればよい。
【0068】
従って、吐出ヘッド12においては、図示例とは逆、すなわち第1制御電極82を1列毎に順次onし、画像データに応じて、第2制御電極84をonすることで、インク吐出をon/offすることも可能である。
この場合、列方向は第1制御電極82の1列毎にonされ、列方向のそれぞれの吐出部を中心として、その両側の列の吐出部の第1制御電極82は常に接地レベルになるため、この両側の列の吐出部の第1制御電極26がガード電極88の役割を果す。このように、上層の第1制御電極82で各列を順次オンし、画像データに応じて下層の第2制御電極84を駆動する場合には、ガード電極88を設けなくても、隣接する吐出部の影響を排除し、記録品質を向上させることができる。
【0069】
また、この態様では、インクQ中の色材粒子を正帯電させ、記録媒体側を負の高電圧に帯電させているが、これに限定されず、逆に、インク中の色材粒子を負に帯電させ、記録媒体P側を正の高電圧に帯電させても良い。このように、色材粒子の極性を本態様と逆にする場合には、対向電極、記録媒体Pの帯電ユニット、各々の吐出部の第1制御電極82および第2制御電極84への印加電圧極性等を上記の例と逆にすれば良い。
【0070】
前述のような色材粒子を含有するインクQを用いる静電式のインクジェットにおいては、従来のインクジェット方式のように、インク全体に力を作用させて、インクを記録媒体に向けて飛翔させるのではなく、主に、キャリア液に分散させた固形成分である色材粒子に力を作用させて、インクを飛翔させる。以下、吐出ヘッド12におけるインク液滴R吐出の作用を説明する。
なお、以下の例では、色材粒子は正荷電しており、従って、吐出onでは第1制御電極82および第2制御電極84には、正の駆動電圧が印加され、記録媒体Pには、負の高電圧(バイアス電圧)が帯電される。
【0071】
画像の記録時には、インクQは前述のインク循環系によって循環され、インク流路78内を図中右側から左側(図6(B)中矢印方向)に向かって所定の速度で流れる。
また、前述のように、記録媒体Pは、負の高電圧に帯電されて、吐出ヘッド12に対面して走査搬送される。
記録媒体Pに帯電する負の高電圧は、静電式のインクジェットにおけるバイアス電圧として作用し、また、このバイアス電圧をする帯電された記録媒体Pは、吐出ヘッド12の制御電極に対する対向電極として作用するのは、前述のとおりである。
【0072】
記録媒体Pが所定の位置に搬送されると、吐出ヘッド12には、記録媒体Pの搬送タイミングおよび画像データに応じて駆動信号が供給され、各吐出ヘッド12は、これに応じて、各行の第2制御電極84を順次駆動し、かつ、各列の第1制御電極82を画像データに応じて変調駆動し、インク吐出を画像データに応じて変調してon/offする。
【0073】
ここで、第1制御電極82および第2制御電極84の少なくとも一方がoffであり、すなわちバイアス電圧のみが印加されている状態では、インクQには、バイアス電圧とインクQの色材粒子(荷電粒子)の荷電とのクーロン引力、色材粒子間のクーロン反発力、キャリア液の粘性、表面張力、誘電分極力等が作用し、これらが連成して、色材粒子やキャリア液が移動し、図6(B)に概念的に示すように、吐出口96から若干盛り上がったメニスカス状となってバランスが取れている。
また、このクーロン引力等によって、色材粒子は、いわゆる電気泳動でバイアス電圧が帯電された記録媒体Pに向かって移動する。すなわち、吐出口96のメニスカスにおいては、インクQが濃縮された状態となっている。
【0074】
この状態から、インク液滴Rを吐出するための駆動電圧(パルス電圧)が印加される。すなわち、図示例においては、第1制御電極82および第2制御電極84の両方がonされると、前記バイアス電圧に駆動電圧が重畳され、先の連成に、さらにこの駆動電圧の重畳によって連成された運動が起こり、静電力によって色材粒子およびキャリア液がバイアス電圧(対向電極)側すなわち記録媒体P側に引っ張られ、メニスカスが成長して、その上部から略円錐状のインク液柱いわゆるテーラーコーンが形成される。また、先と同様に、色材粒子は電気泳動によってメニスカスに移動しており、メニスカスのインクQは濃縮され、色材粒子を多数有する、ほぼ均一な高濃度状態となっている。
【0075】
駆動電圧の印加開始後、さらに有限な時間が経過すると、色材粒子の移動等により、電界強度の高いメニスカスの先端部分で、主に色材粒子とキャリア液の表面張力とのバランスが崩れ、メニスカスが急激に伸びて曳糸と呼ばれる直径数〜数十μm程度の細長いインク液柱が形成される。
さらに有限な時間が経過すると曳糸が成長し、この曳糸の成長、レイリー/ウエーバー不安定性によって発生する振動、メニスカス内における色材粒子の分布不均一、メニスカスにかかる静電界の分布不均一等の相互作用によって曳糸が分断され、インク液滴Rとなって吐出/飛翔し、かつ、バイアス電圧にも引っ張られて、記録媒体Pに着弾する。
曳糸の成長および分断は、さらにはメニスカス(曳糸)への色材粒子の移動は、駆動電圧の印加中は連続して発生する。また、駆動電圧の印加を終了(第1制御電極82および第2制御電極84の少なくとも一方をoff)した時点で、バイアス電圧のみが印加された図6(B)のメニスカスの状態に戻る。
記録媒体P上におけるインクの1ドットは、通常、この1回(1パルス)の駆動電圧の印加によるものであり、従って、1ドットは、この1回の駆動電圧の印加によって曳糸から分断して吐出した複数のインク液滴Rによって形成される。
【0076】
ここで、本発明の記録装置に用いられるインクについて説明する。
インクQは、色材粒子をキャリア液に分散することにより得られる。キャリア液は、高い電気抵抗率(109 Ω・cm以上、好ましくは1010Ω・cm以上)を有する誘電性の液体(非水溶媒)であるのが好ましい。キャリア液の電気抵抗が低いと、制御電極に印加される駆動電圧により、キャリア液自身が電荷注入を受けて帯電してしまい、色材粒子の濃縮がおこらない。また、電気抵抗の低いキャリア液は、隣接する制御電極間での電気的導通を生じさせる懸念もあるため不向きである。
【0077】
キャリア液として用いられる誘電性液体の比誘電率は、5以下が好ましく、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3.5以下である。このような比誘電率の範囲とすることによって、キャリア液中の色材粒子に有効に電界が作用し、泳動が起こりやすくなる。
なお、このようなキャリア液の固有電気抵抗の上限値は1016Ωcm程度であるのが望ましく、比誘電率の下限値は1.9程度であるのが望ましい。キャリア液の電気抵抗が上記範囲であるのが望ましい理由は、電気抵抗が低くなると、低電界下でのインクの吐出が悪くなるからであり、比誘電率が上記範囲であるのが望ましい理由は、誘電率が高くなると溶媒の分極により電界が緩和され、これにより形成されたドットの色が薄くなったり、滲みを生じたりするからである。
【0078】
キャリア液として用いられる誘電性液体としては、好ましくは直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素、および、これらの炭化水素のハロゲン置換体がある。例えば、へキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、シリコーンオイル(例えば、信越シリコーン社製KF−96L)等を単独あるいは混合して用いることができる。
【0079】
このようなキャリア液に分散される色材粒子は、色材自身を色材粒子としてキャリア液中に分散させてもよいが、好ましくは、定着性を向上させるための分散樹脂粒子を含有させる。分散樹脂粒子を含有させる場合、顔料などは分散樹脂粒子の樹脂材料で被覆して樹脂被覆粒子とする方法などが一般的であり、染料などは分散樹脂粒子を着色して着色粒子とする方法などが一般的である。
【0080】
色材としては、従来か流路クジェットインク組成物、印刷用(油性)インキ組成物、あるいは静電写真用液体現像剤に用いられている顔料および染料であればどれでも使用可能である。
色材として用いる顔料としては、無機顔料、有機顔料を問わず、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用することができる。具体的には、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、コバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、等の従来公知の顔料を特に限定なく用いることができる。
色材として用いる染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、アニリン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ペンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料、等の油溶性染料が好ましく例示される。
【0081】
さらに、分散樹脂粒子としては、例えば、ロジン類、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコールのアセタール変性物、ポリカーボネート等を挙げられる。
これらのうち、粒子形成の容易さの観点から、重量平均分子量が2,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜5.0の範囲内であるポリマーが好ましい。さらに、前記定着の容易さの観点から、軟化点、ガラス転移点または、融点のいずれか1つが40℃〜120℃の範囲内にあるポリマーが好ましい。
【0082】
インクQにおいて、色材粒子の含有量(色材粒子あるいはさらに分散樹脂粒子の合計含有量)は、インク全体に対して0.5〜30重量%の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは1.5〜25重量%、さらに好ましくは3〜20重量%の範囲で含有されることが望ましい。色材粒子の含有量が少なくなると、印刷画像濃度が不足したり、インクQと記録媒体P表面との親和性が得られ難くなって強固な画像が得られなくなったりするなどの問題が生じ易くなり、一方、含有量が多くなると均−な分散液が得られにくくなったり、インクジェットヘッド等でのインクQの目詰まりが生じやすく、安定なインク吐出が得られにくいなどの問題が生じるからである。
【0083】
また、キャリア液に分散された色材粒子の平均粒径は、0.1〜5μmが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5μmであり、更に好ましくは0.4〜1.0μmである。この粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製商品名)により求めたものである。
【0084】
色材粒子をキャリア液に分散させた後(必要に応じて、分散剤を使用しても可)、荷電制御剤をキャリア液に添加することにより色材粒子を荷電して、荷電した色材粒子をキャリア液に分散してなるインクQとする。なお、色材粒子の分散時には、必要に応じて、分散媒を添加してもよい。
荷電制御剤は、一例として、電子写真液体現像剤に用いられている各種のものが利用可能である。また、「最近の電子写真現像システムとトナー材料の開発・実用化」139〜148頁、電子写真学会編「電子写真技術の基礎と応用」497〜505頁(コロナ社、1988年刊)、原崎勇次「電子写真」16(No.2)、44頁(1977年)等に記載の各種の荷電制御剤も利用可能である。
【0085】
なお、色材粒子は、制御電極に印加される駆動電圧と同極性であれば、正電荷および負電荷のいずれに荷電したものであってもよい。
また、色材粒子の荷電量は、好ましくは5〜200μC/g、より好ましくは10〜150μC/g、さらに好ましくは15〜100μC/gの範囲である。
【0086】
また、荷電制御剤の添加によって誘電性溶媒の電気抵抗が変化することもあるため、下記に定義する分配率Pを、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上とする。
P=100×(σ1−σ2)/σ1
ここで、σ1は、インクQの電気伝導度、σ2は、インクQを遠心分離器にかけた上澄みの電気伝導度である。電気伝導度は、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)および液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5V、周波数1kHzの条件で測定を行った値である。また遠心分離は、小型高速冷却遠心機(トミー精工(株)社製SRX−201)を使用し、回転速度14500rpm、温度23℃の条件で30分間行った。
以上のようなインクQを用いることによって、荷電粒子の泳動が起こりやすくなり、濃縮しやすくなる。
【0087】
インクQの電気伝導度は、100〜3000pS/cmが好ましく、より好ましくは150〜2500pS/cm、さらに好ましくは200〜2000pS/cmである。以上のような電気伝導度の範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、隣接する記録電極間での電気的導通を生じさせる懸念もない。
また、インクQの表面張力は、15〜50mN/mの範囲が好ましく、より好ましくは15.5〜45mN/m、さらに好ましくは16〜40mN/mの範囲である。表面張力をこの範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、ヘッド周りにインクが漏れ広がり汚染することがない。
さらに、インクQの粘度は0.5〜5mPa・secが好ましく、より好ましくは0.6〜3.0mPa・sec、さらに好ましくは0.7〜2.0mPa・secである。
【0088】
このようなインクQは、一例として、色材粒子をキャリア液に分散して粒子化し、かつ、荷電調整剤を分散媒に添加して、色材粒子に荷電を生じさせることで、調製できる。具体的な方法としては、以下の方法が例示される。
(1)色材あるいはさらに分散樹脂粒子をあらかじめ混合(混練)した後、必要に応じて分散剤を用いてキャリア液に分散し、荷電調整剤を加える方法。
(2)色材、あるいはさらに分散樹脂粒子および分散剤を、キャリア液に同時に添加して、分散し、荷電調整剤を加える方法。
(3)色材および荷電調整剤、あるいはさらに分散樹脂粒子および分散剤を、同時にキャリア液に添加して、分散する方法。
【0089】
次に、本発明のインクジェット記録装置の具体的な一例を図9および図10を用いて説明する。
図9は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態の構成概略図である。同図に示すインクジェット記録装置10は、静電力により、帯電した微粒子を含むインクの吐出を制御し、記録媒体(記録用紙)P上に単色印刷をしてモノクロ画像を記録するもので、記録媒体Pの保持手段112、搬送手段114、記録手段116、インク循環手段118、溶媒回収手段120および筐体122を備えている。以下、保持手段112、搬送手段114、記録手段116、インク循環手段118、溶媒回収手段120について順に説明する。
【0090】
まず、記録媒体Pの保持手段112について図9を参照しながら説明する。
記録媒体Pの保持手段112は、記録前の記録媒体Pを保持する給紙トレイ124と、フィードローラ126と、記録後の記録媒体Pを保持する排出トレイ128とを備えている。
【0091】
給紙トレイ124は、その先端部が給紙トレイ124の装着部(図中筐体122の左面下部)の内部に挿入され、装着部の所定位置に着脱可能なものである。給紙トレイ124が装着部に完全に装着された状態では、その挿入方向の先端部が装着部の奥端部に接触し、給紙トレイ124の後端部は筐体122の外部に突出した状態で装着される。また、フィードローラ126は、給紙トレイ124の装着部の奥部近傍に配置されている。
【0092】
給紙トレイ124内には、記録前の記録媒体Pが複数枚積層されてストックされる。画像の記録時には、フィードローラ126により、記録媒体Pが給紙トレイ124から1枚ずつ取り出され、記録媒体Pの搬送手段114に供給される。
【0093】
排出トレイ128は、記録媒体Pの排出部(図中筐体122の左面の中央部)の近傍に設けられている。排出トレイ128の先端部側(記録媒体Pの搬送方向側)が筐体122の外部に位置し、その後端部側が筐体122の内部に位置している。また、排出トレイ128は、その先端部が後端部よりも低くなるように、所定の傾斜角度で配設されている。
【0094】
記録後の記録媒体Pは、搬送手段114により搬送された後、排出部から排出され、排出トレイ128内に順次積層されてストックされる。
【0095】
続いて、記録媒体Pの搬送手段114について説明する。
搬送手段114は、記録媒体Pを静電吸着し、給紙トレイ124から排出トレイ128まで所定の経路に沿って搬送するものであり、搬送ローラ対130と、搬送ベルト132と、ベルトローラ134a、134b、134cと、導電性プラテン136と、記録媒体Pの帯電装置138および除電装置140と、分離爪142と、ガイド144と、定着ローラ対146とを備えている。
【0096】
搬送ローラ対130は、記録媒体Pの搬送経路上の、フィードローラ126と搬送ベルト132との間の位置に設けられている。
【0097】
フィードローラ126により給紙トレイ124から取り出された記録媒体Pは、この搬送ローラ対130により挟持搬送され、搬送ベルト132上の所定の位置に供給される。
【0098】
記録媒体Pの帯電装置138は、スコロトロン帯電器138aと、負の高圧電源38bとを備えている。スコロトロン帯電器138aは、記録媒体Pの搬送経路上の、搬送ローラ対130と記録手段116との間の位置で、搬送ローラ対130により、記録媒体Pが供給される位置の搬送ベルト132の表面に対向する位置に配置されている。また、負の高圧電源138bの負側の端子はスコロトロン帯電器138aに接続され、その正側の端子は接地されている。
【0099】
記録媒体Pの表面は、負の高圧電源138bに接続されたスコロトロン帯電器138aにより所定の負の高電位に均一に帯電され、常に一定のDCバイアス電圧(例えば、約−1.5kV)が印加された状態となる。これにより、記録媒体Pは、搬送ベルト132の絶縁性を有する表面上に静電吸着される。
【0100】
搬送ベルト132は、リング状のエンドレスベルトであり、3つのベルトローラ134a、134b、134cによって三角形状に張架されている。また、記録手段116に対向する位置にある搬送ベルト132の内側には、平板状の導電性プラテン136が配置されている。
【0101】
搬送ベルト132は、記録媒体Pが静電吸着される側の面(表面)が絶縁性を示し、ベルトローラ134a、134b、134cと接触する側の面(裏面)が導電性を示す。ベルトローラ134bは接地されており、従って、搬送ベルト132の裏面を介してベルトローラ134a、134cおよび導電性プラテン136も接地される。これにより、記録手段116に対向する位置の搬送ベルト132は、インクジェットヘッドの対向電極として機能する。
【0102】
ベルトローラ134a、134b、134cのうちの少なくとも1つは図示していない駆動源に接続されており、記録時には、所定の速度で回転駆動される。これらベルトローラ134a、134b、134cの回転により、搬送ベルト132は、記録時に図中の矢印方向に移動する。これにより、記録媒体Pは、搬送ベルト132の移動とともに移動され、記録手段116の前を搬送される。
【0103】
記録媒体Pの除電装置140は、コロトロン除電器140aと、高圧電源140bとを備えている。コロトロン除電器140aは、記録媒体Pの搬送経路上の、記録手段116と分離爪142との間の位置で、記録後の記録媒体Pが搬送される位置の搬送ベルト132の表面に対向する位置に配置されている。また、高圧電源140bの一端はコロトロン除電器140aに接続され、他端は接地されている。
【0104】
記録後の記録媒体Pは、高圧電源140bに接続されたコロトロン帯電器140aにより除電される。これにより、記録媒体Pは、搬送ベルト132から分離されやすくなる。
【0105】
また、分離爪142、ガイド144、および定着ローラ対146は、記録媒体Pの搬送経路上の、除電装置140の下流側にこの順に配置されている。
【0106】
除電装置140により除電された記録媒体Pは、分離爪142により搬送ベルト132上から分離され、ガイド144に沿って定着ローラ対146に供給される。定着ローラ対146は、ヒートローラを備えるローラ対であり、記録媒体Pは、定着ローラ対146により挟持搬送されつつ、その上に記録された画像は、接触加熱され定着される。定着後の記録媒体Pは排出部から排出され、排出トレイ128内に順次積層されてストックされる。
【0107】
続いて、図9に示すインクジェット記録装置100の記録媒体Pの記録手段116について説明する。
記録手段116は、静電力により、記録媒体P上に単色印刷をしてモノクロ画像を記録するものであり、ヘッドユニット148と、ヘッドドライバ150と、記録媒体Pの位置検出装置152とを備えている。
ヘッドユニット148は、図6〜8に示した吐出ヘッド12、図10に示した供給サブタンク及び回収サブタンク、それらタンクの高さを調整するサブタンク位置調節機構等を有する。本実施形態では、ヘッドユニット148は、吐出ヘッド12を記録媒体Pの搬送方向と直交する方向に主走査させながらインクを吐出させることができる。そして、前述した搬送手段114で記録媒体Pを一定量のみ搬送することを繰り返すシリアルスキャンを行うことで記録媒体Pに記録を行う。このようなヘッドユニット148の構造については後に詳細に説明する。
【0108】
記録媒体Pの位置検出装置152は、フォトセンサ等の位置検出手段であり、図9に示すように、記録媒体Pの搬送経路上の、帯電装置138とヘッドユニット148との間の位置で、記録媒体Pが搬送される搬送ベルト132の表面に対向する位置に配置されている。位置検出装置152により記録媒体Pの位置が検出され、その位置情報はヘッドドライバ158に供給される。
【0109】
ヘッドドライバ150は、筐体122内部の図中右面に取り付けられており、ヘッドユニット148の吐出ヘッド12と接続されている。ヘッドドライバ150には、外部装置から画像データが入力され、位置検出装置152から記録媒体Pの位置情報が入力される。ヘッドドライバ150の制御により、記録媒体Pの位置情報に従って、ヘッドユニット148に設けられた吐出ヘッドの吐出タイミングが制御されつつ、画像データに応じて吐出ヘッドからインクが吐出され、記録媒体P上には、画像データに対応した画像が記録される。
【0110】
ここで、ヘッドユニット148について図10を参照しながら説明する。図10は、ヘッドユニット148の構成を示す拡大斜視図であり、図中矢印X方向が搬送ベルト132の搬送方向である。
ヘッドユニット148は、吐出ヘッド12、供給サブタンク18、回収サブタンク20、サブタンク位置調節機構(供給サブタンク側176、回収サブタンク側178)、駆動手段182、ガイドレール184a、ガイドレール184b、支持部材186を備えている。
【0111】
吐出ヘッド12は、ヘッドユニット148の内部において、その吐出部が記録媒体Pの搬送方向と略並行になるように配置されている。また、吐出ヘッド12の吐出部は、図9に示す導電性プラテン136が配置された位置の搬送ベルト32の表面に対向する位置に、搬送ベルト132上に静電吸着されて搬送される記録媒体Pの表面と所定の一定間隔となるように配置されている。
【0112】
ガイドレール184aおよびガイドレール184bは、搬送ベルト132の搬送方向(矢印X方向)に直交する方向に所定間隔離間して平行に配置されている。
駆動手段182は、図示されていないモータにより駆動されるボールねじなどであり、ガイドレール184aおよびガイドレール184bの間に配置されている。
【0113】
支持部材186はガイドレール184a、ガイドレール184bおよび駆動手段182に支持され、駆動手段182によりガイドレール184aおよび184bに沿って、搬送ベルトの搬送方向(矢印X方向)に直交する方向に移動される。また、支持部材186は板状の形状であり、その上には、吐出ヘッド12、供給サブタンク18、回収サブタンク20、サブタンク位置調節機構(供給サブタンク側176、回収サブタンク側178)が配置されている。
支持部材上に配置されたサブタンク位置調節機構(供給サブタンク側176、回収サブタンク側178)は、それぞれ供給サブタンク18、回収サブタンク20を支持している。また、サブタンク位置調節機構(供給サブタンク側176、回収サブタンク側178)は、それぞれモータ176a、178aを備えており、それらモータを駆動させることによって、供給サブタンク18、回収サブタンク20を鉛直方向(矢印X方向)に移動させる。
【0114】
ここで、サブタンク位置調節機構176、178は、ボールねじ176b、178bをモータ176a、178aにより駆動する方式のものを用いることができるが、これに限定されず、他の方式による位置調整機構が各種利用できる。なお、供給サブタンク18及び回収サブタンク20の位置は、基本的に頻繁に変更するものではないので、手動で調整するように位置調整機構を構成してもよい。
【0115】
次に、図9に示したインクジェット記録装置100のインク循環手段118について図9及び図10を参照しながら説明する。
インク循環手段118は、メインタンク16、インク補充タンク22、供給サブタンク18、回収サブタンク20、ポンプ(不図示)、第1供給流路30及びインク回収流路160を備えている。供給サブタンク18及び回収サブタンク20は、前述したように、ヘッドユニット148に設けられている。メインタンク16は、ヘッドユニット148に設けられた供給サブタンク18及び回収サブタンク20と、第1供給流路30及びインク回収流路160を介して接続されている。
【0116】
メインタンク64内には、帯電微粒子(色材粒子)と、これを分散させる分散溶媒とを含むインクが保持されている。メインタンク64内のインクは、ポンプ(不図示)により、第1供給流路30を介して、供給サブタンク18に供給される。
また、吐出ヘッド12で使用されなかったインク(吐出ヘッド12で吐出されなかった色剤粒子を含むインク)は、インク回収流路160を介して、メインタンク16に回収される。このようにインクは、吐出ヘッド12とメインタンク16との間を循環する。
【0117】
インク補充タンク22は、メインタンク16にインクを補充するために設けられている。インク補充タンク22は、取替え可能なカートリッジ式であることが好ましい。
【0118】
吐出ヘッド12からインクが吐出されることにより、インク循環手段118で循環しているインクの濃度が低下するので、インク循環手段118は、図示しないインク濃度検出器によってインク濃度を検出し、検出したインク濃度に応じてインク補充タンク22からメインタンク16に適宜インクを補充して、インク濃度を所定の範囲に保つことが好ましい。
【0119】
また、メインタンク16には、インクの固形成分の沈殿・濃縮を抑制するための攪拌装置や、インクの温度変化を抑制するためのインク温度調節ユニットが備えられることが好ましい。この理由は、温度管理をしないと、環境温度の変化等によりインク温度が変化して、インクの物性が変化することによりインク滴のドット径が変化し、高画質な画像が安定して形成できなくなる可能性があるからである。一方、攪拌装置としては、回転羽根、超音波振動子、循環ポンプ等が使用できる。
【0120】
インクの温度調節ユニットとしては、ヒータなどの発熱素子や発熱手段および/またはペルチェ素子等の発熱・吸熱素子および/または冷却器などの冷却手段などの温調素子や温調手段ならびにそのコントローラおよび温度センサを備え、温調素子や温調手段を温度センサによって検出されたインク濃度に応じてコントローラによって制御するものや、温調素子や温調手段を、温度センサとコントローラが一体化された、例えばサーモスタットにより制御するもの等、公知の温調ユニットが使用できる。また、温度調節ユニットの配置位置としては、インク液滴として吐出されるインクの温度を温調できればメインタンク16に限定されず、どこであってもよく、例えば、ヘッドユニット148、インク配管系等に配置してもよい。
【0121】
次に、図10を参照してインク循環手段118の動作について詳細に説明する。
図10に示すように、ヘッドユニット148の板状の支持部材186上に、吐出ヘッド12、供給サブタンク18及び回収サブタンク20が配置されている。供給サブタンク18及び回収サブタンク20は、供給サブタンク位置調整機構176と回収サブタンク位置調整機構178によって支持部材186上で鉛直方向上下に移動することができる。これにより、吐出ヘッド12に供給するインクの流体圧力を調整することができる。
【0122】
供給サブタンク18は、図9に示すメインタンク16と第1供給流路30を介して接続され、吐出ヘッド12と、第2供給流路32を介して吐出ヘッド12と接続されている。回収サブタンク20は、吐出ヘッド12と第1回収流路34を介して接続されている。第3回収流路38は、供給サブタンク18からメインタンク16へのドレン配管を示しており、第2回収流路36は、回収サブタンク20からメインタンク16へのドレン配管を示している。第3回収流路38及び第2回収流路36は、図9に示すインク回収流路160と接続されている。
【0123】
供給サブタンク18は、メインタンク16から第1供給流路30を介して供給されたインクを、第2供給流路32を介して吐出ヘッド12に供給する。ここで、供給サブタンク18に過剰に供給されたインクは、供給サブタンク18内に配置されたオーバーフロー管から第3回収流路38を介して図1に示すインクタンク54に回収される。これにより供給サブタンク72のインク量は一定量に保たれる。
【0124】
供給サブタンク18には、連通配管44aが接続されている。この連通配管44aは、吐出ヘッド12に形成された連通口45aと連通しており、この連通口45aを介して供給サブタンク18を外気と連通させている。また、回収サブタンク20には、連通配管44bが接続されている。この連通配管44bは、吐出ヘッド12に形成された連通口45bと連通しており、この連通口45bを介して供給サブタンク18を外気と連通させている。これにより、供給サブタンク18および回収サブタンク20内の雰囲気は外気と同じ雰囲気となり、液面にかかる圧力が一定になり、吐出ヘッドに供給される圧力が安定する。
さらに、図示していないが、本実施形態の記録装置100は、図2に示した記録装置と同様に、吐出ヘッドに対向する所定位置にキャッピング部材が配置されている。このキャッピング部材を吐出ヘッドに装着することにより、連通口45a、45bは、外気との連通を断たれ、供給サブタンク18および回収サブタンク20は、外気との連通を断たれた状態となり、インクの蒸発が抑制されるのは、上記実施形態と同様である。
【0125】
吐出ヘッド12の供給されたインクは、その一部が吐出口から吐出され、吐出ヘッド12で使用されなかったインクは第1回収流路34を介して回収サブタンク20に供給される。吐出ヘッド12から回収サブタンク20に供給されたインクは、第2回収流路36及びインク回収流路160を介して図9に示すインクタンク14に回収される。図9に示すインクタンク16に回収されたインクは循環され、再び第2供給流路32から吐出ヘッド12に供給される。
【0126】
つぎに、図9を参照して、インクジェット記録装置の溶媒回収手段120について説明する。
溶媒回収手段120は、吐出ヘッド12から記録媒体P上に吐出されたインクから蒸発する分散溶媒や、画像の定着時にインクから蒸発する分散溶媒等を回収するもので、排出ファン164と、活性炭フィルタ166とを備えている。活性炭フィルタ166は、筐体122の上面(図中上側)の裏面に取り付けられ、排出ファン164は、活性炭フィルタ166の下に取り付けられている。
【0127】
筐体122内部の分散溶媒成分を含む空気は、排出ファン164により、活性炭フィルタ166を介して筐体122の外部に排出される。その際、筐体122内部の空気中に含まれる分散溶媒成分は、活性炭フィルタ166によって吸着除去される。
【0128】
以上、本発明のインクジェット記録装置100の構成について具体的に説明した。
【0129】
上述の例では、インク中の色剤粒子を正帯電させ、記録媒体あるいは記録媒体の背面の対向電極を負の高電圧にして、吐出したインクジェットによって画像記録を行うインクジェット式記録装置について説明したが、本発明はこれには限定されず、逆に、インク中の色剤粒子を負に帯電させ、記録媒体または対向電極を正の高電圧にして、インクジェットによる画像記録を行っても良い。このように、色剤粒子の極性を上記の例と逆にする場合には、粒径分布除去手段の平行電極、静電吸着手段、対向電極、静電式インクジェットヘッドの吐出電極への印加電圧極性等を上記の例と逆にすれば良い。
【0130】
なお、モノクロ画像を記録する場合としたが、これに限定されず例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(B)の4色のフルカラー印刷を行うようにしてもよい。この場合は、ヘッドユニットを各色ごとに設けても、1つの吐出ヘッドに各色のインクジェットヘッドを設けても良い。
また、本実施形態では、ヘッドユニットをシリアルヘッド型としたが、これに限定されず、例えば、ラインヘッド型のヘッドユニット等どのようなものでもよい。
【0131】
以上、本発明のインクジェット記録装置ついて、詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんのことである。
【0132】
例えば、以上の例は、本発明のインクジェット記録装置を、色材粒子(色材を含む荷電した粒子)をキャリア液に分散してなるインクを用いる濃縮タイプの静電式インクジェット記録装置に利用したものであるが、本発明は、これに限定はされず、荷電粒子を含有するインクを用いない、非濃縮タイプの静電式インクジェット記録装置にも好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の一例の概念図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の他の一例の概念図である。
【図3】本発明のインクジェット記録装置の他の一例の概念図である。
【図4】図1に示すインクジェット記録装置のキャッピング部材の概略構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示すキャッピング部材の三面図である。
【図6】図1に示すインクジェット記録装置のインクジェットヘッドの概念図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【図7】(A)、(B)および(C)は、図6に示すインクジェットヘッドを説明するための概略図である。
【図8】図6に示す記録ヘッドを説明するための概略斜視図である。
【図9】本発明のインクジェット記録装置の具体的一例の概念図である。
【図10】図9に示したヘッドユニットの概念図である。
【図11】従来のインクジェット記録装置の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0134】
10 インクジェット記録装置
12 吐出ヘッド(インクジェットヘッド)
14 キャッピング部材
16 メインタンク
18 供給サブタンク
18a、20a オーバーフロー管
20 回収サブタンク
22 インク補充タンク
24 インク循環経路
26 インク循環ポンプ
30 第1供給流路
32 第2供給流路
34 第1回収流路
36 第2回収流路
38 第3回収流路
39 インク流路
40、44、46 連通配管
41、42、45、47 連通口
50 ケース
52 ゴム保持部材
54 キャッピング用ゴム部材
56 押しつけ圧調整ばね
58 連通チューブ
72 ヘッド基板
74 吐出口基板
76 インクガイド
78 インク流路
80 浮遊導電板
82 制御電極
86 第2制御電極
86 絶縁性基板
88 ガード電極
90、92、94 絶縁層
96 吐出口
98 先端部分
112 保持手段
114 搬送手段
116 記録手段
118 インク循環手段
120 溶媒回収手段
122 筐体
124 給紙トレイ
126 フィードローラ
128 排出トレイ
130 搬送ローラ対
132 搬送ベルト
134 ベルトローラ
136 導電性プラテン
138 帯電装置
140 除電装置
142 分離爪
144 ガイド
146 定着ローラ対
148 ヘッドユニット
150 ヘッドドライバ
152 位置検出手段
160 共通回収流路
164 活性炭フィルタ
166 排気ファン
176、178 サブタンク位置調節機構
180 インク流路
182 駆動手段
184a、184b カイドレール
186 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に基づいて記録媒体上にインクの吐出を行う吐出口を有するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに装着され、前記吐出口に蓋をするキャッピング手段と、
前記インクジェットヘッドに静圧方式によりインクを供給する1以上のインクタンクと、
前記1以上のインクタンクの少なくとも1つと前記キャッピング手段および前記インクジェットヘッドの少なくとも一方とを接続する連通配管とを有し、
前記連通配管は、前記キャッピング手段および前記インクジェットヘッドのキャッピング面に形成された、前記少なくとも1つのインクタンクの空気を外気と連通させる連通口を備え、
前記キャッピング手段を前記インクジェットヘッドに装着して、前記連通配管による外気への連通を断ち、前記キャッピング手段を前記インクジェットヘッドから離脱させて、前記連通配管による外気への連通を行うことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記連通配管に接続される少なくとも1つのインクタンクは、前記インクジェットヘッドにインクを供給する供給用インクタンクを含み、
前記供給用インクタンクは、前記インクジェットヘッドよりも高い位置に配置され、オーバーフローによって、インク液面の高さを一定に保ちつつ、前記インクジェットヘッドにインクを供給する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記連通配管に接続される少なくとも1つのインクタンクは、前記インクジェットヘッドからインクを回収する回収用インクタンクを含み、
前記回収用インクタンクは、前記インクジェットヘッドよりも低い位置に配置され、オーバーフローによって、インク液面の高さを一定に保ちつつ、前記インクジェットヘッドからインクを回収する請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記連通配管に接続される少なくとも1つのインクタンクは、さらに、前記供給用インクタンクに供給するためのインクおよび/または前記回収用インクタンクから回収されたインクを貯留する貯留タンクおよび前記貯留タンクにインクを補充する補充タンクの少なくとも一方を含む請求項2または3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記連通口が、前記インクジェットヘッドの前記キャッピング手段側の面のみに形成されている請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記連通口が、前記キャッピング手段の前記インクジェットヘッド側の面のみに形成されている請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記キャッピング手段は、前記吐出口と非接触で前記インクジェットヘッドに装着される請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記キャッピング手段は、非稼動状態において、動力が不要な付勢手段によって前記キャップ手段をインクジェットヘッドに押圧することにより、前記インクジェットヘッドの前記吐出口と外気との連通を断つ請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記インクは、少なくとも色材を含む帯電した微粒子を絶縁性の分散媒に分散してなるインクであり、
前記インクジェットヘッドは、このインクを前記吐出口から前記記録媒体上に吐出する静電式のインクジェットヘッドである請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−26934(P2006−26934A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204842(P2004−204842)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】