説明

インクジェット記録装置

【課題】装置を大型化することなく、高記録品位の記録を実現することができるインクジェット記録装置を実現すること。
【解決手段】吐出口形成面に形成された流路を介して、ファンによってミストを回収、排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する複数の吐出口を備えた記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置に関し、さらに詳しくは、色材を含有するインクと反応することで凝集する反応液を有するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、複数の記録素子を配列した記録ヘッドの吐出口からインク滴を吐出して記録を行うものである。近年、色材を有するインク(以下、単にインクともいう)と反応することで凝集する反応液を吐出し、記録媒体上で色材を有するインクと反応させることで、記録品位や耐水性を向上させたインクジェット記録装置が存在している。記録ヘッドから反応液やインクを吐出する際、吐出によって生じる記録ヘッドから記録媒体へと向かう自己気流が、記録媒体に当たることで跳ね返り記録媒体から記録ヘッドへと向かう上昇気流が生じる。この上昇気流によって吐出された反応液やインクのミストが記録ヘッドの吐出口が設けられた吐出口形成面に付着する。付着したインクと反応液が反応すると、吐出口形成面で固着してしまい、その後の吐出に悪影響を与えることがある。これは、記録ヘッドから強制的にインクを吸引する吸引回復手段や記録ヘッド表面をワイピングするワイピング手段による回復動作を実行しても凝集インクを取り除くことが出来ないためである。したがって、インクや反応液のミストが吐出口形成面に付着しないように回収する必要がある。インクが吐出口形成面に付着しないようにするための構成として、特許文献1の構成が知られている。特許文献1ではインクを吐出する各ノズル列を取り囲むようにミスト吸引口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−111880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いた場合、記録ヘッドが大型化してしまい、それに伴って本体も大型化してしまうという課題があった。よって本発明は、装置を大型化することなく、高記録品位の記録を実現することができるインクジェット記録装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため本発明のインクジェット記録装置は、色材を含むインクを吐出する複数の吐出口が列を成したインク吐出口列と、反応液を吐出する複数の吐出口が列を成した反応液吐出口列と、が吐出口形成面に形成された記録ヘッドが移動しながら記録媒体に対して前記インクと前記反応液とを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、前記インク吐出口列と前記反応液吐出口列との間に、流路が設けられており、該流路は前記記録ヘッドの吐出口形成面と前記記録媒体との間の雰囲気を吸引可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、インクジェット記録装置は、インク吐出口列と反応液吐出口列との間に、流路が設けられており、その流路は記録ヘッドの吐出口形成面と記録媒体との間の雰囲気を吸引可能である。これによって、装置を大型化することなく、高記録品位の記録を実現することができるインクジェット記録装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係るインクジェット記録装置を示す平面図である。
【図2】第1の実施形態に係るキャリッジに搭載された記録ヘッドの模式図である。
【図3】吐出口形成面と記録媒体との間の気流と反応液のミストを示した図である。
【図4】雰囲気を排出又は吸引するファンを設けたキャリッジを示した断面図である。
【図5】記録装置本体に搭載される制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】ファンの駆動により各流路に生じさせる気流を示した模式図である。
【図7】ファンを2個設けたキャリッジを示した模式的断面図である。
【図8】ファンの駆動により各流路に生じさせる気流を示した模式図である。
【図9】ファンモータを駆動するパルスを決定する流れを表すフローチャートである。
【図10】ファンモータ駆動パルステーブルの一例である。
【図11】ファンの駆動により各流路に生じさせる気流を示した模式図である。
【図12】本実施形態におけるファンモータ駆動パルステーブルの一例である。
【図13】ファンモータを駆動するパルス決定の流れを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置を示す平面図である。図1において記録装置本体1は、記録用紙(以下、記録媒体ともいう)の搬送系ユニット(図示せず)を含む各種の機構部を備えており、この記録装置本体1と、これに搭載された制御系等によりインクジェット記録装置が構成されている。なお、本実施形態におけるインクジェット記録装置は、シリアル型のインクジェット記録装置となっている。このシリアル型記録装置は、搬送系ユニットによって記録媒体を矢印Y方向へと間欠的に搬送すると共に、記録ヘッド3を記録媒体の搬送方向である矢印Y方向(副走査方向)と直交する方向である矢印X方向(主走査方向)へと移動させながら記録動作を行う。また、図1に示す記録装置本体1は、比較的大判の記録媒体(例えば、A1サイズ)への記録を行い得るよう、矢印X方向におけるサイズを大型化した構成となっている。また、図1において、キャリッジ2には、記録ヘッド3が着脱可能に搭載される。このキャリッジ2は記録ヘッド3と共に記録媒体の搬送方向と直交する矢印X方向に沿って往復移動する。具体的には、キャリジ2は、矢印X方向に沿って配置されたガイド軸4に沿って移動可能に支持されると共に、ガイド軸4と略平行に移動する無端ベルト5に固定されている。無端ベルト5は、キャリッジモータ(CRモータ)の駆動力によって往復移動し、それによってキャリッジ2を矢印X方向(主走査方向)に往復移動させる。
【0009】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るキャリッジ2に搭載された記録ヘッド3の模式図である。記録ヘッド3には、図2の模式図に示されるように吐出口形成面3bに形成される複数の吐出口3aと、個々の吐出口3aに対応して形成された複数の液路(図示せず)と、複数の液路にインクを供給する共通液室(図示せず)とが形成されている。図2の記録ヘッドには、前端部および後端部の両端部に設けられた反応液吐出口列3cと、反応液吐出口列の間に設けられた色材含有インク吐出口列3dと、の間に記録ヘッド−記録媒体間の雰囲気を排出または吸引可能な流路3fが設けられている。本実施形態の各記録ヘッド3には、上記の副走査方向である矢印Y方向に1200dpi(ドット/インチ)の密度で、1280個のインクの吐出口3aが配列されており、キャリッジ2は主走査方向である矢印X方向に往復移動する。画像形成時に反応液を使用する場合は、反応液を吐出した後に色材を含有するインクを吐出する。そのため、キャリッジ2の往方向および復方向でそれぞれ画像を形成するためには、反応液吐出口列3cを色材含有インク吐出口列3dの両端部に設ける必要がある。ただし、予め反応液を吐出することで片端部のみに反応液を設けることで画像形成することも可能である。また片方向記録に限定することで片端部のみに反応液を設けることも可能である。
【0010】
記録ヘッド3に設けられている各液路には、インクを吐出口3aから吐出させるための吐出エネルギを発生させるエネルギ発生素子が配置されている。このエネルギ発生素子として、本実施形態では、インクを局所的に加熱して膜沸騰を起こさせ、その圧力によってインクを吐出させる電気熱変換体が用いられている。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、電気機械変換素子を用いることも可能である。なお、以下の説明においては、吐出口3aと液路とを含めてノズルと称す。
【0011】
また、キャリッジ2に搭載される記録ヘッド3には、それぞれ異なる色材を含有したインクを収容したインクタンクからインクが供給される。本実施形態では、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの色材を含有するインクの他に、それぞれのインクと反応することで凝集させる反応液を加えた5種類のインクを収容した5個のインクタンク(図示せず)が本体に備えられている。そして、本体に備えられた各インクタンクからは、それぞれ対応する記録ヘッド3のインク供給口にチューブ(図示せず)で連結されて各記録ヘッドにインクを供給する。
【0012】
回復処理装置7は、記録ヘッド3の各吐出口3aからのインク吐出性能を良好な状態に保つための回復処理を行うもので、記録装置本体1の所定の位置に保持固定されている。この回復処理装置7は、吸引回復機構7A、7Bと、これを昇降させる不図示の昇降機構と、ワイピング回復装置9と、インク受容箱8と、を備えている。吸引回復機構7A、7Bは、回復処理の一形態である吸引回復処理を行う。ここで、吸引回復処理とは、記録ヘッド3に形成された複数のノズルから強制的にインクを吸引することによって、ノズル内のインクを吐出に適した状態のインクに置き換える処理をいう。具体的には、この吸引回復機構7A、7Bは、吐出口形成面3b(図2参照)をキャップで覆うと共に、そのキャップに連通する不図示のポンプによってキャップ内に負圧を発生させ、その負圧によって吐出口3aからインクを強制的に吸引する。なお、各吸引回復機構7A、7Bは、それぞれが3つずつのノズル列群に対して吸引回復処理を行う。
【0013】
また、ワイピング回復装置(ワイピング回復手段)9は、端部位置(例えば、記録ヘッドのホームポジション)において記録ヘッド3と対向可能な位置に設けられている。また、ワイピング回復機構9は、記録ヘッドの吐出口形成面3bをワイピング部材(ブレード、図示せず)を用いて払拭するワイピング機構(ワイピング手段)と、このブレード10の稼動部とを備えている。
【0014】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るキャリッジ2に搭載された記録ヘッド3の吐出口形成面と記録媒体10間における気流と反応液のミストの流れを図示したものである。図3では、記録ヘッド3の反応液吐出口列3cと色材含有インク吐出口列3dの間の雰囲気を排出または吸引しなかった場合における気流と反応液のミストの流れを示している。画像形成時に反応液を使用する場合は、反応液を吐出した後に色材を有するインクを吐出するため、キャリッジ2の移動方向に対し、前方の記録ヘッド端部に設けた反応液吐出口列3cから反応液を吐出する。
【0015】
図3を用いて、反応液吐出口列3cと色材含有インク吐出口列3dの間の雰囲気を排出または吸引しなかった場合に起こる弊害について説明する。
【0016】
記録中は、吐出口形成面15と記録媒体10との間に、インクの吐出に伴う自己気流12と、キャリッジ2の移動により吐出口形成面15と記録媒体10との間に流入する流入気流13が生じる。キャリッジ移動方向(矢印X1方向)に対し、前方の記録ヘッド端部に設けた反応液吐出口列3cから生じた反応液ミストは、流入気流13によって、キャリッジ移動方向に対し後方に流される。そして、反応液ミストの一部はキャリッジ移動方向に対して後方に位置する色材含有インク吐出口列3dからのインク滴の吐出に伴って生じる自己気流12によって巻き上げられ、吐出口形成面15に付着する。また、色材含有インクのミストの一部も自己気流12によって吐出口形成面15に付着する。したがって、吐出口形成面15の色材インク吐出口列3d近傍には、反応液のミストと色材含有インクのミストの両方が付着・反応し、凝集物が固着物14として吐出口形成面15に付着する。このように、反応液吐出口列3cと色材含有インク吐出口列3dの間の雰囲気を排出または吸引しなかった場合には、色材含有吐出口形成面15には固着物14が付着し、画像不良が引き起こされる虞がある。
【0017】
図4は、本実施形態の記録装置における、反応液吐出口列3cと色材含有インク吐出口列3dの間の雰囲気を排出または吸引するためのファン20を設けたキャリッジ2を示した模式的断面図である。ファン20と吐出口形成面15とをつなぐ流路3fから、反応液吐出口列3cと色材含有インク吐出口列3dの間の雰囲気を吸引することで、キャリッジ移動方向に対し前方の反応液吐出口列から生じた反応液ミストを回収することができる。そのため、キャリッジ移動方向に対して後方の吐出口形成面15に反応液ミストが付着する量を低減し固着物14の発生を抑制できる。また、雰囲気を排出した時とは逆にファン20を回して、流路3fから気流を排出することで、キャリッジ移動方向に対し前方の反応液吐出口列から生じた反応液ミストの、後方の色材インク吐出口列方向への流れを遮断することができる。したがって、流路3fから気流を排出することによっても、キャリッジ移動方向に対し後方の吐出口形成面15に反応液ミストが付着する量を低減し固着物14の発生を抑制することができる。
【0018】
図5は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の記録装置本体1に搭載される制御系(制御手段)の構成を示すブロック図である。主制御部100は演算、制御、判別、設定などの処理動作を実行するCPU101と、このCPU101によって実行すべき制御プログラム等を格納するROM102と、を備えている。さらに主制御部100は、インクの吐出/非吐出を表す2値の記録データを格納するバッファおよびCPU101による処理のワークエリア等として用いられるRAM103と、入出力ポート104などを備えている。
【0019】
入出力ポート104には、前述の搬送ユニットにおける搬送モータ(LFモータ)112、キャリッジモータ(CRモータ)113、記録ヘッド3、回復処理装置7、ファンモータ119等の各駆動回路105,106,107,109,118が接続されている。ここで、ファンモータ119は反応液吐出口列と色材を含んだインクの吐出口列間の流路における気流を制御するファン20を駆動するモータである。さらに、入出力ポート104には、記録ヘッドの温度を検出するヘッド温度センサ(ヘッド温度検出手段)114やキャリッジ2に固定されたエンコーダセンサ110などをはじめとするその他のセンサ類が接続されている。また、主制御部100はインターフェース回路111を介してホストコンピュータ116に接続されている。
【0020】
吐出数カウンタ115は、記録ヘッドから吐出されるインク滴の数をカウントする吐出数カウンタである。この吐出数カウンタ115は、RAM103内のバッファに展開された2値の記録データのうち、インクの吐出を表するデータ(吐出データ)の数を記録ヘッド毎にカウントすることによってインク吐出数をカウントする。
【0021】
走査領域カウンタ117は、記録ヘッド3が走査する領域のサイズを記録するカウンタであり、RAM103内のバッファに展開された2値の記録データから、走査領域の大きさ(100%のドット数)をカウントする。この走査領域カウンタ117で、吐出数カウントを除することで、所定領域での記録デューティを得ることができる。
【0022】
主制御部100は、吐出数カウントや吐出数カウントと走査領域カウントから得られる記録デューティの値によって、駆動回路118を介してファンモータ119を駆動するパルス幅を変調させることによって、ファン20の回転数を制御する。
【0023】
図6は、本実施形態における、ファン20の駆動により各流路3f(3f1、3f2)に生じさせる気流を示した模式図である。各流路3f(3f1、3f2)から反応液吐出口列3cと色材含有インク吐出口列3dの間の雰囲気を吸引する。キャリッジ移動方向に対して前方の反応液吐出口列から生じ、吐出口形成面15と記録媒体との間への流入気流によって後方に流れる反応液ミストを流路3f1および3f2で吸引によって回収する。反応液ミストを回収することによって、図3に示したように、色材を含んだインクの吐出口列付近に流れた反応液ミストが巻き上げられて、吐出口形成面15に付着することを抑制することができる。また、キャリッジ2がホームポジションHP側からバックポジションBP側へ移動する際における後方の流路3f2で、キャリッジ移動方向における後方に流れる色材を含んだインクミストを回収する。これによって、色材を含んだインクミストが後方の反応液吐出口近傍の吐出口形成面15に付着することを防ぐことができる。図6では、各流路から吸引する例を示したが、各流路から雰囲気を排出することによっても、吐出口形成面15と記録媒体との間への流入気流を遮ることができ、吸引と同様の効果を得ることができる。
【0024】
なお、本実施形態では吐出口形成面に2個の流路を設けているが、これに限定するものではなく、複数個の流路でもよい。
【0025】
このように、吐出口形成面に形成された流路を介して、ファンによってミストを回収、排出することで、装置を大型化することなく、高記録品位の記録を実現することができるインクジェット記録装置を実現することができた。
【0026】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0027】
図7は、本実施形態の記録装置における、反応液吐出口列3cと色材含有インク吐出口列3dの間の雰囲気を排出または吸引するためのファン20を2個設けたキャリッジ2を示した模式的断面図である。本実施形態では、流路3f1に対応したファン20Aと流路3f2に対応したファン20Bをそれぞれ設け、独立に制御することができる構成になっている。画像形成時に反応液を使用する場合は、反応液を吐出した後に色材を有するインクを吐出するため、キャリッジ移動方向に対し、前方の記録ヘッド端部に設けた反応液吐出口列から反応液を吐出する。そのため、往復動作するキャリッジの移動方向に対して、キャリッジ移動方向前方に位置する流路と後方に位置する流路の気流制御を切り替えることも容易に考えられる。その場合には、2つの流路3f1、3f2で気流を独立に制御できる本実施形態の構成が有効である。
【0028】
図8は、本実施形態における、ファン20A、20Bの駆動により各流路3fに生じさせる気流を示した模式図である。本実施形態では、キャリッジ2の移動方向によってファン20A、20Bの制御を切り替え、キャリッジ移動方向に対して前方の流路から、反応液吐出口列3cと色材含有インク吐出口列3dの間の雰囲気を吸引する。画像形成時に反応液を使用する場合は、反応液を吐出した後に色材を有するインクを吐出するため、キャリッジ移動方向に対して、前方に位置する反応液吐出口列から反応液を吐出し、後方の反応液吐出口列からは吐出しない。図3で示した通り、吐出口からの吐出に伴って発生する上昇気流により、ミストが舞い上げられて吐出口形成面15に付着するため、吐出をしていない吐出口列付近にはあまりミストが付着することはない。したがって、キャリッジ2がホームポジションHP側からバックポジションBP側へ移動する際における後方の反応液吐出口列付近に付着するミストは少ない。従って、キャリッジ移動方向に対して前方に位置する流路3f1からのみ吸引を行えばよい。また、キャリッジ2がバックポジションBP側からホームポジションHP側へ移動する際は、逆にキャリッジ移動方向に対して前方に位置する流路3f2からのみ吸引を行えばよい。
【0029】
このような制御を行う場合においては、流路に流れる気流の流量は、前方の反応液吐出口列から生じるミストの発生量に応じて制御するのが適当である。本実施形態では、ミスト発生量に関係する量として、反応液の単位面積当たりへの吐出率である記録デューティを用い、反応液の記録デューティが大きいほど、ファン20A、20Bの駆動パルスデューティを大きくしている。
【0030】
図9は、本実施形態における、ファンモータ119を駆動するパルスを決定する際の流れを表すフローチャートである。このファンモータ駆動条件決定シーケンスが開始されると、主制御部100のCPU101は、ステップS201で、吐出数カウンタ115から反応液の吐出数を取得し、その後ステップS202で、走査領域カウンタ117から走査領域の値を取得する。次に、ステップS203においてステップS201およびステップS202で取得した反応液の吐出数と走査領域カウンタの値から平均記録デューティを演算する。そしてステップS204で、平均記録デューティから、ROM102に記録されたファンモータ駆動パルステーブルに基づいて、ファンモータを駆動するパルスを決定する。その後、ステップS205において、ステップS204で決定したパルスでファンモータを駆動させる。そして、ステップS206でカウンタをリセットさせて終了となる。
【0031】
図10は、ファンモータ駆動パルステーブルの一例である。反応液の記録デューティが大きく、記録ヘッド吐出口形成面15においてミストが反応・固着しやすい状況ほど、ファン20の駆動パルスデューティを上げ、回転数を増やすことで、反応液吐出口列と色材を含んだインク吐出口列間の気流を強くする。逆に、反応液の記録デューティが小さく、記録ヘッド吐出口形成面15においてミストが反応・固着しにくい状況では、ファン20の駆動パルスデューティを下げ、回転数を減らすことで、反応液吐出口列と色材を含んだインク吐出口列間の気流を弱くする。このように制御することで、線を記録する際のような着弾精度が要求される場合(低デューティ)には、ミストを吸引または排出するための気流の流れが弱くなり、着弾の乱れへの影響を小さくする一方で、吐出口形成面における固着物の発生を抑制できる。さらに、ミストが反応・固着しやすい状況(高デューティ)では気流の流れを強くして吐出口形成面における固着物の発生を抑制することができる。
【0032】
このように、吐出口形成面に形成された流路を介して、2個のファンによってミストを回収、排出することで、装置を大型化することなく、高記録品位の記録を実現することができるインクジェット記録装置を実現するこができた。
【0033】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0034】
図11は、本実施形態における、ファン20の駆動により各流路3f1、3f2に生じさせる気流を示した模式図である。本実施形態も第2の実施形態と同様に2個のファン20A、20B(図7参照)が設けられており、これら2個のファン20A、20Bによって流路3f1、3f2から吸引および排出を行う構成になっている。本実施形態では、キャリッジ移動方向に対して前方の流路だけではなく、後方の流路からも吸引を行っているが、前方の流路と後方の流路とでは吸引時の吸引量が異なる。後方の反応インク吐出口列からは反応液を吐出せず、巻き上げ気流が生じないため、吐出口形成面15へのミストの付着は比較的少ない。従って、第2の実施形態のように、前方の流路のみを用いることも可能ではある。しかしながら、ビジネス用途向けプリンタなど、より高い信頼性が必要な場合は、後方の反応液吐出口列(吐出はしていない)付近へのミストの付着を更に低減するため、後方の流路からの吸引も行う方が望ましい。ただし、後方の反応液吐出口列からは吐出しておらず、巻き上げ気流が発生しないため、後方の流路における吸引の流量は前方の流路における吸引の流量よりも小さくてかまわない。そこで、本実施形態では、キャリッジ2がホームポジションHP側からバックポジションBP側へ移動する際は、キャリッジ移動方向の前方の流路3f1での吸引の流量を大きくして、キャリッジ移動方向後方の流路3f2での吸引の流量を小さくしている。また逆に、キャリッジ2がバックポジションBP側からホームポジションHP側へ移動する際は、キャリッジ移動方向の前方の流路3f2での吸引の流量を大きくして、キャリッジ移動方向後方の流路3f1での吸引の流量を小さくしている。
【0035】
色材含有インク吐出口列付近の吐出口形成面15への固着量は、反応液と色材を含んだインクの総量が多いほど多くなると考えられる。そのため、本実施形態では、反応液記録デューティと色材を含んだインクの記録デューティの和が大きいほど、前方の流路における流量を大きくしている。また、後方の流路に関しては、後方の反応液吐出口列付近へ色材含有インクミストの付着を抑えるために、色材含有インクの記録デューティが大きいほど大きくしている。
【0036】
図12は、本実施形態におけるファンモータ駆動パルステーブルの一例である。キャリッジ移動方向の前方の流路に対応するファンがBP側のファンである場合にテーブル1を用いて、キャリッジ移動方向の前方の流路に対応するファンがHP側のファンである場合にテーブル2を用いる。反応液の吐出量は、色材含有インクの概ね40%程度であり、反応液の記録デューティと色材含有インク記録デューティの和は、色材含有インク記録デューティより常に大きい。したがって、記録デューティとファンを駆動するパルスのデューティを、図12に示したような関係にすることにより、前方の流路における流量は後方の流路における流量より常に大きくなる。
【0037】
図13は、本実施形態における、ファンモータ119を駆動するパルスを決定する際の流れを表すフローチャートである。まず、主制御部100のCPU101は、ステップS301で吐出数カウンタ115から色材含有インクと反応液の吐出数を受信する。その後、ステップS302で、走査領域カウンタ117から走査領域の値を受信する。次に、ステップS303で、反応液吐出数と色材含有インク吐出量、走査領域カウンタの値から平均記録デューティを演算する。そして、ステップS304で、キャリッジの移動方向(往方向が復方向か)を判断し、往方向(HP側からBP側への移動)の場合は、ステップS305に移行し、復方向(BP側からHP側への移動)の場合は、ステップS306に移行する。ステップS305、ステップS306では、ROM102に記録された、図12に一例を示したファンモータ駆動パルステーブルに基づいてファンモータを駆動するパルスを決定する。その後、ステップS307で、決定した駆動デューティでファンモータを駆動させる。そして、ステップS308でカウンタをリセットして終了する。
【0038】
なお、図11では、各流路から吸引する例を示したが、各流路から雰囲気を排出することによっても、吐出口形成面と記録媒体との間への流入気流を遮ることができ、吸引と同様の効果を得ることができる。
【0039】
このように、異なったパルスで駆動される2個のファンによって吐出口形成面に形成された流路を介してミストを回収、排出することで、装置を大型化することなく、高記録品位の記録を実現することができるインクジェット記録装置を実現することができた。
【符号の説明】
【0040】
2 キャリッジ
3 記録ヘッド
3f 流路
3f1 流路
3f2 流路
13 流入気流
15 吐出口形成面
20 ファン
20A ファン
20B ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材を含むインクを吐出する複数の吐出口が列を成したインク吐出口列と、反応液を吐出する複数の吐出口が列を成した反応液吐出口列と、が吐出口形成面に形成された記録ヘッドが移動しながら記録媒体に対して前記インクと前記反応液とを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、
前記インク吐出口列と前記反応液吐出口列との間に、流路が設けられており、該流路は前記記録ヘッドの吐出口形成面と前記記録媒体との間の雰囲気を吸引可能であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記反応液吐出口列は、前記インク吐出口列を挟んで、前記記録ヘッドの移動方向における前端部と後端部とに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
複数個の前記流路が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記流路における吸引はファンによって行われることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記流路は2個設けられており、前記各流路に対応して2個の前記ファンが設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記各流路における吸引時の吸引量は異なることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドの移動方向における前方に設けられた前記流路からのみ吸引を行うことを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記反応液の記録デューティが大きいほど、前記流路における流量が多くなることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記流路は吸引および排出が可能であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−121277(P2011−121277A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280737(P2009−280737)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】