説明

インクジェット記録装置

【課題】キャップによるノズル保護とジャム発生の抑制とを好適に両立させる。
【解決手段】インクジェット記録装置1は、記録ヘッド22〜25と、記録ヘッド22〜25のノズル面22a〜25aを覆う進出位置とノズル面22a〜25aを覆わずに記録ヘッド22〜25の用紙搬送方向に隣接する空間S2〜S5に位置する退避位置との間で移動可能なキャップ32〜35と、退避位置よりも用紙搬送空間S1側に位置して用紙搬送空間S1で搬送される用紙を案内し、キャップ32〜35の移動経路の少なくとも一部を閉じる閉鎖位置とキャップ32〜35の移動経路を開ける開放位置との間で開閉動作可能なガイド42〜45とを備え、ガイド42〜45は、キャップ32〜35が進出位置と退避位置との間を移動するときに開放位置に位置し、キャップ32〜35が退避位置にあるときに閉鎖位置に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙搬送空間に向けてインクを吐出するノズルが形成された記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、用紙に向けてインクを吐出するノズルが形成された記録ヘッドをインク色(ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー)ごとに設け、それら複数の記録ヘッドを用紙搬送方向に並べて配置したインクジェットプリンタが知られている(例えば、特許文献1参照)。このインクジェットプリンタでは、記録ヘッドごとにノズル面を覆うためのキャップが設けられており、記録動作が行われない休止状態では各キャップが各記録ヘッドのノズル面を覆う位置まで移動することにより、ノズルを乾燥や異物付着等から保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−109403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらのキャップは、ノズル面を覆わないときには隣り合う記録ヘッドの間のスペースに退避するよう構成されており、記録ヘッドが記録動作を行っている際にカールした用紙が搬送された場合には、記録ヘッドとキャップの隙間に用紙が入り込んでジャム(紙詰まり)が起こる可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、インクジェット記録装置において、キャップによるノズル保護とジャム発生の抑制とを好適に両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係るインクジェット記録装置は、用紙搬送空間に向けてインクを吐出するノズルが形成されたノズル面を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドの前記ノズル面を覆う進出位置と、前記ノズル面を覆わずに前記記録ヘッドの用紙搬送方向に隣接する空間に位置する退避位置との間で移動可能なキャップと、前記退避位置よりも用紙搬送空間側に位置して用紙搬送空間で搬送される用紙を案内し、前記キャップの移動経路の少なくとも一部を閉じる閉鎖位置と、前記キャップの移動経路を開ける開放位置との間で開閉動作可能なガイドと、を備え、前記ガイドは、前記キャップが前記進出位置と前記退避位置との間を移動するときに前記開放位置に位置し、前記キャップが前記退避位置にあるときに前記閉鎖位置に位置するよう構成されている。
【0007】
前記構成によれば、ガイドを開放位置となるように開動作させてキャップを退避位置から進出位置に移動させることで、記録ヘッドのノズルを乾燥や異物付着等から保護することができる。そして、キャップが退避位置にあるときにガイドが閉鎖位置に位置することで、記録ヘッドによる記録動作が行われているときに、用紙がキャップの退避した空間に入り込んでジャムが発生するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、インクジェット記録装置において、キャップによるノズル保護とジャム発生の抑制とを好適に両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置を示す側面図である。
【図2】図1に示すインクジェット記録装置の要部拡大図である。
【図3】図1に示すインクジェット記録装置のブロック図である。
【図4】図1に示すインクジェット記録装置の制御フローチャートである。
【図5】図1に示すインクジェット記録装置のモノクロ印刷時の動作を説明する図面である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置の図2相当の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る第1実施形態を図面を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置1を示す側面図である。図1に示すように、インクジェット記録装置1は、用紙を供給する給紙装置2と、給紙装置2から供給された用紙を搬送する搬送装置3と、搬送装置3で搬送されている用紙に対してブラックインク滴を吐出するための上流ユニット4と、上流ユニット4の下流側において搬送装置3で搬送されている用紙に対してカラーインク滴を吐出するための下流ユニット5とを備えている。なお、上流ユニット4及び下流ユニット5は、夫々独立して昇降可能に構成されている。
【0012】
給紙装置2は、インクジェット記録装置1の底側に配置された給紙トレイ7と、給紙トレイ7に積載された用紙のうち最上層のものを搬送路9へ供給する給紙駆動ローラ8とを備えている。搬送路9は、給紙トレイ7の片側から出て上方へ向かった後に反対側へ向かうようにUターンし、上流ユニット4及び下流ユニット5の下方を通過し、上方の排紙空間(図示せず)へと更にUターンしている。
【0013】
搬送装置3は、給紙装置2から送り出された用紙を上流ユニット4の下方に導くための搬送ローラ11,12と、搬送ローラ11,12により上流ユニット4の下方に搬送された用紙を粘着保持しながら搬送するベルト搬送装置15とを備えている。ベルト搬送装置15は、一対のベルトローラ16,17の間に無端ベルト18を巻き回すことで構成されている。そして、下方に配置されたベルト搬送装置15と、上方に配置された上流ユニット4及び下流ユニット5との間で形成される空間が、用紙への印刷動作を行うための用紙搬送空間S1である。
【0014】
上流ユニット4は、用紙搬送空間S1に向けてブラックインクを吐出するブラック記録ヘッド22(第1記録ヘッド)を備えている。下流ユニット5は、用紙搬送空間S1に向けてシアンインクを吐出するシアン記録ヘッド23(第2記録ヘッド)と、用紙搬送空間S1に向けてマゼンダインクを吐出するマゼンダ記録ヘッド24と、用紙搬送空間S1に向けてイエローインクを吐出するイエロー記録ヘッド25とを備えている。
【0015】
これら4つのヘッド22〜25は、用紙搬送空間S1における用紙搬送方向と直交した方向に長尺な直方体形状を呈して各ユニット4,5に固定保持されたラインヘッドであり、用紙搬送方向に沿って互いに隙間S3〜S5をあけて並設されている。つまり、このインクジェット記録装置1は、シリアル式プリンタと比較して高速印刷が可能なライン式プリンタである。各ヘッド22〜25の下面は、インク滴を下方に吐出する多数のノズルが形成されたノズル面22a〜25aである。各ヘッド22〜25には、図示しないタンクからインクがそれぞれ供給され、図示しない公知のアクチュエータ(例えば、ピエゾ素子)によりノズル毎に吐出圧が付与される。
【0016】
上流ユニット4には、ブラック記録ヘッド22のノズル面22aを覆うためのブラック用キャップ32が設けられている(以下、符号32を「上流ユニット用キャップ」とも言う)。下流ユニット5には、シアン記録ヘッド23のノズル面23aを覆うためのシアン用キャップ33と、マゼンダ記録ヘッド24のノズル面24aを覆うためのマゼンダ用キャップ34と、イエロー記録ヘッド25のノズル面25aを覆うためのイエロー用キャップ35とが設けられている(以下、符号33〜35を「下流ユニット用キャップ」とも言う)。
【0017】
各キャップ32〜35は、用紙搬送方向と直交した方向に長尺な略板形状を呈し、各ヘッド22〜25のノズル面22a〜25aを覆うことができるように構成されている。各キャップ32〜35は、各ヘッド22〜25のノズル面22a〜25aを覆う進出位置と、ノズル面22a〜25aを覆わずに各ヘッド22〜25の用紙搬送方向の上流側に隣接する空間S2〜S5(即ち、空間S3〜S5は各ヘッド22〜25の間に形成される隙間)に位置する退避位置との間で移動するように構成されている(図1は退避位置にあるキャップ32〜35を示している)。また、下流ユニット用キャップ33〜35の各々は互いに連動するが、上流ユニット用キャップ32と下流ユニット用キャップ33〜35とは互いに独立して動作する。
【0018】
上流ユニット4及び下流ユニット5には、退避位置にあるキャップ32〜35よりも用紙搬送空間S1側に位置して用紙搬送空間S1で搬送される用紙を案内するガイド42〜45がそれぞれ設けられている。各ガイド42〜45は、用紙搬送方向と直交した方向に長尺な略板形状を呈し、用紙搬送空間S1から見て隣接するヘッド22〜25の間の隙間S2〜S5を塞ぐように配置されている。各ガイド42〜45は、キャップ32〜35が退避位置にある状態では隣接するヘッド22〜25のノズル面22a〜25aと略同一平面上に配置されている。
【0019】
図2は図1に示すインクジェット記録装置1の要部拡大図である。各ヘッド22〜25に夫々対応する各キャップ32〜35及び各ガイド42〜45の個々の構成は、互いに略同一であるため、以下は1つのヘッド23に対応するものについて代表して説明する。図2に示すように、キャップ33は、ノズル面23aを覆う樹脂等からなるキャップ本体51と、キャップ本体51に立設してノズル全体を囲繞するようにノズル面23aに当接する弾性材からなるシール部材52とを有している(図2は進出位置にあるキャップ33を示している)。キャップ本体51は、ノズル面23aに対向する基部51aと、基部51aのガイド43に近接する側の上流端部に設けられて用紙搬送空間S1から離れる向きに傾斜する傾斜壁部51bと、基部51aから隙間S3に向けて突出するアーム部51cと、アーム部51cからヘッド長手方向(図2紙面奥方向)に向けて突出した軸部51dとを有している。
【0020】
ヘッド23に隣接する隙間S3には、法線がヘッド長手方向を向くように板状の軌道形成部材57が配置されている。軌道形成部材57には、キャップ33の軸部51dが案内される案内溝57aが形成されている。つまり、案内溝57aに挿入された軸部51dが案内溝57aに沿って移動することで、キャップ33が所定の軌道で移動可能となる。なお、移動中のキャップ33がヘッド23に干渉しない姿勢となるために、キャップ33は図示しない別の軸部も備えており、その軸部が図示しない別の案内溝に案内されるよう構成されている。
【0021】
また、軌道形成部材57に隣接してラック58が昇降可能に配置されている。ラック58には、用紙搬送方向に長軸を有する長孔58aが形成されており、その長孔58aに軸部51dが挿入されている。なお、長孔58aの用紙搬送方向の長さは、案内溝57aを下方に投影したときの用紙搬送方向の長さよりも若干長く形成されている。ラック58の側縁部には上下方向に延びるギヤ部58bが形成されており、そのギヤ部58bにピニオン59が噛合している。ピニオン59は下流ユニット用キャップモータ66(図3参照)により正逆回転駆動される。例えば、ピニオン59が図2の反時計回りに回転した場合には、ラック58が上昇して長孔58aに挿入された軸部51dが案内溝57aに沿って上昇し、キャップ33が進出位置から退避位置へと所定の軌道で移動する(ピニオン59が図2の時計回りに回転した場合には逆の動作となる)。
【0022】
ガイド43は、樹脂等からなる板状のガイド本体54と、ガイド本体54の用紙搬送方向の上流端に設けられたヘッド長手方向に延びる支軸55と、ガイド本体54を閉鎖位置に向けて付勢するバネ56とを有している。即ち、ガイド本体54は、隣接するヘッド22,23のノズル面22a,23aと面一になる位置に向けて付勢されている。また、キャップ33が進出位置にあるときには、キャップ本体51の傾斜壁部51bの下にガイド本体54の下流端部54aが当接することで、ガイド43のキャップ33に近接する側の端部54aがキャップ33の下面にラップしている。傾斜壁部51bは、上流側に向けて徐々に上方に傾斜しており、キャップ33はガイド43を押し開いて進出位置から退避位置にスムーズに戻ることができる。また、このキャップ33が進出位置にあるときには、ガイド43の下面は下流側に向けて下方に傾斜した姿勢となる。つまり、キャップ33が進出位置にあるときのガイド43のキャップ33に近接する側の下流端部54aの位置は、キャップ33が退避位置にあるときのガイド43の下流端部54aの位置よりも下方(用紙搬送空間S1側)に配置される。
【0023】
図3は図1に示すインクジェット記録装置1のブロック図である。図3に示すように、インクジェット記録装置1は、印刷情報入力装置61、コントローラ62、各ヘッド22〜25、上流ユニット昇降モータ63、下流ユニット昇降モータ64、上流ユニット用キャップモータ65及び下流ユニット用キャップモータ66を備えている。印刷情報入力装置61は、画像情報やモノクロ/カラー情報などの印刷情報が入力されるものである。コントローラ62は、印刷情報入力装置61からの入力に応じて各ヘッド22〜25や各モータ63〜66を制御する。上流ユニット昇降モータ63及び下流ユニット昇降モータ64は、上流ユニット4及び下流ユニット5をそれぞれ昇降動作させる。上流ユニット用キャップモータ65及び下流ユニット用キャップモータ66は、上流ユニット4及び下流ユニット5のキャップ32〜35をそれぞれ進出位置と退避位置との間で動作させる。
【0024】
コントローラ62は、モノクロ/カラー判定部71、印刷ジョブ開始/終了判定部72及び制御部73を有している。モノクロ/カラー判定部71は、印刷情報入力装置61から入力された印刷情報に基づいて、これから開始する印刷ジョブの画像がモノクロであるのかカラーであるのかを判定する。印刷ジョブ開始/終了判定部72は、印刷情報入力装置61から入力された印刷情報や制御部73から受信する現在の印刷状況などに基づいて、印刷ジョブの開始と終了を判定する。制御部73は、それら判定部71,72からの情報に応じて各モータ63〜66を制御する。
【0025】
図4は図1に示すインクジェット記録装置1の制御フローチャートである。図1乃至4に示すように、コントローラ62は、印刷ジョブ開始/終了判定部72により印刷ジョブが開始されるか否かを判定する(ステップS1)。印刷ジョブが開始されないと判定された場合には、ステップS1を繰り返す。一方、印刷ジョブが開始されると判定された場合には、コントローラ62は、モノクロ/カラー判定部71によりその印刷ジョブがカラー印刷であるかモノクロ印刷であるかを判定する(ステップS2)。
【0026】
カラー印刷であると判定された場合には、全てのキャップ32〜35を退避位置にするように、上流ユニット用キャップモータ65及び下流ユニット用キャップモータ66を制御する(ステップS3)。その際、コントローラ62は、各キャップ32〜35が退避位置に配置された状態で、上流ユニット昇降モータ63及び下流ユニット昇降モータ64により上流ユニット4及び下流ユニット5をベルト搬送装置15に近接した降下位置に位置決めする。そして、その状態から、コントローラ62は、各ヘッド22〜25を制御してカラー印刷を実行する(ステップS5)。
【0027】
一方、モノクロ印刷であると判定された場合には、上流ユニット用キャップ32を退避位置とし且つ下流ユニット用キャップ33〜35を進出位置とするように、上流ユニット用キャップモータ65及び下流ユニット用キャップモータ66を制御する(ステップS4)。以下、このモノクロ印刷時の動作を詳説する。
【0028】
図5は図1に示すインクジェット記録装置1のモノクロ印刷時の動作を説明する図面である。なお、図5はキャップ32〜35が退避位置にあり且つ各ユニット4,5が降下位置にある状態を初期状態として説明している。図5(a)に示すように、キャップ32〜35が退避位置にあるときには、ガイド42〜45はキャップ32〜35の移動経路を完全に閉じる閉鎖位置に位置する。図5(b)に示すように、これから開始される印刷ジョブがモノクロ印刷であると判定された場合には、コントローラ62は、下流ユニット昇降モータ64により下流ユニット5をベルト搬送装置15から離反するように上昇位置に移動させる。
【0029】
次いで、図5(c)に示すように、コントローラ62は、下流ユニット用キャップモータ66により下流ユニット用キャップ33〜35を退避位置から進出位置に移動させる。その際、下流ユニット5の各ガイド43〜45は、各キャップ33〜35の移動経路を閉じる(塞ぐ)ように配置されているが、各キャップ33〜35がバネ56の弾性力に抗して各ガイド43〜45を下方に押し開く。つまり、ガイド43〜45は、各キャップ33〜35が退避位置と進出位置との間を移動するときに、その移動経路を開ける開放位置に移動させられることとなる。
【0030】
そして、図5(d)に示すように、各キャップ33〜35が各ヘッド23〜25のノズル面23a〜25aを覆う進出位置に到達すると(図2も参照)、各ガイド43〜45の下流端部が各キャップ33〜35の傾斜壁部の下にラップして各ガイド43〜45が若干傾斜した状態となるので、各ガイド43〜45はキャップ33〜35の移動経路の一部を閉じるような閉鎖位置に位置する。また、このように上流ユニット用キャップ32が退避位置にあり且つ下流ユニット用キャップ33〜35が進出状態にあるときは、下流ユニット用キャップ33〜35の下面が上流ユニット4のヘッド22のノズル面22aよりも上方に位置している。但し、下流ユニット用キャップ33〜35の下面が上流ユニット4のヘッド22のノズル面22aと略同一平面上にあってもよい。そして、その状態から、コントローラ62は、下流ユニット5のヘッド23〜25を駆動させることなく、上流ユニット4のヘッド22を駆動してモノクロ印刷を実行する(ステップS5)。
【0031】
図4に戻り、ステップS5の後に、コントローラ62は、印刷ジョブ開始/終了判定部72により印刷ジョブが終了したか否かを判定する。印刷ジョブが終了していない場合には、ステップS2に戻る。一方、印刷ジョブが終了した場合には、所定時間が経過した後に、全てのキャップ32〜35を進出位置とするように、上流ユニット用キャップモータ65及び下流ユニット用キャップモータ66を制御する(ステップS7)。その際、コントローラ62は、上流ユニット昇降モータ63及び下流ユニット昇降モータ64により上流ユニット4及び下流ユニット5をベルト搬送装置15から離反した上昇位置に位置決めしてからキャップ32〜35を進出位置に移動させる。
【0032】
以上に説明した構成によれば、ガイド42〜45を開放位置となるように開動作させてキャップ32〜35を退避位置から進出位置に移動させることで、ヘッド22〜25のノズルを乾燥や異物付着等から保護することができる。そして、キャップ32〜35が退避位置にあるときにガイド42〜45が閉鎖位置に位置することで、ヘッド22〜25による吐出動作が行われているときに、用紙がキャップ32〜35の退避した空間S2〜S5に入り込んでジャムが発生するのを防止することができる。さらに、上流ユニット用キャップ32が退避位置にあり且つ下流ユニット用キャップ33〜35が進出位置にあるときにも、全てのガイド42〜45が閉鎖位置に位置するので、モノクロ印刷が行われる場合にも、下流ユニット用キャップ33〜35が退避するための空間S3〜S5に用紙が入り込んでジャムが発生するのを防止することができる。
【0033】
また、図5(d)に示す状態では、カラー印刷を行うためユニット5の下端位置がモノクロ印刷を行うためのユニット4の下端位置よりも上方にあり、その境界に段差が生じているが、上方に位置するユニット5を下流側に配置したため、当該段差に用紙の先端が引っ掛かることを抑制することができる。さらに、モノクロ印刷時(即ち、下流ユニット用キャップ33〜35が進出位置にあるとき)における下流ユニット5のガイド43〜45の下流端部の位置は、下流ユニット用キャップ33〜35が退避位置にあるときのガイド43〜45の下流端部の位置よりも下方(用紙搬送空間S1側)に配置されるので、ガイド43〜45の下面とキャップ33〜35の下面との間での段差の発生が抑制され、ジャム発生の防止に寄与することができる。
【0034】
以上より、複数のヘッド22〜25が用紙搬送方向に並設されたライン式のインクジェット記録装置1において、キャップ32〜35によるノズル保護とジャム発生の抑制とを好適に両立させることが可能となる。なお、本実施形態では、ガイド42〜45に開放位置から閉鎖位置に向かう弾性力を付与するためにバネ56を用いたが、バネ56等の付勢部材を設ける代わりにガイド自体をゴム等の弾性材により形成してもよい。また、本実施形態では、各ガイド42〜45は略板形状であるが、用紙が隙間S2〜S5に入り込まないように案内するものであれば、他の形状(例えば、網状等)であってもよい。
【0035】
(第2実施形態)
図6は本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置の図2相当の図面である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図6に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置は、ガイド143の動作をキャップ133の動作に連動させる連動機構180を備えている。この連動機構180は、キャップ133を移動させるための一方向運動をガイド143の開閉動作(往復運動)に変換する機構である。
【0036】
具体的には、キャップ133は、ノズル面23aを覆う樹脂等からなるキャップ本体151と、キャップ本体151に立設してノズル全体を囲繞するようにノズル面23aに当接する弾性材からなるシール部材52とを有している。キャップ本体151は、ノズル面23aに対向する基部151aと、基部151から隙間S3に向けて突出するアーム部151cと、アーム部151cからヘッド長手方向(図6紙面奥方向)に向けて突出した軸部151dとを有している。つまり、キャップ133は、第1実施形態のような傾斜壁部を有していない。
【0037】
ガイド143は、樹脂等からなる板状のガイド本体154と、ガイド本体154の用紙搬送方向の上流端に設けられたヘッド長手方向に延びる支軸55とを有しており、ガイド本体154の上面にはフック状の接続部154bが突設されている。ガイド143の接続部154bには、リンクシャフト182の一端部が回動自在に接続されている。リンクシャフト182の他端部は、ピニオン59と噛合する減速ギヤ181の側面に形成された接続部181aに回動自在に接続されている。これにより、キャップ133を進出位置と退避位置との間で移動させるためにピニオン59が一方向に回転すると、減速ギヤ181及びリンクシャフト182を介してガイド143が往復開閉運動するように連動する。つまり、ガイド143は、キャップ133の移動に伴ってキャップ133の移動経路を一旦開放するように閉鎖位置から開放位置へと動作し、キャップ133の通過後に閉鎖位置に戻る。
【0038】
連動機構180は、キャップ133が退避位置にあるときにガイド143の下面が隣接するノズル面23aと面一になるようにガイド143を水平配置し、キャップ133が進出位置にあるときにガイド143の下面が下流側に向けて下方に傾斜するよう傾斜配置するよう構成されている。つまり、キャップ133が進出位置にあるときのガイド143のキャップ133に近接する側の下流端部154aの上下方向位置は、キャップ133が退避位置にあるときのガイド143の下流端部154aの上下方向位置と略同一又はそれよりも下方(用紙搬送空間S1側)に配置される。これにより、ガイド143の下面とキャップ133の下面とで形成される仮想面が滑らかに形成され、ジャム発生防止に寄与することとなる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0039】
なお、前述した各実施形態では、ガイド43,143をバネ56又は連動機構180により動作させているが、ガイド動作用の専用モータを設けてもよい。また、前述した各実施形態では、ブラック記録ヘッド22の上流側の隣接空間、又は、各ヘッド23〜25の隙間にキャップ32〜35を退避させているが、ヘッド以外の部材(例えば、ローラや光源等)とヘッドとの間にキャップを退避させてもよい。また、前述した各実施形態では、コントローラ62による制御でキャップ及びガイドを動作させているが、手動で動作させるようにしてもよい。また、本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。前記各実施形態は互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明に係るインクジェット記録装置は、キャップによるノズル保護とジャム発生の抑制とを好適に両立させることができる優れた効果を有し、この効果の意義を発揮できるライン式インクジェットプリンタ等に広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0041】
1 インクジェット記録装置
22〜25 ヘッド
22a〜25a ノズル面
32〜35 キャップ
42〜45 ガイド
56 バネ
180 連動機構
S1 用紙搬送空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙搬送空間に向けてインクを吐出するノズルが形成されたノズル面を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの前記ノズル面を覆う進出位置と、前記ノズル面を覆わずに前記記録ヘッドの用紙搬送方向に隣接する空間に位置する退避位置との間で移動可能なキャップと、
前記退避位置よりも用紙搬送空間側に位置して用紙搬送空間で搬送される用紙を案内し、前記キャップの移動経路の少なくとも一部を閉じる閉鎖位置と、前記キャップの移動経路を開ける開放位置との間で開閉動作可能なガイドと、を備え、
前記ガイドは、前記キャップが前記進出位置と前記退避位置との間を移動するときに前記開放位置に位置し、前記キャップが前記退避位置にあるときに前記閉鎖位置に位置するよう構成されている、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドは、第1記録ヘッドと、前記第1記録ヘッドに対して用紙搬送方向に隙間をあけて並設された第2記録ヘッドとを含み、
前記キャップは、前記第1記録ヘッドに対応して設けられた第1キャップと、前記第2記録ヘッドに対応して設けられて前記第1キャップとは独立して動作可能な第2キャップとを含み、
前記ガイドは、前記第1キャップに対応して設けられた第1ガイドと、前記第2キャップに対応して設けられて前記第1ガイドとは独立して動作可能な第2ガイドとを含み、
前記第2ガイドは、前記第1キャップが退避位置にあり且つ前記第2キャップが前記進出位置にあるときに、前記閉鎖位置に位置するよう構成されている、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第2記録ヘッドは、前記第1記録ヘッドよりも用紙搬送方向の下流側に配置され、
前記第2キャップが前記退避位置にあるときには、前記第1記録ヘッドの前記ノズル面と前記第2記録ヘッドの前記ノズル面とが略同一平面上に位置し、
前記第2キャップが前記退避位置から前記進出位置に移動するときには、前記第2記録ヘッドが用紙搬送空間から離反する方向に移動し、
前記第2キャップが前記進出位置にあるときは、前記第2キャップの用紙搬送空間側の面が前記第1記録ヘッドの前記ノズル面と同一平面上又はそれよりも用紙搬送空間と離反する側に位置している、請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記キャップが前記進出位置にあるときに、前記ガイドの前記キャップに近接する側の端部が前記キャップの用紙搬送空間側の面にラップしている、請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記ガイドには、前記開放位置から前記閉鎖位置に向かう弾性力が付与されており、
前記キャップは、前記退避位置から前記進出位置に向けて移動する際に前記ガイドを押すことで、前記弾性力に抗して前記ガイドを前記閉鎖位置から前記開放位置に動作させる、請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記ガイドの動作を前記キャップの動作に連動させる連動機構をさらに備え、
前記連動機構は、前記キャップが前記退避位置と前記進出位置との間を移動するときに前記ガイドを前記閉鎖位置から前記開放位置に動作させる、請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−230394(P2011−230394A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103417(P2010−103417)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】