説明

インクジェット記録装置

【課題】記録ヘッドに異物を付着しにくくする。
【解決手段】インクジェットプリンタ1は、モノクロ用のインクジェットヘッド2aと、カラー用の3つのインクジェットヘッド2bと、これらヘッド2a,2bと対向する位置を含む搬送経路を規定する搬送機構40と、迂回搬送機構60とを含んでいる。搬送機構40は、第1ユニット41と第2ユニット51とを有している。迂回搬送機構60は、これら第1及び第2ユニット41,51間に合流され、用紙Pがヘッド2bと対向する位置
を迂回して搬送される迂回経路を規定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を印字するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックインクを吐出する4つのインクジェットヘッド、及び、これらヘッドのメンテナンスを行うメンテナンスユニットを含むインクジェットプリンタについて記載されている。このインクジェットプリンタにおいて、インクジェットヘッドのメンテナンスを行う場合は、まず、4つのインクジェットヘッドを印刷位置からヘッドメンテナンス位置に上昇させ、4つのインクジェットヘッドからトレイにインクをパージさせる。その後、各ヘッドの吐出面に付着したインクをワイパで払拭することで、インクジェットヘッドのメンテナンスが完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−213202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のインクジェットプリンタにおいては、モノクロ画像を用紙に印字する際においても、用紙がカラー用ヘッドと対向する位置を通過する。このため、印字に寄与しないカラー用ヘッドの吐出面(例えば、ノズル)近傍領域にも紙粉などの異物が舞い、当該ノズルに異物が付着しやすくなる。このため、すべてのヘッドをメンテナンスする必要が生じ、その結果、メンテナンスによるインクの消費量が抑制できないという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、記録ヘッドに異物を付着しにくくするインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出する吐出口をそれぞれ有する第1及び第2記録ヘッドと、前記第1記録ヘッドの前記吐出口と対向する第1位置と前記第2記録ヘッドの前記吐出口と対向する第2位置とを含む記録媒体の搬送経路を規定する搬送機構と、記録媒体が前記第2位置を迂回して搬送されるように、前記第1位置と前記第2位置との間において前記搬送経路につながる迂回経路を規定する迂回搬送機構とを備えている。
【0007】
これによると、記録媒体に第1記録ヘッドからのインク吐出のみで印字する場合に、記録媒体が第2位置を迂回して搬送されるように、迂回経路に記録媒体を通して搬送することが可能となる。そのため、第2記録ヘッドに異物(紙粉などの埃)が付着しにくくなる。この結果、第2記録ヘッドのメンテナンスによるインク消費を抑制することが可能となる。
【0008】
本発明において、前記搬送機構が、前記第2記録ヘッドと対向し前記第2位置に記録媒体を搬送する搬送ベルトを含んでいる。そして、前記第2記録ヘッドを取り囲むように前記第2記録ヘッドの周囲に配設された環状のキャップと、前記キャップが前記搬送ベルトに密着する位置と前記搬送ベルトから離隔する位置との間において前記キャップを移動させる移動機構とを有するキャップ機構をさらに備えていることが好ましい。これにより、キャップを搬送ベルトに密着する位置に移動させることで、第2記録ヘッドの吐出口に通じる外部空間を密閉空間とする(すなわち、キャップする)ことができる。そのため、吐出口近傍のインクが増粘するのを抑制することが可能となる。加えて、第2記録ヘッドをキャップする際に、第2記録ヘッドを移動させる必要がなくなる。このため、第2記録ヘッドを移動させるためのスペースを確保する必要がなくなって装置本体の小型化が図れるとともに、移動機構の構成が第2記録ヘッドを移動させる機構に比して構成が簡単になる。
【0009】
また、本発明において、キャップ、及び、前記第2記録ヘッドの前記吐出口が形成された面を内壁面の一部とする密閉空間が形成される位置と前記密閉空間が形成されない位置との間において前記キャップを移動させる移動機構を有するキャップ機構と、記録媒体を前記搬送経路及び前記迂回経路のいずれかに振り分ける振り分け手段とをさらに備えている。そして、前記振り分け手段が記録媒体を前記迂回経路に振り向けるときには、前記密閉空間が形成される位置に前記キャップが配置されることが好ましい。これにより、記録媒体を迂回経路に振り向けるときには、第2記録ヘッドの吐出口に通じる外部空間を密閉空間とすることが可能となる。そのため、第2記録ヘッドの吐出口近傍のインクが増粘するのを抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明において、前記搬送経路は、前記第1及び第2位置が記録媒体の搬送方向に沿って水平に並ぶように前記搬送機構によって規定されており、前記搬送機構よりも上流には、記録媒体の斜行を補正するレジローラが設けられていることが好ましい。これにより、第1及び第2位置が水平に並べられているので、第1位置と第2位置との間で斜行が起こりにくくなる。そのため、第1及び第2位置の間に別のレジローラを設ける必要がなくなる。
【0011】
また、本発明において、前記搬送機構又は前記迂回搬送機構によって搬送された記録媒体を反転させて、前記搬送機構へ再送する再送経路を規定する反転搬送機構をさらに備えている。そして、前記反転搬送機構及び前記迂回搬送機構は、互いの経路の一部を共用していることが好ましい。これにより、反転搬送機構と迂回搬送機構が設けられていても、両者の経路の一部を共通にすることで、装置構成が簡素化される。
【0012】
また、本発明において、前記第1記録ヘッドはブラックインクを吐出し、前記第2記録ヘッドはブラックインク以外のカラーインクを吐出することが好ましい。これにより、第1記録ヘッドからブラックインクを吐出し第2記録ヘッドからカラーインクを吐出させる構成となる。
【0013】
また、本発明において、前記第1及び第2記録ヘッドは、複数の前記吐出口が形成された吐出領域をそれぞれ有しており、前記吐出領域は、記録媒体の搬送方向に直交する方向に関して、記録媒体の長さ以上の長さを有していることが好ましい。これにより、第1及び第2記録ヘッドを搬送方向と直交する方向に移動させなくても、記録媒体に印字することが可能となる。
【0014】
また、本発明において、前記第1及び第2記録ヘッド、前記搬送機構、及び、前記迂回搬送機構が、一方向に配置されていることが好ましい。これにより、一方向に、第1及び第2記録ヘッド、搬送機構、及び、迂回搬送機構が配置された装置構成となる。
【0015】
また、本発明において、1以上の記録媒体を収容可能であり、記録媒体を前記搬送機構又は前記迂回搬送機構に供給する給紙部と、前記搬送機構及び前記迂回搬送機構の少なくともいずれか一方から搬送されてきた記録媒体を収容する排紙部とをさらに備えている。そして、前記排紙部、前記第1及び第2記録ヘッド、前記搬送機構、前記迂回搬送機構、及び、前記給紙部が、前記一方向に配置されていることが好ましい。これにより、一方向に、排紙部、第1及び第2記録ヘッド、搬送機構、迂回搬送機構及び給紙部が配置された装置構成となる。
【0016】
また、本発明において、前記第1記録ヘッドはブラックインクを吐出し、前記第2記録ヘッドはブラックインク以外のカラーインクを吐出し、前記第1及び第2記録ヘッドの吐出を回復させるメンテナンスを行うメンテナンスユニットと、前記メンテナンスユニットを制御する制御部とをさらに備えている。そして、前記制御部は、記録媒体にカラー画像を印字した後に前記第1及び第2記録ヘッドのメンテナンスを行うように前記メンテナンスユニットを制御し、記録媒体にモノクロ画像を印字した後に前記第1記録ヘッドのみのメンテナンスを行うように前記メンテナンスユニットを制御することが好ましい。これにより、記録媒体にモノクロ画像を印字した際に、第2記録ヘッドのメンテナンスによるインク消費が行われないので、インク消費をより確実に抑制することが可能となる。
【0017】
また、本発明において、前記搬送経路が、前記第1及び第2位置が記録媒体の搬送方向に沿って順に並ぶように前記搬送機構によって規定されており、前記迂回経路が、前記第1及び第2位置の間において前記搬送経路から分岐し前記第2位置よりも下流において前記搬送経路に合流していることが好ましい。
【0018】
また、本発明において、前記搬送機構から搬送されてきた記録媒体を収容する排紙部をさらに備えている。そして、前記搬送経路が、前記第1及び第2位置が記録媒体の搬送方向に沿って順に並ぶように前記搬送機構によって規定されており、前記迂回経路が、前記第1及び第2位置の間において前記搬送経路から分岐し前記排紙部に繋がっていることが好ましい。
【0019】
また、本発明において、1以上の記録媒体を収容可能であり、記録媒体を前記搬送機構に供給する給紙部をさらに備えている。そして、前記搬送経路が、前記第2及び第1位置が記録媒体の搬送方向に沿って順に並ぶように前記搬送機構によって規定されており、前記迂回経路が、前記給紙部から前記搬送経路の上流に繋がる経路から分岐し前記第1及び第2位置の間において前記搬送経路に合流していることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のインクジェット記録装置によると、記録媒体に第1記録ヘッドからのインク吐出のみで印字する場合に、記録媒体が第2位置を迂回して搬送されるように、迂回経路に記録媒体を通して搬送することが可能となる。そのため、第2記録ヘッドに異物(紙粉などの埃)が付着しにくくなる。この結果、第2記録ヘッドのメンテナンスによるインク消費を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図2】図1に示す4つのインクジェットヘッド、搬送機構及びメンテナンスユニットの平面図である。
【図3】図1に示すインクジェットプリンタの部分側面図であり、(a)はメンテナンスユニットによって4つのインクジェットヘッドがキャップされていない状態を示す状況図であり、(b)はメンテナンスユニットによって4つのインクジェットヘッドがキャップされた状態を示す状況図である。
【図4】図1に示すインクジェットプリンタの部分側面図であり、メンテナンスユニットによって下流側にある3つのインクジェットヘッドがキャップされた状態を示す状況図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるインクジェットプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図6】本発明の第3実施形態によるインクジェットプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタ1は、図1に示すように、直方体形状の筐体1aを有しており、上部に排紙部5が設けられている。筐体1a内は、上から順に2つの空間A、Bに区分されている。空間Aには、ブラックのインクを吐出するモノクロ用のインクジェットヘッド(第1記録ヘッド)2a、当該ヘッド2aと副走査方向に沿って並設され、マゼンタ、シアン、イエローのインクをそれぞれ吐出する3つのカラー用のインクジェットヘッド(第2記録ヘッド)2bが配置されている。そして、空間Aには、これらヘッド2a,2bの下方に、搬送機構40、迂回搬送機構60及び再送機構(反転搬送機構)70が順に配置されている。空間Bには、給紙ユニット(給紙部)10が配置されている。さらに、インクジェットプリンタ1には、これらの動作を制御する制御部100が含まれている。
【0024】
4つのインクジェットヘッド2a,2bは、図1及び図2に示すように、主走査方向に長尺な略直方体形状を有している。すなわち、このインクジェットプリンタ1は、ライン式プリンタである。なお、本実施形態において、副走査方向とは用紙Pの搬送方向Cと平行な方向であり、主走査方向とは副走査方向に直交する方向であって水平面に沿った方向である。
【0025】
インクジェットヘッド2は、圧力室を含むインク流路が形成された流路ユニットと、圧力室のインクに圧力を与えるアクチュエータとが貼り合わされた積層体(ともに図示せず)を有しており、底面はインクを吐出する吐出面3a,3bとなっている。吐出面3a,3bには、インクを吐出する複数の吐出口4aを包含する吐出領域4bが形成されている。吐出領域4bは、主走査方向に関して、用紙Pよりも若干長く形成されており、用紙Pの全面に画像を形成する(縁なし印字する)ことが可能となっている。
【0026】
インクジェットプリンタ1の内部には、印字経路と、再送経路と、モノクロ印字用としての迂回経路とが形成されている。印字経路は、図1に示す太矢印(黒矢印)に沿って用紙Pが搬送される経路であって、給紙ユニット10から搬送機構40によって規定された搬送経路を通って排紙部5に向う経路である。なお、ここでいう搬送経路とは、4つのインクジェットヘッド2a,2bと搬送機構40との間の経路であって副走査方向に沿って延在した略直線状の経路である。迂回経路は、迂回搬送機構60によって規定された経路であって、カラー用のインクジェットヘッド2bと対向する位置(第2位置)を迂回するように、搬送経路の略中間(第1位置と第2位置との間:後述する)から分岐し図1に示す太矢印(白抜き矢印)に沿って搬送経路の下流に合流する経路である。再送経路は、搬送経路及び迂回経路のいずれかに沿って搬送された用紙Pが図1に示す太矢印(ハッチングが施された矢印)に沿って用紙Pが搬送される経路である。
【0027】
給紙ユニット10は、積層された複数の用紙Pを収容可能な給紙カセット11と、給紙カセット11から用紙Pを送り出す給紙ローラ12と、制御部100に制御され給紙ローラ12を回転させる給紙モータ(不図示)とを有している。
【0028】
給紙ローラ12は、給紙カセット11内に収容された最も上方にある用紙Pと回転しながら接触することで当該用紙Pを送り出す。搬送機構40の図1中左方には、給紙カセット11から搬送機構40に向かって湾曲しながら延在する搬送ガイド15a,15bと、搬送機構40の上流であって両搬送ガイド15a,15b間に配置された送りローラ対16とが設けられている。これら搬送ガイド15a,15b及び送りローラ対16は、給紙ユニット10から搬送経路の上流につがる用紙搬送経路を規定している。なお、送りローラ対16の一方のローラは、制御部100に制御された送りモータ(不図示)によって回転し、他方のローラは一方のローラの回転に伴って回転する従動ローラである。さらに、この送りローラ対16は、搬送機構40に用紙Pを送る際に、当該用紙Pの斜行を補正するレジローラを兼ねている。
【0029】
この構成において、制御部100の制御により、給紙ローラ12及び送りローラ対16が回転することによって、用紙Pが搬送ガイド15aに送り出され、その後、当該用紙Pが送りローラ対16に挟持されながら斜行補正され、搬送ガイド15bを通して搬送機構40へと送られる。
【0030】
搬送機構40は、図1及び図2に示すように、インクジェットヘッド2aと対向する位置(第1位置)と、インクジェットヘッド2bと対向する位置(第2位置)とを含む上述の搬送経路を規定するとともに、この搬送経路において用紙Pを搬送方向C(図1中矢印C方向)に搬送する装置である。搬送機構40は、モノクロ用のインクジェットヘッド2aと対向する位置に配置された第1ユニット41と、カラー用のインクジェットヘッド2bと対向する位置に配置された第2ユニット51と、これらヘッド2a,2b間に配置され両ユニット41,51に跨る板状の搬送ガイド43と、搬送ガイド43と平行であって両ユニット41,51間に配置された搬送ガイド44とを有している。第1ユニット41及び第2ユニット51は、搬送経路におけるヘッド2aと対向する位置及びヘッド2bと対向する位置が搬送方向Cに沿って水平に並ぶように配置されている。なお、図2においては、図を分かり易くするために、搬送ガイド43を省略している。
【0031】
第1ユニット41は、2つのベルトローラ42,43と、両ローラ42,43間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト45と、搬送ベルト45の上側ループを内周側から支持する吸着プラテン46と、ベルトローラ43を回転させる搬送モータ(不図示)と、吸着プラテン46に電圧を印加する電源(不図示)とを有している。搬送モータ及び電源は、ともに制御部100に制御されている。
【0032】
吸着プラテン46は、搬送方向Cに沿って長尺な複数の長尺部が主走査方向に沿って交互に配置された一対の櫛歯電極(不図示)を有しており、これら電極に電圧が印加されることで搬送ベルト45上に用紙Pを吸着する装置である。
【0033】
第2ユニット51は、第1ユニット41と同様に、2つのベルトローラ52,53と、両ローラ52,53間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト55と、搬送ベルト55の上側ループを内周側から支持する吸着プラテン56と、ベルトローラ53を回転させる搬送モータ(不図示)と、吸着プラテン56に電圧を印加する電源(不図示)とを有している。これら搬送モータと電源も制御部100に制御されている。なお、吸着プラテン56も吸着プラテン46と同様な構成からなり、一対の櫛歯電極に電圧が印加されることで搬送ベルト55上に用紙Pを吸着する装置である。
【0034】
また、第2ユニット51の周囲には、迂回搬送機構60が設けられている。迂回搬送機構60は、搬送ガイド61と、搬送ガイド61の途中部位に設けられた搬送ローラ対62と、再送機構70の搬送ガイド77cの一部、搬送ガイド77a,77b及び搬送ローラ対74,75とで構成されており、上述の迂回経路を規定している。つまり、迂回搬送機構60と再送機構70は、一部の構成部材を共用している。換言すると、迂回搬送機構60と再送機構70は、迂回経路と再送経路の一部を共用している。そのため、これら機構の構成が簡素化される。搬送ガイド61は、搬送経路の両ユニット41,51間から図1中右斜め下に向かって延在し搬送ガイド77cに合流している。これら3つの搬送ローラ対62,74,75の一方のローラは、制御部100に制御された搬送モータ(不図示)によって回転し、他方のローラは一方のローラの回転に伴って回転する従動ローラである。
【0035】
搬送ベルト45を挟んでベルトローラ42と対向する位置には、図1及び図2に示すように押さえローラ6が配置されている。押さえローラ6は、給紙ユニット10から送り出された用紙Pを搬送ベルト45上の搬送面に押さえ付ける。また、押さえローラ6とインクジェットヘッド2aとの間には、用紙センサ8が設けられている。この用紙センサ8は、押さえローラ6によって押さえられた用紙Pの前端を検知する。
【0036】
この構成において、制御部100の制御により、ベルトローラ43,53を図1中時計回りに回転させることによって、搬送ベルト45,55が回転する。このとき、搬送ベルト45,55の回転に伴ってベルトローラ42,52及び押さえローラ6も回転する。また、このとき、制御部100の制御により、吸着プラテン46,56の一対の櫛歯電極に互いに異なる電位が印加されると、搬送ベルト45,55の用紙Pと対向する部分に正又は負の電荷が生じ、用紙Pの搬送ベルト45,55と対向する面に先の電荷とは極性の異なる電荷が誘起され、これらの電荷同士が引き合うことで用紙Pが搬送ベルト45,55に吸着される。こうして、給紙ユニット10から送り出された用紙Pが、まずは搬送ベルト45に吸着されながら搬送方向Cに搬送される。そして、搬送ガイド43,44間を通過して搬送ベルト55に吸着されながら搬送方向Cに搬送される。さらに、このとき、搬送ベルト45,55に吸着されつつ搬送されてきた用紙Pが各インクジェットヘッド2a,2bのすぐ下方を通過する際に、制御部100がインクジェットヘッド2a,2bを制御し、用紙Pに向けて各色のインクを吐出する。こうして、用紙Pに所望のカラー画像が形成される。
【0037】
一方、制御部100の制御によって、搬送ローラ対62,74,75が回転するとともに、後述の振り分け機構65が第1ユニット41によって搬送されてきた用紙Pを搬送ガイド61に案内するように動作すると、当該用紙Pが搬送経路の略中間から迂回経路に搬送される。なお、この場合は、用紙Pがカラー用のインクジェットヘッド2bと対向する位置を通過しないので、当該用紙Pには所望のモノクロ画像だけが形成される。
【0038】
図1に示すように、インクジェットヘッド2bの右方には、再送機構70の一部を構成する、搬送機構40から排紙部5に向かって湾曲しながら延在する搬送ガイド71a,71bと二組の送りローラ対72,73とが設けられている。なお、これらの部材71a,71b,72,73は再送経路及び印字経路の一部を規定している。また、各送りローラ対72,73の一方のローラは、制御部100によって制御された送りモータ(不図示)によって回転し、他方のローラは一方のローラの回転に伴って回転する従動ローラである。また、送りローラ対72近傍には、用紙センサ79が設けられている。この用紙センサ79は搬送機構40から搬送されてきた用紙Pの後端を検知する。
【0039】
この構成において、制御部100の制御により、各送りローラ対72,73が所定方向に回転することによって、搬送機構40及び迂回搬送機構60から搬送されてきた用紙Pが各送りローラ対72,73に挟持されながら搬送ガイド71a,71bを通されて図1中上方に送られ、その後、排紙部5に排紙される。このとき、用紙Pを排紙部5に排紙せずに用紙Pの裏面(表面にカラー画像が形成された用紙Pの裏面)にも画像を形成する場合、制御部100の制御により、用紙Pの後端が送りローラ対72近傍に到達したときに、各送りローラ対72,73が所定方向とは逆方向に回転することによって用紙Pを逆方向(図1中下方)に搬送させる。
【0040】
再送機構70は、図1に示すように、上述の搬送ガイド71a,71b及び二組の送りローラ対72,73に加えて、三組の送りローラ対74〜76と、4組の送りローラ対72,74〜76間に配置された搬送ガイド77a〜77cと、送りローラ対76と送りローラ対16との間に配置され搬送ガイド15aに合流する搬送ガイド78とを有している。なお、送りローラ対76の一方のローラも、制御部100によって制御された送りモータ(不図示)によって回転し、他方のローラは一方のローラの回転に伴って回転する従動ローラである。また、搬送ガイド77cの一部、搬送ガイド77a,77b及び送りローラ対74,75は、上述の迂回搬送機構60の構成部材を兼ねている。
【0041】
この構成において、制御部100の制御により、各送りローラ対74〜76が回転することによって、排紙部5側から逆方向に搬送されてきた用紙Pが各送りローラ対74〜76に挟持されながら搬送ガイド77a〜77c,78を通されて送りローラ対16に搬送される。そして、制御部100の制御により、送りローラ対16が回転することによって表面に画像が形成された用紙Pが搬送機構40の搬送方向Cの上流(用紙搬送経路)に搬送される。このときの用紙Pは、給紙ユニット10から送り出されたときとはその表裏が反転した状態で搬送機構40に搬送される。
【0042】
プリンタ1内には、図1及び図2に示すように、インクジェットヘッド2a,2bをメンテナンスするためのメンテナンスユニット80が設けられている。メンテナンスユニット80は、モノクロ用のインクジェットヘッド2aの吐出口4a近傍のインクの増粘を抑制する第1キャップ機構81と、カラー用のインクジェットヘッド2bの吐出口4a近傍のインクの増粘を抑制する第2キャップ機構91とを有している。さらに、メンテナンスユニット80は、搬送ベルト45,55に付着したインクを清掃する清掃部材及び吐出面3a,3bに付着したインクを払拭するワイパ機構(共に不図示)を含む。
【0043】
第1キャップ機構81は、図2及び図3に示すように、インクジェットヘッド2aの周囲に配設された環状の第1キャップ82と、第1キャップ82を上下方向に移動させる第1移動機構83とを有している。第1キャップ82は、インクジェットヘッド2aを取り囲むと共に、内周面上端付近でのみインクジェットヘッド2aの側周面と当接している。また、第1キャップ82の下端部は、ゴムなどの弾性部材から形成されている。
【0044】
第1移動機構83は、第1キャップ82の側面に固定された2つのフランジ84a,84bと、フランジ84aをスライド可能に支持するガイド85と、外周面に雄ねじが形成された軸86と、制御部100に制御され軸86を回転させるモータ87とを有している。ガイド85は、筐体1aに固定されており、フランジ84aの中央に形成された孔に通されている。軸86は、フランジ84bの中央に形成され内周面に雌ねじが形成されたネジ孔に螺入されている。
【0045】
この構成において、制御部100の制御により、軸86が正回転すると、第1キャップ82が搬送ベルト45から離隔した退避位置(図3(a)に示す位置)から第1キャップ82の下端が搬送ベルト45に密着する密着位置(図3(b)に示す位置)に移動する。なお、退避位置は、吐出面3aを内壁面の一部とする密閉空間が形成されない位置であって、吐出面3a、第1キャップ82及び搬送ベルト45に囲まれた密閉空間がつくられない位置である。一方、密着位置は、吐出面3aを内壁面の一部とする密閉空間を形成する位置であって、吐出面3a、第1キャップ82及び搬送ベルト45に囲まれた密閉空間がつくられる位置である。このとき、第1キャップ82の上端とインクジェットヘッド2aの側周面とが当接しているので、吐出面3a、搬送ベルト45及び第1キャップ82によって囲まれた空間(吐出口4aと通じる外部空間)が密閉空間となる。すなわち、インクジェットヘッド2aを第1キャップ82でキャップすることが可能となる。こうして、インクジェットヘッド2aの吐出口近傍のインクの増粘を抑制することが可能となる。一方、制御部100の制御により、軸86が逆回転すると、第1キャップ82が密着位置から退避位置に移動する。
【0046】
第2キャップ機構91は、図2及び図3に示すように、3つのインクジェットヘッド2bの周囲に配設された環状の第2キャップ92と、第2キャップ92を上下方向に移動させる第2移動機構93とを有している。第2キャップ92は、3つのインクジェットヘッド2bを取り囲むと共に、内周面上端が3つのインクジェットヘッド2bがなす側周面と当接している。また、第2キャップ92の下端部は、ゴムなどの弾性部材から形成されている。第2キャップ92の図2中左下方の角部には、副走査方向に沿って突出した突出部92aが形成されている。
【0047】
第2移動機構93は、第2キャップ92の側面に固定された2つのフランジ94a,94bと、フランジ94aをスライド可能に支持するガイド95と、外周面に雄ねじが形成された軸96と、制御部100に制御され軸96を回転させるモータ97とを有している。ガイド95は、筐体1aに固定されており、フランジ94aの中央に形成された孔に通されている。軸96は、フランジ94bの中央に形成され内周面に雌ねじが形成されたネジ孔に螺入されている。
【0048】
この構成において、制御部100の制御により、軸96が正回転すると、第2キャップ92が搬送ベルト55から離隔した退避位置(図3(a)に示す位置)から第2キャップ92の下端が搬送ベルト55に密着する密着位置(図3(b)に示す位置)に移動する。なお、退避位置は、吐出面3bを内壁面の一部とする密閉空間が形成されない位置であって、吐出面3b、第2キャップ92及び搬送ベルト55に囲まれた密閉空間がつくられない位置である。一方、密着位置は、吐出面3bを内壁面の一部とする密閉空間を形成する位置であって、吐出面3b、第2キャップ92及び搬送ベルト55に囲まれた密閉空間がつくられる位置である。このとき、第2キャップ92の上端も3つのインクジェットヘッド2bの側周面と当接しているので、3つの吐出面3b、搬送ベルト55及び第2キャップ92によって囲まれた空間(吐出口4aと通じる外部空間)が密閉空間となる。すなわち、インクジェットヘッド2bを第2キャップ92でキャップすることが可能となる。こうして、インクジェットヘッド2bの吐出口近傍のインクの増粘を抑制することが可能となる。一方、制御部100の制御により、軸96が逆回転すると、第2キャップ92が密着位置から退避位置に移動する。
【0049】
また、第1ユニット41及び第2ユニット51との間であって搬送ガイド61の上端近傍部分には、第2キャップ92の動作に連動して、用紙Pを搬送経路及び迂回経路のいずれかに振り分ける振り分け機構65が設けられている。振り分け機構65は、図2及び図3に示すように、搬送ガイド61の上端と搬送ガイド44との間に配置された板状の搬送ガイド66と、搬送ガイド66の主走査方向両端に固定された2つの回転軸67と、レバー68とを有している。各回転軸67の端部は、筐体1aに回転可能に支持されている。
【0050】
レバー68は、図2に示すように、搬送ガイド66の主走査方向一端(図中下端)に形成された突出部66a上に固定されている。また、レバー68は、図3(a)に示すように、その上端が退避位置にある第2キャップ92の突出部92aと当接するように、突出部66aから右斜め上方に延在している。
【0051】
この構成において、第2キャップ92が退避位置から密着位置に移動すると、レバー68が下方に揺動するとともに、搬送ガイド66が水平状態から傾く。つまり、用紙Pがカラー用のインクジェットヘッド2bと対向する位置を迂回し、搬送経路の略中間から迂回経路に通されるように、搬送ガイド66が傾く。換言すると、振り分け機構65が用紙Pを迂回経路に振り向けるときには、第2キャップ92が密着位置に配置されている。一方、第2キャップ92が密着位置から退避位置に移動すると、レバー68が上方に揺動するとともに、搬送ガイド66が傾いた状態から水平となる。こうして、用紙Pが迂回経路を通らずに、カラー用のインクジェットヘッド2bと対向する位置を通過可能となる。
【0052】
続いて、プリンタ1の両面カラー印字、及び、両面モノクロ印字動作について以下に説明する。なお、用紙Pの片面におけるカラー及びモノクロ印字動作は、後述の両面印字動作において、片面に画像が形成された後はそのまま排紙部5に排紙されるだけであるため、詳細については省略する。
【0053】
PC(パーソナルコンピュータ)などから用紙Pの両面(すなわち、表面及び裏面)にカラー画像を形成する印字データが制御部100に送信されると、制御部100が給紙カセット11から搬送ガイド15a,15bを通して用紙Pが搬送機構40に送り出されるように、給紙ユニット10及び送りローラ対16を制御する。
【0054】
次に、制御部100が、用紙Pが搬送ベルト45及び搬送ベルト55に吸着されながら搬送方向Cに搬送されるように、搬送機構40を制御する。このとき、制御部100が、用紙センサ8によって用紙Pの前端が検知されてから用紙Pが各インクジェットヘッド2a,2bと対向する領域を通過する所定時間経過後にインクジェットヘッド2a,2bからインクが吐出されるように、各インクジェットヘッド2a,2bを制御する。こうして、用紙Pの表面の所望位置にカラー画像が形成される。
【0055】
次に、制御部100が、用紙Pが搬送ベルト55から搬送ガイド71a,71bを通って排紙部5側に搬送されるように、送りローラ対72,73を制御する。そして、用紙センサ79によって用紙Pの後端が検知されたときに、制御部100が、先の回転方向とは逆方向に回転させるように、送りローラ対72,73を制御する。
【0056】
次に、制御部100が、用紙Pが搬送ガイド77a〜77c,78を通って送りローラ対16に搬送されるように、三組の送りローラ対74〜76を制御する。そして、送りローラ対16に搬送されてきた用紙Pは、印字面の表裏が裏返った状態となっており、当該用紙Pをそのまま再度、搬送機構40に搬送する。
【0057】
この後、制御部100は、用紙Pの表面に画像を形成したときと同様にインクジェットヘッド2a,2bを制御し、用紙Pの裏面に所望のカラー画像が形成される。そして、制御部100が、両面に画像が形成された用紙Pを排紙部5に排出されるように、送りローラ対72,73を制御する。こうして、用紙Pに対する両面カラー印字動作が終了する。
【0058】
用紙Pの両面にモノクロ画像を形成する場合も、PCなどから用紙Pの両面にモノクロ画像を形成する印字データが制御部100に送信されると、制御部100が給紙カセット11から搬送ガイド15a,15bを通して用紙Pが搬送機構40に送り出されるように、給紙ユニット10及び送りローラ対16を制御する。
【0059】
このとき、制御部100は、図4に示すように、モータ97を制御して、第2キャップ92を退避位置から密着位置に移動させる。すると、この第2キャップ92の動作に連動して、振り分け機構65の搬送ガイド66が水平状態から傾き、第1ユニット41によって搬送されてきた用紙Pをカラー用のインクジェットヘッド2bと対向する位置を迂回するように迂回経路に搬送することが可能になる。また、今回の印字に寄与しないカラー用のインクジェットヘッド2bを第2キャップ92でキャップすることが可能となるため、当該ヘッド2bの吐出口4a近傍のインクの増粘を抑制することが可能となる。
【0060】
次に、制御部100が、用紙Pが搬送ベルト45に吸着されながら搬送方向Cに搬送されるように、搬送機構40を制御する。このとき、制御部100が、用紙センサ8によって用紙Pの前端が検知されてから用紙Pがインクジェットヘッド2aと対向する領域を通過する所定時間経過後にインクジェットヘッド2aからインクが吐出されるように、インクジェットヘッド2aを制御する。こうして、用紙Pの表面の所望位置にモノクロ画像が形成される。
【0061】
次に、制御部100が、モノクロ画像が形成された用紙Pが迂回経路を通って排紙部5側に搬送されるように、送りローラ対62,72〜75を制御する。そして、用紙センサ79によって用紙Pの後端が検知されたときに、制御部100が、先の回転方向とは逆方向に回転させるように、送りローラ対72〜75を制御する。このとき、用紙Pが搬送ガイド77c,78を通って送りローラ対16に搬送されるように、送りローラ対76も制御する。なお、送りローラ対62はそのまま同方向に回転させている。
【0062】
そして、送りローラ対16に搬送されてきた用紙Pは印字面の表裏が裏返った状態となっており、送りローラ対16は当該用紙Pをそのまま搬送機構40に搬送する。この後、制御部100は、用紙Pの表面に画像を形成したときと同様にインクジェットヘッド2a,を制御し、用紙Pの裏面に所望のモノクロ画像が形成される。そして、制御部100が、両面に画像が形成された用紙Pを排紙部5に排出されるように、送りローラ対62,72〜75を制御する。用紙Pを排紙部5に排紙した後に、制御部100は、モータ97を制御して、第2キャップ92を密着位置から退避位置に移動させる。すると、この第2キャップ92の動作に連動して、振り分け機構65の搬送ガイド66が傾いた状態から水平になる。こうして、用紙Pに対する両面モノクロ印字動作が終了する。
【0063】
なお、用紙Pの表面にカラー画像を形成し裏面にモノクロ画像を形成する場合は、上述のように用紙Pの表面にカラー画像を形成した後、当該用紙Pの後端が用紙センサ79によって検知されたときに、制御部100がモータ97を制御して、第2キャップ92を退避位置から密着位置に移動させる。そして、再送経路を通されて搬送機構40に戻された用紙Pは、上述のように用紙Pの裏面にモノクロ画像を形成した後、迂回経路を通って排紙部5に排紙される。
【0064】
また、用紙Pの表面にモノクロ画像を形成し裏面にカラー画像を形成する場合は、上述のように用紙Pの表面にモノクロ画像を形成した後、当該用紙Pの後端が用紙センサ79によって検知されたときに、制御部100がモータ97を制御して、第2キャップ92を密着位置から退避位置に移動させる。そして、再送経路を通されて搬送機構40に戻された用紙Pは、上述のように用紙Pの裏面にカラー画像を形成した後、排紙部5に配置される。
【0065】
続いて、メンテナンスユニット80によるインクジェットヘッド2a,2bの吐出を回復させるメンテナンス動作について以下に説明する。
【0066】
用紙Pにカラー画像を形成する際は、当該用紙が両ヘッド2a,2bと対向する位置を通過するので、このときの搬送によって舞い上がった異物が吐出面3a,3bに付着することがある。異物が吐出面3a,3b、特に吐出口4aに付着すると、インク吐出が乱れたり、吐出不可能な状態に陥ることがあるため、インクジェットヘッド2a,2bを回復させる必要が生じる。このため、用紙Pにカラー画像を形成した後は、制御部100がモータ87,97を制御し、第1及び第2キャップ82,92を密着位置に移動させる。そして、インクジェットヘッド2a,2bからインクをパージさせた後、制御部100がモータ87,97を制御し、第1及び第2キャップ82,92を退避位置に移動させる。この後、制御部100は、ワイパ機構を制御して吐出面3a,3bに付着したインク及び異物を払拭する。こうして、両ヘッド2a,2bの吐出を回復するメンテナンス動作が終了する。なお、両ヘッド2a,2bからパージすることで搬送ベルト45,55に付着したインクは、清掃部材によって清掃される。
【0067】
一方、用紙Pにモノクロ画像を形成する場合は、用紙Pが迂回経路を通過するため、カラー用のインクジェットヘッド2bの吐出面3bに紙粉などの異物が付着しにくくなっている。さらに、インクジェットヘッド2bは第2キャップ92によってキャップされているので、吐出面3bに異物がより一層付着しにくくなっている。このため、モノクロ印字動作終了後に3つのインクジェットヘッド2bをメンテナンスする必要がない。
【0068】
つまり、用紙Pにモノクロ画像を形成した後は、制御部100がモータ87だけを制御し、第1キャップ82を密着位置に移動させ、インクジェットヘッド2aからインクをパージさせる。このとき、第2キャップ92は先のモノクロ印字において密着位置に配置されており、異物が吐出面3bに付着しないので、インクジェットヘッド2bからはインクをパージさせない。その後、制御部100がモータ87を制御し、第1キャップ82を退避位置に移動させる。そして、制御部100は、ワイパ機構を制御して吐出面3aに付着したインク及び異物を払拭する。こうして、インクジェットヘッド2aの吐出を回復するメンテナンス動作が終了する。これにより、用紙Pにモノクロ画像を印字した際は、3つのインクジェットヘッド2bのパージによるインク消費が行われないので、インク消費をより確実に抑制することが可能となる。
【0069】
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ1によると、用紙Pにモノクロ印字(インクジェットヘッド2aからのインク吐出のみで印字)する場合に、用紙Pが搬送経路におけるインクジェットヘッド2bと対向する位置を迂回して搬送されるように、迂回経路に用紙Pを通して搬送する。そのため、インクジェットヘッド2bに異物が付着しにくくなる。この結果、インクジェットヘッド2bのメンテナンス(パージ)によるインク消費を抑制することが可能となる。
【0070】
また、第2キャップ機構91を有していることで、インクジェットヘッド2bをキャップする際に、インクジェットヘッド2bを移動させる必要がなくなる。このため、インクジェットヘッド2bを移動させるためのスペースを確保する必要がなくなって装置本体の小型化が図れるとともに、第2移動機構93の構成がインクジェットヘッド2bを移動させる機構に比して構成が簡単になる。
【0071】
また、振り分け機構65が用紙Pを迂回経路に振り向けるときには、インクジェットヘッド2bの吐出口4aに通じる外部空間を密閉空間とする位置にキャップ92が配置されている。そのため、インクジェットヘッド2bの吐出口近傍のインクが増粘するのを抑制することが可能となる。また、振り分け機構65を有していることで、第2キャップ92の動作に連動して、用紙Pが通る経路が自動的に振り分けられる。そのため、経路を振り分ける制御手段を設ける必要がなくなる。
【0072】
また、搬送機構40の上流にレジローラを兼ねる送りローラ対16が配置され、第1ユニット41及び第2ユニット51が搬送方向Cに沿って水平に並ぶように配置されている(すなわち、搬送経路におけるヘッド2aと対向する位置及びヘッド2bと対向する位置が水平に並べられている)ので、搬送経路のこれらの位置間で斜行が起こりにくくなる。そのため、第1及び第2ユニット41,51の間に別のレジローラを設ける必要がなくなる。
【0073】
各インクジェットヘッド2a,2bの吐出領域4bが、主走査方向に関して、用紙Pよりも長いので、インクジェットヘッド2a,2bを主走査方向に移動させなくても、用紙Pに印字することが可能となる。
【0074】
また、本実施形態におけるインクジェットプリンタ1は、上から順に排紙部5、4つのインクジェットヘッド2a,2b、搬送機構40、迂回搬送機構60及び給紙ユニット10が配置された装置構成である。なお、本実施形態におけるインクジェットプリンタ1は、横置きに設けられてもよい。この場合、水平方向に沿って排紙部5、4つのインクジェットヘッド2a,2b、搬送機構40、迂回搬送機構60及び給紙ユニット10が配置された装置構成となる。つまり、インクジェットプリンタ1は、一方向に沿って排紙部5、4つのインクジェットヘッド2a,2b、搬送機構40、迂回搬送機構60及び給紙ユニット10が配置された装置構成である。
【0075】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態によるインクジェットプリンタ201について、図5を参照しつつ以下に説明する。
【0076】
本実施形態のインクジェットプリンタ201は、再送機構70が設けられておらず、迂回搬送機構260及び振り分け機構265が両ヘッド2a,2b間に配置されている。なお、第1実施形態と同様なものに関しては同符号で示し、説明を省略する。また、図5に示す搬送ガイド71aは、再送機構70が設けられていないことで第1実施形態における形状と一部異なっているが、ほぼ同様なものであるため同符号で示している。
【0077】
迂回搬送機構260は、搬送経路の略中間から湾曲しつつ上方に延在した搬送ガイド261,262と、二組の送りローラ対263,264とを有しており、迂回経路(図5中太矢印(白抜き矢印)で示す経路)を規定している。迂回経路は、インクジェットヘッド2aと対向する位置(第1位置)とインクジェットヘッド2bと対向する位置(第2位置)との間において搬送経路から分岐して排紙部5に繋がっている。各送りローラ対263,264の一方のローラは、制御部100に制御された送りモータ(不図示)によって回転し、他方のローラは一方のローラの回転に伴って回転する従動ローラである。なお、送りローラ対264は、排紙部5の副走査方向の中央に配置されている。このため、送りローラ対264によって排紙される用紙Pは、排紙部5に排紙される。
【0078】
振り分け機構265は、軸266と、軸266の側面に固定され搬送ガイド261との間で迂回経路の一部を規定する搬送ガイド267と、制御部100に制御され軸266を回動させるモータ(不図示)とを有している。また、第1及び第2ユニット41,51間には、第1実施形態の搬送ガイド44に代えて、板状の搬送ガイド244が設けられている。
【0079】
この構成において、用紙Pにカラー画像を形成する場合は、第1実施形態と同様に、制御部100が給紙ユニット10、3組の送りローラ対16,72,73、搬送機構40、及び、4つのインクジェットヘッド2a,2bを制御し、図5中太矢印(黒矢印)に沿って給紙ユニット10から搬送機構40に送られてきた用紙Pにカラー画像を形成し、当該用紙Pを排紙部5に排紙する。このとき、振り分け機構265の搬送ガイド267は、一端が搬送ガイド261と接触する位置であって迂回経路を閉じる閉鎖位置に位置付けられている。
【0080】
一方、用紙Pにモノクロ画像を形成する場合は、制御部100が振り分け機構265を制御し、搬送ガイド267の一端が搬送ガイド244と接触する位置であって迂回経路を開放する開放位置に、軸266を回動して搬送ガイド267を揺動させる。そして、制御部100が、給紙ユニット10、3組の送りローラ対16,263,264、搬送機構40の第1ユニット41、及び、インクジェットヘッド2aを制御し、給紙ユニット10から第1ユニット41に送られてきた用紙Pにモノクロ画像を形成し、迂回経路を通して当該用紙Pを排紙部5に排紙する。なお、本実施形態においても、用紙Pにモノクロ画像を形成する場合は、3つのインクジェットヘッド2bを第2キャップ92でキャップしていてもよい。
【0081】
以上のように、本実施形態におけるインクジェットプリンタ201においても、用紙Pにモノクロ印字する場合に、用紙Pが搬送経路におけるインクジェットヘッド2bと対向する位置を迂回して搬送されるように、迂回経路に用紙Pを通して搬送する。そのため、インクジェットヘッド2bに異物が付着しにくくなる。この結果、インクジェットヘッド2bのメンテナンス(パージ)によるインク消費を抑制することが可能となる。なお、第1実施形態と同様な構成においては、同じ効果を得ることが可能である。
【0082】
[第3実施形態]
続いて、本発明の第3実施形態によるインクジェットプリンタ301について、図6を参照しつつ以下に説明する。
【0083】
本実施形態のインクジェットプリンタ301も、再送機構70が設けられておらず、迂回搬送機構360及び振り分け機構365が第1ユニット41の周囲に配置されている。さらに、インクジェットヘッド2a及び第1キャップ機構81が第2ユニット51と対向する位置に配置され、インクジェットヘッド2b及び第2キャップ機構91が第1ユニット41と対向する位置に配置されている。つまり、本実施形態においては、インクジェットヘッド2aと対向する位置(第1位置)と、インクジェットヘッド2bと対向する位置(第2位置)とが入れ替わっている。なお、第1及び第2実施形態と同様なものに関しては同符号で示し、説明を省略する。
【0084】
迂回搬送機構360は、搬送ガイド15aの途中部位から搬送経路の略中間に合流するように延在した3つの搬送ガイド361〜363と、二組の送りローラ対364a,364bとを有しており、迂回経路(図6中太矢印(白抜き矢印)で示す経路)を規定している。迂回経路は、搬送ガイド15aがなす用紙搬送経路から分岐し、インクジェットヘッド2aと対向する位置(第1位置)とインクジェットヘッド2bと対向する位置(第2位置)との間において搬送経路に合流している。各送りローラ対364a,364bの一方のローラは、制御部100に制御された送りモータ(不図示)によって回転し、他方のローラは一方のローラの回転に伴って回転する従動ローラである。また、送りローラ対364bは、送りローラ対16と同様に、用紙Pの斜行を補正するレジローラを兼ねている。
【0085】
振り分け機構365は、軸366と、軸366の側面に固定され搬送ガイド15a内に突出可能な湾曲状の搬送ガイド367と、制御部100に制御され軸366を回動させるモータ(不図示)とを有している。
【0086】
この構成において、用紙Pにカラー画像を形成する場合は、制御部100が給紙ユニット10、3組の送りローラ対16,72,73、搬送機構40、及び、4つのインクジェットヘッド2a,2bを制御し、図6中太矢印(黒矢印)に沿って給紙ユニット10から搬送機構40に送られてきた用紙Pにカラー画像を形成し、当該用紙Pを排紙部5に排紙する。このとき、振り分け機構365の搬送ガイド367は、搬送ガイド15a内に突出しない退避位置に位置付けられている。
【0087】
一方、用紙Pにモノクロ画像を形成する場合は、制御部100が振り分け機構365を制御し、搬送ガイド367が搬送ガイド15a内に突出する突出位置に、軸366を回動して搬送ガイド367を揺動させる。そして、制御部100が、給紙ユニット10、4組の送りローラ対364a,364b,72,73、搬送機構40の第2ユニット51、及び、インクジェットヘッド2aを制御し、給紙ユニット10から迂回経路を通して第2ユニット51に送られてきた用紙Pにモノクロ画像を形成し、当該用紙Pを排紙部5に排紙する。なお、本実施形態においても、用紙Pにモノクロ画像を形成する場合は、3つのインクジェットヘッド2bを第2キャップ92でキャップしていてもよい。
【0088】
以上のように、本実施形態におけるインクジェットプリンタ301においても、用紙Pにモノクロ印字する場合に、用紙Pが搬送経路におけるインクジェットヘッド2bと対向する位置を迂回して搬送されるように、迂回経路に用紙Pを通して搬送する。そのため、インクジェットヘッド2bに異物が付着しにくくなる。この結果、インクジェットヘッド2bのメンテナンス(パージ)によるインク消費を抑制することが可能となる。なお、第1及び第2実施形態と同様な構成においては、同じ効果を得ることが可能である。
【0089】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の第1〜第3実施形態におけるメンテナンスユニット80が設けられていなくてもよい。この場合、振り分け機構65の回転軸67を回動可能な制御部100に制御されたモータを設け、制御部100が直接振り分け機構65を制御して、用紙Pを迂回経路又は搬送経路に搬送させてもよい。この場合においても、上述の第1実施形態と同様な効果を得ることができる。加えて、突出部92a及びレバー68を設ける必要がなくなる。また、インクジェットヘッド2aと対向する位置(第1位置)とインクジェットヘッド2bと対向する位置(第2位置)とが水平方向に並んでいなくてもよい。また、給紙ユニット(給紙部)と排紙部が、搬送機構40を水平方向に関して挟む位置に配置されていてもよいし、いずれか一方だけが搬送機構40と水平に並んで配置されていてもよい。さらに、再送経路が給紙ユニット10の下方に形成されていてもよい。また、搬送機構40の上流に、送りローラ対16とは別のレジローラを設けていてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 インクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)
2a インクジェットヘッド(第1記録ヘッド)
2b インクジェットヘッド(第2記録ヘッド)
4a 吐出口
4b 吐出領域
16 送りローラ対(レジローラ)
40 搬送機構
41 第1ユニット
45 搬送ベルト
51 第2ユニット
60,260,360 迂回搬送機構
65,265,365 振り分け機構(振り分け手段)
70 再送機構(反転搬送機構)
91 第2キャップ機構(キャップ機構)
92 第2キャップ(キャップ)
93 第2移動機構(移動機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する吐出口をそれぞれ有する第1及び第2記録ヘッドと、
前記第1記録ヘッドの前記吐出口と対向する第1位置と前記第2記録ヘッドの前記吐出口と対向する第2位置とを含む記録媒体の搬送経路を規定する搬送機構と、
記録媒体が前記第2位置を迂回して搬送されるように、前記第1位置と前記第2位置との間において前記搬送経路につながる迂回経路を規定する迂回搬送機構とを備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記搬送機構が、前記第2記録ヘッドと対向し前記第2位置に記録媒体を搬送する搬送ベルトを含んでおり、
前記第2記録ヘッドを取り囲むように前記第2記録ヘッドの周囲に配設された環状のキャップと、前記キャップが前記搬送ベルトに密着する位置と前記搬送ベルトから離隔する位置との間において前記キャップを移動させる移動機構とを有するキャップ機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
キャップ、及び、前記第2記録ヘッドの前記吐出口が形成された面を内壁面の一部とする密閉空間が形成される位置と前記密閉空間が形成されない位置との間において前記キャップを移動させる移動機構を有するキャップ機構と、
記録媒体を前記搬送経路及び前記迂回経路のいずれかに振り分ける振り分け手段とをさらに備えており、
前記振り分け手段が記録媒体を前記迂回経路に振り向けるときには、前記密閉空間が形成される位置に前記キャップが配置されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記搬送経路は、前記第1及び第2位置が記録媒体の搬送方向に沿って水平に並ぶように前記搬送機構によって規定されており、
前記搬送機構よりも上流には、記録媒体の斜行を補正するレジローラが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記搬送機構によって搬送された記録媒体を反転させて、前記搬送機構へ再送する再送経路を規定する反転搬送機構をさらに備えており、
前記反転搬送機構及び前記迂回搬送機構は、互いの経路の一部を共用していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記第1記録ヘッドはブラックインクを吐出し、
前記第2記録ヘッドはブラックインク以外のカラーインクを吐出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記第1及び第2記録ヘッドは、複数の前記吐出口が形成された吐出領域をそれぞれ有しており、
前記吐出領域は、記録媒体の搬送方向に直交する方向に関して、記録媒体の長さ以上の長さを有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記第1及び第2記録ヘッド、前記搬送機構、及び、前記迂回搬送機構が、一方向に配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
1以上の記録媒体を収容可能であり、記録媒体を前記搬送機構に供給する給紙部と、
前記搬送機構から搬送されてきた記録媒体を収容する排紙部とをさらに備えており、
前記排紙部、前記第1及び第2記録ヘッド、前記搬送機構、前記迂回搬送機構、及び、前記給紙部が、前記一方向に配置されていることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記第1記録ヘッドはブラックインクを吐出し、
前記第2記録ヘッドはブラックインク以外のカラーインクを吐出し、
前記第1及び第2記録ヘッドの吐出を回復させるメンテナンスを行うメンテナンスユニットと、
前記メンテナンスユニットを制御する制御部とをさらに備えており、
前記制御部は、記録媒体にカラー画像を印字した後に前記第1及び第2記録ヘッドのメンテナンスを行うように前記メンテナンスユニットを制御し、記録媒体にモノクロ画像を印字した後に前記第1記録ヘッドのみのメンテナンスを行うように前記メンテナンスユニットを制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記搬送経路が、前記第1及び第2位置が記録媒体の搬送方向に沿って順に並ぶように前記搬送機構によって規定されており、
前記迂回経路が、前記第1及び第2位置の間において前記搬送経路から分岐し前記第2位置よりも下流において前記搬送経路に合流していることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記搬送機構から搬送されてきた記録媒体を収容する排紙部をさらに備えており、
前記搬送経路が、前記第1及び第2位置が記録媒体の搬送方向に沿って順に並ぶように前記搬送機構によって規定されており、
前記迂回経路が、前記第1及び第2位置の間において前記搬送経路から分岐し前記排紙部に繋がっていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
1以上の記録媒体を収容可能であり、記録媒体を前記搬送機構に供給する給紙部をさらに備えており、
前記搬送経路が、前記第2及び第1位置が記録媒体の搬送方向に沿って順に並ぶように前記搬送機構によって規定されており、
前記迂回経路が、前記給紙部から前記搬送経路の上流に繋がる経路から分岐し前記第1及び第2位置の間において前記搬送経路に合流していることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−16958(P2012−16958A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232721(P2011−232721)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【分割の表示】特願2009−252736(P2009−252736)の分割
【原出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】