説明

インクジェット記録装置

【課題】作業者が印刷途中において不用意に被記録媒体に触れてしまうのを防止できるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】プリンタ1は布帛であるTシャツにインクを吐出して画像を印刷する。プリンタ1はTシャツに各種インクを重ね塗りする都合上、Tシャツを支持するプラテン20を筐体5の内外を繰り返し出退させる。本実施形態は、一枚のTシャツに画像を印刷する際に、プラテン20が筐体5の開口7から突出する方向に搬送する突出回数(N)をディスプレイ9に表示できる。故に作業者は筐体5の開口7からプラテン20が突出しても、印刷が終了したと勘違いすることが無いので、プラテン20上のTシャツに触れてしまうのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、布帛等の被記録媒体にインクを吐出して画像を形成できるインクジェット記録装置が知られている(例えば特許文献1参照)。インクジェット記録装置は、キャリッジ、インクジェットヘッド、プラテン、及び本体カバーを備えている。キャリッジにはインクジェットヘッドが搭載される。キャリッジはインクジェットヘッドを本体カバー内にて主走査方向に移動する。インクジェットヘッドはインクを下方に吐出する。プラテンはキャリッジの移動範囲の下方に設けられる。プラテンの上面には例えばTシャツ等が取り付けられる。プラテンは副走査方向に移動する。副走査方向は主走査方向に直交する方向である。例えば、地色が黒色など濃色のTシャツに画像を印刷する場合、印刷領域に先に白色インクを吐出した後で、その白色領域の上にCMYKの色インクを吐出する印刷を行う場合がある。このときに、より白色の濃度を濃くするために、白インクによる印刷を複数回繰り返すことがある。また、Tシャツの地色にかかわらず、より鮮明に画像を印刷するために、同じ印刷領域に対してホワイトインクや各色のインクによる印刷を複数回繰り返して行う場合もある。それ故、一枚のTシャツに画像を印刷する場合、プラテンは副走査方向を繰り返し搬送される。印刷が終了すると、プラテンは本体カバーの正面壁から前方に突出して、離れた外側の位置まで搬送される。作業者はプラテンから印刷済みのTシャツを取り外して新しいシャツと交換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4670398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット記録装置では、プラテンが副走査方向に繰り返し搬送される間に、本体カバーの正面壁から突出して離れた外側の位置まで搬送されることがある。それ故、プラテンが本体カバー外に搬送されると、それを見た作業者は印刷が終了したものと勘違いを起こし、印刷途中のTシャツに不用意に触れてしまう可能性があった。この場合、プラテン上のTシャツの位置がずれてしまい、印刷不良を起こす可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、作業者が印刷途中において不用意に被記録媒体に触れてしまうのを防止できるインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るインクジェット記録装置は、筐体と、前記筐体内に設けられ、被記録媒体にインクを噴射して記録を行う記録ヘッドと、前記筐体内に出退可能に設けられ、前記被記録媒体を前記記録ヘッドに対して相対移動可能に支持するプラテンと、前記プラテンを前記筐体内外において搬送する送り機構と、印刷データに基づき、前記記録ヘッドと前記送り機構とを制御する制御手段とを備えたインクジェット記録装置であって、前記制御部は、前記送り機構が前記プラテンを前記筐体から外側に突出する方向に搬送する突出回数を取得する突出回数取得手段と、前記突出回数取得手段によって取得された前記突出回数を報知する報知手段とを備えている。
【0007】
第1態様に係るインクジェット記録装置では、突出回数取得手段は突出回数を取得する。突出回数は送り機構がプラテンを筐体から外側に突出する方向に搬送する回数である。報知手段は突出回数取得手段によって取得された突出回数を報知する。作業者は印刷データの印刷についてプラテンが筐体から外側に突出する回数がわかるので、プラテンが筐体から外側に突出する状態を見ても、まだ印刷途中であるか印刷終了であるかを容易に区別することができる。故に本態様は作業者が印刷途中において不用意に被記録媒体に触れてしまうのを防止できる。
【0008】
また第1態様では、前記印刷データを取得する印刷データ取得手段を備え、前記突出回数取得手段は、前記印刷データ取得手段によって取得された前記印刷データに基づいて前記突出回数を取得してもよい。故に本態様は印刷データに基づく突出回数を取得することができる。
【0009】
また第1態様では、前記印刷データを記憶する記憶手段を備え、前記突出回数取得手段は、前記記憶手段に記憶された前記印刷データに基づいて前記突出回数を取得してもよい。故に本態様は突出回数を取得することができる。
【0010】
また第1態様では、表示部を備え、前記報知手段は、前記表示部に前記突出回数取得手段が取得した前記突出回数を表示して報知してもよい。突出回数はインクジェット記録装置の表示部に表示されるので、例えば外部コンピュータの表示部に突出回数が表示されるよりも作業者は確認し易い。故に作業者が印刷途中において不用意に被記録媒体に触れてしまうのを確実に防止できる。
【0011】
また第1態様では、前記記録ヘッドは、前記被記録媒体上に前処理用のインクを噴射する前処理用ヘッドと、前記前処理がなされた前記被記録媒体上に後処理用のインクを噴射する後処理用ヘッドとを備えてもよい。前処理用ヘッドは被記録媒体上に前処理用のインクを噴射して前処理を行う。後処理用ヘッドは前処理がなされた被記録媒体上に後処理用のインクを噴射して後処理を行う。この構成の場合、1枚の被記録媒体を印刷する場合、プラテンは筐体内外を複数回出入りしながら印刷するが、突出回数が報知されるので、作業者が印刷途中において不用意に被記録媒体に触れてしまうのを防止できる。
【0012】
本発明の第2態様に係るインクジェット記録装置は、被記録媒体にインクを噴射して記録を行う記録ヘッドと、前記被記録媒体を前記記録ヘッドに対して相対移動可能に支持するプラテンと、前記プラテンを走査方向一方側及び他方側に搬送する送り機構と、印刷データに基づき、前記記録ヘッドと前記送り機構とを制御する制御手段とを備えたインクジェット記録装置であって、前記送り機構が前記印刷データの印刷を行う場合、前記プラテンを前記一方側へ基準位置から突出させて搬送してから、前記他方側へ搬送するときの突出回数を取得する突出回数取得手段と、前記突出回数取得手段によって取得された前記突出回数を報知する報知手段とを備えてもよい。
【0013】
第2態様に係るインクジェット記録装置では、突出回数取得手段は突出回数を取得する。突出回数は送り機構がプラテンを一方側へ基準位置から突出させて搬送してから、他方側へ搬送するときの回数である。報知手段は突出回数取得手段によって取得された突出回数を報知する。作業者は印刷データの印刷について突出回数がわかるので、プラテンが基準位置から突出する状態を見ても、まだ印刷途中であるか印刷終了であるかを容易に区別することができる。故に本態様は作業者が印刷途中において不用意に被記録媒体に触れてしまうのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プリンタ1の斜視図である。
【図2】プリンタ1の平面図である。
【図3】プリンタ1の平面図(プラテン20はメディア脱着位置)である。
【図4】プリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】印刷データ50の構成を示す概念図である。
【図6】メイン処理のフローチャートである。
【図7】印刷処理のフローチャートである。
【図8】印刷前にディスプレイ9に表示される画面を示す図である。
【図9】印刷中にディスプレイ9に表示される画面を示す図である。
【図10】印刷中にディスプレイ9に表示される画面の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態であるインクジェット記録装置1(以下単にプリンタ1という)について、図面を参照して説明する。なお以下説明において、図1の上下方向、右斜め下方向、左斜め上方向、左斜め下方向、右斜め上方向が、夫々、プリンタ1の上下方向、前方向、後ろ方向、左方向、右方向である。プリンタ1の左右方向がX軸方向(主走査方向)、前後方向がY軸方向(副走査方向)である。図2,図3の下方向、上方向、右方向、左方向が、夫々、プリンタ1の前方向、後ろ方向、右方向、左方向である。
【0016】
先ず、プリンタ1の概略構成について説明する。図1に示すように、プリンタ1は、被記録媒体として布帛であるTシャツ等に印刷可能である。プリンタ1は周知の構造である。プリンタ1は、基台2、印刷機構3(図2,図3参照)、筐体5を備える。基台2はプリンタ1の下部に設けられている。印刷機構3は基台2の上部に設けられている。印刷機構3は各種インクを用いて後述するプラテン20上のTシャツ(図示略)に画像を印刷する。筐体5は略直方体である。筐体5は基台2の上部に設けられ、印刷機構3の周囲を取り囲んでいる。筐体5は前側フレーム部材5A、後ろ側フレーム部材5B、右側フレーム部材5C、及び左側フレーム部材5Dを有している。前側フレーム部材5Aは筐体5の前側に位置する。後ろ側フレーム部材5Bは筐体5の後ろ側に位置する。右側フレーム部材5Cは筐体5の右側に位置する。左側フレーム部材5Dは筐体5の左側に位置する。筐体5の上部前側には前面カバー6が開閉可能に設けられている。筐体5の前面中央には開口7が設けられている。開口7はやや横長の長方形状である。開口7からプラテン20がY軸方向において筐体5の前方に搬送される。
【0017】
筐体5の正面右下隅には操作盤8が設けられている。操作盤8は平面視略長方形状である。操作盤8は作業者がプリンタ1を操作する為の機器である。操作盤8の上面後ろ側にはディスプレイ9、上面前側には印刷ボタン10が設けられている。ディスプレイ9は各種画面を表示する。印刷ボタン10はプリンタ1の印刷開始を入力する為のボタンである。筐体5の正面左下隅にはカートリッジ装着部12が設けられている。カートリッジ装着部12は略直方体状である。カートリッジ装着部12の前面には8本のカートリッジ13が装着される。カートリッジ13は各種インクを保持する。各種インクについては後述する。
【0018】
次に、印刷機構3の構成について説明する。図2に示すように、印刷機構3は、キャリッジ15、8つの記録ヘッド16、X軸ガイドレール18、X軸モータ41(図4参照)、Y軸ガイドレール19、Y軸送りねじ(図示略)、プラテン20、トレイ21(図1参照)、Y軸モータ42(図4参照)を備える。キャリッジ15は8つの記録ヘッド16を搭載し、これらをX軸方向(主走査方向)に往復移動させる。記録ヘッド16はインクをプラテン20上のTシャツの印刷面に吐出する。X軸ガイドレール18はX軸方向に延設されている。X軸ガイドレール18はキャリッジ15をX軸方向に案内する。X軸モータ41はキャリッジ15をX軸ガイドレール18に沿って駆動させる駆動源である。
【0019】
プラテン20は上面に被記録媒体としてのTシャツを支持する。Tシャツは作業者によって取り付けられる。図1に示すように、トレイ21はプラテン20の下方に略平行に配置されている。トレイ21はプラテン20より大きい板状体である。トレイ21は例えばプラテン20上のTシャツのそで等が下方に落ちることを防止する。Y軸送りねじ、及びY軸ガイドレール19はY軸方向に各々延設されている。Y軸送りねじはY軸モータ42の出力軸に連結され、プラテン20の下面の軸受(図示略)と係合する。Y軸ガイドレール19はプラテン20をY軸方向(副走査方向)に案内する。Y軸モータ42はプラテン20をY軸ガイドレール19に沿って駆動させる駆動源である。
【0020】
次に、カートリッジ13と記録ヘッド16との関係について説明する。図1,図2に示す8本のカートリッジ13は、白(W)インクを保持するものが4本、シアン(C)インクを保持するものが1本、マゼンタ(M)インクを保持するものが1本、イエロー(Y)インクを保持するものが1本、ブラック(K)インクを保持するものが1本である。これらカートリッジ13はカートリッジ装着部12に装着された状態で、インク供給チューブ(図示略)を介して、キャリッジ15に搭載された8つの記録ヘッド16に各々連結されている。これら記録ヘッド16は、各カートリッジ13にそれぞれ保持された各種インクをTシャツの印刷面に吐出する。
【0021】
上記構成を有するプリンタ1では、布帛であるTシャツに画像を印刷できる。例えば、地色が黒などの濃いTシャツに画像を印刷する場合、先ずTシャツの印刷面に白インクを吐出して下地(背景)を作り、その上に色インクを重ねて吐出することで画像を形成する。これによりTシャツ上の画像の色彩が濃くなって鮮やかになる。なお色インクとは、白インク以外の例えばCMYKの各種インクである。本実施例では、白インクを吐出する前者の処理を前処理、色インクを吐出する後者の処理を後処理とする。それ故、記録ヘッド16を、4つの前処理用記録ヘッドと、4つの後処理用記録ヘッドとにそれぞれ分けている。前処理用の記録ヘッドは、キャリッジ15の後ろ側にX軸方向に対して平行に並んで配置されている。後処理用の記録ヘッドは、キャリッジ15の前側にX軸方向に対して平行に並んで配置されている。これにより前処理と後処理において、プラテン20上のTシャツに対してX軸方向に平行な1ライン毎にインクを吐出できる。
【0022】
そして、上述のように、プリンタ1では、1枚のTシャツに各種インクを重ね塗りして画像を印刷する。また印刷する画像の色彩によって色インクを何度も重ね塗りすることもある。このような場合、図2に示すように、プラテン20は印刷動作中に筐体5の内外を繰り返し出退することになる。そしてプリンタ1の印刷動作が終了すると、プラテン20は図3に示すメディア脱着位置まで搬送される。メディア脱着位置は、例えばプラテン20が搬送されうるY軸方向の最前側であって、プラテン20を筐体5の外側に完全に露出させる位置である。それ故、作業者はメディア脱着位置にあるプラテン20の上面にTシャツを簡単に取り付けたり、取り外したりすることができる。
【0023】
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。図4に示すように、プリンタ1は、CPU30を備える。CPU30には、ROM31、RAM32、ヘッド駆動部33、フラッシュメモリ45、モータ駆動部34、操作処理部35、液晶駆動部36、及びUSBインタフェース37が各々接続されている。ROM31には、プリンタ1の動作を制御する為の各種制御プログラム、初期値等が記憶されている。RAM32には、パーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)39から受信した印刷データ50(図5参照)等の各種データが一時的に記憶される。フラッシュメモリ45には、例えば印刷する画像データ等の各種データが記憶されている。ヘッド駆動部33には、8つの記録ヘッド16が接続しており、複数の圧電素子を駆動することでインクの吐出を制御する。モータ駆動部34は、X軸モータ41及びY軸モータ42を駆動する。操作処理部35は、操作盤8からの操作入力を処理する。USBインタフェース37は、プリンタ1をPC39等の外部機器に接続する。PC39は印刷データ50をプリンタ1に送信する。印刷データ50はTシャツ等に画像を印刷する為に必要なデータである。CPU30は、PC39から受信した印刷データ50に基づき、Tシャツ等に画像を印刷する。
【0024】
次に、印刷データ50の構造について説明する。図5に示すように、印刷データ50は、ヘッダ部51、画像データ部52、フッダ部53を含む。ヘッダ部51には、突出回数(N)、印刷解像度、印刷ジョブ名等の各種情報が組み込まれている。突出回数(N)とは、一枚のTシャツに画像を印刷する際に、プラテン20を筐体5の開口7から前方に突出する方向に搬送する回数をいう。なおTシャツに画像を印刷する際に、プラテン20をY軸方向の後方の印刷開始位置から前方の印刷終了位置に走査させる動作を移動動作といい、一枚のTシャツを印刷する際に必要な移動動作の回数を移動動作数という。本実施例では、1移動動作毎にプラテン20は筐体5の開口7から突出する方向に搬送されるので、移動動作数は突出回数(N)と一致している。なお、印刷開始位置と印刷終了位置は印刷する画像に応じて、移動動作毎に適宜変更されうるものとする。
【0025】
印刷解像度とは、記録ヘッド16による印刷の解像度である。印刷ジョブ名とは、各印刷データに付けられたジョブ名である。例えばPC39は印刷ジョブ名で印刷データを管理する。画像データ部52には、1〜N移動動作目の各画像データが順番に組み込まれている。フッダ部53には、誤り検出符号等が組み込まれている。誤り検出符号は、例えばCRCやチェックサムなどが利用可能である。
【0026】
次に、CPU30による印刷制御処理について、図6,図7のフローチャートを参照して説明する。本処理は、PC39から送信された印刷データ50を受信すると、ROM31に記憶された制御プログラムが読み込まれて実行される。
【0027】
先ず、CPU30はPC39から受信した印刷データ50をRAM32に一旦保存する(S10)。CPU30はプラテン20をメディア脱着位置(図3参照)まで搬送する(S11)。作業者はプラテン20上に新しいTシャツを取り付ける。CPU30は終了突出回数カウンタをリセットする(S12)。終了突出回数カウンタは終了突出回数(M)を計数する。終了突出回数(M)は、印刷データ50に対する印刷を開始してから、プラテン20を筐体5の開口7から突出させた回数である。終了突出回数カウンタの値はRAM32に記憶される。
【0028】
次いで、CPU30はRAM32に保存した印刷データ50を読み込む(S13)。CPU30は読み込んだ印刷データ50から突出回数(N)を取得する(S14)。CPU30は取得した突出回数(N)をディスプレイ9に表示する(S15)。例えば、図8に示すように、ディスプレイ9にはプリンタ1の現在の状況に関する情報が表示される。ディスプレイ9の上側には、今回の印刷に関する情報が表示される。ディスプレイ9の下側には、各カートリッジ13の現在のインク保持量が表示される。
【0029】
今回の印刷に関する情報として、印刷ジョブ名、Size、MOVE、Count、印刷状況等の各種情報が挙げられる。Sizeはプリンタ1が推奨するプラテン20の大きさ、MOVEは突出回数(N)、Countは印刷が終了したTシャツの枚数、印刷状況はプリンタ1の現在の状況を示している。図8に示す例では、印刷ジョブ名の欄には「Uniform Number12」、Sizeの欄には「14×16」、MOVEの欄には「4」、Countの欄には「002」、印刷状況の欄には「Print Ready」が表示されている。
【0030】
作業者は、ディスプレイ9に表示されたこれらの情報を確認することで、例えば、今回の印刷内容がPC39で管理するNo12のユニフォーム画像であること、推奨するプラテン20の大きさが14cm×16cmであること、突出回数(N)が4回であること、現在までに2枚目の印刷が終了していること(次が3枚目の印刷であること)、印刷準備が完了していること等がわかる。作業者はこの中でも特に突出回数(N)が4回であることがわかるので、今回のTシャツの印刷では、プラテン20が筐体5の開口7から4回突出して搬送されることを事前に知ることができる。また印刷前に突出回数(N)が4回であることがわかるので、印刷にどの程度の時間がかかるかの目安にもなる。
【0031】
次いで、CPU30は作業者により印刷ボタン10が押下されたか否か判断する(S16)。CPU30は印刷ボタン10が押下されるまで(S16:NO)、S16に戻って待機状態となる。作業者はディスプレイ9の画面を確認し、操作盤8の印刷ボタン10を押下する。CPU30は印刷ボタン10が押下されたと判断した場合(S16:YES)、図9に示すように、ディスプレイ9の印刷状況の欄に「Printing・・・」のメッセージを表示する。作業者はプリンタ1が印刷動作を開始したことを認識できる。
【0032】
次いで、CPU30は、印刷状況の欄の横にさらに終了突出回数(M)を表示する(S17)。図9に示す例では、突出回数(N)に対する終了突出回数(M)が分数の態様で表示されている。分母を突出回数(N)とし、分子を終了突出回数(M)とする。終了突出回数(M)はRAM32に記憶されている。なお印刷開始時の終了突出回数(M)はリセットされているので[0/4]と表示される。
【0033】
次いで、CPU30はプラテン20を移動動作毎の印刷開始位置まで移動させる(S17)。CPU30は、印刷データ50に含まれる1移動動作目の画像データの印刷開始位置までプラテン20を搬送する。CPU30は印刷処理を開始する(S18)。
【0034】
次に、印刷処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。先ず、CPU30は、記録ヘッド16をX軸方向に走査して1ライン印刷する(S31)。CPU30は1移動動作目の画像データの印刷を終了したか否か判断する(S33)。CPU30は1移動動作目の印刷が終了していないと判断した場合(S33:NO)、次の印刷位置までプラテン20をY軸方向に搬送する(S32)。CPU30は再度S31に戻り、次のラインの印刷を実行する。CPU30は1移動動作目の画像データの印刷が終了するまで(S33:NO)、S32,S31を繰り返す。図1に示すように、プラテン20は筐体5の開口7から突出する方向に徐々に搬送される。CPU30は1移動動作分の印刷を終了したと判断した場合(S33:YES)、RAM32に記憶された終了突出カウンタ(M)の値に1加算する(S34)。CPU30は1移動動作目の印刷処理を終了し、処理を図6のS20に戻す。
【0035】
図6に戻り、CPU30は、終了突出回数(M)は突出回数(N)に到達したか否か判断する(S20)。CPU30は、終了突出回数(M)は突出回数(N)にまだ到達していないと判断した場合(S20:NO)、S17に戻り、ディスプレイ9に表示されている終了突出回数(M)を更新して表示する。例えば、現時点の終了突出回数(M)が2回であった場合、図9に示すように、終了突出回数(M)は「2/4」と表示される。これを見た作業者は、印刷が終了するまでに後2回はプラテン20が開口7から突出して搬送されるので、まだ印刷が終了していないことを認識できる。さらに残りの突出回数もわかるので、印刷が終了するまでどれだけ時間がかかるかの目安にもなる。従って作業者が印刷途中に誤ってプラテン20上のTシャツに触れてしまうのを効果的に防止できる。
【0036】
次いで、CPU30はN移動動作目の画像データの印刷開始位置まで移動する(S18)。CPU30は上述の印刷処理(S19)を実行し、終了突出回数(M)が突出回数(N)に到達するまで(S20:NO)、S17〜S20を繰り返す。CPU30は終了突出回数(M)が突出回数(N)に到達したと判断した場合(S20:YES)、全移動動作数の印刷が全て終了したことになるので、プラテン20をメディア脱着位置(図3参照)まで搬送する(S21)。プラテン20は筐体5の外部に完全に露出する。作業者はプラテン20上から印刷済みのTシャツを取り外し、次のTシャツを取り付けることができる。CPU30はこうしてメイン処理を終了する。
【0037】
以上説明において、図2に示すY軸ガイドレール19、Y軸送りねじ(図示略)、Y軸モータ42(図4参照)が本発明の「送り機構」の一例である。図1に示すディスプレイ9が本発明の「表示部」の一例である。図4の示すUSBインタフェース37が本発明の「印刷データ取得手段」の一例である。図6のS14の処理を実行するCPU30が本発明の「突出回数取得手段」の一例であり、S17の処理を実行するCPU30が本発明の「報知手段」の一例である。
【0038】
以上説明したように、本実施形態のプリンタ1は、布帛であるTシャツにインクを吐出して画像を印刷できるものである。プリンタ1はTシャツに各種インクを重ね塗りする都合上、Tシャツを支持するプラテン20を筐体5の内外を繰り返し出退させる。本実施形態は、一枚のTシャツに画像を印刷する際に、プラテン20が筐体5の開口7から突出する方向に搬送する突出回数(N)をディスプレイ9に表示できる。これにより作業者は筐体5の開口7からプラテン20が突出しても、印刷が終了したと勘違いすることが無いので、プラテン20上のTシャツに触れてしまうのを防止できる。
【0039】
また上記実施形態では特に、PC39から送信された印刷データ50を受信して、その印刷データ50に含まれる突出回数(N)を取得できる。これによりプリンタ1において突出回数(N)を算出する処理が不要となるので、CPU30の負荷を軽減できる。
【0040】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、プラテン20の突出回数(N)を分数の態様(図9参照)で表示するようにしている。例えば図10に示すように、ディスプレイ9において、プラテン20の突出回数(N)を終了突出回数(M)に応じてカウントダウンさせて残りの突出回数を表示するようにしてもよい。例えば、印刷が開始されたらMoveの欄を白黒反転して突出回数(N)を白抜き表示するようにしてもよい。
【0041】
また上記実施形態では、印刷する画像データは印刷データ50としてPC39から随時送信される。例えば印刷データをプリンタ1が内蔵するメモリに予め記憶させておいてもよい。例えば図4に示すフラッシュメモリ45(本発明の記憶手段の一例である)に記憶させておいてもよい。この場合、メモリに記憶した印刷データを元に突出回数(N)取得してもよい。なお上記実施形態では、フラッシュメモリ45は備えていなくてもよい。加えて、印刷データが記憶されたUSBメモリや各種のメモリカードをUSBインタフェースに接続して、これらのメモリから印刷データを取得してもよい。
【0042】
また上記実施形態では、プリンタ1の印刷機構3は平板状の板体で形成された筐体5で覆われているが、このような筐体5が無いプリンタにも適用可能である。例えば、印刷機構3が露出しており、印刷中にプラテンがプリンタの前側部から突出する方向に繰り返し搬送されるようなプリンタの場合、前側部を基準位置とし、その基準位置から突出してプラテンが搬送される突出回数をディスプレイに表示するようにしてもよい。また筐体5は特に前面カバー6などのカバーを有さないフレーム状の枠体であってもよい。この場合、図2に示す前側フレーム部材5Aに相当する枠体の最前位置を基準位置とすることによって、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
また上記実施形態では、突出回数(N)をディスプレイ9に表示するようにしているが、音声で報知してもよい。また突出回数(N)をランプ等の発光手段で報知するようにしてもよい。この場合、例えば発光手段を点灯させる個数、点滅回数を調整することにより、突出回数(N)を報知するようにすればよい。また、終了突出回数(M)を表示せずに、突出回数(N)だけを表示してもよい。作業者は突出回数(N)がわかるので、印刷の際にプラテンが突出される回数を数えれば、突出回数(N)よりも少なければ印刷途中であり、突出回数(N)と同じであれば印刷が終了したことを把握することができる。
【0044】
上記実施形態では、印刷領域に先に白色インクを吐出した後に、その白色領域の上にCMYKの色インクを吐出する印刷を行う場合に、より白色の濃度を濃くするために、白インクによる印刷を複数回繰り返して印刷したがこの場合に限られない。Tシャツの地色にかかわらず、より鮮明に画像を印刷するために、同じ印刷領域に対してホワイトインクや各色のインクによる印刷を複数回繰り返して行う場合にも当然に適用可能である。その他、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。また、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 プリンタ(インクジェット記録装置)
3 印刷機構
5 筐体
7 開口
9 ディスプレイ
13 記録ヘッド
15 キャリッジ
16 記録ヘッド
19 Y軸ガイドレール
20 プラテン
30 CPU
32 RAM
41 X軸モータ
42 Y軸モータ
45 フラッシュメモリ
50 印刷データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体内に設けられ、被記録媒体にインクを噴射して記録を行う記録ヘッドと、
前記筐体内に出退可能に設けられ、前記被記録媒体を前記記録ヘッドに対して相対移動可能に支持するプラテンと、
前記プラテンを前記筐体内外において搬送する送り機構と、
印刷データに基づき、前記記録ヘッドと前記送り機構とを制御する制御手段と
を備えたインクジェット記録装置であって、
前記制御部は、
前記送り機構が前記プラテンを前記筐体から外側に突出する方向に搬送する突出回数を取得する突出回数取得手段と、
前記突出回数取得手段によって取得された前記突出回数を報知する報知手段と
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記印刷データを取得する印刷データ取得手段を備え、
前記突出回数取得手段は、
前記印刷データ取得手段によって取得された前記印刷データに基づいて前記突出回数を取得することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記印刷データを記憶する記憶手段を備え、
前記突出回数取得手段は、
前記記憶手段に記憶された前記印刷データに基づいて前記突出回数を取得することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
表示部を備え、
前記報知手段は、前記表示部に前記突出回数取得手段が取得した前記突出回数を表示して報知することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドは、
前記被記録媒体上に前処理用のインクを噴射する前処理用ヘッドと、
前記前処理がなされた前記被記録媒体上に後処理用のインクを噴射する後処理用ヘッドと
を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
被記録媒体にインクを噴射して記録を行う記録ヘッドと、
前記被記録媒体を前記記録ヘッドに対して相対移動可能に支持するプラテンと、
前記プラテンを走査方向一方側及び他方側に搬送する送り機構と、
印刷データに基づき、前記記録ヘッドと前記送り機構とを制御する制御手段と
を備えたインクジェット記録装置であって、
前記送り機構が前記印刷データの印刷を行う場合、前記プラテンを前記一方側へ基準位置から突出させて搬送してから、前記他方側へ搬送するときの突出回数を取得する突出回数取得手段と、
前記突出回数取得手段によって取得された前記突出回数を報知する報知手段と
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−43386(P2013−43386A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183254(P2011−183254)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】