説明

インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置及び画像形成方法

【課題】 顔料インクの構成成分を単純化し、OD(光学濃度)が高く、各色画像の境界部における混色(ブリード)が有効に抑制された画像を得ることのできるインクセットを提供すること。
【解決手段】 少なくとも水、色材及び水溶性有機溶剤を含有し、互いに異なる色の複数の水性インクを具備するインクセットにおいて、該水性インクの少なくともひとつが含有する色材が、顔料粒子表面に少なくとも1つのイオン性基を直接若しくは他の原子団を介して結合している自己分散型顔料であり、各水性インクの少なくとも1色が、該自己分散型顔料に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を少なくとも1種類含有し、該貧溶媒が該自己分散型顔料に対して完全に若しくは実質的に溶媒和せず、且つ該イオン性基が上記貧溶媒中において完全に若しくは実質的にイオン解離しない関係を有することを特徴とするインクセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、水溶性有機溶剤及び顔料を含有する水性インクからなるインクセットに関し、より詳しくは、インクジェット記録方式を用いた記録装置、更には、インクジェット記録方法(画像形成方法または記録方法)に好適なインクセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着色剤として顔料を含むインク(顔料インク)は、耐水性や耐光性等の堅牢性に優れた画像を与えることが知られている。近年、このようなインクによって形成されてなる画像の光学濃度をより一層向上すること、及び互いに異なる色の領域が隣接しているカラー画像記録を行った場合に、各色画像の境界部における混色(ブリード)を有効に抑制することを目的として、種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、自己分散型カーボンブラックと特定の塩とを含有させてなるインクを用いることにより、画像濃度のより一層の向上を達成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、顔料、ポリマー微粒子、水溶性有機溶剤及び水を含む組成物であるインクジェット記録用インクと、多価金属塩含有水溶液とを記録媒体に付着させ、該インク組成物と多価金属塩水溶液とを反応させて、高品位な画像を形成する技術の提案がある(例えば、特許文献2参照)。これらの技術では、いずれの場合も、インク中に分散状態で存在している顔料を、記録媒体表面で強制的に凝集させることによって記録媒体中への顔料の浸透を抑制し、より一層濃度が高く、ブリードが抑制された画像を得ている。
【特許文献1】特開2000−198955公報
【特許文献2】特開2000−63719公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インクの構成成分はより単純化されることが好ましく、一般的に水性インクを形成する基本成分、例えば、色材や水溶性有機溶剤等の適切な設計及び組み合わせ等を制御することにより、上記と同様な高品位画像が形成されることが望まれていた。
【0005】
従って、本発明の目的は、顔料インクにおいて、インクの構成成分を単純化し、外的要因への依存性を極力排除することにより、複合作用等によって生じる弊害を抑制し、OD(光学濃度)が高く、互いに異なる色の領域が隣接しているカラー画像記録を行った場合に、各色画像の境界部における混色(ブリード)が抑制された画像を得ることのできるインクセットを提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の目的は、かかるインクセットを用いることで、ODの高い、ブリードが抑制された高品位な画像を形成することのできるインクジェット記録方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、上記記録方法に好適に用いることのできるインクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【0008】
更に、本発明の他の目的は、普通紙に互いに異なる色の領域が隣接しているカラー画像記録を行った場合に、各色画像の境界部における混色(ブリード)を有効に抑制することができる画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、少なくとも水、色材及び水溶性有機溶剤を含有し、互いに異なる色の複数の水性インクを具備するインクセットにおいて、該水性インクの少なくともひとつが含有する色材が、顔料粒子表面に少なくとも1つのイオン性基を直接若しくは他の原子団を介して結合している自己分散型顔料であり、各水性インクの少なくとも1色が、該自己分散型顔料に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を少なくとも1種類含有し、該貧溶媒が該自己分散型顔料に対して完全に若しくは実質的に溶媒和せず、且つ該イオン性基が上記貧溶媒中において完全に若しくは実質的にイオン解離しない関係を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、顔料インクにおいて、OD(光学濃度)が高く、互いに異なる色の領域が隣接している画像記録を行った場合に、各色画像の境界部における混色(ブリード)を有効に抑制することができるインクセットを提供できる。また、本発明によれば、かかるインクセットを用いることで、ODが高く、ブリードが抑制された高品位な画像を形成することのできるインクジェット記録方法、上記記録方法に好適に用いることのできるインクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置を提供できる。更に、本発明によれば、普通紙に互いに異なる色の領域が隣接しているカラー画像記録を行った場合に、各色画像の境界部における混色(ブリード)を有効に抑制することができる画像形成方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。まず、本発明における貧溶媒、及び良溶媒について説明する。その定義の詳細については後述するが、色材として顔料粒子表面に少なくとも1つのイオン性基を直接若しくは他の原子団を介して結合している顔料を用いた場合、当該水溶性有機溶剤に対する上記顔料の分散安定性が良いものを良溶媒とし、悪いものを貧溶媒としている。
【0012】
本発明の特徴は、水性インクを構成する基本成分である色材と水溶性有機溶剤との組み合わせに着目し、該色材として顔料粒子表面に少なくとも1つのイオン性基を直接若しくは他の原子団を介して結合している自己分散型顔料を用い、該自己分散型顔料を分散させる機能を有する水溶性有機溶剤を、当該自己分散型顔料に対して、上記した貧溶媒としての挙動を示すもの、及び良溶媒としての挙動を示すものに分類し、該自己分散型顔料と水溶性有機溶剤とが前記の特定の関係にあるように構成した点にある。かかる水性インクを組み合わせたインクセットを用いることにより、従来、水性インクによる画像形成において種々の課題があった普通紙に対しても、ブリードの軽減された画像が得られ、更に、ODの高い画像の形成が可能なインクが得られる。また、かかるインクセットを用いることで、高速印字、記録装置の小型化が図られ、しかも、堅牢性に優れ、より一層高い画像濃度を実現でき、ブリードの軽減された高品位な画像の形成が可能となる、という顕著な効果が得られることを見いだし、本発明に至ったものである。
【0013】
本発明にかかるインクセットは、少なくとも水、水溶性有機溶剤及び色材を含有する、異なる色の水性インクを組み合わせて用いるインクセットにおいて、該色材が、顔料粒子表面に少なくとも1つのイオン性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している自己分散型顔料であり、各水性インクの少なくとも1色が、該自己分散型顔料に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を少なくとも1種類含有し、該貧溶媒が該自己分散型顔料に対して完全に若しくは実質的に溶媒和せず、且つ該イオン性基が上記貧溶媒中において完全に若しくは実質的にイオン解離しない関係を有することを特徴とする。かかるインクセットがインクの状態であるときには、水と、自己分散型顔料の貧溶媒を含む水溶性有機溶剤と、自己分散型顔料とは所定の比率で混合され、顔料の分散状態が保たれている。
【0014】
本発明によってこのような効果が得られる理由は明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。一般に、普通紙等の記録紙上に水性インクで画像を形成した場合に、優れた印字濃度及び印字品位を実現させるためには、色材をより効率的に紙面上に残すことが必要である。また、互いに異なる色の領域が隣接しているカラー画像記録を行った場合に、各色画像の境界部における混色(ブリード)が抑制された画像を得るためには、境界部における色材の隣接領域への流出が抑制されることが必要である。
【0015】
即ち、図10(a)に示したように、本発明のインク滴101が、記録媒体100、例えば、普通紙上、に印字された場合には、インクが記録媒体上に着弾した瞬間から、インク中の水と水溶性有機溶剤と色材との比率は変化していく。つまり、インク滴の記録媒体表面への着弾後にインクが記録媒体へと定着していくにつれて、水の蒸発と共に、まず、インク中の水溶性有機溶剤が率先して記録媒体内部へ浸透していくと考えられる。
【0016】
この場合、図10(b)に示したドットの中心部102と比べて浸透液体外周部103において水溶性有機溶剤の濃度が高くなっていると考えられる。この結果、浸透液体外周部103において色材に対する水溶性有機溶剤の比率が急激に増加し、該水溶性有機溶剤の構成成分に、色材に対して貧溶媒となるものが含有される場合、若しくは色材に対して実質的に溶媒和せず、且つ色材のイオン性基を実質的にイオン解離させないものが含有される場合、色材の分散が不安定化し、色材の凝集若しくは分散破壊が起こり、析出し始める。
【0017】
そして図10(c)に示したように、凝集若しくは分散破壊により析出した色材104によって、ドットの外縁部分に、あたかも土手が形成されたかのようになる。それに引き続き、ドットの中心部においても水分や水溶性有機溶剤の蒸発や浸透等が進行し、逐次色材が析出して最終的なドット105が形成される(図10(d))。
【0018】
上記したようなプロセスによって形成された画像は、インクが記録媒体上に着弾後の初期過程において、色材の記録媒体内部への浸透深さや広がりの程度が確定するため、過度な記録媒体中への色材の浸透や隣接領域への流出が抑えられ、結果としてOD(光学濃度)が高く、ブリードが有効に抑制された高品位なものとなる。
【0019】
[良溶媒・貧溶媒の判別方法]
上記したような想定メカニズムの下で、本発明に用いる良溶媒及び貧溶媒は、顔料の分散状態を良好に維持できるか否かによって決定される。従って、本発明にかかるインクセットに用いる水性インクの調製にあたって、良溶媒と貧溶媒とを選択する場合には、使用する顔料の分散状態の安定度を観察し、その結果から求めることが好ましい。そして本発明者らは、本発明の効果をもたらす良溶媒と貧溶媒との判定の基準を、本発明の効果との関連の下で種々検討した。その結果、判定しようとする溶媒50質量%程度を含み、且つ当該インクに用いる顔料を分散状態で含む顔料分散液を、60℃で、48時間保存したときの当該分散液の顔料粒径が、判定しようとする溶媒を含まない、若しくは少量含み、且つ当該インクに用いる顔料を分散状態で含む顔料分散液の顔料粒径と比較して増加しているものを貧溶媒とし、判定しようとする溶媒を含まない、若しくは少量含み、且つ当該インクに用いる顔料を分散状態で含む顔料分散液と同じか、或いは減少しているものを良溶媒と定義した場合に、本発明の効果との整合性が極めて良いことを見いだした。
【0020】
より具体的には、下記の方法で、特定の顔料に対して使用する溶媒が、良溶媒となっているか、或いは貧溶媒となっているかの判定を行った。まず、下記の2つの顔料分散液A及びBを調製する。
顔料分散液A:判定対象としての水溶性有機溶剤の濃度が50質量%、顔料の濃度が5質量%、水の濃度が45質量%である組成の顔料分散液
顔料分散液B:顔料の濃度が5質量%の、水溶性有機溶剤を含まない顔料分散液
【0021】
次に、上記顔料分散液Aを60℃で48時間保存した後に常温に冷ました顔料分散液Aの顔料粒径を、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR−1000;大塚電子製)等を用いて測定した。また、同様にして上記顔料分散液Bの顔料粒径を、上記濃厚系粒径アナライザーを用いて測定した。そして、上記顔料分散液A及び顔料分散液Bの各々の顔料粒径を、粒径(A)、粒径(B)としたときに、これらの値の関係から、次の定義に従って当該判定対象としての水溶性有機溶剤を良溶媒と貧溶媒とに判別した。粒径(A)が粒径(B)よりも大きい場合、当該判定対象としての水溶性有機溶剤を貧溶媒とし、粒径(A)と粒径(B)と同じか、或いは粒径(A)が粒径(B)よりも減少した場合、当該判定対象としての水溶性有機溶剤を良溶媒として定義した。このようにして判定された良溶媒と貧溶媒とを用いて本発明の構成を有するインクを調製したところ、上記したような優れた効果を得られることが確認できた。
【0022】
[溶媒和・イオン解離の定義]
次に、ある水溶性有機溶剤が、顔料粒子表面に少なくとも1つのイオン性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している顔料に対して、完全に若しくは実質的に溶媒和せず、且つ顔料のイオン性基が該水溶性有機溶剤中で完全に若しくは実質的にイオン解離を生じないという現象に関して説明する。
【0023】
顔料粒子を分散させる一つの因子としてイオン解離から生じる静電反発がある。顔料粒子表面に少なくとも1つのイオン性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している顔料においては、媒体中でイオン性基がイオン解離を生じることにより顔料粒子が帯電し、その結果生じる静電反発力が、顔料粒子を媒体中に分散させる一つの因子となる。このイオン解離の指標となるものの一つとして、媒体中におけるイオン間の吸引力が考えられる。互いに極性の異なる二つの電荷qとqが、真空の誘電率εに対する比誘電率εの媒体中で距離r離れたところにおかれたとき、二つの電荷に働く吸引力Fは、
【0024】
【数1】

【0025】
で表されることが知られている。
【0026】
顔料粒子表面に結合しているイオン性基においても上記式1が適用されると考えられ、この吸引力Fが増大すると、イオンとそのカウンターイオン間の距離は短くなる、若しくは完全にイオン同士がイオン結合してしまい、顔料粒子の帯電量が減少若しくは電気二重層が圧縮されるために静電反発力が弱まり、顔料粒子の分散が不安定化する。そして上記式1から、真空の誘電率εに対する比誘電率εが小さい水溶性有機溶剤を用いた場合において、顔料粒子表面に結合しているイオン性基のイオン間吸引力が増大し、色材のイオン性基が水溶性有機溶剤中で実質的にイオン解離していなく、静電反発力による顔料粒子の分散性が低下することが明らかである。本発明における水溶性有機溶剤の、真空の誘電率εに対する比誘電率εの常温(例えば25℃)での値は、好ましくは35以下、より好ましくは30以下である。
【0027】
しかしながら、顔料の分散性をイオン性基の溶媒に対する解離度だけで説明することは困難であった。
【0028】
そこで、本発明者らは、顔料粒子の分散に影響を与えるもう一つの因子として、媒体の顔料に対する溶媒和に注目した。本発明における溶媒和とは、顔料と溶媒の親和性であり、顔料が媒体と親和性のある部位をどの程度有しているかに依存する。媒体と親和性のある部位の一例としては、イオン性基が結合されていない顔料粒子表面部位が挙げられる。例えば、イオン性基を有する基が高密度で顔料粒子表面に結合している場合、媒体と親和性のある顔料粒子表面部位の露出面積は小さくなり、更に高密度で顔料粒子表面を覆っているイオン性基による立体障害の影響との相乗効果により、媒体は顔料に対して溶媒和しにくくなり、顔料の分散性が低下すると推測される。
【0029】
上記イオン性基のイオン解離から生じる静電反発による分散、及び媒体の顔料に対する溶媒和による分散が完全に若しくは実質的に起こらないような顔料と水溶性有機溶剤の組み合わせを水性インクに適用した時、記録媒体において前述したプロセスによって画像が形成されるため、OD(光学濃度)が高く、ブリードが有効に抑制された高品位な画像が得られる。
【0030】
以下に、水溶性有機溶剤が顔料に対して完全に若しくは実質的に溶媒和せず、且つ顔料のイオン性基が水溶性有機溶剤中で完全に若しくは実質的にイオン解離しない、実質的に顔料が水溶性有機溶剤に対して分散しないことを判定する方法の一例を説明する。
【0031】
まず、顔料粒子表面に少なくとも1つのイオン性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している顔料のイオン性基が、イオン解離していない状態の顔料を準備する。顔料を調製する過程において上記条件に適合するものがあればそれを用い、イオン解離を生じて分散している顔料分散液やインクの形態であれば、媒体等の顔料以外の成分を洗浄や蒸発等によって除去し、イオン性基がイオン解離していない固体状態の顔料を調製する。具体的には限外ろ過や遠心分離、減圧・高温環境下による乾燥等が有効である。得られた顔料は、乳鉢等により粉末状に粉砕しておくことが望ましい。
【0032】
次に、上記のようにして得た顔料の粉砕物を各種水溶性有機溶剤中に0.05質量%の濃度で加え、1時間程度撹拌する。この時点で、明確な固液相分離が目視により確認できる顔料と水溶性有機溶剤との組み合わせもある。これらの固液相分離を生じた組み合わせは、水溶性有機溶剤が顔料に対して完全に若しくは実質的に溶媒和せず、且つ顔料のイオン性基が水溶性有機溶剤中で完全に若しくは実質的にイオン解離しない、実質的に顔料が水溶性有機溶剤に対して分散しないものであると判断できる。
【0033】
更に、判定を確実に行うには以下のようにする。水溶性有機溶剤に対して実質的に分散していない顔料をある程度沈降させるために、上記顔料と水溶性有機溶剤の混合物を静置する。この際の静置条件は溶剤の粘度等にも依存するが、目安として常温で約100時間である。その後、液相の上部50質量%を静かに採取し、浮遊している粗大粒子を除去する目的で採取した液相のろ過を行う。ろ過に用いるミクロフィルターのポアサイズは顔料の粒径に依存して決定するが、目安としては水分散液における顔料の平均粒径の約10倍程度が挙げられる。その後、得られたろ液(色材溶剤分散液)中に含まれる顔料濃度を測定する。
【0034】
顔料濃度の測定方法の一例として、吸光度による測定が挙げられる。具体的には下記のようにして測定する。既知濃度(Ck質量%)の色材が水中に分散された色材の水分散液に、所定量の純水を加えて所定倍率に希釈し、ある波長における(例えば黒顔料の場合550nm)吸光度を測定する。この吸光度の測定値を(ABS1)とする。次に濃度を求めたい色材溶剤分散液を上記と同様の倍率に純水で希釈し、同様に先ほどと同じ波長における吸光度を測定する。この吸光度の測定値を(ABS2)とする。その結果、色材溶剤分散液中の色材濃度は以下の式により算出される。
【0035】
【数2】

【0036】
上記のようにして求めた色材溶剤分散液中の色材濃度と、色材と水溶性有機溶剤の混合物中の初期色材濃度(上記の例では0.05質量%)の比率を用いて、色材溶剤分散率(%)を以下のように定義する。
【0037】
【数3】

【0038】
上記のようにして求めた色材溶剤分散率が例えば16以下、好ましくは10以下、更に好ましくは5以下といった非常に小さいものに関しては、実質的に色材が水溶性有機溶剤に対して分散していないと判断でき、水溶性有機溶剤が色材に対して完全に若しくは実質的に溶媒和せず、且つ色材のイオン性基が水溶性有機溶剤中で完全に若しくは実質的にイオン解離していないと考えられる。
【0039】
上記した判定方法に加えて使用できる、顔料が水溶性有機溶剤と完全に若しくは実質的に溶媒和しない顔料であることを判定する方法や、顔料のイオン性基が水溶性有機溶剤中で完全に若しくは実質的にイオン解離していないことを判定する方法の一例についても説明する。
【0040】
まずは、顔料が水溶性有機溶剤と完全に若しくは実質的に溶媒和しない顔料であることを判定する方法の一例についてであるが、これは顔料に対して界面活性剤がどの程度吸着するかを測定することにより判定が可能である。前記したように、溶媒和の程度は顔料が水溶性有機溶剤等の媒体と親和性のある部位をどの程度有しているかに依存し、上記部位の多少・大小は界面活性剤の吸着量と相関があるといえる。つまり、水溶性有機溶剤等の媒体と実質的に溶媒和する顔料では、上記親和性のある部位が多くまたは大きく、界面活性剤の吸着量も大きくなる。逆に、水溶性有機溶剤等の媒体と完全に若しくは実質的に溶媒和しない顔料では、上記親和性のある部位が少なくまたは小さく、界面活性剤の吸着量も非常に小さくなる。
【0041】
界面活性剤はその濃度によって液体の表面張力が顕著に変化するという特性を有するため、顔料に対して界面活性剤がどの程度吸着しているかを見積もる1つの指標として、表面張力の測定は有効な手段であると考えられる。例えば、ある一定濃度の界面活性剤を含有する水溶液の表面張力と、同濃度の界面活性剤と一定濃度の顔料及び水からなる液体の表面張力を比較したとき、顔料に対して界面活性剤がほとんど吸着しない場合、表面張力の低下に寄与する界面活性剤の有効濃度は両方の液体でほぼ等しくなるため、液体の表面張力もほぼ等しくなる。逆に、顔料に対する界面活性剤の吸着量が大きい場合は、顔料を含有する液体において界面活性剤の有効濃度が低下するため、顔料を含有しない界面活性剤水溶液に比べて表面張力の低下の度合いは小さくなる。つまり、顔料に液体の表面張力を顕著に低下させる効果が無い限り、ある一定濃度の界面活性剤を含有する水溶液の表面張力と、同濃度の界面活性剤と一定濃度の顔料及び水からなる液体の表面張力の差から、顔料に対して界面活性剤がどの程度吸着しているかを見積もることが可能である。
【0042】
具体的には、まず界面活性剤と水からなり、界面活性剤の濃度が2mmol/kgである液体(液体1)と、該界面活性剤、顔料及び水からなり、界面活性剤の濃度が2mmol/kgで、顔料の濃度が5質量%である液体(液体2)を調製する。界面活性剤としては、その濃度によって液体の表面張力を顕著に変化させるものであれば特に制限はなく、上記(液体1)の表面張力が50mN/m以下となるものが好適である。好適に用いられる界面活性剤としては、下記構造式(1)や構造式(2)で示される構造を有するものが挙げられる。
【0043】
【化1】

【0044】
【化2】

【0045】
上記(液体2)を調製する際に、顔料をインク形態から採取する場合には、限外ろ過や遠心分離、減圧・高温環境下による乾燥等を用いて、顔料以外の成分を極力除去しておくことが好ましい。顔料以外の成分、例えばインク中に含有される溶剤や界面活性剤や添加剤等が多く残っていると、それらの成分によって液体の表面張力が変化したり、顔料に対する界面活性剤の吸着度合いが変化したりする可能性があるため、正確な判定結果が得られないおそれがあるからである。インクから採取された顔料と水からなり、顔料の濃度が5質量%である液体の表面張力が65mN/m以上となることが好ましい。
【0046】
上記の手順で調製した(液体1)及び(液体2)を十分撹拌した後、それぞれの表面張力を測定する。(液体1)の表面張力をA(mN/m)、(液体2)の表面張力をB(mN/m)としたとき、B−A≦10、好ましくはB−A≦5の関係が満たされる時、顔料に対して界面活性剤は完全に若しくは実質的に吸着していないと判断され、このような顔料は水溶性有機溶剤等の媒体とも完全に若しくは実質的に溶媒和しない顔料であると判定される。
【0047】
次に、顔料のイオン性基が水溶性有機溶剤中で完全に若しくは実質的にイオン解離していないことを判定する方法の一例について説明する。例えば、かかる判定は、粒子の電気泳動測定やゼータ電位の観測により可能である。顔料のイオン性基が水溶性有機溶剤中で解離を生じる場合、顔料は電荷を帯びるため電場の存在化においてその極性に応じた特定の方向への移動、いわゆる電気泳動が起こる。また、このような電気泳動を起こす、電荷を帯びた顔料は、該水溶性有機溶剤中においてゼータ電位の絶対値として一定以上の値を有している。逆に言えば、イオン性基を有しているにもかかわらず、電場の存在化で特定方向への移動が完全に若しくは実質的にない、つまり完全に若しくは実質的に電気泳動が起こらず、ゼータ電位の絶対値としても(非常に)小さい値を有する顔料は、該水溶性有機溶剤中において完全に若しくは実質的に電荷を帯びていない、すなわち顔料のイオン性基が完全に若しくは実質的にイオン解離していないと考えられる。
【0048】
具体的には、まず顔料若しくは顔料を含有するインクを各種水溶性有機溶剤で希釈する。顔料を含有するインクを用いた場合には、水や媒体等の顔料以外の成分も希釈液中に含まれてしまうわけであるが、非常に薄い濃度にまで希釈を行うため、それらの影響はほとんどなく、大過剰に存在する該水溶性有機溶剤と該顔料との相互作用が支配的であるとみなすことができる。
【0049】
この希釈液を、実際の粒子の動きが観察可能な顕微鏡方式ゼータ電位測定器(商品名:ZEECOM;マイクロテック・ニチオン製)を用い、電圧を加えた時に粒子が特定の方向へ完全に若しくは実質的に移動せず、完全に若しくは実質的に電気泳動しないと判断される場合、若しくは測定されたゼータ電位の絶対値が(非常に)小さい場合、該顔料のイオン性基が該水溶性有機溶剤中で完全に若しくは実質的にイオン解離していないと判断する。
【0050】
ところで、普通紙上に、互いに異なる色の領域が隣接しているカラー画像を形成する場合において、本発明にかかるインクセットを用いれば、上記で述べたように、紙面上で各色の水性インクを構成している色材の凝集若しくは分散破壊が、他のインクと比べて比較的早く進行すると考えられる。
【0051】
本発明における画像形成方法では、本発明のインクセットを構成するある色のインクによる画像形成の後に、それと異なる色のインクによる画像形成を行うことで、より好ましくは、ある色のインクを付与する走査を行った後に、少なくとも1走査以上、間をおいた後にそれと異なる色のインクを付与する走査を行うことで、複数の色のインクが接触しても紙面上で混色滲みが起こらず、ブリードが有効に抑制された画像形成が可能となる。即ち、異なる色のインクによる画像形成を時間差をもって行うことのみで、複数回の走査で印字を完成する印字時間を要するマルチパス印字を行う方法や、互いに反応性を有する色ごとに回復系を別々にするといった機器の大型化を招く方法を必要とすることなく、上記の優れた効果が得られる。
【0052】
本発明にかかるインクセットに用いる水性インクは、インク成分中の水溶性有機溶剤を、使用する顔料との関連において、上記で説明した構成とすることを特徴とするが、それ以外は、従来の水性インクと同様の構成とすればよい。下記に、本発明のインクを構成する水性媒体、色材及びその他の成分について説明する。
【0053】
<水性媒体>
まず、顔料を分散する水性媒体について説明する。本発明にかかるインクセットに用いる水性インクは、水及び水溶性有機溶剤との混合溶媒を含むが、水溶性有機溶剤を選択する際に、先に述べた方法で、まず、使用する自己分散型顔料に対する良溶媒と貧溶媒とに判別し、かかる判定結果を踏まえて、その後に、貧溶媒を少なくとも1種類含有するようにインクを調製することが必要となる。本発明の効果がより顕著に発揮されるためには、インクセットに用いられる水性インクの各色全てが貧溶媒を含有することが特に好ましい。
【0054】
水溶性有機溶剤としては、先に述べた方法で判定された、上記条件を満たすものであれば特に限定はされず、貧溶媒単独では勿論のこと、2種類以上を混合して用いることや、色材に対して良溶媒となるものと合わせて使用することも可能である。良溶媒を含有させる場合、インク中の良溶媒の全量(質量%)をX、インク中の貧溶媒の全量(質量%)をYとした場合に、これらの比率X:Yが1:2以下の範囲となるように、インクを構成する水溶性有機溶剤の種類と含有量を調整することが好ましい。比率X:Y=1:2以下ということは、Yを2としたときにYが0以上30以下ということを意味する。
【0055】
また、本発明においては、水溶性有機溶剤の含有量がインク全質量に対し1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%の範囲である。更に、インク中の貧溶媒の総量が、色材に対して質量比で2倍以上含有されている水性インクの形態において、本発明の効果がより顕著に発揮される。なお、水としては、脱イオン水を使用することが好ましく、水の含有量はインク全質量に対し50〜95質量%であることが好ましい。
【0056】
更に、本発明にかかるインクセットに用いる水性インクにブラックインクが含まれる場合、該ブラックインク中における全貧溶媒の量(質量%)が、インクセットに用いるその他の各水性インク中における全貧溶媒の量(質量%)に比べて少ない場合、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0057】
<色材>
次に、本発明にかかるインクセットに用いる水性インクを構成する色材について説明する。本発明の水性インクを構成する色材としては、顔料粒子表面に少なくとも1つのイオン性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している自己分散型顔料が使用される。この条件を満たす限りであれば、特に限定はされないが、とりわけジアゾカップリング法を用いてイオン性基を有する化合物を顔料粒子表面に結合させた自己分散型顔料を好適に用いることができる。これらの自己分散型顔料は単独では勿論のこと、2種類以上を混合して用いることも可能である。
【0058】
とりわけ、ジアゾカップリング法を用いて、−COOM1、−SOM1及び−POH(M1)(式中のM1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わす)からなる群から選ばれる少なくとも1種を、顔料粒子表面に直接若しくは他の原子団を介して結合された自己分散型顔料を好適に用いることができる。更に、上記他の原子団が、炭素原子数1〜12のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基または置換若しくは未置換のナフチレン基であるもの等を好適に用いることができる。このような顔料に関しては、例えば特許文献(WO97/476993)に記載されてはいるものの、顔料と水溶性有機溶剤の詳細な関係についてまでは述べられていない。なお、上記イオン性基の中でも、−COOM1が顔料粒子表面に直接若しくは他の原子団を介して結合された顔料においては、比較的耐水性が発現し易いため、より好適に用いることができる。
【0059】
また、より具体的には、顔料粒子表面に−C−COOM1基や−C−(COOM1)基(式中のM1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わす)を導入したものが好適に用いることができ、とりわけ−C−(COOM1)基が導入されたものに関しては、本発明の構成において好ましい効果が発揮される。
【0060】
上記−C−COOM1基や−C−(COOM1)基の顔料粒子表面への導入量に関しては、顔料粒子の単位表面積当たりの導入量が多い方が、本発明の構成において好ましい効果が発揮される。これは前述したように、顔料に対する水溶性有機溶剤の溶媒和の程度が、イオン性基の増加と共に立体障害等によって減少するためであると考えられる。
【0061】
本発明の水性インクにおいて使用することのできる顔料は特に限定されず、下記に挙げるようなものがいずれも使用することができる。
【0062】
ブラックインクに使用される顔料としては、カーボンブラックが好適である。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックをいずれも使用することができる。具体的には、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、モナク2000、ヴァルカン(Vulcan)XC−72R(以上、キャボット製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学製)等の市販品を使用することができる。また、本発明のために別途新たに調製されたカーボンブラックを使用することもできる。しかし、本発明は、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックをいずれも使用することができる。また、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等をブラック顔料として用いてもよい。
【0063】
ブラックインク以外に使用される顔料粒子としては各種の有機顔料粒子が挙げられる。有機顔料としては、具体的には、例えば、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。勿論、これらに限定されず、その他の有機顔料であってもよい。
【0064】
また、本発明で使用することのできる有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、例えば、下記のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185等
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71等
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272等
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50等
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64等
C.I.ピグメントグリーン7、36等
C.I.ピグメントブラウン23、25、26等
等が例示できる。本発明においては、顔料の含有量がインク全質量に対し0.1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%の範囲である。
【0065】
<その他の成分>
本発明にかかるインクセットに用いる水性インクは保湿性維持のために上記した成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の保湿性化合物をインク成分として用いてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等の、保湿性化合物のインク中の含有量は、一般には、インク全質量に対し0.1〜20.0質量%、好ましくは3.0〜10.0質量%の範囲である。
【0066】
更に、本発明にかかる水性インクセットに用いるインクには、上記成分以外にも必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等の種々の添加剤を含有させてもよい。また必要に応じてポリマー等を含有させることにより、耐擦過性や耐マーカー性を向上させることも可能である。とりわけイオン性基を有しないノニオン性ポリマーは、インクの信頼性面に与える影響が少なく、好適に用いることが可能である。
【0067】
上記で説明したような構成成分からなる本発明で使用するインクは、インクジェット記録ヘッドから良好に吐出できる特性を有することが好ましい。このため、インクジェット記録ヘッドからの吐出性という観点からは、インクの特性が、例えば、その粘度が1〜15mPa・s、表面張力が25mN/m以上、更には、粘度が1〜5mPa・s、表面張力が25〜50mN/mとすることが好ましい。
【0068】
<画像形成方法>
以下、本発明にかかる画像形成方法について具体例を挙げて説明する。本発明にかかる画像形成方法は、異なる色の水性インクを組み合わせたインクセットを用いて普通紙にインクジェット記録方式で記録を行う画像形成方法であるが、それぞれの異なる色の水性インクによって形成される画像が互いに隣接してなる画像を形成する際に、ある色のインクを付与する走査を行って画像を形成した後、該画像が形成された領域にそれと異なる色のインクを付与する走査を行うことを特徴とする。以下に具体的な手法について説明する。
【0069】
本発明の画像形成方法では、各色のインクを吐出させるためのインク用吐出口列が副走査方向にずれて配置した記録ヘッドを用いることが好ましい。図8に本発明の記録方法を実施する際に使用できる記録ヘッドの一例を示した。図8において、まず、ブラックインク用吐出口列を用いてプリントヘッドを図の横方向(主走査方向)に走査することで、ブラックの画像データを1パス印字で普通紙等の記録媒体上に形成する。次に、図の縦方向(副走査方向)にブラックインクの吐出口列の距離だけ記録媒体の搬送を行い、次のプリントヘッドの主走査の往方向の過程で、シアンインクの吐出口列を用いて、先程のブラックインクにより画像形成された領域にシアンインクの画像の形成を1パス印字で行う。このときブラックインクの吐出口列は次の領域に画像形成を同時に行っている。同様にしてマゼンタインク、イエローインクによる画像の形成も順次行っていく。この繰り返しにより、ブラック及びカラー混在の画像形成を行う。
【0070】
図9に本発明の記録方法を実施する際に使用できる記録ヘッドの別の一例を示した。例示した記録ヘッドでは、図示したように、ブラックインク用吐出口列のaの部分とシアンインク用のb部分との間に、1回分の紙送り量a’分だけ距離が置かれている。このため、かかる構成の記録ヘッドでは、ブラックの画像が形成されてからカラーの画像が形成されるまでの間に、往復で1回のプリント走査分の時間差を余分に生じることになる。マゼンタ、イエローに関しても同様である。従って、図9に例示した記録ヘッドは、図8に示した構成よりも、各色間のブリード防止に対してより有利な構成となる。以上、本発明の画像形成方法について説明したが、本発明方法に使用できる記録ヘッドの形態は、図8及び図9に限定されるものではない。
【0071】
なお、記録媒体に付与するインクの色の順序としては、明度の低いもの、例えばブラックインクから順に付与していくことが、ブリード防止に対して有利となる観点からも好ましい。
【0072】
<記録方法、記録ユニット、カートリッジ及び記録装置>
次に、本発明に好適なインクジェット記録装置の一例について以下に説明する。まず、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置の主要部であるヘッドの構成の一例を図1及び図2に示す。図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は図1のA−B線での切断面図である。ヘッド13はインクを通す流路(インクノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコンまたはプラスチック板等と発熱素子基板15とを接着して得られる。発熱素子基板15は、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン等で形成される保護層16、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金等で形成される電極17−1及び17−2、HfB、TaN、TaAl等の高融点材料から形成される発熱抵抗体層18、熱酸化シリコン、酸化アルミニウム等で形成される蓄熱層19、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウム等の放熱性のよい材料で形成される基板20よりなっている。
【0073】
上記ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が突出し、インク21がヘッドのインクノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、記録媒体25に向かって飛翔する。
【0074】
図3には、図1に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図を示す。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じような発熱ヘッド28を接着して作られている。
【0075】
図4に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、また、図示した例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
【0076】
62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面の水分、塵埃等の除去が行われる。
【0077】
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0078】
51は記録媒体を挿入するための紙給部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。これらの構成により記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録の進行につれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
【0079】
なお、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワイピングのときの位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0080】
図5は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジの一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としてはインクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
【0081】
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上述のようにヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図6に示すようなそれらが一体になったものにも好適に用いられる。図6において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としてはポリウレタンを用いることが好ましい。また、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72はカートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は図4に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
【0082】
次に、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の好ましい一例としては、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成の一例を図7に示す。ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧電素子83と、オリフィスプレート81、振動板82等を支持固定するための基板84とから構成されている。インク流路80は、感光性樹脂等で形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケル等の金属に電鋳やプレス加工による穴あけ等を行うことにより吐出口85が形成され、振動板82はステンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルム及び高弾性樹脂フィルム等で形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZT等の誘電体材料で形成される。以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、歪み応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧しインク滴(不図示)をオリフィスプレート81の吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。このような記録ヘッドは、図4に示したものと同様なインクジェット記録装置に組み込んで使用される。インクジェット記録装置の細部の動作は、先述と同様に行うもので差しつかえない。
【実施例】
【0083】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例によって限定されるものではない。なお、文中「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0084】
(ブラック顔料分散液Aの調製)
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノフタル酸1.5gを加えた。次に、この溶液が入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かした溶液を加えた。この溶液を更に15分間撹拌後、比表面積が220m/gでDBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック6gを撹拌下で加えた。その後、更に15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型カーボンブラックAを調製した。更に、上記で得られた自己分散型カーボンブラックAに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、カーボンブラック粒子表面に−C−(COONa)基が導入されてなる自己分散型カーボンブラックAが水中に分散された状態のブラック顔料分散液Aを得た。
【0085】
上記で調製した自己分散型カーボンブラックAのイオン性基密度を測定したところ、3.1μmol/mであった。この際に用いたイオン性基密度の測定方法は、上記で調製したブラック顔料分散液A中のナトリウムイオン濃度をイオンメーター(東亜DKK製)を用いて測定し、その値から自己分散型カーボンブラックAのイオン性基密度に換算した。
【0086】
(ブラック顔料分散液Bの調製)
5.5gの水に2.5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノフタル酸0.7gを加えた。次に、この溶液が入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム0.9gを溶かした溶液を加えた。この溶液を更に15分間撹拌後、比表面積が220m/gでDBP吸油量が105mL/100gのであるカーボンブラック10gを撹拌下で加えた。その後、更に15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型カーボンブラックBを調製した。更に、上記で得られた自己分散型カーボンブラックBに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、カーボンブラック粒子表面に−C−(COONa)基が導入されてなる自己分散型カーボンブラックBが水中に分散された状態のブラック顔料分散液Bを得た。
【0087】
上記で調製した自己分散型カーボンブラックBのイオン性基密度を自己分散型カーボンブラックAと同様の方法で測定したところ、1.4μmol/mであった。
【0088】
(シアン顔料分散液Aの調製)
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノフタル酸1.5gを加えた。次に、この溶液が入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かした溶液を加えた。この溶液を更に15分間撹拌後、ピグメントブルー15:3を5g撹拌下で加えた。その後、更に15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型シアン顔料Aを調製した。更に、上記で得られた自己分散型シアン顔料Aに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、シアン顔料粒子表面に−C−(COONa)基が導入されてなる自己分散型シアン顔料Aが水中に分散された状態のシアン顔料分散液Aを得た。
【0089】
(シアン顔料分散液Bの調製)
5.5gの水に2.5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノフタル酸0.7gを加えた。次に、この溶液が入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム0.9gを溶かした溶液を加えた。この溶液を更に15分間撹拌後、ピグメントブルー15:3を15g撹拌下で加えた。その後、更に15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型シアン顔料Bを調製した。更に、上記で得られた自己分散型シアン顔料Bに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、シアン顔料粒子表面に−C−(COONa)基が導入されてなる自己分散型シアン顔料Bが水中に分散された状態のシアン顔料分散液Bを得た。
【0090】
(マゼンタ顔料分散液Aの調製)
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノフタル酸1.5gを加えた。次に、この溶液が入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かした溶液を加えた。この溶液を更に15分間撹拌後、ピグメントレッド122を5g撹拌下で加えた。その後、更に15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型マゼンタ顔料Aを調製した。更に、上記で得られた自己分散型マゼンタ顔料Aに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、マゼンタ顔料粒子表面に−C−(COONa)基が導入されてなる自己分散型マゼンタ顔料Aが水中に分散された状態のマゼンタ顔料分散液Aを得た。
【0091】
(マゼンタ顔料分散液Bの調製)
5.5gの水に2.5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノフタル酸0.7gを加えた。次に、この溶液が入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム0.9gを溶かした溶液を加えた。この溶液を更に15分間撹拌後、ピグメントレッド122を15g撹拌下で加えた。その後、更に15分間攪拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型マゼンタ顔料Bを調製した。更に、上記で得られた自己分散型マゼンタ顔料Bに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、マゼンタ顔料粒子表面に−C−(COONa)基が導入されてなる自己分散型マゼンタ顔料Bが水中に分散された状態のマゼンタ顔料分散液Bを得た。
【0092】
(イエロー顔料分散液Aの調製)
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノフタル酸1.5gを加えた。次に、この溶液が入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かした溶液を加えた。この溶液を更に15分間撹拌後、ピグメントイエロー74を5g撹拌下で加えた。その後、更に15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型イエロー顔料Aを調製した。更に、上記で得られた自己分散型イエロー顔料Aに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、イエロー顔料粒子表面に−C−(COONa)基が導入されてなる自己分散型イエロー顔料Aが水中に分散された状態のイエロー顔料分散液Aを得た。
【0093】
(イエロー顔料分散液Bの調製)
5.5gの水に2.5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノフタル酸0.7gを加えた。次に、この溶液が入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム0.9gを溶かした溶液を加えた。この溶液を更に15分間撹拌後、ピグメントイエロー74を15g撹拌下で加えた。その後、更に15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型イエロー顔料Bを調製した。更に、上記で得られた自己分散型イエロー顔料Bに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、イエロー顔料粒子表面に−C−(COONa)基が導入されてなる自己分散型イエロー顔料Bが水中に分散された状態のイエロー顔料分散液Bを得た。
【0094】
[顔料の水溶性有機溶剤に対する分散性の判定方法]
本発明にかかるインクセットに用いる水性インクを構成する顔料と水溶性有機溶剤との組み合わせ、つまり、水溶性有機溶剤が、顔料に対して完全に若しくは実質的に溶媒和せず、且つ、顔料粒子表面のイオン性基が、水溶性有機溶剤に対して完全に若しくは実質的にイオン解離しない組み合わせ、即ち、実質的に顔料が水溶性有機溶剤に対して分散しないと判断できる組み合わせを判定するにあたり、以下の実験を行った。
【0095】
先に述べた方法で得られた顔料と、各種の水溶性有機溶剤との組み合わせについて、自己分散型カーボンブラックA及びBを例にとり説明する。先に述べた顔料分散液を調製する過程において、110℃のオーブンで乾燥させた後、得られた自己分散型カーボンブラックA及びBをそれぞれ、乳鉢等によって粉末状にした粉砕物を用いた。そして、この顔料をそれぞれ、検討対象である各種の水溶性有機溶剤中に顔料濃度が0.05質量%となるようにして加え、1時間程度撹拌し、観察したところ、この時点で明確な固液相分離が目視によって確認できる顔料と水溶性有機溶剤の組み合わせが一部存在した。当該組み合わせにおいては、水溶性有機溶剤が、顔料に対して、完全に若しくは実質的に溶媒和せず、且つカーボンブラック粒子表面のイオン性基が水溶性有機溶剤中でイオン解離せず、実質的に顔料が水溶性有機溶剤に対して分散しないと判断できる。
【0096】
更に、以下の測定を行って、実質的に顔料が水溶性有機溶剤に対して分散しないと判断できる組み合わせを数量的に判定した。まず、上記した各顔料と各水溶性有機溶剤の混合物を常温で約100時間静置した後、液相の上部50%を採取し、ポアサイズ1.2μmのミクロフィルターを用いてろ過した。そして、得られたろ液(色材溶剤分散液)について、ろ液中に含まれる色材濃度を下記の方法によって測定した。尚、下記の方法は測定方法の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0097】
ろ液の色材濃度を、吸光光度によって下記の方法で測定した。まず、既知濃度(Ck質量%)の色材を水中に分散した色材分散液に、所定量の純水を加えて所定倍率に希釈したもののある波長における(例えば黒顔料の場合550nm)吸光度を測定する。この吸光度の測定値を(ABS1)とする。次に色材濃度を求めたい色材溶剤分散液(ろ液)を上記と同様の倍率に純水で希釈し、同様に先ほどと同じ波長における吸光度を測定し、この吸光度の測定値を(ABS2)とする。その結果、色材溶剤分散液(ろ液)中の色材濃度は以下の式により算出される。
【0098】
【数4】

【0099】
上記のようにして求めた色材溶剤分散液(ろ液)中の色材濃度と、色材と水溶性有機溶剤の混合物中の初期色材濃度(初期に設定されている濃度。上記の例では0.05質量%)の比率を用いて、特定の色材の、特定の水溶性有機溶剤に対する分散率(以下、色材溶剤分散率という)(%)を以下のように定義した。
【0100】
【数5】

【0101】
以上の測定により得られた色材溶剤分散率の値と、先に述べた固液相分離の目視による確認結果とを、下記表1に示した。尚、表中のブラック顔料A・Bは、自己分散型カーボンブラックA・Bのことである。
【0102】
【表1】

【0103】
上記表1に示した結果から、ブラック顔料Aとポリエチレングリコール600の組み合わせにおいて固液相分離が生じていることから、水溶性有機溶剤が顔料に対して完全に若しくは実質的に溶媒和せず、且つ顔料のイオン性基が水溶性有機溶剤中で完全に若しくは実質的にイオン解離せず、実質的に顔料が水溶性有機溶剤に対して分散しないと判断できる。
【0104】
更に、上記の判定に加えて、上記で用いた各顔料が、対象とする水溶性有機溶剤と完全に若しくは実質的に溶媒和しない顔料であることの判定や、更に、顔料粒子表面のイオン性基、対象とする水溶性有機溶剤に対して完全に若しくは実質的にイオン解離しないことの判定を、それぞれ以下に説明する各方法で行った。
【0105】
具体的には、まず下記構造式(1)や構造式(2)で示される構造を有する界面活性剤と水からなり、界面活性剤の濃度が2mmol/kgである液体(液体1)と、該界面活性剤、顔料(顔料A〜Dの何れかひとつ)及び水からなり、界面活性剤の濃度が2mmol/kgで、顔料の濃度が5質量%である液体(液体2)を各種用意した。(液体1)及び(液体2)は、各成分を混合し、常温条件下で約30分撹拌して調製した。
【0106】
【化3】

【0107】
【化4】

【0108】
なお、前記ブラック顔料A及びBを加えて、水中における顔料濃度が5質量%となるようにした液体の常温(25℃)における表面張力を測定したところ、全て水の常温における表面張力(72mN/m)と同等であり、ブラック顔料A及びB自身には液体の表面張力を低下させる効果がないことが確認された。
【0109】
表2に、常温における前記した(液体1)及び(液体2)の夫々についての表面張力の測定結果A及びB、並びに(液体2)と(液体1)の表面張力の差B−Aを示した。
【0110】
【表2】

【0111】
上記表2の結果から明らかなように、ブラック顔料Aにおいては(液体2)の表面張力Bと(液体1)の表面張力Aとの差B−Aは、ブラック顔料Bの場合と比較して小さな値を示した。このことから、ブラック顔料Aでは、液体の表面張力の低下に寄与する界面活性剤の有効濃度は、顔料の有無に関係なくほぼ等しいことを意味している。つまりブラック顔料Aに対して界面活性剤は、完全に若しくは実質的に吸着していないと判断され、前述した理由によりブラック顔料Aは、水溶性有機溶剤等の媒体とも完全に若しくは実質的に溶媒和しない顔料であると判定できる。
【0112】
同様の判定をイエロー顔料A・B、マゼンタ顔料A・B及びシアン顔料A・Bについて行ったところ、イエロー顔料A、マゼンタ顔料A及びシアン顔料Aは水溶性有機溶剤等の媒体と完全に若しくは実質的に溶媒和しない顔料であると判定された。
【0113】
引き続き、上記水溶性有機溶剤等の媒体と完全に若しくは実質的に溶媒和しない顔料に対して、該顔料のイオン性基が水溶性有機溶剤に対して完全に若しくは実質的にイオン解離しないことの判定を、以下の方法によって行った。上記ブラック顔料Aを例にとって説明する。
【0114】
具体的には、まずブラック顔料Aを各種の水溶性有機溶剤で非常に薄い濃度になるように希釈して評価液を調製する。希釈の目安としては、後述する顕微鏡式ゼータ電位測定器において各粒子が十分認識出来るレベルとする。上記のようにして調製した評価液に対して、実際に粒子の動きが観察可能な顕微鏡式ゼータ電位測定器(商品名:ZEECOM;マイクロテック・ニチオン製)を用いて、電圧を加えた時に粒子が特定の方向に移動するか否かの観測を行う。
【0115】
上記観測を行った結果、水溶性有機溶剤としてグリセリン等を用いた評価液中では明確な電気泳動が確認されたのに対して、ポリエチレングリコール600等の水溶性有機溶剤を用いた評価液中では粒子の特定方向への移動は確認されず、実質的に電気泳動しないと判断できる。つまりこのような水溶性有機溶剤中においては、前述した理由により、ブラック顔料Aの顔料粒子表面のイオン性基が、該水溶性有機溶剤中で完全に若しくは実質的にイオン解離しないと判断できる。
【0116】
同様の判定を、水溶性有機溶剤等の媒体と完全に若しくは実質的に溶媒和しない顔料であるイエロー顔料A、マゼンタ顔料A及びシアン顔料Aについて行ったところ、イエロー顔料A、マゼンタ顔料A及びシアン顔料Aの顔料粒子表面のイオン性基が、ポリエチレングリコール600等の水溶性有機溶剤中で完全に若しくは実質的にイオン解離しないと判定された。
【0117】
[組成が未知であるインクの検証方法]
上で述べてきた判定方法を用いて、組成が未知であるインクセットを構成するインク(溶剤検証用インク)が本発明の対象物であるか否かを識別することも可能である。検証方法について下記に説明する。
【0118】
具体的には、まず(溶剤検証用インク)中に含まれている水溶性有機溶剤の種類及び含有量の同定を行う。例えば、メタノールで所定濃度に希釈した(溶剤検証用インク)をGC/MS(商品名:TRACE DSQ;サーモクエスト(ThermoQuest)製)を用いて分析することにより、(溶剤検証用インク)中に含まれている水溶性有機溶剤の種類を同定する。
【0119】
続いて(溶剤検証用インク)から顔料成分の採取を行う。この際、顔料以外の成分、例えば、インク中に含有される溶剤や界面活性剤や添加剤等は、極力除去しておくことが好ましい。顔料と顔料以外の成分を分離する手段の一例を示すと、まず(溶剤検証用インク)を純水で約10倍に希釈し、限外ろ過装置(商品名:Centramate Low Volume;PALL製)と、分画分子量300,000のフィルターを用いて、液量が元の分量になるまで限外ろ過を行い、顔料以外の水溶性成分をろ液と共に系外に分離する。この工程を数回繰り返すことにより、顔料と純水を主成分とする液体が得られる。なお、上記工程の繰り返し回数の目安としては、顔料以外の水溶性成分、例えば、インク中に含有されていた溶剤や界面活性剤や添加剤等がろ液中にほとんど含まれなくなるまでとすること好ましい。
【0120】
次に、上記のようにして得た顔料と水を主成分とする液体を乾燥(例えば、60℃環境下)させて水分を除去した後、乳鉢等で粉末状に粉砕し、顔料を主成分とする粉末を調製する。必要に応じて、この粉末を減圧・高温(例えば100℃)環境下で乾燥(例えば、24時間)することにより、微量に残っている顔料以外の成分を除去することも可能である。上記一連の操作により、(溶剤検証用インク)から抽出された顔料を得ることができる。
【0121】
そして、この(溶剤検証用インク)から抽出された顔料、及び前記した方法で同定した(溶剤検証用インク)中に含まれる水溶性有機溶剤を用いて、前述した判定方法にのっとった試験を行い、組成が未知であるインク(溶剤検証用インク)が本発明の対象物であるか否かを判断する。
【0122】
後述する実施例及び比較例のインクセットを構成する各インクに対して、上記操作及び判定を行った結果、妥当性のある判定結果が得られたことからも、組成が未知であるインク(溶剤検証用インク)が本発明の対象物であるか否かを識別するのに、上記操作及び判定方法が有効なものであることが確認された。
【0123】
<インクの調製>
上記で調べた各水溶性有機溶剤と、各色の顔料分散液を用い、表3〜表6に記載した成分を混合し、十分に攪拌して溶解或いは分散した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過して、各色のインクを調製した。表3、4、5及び6にそれぞれブラック、シアン、マゼンタ及びイエローインクの組成(質量%)を示した。
【0124】
【表3】

【0125】
【表4】

【0126】
【表5】

【0127】
【表6】

(*)商品名:アセチレノールE−100
【0128】
<実施例1・2及び比較例1・2>
上記で調製した各色のインクを下記表7のように組み合わせ、実施例1・2及び比較例1・2のインクセットとした。
【0129】
【表7】

【0130】
<評価>
上記実施例1・2及び比較例1・2の各インクセットを用いて、下記の評価を行った。得られた評価結果を表8に示した。
【0131】
1.印字濃度
上記実施例1・2及び比較例1・2の各インクセットと、記録信号に応じて熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させる、オンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJ F600(キヤノン製)を改造したものを用い、下記のコピー用普通紙A〜Eに2cm×2cmのベタ部を含む文字印字を行い、印字1日後の2cm×2cmのベタ部の印字濃度を測定した。なお、プリンタドライバは、デフォルトモードを選択した。以下にデフォルトモードの設定条件を示した。
用紙の種類:普通紙
印刷品質:標準
色調整:自動
【0132】
上記のようにして測定した結果得られた印字濃度を用いて、下記の基準で評価した。
・ブラックインク
○:5紙の印字濃度の平均が1.4以上
×:5紙の印字濃度の平均が1.4未満
・シアン、マゼンタ、イエローインク
○:5紙の印字濃度の平均が1.1以上
×:5紙の印字濃度の平均が1.1未満
上記画出し試験において、コピー用紙は以下に示すものを用いた。
A:キヤノン製、PPC用紙NSK
B:キヤノン製、PPC用紙NDK
C:ゼロックス製、PPC用紙4024
D:フォックスリバー製、PPC用紙プローバーボンド
E:ノイジドラ製、キヤノン用PPC用紙
2.耐ブリード性
上記各インクセットと上記したインクジェット記録装置とを用いて、ブラック及びカラー各色(イエロー、マゼンタ、シアン)のベタ部を隣接して印字し、各色の境界部でのブリードの程度を目視により観察し、下記の基準で評価した。なお、ここで用いた普通紙にはキヤノン製PB−Paper(NSK紙)を用いた。
AA:ブリードを視認できない
A:ブリードは殆ど目立たない
B:ブリードはしているが、実質上問題のないレベルである
C:色の境界線がハッキリしないほどブリードしている
【0133】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】インクジェット記録装置ヘッドの縦断面図である。
【図2】インクジェット記録装置ヘッドの縦横面図である。
【図3】図1に示したヘッドをマルチ化したヘッドの外観斜視図である。
【図4】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
【図5】インクカートリッジの縦断面図である。
【図6】記録ユニットの一例を示す斜視図である。
【図7】記録ヘッドの構成の一例を示す図である。
【図8】本発明に用いる記録ヘッドの一例である。
【図9】本発明に用いる記録ヘッドの一例である。
【図10】本発明にかかるインク滴が記録媒体表面に着弾したときの様子を模式的に説明するための図である。
【符号の説明】
【0135】
13 ヘッド
14 インクノズル
15 発熱素子基板
16 保護層
17−1、17−2 電極
18 発熱抵抗体層
19 蓄熱層
20 基板
21 インク
22 吐出オリフィス(微細孔)
23 メニスカス
24 インク小滴
25 記録媒体
26 マルチノズル
27 ガラス板
28 発熱ヘッド
40 インク袋
42 栓
44 インク吸収体
45 インクカートリッジ
51 紙給部
52 紙送りローラー
53 排紙ローラー
61 ブレード
62 キャップ
63 インク吸収体
64 吐出回復部
65 記録ヘッド
66 キャリッジ
67 ガイド軸
68 モーター
69 ベルト
70 記録ユニット
71 ヘッド部
72 大気連通口
80 インク流路
81 オリフィスプレート
82 振動板
83 圧電素子
84 基板
85 吐出口
100 記録媒体
101 インク滴
102 ドットの中心部
103 浸透液体外周部
104 析出した色材
105 最終的なドット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水、色材及び水溶性有機溶剤を含有し、互いに異なる色の複数の水性インクを具備するインクセットにおいて、該水性インクの少なくともひとつが含有する色材が、顔料粒子表面に少なくとも1つのイオン性基を直接若しくは他の原子団を介して結合している自己分散型顔料であり、各水性インクの少なくとも1色が、該自己分散型顔料に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤を少なくとも1種類含有し、該貧溶媒が該自己分散型顔料に対して完全に若しくは実質的に溶媒和せず、且つ該イオン性基が上記貧溶媒中において完全に若しくは実質的にイオン解離しない関係を有することを特徴とするインクセット。
【請求項2】
少なくとも水、色材及び水溶性有機溶剤を含有する、異なる色の水性インクを組み合わせて用いるインクセットにおいて、該色材が、顔料粒子表面に少なくとも1つのイオン性基を直接若しくは他の原子団を介して結合している自己分散型顔料であり、各水性インクの少なくとも1色に含有される該水溶性有機溶剤が、該自己分散型顔料に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤のみから構成され、該貧溶媒が該自己分散型顔料に対して完全に若しくは実質的に溶媒和せず、且つ該イオン性基が該貧溶媒中において完全に若しくは実質的にイオン解離しない関係を有することを特徴とするインクセット。
【請求項3】
前記インクセットを構成する水性インクにおいて、前記自己分散型顔料に対して貧溶媒となる水溶性有機溶剤が、該自己分散型顔料に対して質量比で2倍以上含有されている請求項1または2に記載のインクセット。
【請求項4】
前記イオン性基が、−COOM1、−SOM1及び−POH(M1)(式中のM1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム及び有機アンモニウムのいずれかを表わす)からなる群から選ばれる請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項5】
前記他の原子団が、炭素原子数1〜12のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基及び置換若しくは未置換のナフチレン基からなる群から選ばれる請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項6】
前記インクセットを構成する水性インクが、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、ブルー、グリーンから選ばれる少なくとも2種類の異なる色を有する水性インクである請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項7】
前記インクセットを構成する水性インクのうち、少なくとも1種類がブラックインクである請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクセット
【請求項8】
前記ブラックインクが、顔料粒子表面に少なくとも1つのイオン性基が直接若しくは他の原子団を介して結合しているカーボンブラックを含有する請求項7に記載のインクセット。
【請求項9】
前記インクセットが、インクジェット用である請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項10】
請求項9に記載のインクセットをインクジェット記録方式で吐出する工程を有するインクジェット記録方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクセットを収容していることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクセットを収容しているインク収容部と、該インクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備する記録ユニット。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクセットを収容しているインク収容部と、該インクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備するインクジェット記録装置。
【請求項14】
異なる色の水性インクを組み合わせたインクセットを用いて普通紙にインクジェット記録方式で記録を行う画像形成方法であって、インクセットとして請求項1〜9の何れか1項に記載のインクセットを用い、且つそれぞれの異なる色の水性インクによって形成される画像が互いに隣接してなる画像を形成する画像形成方法。
【請求項15】
ある色のインクを付与する走査を行って画像を形成した後、該画像が形成された領域にそれと異なる色のインクを付与する走査を行う請求項14に記載の画像形成方法。
【請求項16】
ある色のインクを付与する走査を行った後、少なくとも1走査分、間を空けた後に、それと異なる色のインクを付与する走査を行う請求項14または15に記載の画像形成方法。
【請求項17】
ある色のインクの吐出口列と、それと異なる色のインクの吐出口列とが副走査方向にずれて配置されている記録ヘッドを用いてインクの付与を行う請求項14〜16のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項18】
ある領域の画像形成が、ブラックインクを付与する走査から始まる請求項14〜17のいずれか一項に記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−8899(P2006−8899A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189909(P2004−189909)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】