説明

インクセット、カートリッジ、インクジェット記録方法及び記録装置

【課題】高画質化と耐擦化性(定着性)の向上を両立させることができる処理液とインクからなるインクセット、該インクセットを構成する処理液とインクが充填されているカートリッジ、該インクセットを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置の提供。
【解決手段】少なくとも有機酸、界面活性剤及び水を含む処理液と、少なくとも着色剤、水溶性有機溶剤、カルボキシル基含有樹脂、界面活性剤及び水を含むインクからなり、該処理液とインクの少なくとも一方に水溶性エポキシ樹脂を含有するインクセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液とインクからなるインクセット、該インクセットを構成する処理液とインクを充填したカートリッジ、該インクセットを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸を含有する処理液とカルボキシル基含有樹脂に包含された着色剤を含むインクを用いてインクジェット記録を行うことは公知である。しかし、この方法では、高濃度/高画質の画像を得ることは可能であるが、その一方で凝集した顔料を定着させることができず、特にラインエンジンシステムのような高速搬送時においては、搬送コロなどへの転写汚れが多く発生してしまう。
また、特許文献1には、記録媒体にインク組成物と反応液を付着させて印刷を行う記録方法であって、該インク組成物が、着色剤、樹脂エマルジョン粒子などを含み、該反応液が、該インク組成物と接触した時に凝集物を生じさせる反応剤と、カチオン性無機微粒子及び/又はカチオン性ポリマー微粒子などを含む記録方法が開示されている。ここで言うカチオン性ポリマーとは、アクリル系樹脂やエポキシ樹脂などであるが、樹脂を添加しただけではその効果(印字後の耐擦化性向上など)は低く、また、上記方法ではインク組成物を凝集させるような反応剤を添加しており、記録媒体表面で顔料の凝集が起こることから、特に印字後の耐擦化性という点では更に不利となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、高画質化と耐擦化性(定着性)の向上を両立させることができる処理液とインクからなるインクセット、該インクセットを構成する処理液とインクが充填されているカートリッジ、該インクセットを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、次の1)〜14)の発明によって解決される。
1) 少なくとも有機酸、界面活性剤及び水を含む処理液と、少なくとも着色剤、水溶性有機溶剤、カルボキシル基含有樹脂、界面活性剤及び水を含むインクからなり、該処理液とインクの少なくとも一方に水溶性エポキシ樹脂を含有することを特徴とするインクセット。
2) 前記水溶性エポキシ樹脂が、下記構造式1〜4の化合物から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする1)に記載のインクセット。
【化1】

【化2】

(式中のnは2〜10の整数を表す。)
【化3】

(式中のnは2〜10の整数を表す。)
【化4】

3) 前記水溶性エポキシ樹脂の前処理液への添加量が、前処理液全量に対して5重量%以下であることを特徴とする1)又は2)に記載のインクセット。
4) 前記水溶性エポキシ樹脂のインクへの添加量が、インク全量に対して1重量%以下であることを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載のインクセット。
5) 前記有機酸が乳酸又はその塩であることを特徴とする1)〜4)のいずれかに記載のインクセット。
6) 前記界面活性剤がフッ素系界面活性剤であることを特徴とする1)〜5)のいずれかに記載のインクセット。
7) 前記フッ素系界面活性剤が下記構造式で表される化合物であることを特徴とする6)に記載のインクセット。
【化5】

8) 前記処理液及びインクが更に抑泡剤を含むことを特徴とする1)〜7)のいずれかに記載のインクセット。
9) 前記抑泡剤が、N−オクチル−2−ピロリドン、2,4,7,9−テトラメチルデカン−4,7−ジオール、2,5,8,11−テトラメチルドデカン−5,8−ジオールのいずれかであることを特徴とする8)に記載のインクセット。
10) 前記処理液が更に側鎖にオキサゾリン基を有する水溶性オキサゾリン基含有ポリマーを含有することを特徴とする1)〜9)のいずれかに記載のインクセット。
11) 請求項1〜10のいずれかに記載のインクセットを構成する処理液とインクが充填されていることを特徴とするカートリッジ。
12) 少なくとも処理液を記録媒体上に塗布する処理液塗布工程と、記録媒体に対してインクを吐出して画像を形成する工程を有するインクジェット記録方法において、該処理液及びインクとして1)〜10)のいずれかに記載のインクセットを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
13) 更に加熱工程を有することを特徴とする12)に記載のインクジェット記録方法。
14) 少なくとも処理液を記録媒体上に塗布する処理液塗布手段と、記録媒体に対してインクを吐出して画像を形成する手段を有するインクジェット記録装置において、該処理液及びインクとして1)〜10)のいずれかに記載のインクセットを用いることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、処理液とインクを用いたインクジェット記録において、高画質化と耐擦化性(定着性)の向上を両立させることができるインクセット、該インクセットを構成する処理液とインクが充填されているカートリッジ、該インクセットを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供できる。
本発明においては、水溶性エポキシ樹脂と有機酸の架橋反応と、有機酸とカルボキシル基含有樹脂の反応を複合的に発現させることによって、高画質と定着性を両立させることができる。更に処理液中に側鎖にオキサゾリン基を有する水溶性オキサゾリンポリマーを添加させることによって定着性を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の前処理液を適用可能なインクジェット記録装置の一例の模式図。
【図2】図1に示すインクジェット記録装置の制御部の概要を示す概略ブロック説明図。
【図3】インクジェット記録装置のヘッドユニットにおけるヘッド配列の一例を示した模式図。
【図4】図3のヘッドユニットに配列しているヘッドを拡大して示す模式図。
【図5】インクカートリッジの一例のケース(外装)を含めた図。
【図6】吐出ヘッドからの吐出方式を示す図。
【図7】3本ロールによる塗布方式を示す図。
【図8】2本ロールによる塗布方式を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
<処理液について>
本発明に係る処理液はインクの吐出前に予め記録媒体へ塗布するものであり、少なくとも有機酸、界面活性剤、及び水を含む。また、インクが水溶性エポキシ樹脂を含まない場合には、水溶性エポキシ樹脂も含む必要がある。
ここで言う有機酸としては、その構造中にカルボキシル基を含有するものが望ましい。有機酸は、体内で生産されたり食品等に含まれているものが多くあり、人体残留性が低く無臭なものも多いので、家庭やオフィスで用いるインクジェット記録装置には望ましい。
有機酸の具体例としては、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸などが挙げられ、中でも乳酸が好ましく、またそれらの塩を使用しても構わない。
本発明における有機酸の役割としては、処理液中の水溶性エポキシ樹脂又は該エポキシ樹脂とオキサゾリン基含有ポリマーとの架橋反応、インク中のカルボキシル基含有樹脂との反応による記録媒体上での顔料の凝集化の2つが挙げられる。
【0008】
有機酸の添加量は処理液全体の20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。前述のように有機酸には2つの役割があり、最初に起こる水溶性エポキシ樹脂との架橋反応で全ての有機酸が消費されてしまうと、後に起こるカルボキシル基含有樹脂との反応が起こらなくなってしまうので問題がある。一方、有機酸の添加量が多くなると、インク中のカルボキシル基含有樹脂との反応による顔料の凝集化作用が大きくなってしまい、結果として記録媒体上でのドット径が小さくなってしまう。これは即ちドットの広がりが小さくなることを示しており、特にベタ部での埋まりが不足すると記録媒体の下地色の影響が画像に表れてしまうという不具合が生じてしまう。従って、画像上不具合が無い範囲で有機酸の添加量を決定する必要がある。
有機酸を含有する処理液のpHは4前後の酸性であり、このまま使用すると金属部材の腐食などが進み、長期間使用していると種々不具合が発生する恐れがある。従って、状況に応じてpH調整剤を添加する。pH調整剤としては2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールや2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールが好ましく、添加量は有機酸のpHにもよるが、処理液のpHが9〜11になるように適宜調整する。
【0009】
水溶性エポキシ樹脂は耐擦化性を向上させるために添加する。
水溶性エポキシ樹脂の添加量は、処理液に対しては全体の5重量%以下、インクに対しては全体の1重量%以下が好ましい。水溶性エポキシ樹脂は有機酸又はオキサゾリン基含有ポリマーなどとの架橋反応により耐擦化性を向上させる役割を担うが、ここで言う架橋反応の速度は即乾と言えるほど速いものではない。従って、水溶性エポキシ樹脂を過剰に添加すると、記録媒体上に過剰の水溶性エポキシ樹脂が残留してしまい、結果として耐擦化性を悪化させてしまうことになるため上記添加量が好ましい。
水溶性エポキシ樹脂は市販品として入手可能であり、例えば、ADEKA社製のアデカレジンEPUシリーズ、アデカレジンEPRシリーズ、阪本薬品工業社製のポリエポキシタイプなどが挙げられる。
有機酸と水溶性エポキシ樹脂の混合は、塗布方式や保存方式にもよるが、事前に有機酸と水溶性エポキシ樹脂を混合して処理液としても良いし、別々に用意しておいた有機酸と水溶性エポキシ樹脂を記録媒体上に別々に吐出させて混合する方法でも良い。
【0010】
好ましい水溶性エポキシ樹脂としては、下記構造式1〜4の化合物が挙げられる。
これらの市販品としては阪本薬品工業社製のSR−GLG(構造式1)、SR−4GL(構造式2)、SR−SEP(構造式3)、SY−GTA80(構造式4)がある。
構造式1〜構造式3の各々の製品は、RがHである化合物と、Rが構造式中に示したエポキシ基含有置換基である化合物の混合物である。ただし、構造式3のRが全てHとなることはない。また、各々の製品は、nが2〜10の化合物の混合物である。
【化6】

【化7】

(式中のnは2〜10の整数を表す。)
【化8】

(式中のnは2〜10の整数を表す。)
【化9】

【0011】
処理液には表面張力を下げるために界面活性剤を添加する。本発明の処理液に求められる特性の1つとして各種記録媒体に対して適度に濡れやすく、かつムラ無く吐出又は塗布できることが挙げられる。適度に濡れやすくすることによって、各種記録媒体への浸透速度を早めることができ、耐擦化性やブリードなどの不具合を改善することが可能となる。特に処理液の各種記録媒体への浸透性は重要である。浸透性が低いと記録媒体表面付近に処理液が多く留まり、記録媒体上で着色剤を含むインクと接触した際に処理液中の有機酸などによってインク中の着色剤を包含しているカルボキシル基含有樹脂が過剰に凝集作用を起こし、ドット径の減少によるベタ画像の埋まり不足が発生してしまう。また、記録媒体表面に着色剤成分が過剰に留まることによって、耐擦化性などの不具合も発生してしまう。このような理由から、濡れ性を向上させるため界面活性剤を添加して表面張力を下げることが一般的であり、中でも特にフルオロアルキル基を有する界面活性剤は水溶性にした場合にこの表面張力を大幅に低下させる能力を有しているので好ましい。特に下記の構造を有するフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化10】

【0012】
なお、上記構造のフッ素系界面活性剤はPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)及びPFOA(パーフルオロオクタン酸)を含有していないので、地球環境汚染の観点から見ても好ましい。
しかし、上記構造のフッ素系界面活性剤の界面活性能は非常に高く、一般的に使用されているシリコーン系抑泡剤を添加しても発生した気泡が消えずに残留してしまうため、ローラーなどで塗布する際に塗布ムラが発生したり、吐出ヘッドによって吐出する際に吐出不良などが発生する可能性がある。従って、気泡の発生を抑えるためにN−オクチル−2−ピロリドン、2,4,7,9−テトラメチルデカン−4,7−ジオール、2,5,8,11−テトラメチルドデカン−5,8−ジオール等の抑泡剤を添加することが好ましい。これらの抑泡剤と上記フッ素系界面活性剤を併用することにより、気泡の発生を抑えることができ、気泡による不具合を解消することが可能となる。
【0013】
処理液の表面張力はフッ素系界面活性剤と抑泡剤の割合で決まるが、記録媒体の種類によって処理液の表面張力を下げる必要がある場合にはフッ素系界面活性剤の比率を多くする必要がある。ただし、当然のことながらフッ素系界面活性剤の比率を増やすと泡立ちの問題があることから、フッ素系界面活性剤の比率は、フッ素系界面活性剤と抑泡剤の合計量に対して40重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。
フッ素系界面活性剤と抑泡剤の合計添加量は、処理液全量に対して2重量%以下であることが好ましく、1重量%以下がより好ましい。
【0014】
処理液の溶媒としては水を用いるが、水溶性有機溶剤を添加してもよい。水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
前記多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペトリオール等が挙げられる。
【0015】
多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
これらの水溶性溶剤の中でも、グリセリン、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオールが特に好ましい。これらは溶解性と水分蒸発による噴射特性不良の防止に対して優れた効果を奏する。また、保存安定性及び吐出安定性に優れた処理液を作成することができる。
【0016】
処理液には耐擦化性の一層の向上のためにオキサゾリン基含有ポリマーを添加してもよい。側鎖に架橋成分であるオキサゾリン基を有するポリマーを用いると、有機酸との反応により他の分子との架橋反応が進み、最終的に網目構造を形成するので、網目構造に着色剤を引っ掛けて定着性を向上させることができる
オキサゾリン基を有する反応剤としては、オキサゾリン基を有する樹脂やオキサゾリン基を表面に吸着させた微粒子等がある。オキサゾリン基を有する樹脂は市販品として入手可能であり、例えば、日本触媒社製のK−2000シリーズのアクリル−スチレン系樹脂、WSシリーズのアクリル系樹脂、RPSシリーズのスチレン系樹脂、RASシリーズのアクリロニトリル−スチレン系樹脂等が挙げられる。また、オキサゾリン基を表面に吸着させた微粒子も市販品として入手可能であり、有機微粒子でも無機微粒子でもよい。
オキサゾリン基を有する有機微粒子としては、創研化学社製のMEシリーズ、日本純薬社製のジュリマーMBシリーズ、東芝シリコーン社製のトスパールシリーズ、日本ペイント社製のマイクロジェルシリーズ、旭硝子社製のプルオンシリーズ等が挙げられ、オキサゾリン基を有する無機微粒子としては、出光興産社製のチタニアリリーズ、日本アエロジル社製のアルミニウムオキサイドC等が挙げられる。
【0017】
<インクについて>
本発明に係るインクは、少なくとも着色剤、水溶性有機溶剤、カルボキシル基含有樹脂、界面活性剤及び水を含む水性記録用インクである。
着色剤としてはインクにおいて公知の染料や顔料を使用することができる。また、無機粒子を有機顔料又はカーボンブラックで被覆した着色剤粒子を用いてもよい。
無機粒子をカーボンブラックで被覆する方法としては、凝固、析出などによる液中乾燥法、混合しながら機械的な力を加える乾燥混合法などが挙げられる。また、無機粒子を有機顔料で被覆する方法としては、無機粒子の存在下で有機顔料を析出する方法、無機粒子と有機顔料を機械的に混摩砕する方法等がある。この場合、例えば、熱安定性に優れた有機顔料で被覆する場合には化学的蒸着技術を用いることができる。更に必要に応じて、ポリシロキサン、アルキルシランから生成されるオルガノシラン化合物層を無機粒子と有機顔料の間に設ければ、両者の接着性を向上させることができる。
無機粒子としては、二酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化鉄、水酸化鉄、酸化スズ等が挙げられる。無機粒子の形状はアスペクト比が小さいものが好ましく、球状が特に好ましい。また、無機粒子の表面にカラー着色剤を吸着させる場合には、無機粒子は無色透明又は白色であることが好ましいが、黒色着色剤を吸着させる場合には、黒色の無機粒子を用いても構わない。
無機粒子の一次粒径は100nm以下が好ましく、5〜50nmがより好ましい。
【0018】
無機粒子を被覆する有機顔料としては、ブラック顔料として、アニリンブラックが挙げられる。カラー顔料としては、例えば、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、複素環式イエロー、キナクリドン及び(チオ)インジゴイド等が挙げられる。
これらの中でも発色性の面から、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、モノアゾイエロー系顔料、ジアゾイエロー系顔料、複素環式イエロー顔料が特に好ましい。
フタロシアニン系顔料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー又はその誘導体(C.I ピグメントブルー15:3、C.I ピグメントブルー15:4)、アルミニウムフタロシアニン等が挙げられる
キナクリドン系顔料としては、例えば、C.I ピグメントオレンジ48、C.I ピグメントオレンジ49、C.I ピグメントレッド122、C.I ピグメントレッド192、C.I ピグメントレッド202、C.I ピグメントレッド206、C.I ピグメントレッド207、C.I ピグメントレッド209、C.I ピグメントバイオレット19、C.I ピグメントバイオレット42等が挙げられる。
モノアゾイエロー系顔料としては、例えば、C.I ピグメントイエロー74、C.I ピグメントイエロー109、C.I ピグメントイエロー128、C.I ピグメントイエロー151等が挙げられる。
ジアゾイエロー系顔料としては、例えば、C.I ピグメントイエロー14、C.I ピグメントイエロー16、C.I ピグメントイエロー17等が挙げられる。
複素環式イエロー顔料としては、例えば、C.I ピグメントイエロー117、C.I ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0019】
無機粒子と着色剤である有機顔料又はカーボンブラックの重量比(無機粒子:着色剤)は、3:1〜1:3が好ましく、3:2〜1:2がより好ましい。着色剤の割合が小さすぎると、発色性や着色力が低下することがあり、着色剤の割合が大きくなりすぎると、透明性や色調を悪くすることがある。
無機粒子を有機顔料又はカーボンブラックで被覆した着色剤粒子の市販品としては、例えば、戸田工業社製のシリカ/カーボンブラック複合材料、シリカ/フタロシアニンC.I ピグメントブルー15:3複合材料、シリカ/ジアゾイエロー複合材料、シリカ/キナクリドンC.I ピグメントレッド122複合材料等が挙げられ、これらは1次粒径が小さく好適に用いることができる。
【0020】
例えば、1次粒径が20nmの無機粒子を等量の有機顔料で被覆した場合、その1次粒径は25nm程度になる。そこで適当な分散剤を用いて1次粒子の状態のままで分散できれば、分散粒子径が25nmの非常に微細な顔料分散インクを作成することができる。
着色剤粒子の1次粒径は、インク中において5〜100nmが好ましく、30〜80nmがより好ましい。1次粒径が5nm未満では、インクの長期保存において増粘したり着色剤粒子が凝集したりすることがあり、100nmを超えるとインクを紙やフィルム等の媒体に印刷する場合に、印刷部の彩度及び明度が低下した印刷物となることがある。なお、上記着色剤粒子の1次粒径とは、機械的せん断ではこれ以上細かく粉砕できない着色剤粒子の最小単位を意味する。
着色剤粒子のインク中の含有量は、1〜20重量%が好ましく、2〜15重量%がより好ましい。
【0021】
本発明に係るインクは水を溶媒として使用するが、更にインクの乾燥を防止するため、分散安定性を向上するため等の目的で水溶性有機溶剤を使用する。水溶性有機溶剤は複数混合して使用してもよい。
水溶性有機溶剤としては、前述した処理液の場合と同様のものを使用できる。
着色剤粒子と水溶性有機溶剤の配合比は、ヘッドからのインク吐出安定性に大きく影響する。顔料固形分が多いのに、水溶性有機溶剤の配合量が少ないと、ノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み、吐出不良をもたらすことになる。
本発明に係るインクは、上記水溶性有機溶剤以外に、必要に応じて、糖類などの他の水溶性有機溶剤を併用することもできる。糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類も含む)、多糖類及びこれらの誘導体が挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キロース、トレハロース、マントトリオース等が挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロース等自然界に広く存在する物質を含むものとする。
糖類の誘導体としては、前記糖類の還元糖や酸化糖類が挙げられる。こららの中でも、糖アルコールが好ましく、具体的には、マルチトール、ソルビット等が挙げられる。
糖類の含有量は、インクに対して0.1〜40重量%が好ましく、0.5〜30重量%がより好ましい。
【0022】
本発明に係るインクはカルボキシル基含有樹脂を含むことにより、処理液中の有機酸とインク中のカルボキシル基含有樹脂が反応し、記録媒体上での顔料の凝集が起こるので、高画質化を図ることができる。
カルボキシル基含有樹脂としては、例えば、マレイン酸樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂やアルキド樹脂、変性アルキド樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂は後述する合成例の共重合体Aのように適宜合成してもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、荒川化学社製のマルキードシリーズやハリマ化成社製のハリマックシリーズ、ハリフタールシリーズ等が挙げられる。
カルボキシル基含有樹脂の添加形態に特に制限はなく、着色剤である顔料をカルボキシル基含有樹脂で包含した形態で添加してもよいし、着色剤とは別にカルボキシル基含有樹脂を単独で添加してもよい。
【0023】
インクに添加する界面活性剤としては特に制限はなく、着色剤の種類や湿潤剤、浸透剤等の組み合わせによって、分散安定性を損なわないものの中から目的に応じて適宜選択することができる。特に印刷用紙に印刷する場合には、表面張力が低くレベリング性の高いフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が好適であり、特にフッ素系界面活性剤が好ましい。
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。
パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩等が挙げられる。
パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩等が挙げられる。
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
【0024】
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用しても市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、旭硝子社製のサーフロンシリーズ(S−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145)、住友スリーエム社製のフルラードシリーズ(FC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431)、大日本インキ社製のメガファックシリーズ(F−470、F−1405、F−474)、Dupont社製のZonyl TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR、ネオス社製のFT−110、FT−250、FT−252、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のPF−151N等が挙げられるが、中でも以下の構造を有するフッ素系界面活性剤が特に好ましい。
【化11】

【0025】
前記シリコーン系界面活性剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用しても市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー社、信越シリコーン社、東レ・ダウコーニング・シリコーン社等のものを容易に入手できる。
また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、適宜合成したものを使用しても市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、信越化学社製のKF−618、KF−642、KF−643等が挙げられる。
【0026】
また、前記フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤以外にも、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、コハク酸エステルスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩等が挙げられる。
前記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等が挙げられる。また、その市販品として、例えば、エアープロダクツ社製のサーフィノールシリーズ(104、82、465、485、TG)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノピロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、ジヒドロエチルラウリルアミンオキシド、ポリオキシエチレンヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド、ジメチルアルキル(ヤシ)ベタイン、ジメチルラウリルベタイン等が挙げられる。また、その市販品として、例えば、日光ケミカルズ社、日本エマルジョン社、日本触媒社、東邦化学社、花王社、アデカ社、ライオン社、青木油脂社、三洋化成社等のものを容易に入手できる。
【0027】
前記種々の界面活性剤は、単独で用いても複数のものを混合して用いてもよい。単独ではインク中に容易に溶解しない場合でも、複数のものを混合することにより可溶化され、安定に存在することができる場合もある。
前記界面活性剤のインク中における含有量は、0.01〜3重量%が好ましく、0.5〜2重量%がより好ましい。合計含有量が0.01重量%未満では、界面活性剤を添加した効果が無くなることがあり、3重量%を超えると、記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
なお、フッ素系界面活性剤を用いた場合には、前述した処理液の場合と同様の気泡の問題が発生するので、同じように抑泡剤を添加することが好ましい。
【0028】
本発明に係るインクには、前記の各成分の他に、必要に応じて公知の浸透剤、ポリマー粒子、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を添加することができる。
浸透剤としては、炭素数8〜11のポリオール化合物又はグリコールエーテル化合物が好ましく用いられる。これらは、紙への浸透速度を速めると共にブリードを防止する効果を有し、25℃の水中において、0.1〜4.5重量%の溶解度を有する部分的に水溶性の化合物である。
前記炭素数8〜11のポリオール化合物としては、例えば、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。
前記グリコールエーテル化合物としては、例えば、多価アルコールアルキルエーテル化合物、多価アルコールアリールエーテル化合物等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
これらの浸透剤は、水よりも高沸点で25℃のインク中で液体であり、インク中の含有量は、0〜10重量%が好ましく、0.5〜5重量%がより好ましい。
【0029】
ポリマー粒子としては造膜性を有するものを用いる。ここで造膜性とは、ポリマー粒子を水に分散させエマルジョンの形態とした時、この水性エマルジョンの水分を蒸発させていくと、樹脂皮膜が形成される性質を意味する。
このようなポリマー粒子が含まれていると、インク中の揮発成分が蒸発した際に該ポリマー粒子が皮膜を形成し、インク中の着色剤を強固に記録媒体に固着する役割を果す。これにより、耐擦化性、耐水性に優れた画像を形成することができる。
ポリマー粒子は、室温で皮膜を形成するために最低造膜温度が30℃以下のものが好ましく、10℃以下のものがより好ましい。ここで、最低造膜温度とは、ポリマー粒子を水に分散させて得られたポリマーエマルジョンを、アルミニウム等の金属板の上に薄く流延し、温度を上げていった時に、透明な連続したフィルムが形成される最低の温度のことを意味する。このようなポリマー粒子として、例えば、ミヨシ油脂社製のランディPLシリーズなどが挙げられる。
ポリマー粒子の体積平均粒子径は、5〜200nmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。
【0030】
ポリマー粒子としては、単粒子構造のものを使用することができる。例えば、エマルジョン粒子内にアルコキシシリル基を有すると、塗膜形成過程での水分蒸発によるエマルジョン同士の融着に伴って残存する水分と接触し、加水分解してシラノール基を形成する。また、シラノール基が残存するとアルコキシシリル基又はシラノール同士が反応して、シロキサン結合による強固な架橋構造を形成することができる。このようにポリマー微粒子内に反応性の官能基を共存させると、硬化剤を添加しなくても、造膜時にそれらの官能基を反応させて網目構造を形成させることができる。
また、コア部とそれを囲むシェル部からなるコアシェル構造を有するポリマー粒子を使用することも可能である。ここでいうコアシェル構造とは、組成の異なる2種以上のポリマーが粒子中に相分離して存在する形態を意味する。従って、シェル部がコア部に完全に被覆している形態のみならず、コア部の一部を被覆しているものであってもよい。また、シェル部のポリマーの一部がコア粒子内にドメイン等を形成しているものであってもよい。更にコア部とシェル部の間に、一層以上の組成の異なる層を含む3層以上の多層構造を持つものであってもよい。
ポリマー粒子は、不飽和ビニル単量体(不飽和ビニルポリマー)を重合触媒及び乳化剤を存在させた水中において乳化重合する等の公知の方法により得ることができる。
ポリマー粒子のインクにおける含有量は、0.5〜20重量%が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。含有量が0.5重量%未満では、耐擦化性、耐水性向上機能が十分に発揮されないことがあり、20重量%を超えると、乾燥による粘度上昇やポリマー成分の固着により、インクの吐出が安定しなくなり、ノズルの目詰まりが発生してしまうことがある。
【0031】
前述した無機粒子を有機顔料又はカーボンブラックで被覆した着色剤粒子(複合顔料粒子)は、アニオン性分散剤と共に水に混練分散する際に酸性を示す傾向が強い。水などの媒体に分散している複合顔料の表面は、アニオン系分散剤に包まれているため、負電荷を帯びているが、インク全体が酸性を示すことから、内部は正電荷を帯びており、粒子表面の負電荷が中和され易い状態にある。この状態では分散粒子は凝集し吐出不良を起こす原因となるため、pH調整剤を加えてアルカリ性に保つことにより分散状態を安定化させ、吐出を安定化させることが好ましい。
【0032】
また、インクのpHは9〜11であることが好ましい。pHが11を超えると、インクジェットのヘッドやインク供給ユニットの材質を溶かし出す量が大きくなり、インクの変質や漏洩、吐出不良等の問題が発生してしまう。
pH調整剤は、顔料を分散剤と共に水に混練分散する際に加えるよりも、混練分散液に湿潤剤、浸透剤等の添加剤と共に加える方が好ましい。これはpH調整剤によっては添加により分散を破壊する場合もあるためである。
pH調整剤としては、例えばアルコールアミン類、アルカリ金属水酸化物、アンモニウム水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩等が挙げられる。
アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第四級アンモニウム水酸化物等が挙げられる。
ホスホニウム水酸化物としては、第四級ホスホニウム水酸化物等が挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0033】
防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が挙げられる。
【0034】
本発明に係る処理液とインクを充填したカートリッジは、本発明の処理液とインクを容器内に収容したものであり、必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有する。
容器としては特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、プラスチック製容器、アルミニウムラミネートフィルム等で形成されたインク袋等を有するものが挙げられる。
その一例について、インクカートリッジのケース(外装)を含めた図5を参照して説明する。
インクは、図5に示すように、インク注入口242からインク袋241内に充填され、排気した後、該インク注入口242を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置にインクを供給する。インク袋241は、透気性の無いアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋241は、通常プラスチック製のカートリッジケース244内に収容され、インクカートリッジ240として、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
上記インクカートリッジ240に、インクの代わりに処理液を入れれば処理液用のカートリッジとして用いることができる。なお、処理液を収容する容器とインクを収容する容器は一体に構成しても別体にして組み合わせる形態としてもよい。
【0035】
本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体の表面にインクジェット方式で画像を形成する画像形成手段と、処理液を貯留する貯留手段と、前記画像形成手段による画像形成の前に、前記記録媒体の表面に対して前処理を行う前処理手段とを備えている。また、画像形成手段は少なくともインク飛翔手段を有し、必要に応じてその他の手段、例えば、刺激発生手段、制御手段等を有する。
図1に、本発明に係るインクジェット記録装置の一例の模式図(側面説明図)を示す。
インクジェット記録装置101には、インクを吐出するヘッドを集積したヘッドユニット110K、110C、110M、110Yと、それぞれのヘッドユニットに対応し、ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンスユニット111K、111C、111M、111Y、インクを供給するインクカートリッジ107K、107C、107M、107Y、カートリッジからのインクを一部貯蔵し、ヘッドに適切な圧力でインクを供給するサブインクタンク108K、108C、108M、108Yを備えている。
【0036】
更に記録媒体114を吸引ファン120によって吸着し搬送する搬送ベルト113、搬送ベルト113を支える搬送ローラ119、121、搬送ベルト113が適切な張力を保つようにコントロールするテンションローラ115、搬送ベルト113が適切な平面性を保つためのプラテン124及びプラテンローラー118、記録媒体114を吸着するための静電帯電を与える帯電ローラ116、記録媒体114を押さえる排紙コロ117、排紙した記録媒体114をストックしておく排紙トレイ104からなる排紙機構、印写する記録媒体114をストックする給紙トレイ103、給紙トレイ103から一枚ずつ記録媒体114を送り出す分離パッド112及び122、送られてきた記録媒体114を帯電ベルトに確実に吸着させるカウンターローラ123、手差しで給紙した場合に用いられる手差しトレイ105からなる給紙機構を有している。
また、メンテナンス後に排出される廃液を回収する廃液タンク109や、装置を操作し装置状態を表示することができる操作パネル106も備えている。
【0037】
各ヘッドユニットのノズル列は、記録媒体114の搬送方向に直行するように配列されており、記録領域以上の長さのノズル列を形成している。給紙トレイ104から記録媒体114が分離コロにより一枚に分離され、加圧コロにより搬送ベルト113に密着されることで搬送ベルト上に固定され、ヘッドユニット下を通過する際に記録媒体114に液滴を吐出することにより、高速に記録媒体114にパターンニングでき、分離爪により搬送ベルト113から分離され、排紙ローラと排紙コロ117に支えられて排紙トレイに記録物が排出される。
この装置では、処理液で記録媒体表面を処理する機構として塗布機構を設けており、ローラ塗布を採用している。処理液135は処理液貯蔵タンク140から図示しない経路によって供給され、汲み上げローラ137でローラ表面に汲み上げられ、膜圧制御ローラ138に転写される。続いて塗布ローラ136に転写された処理液は、塗布用カウンターローラ139との間に通す記録媒体114に転写され、塗布される。
塗布ローラ136に転写される処理液の塗布量は、塗布ローラ136とのニップ厚を制御することにより行う。処理液を塗布したくない時は、塗布ローラ136に処理液が残らないように、可動ブレード134を塗布ローラ136に押し付け、塗布ローラ表面の処理液を掻き取ることができる。これにより、処理液が塗布ローラ136に残留することにより発生する乾燥による増粘や、塗布用カウンターローラ139との固着、塗布ムラなどの機能障害を未然に防ぐことができる。また、図1のように、給紙部を上下で1つずつ設け、処理液を塗布する場合には下の給紙部を、処理液を塗布しない場合には上の給紙部を使用するといった方式にしても良い。
【0038】
上記ローラ塗布以外に、処理液をインクジェット方式でスプレー塗布することも可能である。例えば、ヘッドユニット110Kと同様のヘッドに処理液を充填し、インクと同様に記録媒体114へ吐出させることができ、吐出量や吐出位置の制御を高精度でかつ容易に行うことができる。また、ローラー塗布方式とスプレー塗布方式を併用しても良い。
何れの方式を用いても処理液を任意の位置に任意の量だけ塗布することができる。
また、熱風送風ファン(図示せず)により、処理液及びインクが付着した記録媒体114を加温することによって、処理液中の有機酸とエポキシ樹脂の架橋反応の促進及びインキの乾燥速度向上により定着性を向上させることができる。なお、本例では加熱工程を印刷後の記録媒体114に対して熱風ファンにて行っているが、加熱工程は印刷前の記録媒体114に対して行っても良いし、その方式も熱風ファンだけではなく、加熱ローラーなどの手段によって行っても良い。
【0039】
図3は、上記インクジェット記録装置のヘッドユニットにおけるヘッド配列の一例を示した模式図である。
ヘッドユニットはヘッド外周部材160にヘッド154を固定しており、ヘッドはノズルの一部が重複するように千鳥配置で固定されている。
図4は、図3のヘッドユニットに配列しているヘッドを示す模式図で、各ヘッドには、ノズルプレート201に2列の千鳥配置で開口されているノズル200が設けられており、ヘッドとヘッド外周部材との間には充填剤202にて密閉されており、ノズル面側からの隙間をなくしている。
【0040】
次に、図1に示すインクジェット記録装置の制御部の概要について、図2の制御部の概略ブロック説明図を参照して説明する。
この制御部300は、装置全体の制御を司るCPU301と、CPU301が実行するプログラム、本発明において使用する所定インク吐出に対するノズル面汚染度合の値及びノズル面汚染許容閾値、駆動波形データ、その他の固定データを格納するROM302と、画像データ等を一時格納するRAM303と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)304と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC305とを備えている。
また、この制御部300はホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのホストI/F306と、記録ヘッド154の圧力発生手段を駆動制御するための駆動波形を生成するヘッド駆動制御部307と、記録媒体搬送モータ309を駆動するための記録媒体搬送モータ駆動部308と、ヘッドユニット(キャリッジ)移動モータ311を駆動するための維持ユニット移動モータ駆動制御部312と、インク経路の電磁弁315を開閉制御するためのインク経路バルブ制御314、キャップ吸引モータ317やインク供給モータ318の駆動を制御する送液吸引モータ駆動制御部316と、搬送ベルト113の移動量及び移動速度に応じた検知信号を出力するエンコーダや、環境温度及び環境湿度(何れか一方でもよい)を検出するセンサ323からの検知信号、サブインクタンクのインク量検知信号、図示しない各種センサからの検知信号を入力するためのI/O322などを備えている。この制御部300には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル106が接続されている。
【0041】
制御部300は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナ等の画像読み取り装置、デジタルカメラ等の撮像装置等のホスト側からの印刷データ等をケーブル或いはネットを介してホストI/F306で受診する。
そして、CPU301は、ホストI/F306に含まれる受信バッファ内に印刷データを読み出して解析し、ASIC305にて必要な画像処理、データの並び替えを行い、記録ヘッド154のヘッド幅の1ページ分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を、クロック信号に同期して、ヘッド駆動制御部307に送出する。
そして、CPU301は、ホストI/F306に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC305にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ってヘッド駆動制御部307に画像データを転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は、例えば、ROM302にフォントデータを格納して行ってもよいし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開してこの装置に転送するようにしてもよい。
ヘッド駆動制御部307は、ページ単位で入力される記録ヘッド154の1ページ分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)に基づいて選択的に記録ヘッド154の圧力発生手段に印加して記録ヘッド154を駆動する。
また、図示していないが、処理液をローラ塗布する場合、塗布ローラ等の塗布用ローラ群の駆動制御が必要となるため、塗布用モータ制御部と、制御されるモータ、制御用のセンサを設ける。
更にインクジェットで処理液を吐出する場合には、維持動作を他のインクと異なる動作を行わないと、混色によるノズル詰まりの危険性が存在する。そのため維持ユニット移動モータは、インク用とは別に前処理用のものを設けることが望ましい。
【0042】
なお、処理液を記録媒体114に塗布する形態としては、図6〜図8などの方式が挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0044】
<インクの調製>
「合成例」
攪拌装置、滴下装置、温度センサー及び上部に窒素導入装置を有する還流装置を取り付けた反応容器を有する自動重合反応装置(轟産業社製:重合試験機DSL−2AS型)の反応容器にメチルエチルケトンを550.0gを仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃で加温した後、滴下装置によりメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル75.0g、メタクリル酸77.0g、スチレン80.0g、メタクリル酸ブチル150.0g、アクリル酸ブチル98.0g、メタクリル酸メチル20.0g及び「パーブチル(登録商標)O」(日本油脂社製)40.0gの混合溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に同温度で15時間反応を継続させて、酸価100、重量平均分子量21000、Tg(計算値)31℃のアニオン性基含有スチレン−アクリル系共重合体Aのメチルエチルケトン溶液を得た。反応終了後、メチルエチルケトンの一部を減圧留去し、不揮発分を50%に調整した共重合体A溶液を得た。
【0045】
「調製例1」
冷却用ジャケットを備えた混合槽にカーボンブラック1000g、上記共重合体A溶液800g、20%水酸化ナトリウム水溶液143.0g、メチルエチルケトン100.0g及び水1957.0gを仕込み、攪拌混合した。混合液を直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置(三井鉱山社製:SCミルSC100)に通し、循環方式(分散装置より出た分散液を混合槽に戻す方式)により6時間分散した。分散装置の回転数は2700回転/分とし、冷却用ジャケットには冷水を通して分散液温度が40℃以下に保たれるようにした。分散終了後、混合槽から分散原液を抜き取り、次いで水10000gで混合槽及び分散装置流路を洗浄し、分散原液と合わせて希釈分散液を得た。ガラス製蒸留装置に希釈分散液を入れ、メチルエチルケトンの全量と水の一部を留去した。室温まで冷却後、攪拌しながら10%塩酸を滴下してpH4.5に調整した後、固形分をヌッチェ式濾過装置で濾過、水洗した。ケーキを容器に取り、20%水酸化カリウム水溶液200.0gを加えた後、ディスパ(特殊機化工業社製:TKホモディスパ)により分散し、更に水を加えて不揮発分を調整し、不揮発分20重量%のカーボンブラックが水酸化カリウム中で中和されたカルボキシル基含有スチレン−アクリル系共重合体で被覆された複合粒子として水性媒体中に分散した水性顔料分散体を得た。
【0046】
「調製例2」
調製例1で得た水性顔料分散体、水溶性有機溶剤、界面活性剤、水などを、下記表1〜表3の各実施例、比較例の欄に示すような割合(重量%)で混合し、平均孔径0.8μmのメンブランフィルターで濾過して水性インクを作成した。なお、水性顔料分散体は固形分として10重量%となるような割合で添加した。
【0047】
<処理液の調製>
有機酸、界面活性剤、水などの材料を、下記表1〜表3の各実施例、比較例の欄に示す割合(重量%)で混合し、平均孔径0.8μmのメンブランフィルターで濾過して処理液を作成した。
【0048】
上記各処理液を小林製作所社製のワイヤーバー(巻線径:0.02mm)を用いて、記録媒体(リコー社製 マイペーパー)へ均一に塗布した。
次いで、インクジェット記録装置(リコー社製のIPSIO GX5000)により、前記処理液を塗布した記録媒体へ、ドットパターンからなる3cm四方の画像が形成されるように、印字速度30rpmでインクを吐出させ、印刷サンプルを得た。
【0049】
上記各印刷サンプルについて、以下の方法により諸特性を評価した。結果を纏めて表1〜表3に示す。
<画像濃度>
各印刷サンプルのベタ部をX−Rite社製の分光測色濃度計(939)で測定した。
<転写濃度>
印刷サンプルのベタ部を、東洋精機製作所社製のクロックメーターに布を貼り付けて擦り、擦化後の布へのインクの転写濃度を、X−Rite社製の分光側色濃度計(939)で測定した。転写濃度が小さいほど、画像の定着性が良好である。
<泡立ち評価>
各実施例及び比較例に記載の処方に基づいて混合・調製したインク及び処理液を、容量100mlのメスシリンダーに10ml入れて一昼夜放置し、その後、メスシリンダーを10℃の恒温水槽に30分以上入れて液温を慣らした。液温が十分慣れたところで、所定のシリンジにより空気を吹き込み100mlまで泡立たせた。次いで、30秒後の泡高さ(ml)を目視で確認した。
【0050】

【表1】

【表2】

【表3】

【0051】
表中の各材料の詳細は次のとおりである。
・FS−300:Dupont社製のZonyl FS-300
・エポキシ樹脂(いずれも阪本薬品工業社製)
構造式1:「SR−GLG」
構造式2:「SR−4GL」
構造式3:「SR−SEP」
構造式4:「SR−GTA80」
・シリコーン系抑泡剤:自己乳化型シリコーン系抑泡剤 KM−72F(信越シリコーン社製)
・オキサゾリン基含有ポリマー:日本触媒社製 エポクロスWS−700
・LV(S):アシビア社製のProxelLV(s)
【符号の説明】
【0052】
101 インクジェット記録装置
103 給紙トレイ
104 排紙トレイ
105 手差しトレイ
106 操作パネル
107K インクカートリッジ
107C インクカートリッジ
107M インクカートリッジ
107Y インクカートリッジ
108K サブインクタンク
108C サブインクタンク
108M サブインクタンク
108Y サブインクタンク
109 廃液タンク
110K ヘッドユニット
110C ヘッドユニット
110M ヘッドユニット
110Y ヘッドユニット
111K メンテナンスユニット
111C メンテナンスユニット
111M メンテナンスユニット
111Y メンテナンスユニット
112 分離パッド
113 搬送ベルト
114 記録媒体
115 テンションローラ
116 帯電ローラ
117 排紙コロ
118 プラテンローラー
119 搬送ローラ
120 吸引ファン
121 搬送ローラ
122 分離パッド
123 カウンターローラ
124 プラテン
134 可動ブレード
135 処理液
136 塗布ローラ
137 汲み上げローラ
138 膜圧制御ローラ
139 塗布用カウンターローラ
140 処理液貯蔵タンク
154 ヘッド
160 ヘッド外周部材
200 ノズル
201 ノズルプレート
202 充填剤
240 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジケース
300 制御部
301 CPU
302 ROM
303 RAM
304 不揮発性メモリ(NVRAM)
305 ASIC
306 ホストI/F
307 ヘッド駆動制御部
308 記録媒体搬送モータ駆動部
309 紙搬送モータ
310 ヘッドユニット(キャリッジ)移動モータ駆動制御部
311 ヘッドユニット(キャリッジ)移動モータ
312 維持ユニット移動モータ駆動制御部
313 維持ユニット移動モータ
314 インク経路バルブ制御部
315 インク経路の電磁弁
316 送液吸引モータ駆動制御部
317 キャップ吸引モータ
318 インク供給モータ
319 搬送ベルト
320 キャップ吸引経路
321 インク供給経路
322 I/O
323 センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特開2002−225414号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機酸、界面活性剤及び水を含む処理液と、少なくとも着色剤、水溶性有機溶剤、カルボキシル基含有樹脂、界面活性剤及び水を含むインクからなり、該処理液とインクの少なくとも一方に水溶性エポキシ樹脂を含有することを特徴とするインクセット。
【請求項2】
前記水溶性エポキシ樹脂が、下記構造式1〜4の化合物から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のインクセット。
【化12】

【化13】

(式中のnは2〜10の整数を表す。)
【化14】

(式中のnは2〜10の整数を表す。)
【化15】

【請求項3】
前記水溶性エポキシ樹脂の前処理液への添加量が、前処理液全量に対して5重量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクセット。
【請求項4】
前記水溶性エポキシ樹脂のインクへの添加量が、インク全量に対して1重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクセット。
【請求項5】
前記有機酸が乳酸又はその塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクセット。
【請求項6】
前記界面活性剤がフッ素系界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクセット。
【請求項7】
前記フッ素系界面活性剤が下記構造式で表される化合物であることを特徴とする請求項6に記載のインクセット。
【化16】

【請求項8】
前記処理液及びインクが更に抑泡剤を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインクセット。
【請求項9】
前記抑泡剤が、N−オクチル−2−ピロリドン、2,4,7,9−テトラメチルデカン−4,7−ジオール、2,5,8,11−テトラメチルドデカン−5,8−ジオールのいずれかであることを特徴とする請求項8に記載のインクセット。
【請求項10】
前記処理液が更に側鎖にオキサゾリン基を有する水溶性オキサゾリン基含有ポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のインクセット。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のインクセットを構成する処理液とインクが充填されていることを特徴とするカートリッジ。
【請求項12】
少なくとも処理液を記録媒体上に塗布する処理液塗布工程と、記録媒体に対してインクを吐出して画像を形成する工程を有するインクジェット記録方法において、該処理液及びインクとして請求項1〜10のいずれかに記載のインクセットを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項13】
更に加熱工程を有することを特徴とする請求項12に記載のインクジェット記録方法。
【請求項14】
少なくとも処理液を記録媒体上に塗布する処理液塗布手段と、記録媒体に対してインクを吐出して画像を形成する手段を有するインクジェット記録装置において、該処理液及びインクとして請求項1〜10のいずれかに記載のインクセットを用いることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−162654(P2012−162654A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24454(P2011−24454)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】