説明

インクリフィルユニット

【課題】 インクジェット記録装置の小型化を図った場合においても、大気圧導入口から漏れ出たインクをインク吸収体にて確実に吸収させる。
【解決手段】 枠体162の内側にインク吸収体160側に突出して先端側がインク吸収体160に接触する突起部165を設ける。これにより、インク吸収体160を固定部材161に保持するための保持力を大きくすることができる。突起部165はインク吸収体160に部分的に接触してインク吸収体160を押し潰すように変形させるので、インク吸収体160の変形は局所的となり、かつ、その変形量は小さくなる。したがって、インク吸収体160の小さな孔や繊維間の小さな隙間が大きく潰れてしまうことを防止しつつ、保持力を高めることができるので、多機能装置1の更なる小型化を図った場合においても、大気圧導入口193から漏れ出たインクをインク吸収体160にて確実に吸収させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)のインクリフィルユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、周知のごとく、記録ヘッドにてインク液を液滴として記録用紙等の被記録媒体に向けて噴射することにより被記録媒体に画像を形成していくものである。
【0003】
そして、インクの補充は、通常、インクジェット記録装置に固定されたインクタンクにインク液を補充する方式ではなく、既にインクが充填されたインクカートリッジを交換することにより行われる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−246922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクカートリッジには、充填されているインクがスムーズに記録ヘッドに供給されるように、インクが充填されているインクタンク部に大気圧を導入する大気圧導入口が設けられている。
【0005】
このため、インクタンク部の温度が上昇する等の原因によりインクタンク部内の圧力が上昇すると、インクタンク部内のインクが大気圧導入口からインクカートリッジ外に漏れ出てしまう場合がある。
【0006】
そこで、発明者は、大気圧導入口と連通する大気圧導入筒の先端側に、大気圧導入口から漏れ出たインクを吸収するインク吸収体を配設したインクリフィルユニットを試作検討したが、以下に述べる問題が新たに発生した。
【0007】
すなわち、インクジェット記録装置の小型化を図るべく、インクカートリッジが収納されたカートリッジケーシングと記録ヘッドを含む画像記録部とを近接させると、インク吸収体をカートリッジケーシングに固定するための固定部材と画像記録部とが干渉してしまう。
【0008】
この問題に対しては、固定部材の位置を画像記録部との干渉が発生しない位置までずらせば解決することができるものの、このような構成とすると、大気圧導入筒とインク吸収体との接触箇所が、インク吸収体の端部側にずれてしまうので、固定部材に対するインク吸収体の位置がずれてしまい、大気圧導入筒とインク吸収体と接触させることができず、漏れ出たインクをインク吸収体にて十分に吸収することができなくなるおそれが高い。
【0009】
一方、インク吸収体は、スポンジやウレタン、又は繊維若しくは不織布等から構成された多孔質材にて構成され、かつ、外周部側から僅かに押し潰すようにして固定部材に設けられた枠体に嵌め込まれた状態で固定部材に装着されている。
【0010】
このため、インク吸収体を嵌め込んだときのインク吸収体の変形量が小さいときには、インク吸収体を固定部材に保持するための保持力が小さくなってしまう。
しかし、インク吸収体は、内部に形成された無数の小さな孔や繊維間の小さな隙間にて
インクを保持吸着することによりインクを吸収するので、大きな保持力を確保すべく、大きく変形させた状態でインク吸収体を枠体に嵌め込むと、インクを吸収するための小さな孔や繊維間の小さな隙間が潰れてしまい、十分な量のインクを吸収することができなくなってしまう。
【0011】
つまり、インク吸収体と大気圧導入筒とを確実に接触させるべく、インク吸収体の位置がずれないように保持力を大きくすると、インクを吸収するための小さな孔や繊維間の小さな隙間が潰れてしまうので、十分な量のインクを吸収することができなくなってしまう。
【0012】
逆に、インクを吸収するための小さな孔や繊維間の小さな隙間が潰れないようにすると、保持力が小さくなってしまうので、インク吸収体の位置がずれてインク吸収体と大気圧導入筒とを確実に接触させることができなくなってしまい、やはり、十分な量のインクを吸収することができなくなってしまう。
【0013】
本発明は、上記点に鑑み、インクジェット記録装置の小型化を図った場合においても、大気圧導入口から漏れ出たインクをインク吸収体にて確実に吸収させることが可能なインクリフィルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、インクが充填されたインクタンク部、インクタンク部に充填されたインクを排出するための排出口、及びインクタンク部内に大気圧を導入する大気圧導入口を有するインクカートリッジと、インクカートリッジが内部に装着されるとともに、大気圧導入口と連通して外側に突出する大気圧導入筒が設けられたカートリッジケーシングと、大気圧導入筒の先端側に接触し、大気圧導入口から漏れ出たインクを吸収するインク吸収体と、大気圧導入筒の突出方向と直交する方向からインク吸収体を囲む枠体を有し、枠体にインク吸収体が填め込まれた状態でインク吸収体をカートリッジケーシングに固定する固定部材とを備え、枠体の内側には、インク吸収体側に突出して先端側がインク吸収体に接触する突起部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
これにより、本発明では、突起部がインク吸収体側に突出してインク吸収体を変形させるので、インク吸収体を固定部材(枠体)に保持するための保持力を大きくすることができる。
【0016】
一方、突起部はインク吸収体に部分的に接触してインク吸収体を押し潰すように変形させるので、インク吸収体の外周面全体を押圧するようにしてインク吸収体を押し潰す場合に比べて、インク吸収体の変形は局所的となり、かつ、その変形量は小さくなる。
【0017】
したがって、本発明では、インク吸収体の小さな孔や繊維間の小さな隙間が大きく潰れてしまうことを防止しつつ、保持力を高めることができるので、インクジェット記録装置の小型化を図った場合においても、大気圧導入口から漏れ出たインクをインク吸収体にて確実に吸収させることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明では、突起部は、大気圧導入筒の突出方向と直交する方向において、大気圧導入筒からずれた位置に対応する部位に設けられていることを特徴とする。
これにより、インク吸収体のうち大気圧導入筒と接触する位置がずれてしまうことを確実に防止できるので、大気圧導入口から漏れ出たインクをインク吸収体にて確実に吸収させることができる。
【0019】
なお、突起部は、請求項3に記載の発明のごとく、インク吸収体のうち大気圧導入筒が接触する部位より鉛直方向下方側にずれた部位に設けることが望ましい。
また、請求項4に記載の発明では、固定部材は、大気圧導入筒の突出方向と直交する方向において、大気圧導入筒の中心位置を挟んで両側の位置にてカートリッジケーシングに固定されていることを特徴とする。
【0020】
ところで、例えば大気圧導入筒の突出方向と直交する方向において、固定部材とカートリッジケーシングとの固定部の全てが大気圧導入筒の中心位置より一方側に位置していると、他方側を固定する固定力が発生しないので、インク吸収体を大気圧導入筒に接触させるための反力により、固定部材が大きく変形又は傾いてしまい、インク吸収体を大気圧導入筒に確実に接触させることができなくなる。
【0021】
これに対して、請求項4に記載の発明では、固定部材は、大気圧導入筒の中心位置を挟んで両側の位置にてカートリッジケーシングに固定されているので、インク吸収体を大気圧導入筒に接触させるための反力により、固定部材が大きく変形又は傾いてしまうことを防止でき、インク吸収体を大気圧導入筒に確実に接触させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本実施形態は、本発明に係るインクジェット記録装置を、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能及びファクシミリ機能等を備えたいわゆる多機能装置に適用したものであり、以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
【0023】
なお、本実施形態に係る多機能装置は、コンピュータと接続されて、コンピュータから送信された画像データや文書データに基づいて記録用紙やOHPシート等の被記録媒体(以下、記録用紙という。)に文字を含む画像を記録したり、デジタルカメラ等の外部機器と接続されてデジタルカメラから出力される画像データを記録用紙に記録することができる。
【0024】
1.多機能装置1の概略構成
図1は多機能装置1の外観斜視図であり、図2は多機能装置1の側面図である。因みに、図2の破線部は、多機能装置1の内部に収納された機器を示している。
【0025】
多機能装置1の下部には、図1に示すように、記録用紙に画像を形成するプリンタ部100が設けられ、一方、上部には原稿の画像を読み取るスキャナ部200が設けられている。
【0026】
なお、本実施形態に係る多機能装置1のスキャナ部200は、図2に示すように、原稿載置部210に原稿を載置した状態で原稿を読み取るFBS(Flatbed Scanner)機能、及び自動原稿搬送機構(ADF:Auto Document Feeder)220を備えたものである。
【0027】
また、多機能装置1の前面側上部傾斜面には、図1に示すように、プリンタ部100やスキャナ部200を操作設定するため操作パネル10が設けられ、前面側には、メモリーカード等の記憶媒体が挿入されるスロット部20、及び後述する給紙トレイ121を挿入装着するための挿入口30が設けられている。
【0028】
2.プリンタ部
図3はプリンタ部100(図2において破線で示された部分)の模式図であり、プリンタ部100は、記録用紙に画像を形成する画像記録部110、画像記録部110に記録用
紙を供給するフィーダ部120、及び画像記録部110にインクを供給するインクリフィルユニット140等から構成されている。
【0029】
2.1.フィーダ部(図3参照)
多機能装置1(プリンタ部100)の底部には、多数枚の記録用紙が載置される給紙トレイ121が配設されており、この給紙トレイ121の奥側(紙面右側)には、給紙トレイ121に載置された記録用紙を分離して上方側へ案内するための分離傾斜板122が配設されている。
【0030】
そして、分離傾斜板122から上方へ向かって記録用紙の搬送路L1が形成されており、この搬送路L1は、上方へ延びた後に紙面左方へ湾曲し、多機能装置1の背面側から正面側へ延びて、画像記録部110を通過して排紙トレイ130へ通じている。
【0031】
このため、給紙トレイ121に収容された記録用紙は、下方から上方へUターンするように案内されて画像記録部110に至り、画像記録部110にて記録用紙に画像が記録された後、排紙トレイ130に排出される。
【0032】
また、給紙ローラ123は、給紙トレイ121に積載された記録用紙を1枚ずつ分離して搬送路L1へ供給するものであり、その構造は周知のものと同様である。
すなわち、例えば、給紙ローラ123は、給紙トレイ121に接離可能に上下動する給紙アーム124の先端に軸支され、駆動伝達機構を介してモータに連結されている。給紙アーム124は、基端軸125の周りに回転可能に設けられ、かつ、待機状態では、図示されていない給紙クラッチやバネ等により上側へ跳ね上げられ、記録用紙を供給する際には下側へ揺動する。
【0033】
2.2.画像記録部110(図3参照)
画像記録部110は、記録用紙に画像を形成する画像形成手段である。具体的には、画像記録部110は、プラテン112上に搬送されてきた記録用紙に微小なインク滴を噴射する記録ヘッド111を有しており、この記録ヘッド111を主走査方向(図3の紙面と垂直な方向)に往復移動させるキャリッジ(図示せず。)に搭載されている。因みに、画像記録部110(キャリッジ)は、多機能装置1の左右方向に延びるレール部材117(図4参照)により主走査方向に移動可能に支持されている。
【0034】
また、記録ヘッド111(プラテン112)より用紙搬送方向上流側には、駆動ローラ113及び押さえローラ114が設けられており、これら駆動ローラ113及び押さえローラ114は、搬送経路L1を搬送される記録用紙を狭持し、キャリッジの往復移動と連動して記録用紙をプラテン112上に搬送する。
【0035】
なお、駆動ローラ113は図示しない電動モータから駆動力を得て回転し、押さえローラ114は、記録用紙を駆動ローラ113側に押圧することにより従動回転する。
また、記録ヘッド111(プラテン112)より用紙搬送方向下流側には、排紙ローラ115及び押さえローラ116が設けられており、これら排紙ローラ115及び押さえローラ116は、画像記録部110から排出されてきた記録用紙を狭持して印刷が終了した記録用紙を排紙トレイ130に搬送する。
【0036】
なお、排紙ローラ115は、駆動ローラ113の回転と機械的に連動(同期)して回転し、押さえローラ116は、記録用紙を排紙ローラ115側に押圧することにより従動回転する。
【0037】
因みに、押さえローラ116は記録済みの記録用紙に圧接されるので、記録用紙に記録された画像を劣化させないように、記録用紙との接触面に凹凸が形成されて拍車(歯車)状となっている。
【0038】
2.3.インクリフィルユニット
2.3.0.インクリフィルユニットに関する図面の説明
図4は、上面側から見た場合におけるインクリフィルユニット140や画像記録部110等の配置関係を示す図であり、図5はインクリフィルユニット140の斜視図であり、図6は図5のA矢視図(背面図)であり、図7は図6のB−B断面図である。
【0039】
図8はインクカートリッジ190の斜視図であり、図9は固定部材161をインクリフィルユニット140から取り外した状態を示す分解斜視図であり、図10は固定部材161をインクリフィルユニット140から取り外した状態を示す斜視図であり、図11は図10のC矢視図(背面図)である。
【0040】
図12はカートリッジケーシング142の斜視図であり、図13は図12のD矢視図(カートリッジケーシング142の背面図)であり、図14は図7のG部の拡大斜視図であり、図15はカートリッジケーシングから漏れインク導出体180を取り外した状態を示す分解斜視図である。
【0041】
図16はエルボ部材170を背面側から見た斜視図であり、図17はエルボ部材170を前面側から見た斜視図であり、図18はエルボ部材170の正面図であり、図19は図17のF−F断面図であり、図20はインクリフィルユニット140の側面図である。
【0042】
2.3.1.インクリフィルユニットの概要
インクリフィルユニット140には、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの4種類のインクがそれぞれ充填された4本のインクカートリッジ190(図1参照)が着脱可能に収納されており、これらインクカートリッジ190に充填されているインクは、ポリエチレン等の可撓性を有する材料にて形成されたインクチューブ141(図4参照)を介して記録ヘッド111に供給される。
【0043】
また、インクリフィルユニット140は、図1及び図4に示すように、多機能装置1の前面側右端部であって、かつ、図3に示すように、インクカートリッジ190にインクが満充填されているときのインク液面が、記録ヘッド111に設けられたインク噴射口(図示せず)の位置より低くなる位置に内蔵されている。
【0044】
そして、インクリフィルユニット140の背面側には、図4に示すように、記録ヘッド111内の異物等を除去するパージ処理(回復処理)時に噴射された廃インクを溜める廃インク箱118が近接配置され、インクリフィルユニット140の背面側には、殆どデットスペースが存在しない状態となっている。
【0045】
なお、多機能装置1の前面側には、図1に示すように、インクリフィルユニット140の前面側を覆う開閉可能なカバー40が設けられており、インクリフィルユニット140にインクカートリッジ190を装着(装填)する場合やインクカートリッジ190をインクリフィルユニット140から取り外す場合には、ユーザがカバー40を開くことにより、インクカートリッジ190をインクリフィルユニット140から着脱することができる。
【0046】
2.3.2.インクカートリッジ
インクカートリッジ190は、図8に示すように、幅方向(図8の左右方向)の寸法Wが他の方向に比べて小さい扁平立方形状のインクタンク部191からなる扁平形状であり、インクタンク部191には、幅方向と直交する方向(図8の前後方向)に開口してインクタンク部191に充填されたインクを排出する排出口192、及び排出口192と同方向に開口してインクタンク部191内に大気圧を導入する大気圧導入口193が設けられている。
【0047】
なお、排出口192は、インクタンク部191に充填されている全てのインクを排出することができるようにインクタンク部191の最下部側に設けられ、大気圧導入口193は、インクタンク部191に充填されたインクの液面より上方側でインクタンク部191内外が連通するようにインクタンク部191の最上部側に設けられている。
【0048】
また、排出口192内には、ゴム等の弾性変形可能な弾性材からなる開閉弁(図示せず。)が配設されており、インクカートリッジ190がカートリッジケーシング142に装着されると、後述するエルボ部材170のカートリッジ側ニードル172(図19参照)が開閉弁を押圧することで、排出口192が開く。
【0049】
逆に、インクカートリッジ190がカートリッジケーシング142から取り外されると、カートリッジ側ニードル172による押圧力が除去されるので、開閉弁が閉じて排出口192が閉じる。
【0050】
また、大気圧導入口193内には、図7に示すように、ゴム等の弾性変形可能な弾性材からなるバルブシート(弁座)195、及びこの弁座195にインクタンク部191の内側から接触することにより大気圧導入口193を閉じる弁体196が配設されており、弁体196には、弁座195を貫通するようにインクタンク部191外に延びる弁棒197が設けられている。
【0051】
そして、インクカートリッジ190が後述するカートリッジケーシング142に装着された際に、弁棒197の先端がカートリッジケーシング142の内壁に接触し、弁体196がイクタンク部191の内側に押圧されることより大気圧導入口193(弁座195)が開かれる。
【0052】
逆に、インクカートリッジ190がカートリッジケーシング142から取り外されると、弁棒197への押圧力が消滅し、図示しないリターンゴムの弾性力により弁体196が弁座195に押し付けられるので、大気圧導入口193が閉じられる。
【0053】
また、排出口192と大気圧導入口193との間には、図8に示すように、インクタンク部191(インクカートリッジ190)内のインク残留を検出するためのインク窓198が設けられており、カートリッジケーシング142側に配設されたインク残量検出センサ199(図7参照)は、インク窓198を通してインク残量を光学的に検出する。具体的には、以下のようにしてインク残量が検出される。
【0054】
すなわち、本実施形態では、インク残量検出センサ199は、カートリッジケーシング142のうちインク窓198を挟んで水平方向一方側に対応する部位に配設された発光素子、及び水平方向他方側に配設された受光素子にて構成され、かつ、インク窓198は、上下方向に延び、かつ、水平方向から透光可能な構成となっている。
【0055】
また、インクカートリッジ190内には、インク残量に応じて移動する被検出体(アクチュエータ:図示せず)が設けられており、この被検出体は、インク残量が多いときにはインク窓198内に配置され、インク残量が少なくなるとインク窓198から退避するの
ものである。
【0056】
このため、インク残量が多いときには、インク窓198に配置されている被検出体によって発光素子から発せられた光が遮られて受光素子が受光することができない。そして、インク残量が少なくなると、被検出体がインク窓198から退避するので発光素子から発せられた光が遮られることなく、インク窓198を通過して受光素子にて受光される。そこで、本実施形態では、受光素子から出力される信号に基づいてインク残量を検出している。
【0057】
2.3.3.カートリッジケーシング
カートリッジケーシング142は、図10に示すように、排出口192及び大気圧導入口193が略水平方向に向けて開口し、かつ、4本のインクカートリッジ190の扁平面191A(図8参照)が互いに隣り合うようにするように着脱可能に装着される角筒状の収容体である。
【0058】
そして、カートリッジケーシング142の水平方向一方側(本実施形態では、前方側)には、インクカートリッジ190を内部に挿入するための挿入口(図示せず。)が設けられ、水平方向他方側(本実施形態では、後方側)には、図12に示すように、カートリッジケーシング142の外側に突出するとともに、インクカートリッジ190が装着されたときに大気圧導入口193と連通する大気圧導入筒143が設けられている。
【0059】
また、大気圧導入筒143の根元側(インクカートリッジ190側)には、図13に示すように、大気圧導入筒143内と大気圧導入口193とを連通させる連通口144が設けられ、一方、大気圧導入筒143の先端側(インクカートリッジ190と反対側)の側面部には、大気圧導入筒143の突出方向と直交する方向に延びて大気圧導入筒143の内外を連通させる連通路145が設けられている。
【0060】
さらに、大気圧導入筒143の内壁には、連通口144側から大気圧導入筒143の突出方向に沿って先端側に延びる複数本の突条146が形成されており、これら複数本の突条146により毛細管現象を誘発して、大気圧導入口193から大気圧導入筒143内に漏れ出たインクをインク吸収体160(図14参照)に確実に導くようにしている。
【0061】
インク吸収体160は、大気圧導入筒143の先端側及び後述する漏れインク導出体180に接触して大気圧導入口193から漏れ出たインクを吸収するものである。なお、インク吸収体160は、スポンジやウレタン、又は繊維若しくは不織布等から構成された多孔質材にて構成されたもので、インク吸収体160は、その内部に形成された無数の小さな孔や繊維間の小さな隙間にてインクを保持吸着することによりインクを吸収する。
【0062】
また、インク吸収体160は、図7に示すように、固定部材161に固定された状態でカートリッジケーシング142の背面側に組み付けられている。
具体的には、本実施形態では、インク吸収体160は矩形板状に形成されており、かつ固定部材161には、大気圧導入筒143の突出方向と直交する4方向からインク吸収体160を囲む額縁状の枠体162が設けられている。そして、インク吸収体160は、この枠体162に嵌め込まれて枠体162の内壁に圧接した状態で固定部材161に固定されている。
【0063】
そして、枠体162のうち互いに対向する部位(本実施形態では、鉛直方向に延びる部位)には、図5及び図9に示すように、カートリッジケーシング142の外壁に形成された係合突起部147と係合する係合アーム部163が設けられ、枠体162のうち係合ア
ーム部163が設けられた部位と直交する方向(本実施形態では、水平方向)に延びる部位には、図9に示すように、後述するエルボ部材170に設けられた係合穴171に係合するように嵌り込む係合突起部164が設けられている。
【0064】
また、カートリッジケーシング142の係合突起部147の中心は、図20に示すように、水平方向から見て、大気圧導入筒143の中心より上方側にずれており、かつ、エルボ部材170の係合穴171は、大気圧導入筒143の中心より下方側にずれている。
【0065】
このため、固定部材161は、大気圧導入筒143の突出方向と直交する方向(本実施形態では、鉛直方向)において、大気圧導入筒143の中心位置を挟んで上下両側の位置にてカートリッジケーシング142に固定された状態となる。
【0066】
また、カートリッジケーシング142のうちインクカートリッジ190の排出口192に対応する部位、つまりカートリッジケーシング142の下方側には、排出口192から排出されたインクの流通方向を略90°転向させるエルボ部材170が組み付けられており、このエルボ部材170は、本実施形態ではPネジ等の機械的締結手段にてカートリッジケーシング142に固定されている。
【0067】
エルボ部材170には、図19に示すように、インクカートリッジ190(カートリッジケーシング142内)側に突出し、その先端側に排出口192と連通するインク流入口171が設けられたカートリッジ側ニードル172、及びインク流入口171の開口方向と略直交する方向であって大気圧導入筒143側(本実施形態では、上方側)に向けて開口したインク流出口173が設けられたチューブ側ニードル174が形成されている。
【0068】
そして、インク流入口171からインク流出口173に至るインク流路は、エルボ部材170内で略L字状に屈曲した経路となっており、チューブ側ニードル174には、インクチューブ141の一端側が接続される。
【0069】
また、チューブ側ニードル174に接続されたインクチューブ141は、図10及び図11に示すように、カートリッジケーシング142の外壁に沿うようにして大気圧導入筒143からずれた位置、つまり複数本の大気圧導入筒143間を通過して画像記録部110(記録ヘッド111)側に延びてその他端側が画像記録部110に接続されている。
【0070】
換言すれば、チューブ側ニードル174に接続されたインクチューブ141は、カートリッジケーシング142の外壁に沿うように前記複数個のインクカートリッジ190間に対応する位置、つまり、大気圧導入筒143の突出方向から見てインクタンク部191の角部(図8のA部)に対応する位置を通過して画像記録部110(記録ヘッド111)側に延びてその他端側が画像記録部110に接続されている。
【0071】
そして、大気圧導入筒143よりもインク流出口173側には、図11に示すように、インクチューブ141に接触してインクチューブ141の延出方向を案内する曲面状の第1案内部148が設けられ、この第1案内部148によりインクチューブ141は水平方向(紙面右方向)側に案内(屈曲)される。
【0072】
また、大気圧導入筒143を挟んでインク流出口173と反対側には、インクチューブ141に接触してインクチューブ141の延出方向を案内する曲面状の第2案内部149が設けられており、第1案内部148により水平方向(紙面右方向)側に案内(屈曲)されたインクチューブ141は、第2案内部149により略水平となる程度まで案内(屈曲)される。
【0073】
なお、本実施形態では、第1案内部148及び第2案内部149を共にカートリッジケーシング142に一体成形することより、第1案内部148と第2案内部149とを一体化している。
【0074】
ところで、カートリッジケーシング142のうち大気圧導入口193の下方側に対応する部位には、図7及び図14に示すように、大気圧導入口193から漏れ出たインクを受けてカートリッジケーシング142外に配設されたインク吸収体160まで導出する漏れインク導出体180が配設されており、この漏れインク導出体180のインク吸収体160側は、インク吸収体160に接触している。
【0075】
そして、本実施形態では、漏れインク導出体180とインク吸収体160とが確実に接触するように、漏れインク導出体180がカートリッジケーシング142に組み付けられた状態において、水平方向から見て、漏れインク導出体180の端部が大気圧導入筒143の先端と同一面、又は同一面よりインク吸収体160側に位置するような寸法に設定されている。
【0076】
また、漏れインク導出体180は、インク吸収体160と同様な多孔質体にて構成されており、本実施形態では、図15に示すように、各インクカートリッジ190に対応した4枚の漏れインク導出体180が一体となった1枚の漏れインク導出体180を用いている。
【0077】
なお、本実施形態では、4枚の漏れインク導出体180が一体となった1枚の漏れインク導出体180の形成された切り欠き部181がカートリッジケーシング142に形成された凸部等に嵌り込むことにより、カートリッジケーシング142に対する漏れインク導出体180の位置が固定される。
【0078】
また、カートリッジケーシング142の内壁のうち大気圧導入口193に面する部位には、図14に示すように、大気圧導入口193の外縁部を囲むようにインクカートリッジ190側に突出した円弧状の壁部150が設けられており、この壁部150のうち漏れインク導出体180に対応する下方部には、壁部150で囲まれた空間内に溜まったインクを漏れインク導出体180側に排出するための切り欠き部151が設けられている。
【0079】
3.本実施形態に係る多機能装置1及びインクリフィルユニット140の特徴
インクチューブ141は可撓性を有すると言えども、インクチューブ141を湾曲させる際の曲率半径が小さくなると、湾曲部で発生する曲げ応力が大きくなるので、小さな曲率半径となるようにインクチューブ141を湾曲させて配設すると、湾曲部にて亀裂が発生し易くなり、チューブの寿命が著しく低下してしまうおそれがある。
【0080】
一方、カートリッジケーシング142と画像記録部110等とを近接させると、十分な大きさの曲率半径にてインクチューブ141を湾曲させて配設(取り回す)ことが非常に困難となる。
【0081】
これに対して、本実施形態では、インクカートリッジ190から供給されたインクの流路は、エルボ部材170により略90°転向させられるので、インクチューブ141にてインク流路を略90°転向させる場合に比べて、格段に小さな曲率半径でインク流路を転向させることができる。
【0082】
また、エルボ部材170に接続されたインクチューブ141は、カートリッジケーシング142の外壁に沿うようにして、例えば複数本の大気圧導入筒143間を通過して画像記録部110側に延びるように配設(取り回)されているので、カートリッジケーシング
142の外壁から廃インク箱118等のその他機器まで隙間寸法を小さくすることができる。したがって、本実施形態では、多機能装置1の更なる小型化を実現すること可能となる。
【0083】
また、本実施形態では、大気圧導入筒143よりもインク流出口173側でインクチューブ141に接触してインクチューブ141の延出方向を案内する第1案内部148を有しているので、インクチューブ141のうちカートリッジケーシング142の外壁に沿うように配設された部位が過度に湾曲してしまうことを未然に防止できる。
【0084】
したがって、多機能装置1の更なる小型化を実現しながら、インクチューブ141に過大な曲げ応力が発生することを防止できる。
また、本実施形態では、大気圧導入筒143を挟んでインク流出口173と反対側でインクチューブ141に接触してインクチューブ141の延出方向を案内する第2案内部149を有しているので、インクチューブ141のうち大気圧導入筒143から画像記録部110に至る部位が過度に湾曲してしまうことを未然に防止できる。
【0085】
したがって、多機能装置1の更なる小型化を実現しながら、インクチューブ141に過大な曲げ応力が発生することを防止できる。
また、本実施形態では、大気圧導入口193から漏れ出たインクを受けてカートリッジケーシング142外に導出する漏れインク導出体180を有しているので、大気圧導入口193から漏れ出たインクは、漏れインク導出体180によりカートリッジケーシング142外に導出される。このため、大気圧導入口193から漏れ出たインクがインクカートリッジ190の外表面に付着してしまうことを防止できる。
【0086】
また、漏れインク導出体180が多孔質材にて構成されているので、漏れインク導出体180にて受けたインクを漏れインク導出体180にて保持することができる。このため、大気圧導入口193から漏れ出たインクが漏れインク導出体180から溢れてインクカートリッジ190の外表面に流れてしまうことを確実に防止できる。
【0087】
したがって、本実施形態では、大気圧導入口193から漏れ出たインクがインクカートリッジ190の外表面に付着してしまうことを確実に防止することができるので、大気圧導入口193から漏れ出て外表面に付着したインクによりユーザの手が汚れてしまう等の不具合が発生してしまうことを未然に防止できる。
【0088】
また、本実施形態では、漏れインク導出体180により導出されたインクを吸収するインク吸収体160を有しているので、大気圧導入口193から漏れ出たインクは、漏れインク導出体180によりカートリッジケーシング142外に導出されてインク吸収材160に吸収される。
【0089】
したがって、大気圧導入口193から漏れ出たインクが漏れインク導出体180から溢れてインクカートリッジ190の外表面に流れてしまうことを確実に防止できるので、インクがインクカートリッジ190の外表面に付着してしまうことを確実に防止することができる。
【0090】
延いては、漏れインク導出体180の下方側にインクタンク部191に充填されたインク量を検出するインク残量検出センサ199が配設されている場合であっても、大気圧導入口193から漏れ出たインクによりインク残量検出センサ199が汚れてしまうことを防止できるので、インク残量検出センサ199が誤作動してしまうことを未然に防止でき
る。
【0091】
また、本実施形態では、カートリッジケーシング142のうち大気圧導入口193に面する部位には、大気圧導入口193の外縁部を囲むようにインクカートリッジ190側に突出した壁部150が設けられているので、大気圧導入口193から漏れ出たインクは、壁部150で堰き止められる。このため、既にカートリッジケーシング142側に付着しているインクが、インクカートリッジを装着する際に飛び散ってしまうことを未然に防止できる。
【0092】
また、壁部150のうち漏れインク導出体180に対応する部位に切り欠き部151が設けられているので、壁部150で堰き止められたインクを漏れインク導出体180側に排出することができる。
【0093】
したがって、カートリッジケーシング142側に付着したインクが残存してしまうことを抑制できるので、次回、インクカートリッジ190をカートリッジケーシング142に装着する際にインクが飛び散ってしまうことを確実に防止できる。
【0094】
また、本実施形態では、インク吸収体160がカートリッジケーシング142に組み付けられた状態において、大気圧導入筒143の先端及び漏れインク導出体180がインク吸収体160に接触するように構成されているので、大気圧導入口193から漏れ出て大気圧導入筒143又は漏れインク導出体180に流れ込んだインクを確実にインク吸収体160にて吸収させることができ、大気圧導入口193から漏れ出たインクがインクカートリッジ190の外表面に付着しまうことを確実に防止できる。
【0095】
また、本実施形態では、大気圧導入筒143の側面部に大気圧導入筒143の内外を連通させる連通路145が設けられているので、大気圧導入筒143の先端がインク吸収体160に接触した状態であっても大気圧導入口に大気圧を確実に導くことができ、インクをスムーズに排出することができる。
【0096】
ところで、例えば大気圧導入筒143の突出方向と直交する方向において、固定部材161とカートリッジケーシング142との固定部の全てが大気圧導入筒143の中心位置より一方側に位置していると、他方側を固定する固定力が発生しないので、インク吸収体160を大気圧導入筒143に接触させるための反力により、固定部材161が大きく変形又は傾いてしまい、インク吸収体160を大気圧導入筒143に確実に接触させることができなくなる。
【0097】
これに対して、本実施形態では、図20に示すように、固定部材161は、大気圧導入筒143の中心位置を挟んで両側の位置にてカートリッジケーシング142に固定されているので、インク吸収体160を大気圧導入筒143に接触させるための反力により、固定部材161が大きく変形又は傾いてしまうことを防止でき、インク吸収体160を大気圧導入筒に確実に接触させることができる。
【0098】
(第2実施形態)
第1実施形態では、廃インク箱118がインクリフィルユニット140に近接配置されていたが、本実施形態では、図21に示すように、画像記録部110(キャリッジ)がインクリフィルユニット140のカートリッジケーシング142近傍を走査する多機能装置1に本発明を適用したものである。
【0099】
1.本実施形態に係るインクリフィルユニットの特徴的構成
図22はインクリフィルユニット140を背面側(画像記録部110)側からみた図で
あり、図23はインク吸収体160が嵌め込まれた状態の固定部材161をインク吸収体160側から見た図であり、図24は図23の斜視図であり、図25は図23の分解斜視図である。
【0100】
そして、本実施形態では、図22及び図23に示すように、枠体162の内側に、インク吸収体160側に突出して先端側がインク吸収体160に接触する突起部165を設け、この突起部165にてインク吸収体160を枠体162の上部内壁側に押圧している。
【0101】
また、突起部165は、大気圧導入筒143の突出方向と直交する方向において、大気圧導入筒143からずれた位置、つまり本実施形態では、図22に示すように、インク吸収体160のうち大気圧導入筒143が接触する部位より鉛直方向下方側にずれた部位に設けられている。
【0102】
なお、本実施形態では、2本の突起部165を1組として、インク吸収体160のうち大気圧導入筒143が接触する部位より鉛直方向下方側にずれた部位に突起部165を設けている。
【0103】
これは、突起部165及び枠体162を含む固定部材161を樹脂にて一体成形しているため、肉厚を一定として成形性(一定以上の歩留まり)を確保しつつ、大気圧導入筒143の水平方向略全域に対応する部位にてインク吸収体160を押圧するためである。
【0104】
また、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、カートリッジケーシング142の係合突起部147の中心は、水平方向から見て、大気圧導入筒143の中心より上方側にずれており、かつ、エルボ部材170の係合穴171は、大気圧導入筒143の中心より下方側にずれている。
【0105】
このため、固定部材161は、大気圧導入筒143の突出方向と直交する方向(本実施形態では、鉛直方向)において、大気圧導入筒143の中心位置を挟んで上下両側の位置にてカートリッジケーシング142に固定された状態となる。
【0106】
また、枠体162のうちカートリッジケーシング142(大気圧導入筒143)側には、図23〜図25に示すように、インク吸収体160がカートリッジケーシング142(大気圧導入筒143)側に移動することを規制するストッパ部166が設けられている。
【0107】
2.本実施形態に係るインクリフィルユニットの特徴
本実施形態に係る多機能装置1では、前後方向寸法を更に小型にすべく、第1実施形態に比べて画像記録部110をインクリフィルユニット140側に近接させたため、画像記録部110がカートリッジケーシング142近傍を走査(往復移動)せざるを得なくなり、第1実施形態と同一寸法のインク吸収体160(固定部材161)では、インク吸収体160の上端側が画像記録部110と干渉してしまう、といった不具合が発生した。
【0108】
この不具合に対しては、固定部材161の位置を画像記録部110との干渉が発生しない位置までずらせば解決することができるものの、このような構成とすると、大気圧導入筒143とインク吸収体160との接触箇所が、インク吸収体160の端部側にずれてしまうので、固定部材161に対するインク吸収体160の位置がずれてしまい、大気圧導入筒143とインク吸収体160と接触させることができず、漏れ出たインクをインク吸収体160にて十分に吸収することができなくなるおそれが高い。
【0109】
一方、インク吸収体160は、前述のごとくスポンジやウレタン、又は繊維若しくは不織布等から構成された多孔質材にて構成され、かつ、外周部側から僅かに押し潰すように
して枠体162に嵌め込まれた状態で固定部材161に装着されている。
【0110】
このため、インク吸収体160を嵌め込んだときのインク吸収体160の変形量が小さいときには、インク吸収体160を固定部材161に保持するための保持力が小さくなってしまう。
【0111】
しかし、インク吸収体160は、内部に形成された無数の小さな孔や繊維間の小さな隙間にてインクを保持吸着することによりインクを吸収するので、大きな保持力を確保すべく、大きく変形させた状態でインク吸収体160を枠体162に嵌め込むと、インクを吸収するための小さな孔や繊維間の小さな隙間が潰れてしまい、十分な量のインクを吸収することができなくなってしまう。
【0112】
つまり、インク吸収体160と大気圧導入筒143とを確実に接触させるべく、インク吸収体160の位置がずれないように保持力を大きくすると、インクを吸収するための小さな孔や繊維間の小さな隙間が潰れてしまうので、十分な量のインクを吸収することができなくなってしまう。
【0113】
逆に、インクを吸収するための小さな孔や繊維間の小さな隙間が潰れないようにすると、保持力が小さくなってしまうので、インク吸収体160の位置がずれてインク吸収体160と大気圧導入筒143とを確実に接触させることができなくなってしまい、やはり、十分な量のインクを吸収することができなくなってしまう。
【0114】
これに対して、本実施形態では、枠体162の内側にインク吸収体160側に突出して先端側がインク吸収体160に接触する突起部165が設けられているので、突起部165がインク吸収体160側に突出してインク吸収体160を変形させることができる。
【0115】
このため、インク吸収体160を固定部材161(枠体162)に保持するための保持力を大きくすることができる。
一方、突起部165はインク吸収体160に部分的に接触してインク吸収体160を押し潰すように変形させるので、インク吸収体160の外周面全体を押圧するようにしてインク吸収体160を押し潰す場合に比べて、インク吸収体160の変形は局所的となり、かつ、その変形量は小さくなる。
【0116】
したがって、本実施形態では、インク吸収体160の小さな孔や繊維間の小さな隙間が大きく潰れてしまうことを防止しつつ、保持力を高めることができるので、多機能装置1の更なる小型化を図った場合においても、大気圧導入口193から漏れ出たインクをインク吸収体160にて確実に吸収させることができる。
【0117】
また、本実施形態では、突起部165は、大気圧導入筒143の突出方向と直交する方向において大気圧導入筒143からずれた位置に設けられているので、インク吸収体160のうち大気圧導入筒143と接触する位置がずれてしまうことを確実に防止でき、大気圧導入口193から漏れ出たインクをインク吸収体160にて確実に吸収させることができる。
【0118】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、複数書類のインクカートリッジを備えるカラー方式のインクジェット記録装置及びインクリフィルユニットを例に本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものでは、例えば黒色のインクカートリッジのみからなる白黒のインクジェット記録装置及びインクリフィルユニットにも適用できる。
【0119】
また、上述の実施形態では、カートリッジケーシング142に第1案内部148及び第2案内部149が一体成形されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、上述の実施形態では、エルボ部材170(インクリフィルユニット140)に接続されたインクチューブ141は上方側に延びていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0120】
また、上述の実施形態では、インクカートリッジ190内のインク液面が記録ヘッド111より低くなるようにインクリフィルユニット140を配置することにより記録ヘッド111のインク噴射口に適切なメニスカスが形成されるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばインクカートリッジ190内にスポンジ等の多孔質部材を収納し、この多孔質部材によるインク吸引力を利用してインク噴射口に適切なメニスカスが形成されるようにしてもよい。
【0121】
また、上述の実施形態では、漏れインク導出体180もインク吸収体160と同様な多孔質体にて構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、漏れインク導出体180を樹脂等の非多孔質体で構成してもよい。
【0122】
また、上述の実施形態では、エルボ部材170とカートリッジケーシング142とが別部材であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば両者142、170を一体成形してもよい。
【0123】
また、上述の実施形態では、カートリッジケーシング142のうち大気圧導入口193に面する部位に円弧状の壁部150を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば壁部150を廃止する、又は壁部150を矩形状(額縁状)とする等してもよい。
【0124】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の実施形態に係る多機能装置1の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る多機能装置1の側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るプリンタ部100(図2において破線で示された部分)の模式図である。
【図4】上面側から見た場合におけるインクリフィルユニット140や画像記録部110等の配置関係を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るインクリフィルユニット140の斜視図である。
【図6】図5のA矢視図(背面図)である。
【図7】図6のB−B断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係るインクカートリッジ190の斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る固定部材161をインクリフィルユニット140から取り外した状態を示す分解斜視図である。
【図10】本発明の実施形態に係る固定部材161をインクリフィルユニット140から取り外した状態を示す斜視図である。
【図11】図10のC矢視図(背面図)である。
【図12】本発明の実施形態に係るカートリッジケーシング142の斜視図である。
【図13】図12のD矢視図(カートリッジケーシング142の背面図)である。
【図14】図7のG部の拡大斜視図である。
【図15】カートリッジケーシングから漏れインク導出体180を取り外した状態を示す分解斜視図である。
【図16】本発明の実施形態に係るエルボ部材170を背面側から見た斜視図である。
【図17】本発明の実施形態に係るエルボ部材170を前面側から見た斜視図である。
【図18】本発明の実施形態に係るエルボ部材170の正面図である。
【図19】図17のF−F断面図である。
【図20】本発明の第1実施形態に係るインクリフィルユニット140の側面図である。
【図21】本発明の第2実施形態におけるインクリフィルユニット140と画像記録部110との配置関係を示す図である。
【図22】本発明の第2実施形態に係るインクリフィルユニット140を背面側(画像記録部110)側からみた図である。
【図23】本発明の第2実施形態に係るインク吸収体160が嵌め込まれた状態の固定部材161をインク吸収体160側から見た図である。
【図24】図23の斜視図である。
【図25】図23の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0126】
1…多機能装置、10…操作パネル、20…スロット部、30…挿入口、
40…カバー、100…プリンタ部、110…画像記録部、111…記録ヘッド、
112…プラテン、113…駆動ローラ、114…押さえローラ、
115…排紙ローラ、116…押さえローラ、117…レール部材、
118…廃インク箱、121…給紙トレイ、122…分離傾斜板、
123…給紙ローラ、124…給紙アーム、125…基端軸、130…排紙トレイ、
140…インクリフィルユニット、141…インクチューブ、
142…カートリッジケーシング、143…大気圧導入筒、
144…連通口、145…連通路、146…突条、147…係合突起部、
148…第1案内部、149…第2案内部、150…壁部、151…切り欠き部、
160…インク吸収体、161…固定部材、
162…枠体、163…係合アーム部、164…係合突起部、165…突起部、
166…ストッパ部、170…エルボ部材、171…インク流入口、
171…係合穴、172…カートリッジ側ニードル、173…インク流出口、
174…チューブ側ニードル、180…インク残量検出センサ、
180…漏れインク導出体、181…切り欠き部、190…インクカートリッジ、
191…イクタンク部、191…インクタンク部、191A…扁平面、
192…排出口、193…大気圧導入口、195…弁座、196…弁体、
197…弁棒、198…インク窓、200…スキャナ部、210…原稿載置部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが充填されたインクタンク部、前記インクタンク部に充填されたインクを排出するための排出口、及び前記インクタンク部内に大気圧を導入する大気圧導入口を有するインクカートリッジと、
前記インクカートリッジが内部に装着されるとともに、前記大気圧導入口と連通して外側に突出する大気圧導入筒が設けられたカートリッジケーシングと、
前記大気圧導入筒の先端側に接触し、前記大気圧導入口から漏れ出たインクを吸収するインク吸収体と、
前記大気圧導入筒の突出方向と直交する方向から前記インク吸収体を囲む枠体を有し、前記枠体に前記インク吸収体が填め込まれた状態で前記インク吸収体を前記カートリッジケーシングに固定する固定部材とを備え、
前記枠体の内側には、前記インク吸収体側に突出して先端側が前記インク吸収体に接触する突起部が設けられていることを特徴とするインクリフィルユニット。
【請求項2】
前記突起部は、前記大気圧導入筒の突出方向と直交する方向において、前記大気圧導入筒からずれた位置に対応する部位に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクリフィルユニット。
【請求項3】
前記インク吸収体のうち前記大気圧導入筒が接触する部位より鉛直方向下方側にずれた部位に前記突起部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のインクリフィルユニット。
【請求項4】
前記固定部材は、前記大気圧導入筒の突出方向と直交する方向において、前記大気圧導入筒の中心位置を挟んで両側の位置にて前記カートリッジケーシングに固定されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のインクリフィルユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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