インク供給装置
【課題】インクカートリッジのインク残量を、インクカートリッジ内のインクの量が極めてゼロに近い状態において判定することが可能であり、且つカートリッジ装着部に対するインクカートリッジの位置決めが容易な手段を提供する。
【解決手段】カートリッジ装着部110は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入される過程において、第1反射面81を有する先端側がインク供給口71に挿入される透光性を有するインク導入管122と、インク導入管122を通じて第1反射面81へ光60を照射する発光部115と、第1反射面81により反射された光60をインク導入管122を通じて受光可能な受光部116と、を具備する。第1反射面81は、インクと接触しているときにおいて光60を反射する反射率R1と、インクと接触していないときにおいて光60を反射する反射率R2と、が異なるものである。
【解決手段】カートリッジ装着部110は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入される過程において、第1反射面81を有する先端側がインク供給口71に挿入される透光性を有するインク導入管122と、インク導入管122を通じて第1反射面81へ光60を照射する発光部115と、第1反射面81により反射された光60をインク導入管122を通じて受光可能な受光部116と、を具備する。第1反射面81は、インクと接触しているときにおいて光60を反射する反射率R1と、インクと接触していないときにおいて光60を反射する反射率R2と、が異なるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジ装着部にインクカートリッジが装着されるインク供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるチューブ供給方式の画像記録装置では、インクカートリッジが、記録ヘッドを搭載するキャリッジの外部に配置されている。このインクカートリッジと記録ヘッドとがチューブを介して接続されている。インクカートリッジは、例えば、装置本体の正面に開口を有するカートリッジ装着部に対して、開口を介して水平方向へ装着される(特許文献1参照)。カートリッジ装着部は、インクカートリッジを着脱可能に収容する。カートリッジ装着部にインクカートリッジが装着されると、インクカートリッジから記録ヘッドに至るインク通路が形成される。このインク通路を通じてインクカートリッジから記録ヘッドにインクが供給される。
【0003】
インクカートリッジ内のインク残量を光学的手段を用いて判定する技術が知られている。例えば、公知の画像記録装置においては、インクカートリッジの壁に光路板が設けられている。この光路板の内面がインクに接していると光路板は光をインク中へ向かって透過させ、光路板の内面がインクに接していないと光路板はその内面において光を全反射する。発光部から光路板に照射された光が全反射されるか否かを検知することにより、インク残量が判定される(特許文献2)。
【0004】
また、別の公知の画像記録装置においては、インクカートリッジ内を通る光導波路が設けられている。その光導波路の一端から光が照射され、他端において光導波路を透過してきた光の強度が検知されることにより、インク残量が判定される(特許文献3)。
【0005】
また、前述されたようなインク残量の判定においては、インクカートリッジ内のインク量がゼロになったときに速やかに判定が行われることが望ましい(特許文献4)。インクカートリッジ内のインク量がゼロになる前に、すなわちインクカートリッジ内にインクが残存している状態において、前述されたような光が全反射されるか否かの検知、若しくは、光の強度の検知が行われる場合には、インク量がゼロになったことは、前述の検知が行われた後のインク消費量を演算により推定して判定することとなる。このような推定に基づく判定においては、推定誤差により、実際にはインク量がゼロになったにも拘わらず、インク量がゼロになったとの判定が行われない可能性がある。すなわち、インク量がゼロになった後も画像記録が行われるリスクがある。そのようなリスクを回避するために、インクカートリッジ内に若干量のインクが残存するような状態を、インクカートリッジ内のインク量がゼロになった状態とみなして判定が行われ、ユーザにインクカートリッジの交換が促される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−132098号公報
【特許文献2】特開平5−332812号公報
【特許文献3】特開平8−43174号公報
【特許文献4】特開2006−248201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インクカートリッジ内に貯留されたインクが無駄なく消費されるためには、インク残量を判定するための光学的検知は、インクカートリッジ内に残存するインクの量が極めてゼロに近い状態において行われることが望ましい。
【0008】
また、前述された光路板や光導波路は、カートリッジ装着部に設けられた発光部及び受光部に対して精度よく位置合わせされることが必要である。インクカートリッジには、光路板や光導波路の他にも、カートリッジ装着部に設けられた部材に対して位置合わせされるべき構成が存在する。例えば、インクカートリッジに形成されたインクを供給するための開口は、カートリッジ装着部に設けられたインク導入管に対して位置合わせされる必要がある。したがって、精度よく位置合わせされる構成が多いほど、インクカートリッジが精度よくカートリッジ装着部へ装着されるようにしなければならず、位置決めのための構成や、カートリッジ装着部に対してインクカートリッジの挿抜を案内するための構成が複雑になるという問題が生じる。
【0009】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、インクカートリッジのインク残量を、インクカートリッジ内のインクの量が極めてゼロに近い状態において判定することが可能であり、且つカートリッジ装着部に対するインクカートリッジの位置決めが容易な手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、インクカートリッジと、装着向きへ当該インクカートリッジが挿入されることによって当該インクカートリッジが装着可能であるカートリッジ装着部と、を備えたインク供給装置に関する。上記インクカートリッジは、インクが貯留されるインク室を有する筐体と、上記筐体における装着向きの前側の前面に設けられており、上記インク室に貯留されたインクが流通可能なインク供給口と、を具備する。上記カートリッジ装着部は、上記インクカートリッジが上記カートリッジ装着部へ挿入される過程において、第1反射面を有する先端側が上記インク供給口に挿入される透光性を有するインク導入管と、上記インク導入管を通じて上記第1反射面へ光を照射する発光部と、上記発光部から照射されて上記第1反射面により反射された光を上記インク導入管を通じて受光可能な受光部と、を具備する。上記第1反射面は、上記インク室に貯留されたインクと接触しているときにおいて上記発光部から照射されて上記インク導入管を透過する光を反射する反射率R1と、上記インク室に貯留されたインクと接触していないときにおいて上記発光部から照射されて上記インク導入管を透過する光を反射する反射率R2と、が異なるものである。
【0011】
インクカートリッジはカートリッジ装着部に装着される。カートリッジ装着部に装着向きへ挿入されたインクカートリッジのインク供給口にインク導入管が挿入される。これにより、インク室に貯留されたインクがインク導入管を通じて外部へ供給可能となる。
【0012】
インク導入管は、発光部から照射された光を透光可能である。インク導入管の先端側には第1反射面が設けられており、インク導入管は、第1反射面がインク供給口よりもインク室側へ位置するように、インク供給口に挿入されている。第1反射面は、インク室に貯留されているインクと接触している。第1反射面は、インク室に貯留されたインクと接触しているときにおいて、発光部から照射されてインク導入管を透過する光を反射率R1で反射する。一方、第1反射面は、インク室に貯留されたインクと接触していないときにおいて、発光部から照射されてインク導入管を透過する光を反射率R2で反射する。この反射率R1と反射率R2とが異なる。例えば、反射率R1は、発光部から照射された光の大部分を透過させる反射率であり、反射率R2は、発光部から照射された光を全反射する反射率である。そうすると、第1反射面がインクに接触しているか否かによって、受光部が受光する光の強度が異なる。その光の強度の変化を検知することによって、インク室内のインクの有無の判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透光性を有するインク導入管の先端側に第1反射面を設けたので、インクカートリッジ内のインクの有無を、インク室に残存するインクの量が極めてゼロに近い状態において判定することが可能である。また、インクの有無を判定するための光学的検知に用いられる部材の位置決めを、インク供給口とインク導入管との位置決めと別に行う必要がないので、カートリッジ装着部に対するインクカートリッジの位置決めが容易である。また、インク導入管を通じて、発光部から第1反射面へ光が照射され、第1反射面において全反射された光が受光部へ到達するので、光路に気泡が介在する可能性が小さくなり、正確なインクの有無の判定が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るインク供給装置100を備えたプリンタ10の内部構造を模式的に示す模式断面図である。
【図2】図2は、インクカートリッジ30の外観構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、インクカートリッジ30の内部構成を示す縦断面図である。
【図4】図4は、カートリッジ装着部110の構成を示す断面図である。
【図5】図5は、インク導入管122の外観構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、図5におけるVI−VI断面を示す断面図である。
【図7】図7は、図5におけるVII−VII断面を示す断面図である。
【図8】図8は、制御部90の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程の状態を示すインクカートリッジ30及びカートリッジ装着部110の断面図である。
【図10】図10は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態を示すインクカートリッジ30及びカートリッジ装着部110の断面図である。
【図11】図11は、インク流路44がインクで満たされているときの光60の進行を示すインク供給部43及びインク導入管122の拡大断面図である。
【図12】図12は、インク流路44においてインクの液面が降下したときの光60の進行を示すインク供給部43及びインク導入管122の拡大断面図である。
【図13】図13は、インク導入管122の変形例を示す斜視図及び鉛直方向に沿った断面図である。
【図14】図14は、インク導入管122の別の変形例を示す斜視図及び水平方向に沿った断面図である。
【図15】図15は、インク導入管122の別の変形例を示す斜視図及び水平方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0016】
[プリンタ10の概要]
図1に示されるように、プリンタ10は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。プリンタ10は、インク供給装置100を備えている。インク供給装置100には、カートリッジ装着部110が設けられている。カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ30が装着され得る。カートリッジ装着部110には、その一面が外部に開放された開口112が設けられている。インクカートリッジ30は、開口112を介してカートリッジ装着部110に挿入され、或いはカートリッジ装着部110から抜き出される。
【0017】
インクカートリッジ30には、プリンタ10で使用可能なインクが貯留されている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、インクカートリッジ30と記録ヘッド21とがインクチューブ20で接続されている。記録ヘッド21にはサブタンク28が設けられている。サブタンク28は、インクチューブ20を通じて供給されるインクを一時的に貯留する。記録ヘッド21は、インクジェット記録方式によって、サブタンク28から供給されたインクをノズル29から選択的に吐出する。
【0018】
給紙トレイ15から給紙ローラ23によって搬送路24へ送給された記録用紙は、搬送ローラ対25によってプラテン26上へ搬送される。記録ヘッド21は、プラテン26上を通過する記録用紙に対してインクを選択的に吐出する。これにより、画像が記録用紙に記録される。プラテン26を通過した記録用紙は、排出ローラ対22によって、搬送路24の最下流側に設けられた排紙トレイ16に排出される。
【0019】
なお、本実施形態に係るプリンタ10の概略構成は一例に過ぎず、例えば、記録用紙の給紙方式や搬送方式、搬送路の形状などは、公知のインクジェットプリンタにおける他の構成が採用されてもよいことは言うまでもない。
【0020】
[インク供給装置100]
図1に示されるように、インク供給装置100は、プリンタ10に設けられている。インク供給装置100は、プリンタ10が備える記録ヘッド21へインクを供給するものである。インク供給装置100は、インクカートリッジ30を装着可能なカートリッジ装着部110を備えている。なお、図1においては、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態が示されている。
【0021】
[インクカートリッジ30]
図2,3に示されるように、インクカートリッジ30はインクが貯留される容器である。インクカートリッジ30の内部に形成されている空間がインクを貯留するインク室36である。インク室36は、インクカートリッジ30の外観を形成している筐体31により形成される空間であってもよいし、筐体31の内部に配置された、筐体31とは別の部材によって形成される空間であってもよい。
【0022】
インクカートリッジ30は、図2,3に示された起立状態、つまり、同図の下側の面を底面とし、同図の上側の面を上面として、カートリッジ装着部110に対して矢印50で示される方向(以下「挿抜方向50」と称する(図4参照)。)に沿って挿抜される。すなわち、インクカートリッジ30は、挿抜方向50に沿ってカートリッジ装着部110に挿入され、また、挿抜方向50に沿ってカートリッジ装着部110から抜き出される。インクカートリッジ30は、起立状態のままカートリッジ装着部110に挿抜される。この起立状態が、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された姿勢である装着姿勢に相当する。図4に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される向きが装着向き56であり、抜き出される向きが脱抜向き55である。挿入向き56及び脱抜向き55が、挿抜方向50と平行であることは言うまでもない。本実施形態においては、挿抜方向50は水平方向に沿う。すなわち、装着向き56及び脱抜向き55は水平方向に沿った向きである。
【0023】
インクカートリッジ30は、略直方体形状の筐体31を有する。筐体31は、幅方向51に短く、高さ方向52と奥行き方向53が幅方向51よりも長い扁平形状である。幅方向51及び奥行き方向53は、インクカートリッジ30が装着姿勢にあるときに水平方向に沿う。高さ方向52は、インクカートリッジ30が装着姿勢にあるときに鉛直方向に沿う。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に対して挿抜されるとき、奥行き方向53は、挿抜方向50と平行であり、幅方向51及び高さ方向52は、挿抜方向50と直交する。筐体31は、前壁40及び後壁42を有している。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入されるときに装着向き56の前方側となる筐体31の壁が前壁40であり、後方側となる筐体31の壁が後壁42である。前壁40と後壁42とは、奥行き方向53(挿抜方向50)において対向している。筐体31は、さらに、前壁40及び後壁42を接続する、挿抜方向50に延びる一対の側壁37,38を有している。側壁37,38は、幅方向51において対向している。筐体31は、さらに、側壁37,38と前壁40及び後壁42とを接続し、かつ前壁40の上端から後壁42の上端に向けて延びる上壁39、及び前壁40の下端から後壁42の下端に向けて延びる下壁41を有している。上壁39及び下壁41は、高さ方向52において対向している。前壁40により構成される筐体31の外面が前面に相当する。後壁42により構成される筐体31の外面が後面に相当する。より詳細には、前壁40及び前壁40に設けられた部材(例えば、後述されるインク供給部43)の外面が前面に相当する。また、後壁42及び後壁42に設けられた部材(本発明においては、必ずしも設けられる必要はない。)の外面が後面に相当する。
【0024】
図2,3に示されるように、筐体31の前壁40における高さ方向52の下側に、インク供給部43が設けられている。インク供給部43は、円筒形状の外形をなしており、前壁40から奥行き方向53(挿抜方向50)に沿って外側へ突出している。インク供給部43の先端72には、筐体31の外側へ開口するインク供給口71が形成されている。インク供給部43の内部には、インク流路44が形成されている。インク流路44は、インク供給口71から奥行き方向53(挿抜方向50)に延びてインク室36へ通じている。
【0025】
インク供給口71は、バルブ70によって開閉可能に構成されている。バルブ70は、インク供給部43のインク流路44内において、奥行き方向53(挿抜方向50)に沿って移動可能に設けられている。バルブ70は、コイルバネ73によりインク供給口71に向かって付勢されている。したがって、バルブ70に外力が加わらない状態においては、バルブ70がインク供給口71を液密に閉塞する閉位置に位置される(図3参照)。なお、インク供給部43の先端72において、インク供給口71を囲う部分がゴム等の弾性部材により形成されている。付勢されたバルブ70が弾性部材に接触すると、弾性部材が弾性変形し、インク供給口71が液密に閉塞される。この状態において、バルブ70の一部は、インク供給口71からインク供給部43の外部、すなわち、インクカートリッジ30の外部へ露出されている。
【0026】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、カートリッジ装着部110に設けられたインク導入管122が、インク供給口71に挿入され、コイルバネ73が弾性変形されて、バルブ70がコイルバネ73の付勢に抗してインク供給口71から離れた開位置に位置される(図10参照)。これにより、インク供給口71が開放されて、インク流路44を通って、インク室36からカートリッジ装着部110に設けられたインク導入管122内へインクが流出され得る。なお、筐体31には、図示しない大気導入部が設けられており、インク室36からカートリッジ装着部110に設けられたインク導入管122内へインクが流出されるのに伴い、大気導入部を介してインク室36内に大気が導入される。
【0027】
図2,3に示されるように、筐体31の上壁39における奥行き方向53の中央付近には、係合部45が形成されている。係合部45は、インクカートリッジ30の幅方向51及び高さ方向52に拡がる平面を有する突起である。係合部45には、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態で、後述されるロックレバー145が係合する。
【0028】
図2,3に示されるように、筐体31の上壁39には、奥行き方向53に渡って延びる被ガイド部47が設けられている。被ガイド部47は、上壁39から上方へ突出された突片によって構成されている。被ガイド部47において幅方向51に対向する一対の側面の間の距離は、筐体31において幅方向51に対向する一対の側面37,38の間の距離より短い。つまり、被ガイド部47の幅方向51の寸法は、筐体31の幅方向51の寸法より小さい。なお、本実施形態では、被ガイド部47と係合部45とが一体に形成されている。つまり、被ガイド部47の後壁42側の端部が係合部45である。
【0029】
筐体31の下壁41には、奥行き方向53に渡って延びる被ガイド部46が設けられている。被ガイド部46は、下壁41から下方へ突出された突片によって構成されている。被ガイド部46において幅方向51に対向する一対の側面の間の距離は、筐体31において幅方向51に対向する一対の側面37,38の間の距離より短い。つまり、被ガイド部46の幅方向51の寸法は、筐体31の幅方向51の寸法より小さい。被ガイド部46,47は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿抜される際に、後述されるガイド溝108,109に挿入されて移動されるものである。
【0030】
[カートリッジ装着部110]
図4に示されるように、カートリッジ装着部110の筐体を形成するケース101は、プリンタ10の正面側に開口112を有する。開口112を通じてケース101へインクカートリッジ30が挿抜される。インクカートリッジ30は、ケース101の内部空間の天部を画定している天面に設けられたガイド溝108に被ガイド部47が挿入され、ケース101の内部空間の底部を画定している底面に設けられたガイド溝109に被ガイド部46が挿入されることによって挿抜方向50へ案内される。ケース101には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する4つのインクカートリッジ30が収容可能であるが、各図においては、1つのインクカートリッジ30に相当するケースのみが示されている。
【0031】
ケース101は、挿抜方向50において開口112とは反対側に位置し、ケース101の内部空間に面している終面を有し、図4に示されるように、ケース101の終面の下部に接続部103が設けられている。接続部103は、終面において、ケース101に装着された各インクカートリッジ30のインク供給部43に対応する位置にそれぞれ配置されている。
【0032】
接続部103は、インク導入管122と、保持部121とを有する。インク導入管122は、透光性を有する管状の樹脂管からなる。同図には示されていないが、インク導入管122は、ケース101の終面と表裏をなすケース101の外面側で、後述されるコネクタ本体123及び接続管125を介してインクチューブ20に接続されている。各インク導入管122と接続された各インクチューブ20は、プリンタ10の記録ヘッド21へインクを流通可能に延出されている。
【0033】
保持部121は、ケース101の終面が円筒状に装着向き56へ凹嵌されることにより形成されている。保持部121の中心にインク導入管122が挿抜方向50に延びて配置されている。図10に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、円筒状のインク供給部43が円筒状の保持部121に挿入される。このとき、インク供給部43の外周面が保持部121を画定している面に接触、例えば、密着する。インク供給部43が保持部121へ挿入されると、インク導入管122がインク供給部43のインク供給口71に挿入され、インク導入管122がバルブ70を押し動かす。これにより、閉位置のバルブ70が、コイルバネ73の付勢に抗して開位置へ移動されて、インク室36に貯留されているインクが外部へ流出可能となる。インク室36から流出されたインクは、インク導入管122内へ流入し、インクチューブ20を通じて記録ヘッド21へ流れる。
【0034】
図5〜7に示されるように、インク導入管122は、立方体形状の外観を有するコネクタ本体123から突出された円管である。インク導入管122は、ケースの終面において保持部121の中心から開口112へ向かって挿抜方向50へ突出されている(図4参照)。インク導入管122は、細長な円管形状であり、その外径は、インクカートリッジ30のインク供給口71に挿入可能に設定されている。また、インク導入管122の軸線方向(仮想中心線57方向、すなわち挿抜方向50)の長さは、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、バルブ70に当接して、バルブ70を閉位置から開位置へ移動可能な長さに設定されている。したがって、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入される過程において、インク導入管122がインク供給口71に挿入されて、コイルバネ73の付勢に抗してバルブ70を閉位置から開位置へ移動させる。また、前述されたように、インク供給部43の先端72において、インク供給口71を囲う部分がゴム等の弾性部材により形成されているので、インク導入管122がインク供給口71に挿入された状態では、弾性部材が弾性変形して、インク導入管122の外面に密着する。
【0035】
インク導入管122の内部に形成された空間であるインク流路124は、コネクタ本体123の内部において上方へ折れ曲がって、コネクタ本体123の上面から突出する接続管125の内部空間と通じている。接続管125は、円管形状であり、インクチューブ20が接続されるものである。
【0036】
インク導入管122の先端には、インク導入管122の外部とインク流路124とを連通させるインク導入口129が設けられている。インク導入口129は、インク導入管122の先端における鉛直下側に配置されている。インク導入口129は、インク導入管122の先端から挿抜方向50に沿ってコネクタ本体123側へインク導入管122の側壁が凹欠されていることにより形成された空間である。インク導入管122の先端が、バルブ70に当接した状態において、インク導入口129を通じて、インクがインク導入管122の内部空間、すなわちインク流路124へ流れ込む。インク導入管122の先端には、また、切欠き127,128が設けられている。切欠き127,128は、インク導入管122の先端における水平方向の両側に配置されている。各切欠き127,128は、インク導入管122の先端から挿抜方向50に沿ってコネクタ本体123側へインク導入管122の外面が凹欠されることにより形成された空間である。切欠き127,128により、インク導入管122の側壁の外面に反射面81,82が形成されている。図11,12に示されるように、インク導入管122の先端が、バルブ70に当接した状態において、各反射面81,82の内側端はバルブ70に当接する。よって、切欠き127,128からは、インクがインク導入管122の内部空間、すなわちインク流路124へ流れ込むことはない。
【0037】
コネクタ本体123には、インク導入管122が設けられた側壁と対向する側壁からインク導入管122へ向かって挿抜方向50へ凹む凹部126が形成されている。この凹部126は、インク流路124と独立した空間である。凹部126のインク流路124側の端部を画定する終面130は、インク流路124に近接している。
【0038】
インク導入管122及びコネクタ本体123は、例えば、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ガラスなどの後述される発光部115から照射された光を透過可能な素材からなる。したがって、凹部126の終面130へ照射された光は、コネクタ本体123及びインク導入管122を通じて、インク導入管122の先端へ到達し得る。また、インク導入管122の先端へ照射された光は、インク導入管122及びコネクタ本体123を通じて、終面130へ到達し得る。
【0039】
[第1反射面81及び第2反射面82]
図7に示されるインク導入管122の断面は、インク導入管122仮想中心線57に沿った水平方向の断面、すなわち、挿抜方向50に沿った水平方向の断面である。この断面において、切欠き127により、インク導入管122の側壁の外面に形成された面が第1反射面81である。また、切欠き128により、インク導入管122の側壁の外面に形成された面が第2反射面82である。第1反射面81及び第2反射面82は、この断面において仮想中心線57を挟んで対向配置されている。また、第1反射面81及び第2反射面82は、仮想中心線57に沿った方向(挿抜方向50)と直交する方向にずれて配置されているともいえる。本実施形態では、第1傾斜面81と第2傾斜面82とが水平方向に並んで対向配置されている。また、第1反射面81及び第2反射面82は、共に仮想中心線57に沿った方向(挿抜方向50)に対して傾斜している。図7に示される断面において、第1反射面81及び第2反射面82はいずれも直線で現される。
【0040】
第1反射面81は、仮想中心線57(インク導入管122の軸線方向と合致する。)と鋭角な角度Aで交わる。第2反射面82は、仮想中心線57(インク導入管の軸線方向と合致する。)と鋭角な角度Bで交わる。この角度A及び角度Bは、次の3式のいずれをも満たす。
(式1) (角度A)+(角度B)=90°
(式2) (角度A)>SIN-1{(空気の絶対屈折率)/(バルブ70の絶対屈折率)}
(式3) (角度B)>SIN-1{(空気の絶対屈折率)/(バルブ70の絶対屈折率)}
【0041】
第1反射面81及び第2反射面82は、インク室36に貯留されたインクと接触しているときにおいて、インク導入管122内を透過する光を反射する反射率R1と、インク室36に貯留されたインクと接触していないときにおいて、インク導入管122内を挿抜方向50に沿って透過する光を反射する反射率R2と、が異なる。例えば、反射率R1は、インク導入管122内を挿抜方向50(インク導入管122の軸線方向)に沿って透過する光を、第1反射面81又は第2反射面82においてインク室36側へほとんど透過させる反射率であり、反射率R2は、インク導入管122内を挿抜方向50(インク導入管122の軸線方向)に沿って透過する光を、第1反射面81又は第2反射面82においてほぼ全反射させる反射率である。このような反射率R1及び反射率R2は、上記(式2)及び(式3)を、(角度A)及び(角度B)が満たすことにより実現される。また、上記(式1)を、(角度A)及び(角度B)が満たすことにより、挿抜方向50(インク導入管122の軸線方向)に沿って進行する光が、第1反射面81及び第2反射面82においてそれぞれ全反射されると、その反射光が挿抜方向50(インク導入管122の軸線方向)に沿って進行する。つまり、第1反射面81及び第2反射面82によって、仮想中心線57に沿って一方向き(例えば、装着向き56)に進行する光が、逆向き(例えば、脱抜向き55)に反射される。
【0042】
図7に示されるように、コネクタ本体123の凹部126に光センサ114が設けられている。光センサ114は、LEDなどの発光部115と、フォトトランジスタなどの受光部116とを有する。発光部115及び受光部116は、仮想中心線57を挟んで水平方向に並んで配置されている。発光部115は、凹部126の終面130からインク導入管122の第1反射面81へ向かって挿抜方向50に沿って進行するように光、例えば、可視光や赤外光、を照射可能である。受光部116は、インク導入管122の第2反射面82から終面130へ到達する光を受光可能である。
【0043】
図4に示されるように、ケース101には、ロックレバー145が設けられている。ロックレバー145は、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30を装着状態に維持するためのものである。ロックレバー145は、ケース101の開口112の上側に設けられている。
【0044】
ロックレバー145は、全体がアーム状に形成されている。ロックレバー145の中央付近に支軸147が設けられている。この支軸147がケース101に支持されている。これにより、ケース101の開口112の上側においてロックレバー145が支軸147を中心に回動可能に支持されている。ロックレバー145は、大別すると、操作部149と、被係合部146とに大別される。操作部149は、ケース101の開口112からケース101の外側へ突出されている。操作部149は、ロックレバー145を回動させるための力が付与される部分である。被係合部146は、ケース101の内部へ進入している。被係合部146は、インクカートリッジ30の係合部45と係合可能である。被係合部146が係合部45と係合することにより、インクカートリッジ30がケース101に対して装着状態に維持される。被係合部146が係合部45と係合可能な位置となるロックレバー145の回動位置(図10参照)がロック位置と称され、被係合部146が係合部45と係合しない位置(図9参照)がアンロック位置と称される。
【0045】
各図には示されてないが、ロックレバー145には、コイルバネが取り付けられており、このコイルバネによって、ロックレバー145は、ロック位置側へ付勢されている。ロック位置のロックレバー145に対して、操作部149が重力方向下向きへ押し下げられると、ロックレバー145がロック位置からアンロック位置へ回動される。
【0046】
[制御部90]
以下、図8が参照されつつ、プリンタ10の制御部90の概略構成が説明される。
【0047】
制御部90は、プリンタ10の全体動作を制御するものである。制御部90は、CPU91、ROM92、RAM93、EEPROM94、ASIC95を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。
【0048】
ROM92には、CPU91がプリンタ10の各種動作を制御するためのプログラムや、後述される判定処理を実行するためのプログラムなどが格納されている。RAM93は、CPU91が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM94には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0049】
ASIC95には、光センサ114が接続されている。なお、図8には示されていないが、給紙ローラ23や搬送ローラ対25等の各ローラを駆動させる駆動回路や、プリンタ10に画像記録指示等を入力するための入力部や、プリンタ10に関する情報を表示する表示部なども接続されている。
【0050】
光センサ114は、受光部116が受光した光の強度に応じたアナログの電気信号(電圧信号又は電流信号)を出力する。制御部90は、光センサ114が出力する電気信号を、所定のタイミングで監視して、その電気信号のレベル(電圧値又は電流値)が所定の閾値以上の場合にHIレベル信号と判定し、所定の閾値未満の場合にLOWレベル信号と判定する。本実施形態では、光センサ114の発光部115から発せられた光の強度よりも小さな強度に対応する閾値が設定されており、その閾値未満の強度を示す出力信号がLOWレベル信号と判定され、閾値以上の強度を示す出力信号がHIレベル信号と判定される。受光部116から出力される電気信号が、検知情報に相当する。
【0051】
[インクカートリッジ30の装着動作]
以下、図9,10が参照されつつ、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される動作が説明される。
【0052】
図9に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に対して装着向き56へ挿入される。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入されると、まず、被ガイド部47の装着向き56の先端に形成された装着向き56における前方及び下方へ傾斜する案内面が、ロックレバー145の被係合部146に当接する。更にインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入されると、ロックレバー145の被係合部146が被ガイド部47に乗りあがる。これにより、ロックレバー145が図9における反時計回りに回動して、ロック位置からアンロック位置へ移動する。
【0053】
インクカートリッジ30が装着位置に到達すると、係合部45がロックレバー145の被係合部146を装着向き56へ通り過ぎる。これにより、ロックレバー145の被係合部146が被ガイド部47に支持されなくなるので、ロックレバー145が図10における時計回りへ回動し、被係合部146が係合部45と係合する。この被係合部146と係合部45との係合により、インクカートリッジ30が装着位置に保持される。これにより、カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了する。
【0054】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着される過程において、インク供給部43は保持部121に挿入され、インク導入管122は、インク供給部43のインク供給口71に更に挿入されてバルブ70を移動させる。インク供給部43が保持部121に挿入され、また、インク導入管122がインク供給口71に挿入されることにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に対して、所定の位置に位置決めされる。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、インク導入管122の先端は、バルブ70に当接している。したがって、バルブ70は、コイルバネ73の付勢に抗して、インク供給口71から離間された開位置に位置される。インク導入管122の先端には、インク導入口129が設けられているので、このインク導入口129を通じて、インク室33からインク流路44を介して、インク導入管122のインク流路124にインクが流入する。
【0055】
[インクカートリッジ30のインク残量判定]
以下、図11,12が参照されつつ、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30のインク残量判定が説明される。
【0056】
図10に示されるように、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態において、制御部90は、所定のタイミングで、光センサ114の発光部115から光を照射させ、受光部116が受光した光の強度に基づく電気信号を監視する。この所定のタイミングとして、例えば、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着されたときや、プリンタ10において1頁分の印刷が終了したとき、プリンタ10の電源がONにされたときなどが挙げられる。
【0057】
図11に示されるように、光センサ114の発光部115から照射された光60は、インク導入管122の内部を挿抜方向50に沿って進行して第1反射面81に到達する。同図に示されるように、インク供給部43の内部空間、すなわちインク流路44は、インク室36に貯留されたインクで満たされている。したがって、第1反射面81は、インク流路44においてインクと接触している。
【0058】
第1反射面81は、インクと接触しているので、発光部115から照射されてインク導入管122内を透過する光60をインク中へ透過させる。したがって、インク導入管122を通じて受光部116へ到達する光60は殆どない。この光の強度に応じて受光部116から出力されたアナログの電気信号(検知情報)を制御部90が受信して、その電気信号のレベルが所定の閾値以上であるか否かを判定する。このときは、受光部116が受光する光の強度が所定の閾値未満であるので、LOWレベル信号と判定される。制御部90は、受光部116から出力された電気信号をLOWレベル信号と判定したことに基づいて、インクカートリッジ30のインク室36にインクがあると判定したり、インクカートリッジ30の交換が不要であると判定したりする。
【0059】
プリンタ10において印刷が行われることにより、インクカートリッジ30のインク室36に貯留されたインクが消費される。そして、インク室36に貯留されたインク量が残り少なくなると、インク流路44においてもインクの液面が降下する。インク流路44において、インクの液面がインク導入管122の切欠き127,128よりも降下すると、第1反射面81及び第2反射面82がインクと接触しなくなる。
【0060】
図12に示されるように、第1反射面81は、インクと接触していないので、発光部115から照射されてインク導入管122内を挿抜方向50に沿って透過する光を全反射する。第1反射面81において全反射された光60は、インク流路124内を第2反射面82へ向かって進行する。第2反射面82は、インクと接触していないので、第1反射面81において全反射された光60を全反射する。第2反射面82において全反射された光60は、インク導入管122を通じて挿抜方向50に沿って受光部116へ進行し、受光部116において受光される。この光の強度に応じて受光部116から出力されたアナログの電気信号(検知情報)を制御部90が受信して、その電気信号のレベルが所定の閾値以上であるか否かを判定する。このときは、受光部116が受光した光の強度が所定の閾値以上であるので、HIレベル信号と判定される。制御部90は、受光部116から出力された電気信号をHIレベル信号と判定したことに基づいて、インクカートリッジ30のインク室36にインクがないと判定したり、インクカートリッジ30の交換が必要であると判定したりする。
【0061】
[本実施形態の効果]
本実施形態によれば、透光性を有するインク導入管122の先端側に第1反射面81及び第2反射面82が設けられたので、インクカートリッジ30内のインクの有無を、インク室36に残存するインクの量が極めてゼロに近い状態において判定することが可能である。
【0062】
また、インクカートリッジ30内のインクの有無を判定するための光学的検知に用いられる部材の位置決めを、インク供給口71とインク導入管122との位置決めと別に行う必要がないので、カートリッジ装着部110に対するインクカートリッジ30の位置決めが容易である。
【0063】
また、インク導入管122が発光部115から照射された光を透過可能であり、受光部116は、第2反射面82からの反射光をインク導入管122を通じて受光するので、光60の光路に気泡が介在する可能性が小さくなり、正確なインク残量の判定が実現される。
【0064】
また、インクカートリッジ30の筐体31は、装着姿勢における高さ方向52に長く、かつ幅方向51に短い外形であり、インク供給口71は、高さ方向52の下側に配置されているので、インク室36の底面の面積を小さくして、インク残量がなしと判定されるときにインク室36に残るインクの量を少なくすることができる。
【0065】
[変形例]
なお、本実施形態では、インク導入管122において、第1反射面81と第2反射面82とが水平方向に並んで対向配置されているが、第1反射面81及び第2反射面82が、第1反射面81を下側として鉛直方向に並んで対向配置されてもよい。例えば、図13に示されるように、インク導入管122の先端の外周縁の全体が傾斜面にされており、その傾斜面うちの下側を第1反射面81として機能させ、上側を第2反射面82として機能させてもよい。このようなインク導入管122の先端形状において、インク導入口129は、インク導入管122の側壁の下側に形成されており、インク導入口129は第1反射面81及び第2反射面82により区画される空間ではない。なお、同図には示されていないが、光センサ114の発光部115と受光部116も、鉛直方向に並んで配置されており、発光部115は、インク導入管122の上側部分を通じて第2反射面82に向けて光を照射する。
【0066】
前述された第1反射面81及び第2反射面82の配置であれば、第2反射面82において全反射された光60が第1反射面81に到達する第1反射面81の部分がインクと接触しなくなると、第1反射面81が光60を受光部116へ向かって全反射する。第1反射面81から全反射された光60は、インク導入管122の下側部分を進行するので、インク流路44におけるインクの液面が、インク導入管122の下側部分の最下端付近まで降下すると、制御部90においてインク残量がないと判定され得る。これにより、インク室36に残存するインクの量が極めてゼロに近く、かつインク導入口129を通じてインク導入管122の内部空間へ空気が進入しない限界の状態において、インク残量の判定を行うことができる。
【0067】
また、図13に示された変形例では、第2反射面82は、インクと接触しているか否かによって反射率が異なるものとされているが、第2反射面82が、インクと接触しているか否かに拘わらず光を反射するものであってもよい。例えば、第2反射面82にアルミ箔が設けられていてもよい。このような第2反射面82が採用されても、インクと接触しているか否かによって反射率が異なる第1反射面81がインク導入管122の下側に配置されているので、インク室36に残存するインクの量がよりゼロに近い状態において、制御部90がインク残量の判定を行うことができる。
【0068】
また、前述の図13に示された変形例においては、インク導入管122の先端の外周縁の全体が傾斜面にされており、その傾斜面のうちの下側が第1反射面81として機能し、上側が第2反射面82として機能していたが、図14に示されているように、傾斜面のうち水平方向に並んで対向する面を第1反射面81及び第2反射面82として機能させてもよい。この場合、光センサ114の発光部115及び受光部116も、水平方向に並んで配置される。このような第1反射面81及び第2反射面82の配置であれば、図14に示されているように、発光部115から照射された光60は、インク導入管122のみを通じて進行し、受光部116に到達する。すなわち、光60は、インク流路124内やインク導入口129内を通過しない。したがって、光路上に気泡が存在することがないので、正確なインクの残量の判定が実現される。
【0069】
また、本実施形態では、図11,12に示されているように、インク導入管122の先端が、バルブ70に当接した状態において、各反射面81,82の内側端はバルブ70に当接するが、各反射面81,82はバルブ70に当接しなくてもよい。例えば、図15に示されているように、切欠き127,128は、インク導入管122の先端から挿抜方向50に沿ってコネクタ本体123側へインク導入管122の側壁が凹欠されていることにより形成されていてもよい。この場合、インク導入管122の先端が、バルブ70に当接した状態において、各反射面81,82はバルブ70に当接しない。よって、切欠き127,128を通じて、インクがインク導入管122の内部空間、すなわちインク流路124へ流れ込む。すなわち、切欠き127,128は、インク導入口として機能する。この変形例では、インク導入口129は省略されていてもよい。また、インク導入口として機能する切欠き127の装着向き56側を画定する面が第1反射面81であり、インク導入口として機能する切欠き128の装着向き56側を画定する面が第2反射面82である。
【0070】
また、本実施形態では、図7に示されるインク導入管122の断面において、第1反射面81及び第2反射面82はいずれも直線で現されるが、インク導入管122の先端形状が例えばドーム形状に変更されることによって、第1反射面81及び第2反射面82が曲線で現されてもよい。第1反射面81及び第2反射面82がそれぞれ曲線で現される場合には、その断面において第1反射面81及び第2反射面82のそれぞれ接線と仮想中心線57とが成す鋭角である角度A及び角度Bが、前述された(式1)、(式2)、及び(式3)をそれぞれ満たすように設定される。
【符号の説明】
【0071】
30・・・インクカートリッジ
31・・・筐体
36・・・インク室
40・・・前壁(前面)
71・・・インク供給口
81・・・第1反射面
82・・・第2反射面
100・・・インク供給装置
110・・・カートリッジ装着部
115・・・発光部
116・・・受光部
122・・・インク導入管
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジ装着部にインクカートリッジが装着されるインク供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるチューブ供給方式の画像記録装置では、インクカートリッジが、記録ヘッドを搭載するキャリッジの外部に配置されている。このインクカートリッジと記録ヘッドとがチューブを介して接続されている。インクカートリッジは、例えば、装置本体の正面に開口を有するカートリッジ装着部に対して、開口を介して水平方向へ装着される(特許文献1参照)。カートリッジ装着部は、インクカートリッジを着脱可能に収容する。カートリッジ装着部にインクカートリッジが装着されると、インクカートリッジから記録ヘッドに至るインク通路が形成される。このインク通路を通じてインクカートリッジから記録ヘッドにインクが供給される。
【0003】
インクカートリッジ内のインク残量を光学的手段を用いて判定する技術が知られている。例えば、公知の画像記録装置においては、インクカートリッジの壁に光路板が設けられている。この光路板の内面がインクに接していると光路板は光をインク中へ向かって透過させ、光路板の内面がインクに接していないと光路板はその内面において光を全反射する。発光部から光路板に照射された光が全反射されるか否かを検知することにより、インク残量が判定される(特許文献2)。
【0004】
また、別の公知の画像記録装置においては、インクカートリッジ内を通る光導波路が設けられている。その光導波路の一端から光が照射され、他端において光導波路を透過してきた光の強度が検知されることにより、インク残量が判定される(特許文献3)。
【0005】
また、前述されたようなインク残量の判定においては、インクカートリッジ内のインク量がゼロになったときに速やかに判定が行われることが望ましい(特許文献4)。インクカートリッジ内のインク量がゼロになる前に、すなわちインクカートリッジ内にインクが残存している状態において、前述されたような光が全反射されるか否かの検知、若しくは、光の強度の検知が行われる場合には、インク量がゼロになったことは、前述の検知が行われた後のインク消費量を演算により推定して判定することとなる。このような推定に基づく判定においては、推定誤差により、実際にはインク量がゼロになったにも拘わらず、インク量がゼロになったとの判定が行われない可能性がある。すなわち、インク量がゼロになった後も画像記録が行われるリスクがある。そのようなリスクを回避するために、インクカートリッジ内に若干量のインクが残存するような状態を、インクカートリッジ内のインク量がゼロになった状態とみなして判定が行われ、ユーザにインクカートリッジの交換が促される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−132098号公報
【特許文献2】特開平5−332812号公報
【特許文献3】特開平8−43174号公報
【特許文献4】特開2006−248201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インクカートリッジ内に貯留されたインクが無駄なく消費されるためには、インク残量を判定するための光学的検知は、インクカートリッジ内に残存するインクの量が極めてゼロに近い状態において行われることが望ましい。
【0008】
また、前述された光路板や光導波路は、カートリッジ装着部に設けられた発光部及び受光部に対して精度よく位置合わせされることが必要である。インクカートリッジには、光路板や光導波路の他にも、カートリッジ装着部に設けられた部材に対して位置合わせされるべき構成が存在する。例えば、インクカートリッジに形成されたインクを供給するための開口は、カートリッジ装着部に設けられたインク導入管に対して位置合わせされる必要がある。したがって、精度よく位置合わせされる構成が多いほど、インクカートリッジが精度よくカートリッジ装着部へ装着されるようにしなければならず、位置決めのための構成や、カートリッジ装着部に対してインクカートリッジの挿抜を案内するための構成が複雑になるという問題が生じる。
【0009】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、インクカートリッジのインク残量を、インクカートリッジ内のインクの量が極めてゼロに近い状態において判定することが可能であり、且つカートリッジ装着部に対するインクカートリッジの位置決めが容易な手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、インクカートリッジと、装着向きへ当該インクカートリッジが挿入されることによって当該インクカートリッジが装着可能であるカートリッジ装着部と、を備えたインク供給装置に関する。上記インクカートリッジは、インクが貯留されるインク室を有する筐体と、上記筐体における装着向きの前側の前面に設けられており、上記インク室に貯留されたインクが流通可能なインク供給口と、を具備する。上記カートリッジ装着部は、上記インクカートリッジが上記カートリッジ装着部へ挿入される過程において、第1反射面を有する先端側が上記インク供給口に挿入される透光性を有するインク導入管と、上記インク導入管を通じて上記第1反射面へ光を照射する発光部と、上記発光部から照射されて上記第1反射面により反射された光を上記インク導入管を通じて受光可能な受光部と、を具備する。上記第1反射面は、上記インク室に貯留されたインクと接触しているときにおいて上記発光部から照射されて上記インク導入管を透過する光を反射する反射率R1と、上記インク室に貯留されたインクと接触していないときにおいて上記発光部から照射されて上記インク導入管を透過する光を反射する反射率R2と、が異なるものである。
【0011】
インクカートリッジはカートリッジ装着部に装着される。カートリッジ装着部に装着向きへ挿入されたインクカートリッジのインク供給口にインク導入管が挿入される。これにより、インク室に貯留されたインクがインク導入管を通じて外部へ供給可能となる。
【0012】
インク導入管は、発光部から照射された光を透光可能である。インク導入管の先端側には第1反射面が設けられており、インク導入管は、第1反射面がインク供給口よりもインク室側へ位置するように、インク供給口に挿入されている。第1反射面は、インク室に貯留されているインクと接触している。第1反射面は、インク室に貯留されたインクと接触しているときにおいて、発光部から照射されてインク導入管を透過する光を反射率R1で反射する。一方、第1反射面は、インク室に貯留されたインクと接触していないときにおいて、発光部から照射されてインク導入管を透過する光を反射率R2で反射する。この反射率R1と反射率R2とが異なる。例えば、反射率R1は、発光部から照射された光の大部分を透過させる反射率であり、反射率R2は、発光部から照射された光を全反射する反射率である。そうすると、第1反射面がインクに接触しているか否かによって、受光部が受光する光の強度が異なる。その光の強度の変化を検知することによって、インク室内のインクの有無の判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透光性を有するインク導入管の先端側に第1反射面を設けたので、インクカートリッジ内のインクの有無を、インク室に残存するインクの量が極めてゼロに近い状態において判定することが可能である。また、インクの有無を判定するための光学的検知に用いられる部材の位置決めを、インク供給口とインク導入管との位置決めと別に行う必要がないので、カートリッジ装着部に対するインクカートリッジの位置決めが容易である。また、インク導入管を通じて、発光部から第1反射面へ光が照射され、第1反射面において全反射された光が受光部へ到達するので、光路に気泡が介在する可能性が小さくなり、正確なインクの有無の判定が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るインク供給装置100を備えたプリンタ10の内部構造を模式的に示す模式断面図である。
【図2】図2は、インクカートリッジ30の外観構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、インクカートリッジ30の内部構成を示す縦断面図である。
【図4】図4は、カートリッジ装着部110の構成を示す断面図である。
【図5】図5は、インク導入管122の外観構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、図5におけるVI−VI断面を示す断面図である。
【図7】図7は、図5におけるVII−VII断面を示す断面図である。
【図8】図8は、制御部90の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程の状態を示すインクカートリッジ30及びカートリッジ装着部110の断面図である。
【図10】図10は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態を示すインクカートリッジ30及びカートリッジ装着部110の断面図である。
【図11】図11は、インク流路44がインクで満たされているときの光60の進行を示すインク供給部43及びインク導入管122の拡大断面図である。
【図12】図12は、インク流路44においてインクの液面が降下したときの光60の進行を示すインク供給部43及びインク導入管122の拡大断面図である。
【図13】図13は、インク導入管122の変形例を示す斜視図及び鉛直方向に沿った断面図である。
【図14】図14は、インク導入管122の別の変形例を示す斜視図及び水平方向に沿った断面図である。
【図15】図15は、インク導入管122の別の変形例を示す斜視図及び水平方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0016】
[プリンタ10の概要]
図1に示されるように、プリンタ10は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。プリンタ10は、インク供給装置100を備えている。インク供給装置100には、カートリッジ装着部110が設けられている。カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ30が装着され得る。カートリッジ装着部110には、その一面が外部に開放された開口112が設けられている。インクカートリッジ30は、開口112を介してカートリッジ装着部110に挿入され、或いはカートリッジ装着部110から抜き出される。
【0017】
インクカートリッジ30には、プリンタ10で使用可能なインクが貯留されている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、インクカートリッジ30と記録ヘッド21とがインクチューブ20で接続されている。記録ヘッド21にはサブタンク28が設けられている。サブタンク28は、インクチューブ20を通じて供給されるインクを一時的に貯留する。記録ヘッド21は、インクジェット記録方式によって、サブタンク28から供給されたインクをノズル29から選択的に吐出する。
【0018】
給紙トレイ15から給紙ローラ23によって搬送路24へ送給された記録用紙は、搬送ローラ対25によってプラテン26上へ搬送される。記録ヘッド21は、プラテン26上を通過する記録用紙に対してインクを選択的に吐出する。これにより、画像が記録用紙に記録される。プラテン26を通過した記録用紙は、排出ローラ対22によって、搬送路24の最下流側に設けられた排紙トレイ16に排出される。
【0019】
なお、本実施形態に係るプリンタ10の概略構成は一例に過ぎず、例えば、記録用紙の給紙方式や搬送方式、搬送路の形状などは、公知のインクジェットプリンタにおける他の構成が採用されてもよいことは言うまでもない。
【0020】
[インク供給装置100]
図1に示されるように、インク供給装置100は、プリンタ10に設けられている。インク供給装置100は、プリンタ10が備える記録ヘッド21へインクを供給するものである。インク供給装置100は、インクカートリッジ30を装着可能なカートリッジ装着部110を備えている。なお、図1においては、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態が示されている。
【0021】
[インクカートリッジ30]
図2,3に示されるように、インクカートリッジ30はインクが貯留される容器である。インクカートリッジ30の内部に形成されている空間がインクを貯留するインク室36である。インク室36は、インクカートリッジ30の外観を形成している筐体31により形成される空間であってもよいし、筐体31の内部に配置された、筐体31とは別の部材によって形成される空間であってもよい。
【0022】
インクカートリッジ30は、図2,3に示された起立状態、つまり、同図の下側の面を底面とし、同図の上側の面を上面として、カートリッジ装着部110に対して矢印50で示される方向(以下「挿抜方向50」と称する(図4参照)。)に沿って挿抜される。すなわち、インクカートリッジ30は、挿抜方向50に沿ってカートリッジ装着部110に挿入され、また、挿抜方向50に沿ってカートリッジ装着部110から抜き出される。インクカートリッジ30は、起立状態のままカートリッジ装着部110に挿抜される。この起立状態が、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された姿勢である装着姿勢に相当する。図4に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される向きが装着向き56であり、抜き出される向きが脱抜向き55である。挿入向き56及び脱抜向き55が、挿抜方向50と平行であることは言うまでもない。本実施形態においては、挿抜方向50は水平方向に沿う。すなわち、装着向き56及び脱抜向き55は水平方向に沿った向きである。
【0023】
インクカートリッジ30は、略直方体形状の筐体31を有する。筐体31は、幅方向51に短く、高さ方向52と奥行き方向53が幅方向51よりも長い扁平形状である。幅方向51及び奥行き方向53は、インクカートリッジ30が装着姿勢にあるときに水平方向に沿う。高さ方向52は、インクカートリッジ30が装着姿勢にあるときに鉛直方向に沿う。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に対して挿抜されるとき、奥行き方向53は、挿抜方向50と平行であり、幅方向51及び高さ方向52は、挿抜方向50と直交する。筐体31は、前壁40及び後壁42を有している。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入されるときに装着向き56の前方側となる筐体31の壁が前壁40であり、後方側となる筐体31の壁が後壁42である。前壁40と後壁42とは、奥行き方向53(挿抜方向50)において対向している。筐体31は、さらに、前壁40及び後壁42を接続する、挿抜方向50に延びる一対の側壁37,38を有している。側壁37,38は、幅方向51において対向している。筐体31は、さらに、側壁37,38と前壁40及び後壁42とを接続し、かつ前壁40の上端から後壁42の上端に向けて延びる上壁39、及び前壁40の下端から後壁42の下端に向けて延びる下壁41を有している。上壁39及び下壁41は、高さ方向52において対向している。前壁40により構成される筐体31の外面が前面に相当する。後壁42により構成される筐体31の外面が後面に相当する。より詳細には、前壁40及び前壁40に設けられた部材(例えば、後述されるインク供給部43)の外面が前面に相当する。また、後壁42及び後壁42に設けられた部材(本発明においては、必ずしも設けられる必要はない。)の外面が後面に相当する。
【0024】
図2,3に示されるように、筐体31の前壁40における高さ方向52の下側に、インク供給部43が設けられている。インク供給部43は、円筒形状の外形をなしており、前壁40から奥行き方向53(挿抜方向50)に沿って外側へ突出している。インク供給部43の先端72には、筐体31の外側へ開口するインク供給口71が形成されている。インク供給部43の内部には、インク流路44が形成されている。インク流路44は、インク供給口71から奥行き方向53(挿抜方向50)に延びてインク室36へ通じている。
【0025】
インク供給口71は、バルブ70によって開閉可能に構成されている。バルブ70は、インク供給部43のインク流路44内において、奥行き方向53(挿抜方向50)に沿って移動可能に設けられている。バルブ70は、コイルバネ73によりインク供給口71に向かって付勢されている。したがって、バルブ70に外力が加わらない状態においては、バルブ70がインク供給口71を液密に閉塞する閉位置に位置される(図3参照)。なお、インク供給部43の先端72において、インク供給口71を囲う部分がゴム等の弾性部材により形成されている。付勢されたバルブ70が弾性部材に接触すると、弾性部材が弾性変形し、インク供給口71が液密に閉塞される。この状態において、バルブ70の一部は、インク供給口71からインク供給部43の外部、すなわち、インクカートリッジ30の外部へ露出されている。
【0026】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、カートリッジ装着部110に設けられたインク導入管122が、インク供給口71に挿入され、コイルバネ73が弾性変形されて、バルブ70がコイルバネ73の付勢に抗してインク供給口71から離れた開位置に位置される(図10参照)。これにより、インク供給口71が開放されて、インク流路44を通って、インク室36からカートリッジ装着部110に設けられたインク導入管122内へインクが流出され得る。なお、筐体31には、図示しない大気導入部が設けられており、インク室36からカートリッジ装着部110に設けられたインク導入管122内へインクが流出されるのに伴い、大気導入部を介してインク室36内に大気が導入される。
【0027】
図2,3に示されるように、筐体31の上壁39における奥行き方向53の中央付近には、係合部45が形成されている。係合部45は、インクカートリッジ30の幅方向51及び高さ方向52に拡がる平面を有する突起である。係合部45には、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態で、後述されるロックレバー145が係合する。
【0028】
図2,3に示されるように、筐体31の上壁39には、奥行き方向53に渡って延びる被ガイド部47が設けられている。被ガイド部47は、上壁39から上方へ突出された突片によって構成されている。被ガイド部47において幅方向51に対向する一対の側面の間の距離は、筐体31において幅方向51に対向する一対の側面37,38の間の距離より短い。つまり、被ガイド部47の幅方向51の寸法は、筐体31の幅方向51の寸法より小さい。なお、本実施形態では、被ガイド部47と係合部45とが一体に形成されている。つまり、被ガイド部47の後壁42側の端部が係合部45である。
【0029】
筐体31の下壁41には、奥行き方向53に渡って延びる被ガイド部46が設けられている。被ガイド部46は、下壁41から下方へ突出された突片によって構成されている。被ガイド部46において幅方向51に対向する一対の側面の間の距離は、筐体31において幅方向51に対向する一対の側面37,38の間の距離より短い。つまり、被ガイド部46の幅方向51の寸法は、筐体31の幅方向51の寸法より小さい。被ガイド部46,47は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿抜される際に、後述されるガイド溝108,109に挿入されて移動されるものである。
【0030】
[カートリッジ装着部110]
図4に示されるように、カートリッジ装着部110の筐体を形成するケース101は、プリンタ10の正面側に開口112を有する。開口112を通じてケース101へインクカートリッジ30が挿抜される。インクカートリッジ30は、ケース101の内部空間の天部を画定している天面に設けられたガイド溝108に被ガイド部47が挿入され、ケース101の内部空間の底部を画定している底面に設けられたガイド溝109に被ガイド部46が挿入されることによって挿抜方向50へ案内される。ケース101には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する4つのインクカートリッジ30が収容可能であるが、各図においては、1つのインクカートリッジ30に相当するケースのみが示されている。
【0031】
ケース101は、挿抜方向50において開口112とは反対側に位置し、ケース101の内部空間に面している終面を有し、図4に示されるように、ケース101の終面の下部に接続部103が設けられている。接続部103は、終面において、ケース101に装着された各インクカートリッジ30のインク供給部43に対応する位置にそれぞれ配置されている。
【0032】
接続部103は、インク導入管122と、保持部121とを有する。インク導入管122は、透光性を有する管状の樹脂管からなる。同図には示されていないが、インク導入管122は、ケース101の終面と表裏をなすケース101の外面側で、後述されるコネクタ本体123及び接続管125を介してインクチューブ20に接続されている。各インク導入管122と接続された各インクチューブ20は、プリンタ10の記録ヘッド21へインクを流通可能に延出されている。
【0033】
保持部121は、ケース101の終面が円筒状に装着向き56へ凹嵌されることにより形成されている。保持部121の中心にインク導入管122が挿抜方向50に延びて配置されている。図10に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、円筒状のインク供給部43が円筒状の保持部121に挿入される。このとき、インク供給部43の外周面が保持部121を画定している面に接触、例えば、密着する。インク供給部43が保持部121へ挿入されると、インク導入管122がインク供給部43のインク供給口71に挿入され、インク導入管122がバルブ70を押し動かす。これにより、閉位置のバルブ70が、コイルバネ73の付勢に抗して開位置へ移動されて、インク室36に貯留されているインクが外部へ流出可能となる。インク室36から流出されたインクは、インク導入管122内へ流入し、インクチューブ20を通じて記録ヘッド21へ流れる。
【0034】
図5〜7に示されるように、インク導入管122は、立方体形状の外観を有するコネクタ本体123から突出された円管である。インク導入管122は、ケースの終面において保持部121の中心から開口112へ向かって挿抜方向50へ突出されている(図4参照)。インク導入管122は、細長な円管形状であり、その外径は、インクカートリッジ30のインク供給口71に挿入可能に設定されている。また、インク導入管122の軸線方向(仮想中心線57方向、すなわち挿抜方向50)の長さは、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、バルブ70に当接して、バルブ70を閉位置から開位置へ移動可能な長さに設定されている。したがって、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入される過程において、インク導入管122がインク供給口71に挿入されて、コイルバネ73の付勢に抗してバルブ70を閉位置から開位置へ移動させる。また、前述されたように、インク供給部43の先端72において、インク供給口71を囲う部分がゴム等の弾性部材により形成されているので、インク導入管122がインク供給口71に挿入された状態では、弾性部材が弾性変形して、インク導入管122の外面に密着する。
【0035】
インク導入管122の内部に形成された空間であるインク流路124は、コネクタ本体123の内部において上方へ折れ曲がって、コネクタ本体123の上面から突出する接続管125の内部空間と通じている。接続管125は、円管形状であり、インクチューブ20が接続されるものである。
【0036】
インク導入管122の先端には、インク導入管122の外部とインク流路124とを連通させるインク導入口129が設けられている。インク導入口129は、インク導入管122の先端における鉛直下側に配置されている。インク導入口129は、インク導入管122の先端から挿抜方向50に沿ってコネクタ本体123側へインク導入管122の側壁が凹欠されていることにより形成された空間である。インク導入管122の先端が、バルブ70に当接した状態において、インク導入口129を通じて、インクがインク導入管122の内部空間、すなわちインク流路124へ流れ込む。インク導入管122の先端には、また、切欠き127,128が設けられている。切欠き127,128は、インク導入管122の先端における水平方向の両側に配置されている。各切欠き127,128は、インク導入管122の先端から挿抜方向50に沿ってコネクタ本体123側へインク導入管122の外面が凹欠されることにより形成された空間である。切欠き127,128により、インク導入管122の側壁の外面に反射面81,82が形成されている。図11,12に示されるように、インク導入管122の先端が、バルブ70に当接した状態において、各反射面81,82の内側端はバルブ70に当接する。よって、切欠き127,128からは、インクがインク導入管122の内部空間、すなわちインク流路124へ流れ込むことはない。
【0037】
コネクタ本体123には、インク導入管122が設けられた側壁と対向する側壁からインク導入管122へ向かって挿抜方向50へ凹む凹部126が形成されている。この凹部126は、インク流路124と独立した空間である。凹部126のインク流路124側の端部を画定する終面130は、インク流路124に近接している。
【0038】
インク導入管122及びコネクタ本体123は、例えば、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ガラスなどの後述される発光部115から照射された光を透過可能な素材からなる。したがって、凹部126の終面130へ照射された光は、コネクタ本体123及びインク導入管122を通じて、インク導入管122の先端へ到達し得る。また、インク導入管122の先端へ照射された光は、インク導入管122及びコネクタ本体123を通じて、終面130へ到達し得る。
【0039】
[第1反射面81及び第2反射面82]
図7に示されるインク導入管122の断面は、インク導入管122仮想中心線57に沿った水平方向の断面、すなわち、挿抜方向50に沿った水平方向の断面である。この断面において、切欠き127により、インク導入管122の側壁の外面に形成された面が第1反射面81である。また、切欠き128により、インク導入管122の側壁の外面に形成された面が第2反射面82である。第1反射面81及び第2反射面82は、この断面において仮想中心線57を挟んで対向配置されている。また、第1反射面81及び第2反射面82は、仮想中心線57に沿った方向(挿抜方向50)と直交する方向にずれて配置されているともいえる。本実施形態では、第1傾斜面81と第2傾斜面82とが水平方向に並んで対向配置されている。また、第1反射面81及び第2反射面82は、共に仮想中心線57に沿った方向(挿抜方向50)に対して傾斜している。図7に示される断面において、第1反射面81及び第2反射面82はいずれも直線で現される。
【0040】
第1反射面81は、仮想中心線57(インク導入管122の軸線方向と合致する。)と鋭角な角度Aで交わる。第2反射面82は、仮想中心線57(インク導入管の軸線方向と合致する。)と鋭角な角度Bで交わる。この角度A及び角度Bは、次の3式のいずれをも満たす。
(式1) (角度A)+(角度B)=90°
(式2) (角度A)>SIN-1{(空気の絶対屈折率)/(バルブ70の絶対屈折率)}
(式3) (角度B)>SIN-1{(空気の絶対屈折率)/(バルブ70の絶対屈折率)}
【0041】
第1反射面81及び第2反射面82は、インク室36に貯留されたインクと接触しているときにおいて、インク導入管122内を透過する光を反射する反射率R1と、インク室36に貯留されたインクと接触していないときにおいて、インク導入管122内を挿抜方向50に沿って透過する光を反射する反射率R2と、が異なる。例えば、反射率R1は、インク導入管122内を挿抜方向50(インク導入管122の軸線方向)に沿って透過する光を、第1反射面81又は第2反射面82においてインク室36側へほとんど透過させる反射率であり、反射率R2は、インク導入管122内を挿抜方向50(インク導入管122の軸線方向)に沿って透過する光を、第1反射面81又は第2反射面82においてほぼ全反射させる反射率である。このような反射率R1及び反射率R2は、上記(式2)及び(式3)を、(角度A)及び(角度B)が満たすことにより実現される。また、上記(式1)を、(角度A)及び(角度B)が満たすことにより、挿抜方向50(インク導入管122の軸線方向)に沿って進行する光が、第1反射面81及び第2反射面82においてそれぞれ全反射されると、その反射光が挿抜方向50(インク導入管122の軸線方向)に沿って進行する。つまり、第1反射面81及び第2反射面82によって、仮想中心線57に沿って一方向き(例えば、装着向き56)に進行する光が、逆向き(例えば、脱抜向き55)に反射される。
【0042】
図7に示されるように、コネクタ本体123の凹部126に光センサ114が設けられている。光センサ114は、LEDなどの発光部115と、フォトトランジスタなどの受光部116とを有する。発光部115及び受光部116は、仮想中心線57を挟んで水平方向に並んで配置されている。発光部115は、凹部126の終面130からインク導入管122の第1反射面81へ向かって挿抜方向50に沿って進行するように光、例えば、可視光や赤外光、を照射可能である。受光部116は、インク導入管122の第2反射面82から終面130へ到達する光を受光可能である。
【0043】
図4に示されるように、ケース101には、ロックレバー145が設けられている。ロックレバー145は、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30を装着状態に維持するためのものである。ロックレバー145は、ケース101の開口112の上側に設けられている。
【0044】
ロックレバー145は、全体がアーム状に形成されている。ロックレバー145の中央付近に支軸147が設けられている。この支軸147がケース101に支持されている。これにより、ケース101の開口112の上側においてロックレバー145が支軸147を中心に回動可能に支持されている。ロックレバー145は、大別すると、操作部149と、被係合部146とに大別される。操作部149は、ケース101の開口112からケース101の外側へ突出されている。操作部149は、ロックレバー145を回動させるための力が付与される部分である。被係合部146は、ケース101の内部へ進入している。被係合部146は、インクカートリッジ30の係合部45と係合可能である。被係合部146が係合部45と係合することにより、インクカートリッジ30がケース101に対して装着状態に維持される。被係合部146が係合部45と係合可能な位置となるロックレバー145の回動位置(図10参照)がロック位置と称され、被係合部146が係合部45と係合しない位置(図9参照)がアンロック位置と称される。
【0045】
各図には示されてないが、ロックレバー145には、コイルバネが取り付けられており、このコイルバネによって、ロックレバー145は、ロック位置側へ付勢されている。ロック位置のロックレバー145に対して、操作部149が重力方向下向きへ押し下げられると、ロックレバー145がロック位置からアンロック位置へ回動される。
【0046】
[制御部90]
以下、図8が参照されつつ、プリンタ10の制御部90の概略構成が説明される。
【0047】
制御部90は、プリンタ10の全体動作を制御するものである。制御部90は、CPU91、ROM92、RAM93、EEPROM94、ASIC95を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。
【0048】
ROM92には、CPU91がプリンタ10の各種動作を制御するためのプログラムや、後述される判定処理を実行するためのプログラムなどが格納されている。RAM93は、CPU91が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM94には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0049】
ASIC95には、光センサ114が接続されている。なお、図8には示されていないが、給紙ローラ23や搬送ローラ対25等の各ローラを駆動させる駆動回路や、プリンタ10に画像記録指示等を入力するための入力部や、プリンタ10に関する情報を表示する表示部なども接続されている。
【0050】
光センサ114は、受光部116が受光した光の強度に応じたアナログの電気信号(電圧信号又は電流信号)を出力する。制御部90は、光センサ114が出力する電気信号を、所定のタイミングで監視して、その電気信号のレベル(電圧値又は電流値)が所定の閾値以上の場合にHIレベル信号と判定し、所定の閾値未満の場合にLOWレベル信号と判定する。本実施形態では、光センサ114の発光部115から発せられた光の強度よりも小さな強度に対応する閾値が設定されており、その閾値未満の強度を示す出力信号がLOWレベル信号と判定され、閾値以上の強度を示す出力信号がHIレベル信号と判定される。受光部116から出力される電気信号が、検知情報に相当する。
【0051】
[インクカートリッジ30の装着動作]
以下、図9,10が参照されつつ、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される動作が説明される。
【0052】
図9に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に対して装着向き56へ挿入される。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入されると、まず、被ガイド部47の装着向き56の先端に形成された装着向き56における前方及び下方へ傾斜する案内面が、ロックレバー145の被係合部146に当接する。更にインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入されると、ロックレバー145の被係合部146が被ガイド部47に乗りあがる。これにより、ロックレバー145が図9における反時計回りに回動して、ロック位置からアンロック位置へ移動する。
【0053】
インクカートリッジ30が装着位置に到達すると、係合部45がロックレバー145の被係合部146を装着向き56へ通り過ぎる。これにより、ロックレバー145の被係合部146が被ガイド部47に支持されなくなるので、ロックレバー145が図10における時計回りへ回動し、被係合部146が係合部45と係合する。この被係合部146と係合部45との係合により、インクカートリッジ30が装着位置に保持される。これにより、カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了する。
【0054】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着される過程において、インク供給部43は保持部121に挿入され、インク導入管122は、インク供給部43のインク供給口71に更に挿入されてバルブ70を移動させる。インク供給部43が保持部121に挿入され、また、インク導入管122がインク供給口71に挿入されることにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に対して、所定の位置に位置決めされる。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、インク導入管122の先端は、バルブ70に当接している。したがって、バルブ70は、コイルバネ73の付勢に抗して、インク供給口71から離間された開位置に位置される。インク導入管122の先端には、インク導入口129が設けられているので、このインク導入口129を通じて、インク室33からインク流路44を介して、インク導入管122のインク流路124にインクが流入する。
【0055】
[インクカートリッジ30のインク残量判定]
以下、図11,12が参照されつつ、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30のインク残量判定が説明される。
【0056】
図10に示されるように、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態において、制御部90は、所定のタイミングで、光センサ114の発光部115から光を照射させ、受光部116が受光した光の強度に基づく電気信号を監視する。この所定のタイミングとして、例えば、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着されたときや、プリンタ10において1頁分の印刷が終了したとき、プリンタ10の電源がONにされたときなどが挙げられる。
【0057】
図11に示されるように、光センサ114の発光部115から照射された光60は、インク導入管122の内部を挿抜方向50に沿って進行して第1反射面81に到達する。同図に示されるように、インク供給部43の内部空間、すなわちインク流路44は、インク室36に貯留されたインクで満たされている。したがって、第1反射面81は、インク流路44においてインクと接触している。
【0058】
第1反射面81は、インクと接触しているので、発光部115から照射されてインク導入管122内を透過する光60をインク中へ透過させる。したがって、インク導入管122を通じて受光部116へ到達する光60は殆どない。この光の強度に応じて受光部116から出力されたアナログの電気信号(検知情報)を制御部90が受信して、その電気信号のレベルが所定の閾値以上であるか否かを判定する。このときは、受光部116が受光する光の強度が所定の閾値未満であるので、LOWレベル信号と判定される。制御部90は、受光部116から出力された電気信号をLOWレベル信号と判定したことに基づいて、インクカートリッジ30のインク室36にインクがあると判定したり、インクカートリッジ30の交換が不要であると判定したりする。
【0059】
プリンタ10において印刷が行われることにより、インクカートリッジ30のインク室36に貯留されたインクが消費される。そして、インク室36に貯留されたインク量が残り少なくなると、インク流路44においてもインクの液面が降下する。インク流路44において、インクの液面がインク導入管122の切欠き127,128よりも降下すると、第1反射面81及び第2反射面82がインクと接触しなくなる。
【0060】
図12に示されるように、第1反射面81は、インクと接触していないので、発光部115から照射されてインク導入管122内を挿抜方向50に沿って透過する光を全反射する。第1反射面81において全反射された光60は、インク流路124内を第2反射面82へ向かって進行する。第2反射面82は、インクと接触していないので、第1反射面81において全反射された光60を全反射する。第2反射面82において全反射された光60は、インク導入管122を通じて挿抜方向50に沿って受光部116へ進行し、受光部116において受光される。この光の強度に応じて受光部116から出力されたアナログの電気信号(検知情報)を制御部90が受信して、その電気信号のレベルが所定の閾値以上であるか否かを判定する。このときは、受光部116が受光した光の強度が所定の閾値以上であるので、HIレベル信号と判定される。制御部90は、受光部116から出力された電気信号をHIレベル信号と判定したことに基づいて、インクカートリッジ30のインク室36にインクがないと判定したり、インクカートリッジ30の交換が必要であると判定したりする。
【0061】
[本実施形態の効果]
本実施形態によれば、透光性を有するインク導入管122の先端側に第1反射面81及び第2反射面82が設けられたので、インクカートリッジ30内のインクの有無を、インク室36に残存するインクの量が極めてゼロに近い状態において判定することが可能である。
【0062】
また、インクカートリッジ30内のインクの有無を判定するための光学的検知に用いられる部材の位置決めを、インク供給口71とインク導入管122との位置決めと別に行う必要がないので、カートリッジ装着部110に対するインクカートリッジ30の位置決めが容易である。
【0063】
また、インク導入管122が発光部115から照射された光を透過可能であり、受光部116は、第2反射面82からの反射光をインク導入管122を通じて受光するので、光60の光路に気泡が介在する可能性が小さくなり、正確なインク残量の判定が実現される。
【0064】
また、インクカートリッジ30の筐体31は、装着姿勢における高さ方向52に長く、かつ幅方向51に短い外形であり、インク供給口71は、高さ方向52の下側に配置されているので、インク室36の底面の面積を小さくして、インク残量がなしと判定されるときにインク室36に残るインクの量を少なくすることができる。
【0065】
[変形例]
なお、本実施形態では、インク導入管122において、第1反射面81と第2反射面82とが水平方向に並んで対向配置されているが、第1反射面81及び第2反射面82が、第1反射面81を下側として鉛直方向に並んで対向配置されてもよい。例えば、図13に示されるように、インク導入管122の先端の外周縁の全体が傾斜面にされており、その傾斜面うちの下側を第1反射面81として機能させ、上側を第2反射面82として機能させてもよい。このようなインク導入管122の先端形状において、インク導入口129は、インク導入管122の側壁の下側に形成されており、インク導入口129は第1反射面81及び第2反射面82により区画される空間ではない。なお、同図には示されていないが、光センサ114の発光部115と受光部116も、鉛直方向に並んで配置されており、発光部115は、インク導入管122の上側部分を通じて第2反射面82に向けて光を照射する。
【0066】
前述された第1反射面81及び第2反射面82の配置であれば、第2反射面82において全反射された光60が第1反射面81に到達する第1反射面81の部分がインクと接触しなくなると、第1反射面81が光60を受光部116へ向かって全反射する。第1反射面81から全反射された光60は、インク導入管122の下側部分を進行するので、インク流路44におけるインクの液面が、インク導入管122の下側部分の最下端付近まで降下すると、制御部90においてインク残量がないと判定され得る。これにより、インク室36に残存するインクの量が極めてゼロに近く、かつインク導入口129を通じてインク導入管122の内部空間へ空気が進入しない限界の状態において、インク残量の判定を行うことができる。
【0067】
また、図13に示された変形例では、第2反射面82は、インクと接触しているか否かによって反射率が異なるものとされているが、第2反射面82が、インクと接触しているか否かに拘わらず光を反射するものであってもよい。例えば、第2反射面82にアルミ箔が設けられていてもよい。このような第2反射面82が採用されても、インクと接触しているか否かによって反射率が異なる第1反射面81がインク導入管122の下側に配置されているので、インク室36に残存するインクの量がよりゼロに近い状態において、制御部90がインク残量の判定を行うことができる。
【0068】
また、前述の図13に示された変形例においては、インク導入管122の先端の外周縁の全体が傾斜面にされており、その傾斜面のうちの下側が第1反射面81として機能し、上側が第2反射面82として機能していたが、図14に示されているように、傾斜面のうち水平方向に並んで対向する面を第1反射面81及び第2反射面82として機能させてもよい。この場合、光センサ114の発光部115及び受光部116も、水平方向に並んで配置される。このような第1反射面81及び第2反射面82の配置であれば、図14に示されているように、発光部115から照射された光60は、インク導入管122のみを通じて進行し、受光部116に到達する。すなわち、光60は、インク流路124内やインク導入口129内を通過しない。したがって、光路上に気泡が存在することがないので、正確なインクの残量の判定が実現される。
【0069】
また、本実施形態では、図11,12に示されているように、インク導入管122の先端が、バルブ70に当接した状態において、各反射面81,82の内側端はバルブ70に当接するが、各反射面81,82はバルブ70に当接しなくてもよい。例えば、図15に示されているように、切欠き127,128は、インク導入管122の先端から挿抜方向50に沿ってコネクタ本体123側へインク導入管122の側壁が凹欠されていることにより形成されていてもよい。この場合、インク導入管122の先端が、バルブ70に当接した状態において、各反射面81,82はバルブ70に当接しない。よって、切欠き127,128を通じて、インクがインク導入管122の内部空間、すなわちインク流路124へ流れ込む。すなわち、切欠き127,128は、インク導入口として機能する。この変形例では、インク導入口129は省略されていてもよい。また、インク導入口として機能する切欠き127の装着向き56側を画定する面が第1反射面81であり、インク導入口として機能する切欠き128の装着向き56側を画定する面が第2反射面82である。
【0070】
また、本実施形態では、図7に示されるインク導入管122の断面において、第1反射面81及び第2反射面82はいずれも直線で現されるが、インク導入管122の先端形状が例えばドーム形状に変更されることによって、第1反射面81及び第2反射面82が曲線で現されてもよい。第1反射面81及び第2反射面82がそれぞれ曲線で現される場合には、その断面において第1反射面81及び第2反射面82のそれぞれ接線と仮想中心線57とが成す鋭角である角度A及び角度Bが、前述された(式1)、(式2)、及び(式3)をそれぞれ満たすように設定される。
【符号の説明】
【0071】
30・・・インクカートリッジ
31・・・筐体
36・・・インク室
40・・・前壁(前面)
71・・・インク供給口
81・・・第1反射面
82・・・第2反射面
100・・・インク供給装置
110・・・カートリッジ装着部
115・・・発光部
116・・・受光部
122・・・インク導入管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクカートリッジと、装着向きへ当該インクカートリッジが挿入されることによって当該インクカートリッジが装着可能であるカートリッジ装着部と、を備えたインク供給装置であって、
上記インクカートリッジは、
インクが貯留されるインク室を有する筐体と、
上記筐体における装着向きの前側の前面に設けられており、上記インク室に貯留されたインクが流通可能なインク供給口と、を具備し、
上記カートリッジ装着部は、
上記インクカートリッジが上記カートリッジ装着部へ挿入される過程において、第1反射面を有する先端側が上記インク供給口に挿入される透光性を有するインク導入管と、
上記インク導入管を通じて上記第1反射面へ光を照射する発光部と、
上記発光部から照射されて上記第1反射面により反射された光を上記インク導入管を通じて受光可能な受光部と、を具備し、
上記第1反射面は、上記インク室に貯留されたインクと接触しているときにおいて上記発光部から照射されて上記インク導入管を透過する光を反射する反射率R1と、上記インク室に貯留されたインクと接触していないときにおいて上記発光部から照射されて上記インク導入管を透過する光を反射する反射率R2と、が異なるものであるインク供給装置。
【請求項2】
上記インク導入管は、上記第1反射面と対向する第2反射面を有し、
上記第2反射面は、少なくとも上記インク室に貯留されたインクと接触していないときにおいて、上記発光部から照射されて上記インク導入管を透過する光を、上記第1反射面又は上記受光部へ向かって反射するものである請求項1に記載のインク供給装置。
【請求項3】
上記装着向きは、水平方向に沿った向きであって、
上記第1反射面及び上記第2反射面は、水平方向に並んで対向配置されたものである請求項1又は2に記載のインク供給装置。
【請求項4】
上記装着向きは、水平方向に沿った向きであって、
上記第1反射面及び上記第2反射面は、上記第1反射面を下側として鉛直方向に並んで対向配置されたものであり、
上記第2反射面は、上記インク室に貯留されたインクと接触しているか否かに拘わらず、上記光学センサから照射されてインク導入管内を透過する光を、上記第1反射面又は上記受光部へ向かって反射するものである請求項1又は2に記載のインク供給装置。
【請求項5】
上記インク導入管には、先端から装着向きへ延びるインク導入口が形成されており、上記第1反射面は、当該インク導入口の装着向き側を画定する面である請求項1から4のいずれかに記載のインク供給装置。
【請求項6】
上記筐体は、上記インクカートリッジが上記カートリッジ装着部に装着された姿勢において、鉛直方向に長く、かつ水平方向に短い外形を有しており、
上記インク供給口は、上記インクカートリッジが上記カートリッジ装着部に装着された姿勢において、上記筐体の前面において鉛直方向の下側に配置されている請求項1から5のいずれかに記載のインク供給装置。
【請求項1】
インクカートリッジと、装着向きへ当該インクカートリッジが挿入されることによって当該インクカートリッジが装着可能であるカートリッジ装着部と、を備えたインク供給装置であって、
上記インクカートリッジは、
インクが貯留されるインク室を有する筐体と、
上記筐体における装着向きの前側の前面に設けられており、上記インク室に貯留されたインクが流通可能なインク供給口と、を具備し、
上記カートリッジ装着部は、
上記インクカートリッジが上記カートリッジ装着部へ挿入される過程において、第1反射面を有する先端側が上記インク供給口に挿入される透光性を有するインク導入管と、
上記インク導入管を通じて上記第1反射面へ光を照射する発光部と、
上記発光部から照射されて上記第1反射面により反射された光を上記インク導入管を通じて受光可能な受光部と、を具備し、
上記第1反射面は、上記インク室に貯留されたインクと接触しているときにおいて上記発光部から照射されて上記インク導入管を透過する光を反射する反射率R1と、上記インク室に貯留されたインクと接触していないときにおいて上記発光部から照射されて上記インク導入管を透過する光を反射する反射率R2と、が異なるものであるインク供給装置。
【請求項2】
上記インク導入管は、上記第1反射面と対向する第2反射面を有し、
上記第2反射面は、少なくとも上記インク室に貯留されたインクと接触していないときにおいて、上記発光部から照射されて上記インク導入管を透過する光を、上記第1反射面又は上記受光部へ向かって反射するものである請求項1に記載のインク供給装置。
【請求項3】
上記装着向きは、水平方向に沿った向きであって、
上記第1反射面及び上記第2反射面は、水平方向に並んで対向配置されたものである請求項1又は2に記載のインク供給装置。
【請求項4】
上記装着向きは、水平方向に沿った向きであって、
上記第1反射面及び上記第2反射面は、上記第1反射面を下側として鉛直方向に並んで対向配置されたものであり、
上記第2反射面は、上記インク室に貯留されたインクと接触しているか否かに拘わらず、上記光学センサから照射されてインク導入管内を透過する光を、上記第1反射面又は上記受光部へ向かって反射するものである請求項1又は2に記載のインク供給装置。
【請求項5】
上記インク導入管には、先端から装着向きへ延びるインク導入口が形成されており、上記第1反射面は、当該インク導入口の装着向き側を画定する面である請求項1から4のいずれかに記載のインク供給装置。
【請求項6】
上記筐体は、上記インクカートリッジが上記カートリッジ装着部に装着された姿勢において、鉛直方向に長く、かつ水平方向に短い外形を有しており、
上記インク供給口は、上記インクカートリッジが上記カートリッジ装着部に装着された姿勢において、上記筐体の前面において鉛直方向の下側に配置されている請求項1から5のいずれかに記載のインク供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−135927(P2012−135927A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289333(P2010−289333)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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