説明

インク受容性粒子、インク記録用材料、記録方法、記録装置、及びインク受容性粒子収納カートリッジ

【課題】インクの受容を阻害することなく、帯電性の低下が抑制されたインク受容性粒子を提供すること。前記インク受容性粒子を利用した、インク記録用材料、記録方法、記録装置、及びインク受容性粒子収納カートリッジを提供すること。
【解決手段】インク受容性粒子は、親水性有機樹脂111と疎水性有機樹脂112とブロック共重合体113とを有する。親水性有機樹脂111は、極性単量体に由来する構造単位の比率が10mol%以上90mol%以下である。疎水性有機樹脂112は、極性単量体に由来する構造単位の比率が0mol%より多く10mol%未満である。ブロック共重合体113は、極性単量体に由来する構造単位と非極性単量体に由来する構造単位とを有するブロック共重合体であり、ブロック共重合体113の極性単量体の溶解度パラメータと、親水性有機樹脂111の極性単量体の溶解度パラメータとの差の絶対値が2以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク受容性粒子、インク記録用材料、記録方法、記録装置、及びインク受容性粒子収納カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
インクを利用した記録方式では、浸透媒体や非浸透媒体などの多様な記録媒体に対して記録を行うために、中間体に記録した後、記録媒体に転写する方式が提案されている。
【0003】
例えば、記録材を含むインクを受容するインク受容性粒子であって、少なくともインクの液体成分をトラップするトラップ構造を有し、且つ吸液性樹脂を含んで構成したインク受容性粒子を、中間転写体へ供給した後、これにインクを吐出して、記録媒体へ転写する記録装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、前記インク受容性粒子として、親水性有機樹脂と疎水性有機樹脂とを含んで構成されるものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−347085号公報
【特許文献2】特開2008−119919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、帯電性の経時変化が抑制されたインク受容性粒子を提供することを目的とする。
また、本発明は、このインク受容性粒子を利用した、記録用の材料、記録装置、及びインク受容性粒子収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
【0006】
請求項1に係る発明は、
親水性有機樹脂と、
疎水性有機樹脂と、
極性単量体に由来する構造単位と非極性単量体に由来する構造単位とを有するブロック共重合体と、を含有し、
前記ブロック共重合体の極性単量体の溶解度パラメータ(SP値)と、前記親水性有機樹脂を構成する極性単量体の溶解度パラメータ(SP値)との差の絶対値が2以下である、インクを受容するインク受容性粒子である。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記ブロック共重合体における極性単量体が、前記親水性有機樹脂を構成する極性単量体と同一の化学構造を有する請求項1に記載のインク受容性粒子である。
【0008】
請求項3に係る発明は、
インクと、
請求項1又は請求項2に記載のインク受容性粒子と、
を備えるインク記録用材料である。
【0009】
請求項4に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載のインク受容性粒子を中間転写体上に供給する供給工程と、
前記中間転写体上に供給された前記インク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出工程と、
前記インク受容性粒子を記録媒体に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写された前記インク受容性粒子を定着する定着工程と、
を有する記録方法である。
【0010】
請求項5に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載のインク受容性粒子を記録媒体上に供給する供給工程と、
前記記録媒体上に供給された前記インク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出工程と、
前記記録媒体上に供給された前記インク受容性粒子を定着する定着工程と、
を有する記録方法である。
【0011】
請求項6に係る発明は、
中間転写体と、
請求項1又は請求項2に記載のインク受容性粒子を前記中間転写体上に供給する供給装置と、
前記中間転写体上に供給された前記インク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出装置と、
前記インク受容性粒子を記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体に転写された前記インク受容性粒子を定着する定着装置と、
を有する記録装置である。
【0012】
請求項7に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載のインク受容性粒子を記録媒体上に供給する供給装置と、
前記記録媒体上に供給された前記インク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出装置と、
前記記録媒体上に供給された前記インク受容性粒子を定着する定着装置と、
を有する記録装置である。
【0013】
請求項8に係る発明は、
記録装置に脱着され、請求項1又は請求項2に記載のインク受容性粒子を収納するインク受容性粒子収納容器である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、親水性有機樹脂と疎水性有機樹脂のみを有する場合に比べ帯電性の経時変化が抑制されたインク受容性粒子を提供することができる。
【0015】
請求項2に係る発明は、本構成を有しない場合に比べ、さらに帯電性の経時変化が抑制されたインク受容性粒子を提供することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、記録媒体に対して帯電安定的に記録が可能なインク記録用材料を提供することができる。
【0017】
請求項4、5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、記録媒体に対して帯電安定的に記録が可能な記録方法を提供することができる。
【0018】
請求項6、7に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、記録媒体に対して帯電安定的に記録が可能な記録装置を提供することができる。
【0019】
請求項8に係る発明によれば、記録媒体に対して帯電安定的に記録が可能なインク受容性粒子容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本実施形態について詳細に説明する。
【0021】
<インク受容性粒子>
本実施形態のインク受容性粒子は、(1)親水性有機樹脂と、(2)疎水性有機樹脂と、(3)極性単量体に由来する構造単位と非極性単量体に由来する構造単位とを有するブロック共重合体と、を有する。更に、本実施形態のインク受容性粒子では、前記(1)の親水性有機樹脂を構成する極性単量体の溶解度パラメータ(SP値)と、前記(3)のブロック共重合体の極性単量体の溶解度パラメータ(SP値)との差の絶対値が2以下である。
【0022】
また、前記親水性有機樹脂は、極性単量体に由来する構造単位の比率が、10mol%以上90mol%以下であることが好適であり、前記疎水性有機樹脂は、極性単量体に由来する構造単位の比率が、0mol以上10mol%未満であることが好適である。
【0023】
本実施形態のインク受容性粒子はインクと接触したとき、インク成分を受容するものである。ここで、インク受容性とは、インク成分の少なくとも一部(少なくとも液体成分)を保持することを示す。
【0024】
本実施形態のインク受容性粒子では、この粒子に含まれる親水性有機樹脂が、保管の間に大気中の水分を吸液したり、インク受容性粒子にインクを付与したときにインクの液体成分を吸液したりした場合においても、疎水性有機樹脂が存在することで、インクの受容が阻害されることなく、インク受容性粒子表面での帯電性が確保される。
【0025】
更に、本実施形態のインク受容性粒子はブロック共重合体を含み、このブロック共重合体は極性単量体に由来する構造単位(以下「親水性部位」と称する)と非極性(疎水性)単量体に由来する構造単位(以下「疎水性部位」と称する)とを有する。ブロック共重合体の親水性部位は親水性有機樹脂に配向し、ブロック共重合体の疎水性部位は疎水性有機樹脂に配向するため、インク受容性粒子中の親水性有機樹脂と疎水性有機樹脂とを結合させる作用を有する。
特に、前記ブロック共重合体の極性単量体の溶解度パラメータ(SP値)は、前記親水性有機樹脂を構成する極性単量体の溶解度パラメータ(SP値)と差の絶対値が2以下であるため、前記ブロック共重合体の親水性部位は前記親水性有機樹脂に馴染み易く、結合をより強固なものとなる。
以下では、まずインク受容性粒子の粒子形態を説明し、次にこの粒子の作用について説明する。なおインク受容性粒子の作用については推測であり、本発明を制限することはない。
【0026】
(インク受容性粒子の粒子形態)
本実施形態のインク受容性粒子の粒子形態について説明する。
本実施形態のインク受容性粒子は、前記親水性有機樹脂、前記疎水性有機樹脂、及びブロック共重合体を含む粒子であれば、前記親水性有機樹脂及び前記疎水性有機樹脂のそれぞれの形状については特に制限されない。
【0027】
例えば、前記親水性有機樹脂を結着樹脂としその中に前記疎水性有機樹脂が粒子形態で含有される一次粒子であってもよいし、前記親水性有機樹脂のマトリックス中に前記疎水性有機樹脂がドメインを形成して含まれている一次粒子であってもよいし、更には前記親水性有機樹脂及び前記疎水性有機樹脂の両者が粒子形態でありこれら複数の粒子が集合した複合体粒子であってもよい。以下、この一次粒子又は複合体粒子を「母粒子」と称することがある。
【0028】
本実施形態のインク受容性粒子の具体的な構成の一例を図1及び図2に示す。図1は母粒子が1次粒子の形態であるインク受容性粒子100を説明する図である。図2は母粒子が複合体粒子の形態であるインク受容性粒子110を説明する図である。
【0029】
図1は、母粒子が1次粒子の形態であるインク受容性粒子100を説明する図である。
図1のインク受容性粒子100は、結着樹脂としての親水性有機樹脂101に疎水性有機樹脂102とブロック共重合体103が含まれる。ブロック共重合体103における親水性部位Bは親水性有機樹脂101に配向し、疎水性部位Aは疎水性有機樹脂102に配向する。このようにブロック共重合体103は、親水性有機樹脂101と疎水性有機樹脂102とを結合する。
【0030】
図1で示すような、母粒子が1次粒子の形態のインク受容性粒子100にインクを付与すると、インクがインク受容性粒子100に付着し、少なくともインクの液体成分は親水性有機樹脂によって吸液される。このようにして、インク受容性粒子100はインクを受容する。インクを受容したインク受容性粒子100を記録媒体に転写することで、像が記録される。
【0031】
上述のようにインク受容性粒子100の親水性有機樹脂によってインクの液体成分を吸液させるという観点から、インク受容性粒子100中では親水性有機樹脂の含有比率を多くすることが望ましい。したがって、本実施形態において、母粒子が1次粒子の形態のインク受容性粒子は、図1に示すように、親水性有機樹脂101を多く含み、その親水性有機樹脂101中に疎水性有機樹脂102とブロック共重合体103とが含まれる形態であることが望ましい。但し、疎水性有機樹脂102が親水性有機樹脂101よりも多く含まれ、疎水性有機樹脂102中に親水性有機樹脂101とブロック共重合体103とが含まれる形態も、本実施形態に包含される。
【0032】
インク受容性粒子100の転写後においては、インク受容性粒子100を構成する親水性有機樹脂101は、インクに含まれる記録材を結着させ或いは被覆する樹脂としても機能させることが可能である。
更に、インク受容性粒子100の転写後においては、インク受容性粒子100を構成する有機樹脂成分は、記録材として顔料等の不溶成分、分散粒子状物を用いたインク(例えば顔料インク)の定着性(耐擦性)を改善する機能を果たすことも可能である。
【0033】
なお、親水性有機樹脂101は、極性単量体に由来する構造単位の比率が10mol%以上90mol%以下であることが望ましく、その他の構造単位については限定されない。親水性有機樹脂の詳細については後述する。
【0034】
また、疎水性有機樹脂102は、極性単量体に由来する構造単位の比率が、0mol以上10mol%未満であることが望ましく、その他の構造単位については限定されない。疎水性有機樹脂の詳細については後述する。
【0035】
更に、ブロック共重合体103は、極性単量体に由来する構造単位(親水性部位B)と非極性単量体に由来する構造単位(疎水性部位A)とを有し、ブロック共重合体103の極性単量体の溶解度パラメータ(SP値)と前記親水性有機樹脂101を構成する極性単量体の溶解度パラメータ(SP値)との差の絶対値が2以下であれば、その他の構造単位については限定されない。ブロック共重合体の詳細については後述する。
【0036】
インク受容性粒子100の球換算平均粒径としては、例えば0.1μm以上75μm以下の範囲である。
インク受容性粒子100全体の球換算平均粒径が上記範囲であると、この構成を有しない場合に比べ、画像の平滑性に優れ、また粉体のハンドリング性の向上により転写体上の所望の位置に粉体を供給でき、高画質が達成される。
【0037】
上記球換算平均粒径は次のようにして求められる。粒子サイズによって最適な測定方法は異なるが、例えば粒子を液体中に分散し光散乱原理で粒径を求める、粒子の投影像を画像処理で求めるなど多種の方法が利用できる。汎用的に使用できる方法としては、マイクロトラックUPA法やコールターカウンター法が挙げられる。以下、本実施形態において同様である。
【0038】
母粒子が1次粒子の形状であるインク受容性粒子100において、疎水性有機樹脂102は粒子形状であってもドメイン形状であってもよい、疎水性有機樹脂102が粒子形状である場合、疎水性有機樹脂粒子の球換算平均粒径としては、例えば、0.01μm以上10μm以下の範囲である。
【0039】
親水性有機樹脂101中に含まれる疎水性有機樹脂102の粒径は、例えば、インク受容性粒子を樹脂で埋包し、ダイヤモンドカッターなどを用いて薄片状サンプルを形成し、そのサンプルを透過型電子顕微鏡などを用いて観察することによって測定することができる。尚、酸化オスミウム又は酸化ルテニウムなどを用いて染色する工程を加えると、疎水性粒子と親水性粒子の界面をより明確に判別することが可能となる。
【0040】
図1に示すような母粒子が1次粒子の形態のインク受容性粒子100は、以下のようにして作製することができる。
親水性有機樹脂101中に疎水性有機樹脂102が粒子形態で含まれるインク受容性粒子100は、例えば、親水性有機樹脂、疎水性有機樹脂、ブロック共重合体をエクストルーダーなどを用いて溶融混練した後、ジェットミルなどの粉砕機により粉砕することによって作製することができる。
【0041】
インク受容性粒子100の粒径は、粉砕条件、分級条件などによって調節することができる。
また、インク受容性粒子100中の疎水性有機樹脂102の粒径は、親水性有機樹脂及び疎水性有機樹脂の組成、分子量、添加量比率などによって調節することができる。
【0042】
インク受容性粒子100は、必要に応じて、親水性有機樹脂101や疎水性有機樹脂102以外の材料を含んで構成してもよく、当該材料としては、例えば、無機材料、多孔質材料、帯電制御剤、ワックス材料、凝集剤、潤滑剤等が挙げられる。
インク受容性粒子100中に無機粒子を含有させるとき、無機粒子の粒径は、球換算平均粒径で、例えば10nm以上30μm以下である。
【0043】
また、インク受容性粒子100表面には、例えば無機粒子104等を付着させてもよい。無機粒子104の粒径は、球換算平均粒径で、例えば10nm以上1μm以下である。
【0044】
図2は、母粒子が複合体粒子の形態であるインク受容性粒子110を説明する図である。
図2のインク受容性粒子110は、親水性有機樹脂粒子111と疎水性有機樹脂粒子112とがブロック共重合体113によって結合された複合体粒子である。この複合体粒子では各粒子間の空隙により空隙構造が形成される。更に、複合体粒子の表面に無機粒子114を付着させてもよい。
【0045】
図2の複合体粒子であるインク受容性粒子110にインクを付与すると、まず、インクがインク受容性粒子110に付着し、少なくともインクの液体成分が複合体粒子のインク受容性粒子110を構成する粒子間の空隙(以下、粒子間空隙を「トラップ構造」と称する場合がある)により捕獲(トラップ)される。このとき、インクの成分のうち色材などの記録材は、インク受容性粒子110表面に付着又はトラップ構造により捕獲される。このようにして、インク受容性粒子110はインクを受容する。そして、インクを受容したインク受容性粒子110を記録媒体に転写することで、記録が行われる。
このトラップ構造によるインク液体成分の捕獲は、粒子間の空隙(物理的な粒子壁構造)による物理的及び/又は化学的な捕獲である。
【0046】
そして、母粒子の形状を複数の粒子が集合した複合体粒子とすることで、インク液体成分は、親水性有機樹脂によって吸液・保持されることに加え、複合体粒子のインク受容性粒子110を構成する粒子間の空隙(物理的な粒子壁構造)によっても捕獲される。
【0047】
ここで、「前記複合体粒子を構成する粒子間の空隙」、即ち「トラップ構造」は、少なくとも液体を捕獲し得る物理的な粒子壁構造である。そして、この空隙の大きさは、最大口径で、例えば0.1μm以上5μm以下の範囲が挙げられる。特に、空隙の大きさは、記録材、特に例えば体積平均粒径100nmの顔料をトラップし得る大きさであることがよい。なお、最大開口径が50nm未満の微細孔が存在してもよい。また、空隙や毛細管は粒子内部で通じていることがよい。
【0048】
この空隙の大きさは、次のようにして求める。粒子表面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置に読み取り、2値化処理により空隙を検出し、空隙の大きさ、及び、分布を解析することで求めることが可能である。
【0049】
このように、トラップ構造は、インクの成分のうち液体成分に加えて、記録材もトラップすることがよい。インク液体成分と共に記録材、特に顔料をトラップ構造に捕獲(トラップ)させると、インク受容性粒子内部に記録材が偏在することなく保持・固定される。インクの液体成分は、主にインク溶媒や分散媒(ビヒクル液体)である。
【0050】
インク受容性粒子110の転写後においては、インク受容性粒子110を構成する親水性有機樹脂111は、インクに含まれる記録材を結着させたり或いは被覆したりする樹脂としても機能することが可能である。
更に、インク受容性粒子110の転写後においては、インク受容性粒子110を構成する有機樹脂成分は、記録材として顔料等の不溶成分、分散粒子状物を用いたインク(例えば顔料インク)の定着性(耐擦性)を改善する機能を果たすことも可能である。
【0051】
母粒子が複合体粒子の形状であるインク受容性粒子110全体の球換算平均粒径としては、例えば0.1μm以上75μm以下の範囲である。
インク受容性粒子110全体の球換算平均粒径が上記範囲であると、この構成を有しない場合に比べ、画像の平滑性に優れ、また粉体のハンドリング性の向上により転写体上の所望の位置に粉体を供給でき、高画質が達成される。
【0052】
母粒子が複合体粒子の形状であるインク受容性粒子110において、親水性有機樹脂粒子111の球換算平均粒径としては、例えば10nm以上30μm以下の範囲である。
【0053】
また、母粒子が複合体粒子の形状であるインク受容性粒子110において、疎水性有機樹脂粒子112の球換算平均粒径としては、例えば、10nm以上10μm以下の範囲である。
【0054】
更に、母粒子が複合体粒子の形状であるインク受容性粒子110において、親水性有機樹脂粒子111と疎水性有機樹脂粒子112の粒径比は、インクの受容速度の向上と経時後の帯電性低下の抑制の両立を図る観点から、親水性有機樹脂粒子111:疎水性有機樹脂粒子112=10:1以上1:1以下である。なお、この粒径比は上述の球換算平均粒径から求めた値を採用する。
【0055】
親水性有機樹脂粒子111及び疎水性有機樹脂粒子112の球換算平均粒径を測定する場合、例えば、インク受容性粒子を樹脂で埋包し、ダイヤモンドカッターなどを用いて薄片状サンプルを形成する。そのサンプルを透過型電子顕微鏡などを用いて測定、解析することで可能となる。尚、酸化オスミウム又は酸化ルテニウムなどを用いて染色する工程を加えると、疎水性粒子と親水性粒子の界面をより明確に判別することが可能となる。
また、インク受容性粒子中の分散粒子径は、エマルジョン状態の分散粒子径で制御可能であり、粒子作成中のエマルジョン溶液を、例えば、光散乱原理により粒径を求めることで、調整可能となる。
【0056】
親水性有機樹脂111は、極性単量体に由来する構造単位の比率が10mol%以上90mol%以下であることが望ましく、その他の構造単位については限定されない。親水性有機樹脂の詳細については後述する。
【0057】
また、疎水性有機樹脂112は、極性単量体に由来する構造単位の比率が、0mol以上大きく10mol%未満であることが望ましく、その他の構造単位については限定されない。疎水性有機樹脂の詳細については後述する。
【0058】
更に、ブロック共重合体113は、極性単量体に由来する構造単位(親水性部位B)と非極性単量体に由来する構造単位(疎水性部位A)とを有し、ブロック共重合体113の極性単量体の溶解度パラメータ(SP値)は、前記親水性有機樹脂111を構成する極性単量体の溶解度パラメータ(SP値)に対する差の絶対値が2以下であれば、その他の構造単位については限定されない。ブロック共重合体の詳細については後述する。
【0059】
複合体粒子であるインク受容性粒子110は、必要に応じて、親水性有機樹脂粒子111や疎水性有機樹脂粒子112以外の材料を第三の粒子(図示せず)として含んで構成してもよく、当該材料としては、例えば、無機材料、多孔質材料、ワックス材料、凝集剤、潤滑剤等が挙げられる。
第三の粒子として無機粒子を含むとき、無機粒子の粒径は、球換算平均粒径で、例えば10nm以上30μm以下である。
【0060】
また、親水性有機樹脂粒子111や疎水性有機樹脂粒子112は、親水性有機樹脂や疎水性有機樹脂のほかに第三成分を含んでもよく、例えば、無機材料、多孔質材料、帯電制御剤、ワックス材料、凝集剤、潤滑剤等を挙げることができる。
【0061】
更に、インク受容性粒子110表面には、例えば無機粒子114等を付着させてもよい。無機粒子114の粒径は、球換算平均粒径で、例えば10nm以上1μm以下である。
【0062】
複合体粒子であるインク受容性粒子110が、親水性有機樹脂粒子111及び疎水性有機樹脂粒子112以外に他の粒子を含むとき、その配合の質量比率は、例えば他の粒子が無機粒子の場合、例えば、親水性有機樹脂粒子:他の粒子=5:1以上1:10以下の範囲を挙げることができる。
【0063】
複合体粒子であるインク受容性粒子110は、そのBET比表面積(N)が例えば1m/g以上750m/g以下の範囲であることが挙げられる。
【0064】
図2に例示される、親水性有機樹脂粒子111と疎水性有機樹脂粒子112とがブロック共重合体113によって結合されたインク受容性粒子110は、以下のようにして作製することができる。
親水性有機樹脂のエマルジョン溶液、及び、疎水性有機樹脂のエマルジョン溶液をそれぞれ調製する。この際、少なくとも一方のエマルジョン溶液にブロック共重合体を加える。これらのエマルジョン溶液を混合後、スプレードライアーなどを用いて乾燥することで作成可能である。尚、ブロック共重合体は疎水性有機樹脂を分散させる分散剤として添加することが好ましい。
【0065】
複合体粒子を構成する親水性有機樹脂粒子111及び疎水性有機樹脂粒子112の粒径は、それぞれのエマルジョン粒径によって調節することができる。具体的には、それぞれの樹脂組成、溶媒、分散剤組成、エマルジョン溶液中の樹脂比率などが挙げられる。
【0066】
インク受容性粒子110の粒径は、スプレードライアーの乾燥条件(例えば、エマルジョン中の固形分濃度、噴霧圧力)、気流式分級機の分級条件(例えば、エッジ切り込み角、送風圧力)によって調節することができる。
【0067】
母粒子の形態が複合体粒子であるインク受容性粒子110は、例えば、粒子が半焼結状態で造粒されることで得られる。半焼結状態とは、粒子形状がある程度残っており、当該粒子間で空隙を保持している状態を示す。
【0068】
(インク受容性粒子の作用)
上記構成を有する本実施形態のインク受容性粒子が、経時後においても帯電性の低下が抑制される理由は明らかにされていないが以下のように推測される。
【0069】
本実施形態のインク受容性粒子は、親水性有機樹脂によってインクの液体成分を吸液し、且つ疎水性有機樹脂によって帯電性が確保されるため、親水性有機樹脂と疎水性有機樹脂がインク受容性粒子中に存在する必要がある。前記ブロック共重合体は、親水性有機樹脂と疎水性有機樹脂とを結合する作用を有し、例えば、帯電のためにキャリアとの混合を続けた後であってもインク受容性粒子としての粒子形態が崩れることがなく、安定的な帯電を実現することができる。
【0070】
また、本実施形態に係るブロック共重合体の親水性位は親水性有機樹脂の内部側に配向し、疎水性部位は親水性有機樹脂の外部に配される。その結果、親水性有機樹脂の表面がブロック共重合体によって疎水化され、帯電性が高められる。
【0071】
更に、インク受容性粒子が図2に例示される複合体粒子の場合には、親水性有機樹脂粒子111と疎水性有機樹脂粒子112とがブロック共重合体113によって結合されているため、粒子間に形成された空隙が散布後においても保たれ、経時的に吸液速度を維持することができる。
なお、インク受容性粒子が図2に例示される複合体粒子の場合には、インク液体成分は、親水性有機樹脂によって吸液・保持されることに加え、複合体粒子のインク受容性粒子110を構成する粒子間の空隙(物理的な粒子壁構造)によっても捕獲される。よって、吸液速度を向上させる観点からは、図2に例示される複合体粒子の形態のインク受容性粒子であることが好適である。
【0072】
更に、インク受容性粒子を帯電させるためにキャリアとともに混合攪拌する場合、インク受容性粒子はキャリアから物理的衝撃を受ける。本実施形態のインク受容性粒子はブロック共重合体によって親水性有機樹脂と疎水性有機樹脂とが結合しているため、キャリアからの物理的衝撃を受けてもインク受容性粒子の部分欠落が抑えられる。よって、インク受容性粒子への帯電の付与が安定的に行なわれ、且つ部分欠落のない帯電インク受容性粒子が得られる。
よって、安定した帯電状態のインク受容性粒子を記録媒体上に供給することができ、その結果、光学濃度の向上や滲みの防止を図ることができる。
【0073】
(親水性有機樹脂及び疎水性有機樹脂)
次に、親水性有機樹脂及び疎水性有機樹脂について説明する。
親水性有機樹脂は、極性単量体に由来する構成単位の比率が10mol%以上90mol%以下であることが好適である。
【0074】
極性単量体に由来する構成単位の比率が上記範囲であると、この構成を有しない場合に比べ、粒子内、及び粒子間空隙にインクが捕獲(トラップ)され易くなり、本実施形態の構成を有しない場合に比べて、種々のインクを高速に受容可能である。また高速での印字が可能になる。
なお親水性有機樹脂は、インク受容性粒子の母粒子がいずれの形態であっても、極性単量体の比率を上記範囲に制御して使用される。
【0075】
前記極性単量体とは、エチレンオキサイド基、カルボキシ基、スルホ基、置換又は未置換のアミノ基、水酸基、アミド基、イミド基、ニトリル基、エーテル基、エステル基、及びこれらの塩を含む単量体である。
例えば、正帯電性付与の場合、例えば(置換)アミノ基、(置換)ピリジン基やそのアミン塩、4級アンモニウム塩等の造塩化構造の単量体であることが望ましい。負帯電付与の場合、カルボン酸(塩)、スルホン酸(塩)等の有機酸(塩)構造の単量体であることが望ましい。
【0076】
ここで、「極性単量体に由来する構成単位」とは、前記極性単量体が重合反応した後のポリマー中での構造単位を意味する。
【0077】
なお、親水性有機樹脂における極性単量体に由来する構成単位の比率は、次のようにして求める。
まず質量分析、NMR,IRなどの分析手法から有機成分の構成を特定する。その後、JIS K0070(1992)又はJIS K2501(2003)に準拠して、有機成分の酸価、塩基価を測定する。有機成分の構成、及び、酸価/塩基価から極性単量体の比率を計算で求めることができる。以下同様である。
【0078】
親水性有機樹脂は弱吸液性樹脂であることが好適である。この弱吸液性樹脂とは、例えば液体として水を吸収する場合、樹脂質量に対して数%(≒5%)から数百%(≒500%)程度の吸液が可能な親液性樹脂を意味する。
弱吸液樹脂の吸液性が上記範囲内にあると、インク受容性粒子のインク保持能が向上し、外環境にあまり依存しない安定的なインク受容性粒子となる。
【0079】
親水性有機樹脂を弱親水性有機樹脂とするには、極性単量体と疎水性単量体との両単量体から構成された共重合体とすることが望ましい。なお、単量体だけでなく、ポリマー/オリゴマー構造などのユニットを開始物質に他のユニットを共重合させるグラフト共重合体やブロック共重合体でもよい。
【0080】
ここで、極性単量体は、−OH、−EOユニット(エチレンオキサイド基)、−COOM(Mは例えば水素、Na、Li、K等のアルカリ金属、アンモニア、有機アミン類等である。)、−SOM(Mは例えば水素、Na、Li、K等のアルカリ金属、アンモニア、有機アミン類等)、−NR(Rは例えば、H、アルキル、フェニル等である。)、−NRX(Rは例えば、H、アルキル、フェニル等であり、Xは例えば、ハロゲン、硫酸根、カルボン酸等の酸アニオン類、BF、等々である。)等を有することが好ましい。
具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、不飽和カルボン酸、クロトン酸、マレイン酸等が挙げられる。また、極性単量体としては、セルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、でんぷん誘導体、単糖類・多糖類誘導体、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、等の重合性カルボン酸類やこれらの(部分)中和塩類、ビニルアルコール類、ビニルピロリドン、ビニルピリジンやアミノ(メタ)アクリレート及びジメチルアミノ(メタ)アクリレートの如き誘導体、更にはこれらのオニウム塩類、アクリルアミドやイソプロピルアクリルアミド等のアミド類、ポリエチレンオキサイド鎖含有ビニル化合物類、水酸基含有ビニル化合物類、多官能カルボン酸と多価アルコールから構成されるポリエステル類、特にトリメリット酸の如き3官能以上の酸を構成成分として含有し末端カルボン酸や水酸基を多く含む分岐ポリエステル、ポリエチレングリコール構造を含むポリエステル、等も挙げられる。
【0081】
親水性有機樹脂における極性単量体は、溶解度パラメータ(SP値)が11以上であることが好適である。
なお、親水性有機樹脂における極性単量体と、後述するブロック共重合体の極性単量体とは、溶解度パラメータ(SP値)の差の絶対値は2以下であり、より望ましくは0以上1.5以下である。
【0082】
なお、溶解度パラメータ(SP値)は、化学構造の原子又は原子団の蒸発エネルギー(Δei)とモル体積(Δvi)より求めるFedorsの下記計算式により算出した値である。以下、同様である。
式:[SP値=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
【0083】
疎水性単量体としては、疎水性基を有する単量体が挙げられ、具体的には、例えばオレフィン(エチレン、ブタジエン等)、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル等が挙げられる。疎水性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、及びこれらの誘導体も挙げられる。
【0084】
前記極性単量体と前記疎水性単量体との共重合体である親水性有機樹脂の具体例としては、例えば、スチレン/アルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル類共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸/(無水)マレイン酸類共重合体、エチレン/プロピレン等のオレフィン系共重合体(又はこの変性体、又は共重合によるカルボン酸ユニット導入物)、トリメリット酸等で酸価を向上した分岐ポリエステル、ポリアミド等が好適である。
【0085】
親水性有機樹脂には、例えば、中和塩構造(例えばカルボン酸など)を含んでもよい。このカルボン酸などの中和塩構造は、カチオン(例えばNa,Li等の一価金属カチオン等)を含むインクを吸液したとき、当該カチオンとの相互作用で、アイオノマーを形成する。
【0086】
親水性有機樹脂には、置換或いは未置換アミノ基や、置換或いは未置換ピリジン基を含むことも望ましい。当該基は、殺菌効果や、アニオン基を有する記録材(例えば顔料や染料)との相互作用を及ぼす。
【0087】
また、親水性有機樹脂は、インクから供給されるイオンによりイオン架橋してもよい。具体的には、親水性有機樹脂中が(メタ)アクリル酸やマレイン酸等のカルボン酸を含む共重合体やカルボン酸を有する(分岐)ポリエステル等、樹脂中にカルボン酸を含む構造単位を存在させることができる。樹脂中のカルボン酸と水性インク等の液体から供給されるアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、有機アミン・オニウムカチオン等とでイオン架橋や酸・塩基相互作用等が生じる。
【0088】
親水性有機樹脂は、溶解度パラメータ(SP値)が例えば9.5以上であり、望ましくは9.5以上20以下であり、より望ましくは9.5以上15以下である。
親水性有機樹脂と、後述する疎水性有機樹脂とは、溶解度パラメータ(SP値)の差が、例えば1以下であり、望ましくは0.1以上0.8以下であり、より望ましくは0.2以上0.6以下である。
【0089】
ここで、インク受容性粒子の母粒子がいずれの形態であっても、インク受容性粒子全体における親水性有機樹脂の含有比率は、質量比で75%以上100%以下である。
【0090】
図1に例示される、母粒子の形態が一次粒子のインク受容性粒子100中における親水性有機樹脂101の含有比率は、次のようにして求める。
前述した粒子径の測定方法のように透過型電子顕微鏡を用いて観察し、画像解析によって求めることができる
【0091】
図2に例示される、母粒子の形態が複合体粒子のインク受容性粒子110中における親水性有機樹脂111の含有比率は、次のようにして求める。
前述した粒子径の測定方法のように透過型電子顕微鏡を用いて観察し、画像解析によって求めることができる。
【0092】
親水性有機樹脂としては透明樹脂を適用することが、定着後に保護層として機能させるという観点からは望ましい。
【0093】
次に、疎水性有機樹脂について説明する。
疎水性有機樹脂は、極性単量体に由来する構成単位の比率が0mol%以上10mol%未満であることが望ましい。
疎水性有機樹脂は、インク受容性粒子の母粒子がいずれの形態であっても、極性単量体の比率を上記範囲に制御して使用される。
【0094】
疎水性有機樹脂は、例えば液体として水を吸収する場合、樹脂質量に対して5%未満の吸液が可能な吸液性を持つ樹脂を意味する。
【0095】
極性単量体の比率を上記範囲とすることで、母粒子に含まれる親水性有機樹脂粒子が、保管によって大気中の水分を吸液した場合や、インク付与によってインクの液体成分を吸液した場合においても、インク受容性粒子表面での帯電性が確保される。よって、インク受容性粒子を中間転写体しても中間転写体からインク受容性粒子が離脱することなく、画像乱れを抑制した画像を形成し得る。
【0096】
疎水性有機樹脂は、ホモポリマーであってもコポリマー(共重合体)であってもよい。
疎水性有機樹脂がホモポリマーの場合には、非極性単量体(疎水性単量体)のみから構成されるホモポリマーであり、極性単量体に由来する構成単位の比率が0mol%である。
疎水性有機樹脂がコポリマーの場合、2つの態様が挙げられる。1つは、複数種の非極性単量体(疎水性単量体)から構成されるコポリマーであり、極性単量体に由来する構成単位の比率が0mol%である。もう1つは、極性単量体と非極性単量体とから構成されるコポリマーであり、極性単量体に由来する構成単位の比率が0mol%より多くなる場合である。
【0097】
疎水性有機樹脂における極性単量体としては、親水性有機樹脂で説明した極性単量体を適用することができる。
【0098】
疎水性単量体としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン化合物、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステルなどが挙げられる
【0099】
疎水性有機樹脂として、具体的には、例えばビニル系樹脂(例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル-(メタ)アクリル酸共重合体など)、ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、シリコーン樹脂(例えばオルガノポリシロキサンなど)、フッ素系樹脂(例えばフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体など)が好適に挙げられる。
【0100】
疎水性有機樹脂全体としての溶解度パラメータ(SP値)は、例えば9.5未満である。
【0101】
疎水性有機樹脂のインク受容性粒子全体に対する比率は、母粒子がいずれの形態であっても、0.1質量%以上5質量%以下である。
【0102】
図1に例示される、母粒子の形態が一次粒子のインク受容性粒子100中における、疎水性有機樹脂102の含有比率は、次のようにして求める。
前述した粒子径の測定方法のように透過型電子顕微鏡を用いて観察し、画像解析によって求めることができる。
【0103】
図2に例示される、母粒子の形態が複合体粒子のインク受容性粒子110中における、疎水性有機樹脂112の含有比率は、次のようにして求める。
前述した粒子径の測定方法のように透過型電子顕微鏡を用いて観察し、画像解析によって求めることができる。
【0104】
更に、疎水性有機樹脂を含んで構成される疎水性有機樹脂粒子には、表面処理(部分疎水化処理、特定官能基導入処理等)が施されてもよい。
具体的には、例えば、トリメチルクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシランなどのシリル化剤で処理してアルキル基を導入することも可能である。この反応は、シリル化剤によって脱塩酸が生じ、反応が進むため、アミンを添加することで塩酸を塩酸塩にして反応を促進することもできる。
また、脂肪族アルコール類や高級脂肪酸及び同誘導体類での表面処理も可能である。更には、(置換)アミノ基や四級アンモニウム塩構造を有するシランカップリング剤等のカチオン性官能基を有するカップリング剤類、フルオロシランの様なフッ素系官能基を有するカップリング剤、その他カルボン酸等のアニオン性官能基を有するカップリング剤類での表面処理も可能である
【0105】
疎水性有機樹脂には、帯電制御剤を含ませてもよい。帯電制御剤としては、例えば、無機酸化物、有機化合物、有機金属錯体等が挙げられる。
帯電制御剤としての無機酸化物には、例えば酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ等を挙げることができる。これら無機酸化物は、半導電性(例えば抵抗率が10Ω/□以下)であることがよい。
帯電制御剤としての有機化合物には、樹脂粒子、第四級アンモニウム塩(例えばセチルピリジルクロライド、P−51、P−53(オリエント化学工業製))、有機ホウ酸塩類、イミド化合物、イミダゾール化合物、 ビスフェノール化合物、尿素化合物、オニウム塩等を挙げることができる。
帯電制御剤としてお有機金属錯体には、イミダゾール金属錯体類、アゾ系金属錯化合物(例えばS−44、S−34(オリエント化学工業製)等)、安息香酸金属錯体、サリチル酸金属錯体(例えばE−84(オリエント化学工業製)等)、カテコール金属錯体等を挙げることができる。
【0106】
更に、帯電制御剤としては、錯体(例えば4級アンモニウム塩、ニグロシン系化合物、アルミニウム、鉄、クロムなどの錯体)で構成される染料、トリフェニルメタン系顔料、極性基を含有するレジンタイプ等も挙げられる。
これら、帯電制御剤は、例えば、球換算粒子径200μm以下の粒子であることがよい。
【0107】
帯電制御剤として具体的には、例えば、以下の化合物が挙げられる。但し、R〜Rは、各々互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基または、置換もしくは未置換のアリール基を表わす。
【0108】
【化1】

【0109】
【化2】

【0110】
【化3】

【0111】
【化4】

【0112】
帯電制御剤の含有量は、疎水性有機樹脂に対して、例えば0.1質量%以上30質量%以下である。
【0113】
次に、親水性有機樹脂粒子及び疎水性有機樹脂を、以下、まとめて有機樹脂と称して、共通の特性について説明する。
【0114】
有機樹脂は、直鎖構造であってもよいが、分岐構造であることが望ましい。また、有機樹脂は、非架橋もしくは低架橋であることが画像定着性の観点から望ましい。また、有機樹脂は直鎖構造のランダム共重合体やブロック共重合体でもよいが、分岐構造の重合体(分岐構造のランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を含む)が更に好適に使用できる。例えば、重縮合で合成されるポリエステルの場合、分岐構造によって末端基を増加させることができる。この分岐構造は、一般的に、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリレート類等のいわゆる架橋剤を合成のときに添加する(例えば1%未満の添加)、或いは架橋剤と共に開始剤を多量添加することで得られる。
【0115】
有機樹脂には、更には低分子の4級アンモニウム塩類や有機ホウ酸塩類、サリチル酸誘導体の造塩化合物類等、電子写真トナー用帯電制御剤を有機樹脂に添加してもよい。導電性の制御は酸化スズや酸化チタン等の導電性(ここで、導電性とは例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する。以下、特記がない限り同様である。)、半導電性(ここで、半導電性とは例えば体積抵抗率が10Ωcm以上1013Ωcm以下を意味する。以下、特記がない限り同様である。)の無機物質添加が有効である。
【0116】
有機樹脂は、インク吸液時に低温で定着可能という観点から非結晶樹脂であることが望ましく、そのガラス転移温度(Tg)は、例えば30℃以上150℃以下である。
【0117】
ガラス転移温度(及び融点)は、ASTMD3418−8に準拠して測定された主体極大ピークより求める。主体極大ピークの測定には、パーキンエルマー社製のDSC−7を用いることができる。この装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行う。
【0118】
有機樹脂の重量平均分子量は、例えば3000以上100000以下の範囲が挙げられる。
【0119】
重量平均分子量は、以下の条件で行ったものである。例えば、GPCは「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)装置」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/分、サンプル注入量10μL、測定温度40℃、IR検出器を用いる。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製する。
【0120】
有機樹脂の酸価は、例えばカルボン酸基(−COOH)換算で50mgKOH/g以上777mgKOH/g以下が挙げられる。このカルボン酸基(−COOH)換算での酸価は、次の方法で測定した値とする。
【0121】
酸価は、JIS K0070に従って行い、中和滴定法を用いた測定で行う。即ち、適当量の試料を分取し、溶剤(ジエチルエーテル/エタノール混合液)100ml、及び、指示薬(フェノールフタレイン溶液)数滴を加え、水浴上で試料が溶けるまで充分に振り混ぜる。これに、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の紅色が30秒間続いた時を終点とする。酸価をA、試料量をS(g)、滴定に用いた0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液をB(ml)、fを0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクターとしたとき、A=(B×f×5.611)/Sとして算出する。
【0122】
インク受容性粒子中の、疎水性有機樹脂と親水性有機樹脂との比率は、質量比で疎水性有機樹脂:親水性有機樹脂=1:100以上100:100以下である。
【0123】
図1に例示されるような一次粒子の形態のインク受容性粒子100中における、親水性有機樹脂101と疎水性有機樹脂102の含有比率は、次のようにして求める。
前述した粒子径の測定方法のように透過型電子顕微鏡を用いて観察し、画像解析によって求めることができる。
【0124】
また、図2に例示されるような複合体粒子の形態のインク受容性粒子110中における、親水性有機樹脂粒子111と疎水性有機樹脂粒子112の含有比率は、次のようにして求める。
前述した粒子径の測定方法のように透過型電子顕微鏡を用いて観察し、画像解析によって求めることができる。
【0125】
(ブロック共重合体)
ブロック共重合体は、極性単量体に由来する構造単位と非極性単量体に由来する構造単位とを有する。更にブロック共重合体における極性単量体の溶解度パラメータ(SP値)は、前記親水性有機樹脂の極性単量体の溶解度パラメータ(SP値)との差の絶対値が2以下である。ブロック共重合体の極性単量体と親水性有機樹脂の極性単量体とが、溶解度パラメータ(SP値)において2以下の絶対値の差とすることで、前記ブロック共重合体の親水性部位が前記親水性有機樹脂に馴染み易くなる。
【0126】
特に、ブロック共重合体の極性単量体と親水性有機樹脂の極性単量体とが同一の化学構造を有することが、親水性有機樹脂と疎水性有機樹脂とを結合させるという観点から望ましい。なお、「極性単量体が同一の化学構造」とは、例えば、親水性有機樹脂の極性単量体としてアクリル酸を用いた場合には、ブロック共重合体の極性単量体としてアクリル酸を用いることを意味する。
【0127】
よって、ブロック共重合体における極性単量体としては、前記親水性有機樹脂で説明した極性単量体を用いることが好ましく、そのなかでも、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、ビニルアルコール類、ビニルピロリドンなどの極性単量体が好適である。
【0128】
ブロック共重合体の非極性単量体(疎水性単量体)としては、疎水性有機樹脂で説明した疎水性単量体を挙げることができる。そのなかでも、スチレン、ビニルトルエン、メタメタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどの疎水性単量体が好適である。
【0129】
なお、本実施形態におけるブロック共重合体には、グラフト共重合体が含まれる。
グラフト共重合体の場合、主鎖が非極性単量体で側鎖が極性単量体であっても、主鎖が極性単量体で側鎖が非極性単量体であってもよい。
また、いわゆるブロック共重合体の場合、疎水性部位Aのブロックと親水性部位Bのブロックがそれぞれ1つずつ結合したブロック共重合体であっても、疎水性部位Aのブロックと親水性部位Bのブロックがそれぞれ相互に繰り返して結合したブロック共重合体であってもよい。製造の簡便さの観点からは、前者のブロック共重合体が好適である。
【0130】
ブロック共重合体における極性単量体と非極性単量体の比率は親水性有機樹脂粒子及び/又は疎水性有機樹脂粒子に合わせて調整することが望ましく、その比率を一概に述べることはできない。
【0131】
ここで、ブロック共重合体のインク受容性粒子全体における含有比率は、インクの受容速度の向上と経時後の帯電性低下の抑制の観点から、0.1質量%以上10質量%以下である。
なお、インク受容性粒子中におけるブロック共重合体の含有比率は、次のようにして求めることができる。
インク受容性粒子を溶解し、GPCを用いて分子量毎に分取する。各フラクション毎に、構造を特定し、ブロックポリマーの量を求める。
【0132】
ブロック共重合体は、公知のブロック共重合体(グラフト共重合体を含む)の合成方法によって作製することができる。
【0133】
(無機粒子)
本実施形態のインク受容性粒子は、母粒子が1次粒子の形態であっても複合体粒子の形態であっても、その母粒子表面に無機粒子を付着させることができる。また、1次粒子内に無機粒子を含有させたり、或いは複合体粒子の1粒子として無機粒子を含有させたりすることができる。
【0134】
前記無機粒子としては、非多孔質粒子、多孔質粒子のいずれも使用することができる。無機粒子としては、無色、淡色或いは白色の粒子(例えば、コロイダル・シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ等)が挙げられる。これら無機粒子は、表面処理(部分疎水化処理、特定官能基導入処理等)を施されてもよい。例えば、シリカの場合には、シリカの水酸基をトリメチルクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシランなどのシリル化剤で処理してアルキル基を導入する。シリル化剤によって脱塩酸が生じ、反応が進む。この際、アミンを添加すると塩酸を塩酸塩にして反応を促進することもできる。疎水性基としてアルキル基やフェニル基を有するシランカップリング剤やチタネート系、ジルコネート系等のカップリング剤の処理量や処理条件を制御することでコントロールできる。また、脂肪族アルコール類や高級脂肪酸及び同誘導体類での表面処理も可能である。また、(置換)アミノ基や四級アンモニウム塩構造を有するシランカップリング剤等のカチオン性官能基を有するカップリング剤類、フルオロシランの様なフッ素系官能基を有するカップリング剤、その他カルボン酸等のアニオン性官能基を有するカップリング剤類での表面処理も可能である。なお、これらの無機粒子は、親水性有機樹脂粒子内部に含まれる、所謂内添されていてもよい。
【0135】
(その他添加剤)
本実施形態のインク受容性粒子には、インクの成分を凝集又は増粘させる成分を含むことが望ましい。
この機能を有する成分は、上記有機樹脂粒子の官能基として含んでもよいし、化合物として含んでもよい。当該官能基としては、例えば、カルボン酸、多価金属カチオン、ポリアミン類等などが挙げられる。また、当該化合物としては、無機電解質、有機酸、無機酸、有機アミンなどの凝集剤が好適に挙げられる。
【0136】
無機電解質としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン及び、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、及び、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸の塩等が挙げられる。
【0137】
有機酸としては、具体的にはアルギニン酸、クエン酸、グリシン、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、システイン、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、マレイン酸、マロン酸、リシン、リンゴ酸、及び、これら化合物の誘導体などが挙げられる。
【0138】
有機アミン化合物としては、1級、2級、3級及び4級アミン及びそれらの塩のいずれであっても構わない。
【0139】
これら凝集剤の中でも、多価金属塩(Ca(NO3)、Mg(NO3)、Al(OH3)、ポリ塩化アルミニウム等)が好適に用いられる。
【0140】
凝集剤は単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して使用しても構わない。また、凝集剤の含有量としては、例えば0.01質量%以上30質量%以下(望ましいは、0.1質量%以上15質量%以下であり、より望ましくは、1質量%以上15質量%以下)の範囲が挙げられる。
【0141】
本実施形態のインク受容性粒子には、離型剤が含まれていることが望ましい。離型剤は、上記有機樹脂に含ませてもよいし、有機樹脂粒子と共に離型剤の粒子を複合化して含ませてもよい。
【0142】
この離型剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス;及びそれらの変性物などが挙げられる。これらの中でも結晶性化合物を適用することがよい。
【0143】
以上説明した本実施形態のインク受容性粒子は、単独で用いることもできるが、キャリアと組み合わせて用いてもよい。特に、本実施形態のインク受容性粒子は、キャリアからの物理的衝撃を受けてもインク受容性粒子の部分欠落が抑えられたものであることから、キャリアと併用する場合に有用である。
キャリアとしては、例えば、電子写真用トナーの現像剤に用いられるキャリアが適用され得る。
【0144】
<インク記録用材料>
本実施形態のインク記録用材料は、少なくとも記録材を含むインクと、上記本実施形態のインク受容性粒子と、を備える。
【0145】
以下、インクについて詳細に説明する。
インクは水性インク、油性インク共に使用することができるが、環境性の点で水性インクが使用される。水性インク(以下、単にインクと称する)は、記録材に加え、インク溶媒(例えば、水、水溶性有機溶媒)を含んでいる。また、必要に応じて、その他、添加剤を含んでいてもよい。
【0146】
まず、記録材について説明する。記録材としては、主に色材が挙げられる。色材としては、染料、顔料のいずれも用いることができるが、顔料であることがよい。顔料としては有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料ではファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用してもよい。また、本実施形態のために、新規に合成した顔料でも構わない。
【0147】
また、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等を顔料として使用することも可能である。
【0148】
ここで、色材として顔料を使用した場合には、併せて顔料分散剤を用いることが望ましい。使用可能な顔料分散剤としては、高分子分散剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0149】
高分子分散剤としては、親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体が好適に用いられる。親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体としては、縮合系重合体と付加重合体とが使用できる。縮合系重合体としては、公知のポリエステル系分散剤が挙げられる。付加重合体としては、α,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の付加重合体が挙げられる。親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体と疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体を組み合わせて共重合することにより目的の高分子分散剤が得られる。また、親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の単独重合体も用いることができる。
【0150】
親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、りん酸基等を有する単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロオキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0151】
疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
【0152】
高分子分散剤として用いられる、望ましい共重合体の例としては、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。また、これらの重合体に、ポリオキシエチレン基、水酸基を有する単量体を共重合させてもよい。
【0153】
上記高分子分散剤としては、例えば重量平均分子量で2000以上50000以下のものが挙げられる。
【0154】
これら顔料分散剤は、単独で用いても、二種類以上を併用しても構わない。顔料分散剤の添加量は、顔料により大きく異なるため一概には言えないが、一般に顔料に対し、合計で0.1質量%以上100質量%以下が挙げられる。
【0155】
色材として水に自己分散可能な顔料を用いることもできる。水に自己分散可能な顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤が存在しなくとも水中で分散する顔料のことを指す。具体的には、通常のいわゆる顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより、水に自己分散可能な顔料が得られる。
【0156】
また、水に自己分散可能な顔料としては、上記顔料に対して表面改質処理を施した顔料の他、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−300、Cab−o−jet−250、Cab−o−jet−260、Cab−o−jet−270、オリエント化学社製のMicrojet Black CW−1、CW−2等の市販の自己分散顔料等も使用できる。
【0157】
自己分散顔料としては、その表面に官能基として少なくともスルホン酸、スルホン酸塩、カルボン酸、又はカルボン酸塩を有する顔料であることが望ましい。より望ましくは、表面に官能基として少なくともカルボン酸、又はカルボン酸塩を有する顔料である。
【0158】
更に、樹脂により被覆された顔料等を使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販のマイクロカプセル顔料だけでなく、本実施形態のために試作されたマイクロカプセル顔料等を使用することもできる。
【0159】
また、高分子物質を上記顔料に物理的に吸着又は化学的に結合させた樹脂分散型顔料を用いることもできる。
【0160】
記録材としては、その他、親水性のアニオン染料、直接染料、カチオン染料、反応性染料、高分子染料等や油溶性染料等の染料類、染料で着色したワックス粉・樹脂粉類やエマルション類、蛍光染料や蛍光顔料、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フェライトやマグネタイトに代表される強磁性体等の磁性体類、酸化チタン、酸化亜鉛に代表される半導体や光触媒類、その他有機、無機の電子材料粒子類などが挙げられる。
【0161】
記録材の含有量(濃度)は、例えばインクに対して5質量%以上30質量%以下とすることができる。
【0162】
記録材の体積平均粒径は、例えば10nm以上1000nm以下であることが挙げられる。
記録材の体積平均粒径とは、記録材そのものの粒径、又は記録材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒径をいう。体積平均粒径の測定装置には、マイクロトラックUPA粒度分析計 9340 ( Leeds&Northrup社製 )を用いた。その測定は、インク4mlを測定セルに入れ、所定の測定法に従って行った。なお、測定時の入力値として、粘度にはインクの粘度を、分散粒子の密度は記録材の密度とした。
【0163】
次に、水溶性有機溶媒について説明する。水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
【0164】
水溶性有機溶媒は、少なくとも1種類以上使用してもよい。水溶性有機溶媒の含有量としては、例えば1質量%以上70質量%以下が挙げられる。
【0165】
次に、水について説明する。水としては、特に不純物が混入することを防止するため、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水を使用することが望ましい。
【0166】
次に、その他の添加剤について説明する。インクには、界面活性剤を添加することができる。
【0167】
これら界面活性剤の種類としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、望ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が用いられる。
【0168】
これらの界面活性剤は単独で使用しても混合して使用してもよい。また界面活性剤の親水性/疎水性バランス(HLB)は、溶解性等を考慮すると3以上20以下の範囲であることが望ましい。
【0169】
これらの界面活性剤の添加量は、0.001質量%以上5質量%以下が望ましい。
【0170】
また、インクには、その他、浸透性を調整する目的で浸透剤、インク吐出性改善等の特性制御を目的でポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等や、導電率、pHを調整するために水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属類の化合物等、その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤等も添加することができる。
【0171】
次に、インクの好適な特性について説明する。まず、インクの表面張力は、20mN/m以上45mN/m以下であることが挙げられる。
【0172】
ここで、表面張力としては、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定した値を採用する。
【0173】
インクの粘度は、1.5mPa・s以上30mPa・s以下であることが挙げられる。
【0174】
ここで、粘度としては、レオマット115(Contraves製)を測定装置として用いて、測定温度は23℃、せん断速度は1400s-1の条件で測定した値を採用した。
【0175】
なお、インクは、上記構成に限定されるものではない。記録材以外に、例えば、液晶材料、電子材料など機能性材料を含むものであってもよい。
【0176】
<インク受容性粒子収納カートリッジ>
本実施形態のインク受容性粒子収納カートリッジは、記録装置に脱着可能であり、上記本実施形態のインク受容性粒子を収納すると共に、記録装置の粒子塗布装置(粒子供給装置)に当該インク受容性粒子を供給するための部材である。
【0177】
以下、本実施形態のインク受容性粒子収納カートリッジについて図面を参照しつつ説明する。図3は、本実施形態のインク受容性粒子収納するカートリッジを示す斜視図である。図4は、図3のA−A断面図である。
【0178】
本実施形態のインク受容性粒子収納カートリッジ50は、図3及び図4に示すように、円筒状の粒子収納カートリッジ本体51と、この粒子収納カートリッジ本体51の両端に嵌合する側壁部52、54とから構成されている。
【0179】
そして、一端側の粒子収納カートリッジ本体51の周面にはインク受容性粒子を記録装置の粒子塗布装置(粒子供給装置:不図示)に向けて搬出するための搬出口60が設けられている。また、粒子収納カートリッジ本体51に対してスライド自在に帯部56が取付けられている。この帯部56には、搬出口60の外側に搬出口60を格納する格納部58が設けられている。
【0180】
従って、粒子収納カートリッジ50が記録装置に装着されていない状態(或いは装着直後)は、搬出口60は格納部58に格納され、搬出口60から粒子収納カートリッジ本体51内のインク受容性粒子が外に漏れ出ない。
【0181】
また、粒子収納カートリッジ本体51の他端側の側壁部54の中央部分には孔62が開けられており、カップリング部64の連結部66が、この側壁部54の孔62から粒子収納カートリッジ本体51内部に貫通している。また、これにより、カップリング部64は側壁部54に対して、回転自在となっている。
【0182】
そして、アジテーター68が、粒子収納カートリッジ本体51内部に配設されている。アジテーター68は、断面円形の金属製の線状部材、例えば、ステンレス(SUS304WP)からなり、螺旋状に形成されている。また、一方のアジテーターの一端部は、回転軸(回転中心)に向かって曲げられ、カップリング部64の連結部66に連結されている。尚、他方の端部の先は、拘束されていない自由端となっている。
【0183】
アジテーター68はカップリング部64の連結部66から回転力を付与されて回転し、粒子収納カートリッジ本体51内のインク受容性粒子、又はインク受容性粒子及びキャリアを攪拌しながら搬出口60の方に搬送する。このように、粒子を搬出口60から排出し、インク受容性粒子を記録装置に追加補充される。
【0184】
なお、本実施形態のインク受容性粒子収納カートリッジは、上記構成に限られるものではない。
【0185】
<記録装置>
本実施形態の記録装置(記録方法)は、記録材を含むインクと、上記本実施形態のインク受容性粒子と、を用いた記録装置(記録方法)である。
本実施形態の記録装置(記録方法)の1態様としては、中間転写体と、インク受容性粒子を中間転写体上に供給する供給装置(供給工程)と、中間転写体上に供給されたインク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出装置(インク吐出工程)と、インク受容性粒子を記録媒体に転写する転写装置(転写工程)と、記録媒体に転写されたインク受容性粒子を定着する定着装置(定着工程)と、を有し、インク受容性粒子は、インク吐出装置から吐出されたインクを中間転写体上で受容する記録装置(記録方法)である。
【0186】
具体的には、例えば、まず、供給装置により中間体(中間転写体)にインク受容性粒子を層状に供給する。層状に供給されたインク受容性粒子(以下、インク受容性粒子層)に対して、インク吐出装置によりインクを吐出して受容させる。インクを受容したインク受容性粒子層を転写装置により中間体から記録媒体へ転写する。この転写は、インク受容性粒子層の全部或いは記録部(インク受容部)を選択的に行われる。その後、記録媒体に転写されたインク受容性粒子層に対し、定着装置により加圧(或いは加熱・加圧)を施し、定着させる。このようにして、インクを受容したインク受容性粒子による記録が行われる。なお、転写と定着は実質的に同時に行ってもよし、別で行ってもよい。
【0187】
ここで、インク受容性粒子はインクを受容する際、例えば、層状に形成されるが、そのインク受容性粒子層の厚さは、例えば1μm以上100μm以下、望ましくは3μm以上60μm以下、より望ましくは5μm以上30μm以下の範囲が挙げられる。また、インク受容性粒子層中の空隙率(即ち、インク受容性粒子間空隙率+インク受容性粒子内空隙率(トラップ構造))は、例えば10%以上80%以下、望ましくは30以上70%以下、より望ましくは40%以上60%以下の範囲が挙げられる。
【0188】
また、中間体の表面には、インク受容性粒子供給前に予め、離型剤を塗布してもよい。この離型剤としては、(変性)シリコーンオイル、フッ素系オイル、炭化水素オイル、鉱物油、植物油、ポリアルキレングリコール、アルキレングリコールエーテル、アルカンジオール、溶融ワックス類などが挙げられる。
【0189】
なお、記録媒体としては、浸透媒体(例えば、普通紙や、コート紙等)、非浸透媒体(例えば、アート紙、樹脂フィルムなど)、いずれも適用することができる。また、記録媒体は、これらに限られず、その他、半導体基板など工業製品も含まれる。
【0190】
一方、本実施形態の記録装置(記録方法)の他の態様としては、本実施形態のインク受容性粒子を記録媒体上に供給する供給装置と、記録媒体上に供給されたインク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出装置と、記録媒体上に供給されたインク受容性粒子を定着する定着装置と、を有し、インク受容性粒子が、インク吐出装置から吐出されたインクを記録媒体上で受容する記録装置(記録方法)であってもよい。
【0191】
具体的には、まず、供給装置により記録媒体にインク受容性粒子を層状に供給する。層状に供給されたインク受容性粒子(以下、インク受容性粒子層)に対して、インク吐出装置によりインクを吐出して受容させる。インクを受容したインク受容性粒子層に対し、定着装置により加圧(或いは加熱・加圧)を施し、定着させる。このようにして、インクを受容したインク受容性粒子による記録が行われる。このように、記録媒体に直接、記録媒体上に供給する形態であってもよい。
【0192】
以下、本実施形態の記録装置について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同じ作用・機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0193】
図5は、本実施形態の記録装置を示す構成図である。図6は、本実施形態の記録装置の主要部を示す構成図である。図7は、本実施形態に係るインク受容性粒子層を示す構成図である。なお、以下の本実施形態では、後述するインク受容性粒子として複合体粒子を適用し、これと導電性磁性キャリアとを混合したものを用いた場合について説明する。
【0194】
本実施形態の記録装置10は、図5及び図6に示すように、例えば、無端ベルト状の中間転写体12、中間転写体12表面を帯電させる帯電装置28、中間転写体12上の帯電された領域にインク受容性粒子16を供給し粒子層を形成する粒子供給装置18、粒子層上にインク滴を吐出し画像を形成するインクジェット記録ヘッド20、記録媒体8を中間転写体12と重ね合わせ、圧力及び熱を加えることにより記録媒体8上にインク受容性粒子層を転写及び定着する転写定着装置22を含んで構成されている。そして、粒子供給装置18には、供給管19Aを介してインク受容性粒子収納カートリッジ19が脱着可能に連結されている。
【0195】
帯電装置28の上流側には、離型剤14Dを供給して離形層14Aを形成する離型剤供給装置14が配置される。
【0196】
帯電装置28により表面に電荷を形成した中間転写体12の表面は粒子供給装置18にてインク受容性粒子16を層として形成され、粒子層上には各色ごとのインクジェット記録ヘッド20すなわち20K、20C、20M、20Yから各色のインク滴が吐出されカラー画像が形成される。
【0197】
表面にカラー画像が形成された粒子層は転写定着装置(転写定着ロール)22にて記録媒体8にカラー画像ごと転写される。転写定着装置22の下流には、中間転写体12表面に残留しているインク受容性粒子16の除去、粒子以外の異物(記録媒体8の紙粉等)の中間転写体付着物の除去を行うためのクリーニング装置24が配置されている。
【0198】
カラー画像を転写された記録媒体8はそのまま搬出され、中間転写体12は再度帯電装置28で表面に電荷を形成される。このとき、記録媒体8に転写されたインク受容性粒子はインク滴20Aを吸収・保持するので速やかに搬出が可能でされる。
【0199】
また、必要に応じて、クリーニング装置24と離型剤供給装置14の間(以下、AとBとの間とは特記がない限り、いずれも含まない間を意味する)に、中間転写体12表面に残留する電荷を除去する為の除電装置29を配置してもよい。
【0200】
本実施形態においては、中間転写体12は、厚さ1mmのポリイミドフィルムのベース層の上に厚さ400μmのエチレンプロピレンゴム(EPDM)の表面層が形成されている。ここでは表面抵抗値が1013Ω/□程度、体積抵抗値が1012Ω・cm程度(半導電性)であることが望ましい。
【0201】
中間転写体12が周動され、まず離型剤供給装置14により中間転写体12表面に離形層14Aが形成される。離型剤供給装置14の供給ロール14Cにより中間転写体12表面に離型剤14Dが供給され、ブレード14Bで層厚を規定する。
【0202】
このとき、連続的に画像形成及びプリントを行う目的で、離型剤供給装置14を中間転写体12に連続的に接触するようにしてもよいし、中間転写体12から離間する構成としてもよい。
【0203】
離型剤供給装置14に、独立した液体供給システム(図示せず)より離型剤14Dを供給して、離型剤14Dの供給がとぎれないようにしてもよい。
【0204】
次に、帯電装置28によって電荷を中間転写体12表面に付与することにより、中間転写体12表面に正の電荷が帯電される。ここでは、静電誘導により電荷注入されたインク受容性粒子16と中間転写体12表面とで形成しうる電界による静電力により、インク受容性粒子16が中間転写体12表面に供給/吸着可能な電位を形成すればよい。
【0205】
本実施形態においては、帯電装置28を用いて、帯電装置28と中間転写体12を挟んで配置されている従動ロール31(グラウンドに接続)間に電圧を印加し、中間転写体12表面を帯電させる構成としている。
【0206】
帯電装置28は、ステンレスを材料とする棒状の外周面に、導電性付与材を分散させた弾性層(発泡ウレタン樹脂)を形成し、体積抵抗率10Ω・cm以上10Ω・cm以下程度に調整したロール形状の部材とする。さらに、弾性層の表面を厚さ5μm以上100μm以下の撥水撥油性の被覆層(例えば四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)で構成)で被覆する。
【0207】
帯電装置28にはDC電源が接続され、従動ロール31はフレームグランドに電気的に接続されている。帯電装置28は、従動ロール31との間で中間転写体12を挟みつつ従動し、押圧位置では、接地された従動ロール31との間に所定の電位差が生じるため、中間転写体12の表面に電荷を与えることができる。ここでは帯電装置28により中間転写体12表面に例えば電圧1kvを印加し、中間転写体12表面を帯電させる。
【0208】
また、帯電装置28をコロトロン、スコロトロン等で構成してもよい。
【0209】
次に粒子供給装置18により、中間転写体12表面にインク受容性粒子16が供給され、インク受容性粒子層16Aを形成する。粒子供給装置18は、インク受容性粒子16が収容される容器の、中間転写体12と向い合う部分にマグロール18Aが配され、マグロール18Aと押圧するように規制部材18Bが配される。この規制部材18Bはマグロール18A表面に供給するインク受容性粒子16の層厚を規制する機能を持つ。マグロール18Aはアルミ製の中実ロール、規制部材18Bは圧力をかけるためにウレタンゴムが獲り付けられた金属板(SUSなど)を用いることができる。規制部材18Bはドクターブレード方式でマグロール18Aと接する。
【0210】
インク受容性粒子16は、キャリア17と共にマグロール18A(導電性ロール)の回転に伴い、規制部材18B(導電性ブレード)でインク受容性粒子層16Aを規制された後、帯電された中間転写体12表面に対峙される。インク受容性粒子16は、帯電された中間転写体と対峙すると、マグロール18A及びキャリア17を通じて中間転写体の帯電極性とは逆極性である電荷が注入され、帯電される。そして、インク受容性粒子16と中間転写体12との間に働く静電力(静電引力)が、インク受容性粒子16とキャリア17との間の付着力を上回ると、インク受容性粒子16が当該静電力により中間転写体12表面に移動(飛翔)する。このようにして、インク受容性粒子16が中間転写体12上へ供給される。
【0211】
このとき、中間転写体12表面に1層の粒子層を形成するように中間転写体12の移動速度とマグロール18Aの回転速度を相対的に設定する(周速比)。この周速比は、中間転写体12の帯電量やインク受容性粒子16の帯電量、マグロール18Aと中間転写体12の位置関係等、他のパラメータに依存する。
【0212】
上記の、1層のインク受容性粒子層16Aを形成する周速比を基準に、マグロール18Aの周速を相対的に早くすることにより、中間転写体12上に供給される粒子数を増加させることができる。転写される画像濃度が低い(インク打ち込み量が少ない(例えば0.1g/m以上1.5g/m以下))場合には、層厚を必要最小限の厚さ(例えば、1μm以上5μm以下)とし、また、画像濃度が高い(インク打ち込み量が多い(例えば4g/m以上15g/m以下))場合には、インク液体成分(溶媒や分散媒)を保持可能である充分な層厚(例えば10μm以上25μm以下)となるように制御することが望ましい。
【0213】
例えば、インク打ち込み量が少ない文字画像等の場合、中間転写体上の1層のインク受容性粒子層に対して像形成を行った場合、インク中の画像形成材(顔料)は中間転写体上のインク受容性粒子層表面に捕獲され、深さ方向に対して分布が少なくなるように、インク受容性粒子表面や内部の粒子空隙に固定される。
【0214】
例えば、最終的な画像となる画像層16Bの上に保護層となる粒子層16Cを設けたい場合は、インク受容性粒子層16Aを3層程度の厚みとし、最上層にインクで像形成を行えば((図7(A)参照)、像形成を行わない2層分の粒子層16Cが転写定着後には保護層となり画像層16Bの上に形成される(図7(B)参照)。
【0215】
あるいは2次色や3次色の画像等、インク打ち込み量が高い画像を形成する場合には、インク受容性粒子層を、インク液体成分(溶媒や分散媒)が保持可能で、記録材(例えば顔料)が捕獲され、最下層まで到達しない充分な粒子数となるようにインク受容性粒子16を積層させる。この場合、転写定着後の画像層表面に画像形成材(顔料)は露出せず、像形成を行わないインク受容性粒子16が画像表面に保護層として形成してもよい。
【0216】
次に、インクジェット記録ヘッド20がインク受容性粒子層16Aにインク滴20Aを付与する。インクジェット記録ヘッド20は所定の画像情報に基づき、所定の位置にインク滴20Aを付与する。
【0217】
最後に、転写定着装置22により記録媒体8と中間転写体12を挟み込んで、インク受容性粒子層16Aに圧力と熱を加える事で、記録媒体8上にインク受容性粒子層16Aが転写される。
【0218】
転写定着装置22は加熱源を内蔵する加熱ロール22Aと、中間転写体12を挟んで対向する加圧ロール22Bとから構成され、加熱ロール22A及び加圧ロール22Bは接して接触部を形成する。加熱ロール22A及び加圧ロール22Bには、アルミコアの外表面にシリコーンゴムを被覆し、更にその上をPFAチューブにて被覆された物を使用することができる。
【0219】
加熱ロール22Aと加圧ロール22Bの接触部において、ヒーターによりインク受容性粒子層16Aが加熱され、かつ圧力が加わる為、記録媒体8にインク受容性粒子層16Aが転写されると共に定着される。
【0220】
このとき、非画像部におけるインク受容性粒子16を構成する有機樹脂粒子がガラス転移温度Tg)以上に加熱されることにより軟化し(あるいは溶融され)、圧力により中間転写体12表面に形成された離形層14Aからインク受容性粒子層16Aが離形され、記録媒体8上に転写定着される。そして、圧力により中間転写体12表面に形成された離形層14Aからインク受容性粒子層16Aが離形され、記録媒体8上に転写される。この時、加熱によって転写定着性が向上する。本実施形態では加熱ロール22Aの表面を160℃に制御している。この時、インク受容性粒子層16Aに保持されたインク液体成分(溶媒や分散媒)は、転写後もそのままインク受容性粒子層16A内に保持され、定着される。また転写定着装置22より前に、中間転写体12に予備加熱を行ってもよい。
【0221】
なお、記録媒体8としては、浸透媒体(例えば、普通紙や、インクジェットコート紙等)、非浸透媒体(例えば、アート紙、樹脂フィルムなど)、いずれも適用することができる。また、記録媒体は、これらに限られず、その他、半導体基板など工業製品も含まれる。
【0222】
以下、実施形態に係る記録装置の画像形成のプロセスをより詳細に説明する。本実施形態の記録装置では、図6に示すように、中間転写体12の表面には離形剤供給装置14にて離形層14Aを形成することができる。中間転写体12の素材がアルミやPETベースであれば特に離形層14Aを形成することが望ましい。あるいはフッ素樹脂・シリコーンゴム系の素材を用いて、中間転写体12の表面自体に離形性を持たせるようにしてもよい。
【0223】
次に帯電装置28にて中間転写体12の表面をインク受容性粒子16と逆の極性に帯電させる。これにより、粒子供給装置18のマグロール18A及びキャリア17を通じて電荷注入されて帯電されたインク受容性粒子16を静電的に吸着させ、中間転写体12の表面にインク受容性粒子16の層を形成することができる。
【0224】
次いで中間転写体12の表面に粒子供給装置18のマグロール18Aにてインク受容性粒子16を層として形成する。例えば、形成されたインク受容性粒子層16Aはインク受容性粒子16が3層程度重なった厚みと成るように形成する。すなわち、上記のように規制部材18Bとマグロール18Aの空隙によってインク受容性粒子層16Aを所望の厚さに制御することで記録媒体8に転写されるインク受容性粒子層16Aの厚さを制御する。あるいはマグロール18Aと中間転写体12の周速比によって制御してもよい。
【0225】
次に、形成されたインク受容性粒子層16A上に、圧電式(ピエゾ)、サーマル式などにより駆動される各色のインクジェット記録ヘッド20によってインク滴20Aが吐出され、インク受容性粒子層16Aに画像層16Bが形成される。インクジェット記録ヘッド20から吐出されたインク滴20Aは、インク受容性粒子層16Aに打ち込まれ、インクの液体成分はインク受容性粒子16間の空隙及びインク受容性粒子16を構成する空隙に速やかに吸収されるともに、記録材(例えば顔料)もインク受容性粒子16(構成する粒子)表面或いはインク受容性粒子16を構成する粒子間の空隙に捕獲される。
【0226】
このときインク滴20Aに含まれるインク液体成分(溶媒や分散媒)はインク受容性粒子層16Aに浸透するが、顔料等の記録材はインク受容性粒子層16Aの表面又は粒子間空隙に捕獲される。すなわち、インク液体成分(溶媒や分散媒)はインク受容性粒子層16Aの裏面まで浸透させてもよいが、顔料等の記録材はインク受容性粒子層16Aの裏面には浸透しない。これにより、記録媒体8に転写した際には顔料等の記録材が浸透していない粒子層16Cが画像層16Bの上に層を形成するため、この粒子層16Cが画像層16Bの表面を封じ込める保護層となり、表面に記録材(例えば顔料などの色材)が露出しない画像を形成することができる。
【0227】
次いで画像層16Bが形成されたインク受容性粒子層16Aを中間転写体12から記録媒体8上に転写/定着することにより、記録媒体8上にカラー画像が形成される。中間転写体12上のインク受容性粒子層16Aはヒーターなどの加熱手段にて加熱された転写定着装置(転写定着ロール)22によって、加熱・加圧され記録媒体8上に転写される。
【0228】
このとき後述のように加熱・加圧を調節することで画像表面の凸凹を調整し、光沢度を制御してもよい。また冷却剥離を行って光沢度を制御してもよい。
【0229】
インク受容性粒子層16Aが剥離した後の中間転写体12表面に残った残留粒子16Dはクリーニング装置24にて回収され(図5参照)、中間転写体12の表面は再度帯電装置28にて帯電され、インク受容性粒子16が供給されインク受容性粒子層16Aが形成される。
【0230】
ここで、図7には、実施形態に係る画像形成に用いられる粒子層が示されている。図7(A)に示すように、中間転写体12の表面には離形層14Aが形成される。
【0231】
次いで中間転写体12の表面に粒子供給装置18にてインク受容性粒子16を層として形成する。前述のように形成されたインク受容性粒子層16Aはインク受容性粒子16が3層程度重なった厚みが望ましい。インク受容性粒子層16Aを所望の厚さに制御することで記録媒体8に転写されるインク受容性粒子層16Aの厚さを制御する。このときインク受容性粒子層16Aの表面はインク滴20Aの吐出による画像形成(画像層16Bの形成)に支障がない程度に均されている。
【0232】
また、吐出されたインク滴20Aに含まれる顔料等の記録材は図7(A)のようにインク受容性粒子層16Aの1/3以上半分以下程度まで浸透し、その下には顔料等の記録材の浸透していない粒子層16Cが残存している。
【0233】
転写定着装置(転写定着ロール)22による加熱・加圧転写で記録媒体8上に形成されたインク受容性粒子層16Aは図7(B)のように画像層16B上にインクを含まない粒子層16Cが存在するので、画像層16Bが直接表面に現れず一種の保護層としての働きをする。このため少なくとも定着後のインク受容性粒子16は透明である必要がある。
【0234】
粒子層16Cは転写定着装置(転写定着ロール)22によって加熱・加圧されるので表面を平らにすることが可能であり、画像表面の光沢度を加熱・加圧によって制御することもできる。
【0235】
また加熱によってインク受容性粒子16内部に捕獲されていたインク液体成分(溶媒や分散媒)の乾燥を促進させるようにしてもよい。
【0236】
インク受容性粒子層16Aに受容/保持されたインク液体成分(溶媒や分散媒)は、転写定着後もインク受容性粒子層16A内に保持され、自然乾燥にて除去される。
【0237】
上記の工程を経て、画像形成が終了する。中間転写体12については、インク受容性粒子16を記録媒体8に転写した後、中間転写体12上に残留した残留粒子16Dや、記録媒体8から離脱した紙粉の如く異物が存在する場合には、クリーニング装置24により除去してもよい。
【0238】
また、クリーニング装置24の下流に、除電装置29を配置してもよい。例えば、除電装置29として導電性ロールを使用して、従動ロール31(接地)と挟み込んで、中間転写体12表面に±3kV、500Hz程度の電圧を印加して、中間転写体12表面を除電する。
【0239】
上記の帯電電圧や、粒子層厚、定着温度等、その他の各種装置的条件は、インク受容性粒子16あるいはインクの組成、インクの吐出量等によって最適条件が決定される為、それぞれにおいて最適化する。
次に、実施形態の各ステップの構成要素について詳しく説明する。
【0240】
(中間転写体)
インク受容性粒子層が形成される中間転写体12は実施形態のようにベルト状でも、あるいは円筒状(ドラム状)でもよい。中間転写体表面にインク受容性粒子を静電力により供給保持する為には、中間転写体外周面が半導電性あるいは絶縁性の粒子保持特性を有する必要がある。中間転写体表面の電気的特性として、半導電性の場合は表面抵抗率が1010Ω/□以上1014Ω/□以下、体積抵抗率が10Ω・m以上1011Ω・m以下、絶縁性の場合には表面抵抗率が1014Ω/□以上、体積抵抗率が1011Ω・m以上の部材を用いる。
【0241】
ベルト形状の場合、基材としては、装置内におけるベルト回転駆動が可能で、必要な機械強度を持ち、特に転写/定着の際に熱を使用する場合には、必要な耐熱性を持つものであればよい。具体的には、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエーテルサルフォン、ステンレス等が使用される。
【0242】
ドラム形状の場合、基材としてはアルミやステンレス等が考えられる。
【0243】
なお、転写定着装置(転写定着ロール)22における定着工程において電磁誘導による加熱方式を発揮するためには、転写定着装置(転写定着ロール)22ではなく中間転写体12に発熱層を形成してもよい。発熱層には電磁誘導作用を生じる金属が用いられる。例えばニッケル、鉄、銅、アルミニウム、クロム等が選択可能である。
【0244】
(粒子供給プロセス)
まず、離型剤供給装置14により、インク受容性粒子16供給前に中間転写体12表面に離型剤14Dによる離形層14Aを形成する。
【0245】
離形層14Aの供給方法は、離型剤14Dを内蔵し離型剤供給部材に離型剤14Dを供給し、供給部材により中間転写体12表面に離型剤14Dを供給することで離形層14Aを形成する方法や、離型剤14Dを含浸した供給部材により中間転写体12表面に離形層14Aを形成する方法等が使用される。
【0246】
離型剤14Dとしてはシリコーン系オイル、フッ素系オイル、ポリアルキレングリコール、界面活性剤等の離型材料が挙げられる。
【0247】
シリコーン系オイルとしては、例えば、ストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイルが挙げられる。
ストレートシリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。
変性シリコーンオイルとしては、例えばメチルスチリル変性オイル、アルキル変性オイル、高級脂肪酸エステル変性オイル、フッ素変性オイル、アミノ変性オイルが挙げられる。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、ポリブチレングリコールが挙げられるが、これらの中もポリプロピレングリコールが望ましい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が挙げられるが、これらの中でもノニオン性界面活性剤が望ましい。
【0248】
離型剤14Dの粘度は、例えば5mPa・s以上200mPa・s以下である。
【0249】
なお、粘度の測定は次のようにして行われる。レオマット115(Contraves製)を測定装置として用いて、得られたインクの粘度を測定した。その測定は、試料を測定容器に入れ、所定の方法で装置に装着し、測定温度は40℃、せん断速度は1400s−1の条件で行った。
【0250】
離型剤14Dの表面張力は、例えば40mN/m以下が挙げられる。
【0251】
なお、表面張力の測定は次のようにして行われる。23±0.5℃、55±5%RHの環境において、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用いて、得られた試料の表面張力を測定した。
【0252】
離型剤14Dの沸点は、例えば760mmHg下で250℃以上の範囲が挙げられる。
【0253】
なお、沸点の測定は次のようにして行われる。JIS K2254に準じて測定を行い、その初留点を沸点として用いた。
【0254】
次に、帯電装置28にて中間転写体12の表面をインク受容性粒子16と逆の極性に帯電させる。そして、帯電された中間転写体12の表面にインク受容性粒子層16Aを形成する。このときインク受容性粒子層16Aを形成する方法は一般的な電子写真のトナーを感光体に供給する方法を応用できる。すなわち、予め中間転写体12表面に一般的な電子写真の帯電方式(帯電装置28による帯電など)により、電荷を供給する。インク受容性粒子16は静電誘導によって中間転写体12表面の電荷と逆極性に帯電する。
【0255】
マグロール18Aに保持されたインク受容性粒子16は中間転写体12の表面と電界を形成し、静電力により中間転写体12上に移動/供給され、保持される。このとき、インク受容性粒子層16Aに形成される画像層16Bの厚みにより(打ち込まれるインク量に合わせて)、インク受容性粒子層16Aの厚さをコントロールしてもよい。この際、インク受容性粒子16の帯電量の絶対値としては、5μc/g以上50μc/g以下の範囲が望ましい。
【0256】
ここで、インク受容性粒子層16Aの厚さは、1μm以上100μm以下である。また、インク受容性粒子層中の空隙率(即ち、インク受容性粒子間空隙率+インク受容性粒子内空隙率(トラップ構造))は、10%以上80%以下である。
【0257】
以下、インク受容性粒子層の層厚制御について説明する。
【0258】
マグロール18Aにインク受容性粒子16を供給し、規制部材18Bで粒子層の厚みを規制する。
【0259】
規制部材18Bはマグロール18A表面におけるインク受容性粒子16の層厚を規制する働きを持ち、例えば、マグロール18Aへの圧力を変化させて、マグロール18A表面のインク受容性粒子16の層厚を変化させる。例えば、マグロール18A表面上のインク受容性粒子16層厚を例えば1層とし、中間転写体12の表面上に形成されるインク受容性粒子16層厚を概1層に形成する。また、規制部材18Bの押圧力を低く制御し、マグロール18A表面上に形成されるインク受容性粒子16層厚を増加させ、中間転写体12表面上に形成されるインク受容性粒子層厚を増加させてもよい。
【0260】
他の方法として、中間転写体12表面上に例えば1層の粒子層を形成するマグロール18Aと中間転写体12の周速を1とした場合、マグロール18Aの周速を速くして中間転写体12上に供給されるインク受容性粒子16の数を増加させ、中間転写体12上のインク受容性粒子層厚を増加させるよう制御することができる。また上記方法を組み合わせて制御することも可能である。上記構成では例えばインク受容性粒子16を負に帯電し、中間転写体12の表面を正に帯電させている。
【0261】
このようにインク受容性粒子層の層厚を制御することにより、インク受容性粒子層の消費量を抑えつつ、表面が保護層で覆われたパターンを形成することができる。
【0262】
帯電装置28における帯電ロールとしてはアルミニウム、ステンレススチール等を材料とする棒状又はパイプ状部材の外周面に導電性付与材を分散させた弾性層を形成し、体積抵抗率10Ω・m以上10Ω・m以下程度に調整したφ10mm以上25mm以下のロールなどが使用できる。
【0263】
弾性層は、ウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー、エピクロルヒドリンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、シリコーン系ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、ポリノルボーネンゴム等の樹脂材料が単独又は二種以上の混合物として使用され、望ましい材料としては発泡ウレタン樹脂がある。
【0264】
上記発泡ウレタン樹脂としては、ウレタン系樹脂に中空ガラスビーズや熱膨張型マイクロカプセル等の中空体を混合分散して独立気泡構造を付与したものが望ましい。
【0265】
さらに、弾性層の表面を厚さ5μm以上100μm以下の撥水性の被覆層で被覆してもよい。
【0266】
帯電装置28にはDC電源が接続され、従動ロール31はフレームグランドに電気的に接続されている。帯電装置28は、従動ロール31との間で中間転写体12を挟みつつ従動し、押圧位置では、接地された従動ロール31との間に所定の電位差が生じる。
【0267】
(マーキングプロセス)
中間転写体12の表面に形成されたインク受容性粒子16の層(インク受容性粒子層16A)に、画像信号に基づいてインクジェット記録ヘッド20からインク滴20Aが吐出され、画像が形成される。インクジェット記録ヘッド20から吐出されたインク滴20Aは、インク受容性粒子層16Aに打ち込まれ、インク滴20Aはインク受容性粒子16内に形成された粒子間の空隙により速やかに吸収され、記録材(例えば、顔料)はインク受容性粒子16表面又はインク受容性粒子16を構成する粒子間の空隙に捕獲(トラップ)される。
【0268】
この場合、インク受容性粒子層16Aの表面に多くの記録材(例えば顔料)を捕獲(トラップ)することが望ましい。インク受容性粒子16内の粒子間の空隙がフィルターの効果を発揮し、インク受容性粒子層16A表面に記録材(例えば顔料)をトラップすると共に、インク受容性粒子16内の粒子間の空隙に捕獲(トラップ)され固定されることにより発現される。
【0269】
インク受容性粒子層16Aの表面及びインク受容性粒子16内の粒子間の空隙に記録材(例えば顔料)を確実にトラップさせるために、インクとインク受容性粒子16を反応させることにより、記録材(例えば顔料)を速やかに不溶化(凝集)させる方法を採用してもよい。具体的には、上記反応はインクと多価金属塩との反応や、pH反応型を応用することが可能である。
【0270】
また、記録媒体の幅と同等又はそれ以上の幅を持つライン型インクジェット記録ヘッドが望ましいが、従来のスキャン型のインクジェット記録ヘッドを用いて、中間転写体上に形成された粒子層に順次画像を形成してもよい。インクジェット記録ヘッド20のインク吐出手段は、圧電素子駆動型、発熱素子駆動型等、インク吐出可能な手段であれば制限はない。インク自体も従来の染料を色材としたインクを用いることができるが、顔料インクが望ましい。
【0271】
インク受容性粒子16をインクと反応させる場合は、インク受容性粒子16をインクと反応して顔料を凝集させる効果を与える凝集剤(例えば多価金属塩、有機酸)を含む水溶液にて処理を行い、乾燥させたものを使用する。
【0272】
(転写プロセス)
インク滴20Aを受容し、画像が形成されたインク受容性粒子層16Aは、記録媒体8に転写及び定着される事により、記録媒体8上に画像を形成する。上記転写と定着は別のプロセスにて行われてもよいが、望ましくは転写と定着を実質的に同時に行う方式がよい。定着はインク受容性粒子層16Aを加熱あるいは加圧することのいずれかの方法、あるいは加熱と加圧の両方を用いる方法等あるが、望ましくは加熱/加圧を実質的に同時に行う方式がよい。
【0273】
また、加熱/加圧を制御することで、インク受容性粒子層16Aの表面物性を制御し、グロス(光沢度)を制御することが可能である。また加熱/加圧した後、画像(インク受容性粒子層16A)が転写された記録媒体8を中間転写体12から剥離するときに、インク受容性粒子層16Aが冷却された後に剥離されてもよい。冷却方法は、自然冷却や空冷等の強制冷却などが考えられる。これらのプロセスに対しては、中間転写体12としてはベルト形状が望ましい。
【0274】
インク画像は中間転写体12上に形成されたインク受容性粒子16層の表層部に形成され(記録材(顔料)がインク受容性粒子層16Aの表面にトラップされる)、記録媒体8に転写される事により、インク画像がインク受容性粒子16の粒子層16Cにより保護されるように形成されることがよい。
【0275】
インク受容性粒子16層に受容/保持されたインク液体成分(溶媒や分散媒)は、転写定着後もインク受容性粒子16層内に保持され、自然乾燥にて除去される。
【0276】
(クリーニングプロセス)
中間転写体12表面をリフレッシュして繰返し使用を可能にするために表面をクリーニング装置24でクリーニングする工程が必要である。クリーニング装置24はクリーニング部と粒子搬送回収部(図示せず)から成り立っており、上記クリーニングにより、中間転写体12表面に残留しているインク受容性粒子16(残留粒子16D)の除去、粒子以外の異物(記録媒体8の紙粉等)といった中間転写体12の表面に付着した付着物の除去を行う。また、回収した残留粒子16Dは再利用してもよい。
【0277】
(除電プロセス)
離形層14Aを形成する前に除電装置29を用いて中間転写体12の表面を除電するようにしてもよい。
【0278】
以上説明した実施形態に係る記録装置では、中間転写体12表面に離型剤供給装置14により離型剤14Dを供給して離型層14Aを形成した後、帯電装置28により中間転写体表面を帯電させる。次に、中間転写体12の離型層が形成及び帯電された領域に粒子供給装置18よりインク受容性粒子16を供給させ粒子層を形成する。そして、インクジェット記録ヘッド20により粒子層上にインク滴を吐出し画像を形成する。これによりインク受容性粒子16にインクを受容させる。次に、記録媒体8を中間転写体12と重ね合わせ、転写定着装置22により圧力及び熱を加えることにより記録媒体8上にインク受容性粒子層を転写及び定着する。
【0279】
なお、記録装置は、中間転写方式の形態に限定されるものではなく、次で説明するインク受容性粒子を直接記録媒体上に供給する他の形態であってもよい。
【0280】
図8は、他の実施形態に係る記録装置を示す構成図である。図9は、他の実施形態に係る記録装置の主要部を示す構成図である。なお、以下の他の実施形態でも、後述するインク受容性粒子として複合体粒子を適用した場合を説明している。
【0281】
他の実施形態に係る記録装置11は、図8及び図9に示すように、無端ベルト状の搬送ベルト13を備えている。搬送ベルト13は回転移動し、収容容器(図示略)などから送られてきた記録媒体8を搬送する。
【0282】
まず、搬送ベルト13によって搬送されている記録媒体8に、イオン流制御静電記録ヘッド70(以降、「静電記録ヘッド70」と略して記す)が、放電によるイオン流を制御して記録媒体8上に照射することによって静電潜像を形成する。(図10(A)参照)。
【0283】
記録媒体8に形成された静電潜像を粒子供給装置18が顕像化し、インク受容性粒子16で構成されるインク受容性粒子層16Aを形成する。(図10(B)参照)。
【0284】
記録媒体8に形成されたインク受容性粒子層16Aを、予備定着装置150が予備加熱定着する。
【0285】
予備加熱定着されたインク受容性粒子層16Aに、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色毎のインクジェット記録ヘッド20K、20C、20M、20Yから、画像データに基づき、各色のインク滴20A(図9参照)が吐出されインク画像が形成される。(図10(C)参照)。なお、以降、各色を区別する必要があるときは、符号の後にY,M,C,Kを付すが、特に、区別する必要がない場合は、Y,M,C,Kを省略する。
【0286】
インク滴20Aの吐出によってインク画像が形成されたインク受容性粒子層16Aは、定着装置23が圧力及び熱を加えることにより記録媒体8上に定着する。
【0287】
なお、静電記録ヘッド70及びインクジェット記録ヘッド20は、記録媒体8の幅以上あるライン型記録ヘッド、所謂FWA(Full Width Array)方式の記録ヘッドである。
【0288】
次に、各構成要素と画像形成のプロセスについての詳細を説明する。
【0289】
無端ベルト状の搬送ベルト13で、記録媒体8を搬送している。本実施形態では、搬送ベルト13に記録媒体8を吸着した状態で搬送している。
【0290】
ここで、搬送ベルト13に記録媒体8を吸着させる方法の一例としては、例えば、搬送ベルト13に孔(図示せず)を設け、この孔から吸引して吸着させる吸引機構が挙げられる。その他、記録媒体8を搬送ベルト13に吸着させる方法は、例えば、粘着力で吸着させる方式であってもよく、搬送ベルト13に記録媒体8を静電吸着させる方式であってもよい。
【0291】
そして、搬送方向の上流側には、搬送ベルト13に搬送されている記録媒体8に静電潜像を形成する静電記録ヘッド70が、記録媒体8の上方に間隔を持って配置されている。
【0292】
静電記録ヘッド70は、平面矩形状の絶縁基板72の表面に、複数の駆動電極74が互いに平行に設けられていると共に、その裏面にこれらの駆動電極74と交差するようにして複数の制御電極76が設けられている。なお、駆動電極74と制御電極76とでマトリックス(格子)が形成されている。また、制御電極76には、駆動電極74と交差する位置に円形の開口部76Aが形成されている。そして、制御電極76の下面には、絶縁基板71を介してスクリーン電極78が設けられている。これらの絶縁基板71及びスクリーン電極78には、制御電極76の開口部76Aと対応した位置に、空間81とイオン導出用開口部80が形成されている。
【0293】
交流電源82によって駆動電極74とスクリーン電極78との間に高周波高電圧が印加されるようになっている。一方、制御電極76にはイオン制御電源84により画像情報に応じたパルス電圧印加されるようになっている。更に、スクリーン電極78には直流電源86により直流電圧が、印加されるようになっている。
【0294】
そして、このように絶縁された駆動電極74と制御電極76との間に交番電界を与えることにより、空間81において沿面コロナ放電を誘発させ、この沿面コロナ放電によって発生したイオンを、制御電極76とスクリーン電極78との間に形成される電界によって加速もしくは吸収して、イオン導出用開口部80からのイオン流の放出を制御し、画像信号(インク画像)に応じたイオン(本実施形態ではプラスイオン)により、記録媒体8の表面に静電潜像(図10(A)参照)の形成を行うようになっている。
【0295】
静電潜像の電位は、次工程で、粒子供給装置18のマグロール18A及びキャリア17を通じて電荷注入されて帯電されたインク受容性粒子16と記録媒体8に形成された静電潜像とで形成する電界による静電力により、インク受容性粒子16が記録媒体8に供給/吸着可能な電位であれば良い。
【0296】
なお、この静電記録ヘッド70は、静電潜像を形成する領域を選択できる。よって、記録媒体8の表面に形成する静電潜像は、インク画像が形成される領域としている。例えば、形成画像が文字「あ」の場合は、図10(A)に概念的に示すようになる。
【0297】
表面に静電潜像が形成されている記録媒体8は、粒子供給装置18に送られ、静電潜像を顕像化し、静電潜像に対応したインク受容性粒子層16Aを形成する。(図10(B)参照)。これにより、画像信号に基づいて形成される、インク画像の領域に記録媒体8上にインク受容性粒子層16Aが形成される(非画像部領域には殆どインク受容性粒子層16Aが形成されない)。
【0298】
次に、画像形成のプロセスについての説明に戻る。
【0299】
図10(A)に示すように、つぎに、記録媒体8に形成されたインク受容性粒子層16Aを予備定着装置150によって、予備定着する。
【0300】
記録媒体8上に形成されたインク受容性粒子層16Aは静電力で、記録媒体8上に固定されている。よって、このまま次工程でインクジェット記録ヘッド20からインク滴20Aをインク受容性粒子層16Aに打ち込むと、インク量によっては、インク受容性粒子層16Aが乱れる場合がある。このため、事前にインク受容性粒子層16Aを予備定着することで、インク受容性粒子16を記録媒体8の表面に仮固定しておく。
【0301】
なお、予備定着によって、インク滴20Aの打ち込みによってインク受容性粒子16が飛散し、インクジェット記録ヘッド20のノズル面20Bが汚染することも防止される。
【0302】
予備定着装置150での予備加熱は、最終的な定着装置23における定着用の加熱よりも低温である。すなわち、予備定着装置150での予備定着は、インク受容性粒子16中の樹脂粒子を完全に溶融させて圧力により定着するのではなく、粒子間の空隙を残して、粒子間及び粒子と記録媒体表面とを結着させる程度でよい。このことにより、インク滴20Aが受容可能な程度に予備定着される。
【0303】
また、予備定着装置150は、電子写真方式の画像形成装置に用いる一般的な加熱定着器(フューザー)を応用することが可能である。更に、電子写真方式の画像形成装置に用いる加熱定着器の他に、ヒーター加熱方法、オーブン方式、電磁誘導加熱方式等も使用できる。
【0304】
次に、インク受容性粒子層16Aが予備定着された記録媒体8は、インクジェット記録ヘッド20の下方に搬送される。
【0305】
そして、画像データに基づき、インクジェット記録ヘッド20からインク滴20Aが吐出され、記録媒体8の表面に形成されたインク受容性粒子層16Aに打ち込まれ、インク画像が形成される。(図10(C))。この際、インクは、インク受容性粒子16により受容される。
【0306】
なお、高速で画像を書き込むためには、本実施形態のような記録媒体幅以上あるライン型インクジェット記録ヘッドが望ましいが、スキャン型のインクジェット記録ヘッドを用いて、順次画像を形成しても良い。また、インクジェット記録ヘッド20のインク吐出手段は、圧電素子駆動型、発熱素子駆動型等、インク吐出可能な手段であれば制限はない。
【0307】
次に、記録媒体8は、搬送ベルト13から剥離し、定着装置23に送られ、インク受容性粒子層16Aに、圧力と熱を加えることで、記録媒体8上にインク受容性粒子層16Aが定着する。
【0308】
定着装置23は加熱源を内蔵する加熱ロール23Aと対向する加圧ロール23Bとから構成され、加熱ロール23A及び加圧ロール23Bは接して接触部を形成する。加熱ロール23A及び加圧ロール23Bには、例えば、アルミコアの外表面にシリコーンゴムを被覆し、更にその上をPFAチューブにて被覆されたものを使用している。なお、電子写真方式の画像形成装置に用いる定着装置(フューザー)と略同様の構成である。更に、上記電子写真方式の画像形成装置に用いる加熱定着器の他に、ヒーター加熱方法、オーブン方式、電磁誘導加熱方式等も使用できる。
【0309】
記録媒体8が加熱ロール23Aと加圧ロール23Bとの接触部を通過する際に、インク受容性粒子層16Aが加熱され、かつ圧力が加わり、記録媒体8にインク受容性粒子層16Aが定着する。なお、加熱と加圧の両方を用いる方法でなく、加熱のみ、又は加圧のみを用いる方法であっても良い。しかし、望ましくは加熱と加圧とを同時に行う方式が良い。
【0310】
以上の工程を経て、画像形成が終了し、記録媒体8は装置外に排出される。
【0311】
以上説明した他の実施形態に係る記録装置11では、搬送ベルト13により記録媒体8を搬送しつつ、静電記録ヘッド70により静電潜像を形成し、当該静電潜像に粒子供給装置18よりインク受容性粒子16を供給させ粒子層を形成する。そして、インクジェット記録ヘッド20により粒子層上にインク滴を吐出し画像を形成する。これによりインク受容性粒子16にインクを受容させる。次に、記録媒体8を搬送ベルト13から剥離させた後、定着装置23により圧力及び熱を加えることにより記録媒体8上にインク受容性粒子層が定着される。なお、上記説明した以外は、上記実施形態に係る記録装置と同様であるため、説明を省略する。
【0312】
以上、実施形態においては、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクジェット記録ヘッド20から画像データに基づいて選択的にインク滴20Aが吐出されてフルカラーの画像が記録媒体8に記録されるようになっているが、本実施形態は記録媒体上への文字や画像の記録に限定されるものではない。すなわち、工業的に用いられる液滴吐出(噴射)装置全般に対して、本実施形態の記録装置を適用することができる。
【実施例】
【0313】
以下、本実施形態を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本実施形態を制限するものではない。
【0314】
−ブロックポリマーAの作製−
<重合>
窒素ガス雰囲気下において、反応槽に下記材料を加え、加温しながら撹拌した。
・トルエン 200ml
・スチレン 100mmol
・n−ブチルリチウム溶液 1.5ml
このときガスクロマトグラフィー(GPC)で重合反応をモニタリングし、所望の分子量となった時点で加温を終了した。
【0315】
次いで、冷却後、ガスクロマトグラフィー(GPC)で重合反応をモニタリングしながら、100mmolのアクリル酸ブチルを加えて攪拌し、所望の分子量となった時点で加熱を終了した。
【0316】
<反応停止>
2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを5質量%含むメタノール液を加えて、重合反応を停止させた。
【0317】
<保護基の脱離>
得られた重合体をトルエンに溶解させ、適当量のトルエンスルホン酸を加え、12時間加熱した。その後、重合体を洗浄し乾燥させ、スチレン−アクリル酸のブロックポリマーAを得た。ブロックポリマーAの重量平均分子量Mwは、1500であった。
【0318】
−ブロックポリマーB〜Iの作製−
ブロックポリマーAの作製と同様にして、但し下記表1に示す原料に変えて、ブロックポリマーB〜Iを作製した。
【0319】
【表1】

【0320】
上記表1中、「−」は原料として使用していないことを意味する。
【0321】
−粒子Aの作製−
・スチレン/n−ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(極性単量体比率50mol%) 100質量部
・水酸化ナトリウム 10.2質量部
・イオン交換水 1000質量部
上記材料を混合し、加熱しながら攪拌し、親水性有機樹脂用のエマルジョン液−A1を調製した。
【0322】
・スチレン/n−ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(極性単量体比率4.5mol%) 50質量部
・ブロックポリマーA 5質量部
・イオン交換水 500質量部
上記材料を混合した液に超音波振動を付与して、疎水性有機樹脂用のエマルション液−A2を調製した。
【0323】
上記2種類のエマルション液−A1及び−A2を混合撹拌し、次いでSpray−Dry機(NL−5/大川原化工機社製)を用いて粒子化した。更に、この粒子を気流式分級機で分級した。
【0324】
分級後の粒子100質量部に対して、
・非晶質シリカ(Aerosil A130 / Degussa社) 0.5質量部
・非晶質シリカ(Aerosil RX200 / Degussa社) 0.5質量部
を攪拌混合し、複合体粒子であるインク受容性粒子Aを得た。
【0325】
インク受容性粒子Aの球換算平均粒径を、乾式粒度分布計(Microtrac MT3200 / 日機装社製)によって測定したところ、8μmであった。
また、インク受容性粒子Aにおける、親水性有機樹脂粒子及び疎水性有機樹脂粒子の粒子径は、上述した透過型電子顕微鏡を用いた測定/解析法によって行った。によって測定したところ、それぞれ0.2μm、0.05μmであり、粒子径の比率は、4:1であった。結果を下記表2に示す。
【0326】
−粒子Bの作製−
・スチレン/n−ブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(極性単量体比率33mol%) 100質量部
・水酸化ナトリウム 9.3質量部
・イオン交換水 1000質量部
上記材料を混合し、加熱しながら攪拌し、親水性有機樹脂用のエマルジョン液−B1を調製した。次いで、エバポレーターで水を除去し、固形分B1を得た。
【0327】
・スチレン/n−ブチルアクリレート/n−ブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(極性単量体比率0.5mol%) 33質量部
・ブロックポリマーB 12.5質量部
・固形分B1 5質量部
上記材料をヘンシェルミキサーにて混合撹拌し、混練材料とした。次いで、エクストルーダーに投入し、溶融混練した。得られた混練物を冷却した後、ジェットミルを用いて粉砕した。これを気流分級機にて分級した。
【0328】
分級後の粒子100質量部に対して、
・非晶質シリカ(Aerosil A130 / Degussa社) 0.25質量部
・非晶質シリカ(Aerosil RX200 / Degussa社) 0.75質量部
を攪拌混合し、1次粒子であるインク受容性粒子Bを得た。
【0329】
得られたインク受容性粒子Bの球換算平均粒径は、6μmであった。
また、インク受容性粒子B中における疎水性有機樹脂の粒径を上述した透過型電子顕微鏡を用いた測定/解析法によって測定したところ、0.1μmであった。
【0330】
−粒子Cの作製−
・スチレン/n−ブチルメタクリレート/マレイン酸共重合体(極性単量体比率25mol%) 100質量部
・スチレン/n−ブチルメタクリレート/マレイン酸共重合体(極性単量体比率2.5mol%) 45質量部
・水酸化ナトリウム 7.0質量部
・ブロックポリマーC 2質量部
・イオン交換水 1500質量部
上記材料を混合した液に超音波振動を付与して、エマルジョン液を調製した。
【0331】
上記エマルション液を撹拌し、次いでSpray−Dry機(NL−5/大川原化工機社製)を用いて粒子化した。更に、この粒子を気流式分級機で分級した。
【0332】
分級後の粒子100質量部に対して、
・非晶質シリカ(Aerosil A130 / Degussa社) 0.5質量部
・非晶質シリカ(Aerosil RX200 / Degussa社) 0.5質量部
を攪拌混合し、複合体粒子であるインク受容性粒子Cを得た。
得られたインク受容性粒子Cの球換算平均粒径は、7μmであった。
また、インク受容性粒子Cにおける親水性有機樹脂粒子及び疎水性有機樹脂粒子の粒子径はそれぞれ0.15μm、0.10μmであった。
【0333】
−粒子Dの作製−
・スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/アクリル酸共重合体(極性単量体比率50mol%) 100質量部
・水酸化ナトリウム 12.2質量部
・イオン交換水 1000質量部
上記材料を混合し、加熱しながら攪拌し、親水性有機樹脂用のエマルジョン液−D1を調製した。
【0334】
・スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/アクリル酸共重合体(極性単量体比率7mol%) 30質量部
・ブロックポリマーD 3質量部
・イオン交換水 300質量部
上記材料を混合した液に超音波振動を付与して、疎水性有機樹脂用のエマルション液−D2を調製した。
【0335】
上記2種類のエマルション液−D1及び−D2を混合撹拌し、次いでSpray−Dry機(NL−5/大川原化工機社製)を用いて粒子化した。更に、この粒子を気流式分級機で分級した。
【0336】
分級後の粒子100質量部に対して、
・非晶質シリカ(Aerosil A130 / Degussa社) 0.25質量部
・非晶質シリカ(Aerosil RX200 / Degussa社) 0.75質量部
を攪拌混合し、複合体粒子であるインク受容性粒子Dを得た。
【0337】
インク受容性粒子Dの球換算平均粒径は、5μmであった。
また、インク受容性粒子Dにおける親水性有機樹脂粒子及び疎水性有機樹脂粒子の粒子径はそれぞれ0.32μm、0.04μmであった。
【0338】
−粒子Eの作製−
・スチレン/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体(極性単量体比率17.5mol%) 100質量部
・水酸化ナトリウム 5.8質量部
・イオン交換水 1000質量部
上記材料を混合し、加熱しながら攪拌し、親水性有機樹脂用のエマルジョン液−E1を調製した。
【0339】
・スチレン/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体(極性単量体比率1.5mol%) 10質量部
・ブロックポリマーE 4質量部
・イオン交換水 100質量部
上記材料を混合した液に超音波振動を付与して、疎水性有機樹脂用のエマルション液−E2を調製した。
【0340】
上記2種類のエマルション液−E1及び−E2を混合撹拌し、次いでSpray−Dry機(NL−5/大川原化工機社製)を用いて粒子化した。更に、この粒子を気流式分級機で分級した。
【0341】
分級後の粒子100質量部に対して、
・非晶質シリカ(Aerosil A130 / Degussa社) 0.5質量部
・非晶質シリカ(Aerosil RX200 / Degussa社) 0.5質量部
を攪拌混合し、複合体粒子であるインク受容性粒子Eを得た。
【0342】
インク受容性粒子Eの球換算平均粒径は、5.5μmであった。
また、インク受容性粒子Eにおける親水性有機樹脂粒子及び疎水性有機樹脂粒子の粒子径はそれぞれ0.11μm、0.10μmであった。
【0343】
−粒子Fの作製−
・スチレン/n−ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(極性単量体比率35mol%) 100質量部
・水酸化ナトリウム 11.3質量部
・イオン交換水 1000質量部
上記材料を混合し、加熱しながら攪拌し、親水性有機樹脂用のエマルジョン液−F1を調製した。
【0344】
・スチレン/n−ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(極性単量体比率2.5mol%) 25質量部
・ブロックポリマーF 7.5質量部
・イオン交換水 250質量部
上記材料を混合した液に超音波振動を付与して、疎水性有機樹脂用のエマルション液−F2を調製した。
【0345】
上記2種類のエマルション液−F1及び−F2を混合撹拌し、次いでSpray−Dry機(NL−5/大川原化工機社製)を用いて粒子化した。更に、この粒子を気流式分級機で分級した。
【0346】
分級後の粒子100質量部に対して、
・非晶質シリカ(Aerosil A130 / Degussa社) 0.25質量部
・非晶質シリカ(Aerosil RX200 / Degussa社) 0.75質量部
を攪拌混合し、複合体粒子であるインク受容性粒子Fを得た。
【0347】
インク受容性粒子Fの球換算平均粒径は、6μmであった。
また、インク受容性粒子Fにおける親水性有機樹脂粒子及び疎水性有機樹脂粒子の粒子径はそれぞれ0.13μm、0.06μmであった。
【0348】
−粒子Gの作製−
・スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/アクリル酸共重合体(極性単量体比率60mol%) 100質量部
・水酸化ナトリウム 7.6質量部
・イオン交換水 1000質量部
上記材料を混合し、加熱しながら攪拌し、親水性有機樹脂用のエマルジョン液−G1を調製した。
【0349】
・スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸共重合体(極性単量体比率8mol%) 25質量部
・ブロックポリマーG 2.5質量部
・イオン交換水 250質量部
上記材料を混合した液に超音波振動を付与して、疎水性有機樹脂用のエマルション液−G2を調製した。
【0350】
上記2種類のエマルション液−G1及び−G2を混合撹拌し、次いでSpray−Dry機(NL−5/大川原化工機社製)を用いて粒子化した。更に、この粒子を気流式分級機で分級した。
【0351】
分級後の粒子100質量部に対して、
・非晶質シリカ(Aerosil A130 / Degussa社) 0.5質量部
・非晶質シリカ(Aerosil RX200 / Degussa社) 0.5質量部
を攪拌混合し、複合体粒子であるインク受容性粒子Gを得た。
【0352】
インク受容性粒子Gの球換算平均粒径は、7μmであった。
また、インク受容性粒子Gにおける親水性有機樹脂粒子及び疎水性有機樹脂粒子の粒子径はそれぞれ0.068μm、0.04μmであった。
【0353】
−粒子Hの作製−
・スチレン/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体(極性単量体比率12.5mol%) 100質量部
・水酸化ナトリウム 4.3質量部
・イオン交換水 1000質量部
上記材料を混合し、加熱しながら攪拌し、親水性有機樹脂用のエマルジョン液−H1を調製した。
【0354】
・スチレン/n−ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(極性単量体比率1mol%) 15質量部
・ブロックポリマーH 0.15質量部
・イオン交換水 150質量部
上記材料を混合した液に超音波振動を付与して、疎水性有機樹脂用のエマルション液−H2を調製した。
【0355】
上記2種類のエマルション液−H1及び−H2を混合撹拌し、次いでSpray−Dry機(NL−5/大川原化工機社製)を用いて粒子化した。更に、この粒子を気流式分級機で分級した。
【0356】
分級後の粒子100質量部に対して、
・非晶質シリカ(Aerosil A130 / Degussa社) 0.25質量部
・非晶質シリカ(Aerosil RX200 / Degussa社) 0.75質量部
を攪拌混合し、複合体粒子であるインク受容性粒子Hを得た。
【0357】
インク受容性粒子Hの球換算平均粒径は、8μmであった。
また、インク受容性粒子Hにおける親水性有機樹脂粒子及び疎水性有機樹脂粒子の粒子径はそれぞれ0.3μm、0.06μmであった。
【0358】
−粒子Iの作製−
・スチレン/n−ブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(極性単量体比率80mol%) 100質量部
・水酸化ナトリウム 5.2質量部
・イオン交換水 1000質量部
上記材料を混合し、加熱しながら攪拌し、親水性有機樹脂用のエマルジョン液−I1を調製した。
【0359】
・スチレン/n−ブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(極性単量体比率9mol%) 20質量部
・ブロックポリマーI 5質量部
・イオン交換水 200質量部
上記材料を混合した液に超音波振動を付与して、疎水性有機樹脂用のエマルション液−I2を調製した。
【0360】
上記2種類のエマルション液−I1及び−I2を混合撹拌し、次いでSpray−Dry機(NL−5/大川原化工機社製)を用いて粒子化した。更に、この粒子を気流式分級機で分級した。
【0361】
分級後の粒子100質量部に対して、
・非晶質シリカ(Aerosil A130 / Degussa社) 0.5質量部
・非晶質シリカ(Aerosil RX200 / Degussa社) 0.5質量部
を攪拌混合し、複合体粒子であるインク受容性粒子Iを得た。
【0362】
インク受容性粒子Iの球換算平均粒径は、7.5μmであった。
また、インク受容性粒子Iにおける親水性有機樹脂粒子及び疎水性有機樹脂粒子の粒子径はそれぞれ0.17μm、0.06μmであった。
【0363】
−粒子Jの作製−
・スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/アクリル酸共重合体(極性単量体比率30mol%) 100質量部
・水酸化ナトリウム 6.4質量部
・イオン交換水 1000質量部
上記材料を混合し、加熱しながら攪拌し、親水性有機樹脂用のエマルジョン液−J1を調製した。
【0364】
・スチレン/n−ブチルアクリレート/n−ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(極性単量体比率10mol%) 20質量部
・イオン交換水 200質量部
上記材料を混合した液に超音波振動を付与して、疎水性有機樹脂用のエマルション液−J2を調製した。
【0365】
上記2種類のエマルション液−J1及び−J2を混合撹拌し、次いでSpray−Dry機(NL−5/大川原化工機社製)を用いて粒子化した。更に、この粒子を気流式分級機で分級した。
【0366】
分級後の粒子100質量部に対して、
・非晶質シリカ(Aerosil A130 / Degussa社) 0.5質量部
・非晶質シリカ(Aerosil RX200 / Degussa社) 0.5質量部
を攪拌混合し、複合体粒子であるインク受容性粒子Jを得た。
【0367】
インク受容性粒子Jの球換算平均粒径は、5μmであった。
また、インク受容性粒子Jにおける親水性有機樹脂粒子及び疎水性有機樹脂粒子の粒子径はそれぞれ0.22μm、0.12μmであった。
【0368】
−粒子Kの作製−
・スチレン/n−ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(極性単量体比率40mol%) 100質量部
・水酸化ナトリウム 7.6質量部
・イオン交換水 1000質量部
上記材料を混合し、加熱しながら攪拌し、親水性有機樹脂用のエマルジョン液−K1を調製した。
【0369】
・スチレン/n−ブチルアクリレート/n−ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(極性単量体比率10mol%) 15質量部
・ブロックポリマーC 1.5質量部
・イオン交換水 150質量部
上記材料を混合した液に超音波振動を付与して、疎水性有機樹脂用のエマルション液−K2を調製した。
【0370】
上記2種類のエマルション液−K1及び−K2を混合撹拌し、次いでSpray−Dry機(NL−5/大川原化工機社製)を用いて粒子化した。更に、この粒子を気流式分級機で分級した。
【0371】
分級後の粒子100質量部に対して、
・非晶質シリカ(Aerosil A130 / Degussa社) 0.5質量部
・非晶質シリカ(Aerosil RX200 / Degussa社) 0.5質量部
を攪拌混合し、複合体粒子であるインク受容性粒子Kを得た。
【0372】
インク受容性粒子Kの球換算平均粒径は、5.5μmであった。
また、インク受容性粒子Kにおける親水性有機樹脂粒子及び疎水性有機樹脂粒子の粒子径はそれぞれ0.22μm、0.06μmであった。
【0373】
−粒子Lの作製−
上記粒子Aの作製においてブロックポリマーAを添加しなかった以外は粒子Aの作製と同様にして、粒子Lを作製した。
【0374】
以上作製した粒子A〜Lの特徴を表2にまとめて示す。
【0375】
【表2】

【0376】
表2中の略語は以下を意味する。
AA:アクリル酸、MAA:メタクリル酸、MA:マレイン酸、St:スチレン、n−BMA:n−ブチルメタクリレート、2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート、n−BA:n−ブチルアクリレート
【0377】
−インクAの調製−
下記インク成分を混合し、攪拌した後、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクAを調製した。
【0378】
(インク成分)
・Cabojet 300 (キャボット社製) 4.5質量部
・ジエチレングリコール 15質量部
・グリセリン 15質量部
・サーフィノール465 (日信化学社製) 1質量部
・イオン交換水 64.5質量部
【0379】
得られたインクAは、表面張力=30mN/m、粘度=3.0mPa・s、pH=8.2であった。
【0380】
−インクBの調製−
下記インク成分を混合し、攪拌した後、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクBを調製した。
【0381】
(インク成分)
・Cabojet 250 (キャボット社製) 4質量部
・ジエチレングリコール 15質量部
・グリセリン 15質量部
・サーフィノール465 (日信化学社製) 1.5質量部
・イオン交換水 64.5質量部
【0382】
得られたインクBは、表面張力=30mN/m、粘度=3.1mPa・s、pH=7.8であった。
【0383】
−インクCの調製−
下記インク成分を混合し、攪拌した後、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクCを調製した。
【0384】
(インク成分)
・Cabojet 260 (キャボット社製) 4質量部
・ジエチレングリコール 15質量部
・グリセリン 15質量部
・サーフィノール465 (日信化学社製) 1.5質量部
・イオン交換水 64.5質量部
【0385】
得られたインクCは、表面張力=30mN/m、粘度=3.2mPa・s、pH=7.6であった。
【0386】
−インクDの調製−
下記インク成分を混合し、攪拌した後、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクDを調製した。
【0387】
(インク成分)
・Cabojet 270 (キャボット社製) 4質量部
・ジエチレングリコール 15質量部
・グリセリン 15質量部
・サーフィノール465 (日信化学社製) 1.5質量部
・イオン交換水 64.5質量部
【0388】
得られたインクDは、表面張力=31mN/m、粘度=3.0mPa・s、pH=8.1であった。
【0389】
[実施例1〜9、比較例1〜3]
上記各粒子をインク受容性粒子として利用し、上記インクA〜Dのいずれかを下記表3の組み合わせで用いて以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0390】
<評価>
−帯電性(粒子層均一性)−
上記インク受容性粒子A〜Lのいずれかと、導電性磁性キャリア(フェライトコア、導電樹脂コート、体積抵抗値1×1011Ω・m、平均粒子径50μm)と混合して二成分現像剤(混合比:インク受容性粒子/キャリア=8/92)を調整した。そして、この現像剤を試作の粒子供給装置に充填し、12時間攪拌した。この混合・攪拌により、マグロール及びキャリアを通じて、インク受容性粒子に電荷を注入し、負に帯電させた。
そして、所定の表面電位(500V)によって正に帯電させた中間転写体に、負に帯電したインク受容性粒子を対峙させて、インク受容性粒子を中間転写体上に供給した。このとき、インク受容性粒子の中間転写体上への供給量は粒子の種類によって異なっていたが、5g/m以上12g/mの範囲であった。
このときの中間転写体上の散布した粒子の状態によって、帯電性を評価した。評価基準は以下の通りである。
【0391】
◎:顕微鏡で観察したとき中間転写体上にムラなく粒子が散布できている。
○:目視で観察したときに中間転写体上にムラなく散布できている。
×:ムラはあるが散布できる。
【0392】
−光学濃度−
帯電性(粒子層均一性)の評価方法と同様にして、中間転写体上にインク受容性粒子を散布した。このとき、インク受容性粒子の中間転写体上への供給量は粒子の種類によって異なっていたが、5g/m以上12g/mの範囲であった。
【0393】
そして、供給されたインク受容性粒子の層上に、ピエゾ型インクジェット装置(試作機/富士ゼロックス社製)の記録ヘッドから1200×1200dpi(dpi:1インチ当たりのドット数)の画像面積率で2pLのインクを付与し、線画像を形成した。
記録媒体としてのOK金藤(王子製紙社製)と中間転写体上で画像が形成されたインク受容性粒子層とを3×10Paで圧接し、90℃×1分間記録媒体を加熱して定着を行った。このようにして得られた画像部分の光学濃度をエックスライト404(エックスライト社製)によって測定した。評価基準は以下の通りである。
【0394】
◎:光学濃度が1.45以上
○:光学濃度が1.4以上1.45未満
△:光学濃度が1.3以上1.4未満
×:光学濃度が1.3未満
【0395】
−乾燥時間(吸液速度)−
帯電性(粒子層均一性)の評価方法と同様にして、中間転写体上にインク受容性粒子を散布した。このとき、インク受容性粒子の中間転写体上への供給量は粒子の種類によって異なっていたが、5g/m以上12g/mの範囲であった。
そして、供給されたインク受容性粒子の層上に対し、ピエゾ型インクジェット装置(試作機/富士ゼロックス社製)の記録ヘッドから4.5g/mとなるようにインクを付与し、100%カバレッジパターンを形成した。
形成された画像部分に普通紙(C2紙:富士ゼロックス株式会社製)を2×10Paの荷重で押し当て、普通紙側にインクが転写されなくなるまでの時間を測定した。評価基準は以下の通りである。
【0396】
◎:乾燥時間が0.5秒未満
○:乾燥時間が0.5秒以上1秒未満
△:乾燥時間が1秒以上3秒未満
×:乾燥時間が3秒以上
【0397】
−滲み−
上記光学濃度の評価における画像形成方法と同様にして、但し、1dotラインパターンを形成して画像を形成した。ラインの滲み具合を予め定めた限度見本を参照し、官能評価を行った。評価基準は以下の通りである。
◎:拡大画像(25倍)として画像部分を確認しても、滲みが確認されない。
○:拡大画像(25倍)として画像部分を確認した場合、滲みを確認することが可能だが、目視では判別不能であり、許容範囲内である。
△:目視において画像部に滲みが認識されるが、許容範囲内である。
×:目視において画像部に滲みが認識され、その程度が激しく、許容範囲外である。
【0398】
【表3】

【0399】
表3に示すように、本実施例1〜9は、比較例1〜3に比べ、良好な結果であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0400】
【図1】実施形態に係るインク受容性粒子の一例を示す概念図である。
【図2】実施形態に係るインク受容性粒子の他の一例を示す概念図である。
【図3】実施形態に係るインク受容性粒子収納カートリッジを示す斜視図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【図6】実施形態に係る記録装置の主要部を示す構成図である。
【図7】実施形態に係るインク受容性粒子層を示す構成図である。
【図8】他の実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【図9】他の実施形態に係る記録装置の主要部を示す構成図である。
【図10】他の実施形態に係る記録装置において、画像が形成される工程を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0401】
10 記録装置
11 記録装置
12 中間転写体
13 搬送ベルト
14 離型剤供給装置
14A 離型層
14B ブレード
14C 供給ローラ
14D 離型剤
16 インク受容性粒子
16A インク受容性粒子層
16B 画像層
16D 残留粒子
17 キャリア
18 インク受容性粒子供給装置
18Aマグロール
18B 規制部材
19 インク受容性粒子収納カートリッジ
19A 供給管
20 インクジェット記録ヘッド
20A インク滴
20B ノズル面
22 転写定着装置
22A 加熱ロール
22B 加圧ロール
23 定着装置
23A 加熱ロール
23B 加圧ロール
24 クリーニング装置
28 帯電装置
29 除電装置
31 従動ロール
50 インク受容性粒子収納カートリッジ
51 粒子収納カートリッジ本体
52 側壁部
54 側壁部
56 帯部
58 格納部
60 搬出口
64 カップリング部
66 連結部
68 アジテーター
100、110 インク受容性粒子
101、111 親水性有機樹脂
102、112 疎水性有機樹脂
103、113 ブロック共重合体
104、114 無機粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性有機樹脂と、
疎水性有機樹脂と、
極性単量体に由来する構造単位と非極性単量体に由来する構造単位とを有するブロック共重合体と、を含有し、
前記ブロック共重合体の極性単量体の溶解度パラメータ(SP値)と、前記親水性有機樹脂を構成する極性単量体の溶解度パラメータ(SP値)との差の絶対値が2以下である、インクを受容するインク受容性粒子。
【請求項2】
前記ブロック共重合体における極性単量体が、前記親水性有機樹脂を構成する極性単量体と同一の化学構造を有する請求項1に記載のインク受容性粒子。
【請求項3】
インクと、
請求項1又は請求項2に記載のインク受容性粒子と、
を備えるインク記録用材料。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のインク受容性粒子を中間転写体上に供給する供給工程と、
前記中間転写体上に供給された前記インク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出工程と、
前記インク受容性粒子を記録媒体に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写された前記インク受容性粒子を定着する定着工程と、
を有する記録方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のインク受容性粒子を記録媒体上に供給する供給工程と、
前記記録媒体上に供給された前記インク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出工程と、
前記記録媒体上に供給された前記インク受容性粒子を定着する定着工程と、
を有する記録方法。
【請求項6】
中間転写体と、
請求項1又は請求項2に記載のインク受容性粒子を前記中間転写体上に供給する供給装置と、
前記中間転写体上に供給された前記インク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出装置と、
前記インク受容性粒子を記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体に転写された前記インク受容性粒子を定着する定着装置と、
を有する記録装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載のインク受容性粒子を記録媒体上に供給する供給装置と、
前記記録媒体上に供給された前記インク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出装置と、
前記記録媒体上に供給された前記インク受容性粒子を定着する定着装置と、
を有する記録装置。
【請求項8】
記録装置に脱着され、請求項1又は請求項2に記載のインク受容性粒子を収納するインク受容性粒子収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図10】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−105365(P2010−105365A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282447(P2008−282447)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】