説明

インク組成物及びその製造方法、インクセット、並びに画像形成方法

【課題】重合性化合物と顔料分散物を用いたインク組成物において、長期に亘り優れた吐出信頼性を有し、白抜けなどの故障のない画像の形成が可能なインク組成物を提供する。
【解決手段】水溶性分散剤が架橋剤により架橋された分散ポリマーで被覆された顔料と、水溶性の重合性化合物と、重合開始剤と、水とを含むインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物及びその製造方法、インクセット、並びに画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録技術の進歩により、写真やオフセット印刷の高精細画像向けに、インクジェット記録方法が用いられるようになってきており、高品質な記録が求められている。
【0003】
上記要求に対して液安定性、吐出性を向上させる技術として、ポリマーで被覆された顔料、樹脂微粒子、及び水溶性分散剤を含むインク組成物と該インク組成物の凝集を促進させる凝集促進剤を含む無色インク組成物を有するインクセットが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、印字にじみ、印字ムラを抑え、発色性に優れた高品質の印字が得られるとして、光重合開始剤を含む反応液と、アクリレートモノマー及びオリゴマーを含むインク組成物を付着させて、記録中若しくは記録後に、前記記録媒体を紫外線照射及び又は加熱するインクジェット記録方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−190379号公報
【特許文献2】特許第3642152号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂微粒子を含有し、その軟化温度以上で定着する方法では、含有されているポリマーや樹脂微粒子がバインダーとして機能し、定着性、耐水性を向上させることが認められるが、定着性がポリマーの熱特性に左右されることから、特に、高速記録時に十分な定着性が得られない場合がある。
こういった定着性不良は、印刷用紙の性質の違いによっても左右され、例えば、液体の浸透性が普通紙よりも劣る一般のオフセット印刷などに用いられる一般印刷用紙では、顔料がより表面にとどまることにより、高速で高品位の画像を記録することができないのが実情である。
【0006】
また、特許文献2の方法は、インク組成物の安定性が十分でなく、経時後の吐出信頼性や、画像を記録する場合において、打滴中に起こるミストの発生により、ヘッド近辺に複数の液が混合してできる凝集体が付着乾燥する等を原因とした吐出方向性不良が生じ、その凝集体は新たに吐出される液体によっては除去されず、付着した凝集体の除去性(すなわちメンテナンス性)も充分ではないため、記録された画像中に白抜け等の故障が発生する課題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、重合性化合物と顔料分散物を用いたインク組成物において、長期に亘り優れた吐出信頼性を有し、白抜けなどの故障のない画像の形成が可能なインク組成物及びその製造方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
更に、本発明は白抜けなどの故障のない優れた画像の形成が行えるインクセット及び画像形成方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
本発明における「メンテナンス」には、インクジェット記録用のインク組成物を吐出するインクジェットヘッド及びその吐出性能を所期の状態もしくはそれに近い状態に保ち、持続すること(保守)に加え、記録用ヘッドを洗浄(クリーニング)して、より良好な状態に整備、維持することが含まれる。メンテナンス液には、インク組成物を洗浄する洗浄液も含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 水溶性分散剤が架橋剤により架橋された分散ポリマーで被覆された顔料と、水溶性の重合性化合物と、重合開始剤と、水とを含むインク組成物である。
<2> 前記重合開始剤が光重合開始剤である前記<1>に記載のインク組成物である。
<3> 前記水溶性分散剤がカルボキシル基を有する前記<1>又は前記<2>に記載のインク組成物である。
<4> 前記重合性化合物が、(メタ)アクリルアミド基、マレイミド基、ビニルスルホン基及びN−ビニルアミド基から選択される重合性官能基を2以上含有し、1分子中の前記重合性官能基の含有数に対する分子量の比(分子量/重合性官能基数)が175以下である前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載のインク組成物である。
<5> 前記重合性官能基の少なくとも1つは、(メタ)アクリルアミド基である前記<4>に記載のインク組成物である。
<6> 前記水溶性分散剤の酸価が135〜200mgKOH/gである前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載のインク組成物である。
<7> 前記重合性化合物が(メタ)アクリルアミド基とノニオン性の親水性基とを有し、前記分子量/重合性官能基数の比が84〜165である前記<4>〜前記<6>のいずれか1つに記載のインク組成物である。
<8> 前記水溶性分散剤の含有量が、顔料に対して10〜200質量%である前記<1>〜前記<7>のいずれか1つに記載のインク組成物である。
<9> 前記架橋剤は、2官能以上のエポキシ化合物である前記<1>〜前記<8>のいずれか1つに記載のインク組成物である。
【0009】
<10> 前記<1>〜前記<9>のいずれか1つに記載のインク組成物と、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液と、を含むインクセットである。
<11> 前記凝集剤が、酸性化合物、多価金属塩、及びカチオン性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含む前記<10>に記載のインクセットである。
<12> 前記凝集剤が、2価以上の水溶性有機酸を含む前記<10>又は前記<11>に記載のインクセットである。
<13> 前記インク組成物のpHが8以上であり、処理液のpHが0.5〜4である前記<10>〜前記<12>のいずれか1つに記載のインクセットである。
【0010】
<14> 前記<10>〜前記<13>のいずれか1つに記載のインクセットが用いられ、前記インクセットにおけるインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与するインク付与工程と、前記インクセットにおける処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程と、を有する画像形成方法である。
<15> 水溶性分散剤を用いて顔料を分散した後に、架橋剤により前記水溶性分散剤を架橋し、前記顔料表面を架橋させた分散ポリマーで覆うことにより顔料分散物を作製する工程と、前記顔料分散物と、水溶性の重合性化合物と、重合開始剤と、水とを混合してインク組成物を作製する工程と、を含むインク組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、重合性化合物と顔料分散物を用いたインク組成物において、長期に亘り優れた吐出信頼性を有し、白抜けなどの故障のない画像の形成が可能なインク組成物及びその製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、白抜けなどの故障のない優れた画像の形成が行えるインクセット及び画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の画像形成方法に実施に用いるインクジェット記録装置の構成例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のインク組成物及びその製造方法、インクセット、並びに画像形成方法について詳細に説明する。
【0014】
<インク組成物>
本発明のインク組成物は、水溶性分散剤が架橋剤により架橋された分散ポリマーで被覆された顔料と、水溶性の重合性化合物と、重合開始剤と、水とを含んでなり、必要に応じて、更に分散剤や界面活性剤、その他の成分を用いて構成することができる。
【0015】
本発明のインク組成物は、重合性化合物と顔料分散物を用いることにより、長期に亘り分散安定性に優れ、その結果、インクジェット法によりインク組成物を吐出したときの吐出信頼性が優れたものとなる。更に、本発明のインク組成物を用いて形成された画像は、白抜けなどの故障のないものとなる。
【0016】
一方、従来の水系顔料インクや重合性化合物を含む従来の水系UVインクは安定性に劣り、特に、水系UVインクにおける経時安定性は必要十分なものではなかった。
これに対し、本発明のインク組成物は、特に、着色剤として水溶性分散剤が架橋剤により架橋された分散ポリマーで被覆された顔料を用いた構成を採用することにより、下記のようなメカニズムにより優れた効果を奏するものと推測している。
即ち、経時での分散ポリマーの脱離を防ぐことにより、優れた安定性を得えられたと推察している。
【0017】
(顔料)
本発明におけるインク組成物は、水溶性分散剤が架橋剤により架橋された分散ポリマーで被覆された顔料(以下、「水分散性顔料」ともいう。)の少なくとも1つを含有する。
【0018】
水溶性分散剤としてはポリビニル類、ポリウレタン類、ポリエステル類等が挙げられるが、その中でもポリビニル類が好ましい。
前記水溶性分散剤は、分子内に、架橋剤により架橋する基を有するものである。該架橋する基としては、特に限定されず、カルボキシル基又はその塩、イソシアナート基、エポキシ基等が挙げられるが、分散性向上の観点からカルボキシル基又はその塩を有していることが好ましい。
水溶性分散剤の合成方法としては、共重合成分としてカルボキシル基含有モノマーを用いて得られる共重合体であることが好ましい。カルボキシル基含有モノマーとしては、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、中でも、架橋性及び分散安定性の観点から、メタクリル酸やβ−カルボキシエチルアクリレートが好ましい。
【0019】
本発明において、前記水溶性分散剤の酸価(水溶性分散剤1gを中和するに必要なKOHのmg数)が、顔料の分散性、分散安定性の観点から、135〜250mgKOH/gであることが好ましく、135〜200mgKOH/gであることがより好ましく、135〜180mgKOH/gが特に好ましい。
【0020】
水溶性分散剤の重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、より好ましくは5,000〜50,000であり、更に好ましくは5,000〜40,000であり、特に好ましくは10,000〜40,000である。
【0021】
その他に、親水性モノマーや疎水性モノマーを共重合成分として使用出来る。親水性モノマーはイオン性でもノニオン性でも構わない。疎水性モノマーは特に限定しないが、炭素数1〜20のアルキルメタクリレートもしくは炭素数1〜20のアルキルアクリレートが好ましい。前記水溶性分散剤としてのポリマーは、ランダムポリマーでもブロックもしくはグラフトポリマーでも良い。
【0022】
前記水溶性分散剤としてのポリマーの合成方法は特に限定されないが、ビニルモノマーのランダム重合が分散安定性の点で好ましい。
【0023】
本発明における前記水溶性分散剤の使用量としては、顔料に対して、10質量%〜200質量%が好ましく、20質量%〜150質量%がより好ましく、30質量%〜100質量%が特に好ましい。
【0024】
前記架橋剤は、水溶性分散剤と反応する部位を2つ以上有している化合物が好ましい。中でも、カルボキシル基との反応性に優れている点から、好ましくは2つ以上のエポキシ部を有している化合物(2官能以上のエポキシ化合物)である。
具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられ、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルやジエチレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0025】
架橋剤の架橋部位と分散剤の被架橋部位のモル比は、架橋反応の速度、架橋後の分散液の安定性の観点から、1:1.1〜1:10が好ましく、1:1.1〜1:5がより好ましく、1:1.1〜1:3が最も好ましい。
【0026】
本発明における前記水分散性顔料の調製方法としては、前記顔料が水溶性分散剤を用いて顔料分散した後に架橋剤により架橋する工程を経る方法が好適である。以下に、水分散性顔料の調製方法の一例を示すが、これに限定されるものではない。
【0027】
(1)顔料及び水溶性分散剤を水又は極性溶媒の水溶液中に分散する顔料分散液を得る工程(顔料分散工程)。
(2)続いて、(1)で得られた分散液に架橋剤を加えて加熱して架橋反応させてポリマーで被覆された顔料(水分散性顔料)を得る工程(架橋反応工程)。
(3)上記で得られた架橋後の水分散性顔料を精製する工程(顔料精製工程)。
上記(1)〜(3)の工程を経て、前記水溶性顔料を調製できる。
上記の工程にはその他の公知の工程を必要に応じて適宜付加してもよい。上記工程等で用いる極性溶媒等は公知のものを適宜用いることができる。
【0028】
本発明における前記水分散性顔料において用いられる顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。
【0029】
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
【0030】
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
【0031】
黒色系のものとしては、カーボンブラックの具体例は、Raven7000,Raven5750,Raven5250,Raven5000 ULTRAII,Raven 3500,Raven2000,Raven1500,Raven1250,Raven1200,Raven1190 ULTRAII,Raven1170,Raven1255,Raven1080,Raven1060,Raven700(以上コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R,Regal330R,Regal660R,Mogul L,Black Pearls L,Monarch 700,Monarch 800,Monarch 880,Monarch 900,Monarch 1000,Monarch 1100,Monarch 1300,Monarch 1400(以上キャボット社製)、Color Black FW1, Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black 18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex35,Printex U,Printex V,Printex140U,Printex140V,Special Black 6,Special Black 5,Special Black 4A,Special Black4(以上デグッサ社製)、No.25,No.33,No.40,No.45,No.47,No.52,No.900,No.2200B,No.2300,MCF−88,MA600,MA7,MA8,MA100(以上三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明において使用可能な有機顔料としては、イエローインクの顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、14C、16、17、24、34、35、37、42、53、55、65、73、74、75、81、83、93、95、97、98、100、101、104、108、109、110、114、117、120、128、129、138、150、151、153、154、155、180等が挙げられる。
【0033】
また、マゼンタインクの顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、48(Ca)、48(Mn)、48:2、48:3、48:4、49、49:1、50、51、52、52:2、53:1、53、55、57(Ca)、57:1、60、60:1、63:1、63:2、64、64:1、81、83、87、88、89、90、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、163、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、209、219、269等、及びC.I.ピグメントバイオレット19が挙げられ、特に、C.I.ピグメントレッド122が好ましい。
【0034】
また、シアンインクの顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、16、17:1、22、25、56、60、C.I.バットブルー4、60、63等が挙げられ、特に、C.I.ピグメントブルー15:3が好ましい。
上記の顔料は、単独種で使用してもよく、また上記した各群内もしくは各群間より複数種選択してこれらを組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本発明における顔料の含有量は、全インク組成物に対して、発色性、粒状性、インク安定性、吐出信頼性の観点から、全インク組成物中、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
【0036】
本発明におけるインク組成物は、水溶性の重合性化合物の少なくとも1種を含有し、中でも、活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物が好ましい。この重合性化合物は、前記顔料と共に用い、処理液と接触して凝集するときには粒子間に取り込まれて、その後の重合硬化により画像を強化する。
【0037】
(水溶性重合性化合物)
本発明におけるインク組成物は、重合性基の少なくとも1種を有する水溶性重合性化合物の少なくとも1種を含有し、活性エネルギー線が照射されることにより重合する。
尚、ここでいう水溶性とは重合性化合物が、25℃において蒸留水に2質量%以上溶解することを意味するが、5質量%以上溶解することが好ましく、10質量%以上溶解することがより好ましく、20質量%以上溶解することがさらに好ましく、任意の割合で水と均一に混合することが特に好ましい。
【0038】
前記重合性基としては、活性エネルギー線によって重合可能な官能基であれば特に制限はなく、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基及びこれらの誘導体等を挙げることができる。これらの中でも、形成される画像の密着性の観点から、(メタ)アクリルエステル基、(メタ)アクリルアミド基、マレイミド基、ビニルスルホン基、及びN−ビニルアミド基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、(メタ)アクリルアミド基であることがより好ましい。
尚、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の少なくとも一方を意味する。
【0039】
前記水溶性重合性化合物が有する重合性基の数には特に制限はないが、形成される画像の密着性と耐ブロッキング性の観点から、2以上であることが好ましく、2以上6以下であることがより好ましく、2以上3以下であることがさらに好ましい。
前記水溶性重合性化合物が2以上の重合性基を有する場合、前記2以上の重合性基は同一であっても、互いに異なっていてもよい。
本発明においては、硬化感度と耐ブロッキング性の観点から、(メタ)アクリルアミド基、マレイミド基、及びビニルスルホン基からなる群から選択される2以上の重合性官能基を有することが好ましく、(メタ)アクリルアミド基を少なくとも1つ有することがより好ましく、(メタ)アクリルアミド基を2以上有することがさらに好ましい。
【0040】
前記水溶性重合性化合物は、重合性基に加えて親水性基の少なくとも1種をさらに有することが好ましい。前記親水性基としてはノニオン性基、アニオン性基、及びカチオン性基のいずれであってもよく、またベタインであってもよい。
前記親水性基として具体的には、オキシアルキレン基及びそのオリゴマー、ヒドロキシル基、アミド基、糖アルコール残基、ウレア基、イミノ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、チオール基、4級アンモニウム基等を挙げることができる。
【0041】
本発明において前記親水性基は、画像密着性、硬化感度、耐ブロッキング性の観点から、オキシアルキレン基及びそのオリゴマー、ヒドロキシル基、アミド基、糖アルコール残基、ウレア基、イミノ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、及びチオール基から選ばれることが好ましく、オキシアルキレン基及びそのオリゴマーならびにヒドロキシル基から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びこれらのオリゴマー(好ましくはn=1〜2)ならびにヒドロキシル基から選ばれる少なくとも1種であることがさらに好ましい。
【0042】
前記水溶性重合性化合物が2以上の重合性基を有し、さらに親水性基を含む場合、重合性官能基と親水性基の結合態様には特に制限はないが、硬化感度と耐ブロッキング性の観点から、2価以上の親水性基を介して2以上の重合性基が結合した態様であることが好ましい。
【0043】
前記2価以上の親水性基としては、以下の化合物群から選ばれる化合物から、2以上の水素原子又はヒドロキシル基が除去された残基を挙げることができる。
−化合物群−
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール,1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、チオグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びこれらの縮合体、低分子ポリビニルアルコール、又は糖類などのポリオール類。
エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンジアミンなどのポリアミン類。
ピリジン、イミダゾール、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンなどの飽和もしくは不飽和のヘテロ環類。
【0044】
また本発明における水溶性重合性化合物は、硬化感度と形成される画像の耐ブロッキング性の観点から、水溶性重合性化合物に含まれる重合性基の含有数に対する分子量の比、すなわち、水溶性重合性化合物の分子量を、1分子あたりの重合性基の含有数で除した値(重合性化合物の分子量/重合性基の含有数、以下、「A値」ということがある)が175以下であることが好ましく、165以下であることがより好ましい。また前記A値は、構造上の観点から、84以上であることが好ましい。
【0045】
本発明において前記水溶性重合性化合物は、硬化感度と耐ブロッキング性の観点から、(メタ)アクリルアミド基、マレイミド基、ビニルスルホン基、及びN−ビニルアミド基からなる群から選択される2以上の重合性官能基を有し、前記A値が84以上175以下であることが好ましく、(メタ)アクリルアミド基、マレイミド基、ビニルスルホン基、及びN−ビニルアミド基からなる群から選択される2以上の重合性官能基を有し、前記A値が84以上165以下であることがより好ましく、(メタ)アクリルアミド基を少なくとも2以上有する化合物であって、前記A値が84以上165以下であることが特に好ましい。
【0046】
さらに前記特定重合性化合物は、(メタ)アクリルアミド基、マレイミド基、ビニルスルホン基、及びN−ビニルアミド基からなる群から選択される2以上の重合性官能基と、ノニオン性親水性基とを有し、前記A値が84以上175以下であることが好ましく、(メタ)アクリルアミド基、マレイミド基、ビニルスルホン基、及びN−ビニルアミド基からなる群から選択される2以上の重合性官能基と、オキシアルキレン基及びそのオリゴマーならびにヒドロキシル基から選ばれる少なくとも1種のノニオン性親水性基とを有し、前記A値が84以上165以下であることがより好ましく、2以上の(メタ)アクリルアミド基と、オキシアルキレン基及びそのオリゴマーならびにヒドロキシル基から選ばれる少なくとも1種のノニオン性親水性基とを有し、前記A値が84以上165以下であることが特に好ましい。
【0047】
以下に、本発明における水溶性重合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0048】
【化1】



【0049】
【化2】



【0050】
【化3】



【0051】
【化4】



【0052】
【化5】



【0053】
【化6】



【0054】
本発明における水溶性重合性化合物としては、既述の水溶性重合性化合物に加えて以下の水溶性重合性化合物も好適に用いることができる。
【0055】
例えば、ノニオン性の重合性モノマーとして、(メタ)アクリルモノマー類などの重合性化合物を挙げることができる。前記(メタ)アクリルモノマー類としては、例えば、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールのグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールのエチレンオキシド付加化合物の(メタ)アクリル酸エステル、多塩基酸無水物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの反応物などの紫外線硬化型モノマー、オリゴマーが挙げられる。
前記多価アルコールは、エチレンオキシドの付加により内部にエチレンオキシド鎖で鎖延長されたものでもよい。
【0056】
以下、ノニオン性の重合性化合物の具体例(ノニオン性化合物1〜6)を示す。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0057】
【化7】



【0058】
また、多水酸基化合物から誘導される1分子中に2以上のアクリロイル基を有するアクリル酸エステル、も用いることができる。前記多水酸基化合物としては、例えば、グリコール類の縮合物、オリゴエーテル、オリゴエステル類等が挙げられる。
【0059】
更に、ノニオン性の重合性化合物としては、単糖類、2糖類などの2以上の水酸基を有するポリオールの(メタ)アクリル酸エステル又は;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリスヒドロキシアミノメタン、トリスヒドロキシアミノエタン等との(メタ)アクリル酸アミドも好適である。
【0060】
本発明における重合性化合物としては、上述の通り、2官能以上が好ましいが、擦過耐性を高め得る観点から、2官能〜6官能のモノマーが好ましく、溶解性と擦過耐性の両立の観点から、2官能〜4官能のモノマーが好ましい。
【0061】
重合性化合物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
重合性モノマーのインク組成物中における含有率としては、4〜30質量%であることが好ましく、10〜22質量%であることがより好ましい。
また重合性モノマーの顔料の固形分に対する含有率としては、顔料:重合性モノマー=1:1〜1:30が好ましく、1:3〜1:15がより好ましい。重合性モノマーの含有率は、顔料の1倍以上であると画像強度がより向上して画像の耐擦過性に優れ、30倍以下であるとパイルハイトの点で有利である。
【0062】
(開始剤)
本発明におけるインク組成物は、活性エネルギー線により前記重合性化合物の重合を開始する開始剤(以下、重合開始剤ともいう。)の少なくとも1種を含有する。開始剤は、1種単独で又は2種以上を混合して、あるいは増感剤と併用して使用することができる。
前記重合開始剤としては、公知の重合開始剤を特に制限なく使用することができる。本発明における重合開始剤としては、光重合開始剤を使用することが好ましい。
本発明で使用され得る好ましい光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
重合開始剤の具体例としては、例えば、加藤清視著「紫外線硬化システム」(株式会社総合技術センター発行:平成元年)の第65〜148頁に記載されている重合開始剤などを挙げることができる。
【0063】
本発明における重合開始剤としては、水不溶性の開始剤を水分散させたもの、水溶性の開始剤のいずれであっても使用可能であるが、水溶性の重合開始剤であることが好ましい。尚、重合開始剤における水溶性とは、25℃において蒸留水に0.5質量%以上溶解することを意味する。前記水溶性の重合開始剤は、25℃において蒸留水に1質量%以上溶解することが好ましく、3質量%以上溶解することがより好ましい。
【0064】
開始剤を含有する場合、インク組成物中における開始剤の含有量としては、重合性化合物に対して、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。開始剤の含有量は、1質量%以上であると画像の耐擦過性がより向上し、高速記録に有利であり、40質量%以下であると吐出安定性の点で有利である。
【0065】
前記増感剤としては、アミン系(脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピペリジンなど)、尿素(アリル系、o−トリルチオ尿素など)、イオウ化合物(ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩など)、ニトリル系化合物(N,N,ジ置換p−アミノベンゾニトリルなど)、リン化合物(トリn−ブチルホスフィン、ナトリウムジエチルジチオホスフィードなど)、窒素化合物(ミヒラーケトン、N−ニトロソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ1,3オキサジン化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドとジアミンの縮合物など)、塩素化合物(四塩化炭素、ヘキサクロロエタンなど)、エポキシ樹脂とアミンの反応生成物の高分子化アミン、トリエタノールアミントリアクリレート、等が挙げられる。
増感剤は、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0066】
(水溶性有機溶媒)
本発明におけるインク組成物は、水溶性有機溶媒の少なくとも1種を含有してもよい。水溶性有機溶媒は、乾燥防止、湿潤あるいは浸透促進の効果を得ることができる。乾燥防止には、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ、乾燥防止や湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒が好ましい。また、浸透促進には、紙へのインク浸透性を高める浸透促進剤として用いることができる。
【0067】
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒であることが好ましい。このような水溶性有機溶媒の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。
このうち、乾燥防止剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。
乾燥防止剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。乾燥防止剤の含有量は、インク組成物中に10〜50質量%の範囲とするのが好ましい。
【0068】
浸透促進剤としては、インク組成物を記録媒体(印刷用紙など)により良く浸透させる目的で好適である。このような水溶性有機溶媒の具体例としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を好適に用いることができる。
浸透促進剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。浸透促進剤の含有量は、インク組成物中に5〜30質量%の範囲であるのが好ましい。また、浸透促進剤は、画像の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない量の範囲内で使用することが好ましい。
【0069】
水溶性有機溶媒は、上記以外にも粘度の調整のために用いられる。粘度の調整に用いることができる水溶性有機溶媒の具体例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。この場合も、水溶性有機溶媒は1種単独で用いるほか、2種以上を併用してもよい。
【0070】
(水)
インク組成物は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、水の好ましい含有量は、10〜99質量%であり、より好ましくは30〜80質量%であり、更に好ましくは50〜70質量%である。
【0071】
(その他の添加剤)
本発明におけるインク組成物は、上記成分以外にその他の添加剤を用いて構成することができる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インク組成物の場合はインクに直接添加する。
【0072】
前記紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させることができる。紫外線吸収剤としては、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載のベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号明細書等に記載のベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載の桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載のトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載の化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される、紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0073】
前記褪色防止剤は、画像の保存性を向上させることができる。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤が挙げられる。有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類等が挙げられ、金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体等が挙げられる。より具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載の化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載の代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を用いることができる。
【0074】
前記防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。防黴剤の含有量は、インク組成物に対して0.02〜1.00質量%の範囲が好ましい。
【0075】
前記pH調整剤としては、中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。pH調整剤は、インク組成物の保存安定性を向上させることができる。pH調整剤は、インク組成物のpHが6〜10となるように添加するのが好ましく、pHが7〜10となるように添加するのがより好ましい。
【0076】
前記表面張力調整剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
表面張力調整剤の添加量は、インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整できる範囲が好ましく、20〜45mN/mに調整できる範囲がより好ましく、25〜40mN/mに調整できる範囲が更に好ましい。添加量が前記範囲内であると、インクジェット法で良好に打滴することができる。
【0077】
前記界面活性剤の具体例としては、炭化水素系では、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&ChemicaLs社製)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシド等のアミンオキシド型の両性界面活性剤も好ましい。
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)に界面活性剤として挙げられたものも用いることができる。
また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載のフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を用いることにより、耐擦性を良化することもできる。
【0078】
また、これら表面張力調整剤は、消泡剤としても使用することができ、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びEDTAに代表されるキレート剤等も使用可能である。
【0079】
<インク組成物の製造方法>
本発明のインク組成物の製造方法は、水溶性分散剤を用いて顔料を分散した後に、架橋剤により前記水溶性分散剤を架橋し、前記顔料表面を架橋させた分散ポリマーで覆うことにより顔料分散物を作製する工程と、前記顔料分散物と、水溶性の重合性化合物と、重合開始剤と、水とを混合してインク組成物を作製する工程と、を含んで構成され、必要に応じて、その他の工程を有することができる。
本発明は、上記構成とすることにより、重合性化合物と顔料分散物を用いたインク組成物において、長期に亘り優れた吐出信頼性を有し、白抜けなどの故障のない画像の形成が可能なインク組成物の製造方法を提供することができる。
本発明における顔料分散物を作製する工程は、前記インク組成物の項に記載された水分散性顔料の調製方法と同義であり、好ましい例も同様である。
顔料分散物を作製する工程において用いる顔料、水溶性分散剤、架橋剤等の詳細は前述の水分散性顔料の調製方法と同義であり、好ましい例も同様である。
本発明におけるインク組成物を作製する工程は、前記顔料分散物と、水溶性の重合性化合物と、水とを混合する工程を有して構成される。該混合工程では、前記成分に加え、必要に応じて、前記インク組成物の項に記載されたその他の成分を添加してもよい。
前記混合は公知の分散機等を用いて行うことができる。
【0080】
<インクセット>
本発明のインクセットは、前記インク組成物と、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液と、を含んで構成される。
本発明のインクセットは、インク組成物と共に処理液を用いることで、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い描画性(例えば細線や微細部分の再現性)に優れた画像が得られる。
【0081】
(処理液)
処理液は、既述のインク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を少なくとも含み、必要に応じて、さらに他の成分を用いて構成することができる。
【0082】
凝集剤としては、インク組成物のpHを変化させることができる化合物(例えば、酸性化合物など)、多価金属塩、及びポリアリルアミン類などの4級もしくは3級アミンを有するポリマーを挙げることができ、中でも、酸性化合物、多価金属塩、及びポリアリルアミン類などの4級もしくは3級アミンを有するポリマーから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、酸性化合物がより好ましい。
【0083】
酸性化合物としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。
酸性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
本発明における処理液が酸性化合物を含む場合、処理液のpH(25℃)は、6以下が好ましく、より好ましくはpHは4以下である。中でも、pH(25℃)は1〜4の範囲が好ましく、特に好ましくは、pHは1〜3である。このとき、前記インク組成物のpH(25℃)は、7.5以上(より好ましくは8.0以上)であることが好ましい。
中でも、画像濃度、解像度、及び画像形成の高速化の観点から、インク組成物のpH(25℃)が8.0以上であって、処理液のpH(25℃)が0.5〜4である場合が好ましい。
【0085】
上記の酸性化合物の中でも、水溶性の高い酸性化合物が好ましく、凝集性を高め、インク全体を固定化させる点で、リン酸又は有機酸が好ましく、有機酸がより好ましく、2価以上の有機酸が更に好ましく、2価以上3価以下の有機酸が特に好ましい。前記2価以上の有機酸の中でも、その第1pKaが3.5以下の有機酸が好ましく、より好ましくは3.0以下の有機酸である。具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、クエン酸などが好適に挙げられる。
【0086】
前記多価金属塩としては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13属からのカチオン(例えば、アルミニウム)、ランタニド類(例えば、ネオジム)の塩を挙げることができる。これら金属の塩としては、カルボン酸塩(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好適である。中でも、好ましくは、カルボン酸(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びチオシアン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩である。
【0087】
凝集剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
インク組成物を凝集させる凝集剤の処理液中における含有量としては、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは3〜45質量%であり、更に好ましくは5〜40質量%の範囲である。
【0088】
処理液は、本発明の効果を損なわない範囲内で、更にその他の成分として他の添加剤を含有することができる。他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0089】
本発明のインクセットとしては、カルボキシル基を有し酸価が135−250mgKOH/gの水溶性分散剤で被覆された水分散性顔料、(メタ)アクリルアミド基、マレイミド基、ビニルスルホン基及びN−ビニルアミド基から選択される重合性官能基を2以上含有し、1分子中の前記重合性官能基の含有数に対する分子量の比(分子量/重合性官能基数)が175以下である重合性化合物を含有するインク組成物と、有機酸を含む処理液との組み合わせ態様が好ましく、更には、カルボキシル基を有し、酸価が135〜200mgKOH/gの水溶性分散剤で被覆された水分散性顔料、重合性化合物として重合性官能基の少なくとも1つは(メタ)アクリルアミド基である水溶性(メタ)アクリルアミドモノマーを含有するインク組成物と、2価以上の有機酸を含む処理液と、の組み合わせ態様がより好ましい。
【0090】
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、既述の本発明のインク組成物又は本発明のインクセットのインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与するインク付与工程と、既述の本発明のインク組成物又は本発明のインクセットの処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程と、を有する構成されたものである。本発明の画像形成方法は、必要に応じて、更に他の工程を設けて構成することができる。
【0091】
本発明においては、インク画像を形成するためのインク組成物に顔料と共に活性エネルギー線により重合硬化可能な重合性化合物とを含有することで、処理液と接触した際に顔料の凝集反応で画像が固定化されると共に、顔料の粒子間には重合性化合物が取り込まれた状態で重合硬化されるので、最終画像の強度を高めることができる。
即ち、処理液を用いてインク組成物中の成分を高速凝集させ、インク間の混合(滲みや色間混色など)を防いで高速記録できる高速記録適性と、高速記録したときの色相及び画像描画性(画像中の細線や微細部分等の再現性)の向上効果を持たせつつ、凝集状態を形成している顔料粒子の隙間に重合性化合物が適度に入り込んで存在する状態を作り、この状態で入り込んだ重合性化合物を重合硬化するので、画像強度の向上が可能になり、高速記録適性と画像の耐擦過性の向上とを両立することができる。
特に、顔料が記録媒体の表面に残存しやすい塗工紙に画像記録する場合により効果的である。
【0092】
以下、本発明の画像形成方法を構成する各工程を説明する。
−インク付与工程−
インク付与工程は、顔料、及び活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物、重合開始剤、水を含むインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与する。本工程では、記録媒体上に選択的にインク組成物を付与でき、所望の可視画像を形成できる。なお、インク組成物は顔料、及び水溶性の重合性化合物を少なくとも含有してなるが、各成分の詳細及び好ましい態様などインク組成物の詳細については、既述した通りである。
【0093】
インクジェット法を利用した画像の形成は、具体的には、エネルギーを供与することにより、所望の被記録媒体、すなわち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報等に記載のインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等にインク組成物を吐出することにより行なえる。なお、本発明に好ましいインクジェット法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
【0094】
インクジェット法は、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。インクジェット法としては、特に、特開昭54−59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット法を有効に利用することができる。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0095】
また、インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0096】
インクジェット法の具体例を以下に示す。
インクジェット法として、(1)静電吸引方式とよばれる方法がある。静電吸引方式は、ノズルとノズルの前方に配置された加速電極との間に強電界を印加し、ノズルから液滴状のインクを連続的に噴射させ、そのインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えることによって、インク滴を記録媒体上に向けて飛ばしてインクを記録媒体上に定着させて画像を記録する方法、又はインク滴を偏向させずに、印刷情報信号に従ってインク滴をノズルから記録媒体上にむけて噴射させることにより画像を記録媒体上に定着させて記録する方法である。また、(2)小型ポンプによってインク液に圧力を加えるとともに、インクジェットノズルを水晶振動子等によって機械的に振動させることによって、強制的にノズルからインク滴を噴射させる方法がある。ノズルから噴射されたインク滴は、噴射されると同時に帯電され、このインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えてインク滴を記録媒体に向かって飛ばすことにより、記録媒体上に画像を記録する方法である。次に、(3)インク液に圧電素子によって圧力と印刷情報信号を同時に加え、ノズルからインク滴を記録媒体に向けて噴射させ、記録媒体上に画像を記録する方法(ピエゾ)、(4)印刷信号情報にしたがって微小電極を用いてインク液を加熱して発泡させ、この泡を膨張させることによってインク液をノズルから記録媒体に向けて噴射し、記録媒体上に画像を記録する方法(バブルジェット(登録商標))がある。
【0097】
インクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。本発明の画像形成方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、一般にダミージェットを行なわないライン方式に適用した場合に、吐出精度及び画像の耐擦過性の向上効果が大きい。
【0098】
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、1〜10pl(ピコリットル)が好ましく、1.5〜6plがより好ましい。また、画像のムラ、連続諧調のつながりを改良する観点で、異なる液適量を組み合わせて吐出することも有効であり、このような場合でも本発明は好適に使用できる。
【0099】
−処理液付与工程−
処理液付与工程は、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を記録媒体に付与し、処理液をインク組成物と接触させて画像化する。この場合、インク組成物中の顔料をはじめとする分散粒子が凝集し、記録媒体上に画像が固定化される。なお、処理液は凝集剤を少なくとも含有してなり、各成分の詳細及び好ましい態様については、既述した通りである。
【0100】
処理液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については、既述の通りである。
【0101】
処理液付与工程は、インク組成物を用いたインク付与工程の前又は後のいずれに設けてもよい。本発明においては、処理液付与工程で処理液を付与した後にインク付与工程を設けた態様が好ましい。具体的には、記録媒体上に、インク組成物を付与する前に、予めインク組成物中の顔料及び/又は自己分散性ポリマーの粒子を凝集させるための処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を付与して画像化する態様が好ましい。これにより、画像記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
【0102】
処理液の付与量としては、インク組成物を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集剤の付与量が0.1g/m以上となる量とすることができる。中でも、凝集剤の付与量が0.2〜0.7g/mとなる量が好ましい。凝集剤は、付与量が0.1g/m以上であるとインク組成物の種々の使用形態に応じ良好な高速凝集性が保てる。また、凝集剤の付与量が0.7g/m以下であることは、付与した記録媒体の表面性に悪影響(光沢の変化等)を与えない点で好ましい。
【0103】
また、本発明においては、処理液付与工程後にインク付与工程を設け、処理液を記録媒体上に付与した後、インク組成物が付与されるまでの間に、記録媒体上の処理液を加熱乾燥する加熱乾燥工程を更に設けることが好ましい。インク付与工程前に予め処理液を加熱乾燥させることにより、滲み防止などのインク着色性が良好になり、色濃度及び色相の良好な可視画像を記録できる。
【0104】
加熱乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。加熱方法としては、例えば、記録媒体の処理液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0105】
−活性エネルギー線照射工程−
本発明の画像形成方法は、記録媒体上に付与されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する工程を含むことが好ましい。活性エネルギー線を照射することでインク組成物に含まれる重合性化合物が重合して、着色剤を含む硬化膜を形成する。これにより画像の耐擦性、耐ブロッキング性がより効果的に向上する。
【0106】
記録媒体上に付与されたインク組成物は、活性エネルギー線を照射することで硬化する。これは、本発明におけるインク組成物に含まれる開始剤が活性エネルギー線の照射により分解して、ラジカル、酸、塩基などの開始種を発生し、その開始種により重合性化合物の重合反応が開始・促進されてインク組成物が硬化するためである。
さらに、この活性エネルギー線照射の際、処理液中に含まれる酸発生剤から供給される酸により、インク組成物がさらに凝集(固定化)し、画像部品質(耐擦性・耐ブロッキング性等)が向上する。
【0107】
ここで、使用される活性エネルギー線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光、赤外光などが使用される。活性エネルギー線の波長としては、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
活性放射線の出力としては、5000mJ/cm以下であることが好ましく、10〜4000mJ/cmであることがより好ましく、20〜3000mJ/cmであることがさらに好ましい。
【0108】
活性エネルギー線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更にLED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。
本発明で特に好ましい活性エネルギー線源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
【0109】
−記録媒体−
本発明の画像形成方法は、記録媒体に上に画像を記録するものである。
記録媒体には、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明の画像形成方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
【0110】
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しらおい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、画像形成方法用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
【0111】
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本発明の画像形成方法では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙と無機顔料を含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましく、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのがより好ましい。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
【0112】
〜インクジェット記録装置〜
次に、本発明の画像形成方法におけるインクジェット法を実施するのに好適なインクジェット記録装置の一例について、図1を参照して具体的に説明する。図1は、インクジェット記録装置全体の構成例を示す概略構成図である。
【0113】
図1に示すように、インクジェット記録装置は、記録媒体の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、処理液を吐出する処理液吐出用ヘッド12Sを備えた処理液付与部12と、付与された処理液を乾燥させる加熱手段(不図示)を備えた処理液乾燥ゾーン13と、各種インク組成物を吐出するインク吐出部14と、吐出されたインク組成物を乾燥させるインク乾燥ゾーン15とが配設されている。また、記録媒体の搬送方向におけるインク乾燥ゾーン15の下流側には、紫外線照射ランプ16Sを備えた紫外線照射部16が配設されている。
【0114】
このインクジェット記録装置に供給された記録媒体は、記録媒体が装填されたケースから記録媒体を給紙する給紙部から、搬送ローラによって、処理液付与部12、処理液乾燥ゾーン13、インク吐出部14、インク乾燥ゾーン15、紫外線照射部16と順に送られて集積部に集積される。搬送は、搬送ローラによる方法のほか、ドラム状部材を用いたドラム搬送方式やベルト搬送方式、ステージを用いたステージ搬送方式などを採用してもよい。
【0115】
複数配置された搬送ローラのうち、少なくとも1つのローラはモータ(不図示)の動力が伝達された駆動ローラとすることができる。モータで回転する駆動ローラを定速回転することにより、記録媒体は所定の方向に所定の搬送量で搬送されるようになっている。
【0116】
処理液付与部12には、処理液を貯留する貯留タンクに繋がる処理液吐出用ヘッド12Sが設けられている。処理液吐出用ヘッド12Sは、記録媒体の記録面と対向配置された吐出ノズルから処理液を吐出し、記録媒体の上に処理液を液滴付与できるようになっている。なお、処理液付与部12は、ノズル状のヘッドから吐出する方式に限らず、塗布ローラを用いた塗布方式を採用することもできる。この塗布方式は、下流側に配置されたインク吐出部14で記録媒体上にインク滴が着弾する画像領域を含むほぼ全面に処理液を容易に付与することができる。記録媒体上の処理液の厚みを一定にするために、例えば、エアナイフを用いたり、あるいは尖鋭な角を有する部材を、処理液の規定量に対応するギャップを記録媒体との間に設けて設置する等の方法を設けてもよい。
【0117】
処理液付与部12の記録媒体搬送方向の下流側には、処理液乾燥ゾーン13が配置されている。処理液乾燥ゾーン13は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段を用いて構成することができる。加熱手段は、記録媒体の処理液付与面と反対側(例えば、記録媒体を自動搬送する場合は記録媒体を載せて搬送する搬送機構の下方)にヒータ等の発熱体を設置する方法や、記録媒体の遮断層形成面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0118】
また、記録媒体の種類(材質、厚み等)や環境温度等によって、記録媒体の表面温度は変化するため、記録媒体の表面温度を計測する計測部と該計測部で計測された記録媒体の表面温度の値を加熱制御部にフィードバックする制御機構を設けて温度制御しながら処理液付与層を形成することが好ましい。記録媒体の表面温度を計測する計測部としては、接触又は非接触の温度計が好ましい。
また、溶媒除去ローラー等を用いて溶媒除去を行なってもよい。他の態様として、エアナイフで余剰な溶媒を記録媒体から取り除く方式も用いられる。
【0119】
インク吐出部14は、処理液乾燥ゾーン13の記録媒体搬送方向下流側に配置されている。インク吐出部14には、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の各色インクを貯留するインク貯留部の各々と繋がる記録用ヘッド(インク吐出用ヘッド)30K、30C、30M、30Yが配置されている。不図示の各インク貯留部には、各色相に対応する顔料と樹脂粒子と水溶性有機溶剤と水とを含有するインク組成物が貯留されており、画像の記録に際して必要に応じて各インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Yに供給されるようになっている。また、インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、及び30Yの搬送方向下流側には、図1に示すように、必要に応じて特色インクを吐出可能なように、特色インク吐出用の記録ヘッド30A、30Bを更に配設することもできる。
【0120】
インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Yは、記録媒体の記録面と対向配置された吐出ノズルから、それぞれ画像に対応するインクを吐出する。これにより、記録媒体の記録面上に各色インクが付与され、カラー画像が記録される。
【0121】
処理液吐出用ヘッド12S、並びにインク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bはいずれも、記録媒体上に記録される画像の最大記録幅(最大記録幅)にわたって多数の吐出口(ノズル)が配列されたフルラインヘッドとなっている。記録媒体の幅方向(記録媒体搬送面において搬送方向と直交する方向)に短尺のシャトルヘッドを往復走査しながら記録を行なうシリアル型のものに比べて、記録媒体に高速に画像記録を行なうことができる。本発明においては、シリアル型での記録、又は比較的高速記録が可能な方式、例えば1回の走査で1ラインを形成するシングルパスで主走査方向に吐出して記録できる方式での記録のいずれを採用してもよいが、本発明の画像記録方法によればシングルパスによる方式でも再現性の高い高品位の画像が得られる。
【0122】
ここでは、処理液吐出用ヘッド12S、並びにインク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bは、全て同一構造になっている。
【0123】
処理液の付与量とインク組成物の付与量とは、必要に応じて調節することが好ましい。例えば、記録媒体に応じて、処理液とインク組成物とが混合してできる凝集物の粘弾性等の物性を調節する等のために、処理液の付与量を変えてもよい。
【0124】
インク乾燥ゾーン15は、インク吐出部14の記録媒体搬送方向下流側に配置されている。インク乾燥ゾーン15は、処理液乾燥ゾーン13と同様に構成することができる。
【0125】
紫外線照射部16は、インク乾燥ゾーン15の記録媒体搬送方向のさらに下流側に配置されており、紫外線照射部16に設けられた紫外線照射ランプ16Sにより紫外線を照射し、画像乾燥後の画像中のモノマー成分を重合硬化させるようになっている。紫外線照射ランプ16Sは、記録媒体の記録面と対向配置されたランプにより記録面の全体を照射し、画像全体の硬化が行なえるようになっている。なお、紫外線照射部16は、紫外線照射ランプ16Sに限らず、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、レーザー、LED、電子線照射装置などを採用することもできる。
紫外線照射部16はインク乾燥ゾーン15の前後のどちらでも設置してもよい。
【0126】
また、インクジェット記録装置には、給紙部から集積部までの搬送路に、記録媒体に加熱処理を施す加熱手段を配置することもできる。例えば、処理液乾燥ゾーン13の上流側や、インク吐出部14とインク乾燥ゾーン15との間、などの所望の位置に加熱手段を配置することで、記録媒体を所望の温度に昇温させることにより、乾燥、定着を効果的に行なうようにすることが可能である。
【実施例】
【0127】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0128】
[合成例]
(水溶性樹脂分散剤P−1の合成)
下記に従って合成した。
【0129】
モノマー供給組成物を、メタクリル酸(236部)、メタクリル酸メチル(414部)、メタクリル酸2−エチルヘキシル(350部)及びイソプロパノール(375部)を混合することにより調製した。開始剤供給組成物を、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(22.05部)及びイソプロパノール(187.5部)を混合することにより調製した。
イソプロパノール(187.5部)を窒素雰囲気下、80℃に加温した中に、モノマー供給組成物及び開始剤供給組成物の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に4時間、80℃に保った後に、25℃まで冷却した。溶媒を減圧除去することにより、重量平均分子量約30000、酸価154mgKOH/gの水溶性樹脂分散剤P−1(水溶性分散剤)を得た。
【0130】
本発明における他の水溶性樹脂分散剤についても同様に合成する事ができる。
【0131】
[顔料分散物の作製]
上記で得られた水溶性樹脂分散剤P−1の150部を水に溶かして、水酸化カリウム水溶液を用いて中和後のpHが9、水溶性樹脂分散剤濃度が約25%となるように水溶性樹脂分散剤水溶液を調製した。
この水溶性樹脂分散剤水溶液180部に対し、ピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製、フタロシアニンブルーA220)90部と水330部を混合し、ビーズミル(ビーズ径:0.1mmΦ、ジルコニアビーズ)で4時間分散し、顔料濃度15%の未架橋の顔料含有樹脂粒子の分散物N(未架橋分散物)を得た。
上記分散物N136部に対し、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(アルドリッチ製カタログ番号47,569−6)0.23部を添加し、50℃にて6時間半反応後、25℃に冷却することにより、顔料濃度15%の架橋された顔料含有樹脂粒子の分散物1(架橋分散物)を得た。
【0132】
[実施例1]
[インクセット1の作製]
下記インク組成物A1と処理液B1のインクセット1を作製した。
(インク組成物A1の調製)
上記で得られた架橋された顔料含有樹脂粒子の分散物を使い、下記の組成を混合し、5μmメンブランフィルタでろ過してインク組成物A1を調製した。
<インク組成物A1の組成>
・上記架橋された顔料含有樹脂粒子の分散物1(顔料固形分濃度15%)・・26.8部
・ノニオン性化合物2(重合性化合物) ・・19部
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、界面活性剤) ・・1部
・イルガキュア 2959 ・・2.9部
(チバ・ジャパン(株)製;光重合開始剤)
・イオン交換水 ・・合計で100部になる残量
【0133】
【化8】



【0134】
(処理液B1の調製)
下記組成の成分を混合して、処理液B1を調製した。処理液の上記と同様にして測定した粘度、表面張力、及びpH(25±1℃)は、粘度2.5mPa・s、表面張力40mN/m、pH1.0であった。
<処理液の組成>
・マロン酸(和光純薬工業(株)製)・・・25%
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製)・・・20.0%
・エマルゲンP109(花王(株)製、ノニオン性界面活性剤)・・・1.0%
・イオン交換水・・・合計で100%になる残量
【0135】
[実施例2〜7]
実施例1におけるインク組成物A1の調製において、ノニオン性化合物2を下記重合性化合物1〜6に変更した以外は同様にして、インクセットを作製した。
【0136】
【化9】



【0137】
[比較例1]
実施例1のインク組成物の調製において、架橋された顔料含有樹脂粒子1を、未架橋の顔料含有樹脂粒子の分散物Nに変えた以外は同様にして、インクセットを作製した。
【0138】
[比較例2]
比較例1において、ノニオン性化合物2を重合性化合物1に変えた以外は同様にして、インク組成物を作製した。
【0139】
[評価]
−画像形成方法−
まず、図1に示すように、記録媒体の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、処理液を吐出する処理液吐出用ヘッド12Sを備えた処理液付与部12と、付与された処理液を乾燥させる処理液乾燥ゾーン13と、各種水性インクを吐出するインク吐出部14と、吐出された水性インクを乾燥させるインク乾燥ゾーン15と、紫外線(UV)を照射可能なUV照射ランプ16Sを備えたUV照射部16とが配設されたインクジェット装置を準備した。
処理液乾燥ゾーン13は、図示しないが、記録媒体の記録面側には乾燥風を送って乾燥を行なう送風器を備え、記録媒体の非記録面側には赤外線ヒータを備えており、処理液付与部で処理液の付与を開始した後900msecが経過するまでに、温度・風量を調節して処理液中の水の70質量%以上を蒸発(乾燥)できるように構成されている。また、インク吐出部14は、搬送方向(矢印方向)にブラックインク吐出用ヘッド30K、シアンインク吐出用ヘッド30C、マゼンタインク吐出用ヘッド30M、及びイエローインク吐出用ヘッド30Yが順次配置されており、各ヘッドは1200dpi/10inch幅フルラインヘッド(駆動周波数:25kHz、記録媒体の搬送速度530mm/sec)であり、各色をシングルパスで主走査方向に吐出して記録できるようになっている。
【0140】
図1に示すように構成されたインクジェット装置の処理液吐出用ヘッド12S、各色インク吐出用ヘッド30C、30M、30Yにそれぞれ繋がる貯留タンク(不図示)に、上記で得た処理液、インクを装填して、記録媒体にベタ画像及び1200dpiのライン画像を記録した。処理液の記録媒体への付与量は、5ml/mとした。記録媒体には、日本製紙(株)製の「ユーライト」(坪量84.9g/m)を用いた。
【0141】
画像の記録に際し、処理液及び各色インクは、インク液滴量2.8pL、吐出周波数25.5kHz、解像度1200dpi×1200dpiの吐出条件にてライン方式で吐出し、記録媒体をA5サイズにカットしたサンプルの全面にインクを吐出してベタ画像とした。
【0142】
画像の記録はまず、記録媒体上に処理液吐出用ヘッド12Sから処理液をシングルパスで吐出した後、処理液の乾燥は処理液乾燥ゾーン13で行ない、処理液乾燥ゾーンを処理液の吐出開始から900msec迄に通過するようにした。処理液乾燥ゾーン13では、着滴した処理液を着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで膜面温度が40〜45℃となるように加熱しながら、送風器により記録面に120℃の温風をあて、風量を変えて所定の乾燥量になるように調整した。続いて、シアンインク吐出用ヘッド30Cにより、シアンインクを吐出して画像を記録した。その後、インク乾燥ゾーン15で前記同様にインク着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで加熱しながら、送風器により120℃、5m/secの温風を記録面に15秒間あてて乾燥させた。画像乾燥後、UV照射部16において、UV光(アイグラフィックス(株)製 メタルハライドランプ 最大照射波長 365nm)を積算照射量3J/cmになるように照射して画像を硬化した。
【0143】
−白抜け評価−
上記インクセットの処理液と水性インク組成物とを30分間吐出した後、メンテナンス作業として、15kPaの圧力で10秒間加圧した後にクリーンワイパーFF−390c((株)クラレ製)でワイプを行ない、その後さらに5分間吐出を継続し、5分経過後に記録したベタ画像を8cm×8cmサイズに切り取って観察した。そして、観察した画像を下記の評価基準にしたがって目視評価した。
<評価基準>
A:白抜けの発生はみられなかった。
B:白抜けの発生が1〜2箇所であった。
C:白抜けの発生が3〜10箇所であった。
D:白抜けの発生が10箇所を超えていた。
【0144】
-吐出信頼性評価-
(株)リコー製GELJET GX5000プリンターヘッドを500mm/秒で所定の直線方向に移動可能なステージの移動方向(副走査方向)と直交する方向に、ノズルが並ぶラインヘッドの方向(主走査方向)を合わせて固定した。
次にこれに繋がる貯留タンクを上記で作製したインク組成物を、40℃で2週間経時させたものに詰め替えた。記録媒体として富士フイルム(株)製画彩写真仕上げProを、ヘッドのノズル配列方向(主走査方向)に対して直交方向(副走査方向)に移動するステージに貼り付けた。
次に、ステージを508mm/秒で搬送方向(副走査方向)に移動させ、2列あるノズルのうち1列のノズル(192ノズル、150dpi)のみを使用し、インク滴量3.4pL、吐出周波数24kHzで192ノズルのうち連続する10ドットのみステージ搬送方向に150dpiで400発打滴後、192ノズル、搬送方向に1200dpiで1000発打滴し、初期描画とした。
初期描画直後、ステージを初期位置に戻し、初期描画の最後のドットの吐出から1分後に、初期描画で使用した連続する10ノズルに隣接する10ノズルを、ステージ搬送方向に150dpiで400発打滴し、1分後画像とした。
初期描画で最初に打滴した10ノズルを基準として1分後描画で最初に打滴した10ノズルを50倍の顕微鏡で観察し、以下のように評価した。
<評価基準>
A:1分後画像ドットが初期画像ドットに対して搬送方向に対して平行なずれは確認できない。
B:1分後画像ドットが初期画像ドットに対して30μm未満搬送方向に対して平行な方向にずれている。
C:1分後画像ドットが初期画像ドットに対して30μm以上搬送方向に対して平行な方向にずれているあるいは1分後画像の1発目のドットが吐出されない。
【0145】
【表1】



【符号の説明】
【0146】
12・・・処理液付与部
12S・・・処理液吐出用ヘッド
13・・・処理液乾燥ゾーン
14・・・インク吐出部
15・・・インク乾燥ゾーン
16・・・紫外線照射部
16S・・・紫外線照射ランプ
30K,30C,30M,30Y・・・インク吐出用ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性分散剤が架橋剤により架橋された分散ポリマーで被覆された顔料と、水溶性の重合性化合物と、重合開始剤と、水とを含むインク組成物。
【請求項2】
前記重合開始剤が光重合開始剤である請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記水溶性分散剤がカルボキシル基を有する請求項1又は請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記重合性化合物が、(メタ)アクリルアミド基、マレイミド基、ビニルスルホン基、及びN−ビニルアミド基から選択される重合性官能基を2以上含有し、1分子中の前記重合性官能基の含有数に対する分子量の比(分子量/重合性官能基数)が175以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記重合性官能基の少なくとも1つは、(メタ)アクリルアミド基である請求項4に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記水溶性分散剤の酸価が135〜200mgKOH/gである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記重合性化合物が(メタ)アクリルアミド基とノニオン性の親水性基とを有し、前記分子量/重合性官能基数の比が84〜165である請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記水溶性分散剤の含有量が、顔料に対して10〜200質量%である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記架橋剤は、2官能以上のエポキシ化合物である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のインク組成物と、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液と、を含むインクセット。
【請求項11】
前記凝集剤が、酸性化合物、多価金属塩、及びカチオン性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含む請求項10に記載のインクセット。
【請求項12】
前記凝集剤が、2価以上の水溶性有機酸を含む請求項10又は請求項11に記載のインクセット。
【請求項13】
前記インク組成物のpHが8以上であり、処理液のpHが0.5〜4である請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項14】
請求項10〜請求項13のいずれか1項に記載のインクセットが用いられ、
前記インクセットにおけるインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与するインク付与工程と、
前記インクセットにおける処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程と、
を有する画像形成方法。
【請求項15】
水溶性分散剤を用いて顔料を分散した後に、架橋剤により前記水溶性分散剤を架橋し、前記顔料表面を架橋させた分散ポリマーで覆うことにより顔料分散物を作製する工程と、
前記顔料分散物と、水溶性の重合性化合物と、重合開始剤と、水とを混合してインク組成物を作製する工程と、
を含むインク組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−231315(P2011−231315A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82239(P2011−82239)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】